平成12年2月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(全文)


県議会の活動

平成十二年二月 和歌山県議会定例会会議録 第二号
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議事日程 第二号
 平成十二年三月七日(火曜日)午前十時開議
  第一 議案第百十四号から議案第百十九号まで(知事説明・質疑)
  第二 議案第一号から議案第百十三号まで、並びに報第一号、報第二号
  第三 一般質問
会議に付した事件
   一 議案第百十四号から議案第百十九号まで(知事説明・質疑)
   二 議案第一号から議案第百十三号まで、並びに報第一号、報第二号
   三 一般質問
出席議員(四十六人)
     一  番       新   島       雄
     二  番       山   田   正   彦
     三  番       佐   田   頴   一
     四  番       松   本   泰   造
     五  番       阪   部   菊   雄
     七  番       門       三 佐 博
     八  番       西   本   長   弘
     九  番       坂   本       登
     十  番       小   原       泰
     十一 番       大   沢   広 太 郎
     十二 番       木   下   善   之
     十三 番       宇 治 田   栄   蔵
     十四 番       尾   崎   要   二
     十五 番       宗       正   彦
     十六 番       橋   本       進
     十七 番       谷   本   龍   哉
     十八 番       原       日 出 夫
     十九 番       永   井   佑   治
     二十 番       谷       洋   一
     二十一番       小   川       武
     二十二番       高   瀬   勝   助
     二十三番       木   下   秀   男
     二十四番       町   田       亘
     二十五番       山   下   直   也
     二十六番       玉   置   公   良
     二十七番       神   出   政   巳
     二十八番       野 見 山       海
     二十九番       吉   井   和   視
     三十 番       向   井   嘉 久 藏
     三十一番       平   越   孝   哉
     三十二番       下   川   俊   樹
     三十三番       江   上   柳   助
     三十四番       金   田       眞
     三十五番       森       正   樹
     三十六番       冨   安   民   浩
     三十七番       新   田   和   弘
     三十八番       中   村   裕   一
     三十九番       井   出   益   弘
     四十 番       大   江   康   弘
     四十一番       高   田   由   一
     四十二番       中   山       豊
     四十三番       飯   田   敬   文
     四十四番       鶴   田   至   弘
     四十五番       松   本   貞   次
     四十六番       村   岡   キ ミ 子
     四十七番       和   田   正   人
欠席議員(一人)
     六  番       堀   本   隆   男
説明のため出席した者
     知事         西   口       勇
     副知事        高   瀬   芳   彦
     出納長        中   山   次   郎
     理事         藤   谷   茂   樹
     知事公室長      大   平   勝   之
     総務部長       稲   山   博   司
     企画部長       安   居       要
     生活文化部長     大   井       光
     福祉保健部長     小   西       悟
     商工労働部長     上   山   義   彦
     農林水産部長     島   本   隆   生
     土木部長       大   山   耕   二
     企業局長       白   井   保   世
     教育委員会委員長   目   黒   威   徳
     教育長        小   関   洋   治
     公安委員会委員長   高   垣       宏
     警察本部長      樋   口   建   史
     人事委員会委員長   青   木   孝   祐
     代表監査委員     宮   市   武   彦
     選挙管理委員会委員長 谷   口   庄   一
職務のため出席した事務局職員
     事務局長       新   谷   哲   朗
     次長         蓮   池   康   宏
     議事課長       佐   竹   欣   司
     議事課副課長     井   田   光   三
     議事班長       松   谷   秋   男
     議事課主査      井   口   好   晴
     議事課主事      安   井   伸   彰
     総務課長       西   野   光   彦
     調査課長       湯   川       忠
 (速記担当者)
     議事課主査      鎌   田       繁
     議事課主査      中   尾   祐   一
     議事課副主査     保   田   良   春
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  午前十時四分開議
○議長(下川俊樹君) これより本日の会議を開きます。
 日程に先立ち、諸般の報告をいたします。
 過日提出のあった議案第八十号は、教育委員会の事務処理の特例に関する条例でありますので、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第五十五条第四項の規定により教育委員会の意見を徴しましたところ、文書により回答がありました。お手元に配付しておりますので、ご了承願います。
 次に、報告いたします。
 知事から、議案の追加提出がありました。
  〔巻末の「参考資料」を参照〕
  【日程第一 議案第百十四号から議案第百十九号まで】
○議長(下川俊樹君) 日程第一、ただいま報告の議案第百十四号から議案第百十九号までを一括して議題といたします。
 議案はお手元に配付しておりますので、まず知事の説明を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) ただいま上程されました議案について、ご説明申し上げます。
 まず議案第百十四号は、橋本市における株式会社日本工業所の産業廃棄物問題について、ダイオキシン汚染原因施設の撤去等に係る措置命令を近く発してまいりますが、迅速な対応を図る観点から本措置命令に係る行政代執行経費を計上しておくため、平成十二年度予算の補正をお願いするものであります。
 また、議案第百十五号から百十八号は、平成十一年度予算のうち用地取得の遅延等により年度内に完了が困難と見込まれる事業、及び国の経済対策を踏まえ年度途中において追加措置いたしました事業の一部について、平成十二年度への明許繰り越しをお願いするものであります。
 議案第百十九号は、職員の特殊勤務手当について、支給要件、支給方法等を全面的に見直しを行うものであります。
 何とぞ、ご審議の上、ご賛同賜りますようお願い申し上げます。
○議長(下川俊樹君) 以上で、知事の説明が終わりました。
  【日程第二 議案第一号から議案第百十三号まで、並びに報第一号、報第二号】
  【日程第三 一般質問】
○議長(下川俊樹君) 次に日程第二、議案第一号から議案第百十三号まで、並びに知事専決処分報告報第一号、報第二号をあわせ一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、あわせて日程第三、一般質問を行います。
 十五番宗 正彦君。
  〔宗 正彦君、登壇〕(拍手)
○宗 正彦君 おはようございます。
 平成十二年、西暦二〇〇〇年二月定例議会の再開冒頭の本会議におきまして、早々と議長並びに皆様方のお許しとご協力をいただいて質問の機会を賜りましたことにつきまして、大変光栄と存じ、心からまず御礼申し上げる次第でございます。ありがとうございます。
 さらにまた、西口知事がご健康で政務に精励されておることに対しまして、どこまでもうれしく思うとともに、ますます円熟味を増してきた知事に強い期待と深い信頼を込めて、以下順次、通告に従いまして私なりに感ずるところを質問させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 ことしは、まさに歴史的な大転換期の節目の年でございます。グローバル化、情報技術革命、少子高齢化、環境問題など、激動する内外の諸情勢の中にあって我が国では、知事の趣旨説明にもございましたとおり、これまでの右肩上がりの発展を支えてきた社会経済システムがいよいよ行き詰まりを見せております。今こそ、その改革に正面から取り組むべきときであると考えられます。県民生活を取り巻く環境には大変厳しいものがございます。発想を転換すれば、現在のような逆境にこそむしろ、過去のシステムから脱皮して未来に向けて飛躍する絶好のチャンスでもあります。このような基本認識に基づいて、以下、幾つかの質問をさせていただきます。
 当面の景気対策と財政の健全化について、知事にお伺いいたします。
 景気は最悪期を脱したものの、その回復の足取りは重いため、国は引き続き財政面から下支えが必要との判断に立って、例えば公共事業について言えば、前年度当初予算と同額を確保することとしております。他方、地方財政は、これまでのたび重なる景気対策の結果、公債費の増大等により危機的な状況にあるとの認識から、多くの自治体が軌を一にして財政の健全化に取り組んでおります。地方自治体は住民に身近な分野をその行政の対象としておりますから、財政破綻を招いて県民生活に支障を及ぼすことのないよう財政健全化に努めるべきは当然のことでございましょう。しかしながら、現段階で性急に健全化を進めれば、せっかく回復の兆しを見せつつある景気がまた落ち込んでしまうのではないかとの懸念もございます。
 私は、財政か景気かといった単純な二者択一の問題ととらえているのではございません。地方財政は国家財政と異なり、制度上、弾力的な運営が困難であることは十分承知しております。景気を最優先して継続し得る限り積極財政を続けてまいりますと、基金が枯渇した段階で一気に歳出をカットすることになるでしょうし、県民生活はその衝撃に耐え切れないと思われます。したがいまして、両者を上手に両立させることが極めて重要でございます。
 そこで、私は、財政の健全化については中期的な課題として県民に対し年次計画を示しながら段階的に取り組むこととし、その上に立って当面の景気対策に必要な財源をでき得る限り確保するという財政運営が求められていると考えておりますが、以上の私の考えに対しまして知事のご見解をお伺いいたしたいと思います。
 次に、予算の内容について総括的な質問をさせていただきます。
 当面の景気対策の重要性については疑問のないところでございますが、それはあくまでも景気の下支えであり、それだけでは県勢の浮揚は望めません。二十一世紀における県勢の伸長のためには、良質な基盤整備の着実な推進に加え、活力と創造力あふれる産業の育成、振興を図ることが重要であります。また、少子高齢化に対応した健康福祉対策や環境の時代にふさわしい環境対策、未来の輝かしい担い手を育成、養成するための教育施策など、二十一世紀における県政の課題は幅が広く、かつ粘り強い取り組みが必要なものばかりであります。本県は、そもそも財政力が低いところにもってきて財政悪化が加わっているものでございまして、当面は歳出の縮減が避けがたい見通しでありましょうし、結果、総花的な事業の展開が不可能なことは明らかであります。
 そこで、知事にお尋ねいたしますが、知事は十二年度予算を二十一世紀へのかけ橋予算と名づけられております。限られた財源で二十一世紀へ向けた諸施策を進めていくには行政運営の一層の効率化と財源の重点配分が不可欠であると考えられますが、二十一世紀へのかけ橋予算においてはどのような工夫をして諸課題に取り組まれるのか、お伺いいたしたいと思います。
 次に、介護保険制度の各種事業の取り組み状況、今後の課題、円滑なる推進方策についてお尋ねいたしたいと思います。
 我が国では、皆様もご承知のとおり、本格的な少子、長寿時代の到来を迎え、社会保障制度の大幅な変革を樹立していくことが急務となっております。とりわけ、高齢化の波は怒濤のごとく押し寄せてきている状況であり、高齢者の介護は家族の献身的な努力だけでは限界があることが明らかであります。全国各地で悲しむべき事象も多々発生しておりますことを聞くにつけ、見るにつけ、心の痛むものがございます。
 このような社会情勢から平成九年十二月に介護保険法が成立、公布されたわけでありますが、いよいよことしの四月一日から介護保険サービスが開始されることとなります。大きな期待と同時に幾ばくかの不安が交錯している状況であろうとも推察されます。法成立後二年余りが経過したわけでありますが、この間、マスコミなどを通じて国民的な議論を巻き起こしながら、必要な政省令が暫時制定されてきました。その間、低所得者への配慮、介護予防・生活支援対策など、円滑な導入に向けての特別対策が急遽織り込まれるなど、制度そのものが相当揺れ動いてきたのは事実でございます。県を初め市町村、多くの関係者が戸惑いながら着々と準備を進めてこられたものであると思われますが、開始まで残された時間はあとわずかであります。県として二年余の間どのような準備事業に取り組んでこられたのか、また残された今後の課題、さらに、円滑な推進方策はどのようなことなのか、包括的な答弁を求めるものであります。本制度は、新たな千年紀を迎え、画期的な制度改革でありますとともに、その成果の行く末は医療、保健、福祉の今後のあり方を大きく左右するものであると思います。ご所見をお伺いいたします。
 次に、行財政改革についてお尋ねいたします。
 社会経済情勢の急激な変化に対応するため、県においては昨年十一月に策定されました行政改革大綱に基づき、鋭意、行財政改革に取り組んでおられることと存じますが、行財政改革とは、行財政運営のあり方を見直し、行政の質の向上を図ることだと思います。財政状況の厳しい中で県行政の質の低下を招くことなく、事務事業の見直しなど行財政改革にどのように取り組んでおられるのか、お尋ねいたしたいと思います。
 次に、地方分権についてでございますが、いわゆる地方分権一括法が本年四月に施行されます。これにより機関委任事務制度が廃止となり、地方の自己決定権が拡充されることとなるわけでございます。
 そこで、まず第一に、自己決定権の拡大は自主財源の充実があって初めて有効となるものと考えます。県ではどのようにその自主財源の充実確保に取り組まれているのか。また、新たな施策への取り組みに際しては職員の政策形成能力が今まで以上に求められることとなると思われますが、この点についてどのように考えておられるのか、お尋ねいたしたいと思います。
 さらに、今回の機関委任事務制度の廃止は、県民から見ると国と地方という行政間の権限のやりとりの話であって、それによって何が変わるのかよくわからないというのが本音であろうと思われます。市町村に権限が移譲されれば住民にとっても利便性が向上され、地方分権のメリットというものはわかりやすいと思いますが、本県内の市町村への権限移譲についてどのように考えているのか、お尋ねいたしたいと思います。
 次に、市町村合併の推進についてお尋ねをいたしたいと思います。
 過去幾たびか議論の俎上に上りながらなかなか具体的な形としてあらわれなかった地方分権が、本年四月に地方分権一括法が施行されることに伴い、新たな段階を迎えようとしております。まさに地方自治にとって新時代の到来であり、地方公共団体はみずからの判断とみずからの責任のもと、民意を問いつつ、当事者能力を発揮していくことが求められております。特に、地方分権を力強く推進していくためには、住民に最も身近な地方公共団体である市町村が地域社会に対する多様な行政を自主的、自律的に展開していくことが重要であり、その行政能力をさらに強化していくことが望まれているところであります。しかしながら一方で、人口が減少しつつ高齢化が進む市町村が現在の行政サービスを維持していけるのか、また、新たな行政需要に遅滞なく的確に対応できるのかということが危惧されてもおります。
 本県では、全体の約六割の二十八団体が人口一万人未満であります。高齢化率三〇%を超える団体が十四団体、そしてまた、県の平均高齢化率二〇%を超える団体が四十団体となっており、本県においてもこれは例外ではございません。また、人々の日常生活行動圏がますます拡大し、市町村の行政区域との乖離等の問題点も指摘されてきており、さらに廃棄物処理や介護保険など、市町村の区域を超えた行政需要もますます増大してきております。
 このように行政の広域化が求められる大きな流れが生まれてきているところでありますが、今後、一部事務組合や広域連合といった広域行政制度を積極的に活用していくことはもちろんのこと、こうした要請に的確に対応していくためには、市町村の合併を積極的に推進していく必要があると考えられます。
 市町村の合併について、地方制度調査会はその答申において、市町村や住民の自主的判断を前提としながらも、関係市町村の合意形成のために都道府県が重要な役割を果たしていくことが必要であるとしているところであります。また、自治省が都道府県に要請した合併促進に関する要綱の策定や合併協議会の設立に関する知事の監督権限の付与など、合併問題については県、そして知事がその推進役として大きなリーダーシップを発揮していくことが期待されているところであります。
 やはり、当事者である市町村間の議論だけに任せては、なかなか合併は進まないであろうと考えられます。市町村の合併、すなわち公共団体の新しい組織を形成していくときに、個々の団体が私情を挟み、感情を入れては将来に大きな禍根を残すものだと思います。過ぐる昭和三十年、合併促進法が制定され、市町村の合併が強く進められてまいりましたが、その折、反省されるべき幾多の事例が発生し、それを眺め、見てきた私として、将来に悔いを残さない道をたどって町村合併をしてほしいと願うものであります。
 したがいまして、合併問題については知事が積極的に牽引役としての役割を担っていくべきであると考えるものでございますが、そこで知事にお尋ねいたします。
 まず第一点は、市町村合併を含めた広域行政の促進のために強力なリーダーシップを発揮する必要があると考えておられるのかどうか、その意中のほどをお尋ねいたします。
 また、今後の推進計画とその実現についてでございます。現在のところ本県においては合併に対する具体的な動きは見られないと思われますが、市町村合併特例法の法期限は平成十七年三月までとなっているところであります。この残された期間をにらみながら今後どのように実現を図られようとするのか、以上二点についてお伺いいたします。
