平成12年2月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(宗 正彦議員の質疑及び一般質問)


県議会の活動

  午前十時四分開議
○議長(下川俊樹君) これより本日の会議を開きます。
 日程に先立ち、諸般の報告をいたします。
 過日提出のあった議案第八十号は、教育委員会の事務処理の特例に関する条例でありますので、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第五十五条第四項の規定により教育委員会の意見を徴しましたところ、文書により回答がありました。お手元に配付しておりますので、ご了承願います。
 次に、報告いたします。
 知事から、議案の追加提出がありました。
  〔巻末の「参考資料」を参照〕
  【日程第一 議案第百十四号から議案第百十九号まで】
○議長(下川俊樹君) 日程第一、ただいま報告の議案第百十四号から議案第百十九号までを一括して議題といたします。
 議案はお手元に配付しておりますので、まず知事の説明を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) ただいま上程されました議案について、ご説明申し上げます。
 まず議案第百十四号は、橋本市における株式会社日本工業所の産業廃棄物問題について、ダイオキシン汚染原因施設の撤去等に係る措置命令を近く発してまいりますが、迅速な対応を図る観点から本措置命令に係る行政代執行経費を計上しておくため、平成十二年度予算の補正をお願いするものであります。
 また、議案第百十五号から百十八号は、平成十一年度予算のうち用地取得の遅延等により年度内に完了が困難と見込まれる事業、及び国の経済対策を踏まえ年度途中において追加措置いたしました事業の一部について、平成十二年度への明許繰り越しをお願いするものであります。
 議案第百十九号は、職員の特殊勤務手当について、支給要件、支給方法等を全面的に見直しを行うものであります。
 何とぞ、ご審議の上、ご賛同賜りますようお願い申し上げます。
○議長(下川俊樹君) 以上で、知事の説明が終わりました。
  【日程第二 議案第一号から議案第百十三号まで、並びに報第一号、報第二号】
  【日程第三 一般質問】
○議長(下川俊樹君) 次に日程第二、議案第一号から議案第百十三号まで、並びに知事専決処分報告報第一号、報第二号をあわせ一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第三、一般質問を行います。
 十五番宗 正彦君。
  〔宗 正彦君、登壇〕(拍手)
○宗 正彦君 おはようございます。
 平成十二年、西暦二〇〇〇年二月定例議会の再開冒頭の本会議におきまして、早々と議長並びに皆様方のお許しとご協力をいただいて質問の機会を賜りましたことにつきまして、大変光栄と存じ、心からまず御礼申し上げる次第でございます。ありがとうございます。
 さらにまた、西口知事がご健康で政務に精励されておることに対しまして、どこまでもうれしく思うとともに、ますます円熟味を増してきた知事に強い期待と深い信頼を込めて、以下順次、通告に従いまして私なりに感ずるところを質問させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 ことしは、まさに歴史的な大転換期の節目の年でございます。グローバル化、情報技術革命、少子高齢化、環境問題など、激動する内外の諸情勢の中にあって我が国では、知事の趣旨説明にもございましたとおり、これまでの右肩上がりの発展を支えてきた社会経済システムがいよいよ行き詰まりを見せております。今こそ、その改革に正面から取り組むべきときであると考えられます。県民生活を取り巻く環境には大変厳しいものがございます。発想を転換すれば、現在のような逆境にこそむしろ、過去のシステムから脱皮して未来に向けて飛躍する絶好のチャンスでもあります。このような基本認識に基づいて、以下、幾つかの質問をさせていただきます。
 当面の景気対策と財政の健全化について、知事にお伺いいたします。
 景気は最悪期を脱したものの、その回復の足取りは重いため、国は引き続き財政面から下支えが必要との判断に立って、例えば公共事業について言えば、前年度当初予算と同額を確保することとしております。他方、地方財政は、これまでのたび重なる景気対策の結果、公債費の増大等により危機的な状況にあるとの認識から、多くの自治体が軌を一にして財政の健全化に取り組んでおります。地方自治体は住民に身近な分野をその行政の対象としておりますから、財政破綻を招いて県民生活に支障を及ぼすことのないよう財政健全化に努めるべきは当然のことでございましょう。しかしながら、現段階で性急に健全化を進めれば、せっかく回復の兆しを見せつつある景気がまた落ち込んでしまうのではないかとの懸念もございます。
