平成12年2月 和歌山県議会定例会会議録 第7号(吉井和視議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午後一時四分再開
○議長(下川俊樹君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十九番吉井和視君。
  〔吉井和視君、登壇〕(拍手)
○吉井和視君 二月議会の一般質問も、私で最後でございます。一生懸命務めさせていただきたいと思います。
 まず、今回は県民運動ということで、さまざまな角度から私なりの気づいたことについて一般質問をさせていただきます。
 県政の目的は、県民の安定した生活と美しい県土を守り、人間性豊かな県民性を守り育てることであります。
 まず第一に県民生活でありますが、現在と将来の県民の生活の安定を図らなければなりません。それには健全な県財政を継続させることで、これは県政を預かる者の責務であり、使命でもあります。昨今の財政の硬直化は、将来の県民の生活に大きな不安を与えるものであると思われます。県債の発行で借金をするということは、将来、受益のある県民にその負担をお願いするものであります。そのことを念頭に、負担と受益のバランスを考えた県財政の構築に取り組まなければなりません。
 また、美しい県土を守ることについては、これは祖先から受け継いだ遺産であり、次代の人に引き渡さなければならない貴重な財産で、いたずらに現代人の都合で破壊してはならないものであるということは言うまでもありません。しかし、わかり切ったことをできないのが人間であります。このことに十分気をいたさなければなりません。
 県土を守るということはどういうことか。山林の崩壊の危機、河川や海の自然環境の破壊等、解決のできない課題がたくさんあります。祖先から受け継いだこの県土を、私たちは次代に責任を持って継承しなければなりません。ある意味では身勝手かもしれませんが、次代の県民も大きな恩恵を受けるであろうと思うので、負担をしていただくのであります。大事なことは、借金を残しても次代の県民が喜んで理解してくれるものを残さなければなりません。
 そういう意味で、二十一世紀を迎える県政を担うリーダーとして、和歌山県の県土を守るための大きなビジョンを描く責任があると考えます。その点についていかがお考えですか。
 次に、人間性豊かな県民の心を守り育てることは、どんな時代になろうとも県政の中で最も重要な柱であろうと思います。教育の向上しかり、県民意識のすばらしさも、大きな存在であります。私はここで、大きなテーマとして、県民の意識を育てる県民運動とのかかわりについて考えてみたいと思います。
 県民運動というものは、県民みずからが快適で住みよい郷土づくりに向け取り組む活動でありますが、その中で県行政が果たす役割は大変大きなものがあろうと思います。そこで、県民の郷土づくりに対する自主的かつ積極的な取り組みを促す県民運動を推進していく上で、今後の課題と取り組みについてお聞かせください。
 県民運動と人間性の向上というものは表裏一体であり、切り離すことのできないものであります。そこで、県勢発展とかかわりのない、国家に所属する県民として必要な県民運動を展開することも大いに推進する必要があります。例えば、北方領土返還県民会議の県民運動のように、国の主権にかかわる問題についての県民運動も、全国の自治体の中で目的達成のために運動することが重要なことであります。
 領土は、民族の母体であります。北方領土は、日ソ中立条約いわゆる日ソ不可侵条約を一方的に破棄されて、ゆえなくして一方的に奪われた領土であります。国家主権のためにも、北方領土すべてを奪還する気持ちで取り組むことが必要であります。また、政府が弱腰にならないため、不断の運動を展開する必要があります。
 ちなみに、北方領土は国後、択捉、色丹、歯舞の四島ということになっておりますが、国際法上からすれば千島列島すべてが日本の領土であります。特にウルップ諸島以南は、江戸時代から松前藩が領有していたのであります。最近、日ロ交渉が新しい局面に入っておりますので、国民の世論を大きく盛り上げ、何とか早く解決してほしいものと思います。
 まず、行政当局としてこの問題をどのように位置づけ、今後どのように展開するのか、お伺いいたします。
