平成12年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(飯田敬文議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時四分開議
○議長(下川俊樹君) これより本日の会議を開きます。
  【日程第一 議案第一号から議案第百十九号まで、並びに報第一号、報第二号】
  【日程第二 一般質問】
○議長(下川俊樹君) 日程第一、議案第一号から議案第百十九号まで、並びに知事専決処分報告報第一号、報第二号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第二、一般質問を行います。
 四十三番飯田敬文君。
  〔飯田敬文君、登壇〕(拍手)
○飯田敬文君 おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、質問に入りたいと思います。
 質問に入る前に、西口知事が県民のあらゆる階層の圧倒的支持のもとに二期目の当選をかち取られたことを、会派を代表いたしましてまずお祝い申し上げたいと思います。
 二十一世紀を目前にして激動する内外情勢の中で、和歌山県の将来のありよう、財政赤字と高齢化社会に対する福祉の増大、官と民の役割、権利と義務、公と私、民主主義とエゴ、山積する諸問題に対し、西口知事にかける県民の期待は大なるものがあります。さらに健康に留意され、閉塞する社会の打破に強力なリーダーシップを発揮することをお願いするものであります。
 それでは、通告に従い、質問に入らせていただきたいと思います。
 平成七年、国は財政の危機的状況にあることを発表いたしました。いわゆる財政危機宣言であります。あれから四年が過ぎた今日、当時二百二十五兆円であった国債残高は、昨年末には約三百二十七兆円に達し、加えて地方財政の債務残高も増加し、国と地方の長期債務残高はGNP比一二〇%に当たる六百兆円を超える額に達しております。今や、我が国は主要先進国の中で最下位に転落してしまいました。景気回復による税収増で賄い切れない額であり、歳出を削減するか増税をしない限り、財政赤字は確実に累積をしてしまいます。初歩的な財政の基礎的収支、いわゆるプライマリーバランスの達成すら困難な現状を考えると、既に我が国の財政は破綻していると言っても間違いのない事実であります。
 言うまでもなく、この財政赤字問題の本質は将来世代への負担の先送りであります。景気の浮揚を目的とする公共事業や減税対策は小渕内閣の目玉の政策であり、一定の成果は上げてきておりますが、財源を赤字国債に依存する方法では、これの返済が税金という形で、自分たちの子供はおろか、まだ生まれていない孫の世代まで負担が続き、経済社会にとっても大きな足かせとなっております。ひいては、超高齢化社会を迎えて負担増に苦しむ将来世代の困窮をもたらし、年金の行方や将来の増税の可能性など、国民に不安を増大させるものとなります。
 さて、我が和歌山県の現状はどうでありましょうか。県当局より先ごろ、平成十二年度新予算案の提示を受けたわけであります。西暦二〇〇〇年を迎え、未曾有の経済危機の中、行財政改革を実施し、しっかりとした構想を持って、二十一世紀における発展基盤の構築に、新しい県政の創造、二十一世紀のかけ橋予算を基本として、一般会計予算五千八百六十一億円の予算を計上されております。
 しかし、その中身は依存財源が三千八百九十五億円で、全体予算の六六・五%にも上り、極めて厳しい実態であります。前段でも述べましたように、国はもはや破産している現状を考えれば、近い将来、地方交付税や国庫支出金が頼れなくなるのは明白であります。
 一方、依存財源の中の県債への依存は五百三十六億円であり、実に全体の九%に上っております。県債の残高の推移を見てみますと、平成八年度で約五千十八億円であったものが本年は六千四百四十億円と大きく増加しており、本年度一般会計の自主財源千九百六十六億円の約三・三倍にも及び、県民一人当たり五十八万五千円の借金となって県財政を圧迫しており、財源不足であることは明白であります。この財源不足を補う方策として県債管理基金の取り崩しを行って不足を補っておりますが、その基金残高も平成六年から減り続け、昨年は残高約二百七十九億円であったものが、本年取り崩し額の百二十四億円を差し引くと百五十七億円の残高となります。このままいきますと、来年以降、県債管理基金も底をつくこととなってまいります。このたびの県の財政運営プログラムの提示は当面の赤字団体転落を免れるための緊急避難的なものであり、県民が本当に安心して生活できる景気にはなっておりません。
 このようなことを考えるとき、このような県債の返済計画を一体どのようにされるのか、基本的な考え方をお聞きするとともに、この際、将来の長期財政構造計画を早期に策定されてはいかがかと思うわけであります。どのように考えておられるのか、知事にお聞きをしたいと思います。