 私は、財政か景気かといった単純な二者択一の問題ととらえているのではございません。地方財政は国家財政と異なり、制度上、弾力的な運営が困難であることは十分承知しております。景気を最優先して継続し得る限り積極財政を続けてまいりますと、基金が枯渇した段階で一気に歳出をカットすることになるでしょうし、県民生活はその衝撃に耐え切れないと思われます。したがいまして、両者を上手に両立させることが極めて重要でございます。
 そこで、私は、財政の健全化については中期的な課題として県民に対し年次計画を示しながら段階的に取り組むこととし、その上に立って当面の景気対策に必要な財源をでき得る限り確保するという財政運営が求められていると考えておりますが、以上の私の考えに対しまして知事のご見解をお伺いいたしたいと思います。
 次に、予算の内容について総括的な質問をさせていただきます。
 当面の景気対策の重要性については疑問のないところでございますが、それはあくまでも景気の下支えであり、それだけでは県勢の浮揚は望めません。二十一世紀における県勢の伸長のためには、良質な基盤整備の着実な推進に加え、活力と創造力あふれる産業の育成、振興を図ることが重要であります。また、少子高齢化に対応した健康福祉対策や環境の時代にふさわしい環境対策、未来の輝かしい担い手を育成、養成するための教育施策など、二十一世紀における県政の課題は幅が広く、かつ粘り強い取り組みが必要なものばかりであります。本県は、そもそも財政力が低いところにもってきて財政悪化が加わっているものでございまして、当面は歳出の縮減が避けがたい見通しでありましょうし、結果、総花的な事業の展開が不可能なことは明らかであります。
 そこで、知事にお尋ねいたしますが、知事は十二年度予算を二十一世紀へのかけ橋予算と名づけられております。限られた財源で二十一世紀へ向けた諸施策を進めていくには行政運営の一層の効率化と財源の重点配分が不可欠であると考えられますが、二十一世紀へのかけ橋予算においてはどのような工夫をして諸課題に取り組まれるのか、お伺いいたしたいと思います。
 次に、介護保険制度の各種事業の取り組み状況、今後の課題、円滑なる推進方策についてお尋ねいたしたいと思います。
 我が国では、皆様もご承知のとおり、本格的な少子、長寿時代の到来を迎え、社会保障制度の大幅な変革を樹立していくことが急務となっております。とりわけ、高齢化の波は怒濤のごとく押し寄せてきている状況であり、高齢者の介護は家族の献身的な努力だけでは限界があることが明らかであります。全国各地で悲しむべき事象も多々発生しておりますことを聞くにつけ、見るにつけ、心の痛むものがございます。
 このような社会情勢から平成九年十二月に介護保険法が成立、公布されたわけでありますが、いよいよことしの四月一日から介護保険サービスが開始されることとなります。大きな期待と同時に幾ばくかの不安が交錯している状況であろうとも推察されます。法成立後二年余りが経過したわけでありますが、この間、マスコミなどを通じて国民的な議論を巻き起こしながら、必要な政省令が暫時制定されてきました。その間、低所得者への配慮、介護予防・生活支援対策など、円滑な導入に向けての特別対策が急遽織り込まれるなど、制度そのものが相当揺れ動いてきたのは事実でございます。県を初め市町村、多くの関係者が戸惑いながら着々と準備を進めてこられたものであると思われますが、開始まで残された時間はあとわずかであります。県として二年余の間どのような準備事業に取り組んでこられたのか、また残された今後の課題、さらに、円滑な推進方策はどのようなことなのか、包括的な答弁を求めるものであります。本制度は、新たな千年紀を迎え、画期的な制度改革でありますとともに、その成果の行く末は医療、保健、福祉の今後のあり方を大きく左右するものであると思います。ご所見をお伺いいたします。
 次に、行財政改革についてお尋ねいたします。
 社会経済情勢の急激な変化に対応するため、県においては昨年十一月に策定されました行政改革大綱に基づき、鋭意、行財政改革に取り組んでおられることと存じますが、行財政改革とは、行財政運営のあり方を見直し、行政の質の向上を図ることだと思います。財政状況の厳しい中で県行政の質の低下を招くことなく、事務事業の見直しなど行財政改革にどのように取り組んでおられるのか、お尋ねいたしたいと思います。
