平成12年2月 和歌山県議会定例会会議録 第7号(冨安民浩議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時四分開議
○議長(下川俊樹君) これより本日の会議を開きます。
  【日程第一 議案第一号から議案第百十九号まで、並びに報第一号、報第二号】
  【日程第二 一般質問】
○議長(下川俊樹君) 日程第一、議案第一号から議案第百十九号まで、並びに知事専決処分報告報第一号、報第二号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 三十六番冨安民浩君。
  〔冨安民浩君、登壇〕(拍手)
○冨安民浩君 おはようございます。
 平成十二年度の和歌山県の予算案を審議する当初議会が二月二十五日に招集され、三月七日より議員各位による論戦が開始されました。延べ十六名の先輩・同僚議員より、それぞれの地域の問題、あるいは和歌山県の未来の展望につながる諸課題への取り組み等々をお聞かせいただきながら、議員各位の日ごろのご精励ぶりに感激をいたし、敬意を抱く次第でございます。議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして質問を始めさせていただきます。
 第二期県政推進に際し、県政のあらゆる分野を例外なくその制度の再点検と見直しをし、二十一世紀に輝くふるさと和歌山県を創造するための諸課題、諸施策に取り組む「挑戦の県政」と位置づけ、厳しい財政状況下での西口第二期県政元年の予算案が今議会に提案されています。まず、知事初め財政課の諸氏に対し、予算案編成におけるご苦労にねぎらいを申し上げるものであります。今なぜねぎらいかと言えば、それは厳しい財政状況下での将来展望につながる諸課題への取り組み、諸施策実施、多岐にわたる県民ニーズへの対応等々に加え、我が国が長年推進してきた経済効率至上システム、そのシステムが短期間で我が国を経済大国に築き上げたのでありますが、その中で効率を求めるがゆえに放置されてきたいわゆる負の部分への処理対策──産廃問題はその典型であると思います──への財政措置を強いられる局面に直面しているからであります。こうした難局の中、向こう四年間、和歌山県政のかじ取りを西口知事、あなたに託すと県民から選択された責務は重大であります。西口知事におかれましては、全知全能を傾注され、県民の期待にこたえ、この難局を打開され、将来展望明るいふるさと和歌山づくりを目指して頑張っていただきますようお願い申し上げるものであります。
 なお、昨年秋の知事選において西口知事を支援した議員はその責務を共有しているということも申し添えます。
 私はここで、国、地方の財源問題について私見を述べ、知事の見解を確認の意味を込めて伺うものであります。
 近年、予算編成に際し、健全財政とか財政の健全性とか、よく論議されます。後世にツケを残すとか、あるいは国民一人当たりにすると幾らの借金だとか言われます。もとより、財政は健全であるべきですし、健全にこしたことはありません。財政運営に当たっては、その基本に忠実たるべきは言うに及びませんし、当然のことでもあります。しかしながら、健全財政至上主義では、厳しい経済情勢、歳入減の中、明るい展望につながる諸施策の遂行はかなわず、政治の責任は果たし得るのでしょうか。ノーと言わざるを得ません。苦しいときこそ、厳しいときこそ、通常にも増して政治の出番であり、政治がその役目を果たせるよう、政治の責任で財政対策を講ずるべきなのであります。
 我が国は、一九七〇年代以降、バブル崩壊に至るまでの長きにわたって、いわば官民挙げての日本独自の方式で欧米へのキャッチアップ体制を組み、その結果、その時代時代の成長産業が日本経済の牽引役となり、一貫していわゆる右肩上がりの成長を遂げ、必然的に歳入を押し上げてまいりました。その間、国は持続的成長を図るべく、財政金融政策を時としてはアクセルに、また時としてはブレーキにと使い分けてきたのは、ご承知のとおりであります。国の政策よろしきと国民の勤勉性を得て、海外市場で日本は稼ぎに稼ぎまくってまいりました。一九八〇年代には経済大国と言われるほど著しい発展を遂げてまいりましたが、一九八五年のプラザ合意前後を境として、いわゆる経済大国日本に対し、アメリカを中心とする世界の自由主義体制国家からの強い見えざる圧力による日本方式の是正を迫られ、前川レポート等に見られるとおり日本経済運営の内需振興等への転向を余儀なくされ、バブル経済に突入していったのは、ご承知のとおりであります。その間の経済規模の膨らみは、国の財政政策を効果的に有効作用せしめる限度オーバーに拡大はしましたが、一部政党の人々がご指摘されるようなことはなく、その底がたい効果は明らかであります。
