平成12年9月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(高田由一議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十六番高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕(拍手)
○高田由一君 お許しをいただきましたので、早速、一般質問に入っていきます。
 まず最初に、市町村合併について伺います。
 県は、自治省からの指導もあり、本年十二月にも市町村の合併の推進についての要綱を策定するとして、現在作業中と伺います。これについては、昨年十二月議会で我が党の鶴田議員が述べたように、市町村があえて求めていないときに国の主導でその実現を図り、その担い手として県が動かされているという感じがします。今度の市町村合併の大号令の建前は地方分権の受け皿になり得る自治体づくりということになっておりますが、これまでの議会答弁でも繰り返し述べられたように、市町村の自主性の尊重ということを言うなら、あえてこの年末までに合併の要綱をつくる必要があるのでしょうか。まず知事の見解をお示しください。
 また、これに関連して、市町村に対する地方交付税の問題について質問いたします。
 平成十年から、地方交付税算定の際、人口四千人以下の町村の基準財政需要額を計算するときの補正係数という数字が見直されて、実質的に地方交付税が減らされ、人口規模の小さい町や村の財政に大きな影響を与えています。まず、県下幾つの町村で、これまでの類型で幾らの交付税減額の影響が出たのか、答弁をお願いいたします。
 次に、自治省は今、合併を推進しようとする市町村にはさまざまな補助金や交付税措置などで優遇措置をとる一方、最も合併を進めたい小さな規模の町村には地方交付税の減額をしています。このような政策誘導の仕方はまさに「あめとむち」のようなやり方で、市町村の自治権を侵害するものではないかと思います。合併についてはあくまで市町村の自主性を尊重するやり方にすべきだと思いますが、知事の見解をお示しください。
 次に、財政運営について伺います。
 まず、財政運営プログラムに関連して伺います。
 知事は、就任あいさつの中で、これを基本として財政再建に取り組むと表明をされました。財政運営プログラムの具体的取り組みは、主に四つの点から成っています。一つは県行政内部の努力という部分で、職員の削減あるいは給料の見直しなどで約二十億円を削減する、二つ目には施策の抜本的見直しで約百億円を削減する、三つ目は歳入の確保で約五億円をふやす、四つ目はその他の取り組みというふうになっています。
 そのうち、二つ目の施策の抜本的見直しのうち、経常的経費の見直しで約四十億円削減することになっておりますが、気になりますのは、今後はすべての経費について事業の存廃を含めた抜本的な見直しというふうに書かれていることであります。これには県単独の扶助費、例えば、現在寝たきりのお年寄りへの紙おむつの支給、障害者の補装具の給付、百歳になったお年寄りへの長寿祝い金など、こうした義務的な経費も含まれていくんでしょうか。知事の答弁をお願いいたします。
 また、県単独の投資的経費やその他の施策費についても本年度予算の段階で既に前年度比八五%のシーリングがかかっていますが、土木部の急傾斜の対策事業──これは県単もありますが──農林水産部の山村21創造事業や問題になっております梅の改植への補助など、要望の多いものも多数あります。どうした基準で抜本的な見直しをする事業を選んでいくのか、これについても知事の答弁をお願いいたします。
 次に、県が予定している大規模プロジェクトについて伺います。
 本年七月の総選挙では、むだな公共事業に対する国民の厳しい批判が示されました。それを受けて与党は抜本見直し案を八月末に発表いたしましたが、これによりますと、中止が勧告される事業は全体で約二百三十三事業、事業費として約二兆八千億円です。仮にそのすべてが中止されたとしても、単年度では二千数百億円の削減にすぎず、年間五十兆円と言われる公共事業のわずか〇・五%であります。さらに、自民党の亀井政調会長は公共事業費の総額は減らさないと明言し、五十兆円という総枠は何としても維持する構えでいます。自公保与党の見直し案は、若干の事業を中止してお茶を濁し、公共事業費の総額は維持しようとするもので、私は抜本見直しとは名ばかりだと考えます。このまま行くなら、景気対策あるいはIT関連投資などに名をかりた公共事業の地方への押しつけがくるのではないかと心配をしております。