 次に、地方分権についてでございますが、いわゆる地方分権一括法が本年四月に施行されます。これにより機関委任事務制度が廃止となり、地方の自己決定権が拡充されることとなるわけでございます。
 そこで、まず第一に、自己決定権の拡大は自主財源の充実があって初めて有効となるものと考えます。県ではどのようにその自主財源の充実確保に取り組まれているのか。また、新たな施策への取り組みに際しては職員の政策形成能力が今まで以上に求められることとなると思われますが、この点についてどのように考えておられるのか、お尋ねいたしたいと思います。
 さらに、今回の機関委任事務制度の廃止は、県民から見ると国と地方という行政間の権限のやりとりの話であって、それによって何が変わるのかよくわからないというのが本音であろうと思われます。市町村に権限が移譲されれば住民にとっても利便性が向上され、地方分権のメリットというものはわかりやすいと思いますが、本県内の市町村への権限移譲についてどのように考えているのか、お尋ねいたしたいと思います。
 次に、市町村合併の推進についてお尋ねをいたしたいと思います。
 過去幾たびか議論の俎上に上りながらなかなか具体的な形としてあらわれなかった地方分権が、本年四月に地方分権一括法が施行されることに伴い、新たな段階を迎えようとしております。まさに地方自治にとって新時代の到来であり、地方公共団体はみずからの判断とみずからの責任のもと、民意を問いつつ、当事者能力を発揮していくことが求められております。特に、地方分権を力強く推進していくためには、住民に最も身近な地方公共団体である市町村が地域社会に対する多様な行政を自主的、自律的に展開していくことが重要であり、その行政能力をさらに強化していくことが望まれているところであります。しかしながら一方で、人口が減少しつつ高齢化が進む市町村が現在の行政サービスを維持していけるのか、また、新たな行政需要に遅滞なく的確に対応できるのかということが危惧されてもおります。
 本県では、全体の約六割の二十八団体が人口一万人未満であります。高齢化率三〇%を超える団体が十四団体、そしてまた、県の平均高齢化率二〇%を超える団体が四十団体となっており、本県においてもこれは例外ではございません。また、人々の日常生活行動圏がますます拡大し、市町村の行政区域との乖離等の問題点も指摘されてきており、さらに廃棄物処理や介護保険など、市町村の区域を超えた行政需要もますます増大してきております。
 このように行政の広域化が求められる大きな流れが生まれてきているところでありますが、今後、一部事務組合や広域連合といった広域行政制度を積極的に活用していくことはもちろんのこと、こうした要請に的確に対応していくためには、市町村の合併を積極的に推進していく必要があると考えられます。
 市町村の合併について、地方制度調査会はその答申において、市町村や住民の自主的判断を前提としながらも、関係市町村の合意形成のために都道府県が重要な役割を果たしていくことが必要であるとしているところであります。また、自治省が都道府県に要請した合併促進に関する要綱の策定や合併協議会の設立に関する知事の監督権限の付与など、合併問題については県、そして知事がその推進役として大きなリーダーシップを発揮していくことが期待されているところであります。
 やはり、当事者である市町村間の議論だけに任せては、なかなか合併は進まないであろうと考えられます。市町村の合併、すなわち公共団体の新しい組織を形成していくときに、個々の団体が私情を挟み、感情を入れては将来に大きな禍根を残すものだと思います。過ぐる昭和三十年、合併促進法が制定され、市町村の合併が強く進められてまいりましたが、その折、反省されるべき幾多の事例が発生し、それを眺め、見てきた私として、将来に悔いを残さない道をたどって町村合併をしてほしいと願うものであります。
 したがいまして、合併問題については知事が積極的に牽引役としての役割を担っていくべきであると考えるものでございますが、そこで知事にお尋ねいたします。
 まず第一点は、市町村合併を含めた広域行政の促進のために強力なリーダーシップを発揮する必要があると考えておられるのかどうか、その意中のほどをお尋ねいたします。
 また、今後の推進計画とその実現についてでございます。現在のところ本県においては合併に対する具体的な動きは見られないと思われますが、市町村合併特例法の法期限は平成十七年三月までとなっているところであります。この残された期間をにらみながら今後どのように実現を図られようとするのか、以上二点についてお伺いいたします。
 次に、和歌山工科大学についてお尋ねいたします。
