令和5年12月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(全文)


◆ 汎用性を考慮してJIS第1・2水準文字の範囲で表示しているものもあるため、人名等、会議録正本とは一部表記の異なることがあります。人名等の正しい表記については「人名等の正しい表記」をご覧ください。

令和5年12月 和歌山県議会定例会会議録 第4号

議事日程 第4号
 令和5年12月12日(火曜日)
 午前10時開議
 第1 議案第126号から議案第168号まで(質疑)
 第2 一般質問
────────────────────
会議に付した事件
 第1 議案第126号から議案第168号まで(質疑)
 第2 一般質問
────────────────────
出席議員(41人)
 1番 坂本佳隆
 2番 三栖拓也
 3番 秋月史成
 4番 川畑哲哉
 5番 藤山将材
 6番 森 礼子
 8番 尾崎要二
 9番 高田英亮
 10番 玉木久登
 11番 佐藤武治
 12番 濱口太史
 13番 鈴木太雄
 14番 冨安民浩
 15番 吉井和視
 16番 鈴木德久
 17番 玄素彰人
 18番 岩田弘彦
 19番 中本浩精
 20番 中村裕一
 21番 谷 洋一
 22番 山家敏宏
 23番 北山慎一
 24番 堀 龍雄
 25番 谷口和樹
 26番 新島 雄
 27番 山下直也
 28番 小川浩樹
 29番 中尾友紀
 30番 岩井弘次
 31番 藤本眞利子
 32番 浦口高典
 33番 山田正彦
 34番 坂本 登
 35番 小西政宏
 36番 浦平美博
 37番 中西 徹
 38番 林 隆一
 39番 片桐章浩
 40番 奥村規子
 41番 尾﨑太郎
 42番 長坂隆司
欠席議員(1人)
 7番 井出益弘
────────────────────
説明のため出席した者
 知事         岸本周平
 副知事        下 宏
 理事         田嶋久嗣
 知事室長       北廣理人
 危機管理監      福田充宏
 総務部長       吉村 顕
 企画部長       前 昌治
 地域振興監      赤坂武彦
 環境生活部長     山本祥生
 福祉保健部長     今西宏行
 商工観光労働部長   三龍正人
 農林水産部長     山本佳之
 県土整備部長     福本仁志
 会計管理者      﨑山秀樹
 教育長        宮﨑 泉
 公安委員会委員    細江美則
 警察本部長      山﨑洋平
 人事委員会委員長   平田健正
 代表監査委員     森田康友
 選挙管理委員会委員長 小濱孝夫
────────────────────
職務のため出席した事務局職員
 事務局長       林 伸幸
 次長(秘書広報室長事務取扱)
            萩原 享
 議事課長       長田和直
 議事課副課長     岩谷隆哉
 議事課議事班長    伊賀顕正
 議事課主任      菅野清久
 議事課副主査     西 智生
 議事課副主査     林 貞男
 総務課長       葛城泰洋
 政策調査課長     岩井紀生
────────────────────
  午前10時0分開議
○議長(濱口太史君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第126号から議案第168号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、併せて日程第2、一般質問を行います。
 5番藤山将材君。
  〔藤山将材君、登壇〕(拍手)
○藤山将材君 皆さん、おはようございます。
 一般質問の3日目、1番目の登壇者として、ただいま濱口議長から許可をいただきました。
 今回取り上げます項目は、県立自然博物館についてでございますが、この件につきましては、令和4年度の今年の2月定例会で取り上げました。プロセスがおかしい、約束は守れという立場で質問させていただきました。その後も6月定例会、そして9月定例会、文教委員会において議論を重ねてまいりましたが、海南市に対してあまりに失礼で配慮に欠けた対応が続いておりますので、今議会でも、今回は大きな柱4項目で質問をしてまいります。
 まず、1問目の自然博物館の移転問題について伺います。
 9月定例会の文教委員会で、教育長は私の質問に対し、わんぱく公園への水族館の移転が難しい状況の中で海南市と協議を行ってきたが、合意には至らなかったため、大野中への移転を断念する、海南市に非があったとは考えていない、海南市に迷惑をかけたと思っている、海南市の意見を伺いながら、現地での建て替えなども含めて考えていきたいなどと答弁されました。
 その一方、岸本知事は、10月3日の定例記者会見で、移転したいという要望が海南市からあった、自然科学博物館を海南市に提案したが、それは必要ないと言われたので、海南市から要望のあった移転の話がなくなった、施設そのものが必要かどうかも含めて、有識者の皆さんに御議論をいただく、私の判断基準は第三者の報告書によるものなどと発言をされました。
 後日、会見での発言について、岸本知事から、長期総合計画を受けて海南市から要望を受けたという訂正というか補足がありましたが、知事と教育長の発言には大きな矛盾があるように感じるので、確認します。
 まず、移転要望から断念までの経緯ですが、初めは、県が水族展示機能ごと内陸へ移転させたいと言い始め、2017年度から2026年度の和歌山県長期総合計画に「県立自然博物館を移転・リニューアル」すると記載し、要望書を出してほしいと海南市に頼みました。それを受けて、海南市が移転するならこの場所でどうかと海南市大野中の土地を候補に上げる要望書を提出しました。県も大野中へ移転する、当然水族展示機能ごと移転するといった意向を示し、さらには切土部分の土地が望ましいと県が要望したため、海南市は県の意向に沿って新たに土地を取得、造成して、自然博物館が移転する用地を準備していました。
 ところが今回、県が突然、移転するなら水族展示機能をなくすと言い始めました。海南市は、約束が違うと怒りたいところを、県民のためにも県立自然博物館の水族展示機能を存続させてほしい、そのためには市も協力するという姿勢を示したというのが今回の経緯、海南市の意向であります。
 繰り返し申し上げますが、海南市が移転を要望したから県が動き始めたのではなく、そもそも県が移転をすると言い出し、その候補地を海南市が提案して、市のお金で準備したという事実はしっかりと確認をしていただきたい。
 その上で、知事の記者会見の発言で問題なのは、まるで海南市が今の場所から移転させてほしいと言い始めたかのように聞こえる点と、県からいろいろ提案したのに海南市が一方的に断ったかのような伝わり方をしている点でありますが、なぜこのような事実誤認が起こるのでしょうか。
 9月11日の知事の記者会見でも、知事は海南市に投げている段階と発言し、その後の文教委員会で、教育長は「県にボールがあると認識していたが、知事への報告の際に、説明が不十分であった」とおわびをしています。今回、再び同じような事実誤認が起こったわけですが、教育委員会は知事に対し、てんまつをどのように説明しているのか疑問であります。
