令和7年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(全文)


◆ 汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているものもあるため、人名等、会議録正本とは一部表記の異なることがあります。人名等の正しい表記については「人名等の正しい表記」をご覧ください。

令和7年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号

議事日程 第5号
 令和7年9月19日(金曜日)
 午前10時開議
 第1 議案第120号から議案第137号まで(質疑)
 第2 一般質問
 第3 議案の付託
────────────────────
会議に付した事件
 第1 議案第120号から議案第137号まで(質疑)
 第2 一般質問
 第3 議案の付託
 第4 休会決定の件
────────────────────
出席議員(41人)
 1番 高田英亮
 2番 上山寿示
 3番 佐藤武治
 4番 鈴木德久
 5番 森 礼子
 6番 濱口太史
 7番 井出益弘
 8番 尾崎要二
 9番 玄素彰人
 10番 山家敏宏
 11番 鈴木太雄
 12番 岩田弘彦
 13番 吉井和視
 14番 中村裕一
 15番 北山慎一
 16番 坂本佳隆
 17番 中本浩精
 18番 堀 龍雄
 19番 新島 雄
 20番 山下直也
 21番 三栖拓也
 22番 川畑哲哉
 23番 秋月史成
 24番 谷口和樹
 25番 山田正彦
 26番 坂本 登
 27番 岩永淳志
 28番 小川浩樹
 29番 中尾友紀
 30番 岩井弘次
 31番 藤本眞利子
 32番 浦口高典
 33番 尾﨑太郎
 34番 藤山将材
 35番 小西政宏
 37番 中西 徹
 38番 林 隆一
 39番 片桐章浩
 40番 奥村規子
 41番 谷 洋一
 42番 長坂隆司
欠席議員(なし)
〔備考〕
 36番 欠員
────────────────────
説明のため出席した者
 知事         宮﨑 泉
 副知事        友井泰範
 知事室長       北廣理人
 総務部長       山本祥生
 危機管理部長     中村吉良
 企画部長       北村 香
 地域振興部長     赤坂武彦
 環境生活部長     湯川 学
 共生社会推進部長   島本由美
 福祉保健部長     𠮷野裕也
 商工労働部長     中場 毅
 農林水産部長     川尾尚史
 県土整備部長     小浪尊宏
 会計管理者      高橋博之
 教育長        今西宏行
 公安委員会委員長   竹山早穗
 警察本部長      野本靖之
 人事委員会委員長   平田健正
 代表監査委員     田嶋久嗣
 選挙管理委員会委員長 和歌哲也
────────────────────
職務のため出席した事務局職員
 事務局長       中嶋 宏
 次長         橋爪正樹
 議事課長       岩井紀生
 議事課副課長     田中 匠
 議事課議事班長    川原清晃
 議事課主査      川崎競平
 議事課副主査     西 智生
 議事課副主査     林 貞男
 総務課長       榊 建二
 政策調査課長     岩谷隆哉
────────────────────
  午前10時0分開議
○議長(岩田弘彦君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第120号から議案第137号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、併せて日程第2、一般質問を行います。
 33番尾﨑太郎君。
  〔尾﨑太郎君、登壇〕(拍手)
○尾﨑太郎君 おはようございます。
 6月議会に新しく誕生した宮﨑知事に早速質問しようと思っていたんですけども、ちょっと本当に何十年ぶりぐらいで体調崩しまして、かないませんでした。
 選挙のときに宮﨑さんと街頭演説一緒にさせてもらいました。私が演説したら誰も聞いていなかったですけど、宮﨑さんが演説すると、特に妙齢の御婦人方がぱっと声援を送ってくれました。何かちょっといらっとしましたけどね。だけど、県民の期待高いんだなあと思っていました。今日、ようやく議長の許可を得ましたので、知事に質問する機会を得ました。できれば、生宮﨑の声が聞けるような、そんな答弁を期待して質問をしたいと思います。
 光陰矢のごとし。今年、私も還暦を迎えまして、白髪も目立ち始め、いよいよ老人の入り口に立ちました。ただ馬齢を重ねてきただけですが、とかく浮世はままならぬものであることを身にしみて感じております。若い頃は、世の中は変えていけるものだと思っておりました。しかし、世の中は変わっていくもの、移ろい行くものであると思い知ったのです。「行く川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし」、日本人なら誰でも知っている方丈記の一節が今になってすとんと腑に落ちます。
 とはいえ、我々は生きていかなければなりません。無常な世の中に何らかの価値を見いだし、生きていかなければならないのです。それが言葉を紡ぐ人の定めでありましょう。人類が生き延びるために地球環境を守る、これは大変説得力のある大きな物語です。誰もが賛同します。しかし、では今、何をなすべきなのかということになれば、その判断は簡単なものではありません。
 我々の世代が子供の頃には、石油はもうあと30~40年で枯渇すると言われておりました。国際的なシンクタンクであるローマクラブが出した「成長の限界」は、当時、一世を風靡しました。「人は幾何学級数的に増加するが、食料は算術級数的にしか増加しない」は有名な一節です。当時、小学生であった私が還暦となる今日、石油も小麦などの穀物も供給に全く不安はなく、むしろ値崩れを心配しなければなりません。懸念されていた人口爆発も、先進国は皆、少子化対策に莫大な予算を計上しています。
 また、当時は、地球は寒冷化に向かっているといった言説が見られました。気象庁予報官であった根本順吉氏は、1974年、「冷えていく地球」と題する本を出版しています。これらの予測をした人は出任せを言ったのでしょうか。もちろんそうではありません。世界でもトップクラスの知性が真摯に検討、研究した言説であったのです。
 近年、注目を集めている概念に複雑系があります。これは相互に関連する多数の要素が合わさって、個々の要素からは予測できない、全体としての性質や振る舞いを示すシステムのことです。例えば、人を構成する物質やゲノムをどれだけ詳細に研究しても、それだけでは人の生命のシステムを解明することはできません。そして、人体、経済、世の中、地球もまさに複雑系であります。
 私が新型コロナワクチンに懐疑的であったのは、RNAワクチンが、いわゆる陰謀論者が言うように、このワクチンがよからぬ目的のためにつくられたと思っているわけではもちろんありません。そうではなく、新型コロナの感染拡大を防止するために懸命に開発されたものではあるでしょうが、正規の手順の知見を経ていないという点を懸念したからであります。どのような優秀な頭脳であろうとも、試験管の中やコンピューターだけで、人体という複雑系に投与した場合の影響を予測することは不可能だと思われます。やってみなければ分からない、それが経験的に分かっているからこそ、治験の手順が整備されてきたのです。
 最近、新型コロナウイルス感染症対策分科会会長を務められた尾身茂氏が「私見を申し上げると、まず有効だったかどうかという話を結論から言うと、感染防止効果、感染を防ぐ効果は残念ながらあまりないワクチンです」と発言。物議を醸しました。高齢者の重症化の予防効果は明らかであったのですが、副反応を考慮すれば、若年層は接種の必要はなかったことになります。いかなるメカニズムでこのような結果がもたらされたのかは私には分かりませんが、数千万人の接種例から導かれた見解ですので、私見と断ってはいますが、恐らくは真実に近いと思われます。副反応に苦しんでいる若年層の方は、本当にお気の毒なことであります。
 議長をいたしておりました折に、ゴルゴ13のさいとう・たかを先生が本県文化賞を受賞されました。さいとう先生は、あまり知られておりませんが、和歌山市のお生まれです。役得でさいとう先生からサイン入りの本を頂きまして、私の宝物にしております。
 ゴルゴ13の愛銃は、突撃銃であるアーマライトM16の改良型A2です。あるとき、ゴルゴは最新型の銃を持つ相手との対決を余儀なくされます。銃自体のカタログ性能では、アーマライトM16は圧倒的に不利です。ゴルゴはA2の手直しをベリンガーに注文します。ベリンガーはつぶやきます。名銃は数多い。だが、M16ほど戦場で使われ、各国でコピーが出るほど大量生産された銃はほかにはない。しかし、改良型のA2でさえ、彼は10年の歳月を経て、やっと使う。結局、死をかけた男の世界では、信頼感が全てなのかも。命がかかった医療、治験なしのワクチンの投与が正しい選択であったのかどうか、判断は極めて難しい。若年層・壮年層の重症化率が低いことを見れば、ゴルゴ13はこのワクチンを打たなかったはずです。
 ここ数年は、とんでもなく暑い夏が続きました。いまだ残暑も厳しいですが、温暖化が進んでいると言われれば、体感的に納得してしまいます。9月14日の日経新聞は1面に、「都市に稲妻呼ぶ温暖化」と題する記事を掲載しました。先月は訓練中の自衛官が落雷による感電で死亡しておりますし、4月にも奈良市では、落雷により中高生6人が病院に搬送されています。落雷は、この25年間で、前の25年間に比べ、16.3%増加しました。九州大学の道端拓朗准教授は、平均気温が1度上昇すれば、地球全体で落雷率が18.4%高まると分析しています。
 世界史で必ず習うゲルマン民族の大移動。私が高校生の頃は、騎馬民族であるフン族に押し出され、移動を開始したと習った気がしますが、近年では、3世紀頃から始まった寒冷化により、暖かい南方に移動したのではないかと言われております。我が国でも、縄文海進と呼ばれる時代は、現在より平均気温が1度から2度高かったようで、これにより海水面が上昇し、日本は大陸から切り離され、列島となりました。
 地球時間から見れば、直近の約4000年ほど前からの温暖期はミノア温暖期、クレタ島周辺で青銅器文明が栄えました。ローマ温暖期、言うまでもなく、ローマ帝国が繁栄、大陸では漢王朝が栄えました。中世温暖期、トランプ大統領が「よこせ」とすごむグリーンランドは、この時期には気温が1度程度高かったので、文字どおりグリーンランド、緑の島であり、今は永久凍土になっている場所を掘れば、バイキングの居住跡が出てきます。日本では、北に位置する岩手県でも平泉に藤原三代が覇を唱えました。その後は、500年ほど、19世紀の中頃まで小氷期に入り、気温は低くなりました。
 このような気候変動がなぜ引き起こされるのかは、諸説はあるものの、まだよくは分かっていません。気候もまた複雑系であり、ある一つの因子から変動のメカニズムを解明することは困難なことのように思われます。
 37億年になる地球の歴史の中で、最後の氷河期は約2万年前ですが、氷期-間氷期サイクルは、約10万年周期で繰り返されてきました。気候変動とは言いますが、もともと地球の気候は大きく変動してきたのであり、その都度人類は対処し、生き延びてきました。とすれば、気候変動に対するアプローチとしては、気候をコントロールしようとはせず、変動した気候に対応する道を探るというのも現実的な解決策ではないのかという気もします。
 しかし、確かに産業革命以降、現在までの200年ほどの気温上昇は、ここ2000年ほどの中では異例のことであり、人類の活動が地球環境に大きな影響を及ぼした可能性はあります。そして、その原因は人類が放出するCO2にあるとされています。この件に関する最も権威があるとされている報告書は、IPCCという国連機関の報告書です。この報告書は信頼に値するのでしょうか。ちなみに、IPCCとはIntergovernmental Panel on Climate Change、気候変動に関する政府間パネルのことです。
 1996年、国連人権委員会はクマラスワミ報告書を採択しましたが、これなどは、いわゆる従軍慰安婦はセックス・スレイブ、性奴隷であったとするなど、およそ信頼に足るものではありません。ハーバード大学のラムザイヤー教授は、詳細な学術的調査研究により、彼女たちが奴隷ではなかったことを実証しましたが、そもそも大陸では、何十万人もの我が国の将兵が戦っていたのですから、いわゆる従軍慰安婦の実態など、皆分かっていたことでしょう。こんなとんでもない報告書を出す国連を、国連だからというだけで信用するわけにはいきません。
 では、IPCCの報告書の信憑性はどうなのでしょう。この報告書の草稿は、非常に厳格な批評にさらされます。数百人の専門家によりチェックされ、ブラッシュアップされていきます。それが2次、3次と続きます。世界中の数千人の研究者や政府関係者が草稿に対して意見を述べるのです。また、それぞれの批評については、報告書の完成後も公開されています。こうして見れば、この報告書はクマラスワミ報告書などとは違い、科学的な態度で作成されたものであり、十分な透明性が確保されていると言えます。各行政機関がこの報告書を参考にするのは当然であります。
 ところが、トランプ氏が大統領に返り咲いたことで、事態はややこしいことになりました。米エネルギー省気候作業部会が、気候危機説には科学的根拠がなく、バイデン政権が目指してきた極端な脱炭素政策は有害無益とする報告書を発表したのです。