 知事の冒頭説明にもございましたように、二十一世紀において輝く和歌山県を創造していくためには、人づくりは何にも増して重要な施策の柱であります。本県の場合、大学などの高等教育機関の整備が全国で最もおくれており、また地域的にも偏りが見られる中、貴重な人材と年間三百億円余りの教育費が県外に流出している現状であります。こうした中で今般、旧南紀白浜空港跡地に航空工学を教育の核とする工科大学を設置することとなったことは、県政の長年の課題解決という観点からも大きな前進であると私は思っております。ただ、厳しい財政運営を迫られている中での立ち上げであるだけに、この事業については、知事自身もおっしゃっているように、未来への挑戦であるという気概を持って進めていかなければならないと考えます。
 そこで、この事業が今後の和歌山県の発展に対して持つ意義、さらに、どのような大学を目指していくのかについて、知事のお考えをお伺いいたしたいと思います。
 次に、具体的なことについて幾つか企画部長にお尋ねいたします。
 急速に少子化が進行する中、これからの大学間の学生獲得競争はますます激しくなっていくと言われています。こうした競争に勝ち残っていくためには、全国的にも独自性の高い特色ある大学としていかなければならないと思います。今回の和歌山工科大学は航空工学を核とする単科大学であるということですが、学生の確保や就職先の確保という観点から見た場合どのように考えられているのか。また、設立については県が開設経費を負担するものの、その後は私立大学として運営を行っていく公設私学法人方式で進めていくということですが、実際に自立的な運営は可能であるのかどうか。昨年の検討委員会でも詳細な検討がなされたようでございますが、その見通しについてお伺いいたします。
 さらに、平成十五年度の開学を目指すということでございますが、職員は確保できるのか、教員はどうか、また、学生の就職先を考えた場合、産業界との連携も重要になってくると思われますが、開学に向けての今後の進め方について、学生の地元就職、企業誘致等、産官学の関連協力等についてどう見通しを立てておられるのか、お伺いいたしたいと思います。
 次に、外形標準課税についてお伺いいたします。
 地方分権がいよいよ実施段階となり、地方が自主的、自律的な行財政運営を行うには地方の財政基盤の強化が必要不可欠であると考えております。しかしながら、地方の財政基盤はまだまだ脆弱であり、本県の財政状況も非常に厳しい状況にあります。今回提案されました平成十二年度一般会計当初予算案は四十一年ぶりに前年度に比べて減少した予算であり、財源不足額は百二十四億円となっております。予算案の中の県税収入はといいますと、約九百八億円で前年度当初比四・五%、約三十九億円の増加となっておりますが、その内容は郵便局における定額貯金の大量満期に伴い発生する利子に課税される県民税利子割で七十一億円の増収が見込まれており、これを除きますと三・八%、三十二億円の減となります。景気がやや上向いているような発表がなされておりますが、地方の台所に響くような回復には至っていません。
 このような中で、地方独自の財源確保の取り組みとして、去る二月七日に東京都の石原知事は、安定的な税収及び税負担の公平性の確保のために、都内に本店や支店を置き資金量が五兆円以上の銀行等に対する法人事業税の課税を、従来の所得に対するものから業務粗利益という外形基準に、税率を三%、特別法人については二%の課税を行うと発表し、二十三日から始まった都議会に「東京都における銀行業等に対する事業税の課税標準等の特例に関する条例」を提案しております。これは、今までほとんど死文化していた地方税法第七十二条の十九、事業税の課税標準の特例の規定を適用したもので、石原知事によりますと、大手銀行は本業で十分なもうけを出しながら、不良債権処理により納税を免れており、金融システム安定化の恩恵に浴している銀行業こそ率先して行政サービスの対価としての法人事業税を支払うべきだということであります。この銀行業に対する外形標準課税が実施されますと、一千百億円の増収が図られるということでございます。危機的な財政状況を打開するための思い切った提案であると受けとめられ、都議会では多数の会派が賛同し、可決される見通しであると報道されておりますが、いろいろな問題点も指摘されております。
 問題点としては、特定規模の特定業種にだけ外形標準課税を導入するのは税負担の公平性を欠くのではないのか、特例導入の前後で納税額に大きな差が生じるのは著しく均衡を欠くのではないのか、さらに、東京都が導入することにより地方の自治体の法人関係税や地方交付税の原資である法人税が減少するという影響を与えるのではないか、また、法人事業税への外形標準課税の導入は全国知事会等で全国的な制度として導入を要望している中で、東京都だけが先行して特定業種に課税することが妥当なのか、などが挙げられております。各種マスコミから東京都の案に対する都道府県知事の感想等が報道されておりますが、その中では、東京都の案に賛同しその導入について検討したいとされる県や疑問を呈する県といった、さまざまな対応が伝わってまいります。
