令和7年9月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(全文)


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令和7年9月 和歌山県議会定例会会議録 第4号

議事日程 第4号
 令和7年9月18日(木曜日)
 午前10時開議
 第1 議案第120号から議案第137号まで(質疑)
 第2 一般質問
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会議に付した事件
 第1 議案第120号から議案第137号まで(質疑)
 第2 一般質問
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出席議員(40人)
 1番 高田英亮
 2番 上山寿示
 3番 佐藤武治
 4番 鈴木德久
 5番 森 礼子
 6番 濱口太史
 7番 井出益弘
 8番 尾崎要二
 9番 玄素彰人
 10番 山家敏宏
 11番 鈴木太雄
 12番 岩田弘彦
 13番 吉井和視
 14番 中村裕一
 15番 北山慎一
 16番 坂本佳隆
 17番 中本浩精
 18番 堀 龍雄
 19番 新島 雄
 20番 山下直也
 21番 三栖拓也
 22番 川畑哲哉
 23番 秋月史成
 24番 谷口和樹
 26番 坂本 登
 27番 岩永淳志
 28番 小川浩樹
 29番 中尾友紀
 30番 岩井弘次
 31番 藤本眞利子
 32番 浦口高典
 33番 尾﨑太郎
 34番 藤山将材
 35番 小西政宏
 37番 中西 徹
 38番 林 隆一
 39番 片桐章浩
 40番 奥村規子
 41番 谷 洋一
 42番 長坂隆司
欠席議員(1人)
 25番 山田正彦
〔備考〕
 36番 欠員
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説明のため出席した者
 知事         宮﨑 泉
 副知事        友井泰範
 知事室長       北廣理人
 総務部長       山本祥生
 危機管理部長     中村吉良
 企画部長       北村 香
地域振興部長     赤坂武彦
 環境生活部長     湯川 学
 共生社会推進部長   島本由美
 福祉保健部長     𠮷野裕也
 商工労働部長     中場 毅
 農林水産部長     川尾尚史
 県土整備部長     小浪尊宏
 会計管理者      高橋博之
 教育長        今西宏行
 公安委員会委員    岸田正幸
 警察本部長      野本靖之
 人事委員会委員長   平田健正
 代表監査委員     田嶋久嗣
 選挙管理委員会委員長 和歌哲也
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職務のため出席した事務局職員
 事務局長       中嶋 宏
 次長         橋爪正樹
 議事課長       岩井紀生
 議事課副課長     田中 匠
 議事課議事班長    川原清晃
 議事課主査      川崎競平
 議事課副主査     西 智生
 議事課副主査     林 貞男
 総務課長       榊 建二
 政策調査課長     岩谷隆哉
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  午前10時0分開議
○議長(岩田弘彦君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第120号から議案第137号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、併せて日程第2、一般質問を行います。
 21番三栖拓也君。
  〔三栖拓也君、登壇〕(拍手)
○三栖拓也君 皆様、おはようございます。自由民主党県議団の三栖拓也です。
 令和7年9月議会におきまして、このように質問の機会をいただきましたこと、感謝申し上げます。早速ですが、議長のお許しをいただきましたので、通告に従い、一般質問を行います。
 去る令和7年8月29日に、気象庁が「黒潮大蛇行の終息について」というニュースリリースを行い、過去最長の7年9か月続いた黒潮大蛇行が4月に終息したことを発表しました。
 黒潮の大蛇行は、海況の変化を通じて漁場形成や資源動向に影響しただけでなく、本県の気象条件や観光、流通など、地域経済全般にも少なからぬ影響を与えてまいりました。地理的に黒潮の影響を多く受ける和歌山県において、その影響をどう捉え、今後の展望をどう見ていくべきなのかについて考えてみたいと思います。
 私自身、西牟婁地域の沿岸部で生まれ育ち、子供の頃から海に親しみ、また、水産業をはじめ、海の幸を生かした飲食業やホテル、旅館等の宿泊業に携わる方々に囲まれた環境で過ごしました。
 昔から、黒潮という言葉は当たり前のように耳にしていて、生活に密接している存在だと認識をしていたように思います。
 それもそのはずで、歴史をひもといてみても、和歌山県の紀南地域は古来より黒潮の恩恵を大きく受けて発展してまいりました。
 黒潮は、海の大動脈とも呼ばれる日本有数の暖流であり、紀伊半島沖を流れることで豊かな漁場を形成し、多様な水産資源をもたらしてきました。そのおかげで、本県は古くから漁業や流通、そして海の幸を基盤とした食文化を育んできたところであります。
 また、黒潮がもたらす温暖な気候は、農業や観光にも寄与し、地域経済の発展に欠かせない自然の恵みであると言えます。
 しかしながら、その黒潮は、常に一定の流路を保つものではなく、時に大きく蛇行し、沿岸の海況や気候に影響を与えることが知られております。
 今回発生した黒潮の大蛇行について少し御説明をいたしますと、本来、黒潮は紀伊半島沖を沿岸に沿って流れているものですが、平成29年夏以降、実に7年9か月もの長きにわたって、紀伊半島沖から東海沖にかけて南に大きく離岸して流れる、いわゆる大蛇行の状態となっておりました。この黒潮の大蛇行により、黒潮と本州の間に冷たい水が湧き上がり、紀伊半島沖の海域には、その塊である冷水塊が発生して水温が低下し、さらに、東海から関東の沿岸では、蛇行した黒潮が直撃し水温が上昇するなど、漁場環境が大きく変化いたしました。
 さらに、黒潮の蛇行は気象条件にも影響し、降雨や台風の進路にも変化を与えるなど、漁業のみならず、農業や観光を含む地域経済全般に少なからぬ影響を及ぼしたものと考えられます。
 では、その黒潮大蛇行が本県の漁業に対して具体的にどのような影響を及ぼしたのでしょうか。
 近年、本県の特産である「姫ひじき」に代表される海藻類やイセエビなどの不漁が続いております。その要因は様々あると推察されますが、黒潮の大蛇行による海水温の変化など、海況に与えた影響が大きかったのではないかと考えます。
 一方、カツオやマグロといった魚種については、黒潮の内側反流が本県沿岸に流れ込んだり、黒潮が熊野灘に接近したりすると、沿岸域の海水温が上昇して、カツオやマグロの漁場が形成され、豊漁が続きましたが、今年は水揚げ量が少ない状況となっているそうです。地元のカツオ漁師に話を聞いてみても、「今年はカツオが少ない」と口をそろえておっしゃっておられました。
 黒潮の大蛇行により、カツオの水揚げが増えていたとも考えられるとすれば、蛇行が終息することが漁業者にとってよい影響ばかりではないと言えます。
 いずれにしても、気象庁は、本年、この黒潮大蛇行が終息したと正式に発表いたしました。先ほど申し上げたとおり、県内の漁業者からは、期待の声もあれば不安の声も聞かれるところであり、地域としても漁業経営の安定化や資源回復につなげていくためにどうすればいいか、真剣に考えていかなければなりません。
 そのために、今回の終息を契機として、これまでの影響を正確に検証し、今後の施策につなげていくことが求められているのではないでしょうか。黒潮は、恩恵と影響の両面をもたらす存在であり、その動向を正確に把握し、的確な情報提供と予測を行うことがこれまで以上に重要になっていると考えます。
 そこで質問です。
 黒潮大蛇行の終息について、県の水産試験場におけるモニタリング等を通じ、今後の海況についてどのように推移すると予測をしているのか。また、大蛇行がこれまで漁業に与えてきた影響をどのように把握し、今後どのような見通しを持っているのか、農林水産部長の御所見を伺います。
○議長(岩田弘彦君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
 農林水産部長川尾尚史君。
  〔川尾尚史君、登壇〕
○農林水産部長(川尾尚史君) 県水産試験場では、黒潮系暖水の分布状況等を継続してモニタリングするとともに、関係県等と共同で黒潮の流路を推定し、得られた海況情報をホームページ等により漁業者に提供しているところです。
 黒潮大蛇行が終息した後の海況については、国の研究機関と共同で予測を行い、黒潮の流路は潮岬沖で僅かな離岸はあるものの、おおむね接岸傾向で推移すると見込んでいます。
 黒潮大蛇行による漁業への影響については、紀伊水道側では、暖水の流入が減少したこと等により、大蛇行前に比べ漁獲量がマルアジで約7割、イサキで約5割減少していましたが、今後は暖水が安定的に流入することで漁場の形成条件が好転すると見通しています。
 また、熊野灘側では、黒潮の離岸によるイセエビ幼生の来遊量の減少及び暖水が熊野灘へ反時計回りに流れ込む内側反流による水温の上昇等により、大蛇行前に比べ漁獲量がイセエビで約6割、ヒジキで約8割減少していましたが、今後はこれらの影響が解消されることで漁獲量が回復傾向に向かうものと見込んでいます。
 一方、カツオにつきましては、内側反流により漁場形成が良好であったことなどにより、大蛇行前に比べ漁獲量が約7割増となっていました。本年は春季が比較的好漁であったため、8月現在の漁獲量は800トンを超えており、大蛇行中と同程度となっておりますが、6月以降の漁獲量が減少していることから、今後の漁獲量への影響について注視する必要があると考えています。
 過去には終息後1年5か月で再び大蛇行が発生したこともあったことから、引き続き、関係県等と連携して黒潮の動向について注意深くモニタリングするとともに、漁業者等への適切な情報提供に努めてまいります。
○議長(岩田弘彦君) 三栖拓也君。
  〔三栖拓也君、登壇〕
○三栖拓也君 御答弁いただきました。
 今の答弁の中にもあるように、モニタリングをしっかりとしていただいて、現場の漁業者の皆様に情報を提供していただいて、その黒潮の流れというのが本当に漁獲に直結している大変重要な情報であると思いますので、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。
 次の質問に移ります。
 先ほどの質問でも少し述べましたが、本県におけるカツオの水揚げ量というのが近年増加傾向にありました。これには幾つかの要因があると考えられますが、まずは今の黒潮の大蛇行によるもの、そして次に漁法の転換です。
 本県におけるカツオ漁は、伝統的なケンケン漁に加え、近年はハネ釣りと呼ばれる一本釣りによる漁獲も多く見られるようになりました。こうした漁法の転換もあり、近年のカツオの水揚げ量は増加傾向にありました。
 そして、もう一つは、今回の質問で取り上げる表層型浮魚礁の整備による効果です。
 カツオ漁師は、群れを探し求めて早朝から沖に出て漁に向かいます。しかし、うまくカツオの群れを見つけられずに空振りすることも多かったと聞きます。私も、幼少期にカツオ漁船に乗り、漁に連れていってもらったことがありますが、船舶無線で絶えず仲間の漁師とやり取りをしながらカツオの群れを探している様子が今でも印象に残っています。できることなら、目印となる漁場があり、そこで安定的に、かつ効率的に漁ができればどれほどよいか、想像に難くないと思います。
 このように、本県の沿岸・沖合漁業にとって、カツオやマグロの漁場確保は極めて重要な課題でありました。これら高度回遊性魚類は黒潮に沿って移動するため、その漁獲は自然環境の影響を強く受けやすく、漁業者にとっては燃油価格の高騰なども相まって、安定的かつ効率的に操業できる漁場の確保がますます重要となっております。
 そうした中で、県は、平成30年から表層型浮魚礁の整備に着手し、これまでに紀南海域に6基を設置してまいりました。表層型浮魚礁は、表層を遊泳するカツオやマグロなどの回遊魚を魚礁周辺に滞留させる効果を持ち、操業効率の向上と資源の安定的利用につながる新しい仕組みであります。設置された6基は、いずれも紀南の漁場形成に寄与し、漁業者からは、漁場が分かりやすくなり、燃油削減にもつながった、漁獲が安定したという評価が寄せられていると承知しております。
 また、この取組は、単なる漁獲の増減にとどまらず、カツオやマグロの漁場を地域近海に創出させるという効果をもたらし、結果として、漁業者の操業の安定化、さらには地元市場への水揚げ増加による地域経済の活性化にもつながっています。
 もっとも、漁業を取り巻く環境は依然として厳しく、資源変動や気候変動による不確実性は大きく残されています。特に、先ほど取り上げた黒潮の大蛇行のように、海況を一変させる現象が再びいつ起こるとも限りません。こうした不確実な海況変動に備える意味でも、効率的かつ安定的な操業を可能にする表層型浮魚礁の整備は今後さらに重要性を増すものと考えます。
 そこで質問です。
 これまで設置してきた表層型浮魚礁6基の整備効果を県としてどのように評価しているのか。また、今後さらなる魚礁整備を拡充していく考えはあるのか、農林水産部長にお伺いいたします。
○議長(岩田弘彦君) 農林水産部長。
  〔川尾尚史君、登壇〕
○農林水産部長(川尾尚史君) 県では、表層型浮魚礁の設置を望む漁業者からの多くの声を受け、これまでに枯木灘側に4基及び熊野灘側に2基をそれぞれ配置してまいりました。
 浮魚礁設置数の増加とともに、県内のカツオやマグロの漁獲量も増加し、設置前の平成26年から平成30年までの5年間の平均では825トンであったものが、設置後の令和元年から令和5年までの5年間の平均では1777トンと、約2倍になっております。
 また、浮魚礁周辺が漁場となることで、カツオやマグロを対象とした漁業者の操業効率の向上にもつながっているものと考えており、利用する漁業者数も増えていることから、大きな効果があったものと自己評価しています。
 今後の整備につきましては、黒潮の流路など、海況が変化しやすい状況にある中で、効率的かつ安定的な操業が期待できる表層型浮魚礁の役割はますます重要になると考えており、現在、熊野灘側に2基増設するための測量業務に着手しているところです。
 今後も、早期設置に向けて取組を進めるなど、漁業の振興に努めてまいります。
○議長(岩田弘彦君) 三栖拓也君。
  〔三栖拓也君、登壇〕
○三栖拓也君 御答弁いただきました。
 この表層型浮魚礁というのが漁業者にとっては非常に効果が大きくて、欠かせない漁場となっていると思います。今、さらなる増設に向けて着手をしていただいているという御答弁いただいています。大変ありがたいことでございます。この場をお借りしてお礼を申し上げるとともに、より一層の漁業振興に努めていただけるようお願いを申し上げたいと思います。
 では、次の質問に移ります。
 続いては、磯焼け対策の現状と今後の展開についてお伺いをいたします。
 本県の豊かな沿岸は、古くから、アワビ、サザエやイセエビなどの磯根資源に恵まれて、地域の水産業や食文化を支えてまいりました。これらの資源を育んできたのが藻場であります。藻場は、魚介類の産卵・生育の場として機能するとともに、海の生態系全体を支える基盤として極めて重要な役割を果たしております。
 しかし、近年、全国的に磯焼けと呼ばれる藻場の衰退現象が深刻化しており、本県においても例外ではありません。
 磯焼けとは、本来、ホンダワラ類やカジメ、アラメといった大型海藻が繁茂して藻場を形成していた沿岸域において、海藻が著しく減少・消失し、岩盤が裸地化する現象を指します。岩礁がむき出しのような状態となり、稚魚や稚貝の隠れ場や餌が失われることで、アワビ、サザエやイセエビなど磯根資源や沿岸魚類の再生産が難しくなります。その結果、地域の沿岸漁業に深刻な打撃をもたらすとともに、生物多様性の劣化を招く重大な問題であります。
 和歌山県の調査によれば、沿岸の大型海藻藻場は過去13年間でおよそ7%が消失したと報告されております。要因としては、海水温の上昇、黒潮の流路変動に伴う海況の変化に加え、アイゴやイスズミといった植食性魚類による食害が挙げられており、藻場の減少は沿岸漁業に大きな打撃を与えております。
 例えば、地元の漁業者や漁協が中心となって食害生物の駆除活動を継続的に行い、局所的には藻場が回復しつつある事例もございますが、磯焼けの進行を食い止めるには至っておりません。漁業者からは、アワビ、サザエやイセエビの漁獲量が目に見えて減っているとの声もあり、生計に直結する課題となっております。
 県においても、この藻場の造成事業を進めており、直近の令和6年度の事業実績では、5市町で事業を実施し、総額1211万円を投じ、藻場再生の取組を展開していることが公表されています。海藻種苗の設置などにより、一定の効果が確認されておりますが、依然として広域的な磯焼けの進行を食い止めるには十分と言えません。
