平成12年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(高田由一議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時四分開議
○議長(下川俊樹君) これより本日の会議を開きます。
  【日程第一 議案第百二十号から議案第百三十三号まで、並びに報第三号から報第七号まで】
  【日程第二 一般質問】
○議長(下川俊樹君) 日程第一、議案第百二十号から議案第百三十三号まで、並びに知事専決処分報告報第三号から報第七号までを一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 四十一番高田由一君。
  〔高田由一君、登壇〕(拍手)
○高田由一君 おはようございます。通告に従いまして一般質問をさせていただきます。
 まず、介護保険の問題について伺います。
 介護保険がスタートして三カ月が経過いたしました。厚生省は、四月一日の実施直前まで幾つもの事務連絡や通知を全国の自治体や事業者などに送付し、現場ではその数々の書類を十分理解できないまま混乱のスタートになりました。知り合いのケアマネジャーさんに聞いたんですが、連日徹夜をして四月に間に合うようにとケアプランをつくって利用者に見せても、こんなに利用料が高いんじゃ払えないと、必要なサービスをあきらめなければならない事例が相次いでいるそうであります。そのケアマネジャーさんの担当する利用者の六割から七割くらいの方が必要なサービスを断る状況だったそうです。具体的に言いますと、今まで約八割の人が無料で受けていたヘルパーの訪問介護、これは一時間で約四百円になります。また、今まで一回二百五十円だった訪問看護、これが一時間で約八百三十円にもなります。これを週何回か受けると、一カ月にすると大変な負担増になるわけであります。その重過ぎる利用料によって、介護サービスが介護の必要性からではなくて負担能力によって決められている、必要なサービスが後退しているというのが現状です。
 先日、串本町内で懇談会を持ちましたら、近所の方が十人ほど来てくれました。そのとき、口々に出たのが介護保険の問題でありました。ある主婦の話では、九十幾つになる近所のひとり暮らしのおばあちゃんを訪ねたら、部屋じゅうほこりとごみだらけになっている。びっくりして、「おばあちゃん、どうしたんよ」と聞くと、「ヘルパーさんに来てもらっていたが、もうやめたんや」と言うそうなんです。聞くと、介護保険が始まって利用料が高くなったのでヘルパーを断ったというのが本音だったようです。でも、ヘルパーさんにはそんなことが言えなかったようで、「もう自分でできるさかいにいいんや」と言って断ったそうであります。知事、戦前、戦中、戦後と日本を支えてきた九十を超えるおばあちゃんの部屋がほこりとごみだらけになってしまう。余りにも心が痛む光景ではないでしょうか。保険制度を導入して新たな負担を国民に求める以上、すべての人のサービスが今までより充実して当たり前ではないでしょうか。
 知事、あなたは議会の冒頭、介護保険について大きな混乱もなくスタートしたと言われましたが、本当にそういう認識でいいんでしょうか。再度、お考えをお聞かせください。
 次に、福祉保健部長に伺います。
 埼玉県内のある調査によると、介護保険の利用限度額に対するサービス利用額の割合が四割未満の利用者が七割ぐらいいるというんです。つまり、大半の方が百のサービスを受けられるところを四十以下のサービスで我慢しているということであります。さっきも申し上げたように、利用者負担が重過ぎるために、サービスが必要な人ほど利用したいけれどもできないというのが状況ではないでしょうか。現在、必要なサービスが本当にきちんと供給されているでしょうか、これを県としてどう把握されているのでしょうか、ご答弁をお願いいたします。
 私は、これがことしの十月から保険料が徴収され出したらさらにひどいことになるのではないかと心配しています。我が党は、十月からの高齢者の保険料徴収を再検討して、少なくとも住民税が非課税の方には保険料を免除するよう求めていますが、この場をおかりして国に強く要望するものであります。
 次に、在宅介護での利用料について伺います。
 現在、国の特別対策としてホームヘルプ事業については、三年間だけですが、低所得者に対する利用料三%への減免措置があります。これが二〇〇五年には段階的に廃止され、一割負担のもとどおりになるという予定であります。利用者への過大な負担となるばかりか、これによっても利用者が利用回数を減らすのは目に見えていると思うんです。また、それに伴って介護事業者の経営をも圧迫することになりかねません。我が党は、訪問看護、デイサービスなども含め、すべての在宅介護の利用料を低所得者には三%に減免するよう求めていますが、県としても国に要請していただけないでしょうか。ご答弁をお願いいたします。