 そこで、東京都が銀行業に対して独自に外形標準課税の導入を打ち出したことに対する知事の所見と、本県においてもこのような税を導入するお考えがあるのかどうか、お尋ねいたしたいと思います。
 国で検討されております幅広い業種での全国一律の外形標準課税が導入されますと、景気の低迷であえいでいる赤字法人にも行政サービスの対価としての法人事業税が課税されることになり、景気の回復に水を差すのではないかと危惧されておりますが、この際、中小企業に対する措置をどう考えておられるかについてもお答えをいただきたいと思います。
 次に、橋本市の日本工業所ダイオキシン問題についてお尋ねいたします。
 去る二月二十一日に、橋本市における日本工業所の産業廃棄物処分場に係るダイオキシン類調査の結果が発表されました。それによると、洗煙水の循環ピットの汚泥から二十五万ピコグラムという驚くべき結果が発表されたわけでありますが、そのほかにも、焼却炉に残っていた灰から八万六千ピコグラム、土壌中からも最高で十万ピコグラムの極めて高濃度のダイオキシンが検出されたということであります。
 この日本工業所のダイオキシンについては過去二回調査が行われており、そのときには土壌の環境基準一千ピコグラムを超える一千七百ピコグラムが最も高い濃度であったことと比較して驚くべき数値であり、知事のみならず、私たちも大変驚いているところであります。地元の皆さん方の驚きとともに、その不安な気持ちを考えると、心が痛み、心配を強くしているものであります。
 この問題については、過去幾たびか本議場において議論をされてきたところであります。県としても、日本工業所に対して、廃棄物の撤去や産業廃棄物処理業の許可の取り消し、処理施設の設置許可の取り消し等の対応により、事実上の操業停止に追い込んだところであります。今回の調査結果はそれらの対応が一段落した後の土壌から検出されたものであり、地域住民に及ぼす衝撃はまことに大きく、全国的に関心も寄せられているところであります。
 知事は、この結果を踏まえ、地域住民の大きな不安を考え、翌日に控えていたダイオキシン類問題検討委員会の結果を待たず、即座に緊急対策に関しての指示を出されました。大井生活文化部長を先頭に職員の方々も迅速に対応されておったことにつきまして、高く評価をいたしたいと思います。また、この問題に対して全庁的に取り組むとして、副知事を本部長とする日本工業所ダイオキシン問題対策本部を時を置かず設置したことに対しても同様に高く評価するとともに、さらに去る三月二日、知事みずからが橋本市の現地に赴き、関係住民と語り、話し合い、住民の不安解消のために全力を尽くされておることに対しまして、地域住民ともども知事に対しまして信頼と期待を強くいたしておるところであります。
 しかしながら、やはり今日までの長い経過を思うときに、本件に対する県の対応のおくれを指摘しないわけにはまいりません。私は、県は本問題の重大性にかんがみ、このことに至った今日までの対応のあり方に対して改めて反省をし、再評価をすべきであると考えます。今後は、このことを踏まえて、一に橋本市だけの問題としてとらえるのではなく、ごみ問題を含む環境行政、とりわけ地域住民の生命にかかわる生活環境の保全に対してはより敏感な取り組みをすべきものであると思うと同時に、そのことに対して我々もまた協力を惜しまないことであるということを申し添えておきたいと思うわけでございます。
 県民の健康と生活を守るために、この際、県下の各市町村の実情を調査点検してみてはどうかと思われますが、いかがなものでございましょうか。この日本工業所の問題を教訓とする今後の環境行政に対する取り組みについて、知事のご所見をお伺いいたしたいと思います。決意のほどをよろしくお願いいたします。
 以上で、質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
○議長(下川俊樹君) ただいまの宗正彦君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 宗議員にお答えをいたします。