 次に、和歌山工科大学についてお尋ねいたします。
 知事の冒頭説明にもございましたように、二十一世紀において輝く和歌山県を創造していくためには、人づくりは何にも増して重要な施策の柱であります。本県の場合、大学などの高等教育機関の整備が全国で最もおくれており、また地域的にも偏りが見られる中、貴重な人材と年間三百億円余りの教育費が県外に流出している現状であります。こうした中で今般、旧南紀白浜空港跡地に航空工学を教育の核とする工科大学を設置することとなったことは、県政の長年の課題解決という観点からも大きな前進であると私は思っております。ただ、厳しい財政運営を迫られている中での立ち上げであるだけに、この事業については、知事自身もおっしゃっているように、未来への挑戦であるという気概を持って進めていかなければならないと考えます。
 そこで、この事業が今後の和歌山県の発展に対して持つ意義、さらに、どのような大学を目指していくのかについて、知事のお考えをお伺いいたしたいと思います。
 次に、具体的なことについて幾つか企画部長にお尋ねいたします。
 急速に少子化が進行する中、これからの大学間の学生獲得競争はますます激しくなっていくと言われています。こうした競争に勝ち残っていくためには、全国的にも独自性の高い特色ある大学としていかなければならないと思います。今回の和歌山工科大学は航空工学を核とする単科大学であるということですが、学生の確保や就職先の確保という観点から見た場合どのように考えられているのか。また、設立については県が開設経費を負担するものの、その後は私立大学として運営を行っていく公設私学法人方式で進めていくということですが、実際に自立的な運営は可能であるのかどうか。昨年の検討委員会でも詳細な検討がなされたようでございますが、その見通しについてお伺いいたします。
 さらに、平成十五年度の開学を目指すということでございますが、職員は確保できるのか、教員はどうか、また、学生の就職先を考えた場合、産業界との連携も重要になってくると思われますが、開学に向けての今後の進め方について、学生の地元就職、企業誘致等、産官学の関連協力等についてどう見通しを立てておられるのか、お伺いいたしたいと思います。
 次に、外形標準課税についてお伺いいたします。
 地方分権がいよいよ実施段階となり、地方が自主的、自律的な行財政運営を行うには地方の財政基盤の強化が必要不可欠であると考えております。しかしながら、地方の財政基盤はまだまだ脆弱であり、本県の財政状況も非常に厳しい状況にあります。今回提案されました平成十二年度一般会計当初予算案は四十一年ぶりに前年度に比べて減少した予算であり、財源不足額は百二十四億円となっております。予算案の中の県税収入はといいますと、約九百八億円で前年度当初比四・五%、約三十九億円の増加となっておりますが、その内容は郵便局における定額貯金の大量満期に伴い発生する利子に課税される県民税利子割で七十一億円の増収が見込まれており、これを除きますと三・八%、三十二億円の減となります。景気がやや上向いているような発表がなされておりますが、地方の台所に響くような回復には至っていません。
 このような中で、地方独自の財源確保の取り組みとして、去る二月七日に東京都の石原知事は、安定的な税収及び税負担の公平性の確保のために、都内に本店や支店を置き資金量が五兆円以上の銀行等に対する法人事業税の課税を、従来の所得に対するものから業務粗利益という外形基準に、税率を三%、特別法人については二%の課税を行うと発表し、二十三日から始まった都議会に「東京都における銀行業等に対する事業税の課税標準等の特例に関する条例」を提案しております。これは、今までほとんど死文化していた地方税法第七十二条の十九、事業税の課税標準の特例の規定を適用したもので、石原知事によりますと、大手銀行は本業で十分なもうけを出しながら、不良債権処理により納税を免れており、金融システム安定化の恩恵に浴している銀行業こそ率先して行政サービスの対価としての法人事業税を支払うべきだということであります。この銀行業に対する外形標準課税が実施されますと、一千百億円の増収が図られるということでございます。危機的な財政状況を打開するための思い切った提案であると受けとめられ、都議会では多数の会派が賛同し、可決される見通しであると報道されておりますが、いろいろな問題点も指摘されております。
 問題点としては、特定規模の特定業種にだけ外形標準課税を導入するのは税負担の公平性を欠くのではないのか、特例導入の前後で納税額に大きな差が生じるのは著しく均衡を欠くのではないのか、さらに、東京都が導入することにより地方の自治体の法人関係税や地方交付税の原資である法人税が減少するという影響を与えるのではないか、また、法人事業税への外形標準課税の導入は全国知事会等で全国的な制度として導入を要望している中で、東京都だけが先行して特定業種に課税することが妥当なのか、などが挙げられております。各種マスコミから東京都の案に対する都道府県知事の感想等が報道されておりますが、その中では、東京都の案に賛同しその導入について検討したいとされる県や疑問を呈する県といった、さまざまな対応が伝わってまいります。
 そこで、東京都が銀行業に対して独自に外形標準課税の導入を打ち出したことに対する知事の所見と、本県においてもこのような税を導入するお考えがあるのかどうか、お尋ねいたしたいと思います。
 国で検討されております幅広い業種での全国一律の外形標準課税が導入されますと、景気の低迷であえいでいる赤字法人にも行政サービスの対価としての法人事業税が課税されることになり、景気の回復に水を差すのではないかと危惧されておりますが、この際、中小企業に対する措置をどう考えておられるかについてもお答えをいただきたいと思います。
 次に、橋本市の日本工業所ダイオキシン問題についてお尋ねいたします。
 去る二月二十一日に、橋本市における日本工業所の産業廃棄物処分場に係るダイオキシン類調査の結果が発表されました。それによると、洗煙水の循環ピットの汚泥から二十五万ピコグラムという驚くべき結果が発表されたわけでありますが、そのほかにも、焼却炉に残っていた灰から八万六千ピコグラム、土壌中からも最高で十万ピコグラムの極めて高濃度のダイオキシンが検出されたということであります。
 この日本工業所のダイオキシンについては過去二回調査が行われており、そのときには土壌の環境基準一千ピコグラムを超える一千七百ピコグラムが最も高い濃度であったことと比較して驚くべき数値であり、知事のみならず、私たちも大変驚いているところであります。地元の皆さん方の驚きとともに、その不安な気持ちを考えると、心が痛み、心配を強くしているものであります。
 この問題については、過去幾たびか本議場において議論をされてきたところであります。県としても、日本工業所に対して、廃棄物の撤去や産業廃棄物処理業の許可の取り消し、処理施設の設置許可の取り消し等の対応により、事実上の操業停止に追い込んだところであります。今回の調査結果はそれらの対応が一段落した後の土壌から検出されたものであり、地域住民に及ぼす衝撃はまことに大きく、全国的に関心も寄せられているところであります。
 知事は、この結果を踏まえ、地域住民の大きな不安を考え、翌日に控えていたダイオキシン類問題検討委員会の結果を待たず、即座に緊急対策に関しての指示を出されました。大井生活文化部長を先頭に職員の方々も迅速に対応されておったことにつきまして、高く評価をいたしたいと思います。また、この問題に対して全庁的に取り組むとして、副知事を本部長とする日本工業所ダイオキシン問題対策本部を時を置かず設置したことに対しても同様に高く評価するとともに、さらに去る三月二日、知事みずからが橋本市の現地に赴き、関係住民と語り、話し合い、住民の不安解消のために全力を尽くされておることに対しまして、地域住民ともども知事に対しまして信頼と期待を強くいたしておるところであります。
 しかしながら、やはり今日までの長い経過を思うときに、本件に対する県の対応のおくれを指摘しないわけにはまいりません。私は、県は本問題の重大性にかんがみ、このことに至った今日までの対応のあり方に対して改めて反省をし、再評価をすべきであると考えます。今後は、このことを踏まえて、一に橋本市だけの問題としてとらえるのではなく、ごみ問題を含む環境行政、とりわけ地域住民の生命にかかわる生活環境の保全に対してはより敏感な取り組みをすべきものであると思うと同時に、そのことに対して我々もまた協力を惜しまないことであるということを申し添えておきたいと思うわけでございます。
 県民の健康と生活を守るために、この際、県下の各市町村の実情を調査点検してみてはどうかと思われますが、いかがなものでございましょうか。この日本工業所の問題を教訓とする今後の環境行政に対する取り組みについて、知事のご所見をお伺いいたしたいと思います。決意のほどをよろしくお願いいたします。
 以上で、質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
○議長(下川俊樹君) ただいまの宗正彦君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 宗議員にお答えをいたします。
 議員ご指摘のように、平成十二年度の予算につきましては、当面の景気と財政健全化の両立を図るという重要な認識に立って、その編成に臨んだところでございます。当面の景気対策といたしましては、景気下支えの観点から、不況対策資金などの商工費、あるいは公共事業については全体の予算規模の縮減を図る中、昨年度と同額を確保してございます。他方、財政の健全化につきましては、財政運営プログラムにおきましても健全化期間中に段階的に取り組むべき中期的な課題と位置づけてございまして、平成十二年度予算におきましては景気対策に配意しつつ、収支不均衡を二割程度削減したところでございます。今後、平成十五年度までに残る不均衡の解消を図ってまいりますが、その具体的な進め方についてはできるだけ早期に県民の皆様にお示しできるように努めてまいりたいと考えております。
 こうした厳しい財政事情のもとではございますけれども、私は従来の社会経済システムの改革が急務であるために、その危機意識を持って厳しい優先順位づけを行いまして、それに基づき、限られた財源を大胆に配分して新しい県政の創造に取り組む考えでございます。
 そこで、平成十二年度予算におきましては、財源の重点配分を旨といたしまして、従来の組織横断型予算編成に特別調整枠の設定といった手法も加え、経済構造改革の推進、環境対策、交通網等の基盤整備の推進、介護支援等の福祉対策など、二十一世紀へ向けた諸施策の推進を図ったところでございます。もとより、単年度では社会経済のシステムの転換を図るということは極めて困難でありますので、今後とも将来を見据えた政策展開に努めていきたいと、そういうふうに考えてございます。
 次に、介護保険制度についてでありますけれども、介護保険法が成立してから二年余りが経過をいたしまして、いよいよこの四月から本番を迎えるわけでございます。
 介護保険制度は、医療サービスと保健・福祉サービスの一元的な提供、措置から契約への利用形態の転換、民間事業者の新規参入、市町村の自主性尊重など、さまざまな時代ニーズに即した制度でございまして、また二十一世紀に向けた画期的な仕組みであると考えてございます。
 このような意味から、円滑な導入は不可欠でございまして、県としましても、県民への啓発活動はもとより、介護支援専門員等の人材確保、サービス提供事業者の指定など、多岐にわたる事業につきまして、市町村、関係団体等と連携をしながら懸命に取り組んでまいったところでございます。このような努力の結果、要介護認定の順調な進展、新たなサービス事業者の参入などがございまして、ほぼ予定どおりのスタートを迎えられるものと考えてございます。今後とも、サービス提供基盤の整備、低所得者への適切な配慮、そういった制度の周知徹底についても全力を傾注してまいりたいと考えてございます。
 次に、市町村合併の推進についてであります。
 お話にございましたように、どのようにリーダーシップを発揮するかということでございます。
 まず、広域行政推進のための決意を申し述べたいと思いますけれども、かねがね申し上げておりますように、市町村の合併については地域における自主的な取り組みが基本でございまして、市町村並びに住民の方々が地理的条件や歴史的経緯を踏まえて自主的に判断されることが重要であると考えてございます。もちろん強い指導というのも要るわけでありますけれども、少子高齢化の進展、あるいは地方分権の推進などにより地方行政を取り巻く情勢は大きく変化しているわけでございまして、高度化、多様化する行政サービスへの対応や住民の日常生活行動圏の拡大などを考えますと市町村の将来のあり方についての議論を深めることは大変重要なことでございまして、そうした議論を引き出し、そういった議論の場をつくっていく必要はあると考えてございます。市町村並びに住民の方々が取り組みを進められる際に参考としていただけるように、要綱などを策定いたしまして必要な助言、情報の提供などに努めてまいりたいと考えてございます。
 次に、推進計画とその実現についてでございますが、議員ご指摘のように、市町村合併特例法の法期限は平成十七年三月三十一日までとなっているところでございます。市町村の合併は、全国の事例を見ましても検討・協議の段階から実現までには相当長い期間を要しておることからいたしますと、県としてもそういう点を十分に踏まえ、できる限り早い時期に要綱をお示しできるように努めていきたいと考えておりまして、今後とも強いリーダーシップを発揮せよというお申し出については、よく心得てまいりたいと思います。
 それから、和歌山工科大学についてのご質問でございます。
 このプロジェクトの推進につきましては、学生数の減少、厳しい財政事情などもございまして、かなり慎重な検討を進めてまいりました。その結果、この事業は本県の二十一世紀における発展の礎となる人づくりと産業の活性化に極めて大きな意味を持つプロジェクトであると考え、事業化を決断したところでございます。
 この大学では、さまざまな工学分野の技術や知識を総合的に学ぶ航空システム工学科を設け、実践的で高度な教育研究を行うこととしてございまして、人材の育成あるいは研究活動を通じて本県の産業の高度化や新たな産業の創出など、大きく貢献できるものと確信をしているところでございます。
 県内大学の進学機会の拡大、あるいは定住人口や交流人口の増大による継続的な経済波及効果、また科学技術や教育文化の振興など、さまざまな面において本県の活性化に寄与するものと考えてございまして、またそうでなければならないと思っておるところでございます。今後、県民の皆様のご理解、ご支援を賜りながら、計画の実現に向けて取り組んでまいりたいと考えてございます。
 次に、東京都の石原知事が打ち出した外形標準課税に関する考え方でございます。
 東京都が打ち出しました銀行業等に対する外形標準課税案につきましては、地方分権の推進とそれに伴う財政基盤の強化という点では、厳しい財政状況を打開する方策を地方みずからが考え、実施していくことは大変重要なことであると考えてございまして、その意味では石原知事の行動はまさに一石を投じた意義ある行動であると思ってございます。
 ただ、いろいろと指摘されております問題点等についても幅広い議論が必要ではないかと考えておるわけでございまして、本県において導入することにつきましては、東京都と本県とでは経済基盤等が大きく異なっておるようなこともございますので、東京都案のような課税方式を本県単独で導入することは困難であると考えてございます。今後とも、全国知事会等を通じ、国に要望してまいりたいと考えてございます。
 次に、外形標準課税が導入される場合の中小企業に対する措置についてでございます。
 関係方面からもいろんな意見が参ってございますけれども、その導入に際しては赤字法人等にも課税されることとなりますので、税負担の変動に対する経過措置、あるいは景気の動向等に対する一定の配慮が必要であると認識をしてございます。この点につきましても、国に働きかけてまいりたいと考えてございます。
 最後に、橋本市の日本工業所のダイオキシン問題でございます。
 この問題への対応策につきましては、今議会の冒頭で申し上げたところでございまして、きょうは補正予算もお願いしたわけでございますが、住民の皆さんの不安な気持ちを思い、私も大変心を痛めておるところでございます。
 この報告を受けまして、現地で住民の皆さんにもお話ししたところでございますが、住民の皆さん方の不安を取り除くために本問題の解決に向けて最善の努力を重ねてまいるということを申し上げてまいりました。県の対応のおくれについてのご指摘もございましたけれども、県としては精いっぱい努力をしてきたところでございますが、事態が深刻な状況に至ったことにつきましては、まことに残念な思いをいたしてございます。
 私は、本問題に対する取り組みについて、反省すべきことは謙虚に反省するとともに、今日までの経過をきっちりと総括し、今後の教訓として生かしながら住民の皆様の信頼を築いていかなければならないと考えてございます。
 また、この問題は一日本工業所だけの問題でないというご意見は心して受けとめなければならないと思ってございまして、これからの廃棄物行政の推進に当たりましては、このたびの教訓を生かし、業者指導の徹底・強化はもちろんのこと、議員のお話にもございましたように、県下の廃棄物の実情調査、不法処理等の監視の強化など、素早い対応を行い、問題発生の防止に努めてまいる所存でございます。特に日本工業所に対しては、責任の所在を明確にし、義務を果たさせるため、措置命令を発することはもとより、強い姿勢で臨むつもりでございます。
 もとより、今後とも環境問題は最優先で挑戦していかなければならない重要な課題であるとの強い信念を持って取り組んでまいりたいと考えてございます。議員の皆さん方の絶大なご協力をお願い申し上げたいと存じております。
 以上であります。
○議長(下川俊樹君) 総務部長稲山博司君。
  〔稲山博司君、登壇〕
○総務部長(稲山博司君) 行財政改革についての取り組みの内容と地方分権についての三つのご質問に、一括してお答え申し上げます。
 まず行財政改革につきましては、昨年一月に策定いたしました行政改革大綱に基づき、事務事業の見直し、組織機構の見直し、外郭団体の見直しなど、行財政運営全般にわたる見直しを計画的に行うことにより行政の質の向上を図ることといたしております。
 特に、議員ご指摘の事務事業の見直しの状況についてでございますが、事務の整理合理化によりまして、平成十一年度におきまして県費負担額ベースでは百八十五件、四億五千二百万円の改善を、また平成十二年度当初予算案におきましては百六十七件、四億九千六百万円の改善をそれぞれ行いまして、新たな行政需要に対する財源として活用を図っているところでございます。
 次に地方分権についてでございますが、ご指摘のように、地方分権の推進のためには自主的、自律的な行政運営を支える財政基盤の充実強化と職員の政策形成能力の向上が不可欠でございます。
 財政基盤の充実強化につきましては、国と地方の税財源配分の抜本的な見直しによる地方税財源の充実確保等につきまして、政府要望や全国知事会の要望を通じて国に強く働きかけてまいったところでございますが、引き続き要望してまいりたいと存じます。
 また、分権型社会におきましては、地域の実情を踏まえてみずから政策立案する能力が職員に求められております。時代の変化に対応できる政策形成能力と創造的能力を有する職員を養成する必要がございます。県におきましては、従来より政策形成能力の向上を念頭に置いた種々の研修を実施しているところでございますが、今後とも職員の意識改革や政策に的確に対応できる人材の育成に努めてまいりたいと考えております。
