令和6年6月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(全文)
◆ 汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているものもあるため、人名等、会議録正本とは一部表記の異なることがあります。人名等の正しい表記については「人名等の正しい表記」をご覧ください。
令和6年6月 和歌山県議会定例会会議録 第6号
令和6年6月
和歌山県議会定例会会議録
第6号
────────────────────
議事日程 第6号
令和6年6月24日(月曜日)
午前10時開議
第1 議案第98号から議案第115号まで並びに報第1号及び報第2号(質疑)
第2 一般質問
第3 議案等の付託
────────────────────
会議に付した事件
第1 議案第98号から議案第115号まで並びに報第1号及び報第2号(質疑)
第2 一般質問
第3 議案等の付託
第4 休会決定の件
────────────────────
出席議員(42人)
1番 坂本佳隆
2番 三栖拓也
3番 秋月史成
4番 玉木久登
5番 藤山将材
6番 森 礼子
7番 井出益弘
8番 尾崎要二
9番 高田英亮
10番 佐藤武治
11番 鈴木德久
12番 濱口太史
13番 鈴木太雄
14番 冨安民浩
15番 吉井和視
16番 玄素彰人
17番 山家敏宏
18番 岩田弘彦
19番 中本浩精
20番 中村裕一
21番 谷 洋一
22番 北山慎一
23番 川畑哲哉
24番 堀 龍雄
25番 谷口和樹
26番 新島 雄
27番 山下直也
28番 小川浩樹
29番 中尾友紀
30番 岩井弘次
31番 藤本眞利子
32番 浦口高典
33番 山田正彦
34番 坂本 登
35番 小西政宏
36番 浦平美博
37番 中西 徹
38番 林 隆一
39番 片桐章浩
40番 奥村規子
41番 尾﨑太郎
42番 長坂隆司
欠席議員(なし)
────────────────────
説明のため出席した者
知事 岸本周平
副知事 下 宏
理事 田嶋久嗣
知事室長 北廣理人
総務部長 吉村 顕
危機管理部長 河野眞也
企画部長 前 昌治
地域振興部長 赤坂武彦
環境生活部長 山本祥生
共生社会推進部長 島本由美
福祉保健部長 今西宏行
商工労働部長 大川伸也
農林水産部長 立石 修
県土整備部長 福本仁志
会計管理者 高橋博之
教育長 宮﨑 泉
公安委員会委員長 竹田純久
警察本部長 野本靖之
人事委員会委員長 平田健正
代表監査委員 森田康友
選挙管理委員会委員長 小濱孝夫
────────────────────
職務のため出席した事務局職員
事務局長 林 伸幸
次長(秘書広報室長事務取扱)
橋爪正樹
議事課長 岩井紀生
議事課副課長 田中 匠
議事課議事班長 伊賀顕正
議事課副主任 中阪康仁
議事課副主査 西 智生
議事課副主査 林 貞男
総務課長 榊 建二
政策調査課長 岩谷隆哉
────────────────────
午前10時0分開議
○議長(鈴木太雄君) これより本日の会議を開きます。
日程第1、議案第98号から議案第115号まで並びに報第1号及び報第2号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、併せて日程第2、一般質問を行います。
4番玉木久登君。
〔玉木久登君、登壇〕(拍手)
○玉木久登君 おはようございます。
一般質問4日目最終日、トップバッターで登壇をさせていただく機会をいただきました先輩・同僚議員の皆様に、まずは感謝申し上げます。
早速なんですけど、議長のお許しをいただきましたので、一般質問を始めたいと思います。
題目は1項目です。和歌山の未来に向けてであります。
今議会冒頭、知事から2040年を見据えた新総合計画の作成に着手する旨の説明がありました。その内容については、一般質問初日に山下直也議員から質問があり、おおむね理解したところです。
今、コロナ禍による閉塞感から平常が戻りつつある中、社会は大きく変わり、予想を上回る人口減少、少子高齢化等、激変する時代の流れに伴う課題が山積する和歌山県を今後どのようにしていくのか、大変重要な取組となります。
これまでの長期総合計画の流れから転換し、目まぐるしく変動する社会情勢に機動的に対応できるよう、長期構想と実施計画を融合させ、5年毎に計画の見直しができるように考えているとの内容であったと理解しています。また、県民総参加プログラムの導入の検討やGX投資の拡大、デジタル技術の進展など、和歌山県の強みを生かし、ポテンシャルを最大限に引き出す創意工夫を目指すものであると理解しています。
そのことを踏まえ、今回の質問において、私が最も重要であると考えることについて伺います。
これからの新総合計画の作成に当たり、基礎自治体である市町村の連携について、その考え方を盛り込むことの必要性を強く感じています。地方自治法では、県は市町村を包括する広域の地方自治体として、地域における事務及びその他の事務で法律またはこれに基づく政令により処理することとされています。
市町村は住民に最も身近な総合行政機関として、地域住民の様々なニーズへの対応など、地域の特色を生かして幅広く行政を担っていくことが必要であり、これまで以上に自主性、自立性を持ち、十分な権限によって、高度化する行政事務や地域住民のニーズに的確に対応できる、より専門性を兼ね備えた組織として変化していくことが重要であると考えます。
しかしながら、県内各市町村が抱える課題として、これからの基礎自治体を支える人材の枯渇が上げられます。少子化の問題と、労働人口の県外流出による社会的人口減がそれに拍車をかける現状の解決は、急務な課題であります。さらに、GX推進や多様化する住民のニーズに応えるには、事業に精通した人材確保など、基礎自治体の課題も多くあります。
今後、市町村を包括する広域の地方自治体である県は、市町村それぞれの課題に向き合い、基礎自治体が自立的に行う政策や施策を今まで以上に全面的にサポートすることを基本として、これからの県と市町村の役割を踏まえ、基礎自治体優先の考え方に基づき、市町村の規模、能力に応じて、県は市町村と積極的に協力し、お互いに高め合うことが重要であると考えます。
そのことを踏まえ、以上の内容について、知事に考えを伺います。
○議長(鈴木太雄君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
知事岸本周平君。
〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) 玉木議員の御質問にお答えいたします。
今御指摘いただきました問題意識は、全く同じように考えているところであります。そして、今、玉木議員御指摘のとおりでありまして、和歌山県を取り巻く環境は大変大きく変化していくわけでありますけれども、新総合計画のビジョンで展望する2040年頃に向かいましては特に人口減少、超高齢化に伴う支え手・担い手の減少など、資源制約の深刻化が明らかになってまいります。
さらには、更新時期が到来するインフラが当然増加してまいります。地域社会の持続可能性に関する様々な課題が表に現れてくることが今2040年問題として言われているところでありますので、地方行政の在り方も、今、玉木議員がおっしゃったとおり、そうした変化やリスクに適応していかなければならないと考えております。
そして、これから皆さんで御議論いただく新総合計画では、こうした資源の制約を乗り越えるために、市町村をはじめとする組織や地域の枠を超えた連携が今後より一層重要になると考えますので、行政間のみならず、官民の連携というものを考慮しながら、部局横断で横串を刺して議論を進めております。今度の新しい計画では、そうした連携を進める上で県がどのような役割を果たすべきか、明らかにしてまいりたいと考えております。
将来にわたってウエルビーイングな和歌山を実現するためには、住民に最も身近な行政機関である市町村の役割は非常に大きいと考えております。今後、地域課題がより一層多様化・複雑化していくことに備えまして、今年度から振興局の機能を強化し、地域や市町村への支援を強めているところであります。
そして、人口減少の影響が特に顕著に表れる2040年頃を見据えますと、今、市町村の自主性・自立性、玉木議員もおっしゃいましたけど、これを最大限に尊重するということは基本でありますけれども、今、県と市町村が二層制になっておりますけれども、これを柔軟化する必要があるのではないか、そして、県と市町村が一体となって様々な施策を展開することが求められると考えております。
特に小規模の市町村では、県と市町村の垣根を超えまして、数が少なくなってくる人材を柔軟に活用していく仕組みが必要なのではないかと考えております。
市町村がそれぞれの地域にある実情、置かれた状況に応じて、長期的な視点で必要な対応を選択していくことができますよう、地域における将来の課題やビジョンを県と市町村で共有した上で、市町村を包括する広域の地方公共団体として、県の役割をしっかりと果たしていくべきであると考えております。
○議長(鈴木太雄君) 玉木久登君。
〔玉木久登君、登壇〕
○玉木久登君 知事から答弁いただきました。これからの和歌山県のますますの発展を私も願いますし、市町村との連携をしっかりとお願いを申し上げたいと思います。
議長、再び登壇しての発言をお許しいただきたいのですが。
○議長(鈴木太雄君) どうぞ。
〔玉木久登君、登壇〕
○玉木久登君 すみません。今、議長のほうからお許しをいただきまして、一言、皆様にお話をさせていただきたいことと、御礼を申し上げたいと思います。
私こと、このたび思うことがあり、今定例会をもって、この議場からお別れすることを決意いたしました。
思えば7年前の6月、前県議会議長浅井修一郎先生亡き後、有田市民の期待と負託を受け、歴史ある、伝統ある和歌山県議会に籍を置かせていただきました。初登庁の日の言い表せない緊張感は今も鮮明に記憶に残ります。その緊張と意気込む気持ち、そして不安の中の初登壇、極度の緊張から、何を言ったのかは記憶にありません。
市議会とは違いも多く、初めてのことばかり、そんな中、自民党県議団の先生方、サポートしてくれる女性スタッフはじめ、各会派の先生方は私を温かく迎えてくれました。とりわけ、初登庁前から私をリードしていただきました吉井先生、中村先生、藤山先生、濱口先生には大変お世話になりました。ありがとうございました。
この間、県政の場において様々な思い出とともに、この上なく貴重な経験と勉強をさせていただきました。
一次産業が基幹産業である我が町を代表する立場として、尾崎要二先生には温州ミカンの主産県としての誇りと、より研さんを重ねる学びの場として、全国みかん生産県議会議員対策協議会へと推挙いただきました。ありがとうございました。
漁業に係る様々な課題や対策については、農林水産委員会の場において、冨安先生、谷先生、多くのことを御指導いただきました。ありがとうございました。
また、福祉分野においては、複雑に絡み合うメンタルの問題や心身に係る様々な課題について思い悩むとき、私の考えに寄り添って的確な指導をいただきました山下直也先生、ありがとうございました。
言い尽くせないことばかりですが、鈴木太雄議長、井出先生、新島先生、山田先生、坂本登先生、尾﨑太郎先生、森先生、岩田先生、中本先生、佐藤先生、鈴木德久先生、玄素先生、山家先生、北山先生、坂本佳隆先生、三栖先生、高田先生、長坂先生、藤本先生、浦口先生、片桐先生、奥村先生、谷口先生、林先生、中西先生、中尾先生、小川先生、浦平先生、小西先生には、一方ならぬ御厚情、御指導賜り、本当にありがとうございました。
そして、同期である堀副議長、秋月先生、岩井先生、川畑先生、ますますの御活躍を祈っております。
また、岸本知事をはじめとする県当局の皆様はじめ関係各位、とりわけ県議会事務局の皆様、私の担当として懸命にサポートしてくれました尾藤さん、石井さん、そして西岡さん、この場を借りて、改めて御礼を申し上げます。ありがとうございました。
県内外においても、それぞれの地域で私を温かく迎えていただきました。この出会い、忘れることはありません。本当にありがとうございました。また、海外の和歌山県人会の皆様との出会いと交流は、私の人生の中で忘れることができない思い出の一つです。とりわけ南米諸国の県人会の皆様、大変お世話になりました。ありがとうございました。
思い出の一つに、4年前の6月定例会、闘病中の母が一般質問の傍聴に訪れました。お許しをいただき、2人で撮った議席での記念写真は、今は亡き母との思い出として、そして産んでくれた感謝の気持ちと、政治に対する誠意向き合うことへの戒めとして、今も私の心の中にいます。
この凜とした空気の中で、県勢発展の一翼として務めることができたことを誇りとし、今後はこの経験を生かし、地元有田市の発展に寄与できるよう、これからも精進してまいる所存です。誠に勝手なお願いですが、引き続き皆様からの御指導、御鞭撻、よろしくお願い申し上げます。
最後に、県政の場に送り出していただきました有田市民の皆様はじめ後援会の皆様、そして家族、関係いただきました全ての皆様に対し、心から御礼申し上げます。
そして、私情により、皆様から負託された大切な職務の任を辞すること、何とぞお許しいただきたくお願い申し上げます。本当にありがとうございました。(拍手)
○議長(鈴木太雄君) 以上で、玉木久登君の質問が終了いたしました。
質疑及び一般質問を続行いたします。
38番林 隆一君。
〔林 隆一君、登壇〕(拍手)
○林 隆一君 皆様、おはようございます。林隆一でございます。
玉木議員に関しては、本当にいろいろお世話になりまして、一緒に視察に行っていろいろたもとを分かち合ってじゃなくて、とは関係なく、本当にいろいろお話しすることができまして、いろいろ勉強させていただきました。それに、和歌山市に女子野球部導入に際して、本当に私だけの力では及ばずというのがあったんですね。あったので、玉木議員に相談したところ、本当に一生懸命お力添えをいただいて、和歌山市に女子野球部ができたという経緯もございます。
今後一層、御尽力いただきまして、有田市のために頑張っていただきたいというふうに思っております。御健闘をお祈りいたします。
それで、今議会、本当、松葉づえになって、今まで12月議会とか2月議会は本当に車椅子で、本当、皆様に御心配、御迷惑をかけたわけなんですが、ようやく自立というんですかね、自分で立てるようになって、こういうふうに一般質問できるようになりました。また一層、松葉づえがなくなるぐらい、ちょっと一生懸命頑張ってリハビリをして、9月議会においては松葉づえはなくして立てるように頑張っていきたいと思います。