 また、この介護保険に対し市町村独自で利用者負担を軽減したり、保険料を独自に減免しているところがございます。こうした市町村の独自施策に対して県としても財政的な応援をしてあげるべきだと思うのですが、いかがでしょうか。答弁をお願いいたします。
 最後に、介護保険導入の成果をどう把握するかという問題であります。
 介護保険によってどれだけ介護予防ができたのか、あるいはどれだけ自立への援助ができたのか。その効果のほどを行政機関としてどう把握するおつもりですか。また、サービス内容についての苦情などは県が受け付けることになっていますが、現在までにどんな苦情が寄せられているでしょうか。
 私は、介護保険開始後半年経過したこの秋の時点で利用者の満足度調査をして、苦情が来なくても行政の側から積極的にアンケートをとるなどして今後の行政に生かすべきだと考えますが、いかがでしょうか。ご答弁をお願いいたします。
 次に、小児救急医療の問題について伺います。
 読売新聞で、この間、小児救急医療の特集がされていました。その中で、大阪から和歌山県内に両親とともに帰省していた幼児が熱を出してけいれんしたため救急車が呼ばれたものの、搬送先の病院が決まらず救急車が三十分も停車したままになり、結果としてインフルエンザ脳症のため重い後遺症が残った事例が紹介されていましたが、これは聞きますと、紀北地域でのことだそうです。
 知事、自宅に来た救急車が三十分も停車したままで、その中で引きつけたまま青白くなっていく我が子を見る親の思いは、いかばかりでありましょうか。また、私のもとに一通の手紙がありまして、これは高野口町の方ですが、ことしの一月、夜子供が引きつけを起こして救急車を呼んだら、一時間もかかる和歌山市内の休日夜間急患センターしか診てくれるところがなかったということであります。これはいずれも紀の川筋の話なんですが、結構大きな病院が点在している地域でも小児科の救急に対してはこのような状況になっています。田辺以南の紀南地方の状況は想像するにかたくありません。例えば串本町の方は、いざというときにも新宮の市民病院へ一時間、田辺の紀南病院に一時間四十分、こうした時間をかけて子供を連れていかなければならない状況であります。
 子供の場合は、特に早期に重症者を見分けることが大切だと言います。ただの風邪に見えても、さっき言ったインフルエンザ脳症であったり、なじみは薄いですが、心筋炎という病気で、振り返ってみれば一刻を争う状態だったのに放置されていて、たった数時間のうちに亡くなったという事例もございます。ほとんどの患者が薬や注射で対応できる患者さんなんですが、その中にまじって、症状は本当に風邪のようでも早急に手当てが必要な病気がわずかな確率で含まれている、それを見逃してはならないというのが小児専門のお医者さんの意見でありました。
 例えば休日急患センターですが、和歌山市でも利用者の五八%が小児科の患者さんなんです。ほかの休日急患センターも大体似た傾向だと思いますが、小児科の専門医の常駐は和歌山市のみで、しかも夜間も対応できるのも和歌山市のみであります。新宮、東牟婁の医療圏域には、そもそもこのセンターがありません。
 そこで、お尋ねいたします。
 現在、県下に六カ所ある休日急患センターを、和歌山市並みに小児科の専門医を配置し、夜間も機能するように充実させてはどうでしょうか。また、新宮、東牟婁は充実しようにもそれ自体ないわけですから、早急に設置をするべきではないでしょうか。福祉保健部長の答弁をお願いいたします。
 また、串本町から東へ向いての紀南地方は、県の圏域別保健医療計画でも小児救急については特に整備が求められるという認識になっています。ところが現実には、その地域の中心的な新宮市民病院でNICU、新生児集中治療室が一床あることになっているんですが、先日取材にも行きましたけれども、常時稼働できるような体制にはなっていないということなんです。これには大変驚きました。しかし、私は市民病院が悪いんだと言うつもりは全くございません。むしろ、あの地域で孤軍奮闘、地域医療を支えて頑張っておられると思います。根本的には、そうした地域の病院を経営的にもバックアップできない国の制度に問題があると思いますが、だからといって県行政が手をこまねいているわけにはまいりません。今後、小児救急医療の体制をどう整備していくのか、ご答弁をお願いいたします。
 次に、生活保護行政について伺います。
 長引く不況と相次ぐ医療や年金の改悪で、国民の暮らしは大変な状況になっています。こうしたときにこそ、健康で文化的な最低生活を営む権利に基づく生活保護制度が重要になってまいります。今、県下でも生活保護の申請、開始決定とも増加しています。和歌山市を含む県全体の被保護世帯は九六年に五千五百三十四世帯でしたが、ことしの三月現在では六千五十三世帯となり、一割近くふえています。郡市別に見れば、海南市や橋本市、伊都郡、東牟婁郡がこの五年間で約三割もの伸びになっています。逆に有田郡は約二割の大きな減少で、十四年間にわたって毎年減少し、以前と比べて半減しているわけです。このように、郡市別で保護開始決定に大きな差が生まれていることは大変不自然ではないでしょうか。私は、県が有田郡と御坊市を対象にケースの検討に特別な体制をとっていることと関連があるのではないかと考えますけれども、福祉保健部長の見解をお示しください。