 第三に、県から市町村への権限移譲の状況についてのご質問でございますが、市町村のご要望を取り入れながら進めているところでございまして、これまでに百十二項目の事務について移譲を行ってまいったところでございます。今議会におきましても、身体障害児に対する育成医療の給付の決定、あるいは知的障害者の短期入所措置など、九つの項目の事務を移譲するための条例案を提案させていただいているところでございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 企画部長安居 要君。
  〔安居 要君、登壇〕
○企画部長(安居 要君) 和歌山工科大学についての質問にお答えいたします。
 今回開設する学部学科につきましては、学生の確保や就職先の確保などの面から、さまざまな学部学科についての調査と比較検討を行いました。その結果、総体的に最も有利である工学部航空システム工学科を開設することとしたところでございます。
 既設の航空工学系学科についての調査では、平成十一年度の志願者競争倍率が、工学部は平均十・八倍、うち航空工学科は平均十四・一倍と極めて高い水準にあります。また、平成十年度の航空工学関係学科の卒業生等の就職・進学率を見てみますと、四年制大学の平均七三・四%に対して航空工学系学科の平均は八八・三%となってございます。
 しかし、こうした状況はあくまでも相対的なものであります。このため、新設の大学として学生の確保や就職先の確保を進めていくに当たっては、教職員が一体となって取り組む必要があると考えてございます。とりわけ、県内外の高等学校や企業との幅広いネットワークづくりを早急に進めていくことが重要であると考えてございます。
 次に、自立的運営の可能性についての見通しについてお答えいたします。
 本計画の検討におきましては、大学が開学した後、独立採算による自立的な経営が現実的に可能かどうかについての検討を特に重点的に行ったところでございます。その結果、現在設定しております入学定員で独立採算制による経営は可能であるとの結論を得ております。もちろん、その前提として学生の確保及び経営感覚にすぐれた職員の確保が必要不可欠であり、今後の重要な課題であると考えております。
 次に、開学に向けての今後の進め方についてお答えいたします。
 平成十五年四月の開学に向けまして、平成十二年度にはまず準備財団を設立することとしております。当面する重要な課題の一つは、ご質問にもありましたように、大学の自立的な運営を支える教職員の確保であると考えております。
 まず教員の確保につきましては、現在、国内外の大学、民間企業、研究機関等から教員候補者の選定を進めております。平成十二年度におきましては、これらの候補者の正式な了解を得るとともに、一部の科目の教員につきましては国内外から広く公募を行うこととしております。
 次に職員につきましては、平成十二年度から公募を行い、企業等の職歴経験者を中心に国内外から有能な人材を確保していきたいと考えております。最終的な教職員の採用につきましては、準備財団の理事会において正式に決定されるものと考えております。
 また、産業界との連携につきましては、平成十二年四月以降、産業界、教育界、自治体など幅広い分野の方々により構成される準備委員会を設け、広範なネットワークづくりを進めるとともに、準備財団及び学校法人への円滑な移行を図っていきたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(下川俊樹君) 以上で、宗正彦君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 三十三番江上柳助君。
  〔江上柳助君、登壇〕
○江上柳助君 ただいま議長からお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問をさせていただきます。
 新たな千年紀を迎えたことしは、二十世紀の総決算と二十一世紀への確かな道筋をつける転換の年であり、県民に希望と勇気を与える県政が要請されている時代変革の大きな節目の年であります。
 ドイツの思想家であり社会学者のマックス・ヴェーバーは、その著「職業としての政治」の中で、「政治家にとって格別に重要な資質は何か。それは情熱と責任感と判断力とであろう。情熱がその責任感と結びついたとき、つまり、仕事に対する責任感が行為の決定的な基準となった場合、そこに正真正銘の政治家が生まれる。その結合が輝きを発するには、政治家の決定的な資質であるところの判断力が働かなければならぬ」とございます。
 どうか、二期目の再選を果たされました西口知事におかれましては、知事の持ち前の情熱と責任感と一身を行政にささげられる中で培われた判断力をもって、二十一世紀へのかけ橋とも言うべき重要なこの時期に、財政状況の大変厳しい折ではありますが、県民生活の向上と県勢発展のために、県民の抱く夢が現実のものとなるような県政の運営を切にお願いする次第であります。
 それでは、最初に橋本市の日本工業所の産業廃棄物処理場問題についてお尋ねいたします。
 県の調査で土壌から一グラム当たり最高の十万ピコグラムの高濃度ダイオキシン類が検出された問題で、西口知事は二月定例会のこの本会議の議場で所信を述べられました。その所信の中で、「このたび、本調査の結果、極めて高い高濃度のダイオキシンが検出されたとの報告を受け、付近住民の皆様の不安はいかほどであろうかと心を痛めているところであります。 私は、その不安を取り除くため最善の努力を尽くす決意をし、早速庁内に日本工業所ダイオキシン問題対策本部を設置して取り組み体制を整えた上、当面の緊急対策として、汚染土壌の飛散防止等の措置を講じたほか、風評被害の発生防止の観点も踏まえ、市脇川の水質調査を初めとする周辺の一般環境への影響調査にも着手したところであります。また、付近住民の皆様の健康診断、健康相談も早急に実施してまいります」とし、さらに、汚染土壌の撤去等を進めていくための調査への着手や、焼却施設の撤去などを業者に求める措置命令を出し、業者が従わない場合は行政代執行も辞さない考えであると、日本工業所のダイオキシン問題に取り組む並々ならぬ決意を表明されました。そして、三月二日、現地を訪れ、焼却炉や土壌を視察されました。
 高瀬副知事を本部長とする日本工業所ダイオキシン問題対策本部の設置、さらには、大井生活文化部長を初め、多くの皆様がその対応に当たられております。知事及び皆様の対応に心から敬意を表するものであります。
 昨年の夏に開催されました南紀熊野体験博は、壮大な和歌山の多彩な文化とそれをはぐくんできたすばらしい大自然を舞台にし、人々の心をいやし、満たし、蘇らせるをテーマとした博覧会でありました。知事は「癒し」という言葉で、一九九九年日本新語・流行語大賞を受賞されました。日本工業所のダイオキシン対策で、本県はいやしを代表する県として、いやしの県にふさわしい対応が強く望まれているところであり、またその取り組みに注目が寄せられているところであります。
 地域環境を守り、住民の不安を取り除くため、ダイオキシン汚染対策にどこまで取り組むお考えか、また事業者の責任をどのように求めていくお考えか、今回のようなダイオキシン汚染対策での国、県、市の役割をあわせてお聞かせください。
 新聞報道によりますと、一九九七年夏から翌年春にかけて、橋本市の産業廃棄物処理場内の産廃の一部を撤去した際、その半分に当たる約一万立方メートル余りを粉河町内の産廃最終処分場に持ち込んだとされておりますが、粉河町内の産廃最終処分場でのダイオキシン汚染の心配はないのかどうか、明確にお答えください。
 次に、仮称・和歌山工科大学の新設について質問をさせていただきます。
 私は、昨年の六月定例議会の本会議、この議場で、かつて紀州藩時代に藩主・吉宗が全国で初めて藩立学校を置き、その時代「紀州の学問は諸国一」と言わしめ、学問の奨励によって産業の振興に大きく寄与してきたことを取り上げました。優秀な人材の育成や若者の定着を図るための教育の振興は、本県の歴史的な過程の中で大きな役割を果たしてきたという認識を持っております。
 教育、学問は人づくり、地域づくり、国づくりの基本であり、未来への先行投資でもあります。また、個人が豊かで質の高い社会生活を営むための基礎的要素でもあります。教育の充実に真剣に取り組む国は、紀州藩時代の文教の隆盛がそうであったように、必ず発展と繁栄の時代を迎えています。教育の積み重ね、充実によって、人材という知的資源をふやし、生かしていくことが本県のさらなる発展と繁栄につながると思うわけであります。
 時あたかも、本年一月、小渕首相は施政方針演説で、我が国の二十一世紀の国家像として教育立国と科学技術創造立国を挙げております。小渕首相は演説の中で、教育立国については「輝ける未来を築くために最も重要なことは、いかにして人材を育てるかであります」とし、科学技術創造立国については、「我が国の発展の原動力となるものは科学技術であります。科学技術の進歩こそ、創造性の高い社会を築くために不可欠なものであります。政府一丸となってその振興を図ってまいります」と述べております。
 昨年の十二月、旧南紀白浜空港跡地を利用した大学の設置を検討してきた航空工学系大学基本計画検討委員会は、西口知事に報告書を提出しました。これを受けまして知事は、本年二月四日、和歌山工科大学──仮称でございますが──計画について事業化を進めることを決断されました。
 計画案では、名称は和歌山工科大学とし、航空機の開発・研究技術などを学ぶ航空機工学コースと運航管理などを学ぶ日本初の航空運用システムコースを設ける、大学設立方式は公設私学法人方式で、県が準備財団を設立して開設経費百四十六億円を寄附、財団が学校法人を設立して大学を運営する、また、地域経済波及効果は大学建設時に約二百二十億円、開設後も二十九億円の経済波及効果が見込まれるとしています。
 しかしながら、本県の財政が厳しい状況の中、工科大学構想実現に慎重論もありますが、どのように県民の理解と協力を得られようとされるのか。工科大学設置の趣旨と必要性、大学の特色とあわせて知事のお考えをお聞かせください。
 次に、大学開設経費百四十四億円でございますが──これは当初、百四十六億円でしたが、財政当局の見直しで百四十四億となったわけでございます──この県財政への影響についてであります。
 本県の財政は、バブル崩壊後の長期不況で県税収入が大幅に落ち込み、県立医大の新築移転など大規模プロジェクトや数次にわたる経済対策の実施に伴い大量に発行された県債の償還が本格化している時期でもあります。これらの状況に対応するために財源不足額を基金の取り崩しで補てんしてきた結果、基金残高が急激に減少してきたこと等から、大変厳しい状況であります。そして、平成十二年度から行革大綱の最終年度である平成十五年までの四年間を財政健全化期間と位置づけ、収支不均衡の解消に積極的に取り組んでいるときであります。大学建設を優先させる余り他の事業にしわ寄せは来ないのか、人件費、公共事業の削減や補助金のカット、福祉・環境予算など心配はないのか、財政当局にお尋ねいたします。
 次に、大学運営と工科大学の学生の確保についてであります。
 航空工学系学科志願状況を見ますと、入学定員は名古屋大学で百八十人、東京科学技術大学で四十五人、大阪府立大学で三十人、東海大学で八十人、日本大学で百二十人、日本文理大学で六十人、合計で五百十五人で、競争倍率も平均で十四・六倍と高いわけでありますが、これは入学定員が少ない関係で競争倍率が高くなっていると思われます。果たして、和歌山工科大学で二百三十人の定員を設定して、少子化の傾向で学生数が減る中、一方で若者の都会志向という状況の中で学生が集まるのかどうか、甚だ疑問であります。航空工学系大学基本計画検討委員会の会議録を見ましても、「要するに、航空工学を学べるような能力の学生はそんなにいないんですよ。それで、新たにここへ二百三十人の定員を設定して本当に集まるのかしらと実は心配しながら聞いていたんですが、それはどんな感じなんでしょうか」との厳しい指摘、質問が検討委員会のメンバーからも出されております。
 以上のことから、企画部長にお尋ねいたします。
 第一点は、当初の計画の段階では二百人であった定員をなぜ二百三十人と増員されたのか。また学生の確保は本当に大丈夫なのか。
 第二点は、県内の入学者をどのくらい見込み、県内及び県外指定校推薦入学の割合をどのようにされるのか。
 第三点は、入学金、授業料は幾らで、どのような就学支援があるのか。
 第四点は、大学開設後の大学運営についてであります。少子化の影響で経営が傾いたら補助するのか、大学経営が赤字になったら公費で補てんするのかという問題であります。赤字補てんのための財政支援は、いかなる名目を問わず避けるべきだと考えます。独立採算で運営する体制をどのように考えているのか。
 以上、四点についてお答えください。
 次に、工科大学卒業者の就職についてであります。就職の問題は入学志願者との関係で重要であります。
 平成十一年三月、航空関係学科卒業・修了者の就職状況調査によりますと、大学卒業者の三八%、約四割が大学院に進んでおります。この数字は国公立、私立も含むものでありますが、私立だけを見ましても一一%、しかも二七・七%が就職未定となっています。合計しますと三八・七%、すなわち約四割の卒業者が大学院に進学するか就職が決まらない、こういう状況であります。
 また、本県で実施された和歌山県外企業アンケートの新大学の設置に対する意見要望によりますと、採用については、企業として実績のない大学から採用は難しいとの極めて厳しい回答が出されております。航空工学系大学基本計画検討委員会の議事録を見ましても、「和歌山大学システム工学部は、ことしの最初の就職で県内からの求人は非常に少なかった。学生さんも余り行きたがらないし、県内で見つけるのは非常に厳しかった。工科大学の学生さんが就職戦線で戦うときは、一般の機械のエンジニアと競争するという形になると思う。航空のスペシャリティーというものは県内企業ではほとんど役に立たない。県外でもかなり厳しいだろうという感じがいたします」との指摘が検討委員会のメンバーから出されております。
 工科大学卒業者の就職について県当局はどのように考えておられるのか、お答えください。
 次に、工科大学新設について最後の質問を、教育委員会との関係でお尋ねいたします。
 工科大学の設置について、私は教育委員会の対応が少し遅過ぎるのではないかと思っております。昨年三月、旧南紀白浜空港跡地への高等教育機関等の整備に関する基本的な考え方もまとめられております。本県には、高等教育機関である四年制の大学は国立和歌山大学と県立医科大学、高野山大学の三校と近畿大学生物理工学部の一学部と、極めて少ない状況にあり、そのためか、高校卒業生の県外流出を招く結果となり、県外大学への進学者は全国ワースト一位であります。航空工学系大学基本計画の検討が県企画部でなされているならば、和歌山県内から一人でも多くの優秀な学生を県が設置する工科大学に送り込むという意気込みがあってしかるべきだと私は思います。しかも、工科大学は平成十五年春の開学となっておりますので、最初の入学者は平成十二年度、本年四月からの三カ年の高等学校教育で対応しなければなりません。特に、和歌山工業、紀北工業、御坊商工、田辺工業などの工業系高等学校で、総合学科への対応を初め、工科系大学で絶対必要とされる英語や物理、数学などに比重を置いたカリキュラムを組んだ教育を考えなければなりません。普通科高等学校においても同じであります。そうしなければ、工業系高等学校からの工科大学への進学の機会を閉ざすことにもなりかねず、また、せっかくの県内指定校推薦枠によって工科大学のレベル低下につながるおそれがあります。
 県教育委員会は、工科大学の設置構想に対して今までどのような準備をし、平成十二年度からの取り組みとして新年度予算に反映されたのか、また今後どのように取り組むお考えか、お聞かせください。
 以上が、工科大学の新設についての質問であります。明快なご答弁をお願いいたします。
 次に、河川環境の整備と保全についてお尋ねいたします。
 「川が文明をつくり、文明が川を壊す」との言葉があります。人類は川の水によって田畑を耕し、作物を実らせ、産業を復興させ、営々と文明を築いてきました。古来、人の流れは絶えず水の流れとの戦いでありました。人が定住し生活を営むことは自然との戦いであり、特に川との戦いは熾烈なものがあったようで、「水を治める者は天下を治める」とのことわざが如実にこのことを物語っております。
 一九七〇年代の高度経済成長期における都市化の進展は、川の水の流れを大きく変えました。雨水が浸透していた田畑や森林は、雨水が浸透しない住宅、工場、道路へと変貌し、不浸透域の増加は洪水時の川の流量を増大させました。洪水を防ぐために川は深く掘り下げられ、高い堤防が築かれたため、人と川とのつき合いは疎遠となりました。また、次々に生まれた工業地帯が安定した大量の水と電力を必要としたため、全国各地で多目的ダムが建設されました。その結果、ダムの下流には水の流れていない区間、魚が遡上できない区間があらわれました。さらには、生活雑排水などによる水質の悪化、ごみの不法投棄なども加わって、河川環境は著しく悪化したのであります。
 このようなことが重なって、川は水を流すだけの水路となり、もともと川が持っていた生物をはぐくむ潤いのある自然環境は消滅し、情緒のない川の景観へと変貌し、川の魅力は失われてきたのであります。高度成長によって産業、工業が発達し、世界に類を見ないほど急速なテンポで私たちの生活水準は向上し、洪水による大水害や深刻な水不足も少なくなりましたが、周りを見る余裕ができたとき、「文明が川を壊す」との言葉のとおり、初めて私たちは川がこうむった代償の大きさに気づいたのであります。
 私たちは今こそ、大切な水を与えるだけでなく、大自然のバロメーターであり、環境に潤いを与え、生態系に不可欠な生息空間を提供している河川を保全するだけでなく、積極的にその復元に努めるときであります。近年、河川が本来持っている生物の良好な生育環境を保全し、美しい景観を創出するための多自然型川づくりや魚に優しい川づくりが進められているところであります。
 建設省では、平成九年五月二十八日、百年間使ってきた河川法に初めて「河川環境の整備と保全」というキーワードを挿入し、大改定をしました。この河川法の改正を県としてどのように受けとめ、河川行政において河川環境の整備と保全に取り組んでおられるのか、また、今後限られた予算の中で河川環境の整備と保全のための予算配分をどのようにされるお考えか、お聞かせください。
 次に、具体的な河川浄化についてお尋ねいたします。
 本県の平成十一年版「環境白書」によりますと、河川の有機汚濁の代表指標でありますBODについて、環境基準を超えている河川は、紀の川の藤崎井堰、船戸、それから南部川の古川橋、新宮川──現在は熊野川でございますが──の四滝、及び和歌山市の土入川河合橋の付近、大門川、有本川、和田川であります。
 BODというのは生物化学的酸素要求量で、水中の汚染物質を微生物が分解する際に必要とする酸素量のことで、この数値が大きくなればその河川などの水中には汚染物質、有機物が多く、水質が汚濁していることを意味します。
 私は、七つの河川のうち、新宮川以外の六河川をこの目で見てまいりました。共通して言えることは、ごみと汚濁でとても魚がすめる状況ではないということであります。
 知事はお忙しいですから、見に行かれる機会もないと思いますので、私、写真を撮ってきました。ご参考までにちょっと見ていただきたいと思います。
 河川の改修、浄化は、そのほとんどが県の管理河川でありますから、県の事業であります。和歌川は、県が河川の改修に取り組むとともに、下水道の整備や工場からの排出規制によって、まだまだ十分とは言えませんが、かなり浄化され、魚がすめる状況になってきております。この点は評価させていただきます。
 私は、市議会議員のときは環境対策特別委員会に所属をしておりまして、何回か和歌山市の内川であります大門川、有本川、和田川や土入川などの河川の浄化について議論をしましたが、河川管理者は県でありますので、市当局は「県に要望いたします」で終わっておりました。
