平成12年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(飯田敬文議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時二分開議
○議長(阪部菊雄君) これより本日の会議を開きます。
  【日程第一 議案第百四十号から議案第百六十一号まで、並びに報第九号】
  【日程第二 一般質問】
○議長(阪部菊雄君) 日程第一、議案第百四十号から議案第百六十一号まで、並びに知事専決処分報告報第九号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 四十四番飯田敬文君。
  〔飯田敬文君、登壇〕(拍手)
○飯田敬文君 おはようございます。
 お許しをいただきましたので、質問をさせていただきたいと思います。
 質問の前に、木村新知事におかれましては、県民のあらゆる階層の圧倒的支持のもとに初めてのご当選を果たされたこと、会派を代表いたしまして、まず心からお祝いを申し上げたいと思います。本当におめでとうございます。
 二十一世紀まであと三カ月を切り、いよいよ新世紀の幕あけが迫りました。激動する内外情勢の中で、和歌山県の将来のありよう、財政赤字と高齢化社会に対する福祉の増大、官と民の役割、権利と義務、公と私、民主主義とエゴ、山積する諸問題に対し、木村知事、あなたにかける県民の期待は大なるものがあります。閉塞する社会の打破に強力なリーダーシップを発揮されることを、強くお願いするものであります。
 それでは、通告に従いまして、質問に入らせていただきます。
 東西冷戦の終結から始まったと見られる世界的不況は、我が日本にとっても大きな危機的状況を提示いたしました。中でも、不況による財政不足は戦後最大の混乱を来しております。我が国の財政赤字は、国内総生産が一九九九年に入り四半期ベースでは二期連続してプラス成長を続けているにもかかわらず、財政は国と地方自治体の長期債務が六百四十五兆円余りに到達しており、わずか十年前に財政健全化の推進によって赤字国債発行ゼロを実現して財政の優等生と言われた日本の現状を考えると、驚くべき結果となっております。
 そのうち、国のみの債務である国債と民間金融機関からの借入金、一時的な資金繰りのため発行する政府短期証券の合計残高は、本年六月末で五百二兆三千六百八十七億円となり、五百兆円を突破しておるわけであります。世界じゅうの開発途上国の債務を全部合わせても二百十兆円程度とされており、我が国の財政が危機的状況にあることを物語っております。しかも、ここ数年、不況対策として公共事業を増大し、その財源として大量の国債を発行しておりますが、二〇〇〇年度までの三年間の国債発行額は、新規発行分だけでも毎年三十兆円以上、償還分の借りかえを含めると年間七十兆円から八十兆円にも達しております。
 また、アメリカの財政格付会社の報告では、日本の国債をワーストスリーに格付し、ランクを下げてきております。このことは、国債の信用力低下と相まって、さらに国債を増発すれば国債の利回りが上昇し、長期金利全般を押し上げることとなります。金利が上昇すれば、設備投資意欲の低下や多額の負債を抱える企業の業績悪化で、さらに景気に悪影響を与えることとなります。
 現在、国はこの克服のため、財政再建を旗印として、地方分権の推進に始まり、省庁再編などさまざまな取り組みを展開しておりますが、時代の急激な変化についていけない現状であります。また、本年二月議会において申し上げましたが、財政赤字問題の本質は将来世代への先送りであり、これ以上の子孫へのツケは断じて認めるわけにはまいりません。私たちを含め、政治に携わる者は、この事実を真摯に受けとめるとともに、あらゆる手だてを追求し、この回復に努めなければなりません。
 一方、我が和歌山県の現状も、長引く不況の中、県財政の悪化を招いております。民間企業は、リストラに象徴される自主再建を推し進め、合理化を断行しております。このため失業者が増加し、大都市に見られるいわゆるホームレスが和歌山県下においても近年急激に増加しておるところであります。特に人口の急増する那賀郡は、交通事故の急増もさることながら、犯罪件数が以前にも増してふえている現状であります。安全で住みよい地域をつくる上で、失業対策や働く場の創設に努力しなければなりません。
