平成12年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(木下秀男議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十三番木下秀男君。
  〔木下秀男君、登壇〕(拍手)
○木下秀男君 私で今議会の最終の一般質問になるわけでございますが、きょうは七夕さんの日でございまして、願い事が天にも届くという例えでありますけれども、その日に最終の質問をするということで、これから三点ほど申し上げますが、これが成就するように、当局の皆さん方のお取り組みを希望いたしまして、質問に入ります。
 まず環境税──これはあくまで仮称でございますが、これの制定についてであります。
 地方分権一括法が制定されまして、地方の実情に即した政策をつくり、各自治体が独自に課税できるように創設されたのが法定外目的税であります。従来、自治体が独自に課税できる制度として法定外普通税というのがありますが、この税収は一般財源に繰り入れられるものであって、法定外目的税は使い道が特定の目的に限定されて住民の理解が得られやすい利点があり、今までは国の許可制であったのが、新しく制定されて協議制となり、自治体の裁量が大きくなったところであります。この税制が創設されてから、三重県では既に環境先進県づくりを標榜して産業廃棄物処理施設設置促進条例の試案をつくり、ことし九月に制定の運びと伺ってございます。ほかに環境、公害等に関する税制を検討している自治体には、鳥取県、岡山県、山梨県、柏崎市、水俣市、駒ヶ根市等々がございます。ちなみに、一九九八年、全国の自治体の環境保全費として出費したのが四兆三千億円となってございます。この厳しい財政状況の中で財源の確保は切実な課題でございます。
 既にご承知のとおり、東京都の石原慎太郎知事が打ち出した外形標準課税構想は全国的な議論を巻き起こして政治問題化し、政府から異論が続出する中で、都議会で都税特例条例が可決成立いたしましたし、引き続き大阪府議会も府税特例条例を可決成立いたしております。この東京都と大阪府の行いに対して堺屋太一経済企画庁長官は、「私は、地方財源の拡充を常に言ってきた。そういう意味でいい前例になると思う。石原知事の提案したことを高く評価する」と、こういうお話もされてございます。
 我が国最大の産廃問題として注目されておりました香川県土庄町豊島の公害調停が、去る五月二十六日、総理府において合意成立したことはご承知のとおりであります。島民の四半世紀に及ぶ運動が実り、決着したのでありますが、三百億円の撤去費用と十七年の歳月を要すると言われております。この産廃問題は、我が国の経済発展が生み出した大量生産、大量消費、大量廃棄という負の部分が一気に噴き出し、それらを見過ごしてきた環境行政のおくれと言われております。我が和歌山県橋本市の産廃問題も、豊島にまさるとも劣らない大きな問題であります。新聞紙上には、毎日、ごみや産廃物の不法投棄の記事を見かけ、各地に処理場建設申し込みで反対運動が起こってございます。
 私の出身である日高地方でも、県外の業者が計画し、建設申し込みがあり、地域住民と近隣漁業協同組合を巻き込んで反対運動を繰り広げております。現時点での我が国の産業廃棄物の総排出量は年間約四億トンと横ばい状態だそうですが、不法投棄が全国的に広がり、九八年度の集計では千二百七十三件で、五年前の五倍にもふえている実情であります。これも、処分場不足が不法投棄を招くという悪循環になっていると思うのであります。県下の市町村長も、地域の産廃処理に苦慮されております。
 知事は、県の方針として、産業廃棄物は持ち出さず、持ち込まさずの理念のもとに、最高責任者としてこれらに取り組んでいただきたいと思うのでありますが、橋本市の産業廃棄物問題の災いを福となすような行政を期待するものであります。
 県下の首長の皆さん、もちろん地元の皆さんを含めてでありますが、せめて和歌山県下に三カ所ぐらいの公認の産廃処理施設を設置して、二十一世紀に向かっての環境行政に取り組まれるよう強く要望するものでございまして、この計画に用いるための財源として冒頭に申し上げた環境税──仮称でございますが、これの制定を提言するものであります。知事のご所見をお伺いいたします。
 続いて、うめ対策研究会の報告書とそれに伴う今後の課題でございます。