 キヤノングローバル戦略研究所の杉山大志氏は9月10日の産経新聞で、脱炭素は世界の潮流にあらず、再エネの是非を国会で争点にせよとの論陣を張りました。杉山氏は、再エネ推進は破滅的な国家戦略であるとまで言い切っています。しかも、この杉山氏がIPCC報告書の執筆者の一人なのです。ついでに言うなら、先ほど紹介した「冷えていく地球」の根本氏は、晩年には、今度は「熱くなる地球」も出版しております。かくして、最初に述べたとおり、人類の生存のため、地球環境を守るため、我々は何をなすべきかの判断に困るということになるわけです。
 観測された確かな事実は、近年、地球の平均気温は上昇している、大気中のCO2の濃度が上昇しているの2点です。この二つの事象に強い因果関係があるのかどうか。夏が暑いと、アイスクリームの売上げは伸びます。だからといって、アイスクリームを食べないようにしても、夏の暑さは変わりません。また、最近は、寒い冬にもアイスクリームの売上げは伸びています。これは暑さとは別の要因です。CO2の増加がこの場合のアイスクリームの売上げのようなものである可能性はないのか。
 国立研究開発法人国立環境研究所は、「気候モデル研究者らは、20世紀の気候変化に寄与すると考えられる様々な因子を考慮した気候モデル実験を行いました。この実験では、これらの因子を全て考慮した計算に加え、幾つかの因子を考慮しないなど、仮想条件での計算も行い、それらの結果を観測データと比較することにより、20世紀後半の気温変化に対する各因子の寄与度を検討しています。このような検討の結果、人間が排出する温室効果ガスを考慮しなければ、20世紀後半の温暖化を説明できないことが示されました」との見解を示しています。
 複雑系たる地球のシステムをこのような科学的アプローチで解明できるのかどうかは、私には正直分かりません。真実とは違い、正しさは相対的なものです。ある人や国にとって正しいことは、別の人や国にとっては誤ったことであることはよくあることです。ウクライナをじゅうりんしたロシアですら、彼らなりの正しさはあるのです。気候変動は、ポリティカル・コレクトネス、政治的正しさの領域に入りました。
 お亡くなりになられた岸本知事は、殊さら脱炭素政策に熱心で、県長期総合計画に盛り込む構えでした。再エネは安定供給に難があり、比較的高価なものにつくことから、本県の産業政策には必ずしもプラスにはならないのではないかと危惧する私に、岸本知事は、和歌山に企業を呼び込むとすれば、和歌山がどれだけ再エネを供給できるかがその成否を決める。今や、化石燃料に頼る電力では、特に製造業は誘致できないと諭してくれました。さらに、トランプの4年間が終われば、アメリカも元に戻るでしょうとの見通しを示されました。
 なるほど、脱炭素がコレクトネス、正しいことだとのコンセンサスが世界の潮流であり、我が国政府がそれに沿った政策を進めていくのであれば、地方自治体である本県はその流れを読み、それにふさわしい手を打っていくべきであるとは言えます。果たして、世界の潮流はどちらへ向かっているのか。トランプ政権下にもかかわらず、米国の名立たる企業は、大統領の顔色をうかがいながらも、GXへの取組を進めていることを見れば、県知事として、岸本知事の方向性は間違ってはいなかったのでしょう。
 先日、福祉環境委員会の視察で、南紀はまゆう支援学校にお邪魔しました。この学校は、屋上に太陽光発電設備を設置しました。本事業は、PPA方式で事業者が設備を整備し、電気をこの場合は南紀はまゆう支援学校に販売することで成り立つもので、学校としても、従来より電気代が年間で140万円ほど安くなるとのことでした。県費も環境省の重点対策加速化事業を活用することで実質ゼロであり、費用対効果という点では申し分ありません。また、景観的にも全く問題なく、建物に溶け込んでいるように見えました。
 いよいよ東京では、本年度から新築住宅に太陽光パネル設置義務化が始まりました。履行しなくとも罰則はありませんが、対応を怠ったメーカーや工務店には東京都から助言指導が行われます。太陽光発電は再エネの中でも夜間に発電ができないという弱点はあるものの、イニシャルコストが下がっている唯一の再エネであり、比較的優等生であると言えます。ただ近年は、森林や湿地帯への大規模な開発が問題視されており、適地が限られてきています。太陽光発電にとって建築物の屋根は最後のフロンティアと言ってよいでしょう。
 視察への道すがら、車窓から見る我が県は緑豊かな森林県、まさに紀州木の国であります。そもそも我が国の森林は、イタケルノミコトが樹木を植えて回ったことに始まると日本書紀に記されていますが、この神様は和歌山市の伊太祁曽神社に祭られています。全国の木材関係者がこぞってお参りするのもむべなるかな。木祭りには、私も毎年参拝いたしております。岸本知事も、議員時代も含めて必ず参拝されていました。思えば、今年の木祭りでお会いしたのが最後となりました。
 経済産業省は、J-クレジットを創設し、適切な森林管理によるCO2の吸収量をクレジットとして国が認証するとしました。カーボンクレジットとは、あるプロジェクトが実現した温室効果ガス排出削減・吸収量を売買できる仕組みのことです。本年5月、改正GX推進法が参議院で可決され、年間10万トン以上のCO2排出事業者は割当て申請を行わなくてはならなくなりました。間もなく業種ごとの排出枠の割当てが発表されることになります。企業は、割り当てられた排出枠を超えるCO2を出す場合には、課徴金が課せられることになります。そこで、カーボンクレジットを購入して相殺することが最も合理的な選択になると推測されることから、近い将来、非常に有望なカーボンクレジット市場が出現すると考えられます。
 島根県は、森林を活用した脱炭素社会の実現に向けた包括連携協定を森林組合、森林協会、林業公社、ENEOS株式会社との間で結び、森林由来のJ-クレジットの創出・活用を加速させるとしています。島根県にもすばらしい森林があり、出雲大社には国譲りのオオクニヌシノミコトが祭られています。古事記には、イタケルノミコトは大屋毘古神として登場しますが、この神は、災難に遭われた大国主命神を救ったとあります。紀の国紀州が島根県に後れを取ってはなりません。本県の森林が宝の持ち腐れにならぬよう、カーボンクレジットの創出を急ぐべきではないでしょうか。
 還暦ともなりますと、根気がなくなるからなのか、トイレが近くなるからなのか、2時間を超える映画を映画館で見ることがおっくうになってきました。話題の「鬼滅の刃」もアマゾンプライムで見ようかと思っていたところ、興味深いニュースに出くわしました。主人公の炭治郎が着る羽織の市松模様は、自社の商標であるダミエの侵害に当たると、ルイ・ヴィトンが市松模様をあしらった商品を販売する仏具店に警告書を出したというものです。市松模様は江戸時代には広く見られ、一説には平安時代にその起源があると言われています。日本人からすれば、ヴィトンが難癖をつけてきたように感じます。幸い、特許庁は侵害はないとの判断をし、事なきを得ました。
 オリジナリティーとは何なのでしょう。少なくとも、私の考えていることや語っていることは全て誰かの受け売りであり、そこにオリジナリティーなどかけらもないと断言できます。そもそも私のこの物言いそのものがフランス文学者の内田樹先生の受け売りです。何であれ、これは私の独創だと言い切れるとすれば、それはよほどの天才に違いありません。孔子でさえ「述べて作らず」と語っております。
 学ぶとはまねること。音楽や絵画などはよく誰々の影響を受けたなどと評論されますが、ありていに言えば、それはまねをしたということにほかなりません。19世紀後半に、ヨーロッパでは日本趣味が流行しました。ジャポニズムです。ゴッホ、マネ、モネらは、浮世絵の影響を強く受けたと言われています。ゴッホがヨーロッパで広重ブルーが評判になる安藤広重の「亀戸梅屋敷」や「大はしあたけの夕立」を模写していることはよく知られています。西洋絵画では日本人には印象派が人気ですが、そもそも日本で人気があった浮世絵からインスパイアされていたのですから、日本人が好きなのも納得です。それで、ゴッホやモネの芸術性にいささかもけちはつきませんし、日本人としてはちょっぴり誇らしいではないですか。ヴィトンのダミエも、彼らの主張とは逆に、ジャポニズムからインスパイアされたものと思われます。
 さはさりながら、現代社会はオリジナリティーなるものが存在するものとしてオリジナリティーを主張し、商売の種にしているのですから、オリジナリティーがあるかどうかを判断しなければなりません。ずうずうしくなければ、もうからないのが現代社会です。商業的な価値、市場的な価値と文化的な価値、芸術的な価値はまた別でしょうが、安土桃山時代には、朝鮮で作られた普通の茶わんが茶道ではわびた感じがするともてはやされました。日常的な何げないものの中に美を見いだす日本文化の特徴だとは思いますが、朝鮮の茶わんが高値で売れるとなると、当時の商人も大もうけをもくろんだことでしょう。価格の地域差を金銭に換える、商売の基本です。何しろ朝鮮では、ただの茶わんだったのですから。
 博物館では、時にレプリカを展示することがあります。私は芸術に対する造詣がないので、目利きはできません。レプリカとの表示がなければ、当然本物だと思い込んでしまいます。本物が博物館に収蔵されていれば、入場料を払ってレプリカを見ても、なぜか納得してしまいます。誠に人の心は不思議なものです。まあ、せっかくなら本物を見たいというのが人情ですが。
 徳島県立近代美術館が6720万円で購入したフランスの画家ジャン・メッツァンジェの「自転車乗り」という作品が、有名な贋作師の作品だと発表しました。訓練を積んだ学芸員でも目利きは難しいようです。ドイツ警察の情報提供により明らかになったとのことですが、作品だけでは本物か偽物か判断がつかないほどの作品には、商業的、市場的な価値はないにしても、美術品としての価値もないものなのでしょうか。美とは何なのでしょう。
 私立の美術館や博物館はともかく、公立の美術館や博物館は公費で作品を購入しているのですから、購入する作品の選定過程は明らかにすべきなのかもしれません。とはいえ、美術品の価値、美には絶対的基準はなく、市場価値の相場感のようなものしか客観的な基準はありません。予算の制約がある中で、実務的には学芸員のある意味好みが反映されることは否めません。それゆえ、市井のいわゆる目利きの人から、何であんなもん買うたんやとの御批判を頂戴するかもしれません。公立であることに鑑みれば、そうした声にも真摯に耳を傾けることも必要ではないかと考えるのです。
 政治資金の不記載問題では、検察審査会による不起訴不当が議決される事案がありました。刑事訴訟法は、検察官にだけ起訴の権限を認めてきました。これを起訴独占主義といいます。しかし、控訴権の実行に関して民意を反映させるべきであるとの趣旨から、検察審査法が制定され、国民から選ばれた11人が検察官の不起訴処分の当否を審査することになりました。さらに、平成21年からは裁判員制度が始まり、国民から選ばれた裁判員が、裁判員裁判では被告人を有罪にするか無罪にするかを決めています。いずれも専門家だけではなく、国民の声も聞くべきであるという民主的な考え方が背景にあり、これは世の中の潮流です。
 公立の博物館は、その運営に関し、県民の声を聞く機会を制度化してもよいのではないでしょうか。当然そのとおり運営しろというものではありませんが、人は専門家ほど独善的になりがちです。価値は相対的なもので、絶対的なものではありません。だからこそ、何に価値があるのかを決める必要がある場合、ある程度は民主的に、ありていに言えば素人の意見、市民の意見──もちろん市民の中には学芸員も真っ青な見識をお持ちの方もいるでしょうが──を聞くのが妥当であると思うのです。批評にさらされるのは嫌なものです。私も選挙が近くなると憂鬱になりますが、しかし、選挙という県民の批評がなければ、我々は随分と傲慢になってしまうことでしょう。ぜひ一考していただきたいものです。
 そこで、質問いたします。
 第1点、本県の脱炭素に関する見解及び姿勢はどのようなものか。
 第2点、地域脱炭素ロードマップでは、地方公共団体や地元企業、金融機関が中心となり、環境省を中心に国も積極的に関与しながら、少なくとも100か所の脱炭素先行地域で、2025年度までに脱炭素に向かう地域特性等に応じた取組実施の道筋をつけることにしている。本県は、2025年現在、近畿で唯一、脱炭素先行地域が一つもない県であるが、この現状をどのように認識しているのか。
 第3点、J-クレジットの2025年度の創出見込み量は200万トン、需要は年間数千トンと見込まれる。有数の森林県である本県は、森林由来J-クレジットの創出に向け取り組むべきであると思慮するが、当局の見解はいかがか。
 第4点、教育施設における太陽光発電設備の設置についてどのように考えるか。また、今後どのように進めていくのか。
 第5点、県立博物館におけるレプリカの展示について、どのような見解の下で行っているのか。また、本物が宝の持ち腐れにならないような展示を心がけるべきではないのか。
 第6点、県立博物館の運営については、県民の意見の中に傾聴に値するものがあると思慮する。時にこれらを参考にすべきではないのか。
 以上をお尋ねして、一般質問といたします。
○議長(岩田弘彦君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
 知事宮﨑 泉君。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○知事(宮﨑 泉君) 尾﨑太郎議員には、選挙のときにも大変お世話になり、本当にありがとうございました。
 さて、脱炭素でございますが、議員が御発言されたように、世界の研究者の英知の結集と言われるIPCC報告書では、人間活動が主に温室効果ガスの排出を通じて地球温暖化を引き起こしてきたことは疑う余地がないとされています。この報告書に基づけば、今まさに対策を講じなければ、今世紀末には、世界平均気温が産業革命以前に比べ、4度上昇するという事実に直面することになります。こうした研究者の知見を基に各国が議論し、歴史的な世界合意と言われるパリ協定が採択されたところです。