 個人消費が落ち込み、民需活動低迷の折、景気刺激財政政策等なくしては国の経済活動は麻痺しかねないと確信いたします。今日、政治に課せられた大きな命題の一つは未来の明るい展望につながる景気回復であり、経済の活性化であります。また、世界の自由主義体制国家の有力な一員として、世界も日本の景気回復を望んでいるわけであります。現下の情勢下、まことに厳しい課題ではあります。
 昨日の経済企画庁の発表によりますと、昨年十二月期のGDPが六─九月期に続いてマイナス一・四%、年率換算するとマイナス五・六%になるわけでございますが、今政治はこうした状況に対して手をこまねいているわけにはいきません。いかなる政策、制度を駆使しても、民の活動が起き上がり、個人消費が伸び、ある程度の景気回復のめどがつくまでは官がその役目を果たすのは当然であります。たび重なる景気対策により累積赤字が膨らみ、国、地方合わせて六百数十兆円とも言われておりますが、その原資は国民の、あるいは国内法人の今日までの蓄積財であり、時としては日銀が情勢判断に基づき通貨供給量をふやす目的で一時買い入れることも考えられますが、基調的には日銀が公債を引き受けるわけではありませんし、ましてや海外資金に依存しておるわけではないのです。加えて、その蓄積財も景気低迷の中、行き場を失った資金でもあるわけですし、これらの資金が動き出せば歳入の増大につながるわけですが、明るい展望につながる諸施策実施に不足する資金を有利子債でこうした国内蓄積財に求めるのが今日の厳しい財政状況下では政治がとるべき対策だと思います。今この財政策の延長線上で本県の予算も編成されておるわけでございますが、現下の財政対策について知事の見解を確認の意味を込めて伺うものであります。
 次に県商工信用の問題について、何点か質問をいたします。
 去る三月八日、県信経営陣が大口融資先である不動産会社グループに対し、回収不能を承知で追加融資を続けていたという容疑で逮捕されました。バブル経済の崩壊と金融機関が相次いで淘汰されるという厳しい時代背景の中で、平成七年には東京のコスモ信用組合、大阪の木津信用組合と我が国を代表する信用組合が破綻し、本県においても平成八年十一月、阪和銀行の業務停止に始まり、平成十年三月には県商工信用組合、さらに翌年の十一年三月には紀北信用組合と、地元金融機関の経営破綻が相次いだところでありますが、今また県信において再建計画に取り組んでいた経営陣が背任容疑で逮捕されるという極めて深刻な事態に陥ったわけであります。
 県信は、昭和二十九年七月、西牟婁商工信用協同組合として田辺市において設立され、昭和三十一年に名称を和歌山県商工信用組合と改め、昭和三十三年には県下全域に営業区域を拡大し、ほぼ全市町村に支店を設置するなど、本県の中小企業専門金融機関として地域経済に大きな役割を果たしてまいりました。創業者である松本清男氏は昭和五十一年から平成四年までの十六年間にわたり全国信用協同組合連合会の理事長を務めるなど、全国的にも屈指の信用組合となりましたが、その後、拡大営業戦略が裏目に出て経営不振に陥ったため松本氏が引責辞任し、平成五年五月に市川龍雄氏が新理事長に就任され、平成六年四月から再建計画をスタートさせました。市川理事長は、店舗統廃合や人員削減などの再建計画を推進するために尽力されましたが、厳しい経済環境の中で、そのかいもなく再建を果たすことができなかったものの、その後の破綻処理に際しても、紀陽銀行へのスムーズな事業譲渡のために尽力されたと聞いておりましただけに、また市川氏は県の幹部として、その人柄、責任感の強さ、能力等をかいま知る者として、今回の事態は私としてもまことに残念のきわみであります。
 そこで、当局にお伺いをいたします。
 まず、県は今回の事態をどのように受けとめているのか。
 次に、県信は平成六年度から店舗統廃合、人員削減、債権回収等を柱とする再建計画をスタートさせ、県も中小企業専門の金融機関である県信の立て直しを図ることが県経済にとって不可欠であるという判断からさまざまな支援を行ってきたものと考えますが、この間、県はどのような指導監督をしてきたのか、また県の指導監督責任についてどのように考えているのか。