 そこでお尋ねいたします。
 本県沿岸における磯焼け対策の現状はどうなっているのか。さらに、今後どのように事業を展開していくのか、農林水産部長にお伺いします。
○議長(岩田弘彦君) 農林水産部長。
  〔川尾尚史君、登壇〕
○農林水産部長(川尾尚史君) 県内におけるヒジキやテングサなどの海藻類の漁獲量は、最盛期の昭和49年には2829トンであったものが、磯焼けの進行などにより、令和5年には199トンにまで減少しています。
 また、令和5年度から令和6年度に、衛星画像解析等により本県沿岸域における藻場の分布状況を調査したところ、県内の藻場面積は約2318ヘクタールであり、藻場の衰退要因については、高水温や海藻を食害する魚類の影響が大きいことが判明しました。
 県では、磯焼けが深刻化し出した平成19年度から、磯根漁場再生事業により漁場の回復に取り組む市町等に対して、海藻の移植など様々な支援を行うとともに、高水温に強い海藻の探索や作出、高水温下における藻場の維持技術などの研究に取り組み、一定の成果が見られています。
 昨年度には、藻場の再生方法について有識者による検証を行い、高水温に強い海藻の移植と食害魚への対策を組み合わせた手法が有効であると評価されたところです。
 今後は、これらの調査や検証の結果を市町や漁協と共有した上で、本年度から支援メニューを拡充した沿岸漁業の再生を目指した漁場整備事業の活用を働きかけるとともに、継続的な藻場のモニタリングや高水温適性株等の研究成果の普及に努めるなど、引き続き、現場と連携した磯焼け対策に積極的に取り組んでまいります。
○議長(岩田弘彦君) 三栖拓也君。
  〔三栖拓也君、登壇〕
○三栖拓也君 この藻場の再生というのは、漁業の再生と言っても過言ではないぐらい重要なことだと思います。これをしっかりと県として取り組んでいただければ、黒潮の大蛇行も終わって海況もこれから好転していくというような期待感が持てる中でございます。今こそチャンスと思いますので、ぜひとも一層の取組をお願いしたいと思います。
 では、続いての質問に移りたいと思います。
 大項目二つ目、地域医療の在り方についてをテーマに、本県における地域医療の現状と課題について質問をいたしたいと思います。
 本県では、国の医療法に基づいて地域医療構想を策定し、2次医療圏ごとに将来の人口動態や疾病構造の変化を踏まえた医療提供体制のあるべき姿を示しております。
 田辺医療圏域においては、高度急性期、急性期、回復期、慢性期といった機能を適切に分化・連携させ、地域の誰もが必要なときに必要な医療を受けられる体制を確保することが目標とされています。特に田辺医療圏域では、紀南地域の中心圏域として救急医療や災害時医療にも対応できる基幹的な病院と、地域に根差した診療所や介護施設との連携を強化することが地域医療構想における基本的な方向性であると承知をしております。
 では、現状はどうでしょうか。
 私の地元である白浜町において、先日、白浜はまゆう病院が第三セクターを解消し、町が財団法人から脱退する旨の発表がなされました。これにより、白浜はまゆう病院は民間病院として運営をしていくことになります。
 ここで、少し過去の経緯を整理したいと思います。公益財団法人白浜医療福祉財団が運営する白浜はまゆう病院は、1993年に開設され、元国立白浜温泉病院跡地を活用して、第三セクター方式で始まりました。1994年に最初の47床で開設され、その後、96床、さらに145床への増床やリハビリ病棟等の整備が行われてきました。現在、一般病床82床、回復期リハビリテーション病床48床、地域包括ケア病棟32床、医療療養病棟48床、介護医療院48床の合計258床を抱える規模にまで拡大しております。
 また、白浜に位置しているということもあり、温泉を活用したリウマチ治療やリハビリテーションなど、回復期や慢性期といった医療機能を担う地域特性を生かした密着型の病院運営をしてこられたと承知をしております。
 加えて、白浜町は観光地であり、年間を通じて国内外から多くの観光客を迎え入れています。観光産業は、町の基幹産業であり、そこで安心して滞在していただくためには、突発的な病気やけがに対応できる医療体制の存在が不可欠です。24時間365日、はまゆう病院は、救急や一般診療を通じて観光客を受け入れることで、ホテルや旅館をはじめとする観光産業を下支えしてこられました。したがって、同院の機能縮小や経営不安は、地域住民の生活にとどまらず、観光産業の持続性にも直結する重大な問題であります。
 では、なぜこのような事態になってしまったのでしょうか。地元紙によると、「看護師不足による稼働病床数の制限などで、病院は23年度、24年度の2年間で計約11億円の赤字となった。預金は、この2年間で約10億円取り崩しており、現在の残高は約10億円」という厳しい経営実態が明らかになりました。
 白浜はまゆう病院の経営収支の悪化を受け、町や病院関係者による協議の末、白浜町が病院の運営団体である白浜医療福祉財団から脱退し、第三セクターによる運営が解消されたということです。
 町としても、前述のとおり、はまゆう病院の果たす役割が地域にとって大変重要であると認識をし、白浜医療福祉財団から脱退したとしても、病院経営の改善に向けた支援は継続する意向を示しています。
 しかし、これまでに医師数名が退職したようであり、今後の見通しに不安を覚える住民もいるのも事実です。実際、白浜はまゆう病院が今にも運営不能に陥るかのようなうわさも飛び交い、病院の存続を願う嘆願書の署名活動を行う動きも出てきています。事実とは異なる話が広まることで、必要以上に住民の不安をあおるのは看過できないものです。
 そこで質問です。
 本県では、地域医療構想に基づき地域医療体制の確保を図っていると承知をしているところですが、今回のはまゆう病院の件において地域医療に影響を及ぼすことがないか、多くの住民が高い関心を寄せておられます。地域に暮らす住民にとって、安心して医療が受けられるのは不可欠です。田辺医療圏域における医療提供体制の現状について福祉保健部長に伺います。
○議長(岩田弘彦君) 福祉保健部長𠮷野裕也君。
  〔𠮷野裕也君、登壇〕
○福祉保健部長(𠮷野裕也君) 田辺医療圏では、救命救急センターを持つ南和歌山医療センターと、地域周産期母子医療センターである紀南病院を中心に急性期医療が提供されています。また、リハビリや長期療養患者に対する医療を民間病院が担うなど、八つの病院の間で機能分担と連携が確保されている状況です。その結果、田辺医療圏では、入院の圏域内完結率が9割を超え、高度急性期から慢性期に至るまでの医療が提供できていると認識しています。
 議員御指摘のとおり、田辺医療圏を支える病院の一つである白浜はまゆう病院において経営体制の変更がありましたが、現時点で圏域の医療体制に直接的な影響を及ぼすものではなく、引き続き、八つの病院間で連携を図っていくことで適切な医療提供体制が確保できると考えます。
 なお、田辺医療圏の病床数は、地域医療構想で定める必要病床数と比べると、急性期病床が242床過剰である一方、回復期病床が59床不足しており、全体として178床が過剰となっています。そのため、より効率的で質の高い医療提供体制の構築に向け、引き続き、急性期から回復期への病床の機能転換や病床数の適正化に取り組んでまいります。
○議長(岩田弘彦君) 三栖拓也君。
  〔三栖拓也君、登壇〕
○三栖拓也君 御答弁いただきました。
 今の答弁によりますと、田辺医療圏域においては医療提供体制が比較的恵まれていること、それゆえに、はまゆう病院の経営の体制の変更というのが直ちに地域医療全体に影響するものではないというお話がありました。病床数にも余裕があって、現時点では和歌山市に次ぐ入院医療の体制が整っている田辺医療圏ということで、住民の皆様が不安に感じられている部分について、まずは安心をしていただけるような、そんなお話であったと思います。
 とはいえ、県としても、一つの一病院の問題だということで突き放すことではなくて、県民生活に直結する医療の問題に関することですので、医療圏域内での調整だったり、その支援に取り組んでいただきたいと思います。
 では、次が最後の質問になります。
 先ほどは、地域医療の現場についてお伺いをいたしました。今度は、将来にわたって地域の住民が安心して医療を受けられる体制の構築について、県としての考えをお伺いいたします。
 先ほど福祉保健部長から答弁のあったとおり、田辺医療圏は紀南地域全体の医療を支える中核圏域であり、南和歌山医療センターと紀南病院を2本柱としながら、民間病院や診療所も含めた医療機関群によって体制が構築されております。
 令和6年7月1日時点の病床数は、高度急性期113床、急性期646床、回復期281床、慢性期243床、分類なし8床の合計1291床と報告されております。地域医療構想で定められた2025年の必要病床数は合計1113床とされており、将来的には一定の最適化が求められる見通しではありますが、現時点においては十分な病床機能が確保されており、圏域住民にとって心強い体制であると評価できます。
 このため、白浜はまゆう病院をめぐる経営問題が注目を集めておりますが、先ほどの答弁にもありますとおり、それ自体が直ちに田辺圏域全体の医療提供体制を揺るがすものではありません。南和歌山医療センターや紀南病院を中心とする基幹病院、さらに、地域に根差した民間病院が連携し、救急や高度医療、回復期、慢性期を担う仕組みはきちんと機能しており、現状において田辺医療圏全体が崩壊の危機にあるわけではないということを改めて確認すべきと考えます。
 しかしながら、将来を見据えれば、状況は決して楽観視できません。人口減少と高齢化の進行に伴い患者数は減少傾向にあり、それに比例して診療報酬収入も減少することが予想されます。一方で、人件費や資材価格の高騰が経営を直撃しており、各病院の経営努力だけでは対応し切れない構造的な課題も浮き彫りになっております。
 今般、このはまゆう病院の経営問題が大きく取り沙汰され、大幅な赤字を計上したということですが、これは決して例外ではなく、ほかの病院においても経営のかじ取りが極めて難しい状況にあるのではないでしょうか。
 こうした状況が続けば、病院経営が立ち行かず、閉院や縮小を余儀なくされる事態も現実味を帯びてまいります。また、医師や看護師など医療従事者の不足によって外来診療の縮小や入院患者数の制限を行わざるを得なくなる可能性も否定できません。その結果として、命に直結する救急患者の受入れが制限されたり、緊急手術や専門的治療が円滑に行えなくなったりするなど、地域住民の安全・安心に重大な支障を来すおそれがあると強く危惧するところであります。
 さらに、田辺医療圏は、白浜町という全国有数の観光地を抱えています。年間を通じて国内外から訪れる数百万人の観光客に対応できる医療体制を維持することは、地域住民にとってのみならず、観光産業を下支えする宿泊業やサービス業にとっても不可欠であります。医療体制の不安定化は、観光地としての信頼にも直結する重大な課題であります。
 そこで、知事にお尋ねいたします。
 白浜はまゆう病院の経営問題を契機として、田辺医療圏全体の体制の在り方に不安が広がっております。現時点で圏域の病床数や機能は充足しているものの、今後の人口減少や医療需要の変化を踏まえれば、経営の効率化や役割・機能の適正化を進めながら、地域としてどのような医療提供体制を築いていくのか。その方向性を明確に示す必要があると考えますが、知事の御所見を伺います。
○議長(岩田弘彦君) 知事宮﨑 泉君。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○知事(宮﨑 泉君) 三栖議員から、将来にわたっての地域住民が安心して医療を受けられる体制の構築についてという御質問でございます。
 議員御指摘のとおり、現在、病院の経営は、人件費や物価高騰により、非常に厳しい状況にあります。また、田辺医療圏をはじめ他の医療圏でも、今後さらに患者数や医療従事者数が減少する見込みです。そのため、将来的に、各病院がこれまでどおりの規模で、これまでと同じ医療を提供することは、経営と人材確保の両面から困難になることが懸念されます。
 今後、田辺医療圏において、救急や小児・周産期医療といった政策的医療や、がんや急性心筋梗塞等に対する高度・専門医療を提供できる体制を維持していくためには、患者数の減少や医療需要の変化に応じて再編統合やダウンサイジングを視野に入れつつ、病院間の機能分化と連携を一層図る必要があると考えます。
 県といたしましては、限られた医療資源を効率的に活用していくことで、将来にわたり住民が安心して適切な医療を受けることができるよう、地域医療構想調整会議を通じて医療機関や関係市町村と議論を尽くし、地域にとって最適な体制づくりに取り組んでまいります。
○議長(岩田弘彦君) 三栖拓也君。
  〔三栖拓也君、登壇〕
○三栖拓也君 知事に答弁いただきました。
 将来に向けて、病院の経営がより一層難しくなるということが予想されているということでした。その中でも、述べていただいたように、たくさんの課題が山積していると思います。こうした中で、経営を行う病院の関係者であったり、日頃医療の現場で従事してくださる医療従事者の方など、現場で多くの人々が日々奮闘してくださっているのも、これも事実でございます。
 答弁の中にもありましたが、将来に向けては、医療機関や市町村、市町と議論を尽くして、最適な地域医療の形づくりというのにぜひとも県として取り組んでいただきたいと思います。
 以上で、私の一般質問を終了したいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(岩田弘彦君) 以上で、三栖拓也君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 2番上山寿示君。
  〔上山寿示君、登壇〕(拍手)
○上山寿示君 皆さん、おはようございます。自由民主党県議団の上山寿示でございます。議長のお許しを得ましたので、通告順に従いまして一般質問をいたします。
 最初に、私は、和歌山県の誇りである、そして世界に誇る「有田・下津地域の石積み階段園みかんシステム」についての質問をいたします。
 今回発言の機会を与えてくださり、これまでの取組に御尽力くださいました先輩議員の皆様に深く感謝いたします。
 また、このたび「有田・下津地域の石積み階段園みかんシステム」が世界農業遺産に認定されましたことに当たり、長年にわたり尽力を重ねてこられた推進協議会の皆様、また地域の農家の皆様、そして関係自治体や農協の皆様にも、心からの敬意と感謝を申し上げます。皆様の熱意と努力が一つとなり、和歌山の誇りがついに世界に認められました。
 これまでの道のりには長い歴史がございます。そして、有田のミカンの歴史を語る上で欠かせないのが、江戸初期に活躍した伊藤孫右衛門の逸話でございます。
 孫右衛門は、九州で見つけた温州ミカンの苗木をこの有田の地に根づかせようと決意いたしました。しかし、当時の船旅は苛酷であり、そのままでは苗木は枯れてしまう危険がございました。彼は、大きな殻に苗木を入れ、水と土を工夫して包み込み、荒波を越える長い航海に耐えさせたと伝えられております。
 その苗木が無事に有田の地に根を下ろし、ミカン栽培は広がってまいりました。そして、人々は、険しい斜面に石を積み上げ、土を守り、水を引き、太陽の光と海からの風を生かしながら、400年以上にわたりこの産地を育んできたのであります。まさに1人の志が地域の未来を切り開き、世代を超えて受け継がれてきた有田みかんの物語でございます。
 一方で、海南市下津地域では、石積みによる急斜面での栽培や、草生栽培の工夫に加え、収穫したミカンを蔵に寝かせて酸味を和らげ甘みを引き出す独自の蔵出し技術を発展させてまいりました。これにより、下津は、味わいの深い蔵出しみかんという高付加価値ブランドを確立してきたのであります。
 このように、有田の開拓と拡大の物語と、そして下津の熟成と工夫の物語がそれぞれに400年以上の歴史を重ね、今日の和歌山のミカン文化を築き上げてきたのであります。
 平成30年度には下津の「下津蔵出しみかんシステム」が、また、令和2年度には有田の「有田みかんシステム」が、日本農業遺産に認定されました。そして、両地域が一体となり、両地域の取組を一体として世界に発信するため、県議会農業遺産推進協議会の働きかけから、令和4年5月には、自治体や農協など24団体から成る有田・下津地域世界農業遺産推進協議会が設立されました。協議会は、国や県と連携し、認定に向けた準備を進め、令和5年10月31日には、国連食糧農業機関(FAO)に正式に申請を行いました。
 申請後は、書類審査が行われ、令和7年7月24日から25日にかけてFAOの専門家による現地調査が実施され、そして同年8月26日、ついに「有田・下津地域の石積み階段園みかんシステム」が世界農業遺産として正式に認定されたのであります。
 この認定は、石積み階段園、品質改良と苗木供給、共同出荷・蜜柑方、そして下津における蔵出し技術など、長い歴史の中で築かれた地域の知恵と努力が世界に高く評価された結果であります。同時に、これは単なる栄誉にとどまらず、次の世代へこの営みを確実に継承していく責任が私たちに託されたことを意味しております。