 そこで、質問です。
 1点目、移転要望から断念までの経緯について、知事はどのように認識しているのでしょうか。
 2番目、県の要望を受け、海南市が新たに取得、造成した自然博物館の移転予定地に対し、県の責任をどのように考えているのでしょうか。
 3番目、先ほども申し上げたとおり、知事の事実誤認による発言は10月3日に限った話ではありません。一体、教育委員会は知事に対し、どのように状況を説明しているのでしょうか。自然博物館に関連するだけで9月11日と10月3日の2回ありました。問題を指摘したところ、現在は知事の定例記者会見の動画に訂正のテロップが入っていますが、このような事実誤認を防ぐために、庁内の情報共有の在り方を見直すべきではないのでしょうか、知事にお尋ねをいたします。
○議長(濱口太史君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
 知事岸本周平君。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) ありがとうございます。
 藤山議員から3問の御質問をいただきましたので、随時お答えを申し上げたいと存じます。
 自然博物館の移転・リニューアルにつきましては、2017年4月に策定した県長期総合計画に記載され、2018年8月に海南市から移転先に関する要望書の提出があったと認識しております。
 移転・リニューアルに向けて、2023年に和歌山県立自然博物館施設整備計画を策定する中で、水族館機能の移転については様々な課題があることが判明したため、海南市と協議の結果、移転を断念したわけであります。
 続きまして、2問目でございます。
 和歌山県といたしましては、よりよい博物館施設の整備を目指し、海南市と協議を行ってまいってきたところでありますけれども、残念ながら合意には至りませんでした。
 予定地におきまして、海南市では、防災公園事業をお進めになると承知しております。海南市から御要望があれば、その事業実施に向けた助言を県として行ってまいりたいと考えております。
 それから、情報共有の在り方について御質問がございました。
 これまでも、教育委員会からは適宜状況の説明を受けてまいっておりましたけれども、結果として会見内容が訂正される事態になりました。今後、情報共有の在り方について十分留意するよう、教育委員会に対しては指示したところであります。
○議長(濱口太史君) 藤山将材君。
  〔藤山将材君、登壇〕
○藤山将材君 答弁いただきました。
 まず、三つ目の情報共有の在り方についてですが、留意を促すということでございますけれども、これ、そういう類いのもんじゃない一面もあると思っております。
 この問題を指摘した際に、教育委員会の担当の局長、課長に来ていただきました。これは事実誤認ではないのかという話をした際に、事実誤認だとあなた方が思うんであれば、知事のところへ発言の真意を聞きに行かなあかんの違いますかと言ったら、よう行きませんとか言うんですね。なら一緒に行ってあげますよと言って、知事室に電話して日程取りに行ったんですけど、ちょっとそのとき知事が不在だったんで行けなかったんですけれども、そのほかにも多々、今回のこの件に関しては、教育委員会に対して非常に不信感を持っています。
 昨日もこの本会議場で、教育長から教育委員会の部下に対して、議員と面談する際には録音するような、そういうお達しが出ているというふうな答弁ありましたけども、私とその職員の方の音声が残っているんであれば、ぜひ知事に聞いていただきたいというふうに思います。だから、なぜあなた方は本当のてんまつを知事に言わないんだと、知事を裸の王様にするつもりですかということを大分やり合ってきたんですけども、その辺よろしくお願いしたいと思います。
 そして、一つ目の認識についてでありますけれども、10月3日の知事の定例記者会見では、海南市から要望があったので移転を検討したという認識のように感じましたが、その点は改めていただけたようで、安心をいたしました。
 その点は安心しましたが、長期総合計画の掲載を受けて、平成30年に海南市から要望を出したのは表面上の話であり、県も了解の上で条件をクリアする移転用地として提出したものであります。県が合意をしているからこそ、海南市は多額の予算を計上し、造成工事が進んでいるわけで、県は何度も現地確認もしているそうですし、合意をしたからこそ現に用地造成まで始まっているわけであります。平地の少ない海南市で、県が求めた条件に合う土地を市が用意するのは至難の業だったというふうに思います。しかも、県有施設なのに、土地の無償提供を要求しておきながら、苦労して期限に間に合わせた土地をキャンセルするとは、まともなやり方ではないというふうに思います。
 海南市から要望があれば、県全体で事業実施に向けた助言などを行っていきたいとの答弁でありましたが、私は、県の責任において、助言だけではなく、海南市に対し相応の支援をすべきと考えますが、いま一度、知事の考えをお尋ねいたします。
○議長(濱口太史君) 知事。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) お答え申し上げます。
 先ほども答弁させていただきましたように、海南市が予定地を防災公園事業としてお進めになるというふうに承知しております。仮に海南市から御要望があれば、事業実施に向けた助言を行ってまいりたいと考えております。
○議長(濱口太史君) 藤山将材君。
  〔藤山将材君、登壇〕
○藤山将材君 今日、傍聴席に市議会の方も来られてますけれども、この件については、自然博物館が来ると信じて判こを押していただいた約60名の方々の思いとか、そういうのだけじゃなくて、この3億円近い用地取得にかかった土地、そして海南市の行政的な無駄になってしまったコスト、そして議案を可決した市議会の責任等々、どうお考えになられてるんでしょうか。
 これ、仮に海南市の財政に大きな損害を与えたとして、海南市や市議会が訴えられたらどうするんですか。県は知らんぷりですか。そうじゃないんでしょう。やっぱりこれは海南市と県だけの問題じゃなくて、ほかの29市町村も見てると思います。これから本当に県と事業をやって大丈夫かと、海南市みたいな目に遭わないのかと皆心配して見てると思います。ぜひとも善処していただくことを期待しておきますけれども、これ、行政間でこんな話を私聞いたことないですが、市民の方々から、これ和歌山県版の八ッ場ダムかとか、そんなことも言われたりもします。そういったことで、何とかこれ、県が海南市から要望があればとかいうんではなくて、やはり積極的に支援に乗り出していただきたいというふうに思います。
 このままでは、これ、一般的に世間ではこういったことを詐欺といいますので、それだけ申し上げて、次の項に移ります。
 2番目の柱として、和歌山県立自然博物館施設整備基本計画について伺います。
 まず、10月3日の定例記者会見で、知事は「第三者の報告書」という表現をしましたが、和歌山県立自然博物館施設整備基本計画策定業務として、長期総合計画に記載した移転・リニューアルに向けて県が発注した県の計画であり、第三者の報告書ではありません。定例記者会見では、3月31日までに成果物として納品され、予算的なことも書かれており、費用面での推計等が難しいので、慎重に検討しているということでありました。