それでは、長くなりましたが、議長のお許しをいただきましたので、通告に従い一般質問をさせていただきます。
まず、知事の政治姿勢について質問させていただきます。
初めに、空飛ぶクルマ、次世代エアモビリティの実用化に関する取組について質問させていただきます。
昨年12月議会でも、和歌山県の取組について一般質問をさせていただきましたが、世界中から150を超える国や地域が参加する世界最大規模のイベント、2025年4月から184日間開催する大阪・関西万博の開催まで既に300日を切っております。
1970年の大阪万博では、動く歩道や携帯電話のもととなったワイヤレスホン、テレビ電話など、万博では新たな技術やサービスなど、社会実装に向けて展開され、現在社会に定着しております。
今回、大阪・関西万博において、最新鋭のバーチャル空間が提供され、また、AI技術を駆使した製品の展示が予定されております。その中でも大阪・関西万博の目玉の一つと言われる空飛ぶクルマというものがございます。
空飛ぶクルマというのは、電動化・自動化といった航空技術や垂直離着陸などの運航形態によって実現される持続可能な次世代の空の移動手段であると聞いております。
来年4月に開幕する大阪・関西万博での目玉とされる空飛ぶクルマを運航する企業の一つ、SkyDrive社が万博では客を乗せて運航する商用運航を断念すると先日発表されました。これで丸紅に続き四つのグループのうち二つのグループが客を乗せないデモフライトとなり、万博での商用運航に黄信号がともった形でございます。
大阪府の吉村知事は、これまで空飛ぶクルマについて万博での商用運航を目指したいと繰り返し発言しておりました。今月18日には、空飛ぶクルマにはお客さんを乗せて会場を自由に行き来するということについて、今、まだ2事業者がチャレンジしている最中で、もうできないと言うべきではないと思うのです、それを言った瞬間、終わってしまいますからということを述べております。
ただ、四つのグループのうち、ANAホールディングスと日本航空は、それぞれ商用運航の実施については、いまだ未定としております。
自見万博担当大臣は18日の会見で、商用運航を断念したことは残念だ、技術開発に絶対というものがなく、かつ着実な技術の導入を行うために仕方ない決断であったというふうに受け止めている。引き続き2地点間運航の実現、デモフライトをしっかり目指していただきたいと思っている。実際に空飛ぶクルマが輸送手段として実証された未来社会というものは実感できる、あるいは想起させる。車が飛んでいるという未来社会に対する社会受容の向上というものにも大きな意義を持つと考えているということでございました。
本県では、2024年2月に株式会社IHI、株式会社長大、さらに、南海電気鉄道株式会社の3者と和歌山県との4者間で連携協定を締結したと聞いております。実用化に向け官民連携を図り、取り組んでおられます。
万博には間に合わないかもしれませんが、今後、様々な用途での活用が期待される空飛ぶクルマの実用化に向け、どのように県として取り組んでいくのか、知事にお伺いいたします。
続きまして、今回の大阪・関西万博においては、様々な展示が予定されております。そのような中、和歌山県では、小中学生を万博に招待をし、実際に万博を体験させるための支援に取り組んでいると聞いております。
支援の対象となる子供たちの数は約6万7000人にも上り、その子供たちを直接バスで万博会場に行けるよう取り組み、台数としては約2000台と聞いております。
ただ、大阪・関西万博が開催される夢洲は、地震などの災害時、避難が困難なところでございます。また、交通アクセスが限定的で大混雑も予想されております。子供を安全に万博に行かせられるか、熱中症のおそれはないのか、トイレの問題等、様々な心配の声が上がっております。
加えて、団体バスの乗降場から入り口まで、約800メーターから1キロもあると聞いており、例えば障害のある子供や小学校低学年が安全に入場するのも大変かと考えます。
さらに、今年3月28日、工事中にメタンガスが爆発するという報道があり、現在においても、あちらこちらでメタンガスが検出されており、引火爆発のおそれも懸念されております。そのことから、大阪府内の一部の自治体や教職員組合からは、子供たちを万博に招待する事業に反対する声も上がっております。
先日の奥村議員の一般質問の中で、学校行事として参加し、爆発事故が起きた場合、どこが責任を負うのかとの問いに対して、知事は、学校側あるいは引率した側に責任がある場合は、その学校関係が責任を取る、もし、その行った場所の不具合で、行った場所で事故が起きたら、行った場所の管理責任者が責任を負うことになろうかと思いますと御答弁されました。
現時点において、あちらこちらからメタンガスが検出されていることを承知の上で、県が子供たちを万博に招待する事業を実施する中、万が一、爆発事故が発生したとすれば、責任は、県やそれを承認した我々県議会にあると考えております。
私は、県議会万博推進議員連盟役員の立場であり、万博に対する思い入れは岸本知事と共有していると思いますが、子供たちに万博を体験させる前に、まずこれらのリスクを踏まえた上で、本当に招待するのかどうかの議論や、参加・不参加に関し小中学校への個別アンケート調査などが必要であると考えますが、知事のお考えをお聞かせください。
続きまして、教育の無償化についてでございます。
昨年6月議会、9月議会、12月議会においても一般質問をさせていただきました教育の無償化について、大阪府が今年度から高校等の授業料を段階的に無償化する制度についてですが、大阪府の子供たちが家庭の経済的事情等にかかわらず、自由に学校を選択できる機会を保障するため、高校等の授業料の無償化を行っております。
この大阪府の無償化制度については、大阪府内の学校だけではなく、大阪府民であれば、大阪府以外の近隣府県の高校等で、同制度に参加した学校に通う生徒も無償になることになっております。
この制度は、和歌山県内のほとんどの私立高校等が同制度に参加しております。そうなりますと、同じ高校に通っているのに、大阪府の生徒は授業料が無償、和歌山県の生徒は有償という状況になってしまいますが、生徒間で教育費に格差が生じてしまうことはあってはならない、そういうふうに考えております。
そのほか、東京都や奈良県においても、高校の授業料を無償化する独自の取組が実施されております。奈良県では、世帯収入の目安910万円未満とする所得制限があるものの、最大63万円まで授業料に対する補助があり、東京都では所得制限なく48万4000円まで授業料に対する補助があります。
昨年度、大阪府では、公立高校の志願者が減少し、公立高校の半数近い約70校が定員割れとなる一方で、私立高校を第1志望とする専願者が増加したと聞いております。
これまで知事は、高額所得者の優遇施策になるため、私立高校の授業料無償化には取り組まないと御答弁されてきましたが、今回の大阪府の高校受験の状況からすると、子供たちの進路選択に幅が広がった、これまで経済的な事情で私立、私学に通うことができなかった子供たちが私学を選択することができるようになったということが見受けられると思います。
そもそも国は、子ども・子育て支援法に基づき、児童手当の所得制限を今年12月からの支給分において撤廃し、対象を18歳まで広げるなど、国策として少子化対策を行っております。また、和歌山市では医療費が高校生までが無償であり、所得制限はありません。少子化対策として、時代の流れは所得制限撤廃となっております。
また、懸念すべき点として、繰り返し申し上げますが、大阪府在住であれば無償となるため、和歌山県から大阪府へ移住し、和歌山県あるいは大阪府の私立学校等へ通学する生徒もおられます。また、今後、大阪府に移住する学生が増えると考えます。その結果、和歌山県の若い世帯の人口が流出してしまわないか、そういうふうに心配しているところでございます。私は、常々より教育格差があってはならないと考えております。
そこで、知事にお伺いいたします。
家庭の収入にかかわらず、子供たちの選択肢を広げるという観点から、和歌山県においても大阪府や奈良県と同等までとは一気にいかないとしても、段階的に授業料無償化を実現すべきではないか、知事にお伺いいたします。
続きまして、県立中学校の学校給食について質問をさせていただきます。
県は、2024年10月から2025年3月まで、給食費を無償とする市町村に対し、学校給食費の一部を補助するとともに、県立特別支援学校に通う児童生徒等の学校給食費における保護者負担分を支援する施策を打ち出し、また、さきの議会では、仮に令和7年度、国がやらない場合でも、これを県としてやめるわけにはいかないと思いますと知事は御答弁されております。
学校給食費の無償化については、私も以前から提案していたところであり、今年度に限らず、来年度以降も続けてほしいと思っております。
一方、県立中学校は学校給食を実施していないため、無償化の恩恵を受けることはできません。そこで、2024年2月、和歌山県議会予算特別委員会で、和歌山市の給食センターが令和8年度からスタートするため、和歌山市と連携し、全ての県立中学校における給食実施はすぐにはできないとしても、先行して、和歌山市内の県立中学校だけでも給食が実施できないのかという質問をしたところ、知事は、校内に衛生管理が整った配膳室の設置が必要となるが、そのためのスペースがない。和歌山市内に限らず、なかなか現実的には難しいと考えるというような内容の御答弁をされました。
しかし、県立中学校に配膳室を確保するスペースがないのか、私は疑問に思っております。30市町村立の学校では、ほとんどの学校で学校給食を実施していますが、その中には、県立中学校より狭い学校も多くありますし、ほかの都道府県の中高一貫の学校で学校給食を実施しているところもあります。配膳室を設置した学校がどのような工夫をしたのか、調査して検証すれば、県立中学校でも学校給食を実施できる方法が見つかると私は考えております。
県立中学校で学校給食の実施に向けて配膳室を設置できる方法を研究するため、市町村や学校給食を実施しているほかの都道府県立中高一貫校へ調査及び検証していくべきであると考えるが、そのことにつきまして知事のお考えをお伺いいたします。
○議長(鈴木太雄君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
知事岸本周平君。
〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) お答え申し上げます。
今、林議員からは4問の御質問をいただきました。それぞれお答えを申し上げたいと思います。
まず、最初の御質問ですけれども、大阪・関西万博の目玉の一つである空飛ぶクルマについての御質問でありました。
和歌山県におきましても、大変夢のある空飛ぶクルマの事業の実用化に向けまして、独自の取組を進めてきたところであります。
例えば、空飛ぶクルマの離着陸場の候補となる場所につきまして、空域等の調査を行っております。それから、今、御指摘も林議員からいただきましたが、連携協定を締結いたしました民間企業と共にVRイベントを行うなど、県内での機運醸成にも努めてまいりました。
今、いろんな連携を結んでいる民間企業とも連絡を取りながら進めているんですけれども、空飛ぶクルマの機体開発の状況ですとか、それから国の認証取得に関するハードルの高さなどの課題もあるため、今後の進捗につきましては、予断にとらわれずに柔軟に対応してまいりたいと考えております。
まずは、県内で実証飛行を行っていただくと、この秋にも実証飛行を行う予定にしていただいております。実は、この際、実証飛行に私も乗りたいということでお願いをしてきたんですが、どうも国土交通省の許可の関係で、一般の人は乗れないというようなことで大変残念に思っておりますけれども、まずは実証飛行を繰り返すことで、県民の皆様にも興味を持っていただくとともに、社会全体で受け入れていただくように図っていきながら、県としては、もともと万博後に商用運航をしていくと、そのための離発着場を県内に設け、県としても民間事業者による空飛ぶクルマのビジネス展開が促進されますよう、これまで以上に、今後とも実用化に向けた取組は進めていきたいと考えております。
それから、第2問目であります。大阪・関西万博への小中学生の招待についての御懸念について御質問がありました。
万博会場におけるメタンガス噴出の対策や、災害発生時における避難方法につきましては、先日の奥村議員の質問にもお答えしましたが、子供たちが安心・安全に万博を体験できるよう、主催者である日本国際博覧会協会に対し、早急に対応策を示すよう申し入れたところであります。
さらに、そうは言っても、児童及び生徒あるいは保護者の皆さんの中には御不安をお持ちの方もいらっしゃると思います。当然だと思います。そのため、県では、現在県内の小中学校をはじめ関係者の皆様を対象に、順次説明会を開催しております。これは万博の内容だけではなくて、安心・安全の確保に向けた取組についても説明しておりますし、今度万博協会からお返事が来れば、そのお返事についてもしっかりと説明をしていきたいと思っております。
ただ、基本的に、万博に参加するかどうかは各学校ごとにお決めいただくということになります。したがいまして、その判断の参考資料をよく見ていただきながら、我々がお示しする資料を参考にしていただきながら、参加の意向につきましては、まず議員御指摘のとおり、参加の意向についてアンケートを実施したいと考えております。
それから、3問目であります。教育費の無償化、特に私学の高校の教育費の無償化についての御質問でありました。
これも再々お答えしてきたとおりでありまして、いろんなケースがあるので一概には言えませんけども、一般論として考えますと、私立の高校に通われる、行きたいと言われる方々は、一般論的には恵まれている御家庭が多いのではないかと推測ができます。
そういうことで、私立高校の授業料無償化に財源を使うのがよいのか、むしろ押しなべて全員、特に恵まれない家庭の方々も含めるような意味の支援のほうが同じ財源であれば有効ではないかという考え方を持っておりまして、今回、この10月からでありますけれども、全ての子供たちを対象にする学校給食費の無償化に財源を使わせていただくということに決めました。
また、議員から昨年度の大阪府の入試状況の御説明がございました。大阪府では、3年連続して定員に満たない府立高校は再編整備の対象となる可能性があると聞いております。実際そのような議論も行われているように報道がございました。長期的に見ますと、府立高校が減っていくということになりますと、むしろ選択の幅が狭められるということになろうかと存じます。