 現在、有田・下津地域では、約2600ヘクタールの栽培面積を有しております。販売農家は、有田と下津で約3600戸、県全体では農業従事者の3割以上がミカン生産に関わっております。経済、文化、社会の全てにおいて、ミカンは和歌山を支えてきた柱でございます。
 しかし、一方で、農業従事者年齢は高齢化が進み、後継者不足、耕作放棄地の増加、そして、気候変動による品質や収穫量への影響などが、次の世代への継承には大きな課題となっています。だからこそ、今私たちに求められているのは、この地域の宝を絶対に途絶えさせてはならないという強い決意を県民一人一人が共有することだと思っております。
 また、世界農業遺産の認定は、農業だけでなく、観光や地域ブランド力を高める絶好の機会です。認知度向上による国内外からの認定地域への観光客の増加、また、世界農業遺産としての付加価値効果によるミカンや関連商品の国内外での販売拡大等に結びつけることができれば、地域経済への波及効果はかなり大きいと考えられます。
 そういった取組を強化することで、ミカン栽培や伝統文化の維持と継承に関する機運の高揚につながって、生産意欲の向上にもつながります。それで、地域住民の誇りにもつながります。
 そこでお聞きいたします。
 1点目、この世界農業遺産に係る知事の所感をお聞かせください。また、認定を受けて、県の販売促進や観光振興と連携し、どのように活用していくかをお聞かせ願いたいと思います。
○議長(岩田弘彦君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
 知事宮﨑 泉君。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○知事(宮﨑 泉君) 上山議員の御質問にお答えをいたします。
 県内での世界農業遺産の認定は、「みなべ・田辺の梅システム」に続き2例目となります。
 県としても、地域の皆様や県議会農業遺産推進協議会と共に、今回の認定に向けて注力してきた成果として、世界に誇れるものがまた一つ増えたと大変喜ばしく思っております。
 また、議員御発言のとおり、今回の認定を県産ミカンの価値を広く国内外に発信する絶好の機会と捉え、ミカンや関連商品の付加価値向上及び観光客等の増加などにつなげていきたいと考えております。
 具体的には、大阪・関西万博でのPRをはじめ、首都圏アンテナショップでの認定記念イベントや有名百貨店でのフェア等を通じて国内での販売促進を進めます。また、海外においてもプロモーションを展開し、販路拡大に努めてまいります。あわせて、テレビ等のメディアへの露出をはじめ、インターネットやSNSなど多様な媒体を活用し、世界農業遺産としての魅力を広く発信することで、県産ミカンの認知度やブランド力をさらに高めてまいります。
 認定地域には、石積み階段園を眺めながら歩くことができる熊野古道紀伊路をはじめ、かんきつと深い関わりがあります橘本神社、上山議員の地元有田市の浜のうたせなど、魅力ある観光資源も多く含まれておりますので、これらを活用し、積極的に観光誘客に努めてまいりたいと考えております。
 加えて、ミカンの生産振興や景観の保全、担い手対策など、地元の皆様と一体となった取組を総合的に展開し、世界に認められた地域の宝を未来へ継承してまいります。
○議長(岩田弘彦君) 上山寿示君。
  〔上山寿示君、登壇〕
○上山寿示君 御答弁をいただきました。
 今また知事の意気込みとまた熱意が伝わりました。全国でも、二つも世界農業遺産に認定されたのは、静岡に続いてこの和歌山県が2例目である。また、世界に誇れる農業システムを大きなチャンスとして、しっかりと地域と一体となり、ブランド力の向上に努め、また、関係人口を増やして観光誘客の増加にも取り組んでいただきたいと考えております。引き続きの取組に期待をいたします。
 続きまして、2点目の質問ですが、今回認定された石積み階段ですが、この石積み階段は、農家の高齢化や後継者不足により維持が大変難しくなっている現状があります。
 技術の継承ができなくなると、崩れた階段が放置されれば、耕作放棄地につながり、廃園となることも考えられます。このままでは、認定された石積み階段が次の世代に継承できなくなるのかも分かりません。
 そこで、この石積み階段を維持管理していくために、技術継承をしていく必要があります。県として、このようなことにどのようなお考えかを農林水産部長にお伺いいたします。
○議長(岩田弘彦君) 農林水産部長川尾尚史君。
  〔川尾尚史君、登壇〕
○農林水産部長(川尾尚史君) 石積み階段園は、400年以上前から先人の不断の努力により維持管理されてきた本農業システムの根幹となるものであり、今後の保全活動においても、石積み技術を次世代へ継承していくことが非常に重要であると考えております。
 このため、これまで日本農業遺産の保全活動として有田地域と下津地域でそれぞれ実施していた石積み技術講習会を、今後は、県も参画する有田・下津地域世界農業遺産推進協議会の取組として、年2回実施することとしています。
 また、現在、地元の小中学校や高校及び和歌山大学で行っている世界農業遺産の出前授業において、石積み階段園を保全する取組の重要性をしっかりと説明し、理解を深めてもらえるよう努めてまいります。
 さらに、地元の小学生向けに作成予定の世界農業遺産を主題とした社会科副読本において、石積み階段園の歴史や貴重性に加え、石積み技術の解設を盛り込むなど、未来の担い手づくりにも取り組んでまいります。
○議長(岩田弘彦君) 上山寿示君。
  〔上山寿示君、登壇〕
○上山寿示君 御答弁ありがとうございます。
 今後、出前授業や講習会などを取り入れていってくれるとのことですので、特に次世代の担い手である子供たちが教育の中で歴史や文化を誇りに思えるような、そういった取組にもまた力を入れていただきたいと思います。
 続きまして、3点目の質問に入ります。
 今の答弁で、技術継承の取組は理解いたしました。石積み階段の維持保全には、技術継承だけでなく、壊れたときの修復には大変な労力がかかり、なお修復費用がかなりかかります。なかなか難しい問題であります。
 保全するためには、交付金等を活用し、維持管理への支援が必要となると考えます。また、観光の視点からも、石積み階段を間近で見られるようなスポットを決めて、ビューポイントを整備することも必要と考えます。
 地域内から研修の場として、また、地域外からは世界農業遺産を感じられる場所として、モデル地区としてエリアを指定していき整備することが必要と考えますが、県としての考えを農林水産部長にお伺いいたします。
○議長(岩田弘彦君) 農林水産部長。
  〔川尾尚史君、登壇〕
○農林水産部長(川尾尚史君) 石積み階段園の維持管理に対する支援といたしましては、国、県、市町村で補助する中山間地域等直接支払交付金があり、現在、認定地域内でミカン栽培を行う118集落において活用されています。
 本制度は、20度以上の急傾斜地園地の場合、交付金が加算される仕組みとなっており、石積みの補修等に対して、より手厚い支援が受けられることから、積極的な活用を推進しているところです。
 また、議員御提案の石積み技術の研修の場所やビューポイントとなるモデルエリアの整備につきましては、県も参画する有田・下津地域世界農業遺産推進協議会の中で、地域の皆さんの声を聞きながら、国の交付金事業の活用を視野に入れて具体的に協議してまいります。
○議長(岩田弘彦君) 上山寿示君。
  〔上山寿示君、登壇〕
○上山寿示君 御答弁ありがとうございます。
 交付金の活用を推進しているとのことでございますので、また今後とも、そういうのをまた皆さんに周知できるよういろいろ徹底してください。よろしくお願いいたします。
 「有田・下津地域の石積み階段園みかんシステム」は、400年以上にわたり先人が築き上げてきたまさに和歌山の魂であり、日本農業の象徴でございます。
 伊藤孫右衛門が苗木を殻で守り、荒波を越えて持ち帰った志は、数え切れない先人の努力と工夫に支えられて今日に至りました。有田では歴史と量に裏づけられた有田みかんのブランドを、下津では石積みと蔵出しによる熟成の知恵を築き上げ、高付加価値の蔵出しみかんというブランドを確立してきたのは言うまでもございません。その営みが結実し、世界農業遺産として認定されたことは、この営みが国際的に評価された栄誉であると同時に、未来に責任を負う使命でもあります。
 私たちは、今、この伝統を次の世代へ確実に継承する決断が迫られております。現実には、農業従事者の高齢化、担い手不足、耕作放棄地の拡大、気候変動による品質の影響など、多くの課題がございます。だからこそ県が先頭に立ち、教育、観光、担い手育成の3本柱を推進するとともに、指定農園を整備し、国の支援や研究機関との連携をさらに強化していくことが求められると思います。県としての責任を持って農家の皆さんを支え、地域の営みを力強く後押ししていただきたいのであります。
 そして、この世界農業遺産は、和歌山県だけの誇りにとどまらず、国際的に持続可能な農業モデルとして発信できる可能性を秘めております。
 和歌山の取組は、気候変動への適応、自然と共生する農業、地域文化の融合といった点で、世界が学ぶべき先進事例となると思います。県が主体となってこの価値を積極的に世界へ発信し、国内外からの評価と理解をさらに高めていただきたいと存じております。
 伊藤孫右衛門が未来へ託したように、私たちもまた、先人が守り育ててきた宝を県と県民が一丸となって次の世代へ託さなければなりません。100年、200年、そして500年先に至るまで、この誇るべき農家文化を守り、未来へ輝かせていこうではありませんか。ぜひとも、今後の支援等取組によろしくお願いいたします。
 以上で、世界農業遺産「有田・下津地域の石積み階段園みかんシステム」についての質問を終わります。
 続きまして、2項目め、カーボンニュートラル社会とGX化に向けた教育の在り方と、和歌山県の次世代人材育成について質問をさせていただきます。
 近年、世界全体が脱炭素・再生可能エネルギーへの転換を進める中で、日本国内でも、持続可能な社会の実現に向けた取組が急速に進んでおります。カーボンニュートラルという目標は、もはや一部の環境活動にとどまらず、私たちの暮らし、産業、そして教育にまで深く関わる時代全体の大きな方向性となっております。
 御承知のとおり、日本政府は、2050年カーボンニュートラルを国家目標に掲げており、2030年までに温室効果ガスを2013年度比で46%削減することを国際社会に約束しております。
 GXは、単なる環境政策ではなく、産業構造そのものの転換を意味し、再生可能エネルギーや次世代燃料の導入、社会全体のライフスタイルの変革にまで及ぶ、大きな挑戦です。
 和歌山県も、この流れを受け、県独自に温室効果ガス削減目標を掲げております。目標を達成するには、さらなる努力が不可欠です。
 また、再生可能エネルギーの導入も進んでおり、2023年度末時点では、本県の導入容量は約129万キロワットに達していました。その内容は、太陽光が約87万キロワットと大半を占め、風力発電は約16万7000キロワット、木質バイオマスが約2万8000キロワットなど、多様な形で普及が広がっております。
 しかし、これらを安定的に拡大し運用していくには、やはり人材の裾野を広げ、教育現場から育てていく仕組みが欠かせません。
 和歌山県においても、環境エネルギー分野での動きが顕著に見られ始めています。特に有田市では、ENEOSが持続可能な航空燃料、いわゆるSAFの事業化の検討を進めております。脱炭素社会の構築に向けた大きな一歩を踏み出しています。これは、単に新しい産業が生まれるというだけではなく、地域がどう未来を担っていくのかという問いに直結する重要な変化です。
 こうして新たな産業が育つ一方で、それを支える人づくり、つまり人材育成や教育体制の整備について、まだ十分とは言えません。高校、大学、職業教育の現場が地域の産業構造の変化にどう応えていけるのか。ここに、今、県として真正面から向き合う課題があると私は考えております。
 和歌山には、GXを推進する土壌が既に整いつつあります。だから、今こそ教育の現場でGXの担い手を育てる仕組みを整備するべきではないでしょうか。
 また、県内では、串本町のようにロケット発射場という宇宙産業の拠点ができ、それに併せて地元高校に宇宙探究コースが新設されるといった取組も始まっており、まさに地域に応じた専門教育が動き出しているところでもあります。
 このような先進事例を踏まえつつ、では、有田地域をはじめとする他の地域ではどうなっているのか。そこにも確かな動きと可能性があり、今こそそれを教育政策として形にしていく時期に来ているのではないでしょうか。
 そこで、私は、今回、和歌山県でのGXの取組と、カーボンニュートラル社会を見据えた人材育成・専門教育の在り方と、地域に根差した教育の必要性について、県の所見をお伺いしたいと思います。
 1点目、カーボンニュートラルの実現に向けた県の削減目標と、その取組の現状についてのお考えを環境生活部長にお伺いいたします。
○議長(岩田弘彦君) 環境生活部長湯川 学君。
  〔湯川 学君、登壇〕
○環境生活部長(湯川 学君) 本県では、2050年度までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとするカーボンニュートラルを目指し、2030年度までに2013年度比で46%削減する目標を掲げており、この目標実現のため、地域の環境と調和した再生可能エネルギーの導入促進、森林による吸収源対策、省エネルギーの推進などに取り組んでいるところでございます。
 なお、県内の温室効果ガス排出量は、直近の2022年度において、2013年度比で28%削減の1388万9000トンとなっており、その主な構成比は、産業部門が64%、運輸部門が12%、家庭部門が8%となっております。
 2050年カーボンニュートラルの実現には、あらゆる分野での取組が必要となりますが、特に産業部門の温室効果ガス排出量が64%を占めていることから、事業者の方々に脱炭素化に向けた取組を進めていただくこと、また、御協力をいただくことが不可欠であると考えております。
○議長(岩田弘彦君) 上山寿示君。
  〔上山寿示君、登壇〕
○上山寿示君 御答弁ありがとうございます。
 和歌山県での温室効果ガスの排出は、産業部門が64%を占めているとのことですので、カーボンニュートラルを実現するためには特に産業部門での取組がとても重要となることが分かります。
 冒頭でも申し上げましたが、SAFなどGXに関わる新しい産業の芽が次々に出てきています。地域の自然資源や産業の特性を生かしながら、持続可能な社会を実現していく必要がございます。そのためには、産業の分野において、再生エネルギーや省エネルギーの推進により取り組んでいかなければなりません。
 また、このような取組を進めていくには、脱炭素やエネルギーに関する知識と技術を持った人材を育成していくことが必要不可欠になります。
 現場からは、人材が足りない、専門技術を持った若者がなかなか確保できないという声を耳にすることがあります。現場を担う技術者や専門人材の確保は全国的に見ても競争が激しく、和歌山が後れを取るのではないかという懸念がございます。
 県としても、研修や人材育成のプログラムを通じて取り組んでいると承知しておりますが、2030年の目標達成に間に合うのか、また、人材確保が追いついているのかと不安があります。
 GXの技術を持った人材確保・育成には、現場の実践があってこそ意味があるものと考えます。和歌山県には、製造業をはじめ様々な地域産業がございます。それらと連携して、実習を通じて生きた学びができるような環境整備について、県での取組と今後の方針を商工労働部長にお伺いいたします。
○議長(岩田弘彦君) 商工労働部長中場 毅君。
  〔中場 毅君、登壇〕
○商工労働部長(中場 毅君) 議員御指摘のとおり、本県の将来を担うGX関連の成長産業を呼び込み、産業集積を進めるには、現場で必要な専門知識、スキルを有する人材の育成確保が不可欠です。
 地域の産業と連携した人材育成の取組としては、例えば、関西で集積が進む蓄電池産業において、令和4年8月、産学官が共同で関西蓄電池人材育成等コンソーシアムを設立し、人材の育成確保を進めています。
 本コンソーシアムによるバッテリー教育プログラムには、和歌山県の工業に関する学科を有する県立学校5校全てが参加をしています。各校がそれぞれの実情に応じて教材をアレンジし、独自の実習を考案しつつ、紀の川市に立地するパナソニックエナジー株式会社の協力も得ながら、創意工夫を凝らした授業を展開しているところです。
 引き続き、本取組を通じて、蓄電池人材の育成確保に努めるとともに、カーボンリサイクル燃料など、他の成長産業分野の人材育成等についても、企業や県教育委員会とも連携しながら前向きに検討を進めてまいります。
○議長(岩田弘彦君) 上山寿示君。
  〔上山寿示君、登壇〕
○上山寿示君 御答弁ありがとうございます。
 県内での関西蓄電池人材育成等コンソーシアムでの取組はすばらしいことであると思います。引き続きのさらなる取組に期待をいたします。