 次に、生活保護申請が却下されたり保護が廃止されたりするケースで、稼働能力不活用を理由にしたものが多いと聞きました。これは、病弱であっても軽作業ができるとか中程度の作業ができるとの医師の診断が出れば、保護申請を却下されたり廃止されたりするものです。今、健康な人でもなかなか仕事が見つからず、失業者が多い状況です。そんなときに、簡単な軽作業ができる身体状況であるというだけで保護を受けられないというのは余りにもしゃくし定規な運用ではないでしょうか。就労の意思を示す求職活動を行っているかどうかも保護開始決定の判断材料になるのはもちろんでありますが、うつ病などの症状では求職活動自体に意欲を持つことのできないケースもあるのですから、稼働能力の不活用という判断については、県として統一的で明文化された基準をつくる必要があるのではないでしょうか、答弁をお願いいたします。
 次に、保護申請を却下された人にも十分な援助、相談ができるような職員の体制をとっていただきたいということです。日ごろから各振興局のケースワーカーさんらが、少ない人数の中で隅々まで調査や相談に奔走されていることに、まず敬意を表したいと思います。その中で保護申請が決定された人も、却下された人も、生活苦という状況は共通したものがあると思います。私が相談に乗る中で、却下された人には、その後の事後指導というか状況を把握する活動が不足していると思います。一人のケースワーカーが五十人も六十人も担当している実態がありますから大変なことはわかりますが、保護を廃止された人、申請を却下された人がその後どういう生活をして暮らしているのか、きちんと把握する必要があるのではないでしょうか。全国的には、保護を却下された人がその後悲惨な死を遂げたり自殺したりする事件もありました。ぜひ、県民に温かい行政であるためにも、その部門の職員体制の充実を求めるものでありますが、いかがでしょうか。ご答弁をお願いいたします。
 この問題の最後に、保護申請に係る判断の手順について伺います。
 私が相談に乗る中でも、結果として保護申請に対する判断が誤っていたという事例がありました。もちろん、先ほども言いましたように、個々のケースワーカーさんは大変熱心に取り組んでくれているわけでありますが、やはり人間ですから、場合によっては個々のケースの状況判断を誤ることもあるわけです。保護申請について決定するか否かについては、もちろん集団的な検討が振興局の中でされるわけなんですが、その場に提出される資料というのは個々のケースワーカーさんの判断によるものであります。より誤りのない行政を進めるためにも、場合によっては本人との面接や訪問なども複数で行うなどの配慮が必要ではないでしょうか、ご答弁をお願いいたします。
 質問の最後に、林業問題について伺います。
 古くから紀州木の国と言われ、県土の七七%が森林で覆われている和歌山県は、温暖多雨な気象条件のもとで林業生産活動が活発に行われ、豊かな森林をはぐくんでまいりました。人工林率は約六割、全国六位で、その比率は大きいものがあります。また、特用林産物の生産、特に備長炭、サンショウはともに全国の三割以上のシェアを誇り、第一位の生産量を誇っています。林野庁試算によりますと、全国で森林の公益的価値は三十九兆円となっており、これは農業の多面的役割が六兆円以上と試算されていることと比べても、林業、森林の重要性を示していると言えます。
 現在、日本の林業全体が危機的な状況にあることはご承知のとおりであります。その主な要因は外材の野放しの輸入であります。外材の輸入は一九四八年(昭和二十三年)から始まり、戦後復興と高度経済成長の時期の木材需要の拡大に対応してきました。その後、一九六一年には丸太の関税が撤廃され、戦後における本格的な外材輸入が始まることになりました。続いて、一九六四年のラワンの合板、単板、製材品の自由化で、事実上、木材関係全品目の自由化は完成し、国内の木材産業を保護する制度はもはや関税だけということになっています。しかし、当時は木材が不足しており、木材価格が異常に高騰する中で実施されたために、輸入自由化や丸太関税撤廃が国内林業に与える影響について懸念する声はありませんでした。しかし、現在は違います。日本は純輸入量で見ると、九七年には八千七百万立米と世界最大の木材輸入国になっています。特に注目したいのは、一九八九年に輸入量が初めて八千万立米を超したのに前後して、それまで三〇%台だった自給率が、この十年間で一気に二〇%を切るところにまで落ち込んでしまっていることであります。これには、ガットウルグアイ・ラウンドで林産物関税が平均約三〇%引き下げられたことも大きな要因と考えられます。自国に豊富な森林資源がありながら自給率が二〇%を切るとは、全く異常な事態ではないでしょうか。そして、木材価格についても同時に異常事態が起きています。ここ十年ほど一貫して価格が下がり続けているという問題であります。──済みません。パネルをお願いします。(図面を示す)議席には資料を配付しておりますので、ごらんください。