 さて、財源不足についてお聞きしてきたわけでございますが、財政の健全化を図る上で重要な基本は、古来中国の「礼記」から出た言葉「入るを計りて出ずるを制す」であります。ご承知のように、依然として景気の低迷による税金の減収や、財政制度の縦割り行政で知られる、自治体の使用目的を限定して硬直性とむだを生み出したこと、さらには、自治体側の内部要因である人件費の増加、公共事業のばらまきによる負担増、外部組織や第三セクターの財政破綻などが主な原因と考えられています。このようなことを考えてみますと、まずどのように収入をふやすかということが先決であります。
 税体系上の問題ではありますが、東京都の石原知事が提唱されている外形標準課税の導入や、全国の各自治体が工夫しているような都道府県民税の収入をふやす手だてを立てることが重要であります。過去とられてきた手法は公共料金の値上げでありますが、景気がこれ以上落ち込むことにつながるおそれがあること、何よりも県民や弱者に大きな負担をかけることとなるため、安易に実行してはならない問題であります。
 私は、収入の基本となる税体系を見直すところから始め、例えば新規企業誘致を行う場合、何らかの県民税の負担を義務づけることや、電源開発などの事業に課税するようなことを工夫すべきであります。後で述べる地方分権とも絡んだ問題であり、国の指導によらない県独自の税体系を構築することこそが重要であります。
 そのためには、根本的には国の所得税の現在の取り方、すなわち中央へ一たん吸い上げて再び地方へ交付税として再配分するという現税体系そのものを見直さなければなりません。すなわち、少なくとも近畿ブロック単位で徴税を実施し、その応分の負担金を国の方へ納付するという本来の税体系に戻すべきであります。そうすることにより、少なくとも現行の税務署、県税事務所、市町村税務課が再編統一でき、地方の税収の安定が図られるわけであります。県独自の税体系の構築について、その認識と将来展望をお聞きしたいと思います。
 これとともに、「出ずるを制す」ということから、行財政改革を強力に推し進めるべきであります。国は省庁再編に力を入れておりますが、この意義は、本来の主権者である国民に政治と行政を返還する大政奉還であると位置づけられております。私は、その基本にあるのは、約六百四十兆円に及ぶ借金を抱えた国の財政異常事態が推進の原動力であると思うわけであります。
 私は平成九年二月議会において、県財政を見据えた今後の効率的な県政づくりについて質問をさせていただいた経過がございますが、要するに、むだをなくすところから支出をはかろうということが肝心であります。
 民間企業活動が停滞をしておるというふうに言われている今日、県が一部出資している団体、また、民間が取り組むべき事柄と県が取り組むべきことをこの際整理し、例えば効率の悪い、または民間と競合する事業、強いて言えば企業局、土地開発公社、県住宅公社などを民間に委託、移行させてはどうか。抜本的な行政のスリム化を図る機構改革が必要であります。時代は官から民への移行であり、民間活力を引き出すためにも、官は民の実施できる事業を圧迫するべきではないと思うわけであります。
 前回の質問への回答では、外郭団体の実態を資本金の四分の一以上を出資している法人とし、その数は三十六法人、また各種審議会は六十四種類、七十三機関が設置されていると報告されました。そのとき当時の総務部長は、「今後とも県勢活性化、県民福祉の向上のために県政の一翼を担っていただくことが望まれ」るとした上で、「社会情勢の変化に対応できているか、あるいは県行政の中で果たすべき役割は何かという観点から、それぞれの実態、機能等について見直しを進め、経営の効率化を図」ると答弁をされておるわけでございますが、それ以降二年間、外郭団体の状態はどのように改善され、今後どのように見直していくのか、お聞きをしたいところであります。
 なお、それとかかわって、今回の予算に航空工学系大学の設置を提案されております。我が県の将来にとって、人材育成の面からも先端技術知識の養成は大変重要で必要なことであると認識をしておりますが、前段で述べてまいりました財政困窮の折、約百四十四億円もの事業費を投入することは、県債の増加を生むばかりでなく、その他財源に与える影響はどのようなものか、私は検討の余地があるものと考えております。
 例えば、私の地元の近畿大学、創立以来かなりたつわけでございますが、現在極めて就職状況もよく人気があると聞いてございますけれども、経営状況は極めて厳しいということをいつも耳にするわけであります。この工科大学についても、よほど特色のある大学を目指さなければ経営が成り立たないということで、危惧を持たざるを得ない、そのように感じるわけであります。
 外郭団体効率化質問以降の進捗状況と、県財政の現状を見据えた機構改革の推進についてお伺いをいたします。