 次に、本年二月三日の産経新聞の記事であります。私は、この記事を見て、はっとしたわけであります。記事の見出しは、「生きているうちに息子と再会を 父、米議員に手紙 頼みは貴国 すがる思いつづる」というタイトルであります。内容は、北朝鮮による拉致疑惑で、昭和五十三年七月、新潟県柏崎市の海岸から失踪した元中央大学生蓮池薫さんのお父さん・秀量さんが米国のベンジャミン・ギルマン下院外交委員長に問題解決の協力を求める手紙を送ったということであります。
 手紙の内容は、「私はテロ国家北朝鮮によって、息子を拉致された蓮池秀量と申します」という書き出しで、続いて「北朝鮮は日本にスパイ工作員を送り込んでいるのみならず、その教育の教官にするために一般市民を拉致しています」とあり、また蓮池さんは政府間の交渉にいら立ち、「日本政府にも働きかけを行っておりますが、北朝鮮は貴国しか交渉相手として認めておりません」という、すがるような手紙の内容であります。また秀量さんは、手紙を書きながら、北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会の小島さんに「自国の拉致問題を他国にお願いしなければならないのは情けない。残念でならない」と話したという記事内容であります。私が新聞を見て最初にはっとしたというのは、この「自国の拉致問題を他国にお願いしなければならないのは情けない。残念でならない」という父親の悲痛な叫びであります。
 北朝鮮による拉致疑惑は、平成八年に新潟市の中学生、当時中学校一年生、十三歳の横田めぐみさんの拉致情報が韓国に亡命した北朝鮮の元工作員からもたらされたことにより、またさまざまな信頼できる情報により、政府は平成九年五月一日の参議院決算委員会の答弁を通じて、北朝鮮による拉致事件として認定したことを明らかにしたものであります。
 横田めぐみさんは、昭和五十二年十一月十五日、新潟市の中学校から帰宅する途中で拉致されたもので、既に二十三年の歳月がたっているわけであります。また、その他、日本政府及び警察庁が特定している北朝鮮による日本人拉致者は七件の十人で、警察庁の疑惑リストは四十八人が挙げられているということであります。私は、なぜ蓮池さんが米国のギルマン下院議員に手紙を送ったのだろうと思い、この問題の経過を調べてみました。
 拉致された家族は、政府にさまざまな働きかけをし、平成九年には自由党西村真悟衆議院議員が予算委員会で質問し、マスコミにも大きく報じられ、多くの国民が同情せずにはいられなかったものです。そして、拉致された日本人を救う会が昨年の日朝国交正常化に向けて、村山訪朝団に対して出発前にすべての議員に要請を行っております。そして、訪朝団の交渉について、強い憤りから次のような声明を行っております。
 「今回の訪朝団は拉致問題の解決を求める国民の声に背き、「人道問題」などという次元にまで引き下げて赤十字に任せることに合意したという。政府も関与するなどの言い訳はしているが、これは事実上棚上げをする以外の何物でもない。そもそも重大な主権侵害である拉致がどうして「人道問題」なのか、理解できる国民は皆無と言っていいだろう。これは国会議員としての責任の放棄であり、私たちは参加した村山、野中両氏をはじめとして十六人の参加国会議員の責任を厳しく問わざるを得ない。私たちは拉致を棚上げして国交交渉をかくも性急に行う政治家の姿勢に強い疑念を感じる。そこにいかなる利益が絡むのかは分からないが、少なくとも永田町の論理を国民に押しつけるのは絶対に容認できない。今回の訪朝団の合意を政府が受け入れるなら私たちは拉致問題に激しい憤りを感じている多くの国民と手を携え、正面からこの暴挙に対決せざるを得ない。二十年余の長きにわたって我が子、兄弟を待ち続けるご家族の思い、そして拉致された人々のことを考えるとき、私たちは政府に断固たる姿勢を求めるものである」と、声明を行っております。
 また、北朝鮮による拉致被害者家族の連絡会──代表は横田めぐみさんのお父さんである横田滋さんがなっておりますが──から河野外務大臣に、次のような要請書を送っております。
 「私どもの息子、娘が北朝鮮に拉致されてから、最も長い者で二十三回目の冬を迎えましたが、解決に向けて見るべき成果が出ていないのが実情です。こうした中で、日朝赤十字会談という日朝国交正常化予備会談が再開され、その場で日本側関係者が拉致問題解決を求めてくださっていることは喜ばしいことです。今回こそ、何らかの進展が見られることを期待しています。しかし、北朝鮮は、日本側が拉致疑惑を持ち出し、朝日関係の改善に障害をつくり出そうとしているとか、日本が拉致疑惑のような不当な問題を持ち出しては、関係改善はおろか関係が一層悪化する等、敵対的な発言を繰り返しており、拉致者を行方不明者として北の捜査当局に再調査を依頼するとの合意をしたものの、食糧支援を引き出すための時間稼ぎに利用されるのではないかと懸念しております。日朝国交正常化交渉で、拉致問題は避けて通ることのできない重要な問題だ、解決に向けた努力を今後も続けるとの外務大臣のお言葉を信頼しております。北朝鮮が望む食糧援助について、拉致問題の前進がなければ応じないという強い姿勢で交渉に臨んでくださいますよう心からお願い申し上げます」という内容でございます。