 しかしながら、脱炭素技術やエネルギーに関する知識と技術を学べる教育環境を整えるためには、例えば、環境エネルギー科、また再エネルギー技術科、また脱炭素工学科といったカーボンニュートラルに特化した学科やコースを県内の教育機関、特に高校や高専、また大学とかに設けることが必要ではないかと考えております。
 箕島高校機械科は、かつて高度経済成長期に時代の要請に応じて、機械や工業に特化した技術教育を行い、多くの生徒が地元産業に就職し、製造業をはじめとする地域経済を力強く支えてきた歴史がございます。
 このように、教育が地域の産業を牽引してきた実績は既に存在しております。まさに、その延長線上にGX時代の人材育成があると考えております。
 もちろん、少子化の中で新たな学科等の設置は容易でないことは理解しております。まず、その前段として、高等学校等でのカーボンニュートラルに関する学びを充実させてほしいと思います。
 有田市では、SAFの製造拠点整備に取り組んでおり、まさに脱炭素の先端産業地域であると言えます。この地域の取組を県全体のモデルケースと捉えるならば、近くの箕島高校機械科の活用が可能ではないかと考えますが、地域の産業と教育が一体となった人材育成について県としてどのように考えておられるか、教育長にお伺いいたします。
○議長(岩田弘彦君) 教育長今西宏行君。
  〔今西宏行君、登壇〕
○教育長(今西宏行君) 工業教育では、地域で活躍する職業人を育成するとともに、勤労観や豊かな感性、創造性を養う総合的な人間教育の場としても大きな役割を果たすことが求められています。そのためにも、地域産業と密接に結びついた取組が大切であると考えています。
 箕島高等学校機械科では、これまでも、第一線で活躍する技術者による高度な技術指導等、地元の様々な企業の協力を得ながら、地域の担い手育成に取り組んでまいりました。
 このたび、令和8年度和歌山県立高等学校入学者選抜において、機械科と情報経営科を専門学科系として一括募集していた形式を改め、機械科単独で募集することといたしました。この変更により、入学当初から高い意欲を持ち、専門的な学びをより一層深めることを期待しています。
 現在、議員御発言のとおり、箕島高等学校の所在する有田市においては、SAFの製造拠点整備が進んでおり、こうした中、地元高校生が最新の技術を学ぶ機会を得ることは、生徒自身にとっても、地域にとっても、大きな財産になると考えております。
 県教育委員会としても、箕島高等学校がこれまで培ってきた地域との協働や企業との連携による学びの充実という強みを生かしつつ、当該企業や商工労働部と連携して脱炭素に関連した新たな学びを取り入れ、地域と共に成長する人材の育成に取り組んでまいります。
○議長(岩田弘彦君) 上山寿示君。
  〔上山寿示君、登壇〕
○上山寿示君 御答弁ありがとうございます。
 県での様々な取組と今後の考えもおおむね理解いたしました。そしてまた、来年から箕島高校がまた機械科として別に、専門ということで、その取組にまた大いに期待したいと思います。ありがとうございます。
 和歌山県には、ほかにない可能性がございます。南紀の串本町では、先ほども申しましたが、民間ロケット発射場が完成し、また、既に宇宙という新しい産業と教育がつながり始めております。宇宙という遠い夢のような分野に和歌山の高校生たちが手を伸ばし、現実の進路として考えるようになった。これは教育の力で地域の可能性を大きく花開くことを示す象徴的な取組でございます。
 その一方で、有田地域では、ENEOSがSAFの事業化という、まさに脱炭素社会の実現に向けた最前線とも言えるプロジェクトが進められております。これが、和歌山が全国に先駆けてエネルギー転換の実践モデルとなるチャンスでございます。
 和歌山県においても、GXの推進は待ったなしの課題でございます。繰り返しにもなりますが、有田市ではENEOSが持続可能なSAF事業に取り組み、また、県内各地で再生可能エネルギーの導入やカーボンニュートラルの実現に向けた挑戦が始まっております。これらの動きを支えるのは、次世代の技術を学び、実社会で即戦力となる若い人材であります。だからこそ、今、有田においても、この産業を支える若者を地元で育てる環境づくりが求められているのではないでしょうか。
 本当に将来的に例えばSAFエネルギー工学科のような新しい専門学科を設置し、地域と連携した実習や企業研修が可能な教育環境を整えることで、高校生が卒業後も地元で働き、技術者や研究者として社会に貢献できる未来が描けます。
 文科省が推奨する事業で、地域産業の担い手となる最先端の職業人材を育成することを目的として、専門学校と自治体、産業界が一体となって職業教育のカリキュラム刷新や実践的な指導を行う取組として、マイスター・ハイスクール事業がございます。全国を見れば、既にマイスター・ハイスクール制度を通じた先進的な取組が広がっております。
 静岡県の高校では、ヤマハ発動機と連携し、ロボティクスやDX分野での実践的教育を展開し、また、兵庫県の高校では、産業技術総合研究所と共同し、小型蓄電地の製造実習を通じて再生エネルギーに直結する技術者の育成を進めております。また、さらに、広島県の高校では、農業や地域資源を生かし、課題解決型学習により、地域と共に未来を切り開く人材育成が実践されております。
 県内でも様々な取組がございますが、こうした全国の流れを踏まえ、箕島高校機械科がSAF分野に特化した学びを展開し、次世代エネルギーを担う専門人材を育成していくことを大いに期待しております。
 その実現のためには、教育委員会による教育課程の刷新と人材配置、知事部局による産業界、研究機関とのマッチングや制度的・財政的支援、さらに、国によるマイスター・ハイスクール制度の継続的な推進と財源確保、この三位一体の支援が不可欠となります。
 産業と教育の連携が深まることで、地域に根差した実践的な学びが可能となり、県全体としてGXを支える強固な人材基盤が形成されます。GXは、新しい産業と雇用を生み出す大きなチャンスであり、和歌山の未来を切り開く原動力でございます。県内にマイスター・ハイスクール制度を積極的に導入し、県、国、教育界が一体となって産業と教育を有機的に結びつけることこそ地域の持続的発展と若者の夢の実現に直結するものと考えます。
 こうした地域資源と教育をつなぐ動きは、一過性の産業誘致とは違い、人を育て、地域に根を張らせるという持続可能な地域づくりそのものでございます。地元の高校生が和歌山の宇宙に夢を抱き、有田のエネルギーに誇りを持ち、未来をつくっていく。それが県全体の成長を支え、東京や大阪に頼らない和歌山モデルの地方創生につながっていくのではないでしょうか。
 県におかれましても、こうした地域と教育を結ぶ人材育成の視点をぜひ今後の政策の柱の一つとして積極的に位置づけていただきたいと思います。今後の取組に期待をいたしまして、以上でカーボンニュートラル化、GX化についての質問を終わります。
 続きまして、3項目めの質問に入ります。
 ここ数年、日本列島は、これまでにない規模の異常気象に繰り返し見舞われています。線状降水帯による記録的な大雨、短時間での集中豪雨、季節外れの台風、そして、これまで想定されていなかった地域での竜巻、突風、さらには、猛暑日、酷暑日が当たり前となり、気温40度に迫る日も珍しくないという異常気象が今や当たり前の日常になりつつあります。
 和歌山県においても、豪雨による河川氾濫や土砂崩れ、道路の寸断、橋梁の損壊といった災害が毎年のように発生しております。特に山間部や中小河川の多い地域では、一たびインフラが損傷すれば、住民の孤立、緊急搬送の遅れ、ライフラインの遮断といった命に直結する事態へとつながる現実がございます。
 こうした状況の中で、私たちはいま一度問い直さなければなりません。果たして今のインフラ整備、防災対策は、急激に変化する気候と災害の脅威に十分に対応できているのか。そして、そうしたインフラを支える建設業を地域の基幹産業としてどう支えていくのかという視点でございます。
 現在、和歌山県では、公共工事全体の件数や規模に波がある中、公共工事予算に占める土木費の割合も縮小してきているのではないかというような声もよくお聞きいたします。
 農業や漁業といった第1次産業への支援が重要であるということは言うまでもありません。しかしながら、建設業についても、地域の暮らしを支えるインフラ整備、防災対策を担うという点で極めて公共性が高く、また県内の就業人口においても、第1次産業に匹敵する規模の方々が関わっておられる重要な産業でございます。
 一方、県内における建設業の存在は非常に大きく、これは次のように確認できます。令和2年度における国勢調査によると、建設業就業者数は約3万6000人にも上り、雇用規模として重大な地位を占めております。和歌山県における15歳以上の労働人口は、およそ46万人でございます。全国的には、建設業に従事する者は約7.5%で、農林漁業など第1次産業の約3%を上回る規模であることが示されております。建設業が1次産業に匹敵する規模であるとの表現は、統計的に妥当な推測と考えられます。
 また、令和3年の経済センサスにおいて、従業者1名から4名の超小規模事業者数が県内で約63%となり、全国トップとなっている中、その多くは、農業、漁業等の第1次産業に加えて、地場建設業も相当数を占めております。事実、和歌山県は、全国的に見ても小規模事業者や個人経営者の割合が非常に高く、地域に根差した建設関連業者が多数存在しております。
 また、地方圏の中では、建設業許可業者数も相対的に多く、地域インフラの整備、維持に欠かせない担い手が確保されている現状があります。
 加えて、近年の異常気象や自然災害の激甚化を踏まえたとき、道路や河川、橋梁や砂防といった社会基盤の整備、補修は単なる経済対策ではなく、県民の命と暮らしを守る災害に強い県土づくりの根幹をなすものでございます。その中で、建設業が果たす役割は非常に大きく、今後も安定的な事業継続が可能となるよう予算面での後押しが必要不可欠となっております。
 一方、こうした背景がありながらも、全国の自治体からも危機感の声が上がっています。しかしながら、最近では、土木予算が減少しているという声を現場から本当に頻繁にお聞きすることがあります。
 さらに、昨今の資材価格の高騰や労働単価の上昇によって、その影響で、同じ予算規模であっても、かつてと同じ工事内容や整備規模が実現できないという厳しい現実が立ちはだかっております。つまり、実質的整備能力が削られている状況であるということです。
 このままでは、必要な復旧、予防整備が進まず、結果として、被害の拡大や人的損失に直結しかねません。今こそ命を守る原点に立ち返り、土木関係予算をどう位置づけ確保していくかが力強く問われているのではないでしょうか。
 和歌山県としても、防災・減災、地域経済の安定、雇用の維持という観点から、国に対しての予算の確保を積極的に求めていくべきではないかと強く感じております。
 そこで質問いたします。
 県が今まで取り組んできた国土強靱化対策の成果について、また、今年の6月に策定された国土強靱化実施中期計画に基づき、今後どのように取り組んでいくのかを県土整備部長にお伺いいたします。
○議長(岩田弘彦君) 県土整備部長小浪尊宏君。
  〔小浪尊宏君、登壇〕
○県土整備部長(小浪尊宏君) これまで、県では、平成30年に閣議決定された防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策や、令和2年に閣議決定された防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策を最大限活用し、強靱化の取組を進めてまいりました。
 具体的には、有田川などの県管理河川の河床掘削や樹木伐採等による治水安全度の向上、国道168号や国道480号等の県管理道路の整備、また、国直轄事業による新宮紀宝道路の全線開通や有田海南道路の部分開通等の取組を加速してまいりました。
 この結果、例えば8月のカムチャツカ半島付近を震源とする地震に伴う津波警報発令の際には、令和5年9月にオープンした道の駅海南サクアスに避難者を受け入れるなど、その整備効果は確実に現れています。
 本年6月には、改正国土強靱化基本法に基づく初の法定計画となる第1次国土強靱化実施中期計画が閣議決定され、5か年の計画期間内に実施すべき施策について、5か年加速化対策より165多い326施策に拡充されております。このうち、流域治水対策等の推進、広域支援に不可欠な陸海空の交通ネットワークの連携強化といった推進が特に必要となる114施策の予算規模は、おおむね20兆円強と示されたところです。
 県としましては、これまで県独自で進めてきた県土の強靱化に資する取組を含め、幅広く関係部局とも連携し、実施中期計画に基づく事業として多くの取組が位置づけられるよう努力してまいります。
 なお、本年8月には、知事が国土交通省や、国土強靱化施策を担う内閣官房、県選出国会議員に対し、国土強靱化の推進等について要望活動を行ったところであり、今後も、安全・安心な社会基盤を確実に次の世代に継承するため、県土の強靱化を推進してまいります。
○議長(岩田弘彦君) 上山寿示君。
  〔上山寿示君、登壇〕
○上山寿示君 御答弁いただきありがとうございます。
 県がこれまで取り組んでいる国土強靱化に関するインフラ整備の取組と、また、これからの意気込みを聞かせていただきましてありがとうございます。
 和歌山県の財政が厳しい状況であることは承知しております。しかし、そうした中においても、土砂災害や豪雨、台風、地震など、年々規模が増している自然災害から県民の命を守るためのインフラ整備は、最優先で取り組むべき課題ではないでしょうか。
 特に、本県は、山間部と沿岸部が入り組み、中小河川や急傾斜地も多く、一たび災害が起これば、道路の寸断や孤立集落の発生、救助・医療体制の遅延といった深刻な事態を招く危険性を常に抱えております。近年でも、紀南地域を中心とした豪雨災害ではインフラの脆弱さが浮き彫りとなりました。
 そうした災害に備え、事前の整備や維持管理を担っているのが地域の建設業の皆様であり、彼らの存在なくしては、いざというときの迅速な応急対応も復旧も成り立ちません。そして、この建設業界には、農業、漁業などに匹敵するたくさんの県民の皆さんが関わっており、雇用、地域経済の柱としても機能しております。
 地域の安全・安心を担う建設業さんの声を聞くと、やはり一次工事に対しての利益は減少し、それに伴い担い手の確保が難しくなってきている、健全で安定したサステーナブルな経営を続けることが困難になってきているとの意見を聞きます。それにもかかわらず、土木費の割合が減少しているんではないか。担い手の将来も不透明のままでは、県民の命を守るとりでが失われかねません。
 建設業は、基幹産業であると考えます。また、知事も就任記者会見において、建設業は大事な産業であるとお話ししておりました。
 命を守るという政策の原点に立ち返り、限られた財源の中でも命を守るインフラ整備こそ最大限の重点配分を行うべきと考えます。
 建設業界の存続には、安定的、また継続的な公共事業の確保と将来に向けた経営の見通しが立つような長期的な事業計画が必要不可欠です。地域経済の活性化、地方創生のための社会資本整備の着実な推進や、災害の激甚化や頻発化を踏まえた防災・減災対策を着実に進めるためにも、地域の建設業者が経営を継続できるよう、また県民の命を守るよう、国土強靱化実施中期計画に基づき十分な土木事業関係費を確保していただくよう強く要望いたします。
 以上で、私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(岩田弘彦君) 以上で、上山寿示君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時32分休憩
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  午後1時0分再開
○副議長(秋月史成君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 39番片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕(拍手)
○片桐章浩君 こんにちは。
 議長のお許しをいただきましたので、一般質問に入らしていただきますが、今さら思うことですけども、昨日、議会中継をインターネットで見ているよという人から、何人かから声いただきまして、当たり前のことなんですが、議場だけじゃなくて、県議会の質疑を出張先で、あるいは職場で、あるいは車の中で見ていたという方もいらっしゃって、県のことを真剣に議論している様子を見させてもらっていますというふうな話を聞いています。大勢の方が注目していただける中で、このような場をいただきましたことを感謝申し上げまして、第1問から入らせていただきたいと思います。
 まず、大型の民間投資を受け入れることについてということから始めたいと思います。
 これは、去る9月3日から長崎スタジアムシティ、こちらを視察してきました。ここの目的は雇用とか経済活動といったものなんですけども、ここを実際見てくると、長崎スタジアムシティというふうに、スタジアムじゃないんですね、シティー、まちになっていますので、このスタジアム以外にも、周辺に人とか人の交流、そういったものができているというふうなことを聞かさせていただきました。