 次に、地方の財政再建改革と連動する地方分権について質問をいたします。
 昨年七月、地方分権整備法が参議院の本会議において可決・成立いたしました。国と地方の間を従来の上下関係から対等・協力の関係へと変革することを柱としたもので、四百七十五の法改正から成る一括法であります。骨子は、国の役割を限定し、住民に身近な事務は自治体にゆだねる、機関委任事務を廃止することが大きな特徴であります。これによって地方自治体はどう変わるのか、本当に変わっていけるのか、甚だ疑問であります。先ほどより質問させていただいている地方の財政危機は地方分権と相まって考えるべきであり、財政の安定なくして地方分権はあり得ません。
 成立した地方分権整備法は、地方の課税自主権を拡大し、自治体が地方税法にない新税を創設できるとなっております。例えば、茨城県において、原子力関連施設の安全対策費を確保するため使用済み核燃料に課税する取扱税を新設したと聞いており、そのほかの自治体においても検討がされております。しかし、国と地方自治体の歳出を比較すると、地方が全体の三分の二を使っているにもかかわらず、税収に占める地方税は三分の一でしかありません。もともと国からの補助金や地方交付税なしには地方は成り立たないような仕組みがあり、これでは機関委任事務を廃止しても、地方は今までどおり国からコントロールされるしかない構造であります。
 地方分権を推進するに当たり、単に機関委任事務の廃止だけでは実行力に欠け、財源を確保した上での議論となることを認識すべきであります。例えば、国の所得税の一部を地方の住民税に切りかえたり、消費税の地方への配分を現状の一%から拡大するなどの方法をとるべきであります。このように、税体系全体の具体的な見直しが地方の自立を確立させることとなります。
 なお、これを行うには和歌山県単独ということでは厳しいものがあると思われますので、少なくとも近畿地方の自治体と一致協力して行う方が適切ではないかと考えます。県としての、経済的自立を目指した地方分権推進への基本的なお考えをお伺いいたしたいと思います。
 さらに、景気の低迷の中にあって各民間企業は、リストラに象徴される自主再建計画を実行し、合理化を進めております。一方、失業率は上昇の一途をたどり、自殺者も出す非常に厳しい現実を呈しております。中でも、超氷河期と言われる就職戦線は新卒者に大きなしわ寄せを呈し、勤労意欲の低下につながる心配が起こっております。不況とリストラに直撃されているのが中高年層なら、そのしわ寄せを受けているのは新卒者であります。
 この地方分権にかかわって国は、このたび職業安定行政も国に確保しようと動いております。今まで県庁内にあった雇用保険課や職業安定課を独立させ、国の役割として行うこととなったと聞いております。私は、このことは地方分権に対して逆行するものではないか、むしろ国の職安行政を県に一元化するべきではないかと考えるわけであります。このままであれば、地域の実態を踏まえたきめの細かい県独自の取り組みがなされない状況が予想されます。県独自の雇用の安定や職業相談などの職業安定行政のあり方をどのように認識され、今後どのように推進されようとしているのか、お伺いをいたしたいと思います。
 さらに、地方分権の推進についてであります。
 これは、効率と経済的基盤を基本とした構想でなければならないし、まず地域が主体となった計画を立てるべきであります。地方交付税の減少など、これからの地方自治体の財政からいって合併は地方自治体が生き延びていく上で不可避であることを、残念ながら認識しなければなりません。したがって、私は、このような状況に対して地方の方から積極的に市町村や県の立場に立って市町村合併を打ち出していくべきであると考えるところであります。ただし、和歌山県のような非常に広大な県は、地域の実情に即して、一律に編入するのではなく、でき得るところから将来を見越して展開を始めることが大事であると考えるところであります。
 なお、国は知事に対し、市町村合併を検討する参考として目安を策定するようにという要請があったと聞いておりますが、先ほども申し上げたとおり、合併は地方が主体となった取り組みにおいて推進されるべきであり、これに対して県は最大限の努力をするよう求めるものであります。
 例えば、市町村合併の推進に当たり、協議会や住民の意見を聞くシンポジウムなどの催しの経費を県が負担することや、市町村合併が現実のものとなったとき、これに係る公的施設の全面補助金交付などを検討し、県がこれからの自治体のあり方を指導することにより一層の推進につながるものと確信をいたします。市町村合併のあり方と推進における県の認識をお伺いいたします。
 続いて、私が何回も提言をいたしております紀泉百万都市圏構想の実現について質問をさせていただきます。