 私の家は、土入川の前であります。朝夕眺めておりますと、干潮のときは水が引いて真っ黒のヘドロやごみが見えます。そこにシラサギやユリカモメがやって来ます。白と黒いヘドロのコントラストが痛ましい限りであります。また、夏にはヘドロの悪臭が立ち込めてきます。本格的に河川を浄化しようと思えば、最終的には公共下水道の完備にまつしかないと思うわけでありますが、それまでには何十年という歳月がかかります。県において一日も早く環境基準を超えている七河川の水質汚濁の原因を究明するとともに、浄化を初めとする河川環境の整備と保全に積極的に取り組むべきだと考えますが、ご見解を承りたいと思います。
 次に、梅酢廃液処理への行政の対応についてお尋ねいたします。
 自然環境が豊かで梅の産地である南部町を流れる南部川の支川であります古川がなぜ環境基準を超えているのか。私は南部町、南部川村の現地をこの目で見て回りました。
 かつて南部川は、アユがたくさんとれたそうであります。私が現地の釣り道具屋さんに聞きますと、十年ぐらい前まではアユがたくさんとれたということでありました。アユの漁獲量は平成九年で有田川、日高川ともに年間二百トンでありますが、南部川はわずか三トンであります。アユがすめる・すめない環境であることを証明する数値が県の「環境白書」の「生活環境項目」に出ております。それは、BODであります。ちなみに、南部川の支川であります古川は水域類型のBで、BODの基準値は三であります。この数値が大きくなれば水質が汚濁していることを意味します。BODは有田川で〇・六から〇・八、日高川で〇・七から一・七であります。一方、南部川の古川橋地点は五・三で、極めて高い数値を示しております。
 私は、南部町、南部川村で「梅酢を南部川に不法投棄するな」という看板をたくさん見かけました。また、新しい梅加工場は水質汚濁防止法に基づく排出規制のためでしょうか、工場からの廃液は一切出されておりませんでしたが、古い梅加工場からは色のついた廃液が流されておりました。
 本会議において、先輩議員、同僚議員が梅枯れや生育不良対策について議論されておりますが、この点は暴露実験や土壌改良、品種改良を当局は徹底して行い、梅枯れや生育不良の原因を究明し、解決すべきであります。とともに、河川環境を保全し、本県の農産物の主力産品であります七百億円の梅産業を守り、将来、一千億、二千億円産業に育てる観点から、梅酢廃液の処理についても行政の対応が強く望まれているところであり、梅加工農家や梅加工業者が安心して梅づくりに取り組める環境をつくるべきだと考えます。ご見解を承りたいと思います。
 次に、河川の水量確保と水源涵養機能の充実についてであります。
 河川の水量が減少すれば、それだけ水中の汚染物質を希釈する、いわゆる薄める力が低下します。例えば、牛乳のボトル千ミリリットル分のてんぷら油を完全に希釈するためには、ふろおけ二十杯分の水が必要と言われます。米のとぎ汁ですと、十杯から十五杯分の水が必要と言われています。
 本年一月策定にされました県の環境基本計画では、「河川や海岸の自然環境の保全」として、「河川環境を適切に維持するため、河川特性を考慮し必要な河川流量を確保します」とし、「水環境の保全」では、「森林や農地が有する水源かん養機能を維持、向上させ、県土の適切な水循環を確保するため、森林及び農山村地域を適切に保全するとともに、水源林の保育や広葉樹林等の植樹、耕作放棄地の再緑化などの整備・管理を推進します」としています。また、「森林や農地等の保全」として、「広葉樹林等による漁民の森──すなわち漁業環境の保全を目的として漁業者が植栽した落葉広葉樹林──の造成事業等を支援し、海と森との交流を促進します」としております。先月、漁師の皆さんが日高川沿いの美山村にコナラの苗木を植えられました。必要な河川の水量確保にどのように取り組むお考えか、あわせて、森林、農地などの有する水源涵養機能が極めて重要だと思われますので、その取り組みについてお答えください。
 以上が、河川環境の整備と保全についての質問であります。明確なご答弁をお願いいたします。
 最後に、建設副産物いわゆる建設残土の最終処分場の確保についてお尋ねいたします。
 建設現場などで副次的に発生いたしますアスファルト塊、コンクリート塊、土砂などは、廃棄するだけではなくリサイクルを進めることが求められているわけであります。どうしても資源化及び再生資源として利用できないものについては、最終処分場での適正な処理が必要であります。これは、産業廃棄物とはまた違うわけでございます。
 平成八年三月から和歌山市西浜地区及び薬種畑における建設残土の受け入れとあわせ建設廃材の破砕処理を行っておりました公共的関与の最終処分場は、本年一月末をもって終了いたしました。和歌山市雑賀崎埋め立て計画は、外貿機能の拡充、また紀北地域の建設残土の処分場を確保することなどを基本方針としまして、建設残土は平成二十二年度までに三千二百万立米、年平均で二百五十万立米発生するとされております。
 現在、紀北地域での公共的関与の最終処分場はフェニックス処分場になるわけでありますが、フェニックスの受け入れ基準に適合しないものについては一定の中間処理が必要でありますので、中間処理機能の整備が必要であります。結果的に、フェニックスへの建設副産物、いわゆる建設残土の搬出にはコストがかかってしまうわけであります。これらの課題に対処するとともに、建設工事、下水道工事、河川の改修などから発生する建設残土を適正に処理するためには、公共的関与すなわち行政側が関与できる最終処分場が必要であります。
 建設残土の公共的関与の処分場の確保について、県ではいろいろと検討がなされていると聞き及んでおりますが、すぐには確保できないのではと推察いたします。その間、暫定的に公的関与できるストックヤード──いわゆる仮の処分場──を設置するお考えはあるのかどうか、お尋ねいたしまして、私の第一問といたします。ご答弁のほど、よろしくお願いいたします。
○議長(下川俊樹君) ただいまの江上柳助君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 江上議員にお答えをいたします。
 まず、日本工業所のダイオキシンの問題についてでございます。
 このダイオキシン汚染対策への取り組みについては、先ほどお話にもございましたが、緊急対策として立入禁止措置、あるいは飛散防止シートの設置、また汚染範囲の実態調査を行ったところでございまして、さらに、早急に健康診断、健康相談等、及び一般環境の調査を行うとともに、現在行ってございます調査の結果によりダイオキシンの濃度分布を把握して必要な土壌対策を実施してまいりたいと考えてございます。
 次に、事業者の責任についてでございます。
 事業者には、廃棄物を適正に処理する責任があります。したがいまして、不適正な処理により生活環境保全上の支障を生じさせた場合には、事業者の責任において必要な措置を講ずべきものでございますので、日本工業所に対しては、焼却施設等の撤去をさせるために措置命令を発することはもとより、強い姿勢で臨んでまいりたいと考えてございます。 
 また、県、国、市の役割につきましては、廃棄物処理法上、県が中心的な役割を担うべきものと規定されてございまして、国は法制度の整備と地方公共団体に対する指導、市は県の施策に協力するべきと定められておるわけでございます。したがいまして、このたびの高濃度ダイオキシン対策は県において取り組まなければなりませんが、ダイオキシン対策は技術的にも極めて新しい分野であり、また財政的にも多額の経費が見込まれますので、国に対しても支援を求めると同時に、市民に直結する住民の健康や福祉対策などにつきましては橋本市にも協力を求めてまいりたいと考えてございます。
 次に、和歌山工科大学についてのご質問でございます。
 本計画は二十一世紀における本県の発展の礎となる重要な意味を持つプロジェクトでございまして、厳しい財政状況のもとにあっても、なお県勢活性化のために推進すべき事業であると考えてございます。このため、今後、行政、教育、産業など各界の関係団体や関係機関と連携をしながら、組織づくりや説明会の開催などを行い、本計画に対する県民の皆様のご理解を得るとともに、ご意見を反映させてまいりたいと考えてございます。
 航空機を活用した実践的な教育研究の実施、あるいは我が国では初めての航空運用システムコースの開設、欧米型の斬新な運営組織や運営方法の導入などにより極めてユニークな特色を持った大学づくりを進めることとしてございまして、世界に誇り得る科学技術の研究開発拠点となるよう、計画の実現に向けて取り組んでまいりたいと考えてございます。
 次に、河川環境の問題でございますが、先ほどは、古川を初め多くの河川の状況を写真で拝見をいたしまして、ありがとうございました。
 平成九年の河川法改正につきましては河川環境の整備と保全を実現していく上で大変時宜を得たものと認識をしてございまして、今後、和歌山にふさわしい河川環境を整備・保全していくために、河川改修に当たり和歌山流の多自然型川づくりの技術を確立いたしまして、人とともに生き物にも快適な川づくりを進めてまいりたいと考えてございます。厳しい財政状況下ではありますが、必要な予算措置についても十分検討してまいりたいと考えてございます。
 詳細につきましては、担当部長からお答えをいたします。
 以上であります。
○議長(下川俊樹君) 生活文化部長大井 光君。
  〔大井 光君、登壇〕
○生活文化部長(大井 光君) 江上議員の、日本工業所のダイオキシン問題に関する産廃の最終処分場でのダイオキシン汚染についてお答えいたします。
 日本工業所に野積みしていた廃棄物は、平成九年に地域環境課長、社団法人和歌山県産業廃棄物協会及び株式会社日本工業所の三者の覚書に基づきまして搬出したものでございます。
 搬出後の処分先につきましては、現在まで具体的な搬出先は明らかにできない旨お答えしてまいりましたが、粉河町の許可処分場に搬入したことを申し上げます。この対応につきましては、私が粉河町に参りまして今日までの経過を説明し、ご理解を賜りたいと考えてございます。
 なお、この廃棄物は焼却前のものであり、ダイオキシン汚染の原因となる燃え殻やばいじんが含まれていないことは搬出時に確認いたしてございます。なお、県では、県内の産業廃棄物処分場について定期的に重金属等の水質検査を行っており、この処分場につきましても水質検査を行っておりますが、これまで異常のないことを確認いたしております。また、日本工業所が堺市内の自社用地に橋本市から搬入した廃棄物のダイオキシン濃度を堺市が測定した結果では、二百六十ピコグラムでありました。
 今後は、重金属調査に加えまして、ダイオキシン類の調査も実施し、環境監視を継続してまいりたいと考えてございます。
 続きまして、三番目の質問の河川環境の整備と保全のうち、環境基準を超えている七河川の原因究明と対策についてお答えいたします。
 BODが環境基準値を超えている河川のうち、土入川の上流部、大門川、有本川及び和田川の四河川については和歌山市が測定しておりまして、また紀の川は建設省近畿地方建設局が測定し、新宮川の支川である北山川は三重県が測定しております。和歌山県が測定しているのは、南部川の支川である古川であります。
 この古川につきましては、現在、汚濁原因を把握すべく調査を行っているところでございます。また、他の六河川につきましては、それぞれの測定機関と連絡を密にし、原因の究明に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 総務部長稲山博司君。
  〔稲山博司君、登壇〕
○総務部長(稲山博司君) 和歌山工科大学建設に伴う県財政への影響につきまして、江上議員にお答えいたします。
 本県の財政状況は厳しく、ここ数年は歳出規模の抑制が避けがたいところでございます。聖域のない事務事業の見直しに取り組んでいく考えでございますが、他方で厳しい優先順位づけに基づいて限られた財源を重点的に配分し、県勢発展の基盤を築いていくことも重要であると考えてございます。
 和歌山工科大学の新設に係る総事業費は約百四十四億円になると見込んでおりますが、本大学は二十一世紀における発展の礎となる人づくりと産業の活性化に極めて大きな意味を持つものでございまして、長期的な視点から事業化を図ったものでございます。
 いずれにいたしましても、極めて厳しい財政状況の中でのビッグプロジェクトの実施でございますので、県民の皆様のご理解をいただきながらその推進に努めていくことが重要であると考えてございます。
○議長(下川俊樹君) 企画部長安居 要君。
  〔安居 要君、登壇〕
○企画部長(安居 要君) 和歌山工科大学についてのご質問にお答えいたします。
 まず入学定員につきましては、独立採算が可能かどうかの検討を行い、入学定員数が百六十名以上であれば自立的経営が可能であるとの結論を得ました。さらに、入学定員数に伴って段階的に増収する収支についての試算を行い、学生数ができるだけ少なく、同時に最も採算性の高い入学定員数を検討した結果、入学定員を二百三十名としたものでございます。
 次に、学生の確保につきましては、競合する大学が少なく、進学を希望する者が極めて多いなど、他の学部学科に比べて優位でありますが、今後、さまざまな工夫、努力を行い、学生の確保に努めていく必要があると考えています。また、県内外の高校からの推薦入学枠につきましては、最大で入学定員の四割程度としたいと考えております。
 なお、一般、推薦を合わせての県内からの入学者の割合につきましては、県内の高等学校など教育関係機関と十分な協議、協力を行いまして、今後、具体的な目標数値を定めるなど、できる限り多くの方が入学できるよう取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、計画上、学生納付金につきましては、全国の類似規模の工学系私立大学の平成十一年度の平均値を参考にしまして、入学金は二十八万円、授業料は九十二万円と設定しております。今後、国立大学の独立法人化により国公立大学と私立大学との教育費の格差はかなり縮小するものと見込まれますが、学生の就学を支援するため、大学独自の奨学金制度の創設を行う予定です。
 次に、大学の経常的収支が赤字になった場合の県の対応につきましては、法制度上県に助成義務はなく、また大学の自立的経営を確立するためにも、運営収支の赤字補てんを目的とする財政的支援は行うべきではないと考えております。
 次に、卒業者の就職の見通しについてでございます。
 ご質問にございましたように、航空工学系学科の学部卒業者の就職、進学の状況を見ますと、大学院への進学率が極めて高くなっております。特に国公立大学では大学院修士課程を修了後、就職する学生が大半です。このため、大学院の開設は今回の計画におきましても必要不可欠であろうと考えております。このため、学校法人設立後、当該法人において早急に大学院の開設に向けての取り組みを進めることが重要だと考えております。
 また、航空宇宙産業、自動車工業などの機械産業、電気機器産業、情報産業等への厳しい就職戦線に本大学が新たに参入していくことになるわけですから、企業との緊密な信頼関係を築くため、企業からの教職員や役員の確保、共同研究などの産学交流事業の具体化などの企業との関係づくり、ネットワークづくりに今後準備財団の段階から大学が全力で取り組んでいかなければならないと考えてございます。
 また、県内の企業への就職につきましては、機械金属や材料加工などの分野への就職が期待できるものと考えておりますが、やはり企業との有機的な信頼関係づくりがその前提となります。今後、長期的な視点から、県内企業との交流連携事業の具体化やその推進に大学が努力していくことが必要であると考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 土木部長大山耕二君。
  〔大山耕二君、登壇〕
○土木部長(大山耕二君) まず、河川環境の整備と保全についてお答えいたします。
 河川環境の整備と保全における本県河川行政の取り組みについてでございますが、これまで、護岸を石積みとしたり植生が可能なものとするほか、浄化用水の導入による水質の改善などの措置を講じてまいりました。さらに、これまでの取り組みを一層確実なものとするため、県内八つのモデル河川において和歌山流多自然型川づくりの技術の確立を目指した取り組みを開始したところでございます。今後は、この取り組みをさらに展開することにより他河川への応用も検討し、広く一般化していく予定でございます。
 次に、河川浄化等に対する取り組みでございます。
 一般に、河川の水質汚濁には生活排水等の流入、川底の泥からの汚濁物質の溶出など、さまざまな原因が考えられますが、河川ごとに主たる原因と流域の特性を十分考慮し、下水道の整備や浄化用水の導入及びヘドロの除去等、個々に実効性のある浄化対策を講じることが重要と認識してございます。
 ご指摘の七河川のうち、有本川については国が建設してきた有本揚排水機場が完成し、本年度末に通水開始する予定と聞いてございます。また土入川、大門川及び和田川については、今後、川底のしゅんせつを行うこととしております。今後とも、実効性があり、事業実施が妥当と思われるものについて対策を講じてまいります。
 次に、河川水量の確保対策でございますが、これまで必要な河川においてはダムを築造し、渇水時にはダムからの必要な水量を放流したり、水量が少なく汚濁の進んだ河川については浄化用水の導入を行い、必要な水量を確保する等の事業を実施してまいりました。今後とも、適切な水量の確保が必要と認められる河川については、その河川の実情に応じ、河川環境に配慮した実効性のある対策を検討してまいります。
 次に、四項目めの公共的関与の建設残土処分場の確保について、ストックヤードの設置でございます。
 紀北地域では、社会資本整備として下水道整備、道路整備などの公共事業や京奈和自動車道、紀の川大堰などの大規模プロジェクトがあり、建設発生土の増加が予想されることから、公的処分場が必要となっています。特に、和歌山市周辺では陸上での公的処分場の確保が難しく、海面処分場が必要となっていますが、すぐに確保するのは困難であります。引き続きその確保に努めてまいりますが、暫定的な措置としまして、建設発生土のリサイクルを進めるためにもストックヤードが必要であり、公的用地等に一時的に仮置きする方法も有効でありますので、候補地を検討してまいりたいと考えています。
 設置の条件といたしましては、周辺の環境に配慮し、振動、騒音等の公害防止対策等、適切な措置を行うとともに周辺住民の理解を得ることが必要であり、今後、関係機関との調整を図りながら取り組みをしてまいりたいと考えています。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 農林水産部長島本隆生君。
  〔島本隆生君、登壇〕
○農林水産部長(島本隆生君) 河川環境の整備と保全に関しましてのご質問の二点にお答えをいたします。
 まず、梅酢処理への行政対応についてでございますが、環境問題への意識の高まりの中にありまして、梅加工量の増大に伴い増加する梅酢等の適正処理が強く求められていると考えております。このため県では、梅酢等を適正に処理するよう市町村や農協等を指導し、それぞれの広報紙や地域の農業振興協議会等を通じ啓発に努めてきた結果、農家から排出される梅酢につきましては一次加工した梅干し原料の販売と同時に加工業者に引き取ってもらう形が多くなってきてございます。しかしながら、このような方法での限界もあり、地域ぐるみでのリサイクルが重要となってきております。
 こうした中、一部の加工業者等において梅酢を活用した新商品開発や調味廃液のリサイクル試験などが行われておりますが、現時点では処理コストや販路の確保などの課題があると聞いてございます。一方、昨年十一月から関係部局において、加工業者が増加している状況もあり、衛生管理面や梅酢等の処理方法について実態調査を行っておりまして、本年三月には調査結果がまとまる予定となってございます。