 ここで、長崎スタジアムシティが長崎市内にできたことによる効果というのを幾つか聞いてまいりました。
 まず、地価の発表がありましたが、土地の価格が上がったこと。この周辺を含めて、市内の土地の値段が上がった。地元にとっては買物をするところや遊ぶところなど、生活の選択肢が増えた、そのために生活のレベルが上がっていますと、こういう話を聞かさせていただきました。また、地元商店街は人通りが少なく、寂れてと言ったら失礼ですけども、寂しいような商店街だったのですが、長崎スタジアムシティの波及効果ということでにぎわいが戻ってきていると、こういう話も聞かさせていただきました。また、地元の人は、当初、こういった大型施設ができることに関しては反対だったということなんですが、今では逆に、人が集まり、にぎわいが出て生活が豊かになったということと安全なまちになったということで、この地域の生活の質が高まって、来てくれてよかったよと、こういうふうな反応になってきております。
 また、相乗効果を確認させていただきますと、これは長崎スタジアムシティが独り勝ちをしている、こういうわけではなくて、試合のない日でもコアな集客施設となっているようです。つまり、ここはプロサッカー、それからプロバスケットなどの試合のホームグラウンドになっているわけなんですけども、開催されるときはJR長崎駅と長崎のスタジアムシティをシャトルバスでつないでいるため、まちじゅうに人があふれる。これはもちろんなんですが、長崎スタジアムシティを訪れる人数を聞きますと、平日で約9000人、休みの日で2万人から3万人になるということで、これ以前の長崎市で平日に9000人も集客できる施設というのはありませんでしたと、こんな状況になっております。
 また、バスケットアリーナというのももちろん付設されているわけなんですけど、試合のない日はここでコンサートとかイベント、こういったものを企画しまして、これまで長崎市はメジャーなアーティストからは長崎でコンサートはできないと断られていたようですが、今ではこのアリーナを使ってコンサートも開催するようになったと、こういうことであります。
 では、「近隣に2万も3万も来たら交通渋滞の問題はありませんか」と尋ねたところ、「交通渋滞は全くありません」という回答でした。不思議だなあと思ったんですが、これは事前に、このスタジアムシティには約2万人が収容できるということがありまして、計画段階から交通渋滞の発生を予想して、渋滞が起きない対策を採用している、こういうことです。例えば、試合のある日、長崎スタジアムシティに隣接している駐車場を予約制にしていることや、3時間を超えて駐車すると3000円の割増し料金が課せられると、このような設定をしたおかげで、渋滞がまず防げていると。それから、もう一つ、飲食店とかショッピングセンターもあるわけなんですけども、ここの地ビールを販売するビアハウスでは、日替わりの地ビール、約100種類と聞きましたけども、毎日違う地ビールをお客様に提供するので、ビールを飲むという目的で来られるお客様は、車じゃなくて電車とかバスを利用しながら一般交通機関で来ている。そういったことから渋滞緩和策の仕掛けをしている、こういう話も聞かさせていただきました。
 それでも、最初オープン当時は、交通渋滞が心配だということで、地元の警察と協議をして警備をしていただいていたようなんですけど、僅か3日で、もう渋滞の心配は要りませんねということで警備を解除した、こういう話も聞かさしていただきました。結果として、心配していたような交通渋滞はなく、対策を講じたことで、地元からは交通渋滞による苦情は一切ありません、このような説明をしていただきました。それどころか、長崎スタジアムシティの計画段階では、地元の住民から反対意見がありましたが、今では誇りに思うと、こういったまちに変貌を遂げたそうであります。
 それから、特に地元の方の生活が豊かになった、生活のレベルが上がったと評価している理由は、そのコンセプトにあります。このシティーのコンセプトは、非日常を日常にすること、毎日来たくなる場所にすること、ちょっとした未来が見える場所にすること、こういったコンセプトがありまして、非日常の空間をもう日常、当たり前のようにするんだよと、これで生活のレベルを上げているということを聞いております。
 ここで、運営の会社が誇らしげに言ってくれたことがあります。ここはJリーグとBリーグのプロチームのホームグラウンドになっているわけなんですけども、サッカーのホームでの試合は僅か20試合、バスケットは僅か40試合ということで、実は使われている分が360分の20であり40ということで、それほど多くないんですが、試合のない日でも人が訪れる仕掛けをしていることなので、この運営会社は、長崎スタジアムシティモデルは、全国の地方都市に通用するロールモデルとして、いずれ全国にこのノウハウを発信していきたいと、このような説明もしていただいたところであります。
 そして、この長崎スタジアムシティが市内外から多くの方を集客、それから、若い人ばっかりだったんですけども、雇用も増やしているということで、この大型施設は経済と雇用に大きな影響を与えているようです。投資額、これは約1000億円ということになりまして、この1000億円を投資したおかげで、JR長崎駅からスタジアムへの人の流れ、まちなかの人の流れもつくり出すとともに、人口減少の歯止めにもつながっている、こういった話を聞かさしていただきました。
 そこで、第1問目です。
 大型の民間投資を受け入れることについて、受け入れることが和歌山県の将来のために必要だと思いますが、知事のお考えを聞かせていただけたらと思います。
○副議長(秋月史成君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
 知事宮﨑 泉君。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○知事(宮﨑 泉君) 片桐議員の御質問にお答えをいたします。
 大型の民間投資につきましては、本県経済の発展に重要な要素であるとの認識の下、これまでも企業誘致活動に取り組んできたところでございます。今後も、大型の民間投資案件があれば、それによる地域への効果や影響を見極め、有益であると判断した場合は、積極的に誘致に取り組む所存であります。
○副議長(秋月史成君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 大型の投資があれば取り組んでいくという姿勢で、和歌山県内にも大型の投資案件は結構あると思いますので、ぜひこれは積極的にというか実現するということで、一緒に頑張らせていただければありがたいかなと思います。
 それでは、次が、同じく視察に行った中で、次は佐賀県に行ってまいりました。ここでは、スポーツビジネスという考え方を佐賀県が取り入れているので、これを少し紹介して、和歌山県でも考えられないかということを少し問題提起をさせていただきたいと思います。
 今回、佐賀県の久光製薬、これ、久光製薬の本社が佐賀県鳥栖市にあるわけなんですけども、ここは企業とスポーツ、地域振興とスポーツに関わる意見交換をさせていただきました。同社をはじめとする地元企業では、佐賀県が提唱するSAGAスポーツピラミッド(SSP)構想というのがあるんですけども、これを企業なりに理解して、佐賀県に協力しようとしているわけです。久光製薬だったらサロンパスアリーナというのができていたわけなんですけども、これはバレーボールのコートをはじめとして地元の方々に活用してもらっていますし、プロバレーボールチームの練習拠点、こういった施設があります。
 佐賀県では、このSSP構想というのは、世界ではスポーツとビジネスが結びついていることから、スポーツを生かした世界基準の政策、これに取り組む方針が地元の学校や企業に波及しているようです。また、このSAGAアリーナ、これは国体のときにできたアリーナだと思いますが、バスケットボールBリーグの佐賀バルーナーズ、それから女子バレーボール、SAGA久光スプリングス、このホームグラウンドになっています。
 参考までに、このSAGA久光スプリングスから、さきの女子バレーボールの世界選手権で2名選手が選ばれたということで、トップを引っ張って裾野を広げる、こういった活動につながっております。この佐賀バルーナーズ、これはバスケットのほうですけども、試合では約5000人のお客さんでいつももう満員になっている、こういうことであります。この動員数は、佐賀県からすると、これまでの佐賀県では考えられない数字で、アリーナをフックにして地元経済を回している実感があると、こんな話を聞かさせていただきました。
 佐賀県では、SSP構想の実現のため、SSP推進局が公立学校関連であれば県教育委員会と連携をしておりますし、選手のセカンドキャリアや産業労働部の人材確保担当セクションといったところは民間企業としっかりと連携していると。それから、スポーツビジネスの支援については、産業労働部のスタートアップ支援担当セクションと協力しながら、部門を超えてサポートしているよと、こういう話も聞かしていただきました。そのため、久光製薬では、佐賀県の本気の取組であるSSP構想に賛同し、女子バレーボールチーム、SAGA久光スプリングスを運営していると、こういうことであります。
 そこで、和歌山県はスポーツ振興に注力しているということは承知しているところでありますが、全体の競技レベルの向上のため、スポーツビジネスに注目すべきだと思いますが、それに関する考え方を知事にお聞かせいただきたいと思います。
○副議長(秋月史成君) 知事。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○知事(宮﨑 泉君) 佐賀県では、昨年度開催された国民スポーツ大会・全国障害者スポーツ大会を契機に整備されたスポーツ施設を中心に、人の交流が活性化していると承知しております。議員御指摘のスポーツビジネスについては、住民や企業など地域全体が一体となって盛り上がり、地域のにぎわいにつながる可能性があると考えています。また、トップレベルのスポーツを身近で見る、支えることは、県内のスポーツ参画人口の拡大や競技力向上など、本県のスポーツ振興に寄与するものと認識をしております。
 一方、スポーツビジネスで成功するためには、経営面での民間企業との関わり、広い土地や交通アクセスのよい施設、プロ化が見込めるチームの存在など、様々な視点から考えていく必要があると思います。また、スポーツビジネスを進める上で最も重要なのは、支援する県民の自発的な盛り上がりだと思っております。
 県としては、機会を逃すことのないよう情報収集し、具体的な動きがあれば、しっかりと応援していきたいと考えております。
○副議長(秋月史成君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 答弁いただきましたので、次のテーマに行こうと思っています。
 今年の夏も、夏休み等々で多くの方と懇談をさせていただいた中で、印象に残っている言葉というのがあります。それは大学生が話してくれた言葉なんですけども、「和歌山県はどこに進もうとしているの」という言葉です。これは県外に進学したお子さんを持つ母親からの話なんですけども、こういった話を聞かせてくれました。
 「私の息子の話を聞いてくれますか。大学生なので、帰省をするのは時々なんですが、帰ってきたときにこんな話をしてくれるんですよ」と。「和歌山県はどこに進もうとしているのか見えません。県としてどの方向に進もうとしているのか、何を目指しているのかが見えてきません。これでは、僕たち若い人にとって魅力がないので、卒業後に和歌山県に戻るという選択肢はありません。和歌山県の将来の方向性を若い人に分かるように、希望が持てるように示してほしいと思います」。そのもう一つの理由に、続けて話をしてくれたのが、「和歌山県に欠けているものは──これ、若い人にとってという意味なんですけども──エンターテインメントですよ」と。「ビッグアーティストのコンサートの機会は少ないですし、プロスポーツを観戦する機会もあまりありません。人気のある野球、サッカー、バスケットボールなどのプロチームの試合観戦ができない数少ない県だと聞くこともありますが」という話を聞かせてくれたんですね。
 前段の「和歌山県はどこに進もうとしているの」という大学生の問いかけを聞いて、ああ、これは県政として真剣に対応する必要があるかなあ、地元で育った学生が、和歌山県がどこに進もうとしているのか分からないと思われているようだったら、進む方向をきっちりと夢の持っている学生たち、若い人たちに示してあげて、卒業後は地元にやっぱり戻ってきたいと、戻ってきて働こうと、地域のために働こうと、こういう気持ちを持ってもらうようにしなければならないかなと思いました。
 若い人にとって必要な将来の希望ある姿、これが示されていないのは、例えば、戻ってきて起業しようとしても、和歌山県は例えばAIやデジタル企業の支援はしてくれるのだろうかと思いますし、エンターテインメント系の仕事をしたいと思っている学生にとっては、その分野の仕事をするところがありませんから都会に残ってしまうという、こういう選択をすることになると思います。和歌山県がこれから先進むべき方向を明確にし、実現に向けた動きを見せなければ、若い人は戻ってこないのかなあと思いますし、まして県外から和歌山県に就職してくれる人はいないんだろうかなというふうにも思ったわけであります。
 例えば、和歌山県は5年先に、今、総合計画を立てているところなんですけども、5年先に向けてAIの日本一の先進県を目指すであるとか、若い人たちがチャレンジできる、起業できる環境を整えるとか、そういった目標なんかも打ち立てていただけたらありがたいかなというふうに思います。「和歌山県の子供たちが笑顔になって育ち、県外に進学し、そのまま進学した都会で就職するような和歌山県にはなっていませんか」。こういう話も聞かせていただきましたけども、若い人たちはこのような和歌山県の姿を分かっているので、県外に進学した若い人たちの声に応えたいというのは私の思い、このとき感じた思いであります。
 それから、もう一点、住宅会社の経営者と話をしたときにこんな話をしてくれたんですね。「今年になって、和歌山市内の住宅着工件数が落ちている」と、要は住宅が売れなくなっていると、こういう話を実はしてくれました。何でだろうかなあと思ったんですね。そしたら、土地の価格というのはそれほど上がっていないですし、資材費と人件費が上がっているので、この辺で住宅価格が上がっていることが原因かなあというふうに思ったんですけども、そういったところで、この社長と議論を深めていったところ、これまで、和歌山市内の住宅の販売価格、大体の幅ですけども、2500万円から3500万円ぐらいの住宅が売れていたと。こういう話だったのですが、今では、さっき言いました資材費高騰とかの関係で3500万から4500万円ぐらいの住宅価格で販売していると、こんな状況になっているんですね。
 それで、何で住宅が売れなくなったのかというと、銀行の住宅ローンの審査が通らないと、こういうことなんですね。「価格帯が上がると借入れが増えているので、ローンが通らない。残念なことなんですけども、和歌山市内の会社の所得水準では4500万円の住宅を買うローンが実は通らないよ」と、こんな話も実は聞かさせていただいて、ええっと思ったんですけども、果たして、これで未来に希望が持てるでしょうかと、こういう話も実はさせていただいたところであります。
 そこで、和歌山県はどこに進もうとしているのに関しての質問です。
 和歌山県としては、人口減少と所得向上への対応、低迷している経済や県外に進学した学生に和歌山県に戻ってきてもらうための対策、資金が循環していないことなど、和歌山県には問題が山積していると思います。学生に希望を感じてもらうために、停滞している県経済を回復させるために、和歌山県はどう対応していくのでしょうか、知事の答弁をお願いいたします。
○副議長(秋月史成君) 知事。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○知事(宮﨑 泉君) 本県は、少子高齢化、重工業の事業縮小など、様々な課題を抱えていますが、世界的な潮流を捉まえ、地域特性を生かしながらいち早く変化に対応できれば、県内に成長投資を取り込み、脱炭素先進県へと飛躍する可能性を秘めています。
 議員御指摘のとおり、和歌山県の将来に向けて進もうとする方向を示すことは大変重要でございます。県としても、令和6年4月にわかやま成長産業開拓ビジョンにおいて将来ありたい姿を取りまとめ、将来の和歌山を担う成長産業の候補として、カーボンリサイクル燃料、蓄電池・次世代自動車、再生可能エネルギー、ロケット・宇宙、資源循環といった産業分野をお示しいたしました。将来の中核となる成長産業を呼び込み、産業レベルの集積を実現するとともに、従来産業に対しても成長産業への参入を促すことで、全国に先駆けて地域全体のGX・DXへの産業転換が進展します。