 議員ご指摘のように、平成十二年度の予算につきましては、当面の景気と財政健全化の両立を図るという重要な認識に立って、その編成に臨んだところでございます。当面の景気対策といたしましては、景気下支えの観点から、不況対策資金などの商工費、あるいは公共事業については全体の予算規模の縮減を図る中、昨年度と同額を確保してございます。他方、財政の健全化につきましては、財政運営プログラムにおきましても健全化期間中に段階的に取り組むべき中期的な課題と位置づけてございまして、平成十二年度予算におきましては景気対策に配意しつつ、収支不均衡を二割程度削減したところでございます。今後、平成十五年度までに残る不均衡の解消を図ってまいりますが、その具体的な進め方についてはできるだけ早期に県民の皆様にお示しできるように努めてまいりたいと考えております。
 こうした厳しい財政事情のもとではございますけれども、私は従来の社会経済システムの改革が急務であるために、その危機意識を持って厳しい優先順位づけを行いまして、それに基づき、限られた財源を大胆に配分して新しい県政の創造に取り組む考えでございます。
 そこで、平成十二年度予算におきましては、財源の重点配分を旨といたしまして、従来の組織横断型予算編成に特別調整枠の設定といった手法も加え、経済構造改革の推進、環境対策、交通網等の基盤整備の推進、介護支援等の福祉対策など、二十一世紀へ向けた諸施策の推進を図ったところでございます。もとより、単年度では社会経済のシステムの転換を図るということは極めて困難でありますので、今後とも将来を見据えた政策展開に努めていきたいと、そういうふうに考えてございます。
 次に、介護保険制度についてでありますけれども、介護保険法が成立してから二年余りが経過をいたしまして、いよいよこの四月から本番を迎えるわけでございます。
 介護保険制度は、医療サービスと保健・福祉サービスの一元的な提供、措置から契約への利用形態の転換、民間事業者の新規参入、市町村の自主性尊重など、さまざまな時代ニーズに即した制度でございまして、また二十一世紀に向けた画期的な仕組みであると考えてございます。
 このような意味から、円滑な導入は不可欠でございまして、県としましても、県民への啓発活動はもとより、介護支援専門員等の人材確保、サービス提供事業者の指定など、多岐にわたる事業につきまして、市町村、関係団体等と連携をしながら懸命に取り組んでまいったところでございます。このような努力の結果、要介護認定の順調な進展、新たなサービス事業者の参入などがございまして、ほぼ予定どおりのスタートを迎えられるものと考えてございます。今後とも、サービス提供基盤の整備、低所得者への適切な配慮、そういった制度の周知徹底についても全力を傾注してまいりたいと考えてございます。
 次に、市町村合併の推進についてであります。
 お話にございましたように、どのようにリーダーシップを発揮するかということでございます。
 まず、広域行政推進のための決意を申し述べたいと思いますけれども、かねがね申し上げておりますように、市町村の合併については地域における自主的な取り組みが基本でございまして、市町村並びに住民の方々が地理的条件や歴史的経緯を踏まえて自主的に判断されることが重要であると考えてございます。もちろん強い指導というのも要るわけでありますけれども、少子高齢化の進展、あるいは地方分権の推進などにより地方行政を取り巻く情勢は大きく変化しているわけでございまして、高度化、多様化する行政サービスへの対応や住民の日常生活行動圏の拡大などを考えますと市町村の将来のあり方についての議論を深めることは大変重要なことでございまして、そうした議論を引き出し、そういった議論の場をつくっていく必要はあると考えてございます。市町村並びに住民の方々が取り組みを進められる際に参考としていただけるように、要綱などを策定いたしまして必要な助言、情報の提供などに努めてまいりたいと考えてございます。
 次に、推進計画とその実現についてでございますが、議員ご指摘のように、市町村合併特例法の法期限は平成十七年三月三十一日までとなっているところでございます。市町村の合併は、全国の事例を見ましても検討・協議の段階から実現までには相当長い期間を要しておることからいたしますと、県としてもそういう点を十分に踏まえ、できる限り早い時期に要綱をお示しできるように努めていきたいと考えておりまして、今後とも強いリーダーシップを発揮せよというお申し出については、よく心得てまいりたいと思います。
 それから、和歌山工科大学についてのご質問でございます。
 このプロジェクトの推進につきましては、学生数の減少、厳しい財政事情などもございまして、かなり慎重な検討を進めてまいりました。その結果、この事業は本県の二十一世紀における発展の礎となる人づくりと産業の活性化に極めて大きな意味を持つプロジェクトであると考え、事業化を決断したところでございます。