 国連事務総長による「地球温暖化時代は終わり、沸騰化時代に突入」との発言は記憶に新しいところですが、今対策を講じたとしても、今後、一定程度の地球温暖化は避けられないことから、人類は気候変動に適応していくことが求められます。脱炭素を取り巻く世界情勢は、アメリカのパリ協定離脱の影響から、脱炭素の機運が低下していることも否めませんが、一方で、欧州最大の脱炭素ファンドが日本への進出を検討しているという前向きな報道もあったところです。
 脱炭素先進県を目指すに当たり、環境と経済の二つの側面をトレードオフの関係として捉えるのではなく、統合的な発展を目指すことが重要であると考えます。例えば、アップル社は、取引企業に部品の製造に係る温室効果ガスの排出を実質ゼロにするように求めています。このように、サプライチェーン全体に脱炭素化が求められる潮流は、そう遠くないうちに県内企業にも影響を与える可能性があり、取組の遅れは、今後、取引上のリスクを招くおそれがあります。
 これらの動きを逆にチャンスと捉え、本県の強みである地域資源を最大限に活用し、GXの成長投資の取り込みや県内企業のサプライチェーンへの参入を促進するなど、環境と経済の両立を図り、本気で脱炭素に取り組んでまいります。
○議長(岩田弘彦君) 環境生活部長湯川 学君。
  〔湯川 学君、登壇〕
○環境生活部長(湯川 学君) 脱炭素先行地域づくり事業とは、政府が策定した地域脱炭素ロードマップに位置づけられる地域脱炭素移行・再エネ推進交付金のメニューの一つで、国の補助率も高く、地方にとって大変有利な事業です。政府は、全国で100の脱炭素先行地域選定を目指しており、現在、88地域となっております。
 県内においては、過去に和歌山市が申請しましたが、残念ながら、計画の採択には至っておりません。脱炭素先行地域の選定がない都道府県は、議員の御発言のとおり、本県を含めて7都県、近畿では本県を残すのみとなりました。本年10月には7回目の募集があり、和歌山市が申請を予定していると伺っております。県としましては、これまでも申請に際して共同提案者になるとともに、国に対して交付金の要件緩和を要望するなど、県内の市町村が脱炭素先行地域に選定されるよう後押しをしてきたところでございます。今後、脱炭素先行地域の空白地からの脱却を目指し、和歌山市の計画が必ず採択されるよう、引き続き、可能な限りの協力を行ってまいります。
○議長(岩田弘彦君) 農林水産部長川尾尚史君。
  〔川尾尚史君、登壇〕
○農林水産部長(川尾尚史君) 本県における森林由来のJ-クレジット、通称森林クレジットの創出に向けた取組についてお答えします。
 本県は、森林が県土の約8割を占めることから、脱炭素社会の実現に向けて大きな役割を担うとともに、林業の新たな収入源としても期待できるため、森林クレジットの創出は大変重要であると認識しています。県では2023年度から、森林所有者や市町村等を対象に制度の仕組みなどの研修会を開催するとともに、県内の先導的モデルとして、田辺市の県有林108ヘクタールにおいて森林クレジットの創出に向けた取組を進めており、本年度は、国の審査に基づく森林クレジットの発行を受けた後、その販売を予定しております。
 また、一般社団法人わかやま森林と緑の公社でも、2024年6月にENEOS株式会社と連携協定を締結し、約3400ヘクタールの森林を活用した森林クレジットの発行及び販売に向けて取り組んでいるところです。
 今後は、県有林での取組で培ったノウハウをマニュアル化し、それを活用した研修会を開催するなど、カーボンクレジット市場の動向を踏まえつつ、スピード感を持って森林クレジットの活用促進に、引き続き取り組んでまいります。
○議長(岩田弘彦君) 教育長今西宏行君。
  〔今西宏行君、登壇〕
○教育長(今西宏行君) 教育施設への太陽光発電施設の導入についてお答えいたします。
 南紀はまゆう支援学校への太陽光発電施設の導入につきましては、脱炭素等の効果を踏まえ、同校の新築工事に併せて設置したところでございます。一方、既設の県立学校施設への設置につきましては、太陽光発電施設を設置する前に、屋上の防水工事をやり直す必要があります。しかしながら、ほとんどの県立学校は災害時における避難所としての役割を担っていることから、太陽光発電は非常用電源としても有効であると考えております。県として脱炭素政策を推進する中、県立学校施設の改修時期などを考慮しつつ、設置する施設を順次選定しながら、できる限り速やかに導入していけるよう努めてまいります。
 次に、県立博物館の運営について、レプリカの展示等についてお答えします。
 県立博物館におけるレプリカの展示につきましては、常設展の展示物約550点のうち、レプリカは約50点となっています。このうち約40点は実物を所有していないもので、鑑賞の幅を広げ、学習効果を高める観点から、レプリカを展示しております。実物があるにもかかわらず、レプリカを展示しているものは約10点で、これらは実物が照明や湿度、温度に敏感で長期間の展示が難しいものであることから、文化庁の国宝・重要文化財の公開に関する取扱要項に準じ、展示する期間を制限する必要があるため、レプリカで代用しております。
 なお、いずれの場合も、展示物にはレプリカである旨を表示しています。
 一方で、貴重な実物をもっと積極的に展示すべきという御意見もございます。実物には普遍的で揺るぎない歴史的・文化的価値があり、見る者に対し、感動を与えます。企画展など多くの機会を通じて実物を公開できるよう努めているところでございますが、より多くの方々に本物の文化財が持つ魅力を体験していただけるよう、実物展示のさらなる方策を検討し、具体化に努めてまいります。
 最後に、博物館の運営に対する県民の意見の取扱いについてお答えします。
 展示は、県民の方々が博物館に出会う最大の接点であり、満足度の高さは重要な要素であると考えております。来館者に博物館の魅力を最大限にお伝えできるよう、幅広い方々の御意見を聴き、これまで以上に展示内容に反映してまいります。現在の県立博物館が開館し、30年がたちました。今後も、様々な御意見を踏まえ、計画的にバランスよく展示資料を選定し、魅力的な展示公開を行うとともに、適切な時期に常設展の内容や展示方法のリニューアルを行い、より一層県民に愛される博物館を目指していきたいと考えております。
○議長(岩田弘彦君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(岩田弘彦君) 再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕(拍手)
○議長(岩田弘彦君) 以上で、尾﨑太郎君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 27番岩永淳志君。
  〔岩永淳志君、登壇〕(拍手)
○岩永淳志君 皆様、おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、通告に従い、一般質問をいたします。
 初めに、この伝統ある和歌山県議会において登壇させていただけることは誠に光栄で、身の引き締まる思いであります。宮﨑知事をはじめ県当局の皆様、また議長をはじめとする諸先輩の議員の皆様には、引き続き、御指導、御鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。何分、人生初めての質問でございますので、お聞き苦しい点もあるかと思いますが、よろしくお願いいたします。
 今回、大きく四つのテーマについて質問をさせていただきたく存じます。
 一つ目の関係人口についてお伺いする前に、この場をお借りし、私の自己紹介を簡単にさせていただきます。
 私は、平成10年8月28日に大阪府池田市にて生まれました。血液型はO型、星座は乙女座、4人兄弟の長男でございます。私が5歳のときに家庭の事情で東京に家族で引っ越し、それから、小学校、中学校、高校、大学と東京で過ごしました。そんな中で、大学院生でした2023年に住民票を美浜町に移し、今に至っております。
 よく、なぜ和歌山に、なぜ日高にと聞いていただくことが多いのですが、最初のきっかけは非常に瑣末なことでした。私は日本のアニメが大好きで、学生の頃は三度の飯よりもアニメを見て過ごしておりました。そんな私が一番好きだったのが京都アニメーションというアニメ制作会社がつくるアニメ作品でした。その中の一つ、「AIR」という作品が大好きでした。そのアニメ作品の舞台がたまたま御坊市と美浜町に係る一帯で、その舞台巡りをするために、2018年、大学2年生のときに、初めて日高郡に行きました。それがきっかけで御縁が御縁を呼び、翌年、2019年夏からは大学を1年間休学して、和歌山県美浜町にあるゲストハウスで住み込みで働くようになりました。美浜町での最初の1年間、地域の方に温かく見守っていただき、皿洗いすらまともにできなかった実家育ちの二十歳の人間が、偏差値でははかれない、人として大切なことを学ぶことができました。
 一方で、日高郡、そして日高郡に限らず、県内様々なところに赴き、和歌山県の自然の豊かさ、歴史の豊かさ、そして人の豊かさを実感しました。1年が終わり、和歌山から東京に戻った頃には、和歌山の魅力にすっかり取りつかれ、その後は3か月に1回ほどの頻度で和歌山に通っておりました。大学院では日高地方の移民の歴史を研究し、地域の博物館での特別展示の企画、梅やかんきつ農家のお手伝い、地元企業やまちおこしの団体でのインターンを通じて、様々な方との関わりができました。こうして徐々に和歌山との関わりを深める中で、この和歌山にはたくさんの魅力と可能性があることを知りました。その上で、日高地方、そして和歌山県に骨を埋めて住んでいきたいと思い、移住をしました。
 私のような事例は特異な例かもしれません。しかしながら、縁もゆかりもなかった方が、もしくは和歌山から一度県外に出られた方が、和歌山に関わり、地域の担い手不足や空き家対策、地域の経済活動を支えている事例は少なくないと感じております。現在、和歌山県は人口およそ87万2000人、毎年1万人以上定住人口が減っております。そういった中で、和歌山に関わる人の規模、関係人口を広めていくことが、担い手不足、空き家対策など、県内の様々な課題に有効であると考えます。
 そこで、お伺いします。
 関係人口に関する答弁については、6月定例会で坂本佳隆議員からも質問がありました。その答弁の内容を踏まえ、この数年間で和歌山県が関係人口の創出において取り組んできた事例と、それがどういった成果を生み、今後どのように展開していくのか、御認識を地域振興部長にお伺いいたします。
○議長(岩田弘彦君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
 地域振興部長赤坂武彦君。
  〔赤坂武彦君、登壇〕
○地域振興部長(赤坂武彦君) 議員御指摘のとおり、地域の持続可能な発展には、従来の定住人口の増加にとらわれない、地域と多様な形で関わる関係人口の創出・拡大が極めて重要であると認識しております。そのため、本県では、全国に先駆けてワーケーションの普及や受入れを積極的に行い、都市と地域の方々との交流や地域課題の解決に取り組んできたところです。令和3年度からは、地域活動に意欲のある学生と担い手を求める地域とを直接つなぐマッチングサイト「わかやまCREW」を運営しており、令和7年8月末現在、871名の学生が参加登録を行っています。
 また、令和5年度からは、東京大学と包括連携協定に基づき、東京大学フィールドスタディ型政策協働プログラムを市町村と連携して実施するほか、今年度は総務省のふるさとミライカレッジ事業を活用し、ローカル線沿線地域の活性化をテーマに、大学などと地域が連携して、県内5地域で課題解決プロジェクトを展開しています。
 そのほか、本県での副業や起業に関心のある首都圏の方々を対象とした空き家活用に関するセミナーを実施するなど、本県が持つポテンシャルを生かした関係人口の創出・拡大事業に取り組んでいるところです。さらに、今年度は、人とつながる関係人口創出プラットフォーム「わかやまFUNBASE」の構築を進めており、さらなる関係人口の拡充を図ってまいります。
○議長(岩田弘彦君) 岩永淳志君。
  〔岩永淳志君、登壇〕
○岩永淳志君 お答えいただき、ありがとうございます。
 御答弁にあった「わかやまCREW」は、私も活用させていただきました。アルバイトとは違う形で、県内外、一番遠いところですと福島県から大学生が来てくれて、私の住みかの古民家の改修などを手伝っていただきました。今でも、その方々は地域と関わり続けてくれています。また、包括連携協定を結んでいる東京大学との取組や総務省の大学連携のモデル実証が本県で取り組まれていることも大変喜ばしいことであると思います。
 県全体で関係人口を創出する仕組みづくりに取り組んできていることは、和歌山県が誇るべき実績であると考えております。しかしながら、まだまだ取り組める余地があることも確信しております。御答弁の中で、関係人口創出プラットフォーム「わかやまFUNBASE」という言葉が出てきました。こちらのサイト構築の公募要領によれば、「地域の活性化に取り組みたいと考えている方と地域で活動しているキーパーソンをつなぐ仕組みを新たに構築することで、本県の関係人口の創出と拡大を図ります」とあります。改めて、人とつながる関係人口創出プラットフォーム「わかやまFUNBASE」はどんなサイトになるのか、その狙いについてお伺いいたします。また、出来上がった「わかやまFUNBASE」が中途半端なものになってはいけないと考えます。本サイトの基本的な内容や担うべき役割、既存サイトの「わかやまCREW」、それ以外にも、移住・定住の「わかやまLIFE」等の関係性について、地域振興部長にお伺いいたします。