 こういう経過のもとで、いても立ってもおられなくなり、アメリカの議員に家族が手紙を出したものであります。政府だけに頼ることはできないと判断された家族の気持ちは、痛いほどわかるものであります。この問題は、人権上、国家主権上、極めて重要な問題であります。家族等、関係者だけの力では政府への対応も思うようにいかないように見受けられます。
 そこで私は、地方から、地方議会から、北朝鮮に拉致された日本人を救出するうねりをつくり出す必要があると思います。中学一年生のとき拉致された横田めぐみさんのお母さんが手記の中で、「国民のすべての方々、政治に携わるすべての方々が、たとえ一日だけでも我が子がこうなってしまったらと静かに思いをいたしてくださり、一日も早い救出のため、そしてだれに起きたかもわからないこのような恐ろしいことが二度と日本で起こらないために、ご支援くださいますよう心からお願い申し上げます」と語っております。
 北方領土と同じように、このことを県民に訴え広く県民運動を起こすことが、日本人として、和歌山県民のすばらしい県民意識として重要でないかと思うわけであります。県当局のお考えをお聞かせください。
 続いて、歴史教育についてお尋ねいたします。
 平成九年、文部省の検定を通った中学校用の歴史教科書にいわゆる従軍慰安婦の強制連行説が書かれていることが明るみに出たころから、教科書の内容についてさまざまな議論が出始めたところであります。私もこの議場で、平成九年の二月議会で従軍慰安婦に関する歴史教科書問題について、次のように質問をいたしました。平成九年の中学校社会科教科書に強制連行あるいは政府、軍が関与して外国人慰安婦を戦地に随行させたという記述が教科書会社七社すべての教科書に初めて登場したことについて、この慰安婦の強制連行というのは歴史的事実でないという意見があり、まだ判明していない事象を教えることが中学生にどのような教育効果があるのか、また現場の教員に対して教育方針としてどのように指示するのかという内容でありました。まあ、気に入らない答弁であったわけでありますが、「歴史的事象にはさまざまな見方があることも含め、学習指導要領の趣旨に基づき、適切に理解されるよう指導してまいりたい」との答弁でございました。少しは、和歌山県の教育は救われるという思いでありました。
 ところが、昨年、南部高校のホームルームで、人権教育の中で担当教師がこういう資料を生徒に配付して、従軍慰安婦のことを、そしてまた南京事件のことを一方的な見解の資料で学習したということが父兄の情報で明るみに出たわけであります。資料の内容は、日本の軍隊は最悪のもので、淫乱で、その獣性を遺憾なく発揮したということで、すべて日本人が悪かったという自虐史観そのものを教えたわけであります。内容はいろいろありますが、まず、日本軍は血に狂う悪魔であった、燃え上がる炎の中で強奪と強姦と殺りくが何週間も続いたとか、そういう内容のことがあらゆるところに出ております。獣性があったということであります。しかも、何年間も、このような一部の教師が勝手につくった資料に基づいて学習していたわけであります。
 私はこの前の議会で、文教委員会でこの問題について教育長に質問をさせていただきました。教育長は、一方的な見解の学習であり、今後改めていくということでありました。なぜ今、歴史教育が問題となっているのか。それは、政治外交の都合で、特に現近代史が近隣のアジア諸国の機嫌取りに終始しているというふうに思えるわけであります。
 こんな事件がありました。高知大学教授で、日本の近代史専攻の歴史学者・福地惇氏は、大学をやめて文部省で歴史教科書の検定作業に当たる主任教科書調査官になったわけであります。ところが、半年程度で文部省は福地氏を厳重注意処分とした上で更迭し、他の職務につくことを命じたのであります。一体何があったのでしょうか。