 実際、この基本計画が教育委員会から提供されたのは6月の末、私が公文書開示請求の手続をして、初めて県の教育委員会から提供を受けました。これも正確には、成果物、基本計画を見せてくださいと教育委員会にお願いしましたら、出せませんと言われました。どうして税金で作った成果物を見れないんですかということで、それじゃということで開示請求の手続に行こうとしたら持ってきてくれたというふうなありさまで、このことも非常に不信感を覚えましたね。
 内容を見てみますと、水族展示ありの状態での移転案と水族展示なしの移転案を比較し、イニシャルコストは100対75、ランニングコストは100対30という、非常にざっくりとした数字しか書かれていません。全9章のうち第5章までは水族館移転を前提として書かれており、中には、テーマごとの大型水槽を複数設置やウミガメ水槽といった表記が見られますが、第6章以降、突然、水族展示機能を持たない施設を建設する案が浮上し、最後まで第1案と第2案が併記されたままであります。
 本来であれば、次の段階、基本設計へ進むための基本計画のはずが、基本計画と呼べるような仕上がりになっておらず、作成途中で何らかの方針転換がなされたのではないかと考えています。
 そこで、教育長に質問です。
 これまで、県の基本計画でこのような内容のものは記憶にありませんが、一体いつ、どのタイミングで、どういう理由で方針転換がなされたのか、最後まで2案併記されている状態で、成果物として問題ないという認識なのでしょうか。
 また、県が税金を使って作成した基本計画を公表していない理由は何でしょうか。知事は3月9日に「基本的に公表されるものだ」と発言されています。3月31日までに成果物は出ているのに、6月末、公文書開示請求するまで誰にも提供されず、海南市に提示されたのも7月に入ってからだったと伺っていますが、遅れた理由は何でしょうか、お尋ねいたします。
○議長(濱口太史君) 教育長宮﨑 泉君。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○教育長(宮﨑 泉君) 基本計画は、現施設の構造、設備やアスベスト関連調査などの基礎調査を実施した上で、移転等の検討を行う目的で2022年9月に委託契約しております。水族館機能の移転のための方法を検討、研究しておりましたが、多大な費用がかかる見通しとなりました。そこで、同年12月に、それらの様々な課題を盛り込んで、基本計画として取りまとめることとしました。
 今年度になって、海南市が示した意向を踏まえ、教育委員会において、今後の進め方についてさらに検討を重ねてまいりました。公表が遅れたのは、一定の方向性を示して公表することが望ましいと考えたためであります。
 しかしながら、合意に至らず、移転を断念いたしました。
○議長(濱口太史君) 藤山将材君。
  〔藤山将材君、登壇〕
○藤山将材君 水族展示機能の移転に多大な経費がかかる見通しとなったことから、様々な課題の調査、整理が必要であることを確認し、その調査結果を基本計画として取りまとめたとのことであります。
 まず、水族展示機能を移転させようと思えば、多大な経費がかかることは誰にでも分かる話であり、それを承知で長期総合計画に「移転・リニューアル」と記載したのではないですか。基本計画策定業務の落札額は660万円だったそうですが、県のホームページを見ても、いまだにこの成果物は公表されていません。
 3月9日の知事の定例記者会見では、報告書は基本的に公表されるものと発言され、4月4日には、教育委員会の精査にはそんなに時間はかからない。報告書には予算的なことが書かれていると発言されていますが、教育委員会においてさらなる検討を加えた上で、一定の方向性とともに公表することが望ましいと考えていたという今の答弁とは矛盾しませんか。
 基本計画の内容を見る限り、具体的にどの程度の事業費になるのか、その概算費用も書かれていませんが、どの程度の事業費になると推定されたのか、具体的な金額をお示しください。
○議長(濱口太史君) 教育長。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○教育長(宮﨑 泉君) 繰り返しになるんですけれども、教育委員会といたしましては、海南市の意向を踏まえて、一定の方向性を示して公表することが望ましいと考えたために、公表が遅れることとなりました。
 具体的な事業費は、博物館のコンセプトや規模が決定した段階で設計を行い、算定できるものであるということなんですが、県の財政状況を鑑み、博物館建屋のみの概算で約20億円程度の事業費を想定していたところでございます。
○議長(濱口太史君) 藤山将材君。
  〔藤山将材君、登壇〕
○藤山将材君 今後、成果物の公表をする予定はありますか。
○議長(濱口太史君) 教育長。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○教育長(宮﨑 泉君) 今後、今のような状況の中の基本計画で公表することは、今のところは考えておりません。
○議長(濱口太史君) 藤山将材君。
  〔藤山将材君、登壇〕
○藤山将材君 分かりました。
 では、三つ目の質問に移ります。
 三つ目の柱は、自然科学博物館のアイデアについて伺います。
 9月11日と10月3日の知事定例記者会見において、「自然科学博物館」という発言が出ました。水族展示なしで移転する場合の案として、県教育委員会が海南市に提示したものであります。
 その内容は、有田川町で発掘されたモササウルスや、新宮市、東牟婁郡、西牟婁郡にわたるジオパークの紹介、湯浅町のしょうゆや由良町のみそなどの発酵食品、さらには、串本町のロケットまで、幅広い自然科学分野の展示をと、そういう内容の提案でありました。
 いずれも移転先の海南市には関係ないものばかりですが、非のない海南市、迷惑をかけた海南市、突然約束を破られた海南市に対して提案する内容としては、これは適切なものだったと考えているのでしょうか。幾ら県の施設だからといって横暴ではありませんか。水族展示機能の存続を望む海南市に対し、この案をもって一生懸命、誠心誠意協議を重ねたところで、当然納得されないことは分かり切った話であります。
 また、仮に海南市がこの提案に賛同していたらどうなっていたか。水族展示をやめ、代わりに何を展示の核とするかについて、県民や有識者の意見も聞かずに、県の教育委員会と海南市で決めたことになります。その不透明な決定プロセスは、当然県民から疑問視されるでしょう。その観点からも、海南市は県教委の提案に賛同できるはずがありません。それにもかかわらず、海南市が必要ないと言ったなど、海南市に非があるような表現は到底許されるものではありません。
 また、ジオパークセンターが既に串本町にある中で、重複しかねない施設を整備すること自体が、財政緊急事態警報が発令されている和歌山県の税金の使い方としてはいかがなものかと思います。
 そこで、質問です。
 この案は、どういう理由で海南市に設置するのが最適だと考えたのですか。他の市町村への影響について、どのように考えていたのか。あわせて、近畿一円から教育旅行に来ていただけるすばらしい県立の自然科学博物館と知事は発言されていましたけれども、事前にニーズ調査やマーケティングリサーチを行っているのであれば、その結果を示していただきたいと思います。