○議長(岩田弘彦君) 地域振興部長。
  〔赤坂武彦君、登壇〕
○地域振興部長(赤坂武彦君) 県では、これまで移住施策やワーケーションなどを推進しており、これからの地域づくりには、人と人とのつながりがますます重要になると認識しております。「わかやまFUNBASE」は、ウェブ上で地域とのつながりやきっかけの場を提供し、県内各地域への貢献や関わりを持ちたいと考える方々とその地域で活躍するキーパーソンをつなぐことで関係人口を創出し、継続的な交流を通じた関係の深化を目的として構築するものです。本サイトで地域のキーパーソンの活動情報などを発信することにより、地域内外の方々が双方向に交流できるマッチングプラットフォームとして機能させてまいります。
 また、地域のキーパーソンは、地域と地域外をつなぐ橋渡し役として、さらに、地域の将来像を描き、その実現に向けてリーダーシップを発揮する重要な存在として位置づけております。今後、県といたしましては、キーパーソンを中心とした地域ネットワークの拡充に加え、地域の魅力や活動情報をより効果的に発信するため、学生を対象とした「わかやまCREW」と「わかやまFUNBASE」を統合し、機能の拡大を図ってまいります。さらに、「わかやまFUNBASE」を通じて、本県への理解と関心が深まり、移住を検討される方々に対しては、和歌山移住・定住支援サイト「わかやまLIFE」により、相談対応や支援制度等の情報提供を行ってまいります。
○議長(岩田弘彦君) 岩永淳志君。
  〔岩永淳志君、登壇〕
○岩永淳志君 ありがとうございます。
 私自身も、最初にゲストハウスで働き始めたときのゲストハウスのオーナーが、同時に地域おこしのNPOの理事もされていて、まさによそ者である私と地域の橋渡しをしていただきました。私は、県内各地にいらっしゃるキーパーソンの皆様の共通課題は、人手不足であると考えております。次の20年、30年先の地域を考えて新しい取組をしようにも、一緒に動いてくれる人がいない。この担い手不足に対して、「わかやまFUNBASE」が一助になることを願っております。
 改めてですが、この「わかやまFUNBASE」がこれからの和歌山県の関係人口、移住・定住、空き家対策等の玄関口にならなくてはいけないと思います。そのためには、掲載されるキーパーソン側が自主的に内容を更新していける仕組みを入れていただくことを期待いたします。サイトを維持管理していく中で、インスタグラムなどのキーパーソンの皆さんがされているSNSを、サイト内に埋め込めるようにする形も有効かと思います。また、キーパーソン側から今の地域で何を頑張っているのか、どういった人材を求めているのかといった発信ができるサイトにしていただきたいです。地域のキーパーソンが主体的に発信することができ、サイトを見る側の人も、地域ごとのキーパーソンに関する最新かつ網羅化された情報を得ることができる、双方向に活発な交流が起きるウェブサイトになることを期待させていただきます。ありがとうございます。
 次に、和歌山の米作りについてお伺いさせていただきます。
 先月、8月5日の内閣府の米の安定供給等実現関係閣僚会議にて、政府は、需給の変動にも柔軟に対応できるよう、官民合わせた備蓄の活用や耕作放棄地も活用しつつ、増産にかじを切る政策への移行を掲げ、農地の集積・集約、大区画化やスマート農業技術の活用、新たな農法等を通じた生産性の向上を今後の方向性として打ち出しました。
 農林水産省の令和8年度概算要求でも、米に関する新規事業で40億円、集約化の中間管理機構の強化についても、約4倍の予算が掲載されております。小泉農林水産大臣も、米の需要に応じた増産の実現を掲げ、少ない人手でも米作りを営める環境をつくりたいと言及されております。
 この全国の流れに対して、和歌山の米作りをどう捉えるのか。我が県においては、米作り以外にも果樹栽培や施設園芸など、地域の特徴を生かした収益性の高い農業が営まれていると認識しております。一方で、令和5年の農業産出額では、ミカン、梅、柿に次ぐ4番目に産出額が大きいのが米になります。県内の水田面積は8930ヘクタール、そのうち、水稲作付面積が5680ヘクタールの水田が広がる中で、これらをどうしていくのか。6月定例会の農林水産部長からの答弁では、「米生産者に対して、国庫補助事業を活用した施設整備等を支援するとともに、法人化や協業化に取り組む生産者や個人での経営発展を目指す生産者には、県単独の強い経営体育成支援事業により、コンバインなどの機械の導入を支援しているところである」と答えられております。
 県の状況や優先順位を踏まえれば、米に対して手厚い支援が難しい部分があるかと思います。そこで、国の補助制度を積極的に活用していただくことが支援策として考えられると思います。先ほど来から話題に出ている国庫補助事業。具体的には、農水省の農地利用効率化等支援交付金などが米農家の、特に機械導入等に使うことができる国の補助事業として挙げられると考えられますが、県内での採択実績は近年どのような状況なのでしょうか。
 また、和歌山県の米作りの現状の中で、田んぼ1枚が小規模な背景を踏まえると、圃場整備が不可欠になってくると考えております。そもそも圃場整備が和歌山県でどういった背景で行われているのか。圃場整備における現在の取組状況についても、併せてお伺いさせてください。
○議長(岩田弘彦君) 農林水産部長川尾尚史君。
  〔川尾尚史君、登壇〕
○農林水産部長(川尾尚史君) 農地利用効率化等支援交付金は、地域農業の将来設計図である地域計画の早期実現に向けて、担い手が経営改善に必要な農業用機械等の導入を支援する事業であり、取組の目標がポイント化され、点数の高い順に採択されます。本県での採択状況につきましては、前身の事業を含め、令和元年度から現在まで10地区、12経営体から事業申請があり、このうち、3地区、3経営体で事業が採択され、トラクターや田植機が導入されております。なお、令和5年度からは、市町村からの事業申請がない状況が続いております。
 次に、圃場整備の取組につきましては、農業者の減少や高齢化等に対応し、担い手農家への農地の集積・集約を進めるため、営農の効率化や省力化などの地域の要望を踏まえた働きやすい農地づくりを進めております。現在、県内6地区において約94ヘクタールの圃場整備に着手し、このうち、日高地域では3地区、約36ヘクタールにおいて、区画整理や農道及び用排水路の整備を実施するとともに、地域計画に係る地域での話合いの中で圃場整備に対する機運が高まっている3地区において、事業着手に向けた検討がなされているところです。
 県としましては、今後とも地域と連携しながら、圃場整備等、働きやすい農地づくりを進めるとともに、担い手への農地集積や機械設備の導入に積極的に取り組んでまいります。
○議長(岩田弘彦君) 岩永淳志君。
  〔岩永淳志君、登壇〕
○岩永淳志君 ありがとうございます。
 県内での採択状況、そして、令和5年以降の申請状況を見ると、水田の面積の平均が小さい和歌山県の農家さんが国庫補助事業に対し申請をする、そして、さらに採択をいただくということがなかなか難しい状況にあることが理解できます。
 この農地利用効率化等支援交付金実施要綱の配分基準を見ると、経営面積の拡大が基準の一つになっており、条件不利地域の多い和歌山県では、全国のより平野部の多い都道府県からの申請に勝らなければいけないという点で、国の基準にうまく合わないという現状を感じます。また、同交付金の中の条件不利地域支援タイプというタイプがあるんですが、そちらにおける助成対象者は、農家3戸以上が構成員に含まれている団体や参入法人、または農業協同組合、土地改良区、農業委員会、第三セクター等などが対象になります。個人ではなく団体が対象になるということでございます。今まで個人で営んできた農家が組織を組む上でハードルを感じていることも、また事実かと思います。和歌山県の米作りを考えていく上で、どうしても国の求める基準と実際の現場に乖離があるように思えてなりません。こういった部分を現場に即した形に改善していけるように働きかけたいと思っております。
 また、圃場整備について私が懸念しているのは、県内の圃場整備や中間管理機構の整備を通じて、ハード面の整備、担い手への集積・集約、働きやすい農地づくりが進めば進むほど、ソフト面も大きな出資が必要になってくる点です。
 先日、まさに今、圃場整備が行われている日高町小浦地区の稲刈りイベントに参加してきました。そこでは、農機具の株式会社クボタさんが最先端の農業機械をデモで持ってきてくれていました。コンバインは5条刈り、95馬力、自動運転も搭載できるモデルでした。そのほか、トラクター、田植機、ドローンなどを持ってこられていて、最新の設備を見ることができました。そのコンバインで1台約2000万円、トラクターは900万円、田植機も似たような金額でございました。そういった機械の金額の高騰も踏まえまして、米作りにおけるソフト面の支援について、御答弁にあった国庫補助事業への支援や強い経営体育成支援事業について、より一層のサポートをよろしくお願いいたします。
 次に、大阪・関西万博に関して質問をさせていただきます。
 今回の大阪・関西万博において、和歌山県アクションプランでは、関西パビリオン内の和歌山ブースで、空間、映像、食を使って、和歌山が育んできた精神文化を表現するとされておりました。実際、空間としてのステージコンテンツとしては、ほぼ日替わりで県内全域から様々な人や団体が参加し、地域の魅力を発信していたと思います。食のコンテンツとしては、和歌山の食の豊かさを実際食べていただくことで魅力を発信していたと思います。私も一度、和歌山ブースに足を運ばせていただきましたが、特に食のブースで注文ににぎわう様子を見て、非常に驚きました。
 そこで、お伺いしたいのですが、もうすぐ閉幕を迎える大阪・関西万博において、特にステージと食においてどのような結果が得られているのかを知事室長にお聞きいたします。県内全域のどれだけの団体が和歌山ブースに関わったのか。また、食としてはどういった内容を提供し、何が人気だったのか、教えていただきたいです。
○議長(岩田弘彦君) 知事室長北廣理人君。
  〔北廣理人君、登壇〕
○知事室長(北廣理人君) 県では、常設の関西パビリオン和歌山ゾーンにて、和歌山百景をテーマに、展示や映像食などを通じて、本県の魅力を余すところなく発信しております。その中で、中央にステージを設け、県内各地の祭りや伝統芸能、工芸品等を未来につなげていけるよう、約50もの団体や個人など、多くの方々の出演や出展により、和歌山ゾーンを盛り上げていただいているところでございます。
 また、食のコンテンツとしては、県内の老舗和菓子等の職人や果物農家とコラボレーションした6種のスイーツとドリンクを提供するWakayamaの森と恵みのペアリングセットを販売し、連日完売の状況であり、非常に人気を博しているところです。さらに、月2回、梅酒や日本酒を味わっていただくお酒の日を設け、多くの来場者の方々に和歌山の地酒を楽しんでいただいております。
 そのような取組を続けたこともございまして、和歌山ゾーンの来場者が、当初目標としてございました30万人を8月1日には達成をし、9月13日には40万人に達したところです。閉幕まで残り僅かとなっておりますが、関係各所と連携の上、閉幕を迎えるまで、引き続き、本県の魅力を発信してまいりたいと考えております。
○議長(岩田弘彦君) 岩永淳志君。
  〔岩永淳志君、登壇〕
○岩永淳志君 御答弁ありがとうございます。
 まず、ステージについて関わってもらった地域の人や団体は、今後にも活用できる宝だと思います。和歌山をテーマに50もの団体と個人が県内全域から催物を持ってきて企画をすることができたということは、万博という場以外でも、今後、地域でイベントをする際にも非常に活用することができると思いますし、観光資源の発掘をすることができたのではないかと感じております。
 また、食について、私もよく東京の友人などから和歌山のいいところってどんなところと聞かれることが多いのですが、私は食べ物だと答えています。全国を見ても、自然の恵み豊かな食を提供できる和歌山県の強みが、万博での実績にも表れていると思います。
 森と恵みのペアリングセットや酒の日での梅酒や日本酒の提供といった取組について、私自身も和歌山ゾーンにお邪魔した際に、ペアリングセットの6000円という価格に非常に驚いたのですが、聞いたところによると、平日、休日含めて、ほぼ毎日完売しているという話を聞き、さらに驚きました。この食を通じた発信というものも、この6000円のペアリングセットも、万博だから特別売れたんやという声もありますが、そういうことではなく、これからの和歌山の食の発信の当たり前にしていけるように、引き続き御尽力いただきたく思っております。
 次に、万博をきっかけに和歌山に来てもらえるようにする施策についてです。
 2025年9月4日付の紀伊民報で、熊野エリア観光推進実行委員会が取り組む熊野エリア万博キャンペーンが紹介されておりました。7市町村における45の飲食店やお土産店、体験施設、宿泊施設が参加して、万博の入場チケットを提示した観光客に対し、料金を割り引いたり、オリジナルグッズをプレゼントしたりといった特典を用意しているとのことです。このキャンペーンについては6月30日から実施されておりますが、この施策のポイントは、会期終了後もこのキャンペーンが続き、来年1月末までが期間であることだと思います。
 全国各地の観光誘客の状況を鑑みるに、万博の会期中は、大阪以外の観光地への誘客はなかなか難しい状況のようです。むしろ会期が終わった後に、万博で和歌山の魅力を知っていただいた人に、改めて和歌山に来ていただく仕掛けを考えていくべきだと思います。県として、大阪・関西万博終了後も和歌山に来てもらえるように、どのような取組をしていく予定でしょうか。地域振興部長にお伺いいたします。
○議長(岩田弘彦君) 地域振興部長。