 これ以前にもこれに関する事柄をお伺いしたわけでありますが、単に構想の実現のみならず、低迷する和歌山県全体の浮揚につながるものと強く信じながら、実現に向けた具体的な質問をさせていただいたわけであります。
 この構想は、隣県である大阪府のみならず、国の政策にも関連する重要な事柄と考えております。関西国際空港の二期工事の中の二本目の滑走路が二〇〇七年に完成される見通しであることは周知の事実であり、これにおくれることなく我が県側の政策や事業を推進させることこそが和歌山県の将来の発展に不可欠であることを県として認識され、厳しい財政状況ではありますが、重点的な予算措置をとられ、今後の推進にご努力を求めるものであります。
 関西国際空港二期工事の中で、国、大阪府、和歌山県、関西国際空港会社で南ルートの建設調査費が平成十二年度予算に計上されました。これは和歌山県側としても絶好の機会ととらえ、これにつながる道路建設を強力に進めてまいらなければなりません。
 現在進行中の泉佐野岩出線は、この南ルートと直結する重要な路線であります。現在、岩出町において一部供用されておりますが、いまだ全線開通されておらず、なお一層の推進を強く求めるものであります。同時に、泉佐野打田線においては、大阪側で一部おくれをとっており、橋の全面取りつけとあわせて早急な改良を望むものであります。
 さらに、京奈和自動車道は、現在、橋本市─高野口町間が着工されたばかりで、紀北東道路の着工は依然として遅々として進んでおりません。当然、私が以前よりの質問において強く要請をしております紀北西道路は言うまでもない現状であります。関西国際空港二期工事の二本目の滑走路の完成までに残された時間は、七年であります。この現状で間に合うとは到底思えないのであります。
 道路建設は、ご承知のとおり、流通経路の確保による企業誘致の条件であり、冒頭から質問しております行財政の面や地方分権にも大きな役割を果たすものであるところから、早期に京奈和自動車道路が全面開通すべく強力な推進体制をとっていただきたいと思うわけであります。一方、これに伴う都市機能の充実は、市町村合併と相まって広域で促進し、下水道整備やごみ処理施設の建設を促進するとともに、住みやすく安全な地域づくりを進めていただきたい。
 なお、豊かな文化と自然を全国に発信した熊野体験博覧会の成功は、和歌山県のイメージを全国に宣伝できたものと敬意を表するところであります。こうした成果を踏まえ──かつらぎ山系にも自慢できるすばらしい歴史と文化と自然があるわけであります。これらを生かしての強化活性化事業をどのように進められていくのか。また、この文化、自然を訴えていく上で、数年のうちに全国育樹祭というイベントが予定をされているとお聞きしております。紀北活性化事業と絡めた交流イベントを開催することが景気刺激にもつながることと思います。これらの誘致をぜひとも紀北地域に誘致されるよう、お願いを申し上げたいと思います。
 和歌山県の将来の発展を見越した府県間道路については、強く要望するとともに、京奈和自動車道路の推進、また紀北活性化事業をどのように進めていくのか、またそれにつながる育樹祭イベントの開催について、お伺いをいたしたいと思います。
 第四点目に、同和問題にかかわって質問をさせていただきます。
 今、人権の重要性が叫ばれている中で、基本となる同和問題がどうも埋没されてしまい、「同和」という言葉自体が行政の場面も含め少しずつ消えてしまっているように思われるのは、私だけでありましょうか。もう古い、これからは人権だ、同和も人権の一部ということで解決されるならば、極めて遺憾に思うわけであります。さらに、同和教育不要とまで吹聴する者や、一部の自治体でも同和行政が終了したかのようにとらえ、同和室の廃止や子ども会の返上を行っている状況があります。
 このことについては、これまでの議会での知事を初め当局の答弁や一昨年に発表された和歌山県同和行政総合推進プランで決着がつけられており、差別がある限り同和行政は必要、同和問題を中心にあらゆる人権の課題についても積極的に取り組むと明記されております。
 しかし、こうしたことの反面、例えば昨年一年間でも、有田郡内の県立高校での生徒間の差別発言、橋本市役所職員に対する差別電話、和歌山市、新宮市、田辺市、岩出町においての差別落書きや差別文書・発言が依然として後を絶たず発生していることや、公務員がその職務上にかかわって問題を起こしておるということは、全体的な意識が希薄になっており、課題や実態が見えないばかりか、部落差別に対する認識が失われておる所作であると思います。
 和歌山県同和行政総合推進プランの中に、同和問題の解決を県政の重要な柱として位置づけ、同和対策を積極的に推進してきたが、なお十分な解決には至っていないという認識があるにもかかわらずこのような差別事件が頻発しておることは、とりもなおさず人権という全般的な事柄に恣意的に移行し、同和問題を重要視していない結果であると言っても過言ではないと考えるわけであります。