 従来、木材価格は住宅着工件数に左右されると言われていました。この黒い棒グラフが住宅着工件数で、景気などによって確かに年ごとに上下しております。それに大体追随するように、青い色の上側の木材の価格、これはヒノキの丸太価格ですが、年ごとにこれも上下しています。大体、この着工件数の後を追うような形で上下しているんです。バブルがはじけて、九〇年前後に一たん住宅建設が落ち込んでから再び建てかえの時期も来ているんでしょうか、増加をしていたんです。しかし、木材価格はこの間、着工件数が伸びても下がる一方なんです。本当なら、ここで木材価格も上がらなければならないはずなんです。また、バブルのときもこれだけ着工件数が伸びたんですから、木材価格はもうちょっと伸びるべきだったと思うんです。この時期に注目されるのが、この下の赤い線で示した製材品の輸入増加です。外材の輸入の中でも、特に丸太じゃなくて製品の輸入がこの間ぐっとふえてきていることです。ですから、今のような外材の製品が野放しで輸入されるという事態が続く限り、今住宅着工件数は落ち込んでいますが、今後景気が回復して伸びていっても、こういう構造がある限り、構造的に国内産の木材は安値が続く体制になっているというのが現状であります。
 木材価格と需要の低迷は、地場産業である製材工場の減少を引き起こしています。県内の製材工場は二十年前の一九八〇年と比べて、四百六十一から二百四十九へと二百工場以上減少し、従業員も四千百四十六人から千七百九十七人へと半分以下になっています。戦後、一九六〇年代から八〇年代にかけて、外材製材を軸に製材品移出県として発展を遂げてきた和歌山県の製材業が、今大きな転機を迎えていると言えるのではないでしょうか。
 そこで、以下質問いたします。
 九六年六月の我が党の鶴田議員の木材の輸入規制を求める質問に対して知事は、輸入規制を行うことは極めて困難と答弁されています。そのときより現在はさらに状態が悪いわけですが、今でもこの認識に変わりはございませんか、知事の答弁をお願いします。
 また、県議会としては、一昨年の三月に「輸入木材の削減を求める意見書」が可決されています。この議会の意思に沿って、その後県はどうした行動をしてきたんでしょうか、農林水産部長に答弁を求めます。
 次に、幾つかの提案をさせていただきます。
 私は、林業を困難に落とさしめている根本原因である野放しの輸入の規制を求めると同時に、その間にも紀州の山や山村が荒れてきているわけですから、県としても独自の対策を求めたいと思います。その第一は、間伐の実施に対して県政が援助していくことです。先日、ある会合で環境問題にかなり詳しい方が、山の保水力がないのは杉、ヒノキの人工林が原因だと言われていたそうです。確かに現在、和歌山県の森林では約六割が人工林ですから植え過ぎだとは思いますが、山の保水力がなかったり崩れやすかったりするのは、杉やヒノキそのものが悪いのでなくて、手入れ不足、間伐不足で下草も生えない状態になっているからです。また、林業経営の上から見ても、適切な間伐は値段のよい木をつくるために必要不可欠です。国においても、ことしから緊急間伐五カ年計画に取り組まれます。これまで、補助金の出る間伐事業は、木を切りさえすれば山にほったらかしでもよかったわけですけれども、今度の緊急間伐の事業では、切った木材を搬出して出荷しなさいということになっているわけです。しかし、搬出にかかる経費が大きいために赤字覚悟でやらなければならないと、ある森林組合の方も言われていました。こうした声に県行政が何とかこたえられないものでしょうか。例えば、県内でも中津村、大塔村では、間伐材を出荷したら一本三百円とか、メーター当たり五十円とかの補助金が出る仕組みがあります。こうした間伐が金になる仕組みは、林業経営を励まし、大変好評だそうです。こうした取り組みに県としても援助をしてはどうでしょうか、答弁をお願いいたします。
 第二に提案したいのは、間伐材も含めて県内産の木材の利用を飛躍的にふやしていくことです。ただ、現在の景気の状況では木材消費の重要な役割を担う住宅建設だけを当てにできませんから、特に公共事業関係でこれをどう使うかが注目されています。この点では、県内でも最近、治山事業、林道事業、公共住宅建設などで利用されています。しかし、他府県の例では、間伐材で魚の集まる魚礁をつくったり、試験研究機関でその利用の技術的な研究をしたり、製品開発をしたりと、まだまだ工夫の余地があると思います。今後の利用拡大の取り組みについてお考えをお示しください。また、今後建設される県立の建物などに重点的に使用することが大切だと考えますが、どのようにお考えでしょうか、農林水産部長の答弁をお願いします。