 最後に、再建支援のために県は五十億円の低利融資を実行しましたが、この五十億円は最終的にどのように処理されたのか。
 以上、商工労働部長の答弁を求めるものであります。
 次に、河川管理についてお尋ねをいたします。
 河川管理がその時々の時代要請に基づき進められてきたことは、申し上げるまでもありません。河川を呼称するまくら言葉に、「母なる」とか「恵みの」とかがよく使われます。河川とその流域住民生活との密着ぶりや河川が及ぼす多面的な恵みをあらわす言葉でもあり、河川流域は人々の生活住居の場であり、河川が人々の生活の源であり、また文明を生む源でもあることは歴史の示すところでもあります。その母なる恵みの河川も時としては大洪水を引き起こし、財産、生命をものみ込むことになりますし、その防災、治水対策が長い間河川管理の根幹であり続け、水を治めるは国を治めるなりとまで言われたのであります。その後、我が国の経済変化が河川に利水目的としての存在意義をも加えさせ、治水目的、利水目的の二本柱による河川管理が進められてまいりました。我が国の経済成長に豊かな河川水が大きく寄与してきたのはひとしく認めるところであり、経済伸展に伴う住民生活の向上にもしかりであります。近年の急激なる社会経済情勢が住民の価値観や心の変化をもたらし、河川に新たな大きな役割、すなわち潤いや水辺空間を求めるに至り、平成九年の河川法改正には従前の治水、利水に加え、幅広い意味での環境が組み込まれました。
 本県には、流域住民と共存するような形の河川がたくさんあります。私は、この機会に河川別のあるべき姿、また存在意義を流域自治体等を中心に協議の上明確化し、整備計画を定め、河川管理をさらに実効性のあるものとし、流域一帯の河川愛護を深める運動展開につなげさせてはどうかということを提案し、土木部長の見解を伺うものであります。
 なお、新しい河川法のもとで建設に向け調査が進められている印南町切目川ダム建設を進める中で、新法の趣旨をどう生かし取り組むかもお尋ねをいたします。
 ダムの防災、利水効果はひとしく認めるところでありますが、全国各地でダム建設計画が停滞し、あるいは見直しを余儀なくされておるわけであります。那辺に原因があるかということは、お互い想像が容易であります。ぜひ、この切目川ダム建設に向けましては、全国的な範となるべくお取り組みをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
○議長(下川俊樹君) ただいまの冨安民浩君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 冨安議員にお答えをいたします。
 ご質問は、本県の財政運営というより、むしろ国の経済政策に関する幅広い知見をお示しになられたものと受けとめてございます。十分に参考にさせていただきたいと思います。
 さて、議員もご指摘のように、私自身も現下の極めて厳しい経済情勢のもとでは、現存する資源を有効に活用することが経済政策本来の目的であることを踏まえまして、そのために政府が積極的な役割を果たすべきであると思いますし、民間部門における貯蓄を有効に活用して良質な基盤整備を推進することは、公債費負担によって将来の財政構造を過度に硬直化させない限り、将来世代にとっても有効なことではないかと考えてございます。他方、将来においては、経済成長が鈍化する一方で、高齢化の進展等に伴い、行政需要がますます増大すると考えられます。したがって、平時の財政運営を担うに当たっては、現世代の負うべき負担を将来へと転嫁することには問題がございますし、財政赤字の拡大が長期的な経済成長の妨げとなることは避けなければなりません。
 このため、我が国経済が本格的な回復軌道に乗った後には、少なくとも政府債務残高のGDP比が上昇しないように、国、地方を通じた財政健全化に努める必要があると考えてございます。
 以上であります。
○議長(下川俊樹君) 商工労働部長上山義彦君。
  〔上山義彦君、登壇〕
○商工労働部長(上山義彦君) 旧県信問題についてお答えします。
 去る三月八日、県商工信用組合の経営陣が背任容疑で逮捕されたことはまことに残念であります。県といたしましては、信用不安の防止、預金者や中小零細企業者の保護を図るため、県信の再建に対し支援を行う一方、大口限度を超える貸し出し等につきましては従来から検査等を通じ、改善を指示してきたところでありますが、種々の事情により経営改善が計画どおり進まず、その結果、経営が破綻して今回のような事態に至ったことは、大変残念に思っております。