 そういう中で木村新知事は、さきの知事選挙で紀淡連絡道路の早期着工や関西空港二期工事の推進を公約されていました。しかし、そうした大規模プロジェクトと財政運営プログラムの関係はどうなるのでしょうか。これらは、財政運営プログラムで予定している大規模プロジェクトには含まれていないと思います。平成十五年度までをプログラムは予定していますが、このプログラムの計画どおりそれまでしのいだとしても、その後でこうした大規模な負担のかかる事業が後々予定されていては、再び財政悪化の原因をつくることになりかねません。このことについての知事の見解を求めたいと思います。
 この質問の最後に、農林水産部の公共事業に係る問題について質問をいたします。
 現在、県は有田市から金屋町に至る広域農道の建設を計画しています。この事業は、ミカンの市場出荷を素早く行えるなどの目的で計画されたと聞いております。平成九年度に一たん測量・設計したものの、昨年九月に関係地区の役員さんらでつくる地元の推進協議会の会合があり、そのときには何のメリットもないというような意見も出て、推進協議会としては一切協力できないことが確認されたそうです。また、推進協議会の会長さんがやめるなどして、この会は事実上解散状態になっているそうです。私が聞くところによりますと、海南や和歌山市方面へ抜ける南北の道路というのは大変要望が強いと聞いていますが、この計画されている農道は東西に抜けるだけのものだということで、そういう意見が多数になっているようです。
 ところが、これが計画の見直しということで、また蒸し返されようとしています。ある役員の方は、この件は昨年九月で決着がついたと思っていたのに県はまだ出してくるらしい、大変しつこいなということを言われていたそうです。今示されている見直し案では、ほとんどミカン畑のない山の尾根付近を農道が通っていく計画になっています。吉備町の風力発電の風車があるその裏側を通っていくような計画になるんですが、一体何のための事業なのかが問われています。そもそも、なぜこのような事業が採択になったのか、その経過とこの事業で得られる効果について、農林水産部長の答弁をお願いいたします。
 この広域農道の事業費は約二百二十億円と言われていますが、国が五〇%、県が四〇%負担ですから、県負担は約九十億円と見込まれます。おまけに、今度出されている見直し案ではトンネル部分が多くなることから、さらに五十億円以上事業費を上積みしなければならないという意見もあります。調査費だけを見ても、この事業にはことしは五千万円の予算がついていますが、例えばことしの吉備町の農林水産関係予算に対する県費の負担金──これには、例えば中山間地域の直接支払い制度約二千二百万円やミカンの経営安定利子補給約二百二十万円とかが含まれているんですが、いろいろ合わせて県費負担は合計で四千万円に満たないものです。ところが、この広域農道の事業の調査費だけで優にそれを上回っています。吉備町のミカンの安値対策が県費で約二百二十万円で十分だとは、だれしも思われないと思うんです。地元が歓迎しないむだな事業を見直し、本当に農家が切望している事業にこそ投資をしてください。
 さらに言うなら、知事は和歌山工科大学の計画凍結を表明されましたが、この農道事業だけでも県費で九十億円以上費やされます。大変な決断をした工科大学凍結で約百五十億円のお金を節約しましても、こうしたむだな事業をこのまま推進するなら、せっかくの決断の成果が生かせないのではないでしょうか。これについても見直しを求めますが、農林水産部長の答弁をお願いいたします。
 次に、県民医療への県の責任という問題について伺います。
 ことしの五月に、全国自治体病院開設者協議会という団体が国に提出した要望書があります。その中では、自治体病院の役割として次のように述べられています。