  〔赤坂武彦君、登壇〕
○地域振興部長(赤坂武彦君) 大阪・関西万博は、本県の魅力を世界に発信できる絶好の機会であると捉え、万博開催前から和歌山の観光資源をPRすることで、万博終了後も行きたい旅先として選んでいただけるよう、取り組んでいるところです。具体的には、本県の観光情報を雑誌やインフルエンサーを活用したSNSで発信するほか、JR西日本グループと連携し、お得に県内を周遊できるデジタルパスを販売するとともに、京阪神をはじめ、広島、博多などの主要駅において、デジタルサイネージ等を活用した本県の魅力を伝える万博プラスワントリップキャンペーンを展開しています。
 また、万博会場においては、県内観光事業者をはじめ、関係者の皆様と一体となって、和歌祭の大神輿披露を皮切りに、多彩なイベントを開催しているところです。10月3日の和歌山DAY特別企画として、高野山への周遊を促すデジタルスタンプラリーを来年2月末まで開催するとともに、宿坊の宿泊券などが当たる企画も実施いたします。さらに、熊野エリアへの周遊を促す取組として、熊野御幸ゆかりの御朱印めぐり帳を配布するなど、万博終了後の来訪にもつながる取組を積極的に行ってまいります。
○議長(岩田弘彦君) 岩永淳志君。
  〔岩永淳志君、登壇〕
○岩永淳志君 御答弁ありがとうございます。
 熊野と高野山という和歌山が誇る観光資源に対して、それぞれ万博終了後にこそ、和歌山に行こうと思えるきっかけづくりを進めていただきたいと思います。また、御答弁の中で、広島、福岡など、ふだん和歌山について注目が集まりにくい地域においても、万博の機会に効果的な広報ができたのではないかと思います。大阪・関西万博会期中にとどまらず、万博をきっかけとして、県内のイベント実施や他分野での国際連携など、本県に還元できることは、むしろ閉会後のここから増えてくることだと思います。
 ですが、このような催事ごとは終わるまでは注目されますが、終わってしまうと尻すぼみになり、せっかく得られた御縁やつながりが薄れてしまう事態が起きかねないと感じております。単発の打ち上げ花火にならないように、来年度以降も見据えて、万博で得られたレガシーを丁寧に引き継いでいくことが大切だと思います。引き続き、よろしくお願いいたします。
 最後に、知事の発信について、知事に対して一つお伺いさせていただきます。
 宮﨑県政になって、3か月がたとうとしております。私も同じく議員としての3か月を過ごしておりますが、県民から寄せられる声を聞くと、宮﨑県政ではどのようなことを実現していきたいのか、宮﨑知事はどのようなことに力を入れていきたいのか、知事のお人柄、キャラクターはどんな人なんだといった、宮﨑知事の県政の姿勢に対する関心の高さを感じております。
 現状、知事から県民の皆さんへ発信している媒体として、知事の記者会見、県公式ウェブサイトでの知事からのメッセージ、広報紙「県民の友」7月号での知事メッセージ等が挙げられると思います。一方で、宮﨑知事は先週の木曜日から、岸本前知事から引き続き、タウンミーティングを行われております。知事が直接県民の声を聞き、思いを伝え、それを生かした県政を共につくることに対する姿勢は、前政権から引き継いでいくものだと理解しております。
 そこで、質問です。
 知事としての発信について、今お話しした現状の発信にとどまらず、より多くの人に見てもらえるように、インスタグラムを使った発信を御活用いただけませんでしょうか。
 インスタグラムとは、スマートフォンで撮影した写真や短い動画を投稿し、世界中の人々や友人、知人と共有するためのSNSです。現在、若い世代に限らず多くの方が新聞やテレビに加え、このインスタグラムを通じて日常的な情報を得ております。よくインスタグラムというと、10代、20代が使っているSNSというふうに言われることもたまにあるのですけれども、参考になるか分かりませんが、私個人もインスタグラムをやっているのですが、そちらを閲覧しているユーザーの中の50%程度が40代から60代の方でして、私のようなインスタグラムでも、若者にとどまらず、言わば現役世代が使っているSNSなのではないかと私は考えております。
 県民の皆様、特にこれからを担う若い世代の皆様との接点を広げ、より身近な存在として宮﨑知事、そして県政への関心を高めていただくためには、こうした新たなツールを積極的に活用していくことが不可欠であると考えております。
 本県のインスタグラムに関しては、Insta_Wakayama和歌山県オフィシャル、和歌山県広報課&きいちゃんなどのアカウントで発信をされており、それぞれフォロワー数も多く、効果的な広報手段であることは間違いないと思います。県知事としての思いや県政の姿勢を多くの県民に直接手軽に知っていただくために、インスタグラムを用いた発信は非常に効果的であると思います。
 そこで、知事にお伺いいたします。
 知事として、特に知事からのメッセージを発信している媒体の現状、県が運営しているインスタグラムの活用状況、そして、それらを踏まえて、知事御自身がインスタグラムなどのツールをどのように活用していきたいのか、お答えください。
○議長(岩田弘彦君) 知事宮﨑 泉君。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○知事(宮﨑 泉君) 岩永議員の御質問にお答えをいたします。
 議員とは初当選の日が同じということでございまして、これからもよろしくお願いいたします。
 私は、県民の皆様の声を聞くこと、そして、現場にしっかり目を向け、共に歩むことを県政の基本姿勢としています。それと同時に、県の政策や私の考えを県民の皆様にお伝えしていくことが非常に大切であると考えています。
 現在、私からの県民の皆様へのメッセージ発信は、タウンミーティングにおいて直接意見交換を行っているほか、定例記者会見や広報紙「県民の友」を通じてメッセージをお届けしています。また、テレビ、ラジオ、県総合情報誌「和-nagomi-」で、県内外で活躍されている方々との対談を通じて、県の政策や私の考えをお伝えするよう努めているところです。さらに、県公式SNSでは、県民サービス、イベント、防災などの生活に役立つ情報に加え、私自身の公務の様子も発信するなど、あらゆる手段を通じてお伝えするよう努めています。
 その中でも、インスタグラムにつきましては、写真や動画で情報を伝えることができるため、特に若い世代の方々にも県政に関心を持っていただく上で有効なツールの一つと位置づけ、活用しております。
 半分が40から60の方ということで、また見直しているところなんですけれども、私は、自分で言うのも何なのですが、元来、地味で内気な人間でありまして、インスタグラムなどにつきましても、世の中に発信していくなどということは、職員時代は考えもしませんでした。しかしながら、今や、この状況でございます。知事となりましたからには、知事としての考えや県の政策は、老若男女を問わずして、全ての県民の皆様にお伝えしていくことが重要であると考えております。ゆえに、各広報ツールの特質を生かしながら、より効果的な情報発信に努めてまいります。
 加えて、議員御案内のインスタグラムを用いた発信については、公務の様子に加え、その際に感じた私の思いなども盛り込んでまいりたい、このように思っております。特に私が現場に足を運び、県民の皆様と直接触れ合う中で感じた思いについて積極的に発信し、県民の皆様に、より県政への関心を高めていただけるように取り組んでまいりたいと考えております。
○議長(岩田弘彦君) 岩永淳志君。
  〔岩永淳志君、登壇〕
○岩永淳志君 御答弁ありがとうございます。
 そうですね、インスタグラムに関しては、現状の今の和歌山県のインスタグラム拝見させていただくと、非常にフォロワー数も多くて更新頻度も高いんですが、写真と、あと報告がすごく多くて、知事も、特にきいちゃんのほうのインスタグラムのほうで写真は拝見しているんですけれども、ただ、その中で知事が何を感じたのか、どういった思いがあるのかといったところをなかなか見る機会が少ないなという声をいただいております。改めて、県民の皆さんは知事がどんな方なのか興味津々ですので、ぜひ知事御自身の内面といいますか思いを発信していただくよう、よろしくお願いいたします。
 御答弁にもありましたが、インスタグラムは写真のみならず、リールという動画を投稿する機能がございます。例えば、知事の言葉を直接動画としてお伝えすることもできますし、様々な様子を動画で、まるでその場にいるかのようにお伝えすることができると思います。現状、和歌山県のインスタグラムは写真を中心にしておりまして、リール動画はほとんど活用されていない状況かと思います。ぜひ知事が率先して動画を使った発信を、私もちょっと頑張りたいと思いますので、共に頑張っていきたいなというふうに思います。
 この答弁をきっかけに、近いうちに、県民がスマートフォンでインスタグラムを開いたときに、画面全体に満面の笑みを浮かべた宮﨑知事が登場して、熱い思いの籠もったメッセージを、たとえ地味で内気であっても関係なしにお話しされる姿を画面越しに見聞きすることができる、そんな日がいち早く来ることを強く願い、以上で、人生初めての質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○議長(岩田弘彦君) 以上で、岩永淳志君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時22分休憩
────────────────────
  午後1時0分再開
○議長(岩田弘彦君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 37番中西 徹君。
  〔中西 徹君、登壇〕(拍手)
○中西 徹君 皆さん、こんにちは。
 それでは、早速ですが、議長の許可を得ましたので、一般質問を始めさしていただきます。
 まず、大項目1、栄養士・管理栄養士の人材確保と教育環境の充実についてをお伺いします。
 和歌山信愛短期大学の学生募集停止による影響についてお伺いします。
 大きな変化として、和歌山信愛短期大学が2025年度の募集を最後に、2026年度以降の学生募集を停止すると、同短大を運営する学校法人が正式発表されています。同短大は本県で唯一の栄養士養成施設であり、学生募集が停止される影響は、極めて大きいと言わざるを得ません。栄養士・管理栄養士の養成施設が全くなくなるのは、全国で和歌山県だけになります。
 学校現場を見てみますと、栄養教諭の本県配置数は2023年時点で48人です。2020年は44人、2021年は47人、2022年は46人、そして、2023年は48人と、僅かながら増加しています。しかし、学校における食育推進のために求められる役割の拡大を踏まえれば、十分とは言えません。また、県の食育推進プランでも、栄養教諭の配置割合を増加し、全ての児童生徒が専門性を生かした食に関する指導を受けられるよう、指導訪問を促進すると明記されています。方向性は示されていますが、行政の受皿縮小が起きる中で、実現可能性をどう担保するかが問われています。つまり、県自身が栄養専門職の確保が難しくなっている現実を前提に、手当てを講じようとしています。
 一方で、管理栄養士国家試験の合格率は、直近、2025年第39回は48.1%、前年、2024年第38回の49.3%からさらに低下し、2年連続で5割未満となりました。養成の難度が高く、量の確保と質の担保を同時に満たすのが難しい現実であります。
 そこで、お伺いします。
 和歌山信愛短期大学の学生募集停止によって、県内における栄養士養成の機会が減少することを県はどのように受け止めているのか、また、その影響についてどのように考えられているのか、福祉保健部長にお伺いします。
○議長(岩田弘彦君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
 福祉保健部長𠮷野裕也君。
  〔𠮷野裕也君、登壇〕
○福祉保健部長(𠮷野裕也君) 栄養士・管理栄養士は、福祉施設や医療施設、小中学校や企業など、様々な場所で食事や栄養に関する指導や管理、食育の推進といった食を通じた健康づくりの重要な役割を果たしています。和歌山信愛短期大学においては、栄養士を目指す学生が学び、専門的な知識と技術を習得し、卒業生の多くは県内に就職している現状を考えると、和歌山県内から養成施設がなくなることは、栄養士の人材確保に一定の影響が出る可能性があると考えています。
○議長(岩田弘彦君) 中西 徹君。
  〔中西 徹君、登壇〕
○中西 徹君 人材確保の影響は出てくると私も思います。和歌山信愛短期大学の学生募集停止により、これまで2年課程で栄養士を志していた若者や社会人は、県外に進学せざるを得なくなります。その結果、人材の県外流出が加速し、県内就職につながらないことが懸念されます。こうした人材不足に対して、県としてどのような対応策を講じるのか。例えば、他の高校、大学との連携強化や県内就職を促す奨学金や修学支援制度、また、社会人が学び直しできる教育機会の確保など、県内で学べる仕組みを維持拡充すべきと考えますが、今後の県の対応方針について、福祉保健部長にお伺いします。
○議長(岩田弘彦君) 福祉保健部長。
  〔𠮷野裕也君、登壇〕
○福祉保健部長(𠮷野裕也君) 隣接する大阪府には16校、奈良県には4校の栄養士・管理栄養士の養成施設がある中、和歌山信愛短期大学の学生募集停止が県内の人材養成や確保にどのように影響してくるのか注視しつつ、医療福祉施設や学校給食の現場などにおける栄養士・管理栄養士の需給動向の把握に努め、他自治体における事例を参考にしながら、今後の対応を多角的に検討してまいります。
○議長(岩田弘彦君) 中西 徹君。
  〔中西 徹君、登壇〕