 県といたしましては、こうした調査結果も踏まえながら、関係部局の連携を図り、適正処理の一層の推進に努めるとともに、地域循環を目指した資源リサイクルの実現に向け、地域市町村や関係団体と一体となって取り組みを行ってまいりたいと考えてございます。
 次に、森林、農地の有する水源涵養機能についての取り組みでございます。
 森林の保育、間伐など人工林の適正な整備を進めるとともに、水資源の確保という面から、水源涵養保安林の機能強化に加え、広葉樹林整備特別対策事業やボランティアの方々の参加によるかしの木バンクの森づくりのほか、広葉樹林の造成による漁民の森づくりなど、多様な森林の造成に努めているところでございます。
 また、農地につきましては、農業生産の重要な基盤であることはもちろん、水田のかんがい用水の半分以上が河川に還元されるとともに、農業用として消費された水も地下に浸透し、地下水の涵養に貢献しているところから、農地の保全に努めているところでございます。
 今後とも、農林水産業の振興を基本に、森林、農地の持つ多面的機能の維持、発揮に努めてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 和歌山工科大学の新設と教育委員会の対応についてお答えいたします。
 本県高校生が県外の大学へ進学する割合が高い中、県内での大学の設立、とりわけ工学系の大学の新設は本県教育にとって大いに歓迎すべきものであると受けとめております。
 もとより理数教育の振興は極めて大切であることから、本県ではこれまで理数系の専門学科を八校に設置してまいりました。また、大きな成果を上げている総合学科については、今後、紀南地方を視野に入れて設置を検討してまいりたいと考えております。
 次に、工業高校からの進学につきましては、大学受験に対応できるカリキュラムを工夫するとともに、放課後の補習や個別指導等を行っております。このたびの工科大学設置により工業高校からの進学希望者の増加傾向が一層強くなることが予想されることから、専門学科としての特色を生かしながら、数学、理科、英語等の学習を一層充実させる必要があります。
 こうしたことを踏まえ、今後、理数系及び工業系の学科はもとより、総合学科、普通科等においても教育課程の一層の工夫、改善を進めるとともに、学科の改編についても取り組みを進めてまいります。また、県立学校長会議や進路指導部長会議等において、目的意識の高い生徒が和歌山工科大学への入学を目指すよう、進学指導の一層の充実に努めてまいる所存であります。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 三十三番江上柳助君。
○江上柳助君 ご答弁いただきまして、ありがとうございました。
 まず日本工業所のダイオキシン問題で、今最大の関心事は何かと申しますと、県が日本工業所に対して焼却施設等のダイオキシン汚染原因施設の撤去や悪臭の原因であると特定される廃棄物の撤去の措置命令をいつ出すかということであります。知事は所信の中でも事業者に対し速やかに措置命令を発しますと述べておられますが、いつ措置命令を発するお考えか、この点、生活文化部長にお尋ねいたします。
 それから、粉河町につきましては、住民の皆さんが大変不安に思っていらっしゃいますので、調査していただくというお話でございましたので、どうぞ速やかに調査をしていただきまして、そしてまたその調査の結果を公開していただくということを要望させていただきます。
 それから工科大学ですけれども、ただいまご答弁いただきました。教育委員会の準備が整っていないということは一つ言えると思います。それから、非常に少子化、若者の都会志向で、学生が本当に集まるのかなという問題。それから大学の運営は大丈夫かと、多くの課題がございます。できるものなら開学を一年ずらして、平成十六年開学として全庁的に万全の体制で取り組むべきだと思います。このことが県民の理解と協力を得る一つの道ではないかと私は考えております。
 大学を設置することはいいんです。賛成なんです。その準備が整っていないということで、開学を一年ずらすことについて、本当は答弁いただきたいんですが、これは答弁要りません。
 以上でございます。どうぞよろしくお願いします。
○議長(下川俊樹君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 措置命令に関してでございますが、一応、三日を予定しておったんですが、本人に手渡す必要もありますから──近々にできると思います。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(下川俊樹君) 以上で、江上柳助君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午後零時一分休憩
     ─────────────────────
 午後一時五分再開
○議長(下川俊樹君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 四十四番鶴田至弘君。
  〔鶴田至弘君、登壇〕(拍手)
○鶴田至弘君 ご指名をいただきましたので、質疑並びに一般質問を行わせていただきます。
 まず、提出された予算案に関係いたしまして、議会冒頭の知事の議案説明要旨を聞きながら感じたことを順次お尋ねしたいと思います。
 まず知事は、二十一世紀を目前にして、小手先の手直しではなくていわば新しい県政の創造を行うのだと述べて、県政の構造改革に取り組んでいくと決意を表明されました。私たちも、従来、特定大企業の利益に加担するような公共事業偏重や行政姿勢、あるいは国の言いなりになって際限なく県債を発行して県民に後年度負担を押しつけるような財政構造を速急に改めるべく県政の構造改革を訴え続けてまいったところであります。知事にあっては、現在の県政の構造のいかなる点をいかに改革されようとしているのか、どこに問題があって、それをどのように変革されようとしているのかをお示しいただきたいと思います。
 次に、予算編成に当たって、景気対策と財政改革の二つの目標を掲げていくことを表明されております。政府は、景気対策だとして来年度も三十数兆円もの借金を重ね、その効果の薄い公共事業にゼネコンの要請にこたえて莫大な資金を投じようとしております。そして、破綻の危機に瀕した国家財政を立て直す計画も見通しも持たないまま、二兎を追わずとして、その批判にまじめに対応しようとさえしておりません。しかし、知事にあっては、景気対策と財政改革を同時に解決していこうと積極的に対応する姿勢を表明されたことについては評価をするものであります。ただ、問題は、中身がそのようになっているかということであります。景気対策では、従来に比して特別に改革というほどのものは見当たらず、旧来の公共事業と金融対策にとどまっているの感はぬぐえません。公共事業の景気に及ぼす影響はその金額に比して小さく、大型公共事業になればなるほどその効果は小さくなっていることは多くの統計が示すところでもあります。今期の公共事業は必ずしも大型ばかりとは言えませんが、港湾関係に見られるような景気浮揚に余り役に立たないものがその投資の中に大きな比重を占めていることなど、意図するところに沿うものではないと思います。また、ベンチャー企業の育成も一つの重要な要素として掲げられておりますが、ベンチャー育成はそれなりに必要であるとしても、その名のごとくまさにベンチャーであって、万に一つの成功を見るか見ないかのものであります。広く現存の企業を刺激するものではないと考えるところであります。このようなところに景気対策の重きを置くよりも、福祉型投資を増大させることによって雇用を増大させるとか、公共事業にあっては生活密着型に比重を置くことが重要ではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか。
 同時に、県下小売商店を駆逐しつつある大手スーパーなどの規制にもあらゆる知恵を絞って対応すべきでしょう。いかがお考えになっておられますか。
 次に、財政健全化のためにどのような工夫が凝らされたかについてであります。
 二〇〇〇年度は、財政健全化計画の初年度に当たります。六千四百四十億円の大きな債務を抱え、これをどう返済していくか、知事にとっても随分苦労の多い問題だと思います。予算案では、今年度末の借金は昨年に比して七十二億円減額されておりますが、県債残高の見込みはわずかに前年度より六億円少なくなっただけであります。これだけでは、いつになったら正常値に戻るのか見当もつきません。その上、年度途中の借金は近年常態化しており、平成七年では百八十四億円、平成十年では二百八十五億円、平成十一年で百六十三億円と、年度途中でプラス補正がされているところであります。平成十二年度にどのような補正が予想されるのかはわかりませんが、ここ十年の流れからすれば、恐らくまた多額の県債が発行されるのではないかと懸念されるところであります。もしそういうことになれば、財政運営プログラムは最初から大きなつまずきを見せることになります。残高をふやしつつの健全化はありません。この際、これ以上残高をふやさないことを基本方針として据えるべきではないでしょうか。どのように考えておられますか。
 関連した問題として、県債に付随する利息の問題であります。六千四百億円の債務には莫大な利息がついてきます。これが一体どれだけあるのか即座に計算できるシステムがないそうでありますが、これは県と県民が抱えている負債ですから常に明らかにして、県債残高を公表する際には同時に明らかにすべきだと思います。十二年度予算で、公債費が七百三十六億円のうち百九十四億円が利息です。平成元年から今年度までに払った利息は千七百七十二億円ですから、十二年度分を加えると千九百六十六億円、実に二千億円になんなんとする利息が支払われるわけであります。このようなことは、多くの県民の知るところではありません。二千億円が自由になる金だとしたら何ができるか。それほど事は単純ではないと思いますが、膨大な仕事ができる金額であります。起債を発行すれば利息は当然でしょうが、この莫大な金額について真剣に考えるべきことだと思います。そういう意味からも、起債に頼る、あるいは起債残高が膨大なものになるということについては重々慎むべきであると思いますが、いかがお考えですか。
 次に、収支の均衡はどのように図られたか。県単事業を削減したり、いろいろ工夫はされているようですが、結局、財源不足百二十四億円を基金の取り崩しで糊塗しなければならなかったことなどを見ると、財政健全化への一歩を踏み出したとは到底思えないところであります。いかがお考えでしょうか。
 私は、その第一の原因が知事の国の公共事業偏重への傾斜だと思います。知事は、予算案を発表した記者会見のコメントの中で、国の景気対策とできるだけ連動してとか、公共事業については景気回復に全力を尽くすという観点に立って編成した前年度当初予算と同額を確保するとした国の方針を踏まえたとしております。ここに一番の問題があると思います。そもそも国が行う公共事業の景気に対する影響は、現実経済が示しているように、決して効果的なものではなかったことは事実であります。景気の動向を働く者の立場から見て端的に示すものの一つが公共投資と雇用数の関係でありますが、国は十年前の一九九〇年、公共投資に十四・六兆円を投じました。それに対する雇用者数は百二十九万人でした。その後の景気対策が続きまして、九八年(平成十年)は投資額が十六・六兆円にふえましたが、雇用者数は八十五・九万人と激減するに至っております。景気は雇用数からばかり見ることはできませんが、雇用が減少するような景気対策はあり得ないはずであります。県もその景気対策に連動して莫大な借金を重ねながら、それをやむを得ないこととして今日に至っていますが、それが今回の予算編成にも端的にあらわれているのではないでしょうか。従来、幾度か申してまいりましたが、この際、不要不急の公共事業は大胆に抑制すべきです。
 紀淡海峡道路は賛否両論あるでしょうが、和歌山におけるそのメリットはいまだに判然としておりません。はっきりしているのは、将来、莫大な財政負担が我々に覆いかぶさってくるだろうということだけです。和歌山下津港南防波堤は、県民が七十五億円も負担しなければならない理由はないと思います。日高港の拡張は、過日の新聞でも報じられたように、その使途さえ明確ではありません。新宮港、文里港についても、去る六月議会でも指摘したように、必要のない拡張事業になっています。関西空港についても考えるときです。この点については、また改めて申し上げます。雑賀崎埋め立ての調査なども、本予算案ではわずかでしょうが、このまま進めばまた莫大な事業費に泣かされることになるでしょう。河西緩衝緑地は、本来住友が行うべきことで、県財政からの出費は行うべきではありません。これらの事業は十分に再検討の余地があるはずであります。県民福祉のため切迫した必要から、借金をしてでも対応しなければならないことは多々あると思います。しかし、効のない国の経済対策に呼応することは、財政逼迫を現実に加速させており、さらなる困難を招きます。いかがお考えでしょうか。
 次に、直轄港湾負担金の十七億三千七百万余円についてお尋ねをいたします。
 このうち約七億円が、和歌山下津港の埋立地の先端に防波堤を築くものだと聞いております。そもそもこの埋立事業は、住友金属が公害防止のための工場移転用地として免許されたものでしたが、周知のような事情で関西電力に転売され、目下住民合意も不十分なまま火力発電所の建設が計画されているところであります。住友金属が埋立免許を取得する際は、この防波堤は住金みずからの事業として建設するというのがそもそもの免許条件でした。ところが、今回関電が事業を始めるとすると、発電は公共性があるという理由で国直轄事業となったそうですが、それだけでなぜ国の直轄事業になるのでしょうか。国立発電所あるいは国の委託を受けて建設される発電所でもありません。関電の営利が主なる目的の事業であります。それに対して、国と県がどうして百五十億円の金を負担しなければならないのか。直轄事業にするかどうかは国が決めることであって県が関与することではないのかもしれませんが、国の負担分の二分の一を法によって自動的に負担させられるとなると、国の態度に県は関知しないというわけにはいかないでしょう。どのような考えで直轄事業に同意されたのですか。
 また、和歌山県が事業費の四分の一を負担する根拠に県が受益者であるという説があります。和歌山県が第三工区に岸壁を建設する計画があるということから受益者ということになるそうですが、しかし和歌山県が第三工区を取得したのは住友の違約によるものであって、県があえてその地を切に必要としていたものではありません。そもそも港湾の拡張については、第三工区などは問題にもなっていなかったものです。TSLを接岸させるという構想もあるようですが、それも第三工区の県への譲渡の話以前から計画論議されていたもので、本来あえてここに岸壁を建設する必要もなかったものでした。港湾機能から見ても、ここに一つだけ離れて岸壁をつくるというのはいかにも非効率であり不自然であり、岸壁の必要性から発想されたものでもなく、提供された土地をどう使うかというところから発想されたとしか考えられないものになっています。七十五億円も出してそこに岸壁をつくる必要などはないではありませんか。あえてそれを建設し、それをもって受益者とするならば、関電と和歌山県の受益の比が百五十億円対七十五億円、つまり二対一になる根拠、これはどこにあるのでしょうか。当局はどう考えられておりますか。
 今回の直轄工事に当たって、住友金属には受益が認められておりません。しかし、第一工区は住友金属がその一部を使用しており、この新しくできた湾の北側は住友金属の専用岸壁でもあります。住金が受益がないというのは到底考えられませんし、公海を埋め立ててそれを転用せざるを得なくしたという責任においても、応分の負担は求められるべきではないでしょうか。いかがですか。
 今回の南防波堤の建設の負担割合の理屈が通用するなら、当然、北防波堤の建設に当たっても同様の県民への負担が課せられてくることと思います。その金額はわかりませんが、今回と同様、莫大なものになってくるでしょう。この問題について、当局はどのように考えておられますか。
 次に、関西国際空港の第二期工事の問題に関連してお尋ねをいたします。
 関西国際空港は、その莫大な経済効果を期待する声の中で開港されてから五年になります。しかし、その効果は、期待に反して余りにも低いものであり、大方の期待を裏切りました。便利になったということはそれはそれなりに結構なことでしたが、県当局や和歌山市、県の財界の期待に比べてその効果は、恐らくはるかに小さなものにとどまっております。世界に隣接する臨空都市として発展するとか、世界に情報を発信する基地になるとか、臨空農業の発展とか、そのような和歌山県の期待はほとんど夢になっているようです。当局よりちょうだいした資料によっても、和歌山からの出荷量は関空ができたからといって特に増加したわけではありません。宿泊観光客も、北海道や九州などからは増加していますが、総数においては減少の傾向すらあります。期待された機内食も年額にして二千数百万円にとどまっているのが現実です。
 商工会議所が一昨年出した紀淡道路に関する文書にも──この文書は紀淡道路早期実現を願う立場から書かれたものですが──その一節に、「和歌山地域が紀淡連絡道路の建設に際して明確な理念を持ってその実現を図ることをしなければ関空の二の舞になる危惧がある」として、関西空港が和歌山経済界の期待に沿わなかったことを述べているところであります。爆音で悩まされないのが幸せと思うところですが、この一期目の事業に県が投じた金は五十一億二千万円に上ります。そして今、総事業費一兆五千六百億円を投じて第二期工事が進められつつあり、和歌山県も約百億円の出資金、貸付金を出すことになっております。
 関西空港が和歌山県にいかなるメリットをもたらしているか、華やかな前宣伝に比して余りにも小さなものだと思いますが、いかがお感じになっておられますか。
 今、この関西空港に赤信号が点滅しています。一つには、航空需要の予測の誤りはだれの目にも明らかになってまいりました。発着回数が二〇〇〇年度には年間十五万回に達し、さらに十六万回を超えると予想されておりましたが、実際には十二万回にも達しておりませんで、四万回の能力が活用されない状況になっています。航空会社の経営破綻ぶりもいよいよ目を覆うばかりになってまいりまして、政府がこのほど発表した総務庁行政監察局関西国際空港株式会社調査結果報告書では、次のように述べているところであります。「経営収益は九七年度までは伸びていたものの、九八年度には減収に転じている状況にあり、累積欠損が拡大して九八年度末現在で千三百三十三億円となっている。九八年度末現在の長期債務残高は約一兆円。航空輸送需要は予測を下回る動きで推移しており、二期事業の用地の貸付料、譲渡代金の支払いが関空会社の経営に与える影響は長期にわたって極めて大きい。関空会社では、一期事業による長期債務に二期事業による有利子債務が加わり、また将来的には用地造成会社の有利子債務が関空会社の費用に反映され、大幅な収支向上は制約が大きい」、大まかに言ってこのように述べているわけです。
 関空会社の経営が危機的状況になっています。和歌山県も事業総額に比して出資は小さいものの、県にとっては百億円という大きな負担がのしかかっている中で、このような状況を座視するわけにはまいらないでしょう。とりわけ、政府機関が事実上関空事業の行き詰まりを認め、二期事業に警告を発しているもとで、既定方針だとしてこのまま県財政を投入することは責任ある態度とは言えないでしょう。このように二期事業の根拠は崩れており、政府運輸省が関空二期事業の基本計画を全面的、抜本的に再検討することを強く求める必要があると思います。その工事を急ぐのではなく、国に対して、国の責任において航空会社、用地造成会社の経営問題はもとより、環境問題、関係地方自治体財政への影響など、一期以来の建設事業のあり方を総点検することを求めるとともに、さらに県の負担の軽減を図るべきだと思いますが、いかがでしょうか。