 生育不良の件につきましては、その原因究明と対策について、本議場や常任委員会等で何回も議論され、生産農家の皆さんも、一日も早い解明を待ち望んでいたのであります。和歌山県は、平成九年二月、和歌山県うめ対策研究会を設置し、三カ年の歳月をかけて現地調査を行い、去る三月二十日、「ウメ生育不良の原因解明と対策技術への提言」と題して、その「調査・試験研究結果報告書」が西口知事に提出されました。
 一方、紀南農業協同組合と関西電力株式会社で、平成九年五月、梅生育障害対策研究会が設置され、その原因の早期解明に取り組み、これもことし四月二十三日に、「梅生育障害の原因究明・樹勢回復への取組み 調査・研究結果報告書」がまとめられて発表されました。
 両調査研究のまとめとして、栽培要因、気象要因、土壌要因、病害要因が複合的に絡み合い、樹体内に養水分ストレスを引き起こした結果とまとめられております。県うめ対策研究会は、梅栽培の現状、生育不良のメカニズム、安定生産技術対策、山桜衰弱枯死調査、試験研究に残された課題の五項目に分類してまとめられております。試験研究に残された課題の解決にはまだまだ多大な労力、費用、年月がかかると思います。この県の調査報告書を県当局がどう評価されたか、お伺いするものであります。
 私は、三月二十日、和歌山市で開催された和歌山県うめ対策研究会のまとめの報告会と五月二十四日、南部町で開催された調査報告会に参加いたしました。両会場で行われた生産農家との質疑応答を聞く限り、なかなか納得がいかず、先行きにまだまだという感じがしたものであります。昨年十二月議会で知事に対して質問した折に、知事は梅試験場設置を表明されました。梅生産農家の皆さんは、引き続き梅生育不良原因究明の拠点として、その完成を鶴首して待ち望んでいるのでありますが、現時点での取り組み状況をお伺いするものであります。
 全国の各種試験場の規模等を調査してみましたところ、大中小さまざまでありますが、一番大きいのが愛知県農業総合試験場の百五十一ヘクタール、二番目が宮崎県総合農業試験場六十七・五ヘクタール、落葉果樹を主とする青森県、これはリンゴですけれども、二十六・三ヘクタール、鳥取県、これは二十世紀ナシでございますが、二十ヘクタールであります。いずれも、県の主産物であるリンゴやナシの研究施設が充実しております。全国生産量の六〇%の梅を産する和歌山県の現在の梅研究機関は、お粗末そのものであります。
 今回、西口知事の英断で梅に関する研究機関を設置されることは全国でも初めてであり、その完成が大いに期待されるものでありますが、関係各位の懸命の取り組みをお願いするものであります。
 続いて、わかやま女性一〇〇人委員会の提言についてであります。
 わかやま女性一〇〇人委員会は、西口県政誕生間なしの平成八年四月、女性の意見を広く県政に反映させようとの目的で、西口知事の提案によるものと伺っております。一般県民から委員を公募するという斬新な試みとして一般県民にも大変好評で、選任された女性の皆さん方も、行政に対しての関心が高まり、考え方が大変高尚になったように見受けられました。私の友人の奥さんも、漁業関係と農業関係で二人選任されまして、ふだんよりも各種会合に出席し、張り切って活動しておりました。
 私は、平成八年度から十二年度までの三冊の提言のまとめを拝読いたしました。提言の中にはユニークな意見や女性ならではの意見もありましたので、ここに二、三、ご紹介をいたします。
 まず、「二十一世紀に向けた観光革命」という項目ですが、「日本一のきれいなトイレづくり」ということで、「観光地では女性トイレが混雑するので、女性トイレをもっと増やす。「和歌山県にはきれいなトイレがある」ということを全国にアピールできるように、日本一きれいなトイレをつくり、観光のセールスポイントにする。 特に、車から降りて散歩し休憩できる「道の駅」をやすらぎの空間として更に充実整備する。トイレの管理については、地元で責任をもつ。地域の高齢者の人に担当してもらうのも一案である」、こういうきめの細かい女性ならではの観点からの提言でございます。
 それから福祉関係でございますが、私もこれを頼まれて、難しいという答弁をいたしましたけれども、「寝たきりの人のための歯科の訪問指導・訪問治療制度の導入」ということで、「歯は身体の大切な器官であり、健康な歯は内臓疾患や痴呆の予防のみならず、歯磨き等の習慣は自立への意欲にもつながる。他の訪問診療と同様、歯科においても訪問による指導・診療制度を導入する」、こういう意見もございます。