○議長(濱口太史君) 教育長。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○教育長(宮﨑 泉君) 施設整備に当たっては、海南市への移転を前提としたものであり、県立の博物館施設としてよりよい施設を整備するという考えの下、自然科学に関する総合的な展示案を検討しました。
 和歌山県は、自然のみならず、科学分野においても誇れるものがあります。古くはしょうゆなどの発酵技術、最近ではロケットなどの宇宙科学などです。このような分野を含めた総合的な博物館があれば、子供たちが様々な角度から自然科学に興味を持つきっかけを提供できるのではないかと考えました。
 事前のニーズ調査等は行っておりませんが、県外から訪れた人々に県全体をまず知ってもらい、人々の興味関心を他の県内市町村へ向ける波及効果も期待できるものと考えていたところでございます。
○議長(濱口太史君) 藤山将材君。
  〔藤山将材君、登壇〕
○藤山将材君 ニーズ調査も行われずに、水族館の移転を望んでいる海南市に対して、あまりに配慮に欠けた提案であったと感じています。
 先ほど答弁いただいていませんが、そういうことであれば、有田川町や湯浅町、串本町にも話をしないまま、県が勝手に海南市にそういったものを設置しようとしていたということだと理解していますが、関係する他の市町村には事前に相談をしていなかったということで間違いありませんか。
 具体的な事業費の記載もなく、課題の調査、整理を行っただけの、県民にも公表もされない基本計画には660万円支払い、よりよい施設を整備するための新しい提示案にはニーズ調査もリサーチも行わずに提案するというのは全く理解できませんが、事業の進め方として、果たしてこれが適正と言えるのでしょうか、2点、再質問いたします。
○議長(濱口太史君) 教育長。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○教育長(宮﨑 泉君) 各市町村には、そういう話はしておりません。
 ただ、今後こういった形の案をつくって、海南市さんとも合意が至れば、今後、検討委員会なり審議会なりを立ち上げて、慎重に審議をして、皆さん方に披露ができるような形に持っていきたいなというふうに考えておりました。(「約束も守らんと、こじつけたことばっかりやないか、これ」と呼ぶ者あり)
○議長(濱口太史君) 藤山将材君。
  〔藤山将材君、登壇〕
○藤山将材君 順番が逆だと思いますね。県の施設だから、市町村に何の相談もなく、何をやってもいいというのは間違っていると思います。
 最後に、大きな柱の4点目、自然博物館の今後について伺います。
 9月の文教委員会で、教育長は、海南市の意見を伺いながら、現地での建て替えなども含めて考えていきたいと答弁し、10月3日の定例記者会見では、施設そのものが必要かどうかも含めて、有識者の皆さんにゼロベースで御議論をいただくとの発言がありました。
 多くの県民は、海南市の意向と同じく、自然博物館の水族展示機能を存続させてほしいと考えているものと思います。知事の定例記者会見の記事を見た県民からは、知事は水族館廃止を前提として考えているのではないかといった声が聞かれます。
 また、他の県有施設の入館者数を見ても、県立美術館、県立博物館は年間約3万人、紀伊風土記の丘は年間1万3000人に対し、自然博物館は年間11万人を超えています。美術館、博物館及び紀伊風土記の丘の三つの施設を合わせても自然博物館の入館者数には及ばない状況であり、水族展示機能廃止を前提とは到底考えられるものではないでしょう。
 そこで、質問です。
 知事は有識者の意見を聞くと言い、教育長は海南市の意見も伺いながらと言うが、どのように今後進めていかれるのか、知事に答弁求めます。
○議長(濱口太史君) 知事。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) お答え申し上げます。
 今後のことでありますけれども、博物館の施設整備に関して検討委員会を立ち上げ、その必要性や在り方も含め、幅広い視点から有識者の方々の御意見を承る予定であります。
 そして、その御意見を踏まえた上で、県の財政状況や災害リスクなどを見極めた上で、海南市とも協議を行いながら検討を進めてまいりたいと考えております。
○議長(濱口太史君) 藤山将材君。
  〔藤山将材君、登壇〕
○藤山将材君 今後の検討については、有識者を入れた検討会などで議論すると知事も発言されていますが、開催時期や構成メンバーの人選、会議の公開、非公開など、どのように運営されるんでしょうか。
 それと、現地での建て替えや、施設そのものが必要かどうかも含めて検討するのであれば、県民の声を聞く取組も必須だと考えますが、どのようにお考えですか、2点について再質問いたします。
○議長(濱口太史君) 知事。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) 先ほど申し上げました検討委員会につきましては、来年度の事業として予定をしております。
 今後の予算編成の中で、予算措置も必要となってまいります。その内容等については、今後、教育委員会と一緒に精査をしていきたいと考えております。
○議長(濱口太史君) 藤山将材君。
  〔藤山将材君、登壇〕
○藤山将材君 ぜひ、私からは、神出海南市長にも検討委員に入っていただきたいということを強く推薦しておきたいと思います。
 そこで、県立自然博物館設置及び管理条例では、「自然科学に関する資料を収集し、保管し、又は展示して一般公衆の利用に供するとともに、これに関する調査研究及び事業を行い、もって学術及び文化の向上に資するため、和歌山県立自然博物館を設置する。」とあります。
 和歌山にとっての自然科学とは何か。和歌山県が生んだ文豪佐藤春夫は、その詩「望郷五月歌」の中で、ふるさと和歌山を思い、「空青し山青し海青し」と詠んだことは有名で、ふるさとをこよなく愛した望郷詩人とも呼ばれました。「空青し山青し海青し」は、まさに和歌山が誇る豊かな自然を象徴しているものと私は思います。豊かな山、森が豊かな川、海を育む。そして、そこには多くの、本当に多くの生き物が住んでいます。
 ふるさと教育副読本「わかやま何でも帳」にも、和歌山の森林、川、海としてまとめられていますが、海の生き物の欄では、和歌山県の沿岸は海洋生物の種類が日本でも特に多い地域として知られていることを紹介しています。これは和歌山県の誇りであると思っています。だからこそ、子供たちにも教えられているのではないのでしょうか。その誇るべき自然を県民に伝えていくのが自然博物館であります。今の状況では、和歌山県の誇りというものを捨ててしまうようでなりません。
 最後に、知事に伺いますが、これからの和歌山県において、自然博物館はもちろんですが、この水族展示は必要と考えていらっしゃるのか、大局観に立った考えをぜひお聞かせください。
○議長(濱口太史君) 知事。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) お答え申し上げます。