 ある月刊誌の座談会で福地氏は、次のように発言をしたそうであります。「私は今年の四月から文部省の教科書調査官になったんですが、平成十年度は小学校の社会科で六年生から日本史が入っていまして、それを読むと近代史が幕末から現在までの半分ぐらいあって、ほとんど戦争に対する贖罪のパンフレットなんです。それで、侵略戦争を二度としないようにするためにはどうしたらいいのかということが最後の結びになっている。僕はちょっと気が滅入りました。あの戦争は、よかったとは言いませんが、わけありでああいうことになったわけで、日本だけが悪いという感じで書かれると子供たちは本当にどういう気持ちがするだろうかと思いますね」という内容でありました。しばらくして、中国の江沢民国家首席の来日の時期に共同通信社がこの発言内容を記事にすると、その三日後に文部省は福地氏の処分を決めたのであります。
 とにかく、日本がアジア諸国に対し悪逆非道なことをしてきた歴史の国であるように歴史教科書を書くことで近隣諸国が喜んでいる、いやそれ以上に、そういう国であったという歴史でないと納得いかない国が存在しているようであります。こんなことをしていたら、日本の教育は果たしてどんなことになるだろうか。
 新学習指導要領には、我が国の国土と歴史に対する理解と愛情を育てると明記されておりますが、今の歴史教科書による歴史教育はとんでもない方向に向かっているように思えてなりません。また、学習指導要領に言うところの国際社会に生きる民主的、平和的な国家社会の形成者として必要な公民的資質の基礎を養うという日本人をつくることが果たしてできるのでありましょうか。
 これはスイスの話でありますが、スイスのジュネーブがまだ都市国家であったころ、ジュネーブ城に突然サボア軍──フランスの軍隊──が攻めてきたと。城壁にはしごをかけてサボア軍が上ってきたとき、場内はちょうど昼食の準備中だった。異変に気づいた主婦たちは、とっさに煮えたぎるスープを城壁の上からかけて敵を退けたという。この話は、スイスのどの教科書にも載っておるわけであります。そして、その日を記念して町ではお祭りを行っております。サボアの軍装をした男たちに縄をつけて歩かせ、主婦たちが後からむちで打って町じゅうを練り歩く、そういう祭りであります。また、スイスの「民間防衛」という本が各家庭に置かれており、その巻頭に国防大臣が一文を書いております。「我々は、過去に近隣諸国に攻め込むという失敗もやった。今、我々が聡明なのは、その先祖たちの失敗のおかげである」と書いてあるそうであります。私は、スイスの国民が歴史教育の中で、次代の子供に自分たちの国をもっと立派で幸せな国にしてほしいというメッセージを伝えているように思います。
 また、福沢諭吉が言っております。「一種の人民、共に世態の沿革を経て回顧の情を同じうする者、即ちこれなり」、これは一種族の人民が共通の歴史を経て、それへの慈しみを共有することにあると言っているのであります。国民国家における国民意識、すなわち自分たちは国家の構成員なのだ、国家を支えていくんだという意識は歴史を共有することからはぐくまれると、福沢諭吉は指摘しております。
 自国の歴史を否定的にのみ語る教科書、そのような教科書を持つ国民は、果たして国際社会の中で尊敬される国際人として存在することが可能でありましょうか。
 そこで、教育長に、歴史教育の意義と使命についてお考えをお聞かせください。また、最近論議されている歴史教科書問題についてどのようにお考えになっているのか、お伺いいたします。
 次に、少子化対策についてお尋ねいたします。
 高齢化社会の問題は、人が長生きするのが悪いのではなく、少子化に大きな原因があるのであります。高齢者の比率が高いことに問題があり、出生率が上昇すれば高齢化社会から脱却することができるわけであります。このままでは、年金制度を初めとする社会保障制度は破綻してしまうし、さまざまな産業分野で労働力不足が起こってまいります。今でさえ、日本の農林水産業において後継者がなくて困っている現状であります。ローマが滅びたのは少子化が原因であったという説もあります。傭兵を外国人に任せたことが崩壊につながったそうであります。そうすると、少子化問題は大きくは民族の崩壊につながりかねない国家存亡の問題であります。
 最近、この少子化問題について、社会に対して問題提起をされ、行政が緊急に取り組まなければならない問題とされてきました。そして、この少子化問題への対策として、国のエンゼルプランを初め、さまざまな施策が講じられているところであります。しかし、出産という個人的な事柄に関するだけに、少子化対策は非常にデリケートな問題を含んでおります。出生率低下の原因は、一般的に女性の高学歴化、晩婚化、住環境の問題などが挙げられております。経済的な環境の問題で、産みたくても産めないというのが現状でないかと思います。