 「自治体病院は、一般医療のほか、公的医療機関でなければ対応することが困難な高度・特殊・先駆的医療及び僻地医療等、不採算医療を担い、さらには地域に欠けている機能を補てんするなど、地域医療の確保と医療水準の向上に精いっぱいの努力を傾注している」、つまり民間が手を出しにくい不採算部門でも何とか頑張って地域医療に貢献しているんだという、これは自負のあらわれだと思います。
 ご承知のように、自治体病院、特に市町村立の病院の経営は大変厳しいものがございます。平成九年の医療保険改悪での患者負担の増加による受診率の低下、診療報酬の改定で実質一・三%の収入減になるなどの理由もあるからです。
 本県では、特に県立病院が県立医大の紀北分院を入れても三つしかなく、紀南地方では一つもないことから、市町村立の病院の役割が非常に重要になっています。現在、県としては紀南地方に県立病院を建てようという構想はないわけですが、ならばせめて市町村立病院への各種運営費の援助を拡大していくことが県の責任ではないかと思います。福祉保健部長の答弁をお願いいたします。
 次に、この市町村立病院の問題を調査していく中で、県の結核対策への取り組みについて非常に疑問を感じたことがありますので、質問いたします。
 「和歌山の結核」という県が発行したパンフレットでは、平成十年の統計において特筆すべきこととして、減少を続けてきた罹患率などが約四十年ぶりに増加に転じた平成九年をさらに上回る事態となっていることを挙げています。現在、罹患率は全国でワースト四位であります。厚生省も平成十一年七月、結核緊急事態宣言を発表し、国民、関係者に注意を呼びかけています。
 県内では現在、和歌山市の神田病院、野上町の野上厚生病院、美浜町の国立療養所和歌山病院で、合計二百五十一床の専門の結核病棟を持っています。しかし、現在の状況を見ると、それで十分というわけにはいきません。現在問題になっているのは、老人福祉施設などでの集団感染が多く、単純に結核だけを治せばいいというのではなくて、さまざまな合併症状を伴うことが多いからであります。
 ですから、厚生省の方も結核患者収容モデル事業の中で次のように述べています。「結核患者の高齢化などに伴って複雑化する高度な合併症状を有する結核患者または入院を要する精神障害者である結核患者に対して、医療上の必要性から、一般病棟または精神病床において収容治療するためのより適切な基準を策定するためにモデル事業を行う」。つまり、要約すると、一般の病棟や精神科の病棟でも結核患者が出ても対応できるような部屋を用意しておこうではないかということです。
 実際、日本看護協会というところの調査によると、結核患者のうち結核患者収容施設に移送できなかった数は一病院につき二・二人で、その理由として、結核の治療より現疾患の治療を優先させたが四五・八%、重症で結核病院から断られたが一一・六%であり、計五七・四%が患者の病状により移送できていないことが判明しています。自分の施設に結核病床またはそれに準じる設備があったから移送しなくても済んだんだというのは、わずか三・二%にすぎません。
 こうした状況にかんがみ、県立五稜病院が現在建てかえ整備中ですが、結核に対応できる病床をつくっていくべきではないでしょうか。福祉保健部長の答弁をお願いいたします。
 次に、鳥獣害の対策について伺います。
 私が鳥獣害の対策について質問するのは、昨年の十二月議会に次いでですが、前回は有害鳥獣を駆除するにしても生態学的な調査が重要だという趣旨を述べましたが、今回は具体的な被害対策について質問、提案いたします。
 まず、鳥獣被害を防止する上で農家の皆さんはそれぞれ工夫されているわけですが、一般的には金網や電気さく、トタンでの囲いがよく使われています。それに対して、現在約二十の市町村が設置費用の大体半額の補助を出してくれています。予算的に見ましても、全部の市町村を合わせて一年間に大体一千万円前後と推定されるわけですが、金額的には少なくても、私は中山間地の農業を励まし援助する制度として大変有効だと考えています。
 京都府では府の単独事業をつくってこうした対策に支援をしていますが、和歌山県としても検討をされてはいかがでしょうか。農林水産部長の答弁をお願いいたします。
 次に、県の試験研究機関でこの問題の科学的な研究をしてほしいということです。