 先ほど来お答え申し上げてるとおりでありまして、今後の博物館の在り方、その必要性も含めて、幅広い観点から検討会を開いて、有識者の皆様に御意見を賜りたいと考えております。
○議長(濱口太史君) 藤山将材君。
  〔藤山将材君、登壇〕
○藤山将材君 お答えになっていないと思うんですが、ぜひ子供たちが最高と思える自然博物館を造っていただきたいと心からお願い申し上げまして、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(濱口太史君) 以上で、藤山将材君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 42番長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕(拍手)
○長坂隆司君 皆さん、おはようございます。
 議長のお許しをいただきましたので、以下、通告に従いまして一般質問をさせていただきます。
 一つ目に、地方と観光についてであります。
 我が国の訪日外国人数の回復ベースは順調で、中国からの観光客数が戻り切っていないものの、1人当たりの消費額については、円安の影響もあり、高水準が維持され、政府の公式発表ではありませんが、2023年インバウンド需要は5.9兆円に達し、コロナ前の2019年の4.8兆円を大きく上回るという見通しと発表されております。
 和歌山県においても、県は先日、本年7月1日から8月31日に、県内の主要観光地7か所を訪れた観光客数を発表されましたが、宿泊、日帰りを合わせた総数は約320万1900人で、300万人突破は4年ぶりとなりました。新型コロナウイルス禍前の2019年と比べても2.4%上回り、コロナ禍による落ち込みから回復した様子がうかがえます。
 もともとインバウンドの旅の目的であり、旅の満足度に大いに関わると言われるのが食ではないかと思います。海外において日本食レストランは急速に店舗数を拡大していますが、日本でしか食べられない日本式の本物の食事を体験することを目的に、インバウンドは日本を海外旅行先として選んでいるとも言えるのではないでしょうか。SNSで和スイーツや焼肉などが人気になっているところが多いようです。地方においても、風景を売るだけでなく、食文化といった地域資源をセットで売っていくような仕掛けが必要だと思います。
 本県では、風光明媚で歴史のあるところでも、お金を使ってもらうお店がない場所も結構多いような気がします。その地域ならではの食やお土産品が当地にあるということも、特に地方では大事だと思います。インスタグラムなどのSNSを利用して、景色だけでなく、そこにある食をはじめとした地域資源を紹介したりして、付加価値を高めてインバウンドを増やしていく取組が和歌山県にもっと必要とされていると思いますが、以上を踏まえて、商工観光労働部長に御意見を伺います。
○議長(濱口太史君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
 商工観光労働部長三龍正人君。
  〔三龍正人君、登壇〕
○商工観光労働部長(三龍正人君) 議員御指摘のとおり、食はインバウンドにとって旅の目的の大きな要素の一つであり、食や食文化を地域の観光資源と捉えることは重要であると認識しております。
 本県では、実際に来県されたインバウンドの方々に和歌山の食を楽しんでもらえるよう、飲食店向け多言語メニュー作成支援・店舗等検索サイト「EAT WAKAYAMA」を構築し、周知や利用促進を進めています。
 また、和歌山ならではの景色や体験などの観光資源だけでなく、食の情報も現地旅行博や商談会で紹介しているほか、県公式ウェブサイト「Visit Wakayama」や観光プロモーターによる現地SNSによる発信等も行っています。
 今後も、このような施策を通じ、食をはじめとする県内の多様な観光資源、魅力を情報発信することにより、インバウンドの誘客を推進してまいります。
○議長(濱口太史君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 今後も、食をはじめとする本県の魅力ある地域資源を再認識いただいて、様々な媒体を活用していただいて、国内外の皆様にアピールをしていっていただきたいと要望させていただきます。
 2点目に、カスタマーハラスメントについてであります。
 2020年10月に、流通業やサービス業などで働く人を中心に組織されている産業別労働組合UAゼンセンが悪質クレーム対策(迷惑行為)アンケート調査を行っています。あなたは直近2年以内で迷惑行為の被害に遭ったことがありますかの問いに、「あった」が56.7%、その被害にどのくらい遭ったことがありますかの問いに、「1回~5回」が42.6%でトップ、迷惑行為としては、「暴言」が39.3%、「同じ内容を繰り返すクレーム」が17.1%、「威嚇・脅迫」が15%、「権威的態度」が11.2%、「長時間拘束」が7.8%などが主なものです。
 迷惑行為をしていた顧客の性別は、男性が74.8%、その顧客の推定年齢は50代が30.8%、60代が28.0%、40代が18.9%と多く、あなたが迷惑行為に遭ったとき、どのような対応をしたのかの問いに、「謝りつづけた」44.4%、「上司に引き継いだ」35.6%、「毅然と対応した」が33.1%などでした。
 あなたの企業で実施されている迷惑行為への対策についてでは、「特に対策はなされていない」が43.4%、「マニュアルの整備」が27.9%、「専門部署の設置」が23.5%、「迷惑行為対策への教育」が19.7%と続きます。2020年10月の時点では、企業側も決して対策が十分に行き届いている状態ではない気がします。
 私も、当然のことながら、企業も経営者側と労働者側の意見の共有が必要とされることと思います。A社では、企業の悪質クレーム対策にマニュアルは必要だが、どこまでという線引きが難しく、従業員の安全の配慮から一定の基準を設けないといけないなどの議論が出ていると言われますし、B社では、悪質クレームの発生も地域性があるが、レジ係にきつい言葉が投げかけられることもあり、会社としても一部セルフレジの導入も行ってきているなどの話も聞かせていただいております。
 もっとも、消費者からの意見については、企業として真摯に受け止め、産業のサービスレベルを上げるためには不断の努力は必要です。一方で、社会通念上許される範囲を超えて行われる顧客からのハラスメントが現に存在することも事実であります。顧客等と従業員の関係であっても、人格を持った人間同士であって、従業員の人格を侵害する行為は決して許されるものではありません。
 ようやく最近になって、国のほうで、顧客や取引先による著しい迷惑行為、カスタマーハラスメント(カスハラ)の防止や見落としを減らす体制づくりが広がってきたと言われます。厚生労働省も、明確な定義と被害の具体例を示すなど対策に乗り出して、顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為、カスタマーハラスメントに関して、事業主は相談に応じ、適切に対応するための体制の整備や、被害者への配慮の取組を行うことが望ましく、被害を防止するための取組を行うことが有効であるとして、2022年2月に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を作成しました。