 第三は、木を伐採した後、再造林できずに放置されている森林への対策です。現在、相当大きな山林地主でも、当面の現金収入を得るために、いい木のある山を切り売りしている状態です。そういう状態ですから、木を切った後は普通はまた植林するわけなんですが、資金がないためにほうりっ放しの山がふえてきています。杉、ヒノキを切った後には、ほうっておいてもすぐ広葉樹が生えるわけではありません。ススキが茂って山火事が心配だという声も聞きます。こうした山をどうしていくのか、重要な問題です。これへの対策について農林水産部長の答弁をお願いします。
 第四に、森林組合の経営をどう守っていくかという問題です。
 今、森林組合にとって大変不安なのは、造林資金を山林地主に対して転貸、つまり貸し付けているんですが、この資金の返済が現在据置期間が過ぎてピークを迎えているということです。木材価格の低迷の中、山主が果たして返済できるかどうか心配されています。もし返済できなければ、組合の役員が共同責任で返済を迫られるという事態になりかねません。そごうや長銀などとはえらい違いです。このことについてどのような対策を考えていますか、答弁をお願いいたします。
 最後の提案は、木質バイオマスの利用研究についてです。
 バイオマスというのは聞きなれない言葉ですが、利用可能な生物資源量という意味です。要は、間伐で出された木材や製材の切れ端やおがくずなどをエネルギー源として利用しようというものです。かつての雑木山が炭に焼かれて地域がうまく循環していたように、これを利用すればかつてのような資源循環がよみがえる可能性があります。実際は、間伐材や剪定くずなどを使って発電したり熱をとったりするんですが、欧米では風力や太陽光発電よりも今重視をされてきています。例えば、最先進国はスウェーデンですが、一次エネルギー供給の一九%を賄っていて、原発に換算すると十基分のエネルギーを取り出しています。現在国内でも研究が進められていて、愛媛県の久万町などが先進的な取り組みをしていますが、和歌山県も今から研究しておく必要があるのではないでしょうか、このことについて答弁をお願いします。
 これで、第一回目の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○議長(下川俊樹君) ただいまの高田由一君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 高田議員にお答えをいたします。
 まず介護保険制度については、県民の皆様のご理解と市町村や関係者のご努力もあり、サービスの提供もおおむね順調であり、また制度開始直後の苦情も非常に少なかったことなどから、個別のケースでは課題のある場合もありますが、全体的には大きな混乱もなくスタートしたものと認識してございます。県としては、今後とも高齢者の方々が必要なサービスを受けられるように、介護サービスの充実等の残された課題に取り組んでまいりたいと考えてございます。
 詳細につきましては、福祉保健部長から答弁いたします。
 次に、外材輸入規制は困難なのかということでありますが、木材輸入の拡大は県内林業に与える影響が非常に大きい要因であると懸念しているところでございますが、しかしこれまでのWTOの交渉の経過や世界の自由貿易の枠組みから見て、輸入規制を行うことは極めて困難なことではないかと認識してございます。
 以上であります。
○議長(下川俊樹君) 福祉保健部長白井保世君。
  〔白井保世君、登壇〕
○福祉保健部長(白井保世君) まず、介護保険についてお答えをいたします。
 介護保険制度につきましては、二年余りの間、市町村を初めとする関係者が準備をしてきたところでございますが、全く新しい制度であるだけに、また直前の制度変更もあったことから、スタート時の混乱が懸念されたところでございます。しかしながら、介護が必要な方につきましては、旧制度から介護保険に移行する中においても手続が間に合わないといった理由からサービスが途切れることもなかったと承知してございます。また、制度開始直後の苦情も全国二千三百五十八件に対しまして本県は六件と非常に少なく、要介護認定の審査請求も一件となっております。このようなことから、知事からも申し上げましたとおり、介護保険制度は、個別のケースで課題のある場合もありますが、全体的には大きな混乱もなくスタートしたと認識をしてございます。
 県といたしましては、介護保険料の円滑な徴収、介護サービスの質と量の充実、制度の内容についての県民や事業者への周知啓発等、なお残された課題もあることから、高齢者が必要なサービスを受けられるよう、本年三月に策定いたしましたわかやま長寿プラン二〇〇〇に基づき、さらに努力をしてまいりたいと考えております。