 競争力がある成長産業の拠点が形成される中、良質な雇用が創出され、賃金水準も上昇、暮らしやすさや働きやすさ、和歌山の魅力も相まって、若者、子育て世帯が流入します。脱炭素社会の中心県という評価を得て、和歌山で働き、暮らし、育つ人にとって誇りと希望を持てるまちとなる将来をありたい姿として描き、成長産業開拓ビジョンをお示ししているところであります。
 ビジョンに基づき選定した成長産業の開拓・集積を何としても実現させるという覚悟で、ロケット・宇宙産業やGXに積極的に取り組む投資意欲の高い企業へのアプローチに、引き続いて努めてまいりたいと思っております。
○副議長(秋月史成君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 お答えありがとうございます。もうまさにそのとおりで、成長産業といいますか、先端企業をどんどん和歌山に呼び込みたいと思っています。そういう意味からすると、和歌山は適地もたくさんあります。
 例えば、今お示しいただいた洋上風力もそうですし、これGX、DXで言ったら、例えばDCであるとか蓄電所なんかも有望だと思いますが、それぞれ課題もあります。例えば、洋上風力に関しては、コストが高く上がっていることで単価が合わなくなったということがさきの事例でも示されておりますから、やっぱりスピードアップが必要かなと。それから、例えばDCに関しても、例えば和歌山市内に関して言うと、やっぱり土地の比較的安いところに、大規模施設ですから必要なんですけども、例えば調整区域の問題でなかなか立地できないとか、こんな問題も抱えておりますので、ぜひ市町と連携をしていただいて、その問題を解消して、来てもらいやすい、誘致しやすい環境を整えていただけたらと思います。
 続きまして、今のとちょっと関連していくわけなんですけども、和歌山市の将来を希望に変えるためということで、事業者の方々や飲食店の方々と、そして教育関係の方々と和歌山県の将来についていろいろ話をしている中で、大型投資がやっぱり必要じゃないのかなという、こういう話がかなり出ております。経済がうまく回っていないことから、所得が比較的低く据え置かれたままになっている、全体の所得が増えなければ、さらに格差が生まれ、治安悪化どころか将来の希望も失っていくよ、こういう意見もあります。
 現状では、和歌山県が人口が減る、経済低迷から脱出する術がなかなか見えてこない。事業者も飲食店経営者も「このままでは和歌山の未来が見えないよ」と、こう言い切る人もいます。お客さんが増えない、売上げが増えない、従業員の給料を上げられない、雇用を増やすこともできない、この現場の状況を聞くたびに、これ何とか経済対策しなきゃいけないな、売上げを増やさなきゃならないなというふうに実は思う次第です。
 例えば、大型投資のある熊本県や北海道では地価が上昇しておりますし、先ほど触れた長崎県ではにぎわいと雇用を生み出している。これらの取組から分かるように、和歌山県に必要なものは、民間企業の進出と大型投資に尽きると思います。基幹産業、またはこれに準ずる企業が進出すると、周辺産業の仕事が増えますし、まちにお金が流れます。飲食店やホテル、食材の提供、そして観光事業者など、多くの分野に影響を与えることになります。和歌山県に大型投資をしてくれる企業は簡単ではなく、それほど多くはないというふうには認識しているところですが、訪れようとする機会があれば、あるいはチャンスがあれば、これはもう生かすべきだと思います。
 そこで、この項目についてです。
 全国を見ると、各府県に大型の投資案件があります。現在策定中の和歌山県新総合計画にも示されておりますが、残念なことに、半導体など大型案件に関して、和歌山県は白紙の状態です。果たして和歌山県に大型投資が期待できるのでしょうか、知事にお尋ねいたしたいと思います。
○副議長(秋月史成君) 知事。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○知事(宮﨑 泉君) 大型の民間投資につきましては、現在策定中の総合計画においても、本県の地域特性や地理的条件を踏まえて、宇宙やカーボンニュートラル燃料、洋上風力や蓄電池といった今後成長が期待される分野の産業において、その中核となる企業の誘致を進めていることを明記しています。委員御指摘の大型の投資計画は、まさにこうした成長分野における企業誘致を実現することであり、脱炭素先進県を目指して、今後も全力で取り組んでいく所存であります。
○副議長(秋月史成君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 それでは、今年6月議会以降、これまた多くの方々と和歌山県とリゾートというテーマで会議とか報告会とか、これをテーマに意見を聞く機会がありましたので、全部紹介できないんで、主な意見、和歌山県、こういう課題があってこうなったらいいなみたいなのを少し紹介させていただけたらと思います。
 「和歌山県で企業が少ないのは、誘致企業、立地企業が少ないのはという意味ですけども、受け入れる姿勢が弱いからではないでしょうか。上場企業は必要以上の本気で事業拡大に取り組んでいますから、行政も必要以上の本気が必要です。熱心に企業誘致に取り組み、成果を上げている県は、その気概を持っています」。こういう意見がまず一つです。特に上場企業の場合は、やっぱり株主への説明責任がありますから、何で和歌山県へ行くのというのをしっかりステークホルダーに説明できなかったら、投資というのはしてくれないわけですよね。そういうこともあるので、上場企業の進出というのはなかなか難しいという状況があろうかと思います。
 それから、二つ目の意見としては、「和歌山県はリゾート環境がとてもよいので、魅力的な県だと思います。ただし、観光はつくるものですから、そこが足りていないと思います。観光は、今あるものを維持、管理するだけでは、リピート性がありません。世界の観光地を研究すると分かりますが、観光はつくるものです。その視点を持てるなら、和歌山県に人を呼び込むことは可能だと思います。特にリゾートは、一度限りのお客様を狙うのではなく、いかにリピーターをつくり出すかの視点が大事です。和歌山県は観光地ですが、ビジネスとして世界水準のリゾート地ではないように感じます」。これはいい意味だと僕は思いますけども、視点を少し変えたら呼び込めるよと、こういうお話もしてくれました。
 それから、次の意見です。「人口がこのまま減少していくと、今まで以上に仕事のあるところや稼げるところに人が集中していきます。今から大型の投資案件を本気で考えて誘致する必要があろうかと思いますが、その危機感に欠けているように感じます」と、こういうことになっています。
 それから、次の意見です。「リゾート客のためにサービスの幅を広げる必要があります。誰でも同じですが、観光に行くと、旅行に行くと、そこで使うお金というのは、日常生活よりも多くなってくる傾向があります。例えば、飲食はおいしいものを食べようとか、ゆったりとした空間で食事ができるようなお店、そういったものを選ぶと思います。一般的に価格設定の高いお客様は、お店はサービスレベルが高く、待ち時間も比較的短くて済むので、和歌山県はリゾート県という特性を生かして、世界のリゾート地の考えを取り入れることが大事ではないでしょうか」。
 それから、次の意見です。「民間投資を受け入れることは、何よりも大事なことだと思います。通常、よほど魅力的な場所か収益率の高い土地でなければ、企業はそこに投資をしません。半島に位置する和歌山県は、その面では不利になると思いますが、リゾート性が感じられるので、和歌山県はその投資対象になり得ますよ」と、こういう話です。「ただし、魅力的かどうかは、収益性、事業者の期待値、そういったものが入るので、東京や北海道が魅力的だと感じる事業者もあれば、和歌山県が魅力的だと感じる事業者もいるので、しっかりとそういったところにアプローチをしていけばいかがでしょうか」と、こういう話も聞かせてもらっております。
 それから、次、こんな意見ですね。「和歌山県は、経済力が弱いですね。全国レベルの大型投資案件がありませんから、現状を変えるためには、民間投資をどんどん受け入れたらいいのではないでしょうか。県の既存の予算だけで、これはもう経済も雇用も増やすというのは難しいので、やっぱり行政と企業がしっかりと誘致して、地域に資金を投下していくというんでしょうか、投資していくというんでしょうか、そういう必要があるのではないかな」ということです。
 「例えば、政府の補助対象となる大型案件を誘致することは有望ですが、現状で和歌山県に該当する案件はなさそうです」と。「和歌山県には、来たいと思わせる良い素材があるだけにもったいないと思います。大型投資はどの県も欲しいので、企業誘致の適地性のある県は必死で誘致活動をしていますから、和歌山県も誘致をしっかり頑張ってくださいね」と、こういう話もいただいております。
 それから、宅建事業者の方からなんですけども、和歌山県の土地は、土地の価格です、30年前とほとんど変わっていない、同じ水準だということなんですね。バブル期はちょっと別だとしても、ほぼ30年前と同じ。つまり、「土地の価格が上がっていないことが、和歌山県の衰退を示す一つの指標ではないでしょうか」と話してくれました。ああ、なるほどと思いました。30年前の土地価格のままでは、金融機関にとってはお金を貸し出す量も30年前と同じ水準になりますから、県内にお金が回らない、資金が回らない、これは当然のことだと思いました。
 以上が、企業の方々をはじめとしていろんな方々から聞いた、あるいは見た和歌山県の評価です。和歌山県の現状がよく分かるのかなというふうに思います。
 そして、初日の浦口議員の一般質問でも出たように、僕もこれ数字聞いて驚いたんですけども、和歌山市における企業誘致で、過去10年間の投資額は112億円、それから、485人の雇用だったということをちょっと聞きまして、1年の間違いじゃないのかなと思ったんですけど、10年だということになっております。そして、長崎市のように、1000億円単位の投資というのは、どうやらなさそうだということでした。
 そこで、大学生で今インターンシップ来てくれている学生さんがいるんですけども、先週末、神戸で神戸国際会議場、ここに研修に実は行ってきた話を聞いたんですね。いわゆるMICEセミナーというやつなんですけども、MICEセミナーに行って、神戸国際会議場で研修した結果をちょっと幾つか聞いて、一つだけ紹介しますけど、これまたびっくりしたことがあります。
 国際会議を誘致して、国際会議ですから1万人規模、1万人の参加者があって、1週間、国際会議を開催すると。そのときに生み出される経済効果、何と30億円ということなんですね。1週間でMICEの効果は30億円、1回で30億円の経済効果がある。これは投資効果とはちょっとベクトルが違うわけなんですけども、これだけの経済効果を生み出している、これはちょっと驚きました。僅か1週間です。先ほど、10年間で112億という話もしましたが、それを比較すると、MICEの効果、国際会議をすることの効果の大きさというのが分かります。また、仮にIRが誘致できた場合、大体建設3年と想定しまして、開業まで2000億円の投資が3年間続く、こういったことも予想できますから、さきに紹介させてもらった長崎スタジアムシティの投資額を大きく上回ることになります。
 そこで、過去、和歌山県にはなかなかなかった大型の投資案件である和歌山IRについて、令和7年6月以降の和歌山県の対応状況及び県民の皆さんの意見をどう把握されたのか、知事にお尋ねしたいと思います。
○副議長(秋月史成君) 知事。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○知事(宮﨑 泉君) 観光庁への訪問などを通じて、IRにつきましてですけども、国の動向について情報収集に努めているところであります。私自身が様々な機会を通じて県民の方々とお会いする際につきましても、IR誘致の是非についての御意見を頂戴したこともあります。大型投資、非常に重要であります。それで、確かに大型投資のために、私らも一生懸命にみんな、誘致ができるように活動をしているところです。また、IRにつきましても同様に、非常に大型投資につながるものであるというふうには認識しておりますが、何分議会で否決をされておりますので、そういったことも重く受け止めながら、今後、決断をしていきたいなというふうに思っております。
○副議長(秋月史成君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 それでは、次行きたいと思いますが、MICEについて、少し先ほどの学生の感想なりヒアリングをした中で、ちょっと補足をさせていただきます。
 経済効果がこれだけあるというふうな話を聞いた中で、セミナーの最終日にグループに分かれてディスカッションして、最後プレゼンテーションの発表で締めるというふうな、こんなことが行われたそうなんですね。そこで、神戸国際会議場だから、神戸と大阪を比較してどちらが魅力的か、進んでいるかと、こう学生に聞いてグループ分けをして討論したところ、結果、どちらが多かったかというと、神戸と大阪、互角だったということなんですね。神戸も魅力的だし、大阪の魅力的だったと、こういう結果が出ています、グループワークで。
 そしたら、神戸と和歌山と比較したらどうなのというふうな質問したら、これもう言いませんけども、そういう答えになったみたいなんですね。ですから、我々も、和歌山県民としては、神戸もいいだろう、大阪もいいだろう、でも、和歌山もいいよというふうな、しっかりと若い人たちが県外に出たときに、和歌山はこれがあるから魅力的だと言えるようなものをしっかりやっぱりつくっていく必要があるかなというふうに思いましたので、ひとつこれを紹介させていただけたらと思います。
 それほど大きい話ではないんですけど、学生たちはやっぱりコンテンツ産業とかエンターテインメント、こちら系の産業というのはやっぱり魅力的に映りますし、都会に憧れるのはやっぱりコンテンツとかエンターテインメント性だと思うんですね。そういう意味では、和歌山、大型のはないんですけども、例えば、今面白いネタが幾つかありまして、ヤマザキマリさんという漫画家がおるんですけども、何が代表作というとテルマエ・ロマエという漫画で、ローマの温泉が日本と親和性があるというか、日本の温泉技術を旧ローマで設計しようというテルマエ・ロマエというのがあるんですけど、これ今、続編連載中です。先日、この漫画家のヤマザキマリさんが和歌山を訪れてくれまして、県内の実は温泉地を回っているんですね。いずれ続テルマエ・ロマエには発表されると思うんですけども、そうなると、映画の「国宝」と同じように、読んだ人が和歌山の温泉に来てくれる、これもやっぱりコンテンツを利用した一つだというふうに実は思います。
 それから、もう一つが、今はプロスケーターになりましたけど、羽生結弦さん。オリンピックで演じた曲目の一つに、「天と地のレクイエム」というのがあります。これを作曲した人が松尾泰伸さんというんですけども、作曲をしながら、ピアニストということで演奏活動をしているんですけども、和歌山に、和歌山はやっぱり歴史と文化がありますから、奉納演奏ということで来てくれることになっています。これもやっぱりエンターテインメントの人ですから、和歌山県に人を呼び込む、呼び込んだらステイしていただいて経済効果につながる、こういった活動も、実は目立たないけど行われているということになりますので、ぜひこういった観点からも呼び込んでいただけたらいかがかなというふうに思いますので、紹介をさせていただきました。
 続けて、次の質問に行きます。
 観光庁の秡川長官、これもう前長官です、6月30日まで長官で、7月に退任されているんですけども、秡川前長官が、海外の新聞ですけども、海外報道でこんなことをコメント出しております。「政府が目指しているのは、ほかの魅力的な観光施設を備えた新たな観光拠点を1か所に整備することです。次回のIR申請も、そう遠くない時期に行われるはずです」。これ、今年6月、在任中に発言しておりますが、この発言に対する知事の見解はいかがでしょうか、お聞かせください。
○副議長(秋月史成君) 知事。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○知事(宮﨑 泉君) 議員御指摘の記事については承知をしております。県としましても、6月議会以降、複数回にわたり観光庁との意見交換等を行ってきたところであります。その中では、申請主体である自治体の状況を見極める必要があり、注視していくという国の姿勢に変わりはなく、また、9月9日の国土交通大臣会見でも、同様の趣旨の発言がありました。こうしたことから、再公募されるかは現時点においては不明であると認識しておりますが、引き続き、情報収集を進めて、努めてまいりたいと考えております。
○副議長(秋月史成君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 それでは、最後になります。今お答えいただけたので、これに関連して質問をさせていただこうと思います。