 この大学では、さまざまな工学分野の技術や知識を総合的に学ぶ航空システム工学科を設け、実践的で高度な教育研究を行うこととしてございまして、人材の育成あるいは研究活動を通じて本県の産業の高度化や新たな産業の創出など、大きく貢献できるものと確信をしているところでございます。
 県内大学の進学機会の拡大、あるいは定住人口や交流人口の増大による継続的な経済波及効果、また科学技術や教育文化の振興など、さまざまな面において本県の活性化に寄与するものと考えてございまして、またそうでなければならないと思っておるところでございます。今後、県民の皆様のご理解、ご支援を賜りながら、計画の実現に向けて取り組んでまいりたいと考えてございます。
 次に、東京都の石原知事が打ち出した外形標準課税に関する考え方でございます。
 東京都が打ち出しました銀行業等に対する外形標準課税案につきましては、地方分権の推進とそれに伴う財政基盤の強化という点では、厳しい財政状況を打開する方策を地方みずからが考え、実施していくことは大変重要なことであると考えてございまして、その意味では石原知事の行動はまさに一石を投じた意義ある行動であると思ってございます。
 ただ、いろいろと指摘されております問題点等についても幅広い議論が必要ではないかと考えておるわけでございまして、本県において導入することにつきましては、東京都と本県とでは経済基盤等が大きく異なっておるようなこともございますので、東京都案のような課税方式を本県単独で導入することは困難であると考えてございます。今後とも、全国知事会等を通じ、国に要望してまいりたいと考えてございます。
 次に、外形標準課税が導入される場合の中小企業に対する措置についてでございます。
 関係方面からもいろんな意見が参ってございますけれども、その導入に際しては赤字法人等にも課税されることとなりますので、税負担の変動に対する経過措置、あるいは景気の動向等に対する一定の配慮が必要であると認識をしてございます。この点につきましても、国に働きかけてまいりたいと考えてございます。
 最後に、橋本市の日本工業所のダイオキシン問題でございます。
 この問題への対応策につきましては、今議会の冒頭で申し上げたところでございまして、きょうは補正予算もお願いしたわけでございますが、住民の皆さんの不安な気持ちを思い、私も大変心を痛めておるところでございます。
 この報告を受けまして、現地で住民の皆さんにもお話ししたところでございますが、住民の皆さん方の不安を取り除くために本問題の解決に向けて最善の努力を重ねてまいるということを申し上げてまいりました。県の対応のおくれについてのご指摘もございましたけれども、県としては精いっぱい努力をしてきたところでございますが、事態が深刻な状況に至ったことにつきましては、まことに残念な思いをいたしてございます。
 私は、本問題に対する取り組みについて、反省すべきことは謙虚に反省するとともに、今日までの経過をきっちりと総括し、今後の教訓として生かしながら住民の皆様の信頼を築いていかなければならないと考えてございます。
 また、この問題は一日本工業所だけの問題でないというご意見は心して受けとめなければならないと思ってございまして、これからの廃棄物行政の推進に当たりましては、このたびの教訓を生かし、業者指導の徹底・強化はもちろんのこと、議員のお話にもございましたように、県下の廃棄物の実情調査、不法処理等の監視の強化など、素早い対応を行い、問題発生の防止に努めてまいる所存でございます。特に日本工業所に対しては、責任の所在を明確にし、義務を果たさせるため、措置命令を発することはもとより、強い姿勢で臨むつもりでございます。
 もとより、今後とも環境問題は最優先で挑戦していかなければならない重要な課題であるとの強い信念を持って取り組んでまいりたいと考えてございます。議員の皆さん方の絶大なご協力をお願い申し上げたいと存じております。
 以上であります。
○議長(下川俊樹君) 総務部長稲山博司君。
  〔稲山博司君、登壇〕
○総務部長(稲山博司君) 行財政改革についての取り組みの内容と地方分権についての三つのご質問に、一括してお答え申し上げます。
 まず行財政改革につきましては、昨年一月に策定いたしました行政改革大綱に基づき、事務事業の見直し、組織機構の見直し、外郭団体の見直しなど、行財政運営全般にわたる見直しを計画的に行うことにより行政の質の向上を図ることといたしております。
 特に、議員ご指摘の事務事業の見直しの状況についてでございますが、事務の整理合理化によりまして、平成十一年度におきまして県費負担額ベースでは百八十五件、四億五千二百万円の改善を、また平成十二年度当初予算案におきましては百六十七件、四億九千六百万円の改善をそれぞれ行いまして、新たな行政需要に対する財源として活用を図っているところでございます。