 言うまでもなく、今日の同和問題は極めて劣悪な実態の中で差別撤廃への思いから創造され、推進されてまいりました。このことを踏まえ、同和問題の解決については、和歌山県同和行政総合推進プランの基本認識をもって常に実態を直視し、さらに再認識され、具体的な生きた現実の差別問題としてとらえていただきたいと思うわけであります。同和行政総合推進プランの認識と市町村への指導実態をお聞きしたい。
 二つ目は、教育問題であります。
 啓発を含めた具体的な取り組みや推進に当たっては、教育が大変重要な役割を担っております。学習状況調査の結果によりますと、地区児童生徒の正答率──ある問題に対しての解答でありますが、県全体の正答率に比べ、どの学年、どの教科においても低く、地区児童生徒の下位群に占める割合が高いとなっております。さらに生活保護家庭や母子家庭などの比率も多く、こうした家庭環境にある地区児童の正答率が格別に低くなっていると正式に報告されているわけであります。
 進学率を見てみますと、高校では県全体が九六%を超えている中で約五%程度の格差があり、大学進学については全体が四〇%の進学率であるにもかかわらず、地区の進学率は二〇%で半分との実態が浮かんでまいります。こうしたことを踏まえたとき、同和問題を基本として児童生徒の基礎学力の向上に努められるとともに、個人に合った学習指導を心がけていただきたい。また、同和教育加配教員の適正配置を進めていただきたい。
 なお、県教育庁の組織規定の中で各教室の職務について詳細に明記されておるわけでありますが、例えば具体的には、学校教育課に学校同和教育班、並びに社会教育課には社会同和教育班が設置をされておりますけれども、組織規定のどこを探しても「同和教育」あるいは「人権」という言葉が入っていないのは極めて不自然であると言わざるを得ないわけであります。これは、教育委員会すべてで全力で取り組むということであろうと思うわけでございますが、全部でやる、みんなでやるということは、だれも責任を負わないということになりかねない危険性も含んでいると思うわけであります。そういう意味で、児童に対する基礎学力の向上と適正な同和教育加配教員の推進、及び組織規定の認識について、教育長にお伺いをしたいと思います。
 三点目、雇用や技能習得と企業啓発にかかわって、先ほども話をいたしましたように、現在までの同和対策、県の商工労働部や公共職業安定所において企業への指導がなされてきたわけでありますが、この春、労働局の発足に伴って、これまで国の施策に加えて県独自の基準や取り組みを進めてこられていることに混乱が生じ、具体的な対応が低下することは当然予測されるものであります。同和地区実態調査の結果、商工業についても、家族労働や四人以内の零細な商工業や個人経営が多く、今日のような急激な経済状況にあっては対応が困難な状況であります。また、就労においても弱者にしわ寄せを受けている状況であることから、県の取り組みに混乱が生じた場合、死活問題であろうと思います。県当局の対応についてお伺いをいたします。
 最後に、人権問題についてお伺いいたします。 
 昨年七月に、国の人権擁護施策推進審議会から答申が出されました。その内容は、同和問題を初めとする人権に関する啓発や教育の推進を積極的に行うとされ、部分的には評価しておるところもあるわけでございますが、一方、国の責務、法的措置、総合的な機関の設置等の重要課題が欠如しており、私たちの願いや実態を無視した極めて問題のある答申となっております。これを受けて、和歌山県を初めとする各自治体や政党からの審議会並びに政府に対しての強い要望が出されているところではありますが、なお一層の取り組みを念願するところであります。
 人権教育の推進については、本県におきましても平成九年十二月、知事を本部長に「人権教育のための国連十年」和歌山県推進本部が設置され、さらに一昨年、和歌山県行動計画が策定され、その具体化に向けての取り組みに対して敬意を表するところではあります。その一つとして福祉保健部総務課に担当の主幹と担当者が設置され、順次取り組まれてきておるわけでございますが、課題の大きさと重要性からして現在の体制では極めて不十分であると思うわけであります。例えば、最も重要な課題に、市町村を基点とした人権ネットワークを整備されておりますが、数カ所の市町村でしか体制ができていない現状であると聞いており、これではせっかくの人権文化の創造も絵そらごとになってしまいます。