 それでは、一体どうしたらいいかということであります。今国会に少子化社会対策基本法案が提出されております。これからは、国の緊急課題として取り組まなければならないことと思います。昔は、多くの庶民の生活というものは大変苦しかったというのが相場であります。苦しい中でも、子供を何人も産み育てたものであります。それは、多分、現状の生活が苦しいので将来の夢を子供に託し、その夢の実現の可能性を大きくしようということで、子供をたくさん産んだのではないかと思います。
 「子宝」という言葉があります。子供は一家の宝であったわけであります。最近、子供を虐待するということが新聞紙上で大きく取り上げられております。最近、ちょくちょく起こっております。これは、子供が宝であればそんなことは起こり得ないわけであります。子供もまた、兄弟が何人もいれば、さまざまな世界が広がり、他人を思いやる心もはぐくまれるものであります。
 現在では、日本人の九〇%以上、もっとそれ以上に自分の生活は中流であるとの意識を持っているので、満たされない現状に対して子供を産み育てて将来に託するということはないだろうと思います。そこで、これから子供をたくさん産んでもらおうと思えば、将来に子供がたくさんいることが特別すばらしいという大きな夢を与えることが必要ではないかと思います。具体的には、例えば子供が三人、四人、そういう子供を育てて成人すれば、その親に、特にお母さんに十分な生活ができるような特別年金のようなものを支給するといった、将来の生活を保障する制度みたいなものも一度考えてみなければならないのではないかと私は思うわけであります。
 目先の環境整備、あるいはまた少子化に対する対症療法的なその場限りの制度だけでは、現在の若者は子供を多く産まないだろうと思います。また、子供を多く持っている人を社会が厚く待遇するとか尊敬をするというふうな社会のムードをつくることも必要ではないかと思います。そういう県民意識が、私は今一番大切ではなかろうかと思います。例えば、子供をたくさん立派に育て上げた人を知事が県政功労するとか、そういうことをやっていただきたいなと思います。
 そこで、お尋ねしたいわけでありますが、県は少子化対策に向けてどのような展望を持っているのか、また県独自の対策についてもお聞かせください。
 最後に、県信問題についてお伺いいたします。
 この問題については、きょう冨安議員も質問されたし高田議員も質問されて三番目になるわけでありますが、自民党県議団を代表してこの質問をさせていただきます。
 一昨年三月二十七日、和歌山県商工信用組合の経営が破綻し、紀陽銀行への事業譲渡が決定されたとき、地域の主要金融機関としての長い歴史を誇った県信がなくなるということについて大変残念に思った次第であります。
 県信は、昭和二十九年の設立以来、本県における中小企業向け金融機関として中心的な役割を果たしてまいりましたが、バブル経済の崩壊など厳しい経済環境の中でその経営が行き詰まり、平成五年五月、市川理事長が就任し、平成六年度、店舗統廃合、人員削減、債権回収を柱とする再建計画をスタートさせ、鋭意その再建に取り組まれてきたところであります。県も、預金者や中小零細企業等の保護を図るため三百五十億円の県信再建支援を行ってまいりましたが、そのかいもなく経営が破綻し、さらに今回、旧経営陣が逮捕されるという重大な事態に陥ったわけであります。
 まず、県の支援にもかかわらず県信を破綻に至らしめた原因はどのようなものであったのか、また、今回の容疑事実となっている融資案件に加え、一部報道によると不動産会社グループに約三百億円の融資が行われてきたということでありますが、これらに対し県はどのような指導を行ってきたのか。
 最後に、事態の重要性にかんがみて、あえて質問をさせていただきます。指導監督を行うべき立場にある県として今回の事態をどのように受けとめているのか、以上、商工労働部長の答弁を求めます。
 これで、一回目の質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
○議長(下川俊樹君) ただいまの吉井和視君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 吉井議員にお答えをいたします。
 吉井議員ご指摘のように、私も美しい県土は将来の県民のための貴重な財産であり、生活及び生産活動の基盤であると考えております。