 当然のことですけども、このIRに係る公募期間というのは、政令で公布されることになります。政令は、法律から委任された事項についての委任の範囲で内閣が公布されるものです。報道による長官の発言からすると、いつ公布されても、いつ公布されるか分からないというか、そう遠くないというふうにも捉えることができると思いますから、今から準備なりなんなり整えておかないかなあ、そうしないと公布がされた場合に対応できないという可能性もあります。和歌山県は、昨年の観光庁のアンケートに関して、関心ありというふうにお答えしていることから、事前準備をある程度すべきだと思いますけど、知事にお尋ねしたいと思います。
○副議長(秋月史成君) 知事。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○知事(宮﨑 泉君) 昨年11月にあった観光庁のアンケートに対しては、IRの整備に関心がある、ただし、国からの再公募があれば、IRの誘致の賛否についてはゼロベースから時間をかけて検討する方針であると回答いたしました。その上で、浦口議員にもお答えしたとおり、IR誘致の是非については、知事であります私が様々な機会を通じて県民の御意見を伺い、しかるべき時期に判断したいと考えております。したがって、現時点では是非を判断していない段階であるため、申請に向けた事前準備に取りかかってはおりませんが、引き続き、国の動向や県民の意見など、判断材料となる情報をしっかりと収集してまいりたいと考えております。
○副議長(秋月史成君) 片桐章浩君。
  〔片桐章浩君、登壇〕
○片桐章浩君 お答えいただきましてありがとうございます。
 今日、全般的にやっぱり和歌山県をもっと元気にしたいなという思いは、もうこれ全員一緒だと思うんですね。元気にするためには、いろんなことがあるんです。やっぱり経済をうまく回して所得を上げる、税収を増やす、雇用を増やす。やっぱりこれに尽きると思いますから、例えば、今日なんかのスポーツビジネスの考えとか、スタジアムシティでまちづくりをしたりとか、特に今日聞いてほしかったのが、大学生の方がまた今回のやり取りを聞いて、希望を持てるかどうか判断してくれって僕ちょっと言ったんですけど、若い大学生が、今日のやり取りを聞いて和歌山へ戻りたいよと思ってくれたら大成功だというふうに思うんですが、そういうふうに希望をやっぱりしっかりと与えていきたいと思います。
 これも長崎とか佐賀を訪れてアリーナとかスタジアムを見て本当に羨ましいと思って、これ中本議員もおっしゃっていましたけど、地元の施設と比べると、やっぱり羨ましいなと。こういう環境で、学生さんとかいろいろ和歌山県内で頑張っておられる競技者の方にスポーツを楽しんでもらいたいなという気もありますので、しっかりとそういった観点も含めて、経済振興、和歌山県のにぎわい、そして和歌山県の希望をしっかりと与えられるような政策に取り組んでいただきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いを申し上げて、一般質問とさせていただきます。御清聴、ありがとうございました。(拍手)
○副議長(秋月史成君) 以上で、片桐章浩君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 15番北山慎一君。
  〔北山慎一君、登壇〕(拍手)
○北山慎一君 一般質問3日目、最終登壇者として質問いたさせていただきます。自由民主党県議団の北山でございます。
 登壇の機会をいただいたことに感謝を申し上げ、早速ではございますが、質問に入りたいと思います。
 一つ目の質問です。脱炭素に対する県の考え方について質問してまいります。
 昨年の夏も暑いと感じていましたが、今年はさらに暑い夏となりました。年々、酷暑の夏が当たり前になりつつあります。9月定例会真っただ中ですが、和歌山県においても暑い日が続いています。産業革命以前に比べて、世界の平均気温を1.5度以内に抑えるというのが世界共通の目標となっているところですが、和歌山地方気象台によれば、ここ100年で、和歌山市の気温は1.6度、潮岬では1.2度のペースで上昇しているとのことです。和歌山県の温暖化傾向も決して安心できるものではございません。
 私は、野球一色の学生時代を送りましたが、当時は30度を超えると暑いなあというくらいで、夏場でもグラウンドを駆け回っていました。今や和歌山県でも30度超えは当たり前で、35度以上を記録することも珍しくありません。高校野球関係者からは、熱中症を考えると、暑い時間帯の練習時間を避けざるを得ないというような話も聞きます。また、現在、世界陸上で世間は盛り上がっていますが、競歩やマラソンの棄権者の多さには驚かされました。出場選手は一流選手ですから暑さ対策はしていたと考えられますが、想定を超える暑さになったのではないかと推測します。
 温暖化は、和歌山県の特産にも少なからず影響があり、ミカンの浮き皮や梅の不作等も事例の一つと考えられています。先日、9月5日の台風15号による他県の竜巻等の発生による被害も、一説によると、温暖化による海水温の上昇に起因するものではないかとの報道もされていました。実際の被害を目の当たりにすると、台風銀座と言われた和歌山県において、今後の風水害に伴う災害の甚大化も心配になります。
 このように、地球温暖化は、我々の身近なところでも影響を及ぼしつつあります。地球温暖化ということが世界的にも認知され始めてから、かれこれ30年たちます。国連気候変動枠組条約締約国会議、COPの歩みがこの象徴で、1997年のCOP3において京都議定書が採択され、先進国に削減目標の達成が義務化されたことは、皆さんも知るところではないでしょうか。2015年に開催された21回目のCOP21では、参加国全てに削減目標の設定等を義務化するパリ協定が採択され、これが京都議定書に代わる温暖化対策に関する世界の枠組みとなり、気候変動対策、地球温暖化対策の大きな転換点となりました。これが今の世界的な脱炭素の潮流につながっています。
 一方、トランプ大統領就任後、世界で2位の温室効果ガス排出国であるアメリカのパリ協定からの離脱は衝撃的な出来事となりました。地球温暖化対策への影響が少なからずあることは認めざるを得ません。
 さて、宮﨑知事は知事選挙に際して、岸本前知事の熱い思いを引き継ぐと発言されていました。岸本県政においても様々な取組がスタートしていましたが、そんな中でも、岸本前知事は、脱炭素社会の先進県を目指すという公約を掲げ、GX産業誘致等に注力されていたのを思い出します。
 今月初旬の9月3日、福祉環境委員会の県内視察にて、南紀はまゆう支援学校を訪れました。県からの説明によれば、県有施設への太陽光発電の設置を特に昨年度から5年計画で進めており、その第1号が南紀はまゆう支援学校だったとのことでした。どこにでも太陽光発電設備を設置できるものではなく、設置に際しては、採算面、建物の老朽化や景観への配慮等、課題も多いと聞きました。しかし、このような取組を一つ一つ積み上げていくことが、ひいては化石燃料由来のエネルギーを減らすことになり、脱炭素にもつながっていきます。県自身が率先して取り組む、つまり姿勢を示していくということでも大切な取組であると感じました。
 宮﨑知事は就任後、こどもまんなかな和歌山を目指すとおっしゃっていましたが、和歌山県に限った話ではないにしても、このまま温暖化が進めば、和歌山で暮らす今の子供たち、将来の子供たちにとっても生活しにくい未来、環境が待っているのではないかと危惧します。9月8日に開かれた和歌山放送情報懇談会でも、知事からは、脱炭素に触れる御説明もあり、脱炭素先進県を目指す旨の発言があったことから、取組は進めていくものと考えますが、脱炭素について、知事はどのようにお考えかお聞かせください。
○副議長(秋月史成君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
 知事宮﨑 泉君。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○知事(宮﨑 泉君) 世界では、気候変動に伴う異常気象により干ばつに見舞われている地域もあれば、キリバスやツバルのように、海面上昇により今後存続が危ぶまれる地域もあることは承知しております。温暖化という地球規模の環境問題は、一つの国が頑張ったからといって解決できるものではないことから、世界共通の課題として脱炭素の取組が進められております。
 このような中、日本は世界に対して、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルを約束し、段階的に削減目標を掲げ、取り組んでいるところであり、和歌山県においても国と同様の高い目標を掲げ、取組を進めております。
 一方、議員御発言のとおり、脱炭素や地球温暖化対策を取り巻く世界的情勢は、アメリカのパリ協定からの離脱など、足並みに乱れが生じ、順風満帆とは言えない状況にあります。本県では、こうした状況にひるむことなく、これからの未来を担う子供たちのためにも、果敢に脱炭素に取り組んでいく所存であります。県有施設への太陽光発電設備の導入についても、南海トラフ地震等の被害が想定される本県においては、避難所を兼ねる施設への導入を優先するなど、レジリエンスの観点も念頭に進めてまいります。
 また、環境と経済の両立を図る必要もあることから、脱炭素への対応を本県が成長するチャンスと捉えて、GX投資を呼び込んでいきたいと考えております。さらに、脱炭素先進県を目指す上で最も大切なことは、県民一人一人が環境に配慮した行動変容を起こすことであり、簡単ではないことは重々承知しておりますが、積極的に取り組んでまいります。
○副議長(秋月史成君) 北山慎一君。
  〔北山慎一君、登壇〕
○北山慎一君 答弁いただきました。
 脱炭素先進県を目指すには、それにふさわしい強い覚悟と情熱が不可欠です。先進県とは、他に先駆けて取組を進めるということであり、その実現には、従来以上のスピード感と実効性が求められます。宮﨑知事を先頭に当局が一丸となって行動し、脱炭素社会の実現に向けて力強く歩みを進めていただくようお願いいたします。
 それでは、次の質問に移ります。
 二つ目の質問、こども誰でも通園制度について質問していきたいと思います。
 まず一つ目、制度の現状についてお聞きいたします。
 こども未来戦略に基づき、新たに創設されることとなったこども誰でも通園制度。こども誰でも通園制度は、就労の有無にかかわらず、未就園児が保育施設を利用できる仕組みとして、国が進めている新しい制度であります。2025年度に子ども・子育て支援法に基づく地域子ども・子育て支援事業として制度化し、2026年度から子ども・子育て支援法に基づく新たな給付として、全国の自治体において実施されます。子供や保護者の多様なニーズに応え、家庭の孤立防止や子育て支援の強化に資するものとして、大きな期待が寄せられています。しかし、一方で、制度開始に向けた準備状況については、地域ごとに温度差があるとも指摘されております。
 そこで、お伺いいたします。
 本県におけるこども誰でも通園制度の現段階での実施状況、制度導入に向けた具体的な進捗はどのようになっているのか、また、本格実施に向けて、県はどのような取組をしているのか、共生社会推進部長に御説明いただきたいと思います。
○副議長(秋月史成君) 共生社会推進部長島本由美君。
  〔島本由美君、登壇〕
○共生社会推進部長(島本由美君) こども誰でも通園制度については、昨年度より、海南市1園、紀美野町1園で、今年度は和歌山市2園、紀美野町1園が追加され、現在は合計5園で試行的事業を実施しています。それ以外の市町村では、本格実施に向けて場所や方法などを検討しているところです。
 県の取組としては、昨年度は、市町村や保育関係者を対象に、制度に係る説明会や市町村情報交換会を複数回開催しました。今年度は6月に各市町村のニーズ把握や必要量の推計等を調査した上で、その結果を基に、市町村や現場の保育所等に対し、個別丁寧に助言等を行っているところです。
○副議長(秋月史成君) 北山慎一君。
  〔北山慎一君、登壇〕
○北山慎一君 それでは、次の質問に移ります。
 対象者への制度周知についてお聞きします。
 制度が円滑に活用されるためには、対象となる子供を持つ保護者が制度の存在を知り、その内容を正しく理解していることが不可欠です。しかしながら、これまでも新制度に関しては、知らなかった、内容が分かりにくいといった声もあり、認知度に課題があるのではないかと懸念されます。特に子育て世代は、情報に敏感でありながら、日常の忙しさから行政情報にアクセスしづらい状況にあります。広報の工夫や情報提供の強化が求められるのではないでしょうか。
 そこで、共生社会推進部長に伺います。
 試行的事業を行っている市町はどのように制度を周知しているのか、また、県としてどのように取り組んでいるのか、お考えをお聞かせください。
○副議長(秋月史成君) 共生社会推進部長。
  〔島本由美君、登壇〕
○共生社会推進部長(島本由美君) 既に試行的事業を実施している市町では、対象者への制度周知について、市町のホームページや広報紙への掲載、対象者への案内送付など、それぞれ取り組んでおりますので、県としても今後はそれらの情報を他の市町村にも共有するとともに、各市町村の実施方法の詳細が固まり次第、県のホームページや広報紙等により、県民に対し広く情報提供をしてまいります。
○副議長(秋月史成君) 北山慎一君。
  〔北山慎一君、登壇〕
○北山慎一君 では、次の質問に移ります。
 保育士等の人材確保についてお聞きします。
 制度を実効性のあるものとするためには、保育士や支援スタッフといった人材の確保が不可欠です。現場では、既に人材不足が深刻化しており、制度拡充がさらなる負担増につながるのではないかとの声も上がっています。特に、新規採用や潜在保育士の掘り起こしは喫緊の課題であり、人材育成や復職支援策の強化が求められています。
 そこで、誰でも通園制度の導入に伴う人材不足をはじめ、県ではどのように保育人材の確保に取り組んでいるのか、共生社会推進部長、お答えください。
○副議長(秋月史成君) 共生社会推進部長。
  〔島本由美君、登壇〕
○共生社会推進部長(島本由美君) 誰でも通園制度の導入に関しては、全国の自治体で試行的に実施されておりますが、新たに保育士等を採用せず、これまでの体制で実施している市町村もあると聞いておりますので、必ずしも新たな人材の確保が必要であるとまでは言えない状況となっております。しかしながら、県では、この制度の導入にかかわらず、保育士不足による待機児童も発生しているため、保育人材の確保は喫緊の課題であると認識しております。
 具体的な取組としては、指定保育士養成施設の学生に対する修学資金の貸付けや潜在保育士に対する再就職支援、保育士の負担軽減のための保育補助者の雇上げ費の貸付けなどを行っております。また、県内の保育情報を総合的に入手できるポータルサイトを作成し、保育士の魅力の発信にも取り組んでおります。さらに、今年度は、保育士養成施設の和歌山信愛大学をはじめ、保育現場、市町村及び県社会福祉協議会などの関係機関と新たに協議の場を設けて、保育人材の確保策について一丸となって検討を進めているところです。
○副議長(秋月史成君) 北山慎一君。
  〔北山慎一君、登壇〕
○北山慎一君 御答弁いただきました。
 さきの質問でも述べましたが、宮﨑知事は、こどもまんなかな和歌山を目指すと公言され、また、県民に寄り添い、笑顔あふれる和歌山へという思いを宮﨑泉の約束として力強く誓っておられます。
 こども誰でも通園制度は、国が主導する施策ではありますが、少子化と人口減少が進む和歌山県にとって、子育てしやすく、安心して子供を産み育てられる環境づくりは喫緊の課題であり、全力で取り組まなければならないものだと考えます。こどもまんなか社会の実現に向けた業務は共生社会推進部が中心となりますが、知事御自身にもリーダーシップを発揮していただき、公言された目標の実現に向けて、県全体を挙げて取り組んでいただくことを強くお願い申し上げます。さらに、子供を預かる保育士の皆さんが安心して働けるよう、職場環境の整備や働きやすい職場づくりについてもぜひ併せて推進していただくことを要望し、次の質問に移ります。
 それでは、三つ目の質問、逆走防止への対策についてお聞きしたいと思います。
 近年、全国的に高速道路上や高規格幹線道路上での逆走事案が多発しています。先月の8月10日には、多くの県民が利用する、本県でも身近な阪和自動車道において、軽自動車の逆走事故が発生するなど、逆走が大きな社会問題となっています。とりわけ高齢運転者による事案が目立ち、その多くは一般道との接続部、つまり、インターチェンジ部において誤進入をしているケースとなっています。高速道路や高規格幹線道路は高速で走行する構造であるがゆえに、高速逆走は正面衝突事故等、極めて重大な事故に直結することから、その防止は、県民の命を守る観点から喫緊の課題であります。
 そこで、一般道から高速道路や高規格幹線道路へ進入するランプウエーにおける標識・標示による視覚的抑止力について確認したいと思います。
 赤色の進入禁止標示や逆走禁止の路面標示、道路本体への舗装色変更は、運転者に明確な警告を与えると認識しておりますが、本県においては、そうした標識・標示の設置状況はどの程度進んでいるのでしょうか。また、夜間や雨天時にも視認性を高めるため、反射材やLED点滅標識などの高度な装置の導入が他県では行われております。本県における導入状況について、警察本部長に伺いたいと思います。