 次に、住金のリストラに関連してお尋ねをいたします。
 流通業界の全国的業界紙が、住友のリストラ計画について、「運送関連会社や労働組合が、三〇%コスト削減は死活問題である、労働組合は、住友の一方的な押しつけは独占禁止法の地位乱用に当たるとして公正取引委員会や運輸局に調査を要請した。そこで、元請企業などに調査に乗り出した」と報道されております。
 さて、私は、去る十二月議会において三点の質問をいたしました。一つには県知事が県民を代表して計画の見直しを申し入れること、二つには下請各社への影響を調査すること、三番に和歌山県としてリストラなどに事前協議システムを確立することなどでした。当局の答弁は、関連企業で構成する組合などの把握に努め、地元市と連携しながら状況把握に努める、また影響を協議するため特定企業対策連絡協議会を活用するとのことでした。
 そこで、お尋ねをいたします。
 どういう影響が及ぶと把握されたのか、報告ください。また、その影響の改善策を県としてどう考えられておりますか。
 次に、先般の質問でも触れましたが、住友の物流コストの三〇%削減計画の関連下請会社からの提出の問題であります。下請運送会社では赤字のところもあり、会社の存続にかかわるだけに住金の一方的押しつけは撤回すべきではないか。せめて期日の延期をすべきではないか。地域経済を守る立場からも強い要望が出されているところであります。また、コストいかんでは県外からの乗り入れを住金は考えていると聞きますが、これも和歌山の地域経済を発展させる障害になることであり、撤回すべきだと思います。
 そこでお聞きしますが、住金は今でも関連会社へのコスト三〇%ダウン計画を期日を切って提出を迫っているのでしょうか。県外運送会社の導入を考えているのかどうか。どのように把握しておられますか。
 さらに、日本流通新聞で報道されたように、元請会社などに公正取引委員会や運輸局からの調査がなされている、その事実を把握されていますか。お答えいただきたいと思います。
 五番目に、雑賀崎の埋立計画に関連してお尋ねをいたします。
 予算案には、和歌山下津港本港沖地区港湾調査事業として七千二百万円が計上されています。いわゆる雑賀崎の埋め立てに関係することですが、この調査は埋立事業の実施を前提としたものと考えられます。埋立事業は、いまだに住民合意の得られているところではありません。事業の有効性についても多くの疑問が寄せられ、それに十分こたえられない状態のまま現在に至っています。そのようなときに事業実施が前提とされるような調査を行うことは、住民合意を当然の前提とする県行政としてはあるべき姿ではありません。地元自治会長やこの事業に関心を寄せる方々から、調査の予算化はすべきではないという意見も関係当局に寄せられているところです。住友が埋立地を活用できなくなり、関電も操業の計画を見直しし、関空の航空需要も大きな狂いを出している、そういう時代です。バブル時代を上回る木材需要を前提とした港湾拡張計画は、今からでも十分見直す値打ちがあります。そういう意味においてもこの調査は撤回されるべきだと思いますが、いかがですか。
 最後に、「人権教育のための国連十年」和歌山県行動計画と同和教育に関連してお尋ねをいたします。
 先般、福祉保健部長からの講演を聞く機会もありまして、和歌山県行動計画を読み返しました。そこで、幾つかの質問をいたします。
 一つは、人権問題というのは個人と個人の間にも発生することでもありますが、国家権力や行政権力と国民との間に、あるいは企業と個人の関係においても極めて大きな問題を生み出すものであります。基本的人権を国家が保障しているかどうかは常に議論を呼び、争われているところであります。大企業と労働者との間には、過労死、容赦のないリストラなど、まさに生存権を損なうような問題や思想差別による人権侵害が横行しております。このような公権力や生殺与奪の力を持った大資本による国民に対する権利侵害の問題は、ここでは全くといっていいほど触れられておりません。問題にされているのは、専ら個々人の間の意識の問題が主要な問題です。同和、障害者、高齢者、女性などの各論の分野では、社会の責任にも触れて論じられている点は理解できますが、国民全体にかかわる権利の問題としての公権力や社会的な強者である大資本の問題が抜けているのは問題の根本を見誤るものだと思いますが、いかがお考えでしょうか。
 人権教育でもう一つ危惧を感じるのは、同和問題の扱いがいかにも総体的に突出していることです。教育委員会の発行する「和歌山県の教育」という冊子の社会教育の項の中では、随所に「人権教育(同和教育)」という表記が見られます。人権教育が同和教育と同義語に扱われ、人権教育の概念が著しく狭められています。そして、単に言葉だけの問題ではなく、社会教育の指導体制は社会教育主事と社会同和教育指導員という二つの柱から成っていることが明記されていることからもわかります。同じく教育委員会発行の冊子、「学校教育指導の方針と重点」の中には、次のような文言があります。「人権教育の推進に当たっては、同和問題を人権問題の重要な柱として明確に位置づけ」云々とあって、その扱いは他の分野と比べて格段の差があります。同和教育が果たした成果と教訓を反省をも含めて人権教育の中に生かしていくことには異論ありませんが、同和教育を人権教育の中の柱として、しかも「明確に位置づける」というのは、本来の人権教育から逸脱しています。
 私は、前にもこの場で申し上げたことがありますが、人権問題に重要な柱も二番目の柱もあってはならないと思っています。それこそ人権問題です。同和関係で差別意識が完全に払拭されていないのは事実です。だからといって、その他さまざまな人権問題が相対的に軽んじられることがあってはならないことです。障害を持っているがゆえに、女性であるがゆえに、あるいは思想信条が異なるがゆえにと、厳しい差別が現実に存在しています。それらの人権問題も決して二次的に扱われてはならないのです。同和加配教員のこと、子ども会のこと、具体的な話は幾度もここで紹介してまいりましたので、きょうはもう時間の関係もありますから触れませんが、突出した同和教育はもうやめるべきだと思います。人権問題を国連が提起した立場から見れば、同和問題を人権問題の重要な柱として明確に位置づけるという規定は削除されるべきではないでしょうか。人権問題はまさに格差のない施策が進められるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
 人権教育推進に当たって先般出された人権擁護推進審議会の答申に即して、人権教育・啓発の法律制定を求める声もあるようです。しかし、公権力や大資本による人権侵害などは啓発で解決する性質のものではないし、それらを欠落させたままの法制化は人権概念を狭めたままの法制化の危険があります。また、同和問題を柱とする人権教育という状態のままの法制化ということになれば、同和問題の解決にも逆行するとの懸念を持つものですが、どのようにお考えを持っておられますか。
 以上で、第一問を終わります。
○議長(下川俊樹君) ただいまの鶴田至弘君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 鶴田議員にお答えをいたします。
 予算案について幾つかの質問がございましたが、総括してお答えを申し上げたいと思います。
 本議会の冒頭説明において申し上げましたように、これまでの我が国の発展を支えてきた社会経済システムが行き詰まりを見せてございます。この転換期における閉塞感を打ち破るため、大局的な観点に立った新しい発想に基づく施策を断行することにより、二十一世紀にふさわしい活力と自信と誇りに満ちた地域社会を創造してまいりたいと考えておるわけでございます。
 このため、平成十二年度の当初予算におきましては、全体の歳出規模の抑制に努めながら、経済構造改革の推進、環境対策、交通網等の基盤整備の推進、介護保険や老人福祉施設整備等の福祉対策など二十一世紀へ向けた諸施策の推進を図るため、厳しい優先順位づけに基づき、限られた財源を重点的に配分したところでございます。
 また、景気対策につきましても、景気は最悪期を脱しつつあるものの、民需の回復力はいまだ弱いことから、当面はでき得る限り公共投資による下支えを継続し、公需から民需への円滑なバトンタッチを図り、民需中心の本格的な景気回復の実現に努めることが重要であると考えておるところでございます。また、事業内容につきましても、県民ニーズや費用対効果等を十分勘案しながら、福祉施設整備や生活関連基盤整備を含め、二十一世紀に向けた県土づくりのため適切な事業を選択しなければならないと思っております。
 次に財政健全化については、十二年度予算におきましては、わずかでありますけれども県債残高が減少するとともに、収支不均衡についても十一年度より二割程度縮減されたところでございまして、財政健全化の初年度として一定の成果が上がったものと考えてございます。いずれにしましても、財政運営プログラムにお示ししたように、当初予算における起債の抑制にも努めながら、平成十五年度までに基金依存型の財政構造からの転換を図り、弾力的な財政構造を回復することにより、県勢の発展と県民福祉の向上に努めてまいりたいと考えておるところでございます。
 次に、関西国際空港株式会社についてであります。
 関西国際空港株式会社では、中長期的な航空需要拡大の中で経営目標の達成は十分可能なものと考えておるわけでございます。目下、経費の節減や増収策につきまして、経営改善推進本部を設置して全社的な経営改善に向けた努力がなされておるところでございます。また関西空港は、我が国全体の社会資本であると同時に、全体構想の推進を通じて世界第一級の国際ハブ空港となることにより、空港と至近の距離にある本県といたしましては、将来、大阪湾環状道路あるいは太平洋新国土軸の整備と相まって、世界の人、物、情報が行き交う地域として飛躍の可能性が非常に高まるものと考えてございまして、地域社会の発展にとっても不可欠のプロジェクトであると認識しているところでございます。本県といたしましては、二期事業、全体構想を促進する上で応分の財政負担を行うことは必要なことであると考えておるところでございます。
 以上であります。
○議長(下川俊樹君) 土木部長大山耕二君。
  〔大山耕二君、登壇〕
○土木部長(大山耕二君) まず、二項目めの南防波堤についての四点に順次お答えいたします。
 和歌山下津港北港地区南防波堤につきましては、企業合理化促進法に基づく関西電力の申請を受け、エネルギー港湾制度により電源立地に関連して必要となる防波堤と県の港湾施設に関連して必要となる防波堤を電源立地企業に受益者負担を課しつつ、一体的、計画的に整備するものでありまして、企業合理化促進法並びに港湾法に基づき、電源立地企業として関西電力が全体の事業費の二分の一を負担し、国の直轄事業で整備するものであります。県におきましても、西防波堤沖埋立地利用計画検討委員会の答申や港湾計画における位置づけにより、西防波堤沖埋立地において県の港湾施設として内貿ユニットロードターミナルなどの整備を計画しており、防波堤によりその静穏度を確保することは必要不可欠なことであることから、通常の国直轄事業負担金と同様に応分の負担を行うものであります。
 また、住友金属の負担についてのご質問をいただいておりますが、今回の南防波堤につきましては、企業合理化促進法第八条に基づき関西電力が申請を行っているものであり、制度上この申請を行った事業者である関西電力が負担するものであります。
 北防波堤につきましては、所要の静穏度を確保するためにも必要不可欠な施設であり、建設に当たっては県民の負担が軽減されるよう努めてまいりたいと考えております。
 次に四項目めの雑賀崎の埋め立てについてですが、半島に位置し、その大部分が海に囲まれている和歌山県にとって、港を生かすということは県勢浮揚の原動力であると考えております。港湾整備により輸送コストが削減されることで県内の木材、化学など地場産業の振興、ひいては雇用の確保、さらには下水道など生活を支える基盤整備などから発生する建設残土の受け入れ空間の確保といったことを考えると、この計画はぜひとも必要なものと考えております。
 こうしたことから、和歌山下津港本港沖地区港湾調査を予算案に計上させていただいておりますが、この調査は環境への影響を検討するための現地調査を行おうとするもので、地元関係者の意見をお聞きし、合理性のあるものについては反映させていただくなど、よりよい港湾にしていきたいと考えております。また、環境調査の手法や結果などにつきましても、積極的に情報公開を行うなど努力をしてまいります。
 以上です。
○議長(下川俊樹君) 企画部長安居 要君。
  〔安居 要君、登壇〕
○企画部長(安居 要君) 関西国際空港のメリットについてお答えいたします。
 本県や関係府県において、関西国際空港の立地に伴う関連施設の整備に取り組んできたことにより地域整備が相当進み、特に本県にとりましては、関西国際空港の開港、近畿自動車道紀勢線、阪神高速道路湾岸線が開通したことにより、待望の国際軸、国土軸との直結が実現されたところでございます。とりわけ、アクセス整備の進展、積極的な企業誘致活動を展開してきたことなどが相まって多くの企業の進出が図られ、県内産業の活性化、雇用機会の拡大に寄与しているものと考えてございます。
 また、最近のデータによりますと、本県における関西国際空港と伊丹空港を利用する国内航空旅客のうち約八二%が関西国際空港を利用しており、県民の利便性に大きく貢献しているところでございます。さらに、パスポート発給件数、出国者数についても大きく増加しており、海外への旅行が身近なものとなったと考えてございます。このほか、空港関連施設への県内産のジュース、野菜、果物等の供給、空港関連従業員宿舎の立地、世界リゾート博などイベントの開催、アメリカフロリダ州等との友好提携など活発な国際交流が進んでございます。
 このように、関西国際空港が本県の至近に開港したことにより、国内、国外の諸都市と短時間で結ばれることによる飛躍的な利便性の向上、県経済の活性化、国際化の進展等さまざまな効果が本県にもたらされたものと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 商工労働部長上山義彦君。
  〔上山義彦君、登壇〕
○商工労働部長(上山義彦君) 住金のリストラとその影響の二点についてお答えします。
 住友金属工業の経営改革プラン実施に伴う関係企業への影響の把握につきましては、県としては個々の企業の経営内容に深く関与することができないことから正確な影響を把握することは困難であり、関係企業で構成する組合等の聞き取り調査を行ってきたところであります。その状況は、三〇%コスト削減を完全実施した場合、住友金属和歌山製鉄所からの受注量にもよりますが、今後会社経営の見通しや従業員の雇用について検討を行わなければならないと考えている企業もあり、地域経済に与える影響は厳しいものと認識してございます。このようなことを踏まえ、先般三回目の特定企業対策連絡協議会を開催し、地域に及ぼす影響への配慮について一段の要請を行ったところであります。
 次に、関連企業の三〇%コスト削減につきましては、昨年八月以来、住友金属和歌山製鉄所と関連企業との間で話し合いがなされており、両者が互いに納得し契約できるよう誠意を持って話し合いを続けていると聞いてございます。
 なお、県外運送会社の導入につきましては、現時点で考えていない旨の報告を受けてございます。また、公正取引委員会や運輸省の調査につきましては、関係団体からや新聞報道等で承知しております。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 福祉保健部長小西 悟君。
  〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 人権教育と同和教育についての二点にお答えします。
 まず公権力や資本と個人の関係でありますが、人権教育のための国連十年を全庁的に推進するため、平成九年十二月に知事を本部長とする和歌山県推進本部を設置し、今後の人権教育啓発を推進するための指針となる和歌山県行動計画を平成十年八月に策定したところでございます。
 本計画の目標は、人権が尊重される社会づくりと人権文化の創造でございます。この実現のため、あらゆる場を通じた取り組みが必要であると考えており「人権教育のための国連十年」和歌山県行動計画の中にも、企業、その他一般社会における人権教育啓発の推進はもとより、公務員、警察職員、教員など特定職業に対する人権教育啓発の推進に取り組んでいるところでございます。
 次に人権教育と法についてでありますが、平成八年地対協意見具申では、「同和問題は過去の問題ではない。この問題の解決に向けた今後の取り組みを人権にかかわるあらゆる問題の解決につなげていくという広がりを持った現実の課題である」と指摘されているところでございます。人権教育のための国連十年に関する国内行動計画では、「これまでの同和教育や啓発活動の中で積み上げられてきた成果等を踏まえ、すべての人の基本的人権を尊重していくための人権教育、人権啓発として発展的に再構築し、その中で同和問題を人権問題の重要な柱として捉える」としてございます。また、さきに出されました人権擁護推進審議会答申は今後我が国における人権教育啓発に関する施策を総合的に推進するための基本となるものであることから、この答申を具体化し、今後の人権施策の積極的な推進に資するためには、その根拠となる法的措置が必要であると考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 同和問題は、日本国憲法が保障する基本的人権の侵害にかかわる重大な問題であり、同和対策審議会答申に示されているとおり、その解決は国の責務であるとともに国民的課題として、長年にわたり取り組まれてまいりました。
 本県においては、県同和教育基本方針に基づき、学校、家庭、地域が一体となって同和教育を推進し、諸課題の解決に努めてきたところであります。その結果、多くの面で成果を上げてきておりますが、学習状況調査やその他の実態調査に見られるさまざまな格差を初め、継続して取り組まなければならない課題が残されております。したがって、県同和教育基本方針並びに県同和行政総合推進プランに基づき引き続き努力していく必要があると考えております。
 今後とも、これまでの同和教育の成果を継承しつつ、「人権教育のための国連十年」和歌山県行動計画を踏まえ、国際的な潮流を視野に入れながら、部落問題を初め、障害者や高齢者等のさまざまな問題にかかわる人権教育を積極的に推進してまいります。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 四十四番鶴田至弘君。
○鶴田至弘君 それでは、最初に質問した予算案に関連して再質問をいたします。
 私は、常々、公共事業の偏重ということを大きな問題にしてまいったわけです。改めてお聞きいたしますが、和歌山県が行った公共事業が景気対策に大きく役立ったというようなことはどういう格好で掌握されているんですか。
 私どもは、一部の建設企業とそこに働く人々の仕事を一定保障したという点については認識しているところでありますが、しかしそれは景気対策として波及効果を持ったものとしてその事業が発展したとはどうしても思えないんです。そこらあたりをどのように考えておられるんですか。どのような事象をもって景気対策の底支えをしてきたという認識になっておられるのですか。明らかにしていただきたいと思います。
 それから二番目は、県債を減らしていく問題です。
 今回、六億円減らされました。それはそれとして結構なことなんですが、何といっても六千四百四十分の六であります。このままでは、いつなくなっていくのかわからないわけです。私が一番懸念するのは、先ほども申し上げましたように、今まで補正予算で経済対策が一回行われたら何十億という県債のプラス補正がされるんです。ここ十年来ずっとそうだったんです。ことしからはもうそういうことはないのか。ないと言うんだったら、このマイナス六億円というのは評価できると思います。しかし、二十億、三十億というふうな発行がされれば、またプラスされるわけです。そうすると、財政健全化プランというのは最初からけつまずくことになるわけです。もう今後そういうような県債の積み増しはしないということがここではっきり言えるのかどうか、それを明らかにしていただきたいと思うんです。