 教育についてでありますが、これは特に今問題になっている未成年、キレる十七歳と言われておりますけれども、これらの青少年の育成のために、「若者の意見交換の場として「高校生一〇〇人委員会」を設置する。 長期休暇を利用して年三回程度会議を開催し、地域毎あるいは全体で意見交換を行う。講演会や研修会も実施する。将来和歌山を支える若者が、親や学校では教えられないことを学ぶ場となり、また、高校生同士のネットワークづくりにもつながる。今、若者は少人数あるいは単独で遊んだり行動をすることが多いが、皆で集まれば面白いということを体験させてあげたい」。
 それから、これは教育者にとっては大変痛い提言であろうと思いますが、「学校教育」の項目で、「小学校六年生の社会科教科書(歴史)の写真や挿し絵について十分配慮されたい。また、教科書については、子ども達が国や郷土に誇りや感謝を持てるように考慮した内容とする」。
 もう一つ、教育でございますが、「躾は基本的には親の責任なので、家庭で親が自信を持って子供の教育や躾ができるよう、親自身も勉強する必要がある。自由ばかりを主張するのではなく、あいさつ等、基本的な生活習慣を家庭で教育することが重要。例えば、学級懇談会等の際には、親の教育のためのセミナーや講習を同時に開催する」。
 もう一つ、これも教育でありますが、「教員の採用と研修」、「大学を出てからすぐに職場に入り、あまり社会を知らないままに子供に接している先生がいるので、デパートや老人ホーム、民間企業等への派遣研修を行い、社会経験を積んでもらうことが必要」、また「採用試験には、一年程度の講師としての試用期間を設け、採用対象者についての学校現場の先生の意見を採り入れる等、教師としての資質を総合的に判断できるようにする」、こういう、大変貴重な提言があります。
 最後に、これも教育でありますけれども、「学校教育のあり方について」、「親と学校が責任をなすりつけ合うのではなく、お互いが責任を持ってこそ子供は育つので、成績優秀な子供イコール良い子と教え込んできた学歴偏重社会を一日も早く変える必要がある」「自分の国を大切にし、自分の国に誇りを持てるような教育を行う。日本の国の素晴らしさを教えることは子供たちの生きがいや自信につながるので、歴史教科書は考え直す時期に来ている」「環境や高齢者問題等、子供には小さいうちから学んでほしいことが沢山あるので、教科の勉強だけでなく、そのような問題について理解を深める教育が必要」、このような大変貴重な意見が提案されてございます。
 これが発足して四年目、三百人の女性がまとめられた一部をご紹介申し上げましたけれども、今申し上げましたわかやま女性一〇〇人委員会の提言についての県当局、教育長の答弁を求めまして、私の質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。
○議長(下川俊樹君) ただいまの木下秀男君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 木下議員にお答えをいたします。
 産業廃棄物につきましては、議員の皆様を初め県民の皆様に多大のご心配をおかけしております。議員のお話にございましたように、産業廃棄物は持ち出さず、持ち込ませずを県の方針としてございますが、この方針を実現するためにも一定の公共関与処理が必要であると考えておりまして、現在、排出事業者責任を前提として財団法人和歌山環境保全公社の将来構想と連動しつつ、公共関与のあり方について検討しているところでございます。
 また、産業廃棄物の適正処理を確保するための仕組みにつきましては、他府県の事例等も含め、研究してまいりたいと思います。
 お話にございました法定外目的税としての環境税も含め、新しい税の創設につきましては、多くの課題もございますけれども、貴重なご提言として受けとめまして、幅広い観点から研究をしてまいりたいと考えております。
 次に、わかやま女性一〇〇人委員会の提言についてでありますけれども、議員もご承知のとおり、「女性の声を県政に」という私の公約のもと、知事就任後すぐに設置をし、現在は四期委員にお願いをしているところでございます。
 これまでにいただいた提言は多岐にわたっておりますが、過去七十七件の提言を何らかの形で県政に反映をいたしました。本年三月に提出された三期委員からの提言につきましても、関係部署に可能な限り施策に反映させるよう指示したところであります。