 木村知事におかれましては、知事就任あいさつの中で、山積する諸問題に果敢に対応し、二十一世紀の和歌山づくりに全身全霊を傾けて取り組まれると述べられました。停滞は許されません。知事には、和歌山県の将来像に対する明確なビジョンを早急に提示し、そしてそれを強力に推進していく具体的な方策を掲げられんことを望むものであります。
 さて、我が和歌山県の現状は、さきにも申し上げたとおり、国と同様、戦後最大の危機的状況にあることは言うまでもないことであります。和歌山県の平成十一年度の県決算報告では、普通会計で見ていきますと、実力ベースの収支は八十六億二千五百万円の赤字となっており、県債残高つまり借金は六千五百四十六億九千四百万円、県民一人当たり五十九万八千円の借金を抱え、一年間の県予算に迫る膨大な額となっております。このことから見てみますと、県発注の公共事業の見直しは、県財政の健全化を図る上で、英断をもって推進するべきであると考えます。
 先般、新田議員も質問されておりましたけれども、公共事業の再検討をするための諮問機関・県公共事業再評価委員会が十九件の事業に対して再評価を知事にあて答申されたとお聞きしておりますが、その中身に対し、さまざまなしがらみを断ち切り、知事としてのリーダーシップを発揮し、所信表明で述べられた和歌山の新しい時代の扉を開くことができますよう期待してまいりたいと思います。
 さきの質問でも再三訴えてまいりました、和歌山県の財政支出は、まずむだを省くところから歳出を抑え、公共事業の見直しを絡め、真に和歌山県の実態を踏まえた発展に寄与する事業から重点的に行うべきであり、急激な変化を現実的にとらえた財政支出が重要であります。
 例えば、きのうから問題になっております和歌山工科大学の設置問題や雑賀崎埋め立て問題など、財政に余裕のない現実を直視するならば、私は凍結を含めた検討が必要とさきの議会質問でも提起をしてきたわけでありますが、きのう知事より工科大学については凍結をする方針をお聞きしたわけであります。
 和歌山工科大学については、現状の厳しい状況から見直し、凍結は賢明な判断であると私は評価をいたしたいと思いますが、さきの六月県議会で承認された案件であるわけであり、手続上の問題としてまず県議会に諮って判断するべきである。そのことが一つと、同時に、決まったことで今、地元地域ではいろんな形での動きがあるわけであります。そういう意味で、当該地域の今後の活性化とあわせて議論するべきであると、このように思うわけであります。
 また、雑賀崎埋め立て問題については、現在、和歌山下津港を取り巻く現況は、韓国釜山港、マカオ港、シンガポール港、あるいはシドニーにおいても、コンテナ一本について百ドル値下げするという事態が出てきておるわけであります。このままではこうした国際競争にはとても勝ち抜けないという極めて厳しい状況であるわけであり、こうしたことを十分踏まえて対処していただきたいと思うわけであります。
 また、和歌山市から出ておる市立大学構想も、このような厳しい状況の中で同じような発想で対応していただきたいと思うわけであります。
 国は、平成十三年度一月より省庁再編を実施し、行政主導から政治主導への返還と行政のスリム化による歳出の削減を図ってきております。このようなとき、知事は所信表明の中で、歳出に関しては聖域を設けずゼロからの出発の意気込みで取り組むとされております。また、開かれた県庁を目指し、目的達成型の県行政システムを構築すると述べておられますことは、私の目指すところと一致しておるところではありますけれども、我が和歌山県においても、県庁の機構改革、例えば政策推進室と企画室が両立てであるわけでありまして、政策立案をどちらがどのような責任を持って行っているのか、大変見えにくい構造となっており、県庁全体の役割をもっとわかりやすくするとともに、統合再編を考慮した機構改革を断行すべきであると思います。また、過去の質問でも申し上げましたとおり、審議委員の選出の方法、各種審議会のあり方や知事の諮問機関の整理統合を含め、県庁のスリム化を図らなければなりません。
 同時に、行政とともに議会の改革が改めて重要となっております。国及び市町村議会では、このような極めて厳しい財政状況の中で、歳出や市町村合併をにらみ、地域の実情に合った議員定数の削減を現実に行ってきておるわけであります。我が和歌山県議会もみずから襟を正し、議員定数の削減や権威ある議会のあり方など、改革に強い姿勢で臨むべきであります。