 それから、三番目の問題です。
 不要不急のものは本当にないのかという問題で、適切な事業をきちっと配置したものだという答弁がありましたけれども、私は幾つかの例を挙げました。やはり公共事業の中には、不要でなくても不急なもの、急がなくてもいいものというのは確かにあると思うんですね。そういう中には不要のものも決して少なくないと思うんです。そういうものの見直しを真剣にしないと、これからも基金に依存しながら困難な財政運営をしていかなければならない、結局、県民に大きな負担をかけていかなければならないことになると思います。そういう点でいま一度真剣な見直しを求めたいと思いますが、いかがですか。
 それから、土木部長。南防波堤の問題です。
 関電が百五十億円負担します。和歌山県が七十五億円負担します。いずれも、受益者であるということが理由です。一つは、和歌山県には法的なもので、国の半分というようなことから七十五億と決められた経過もあるのでしょうが、関電も和歌山も受益者であるということから、結局その枠の中に組み込まれることになっているわけです。関電が百五十億、和歌山県が七十五億とされる理由、それは一体何ですか。受益が二対一ということになっているんですか。何が基準になっているか、明らかにしてください。
 それから、関空の事業について。
 知事は、非常に楽天的な展望を示されました。私はいささか悲観的な見方をしていますが、現行十六万回の離着陸ができるわけです。それが十二万回でしょう。四万回の差があるわけです。余裕があるわけですね。そして、二期事業が完成すると二十三万回の能力が出てまいります。そうすると、ますます大きな差が出てくるわけです。こういうことになると、これからますます大きな航空需要の空白ができてくるわけです。そこらあたりをどういうふうに考えておられるのか。
 それから、これから中部国際空港ができてくる可能性があるとか、神戸が可能性があるということになると、関空の利用が相対的に下がってくるのではないかと思いますし、航空料金との関係で需要が落ちてきておることの中で、中長期的な展望で楽観的な見通しを持てる根拠は何もないと思うんですね。こういうことを中心的に考えるのは、国策の問題ですから、当然そちらで十分な議論がされておると思うんですが、和歌山県が事業全体の中では少額と言いながらも百億円という金を負担していかなければならないということになりますと、やはりそれ相応に県としての立場からの進言、必要なことはすべきだと思うんですが、そういう点ではいかがお考えになっておりますか。
 それから、第二問の予告をしていなかったのですが、商工労働部長に、今回また新たにその影響が少なくなるように対策協議会から申し入れたという話がございましたが。それに対してはどのような回答があったのか、そこが聞きたいところです。
 続いて、人権教育と同和教育の関係についてお尋ねをいたします。
 なぜ法制化が必要なのかということをお尋ねいたしましたが、遂行していくためには必要だからという答弁がありました。これでは、ちょっと意味がわからないわけです。なぜそれが必要とされているのか。私は二つの点を申し上げて、そういうものは必要ではないのではないか、つくっても有効性がないのではないかということを申し上げました。そういう点はどういうお考えになっておられますか、お答えをいただきたいと思います。
 次に、教育長にお尋ねをいたします。
 私は、社会教育の項の中の随所に見られる、「人権教育(同和教育)」という表記の問題をとらえて質問いたしました。これは明らかに日本語の読み方で言うならば人権教育イコール同和教育という表記だと考えられます。実際、内容的にそうなっているのではないかと思ったんですが、このような表記を含めた考え方、人権教育の概念を狭めるような表記自体もやめていくべきだと思うんですけれども、そういう点はどういうふうにお考えになっていますか。
 さらに、私は、教育長の答弁の前半についてはほとんど異議がありません。同和教育が果たしてきた役割というのは非常に大きかったし、そこから学ぶべき教訓も多々あると思います。そういう点では大いに学ばなければならないと思いますが、現段階で同和問題がこの人権教育の中の柱とされなければならない理由というのが明確でないと思います。実際問題として、先ほども例に挙げましたが、障害者の問題にしろ婦人問題にしろ、人権にかかわるさまざまな問題がたくさん起こっているわけです。同和問題がそれらと比べて相対的に非常に大きいというような、特別対策をしなければならないという段階ではないと思うんです。二百八十人の同和教員を置くとか、教育委員会の関係ではありませんが子ども会を設置しておくというようなときでは既になくなっていると思うんです。そういう点で、柱にするという位置づけ方はもうこの際やめていくべきだと思うのですが、いかがですか。
 以上で、第二問を終わります。
○議長(下川俊樹君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 関西国際空港につきましては、現在の需要に対しては対応できておるわけでございます。ただ、空港整備というのは大変年月を要するものでありますから、将来、国際化のさらなる進展、経済の回復に伴いまして、将来の国際航空需要に対しましては今から工事をやっていく必要があると、私は楽観的かもしれませんけれども、二期事業は必要であると思っております。
 以上であります。
○議長(下川俊樹君) 総務部長稲山博司君。
  〔稲山博司君、登壇〕
○総務部長(稲山博司君) 公共事業に係るいろいろな景気の下支えの効果でございますとか、あるいは国の経済対策への県債の抑制等についての再質問にお答えいたします。
 まず公共投資の効果等でございますけれども、いろいろ幅広い議論があるということはよく承知いたしております。一般的には景気の下支えに重要な機能を果たしているものと、確信いたしておるところでございます。ただ、和歌山の景気に計数的にどのくらいの効果があるのか、いわば乗数効果としてどのようなことになっているかということにつきましては、事柄の性格上、算出することは困難であろうと考えております。
 それから、今後の補正で県債の対応はどうなるのかというお尋ねでございますけれども、たしか六千四百億を超える県債残高となっておりまして、その償還のための公債費の増加も見込まれております。このように、財政状況は極めて厳しい状況にあるところではございます。
 今後の国の経済対策がもしあったときの対応につきましては、去る十二月県議会でもお答えしたとおりでございますけれども、国と地方との役割分担をよく踏まえながら、経済状況等を見きわめながら適切に対応してまいりたいと考えております。
 三点目に、不要不急の公共事業とのご指摘でございますけれども、とりわけ本県のような半島地域に位置しております地理的特性などを踏まえますと、いずれの事業も重要であると考えておりまして、その事業選択に当たりましては、生活関連基盤整備等も含め、一層適切な事業選択に努めてまいりたいと考えております。
○議長(下川俊樹君) 土木部長大山耕二君。
  〔大山耕二君、登壇〕
○土木部長(大山耕二君) 南防波堤についてですが、西防波堤沖埋立地の港内静穏度を確保するためには南防波堤の整備が必要であり、この防波堤は関西電力にとりましても、また県港湾施設にとりましても必要なものであることから、関西電力の受益者としての負担はエネルギー港湾制度により防波堤について二分の一となっております。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 商工労働部長上山義彦君。
  〔上山義彦君、登壇〕
○商工労働部長(上山義彦君) 特定企業対策連絡協議会からの要請についての回答ということでございますけれども、先ほどもお答えいたしましたように、現在、両者が納得できるよう誠意を持って話し合いを続けているということでご理解をいただきたいと思います。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 福祉保健部長小西 悟君。
  〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) 法の必要性についての再質問でございますけれども、先ほども答弁いたしましたとおり、同和問題の解決に向けた今後の取り組みを人権にかかわるあらゆる問題の解決につなげていく必要があると考えておりまして、二十一世紀を人権の世紀とするためにも法的措置が必要であり、今後とも同和問題を初めとするさまざまな人権問題の早期解決に取り組んでいく必要があると考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 教育長小関洋治君。
  〔小関洋治君、登壇〕
○教育長(小関洋治君) 同和教育と人権教育にかかわる再質問にお答えいたします。
 まず、同和教育を進めるに当たってこれまで私ども教育関係者がひとしく大事にしてきたのは、実態から学ぶということでございます。その点で、同和地区児童生徒の学力の問題、高校や大学への進学率の格差、中途退学、さらに最近では不登校の問題等々の実態把握をいたしております中で、これまで積み上げてきた努力の中で一定の成果は上がってきていると我々自身も思っておりますけれども、なお引き続き同和教育に努めていかなければならない実態があるということを基本的に考えるところでございます。
 さらに、私ども教育委員会の名称の中に「人権教育(同和教育)」というのが何件かあるということでございますけれども、そのことをもって人権教育イコール同和教育であると考えているわけではございません。たまたま、事業の性格上それがわかりやすいように表記しているという面がございます。国の予算措置との関係もございます。
 そういう中で、人権教育の概念を狭めるというご指摘でございますけれども、先ほど申し上げたような障害者、高齢者、女性の問題など、さまざまな人権問題の中の一つとして同和問題を考えているということは改めて申し上げるまでもないことでございます。
 それから、先ほど申し上げましたように、人権教育というものをこれからさらに幅広く国際的な潮流をも踏まえて展開していきたい、総合的な人権教育の推進に努めてまいりたいと考えておりますが、そうした人権教育の中に部落問題や同和問題が埋没してしまうことがないように気をつけなければいけないということも同時に指導しているところでございます。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(下川俊樹君) 以上で、鶴田至弘君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 二十八番野見山 海君。
  〔野見山 海君、登壇〕(拍手)
○野見山 海君 通告に従いまして、一般質問をさせていただきます。
 最初に、西口知事にとりましては二期目の県政であります。県勢発展のため、躍進のために、県民の先頭に立って元気で頑張っていただきますことを心からお願い申し上げる次第であります。
 それでは最初に、和歌山工科大学設置について質問をさせていただきます。
 去る二月四日、知事は、白浜町の旧白浜空港跡地に和歌山工科大学設置の事業計画を発表されました。紀南では初めての四年制大学ができるということで、紀南に住む者にとりましても、明るい希望と大きな期待を持って知事のこの大学新設事業計画を拝聴いたしました。
 ご承知のように、和歌山県にある大学、短大の入学者数を県内の十八歳人口で割った平成十一年度の大学収容率は一五・三%で、全国最下位であります。しかも、一五・三%という数字は県の平均であり、県の大学のほとんどが和歌山市周辺に集中しているため、紀南地方だけ見ると、地元に大学がありませんからゼロ%となります。したがって、紀南の高校生が進学する場合、すべての高校生は親元を離れ、下宿生活や寮での生活を余儀なくされます。多くの市町村で若者が地元を離れ、それに伴って人口減少が一般化し、ひいては地域社会の活気を喪失させています。加えて、親の負担も大変なものがございます。現在、親元を離れた大学生を一人卒業させるのに、平均して一千万円は必要だと言われております。これに本県の親元を離れて生活している大学生の数を掛けると、大変な数字がはじき出されると思います。県の資料によりますと、県外への平均年間教育費の流出計は約三百億円となっています。私は、大学の配置や分布が変わらない限り、和歌山の若者と親のお金は流出し続けると考えますが、この新設大学の計画はこうした流れを少し変えるかもわかりません。大学の規模は小さいものでありますが、地元からはもちろん、全国から若者が集まれば、地域の活性化が期待できると思います。
 二月五日の読売新聞での白浜町長の談話に、「観光地に教育機関が加わることで町に厚みが出る」と語られていましたが、白浜町だけでなく地域全体に大きな厚みが生まれてくるものと期待しております。人口増加に伴う経済効果はもとより、大学ができることによる精神的な効果に期待したいと思います。夢と希望を持った若者が集まる航空系大学が身近な地域にできることによって小・中・高校生にも刺激となり、地域に与える影響は大変大きいものがあろうかと思います。また、すばらしい大学を育てるためには、地域ぐるみ、県民ぐるみの協力支援も必要かと思いますが、この点を含め、まず大学設置に対する知事のお考えをお伺いいたします。
 一方、新設大学を取り巻く環境は大変厳しいものがございます。つまり、少子化時代を迎えて学生をどう集めるかという点であります。我が国の十八歳人口は、平成四年度の二百五万人をピークに、平成十五年度には二九%減少して百四十六万人になると見込まれています。しかし、進学率の上昇により一般的に思われているほど入学者数の大幅な減少はないと言われておりますが、和歌山工科大学の学生の確保はどのように考えているのか。
 確かに、航空工学系の学科への人気は工学部の中でも大変高いものがありますが、航空工学関連学科を開設している大学は国公立で七大学、私立で四大学、合計十一大学と大変少ないため、いずれも平均競争倍率は十四・六倍と、非常に高い倍率を示しております。その意味では「航空」という看板を掲げておれば、最初はそれなりに生徒は集まると思います。しかし、四年後に卒業生をどの分野に就職させるかという点で大変厳しいものがございます。検討委員会の報告書には、平成十一年三月の航空系大学、大学院の卒業生六百五十名の就職状況調査がなされておりますが、航空機械産業への就職率はわずか六・六%、航空輸送関連産業については〇・八%という大変低い数字がはじき出されております。もちろん、航空工学で学んだことは他の分野でも応用がきくということで、卒業生の多くは情報通信産業や自動車関連産業など他産業へ進出して活躍されております。しかし、航空工学を学んだ者にとっては航空産業で働きたいというのが本音ではないでしょうか。最初は航空関連産業で働きたいという夢や希望を持って多くの生徒さんが新設の航空系大学を受験してくれたとしても、四年後に卒業生の就職実態を見たときに志望する学生が減ってしまうのではないでしょうか。そのようにならないためにも、他の航空系大学と競争しながら航空系産業へ就職をどう確保していくのかということは大きな課題であります。
 そこで、大学で学んだ知識、技術を生かせる就職先をどう開拓するのか、卒業生の将来像まで考えないと末永く生徒を集めることができないと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、多くの魅力ある学生を集めるためには、大学自体が魅力あるものでなければならないし、個性的な大学でなければならないと思います。新設校は、当然、既設の十一の航空系大学との競合、競争は避けられないと思いますが、新設校が伝統あるハイレベルの既設の大学、特に国公立の大学と競争するということは大変厳しいものがあります。同じ看板を掲げて競争しても勝負にならないと思います。
 そこで、国公立では決して学べない和歌山工科大学でしか学べない何かをつくり出し、大いに宣伝していかなければならないと思います。また、優秀な学生を確保するためには、何よりも学生のニーズに合った、学生にとって魅力ある大学づくりを進めることが必要であると思います。そこで、学生のニーズをどうとらえ、魅力ある大学づくりをどのように進めていくのか、お考えを伺いたいと思います。
 次に、本大学は公設私学法人方式で設立されると聞いております。土地、建物及び開設費用は自治体で負担し、運営は自治体がつくった学校法人に任せるとなっておりますが、教授の確保はその学校法人に全く任せるのか、あるいは県である程度の見通しを持って教授を確保しようとされているのか。報告書では合計三十一名の教員が必要であると述べられておりますが、本学は航空系という特殊な大学であります。教授も、それなりの専門的な知識と技能を持った人材が必要かと思います。これには文部省初め関連大学、研究機関の協力なくしてできないことであると思いますが、本大学の教授の確保の見通しについてお伺いいたします。
 最後に、今回の計画により地域経済への波及効果は、確かに紀南地域の経済の活性化にとって大変大きいものがあると考えます。大学立地の効果を最大限に引き出すために、隣接する新空港の活用や大学周辺の土地を利用した研究機関や民間企業、観光施設の立地を促進することが望まれますけれども、県のお考えをお伺いしたいと思います。
 次に、梅の生育不良対策についてお伺いいたします。
 去る二月九日、十日の二日間にわたり、「語ろう日本の心と梅の心」をテーマに、「全国梅産地サミット二〇〇〇inみなべがわむら」が、北は群馬県の榛名町から南は鹿児島県の薩摩町まで、全国十一市町村の首長、関係者と生産者ら五百五十名が参加し、熱気あふれる中、盛大に開催され、私も参加させていただきました。
 まず基調講演で、農林水産省食糧庁計画流通部長の米田実さんが、梅産業の歴史は極めて浅くてまだ未解明の部分が多く、さまざまな可能性を持っている、また南高梅に並ぶ品種開発の必要性を強調され、そして生産から加工、流通まで幅広い中で取り組んでいけば地域おこしの起爆剤として大きく期待できると語られました。
 引き続いて、南部高校の果樹クラブの七名が、「産地を担う梅の優良苗木生産に取り組んで」をテーマに、果樹クラブの調査研究が発表され、接ぎ木苗が台木の影響を受けることを突きとめ、台木にも優良系統を使うことで結実の安定した苗木づくりができることがわかったと報告されました。今では満足のいく苗木を安定生産できるようになり、地域でも利用されて好評を得ており、苗木の注文も多くあり、日本一の梅の里をさらにパワーアップしたいと語られて、参加者から大きな拍手が送られました。
 さらに、NHK解説委員中村靖彦さんの司会で、十一市町村の首長による梅を主体にした農業の振興、梅の現状と課題について語られました。市町村の梅栽培規模は違うが、梅生産と品質の開発、梅林での観光に力を入れていくことで梅の振興を図っていく、また今後は梅の生理生態研究を進める一方、高齢化、後継者不足等が語られました。
 今回、県外から参加された皆さんは、全国一を誇る梅どころの規模や取り組みに驚かれたのではないでしょうか。こうして梅の生産地の皆さんが交流を積み重ねられ、お互いに情報交換等を行いながら、一生懸命梅の振興に努めようという熱気を参加した一人として強く感じたものであります。
 さて、梅農家が今抱えている最大の悩みは、何といっても梅の生育不良であります。生育不良対策については、これまで議会ごとに多くの議員から質問があり、県の取り組みをただしてきたところでありますが、いまだ原因究明に至っておりません。今なお梅枯れが拡大している中、あらゆる角度から研究、調査を展開することが重要でないかと思います。