 さらに、本年9月、厚生労働省は労災認定基準にカスタマーハラスメントを新たな類型として追加しましたし、年末に向けての業務繁忙期にハラスメントが発生しやすいと考えられる12月を職場のハラスメント撲滅月間と定め、ハラスメントのない職場づくりを推進するため、集中的に周知、広報に取り組んでおります。カスタマーハラスメント対策用の、以前に増して突っ込んだ内容のリーフレットも作成されています。
 今後、社会全体でカスタマーハラスメントというものを理解し、なくしていこうという機運を醸成していくことは重要だと思います。
 そこで質問ですが、一つ目、消費者教育において、カスタマーハラスメントについてどう対応されるのか、環境生活部長にお伺いいたします。
○議長(濱口太史君) 環境生活部長山本祥生君。
  〔山本祥生君、登壇〕
○環境生活部長(山本祥生君) 消費者教育とは、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差等に起因する消費者被害を防止し、消費者の自立を支援するための教育です。
 消費者が事業者に対して意見を伝えること自体は、消費者の利益の確保や、事業者の提供する商品等の改善を促すことにもつながり、消費者教育の理念に沿ったものであります。そのため、過度なカスタマーハラスメント防止対策は、事業者への申出や相談をちゅうちょさせてしまうおそれがあると考えます。
 一方、議員御指摘のとおり、暴言等の行き過ぎた言動はハラスメントに当たる場合があります。このようなことから、県としましては、意見を相手に適切に伝えるため、消費者に対して、消費者庁作成の「『消費者が意見を伝える』際のポイント」などを活用し、一呼吸置いて、言いたいことを明確に、相手の説明も聞きましょうといった注意点を周知啓発してまいります。
○議長(濱口太史君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 県の消費生活センターにおいて、消費者の事業者側に対する過大なカスハラが確認された場合は、相談員からも注意を促していただきたいなと思っております。
 また、消費者庁作成の「『消費者が意見を伝える』際のポイント」というリーフレットはありますが、これを県のホームページ等に掲載してはどうかと提案させていただきます。
 2点目、国では「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」が作成されていますが、これまで県はカスタマーハラスメントについてどのように対策を講じてこられたのか、商工観光労働部長にお伺いいたします。
○議長(濱口太史君) 商工観光労働部長。
  〔三龍正人君、登壇〕
○商工観光労働部長(三龍正人君) カスタマーハラスメントは、従業員に過度の精神的ストレスを感じさせるとともに、通常の業務に支障を来す場合もあり、議員御指摘のとおり、事業主には従業員の就業環境を守るための対応が求められています。
 このため、県では、カスタマーハラスメントを含む各種ハラスメント対策について、県内企業を対象にした人権研修会や労働セミナーの実施、「県民の友」への掲載、啓発チラシの配布等により、啓発や周知を図ってまいりました。
 加えて、県政おはなし講座においても、従業員からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備など、事業主が講ずることが望ましい取組について説明しています。
 今後とも、カスタマーハラスメント対策について、県ホームページへの掲載や労働セミナー等の様々な機会を通じ、広く周知啓発に取り組んでまいります。
○議長(濱口太史君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 県におかれましても、働く人たちの権利もしっかりと守ると、そういう観点でカスタマーハラスメント対策にさらに取り組んでいただきたいと思います。
 3点目、厚生労働省のマニュアルの中には、暴行や威嚇、脅迫などの行為が発生した場合、事業者の対応として、警察への通報などの措置を講じるといった趣旨の記載もありますが、カスタマーハラスメントにおける県警察での取組について、県警察本部長にお伺いいたします。
○議長(濱口太史君) 警察本部長山﨑洋平君。
  〔山﨑洋平君、登壇〕
○警察本部長(山﨑洋平君) 議員から御質問のありました厚生労働省作成の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」については、警察庁から送付を受け、職員に周知し、カスタマーハラスメント対策への理解を浸透させるよう努めております。
 また、カスタマーハラスメントに関する相談や通報にあっては、個別の事案内容に応じ、当事者らの訴えの内容を正確に把握した上で適切な助言等を行うとともに、その中で刑罰法令に違反する行為があれば、法と証拠に基づいて適正に対処することとしております。
 今後とも、引き続き適切な対応に努めてまいります。
○議長(濱口太史君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 3点目へ行きます。
 所得制限なしの子育て五つの無料化についてであります。
 兵庫県明石市は、高校3年生までのこども医療費や第2子以降の保育料など、五つの無料化を実施しています。
 前市長の泉房穂氏は、「全て所得制限なしにすることで中間層世帯が流入し、結果として大きな経済効果を生んだ。全世代が幸せになる子育て支援策は実現可能だ」と言われています。明石市が年間に使えるお金はざっと2000億円で、五つの無料化に係る施策費の約34億円は2000億円に対してたった1.7%の比率であり、たくさんある無駄な予算をちょっと削るだけで浮く金額だと言います。これがまさに岸本知事が言われる賢い予算のやりくりとでもいうのでしょう。
 泉氏は、所得制限なしの無料化政策は、同時に極めて有効な経済政策であり、明石市は、子育て層をはじめ、誰もが安心して住みやすいまちになったことで人口が10年連続で増え、出生率も上がり、その結果、税収増になった。その間、まちの商店街は売上げがどんどん増え、移住者の増加によって至るところで建設ラッシュは起こっていると言っておられます。
 所得制限なしの子育て五つの無料化とは、1、高校3年生までこども医療費の無料化、すなわち薬代も無料、市外の病院も無料、病院代無料、2、第2子以降の保育料の完全無料化、すなわち兄弟の年齢も関係なし、保育所・幼稚園、市外の施設もオーケー、親の収入も関係なし、3、おむつ定期便、すなわち市の研修を受けた見守り支援員──配達員──が毎月おむつや子育て用品を家庭に直接届ける、4、中学校の給食費が無償、中核市以上で全国初、5、公共施設の入場料無料、天文科学館、文化博物館、明石海浜プール、親子交流スペース「ハレハレ」などの入場料が無料の五つです。
 所得制限を設けなかったのは、泉氏の考える基本的な支援施策は全ての子供が対象であり、親の所得によってサービスを受けられない子供が出てくるのは、泉氏の理念に反するというのです。地域経済は中間層に光を当てることで回り出すと考えていて、所得制限を設けなかったのは、中間層に光を当てたかったからだと言われています。