 福祉保健部総務課の人権担当の体制については、推進本部設置当初より当分の間というふうに聞いたと認識をしておりますが、所管の問題も含め今後の具体的な見通しはいかがなものか、お聞きするとともに、特に、人権啓発にかかわった人権啓発センター及び人権資料館を早急に建設していただきたいと思うところであります。過去、本会議においても、またいろいろな機会をとらえ、この必要性を訴えてまいったところでありますが、知事初め県当局の積極的なご答弁をいただいておるにもかかわらず、一向に姿が見えてこないわけであります。二十一世紀は人権の世紀と言われる中で、人権先進県を自負する和歌山県に人権に関する県立の施設が皆無というのはまことに残念であり、恥ずかしい限りであります。早急な対応を要請するところであります。
 福祉保健総務課の担当配置の具体的な見通しと人権啓発センター及び人権資料館建設の概要なり進捗状況をお伺いいたし、一回目の質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
○議長(下川俊樹君) ただいまの飯田敬文君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 飯田議員にお答えをいたします。
 まず、今後の県債の返済についてでございます。
 平成十二年度予算におきましては、財政収支の不均衡を補うために県債管理基金を取り崩して公債費に充ててございます。ご指摘のように、この県債管理基金にも限りがございますので、財政運営プログラムにお示ししたとおり、基金が枯渇する前に財政収支の不均衡を段階的に解消するとともに、起債の抑制に努め、財政の健全化を推進してまいりたいと思います。
 他方、このような努力により本県財政における収支不均衡の解消が達成されたとしても、本県の歳入の大宗を占める地方交付税交付金及び国庫支出金につきましては、その約四割が国の会計において国債等の借り入れに依存をしているものでございます。持続的、安定的な財政運営を確保していくためには、議員ご指摘のように、より長期的かつ広範な視点から国、地方を通じた財政構造改革に努めていくことが重要でございます。
 国におきましては、景気が本格的な回復軌道に乗ったことを確認した後に、国、地方を通じた抜本的な制度改革に取り組むものと承知をしてございまして、本県といたしましても、当面は収支不均衡の解消をいわば中間目標として財政の健全化に取り組みながら、より長期的な観点からは、財政構造改革については国における検討の動向をにらみながら、受益と負担のバランスの確保を基本としながら、歳入歳出両面にわたる見直しに努めてまいりたいと考えてございます。
 地方分権に関連をして、地方課税自主権と経済的自立についてのご質問であります。
 地方分権の進展に応じて地方が自主的、自律的な行財政運営を行うためには、地方税財源の充実が必要不可欠であると考えてございまして、議員ご指摘のように、いわゆる地方分権一括法により地方税法の改正が行われ、法定外目的税の創設など、地方団体の課税自主権の拡充が図られたところでございます。新しい税の創設には受益と負担の関係や税源の所在等、検討しなければならない課題がたくさんございますが、自主財源の確保につきましては、地方分権を進める上で大変重要でございますので、今後、幅広い観点から調査研究を進めてまいりたいと考えてございます。
 次に、市町村合併の推進についてでございます。
 議員お話しのように、市町村の合併はそれぞれの地域がみずからの問題として主体的に取り組んでいくべきものでございまして、とりわけ市町村並びに住民の方々が自主的に判断されることが重要であると考えてございます。市町村合併特例法におきましては、このような自主的な合併を推進するために国と都道府県の役割が規定されてございまして、また、普通交付税の算定の特例、合併特例債などの優遇措置が定められてございます。
 県といたしましては、市町村の自主的な取り組みに対して助言や支援をしていくことが重要であると考えてございまして、法の趣旨を十分踏まえ、必要な対応を行ってまいりたいと考えてございます。
 以上であります。
○議長(下川俊樹君) 総務部長稲山博司君。
  〔稲山博司君、登壇〕
○総務部長(稲山博司君) 十二年度予算に関しまして、まず地方税体系の構築についてお答えいたします。
 議員ご指摘のとおり、地方税財源の充実確保は地方分権を推進する上で極めて重要な課題であると考えてございます。
 地方税体系の将来像についてでございますけれども、地方分権推進計画にもございますように、地方の歳出規模と地方税収入の乖離をできるだけ縮小するという観点に立って、国と地方の役割分担を踏まえながら、国から地方への税源移譲も含めた税源配分のあり方の検討が必要であると考えてございます。
 しかしながら、地方分権の財政的基盤となる地方税財源の充実確保の問題はいまだ具体的な筋道はつけられておりませんので、税源移譲など地方税の充実強化を図ることや、地方税において重要な地位を占める法人課税について、税収の安定的確保を図るため事業税に外形標準課税を導入することなどを国に要望してまいりたいと考えてございます。あわせて、地方分権の支えとなる自主財源の確保策についても幅広く研究してまいりたいと考えております。