 今、県民は失業、倒産、リストラなど、血のにじむような厳しい生活を余儀なくされ、そのしわ寄せを一身に受けて苦しんでいるとき、議会はその苦しみをみずからのものとして、県民の幸せの確立のために身を賭して改革の先頭に立たなければなりません。そのことなしに行政と議会は車の両輪たり得ません。
 さらに、本年二月議会においてもご質問させていただいたとおり、知事所信表明の中でも申されておるところの財源確保は景気浮揚による税収の確保が一番ではありますが、今、急激な景気浮揚は望めない現実であるならば、例えば外形標準課税の導入、あるいは新しい税の導入を含む新しい手だてを立てるべきであります。
 さて、今まで述べてまいりましたのは、多くの課題を抱える和歌山県の未来のあり方、進むべき方向に関してでありますが、その具体的指針となる木村県政の和歌山県長期計画、いわゆる木村ビジョンの策定が何よりも急がれると思うわけであります。今までの和歌山県長期計画の中身は、あらゆる計画の総花的羅列の感がぬぐえず、全く具体性にも欠けたものとなっております。
 私は、過去の議会質問において、三年を基本とした中期実施計画の策定と進捗状況の報告をするべきだと訴えた経緯がございますが、新知事におかれましては、所信表明の県政の目標の中で施策の重点項目を積極的に推進することを約束され、さらに、地方分権の視点から、県内地域のそれぞれの特性を考慮して一律に処することはできないと述べられております。
 であるならば、長期計画の内容を再検討するとともに、目的達成型行政を全面に押し出した内容の長期計画と、新たに具体的な財政に裏づけされた財政計画を盛り込んだ三年を基本とする中期実施計画を、まず木村知事主導により策定されるべきであります。今議会より六カ月、来年度の予算議会までに知事の意見を十分反映した具体的な長期計画、ビジョンを提示していただきたいと思うわけであります。財政状況の悪化の中での重要事業の選定にかかわる和歌山県長期計画の策定と財政計画を具体的に盛り込んだ中期計画の策定について、木村知事にお聞きいたしたいと思います。
 次に、紀泉百万都市構想についてであります。
 私は、議会初登壇以来一貫して質問をさせていただいてきた関西国際空港を中心とする大阪府泉南地域と和歌山県紀北地域の連携、すなわち紀泉百万都市構想は、前西口知事によって紀泉サミット会議や紀泉フォーラムを開催していただいており、多少の進展が見られたものの、いまだ具体的なものとなっていないように思います。
 関西国際空港二期工事完成は、和歌山県の現状の域を超えるまたとないチャンスであると認識し、また、木村知事が大阪の副知事もされておったこととの関係から言えば、今だからこそ推進できることと願っております。
 木村知事は、新しい変化の時代、大競争時代には和歌山という枠にとらわれない県境を越えた大きな視野が必要とした上で、これからの県政は大阪府との関係が重要であり、その連携強化に力を尽くすと言われております。この意味でも、紀泉百万都市構想は県政の重点政策であり、和歌山県勢の浮揚のかぎと位置づけられ、ひいては和歌山県紀南地域の活性にもつながることと、具体的な計画のもと強力に推進されるよう要望するものであります。
 中でも道路整備は、企業誘致や和歌山と大阪の人と人との交流、関西国際空港へのアクセス道路として重要な位置を占めております。現在進行中の府県間道路泉佐野岩出線は空港に直結した道路であり、重点的に予算措置を講じられ、早期の全面供用が目に見える形で実現されるよう望みたいと思います。
 時代の変化に対応し、外に向かって進む県政を目指す意味でも、特に道路整備は重要であります。県内高速道路の整備は流通道路として欠かせないものであり、京奈和自動車道は、現在紀北東道路の建設が着々と行われておりますが、続く紀北東道路、紀北西道路がなお見えてきておらない現状であります。世界に開かれた県政を目指す上で、関西空港の二期工事完成までに完成供用されなければ、関西国際空港の開港時と同様の現象が起こり、和歌山の発展は望めないこととなります。これにあわせて、都市機能を持った基盤整備として紀の川流域下水道の建設や大型ごみ処理施設の建設を、将来の市町村合併の基礎となる広域での事業であることから、地方分権と絡め早期に着工するべきであります。