 議場には資料を配付しておりますが、左側に「日本農業新聞」のコピーがあります。これは、おおむね次のように述べています。鳥獣害の被害は年々ふえる傾向にある。一向に被害の減らない理由の一つは、これまでの鳥獣害対策に科学的な視点が欠けていたからである。そんな中で、大学や農業試験場が野生鳥獣の能力、習性の研究に力を入れ出した。中国農業試験場は、イノシシの成獣なら助走なしに一メートルの高さを飛び越すことを明らかにした。猿では、やみくもな捕獲が裏目に出ることがある。複数の群れの力関係が崩れ、予期せぬ行動を引き起こすからだ。野生鳥獣の生態研究にもっと費用を投じるべきである。このように結論づけています。
 しかし、これについて今まで和歌山県の研究機関では十分取り組まれていないわけです。実は、県段階でもこうした取り組みは始まってきており、近くでは奈良県、兵庫県が国の委託研究を受ける形で研究機関として研究を始めています。その成果の一部がお配りしている資料の右側にある「猿落君」ですが──ここに奈良県の実際のパンフレットもありますが、こういうのを地域の農家の皆さんに配って対策や懇談を進めています。まことに簡単な、しかも安くつく資材でできる効果的な対策であります。猿の場合は金網を幾ら高くしてもやられるわけですけれども、発想を転換して、やわらかい支柱とテグスの網でつくると猿が落っこちてしまうというようなものなんですが、非常に効果的だそうであります。
 こういう研究が、奈良県では果樹振興センターを中心に取り組まれています。本県としても、国の委託研究を受けることも含めて研究を始められてはいかがでしょうか、農林水産部長の答弁をお願いいたします。
 この問題の最後に、先ほど紹介したような資材も含め、民間の方からもいろんな有効だと言われる資材が開発されて、よく広告など出ておりますが、その地域地域で本当に有効かどうかは実際試してみないとわからないというのが実際のところであります。例えば、新しい農薬などは普及センターがまず実証試験をして、効果や薬害がないかなどを見定めながら農家に普及するという手法が一般的ですが、こうした鳥獣害を防止する資材についても、普及センターがそういう被害の多い現地での実証展示などをして、そのうち真に有効なものを普及することを提案いたしますが、いかがでしょうか。農林水産部長の答弁をお願いいたします。
 次に、梅の生育不良について伺います。
 知事は就任あいさつで、この問題で早急に農家の方々と対話すると言われており、既に十月十四日に現地の視察予定と聞いております。このことに感謝をいたします。と同時に、以前、当時の高瀬副知事が現地を視察したときには落胆の声が農家から聞かれたことも、率直に申し上げなければなりません。南部町岩代のパイロットの入り口で、百名前後の農家らが──私もいたんですけれども──副知事の視察団を待っていてくれました。しばらくして副知事らが来たのですが、そのまま通っていって、また帰りには、梅を見た感想でも聞かせてくれるだろうと待っていたんですが、これも車ですっと行き過ぎていってしまう、こういう状況がございました。これでは、本当に気持ちを逆なでに行くようなものじゃないかと思いました。
 知事、今回の視察では被害農家の声を直接十分に聞かれるよう求めますが、いかがでしょうか。ご答弁をお願いいたします。
 次に、知事は関西電力との対話を十分にしてほしいということです。特に、梅農家は御坊火電の排煙に大きな疑問を持っていることはご承知のとおりであります。田辺市はこのほど、我が党の芝峰市会議員の質問に対し、関西電力に御坊火電のばいじん提供を要望するということを議会で答弁いたしました。現在梅農家らが研究を委託している科学者の中にも、ばいじんの成分分析のため現物を提供してほしいとの声があります。科学者らが本年四月二十五日に関西電力へ直接出向いてそのばいじんの提供を要望しましたが、聞き入れられていません。ぜひ県から要望してほしいと思いますが、いかがでしょうか。昨年の議会に続いてのこの質問でありますが、ぜひ誠意のある答弁をお願いいたします。
 最後に、和歌山工科大学について伺います。
 私は本年二月議会で、和歌山工科大学計画が県民の十分な理解を得られていない点、そして何より県財政への大きな負担になるという点などを挙げて、この計画を一たん凍結するよう求めました。そういう立場から、今回の知事の決断に敬意を表したいと思います。