 次に、行政改革と外郭団体の見直しについてのご質問でございます。
 まず民間と行政の役割分担についてでございますけれども、民間でできるものはできるだけ民間にゆだね、行政の行う仕事の範囲は民間が行い得ないものに限定すべきものと考えております。このような基本的考え方のもとに事務事業全般についての見直しを行い、民間委託による方がより効率的な実施を図り得るものにつきましては積極的に民間委託するなど、簡素で効率的な行政の確立を図ってまいりたいと考えております。
 続きまして、外郭団体の見直しについてでございますけれども、まず、現在県が二五%以上出資している法人の数は三十五団体となっておりまして、全国平均の四十八団体よりも少なく、全国的に見ますと四十五位という状況となっております。
 次に、これらの団体の財政状況でございますが、依然として財務状況の厳しい団体や県財政への依存度の高い団体が幾つか見受けられますので、組織の統廃合も含め、その運営の一層の効率化を図ってまいりたいと考えております。
 また、給与面での適正化や組織の活性化を図るため、県との人事交流を図るとともに、各団体を所管する担当課の指導強化を行ってきたところでございます。今後とも、事業の必要性、事業の効率性と採算性、あるいは他団体との競合等の観点から、各団体の見直しを鋭意行ってまいりたいと考えております。
○議長(下川俊樹君) 商工労働部長上山義彦君。
  〔上山義彦君、登壇〕
○商工労働部長(上山義彦君) 地方分権についてのうち、職業安定行政の今後についてと、同和問題についてのうち雇用促進についてお答えします。
 まず職業安定行政の今後についてでありますが、議員お話しのとおり、この三月三十一日に地方事務官制度が廃止され、これまで県庁内にあった職業安定課、雇用保険課が労働基準局等と統合し、四月一日、新たに労働省和歌山労働局が設置されることになっております。これに伴い、両課が行ってきた職業安定法、雇用保険法関係の事務の多くは国の直接事務として労働局で行われることとなります。
 県といたしましては、本県の実情に応じた雇用・就業対策を引き続き推進していくことが重要な課題と考えてございます。このため、県として従来から実施してまいりましたUターン対策、高齢者、障害者、同和対策等の事務を引き続き実施するため、商工労働部内の組織について検討するとともに、労働局との連絡調整会議を設けるなど、緊密な連携を図りながら事業を推進してまいりたいと考えております。また、本県の雇用対策の充実や財源措置について、国に働きかけてまいりたいと考えております。
 次に雇用促進についてでありますが、同和問題の主要な課題の一つである雇用対策や企業啓発につきましては、従来、職業安定課を中心に各種施策を実施してまいりました。巡回相談や職場定着指導等を行う特別雇用相談員のほか、高齢者・障害者相談員などの県費での相談員を引き続き職業安定所に配置するのを初め、求職者職場適応訓練、企業への啓発及び研修等について、労働局、職業安定所と連携を図りながら推進し、取り組みに混乱や支障を来すことのないよう努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 土木部長大山耕二君。
  〔大山耕二君、登壇〕
○土木部長(大山耕二君) 紀泉百万都市圏の実現についてのご質問のうち、道路整備についてお答えいたします。
 京奈和自動車道の橋本道路は八割程度用地買収の進捗を見ておりまして、早期供用に向け工事促進が図られるよう国に対して強く働きかけているところでございます。
 紀北東道路は、地元立ち入り了解が得られたところから測量、調査が実施されておりまして、早期用地買収着手に向け鋭意取り組んでいるところであります。
 昨年十二月に都市計画決定を行った紀北西道路は、早期に測量、調査が実施されるよう国へ要望しているところであります。
 県といたしましては、引き続き、各区間において、地元市及び町の協力のもと事業推進体制の強化を図るとともに、国に対し事業促進を強く働きかけてまいります。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 企画部長安居 要君。
  〔安居 要君、登壇〕
○企画部長(安居 要君) 紀北活性化事業についてお答えいたします。
 紀北地域におけるイベント開催につきましては、ご質問にもございましたように、紀北地域の豊かな歴史、文化、自然、産業などを生かし、また、県民みずから主役となった将来のふるさとづくりにつながるイベントの実現に向けての基本的な調査検討を地域住民や市町村の皆さんとともに平成十二年度から進めていくこととしてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 農林水産部長島本隆生君。
  〔島本隆生君、登壇〕