 しかしながら、本県は過去幾たびか自然災害に見舞われてまいりました。そのため、治山、治水を初めとする各種防災施設の整備を進めるとともに、多重性、代替性に富んだ交通網及び情報通信網の整備充実を図り、安全で安心できる県土づくりを進めていく考えでございます。さらに、環境保全の観点から、県土は自然と人間の共生の場であるという認識のもとに、県環境基本計画に基づき本県が誇る豊かな自然環境を保全していくとともに、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会づくりを県民の皆さんとともに推進してまいりたいと、このように考えてございます。
 あとの問題は、関係部長から答えさせていただきます。
○議長(下川俊樹君) 生活文化部長大井 光君。
  〔大井 光君、登壇〕
○生活文化部長(大井 光君) 吉井和視議員ご質問の、県民運動の推進課題と今後の取り組みについてお答えいたします。
 現在、県下では多種多様な県民運動が展開され、県勢の発展と県行政の円滑な推進に大きな貢献をいただいているところでございます。県行政の目的達成を図るためには、県民の方々と県が一体となり県民運動として盛り上げていくことが不可欠でありますが、従来の県民運動は、どちらかといえば県が運動のテーマを提示するなど、主導してきたところがございます。しかしながら、県民運動の本来のあり方は、議員のお話もございますように、県民みずからがよりよい郷土づくりに向けて取り組んでいただくことが重要であり、そのためには県民の方々にいかに自主的、主体的に運動に取り組んでいただくかが課題となってございます。
 そこで、今後県民運動を促進するに当たり、県といたしましては、県民の方々が積極的かつ自主的、主体的に運動に取り組んでいただきやすくするため、関連情報の提供や活動の機会、場所の提供なども含めた環境づくりをより積極的に進めてまいる所存でございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 知事公室長大平勝之君。
  〔大平勝之君、登壇〕
○知事公室長(大平勝之君) 県民運動のうち、北方領土返還運動と北朝鮮による拉致者救出運動についてお答え申し上げます。
 初めに北方領土問題についてでございますが、北方領土の一日も早い返還は、吉井議員お話しのとおり、国民一人一人の願いであり、日本の平和と安全にかかわる重要な問題であると認識してございます。
 県といたしましても、昭和五十六年に発足、歴代県議会議長が会長を務められている北方領土返還要求運動和歌山県民会議と歩調を合わせて県民の皆様に理解と認識を深めていただく広報啓発活動、署名運動などを行っているところでありまして、去る二月七日には県民会議会長の下川議長を初め、県議会議員の皆様や県民の皆様、総勢四百七十名の参加のもと、十九回目の県民大会を開催いたしました。また、昨年の秋には早期解決を国民に訴える全国縦断キャラバンが実施され、全国の都道府県知事から託された早期解決に関する要望書が総理大臣に伝達をされました。本県の要望書についても、県民会議近畿ブロック会長である下川議長から総理大臣にお渡しをいただいたところでございます。
 今後とも、北方領土返還要求運動和歌山県民会議等、関係団体の方々と一層連携を密にし、一日も早い北方領土の返還実現に向け取り組んでまいりたいと存じます。
 次に北朝鮮による拉致疑惑問題についてでありますが、被害者の家族の皆さんのお気持ちを思うと、強い怒りを覚えるものであります。この問題は極めて重大な国の外交にかかわる問題でもあり、国会等において幅広い論議がなされ、政府において適切に対応されることを願うものであり、政府を後押しする民間レベルでの運動が盛り上がっていくことも大切であろうと考えてございます。
 行政に携わる者として一日も早い解決を願うものであり、今後の国の対応に注目してまいりたいと考えております。
 以上です。
○議長(下川俊樹君) 福祉保健部長小西 悟君。
  〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 県民運動のうち、少子化対策についてお答えをいたします。
 県におきましては、安心して子供を産み育てられる環境づくりを進めるため、平成八年度に喜の国エンゼルプランを策定し、取り組んでいるところでございます。