 また一〇〇人委員会は、県政に対するご意見をいただくだけでなく県からの説明責任の場であり、真剣にふるさとを考えるすばらしい女性たちの出会いの場でもございました。個々の提言の施策への反映もさることながら、私は一〇〇人委員会の最大の功績は、常に県民の視点に立った行政を進めるという姿勢を定着させたところにあるのではないかと考えてございます。
 あとは関係部長からお答えいたします。
○議長(下川俊樹君) 農林水産部長島本隆生君。
  〔島本隆生君、登壇〕
○農林水産部長(島本隆生君) 木下秀男議員のご質問にお答え申し上げます。
 県うめ対策研究会の評価と今後の取り組みについてでございますが、梅の生育不良は農政の最重要課題であり、この問題の早期解明を図るため、我が国を代表する専門家にお願いして県うめ対策研究会を設置し、去る三月二十日には最終の報告をいただいてございます。この間、先生方には、試験研究の組み立て段階から指導を受けるなど最善の対応をいただいたものと考えてございます。
 県といたしましては、この報告を踏まえ、幅広い試験研究や産地支援対策を進めるとともに、日本一の産地にふさわしい梅の専門研究機関の設置に向け鋭意取り組んでございまして、去る六月十九日には地元市町村や関係団体で組織するうめ研究機関設置検討協議会を開催し、具体的な検討に入ったところでございます。今後とも、県議会を初め、生産者、関係機関のご協力を得ながら問題解決に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) わかやま女性一〇〇人委員会からは、教育についてもきめ細かな数々の提言をいただきました。教育委員会といたしましては、こうした提言の趣旨を従来から取り組んでおります施策に生かすとともに、事業の一層の充実を図ってまいりました。
 まず、指導方法の工夫改善を行うための教員を配置することにより、一クラスの授業を複数の教員が担当するいわゆるチームティーチングを実施し、成果を上げているところでございます。また、小規模校が多いという本県の実情を踏まえ、複式学級の改善ができるよう教員の配置を行っております。
 次に中高一貫教育につきましては、高校入試の影響を受けずにゆとりある安定的な学校生活が送れることや、六年間の計画的、継続的な教育指導が展開できることなどの意義がございます。こうしたことから現在、連携型の中高一貫教育の実践研究を進めているところであります。
 専門職員の育成に関しては、本年度県内で初めて和歌山大学において社会教育主事の資格取得のための講習を行うこととなりました。
 最後に、豊かな自然体験や道徳教育等、心の教育については、ふるさとに自信と誇りを持つ教育を推進するため、副読本「わかやまDE発見!」や道徳教育指導資料を作成するとともに、介護などさまざまな社会体験をさせるわくわくボランティア等、地域や社会の支援と協力を得ながら多彩な体験活動を実施いたしております。
 今後とも、提言の趣旨を踏まえ、豊かな心をはぐくみ、一人一人を大切にする教育の充実に努めてまいる所存でございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(下川俊樹君) 再質問がございませんので、以上で木下秀男君の質問が終了いたしました。
 お諮りいたします。質疑及び一般質問は、以上をもって終結することにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(下川俊樹君) ご異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問はこれをもって終結いたします。
 次に、ただいま議題となっております全案件は、お手元に配付しております議案付託表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
 お諮りいたします。七月十日、十一日は、常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(下川俊樹君) ご異議なしと認めます。よって、七月十日、十一日は休会とすることに決定いたしました。
 なお、常任委員会の会場はお手元に配付しておりますので、ご了承願います。
 次会は、七月十二日再開いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午前十一時三十七分散会

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