今後、私立高校等の授業料無償化が進むにつれて、どのような影響があるのかについても見極めさせていただきたいと思っております。そういう意味で申し上げますと、現時点におきましては、財源の問題もさることながら、無償化を導入することによってどんな影響が出るのかということも慎重に検討すべきだと考えておりますので、私としては、大阪府と同様の制度を創設するということは現時点では考えておりません。
4問目でございます。県立中学校の学校給食についての御質問でありました。
これにつきましても再々同じような答弁をさせていただいているんですけれども、どの学校給食におきましても、衛生管理の重要性、異物混入や食中毒を起こさないというようなことが大変重要であると考えておりますが、和歌山県の県立中学校は中高一貫でありまして、まず、学校給食を実施するためのスペースの確保もございます。それから高校と同じ時間帯なものですから、ほかの中学校に比べて昼休みの時間、昼食の時間が短くなっておりますので、そのような課題をどう克服していくのかという問題もあります。
ただ、議員の御指摘もありましたので、他の都道府県の学校給食を実施している中高一貫校や、県内の給食センターから給食を配達される学校を調査及び検証して、研究することについてはやりたいというふうに考えております。
○議長(鈴木太雄君) 林 隆一君。
〔林 隆一君、登壇〕
○林 隆一君 知事、すばらしい答弁ありがとうございます。
財政状況が厳しいということは十分承知しておりますので、ただ、給食の無償化というのは、主体としては、市町村になるわけですね。よく今言われることは、実際通っている生徒とか私学に通っている生徒、特に保護者から、大阪は無償なのに何で和歌山は無償じゃないのとか、県立中学校の給食の話もそうなんです。和歌山市は、給食費の無償化を行うんですね。尾花市長が本当に頑張ってされているなということで、和歌山県に先行としてやっていかれるということで、非常に評価されているというのがあります。
県は、なぜ、じゃ県立中学校ができないのかというのも、やはり県民からとってみたら不平不満の声が大きくなってくるのであろうというふうに思います。なかなか肯定的な声というのは小さいんですけど、何やとか否定的な声というのは結構大きくなってくるので、できましたら知事のこの任期期間中、私も知事の応援団の一人でございますので、任期期間中には何か、いやいや和歌山県も頑張っているよという、ちょっと形にしていただければというふうに思っております。
それでは、続いての項目に移ります。
続いて、県営住宅の入居時における自治会への加入についてです。県営住宅に入居申込みの際は、県から団地の自治会へ加入するように言われると確認しております。
自治会については、良好な地域社会の維持や形成に有効な組織であることは私も十分に認識しておりますが、自治会への加入は、自治会は任意の団体であり、本来加入しようがしまいが個人の自由なはずです。県営住宅へ入居申込みする際に、自治会への加入申込書を渡すということは、実質的に自治会への加入が半強制的になっているということではないでしょうか。
10数年前に、ある県営住宅にある自治会の会長が約4000万円という多額の自治会費と共益費を使い込んだという事案がありました。県はその補塡は一切せず、入居者等の負担になったということでございます。また、自治会の役員が新年会、忘年会などの費用に使っているという情報もあちらこちらで聞いております。自治会への加入が実質的に半強制的になっているのであれば、県には、自治会に対する監督責任があるのではないでしょうか。
そこで質問いたします。
自治会の加入について、入居する際に自治会に関する説明をきちんと行い、入居者に理解していただくために、文書での確認等を含め、どのように説明を行っているのでしょうか。自治会の趣旨やその役割について、入居者が正確に理解した上で加入するためにも、サインを求めたり書面を交わすなど検討できないのでしょうか。県営住宅の入居時における自治会への加入について、県土整備部長にお伺いいたします。
○議長(鈴木太雄君) 県土整備部長福本仁志君。
〔福本仁志君、登壇〕
○県土整備部長(福本仁志君) 県営住宅においては、公営住宅法により入居者に住宅または共同施設の保管義務が課せられております。また、団地内の円滑なコミュニケーションの確保や、子供の見守りなど防犯面の強化や災害時の対応など、安全・安心な団地づくりのためにも、入居者の皆様が共同で適切に維持管理をしていただく必要があります。
そのため、団地自治会を入居者で組織していただくとともに、全ての入居者に団地自治会の活動への協力と加入を強くお願いしているところです。
なお、団地自治会は自主的に運営されている任意の団体であり、県は監査・監督する立場ではありませんが、活動の適正化に関して必要に応じて助言を行うことは可能と考えております。
県営住宅への入居の際には、これまでも募集案内や住まいのしおり等を用い、団地自治会加入について説明しているところですが、趣旨や役割を分かりやすく書面にまとめ、引き続き丁寧に説明した上で、今後は署名を求めるなど、お互いの認識にそごが生じないような手法を検討してまいります。
○議長(鈴木太雄君) 林 隆一君。
〔林 隆一君、登壇〕
○林 隆一君 御答弁ありがとうございます。
本当に加入の際にそごが生じないように、引き続き、先ほどおっしゃられたように、サインを求めるとか、言った、言わないの話とはならないように、よくお願いいたします。
引き続いて質問のほう、入らせていただきます。
今月5日、6日に福島県に視察に行ってまいりました。
視察に行った福島県では、行政DXを進めるため、職員の意識改革のため研修の充実を図るとともに、デジタル技術を活用したペーパーレス化や、行政手続のオンライン化等を推進し、公務能力の向上や行政サービスの向上に取り組んでおりました。
また、震災からの復興・再生を目指し、避難地域12市町村のデジタル情報発信の推進や、対話型AI等のデジタル技術を有効に活用した授業の実践、健康アプリを活用した健康増進、中小企業等のデジタル化支援など、地域のDXの取組も積極的に行っておりました。
スマートシティAiCTには首都圏などのICT関連企業が集積し、首都圏から新たな人の流れを生み出し、若年層の地元定着や地域活力の維持発展に取り組んでおり、さらに、県と市町村が連携してDXを進めていくため、市町村がデジタル化・DXを推進するに当たっての課題解決を支援するICTアドバイザーを派遣するなどの施策を実施しているとのことでございました。
和歌山県においても、県庁の行政DXを推進するため、DX人材育成、ペーパーレス化やオンライン会議の推進、業務改善ツールの導入等に取り組んでいることは存じております。
ただ、県全体のDXを考えたときに、直接住民と接する業務が多い市町村のDXを進めていくことが非常に重要だと考えております。
そこで、総務部長にお伺いいたします。
今後、どのようにして市町村のDXを進めていかれるのか、お答えください。
○議長(鈴木太雄君) 総務部長吉村 顕君。
〔吉村 顕君、登壇〕
○総務部長(吉村 顕君) 御質問のとおり、市町村DX、デジタルトランスフォーメーションの推進は重要です。市町村によるDXの取組への支援といっても一くくりにできるものではなく、個々の市町村の実情に応じたきめ細やかな支援を講じております。
例えば、市町村によっては、情報システム担当者が1人しか配置されていない団体もあります。そのような中でも担当者を孤立させることなく行うことが重要であり、県からの支援と併せて市町村の担当者同士の横のつながりを構築していく取組を進めております。これにより、和歌山県では、全ての市町村がDXに関する課題を主体的に判断し、外部の支援を活用しながら推進できるようになることを目指しております。
具体的には、昨年度から複数の外部専門人材に市町村DXアドバイザーに就任していただき、首長・幹部、それから職員の両面に働きかけて、意識の醸成を図っております。
まず、全ての市町村長が集まる会議においてDXの推進をテーマにセミナーを行うだけでなく、市町村長同士が話し合うグループワークを行いました。あわせて、DXアドバイザーが個別に全ての市町村を訪問して首長や幹部と面談いたしました。特に要請があった市町村については、幹部や一般職員向けの研修等も追加的に実施しております。
また、市町村職員が日常的にDXに関する課題や困り事について相談できるよろず相談事業を立ち上げ、ビジネスチャットツールを活用しながら、相互に助け合えるコミュニティーの形成に努めております。
加えて昨年度は、紀北、紀南の2か所で市町村職員向けの合同研修会を開催し、25市町村48名の市町村職員が参加したところです。
これらの取組により、市町村における行政DX推進の機運醸成を強力に働きかけ、市町村が自律的にDXに取り組める体制を支援してまいります。
○議長(鈴木太雄君) 林 隆一君。
〔林 隆一君、登壇〕
○林 隆一君 御答弁いただき、どうもありがとうございます。
引き続き、御支援を続けていただきますようお願いいたします。
以上で、私の一般質問を終了いたします。御清聴いただき、ありがとうございました。(拍手)
○議長(鈴木太雄君) 以上で、林隆一君の質問が終了いたしました。
これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
この際、暫時休憩いたします。
午前11時1分休憩
────────────────────
午後1時0分再開
○議長(鈴木太雄君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
質疑及び一般質問を続行いたします。
25番谷口和樹君。
〔谷口和樹君、登壇〕(拍手)
○谷口和樹君 こんにちは。25番谷口和樹でございます。一般質問、よろしくお願いいたします。
まず一つ目、大阪・関西万博におけるライブエンターテインメントを利用した消費誘導について質問をさせていただきます。
ニューヨーク・ブロードウェイなどで常設されているTKTS、チケッツは、ビジネストリップや観光客の夜の自由時間をライブエンターテインメントへ消費誘導するコンテンツです。ブロードウェイのミュージカルや演劇などの当日券を通常のチケット価格よりも30%から50%程度割引された価格でチケットを購入できるようにされています。
日本では、関西版TKTSという事業で近畿経済産業局が大阪で実証実験をされており、また、現在は、民間事業者によって東京と大阪にて実用化されています。
御存じのとおり、大阪・関西万博来場前後に関西に滞在する観光客において、周辺に、より強い経済効果と観光満足度を上げるために、滞在中の可処分時間を周辺で遊興、消費につなげる取組や仕掛けが必要です。
大阪・関西万博にて関西万博版TKTSを場内もしくはウェブサイト内に採用し、当日のライブエンターテインメントを使って、和歌山県も含めた関西内への消費誘導や回遊誘導に取り組めないかという提案を和歌山県から関西万博博覧会協会にできないか、知事室長にお聞きをいたします。
○議長(鈴木太雄君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
知事室長北廣理人君。
〔北廣理人君、登壇〕
○知事室長(北廣理人君) 大阪・関西万博に来場される方々をいかに本県に誘客し、消費につなげていけるかが重要であることは承知をしております。
万博チケット購入者に対しましては、博覧会協会が運営している観光ポータルサイトにて、全国各地域の観光情報や商品情報をメールマガジンで発信し、万博開催の効果を全国に波及するよう取り組んでいます。
議員御提案のライブエンターテインメントにつきましては、年々市場規模が拡大傾向であり、万博への来場を目的に関西を訪れる方々が余暇時間を過ごすコンテンツとして有効であると考えています。
そのため、ライブエンターテインメントに関する情報を博覧会協会が管理運営するサイトに掲載できないか、博覧会協会に対し、申入れを行ってまいります。
○議長(鈴木太雄君) 谷口和樹君。
〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 ぜひよろしくお願いいたします。
それでは、二つ目の質問に入らせていただきます。
2番目、インド人向けベジタリアン飲食アプリの整備について。
小項目の1、インドからの誘客について質問をさせていただきます。
5月、和歌山県に来たインド・マハラシュトラ州、AFJの皆様方をアテンドしました。そのときの経験から、通常の日々の食事は、ベジタリアンとノンベジタリアンの方が混在する場合がございます。そういうときには、食材や調理法を知っているインド料理を提供するお店のほうが案内する中で重宝いたしました。
インドの方、特にベジタリアンの方にとって旅行の際の食の不安は、車のドライブに例えると、この先、ガソリンスタンドがあるかどうかというようなもので、旅の懸念事項であり、和歌山においても潜在的な周遊の際の大きな問題でもあります。
和歌山県において、今後インドからの誘客の必要性と併せて、インド人観光客の食の不安を取り除くために、今後どのような対応を想定しているでしょうか、知事にお聞きをいたします。
○議長(鈴木太雄君) 知事岸本周平君。
〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) 谷口議員の御質問にお答えいたします。
本県では、年間1万人程度の延べ宿泊者数を見込める10の国と地域を重点市場というふうに位置づけまして、インバウンドの誘客に取り組んできているところでございます。
一方で、和歌山県とインド・マハラシュトラ州は、観光分野拡大等を定めた相互協力に関する覚書を結び、これまで長い間、深い交流をしてまいりました。この点、谷口議員にも青少年交流の場では随分と汗をかいていただいて、その御貢献には改めて感謝を申し上げたいと存じます。
その上で、現在、インドからのインバウンドの割合につきましては、実は国全体としては大変少なくございます。和歌山県におきましても、1%にも至っておりません。将来的には、インドの経済発展とともに訪日旅行市場の拡大が見込める優良な市場とは認識しておりますけれども、現時点では、先ほど申し上げました重点市場の中には入っておりません。
県としては、当面の間、一定規模以上の誘客を見込める市場を重点的に取り扱うということを基本としつつ、今後の状況を踏まえて、多言語で飲食店やメニューの検索が可能なウェブサイトであります「EAT WAKAYAMA」による情報発信などにより、インドからの需要獲得に向けた取組の強化を行ってまいりたいと、そのように考えております。
○議長(鈴木太雄君) 谷口和樹君。
〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 ぜひ、少しでも人数が増えて、国際交流も深まるように、お取組をよろしくお願いしたいと思います。
続いて、小項目の二つ目の質問に入ります。インド人向け飲食アプリについて質問させていただきます。
今、出歩いているときに、欲しくなった情報というのは、スマホなど手持ちのデバイスから得るわけですが、持ち歩きやすいという反面、見にくいという課題も実際ありますので、どんどん少ない操作で情報を取り出したいというのが求められています。
全てのタイプの外国人観光客に日本人向けのウェブサイトなどを翻訳して情報提供するというのが今まででしたが、既に、その個人に合った情報を少ない操作で提供することで、旅の満足度や安全を高めたり、旅のリピート率を高めたりと、そういう方向にシフトをしております。
自治体には、今後、翻訳された全ての情報提供より、個人の欲しい情報、いわゆるリアルタイムの個別最適化した情報をどう気持ちよく届けるかが求められています。
和歌山県への誘客のための取組として、ベジタリアン、ヴィーガン、ハラルの訪日客向けに、各国別料理店を一括検索できるようなスマートフォン用アプリケーションを用意できないか、知事にお聞きをいたします。
○議長(鈴木太雄君) 知事。
〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) 今、谷口議員がおっしゃいましたように、インド人に限らないんですけれども、ベジタリアンとかヴィーガンとかハラルについて、とても強い関心を持っておられます。
実は、私自身、国会議員のときに、ベジタリアン・ヴィーガン議員連盟というのが超党派でありまして、役員をやっておりましたので、この重要性はよく分かっているつもりであります。
その上で、先ほど申し上げました「EAT WAKAYAMA」というところでは、ハラル、ベジタリアンや各種のアレルギーなどについて、宗教、信念、それぞれの体質に配慮した表記も行っております。旅行者の皆さんに安心して食事を楽しんでいただけるよう工夫しながらサイトの周知に努めてきたわけでありますけれども、引き続き、この「EAT WAKAYAMA」のサイトを活用して、インバウンド向けのできるだけ詳細な食の情報発信に努めてまいります。
○議長(鈴木太雄君) 谷口和樹君。
〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 少し再質問をお願いしたいと思います。
せんだって、田辺市を訪れた観光庁の髙橋長官のお話をお聞きしました。コロナ禍が明けた今、特に昨秋以降、他府県では、都市部以外においても外国人観光客がコロナ禍前よりもはるかに増加している地域もある中で、本県の数字とデータを見ると、県の対策というのが少し不十分であった面もあるのではないかなと感じています。
よく欧米の比率が多いという、特色で成果をアピールされることをよくお聞きするんですけども、実際、総数が先進県と比べ少ないので、反面、逆に言うと、県がアジア圏の誘客に失敗しているとも言えるかと思います。
今はアジア圏の旅行単価も上がっていますので、ぜひとも総数を増やすということも頭に入れつつ進めていただけたらなと思っています。
ぜひ岸本知事には、情報提供という意味ですけども、昔ながらの観光の在り方、情報提供の在り方をバージョンアップしていただきたいと思うところから、観光分野におけるデジタルデータを利活用した個別最適化した情報提供の必要性について、知事にもう一度、見解をお聞きいたします。
○議長(鈴木太雄君) 知事。
〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) 再質問にお答えしたいと思います。
和歌山県の観光の特色といたしまして、やはり高野山ですとか熊野といった聖地が中心であるということでありますので、どうしても精神性、それから持続可能性、静ひつ性という三つのSを求める欧米系の旅行者の比率が高まることはある程度やむを得ないと思っておりますけれども、結果として、比率ですので、アジア関係の方の比率が少ないということになりますけれども、その一事をもってアジアからの誘客に失敗しているということにつきましては、私はそのようには考えておりません。これからも、欧米、アジアにかかわらず、できる限り誘客には努めてまいりたいと思っております。
その上で、谷口議員御指摘のように、情報提供の仕方として、できるだけ使い勝手のいいアプリを開発すべきであるというのは全くおっしゃるとおりだと思います。現在のところは「Visit Wakayama」ということで、訪日旅行に関心の高い市場に対象を絞って情報発信をしていますけれども、財源の問題、人的資源の問題もありますので、当面の間は、私どもとしては「Visit Wakayama」を充実させていくということで対応したいと思っておりますけれども、今後の旅行者のニーズや市場の状況を見極めながら、デジタル技術の進化に応じて、議員御指摘のように、いろんな手法で情報提供していくということの重要性は十分理解しておりますので、そのような方向で検討してまいりたいと考えております。
○議長(鈴木太雄君) 谷口和樹君。
〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 失敗したという言い方、ちょっと少しきつかったですね。申し訳なかったです。ちょっと訂正させていただきたいと思います。
その上で、やはり情報提供の在り方が、国別にかかわらず、全ての外国の方に対応できる、これから先の手法であるということも言われておりますので、和歌山県には、ぜひその点を留意いただきながら、どこの国でもたくさん和歌山に来ていただけるように、そういう整備をデジタルを使ってやっていただけたらなと思っています。
それでは、三つ目の質問に入らせていただきます。
三つ目、Taniumと職員のデジタル環境の整備について質問をさせていただきます。
まず、小項目の1です。Taniumとフリーアドレス、リモートワーク導入について質問させていただきます。
クラウドを第1にという意味で、クラウド・バイ・デフォルト原則というのがあります。政府が取り扱う情報システムを構築する際に、第1候補としてクラウドサービスの利用を検討する方針のことです。
従来は、サーバー上に構築されるオンプレミス型が主流でしたが、クラウド型と比べてコスト面や調達の柔軟性に劣り、より利便性の高いクラウド型の情報システム構築が期待されています。
本来、Taniumは、企業のITインフラを保護し管理するためのクラウドセキュリティープラットフォームです。このプラットフォームは、リアルタイムでコンピューターやスマートフォンなどのデバイス、エンドポイントの状況を監視し、脅威を検出し対応することができ、これにより、問題が発生した際には即座に対応できるため、セキュリティーリスクを最小限に抑えることができると言われています。
また、Taniumは、数十万台のエンドポイントを一度に管理することができるため、大規模な企業でも高いパフォーマンスを発揮すると言われています。
和歌山県は、クラウドではなく、オンプレミス型でTaniumを運用していますが、組織全体のセキュリティー、特にリモートワークやフリーアドレスなどの仕事の仕方にとってのセキュリティーが想定されて、コロナ禍、2022年の導入になったかと考えます。
リモートワークは御存じの方が多いと思いますので割愛しますが、フリーアドレスとは、オフィスのワークスタイルの一つで、席を固定せず、その日、その時間に空いているデスクで仕事ができる形態を指します。近年、多様な働き方が重要視されており、企業や社員にとって、保管や持ち運ぶ資料の少ない適切なオフィスの形として注目されています。
職員の働き方改革という中で、現在のフリーアドレス、リモートワークの導入状況について、知事にお聞きをいたします。
○議長(鈴木太雄君) 知事。
〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) お答え申し上げます。
フリーアドレスについての御質問であります。これ、実験的に、1年前に総務部の2課でフリーアドレスの実証実験的な導入を行いました。そして、現時点で、今日現在、11の課にフリーアドレスが広がってきております。もちろん実験的にやっておりますので、まだまだ全庁的にはスタートしたばかりであります。
オフィス環境には、フリーアドレスなどいろんな形態がありますけれども、完全にそれができる部署とできない部署もありますので、業務の特性、あるいは職員の働き方に合わせて今後整備していきたいと考えております。
なので、今年度は、業務特性が異なる三つのタイプの課でパイロットオフィスを選定いたしまして、業務の見直し、そしてオフィス空間の最適化に取り組むということを行っていきたいと思っております。オフィス環境によって、ともかく職員の生産性を高めるという考え方を広げていきたいと思っております。
それから、リモートワークの一つであります在宅勤務制度につきましては、昨年10月から、幅広い職員が利用できる制度として試験運用を行っております。基本的には、自由に在宅勤務ができる形を取っておりまして、昨年度の職員165人が利用していただきました。
これらの取組をする中で、職員からは、職場のコミュニケーションが活性化したですとか、在宅で集中して事務を行った結果、能率向上にもつながったなどの意見も出ております。
ただ、このフリーアドレスを進めるには、ペーパーレス化が大前提であります。紙があったらフリーアドレスはできませんので、これが最大の課題でして、DXを進めてペーパーレスが完成するのに、3年、4年ぐらいかかりそうであります。
それから、議員御指摘の中でクラウドのお話もありました。本当でしたら、一遍にできるものなら全部クラウドに上げるということが望ましいんですけれども、私が2年前に、おととし就任してお話を聞いたときに、全く御指摘のとおりで県庁のDXが遅れておりまして、石器時代に来たような思いがいたしましたけれども、さりとて、今あるシステムをゼロから一遍に変えられないものですから、ちょっとずつ変えていかないといけないということもありまして、これも難しいんですね。魔法のつえはありませんので、これ、苦しいとこなんですけど、これは総務部の担当者も一生懸命やっている中で、どうしても最大限早くしても3年、4年かかる。フリーアドレス化のためには、ペーパーレス化が必要、ペーパーレス化ができたら、可能になります。
その上で、リモートワークも今できるだけ進めておりますので、仮に職員の3割がリモートワークで在宅勤務していただくと、フリーアドレスですと、課の面積が小さくて済みます。3割、4割減らせられます。そうしますと、今、県庁内は、御存じのとおり、会議室も取れないぐらい人口密度が高いんですけれども、オフィス環境もよくなるということで、ますます職員の働く生産性も上がるということでありますので、谷口議員と問題意識は共有していますけれども、もう少し3年ぐらいの目で、長い目で見守っていただければありがたいかと存じます。
○議長(鈴木太雄君) 谷口和樹君。
〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 ありがとうございます。そんなに言われたら、何か次からの質問がしにくくなってしまいました。
ちょっと引き続き、続けさせていただきます。二つ目の質問、そのまま続けさせていただきます。
二つ目の質問です。小項目2、サブスクリプションの自己負担と自己投資について質問をさせていただきます。
既にデジタルデバイスの普及は、日常生活から切り離せない存在です。そして、どの組織も業務効率化を求めており、デジタル技術の導入を進めています。
県においても、デジタル社会の推進のためには管理職を含めた職員のデジタルリテラシーの向上は必須であり、それは組織としての技術力に直結します。
現在、フリーアドレス、テレワークなど、働き方改革を進めていただいておりますけれども、業務用PCは持ち出しと使えるアプリが制限されますので、個人のPCを使い、業務に関わる調べ物や作業をすることも、生成AI等の進歩により、多くなると思います。
職員個人のPCにおける技術向上や調査のためのアプリにおいて、サブスクリプションに係る費用負担についても考える時期かと思い、質問をさせていただきます。
県職員の様々なデジタル技術やデジタルリテラシー向上のための自己負担と自己投資の考え方について教えてください。
また、個人のデバイスに様々なアプリケーションを取得するための費用を応分助成する制度ができないか、総務部長にお聞きをいたします。
○議長(鈴木太雄君) 総務部長吉村 顕君。
〔吉村 顕君、登壇〕
○総務部長(吉村 顕君) 日進月歩で進化するデジタル技術を業務に有効に活用していくことは重要です。
業務で使用するアプリケーションについては、動作環境やセキュリティー等を確認した上で導入し、運用ルールを定め、県の管理の下、使用しております。
新たなアプリケーションが利用されるようになるには、職員の興味関心が極めて重要であるというふうに思いますが、個人の取組だけで完結できるものではなく、組織として取り組む必要があります。このため、必要に応じ、試験的な利用環境を準備するなどして、必要性や効果等を検証することとしております。
また、職員がデジタル技術の習得に積極的に取り組むことは重要でありますので、外部のセミナーや研修等も取り入れ、継続的に知識やスキルの向上を図るように促してまいります。
なお、これらの取組の枠外において、職務における必要性や相当性が明らかでない中で、職員が個人的に利用するアプリケーションや情報基盤の費用までを助成することは考えておりません。
○議長(鈴木太雄君) 谷口和樹君。
〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 近年、若い方の離職率、総務部長の担当かと思うんですけども、若い方の離職率であったりとか、新採用の方の応募の数であったりとか、ここ数年、下がっているかと思います。当然、魅力的な仕事というのも大事かと思うんですけども、やっぱり民間企業と比べて、満足に能力を発揮できる環境、自分の成長できる環境というのは、やっぱり今の時代の若い人が求めていることかと思います。
そういう意味で、やはり制度、環境というのを整えていただけたらなと思いながら質問したんですけども、いずれまたそういうときも来るかと思いますので、ぜひともよろしくお願いいたします。
それでは、三つ目の質問に入らせていただきます。
三つ目、チャットボットの導入について質問させていただきます。