○中西 徹君 ただいまの答弁では、今後の影響を注視し、他自治体の事例を収集しながら検討を進めていくとのお考えを伺いました。しかし、栄養士を志す若者や社会人にとって、県内で学びの機会を失うことは切実な問題であり、単なる検討にとどまっていては人材流出が一層進むことが懸念されます。例えば、既存の大学や専門機関との具体的な連携強化、奨学金や修学支援制度の拡充、さらには社会人の学び直しも支援する仕組みの構築など、実効性のある施策を早急に打ち出していただきたいと思います。県内で栄養士を目指す意欲のある人材を確実に支えられる環境整備を、ぜひ県としてリーダーシップを持って進めていただくよう強く要望しまして、次の質問に入ります。
 大項目2、高速道路等の沿道における屋外広告物設置ガイドラインについてお伺いいたします。
 和歌山県は、熊野古道や高野山といった世界遺産、さらには南紀白浜の温泉や美しい海岸線など、国内外から注目される観光資源を数多く有する観光立県であります。近年、関西国際空港の利用増加やクルーズ船の寄港などを背景に、外国人観光客、いわゆるインバウンドも大きく増加しています。こうした中で、高速道路沿いの景観は、県外や海外から訪れる人々にとって和歌山の第一印象となり、そのよし悪しが観光地としての評価やリピート率に大きく影響いたします。
 県は、屋外広告物設置ガイドラインに基づき、無秩序な看板の乱立を防ぎ、自然景観と調和した案内広告物を整備する方針を示しています。これは和歌山の豊かな自然や文化を守りながら観光振興を進める上で、極めて重要な取組です。しかし一方で、現場の事業者や観光関係者からは、規制が厳格過ぎて、観光情報や地域産業を十分に発信できないとの声も寄せられています。
 一つ目は、色彩規制です。
 高速道路を走行する観光バスやレンタカーの利用者が瞬時に認識できる案内看板には、ある程度のコントラストやブランドカラーの使用が不可欠ですが、和歌山は彩度規制、面積制限など、数値での明文化された規制があります。他県でも色彩規制の動きが見られますが、和歌山県の規制の明確さと厳格さは比較的際立っているということです。一方、鎌倉市のように、景観への配慮を背景とした行政指導に重点を置く自治体もあり、数値規制以外の方法も一定の効果を上げている自治体も存在します。
 二つ目は、表示内容に関する制限です。
 現行の制度では、観光施設や一定の特産品に限定され、一般の企業名や施設名、商品名は表示が難しい状況です。しかし、観光客にとっては、地元の産業や特産品こそが魅力の対象であり、現場の声を反映した柔軟な制度が求められています。県民の目線で考えれば、看板は地域の顔であり、訪れる人々を最初に迎える案内板であります。とりわけ、外国人観光客にとっては、現地での移動中に目にする看板が観光施設や特産品との出会いのきっかけになります。
 過度に制限された看板は、結果として観光情報の不足を招き、県民が誇る地域の魅力を十分に伝えることができません。むしろ景観保全と情報発信の両立を図ることこそがこれからのインバウンド増加時代における観光立県和歌山の使命であり、観光施設や特産品のみならず、地域の産業や店舗を含めた情報発信を行う仕組みづくりについて検討の余地があると考えます。
 そこで、県土整備部長にお伺いします。
 色彩規制や表示内容制限を見直すことについて、どのような考えをお持ちでしょうか。また、広告主や事業者との対話をどのように進めていくのか、お聞かせください。
○議長(岩田弘彦君) 県土整備部長小浪尊宏君。
  〔小浪尊宏君、登壇〕
○県土整備部長(小浪尊宏君) 議員に御提示いただいた高速道路等の沿道における屋外広告物設置ガイドラインは、高速道路の沿道の屋外広告物が全国的に禁止されてきた中、景観等に配慮しつつ、観光立県にふさわしい案内広告物については認めるべき等との考えに基づき、平成29年に本県が全国で初めて特例的に、その設置を認めることとしたものです。
 具体的には、沿道景観の保全を図りつつ、高速道路を利用して来県される皆様の利便性向上等に資するような、観光地点等の案内広告物について設置を認めるための基準を定めています。当該基準においては、沿道景観の保全のほか、乱立防止や視認性確保等の観点から、学識者や専門家の意見を踏まえ、観光施設や地域資源などに限定した広告物の表示内容、風致・美観の維持や危害の防止等に配慮した規格及び色彩等に関し詳細に定め、分かりやすく統一感のある案内広告物の整備を誘導しています。
 議員御提案のような色彩規制や表示内容制限の見直しにつきましても、これまでの経緯や背景なども勘案し、また、他府県の状況等も参考としつつ、許可主体である市町に加え、専門家や関係団体の意見も聞きながら、適切に判断してまいります。
○議長(岩田弘彦君) 中西 徹君。
  〔中西 徹君、登壇〕
○中西 徹君 よろしくお願いします。
 次の質問に入ります。
 大項目3、教育現場におけるAIの活用についてお伺いします。
 近年、教育現場では、少子化や教員不足、学力格差、そして、子供たちの将来像の多様化といった課題に直面しています。こうした中、生成AIをはじめとする人工知能の発展は、社会のあらゆる分野に変化をもたらしております。デジタル庁、総務省、文部科学省、経済産業省は、2025年6月13日、教育DXロードマップを公開しました。このロードマップは、2022年1月に策定された教育データ利活用ロードマップの改定版であり、過去3年間の成果と課題、また、生成AIをはじめとする技術の進展を踏まえて、今後3から5年で必要となる取組を整理しています。
 今回の改定では、「学ぶ人のために、あらゆるリソースを」という新たなビジョンを掲げ、教育現場のデジタル化を推進するために五つの重点施策、1番、デジタル化による教職員の負担軽減、2番、多様な学びのための学習環境の整備、3番、データによる学習者の自己理解・教師の見取りの充実、4番、生涯を通じて学びのデータを活かせる環境の整備、5番、教育政策や実践にも資する教育データの研究目的の利用が掲載されています。
 文部科学省では、2024年12月に初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドラインを公表し、学校現場における生成AIの適切な利活用を実現するための参考となるよう、利活用に当たっての基本的な考え方や押さえるべきポイントを紹介しています。また、国の実証事業である生成AIパイロット校として、本年度、50の自治体、128の公立学校を指定し、段階的な活用実証を進めています。
 そこでまず、教員の長時間労働とAIによる支援についてお伺いします。
 和歌山県においても長時間労働が問題視されています。教員は本来、子供と向き合い、指導することが最も重要な役割でありますが、現実には、採点や資料作成などの作業に追われ、教育の本質に十分な時間を割けない状況があります。文部科学省の調査では、平日の在校等時間は1日平均約10から11時間程度であり、残業時間が過労死ライン、月80時間を超える教諭は中学校で8.1%に上ると聞いています。
 答案の自動採点やレポートの要約、教材作成補助など、教員が担う作業の一部については、AIの導入によって効率化が図れるものと考えます。例えば、東京都や大阪府の一部では、既にAIを活用した採点補助や学習記録の分析が始まっております。本県においても、教員の負担軽減のため、AIを活用する具体的な取組や導入計画はあるのか、教育長にお伺いします。
○議長(岩田弘彦君) 教育長今西宏行君。
  〔今西宏行君、登壇〕
○教育長(今西宏行君) 県教育委員会ではこれまでも、教員の校務の効率化を目的として、全ての県立高等学校にAIを搭載した自動採点システムを導入するなど、校務DXの推進に取り組んでいます。同様に、県内の8市町でも自動採点システムが導入されています。また、近年急速に進化している生成AIの利便性と懸念点を踏まえながら、授業準備や各種文書の作成といった校務への利活用を推進するため、令和5年度から県内の小中学校等計4校において、国の事業を活用した実証事業を進めているところでございます。
 今後、実証事業の結果を踏まえつつ、各学校において校務の点検を行い、負担軽減効果の高いAIの活用を推進してまいります。
○議長(岩田弘彦君) 中西 徹君。
  〔中西 徹君、登壇〕
○中西 徹君 自動採点システムや生成AIによる校務支援の効果は、現場の教職員の長時間労働是正に直結すると考えますし、実証事業に効果が確認された段階で、できる限り早期に県内全域への拡大を導入していただきたいと考えます。
 次に、AIを活用した学習支援についてお伺いいたします。
 従来の一斉授業では、理解が早い生徒、遅い生徒、それぞれの学習ペースに対応し切れないことが課題でした。AIを活用することで、子供たちの進度や理解度に応じた個別最適な学びが可能となります。AIドリルや学習アプリは、解答データを即時に解析し、弱点克服のための問題を自動的に提示することができます。また、AIは子供の学習状況を可視化し、教師や保護者へのフィードバックも可能です。県内公立学校におけるAI教材の導入状況、今後の拡充方針について、教育長にお伺いします。
○議長(岩田弘彦君) 教育長。
  〔今西宏行君、登壇〕
○教育長(今西宏行君) 令和7年度時点で、県内全ての市町村において、児童生徒の学習状況に応じた学びを支援するAIドリルが導入されています。また現在、国のリーディングDXスクール事業を活用し、県立学校2校で、生徒が生成AIの活用により問題を発見、解決したり、自分の考えを形成したりするなどの教育実践に取り組んでいるところです。
 昨年12月には、文部科学省より、初等中等教育段階における生成AI利活用に関するガイドラインが示されました。県教育委員会としましては、このガイドラインを踏まえ、児童生徒に必要な資質、能力を育むことを第一に、生成AIの教育利用に向けての対応方針を検討し、各学校へ周知してまいります。
○議長(岩田弘彦君) 中西 徹君。
  〔中西 徹君、登壇〕
○中西 徹君 よろしくお願いします。
 次、3番目、AIリテラシー教育についてお伺いします。
 AIが社会に浸透する中で、子供たちがAIを使いこなす力を持つことも不可欠です。単なる利用者としてではなく、仕組みや限界、リスクを理解した上で適切に活用する教育、すなわちAIリテラシー教育が求められます。特に、生成AIは便利である一方、著作権や個人情報、虚偽情報の拡散など、リスクも指摘されています。県としても、安全教育や情報モラル教育の一環として位置づける必要があると考えます。本県の児童生徒に対するAIリテラシー教育の指針や教員研修などの具体的な取組について、教育長にお伺いします。
○議長(岩田弘彦君) 教育長。
  〔今西宏行君、登壇〕
○教育長(今西宏行君) 対話型の生成AIは、近年、急速に社会へ普及しており、その利便性とともに様々なリスクが指摘されています。議員御指摘のとおり、生成AIの仕組みや影響を理解し、適切に活用する力を身につけることは、児童生徒の情報活用能力の育成において重要な課題であると考えております。
 県教育委員会では、全ての公立学校において、きのくにICT教育を推進しており、ICTの基本操作、プログラミングなどと併せて、情報モラルの育成に取り組んでいるところですが、国のガイドラインにおいて生成AIのリスクへの対応が求められており、県教育委員会としては、その対応方針の検討を進め、できるだけ早く周知してまいります。また、児童生徒が生成AIを活用する力を身につけるためには、指導に当たる教員自身の知識・技能の向上が不可欠です。そのため、本年度、生成AIの活用方法や情報モラルに関する研修会を計7回開催し、9月現在で延べ1063人の教員が参加するなど、その指導力向上にも努めております。
 今後とも、社会の変化に対応した児童生徒の情報活用能力の充実と、それを支える教員の指導力向上に取り組んでまいります。
○議長(岩田弘彦君) 中西 徹君。
  〔中西 徹君、登壇〕
○中西 徹君 AIを適切に活用し、教員の負担を軽減しつつ、子供たちの学びを最大化することが、これからの和歌山の教育の大きな鍵となると考えます。県として明確な方針を示し、和歌山から新しい教育のモデルを発信できるよう強く期待して、次の質問に入ります。
 最後、4項目め、公立学校体育館の空調整備についてお伺いします。
 この質問に対しては今まで、たくさんの、先輩議員、同僚議員がされております。2025年の夏は観測史上最も暑い夏となり、西日本でも過去最高を記録しました。和歌山県でも年々気温が上昇し、体育館での活動は熱中症のリスクが高まっています。直射日光で熱が籠もる体育館は、部活動や学校行事において厳しい環境であり、子供たちや教職員の安全を守るためには、抜本的な対策が必要です。活動時間の短縮や大型冷風機の導入といった対応では抜本的な対策になっていないような気がしますし、そう思います。
 文部科学省の最新調査(2025年5月1日現在)によると、全国の公立小中学校の体育館等の空調設備設置率は22.7%。中学校では23.7%に達し、特別支援学校では51%と半数を超えています。また、都道府県別の小中学校の設置率を見ると、東京都では92.5%、大阪府では49.2%。兵庫県では42.3%と、大きく整備が進んでいます。一方で、和歌山県の小中学校の設置率は23.3%と、全国平均の22.7%を少し上回っていますが、小学校に限れば15.1%と、全国平均の22%を下回る状況にあります。
 また、体育館は、災害時の避難所としても機能します。猛暑下での避難生活を考えると、冷房の整備は、命を守る基盤そのものです。猛暑下での避難生活において、冷房設備の有無は、単なる快適さだけではなく、熱中症や持病の悪化を防ぐための不可欠な設備です。体育館の空調整備は、教育環境改善と同時に防災対策でもあります。