 私は、紀泉百万都市構想こそが県勢浮揚のかぎであると訴えてきたわけでありますが、例えば中心をどこにするか、具体的な全体の計画、言うならば紀泉百万都市構想は何なのかという青写真ができておらず、その姿がいまだイメージされないと思うわけであります。そういう意味で、県庁内においてこれを推進する専門的な部署、例えば紀泉百万都市推進局なりの組織づくりをひとつ行っていただきたい。と同時に、大阪府と和歌山県の職員の人事交流を計画してはどうかと考えるわけであります。未来の明るく安全な和歌山県の創造は、数多くある諸課題に果敢に、また積極的に対応し、中止すべきことと先送りするものとを明確に分け、今重要な施策を不退転の決意を持ってなし遂げることが重要であると思います。
 紀泉百万都市構想の実現に向けての知事の考え方と今後の青写真や推進局の設置について、お伺いをいたしたいと思います。
 次に、人権問題についてお伺いをしたいと思います。
 木村知事の就任ごあいさつは、まさに新たな世紀に向かう和歌山県をどうつくるかということが基本にあったわけでありますが、その基本の中に私は人権という問題があったと感じております。人が人として生きるための基本的人権を尊重し──これは、二十一世紀の社会ということについて私自身も全く同感であります。特に国際化と人権は、世界的で基本的な潮流として、二十一世紀をまさに人権が確立された時代としなければなりません。二十世紀は、大変な経済発展の中で、人類にとって戦争と差別抑圧の世紀であったというように感じるわけでありますが、来るべき二十一世紀は平和と人権の確立された自然と共生する世紀にしなければなりません。
 今、国においても在日韓国・朝鮮人の皆さんを初めとする永住外国人に対する参政権のことが論議をされておりますが、参政権のみならず、国籍条項など、いろんな問題を含みながら、県内の定住外国人や外国人労働者が人間として生きる権利が保障されなければ、本当の人権が確立されたとは言いがたいのであります。このことは、言うまでもなく、さまざまな状況を直視するとともに、しっかり総括し、具体的な課題を認識した上で、差別のない明るい和歌山県の創設に全力で取り組むべきであります。
 同和問題を初めとする人権にかかわって、木村知事のご所見をお伺いいたします。
 さて、和歌山県でもこれまで、人権文化の創造を基本に、知事を先頭に「人権教育のための国連十年」和歌山県推進本部を設置し、行動計画が策定され、具体的な取り組みがなされております。また、同和行政におきましても和歌山県同和行政総合推進プランが策定され、同和地区の今日までの成果と課題を踏まえ、和歌山県の重要施策として進められているところであります。
 しかし、こうした取り組みとは別に、依然として厳しい実態や困難な状況が出てきております。例えば、差別事件や人権侵害にかかわって、これまで差別事件などが発生したとき、同和委員会や行政、運動団体や県民がともに、あるいは連携しながら取り組んでまいりました。しかし、昨今、和歌山市や岩出町で続発した差別落書きや橋本市での同一人物が二十年余りも継続して差別事件を起こしておる実態、また近年、IT社会と言われますけれども、インターネットの普及によるこれを使用しての差別事件、人権侵害の事実が問題となっておるわけであります。特に、さきの和歌山県知事選挙において、電子掲示板に極めて悪質な内容の差別落書きや人権侵害事象が継続して行われていることが明らかにされております。こうしたことは、これまでの差別事件や人権侵害への対応では対処できない、そういう深刻な事態を引き起こしておるわけであります。
 先ほども若干触れましたが、人権教育にかかわって最も大事なことは地域での人権確立の具体的な取り組みが十分できるのかということにあるわけでありまして、市町村あるいは地域での体制の不備が指摘をされておるわけであります。また、啓発を進める上で副読本や資料が必要とされ、県において作業が進められると聞いておりますが、これも見えてきておらないわけであります。さらに、県民の教育啓発の拠点として人権啓発センターの設置が求められておりますが、二十一世紀に向けての人権擁護体制づくりのための諸施策がいまだ見えてきておらないのが現状であります。