県だけではありませんが、公務員の離職率が年々高い状況で、原因の一つとして考えられるのが、窓口業務や問合せ等での直接ストレス、これが考えられると思います。そのストレスの緩和や窓口業務の効率化を想定しながら質問をさせていただきます。
自治体がチャットボットを導入して、市民向けの窓口を効率化している事例というのが増えています。
せんだって視察させていただいた福島県会津若松市では、LINE de ちゃチャット問い合わせサービスで、住民の問合せに対応し、24時間365日利用できるようなチャットボットを導入しています。
また、東京都港区では、多言語AIチャットという多言語対応のチャットボットを導入し、外国人観光客や住民のニーズに応えています。
これらの自治体は、チャットボットを通じて24時間対応や多言語対応などのメリットを生かし、自治体のDXを推進しています。
チャットボット導入などで業務効率化による窓口業務の対人ストレス緩和、業務効率化による時間短縮、衛生面での接触低減を実現できないか、知事にお聞きをいたします。
○議長(鈴木太雄君) 知事。
〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) お答え申し上げます。
まず、県の行政の在り方としまして、県民からのお問合せ、御相談、これに的確に答える必要がございます。その場合なんですけれども、当然その内容は多種多様でありますので、迅速かつ、しかも正確にお答えしないといけないわけであります。
今、議員が御指摘されましたチャットボットというのも非常に有効な対応方法の一つであると考えております。特に、今、AIが進んでいますので、さっき言いました正確性にも相当対応できるのではないかと考えております。
また、今、カスタマーハラスメントの問題が大きく取り上げられておりまして、これもこの議会で一般質問の中で、職員の病気のような話の御質問の中でもいただきましたけれども、県庁でもございます。カスタマーハラスメント的なものに対応するにも、チャットボットであれば、そういうことは避けられるわけでありますので、私としては、議員御指摘のとおり、一つの方法であると考えております。
その上で、どの業務が対応できるのか、あるいは、対面との比較をしたときの利点とか課題、それから、制度が改正されますので、制度改正されると、タイミングを合わせてチャットボットの内容も変えないといけないというようなアップデートのメンテナンスの問題などもありますけれども、私としては、チャットボットの導入については検討してまいりたいと考えております。
○議長(鈴木太雄君) 谷口和樹君。
〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 すみません。ぜひよろしくお願いいたします。
四つ目、和歌山県における今後のデータ連携基盤の構築について質問をさせていただきます。
データ連携基盤の構築と言いましたけども、正式には、データ連携基盤だけでなく、その利活用の仕組み自体の構築であることをまず申し上げておきます。
せんだって、福島県会津若松市のAiCTという施設に視察でお邪魔しました。会津若松市は、人口約12万人。データを利活用したまちづくりを13年前の2011年から取り組まれているということです。現在、データ連携基盤を核としたデジタル公共サービスを展開しながら、利用者同意、オプトインを得て集まったデータを様々な民間産業の革新に利用できるようにしています。民間産業はデータを解析し、さらに住民が快適に生活できるように開発されたサービス、アプリが、住民にフィードバックされるようになっています。
和歌山県はといいますと、まずはこの核となるデータ連携基盤の構築を含めた設計図がまだできていない状況で、和歌山県だけに限った話ではありませんが、今までの本県の取組に著しい遅れを感じています。
ぜひ岸本知事には、その手腕で、長年おざなりであった今までの致命的な遅れを挽回していただきたいとお願いするところでございます。
この福島でも展開されている取組の元にあるのが、日本政府の進めるスーパーシティ構想です。この構想は、2030年のデジタル社会を前倒しして実現すべく、最先端のデジタル技術を駆使して、より便利で快適な未来の都市を創造するプロジェクトです。
例えば、スーパーシティでは、AIやビッグデータを活用したスマートインフラが整備され、エネルギーの効率的な利用や災害時の迅速な対応が可能になります。これにより、住民は、より安全で快適な生活を送ることができます。さらに、オンライン診療や遠隔教育を普及し、地域に関係なく高品質な医療サービスや教育を受けることができるなど、スーパーシティ構想は、地域の課題を解決しながら、全ての人々に平等な機会を提供することを目指しています。
スーパーシティ構想の実現には、政府や自治体、開発する企業、そして同意してデータを提供する地域住民の協力が不可欠です。各分野の専門家が連携し、実際の運用データを基に改善を重ねながら、よりよいまちづくりを進めていきます。
このスーパーシティには、現在、2都市の特区があり、認定されたつくば市と大阪府の取組を対比すると、つくば市は研究開発を中心とした先端技術の実証実験に重点を置いているのに対し、大阪府は大都市特有の課題解決に向けた実用的なデジタル化に焦点を当てており、両者の取組は地域特性に応じたスーパーシティの実現に向けた重要な事例となっています。
そして、これらの取組の核となるのが、データ連携基盤であります。
データ連携基盤とは、あるシステムに蓄積したデータを集約・加工し、そのほかのシステムへ連結して活用するための仕組みです。
スーパーシティでは、交通情報、医療データ、エネルギー消費量などの多くの良質なデータをデータ連携基盤で共有し、効率的に利用します。例えば、交通データを使って渋滞を予測し、最適なルートを案内したり、医療データを使って健康管理をサポートしたりできます。
和歌山県として、今後必要とされる課題から例を挙げると、災害発生時のリアルタイム情報提供があります。
せんだって視察した福島県の防災アプリなどでは、現在地周辺の指定避難場所や避難所が表示されたり、ARカメラで被災した現場写真に重ねて避難路が表示されたりします。災害時にアプリがなくとも、いざとなったら聞いたら分かるわという方もおられるかもしれませんけれども、災害時の一人一人が聞く時間、迷う回数が数百、数千になることで、災害現場は必ず混乱します。
ですので、この時間と回数をなくすリアルタイムで個別最適化された避難や医療などの情報提供が命を救いますし、混乱を事前に制御するというのは、災害対策に取り組む自治体にとって一丁目一番地であるわけです。
防災対策の視点からも、データ連携基盤を核としたスーパーシティへとデジタルシフトしていくのは、県民の命を守るために避けられない備えでもあります。
インバウンドも含めた観光情報の個別最適化のデータ提供の必要性は、先ほど2の質問で申しましたけれども、人口減少と過疎高齢化が進む中で、デジタル技術を活用した行政情報の配信や住民とのやり取りなども先進地では始まっています。
和歌山県も、デジタル後進県、公共サービス後進県にならないように、また、他府県から取り残されないように、データ連携基盤を核としたデータ利活用の促進によるデジタル社会の推進と活用推進企業の取りまとめに進んでいただきたいところです。
持続的な行政運営から考えると、デジタルデータの利活用の投資の遅れが職員の負担を増やすほか、開発コスト増、行政効率悪化を招くのは全国で予測されているところです。
次に、項目にあるオプトインでデータ収集することの重要性についてお話しさせていただきます。
オプトインとは、住民が自分のデータを提供することに同意することです。データは、プライバシーに関わるため、住民の同意が必要です。オプトインによって、住民は安心してデータを提供でき、データの利用が広まります。また、住民が自分のデータがどのように使われるかを理解することで、データ利用に対する信頼も高まっていくと思います。
このように、データ連携基盤とオプトインでのデータ収集は、スーパーシティの実現にとって重要な要素です。データの適切な管理と利用によって、より便利で、より安全な生活が実現できるということです。
和歌山県で政策を進める上で、そもそも政策の目的となる社会課題の設定というのは、知事に委ねられます。デジタルシフトのように将来引き起こされる社会課題に備えるための政策立案は、リーダーの創造力に依存するところが大きいので、そういう意味でも、先進県から10数年遅れた部分を取り戻すために、これから知事に御期待するところでもあり、そういう思いで質問をさせていただいています。
この質問の要点は、人口減少や過疎化、東南海・南海地震など、来るべき社会課題に備えるための基礎となるデータ連携基盤を含めたコミュニケーションインフラの構築ですが、データの収集と産業利用の仕組みを踏まえた上で、今後、和歌山県において、データ連携基盤を構築する必要性についての考え方、また、オプトインについての考え方を知事にお聞きをいたします。よろしくお願いします。
○議長(鈴木太雄君) 知事。
〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) お答え申し上げます。
今、谷口議員からるる御説明をいただきましたデータ連携基盤、大変重要なものだと認識をしております。地域課題の解決や住民の利便性向上に大変有用なものだと考えております。したがいまして、国は、デジタル田園都市国家構想交付金等の補助制度によりまして、自治体によるデータ連携基盤整備を支援していると承知をしております。
それから、オプトインについてでありますけれども、取り扱うデータは様々でありますけれども、そのデータ連携基盤のうち、個人情報であるパーソナルデータを収集する際には、当然でありますけれども、提供者である本人同意を得る手続が必要であります。この本人同意の手続がオプトインということであります。オプトインによりまして収集した情報を利活用することで、提供するサービスの質がよくなるということも認識をしております。
今、谷口議員も御指摘いただいたスーパーシティ構想は、大変すばらしいことが書いてありまして、そのとおりになれば、これは本当にすばらしいことですし、また、そのようにしなければならないと思っておりますけれども、現時点におきましては絵に描いた餅でしかありません。ほとんどそのようにはなっておりません。
先進自治体もありますけれども、データ連携基盤を構築したものの、その個人情報がほとんど得られていないんですね。パーソナルデータがないと絵に描いた餅のままになってしまうものですから、実際に取り扱うデータと住民サービスや各種生活関連サービス自体の関連性がなかなかうまくいっていないと。したがいまして、構築費用が大変高い。もちろんランニングコストも相当かかります。そういう費用対効果を考えたときに、成功事例はほとんど見られないというふうに私は承知をしております。
したがいまして、データ連携基盤を構築するに当たりましては、どうやったら個人のパーソナルデータを得られるのか、それを活用してどのようなサービスを提供することが費用対効果を高めることになるのかということを見極めなければならないと、このように考えております。
そういう意味では、和歌山県がデータ連携基盤で後進県であるということは認めますけれども、遅れているがゆえに、先進県が成功するのをよく見定めて、成功すればそれをまねすればいいだけでありますので、当面、県としては、他府県における活用状況を注視しつつ、データ連携基盤の必要性や有効な活用方法については見守って研究してまいりたいと考えております。
○議長(鈴木太雄君) 谷口和樹君。
〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 ありがとうございます。
せんだって視察に行かせてもらった福島、会津若松市で、いろんなお話をお聞きさせていただいたんですけども、成功のラインが僕らにはちょっと分からないですけども、このデータ連携基盤を利用したポータルサイトをつくったところ、2か月ぐらいで1万件ぐらいのユーザー登録があったんですという話だったんです。
ポータルサイトに行くまでに、そこに行く用事がやっぱり要るんですよね。そこのポータルサイト、福島の場合は、災害のためのコンテンツであったりとか、住民サービスにつながるコンテンツであったりとか、市町村と連携しながら、行く用事がそのサイトの中にある。ですので、やっぱり利用する人が増える。増えるがゆえに、そのデータが集まっていく。そういう仕組みで、2か月、3か月で1万件ぐらいといったら、まあ、すごいなと思いながら聞いていたんですけども。
中には、やっぱりよき例をつくっているところもあるかと思うので、ぜひとも岸本知事には挽回をしていただくという思いを込めて、お願いするところでございます。
それでは、五つ目の質問に入らせていただきます。
プレミア和歌山事業の民間譲渡について。五つ目の質問に入らせていただきます。
プレミア和歌山については、2008年から、県が都市部などで、あらゆる県内産品の中から厳選基準を設けることでクリアした商品をプレミアと銘打ち、高付加価値商品を創り出すことで、消費者の購買意欲を高めつつ、効果的な首都圏プロモーションを進めるために、数多くある県内商品の中から選別できることが肝の制度でもあり、現在、1300余りの商品、446事業所が登録されています。
また同時に、プロモーションによって売りやすい基準のものをつくっていただくべく、厳しい選別をクリアするために、生産者、製造者の技術向上への投資も誘導するためのプログラムでもありました。
ただ、投資の責任の所在も最大登録数も設けられていないことから、増加し過ぎたという中で、プレミア感の低下を招いているという意見などから、今回廃止が決まったとお聞きをしています。
実際、和歌山県民的視点で見ると、増え過ぎているという意見も一部共感するところではありますが、人口の多い首都圏やアジア圏などの海外市場の規模、他府県の商品数から考えると、必ずしも多くはないのかなとも感じています。
また、プレミア和歌山の都心でのプロモーションは、効果も効率も過去例を見ない活況ぶりで、特にSNSなどでデザインや写真が映えたり、キャッチコピーが分かりやすく、軽くバズった経験も、県にとっては今までになく都心のプロモーションの貴重な成功体験で、職員の自尊心も生まれたのではないかと推測します。
一方、採択に至るまでの事業者の苦労、努力というのは、16年も積み重なれば、かなりのものであると思われます。
このようなことからも、プレミア和歌山の廃止について、非常にもったいないなと感じています。
もう一つ、もったいないなと感じる理由の一つが、インターネット上での資産価値です。