 国は現在、2033年度(令和15年度)までの措置として空調設備整備臨時特例交付金を設定しており、避難所指定されている公立小中学校や特別支援学校の体育館の空調整備に対しては、上限額7000万円の半分が補助されます。また、緊急防災・減災事業債を活用すれば、地方交付税で7割が措置されます。これらの制度を積極的に活用し、市町村と県が連携して整備を加速させることで、教育環境と防災力の両方を同時に高めることもできると考えます。平時、災害時の両面においても、空調設備は必要なインフラとして極めて重要であり、県として早急に進めていくべき課題であると考えます。
 私は、2年前に空調整備についての質問をしました。答弁では、「県教育委員会としては、公立小中学校等における空調設備の設置工事に活用できる学校施設環境改善交付金の補助率が2023年から2025年までの期間において3分の1から2分の1に拡充されていることから、市町村教育委員会に対して、さらなる積極的な活用を促していく。また、県立学校においても、国の補助制度等を活用し、大規模改造工事に合わせた空調設備の設置や熱中症対策としてのスポットクーラー等の導入を検討していく」と答弁をいただいています。
 質問ですが、公立学校体育館の空調整備について、現在の進捗状況はどうなっているのか、教育長にお伺いします。
○議長(岩田弘彦君) 教育長。
  〔今西宏行君、登壇〕
○教育長(今西宏行君) 小中学校の体育館の空調整備については、議員御指摘のとおり、本県の設置率は全国平均から見ると低い状況ではございますが、国の交付金等を活用することで、令和7年度と令和8年度において、2市6町46校で空調設備を整備すると聞いております。県立学校につきましては、本年度中に全ての学校の体育館と武道館に大型冷風機を整備する予定です。
○議長(岩田弘彦君) 中西 徹君。
  〔中西 徹君、登壇〕
○中西 徹君 前回の一般質問時からは、空調整備が小中学校とも進んできており、今後は設置に進むということだというふうに思います。小中学校の設置管理は市町村の管轄であることは私も十分承知しています。けれど、市町村の財政力や職員体制には大きな差があり、単独では整備を進められない自治体もあるのではないでしょうか。必要なのは、県が市町村の役割だからと一線引くのではなく、共に取り組む姿勢も必要かと思います。
 体育館は、先ほども申しましたとおり、災害時の避難所にもなりますし、冷房のない体育館で、教育もそうですけども、長期間、避難生活を送ることは、子供や高齢者、病弱な方々にとって命に関わります。これは市町村の問題ではなく、県民の命を守るという観点から、県全体の責任として捉えるべき課題でもあると考えます。だからこそ、交付金事業のある避難所指定校を優先的に整備するよう、県が積極的にリードする必要があると考えます。
 前回の一般質問の答弁では、「新築工事や大規模改造工事に合わせた設置」という言葉もありましたが、新築や改築予定のない学校は長年放置される可能性があります。猛暑は待ってくれません。命を守る環境整備になると思いますので、県として、県立学校だけでなく、市町村の小中学校も含めて、今後、どのような方針で空調整備を進めていくのか、教育長にお伺いします。
○議長(岩田弘彦君) 教育長。
  〔今西宏行君、登壇〕
○教育長(今西宏行君) 県教育委員会といたしましては、災害時のみならず、平時に熱中症から児童生徒を守ることが喫緊の課題であり、根本的な課題の解決には冷房設備が必要であると考えております。このため、市町村教育委員会に対して、議員御指摘の臨時交付金など国の制度のさらなる活用を促し、冷房設備の整備が進むよう、今後とも連携してまいります。
 また、県立学校では、部活動等での体育館の利用が多く、児童生徒の健康を第一に考え、整備に時間を要しない大型冷風機を全ての学校に設置することとしたところでございますが、冷房設備の整備につきましては、学校施設の今後の改修時期等を考慮しながら検討を進めてまいります。
○議長(岩田弘彦君) 中西 徹君。
  〔中西 徹君、登壇〕
○中西 徹君 県立高校は、国からの補助事業とか、なかなか支援がない中で、教育長としても知恵を絞って取り組まれていることには本当に感謝します。
 ただ、まずは県として、いつまでにどの程度の設置率を達成するのかを示すことは必要だと考えます。避難所指定校を最優先にし、例えばPFIといった民間資金の活用など、予算の制限があることも理解できますが、様々な手法を考えながら早急な整備を進めていただきたいと思いますので、これを要望といたします。
 これで、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(岩田弘彦君) 以上で、中西徹君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 26番坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕(拍手)
○坂本 登君 9月議会も一般質問最終日の登壇となりました。皆さん方には、大変お疲れのところと思いますけれども、もう少しの間、御静聴のほど、どうかよろしくお願いをいたします。
 議長のお許しをいただきましたので、質問をさせていただきたいと思います。
 今回は、洋上風力発電について、そしてまた白浜空港の拡張について、教育、米問題について、道路・河川事業の進捗状況について、知事並びに関係部長に答弁を求めたいと思います。
 まず、1点目は、昨年9月議会において質問をいたしました和歌山県沖の洋上風力発電の状況についてであります。
 昨年、私は、我が国のエネルギー事情に鑑み、風力発電の重要性に言及するとともに、内陸部における過度の立地には、周辺地域への影響などから限界がある、特に本県の日高地域、白馬山脈沿いの立地は限界である、この際、今後の風力発電の立地は海に目を向け、洋上発電に活路を見いだしてはどうか、特に日高沖の海上は立地の条件もよく、積極的に取り組んではどうか、具体化に向けては、海域の権利を有する漁業組合との調整や投資の規模等が国家的レベルになることから、国との協議を急がれたいとの質問をいたしました。
 1年がたちました。この間、私たちも先進地である長崎県五島市に現地調査も行ってまいりました。地元の雇用問題や漁業者との調整等に大きな自信を深め、より積極的に取り組むべきと感を強くしたところでございます。
 そこで、質問です。
 この間、県も積極的に取り組んでいると伺っていますが、国、経済産業省との協議はどの程度進んでいるのか、県と漁連との話合いはどの程度進んでいるのか、令和7年度はどのようなレベルまで調査を進めようとしているのか、以上について、関係部長からお答えください。
 次に、白浜空港の拡張計画について、質問いたします。
 紀南地域の発展なくして和歌山県の発展はない。そのためには、観光は聖地リゾート、先進技術にあってはロケットの発射基地の整備、交通インフラにおいては熊野白浜リゾート空港の整備といったプロジェクトは、何としても推進しなければならないと思っております。故岸本知事の県勢発展にかける熱い思いは県民に、とりわけ紀南地域の人々の心を躍らせるものがありました。インバウンド客に沸く全国の観光地の状況を見るにつけ、白浜空港にも国際線が入ってきてくれたらなあとの思いは、地元白浜だけではなく、周辺地域全体の熱い期待となって夢膨らんでおりました。
 こうした流れの中で、県では、滑走路延伸の検討に入っていて、その報告書を目にすることがありました。その内容につきましては、たたき台中のたたき台ともいうべきもので、今後、多方面からの検討を加え、議論を深めていくものと思われます。
 余談になりますが、私は、この報告書と昭和59年から60年の県議会議事録に収められている藁科義清先生の議会演説に目を通しながら、当時を懐かしく思い浮かべております。昭和43年、1200メートルの滑走路で開設された白浜空港は、航空機のジェット化に対応すべく、1800メートルの滑走路の延伸を計画いたしました。周辺地域を含め、幾つかの候補地が挙がる中で、みなべ西地区も有力な候補地となりました。
 藁科先生は、昭和59年、県議会におきましては、空域、騒音、建設費の3点からの問題を論じ、空港建設の適地とはを問いただしました。特に目を引きましたのが、当時にあって、既に飛行機の大型化、それに伴う将来の滑走路の拡張の必要性に触れ、みなべ地区では、周辺の公有地を活用すれば、2500メートル、3000メートルの滑走路を整備することが可能との指摘は、まさに先見の明と驚くばかりであります。昭和59年12月議会、先生は、みなべ地区の優位性を訴え続けましたが、60年2月議会において、現白浜空港の拡張という決定を踏まえ、この決定がよかったかは分からない、10年、20年先の人が決めてくれるでありましょうとの演説で、この問題を締めくくっています。
 令和の時代、再び空港の拡張計画が俎上に上がっております。空港建設を取り巻く状況は、昭和の時代と今日では大きく異なっております。外国からのインバウンド需要が大きくなって、国際化への対応が不可欠となってきたこととは対照的に、日本の人口が将来半減する、私たちの和歌山県も人口激減し、超人口減少時代に対応した地域の在り方を模索することが必要との指摘もなされております。
 全く当時とは前提が変わってしまったのが、本県から30分、白浜からも約2時間のところに、現に関西国際空港が整備・運用されていることなどが挙げられます。一方で、白浜を中心に、白浜空港の利便性を活用したサテライトオフィスの立地など、当時では予測さえできなかった新しい空港需要も生まれてきております。
 現在公表されている拡張計画の概要を大ざっぱに紹介いたしますと、滑走路は、現空港内において500メートル延伸し、2500メートルの滑走路を持つ国際便にも対応できる空港とする。概算の工事費は400億円程度が必要。そのほかに、用地取得、移転補償、騒音対策に係る地域住民の理解、濁水対策などの課題があります。大規模の事業費については、当然、国の補助が必要であります。補助事業採択の条件として、羽田線の利用者が年間50万人以上必要とされております。5年で10万人を目標としています。2024年は過去最高の23万5000人を超える利用者がありましたので、合わせて30万人の利用者を見込んでおります。国際便につきましては、既に中国、台湾、ベトナムからのチャーター便を受け入れていますので、今後も積極的に国際便の確保に努力することなど、計画の前提となっております。
 今後、こうした計画内容が様々な機会、県議会はもちろん、市町村との協議、県民への説明など、広く詳しく説明され、議論、検討されていくことと思います。知事が替わり、また、新しい発想でこの問題を考えるとき、できるだけ新知事の方針決定に制約をかけることを避けたい、自由に新しく自分の宮﨑プロジェクトとして納得のいく計画内容としてほしいと、老婆心ながら、この問題を取り上げました。知事から、白浜空港の滑走路延伸計画について、もっと分かりやすく丁寧に説明していただきたい。
 次に、教育について1点だけ、知事の抱負をお伺いしたいと思います。
 申し上げるまでもなく、教育は百年の大計にとって、もっとも重要な基礎・基盤の一つでありまして、幸い、教育長を経験された宮﨑さんが知事に御就任され、県政全般の中でこの問題を捉え、対応されることになられたことは、関係者、とりわけ長年教育に関わってこられた方、あるいは現に関わっておられる方々は大変心強く、期待も大きいものと思われます。
 去る3月、当時の岸本知事が県の総合教育会議で発言された内容が注目されております。紀伊民報の記事から、その一部を紹介させていただきます。
 「今の学校の教育の在り方は本当にこれでいいのだろうか。受け身で、あらかじめ答えのある問いを解く訓練は百害あっても一利なし。本来の教育は、自ら問いをつくる能力が必要とされている」とし、「これからは、組織に従順で、言われたことをてきぱき処理するだけの人材は要らない。クリエーティブでイノベーションを起こすような創造的で革新的な子供をどう育てるかだ」と述べ、全国学力テストには知事会においても廃止を主張していると発表されたとあります。全国学力テストの廃止は全国の課題であり、文科省の所管でありますので、そうは一気に事が進むとは思いませんが、各都道府県は成績の順位を上げるため、通常の授業にも影響が及び、ひいては子供のいじめ問題等にも影響を及ぼしているような現状を耳にいたします。
 この学力調査の原点は、21世紀を生き抜いていくためには、どのような知性、能力を育てなければならないかを明らかにし、3年に一度、世界各国における必要な知性、能力の育成という課題の達成度を示し、国際社会の教育レベルの向上を図ることにあったはずであります。それが我が国においては、いつの間にか都道府県の学力順位を争う成績競争へとさま変わりし、過度な競争的環境をつくり出してしまいました。岸本知事は、こうした風潮に警鐘を鳴らし、今後、人口規模が減少し、限られた人口で、国民、県民で国や地域を支えていかなければならない現実を踏まえ、真に必要な人材教育とは何かを問いかけたものと思います。
 過度な学力偏重にこだわることなく、本当に大切な問題について、自ら考え、その解決のために行動し、世の中、人のためになるような人材を育てることが重要である。そのためには、それまでの常識や慣習にとらわれることなく、全く新しい発想で豊かな社会をつくり出してくれるような人材をつくり上げていくことを教育の目標にしなければいけないと訓示されたものと思います。岸本知事の志を受け継ぐとおっしゃって知事になられた宮﨑知事、この岸本知事の思いを大切に、本県の教育行政をリードしていってほしいと願っております。知事の所信をお伺いいたします所存であります。
 次に、米の問題であります。
 思わぬところで、我が国の米問題が大きくクローズアップされております。もはや我が国の主食である米が不足するとは、一昔前まで誰もが予想もしなかった事態であります。おかげさまで、多くのことに気づかされました。
 まず、第1点は、やはり我々の主食は米だったんだなあという再認識であります。