 子供を産み育てることに夢を持てる社会づくりを総合的に推進するため、社会全体で若い世代を支援していくことが重要であり、議員のご提言も踏まえ、今後、和歌山県子育て環境づくり推進協議会や、現在実施中の子育て環境づくりアンケート調査の結果等を参考にしながら、施策に反映し、子育てに生きがいを持てる社会づくりに努めてまいります。
 本年度の事業としましては、子育て支援のための育児応援ブックを十万部作成し、県内の小学生以下の子供の全家庭に配付する予定にしてございます。また、「すこやか・あんしん」子育てフェスタや子育てサポートセミナーを開催するとともに、多様な保育サービスの充実や育児と就労が両立できる雇用環境づくり等の事業を実施してございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 商工労働部長上山義彦君。
  〔上山義彦君、登壇〕
○商工労働部長(上山義彦君) 県信問題についてお答えします。
 県商工信用組合の破綻が地域経済に与える影響の重大性にかんがみ、県としては県信の再建に向け、全国信用協同組合連合会、紀陽銀行との協調で総額三百五十億円の低利融資を行う一方、従来から検査等を通じ経営改善に向けて指導してきたところであります。
 しかしながら、店舗統廃合や人員削減につきましては平成六年度から九年度にかけて十二店舗の統廃合や百五十五人の人員削減を実施し、ほぼ計画どおりに進んだものの、過去の拡大路線による特定企業への過大融資の整理が進まず、また、長引く景気の低迷に加え、土地価格の下落等、各般の事情もあり、不良債権の回収が極めて困難な状況となったところであります。
 このような状況の中で、平成八年六月、いわゆる金融三法が成立し、平成十年四月から業務停止命令も含めた厳しい行政措置を内容とする早期是正措置が導入されることになり、平成十年、自主再建を断念せざるを得なくなったところであります。
 県といたしましては、県信に対し、大口限度額を上回る貸し出し、また員外貸し出しや大幅な担保不足等については従来から検査を通じ改善を指示してまいりましたが、再建計画が始まった平成六年度以降は、検査に加え再建計画の進捗状況についてのヒアリング等を行うなど、種々の機会を通じ指導を行ってきたところであります。
 議員ご指摘のように、県は預金者や中小零細企業者等の保護を図るため総額三百五十億円の県信再建支援を行ってきたにもかかわらず、諸般の事情によりその経営が破綻し、さらに今回、経営陣が逮捕されるという重大な事態に陥ったことにつきましては残念に思っているところであります。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 歴史教育と教科書問題についてお答えいたします。
 歴史教育が目指すものは、我が国や世界の歴史についての理解と認識を深め、国家社会の有為な形成者として必要な自覚と資質を養うことでございます。指導に当たっては、客観的かつ公正な資料に基づいて生徒が歴史的事象を正確に理解し、さまざまな角度から考察し、正しく判断する能力を育成することが肝要であります。
 歴史教育においては、こうしたことを通して他国を理解し尊重する態度を身につけさせるとともに、国際社会に主体的に生きる日本人としての自覚や誇りをはぐくんでいくことが大切であると考えております。
 教科書につきましては、文部省において教育内容の適正さ、教育の中立性の確保などの観点から検定が行われているところであります。教育委員会といたしましては、学習指導要領の趣旨にのっとり、歴史的事実を正しく踏まえた教育をより適切に行うよう各学校を指導してまいる所存でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二十九番吉井和視君。
○吉井和視君 答弁ありがとうございました。
 教育長に歴史教育と教科書問題について答弁をいただきました。大変すばらしい答弁でありますが、現実が違うわけなんです。
 今の歴史教科書は、私が考えるところによりますと、先生方の意見を集約するような団体からそういういろんな要請があって、それに基づいてすべての教科書会社がつくっておると。教科書会社はやっぱり企業家ですから、現場の要請にこたえて、売れる教科書をつくるわけです。そして、その教科書会社がつくった教科書が文部省の検定を通っておる。その文部省の検定が一番大事なところであるんですけれども、文部省は近隣諸国からコントロールされてなかなか思うことを言えない中でそのまま検定を通ってしまう。そこに問題があるわけなんです。