担当課から、プレミア和歌山のホームページの年間閲覧数を教えていただきました。年間78万件ということです。結構かなりの数なんじゃないかなと思うんです。例えば、和歌山の県民チャンネルのユーチューブなんかを見ると、やっぱりそれほど行政でアクセスに成功しているサイトって、そんなにないと思うんですよね。そういう意味でも、78万件という数字が成功事例ではないかなとも思っています。
実際、このサイトで購入できませんので、そこからリンクされたおいしく食べて和歌山モールや、わかやま紀州館オンラインショップ、また、ほかの各種オンライン販売サイトへ行くことから、消費者のゲートウエーとなっていると推測されます。
いずれにせよ、廃止されるプレミア和歌山ですけれども、今までの県による制度への投資額や維持費用、民間企業が登録に向けて研究開発や投資を進めた費用を考えると、全て捨ててしまうのは非常に惜しいところだと思います。
もちろん、それらの価値については試算をされた上での廃止だとは考えますけれども、現在の投資額や資産価値なんかも踏まえた上で、プレミア和歌山という事業を民間に譲渡するなりして継続することは、制度上可能かどうか、知事にお聞きをいたします。
○議長(鈴木太雄君) 知事。
〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) お答え申し上げます。
その前に、プレミア和歌山といいますのは、和歌山の県産品、今、実は県産品だけではなくて、かなり幅広いことになっているんですけれども、和歌山の県産品をできるだけ売り出すために、特にレベルの高い産品を選んでプロモーションをするという趣旨で、2008年からスタートしております。
今回、私どもは、この県産品の上質なものを特定して、県の総力を挙げて、日本だけじゃなくて世界的にも売り出していくという、その制度をやめるつもりは全くありませんので、そこだけ誤解のないようにお願いしたいと思います。ある意味、名前はともかく、この制度は続くというふうにまずお考えをいただきたいと思います。
2008年からスタートしまして、現在、これは議員も御指摘いただきましたように1300を超える県産品が認定されております。特に、この間、一定の水準で審査をさせていただきましたものですから、生産者、製造者の技術向上については大変な効果があったというふうに我々としては評価をしております。
ただ一方で、事業者の皆さんからのお声が大きかったのは、16回続いてきた中で1300ということで、プレミア感がなくなってしまったのではないか。特に、ある特定の加工品につきましては、物すごい数のプレミア和歌山の商品があるものですから、何がプレミアやねんという疑問の声もありましたので、本当の意味のプレミアなものを整理していったらどうかと。
それから、選ばれる過程で、我々としては、やっぱり国内だけじゃなくて世界にも売り出していきたいというような思いがあるんですけれども、実は、そのためには、これは商社さんから言われるんですけども、一定のロットがないと販売ルートに乗せてもらえないんですね。ところが、あまりにもたくさん認定した中で、そういうロットが出せるかどうかという観点がなかったものですから、比較的小規模な産品が認定されていますと商談にならないということもありました。
そういうことも考えまして、より厳選感が伝わり、よりプレミアな──まあ名前はともかくですね、そして、国内外にきちんと売り出せるような県産品の推奨制度を創設したいということで、今回、今までの制度とは違う制度を立てるという意味で、一旦、プレミア和歌山という名前でやってきた、割とたくさんの数を選ぶような制度は切替えをしましょうと、こういうことでございます。
それから、今おっしゃいましたインターネット上の価値という意味では、78万ビューというのは決して少なくはないんですけど、1日2000なんですね。もちろん、ほかの県のいろんなもの、サイトを考えますと、ほかのところがひど過ぎるものですから、よく見えるだけでありまして、1日2000のビューというのは、ちょっと私は野心的ではなさ過ぎるのではないかとも考えております。
それで、御質問の趣旨でございますけれども、民間に譲渡してはどうかという御質問でありました。
我々がやってきた県の事業につきまして、このプレミア和歌山の事業は、別に法律や政令に基づく事務処理ではありませんので、制度上、民間に引き継ぐ、あるいは売り渡すということは制度上は可能であります。ただ、我々は制度をやめるわけではありませんので、同じように、名前は違いますけど、今のプレミア和歌山のようなものは行政として続けますので、それと同じものを譲渡するということは論理的にもなかなか難しいし、バッティングしますので効果が半減するということもありますので、そこのところは、申し訳ありませんが、現在のところは考えていないということでございます。
○議長(鈴木太雄君) 谷口和樹君。
〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 ありがとうございます。
そもそも廃止するという勘違いを前提に質問していたので、ちょっと申し訳ないんですけども、やっぱり名前は変われども、制度も変えつつ、続けるということで言っていただいているので、これからにぜひ期待をしたいと思っています。
先ほど、1日のビューが2000ぐらいだと、まだまだ野心的ではないなというお話もあったので、ぜひ1桁ぐらい上がれるような、そういうサイトをつくれるような事業をぜひ知事に御期待しながら、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。(拍手)
○議長(鈴木太雄君) 以上で、谷口和樹君の質問が終了いたしました。
質疑及び一般質問を続行いたします。
41番尾﨑太郎君。
〔尾﨑太郎君、登壇〕(拍手)
○尾﨑太郎君 議長の許可を得ましたので、一般質問をいたします。
過日、第35回全国「みどりの愛護」のつどいに御臨席のため、秋篠宮皇嗣殿下、同妃殿下が御来県されましたことは、ひとしく県民の喜びとするところであります。
皇嗣とは、次の皇位は秋篠宮殿下がお継ぎになるということであります。国民の中には、悠仁親王殿下が今上陛下から皇位を引き継ぐと思っていらっしゃる方もいるようですので、あえて申し上げました。そして、さらに次の御代が、悠仁親王殿下の御代であります。
我が国の皇統は、126代、1代の例外もなく、男系でつないできました。父方をたどれば神武天皇に行き着くのです。
神武天皇は、天孫降臨のニニギノミコトのひ孫であり、ニニギノミコトはアマテラスオオミカミの孫です。神武天皇は、長らくその実在が疑われていましたが、近年では、実在していたとの多くの研究がなされています。神話の時代から2000年の長きにわたり連綿と続く皇統、まさに世界史の奇跡中の奇跡であります。
悠仁親王殿下の御誕生前、小泉首相は、女性天皇、女系天皇を認めるべく、皇室典範の改正を図ろうとしました。
大正天皇の皇孫であられる三笠宮寬仁親王殿下が文藝春秋に、「天皇さま その血の重み」と題した論考を発表し、女系天皇絶対反対の意向をお示しなさいました。にもかかわらず、女系天皇と女性天皇の区別もおぼつかない小泉首相は、皇室典範の改正に突き進んでいきました。例によって、法改正の根拠とするため、皇室典範に関する有識者会議が設置され、その報告に基づき、改正が図られようとしていたのです。
私は、当時、この膨大な報告書を全て読み、問題点を県議会での一般質問の形で指摘し、また、皇統を護持せんとする同志の方々と国民運動を展開していきました。しかし、ある意味、極めて強力な突破力を持つ小泉首相の前に、おのれの非力を嘆くばかりでした。が、神風が吹きました。今でもテレビで見たその光景が忘れられません。当時、官房長官であった安倍元総理が、秋篠宮妃殿下御懐妊のお知らせを小泉首相に耳打ちしたシーンです。はっと驚く小泉首相。私は、お子様は玉のような男子に違いないと確信しましたが、果たして悠仁親王殿下が御誕生になられました。
これを機に、潮が引くように、女性・女系天皇を画策する勢力は力を失い、令和の御代を迎えました。
しかし、今再び、皇統の危機が訪れようとしています。
今上陛下の嫡子である愛子内親王殿下を皇位に就けんとする運動です。愛子内親王殿下におかれては、お姿もりりしく成長なさり、立ち居振る舞いも洗練の極みで、国民の敬愛の念は深まるばかりであります。誠にありがたいことではありますが、これを利用して、愛子様こそ次の天皇にふさわしいとの声を国民の中に起こし、皇統を乱そうとする勢力がうごめいているのです。
近頃は、「SNSで国民の8割が女性天皇を容認」などとの記事が目につきます。秋篠宮への心ないバッシングもエスカレートし、果ては、陛下の大御心は女性天皇にあるなどとの言説を弄する者まで現れています。
今上陛下は、立皇嗣の礼において、壺切御剣を秋篠宮にお授けになりました。憲政史家の倉山満先生によれば、立皇嗣の礼は現行憲法の制約を受けますが、壺切御剣を授けるかどうかは天皇の意思ですので、授けられなくとも立皇嗣の礼は成立します。過去には授けられなかったこともありましたが、これを見ても、大御心は秋篠宮に皇統を移すことにあるのです。
短期間に浮かんでは消えるアイドルではあるまいし、愛子様はすてきだ、秋篠宮はけしからん、だから次は愛子天皇だ、のような浮薄な継承では、100代はおろか、皇統は数代で霧消してしまうことは必定であります。
反日勢力は、天皇制打倒を叫んでも、皇室が微動だにしないことを学びました。国民の皇室への尊崇の念は極めて深いのであります。遠回りのようでも、女性天皇を容認させることが皇室の終えんの始まりであることを彼らは正しく知りました。
126代にわたる天皇のうち、8名10代の男系の女性天皇がいました。これについては、男子の皇位継承候補者がいないので、男系女子の摂位を置いたと、いわゆる保守派も思っているようですが、筑波大学名誉教授の中川八洋先生によれば、かなりの数の皇位継承者はいるが、そのうち、特定な皇子に継承すべく、女性天皇が暫定的に即位したのが厳密な史実であるとのことであります。
8名の女性天皇は、全員独身を貫かれました。うち、4名の女性天皇については、皇后、皇太子妃の時代に結婚されていたことがありますが、配偶者、皇配である天皇、皇太子がおかくれになった後、すなわち皇配が不在となった後には、決してお子をなさないことを絶対として天皇になられたのであります。
女性天皇の御懐妊が厳に慎まれてきたことは不文の法であり、皇統永続の根幹をなすおきてであります。
称徳天皇以来、859年ぶりに即位した女性天皇である明正天皇が後光明天皇に譲位なされたのは、まだ満で二十歳のときでありましたが、その後、崩御なされるまで50年以上もお独りでありました。御成婚、御懐妊が可能であったにもかかわらず、いにしえの法に準じられたのです。御懐妊の禁止は、かくも絶対の法であります。
角田礼次郎内閣法制局長官は、昭和58年の参議院予算委員会における答弁で、「我が国において男系以外の女系の方が天皇になられたということは一切ない。そのお子様が皇位に就かれるというようなことはない」と答弁しています。
男系の女性天皇はあり得るとしても、次の男系のお世継ぎがなければ、皇統は断絶です。既にして、悠仁親王殿下までは皇室典範にのっとり皇位の継承が定まっているのにもかかわらず、心なくも、愛子天皇待望論などを流布させる勢力はまた皇位の継承に男女平等やジェンダーフリー、男女共同参画社会まで持ち出し、世論を喚起しようと画策しています。
男性も女性も人としての尊厳において平等であることは言うまでもありませんが、そもそも我が国においては、開闢以来、現行憲法の御代まで、皇室、皇族が世襲により地位を継承してきたことから、その身分については今日的な価値観とは次元を異にしていることは自明ではありませんか。
一般男性は絶対に皇族にはなれませんが、女性は婚姻によりなることができます。だからといって皇位継承の法が女性に配慮したものであるわけではありません。この法は、たった一つの目的のために存在します。それは皇統の永続。続くということ。続いていくということです。
皇統が男系により継承されてきた理由は、私には分かりません。恐らく合理的な説明は不可能でしょう。しかし、126代、2000年の伝統の前に、我々はこうべを垂れるべきではないでしょうか。連綿と続いてきたこと、そのものに価値があるのです。
人の世は複雑極まりないもので、合理的に割り切れるものではありません。還暦近くになって私も、ようやく身にしみて、そのことが分かってきました。
ゲーテは言います。「3000年の歴史から学ぶことを知らぬ者は、知ることもなく闇の中にいよ、その日その日を生くるとも」。
不世出の大学者、井上毅は、あらゆる古典を渉猟し、皇統を貫く法を発見しました。それが皇室典範として結実しています。
「さだめたる 国のおきては いにしえの 聖のきみの み声なりけり」、以前にも紹介した明治天皇の御製です。
幸いにも、菅総理時代にまとめられた皇位継承をめぐる有識者会議の報告書は、私は読んでいませんが、男系継承を明確に打ち出したとのことで、悠仁親王殿下への皇位の継承が大前提となっています。
安定的な皇位継承に関する与野党協議は、今国会会期末での合意形成を断念しました。女性皇族が結婚後も皇室に残る場合の夫と子供の身分の扱いなどについて与野党間の隔たりが大きいためとの報道がありました。理性は、2000年に及ぶ事実の前に沈黙すべきです。謙虚に、いにしえに学ぶことだけが、皇統を護持し得るのです。
世界史に登場する王朝は、永続のためにあらゆる方策を講じてきました。が、むなしく途絶えてきました。独り、我が国の皇統だけが世界史の奇跡として、さん然と輝いています。
国会での議論を待つよりほかはありませんが、この大切な局面で自民党の支持率が著しく低下していることが気がかりでなりません。
政治資金の不記載問題も大きな原因の一つには違いありませんが、凋落のきっかけは、やはりLGBT理解増進法の成立でありましょう。これによって、自民党はコアな支持層から見放されました。
振り返りますと、平成21年、自民党は8月の総選挙に惨敗し、野党に転落しました。麻生太郎総理は、敗戦の原因を「保守として十分でなかった。保守の理念が守られなかった」と語りましたが、具体的に何が十分でなかったのかについては言及しませんでした。
私は、新しい歴史教科書をつくる会のメンバーとして活動していましたが、教育問題について非常に頼りにしてきた中山成彬国土交通大臣の首を、中山先生が日教組の批判をしたということを理由に麻生総理が切ったことを覚えています。自民党は日教組と対峙してきたのではなかったのでしょうか。