 知事もこの決断には勇気が必要だったでしょうが、私も、凍結を表明したときには大きな選択を迫られました。何より、私の自宅は計画地から十分ほどの近くで、県内でも最も大きな関心と期待を持って見ていた地域だからであります。しかし、私は先ほど述べた理由から、今やるべき性格の事業ではないと判断をしたわけです。
 とは言うものの、その後は今年度予算が賛成多数で議会で可決され、大学開設への準備が進められ、地元の期待も、学生用のアパートを経営したいなど、かなり具体的に高まっておりました。私も地元の方に、議会では凍結ということははっきり言ったけれども、県がやると決めた以上、悪いことをするんじゃないんだからしっかり協力をいたしますよと、こう言っていましたが、そういうやさきの知事の決断ですから、地元の失望感というのは本当に大きいものがあります。
 そこで提案したいのは、旧白浜空港跡地の有効利用という点も含めて、やはり地元住民の意見を取り入れながら、白浜が文化や学術の発信拠点となれるような新たな施策を考えていっていただきたいということであります。何も、箱物をつくることばかりが地域振興ではありません。それは昨年の熊野体験博がいい例だったと思います。
 この点について、現時点での知事のお考えを聞かせていただきたいと思います。
 これで、第一回目の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○副議長(尾崎要二君) ただいまの高田由一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず、市町村合併についての三点のご質問にお答えをいたします。
 市町村の合併は、市町村並びに住民の方々が自主的に判断されることが基本であると考えております。しかし、市町村を取り巻く情勢が大きく変化している中で、本県においても市町村の合併を推進していく必要があるものと考えております。このため、市町村並びに住民の方々が議論をされる際の参考となるように、現在、和歌山県広域行政懇話会を設け、これらのご意見をいただきながら、県として市町村の合併の推進についての要綱の策定を進めているところでございます。
 市町村の合併は、全国の事例を見ましても、検討・協議の段階から実現までには相当長い期間を要しているのが実情であり、現行の市町村合併特例法の法期限が平成十七年三月三十一日までであることを勘案しますと、できるだけ早期に要綱を策定することが重要であると考えております。
 次に、お尋ねの交付税の算定については、これまでの段階補正の見直しによる各年度の影響額を試算しますと、人口四千人未満の九団体で約一億円程度となっておりますが、これは地方分権推進計画に基づく算定方法の簡素化の一環として行われているものであり、市町村の合併を促進するためのものではないと承知しております。
 次に、財政運営についてのうち、経常的経費の見直しについてでございます。
 県単独の扶助費につきましては、従来からマイナスシーリングの対象外としております。また、介護保険法に基づく県負担分等の義務的な経費につきましては、シーリングの対象から除外しております。
 次に、見直し対象となる事業の選定基準についてですが、歳出の削減に関しては聖域を設けずに、県が行っているすべての事業について、いわば行政の棚卸しとも言うべき見直しを行うこととしており、事業の必要性や効果、緊急性といった観点から検討を行ってまいりたいと考えております。
 次に、大規模プロジェクトについてお答えを申し上げます。
 財政運営プログラムでは、公共事業を除いておおむね五億円以上の事業を大規模プロジェクトとして想定しておりますが、これらのプロジェクトにつきましては、事務当局に原点に立ち返っての検討を指示しているところでございます。
 なお、太平洋国土軸構想の一翼を担う紀淡連絡道路につきましては、経済調査やルート、構造等の技術検討がなされている段階であり、平成十五年度までの財政健全化期間中における事業費は運営プログラムには含まれておりません。
 次に、梅の生育不良について農家との十分な対話をということでございます。
 梅の生育不良の問題につきましては、県政の最重要課題の一つであると認識いたしております。今回の現地調査につきましては、まず私自身、一日も早く産地に出向きたいという思いから、来る十月十四日の日程になったものでございます。