 県の農林水産部の資料によりますと、全国の梅栽培面積一万九千ヘクタールに対し、和歌山県の栽培面積は平成十一年に四千五百四十ヘクタールで全国の二三・九%となっています。また生産量で見ると、全国生産量十一万九千百トンに対し、和歌山県は六万五百トンで五〇・一%の生産量となっております。また、本県の平成十一年の地域別梅生産地栽培面積を見ると、全体四千五百四十ヘクタールに対し、田辺市が千二百九十ヘクタールで二八・四%、南部川村が千二百五十ヘクタールで二七・五%、南部町が五百六十九ヘクタールで一二・五%、上富田町が二百十六ヘクタールで四・八%、印南町が二百十一ヘクタールで四・五%、その他一千四ヘクタールで二二・一%になっております。こうしてみると、紀南の田辺市を中心に栽培されていることをあらわしていると思います。そして、ここ二、三年、毎年全体で約百ヘクタールずつ増加しております。それは、地元の優良品種や梅加工技術の向上によって自然食品、健康食品の需要が拡大し、また収益も高いため栽培がふえ続けてきたと言われております。しかし一方では、梅生育不良が年々拡大し、深刻な状況に陥っております。
 ご承知のように、梅の生育不良は昭和六十年ごろから上芳養の石神地域で発症が見られ、その後とまることなく十五年間にわたり広がっている状況であります。生育不良発生状況の資料によりますと、日高・西牟婁地域において、平成九年から十一年までの三年間で実に十五万七千八百十七本に達しております。栽培面積では五百二十六・一ヘクタールに及んでおり、これは甲子園球場の百三十二倍という広大な面積であり、深刻な状況と言えます。県においても農業の最重要課題ととらえ、行財政改革を初め厳しい環境の中で梅を最優先に取り組まれたことは、知事のこの問題解決に向けた決意のあらわれと、大いに評価いたすところであります。
 この間、暖地園芸センターを中心とした研究体制の充実を初め、梅生産者と交流を図るための交流室の設置、さらには県単独施策としてうめ樹勢回復実証モデル事業の実施など、懸命な取り組みをなされてきました。その努力の結果、現在のところ原因の究明には至っておりませんが、整枝剪定を初め適切な土壌改良、また排水対策などにより、一部において成果も見られるようになり、一筋の光明が見えてきたのではないかと思います。しかしながら、依然として生育不良が拡大しており、梅農家の中にはいろんな意見があることもまた事実であります。
 先ほど述べましたように、生育不良が発生してからはや十五年が経過します。梅の被害農家の中には、将来への夢を描けず沈み切っている方、また秋津川の被害地域から今度は大丈夫と思って三栖地域へ移ってみたが、これまた被害に遭った方、上芳養の有志の皆さんが梅づくりを求めて三重県御浜町の国営パイロットへ移っていく方、それぞれ大変な状況であることを、私は農家を回ってお聞きいたしました。それだけに、一日も早く原因究明に向け、梅農家の皆さんとひざを突き合わせながらさらなる努力をお願いしたいものだと思います。
 そこで、平成十二年度当初予算の梅対策費は、前年度の約二・七倍になり、生育不良の原因解明への取り組みの意気込みが伝わってきますが、梅の生育不良対策に対する知事の熱意をお聞かせください。
 次に、将来、梅の専門試験研究センターの建設に向けて、平成十二年度に基本構想調査費として一千万円の予算を計上されました。言うまでもなく梅は和歌山県の基幹産業であり、守り育てていかなければなりません。うめ研究センターは、梅の栽培、品種改良、加工商品開発、梅酢の活用、環境に安全な有機肥料等、さまざまな研究をするセンターだと思います。今日まで梅については、全国的にも専門の学者が少ないことや、生理生態等の詳細な研究の積み上げが少ないとお聞きします。特にミカン等の研究者とは比較にならないほど少なく、このことが梅の生育不良問題の解決がおくれている原因の一つとも言えます。それだけに県も、一日も早く原因解明するために、平成九年度に十名の学識経験者の委員による和歌山県うめ対策研究会を発足して三年目を迎えますが、この間、委員による現地での調査研究の中間報告もされました。県うめ対策研究会では、三月二十日にこれまでの成果と今後の課題の報告がなされると伺っております。報告の内容によりましては、新たに取り組まなければならない研究課題も出てくるのではないでしょうか。
 そこで、梅のさらなる研究と振興を図るためにもうめ研究センターの早期実現が求められていますが、あわせて知事のお考えをお伺いいたします。
 次に、農家から強い要望のあった大気環境についての研究が、平成十年から平成十一年にかけて現地での暴露実証試験を行ってきました。今、その分析をされていると思います。新たな研究をするためにも、秋津川に設置された暴露試験施設の今後の利用方法をどのように考えられているのか、お伺いいたします。
 次に、今日まで梅の生育不良の原因解明ができていない中、行政ばかりに頼ることなく、丈夫な苗木をつくることが梅農家で話題になっております。南部高校では以前から台木、品種選抜等の研究が重ねられており、また聞くところによりますと、県農協連のバイオセンターでも台木や挿し木の研究がされているようであります。また農家においても、生育不良が拡大する中、その生育不良に強いと思われる台木の研究や栽培方法が独自に研究されています。こういった現地での独自の努力についてどう把握されているのか、またこうした自助努力をされている篤農家との連携を図りながら生育不良対策を進めていくべきだと考えますが、いかがでしょうか。
 次に、県ではうめ総合実証園として民間の梅園を四カ所借り上げ、改植、樹勢維持への研究を約十年かけて行うことになっています。一日も早く成果を出して生育不良園に生かしてほしいと思いますし、そのための対策を早目に考えていく必要もあろうかと思いますけれども、いかがでしょうか。
 また、客土によって樹勢が回復してきた梅園も多くあり、今後ともさらに客土事業を進めるべきでないかと思いますが、県の考えをお伺いいたします。
 最後に、ホームレスの状況と対策についてお伺いいたします。
 近年、大都市を中心に、道路、公園、河川敷等で野宿生活を送っているホームレスが増加し、また若者によるホームレスに対する殺人事件も過去に起きるなど社会問題になっています。この背景には、長引く不況の影響で倒産やリストラ等による失業者、事業の失敗、家族崩壊、借金による生活崩壊、社会生活からの逃避など、さまざまな原因によりホームレス生活を余儀なくされている人も多くなってきているとお聞きします。
 ホームレスは全国で約二万人おり、うち九割以上が東京、横浜、川崎、名古屋、大阪の五都市に集中していると言われております。平均して年齢は五十代半ばぐらい、中でも日雇い労働者が六割以上を占めているそうであります。これからもふえ続けるホームレス問題について連絡協議会が設けられ、ホームレスを一定期間施設に宿泊させ、公共職業安定所と連携して職業をあっせんし、自立支援を基本にするといったことで、国がホームレス対策に動き出したとお聞きします。
本県でも、公園、駅等でホームレス生活をしている方がおられるとお聞きします。ボランティアの方々がお世話をされていると聞きますが、本県におけるホームレスの状況と対策をどのように考えているのか、お伺いいたします。
 以上をもちまして、一回目の質問を終わらせていただきます。ご清聴ありがとうございました。
○議長(下川俊樹君) ただいまの野見山海君の質問に対する当局の答弁を求めます。
 知事西口 勇君。
  〔西口 勇君、登壇〕
○知事(西口 勇君) 野見山議員にお答えをいたします。
 和歌山工科大学についてのご質問でございますけれども、今日、技術革新や情報化が急速に進んでまいりまして、また経済や社会の構造的な改革、国際化、地球環境の保全などへの対応が喫緊の課題となっておるわけでございます。こうした中で、二十一世紀に向けて創造性にあふれた人材の養成は、国においても、また地域においても極めて重要な課題でございます。本事業は、そうした意味におきまして、二十一世紀における和歌山県の人づくりと産業の活性化の基盤となる重要なプロジェクトであると考えてございます。この大学を地域に根づいた、また世界に誇れるすばらしい大学とするために、地域住民、自治体、地元企業や団体など、県民の皆さんの広範なご支援を賜りながら全力で取り組んでまいる所存でございます。
 次に、梅の生育不良についてでございます。
 これまでも繰り返し申し上げてきたところでございますが、大変大きな問題であり、なお一層総力を挙げて取り組んでまいらなければならないと考えてございます。
 こうした中で、平成十二年度につきましては、厳しい財政事情ではありますが、平成十一年度当初予算に比べ関係予算を増額するなど、積極的な予算案としてございます。
 後ほど農林水産部長から今後の取り組みについてもお答えをいたしますけれども、お話にございましたように、現在までの生育不良をもたらすと考えられる幾つかの要因について調査研究を行ってきたところでございまして、その研究成果などを生かすとともに、さらに多くの方々のご意見もお聞きして、この問題の早期解決を図ってまいりたいと存じております。
 また、生育不良の解明と安定生産を図るために、地域密着型の専門研究施設が必要であると考えておりまして、例えば設置検討委員会のような組織をつくりまして基本構想を策定してまいりたいと考えてございます。
 いずれにしても、具体化に向けてはなお克服すべき課題もありますので、従来に増して市町村を初め関係団体等のご協力をいただかなければならないと考えてございます。今後も全力を挙げて頑張ってまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。
○議長(下川俊樹君) 企画部長安居 要君。
  〔安居 要君、登壇〕
○企画部長(安居 要君) 和歌山工科大学についてのご質問にお答えいたします。
 一点目の学生の確保と就職先の開拓についてでございますが、我が国の航空宇宙産業は他産業に比べてその産業規模が小さく、採用規模も小さいものとなっています。しかしながら、国際的には民需市場の確実な成長が見込める産業分野であるため、自主的な技術開発力を育成し、国際的な共同開発への参画や航空機の独自開発など、産業規模の拡大を図っていくことが今後の大きな課題となっています。こうした中、本計画につきましては、実践的な技術開発や人材育成の拠点となるものとして日本航空宇宙工業会や関係省庁から大きな期待を寄せられているところでございます。このため、企業、研究機関、官庁等との連携による航空機や関連技術の研究開発、ベンチャービジネスの育成などに大学みずからが積極的に参画し、我が国の航空宇宙産業の発展に貢献しながら、海外も含めた就職先の開拓に努めていく必要があると考えています。また、地元企業との連携交流により、地域産業の転換や新たな産業の創出を図り、県内における就職先の開拓にも取り組んでいきたいと考えております。また、日本で初めて開催される航空運用システムコースにおいては輸送システムの総合的なマネジメントを行う人材の養成を行い、輸送産業界での就職先の拡大を図っていきたいと考えております。
 次に、魅力ある大学づくりについてでございます。
 大学進学希望者を対象としたこれまの意識調査等によりますと、学生が大学に求める主なものとして、一つは就職に有利なさまざまな資格の取得ができ、実践的な教育が受けられること、二つは国際性豊かな教育が受けられること、三つとして教員との触れ合いがあり、きめ細かい指導が受けられることの三点を挙げることができます。こうした学生ニーズに対応するため、本計画ではさまざまな試みを行うこととしてございます。
 まず、学生のライセンス志向にこたえるものとして、正規のカリキュラムとは別に、学生の資格取得の支援を目的としたエクステンションプログラムを実施することとしております。また、航空機やさまざまな実験装置、コンピューターなどを活用した実験や実習形式の授業の効果的な設置や県内外の企業での企業実習、卒業研究における航空機の製作や関連技術の開発などを行い、創造力や指導力を実践の中で養うこととしています。また国際性を養うために、海外の大学との提携に基づくさまざまな国際交流プログラムや実践的な英語教育の実施、教員や職員への外国人の登用、留学生の受け入れなどを積極的に行っていくこととしています。きめ細かい教育につきましては、二年生以上の学生の研究室への配属、スチューデントアシスタント制度の導入、演習形式の授業など、学生一人一人を大切にした少人数教育を行うこととしています。さらに、欧米の大学をモデルにした三学期制や成績評価制度の導入なども大きな特色であると考えています。
 次に教員の確保の見通しでございますが、教員候補者のリストアップ及び選考につきましては、日本航空宇宙学会や日本航空宇宙工業会のご協力を得ながら県において行うこととしています。なお、教員の最終的な確定、採用につきましては、準備財団の理事会で決定されるものと考えてございます。
 次に、民間企業、研究機関、観光施設の立地についてのご質問でございますが、本計画では旧南紀白浜空港跡地四十七ヘクタールのうち約十五ヘクタールを大学の敷地として利用する予定です。残りの約三十ヘクタールにつきましては、現在白浜町と共同で航空科学館の立地構想についての検討を行っているところですが、今後、大学との相互連携が可能な関連産業施設や研究施設、観光施設等の立地整備につきましても、関係機関等と協議しながら進めていきたいと考えております。また、大学内にレンタルファクトリーを設け、学内への企業の立地やベンチャービジネスの育成を図ることについての検討を行っています。こうした試みを実効性のあるものとするために、教員が企業経営や技術指導に直接参画できる兼業制度の整備や、大学の持っている特許権を民間企業が活用できる制度づくりなどを積極的に進めていくこととしています。さらに、日本有数のリゾート地に立地するという特色を生かして、学会やシンポジウムの誘致、開催などにも取り組んでいきたいと考えています。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 農林水産部長島本隆生君。
  〔島本隆生君、登壇〕
○農林水産部長(島本隆生君) 梅の生育不良対策についての三点のご質問にお答えいたします。
 まず現地暴露実証試験についてでございますが、二カ年間実施いたしました二酸化硫黄、二酸化窒素、オゾンの混合ガスによる暴露試験の結果では、現地で見られるような生育不良の症状は認められておりません。
 ご質問の暴露施設の今後の利用についてでございますが、農家から要望の強いばいじんの直接暴露については、科学的に評価できないことや技術的に困難であることから、化石燃料に含まれると言われている成分を用いた調査研究等について、専門家のご指導をいただきながら地元協議会とも協議し、取り組んでまいりたいと考えてございます。
 次に、自助努力をしている農家との連携強化についてでございます。依然として梅生育不良の拡大する中ではありますが、産地においては土づくりや剪定方法など技術の改善が見られるようになってきてございます。議員お話しのように、農家などにおきましても独自に選抜した強勢台木の研究や根接ぎなど、さまざまな試みがなされていることは、大変心強く感じているところでございます。このような生産現場での成果等については、総合実証園や個々の技術対策の確立に生かすとともに、現地での普及、定着を進めてまいりたいと考えてございます。
 次に総合実証園と客土事業についてでありますが、梅の生育不良の原因究明につきましては、暖地園芸センターを中心に関係機関の総力を結集し、大気、栽培、土壌、病害虫、気象等の要因について調査研究を行ってきたところであり、これまでの結果から生育不良はさまざまな要因が複雑に絡み合っているものと考えてございます。
 こうした中、うめ総合実証園につきましては、地元の梅対策協議会を初め関係機関の協力をいただきながら、これまでの試験研究や現地実証園の成果を生かし、客土や土づくりなどによる改植実証と樹勢の維持対策に取り組んでおりまして、今後の技術開発の成果も順次取り入れながら普及の拠点としてまいりたいと考えてございます。
 議員お話しの客土につきましては、土壌の理化学性を改善するために効果的であり、特に新規造成園では熟畑化を促進する方法の一つと考えられますが、土量の確保等の問題もありますので、事業化については今後市町村や農協等関係機関と協議をしてまいりたいと考えてございます。
 以上でございます。
○議長(下川俊樹君) 福祉保健部長小西 悟君。
  〔小西 悟君、登壇〕
○福祉保健部長(小西 悟君) ホームレスの状況と対策についてお答えします。
 国において、ホームレスとは「さまざまな要因により、特定の住居を持たずに、道路、公園、河川敷、駅舎等で野宿生活を送っている人々」と定義して、ホームレス問題の解決に向けた取り組みがようやく始まろうとしています。
 本県の状況についてですが、県警察本部の調査によりますと約五十人で、そのうち八割弱が和歌山市とのことです。本県においても、現在ホームレス対策としての施策はございませんが、これらの方々が病気等により入院するなど急迫したような場合は生活保護法を適用することになります。今後も、福祉事務所及び保健所等の関係機関が連携して急迫状態にある方や緊急に医療を必要とする人への支援を行ってまいります。
 この問題の解決には抜本的な対策が必要であると考えておりますが、さまざまな状況により困難な問題もありますので、国の動向を見ながら検討してまいります。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再質問を許します。
 二十八番野見山 海君。
○野見山 海君 答弁、ありがとうございました。
 工科大学につきましては、私ちょっと調べてみました。平成四年に東北芸術工科大学が公設民営方式を全国に先駆けて実施されたんですけれども、開校以来ずっと赤字になっているそうでありまして、九九年度の決算でも約四億五千万円の赤字が見込まれる、また累積で約三十二億円の赤字に達するという記事がありましただけに、ぜひとも本県の工科大学につきましては、これを他山の石とし、緻密な計画に基づいて頑張っていただきますことを心からお願いを申し上げたいと思います。
 一件だけお聞きします。
 ここに、「梅の生育不良は乾燥が原因」という新聞記事があります。これは、三月四日の「日本農業新聞」の報道であります。これは、県では三月二日、一九九九年度の農業技術成果発表会が開催された中で、生育不良の主因を土壌の乾燥と見て樹勢回復試験を実施したとなっておりますが、この事実はいかがでしょうか。これに対して農家の方々は怒りを持っておられますから、農林水産部長、この見解をはっきりお答えください。
 以上です。
○議長(下川俊樹君) 以上の再質問に対する当局の答弁を求めます。
 農林水産部長島本隆生君。
  〔島本隆生君、登壇〕
○農林水産部長(島本隆生君) 再質問にございました「日本農業新聞」の記事についてでございます。
 議員のご質問にございました今年度の農業技術成果発表会でございますが、これにつきましては毎年度実施をしてございまして、内容は果樹、水稲、野菜など農業全般にわたっての研究成果をおのおの発表して意見交換を行っていく場でございます。
 今回取り上げられた生育不良対策につきまして、梅関連の試験研究の中の一部として、樹勢の低下と土壌水分や地温の上昇といった側面からアプローチした結果の見解をまとめたものでございまして、報道にありますような生育不良の主因を乾燥と断定したものではございませんので、よろしくお願いいたします。
○議長(下川俊樹君) 答弁漏れはありませんか。──再々質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(下川俊樹君) 以上で、野見山海君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後二時五十五分散会

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