○副議長(秋月史成君) 警察本部長野本靖之君。
  〔野本靖之君、登壇〕
○警察本部長(野本靖之君) 高速道路等への接続部分に対しましては、各道路管理者と連携し、進入禁止等の標識や誘導標示に加え、誤進入のおそれが認められる場所にはカラー舗装を行い、運転者に対して視覚的に分かりやすい対策を実施しているほか、万一、逆走があった場合には、逆走であることを知らせる大型警告看板なども設置しております。また、夜間や雨天時にも視認性の高い自発光式矢印板やLED式誘導標示も設置しており、今後も順次増設していく予定としております。
○副議長(秋月史成君) 北山慎一君。
  〔北山慎一君、登壇〕
○北山慎一君 では、次の質問に移ります。
 運転免許取得時における取組についてお聞きしたいと思います。
 高速道路や高規格幹線道路での逆走事案を未然に防止するためには、道路構造の工夫のみならず、運転者教育が極めて重要であると考えます。特に、高齢運転者は、身体機能の衰えにより判断力が低下し、標識・標示を見落として逆走に至るケースもあると聞いております。このため、免許を取得する段階及び更新する段階で、県警がどのような教育、啓発を行っているのか、その取組状況について伺いたいと思います。
 まず、運転免許取得時における教育についてお尋ねいたします。
 教習所での学科教育において、どのような教養が行われているのでしょうか。また、本試験において、逆送に関する項目の出題頻度や重要度はどのように位置づけられているのでしょうか。若年層に対して、逆走の危険性を早い段階から啓発することが将来的な逆走防止につながると考えますが、県警としての見解と現行の取組を警察本部長にお伺いいたします。
○副議長(秋月史成君) 警察本部長。
  〔野本靖之君、登壇〕
○警察本部長(野本靖之君) 自動車教習所で普通免許等を取得する場合には、高速道路での運転に関する学科教習及び技能教習が必須となっており、本線車道への進入や本線車道からの離脱の方法のほか、本線車道で転回や後退をしてはいけないこと、中央分離帯を横切ってはいけないことなど、逆走防止に関連した高速道路を通行する際の交通ルール等について指導が行われております。また、このような教習が必須でありますので、高速道路での運転については、学科試験の出題範囲に含まれております。
 県警といたしましても、運転免許取得時における教育が、高速道路での逆走事案を含め、重大事故を防止する一つの取組として重要であると認識しておりますので、自動車教習所と連携し、適切な教習が行われるよう取り組んでいるところでございます。
○副議長(秋月史成君) 北山慎一君。
  〔北山慎一君、登壇〕
○北山慎一君 では、次の質問に移ります。
 次に、免許更新時、特に70歳以上の高齢者講習における対応についてお尋ねします。
 高齢者講習では、講話、実車指導、認知機能検査が行われていると承知しておりますが、この講習では、高速道路への誤進入防止について、県内で発生した逆走事故の実例等を用いた教育を行うなど、当事者意識を高める工夫がされているのか伺いたいと思います。
 さらに、認知機能検査の結果に応じた行政処分、講習内容の差別化が図られていますが、逆走傾向のある方を早期に察知し、医師の診断や運転適性相談につなげる体制は整っているのでしょうか。更新時に配布される安全運転マニュアル等に逆走防止に特化した啓発資料を同封するなど、逆走を防止、啓発する取組が必要であると考えますが、今後、高齢化が一層加速する中で、より一層踏み込んだ運転適性確認と啓発強化に対する県警の取組方針について、警察本部長、お答えください。
○副議長(秋月史成君) 警察本部長。
  〔野本靖之君、登壇〕
○警察本部長(野本靖之君) 70歳以上の高齢者に関わる運転免許の更新に際して、本県では、自動車教習所において高齢者講習を受講していただく必要がございます。その講習では、地域の交通情勢等を踏まえ、逆走となってしまう要因やその防止に関する冊子を配布するほか、教習所周辺の高速道路のインターチェンジの形状や案内標識を例に挙げ、誤進入の防止について指導するなど、逆走防止の意識の向上に取り組んでいただいているものと承知しております。75歳以上の高齢者が受検する必要がある認知機能検査に関しましては、検査結果が低調な方には医師の診断書の提出を求め、その診断内容に応じて、運転免許の取消し等の行政処分を行っているところでございます。
 こうした手続は、適正かつ速やかに行う必要がありますので、運転免許課に高齢運転者等支援室を設置するとともに、認知症をはじめとする一定の病気を取り扱うことを踏まえ、看護師資格を有する職員を配置するなどして対応しております。加えて、同室では、高齢者等で運転に不安をお持ちの方やその御家族からの相談を受け、安全運転への指導・助言等にも取り組んでおります。また、運転免許の取得時や更新時における教育のほか、警察では、地域における高齢者を対象とした交通安全教育において、ドライブシミュレーター等を用いた参加体験型の手法を取り入れ、運転能力を実感してもらえるよう取り組むとともに、必要に応じ、高速道路における逆走防止についても指導しているところでございます。
 県警といたしましては、高速道路における重大事故を防止するため、自動車教習所をはじめとする関係機関・団体と連携の上、高速道路における逆走防止に向けた運転者教育や広報・啓発の充実に努めてまいりたいと考えております。
○副議長(秋月史成君) 北山慎一君。
  〔北山慎一君、登壇〕
○北山慎一君 答弁いただきました。
 逆走の要因には、運転者自身の不注意や判断ミスがある一方で、インターチェンジの入り口が分かりにくい構造も一因となっていると感じます。高速道路や高規格幹線道路に設置されている標識は緑色が基調となっており、利用者の多くもその色を高速道路として認識しているのではないでしょうか。であれば、接続部の進入路についてもカラー舗装を緑色で統一することで、ここが入り口であるという視覚的な認識をより強く促すことができると考えます。
 色によるイメージの喚起は非常に有効であり、プロ野球の世界で例えてみるならば、黄色は阪神タイガース、オレンジは読売ジャイアンツと、野球好きの人なら自然と誰もが連想できるようなものです。同様に、高速道路の入り口が統一された緑色で示されていれば、利用者に先入観として、ここから入る道路だと直感的に理解させ、逆走の防止につながるはずです。ぜひ今後も、各道路管理者とも協議をし、逆走防止に向けた取組を引き続き推進していただきたいと願います。
 また、運転免許の取得や更新の際に行われる運転者教育においても、逆走防止は交通安全の重要な課題として、しっかりと啓発を行っていただきたいと思います。特に、高速道路上での逆走は重大な事故に直結し、命に関わるリスクが極めて高いため、引き続き、運転者教育をしっかりと実施していただくようお願いいたします。
 それでは、次の質問に移ります。
 四つ目の質問、道路陥没防止対策についてお聞きいたします。
 令和7年1月、埼玉県八潮市において、下水道管路の破損に起因する道路陥没事故が発生し、車両が道路の穴に落ち込むという大変衝撃的な映像が報道されました。通行中の車両が巻き込まれたことで、地域住民に大きな不安を与えたほか、地下占用物件の占用者に対して厳しい視線が向けられることとなりました。報道によれば、地下に埋設されていた大規模な下水道管路が破損したため、その周囲の土砂が流出したことで空洞が形成され、陥没したものとされています。
 道路陥没事故は、発生の予兆を捉えることが難しく、突如として起こることから、被害が甚大化する可能性があります。一たび事故が発生すれば、地域の交通に混乱を招くだけでなく、場合によっては、貴い人命が失われかねない重大事故につながることにもなりかねません。また、道路管理者や下水道などの占用者においては管理責任を問われる可能性もあり、こうした事故を未然に防止していくことは、極めて重要な行政課題であると考えます。
 本県においても、昭和から平成初期にかけて整備された道路や上下水道、ガス管、通信ケーブルといった地下インフラの老朽化が進んでおり、それに伴って、路面下の空洞化リスクが高まっているのではないかとの懸念があります。特に、県都和歌山市をはじめとした都市部では交通量も多く、万が一陥没が発生した際には、交通への影響も非常に大きなものとなることが予想されます。
 そこで、県土整備部長に伺います。
 本県において、埼玉県八潮市での道路陥没事故を受けて、下水道管理者として同様の事故を未然に防止する観点から、どのような調査を実施したのでしょうか。また、その結果に対する見解はいかがでしょうか。さらに、下水道以外にも、ガス管や水道管など地下占用物件は存在するが、占用許可を与える道路管理者としてどのような取組を行っているのでしょうか。
 以上について、県土整備部長、お答えください。
○副議長(秋月史成君) 県土整備部長小浪尊宏君。
  〔小浪尊宏君、登壇〕
○県土整備部長(小浪尊宏君) 令和7年1月28日、埼玉県八潮市で発生した下水道管路の破損に起因する道路陥没事故を受け、2月21日に設置された下水道等に起因する大規模な道路陥没事故を踏まえた対策検討委員会の提言を踏まえ、国土交通省から全国の下水道管理者に対し、事故等発生時に社会的影響度の大きい直径2メートル以上で設置から30年以上経過している下水道管路を対象に、全国特別重点調査の要請がありました。
 これにより、全国の下水道管路の約5000キロメートルが対象となり、そのうち和歌山県では、流域下水道や和歌山市等を含む8市町の約24キロメートルが該当し、現在、県及び市町において、目視等による管路の腐食、たるみ、破損などの調査を実施しているところです。今回の調査結果で対策が必要な箇所については、国で設置されている対策検討委員会の結果を踏まえ、修繕を行い、適切な維持管理に努めてまいります。
 次に、道路管理者においては、今回の事故を受け、国・県・市町村など、道路管理者と占用者で構成する地下占用物連絡会議を設置し、定期的に相互の点検、調査の計画、結果について共有を行うことで、道路陥没を未然に防ぐための連絡体制の構築を行ったところです。県としましては、引き続き、関係機関と連携し、道路陥没における第三者被害の防止に努めてまいります。
○副議長(秋月史成君) 北山慎一君。
  〔北山慎一君、登壇〕
○北山慎一君 答弁いただきました。
 埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故は、下水道管の破損が原因でした。しかし、道路の地下には、下水管だけでなく、ガス管や水道管など、多くのライフラインが埋設されています。答弁でも、道路陥没を未然に防ぐという言葉がありましたが、道路陥没は決してあってはならない事象です。道路は、自動車やバイクだけでなく、自転車や歩行者も通行する生活の基盤であり、陥没が発生すれば、人命に直結する重大な危険を招きます。点検や調査には大きな労力と時間を要しますが、関係機関が連携し、それぞれの施設を確実に点検するとともに、情報を共有し合うことで、道路陥没を未然に防ぐ取組を一層進めていただきたいと考えます。県民の安心・安全のためにもしっかり取り組んでいただくよう、よろしくお願いいたします。
 それでは、最後の質問に移ります。
 河川における水難事故防止対策についてお聞きしたいと思います。
 近年、人々の自然への関心の高まりやライフスタイルの変化、メディアの影響等もあり、アウトドアがブームとなっています。そのアウトドアブームなども相まって、自然豊かな身近なレジャーの場として、河川空間を活用する県民が増加しています。特に、家族連れや若年層が河原でバーベキューを楽しんだり、水遊びや釣り等を行ったりする姿が多く見られ、河川が憩いの場として親しまれていることは大変喜ばしいことであると思います。一方で、そうした河川利用の増加に伴い、毎年のように水難事故が発生していることも看過できない現状であります。
 国土交通省が取りまとめたデータによれば、全国の河川における水難事故は依然として後を絶たず、中でも、中学生以下の子供や高齢者が事故の被害者となるケースも多いとされています。また、台風や集中豪雨、ゲリラ豪雨等を背景に、河川の流量が急激に増加することで流されてしまうといったケースも報告されており、河川における水難事故防止対策の充実は喫緊の課題と考えます。
 そこで、まず、県内の河川における水難事故の発生件数及び要因について、令和7年の状況を把握しておられるのか、県土整備部長にお尋ねいたします。
○副議長(秋月史成君) 県土整備部長。
  〔小浪尊宏君、登壇〕
○県土整備部長(小浪尊宏君) 県内の河川における今年の水難事故については、公益財団法人和歌山県水上安全協会によりますと、8月末現在で8件が発生している状況です。また、これらの水難事故の要因については、詳細を把握できない部分もありますが、農作業中における転落事故や、釣り、バーベキューといったレジャー目的で河川を訪れて、事故が発生したものと承知しております。さらに、県内だけではなく県外の方も事故に遭われていて、その年齢も10代から70代と幅広い年齢層となっています。
○副議長(秋月史成君) 北山慎一君。
  〔北山慎一君、登壇〕
○北山慎一君 では、次の質問に移ります。
 県としての水難事故防止対策についてお聞きいたします。
 例えば、危険箇所への看板・標識の設置や流れの速い箇所への立入禁止措置、ライフジャケット着用の啓発、AI等を活用した河川水位情報の可視化、スマートフォンによる危険情報の発信、地域住民や河川愛護団体との連携によるパトロール・声かけ活動など、各種対策が考えられますが、現在、どのような対策を講じているのでしょうか。その内容と今後の取組について、県土整備部長にお伺いいたします。
○副議長(秋月史成君) 県土整備部長。
  〔小浪尊宏君、登壇〕
○県土整備部長(小浪尊宏君) 河川における県の水難事故防止対策についてお答えします。
 まず、主要な河川の水位やダムの放流情報を和歌山県ホームページや民間ウェブサービスなどを通じ、スマートフォンなどにより誰もが確認できるよう情報提供を行っています。また、河川で遊ぶ際の注意点やライフジャケット着用の必要性などについて、県のホームページやSNSを活用して情報発信を行うとともに、県内の道の駅などに河川利用の注意点を記載したパンフレットを設置するなど、水難事故防止に向けた啓発活動を行っているところです。さらに、定期的に河川管理施設の巡視・点検を実施しており、その中で、水辺の利用が想定される箇所については、陥没の有無など、利用の安全性についても確認しているところです。
 今後も、河川の利用実態をできるだけ把握し、水難事故が発生した場合は、その原因や背景を分析しつつ、ほかの都道府県の取組も参考に、警察や消防、教育委員会や河川に関係するNPOなどとも連携しながら、水難事故防止対策のさらなる充実を図ってまいります。
○副議長(秋月史成君) 北山慎一君。
  〔北山慎一君、登壇〕
○北山慎一君 それでは、次の質問に移ります。
 教育委員会における取組についてお聞きしたいと思います。
 さきにも述べましたが、水難事故の被害者は、中学生以下の児童生徒も多く含まれます。夏休み期間中を中心に、子供たちが河川で遊ぶ際の安全教育の徹底が重要であると考えますが、学校や市町村教育委員会との連携による水辺の安全講習、水難事故防止に係る啓発パンフレットの配布など、教育面での取組はどのようになっているのか、教育長にお尋ねいたします。
○副議長(秋月史成君) 教育長今西宏行君。
  〔今西宏行君、登壇〕
○教育長(今西宏行君) 例年、ゴールデンウイーク前と夏季休業前に文部科学省から、河川等における水難事故防止について通知があります。県教育委員会では、これらの通知と県教育委員会が作成した夏季休業中の心得を用いて、年2回、水難事故防止の徹底について、各県立学校及び各市町村教育委員会を通じて、各学校において児童生徒及び保護者に注意喚起しております。
 今後も、水難事故防止について、児童生徒及び保護者に繰り返し注意喚起がなされるよう、周知徹底を図ってまいります。
○副議長(秋月史成君) 北山慎一君。
  〔北山慎一君、登壇〕
○北山慎一君 答弁いただきました。
 河川は、県民に安らぎと潤いを与える財産であるとともに、一たび事故が起これば、貴い命が失われかねない場所でもあります。誰もが安全に河川と親しめる環境を整備するため、県として一層の水難事故防止対策に取り組んでいただくことを強く要望いたします。県土整備部長、教育長、よろしくお願いいたします。
 以上で、私の質問を終えたいと思います。御清聴、ありがとうございました。(拍手)
○副議長(秋月史成君) 以上で、北山慎一君の質問が終了いたしました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開きます。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時37分散会

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