 明石市の人口は10年連続で増え続け、2020年の時点で30万人を突破しましたが、明石市に一番流入してきている世帯は中間層、その中でも中の上の世帯だそうです。所得制限なし、五つの無料化によって大きな恩恵を受けられる中間層が戸建てやマンションを買って明石市に移り住んできます。中間層世帯は共働きで収入源が二つあるダブルインカムが多いから、これらの世帯はすなわちダブル納税世帯だと言えます。中間層世帯は教育にも熱心で、子供にお金をかける。子供に光を当てると、子供を育てている親たちがお金を使えて、地域経済も回るようになるというわけです。
 明石市は、子育て支援サービスの無料化に所得制限をかけないことで、子育て層の負担を軽減し、経済の好循環を生んだ。子育て支援策が市にもたらす波及効果を考えても、所得制限などを設けず、中間層を支援したほうが市の財政も潤う。所得制限により中間層を排除する施策こそがさらなる少子化や地域の衰退を招くことになるのだと言われています。
 子供1人に係る養育費は3000万から5000万円として、その子供が大人になってからの生涯賃金はおよそ2億円から3億円だとすると、子育て支援施策によって子供が増えることは、それだけで大きな経済効果が見込めるとも言えます。
 そこで質問ですが、岸本知事は、この泉房穂前明石市長の子育て支援策であり、少子化対策でもある所得制限なしの子育て五つの無料化についてどうお考えか、お聞かせください。
○議長(濱口太史君) 知事岸本周平君。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) 長坂議員の御質問にお答え申し上げます。
 泉前市長さんは、民主党の衆議院議員をされたこともありまして、私も大変御指導いただいている政治家の一人でありますし、政治家として尊敬申し上げております。
 一方で、基礎自治体である市と県とでは行政の具体的な内容が違います。そのことを前提にでありますけれども、お答え申し上げたいと存じます。
 まず、和歌山県下の現状について御説明申し上げます。
 子供の医療費につきましては、県から市町村に乳幼児までの支援を行っております。23の市町村においては、18歳まで対象年齢等を拡大しているところであります。
 保育料につきましては、第3子以降の子がいる世帯と第2子がいる年収360万円未満相当の世帯については無償化をしているところであります。
 また、おむつ定期便は県としては実施しておりませんが、妊産婦等の負担軽減として、全市町村で妊娠届を出されたとき及び出生届を提出された後の面談実施をする場合に、合計10万円相当を支給させていただいております。
 学校給食費につきましては、全国知事会等を通じて、国に対しましてその無償化を要請しているところでございます。
 公共施設の入場料については、県立施設の多くは高校生までは無料とさせていただいております。
 以上の五つの点について全てを無償化するには、かなりの多額の恒久財源が必要となってまいります。したがいまして、和歌山県としては、国に対して、全国一律の制度及び恒久的な財源措置を講ずるよう要望しているところであります。
 また、長坂議員御指摘のとおり、子育て世帯の経済的負担軽減の重要性は私も承知しております。予算の賢いやりくりなどをしながら財源確保に努め、子供関連施策について強力に推進してまいりたいと考えております。
○議長(濱口太史君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 確かに、市の話ではありますが、大変傾聴に値する部分もたくさんございますので、ぜひ御参考にいただいて、県政にも反映できるところがあればお願いしたいなと思います。
 4点目へ行きます。
 コロナ対策の今後についてであります。
 厚生労働省は、2023年9月15日、10月以降の新型コロナウイルス感染症における医療提供体制と公費負担の具体例を公表しました。医療提供体制は、幅広い医療機関による通常対応への移行をさらに進めるとし、COVID-19治療薬や入院医療費については、患者に自己負担を求めつつ、公費負担を継続することが盛り込まれたといいます。
 そこで質問ですが、一つ目、10月以降のさらなる通常対応化について、病床の確保、外来医療体制、入院調整、患者などへの公費支援など、具体的なところを福祉保健部長、教えてください。
○議長(濱口太史君) 福祉保健部長今西宏行君。
  〔今西宏行君、登壇〕
○福祉保健部長(今西宏行君) 新型コロナウイルス感染症に対する10月以降の本県の対応についてお答えします。
 まず、医療提供体制ですが、外来診療は520か所の医療機関で、入院診療については、原則、県内全ての医療機関で対応しております。
 なお、県では、重症等の患者に対応できる病床を最大68床確保しております。
 入院の調整は、原則、医療機関間で実施しておりますが、必要に応じ、保健所等が調整を行うこととしております。
 次に、コロナ治療薬や入院医療費の自己負担については、インフルエンザなど、他の疾病とのバランスを考慮しつつ、患者の急激な負担増が生じないよう、引き続き公費支援を行っているところです。
 また、相談体制については、引き続き24時間対応の専用相談窓口を設置しております。
○議長(濱口太史君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 COVID-19治療薬の自己負担については、医療現場から全額公費負担の延長を求める声が上がっていると聞いております。
 外来での自己負担増に伴い、コロナ治療薬による治療を避ける人が出てこないか懸念します。治療を回避する人がどれくらい出てくるものなのか、また、そのことがコロナ感染対策にどのような影響を及ぼすのか、今後注視していっていただきたいと、これは要望させていただきます。
 5点目に、文化財の防災についてであります。
 地震や豪雨などの災害で、貴重な文化財が受難するケースが相次いでいます。
 1995年の阪神大震災では、旧神戸居留地十五番館──重要文化財・神戸市──が全壊、2011年東日本大震災では、松島──特別名勝・宮城県──の各所に地震・津波被害、2016年の熊本地震では、熊本城──特別史跡・熊本県──の石垣崩壊、2018年大阪北部地震では、千利休の茶室「待庵」──国宝・京都府──外壁に亀裂、2019年の首里城──世界遺産・那覇市──の火災等々、数え上げれば枚挙にいとまがありません。
 文化財保護法は、1949年の法隆寺火災で金堂壁画──重要文化財──が焼損したのを機に制定されました。神戸市の旧神戸居留地十五番館──重要文化財──が倒壊した阪神大震災後には、耐震補強対策が課題となりました。
 東日本大震災では、博物館や図書館などの資料や古文書が大量に津波にのまれました。紙資料の泥、塩分、カビなどを取り除いて安定化させ、破損部位には和紙の繊維を流し込む修復技法が開発され、現在も作業が続けられています。
 熊本城の場合は、文化庁は、崩落の危険性のある石垣を事前察知するための方法をまとめたほか、石垣の耐震性を判断する指針づくりも進めています。
 那覇市の首里城火災では、正殿などの復元建造物が焼失したことを受け、世界遺産や国宝、重文の建造物を対象に、火災報知機やスプリンクラー設置の徹底を所有者に求めました。