 また、農林水産省幹部に現地調査をお願いしたところ、臨時国会の会期中にもかかわらず、農産園芸局長にもご視察いただくこととなっております。
 今後とも、この問題の早期解決を図るため、できるだけ現地に赴き、多くの方々と対話し、理解を深めてまいりたいと考えております。
 最後に、和歌山工科大学でございます。
 和歌山工科大学につきましては、事業執行を凍結することとしたものであることから、旧南紀白浜空港跡地につきましては、民間活力の導入も含め、今後幅広く検討してまいりたいと考えております。
○副議長(尾崎要二君) 農林水産部長島本隆生君。
  〔島本隆生君、登壇〕
○農林水産部長(島本隆生君) 財政運営に関連します有田郡の広域農道についてお答えをいたします。
 有田川広域農道は、金屋町有原の国道四百二十四号から吉備町を経由し、有田市初島の国道四十二号を結ぶ延長二十五・一キロメートル、幅員七メートルの農道で、有田ミカンの主産地である当地域の基幹農道として、地元からの要望により平成九年四月に県が事業主体となり、金屋町有原から吉備町田角までの十三キロメートルの区間が総事業費百三十一億五千九百万円で一期地区として採択されています。
 本農道の実施により、国道四十二号のバイパスとして大阪、和歌山への農産物の出荷路線が確保され、軽四輪から大型車への車種転換により輸送費や人件費のコストが軽減されるとともに、荷痛み防止効果等が見込まれています。
 本事業は、土地改良法に基づき地元農家の方々の同意を得て手続を行い、測量設計の後、地元説明を行ったところ、排水対策を初め各種条件等の調整が図られていないため、現時点で工事の着手には至っておりません。今後、路線の変更や費用対効果の再評価をするなど、広い視点から検討を行い、関係市町村及び地元と協議をしてまいりたいと考えてございます。
 次に、鳥獣害対策についてでございます。
 中山間地域の農林業にとりまして、その被害は深刻な問題と受けとめております。このため、これまで被害の多い地域において、国庫補助事業の導入により電気さく等を設置してまいりました。また、簡単な防護さく等につきましては一部県単独事業で対応するなど、農林産物の被害の回避に努めてきたところでございます。
 今後、市町村との連携をより一層緊密にし、鳥獣の被害防止モデル事業等、国の補助事業を活用するとともに、さらに有効な支援方策を研究してまいりたいと考えてございます。
 次に、これに関連した試験研究でございますが、被害防止技術の開発を行うためには、鳥獣の生態系の研究から対策技術の確立まで一貫した総合的な研究が必要と考えてございます。このことから、国に対しまして根本的な被害防止対策の研究を要望するとともに、県として有効な資材の検討等を進めているところでございます。
 今後とも、国との連携を図るとともに、普及センター、市町村等、関係者が一体となって、試験研究成果や全国の優良事例を現地で実証しながら効率的な防止対策を推進してまいりたいと考えてございます。
 次に、梅の生育不良に関連しましての御坊火電のばいじんの提供についてでございます。
 ばいじんの成分分析につきましては、JA紀南と関西電力で組織する梅生育障害対策研究会において、御坊火電の煙道からサンプリングした試料を用いて平成九年から三回実施されてございます。分析に当たっては、専門機関である関西環境管理技術センターと関西総合環境センターにおいて同時に比較分析され、その結果につきましては、梅産地の降下ばいじんと煙道中のサンプリング試料の成分構成比は異なっていたとして、梅生育障害対策研究会で公表されてございます。
 一方、県うめ対策研究会の専門家においても、その分析については信頼できるものとされておりますが、大気環境の影響を懸念する声もありますことから、議員お話しの、比較を前提とする成分分析のための試料提供の件につきましては事業者に伝えてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(尾崎要二君) 福祉保健部長白井保世君。
  〔白井保世君、登壇〕
○福祉保健部長(白井保世君) 市町村立病院への支援についてでございますが、市町村立病院をめぐる医療環境は厳しい状況にございます。県といたしましては、経営が悪化している病院に対しましては、市町村振興資金貸付金による長期の低利融資を行い、その経営健全化を支援しているところでございます。また、救急医療や僻地医療対策等の事業に補助を行っているところでございますが、国に対して財政措置の充実強化等について引き続き要望を行ってまいりたいと考えてございます。