 言うまでもなく、国連において人権教育の十年が採択されたのは一九九四年、最終年度が二〇〇四年であるわけであり、採択されてから六年が経過しようとしている今日も取り組みの体制すら十分にできていないのは、疑問以上に不信を感じておるわけであります。担当者はこのことを踏まえて精力的に取り組んでおられますが、その原因はまた別のところにあるように思われてなりません。
 現在、福祉保健部総務課が人権を担当されておりますが、これは当初、当分の間ということであり、近年中に全庁的な体制で取り組みをされると、推進本部発足の際に説明を受けたと解釈しておりました。人権の問題は県行政として総合的に推進すべき課題であり、また、それぞれの部局にはそれぞれの取り組むべき課題が存在するわけであることから、以前にも申し上げましたとおり、担当する部局は、全庁的な意味合いもあり総務部または企画部が担当され、その中に具体的に推進する、例えば人権教育推進室を設置するべきではないかと思うわけであります。人権啓発センターの設置と庁内の体制の確立について、お伺いをいたしたいと思います。
 最後に、同和問題についてであります。
 さきにも触れましたが、和歌山県同和行政総合推進プランをもとにさまざまな取り組みが進められております。状況的には、法期限にかかわっての事業の見直し、市町村での進捗状況や意識の格差などの問題があります。これまでの三十年を超える事業の推進によって、物理的事業を中心に一定の成果を上げてこられたことに敬意を表するところではありますが、一方で、生活や経済対策のおくれから来る問題や、教育の実態が提起する課題というソフト面での課題と同時に、ハード面でも場当たり的な事業進行や最近の生活や社会の変化に対応し切れない状況、さらに、公営住宅などの建てかえや進められてきた事業についての市町村や地域ごとの格差の問題があります。また、公営住宅法の改正に伴う混乱や少子高齢化の問題など、近年、さらに複雑で深刻な問題が提起されてきておるわけであります。
 とりわけ、これまで進めてきた物的事業が、実は高齢者や障害者にとって住みよい町という視点で検証すると、バリアフリーにほど遠い状況にもあるわけであります。こうした同和行政に関する状況を踏まえ、一般対策についても、同和地区にあるさまざまな課題を同和行政の課題としてとらえ、積極的な推進を図られるよう改めて強く熱望するものであります。同和行政にかかわる状況を踏まえた知事のご所見をお伺いいたします。
 最後に、同和問題を初め、人権につきましては、今国会で法制定の動きが活発化し、差別事件による被害者の救済や規制についての審議会の中間報告が出されようとしております。いずれにいたしましても、総論的、抽象的に流されるのではなく、それぞれの具体的な課題を通じて、同和問題を初めとするさまざまな人権をとらえていくことが大事であります。さらに、当事者の思いというものに思いをはせていただきまして、行政に携わる者や私たち議会にかかわる者が極めて真摯な態度で臨むことが必要であると思います。
 このことを申し上げ、新しい知事が新しい時代にふさわしい態度で何事にも臨まれることを期待して、私の一回目の質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(阪部菊雄君) ただいまの飯田敬文君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事木村良樹君。
  〔木村良樹君、登壇〕
○知事(木村良樹君) まず初めに、飯田議員から賜りましたご祝辞に対して心より御礼を申し上げます。
 さて、ご質問にありました二十一世紀の新和歌山県長期計画の策定と中期実施計画の策定、点検報告についてでございます。
 平成十年二月に策定いたしました和歌山県長期総合計画「わかやま二十一世紀計画」につきましては、その策定の過程において県内各界各層のご意見をいただきながら作成したものでございますが、その後の社会経済情勢の変化もあり、例えば、改めて基本的な構想である長期ビジョン等を策定するかどうかなども含め、今後検討してまいりたいと考えております。
 また、総合計画の実効性を確保するための中期実施計画につきましては、当然のことながら、財政見通し等との整合性を図り、財源の裏づけのある計画を策定したいと考えております。
 なお、実施計画策定後は進行管理に努め、その点検内容は速やかに県議会にご報告するとともに、県民の方々に公表していくというふうに考えております。