 次に、必要な介護が受けられているかということでございますが、基本的には介護サービスを利用限度額まで利用するかどうかは利用者の方々のそれぞれの家庭のご事情に応じて決まるものであり、今後とも必要なサービスがご利用いただけるよう啓発等に努めてまいります。
 次に介護保険の利用者負担の軽減措置についてですが、ホームヘルプサービスにつきましては、他のサービスと比較して新しい制度の導入により負担が増大する場合が多いことに配慮し、激変緩和の観点から行われているところです。県としては、介護保険制度の円滑な実施のため、引き続き低所得者に対する恒久的な負担軽減を国に対して要望してまいりたいと考えております。
 次に市町村への助成についてですが、市町村独自の負担軽減措置につきましては、実施主体である市町村の判断により地域の実情に応じ、実施されているところでございます。県といたしましては、先ほども申し上げましたが、介護保険制度の円滑な実施のため、引き続き低所得者に対する恒久的な負担軽減を国に要望してまいりたいと思っております。
 次に介護保険の利用による効果の把握でございますが、議員お話しのとおり、介護保険利用の効果といたしましては、介護するご家族の方の負担を軽減するとともに、要介護の方ご本人が介護保険を早目にご利用いただくことにより、要介護状態の軽減や悪化の防止が期待されているところです。この効果につきましては、今後徐々にあらわれてくると存じますが、制度スタート直後の現時点で把握するのは困難と考えてございます。県といたしましては、今後、介護保険事業支援計画を点検していく中で、ケアマネジャーとの意見交換などを通じ、介護保険の利用による機能回復効果の状況などを確認してまいりたいと考えてございます。
 次に苦情の内容でございますが、訪問介護で毎回同じ人に来てほしい、また事業者の対応が不親切などの苦情が寄せられております。議員ご提言のサービス利用に対する満足度調査につきましては、まず介護保険の実施主体である市町村のご意見を聞いてまいりたいと考えてございます。
 次に、小児救急医療についてお答えをいたします。
 ご質問の小児救急医療に関しましては、休日急患診療所、在宅当番医制、及び救急告示病院と病院群輪番制による一般的な救急医療体制の中で対応を図っております。
 ご指摘の初期救急医療体制につきましては、県の保健医療計画においてこれからの取り組むべき課題として初期救急医療体制が十分でない地域の整備並びに夜間体制の整備であると考えており、今後とも圏域ごとに休日夜間の診療体制が未整備な地域の整備を促進するとともに、診療時間の拡大などの内容充実に努めるよう関係市町村や関係団体等に対し指導をしてまいりたいと考えております。
 次に、串本町から東の紀南地方、新宮保健医療圏の小児救急についての整備につきましては、小児科医師の確保や体制づくりについて地域的な偏在などの課題がある状況から、振興局を中心に管内市町村長、管内公立病院長及び保健所長により、圏域内の医療に関する課題の中で総合的に検討しようとしているところでございます。県といたしましては、特にこうした新宮保健医療圏域の検討を支援するため、平成十二年度事業として地域医療支援事業を予算化し、救急医療体制等の整備をより一層推進してまいりたいと考えてございます。また、関係団体及び公的医療機関に対し、医師の確保、小児科の充実、救急医療の対応などを要請して小児救急医療の充実を図ってまいりたいと考えております。
 最後に、生活保護についてお答えをいたします。
 郡市別の格差についてでございますが、保護の開始決定に当たりましては、生活保護法及びその実施要領等に基づき、それぞれの振興局等において保護を申請された方の実情を客観的な立場で把握し、保護の要否を決定しているところから、その適用に大きな差はないものと考えてございます。各振興局等における保護動向の違いは、それぞれの地域における高齢化や雇用状況等の社会情勢、経済情勢などがその主な要因であると考えてございます。
 次に稼働能力不活用の基準についてでございますが、稼働能力には個人差があり、能力の活用・不活用については本人の就労意欲を初め、求職活動の状況や地域の雇用状況等を総合的に判断しているところであります。議員ご質問の基準の設定につきましては、生活保護の申請にはさまざまな要素を含んでおり、困難と考えております。
 次に、保護却下の人にも配慮できる職員配置をとのご質問でございます。平成十二年度におきましても、生活保護運営基本方針の重点事項の中で保護申請の却下後の支援について配慮するよう各振興局等に指導しているところでございますが、今後とも民生委員や関係機関との連携を図りながら、保護却下世帯を含め、生活に困窮する方に対する支援に努めてまいります。