 次に、五稜病院に結核病床をについてでございますが、和歌山県の結核は厳しい状況にあることから、重点的に取り組むべき課題の一つとして考えてございます。
 ご質問の精神結核合併症病床整備については、精神疾患患者に対する医療の確保の観点から、県立五稜病院も視野に入れて検討してまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○副議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二十六番高田由一君。
○高田由一君 答弁ありがとうございました。
 まず、市町村合併についてです。
 知事は、小さい人口規模の町村の交付税が減っているのは算定方法の簡素化によるものだ、合併を促進するためのものじゃないんだと言われたんですが、現に人口規模が小さいところほど地方交付税が減ってしまうようなやり方をすれば、その意図がどうであれ、もうこれは町村にとったら国から見放されてきたんやというふうな考えを持つんじゃないかと思うんです。その一方で合併を考えるところにはいろんな財政支援があるというふうなことになれば、これは私はまさに「あめとむち」によるやり方じゃないかと思うんです。
 例えば、県内で人口が一千人以下の村は北山村と花園村ですが、この二つの村では、例えば平成十年度、どちらも一千七百万円ぐらいずつ交付税が削られているんです。一千七百万円なら大したことないじゃないかという議論もあるかもしれないですけれども、県財政の規模のレベルで比較してみたらどうなるかというと、県財政の規模はこの二つの村の財政規模の三百五十倍ぐらいですから、単純に計算して、両方の村で削られた交付金を県財政の規模に換算すると六十億円前後の交付金が削られた、そういう影響と同じインパクトがあるということなんです。
 県の財政運営プログラムを見ましたら、職員や先生を減らして約二十億円削減・節約、それに加えて経常経費の見直しで四十億円でしたか、そういうのを合わせて六十億円になるんですけれども、県でもそんなことをやっているときに、仮にこの一年間の交付税が六十億円削られたら大変痛いですよね。それと同じことが小さな村に、額の上では小さいんだけれども、やられている。
 さらに言うなら、小さな自治体ほど財政に占める交付税の比率は高いわけですよ。県で大体三五%前後、小さな村だったら六〇%を超えると思うんです。ですから、これは大変苦しいと思うんです。
 私は、こうした合併の誘導の仕方は、意図的であれどうであれ、大いに問題ありだということを指摘しておきたいと思います。これについては答弁は結構です。
 財政運営についてです。
 村岡議員からも福祉医療などの削減はないのかとただしたところでありますけれども、私たちが心配しているのは、実は身近に大阪府の例を見ているからなんです。大阪府では、横山前府政がつくった九九年から二〇〇八年の十年間を視野に入れた財政再建プログラム──よく似ていますけれども──というのが基礎になって、その中では、例えば府立高校の授業料が、それまでは和歌山県と同じレベルの十万八千円だったと思うんですが、それが一気に十四万四千円に年間三万六千円もの値上げをしているわけなんですよ。知事もこれは副知事として大阪で大いにかかわりを持ってこられたと思いますけれども、選挙で福祉の心を訴えておられたと思うんです。県民の暮らしや福祉にかかわるこの事業については、ぜひより充実するような方向で考えていただきたい。このことは知事に要望をさせていただきたいと思います。
 それから、五稜病院の結核病床です。
 これは部長から視野に入れて検討ということを答弁いただきましたので、ひとつよろしくお願いいたします。