航空幕僚長であった田母神氏の論文問題もありました。村山談話を否定した内容だとクレームがつき、免職に追い込まれたのです。これにも保守派は歯ぎしりしました。
麻生内閣の前は第1次安倍内閣でしたが、麻生氏も安倍氏も、最近世情を騒がせた自民党青年局長を経験されています。青年局は、党組織の中でも伝統的に特に保守色の強い組織で、私も所属していましたが、小泉内閣のときなど、女系天皇を容認しかねない事態に、当時の政調会長である中川秀直先生を青年局に招き、激しくやり合ったのは、いい思い出です。
また、第1次安倍内閣では、萩生田青年局長の下、全国の自民党県連青年局に、行き過ぎたジェンダーフリー教育の実例を集めよとの指示が出されたことも覚えています。
安部総理の後を引き受けた麻生総理率いる自民党は当然保守であろうと思っていたが、そうではなかったと国民が判断したのではないでしょうか。麻生総理自ら政権を振り返り、「保守として十分ではなかった」と言っているのですから。
敗軍の将となった麻生総理の真意が那辺にあったのかは分かりませんが、14年後、副総理としてLGBT理解増進法を成立させてしまいました。岸田内閣、自民党の支持率は、これを機に下降していきます。
同法については、党内でもかなりの慎重論、反対論があったように聞いています。例えば、自民党の西田昌司参議院議員は、「差別は許されない」という条文の一節について、「かなり厳しい対立を生むような言葉遣いで、日本の国柄に合わず」などとコメントしています。この条文は、「不当な差別はあってはならない」となり、「不当な」がつくことにより、保守派が一矢報いた形となりました。
青年局でも激論が交わされたのではないでしょうか。保守派は、せめて「性自認」を「性同一性」と修正するように迫りましたが、結局、「ジェンダーアイデンティティ」と、英語をそのまま条文の文言にするお粗末ぶり、外来語として国民の間に定着していない生の英語をそのまま法律の条文に使うとは、よほど成立を急いだのでありましょう。
同法第2条2に、「この法律において『ジェンダーアイデンティティ』とは、自己の属する性別についての認識に関するその同一性の有無又は程度に係る意識をいう」と定義していますが、そんな意識を表す日本語がないということは、我々の社会にはそのことを問題とする意識はなかったということです。それで特に不都合はなかったですけど、何か、であります。
DSMとは、アメリカ精神医学会が定義する精神障害、疾患の診断・統計マニュアルのことですが、同性愛がこの精神障害の定義から削除されたのは、何と1987年なのです。キリスト教文化圏では、20世紀後半まで、同性愛は病気であり、治療の対象でした。
旧約聖書の創世記には、同性愛にふけるソドムのまちを神が焼き払う話が出てきます。一神教の国々では、同性愛は罪であったのです。今でもイスラム教の国々では容認されてはいません。
我が国は、古事記の時代から明治維新で西洋文明の影響を受けるまでは、同性愛はありふれたものであり、特に差別の対象になどなってはいません。今だって、ボーイズラブなど、レディコミの定番でありましょう。
ジェンダーアイデンティティーが何であるかは正直よく分かりませんが、T、トランスジェンダー以外のLGBへの理解、性的指向の多様性に対する国民の理解なら、恐らく日本は相当進んでいるのではないでしょうか。これが必ずしも十分でないか現状に鑑み、理解を増進するなどと上から目線で法律に書いていますが、一体どこのどなたが日本国民の理解度をはかったのでしょう。
KADOKAWAの「あの子もトランスジェンダーになった」という衝撃的なタイトルの本が発売停止となりました。どんな圧力があったのかは知りませんが、ようやく産経新聞出版が「トランスジェンダーになりたい少女たち」と題して発売したので、早速読んでみました。著者は、アビゲイル・シュライアー女史で、原題は「Irreversible Damage」、回復不能な損傷です。アメリカでは大ベストセラーになりましたが、日本でも順調に売上げを伸ばしているようです。
性同一性障害と呼ばれていた性別違和に悩まされる人々は、かつてはほとんどが男の子で、全人口から見ればごく僅か、およそ0.01%ほどでしたが、この10年で状況は激変、西洋では性別違和を訴える少女が急増し、医学史上初めて、そのように自認する人々の中に、女性として生まれた少女たちが現れただけではなく、全体の大きな割合を占めるようになってしまったのはどうしてなのか、これが著者の本書執筆の動機となっています。
本書に書かれている現在アメリカで行われているLGBTの理念に基づく教育は、本議場で紹介するのは、とてもではないですが、はばかられます。あまりにも過激であり、普通の日本人なら到底理解できるものではありません。
アメリカでは、幼稚園から、生物学的なセックスと社会学的なジェンダーが多くの場合、別のものであると教えます。自認する性と生まれたときに与えられた性が完全に一致する人はいる。そういう人たちはシスジェンダーと呼ばれる。これは、性のこちら側を意味し、性の向かい側を意味するトランスジェンダーの対義語としてつくられた言葉です。
シスジェンダーという言葉は学校現場で用いられていますが、シスジェンダーはむしろ一般的ではないとされています。
著者は、自由に選べる料理がずらりと並ぶビュッフェのように、ジェンダーに関する様々なアイデンティティーを前にすれば、自我の定まっていない子供たちは混乱を来すのではないかと疑問を呈します。もっともでしょう。1万人のうち9999人は、もともと生物学的な性と自分の認識は一致しているのですから、それがわざわざ普通ではないと教えられれば、幼い自我はどうなってしまうのか。
本来のトランスジェンダーであれば幼少期から性別に違和感を感じるはずが、思春期から、あるいは驚くことにトランスジェンダーを名のってから性別に違和感を感じるというケースが出てきています。
アメリカでは、2016年から2017年の1年間で、女性から男性への性別適合手術が4倍に激増しているのです。
性別が不安定になり、違和感から、男性ホルモンであるテストステロンの投与を行う少女、性転換手術を受ける少女、ふと我に返るとき、彼女たちは、Irreversible Damage、修復できない傷を負ってしまっており、もはや取り返しがつかないのです。
この悲劇は、LGBTの理念、イデオロギーに基づくジェンダー教育と、それが醸し出した世の中の風潮にあるのではないかと本書は疑問を投げかけているのです。
特定の理念、イデオロギーから演繹される政策を推し進めることを警戒する姿勢が保守です。理性への懐疑です。人は間違う存在なのですから、取りあえず急進的なことはやめようよ。取り立てて不都合がないのなら、伝統や慣習は尊重しようよ。伝統や慣習には理解できない暗黙の知恵が詰まっているから、それぞれの国や地域にはそれぞれの歴史や成り立ちがあるのだから、お互いが違うということを認め合おうよ。おおむね保守とはこういうものでしょう。
理念から演繹された政策は、時に意図していたものとは全く逆の破壊的な結果をもたらすことがあります。自由、平等、友愛を掲げたフランス革命の実態は、保守主義の父として知られるエドマンド・バークが「フランス革命の省察」で明らかにしたように、血塗られたものでありました。特定の理念による急進主義的な政策には、常に懐疑の目を向けなければなりません。
LGBTを推進する人たちが主張するように、性差には文化的要素が影響を与えていることは事実でしょう。まさに、性ジェンダーには、創られる部分があるのです。であるのなら、欧米で行われているLGBT教育が新たな性の様相を創り出している可能性は排除できないのではないでしょうか。性の多様な在り方を互いに受け入れられる共生社会の実現を図るとはいいながら、社会全体としては新たな混乱を生んでいるのではないか。ジェンダークリニックを訪れる子供──そのほとんどが少女ですが──の数が4000%増加しているとのことですが、まるで感染症のパンデミックのようです。
ありていに言えば、欧米社会の現在の性の多様性の、特に少女におけるトランスジェンダーの著しい増加は創り出されたものである可能性があるというのが本書の主張です。少女たちはトランスジェンダーになりたいとさえ思うようになってしまっているのです。
さらに、著者は、政治権力が医学に与える影響について警鐘を鳴らしています。医学は本来サイエンスですが、何を病気と定義し、治療の対象とするのかについても、ポリティカル・コレクトネス、政治的な圧力により決まっていく危険性を指摘します。現在治療の対象となっている常識的には受け入れ難い性的症状も、思想的理由で性的多様性の一つになり得るというのです。
物議を醸した本書ではありますが、エコノミスト誌とロンドン・タイムズ紙の年間ベストブックに選ばれています。ぜひとも県庁関係各課の皆様には御一読をお薦めいたします。
もう1冊、御紹介しましょう。タイトルは「中年英語組」、著者は岸本周平氏であります。
この本は、大蔵官僚であった著者が、中年になってから、使える英語の習得のため悪戦苦闘し、ついにはアイビーリーグで教鞭を執るまでに至る体験に基づいた英語勉強法プラスアメリカ社会論です。
英語での論文の書き方にまで言及している本書は、著者のもともとのスペックが高いので読者を選びますが、著者が受験英語の最高峰を極めた東京大学法学部の出身のため、学校英語教育の在り方について考えるには大いに参考になります。
我々世代の英語の授業は、おおむね英語を正確に読むためのものでした。そういえば、我々の先人は、漢文を日本語で読む方法を発明しました。訓読みやレ点、返り点の発明は、独創的で、世界に例を見ないでしょう。これにより、漢籍を読むことには全く問題がなく、当時の先進国であった大陸の王朝の文献を学べたのでした。
ただし、会話となると、それこそ話は別で、通訳には唐通事が当たり、唐通事は通常は世襲され、その子弟は幼少の頃より唐語の教育がなされました。
この歴史が我が国の英語教育に影響を与えたのでしょうか。関係代名詞の訳し方など、漢文の読み下しそのものであるような気がします。おかげで私の英語力も御多分に漏れず、会話には全く使いものにならないレベルですが、辞書があれば、何とか英字新聞ぐらいは読むことができます。
では、現代の英語教育はいかにあるべきか。なるほど、英語を10年以上も勉強して、アメリカのレストランで注文も満足にできないようでは、一体何のための勉強だと思うのも無理はありません。言語の本質は会話であり、文字により言語を学ぶのは順序が逆のような気もします。しかし、学術的な業績の蓄積、発展、外交や他国との交渉、契約などは文字による記録なしにはあり得ませんので、正確な読解力を身につけることも極めて大切であります。学校教育においては、このバランスに配慮することが必要でしょう。
岸本氏の提言は、こうです。中学、高校では、しっかり英文法を教えるべきである。日常の英会話を教えることは重要である。ただし、会話を日本人の下手な発音で学ぶことは弊害のほうが大きい。日常の英会話は全てネーティブ・ランゲージ・スピーカーに教わる必要がある。しかし、これからはインターネットの時代であり、英語を話す機会よりも、インターネットの標準語である英語を読んだり、eメールで英語を書く機会のほうが圧倒的に増える。日本人の英語の先生には自信を持って英文法を教えてほしい。また、社会的には、片仮名英語はできる限り本来の英語の発音に似せて表記すべきと、御自分が「バレリ」の意味が全く分からず、それがバッテリー、電池だと分かったときの衝撃的な体験から語っています。
英語を母国語としない国民が正確に英語を読もうとすれば、5文型や英文法は大きな武器となります。というより、それ以外にはないと、英語学者の渡部昇一先生も述べておられました。受験英語は英会話には全く無力ですが、読み書きには威力を発揮します。岸本氏が短期間でアイビーリーグで講義ができるほどの高度な英語力を身につけられたのも、受験英語で鍛えられた英文法の素養があったからこそです。実はすごい英文法といったところでしょうか。
世界共通言語としてエスペラント語が考案され普及されようとしていた時代がありましたが、現在では、英語が世界共通言語の様相を呈しています。ネーティブではない人同士が英語で会話することは、日常の風景になっています。口語としての英語は、もはやネーティブの元を離れ、独自の運動法則で変化しているかのようです。
今や英語は、アングロサクソンだけでなく、世界中の人々とコミュニケーションができるツールとなりました。人と人とのコミュニケーションは、それ自体が喜び、楽しみを生みます。特に目的がなくても、おしゃべりはそれ自体が楽しいものです。
そこで、私は、従来のウェブを利用した英語学習に加えて、英語を学ぶネーティブ以外の生徒児童たちがおしゃべりをする場を設けてはどうかと思うのです。例えば、コリアやチャイニーズの生徒たちとZoom等で英語でおしゃべりをする。もちろんネーティブからきちんとした発音を学ぶことは大切ですが、非ネーティブ同士の会話は、お互いが懸命に相手の言うことを理解しようとするし、どちらも会話がゆっくりなので、案外通じやすいものです。そして、何よりも楽しい。取りあえず英語でしゃべってみること。英語を学ぶ者同士、友情も芽生えるでしょう。
英語を話す人は全世界で18億人程度ですが、ネーティブは4億人もいません。お国なまりの英語がスタンダードだとも言えるのです。
これまでの英語教育は、畳水練にすぎました。島国の日本では、そもそも英語を使う機会がなかったことも一因でしょう。ツールとしての英語は、あらゆる道具がそうであるように、使わずして上達はありません。自転車ですら、乗ってみなければ乗れるようにはなりません。さりとて、岸本氏のように留学というわけにはなかなかいかないでしょう。幸い、技術の進歩、ウェブは、英語学習に革命をもたらしつつあります。岸本氏も当時、電子辞書の威力に大いに感心し、活用されました。文明の利器は積極的に活用すべきです。
さて、畳水練と言えば、文字どおり畳水練が常態化している学習があります。和歌山市内の中学校のうち、3校にはプールが設置されておりませんが、それらの学校では、水泳の授業は座学で行われています。
学校教育法における小中学校の設置基準によれば、学校施設には必ずしもプールを併設しなければならないものではありません。とはいうものの、学区により、生徒への教育内容に差があるのは好ましいものではありません。
我々の時代とは違い、現代では、子供たちが自分たちだけでプールや海に泳ぎに行くことには抵抗があるでしょう。安全性に対する意識が以前とは全く違っている今日、泳ぎは自然に身につけるものではなくなってきています。経済的に余裕のある家庭では、民間の施設で水泳を習います。水泳は今やピアノやバレエなどと同じ習い事となっているのが実情でありましょう。