 最後に保護申請の判断についてでございますが、保護の決定・却下等、生活保護の適用に当たりましては、適正かつ統一的な実施を図るため、必要に応じた複数の職員での訪問調査やケース診断会議の開催など振興局等の組織的な対応に努めているところでございます。
 いずれにいたしましても、憲法の理念に基づき、生活に困窮する方にひとしく健康で文化的な最低限度の生活を保障するという生活保護制度の趣旨に沿って、今後とも要保護者の立場に立った保護の実施に努めるとともに、振興局等の合同研修等を通じて適正な運営に努めてまいります。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 農林水産部長島本隆生君。
  〔島本隆生君、登壇〕
○農林水産部長(島本隆生君) 林業問題に関するご質問にお答えをいたします。
 まず外材輸入規制は困難なのかということでございますが、議員お話しのとおり、我が国の木材市場は昭和三十九年までに木材関係全品目の輸入数量制限が撤廃され、関税に関しても再三にわたる多角的貿易交渉による引き下げにより既に低率となっており、残念ながら極めて開放的な状況となってございます。木材輸出国からの関税撤廃への強い圧力がますます高まる中で、県といたしましても、昨年十一月、政府に対し関係団体と一体となって現行の木材関税率の堅持について強く要望を行ってきたところでございます。
 外材輸入の今後の見通しについては、先ほど知事からお話のあったとおり大変厳しい状況にございますが、本県の豊かな森林資源の有効活用に向け、外材に対抗できる生産流通体制の整備に加え、紀州材の品質のよさを広くPRするなど、長期の視点に立った林業振興を図ってまいりたいと考えてございます。
 次に間伐の推進についてでございますが、本県における二十一万ヘクタールの人工林のうち、特に緊急に間伐を必要とする森林は四万五千ヘクタールと把握してございます。間伐の推進は、林業振興上重要な施策として位置づけ、本年度から県緊急間伐五カ年対策に取り組むこととしてございます。この中で、特に道路までの搬出経費を補助対象としている間伐事業等を有効に活用するとともに、採算性の向上を図るため、作業路開設等の路網整備や林業機械化の促進など各種事業を積極的に導入することといたしてございますので、議員お話しの新たな助成制度については現在のところ難しいものがあると考えてございます。
 また、県単独事業として新たに創設した搬出困難な森林の間伐を行う「木の国」再生事業や間伐の普及啓発を行う、「やろうぜ間伐」事業を実施し、市町村や森林組合等と連携をとりながら森林育成を行うこととしてございます。
 次に県産材の利用拡大についてでございますが、公共施設への木材の利活用につきましては、平成九年一月から庁内に副知事を座長とし、部局長を委員とする木の国プロジェクト推進会議を設置し、これまで県民文化会館の小ホールの張りかえや和歌山ビッグホエールの内装など、県内の公共施設の木造化を推進してきているところでございます。また、木材の新しい利用方法としまして、現在公共土木事業への利用を重点的に進めているところであり、県内で新たに開発した擁壁用木製ブロックの利用推進やコンクリート型枠への間伐材使用などの取り組みを行っているところでございます。今後とも、関係部局との連携を図りながら、県内の公共施設への木材の利用推進について強く働きかけてまいりたいと思いますとともに、木材を利用できる新工法の開発に積極的に取り組んでまいりたいと存じます。
 次に、伐採後、植林が行われていない森林につきましては、水源涵養等の公益的機能の低下が懸念されるため、県といたしましては、早急に活力ある森林に誘導すべき箇所を中心に適正な造林が行われるよう造林補助事業等により積極的に取り組んできたところでございます。今後とも、市町村、森林組合を通じ、森林所有者に対して造林意欲の向上を図るため、補助率の高い造林補助制度の活用をより一層推進し、さらに水源林等、生活に密着した森林については公有林化を進め、健全な森林の造成に努めていく所存でございます。
 次に森林組合が林家に転貸した資金についてでございますが、既に返済がピークを迎えている中で、県といたしましては、森林組合に対して金融事業研修会等を通じて借入金に見合う評価となるよう、担保の見直し等の指導を行っているところでございます。また、借り入れ林家に対しましては、伐採する時期を延ばすなど、一定の条件を満たした場合、より低利な施業転換資金への借りかえを指導しているところでございます。
 次に木材を使ったバイオマスエネルギーの利用につきましては、世界的に地球温暖化が問題視される中、化石燃料にかわるクリーンなエネルギーとして注目を集めているところでございます。国におきましても、平成十一年度から木質バイオマスエネルギーの利用技術の実用化に取り組まれていると聞き及んでございます。しかしながら、バイオマス発電など全国的には数例の実施事例はあるものの、効率的な発電技術の確立、発電に係るコストの低減など、現在多くの課題もございます。県といたしましては、国の動向を視野に入れつつ、実施事例等の利用技術に関する情報収集に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十一番高田由一君。