 次に、紀泉百万都市構想についてのご質問でございます。
 紀泉百万都市構想は、本県紀北地域と大阪府の南部地域を一体的な地域としてとらえ、地域連携を基本に整備を進めていこうというものでございます。構想を実現していくためには、ご提言のように、府県間道路の整備を初め、種々の社会基盤整備も必要であり、県といたしましては、平成十一年三月策定の第一次中期実施計画に主要プロジェクトとして位置づけ、その推進を図っているところでございます。
 今後は、阪和開発連絡協議会の場などに加え、紀泉地域の一体性をより強めるため、既に一部市町間で起こっている交流がさらに広域的なものとなり、府県間交流がより促進され、外に向け開かれた和歌山が実現するよう、先ほどのご質問にもありましたが、私が先頭に立ってこの問題について意欲的に対応してまいりたい、このように考えております。
 なお、専門の局といいますか、推進局の設置でございますけれども、まずいろいろな施策を進めてこの地域の一体性の高まりを促進していくということが肝要かと思いますので、私自身、事業が着実に進捗するよう進行管理に鋭意努めてまいりたいと考えております。
 次に、人権問題についてのご質問でございます。
 同和問題を初めとする人権問題の認識でございますけれども、二十一世紀は人権の世紀と言われている中、人が人として生きるための基本的人権を尊重し、豊かで明るい社会の実現が求められているところでございます。
 県といたしましても、平成十年度に策定した「人権教育のための国連十年」和歌山県行動計画に基づき、人権教育啓発に全庁挙げて積極的に取り組んでいるところでございますが、今なお同和問題を初め、さまざまな人権にかかわる問題が存在していることも事実であり、また、急速な情報化の進行が新たな人権問題をもたらしているという現状もございます。今後とも、一人一人の人権が保障された差別のない社会の実現を目指して全力を挙げて取り組んでまいる所存でございます。
 なお、具体的な問題としてお話のございましたインターネット関係の問題でございますが、基本的人権を著しく侵害する内容が不特定多数の人から投稿されたことは、これまでの県の取り組みを否定するものであり、このこと自身、厳しく受けとめているところでございます。また、特定はできませんが、県の職員しか知り得ないと思われる投稿内容があり、この点についてもまことに遺憾に思っているところでございます。
 県といたしましては、これらを踏まえ全庁的に取り組んできたところであり、また、国に対しても法的規制等の有効な措置を要望してきたところでございます。引き続き、知事会議等を通じて要望してまいりたいと考えております。
 次に、人権教育啓発センターの設置と体制づくりについてでございますが、人権問題に関する情報の集積と人権教育啓発の研究などを行う、仮称でございますけれども、人権教育啓発センターの必要性につきましては十分認識しており、できるだけ早い時期に設置してまいる所存でございます。
 また、ご提言の庁内体制の確立につきましては、人権教育啓発の重要性を認識し、人権の世紀にふさわしい体制づくりに向けて努めてまいる所存でございます。
 次に、同和問題の現状認識についてでございます。
 同和問題については、その早急な解決が国及び地方公共団体の責務であり、国民的課題であるとの基本認識のもと、県と市町村が一体となり、県政の重要施策として早くから積極的に取り組んでまいりました。その結果、住環境面や生活基盤、また県民の理解認識等についても相当の成果を上げるとともに、さまざまな面で存在してきた格差についても改善されてきたと認識しております。しかしながら、差別事件の発生を初めとして、なお解決しなければならない課題が残されており、これらの課題解決に向け、和歌山県同和行政総合推進プランに基づき、諸施策を積極的に推進しております。
 次に、和歌山県同和行政総合推進プランの推進状況と同和行政の一層の推進についてでございます。
 これまでの同和行政の成果と課題を踏まえ、今後の同和問題の解決のための新たな方向性を示す指針として、平成十年一月に和歌山県同和行政総合推進プランを策定いたしました。県といたしましては同和行政を総合行政として位置づけており、そのプランの推進に当たり、全庁挙げて積極的に取り組んでいるところでございます。このプランに基づき、人が人として生きるための基本的人権を尊重した福祉と人権の町づくりを推進してまいります。