○農林水産部長(島本隆生君) 育樹祭イベント開催についてのご質問にお答えいたします。
 全国育樹祭につきましては、国土緑化運動の一環として活力ある緑の造成機運を高めるため、毎年開催されてございます。
 本県では、森林の保育思想の高揚や林業技術の向上を図るとともに、恵まれた自然や歴史、文化を県内外に広くアピールするため、平成十八年開催を目途に全国育樹祭の招致を社団法人国土緑化推進機構等に働きかけてまいったところでございます。育樹祭開催地の内定時期は開催の三年前が通例となってございますが、本県での開催につきましては、他府県との競合もありますが、相当可能性が高いものと考えております。
 候補地につきましては、今後、議員ご要望の紀北地域も含め、県内の適地調査等を実施した上でできるだけ早く選定し、開催に向けて準備を進めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 福祉保健部長小西 悟君。
  〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 同和問題のうち、同和行政総合推進プランと市町村指導についてでございます。
 県としましては、部落差別が存在する限り同和対策を積極的に推進することが責務であると認識し、現在取り組んでいるところでございます。
 今後、同和対策を推進するに当たっては、従来の特別対策はもちろんのこと、一般対策の中で対応する場合においても、同和問題を早期に解決する視点に立って策定した和歌山県同和行政総合推進プランに基づき、一日も早い解決を目指してまいりますが、その取り組みに当たりましては、推進体制を点検しながら、地区の多様なニーズや課題を的確に把握し、施策を講じていく必要があると考えてございます。
 また、本プランにつきましては、策定以来機会あるごとに市町村に徹底を図ってきたところでございます。さらに、昨今の社会情勢の変化に対応し得るようプラン実施上の留意点を策定通知するなど、周知徹底を図っているところでございますが、プランの具体化がなされ、同和問題の早期解決が図られるよう今後とも指導を行ってまいります。
 次に、人権問題についてのうち体制の整備についてでありますが、人権教育啓発の推進につきましては、平成九年四月に福祉保健総務課に人権担当職員を配置し、人権教育啓発を推進するための指針となる「人権教育のための国連十年」和歌山県行動計画を策定したところであり、現在、その推進に努めているところでございます。
 本計画の県民の方々への周知を図るためには、和歌山県推進本部を軸に市町村等との連携体制の整備を図っていくことが重要であることから、本年度、市町村の取り組み体制の整備充実のため、和歌山県人権教育啓発推進市町村モデル事業を創設したところでございます。議員ご提言の職員体制につきましては、人権教育啓発の重要性を認識し、人権の世紀にふさわしい体制づくりに向け鋭意検討してまいる所存でございます。
 次に、人権教育啓発センターにつきましては、「人権教育のための国連十年」和歌山県行動計画の中にも、人権文化創造のための情報発信基地として人権問題に関する資料の収集・展示や教育啓発の研究などを行う──仮称でございますが──人権教育啓発センターの設置を位置づけているところでございます。現在、国や他府県のセンターを参考にしながら規模や内容等について検討を重ねているところでありますが、できるだけ早い時期に設置を目指してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 同和問題の解決には、教育の果たす役割が極めて大きいものと考えております。
 教育委員会といたしましては、従前から、県同和教育基本方針に基づき、子供や地域の実態を直視し、特に学力の向上を重要な課題として、三十五人学級の実施などさまざまな施策を講じてまいりました。その結果、相当の成果を上げてきておりますが、学習状況調査の結果を見ましても、議員ご指摘のように、克服すべき課題は少なくありません。
 こうしたことから、現在、学校、地域、行政が一体となって取り組んでいる基礎学力向上推進地域指定事業を一層充実させるとともに、同和加配教員の適正配置に努めるなど、学力や進学率の向上を目指した取り組みを進めてまいります。
 また、同和問題を初めとする人権にかかわるさまざまな重要課題に対しては、「人権教育のための国連十年」和歌山県行動計画の趣旨を踏まえ、推進体制のあり方の検討を含め、これまでの同和教育の経験や成果を生かしながら総合的に取り組んでいく必要があると考えております。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(下川俊樹君) 以上で、飯田敬文君の質問が終了いたしました。

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