○高田由一君 答弁ありがとうございました。
 まず介護保険の問題ですけれども、部長は利用限度額いっぱいまで利用するか否かは各家庭の事情によるんだと言われましたけれども、各家庭の経済的な事情によって、これまで受けられていた介護の間隔が延びるかどうかだったらまだわかるんですよ。そこのレベルに行かないことが問題だと指摘しているわけなんです。これは、やはり国の責任が重いわけですから、国へも要望していくという答弁がございましたけれども、ぜひ県としても積極的な措置をとるとともに、国に大きな声で伝えていっていただきたいと考えています。
 それから小児救急医療の問題ですが、現在は少子化の中で医療保険を単価的に見ましても、この小児科が病院における不採算部門になっているのはわかるんです。しかし、だからといって大人の救急医療よりも貧弱な体制になっている小児科の救急医療をこのまま放置していくことはできないと思います。知事も含めて、どうかこれを機会に、県立医大の専門家の先生方もいらっしゃるわけですから、この分野の充実について早急な検討をしていただきたいと考えています。これは要望です。
 それから生活保護については、各地域の差があるんだ、社会情勢や経済的な状況で違うんだ、格差があるんだと言うんですけれども、しかし生活保護の廃止や決定を明確に位置づけるだけの根拠というのは担当課に聞いても示されないわけですね。そのあたりは、きちんとした指導と根拠を、これから調査の上また後の機会に示していただきたいと考えています。
 次に、林業問題です。
 具体的提案にはかなり前向きに答えていただいた面もあるんですが、肝心の輸入木材をどうするかという問題で、木材の関税率の堅持、つまり今の関税をそのまま守ってほしいという要望を昨年十一月に国に出されているということなんです。確かに、今WTO交渉の中で関税率が今よりも引き下げられかねない状況にあることは承知しておりますから、現行関税の堅持ということの意義も認めたいと思います。しかし、現状でもさっき言ったような状況で、製材業にしても、山林にしても、大変困難な状況に陥っているわけですよ。私が取り上げたように、県議会は二年前に「輸入木材の削減を求める意見書」を提出しているんです。行政は、この議会の意思をどういうふうに伝えていっているんですかということなんです。議会が削減を求めているのに、勝手に割り引いて国への要望は関税堅持だと。これは大変弱腰の姿勢でもあるし、やはり議会の意思をきちんと反映していない行動態度じゃないかと考えるんですか、いかがでしょうか。この点についてだけ、再度農林水産部長の答弁をお願いいたします。
○議長(下川俊樹君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 農林水産部長島本隆生君。
  〔島本隆生君、登壇〕
○農林水産部長(島本隆生君) 高田議員の再質問にお答えをいたします。
 先ほどの第一問にお答えいたしましたとおり、世界の貿易の枠組みや輸出国の状況から、今後関税撤廃への圧力が一段と強まるものと見込まれてございますので、本県としては外材に打ち勝つことのできる県内林業の体質強化に重点を置いた一層の施策展開に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 四十一番高田由一君。
○高田由一君 農林水産部長から二回目の答弁をいただいたわけですが、私が伺いたいのは、せっかくこの県議会で与党も野党も一致して、そのときに議会みんなで輸入木材を削減しようという決議をしたということ、その議会の意思を行政として、どう国やその他のところに伝えていくかということなんですよ。木材関税現状堅持というのは、現状ではわかりますよ。わかりますけれども、じゃ、この議会の意思をどう伝えていくんですか。この議会の意思は、行政が国やその他と交渉するときに伝えないんですか。再度お願いします。
○議長(下川俊樹君) 以上の再々質問に対する当局の答弁を求めます。
 農林水産部長島本隆生君。
  〔島本隆生君、登壇〕
○農林水産部長(島本隆生君) 高田議員の再々質問にお答えをいたします。
 議会の意思ということでございまして、削減ということの考え方の中には、国の状況等を見て、あるいは世界的な自由化傾向の中での全体的な状況を勘案した結果、「堅持」という表現でさせていただいた次第でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──以上で、高田由一君の質問が終了いたしました。

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