 また、今後の同和対策事業につきましても、県といたしましては、一般対策に移行する場合においても、従来にも増して基本的人権の尊重を見据え、同和問題解決の視点に立って推進をしてまいります。
 議員ご指摘の課題も踏まえ、同和問題、人権問題の解決を図ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(阪部菊雄君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十四番飯田敬文君。
○飯田敬文君 ご回答ありがとうございました。二点ばかり、要望を申し上げたいと思います。
 まず、長期計画にかかわってであります。
 二十一世紀の和歌山県の創造ということで、何よりも長期計画、木村ビジョンの策定が急務であろうと思っております。和歌山県では既に長期計画が策定されておりますが、今県民が求めておるのは、大胆な発想と二十一世紀を展望した新しい観点に基づいた新長期計画であろうと思うわけであります。これがなければ何を基準にして聖域なき改革を実現していくのかわからないわけでありまして、そのときそのときの状況や声の大きい方、あるいはしがらみの強い方の政策を選択することになってしまうわけであります。そういうことにならないように、少なくとも予算編成が行われる二月議会をめどに、現長期計画の見直しを含めた長期計画を策定し、同時に、特に大事だと思うのは、絵にかいたもちに終わらせないための財政計画に基づいた中期実施計画で、これをひとつ早急につくっていただきたいと思うわけであります。
 その策定にはさまざまな問題があろうと思いますけれども、少なくとも県議会の意見や県民の各界各層の意見を十分取り入れて対応していただくことを強く要望申し上げたいと思います。それが一点であります。
 第二点目に、人権にかかわっての問題であります。
 IT社会、インターネット等、情報技術が大変発達をしてまいりまして、時代の大きな変革を感じるわけでございますけれども、同時に大変な問題も含まれておるわけでございます。特に今般の知事選挙をめぐってのさまざまな人権侵害、口では言いあらわせない差別と偏見に満ち、凝り固まった、同和行政を真っ向から否定していく、今までの県の人権への取り組みに挑戦するような内容のものが幾つも出てきておるわけであります。この悪質な差別事象は、知事の答弁のとおり、私も県の職員の行為ではなかったかと強く思うわけでありまして、まことに怒りにたえないわけであります。だれかはわかりませんけれども、県の職員しか知り得ないような情報がインターネットに流れておるわけでございます。こういった職員の態度や体質を残して県民や市町村行政にどのような指導ができるのか、大変危惧し、不審に思うところでございます。
 差別や人権侵害は人間の存在を否定するものでございまして、最も恥ずべき犯罪であります。今は残念ながらこうした人を規制する法律も条例もないことが大きな社会問題として国会でも取り上げられておるわけでございますが、私は何よりも、一人一人の人間としての誇りと人間としての人権意識の向上、このことなくして解決はしないと思うわけでございます。県民のリーダーたる県職員の啓発あるいは研修、そして今までの同和行政のあり方も含めて、原点に返って反省していただいて、強力な体制をつくっていただきたいと思うわけでございます。
 そういった意味で、これがどうも、一部の福祉保健部や同和室やら、限定された形で取り組まれておることが大変問題ではないかなという気がいたしますので、これを全体で対応していくためには、総務部なり企画部といったところに所管を移して全庁的に取り組んでいただくという形にしなければ、あれは特定の部局の特定の人の問題だという形になるのではなかろうかと危惧をするわけでございます。二十一世紀を真の人権の世紀とするという木村知事の英断を特に期待いたしまして、質問を終わりたいと思います。
 以上です。
○議長(阪部菊雄君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で飯田敬文君の質問が終了いたしました。

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