しかし、水泳は必須の学習課題であります。畳の上での水泳に一体どれほどの学習効果を期待できるものでしょうか。
学習指導要領では、水遊び、水泳運動を扱わないことのできる条件として、学校及びその近くに公営プール等の適切な水泳場がない場合を上げています。要は、適切な水泳場、プールがあれば、その利用を検討せよということでしょう。
近年では、プール施設があっても、生徒の意識の変化からか、水泳の実技授業での見学者が増えてきています。従来のけがや生理的現象のみならず、日焼けや熱中症のリスク、施設の老朽化による使い心地の悪さ、水着になることへの抵抗感などの理由が考えられます。
また、先生の立場になってみれば、水泳の指導というのはかなりの緊張を強いられるものでしょう。人命に関わる事故が起こる可能性もあるのですから、当然です。さらには、プールの管理や水質のチェックも毎日しなければなりません。多忙な教職員にとってみれば、座学で済むのなら、これ幸いとなるのは理解できなくもありません。
昨年、和歌山市議の方から、地元の児童生徒の保護者からプールの授業がないとの話があり、一緒に勉強を続けてまいりました。
神奈川県海老名市では、2011年までに市内にある19の小中学校全てのプールを廃止して、校外での授業に切り替えました。この背景には、プールの維持管理費の財政的負担があります。
和歌山市でも、プールは夏場だけの稼働であり、故障が多く、市内の小学校のプールは毎年どこかで修理が必要となり、使用できないそうであります。当然その学校での水泳の授業は座学となります。また、老朽化による新設には莫大な費用がかかり、費用対効果を考えれば、新設はちゅうちょするとのことでありました。
年間数十日しかない水泳授業のために、少子化が進行する中、各学校がそれぞれプールを維持していくのは負担が大き過ぎると感じている自治体は増えてきています。
スポーツ庁によれば、全国の小中学校に設置されているプール施設数は約2万2000か所で、25年前から約6000か所の減となり、設置割合も5ポイントの減となっています。
海老名市での試みを皮切りに、水泳授業の民間施設利用が全国に広がってきています。私の調べた限りでは14の都府県で行われており、お隣の大阪府でも、門真市、泉北郡忠岡町、貝塚市、和泉市、箕面市、岸和田市、枚方市、泉南市で実施されています。
千葉県佐倉市のアンケートでは、水泳授業の民間委託に関して、児童の98%が水泳授業を「楽しかった」と回答、さらに85%が「泳ぎが上手になった」と答えています。また、教員からは、「インストラクターが多く、安全確保を十分行うことができた」と肯定的な意見が寄せられています。
また、昨今の災害時における対応として、着衣水泳への関心が高まっていますが、この指導についても、民間施設での水泳授業の中に取り入れられているところもあるようです。
そこで、和歌山市でも実証授業ができないものかと思案していたところ、市議会の先生のお力もあり、市教育委員会と河西中学校の御理解を得て、昨年の秋に民間施設での水泳授業が実施されました。
今後の学校の管理運営の在り方については、2003年、中教審の中間報告で、「公立学校についても、特別なニーズに応える等の観点から、必要に応じ、教育活動そのものを含めた管理運営を、包括的に民間に委託することを可能とすることについて検討すべきとの提案がなされるようになってきた」とされているところですが、「義務教育を確実に保障する観点から、義務教育諸学校の管理運営を包括的に委託することについては、特に慎重に検討する必要がある」とされています。
今回の授業もこの点に留意し、教職員が立ち会い、民間施設のインストラクターは教員補助者の位置づけであり、当然、生徒の評価は教員が行っています。
アンケート調査の結果も、生徒、保護者、教職員それぞれにおおむね好評でありました。これについては、過日、私から県担当課にお伝えしております。
水泳授業における民間施設利用は、より快適な環境で専門的なスキルにより授業を受けられる生徒側、負担が軽減される教職員側、プールの維持管理費を削減したい行政サイドの三方よしとなる可能性のあるものです。
課題も見えてきています。第1に、生徒の施設への移動です。移動手段の確保をはじめ、移動時間をどう捉えるのかという問題があります。生徒の着用する水着の購入も課題ですし、授業カリキュラムの編成も検討しなければなりません。本年も2回目の授業に向けて和歌山市教育委員会で検討がなされていると聞いていますが、大いに期待したいところです。
以上を踏まえ、知事にお尋ねいたします。
県庁における英語を必要とする部局は、観光や企業誘致にとどまらず、年々増加していると思慮される。一定程度の英語スキルを身につけた職員の採用は行われているが、職員全体の英語スキルの底上げを図ることは、外国人との交渉がますます必要となる行政事務が増える今日、必須であると考える。
必要とされる県職員の英語能力はどのようなものだと考えるか。県職員の英語能力のレベルアップについて関心はあるか。意欲のある県職員の英語能力向上への支援制度はどのようになっているか。
次に、教育長にお尋ねします。
LGBT理解増進法第6条2には、「学校の設置者は、基本理念にのっとり、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関するその設置する学校の児童、生徒又は学生の理解の増進に関し、家庭及び地域住民その他の関係者の協力を得つつ、教育又は啓発、教育環境の整備、相談の機会の確保等を行うことにより性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する当該学校の児童等の理解の増進に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する施策に協力するよう努めるものとする」とある。理解の増進は、家庭及び地域住民の協力を得つつ行うべきであると解せられるところである。すなわち、家庭及び地域住民の協力を得られるような常識的な教育または啓発を行うべきであると考えるが、教育長の見解を問う。
他人とのコミュニケーションは楽しいものである。非英語圏の児童生徒たちが、異なる文化を持ちながら、英語でコミュニケーションを取る機会は、お互いの英語力向上に資すると考える。伝える楽しさ、伝わる喜びを学習に生かせるのではないか。また、人権教育の一環としても有益であるのではないか。英語の授業として、ウェブを利用した非英語圏の児童生徒同士のおしゃべりを提案する。
小中学校体育における水泳の実技授業をどのようなものとして認識しているか。小中学校水泳授業における民間の施設利用についてどのように考えるか。
以上お尋ねして、一般質問といたします。
○議長(鈴木太雄君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
知事岸本周平君。
〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) ただいまの御質問にお答えしたいと存じます。
その前に、尾﨑議員におかれましては、私が20年以上前に出版した本について読み込んでいただいたことに深く感謝を申し上げたいと存じます。
それから、私自身、一昨年、知事に就任しまして、大変驚いたことが一つあります。それは、和歌山県庁の国際的な活動が大変充実しているということでした。国際課の先輩方、あるいは歴代知事の皆さんのおかげだと思うんですけれども、例えばインドのマハラシュトラ州と長年の間、友好関係を結ぶほか、アジア各国とそれぞれ、もちろん中国山東省とかそういう特別なところ以外にも、長年の友好な関係をおつくりいただいていた。そして、ビジネス的な進出、観光産業との、現地の旅行会社等との連携、それから青少年・文化交流活動等、本当にすごい蓄積がありました。歴代国際課の職員の皆さんは、もちろん英語も堪能ですし、中国語のできる方も育っていただいておりました。
今後、新総合計画の議論をお願いするわけですけれども、人口が減っていく中、私は、恐らく国際化というのが一つのキーワードになるのではないだろうかと。一つは、外へ出ていくというビジネスや、あるいは青少年交流、文化交流という形で外へ出ていくこともそうでしょうし、あるいはインバウンドのお客様に来ていただく、あるいは資本ですね、外国資本、あるいは外国人材に来ていただくという総合的な国際環境を充実させることで、一つの大きなチャンスが生まれてくるんだろうと思っております。
その意味で、議員御指摘のとおり、英語を必要とする部署は恐らく多岐にわたってくるんだろうと思います。それから、そういう意味で、職員の英語スキルの向上というのは大変重要な課題になってくると思います。それも単なる日常会話というわけにはいきませんので、県職員が仕事の上でも実践的な英語力を発揮できるような、そういう必要性があるんだろうと考えております。
これまで長年の間、県では、意欲のある職員を公募により海外へ派遣しております。大変人員が不足する中ではありますけれども、これまでに、外務省とか自治体国際化協会などを通じまして延べ70人を超える職員を海外などへ派遣しております。現時点でも、6人の職員が海外に派遣されているところであります。これが一つの育て方。
もう一つは、職員が自律的にモチベーションを高めていただいて、自分で勉強していただくということであります。実は、これまで職員の自己研修に対して県として補助していたんですけれども、私が知事になりましてから、英会話教室は対象になっておりませんでしたが、英会話教室の受講料の補助もするようにいたしました。しかも、金額も、助成の上限も今5万円に引き上げたところであります。こういうことを通じて、今いらっしゃる職員の皆さんの英語のスキルの向上に努めてまいりたいと思っております。
一方で、先ほど申し上げましたように、これから和歌山県の活性化のためには、ビジネスや文化、青少年交流など、積極的に海外に打って出るということ、それから県を海外に開いて人材や資本を受け入れていく必要がある。そういうことですので、国際関係業務の充実を図ることは喫緊の課題であると考えております。
そうなりますと、スピード感を持って、英語能力あるいは国際的な職務経験のある職員を必要とします。育てるだけでは間に合いませんので、できることならば中途採用で、積極的にそういう方々を採用していきたいと。そのことで国際関係業務をさらに充実強化していきたいと考えておりますので、御指導よろしくお願い申し上げます。
○議長(鈴木太雄君) 教育長宮﨑 泉君。
〔宮﨑 泉君、登壇〕
○教育長(宮﨑 泉君) 3点、御質問をいただきました。
まず、LGBT理解増進法における児童生徒への教育ということでございますが、県教育委員会では、性的指向及びジェンダーアイデンティティーに係る児童生徒に対するきめ細かな対応を推進しており、教職員を対象とした研修会等を通じて、自他の人権を尊重できる心情や態度を育む教育に取り組んでいます。
また、性に関する指導の手引を活用し、児童生徒の発達の段階を踏まえることや学校全体で共通理解を図ること、保護者や地域の理解を得ることに配慮しながら指導するように周知しています。
なお、各学校においては、本法案の成立前から、悩みや不安を抱える児童生徒が安心して学校生活を送れるよう、慎重に環境面の整備や心情等に配慮した対応に取り組んでいます。
県教育委員会では、今後も引き続き、児童生徒一人一人に寄り添ったその時々に応じた支援や多様性を認め合う教育に取り組んでまいります。
続きまして、ウェブを活用した英語授業でございますが、英語教育において、学ぶことの楽しさや意義は、英語を使って自分の意見を相手に伝えたり、相手の考えが理解できたりするところにあります。このような体験の中に生まれる、もっとうまく伝えたい、もっと上達したいという学ぶ喜びを大切にしたいと考えます。
県では、小学校段階から、外国語指導講師等との英会話を実施したり、アメリカやオーストラリアだけでなく、中国やタイといった非英語圏の学校とのオンライン交流等を行ったりするなど、実際に英語で積極的に会話する機会を設けています。今後も、このような機会を増やしていくことが望ましいと思います。
このようにして、児童生徒が英語に親しみながら自分を表現し、伝え合う経験を重ねることは、自己実現や他者理解につながることになり、そのことがさらに学びのモチベーションを上げ、英語によるコミュニケーション力の向上に資するものであると考えます。
続きまして、小中学校体育における水泳の実技授業についてであります。
県内の公立小学校の約14%、中学校の約44%が自校に水泳場がない現状です。
学習指導要領の水泳の指導において、適切な水泳場の確保が困難な場合には水泳実技を扱わないことができることとなっていますが、水泳の事故防止に関する心得については、必ず取り上げ、生命を守るための学習との関連を図ることとされています。
しかしながら、水泳の楽しさや喜びを味わったり技術を身につけたりするために、実技を伴う学習が有効であると考えます。
公立のプールを活用したり、議員がおっしゃるように民間の施設を活用し、教員とインストラクターが連携した指導をすることは大変効果的であると思います。
今後、各地域の実態に応じた工夫を講じることができるよう、市町村教育委員会に対し、取組事例を紹介してまいります。
○議長(鈴木太雄君) 答弁漏れはありませんか。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(鈴木太雄君) 再質問を許します。
〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(鈴木太雄君) 以上で、尾﨑太郎君の質問が終了いたしました。(拍手)
お諮りいたします。質疑及び一般質問を終結することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(鈴木太雄君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決定いたしました。
次に日程第3、議案等の付託について申し上げます。
配付しております議案付託表のとおり、議案第98号から議案第115号まで並びに報第1号及び報第2号は所管の常任委員会に付託いたします。
お諮りいたします。6月25日及び26日は常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(鈴木太雄君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決定いたしました。
次会は、6月27日定刻より会議を開きます。
本日は、これをもって散会いたします。
午後2時41分散会