 平成六年度を初年度とする県信の再建計画は、店舗統廃合、人員削減、債権回収を三本柱とするもので、県といたしましても、県信の破綻によって県内中小企業者の経営に大きな打撃を与えることのないよう、全国信用協同組合連合会、紀陽銀行と協調して総額三百五十億円の低利融資を行うなど、積極的に支援してまいりました。しかしながら、店舗統廃合や人員削減についてはほぼ計画どおり進んだものの、長引く景気低迷等により債権回収が計画どおり進まず、平成九年度決算の状況から自主再建を断念せざるを得なくなったところであります。この間、県は定期的に検査を実施するとともに、再建計画の進捗状況についてヒアリングを行うなど指導してきたところであります。
 その後、平成八年六月、いわゆる金融三法の成立による早期是正措置の導入等、諸般の事情により自主再建はならず、紀陽銀行へ事業譲渡されることとなり、県信という中小企業専門金融機関の一つが消滅するという結果になりましたが、この事業譲渡は地域経済への影響を最小限にとどめるためには、当時とり得る最善の方法であったと認識しております。
 ご質問の低利融資につきましては、平成六年度から県信の再建支援のため、県が五十億円、紀陽銀行五十億円、全国信用協同組合連合会二百五十億円の計三百五十億円の低利融資を行ってまいりましたが、県信はこれを全額同連合会に再預託し、その運用益を再建のための財源の一部に充当するというものでありました。最終的には、県の五十億円も含め、平成十年三月に全額回収しているところでございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 土木部長大山耕二君。
  〔大山耕二君、登壇〕
○土木部長(大山耕二君) 河川管理行政についてのご質問のうち、まず河川管理のあり方と流域一帯の河川愛護を深める運動展開についてお答えいたします。
 平成九年の河川法改正を受け、今後、県内の各水系ごとに河川の整備や管理に関する事項を具体に定める河川整備計画を策定してまいりますが、十分に関係市町村長及び地域住民の意見を伺い、これを適切に計画に反映させることでさらに実効性のある河川管理を実現してまいります。
 また、親しみの持てるふるさとの川づくりには、水質の保全、美化の推進等の観点からも地域住民の協力が極めて重要であると考えております。本県には現在三百二十余りの河川愛護会があり、八万二千名余りの方が加入しておられます。さらに多くの皆様の協力を得るためにも愛護会活動の活性化が重要と考えておりまして、平成十二年度は県内一斉河川清掃日の設定、愛護会相互の情報交換等の措置を講じてまいりたいと考えております。
 次に、改正河川法を踏まえた切目川ダム建設の取り組みについてでございますが、改正河川法に基づき、切目川ダム計画を盛り込んだ切目川水系河川整備計画の素案を昨年十一月八日に印南町において町民の皆様にご説明し、多数のご意見をいただきましたので、これを適切に反映させる措置を講じたところでございます。
 ダムの建設に当たっては、環境に配慮した工法を採用するなど、周辺の自然環境の保全に努めてまいります。また、町当局と協力し、予定地の方々のご要望等は十分伺い、誠意を持って対応してまいります。今後とも、関係者の方々のご協力をいただき、早期完成に向け努力してまいります。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十六番冨安民浩君。
○冨安民浩君 私は、今、知事に一つお願いを申し上げたいのであります。
 まさに大転換期の中で、県内の経済、社会情勢を取り巻く状況は多事多難であります。しかし、昨年秋の選挙において、多事多難なるがゆえに県民は、今の県政のかじ取り役として西口知事、あなたしかいないということで向こう四年間のかじ取りを任せたわけであります。どうか、知事が日ごろ言われる歴史の審判にこたえ得る県政を、本当に自信を持って堂々と展開していただきたい。
 そのことをお願い申し上げて、私の質問を終わります。
○議長(下川俊樹君) ただいまの発言は要望でありますので、以上で冨安民浩君の質問が終了いたしました。

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