 次に地方分権についてでございますが、ご指摘のように、地方分権の推進のためには自主的、自律的な行政運営を支える財政基盤の充実強化と職員の政策形成能力の向上が不可欠でございます。
 財政基盤の充実強化につきましては、国と地方の税財源配分の抜本的な見直しによる地方税財源の充実確保等につきまして、政府要望や全国知事会の要望を通じて国に強く働きかけてまいったところでございますが、引き続き要望してまいりたいと存じます。
 また、分権型社会におきましては、地域の実情を踏まえてみずから政策立案する能力が職員に求められております。時代の変化に対応できる政策形成能力と創造的能力を有する職員を養成する必要がございます。県におきましては、従来より政策形成能力の向上を念頭に置いた種々の研修を実施しているところでございますが、今後とも職員の意識改革や政策に的確に対応できる人材の育成に努めてまいりたいと考えております。
 第三に、県から市町村への権限移譲の状況についてのご質問でございますが、市町村のご要望を取り入れながら進めているところでございまして、これまでに百十二項目の事務について移譲を行ってまいったところでございます。今議会におきましても、身体障害児に対する育成医療の給付の決定、あるいは知的障害者の短期入所措置など、九つの項目の事務を移譲するための条例案を提案させていただいているところでございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 企画部長安居 要君。
  〔安居 要君、登壇〕
○企画部長(安居 要君) 和歌山工科大学についての質問にお答えいたします。
 今回開設する学部学科につきましては、学生の確保や就職先の確保などの面から、さまざまな学部学科についての調査と比較検討を行いました。その結果、総体的に最も有利である工学部航空システム工学科を開設することとしたところでございます。
 既設の航空工学系学科についての調査では、平成十一年度の志願者競争倍率が、工学部は平均十・八倍、うち航空工学科は平均十四・一倍と極めて高い水準にあります。また、平成十年度の航空工学関係学科の卒業生等の就職・進学率を見てみますと、四年制大学の平均七三・四%に対して航空工学系学科の平均は八八・三%となってございます。
 しかし、こうした状況はあくまでも相対的なものであります。このため、新設の大学として学生の確保や就職先の確保を進めていくに当たっては、教職員が一体となって取り組む必要があると考えてございます。とりわけ、県内外の高等学校や企業との幅広いネットワークづくりを早急に進めていくことが重要であると考えてございます。
 次に、自立的運営の可能性についての見通しについてお答えいたします。
 本計画の検討におきましては、大学が開学した後、独立採算による自立的な経営が現実的に可能かどうかについての検討を特に重点的に行ったところでございます。その結果、現在設定しております入学定員で独立採算制による経営は可能であるとの結論を得ております。もちろん、その前提として学生の確保及び経営感覚にすぐれた職員の確保が必要不可欠であり、今後の重要な課題であると考えております。
 次に、開学に向けての今後の進め方についてお答えいたします。
 平成十五年四月の開学に向けまして、平成十二年度にはまず準備財団を設立することとしております。当面する重要な課題の一つは、ご質問にもありましたように、大学の自立的な運営を支える教職員の確保であると考えております。
 まず教員の確保につきましては、現在、国内外の大学、民間企業、研究機関等から教員候補者の選定を進めております。平成十二年度におきましては、これらの候補者の正式な了解を得るとともに、一部の科目の教員につきましては国内外から広く公募を行うこととしております。
 次に職員につきましては、平成十二年度から公募を行い、企業等の職歴経験者を中心に国内外から有能な人材を確保していきたいと考えております。最終的な教職員の採用につきましては、準備財団の理事会において正式に決定されるものと考えております。
 また、産業界との連携につきましては、平成十二年四月以降、産業界、教育界、自治体など幅広い分野の方々により構成される準備委員会を設け、広範なネットワークづくりを進めるとともに、準備財団及び学校法人への円滑な移行を図っていきたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(下川俊樹君) 以上で、宗正彦君の質問が終了いたしました。

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