 日本人の食生活がパンや麺に頼ることが大きくなり、米離れが急速に進んでいるとの印象が多くの国民の共通の認識かと思っていましたが、米が不足するとの情報が流れるや否や、全国のスーパーやお米屋さんには長蛇の列ができ、改めて日本の主食は、やはり米だったんだと気づかされました。今後、外国産米の輸入が国家的に大きな課題になってくると思いますが、私たちはいま一度、食糧の安全保障という観点から、主食である米に注目し、施策を再構築すべきだと気づかされました。
 二つ目は、米を取り巻く流通の複雑さでした。
 私たちの日常生活にあって、何らかの消費財が今日の米のように価格の高騰や品不足でパニックが起こりますと、もっとスムーズに商品の提供や価格の鎮静化が図られるものと思いますが、テレビなどの報道を見ておりますと、米には幾つもの複雑な流通経路があり、その都度大きな経費や利潤が上乗せされ、我々国民の市場に出回る段階では、大変な高値になっているということであります。もちろん米は日本人の主食として、長い歴史の中で築き上げられた商習慣というものがあって、直ちに簡素にスムーズにとはいかないでしょうが、今日の混乱ぶりを見ますと、いま一度、流通の合理化といったものが必要になってくるのだと思います。
 三つ目は、政府の備蓄米制度の不思議さでした。
 本来、国が行う米の備蓄米制度は、災害など国民生活に大きな影響のある緊急事態に備え、米をストックしておき、状況に応じて国民に配給するというのが制度の趣旨かと思いました。その際の米の価格がどの程度かよく分かりませんが、恐らく緊急時の対応という上からは、時価よりも相当程度引き下げた価格が設定されるのが当然ではと推測します。
 では、今回の米騒動は、国から見た場合、緊急事態という判断にはならなかったのでしょうか。結果的に見れば、当初、政府は流通米業者に対し競争入札という手続を取ることにより、国民に渡る米の値段が高いほうへ高いほうへと上がっていきました。一部の大臣から「国が米でもうけてどうするんだ」という声が上がったとの報道がありましたが、私もそのとおりだと思います。そうした国民の不満を吸い上げ、安い備蓄米を国民に提供した政府の対応は、まさに理にかなった政治だったと思います。
 しかしながら、私たちは、米の値段が下がったから万々歳というわけにはいきません。米は日本の主食であると同時に、日本の農業の根幹であるからであります。米作りの農家の方々が一生懸命いいお米を作ってくださるからこそ、国民は何の心配もなく、米をベースとして食生活を送ることができるのであります。農家の方が米作りに意欲を持って従事できるよう、生産者サイドに立った政策を推進すると同時に、全国津々浦々で荒れ放題になってしまった水田の一部でも、稲穂が実る農村の風景が戻ってきてほしい、生産者、消費者双方が納得する農業政策を確立してほしいと念願する次第であります。
 私は、終始一貫して、1次産業の発展なくして地域の活性化はないと主張をしております。和歌山県は、米のウエートは低いとはいえ、稲作を農業経営に組み入れている農家はたくさんあります。今回の米騒動を踏まえ、今後の本県の稲作農業の在り方を知事にお伺いしたいと思います。
 最後に、県土整備部長にお聞きします。
 日高地方の道路整備につきましては、おかげさまで相当進んでまいりました。今回はおさらいを込めまして、次の道路と河川事業の進捗状況と今後の見通しについてお伺いいたします。
 たかの金屋線道路災害復旧工事、みなべ町に係る箇所、御坊由良線道路改良工事及び地方特定道路改良工事のうち由良町と美浜町に係る箇所、御坊中津線道路改良工事のうち日高川町に係る箇所、四つ目は、西川河川整備事業のうち美浜町に係る箇所、五つ目は、古川河川整備事業のうちみなべ町に係る箇所の以上であります。
 以上で、私の質問を終わります。ありがとうございました。
○議長(岩田弘彦君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
 知事宮﨑 泉君。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○知事(宮﨑 泉君) 坂本登議員には、3点についてお答えをいたします。
 まず、熊野白浜リゾート空港についてでございます。
 熊野白浜リゾート空港は、紀伊半島、とりわけ紀南地域の空の玄関口であります。空港周辺地域には世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」や豊富な温泉、美しい自然などの地域資源が数多く存在し、国内外からの観光客を呼び込む潜在能力が無尽蔵にある地域であります。また、空港から車で1時間半のところには、ロケット発射場スペースポート紀伊があります。今後、ロケット打ち上げの高頻度化、宇宙産業の県内集積が進めば、宇宙関連の観光やビジネス目的でも、国内外の空港利用者の増加が期待されます。
 このような国内外の旅客需要に応え、海外の活力を取り込んだ地域の発展を図るためには、国内線機材の大型化やさらなる国際線の受入れが必要であります。そして、そのためには、滑走路の延伸が必要となります。滑走路の延伸には、環境影響評価に加え、県民、特に地域住民の皆様の理解を得ることが必要です。本年度予算で着手する基本計画の検討の中で、地域住民も含む幅広い関係者の皆様の御意見を伺うこととしております。
 また、年間利用者について、2029年度に30万人、滑走路延伸後に50万人を目標に、航空会社や市町村と連携した利用促進に県庁を挙げて取り組んでおります。
 今後とも、熊野白浜リゾート空港の利用促進に取り組むとともに、南海トラフ地震等、大型規模の災害が発生したときに想定される紀伊半島の救助活動の拠点としての活用も視野に入れ、さらなる機能強化を図りつつ、滑走路延伸に向けた準備を進めてまいりたいと考えております。
 次に、教育についてでございます。
 議員の御質問にある、これまでの常識や慣習にとらわれず、新しい発想で豊かな社会をつくり出してくれる人を育てるということにつきましては、私も思いを同じくするところであります。変化が激しく、先の予想が困難な今の社会では、子供たちの学びに対する姿勢は受け身となってはならないと考えております。近年の学校教育は、教師が教壇に立って、トーク・アンド・チョークで教える、そういったことから子供が自ら学び取ることへと移行していること、そういうことを目指しております。
 本県では、子供たちが地域の方々との活動を通して自ら問いを立て、学ぶ意欲を高め、自ら進んで学習できるように、これまでも授業の改善に取り組んでまいりました。このような探求的な学びによる教育活動によって、子供たちは人や社会との関わりを通して主体的に学ぶ姿勢を身につけ、時代を生き抜く力を培っていくべきものと考えます。ただ、そのためには、やはり地道で反復的な学習を通して基礎的な学力をしっかり身につけることも大切です。
 また、日々進歩するICT技術なども取り入れ、個々の子供の状況に応じた学びの環境づくりも大切であります。そして、何よりも子供たちが一人一人持っている個性を存分に引き出すことができ、誰もが活躍できる社会をつくっていくことこそ大切なことであります。私としては、子供たちにとって何が最適かを常に考え、これまで取り組んできた教育の改革を、教育委員会と方向性を共有しながら着実に進めてまいります。
 次に、米についてであります。
 最初に、議員の1次産業の振興なくして地域の活性化はないという御発言は、私も同感であります。各地でも訴えてまいりました。地域経済を支えている基幹産業として、農林水産業の振興に一生懸命取り組んでまいる所存であります。
 本県の水田農業につきましては、御承知のとおり、小規模で不整形な水田が多く、農家1戸当たりの経営面積も小さいため、水稲だけでは経営維持が困難であります。このため、県といたしましては、米作りと収益性の高い野菜や花卉などを組み合わせた複合経営を推進してきたところであります。
 米の生産に関しては、耐暑性や食味等に優れた品種の選定と普及に取り組むとともに、米の売上げ減少時の補塡金制度などの活用を推進しています。また、増産を目指す生産者に対しては、農地中間管理事業による農地集積や各種補助事業を活用した機械設備の導入を支援しているところです。一方で、国においては、現在、作物ごとの生産性向上支援策やセーフティーネット対策などの新たな水田政策に加え、生産者と消費者双方が納得できる合理的な価格形成等について検討されております。
 こうした国の動きを注視しながら、本県の稲作農業に有利な政策を積極的に取り入れるなど、生産者が意欲を持って米作りを続けられるよう対応してまいります。これまでも、もうかる農業の実現に向けて頑張る生産者の取組を応援してまいりました。今回、改めて、稲作について課題と重要性が大きく取り上げられました。和歌山県としても、今後より一層力を入れて、稲作を含めた農林水産業の振興に取り組んでまいります。
 以上であります。
○議長(岩田弘彦君) 商工労働部長中場 毅君。
  〔中場 毅君、登壇〕
○商工労働部長(中場 毅君) 洋上風力発電に係る県の取組についてお答え申し上げます。
 まず、国、経済産業省との協議の状況ですが、県から国へは随時、洋上風力発電事業の検討状況について情報提供を行っております。その結果、昨年9月27日には、和歌山県沖の2海域が洋上風力発電事業の準備区域として、経済産業省及び国土交通省により整理、公表されました。
 次に、県内漁業関係者との話合いの状況ですが、昨年度より、わかやま洋上風力検討会を県の漁業協同組合連合会と共同で設置し、検討会、漁業関係者向け勉強会、漁業者向けアンケートなどを行っています。また、事業検討エリアの精査が必要なため、現在、県内全20漁協に御協力をいただき、漁業操業の実態について対面での聞き取り調査等を行っているところです。
 今後は、収集した情報を整理し、事業検討エリアのより具体的な精査や関係する方々との対話を行ってまいります。次のステップである有望区域化を目指して、引き続き、関係する方々の御意見を丁寧に伺いながら、洋上風力発電事業について着実に検討を進めてまいります。
○議長(岩田弘彦君) 県土整備部長小浪尊宏君。
  〔小浪尊宏君、登壇〕
○県土整備部長(小浪尊宏君) 日高地方における道路事業と河川事業の進捗状況と今後の見通しについてお答えします。
 まず、たかの金屋線道路災害復旧工事のみなべ町高野地内につきましては、地滑り運動を抑止するためのグラウンドアンカー設置工事などを推進しており、令和8年度に完了する予定です。
 御坊由良線につきましては、由良町大引から小引間において、事業延長約2.1キロメートルのうち、おおむね7割に当たる約1.4キロメートルが完成しています。今年度は、残る区間のうち、約0.4キロメートルの路側工事や舗装工事を実施しており、このうち小引側の約0.2キロメートルが年内に完成する予定です。また、美浜町三尾地内においては、事業延長約0.3キロメートルのうち、おおむね8割に当たる約0.2キロメートルが完成し、今年度は残る区間の用地取得を実施しています。
 御坊中津線につきましては、日高川町下田原から上田原間において、事業延長約2.4キロメートルのうち、おおむね5割に当たる約1.1キロメートルが完成し、今年度は残る区間の用地取得と下田原地内の山切り工事を実施しています。
 続きまして、西川の河川整備につきましては、平成28年に策定した日高川水系河川整備計画及び本年9月に策定した西川流域水害対策計画に基づき実施しており、整備区間の約4.8キロメートルのうち、おおむね3割に当たる約1.6キロメートルが概成しています。今年度は、残る区間のうち、蟹田橋の架け替え工事及び下流の河道掘削や護岸工事を実施しています。
 古川の河川整備につきましては、平成17年に策定した南部川水系河川整備計画に基づき実施しており、整備区間の約3.1キロメートルのうち、おおむね9割に当たる約2.8キロメートルが概成しています。今年度は、残る区間のうち、舟倉橋上流の護岸工事を実施しています。
 いずれの事業も、県土の強靱化に資するとともに、経済、観光、生活を支える重要なものであり、本年6月に閣議決定された第1次国土強靱化実施中期計画に関連する予算措置も含め、様々な機会を通じて予算を確保し、一日も早い完成を目指し、事業を推進してまいります。
○議長(岩田弘彦君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(岩田弘彦君) 再質問を許します。
 坂本 登君。
  〔坂本 登君、登壇〕
○坂本 登君 それぞれ力強い答弁をいただき、ありがとうございました。今後、県勢のさらなる発展のため、関係者の一層の御奮闘をお祈りし、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
○議長(岩田弘彦君) 以上で、坂本登君の質問が終了いたしました。
 お諮りいたします。質疑及び一般質問を終結することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(岩田弘彦君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決定いたしました。
 次に日程第3、議案の付託について申し上げます。
 配付しております議案付託表のとおり、議案第120号から議案第135号までを所管の常任委員会に付託いたします。
 お諮りいたします。9月22日及び24日は常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(岩田弘彦君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決定いたしました。
 次会は、9月25日定刻より会議を開きます。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時18分散会

このページの先頭へ