 そこで、私が県民運動の中で取り上げたのは、歴史教科書というのは、教育長が答弁で述べられたように、次代の県民を養う大変重要な問題であります。果たしてだれのために歴史教科書がつくられておるかということでありますが、それが全くわからないというのが現状であります。
 そういうことで、和歌山県内にも「新しい歴史教科書をつくる会」というのが誕生し、野井会長さんを初め我々県職員の先輩である鈴木啓助さんが──きょうも傍聴に来ていただいておりますけれども──取り組んでおられます。私は、地方議会の議場の中で、県民の皆様の前でこういう問題を取り上げて、こういう主張が正しいものかどうか県民の皆さんに評価をしていただく、そういう機会があってもいいのではないかということで取り上げさせていただきました。
 教育長に、一言お尋ねいたします。
 教育長は、立派な見識を持っておられる方だと思います。そこで教育長、教育委員会が本来、教科書とかそういうものを選定するわけであります。そういう選定作業をする中で、今のような歴史観で書かれている教科書が本当にいいのかどうか、どういう見識を持っておられるのか、私は聞きたいわけであります。まずそのことをお尋ねいたします。
○議長(下川俊樹君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) お答えいたします。
 歴史教育一般につきましては先ほど申し上げたとおりでございますが、その中で重要な教材である教科書については、特に歴史の見方、考え方というのは多様性を持っていると。取り扱われる内容は客観的で公正な資料に基づく必要がございますが、それをさまざまな角度から考え判断をしていくということは、歴史を深く学んでいく上で極めて重要であると考えております。
 したがいまして、検定の場でどういう扱いがなされるかは私どもコメントする立場にありませんけれども、各事象、出来事の記述方法や取り扱いについて十分に特色を持った教科書が存在することは選択の余地をそれだけ広げることにもなり、望ましいことであると考えております。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
 二十九番吉井和視君。
○吉井和視君 最後に、要望だけ申し上げます。
 私が申し上げた教科書の選定作業は、これからさまざまなそういう歴史教科書ができてくると思います。そこで大事なのは、目黒委員長、教育委員会の仕事であろうと思います。そういうことを考えて、こういう歴史教科書がいいんだというような研究をすることも大事であろうと思いますので、そのことをお願い申し上げまして、私の一般質問を終わらせていただきます。
 以上です。
○議長(下川俊樹君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で吉井和視君の質問が終了いたしました。
 お諮りいたします。質疑及び一般質問は、以上をもって終結することにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(下川俊樹君) ご異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問はこれをもって終結いたします。
 次に、ただいま議題となっております全案件は、お手元に配付しております議案付託表のとおり、それぞれ所管の常任委員会にこれを付託いたします。
  【日程第三 請願付託の件】
○議長(下川俊樹君) 次に日程第三、請願付託の件について報告いたします。
 今期定例会の請願については、お手元に配付しております請願文書表のとおり、所管の委員会にこれを付託いたします。
 お諮りいたします。三月十五日から十七日までは常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これにご異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(下川俊樹君) ご異議なしと認めます。よって、三月十五日から十七日までは休会とすることに決定いたしました。
 なお、常任委員会の会場はお手元に配付しておりますので、ご了承願います。
 次会は、三月二十一日再開いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後一時五十四分散会

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