 ただ、一言苦言を言わせていただくなら、なぜもっと早くからできなかったのか、取り組み計画が入れられなかったのかという点です。平成十年度につくった第三次の県の保健医療計画があるんですが、もう既に危険を指摘しているんですね。「今後、高齢者の増加とともに患者が増加することが危惧され、また合併症、多剤耐性菌等治療困難な事例の増加が予想される」と、県自身の文章でこれは警告を発しているわけなんです。そういう予想を出しておきながら、今建てかえ中の県立病院でそんな対策の計画がなかったというのはいただけないと思うんです。いざ実際に重い合併症の患者が出たら、野上の厚生病院へ行ったり、奈良に国立の松籟荘というのがあるんですが、そこへ送ったりという対応でしょう。やっぱりこれは、県の責任を果たしていると言えないと思うんです。
 例えば、結核病棟を持っていて、内科とか精神科とか総合的な診療ができる病院の一つに今挙げた野上の厚生病院があるわけなんですけれども、ここは二年ほど前に建てかえて、現在新しいんです。そのときに、県の方から結核病棟の存続について、何とか結核病棟をやってくれと大変熱心に頼み込まれたそうなんですよ。そういう要請を受けて実際やったところが、その結核病床の整備には何の援助もしてくれなかったと、関係者が大変怒っておりました。
 経営の厳しい市町村立の病院に、口は出すけど金は出さない。そんなことをやっておいて、自分とこの県立病院建てかえのときにはやらない、こんな無責任なことはないと思うんです。こんな県政の姿勢では信頼されません。これはぜひ実現に──いい答弁だったので、ぜひ取り組んでいただきたいと考えております。よろしくお願いします。
 梅枯れの問題についてです。
 できるだけ現地に赴き多くの方々と対話すると、知事から答弁をいただきました。ありがたいと思います。
 きのう、実は田辺の農家の方に知事の視察日程を見せてもらいました。田辺市秋津川の現地で農家の代表が発言することになっているんですが、たった三分以内しか物をしゃべらしてくれんと。市長が三分、農協の組合長が三分、農家の代表が三分、こういう時間設定なんです。これ、知事もうご存じですか。──まだご存じじゃない。私は、これで十分な農家との話し合いとは言えないと思うんです。
 残念ながら、多くの梅農家が県行政のこれまでの取り組み──やっぱりまだ溝があるんです。信頼されていない。その理由を述べる時間がないので、これはぜひ議事録を見ていただきたいと思うんですが、知事が直接畑に足を運んでいただけるんですから、やっぱり期待の気持ちも本当に大きいものがあるんです。どうか、もっと時間をとった話し合いをしていただきたい。答弁の中でそういう趣旨のお答えもいただきましたので、ぜひこれは機会を見つけてよろしくお願いしたいと思います。
 それから、御坊火電のばいじんの提供については、ようやく関西電力に伝えていただけると部長から答弁をいただきました。昨年の議会でもばいじんの提供を私も求めましたが、再質問を何度してもばいじんの直接暴露は科学的な評価はできないという木で鼻をくくったようなお答えでした。本当にいただけないと思っていたんですが、今回、ばいじんの提供を申し出るというふうに答弁をしたわけですから、一歩前進したと思うんですけれども、これは環境生活部の方とも密接な問題がありますから、ぜひ協力しながらこれは言っていただいて、今後を見守りたいと考えています。よろしくお願いいたします。
 あと一点。これは質問というか、私、聞き漏らしましたので、答弁をお願いします。
 先ほどの有田の広域農道についてです。これは再評価をしていただけるというふうなことでしたか。そこの点、もう一回だけ答弁を聞かせてください。よろしくお願いします。
○副議長(尾崎要二君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 農林水産部長島本隆生君。
  〔島本隆生君、登壇〕
○農林水産部長(島本隆生君) 高田議員の再質問にお答えをいたします。
 有田郡の広域農道の関係でございますが、先ほどお答えいたしましたとおり、再評価を行い、現時点でその事業が適正であるかどうかということをも含めて検討してまいりたいと思います。
○副議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○副議長(尾崎要二君) 以上で、高田由一君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時二十六分散会

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