 法律面では、2019年に文化財保護法に改正があり、地域の歴史を象徴する文化財の滅失や散逸を防ぐため、指定、未指定にかかわらず、地域社会全体で保護することが示されました。国も2020年に文化財防災センター──本部・奈良市──を発足させ、全国6か所の国立博物館、文化財研究所を拠点に、被災地への専門家派遣や被災文化財の科学的な保全について研究、助言を行います。専従職員10人と、考古学や保存科学が専門の非常勤職員が在籍します。
 文化財防災を指導する国の組織は、他国にも例がないと言われます。文部科学省によると、6月末からの大雨で、九州を中心に42の国指定・登録などの文化財が被害を受けました。文化財防災は喫緊の課題と言えます。
 以前、関西広域連合議会で文化財の防災について質問させていただいたことがありましたが、県議会において、教育長に質問させていただきます。
 一つ目、和歌山県においても、去る11月24日、金剛峯寺本坊を国の重要文化財に指定するよう、また、和歌山市の志磨神社の拝殿等、県内7か所、15件を国登録有形文化財に登録するよう、国の文化審議会より文部科学大臣に答申されました。このように、県内の文化財は年々増加している一方、高齢化や人口減少等により文化財を災害から守る環境は厳しくなっています。文化財の防災対策に係る普及啓発や所有者に対する支援について、どのように取り組まれていますか。
○議長(濱口太史君) 教育長宮﨑 泉君。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○教育長(宮﨑 泉君) 議員御指摘のとおり、文化財を災害から守る環境が厳しくなる中、文化財の所有者だけでなく、地域はもとより県民が一体となって取り組む意識を高めることが必要と考えております。
 県では、若年期から文化財に対する理解を深めてもらうため、「わかやまの文化財ガイドブック」を作成し、県内の中学生に配布しているほか、毎年1月26日の文化財防火デーに合わせて、市町村を通じてポスターの掲示、防災訓練の実施や、消防用設備の点検などの呼びかけを行っているところです。
 また、県では、国や県指定文化財の所有者に対し、消火設備など防災設備の設置、改修に係る補助のほか、国指定文化財においては、防災設備の保守点検に要する経費に対しても補助を行っております。
 さらに、首里城の火災を受け、火災や自然災害により文化財が損壊した際に速やかに復旧できるよう、和歌山県建築士会と連携し、図面等を含む文化財の情報を収集したデータベースの作成に2019年度から取り組んでいます。
 今後も、文化財所有者や民間団体とも連携し、県民の文化財愛護意識の高揚と防災対策の推進に取り組んでまいります。
○議長(濱口太史君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 2点目に、火災、土砂災害、地震、津波など、自然災害で文化財や貴重な記録類等が焼失・毀損してしまうリスクに備え、発災時に関係機関が連携して迅速に復旧に取り組めるよう、平時から効率的な体制構築を図っておく必要があると考えますが、県の取組についてお伺いいたします。
○議長(濱口太史君) 教育長。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○教育長(宮﨑 泉君) 文化財の防災対策について、県では、2021年3月に「和歌山県文化財保存活用大綱」を策定し、災害発生時における対応の基本方針を示し、県内市町村等に周知しているところです。
 本年11月には、和歌山県文化財災害対応マニュアルを策定し、多くの文化財を収蔵する博物館施設をはじめ、県と市町村文化財保護部局や文化財所有者が連携して対応すべき役割や、大規模災害時における近隣府県との相互応援に関する対応等を明示するとともに、未指定を含む被災文化財の応急措置や修理・復旧方法を示しています。
 今後は、当該マニュアルがより実効性の高いものとなるよう、被災調査や応急措置の具体的方法等について、関係者と検討を深めてまいります。
○議長(濱口太史君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 自然災害被災後についても、被害に遭った文化財を有する被災地の地域住民にも協力を呼びかけて、被災前の文化財へ復旧していくために、地域の記憶や歴史を掘り起こしていくこと、そして災害の記憶を未来に伝えていくことも、文化財防災を考える意味で大事ではないかと思います。
 6点目へ行きます。
 自転車の逆走についてであります。
 自転車の逆走が自動車や二輪車の交通量が多い道路においてもよく見かけます。例えば和歌山市内でも、堀止交差点から新堀橋西詰交差点間で、中高年の方、また、登下校時の高校生の逆走は頻繁に見られます。
 ある医院の先生が道路側に向けて防犯カメラを設置して、毎日自転車の逆走状況をチェックいただいておりますが、自転車の逆走はおろか、逆走しながら夜間無灯火、集団走行、片手傘、それにスマホ操作している現場も見られました。県警察や和歌山市当局、それに近隣の高校にも再三再四お願いして、自転車逆走に対する取締りや、危険、逆走防止の掲示、車道の青い矢羽根の表示、呼びかけ、啓発をしていただいているはずですが、一向に認知件数も減少していないのが現状です。この期に及んで、まだ自転車の逆走は違法行為であると認識していない人も少なくないのではないでしょうか。これでは悲しいかな、サイクリング王国わかやまとは言えないのではないでしょうか。
 自転車の逆走が原因で交通事故も発生しているのではないでしょうか。特にオートバイで配食サービスなどで走行している方からもよく言われるのですが、自転車の逆走者には、いつも冷やり、はっとさせられるそうです。
 自転車逆走者には罰則もあると伺っておりますが、大惨事が起こる前に、県下至るところで、もっと頻度を上げて自転車逆走の危険を身をもって正しく認識させるべく取締りを徹底すべきではないでしょうか。県警察本部長の御見解をお伺いいたします。
○議長(濱口太史君) 警察本部長。
  〔山﨑洋平君、登壇〕
○警察本部長(山﨑洋平君) 御指摘の自転車の逆走とは、道路交通法上、車両に区分される自転車が本来は道路の左側を走行すべきところ、反対の右側を走行するという行為であり、これは道路交通法違反に該当するものです。
 警察におきましては、自転車利用者の安全対策として、県や教育機関等と連携して、交通ルールの周知を含めた安全教育、広報啓発の拡充に取り組んでおりますが、これに加えて指導、取締りにも注力しており、議員御指摘の自転車の逆走をはじめとした自転車利用者の交通違反に対しては、確実に指導、警告を行い、特に飲酒運転や信号無視などの悪質・危険な違反行為については検挙措置を講じるなど、厳しく対応しているところです。
 今後とも、より安全な道路交通環境実現のため、あらゆる施策を講じてまいることとしております。
○議長(濱口太史君) 長坂隆司君。
  〔長坂隆司君、登壇〕
○長坂隆司君 先週も、西警察署の本官の皆様に登校時間帯に御出動いただいて、本当にありがとうございました。
 自転車は、常に車道の最も左側を通行しなくてはいけないということに対する違反者は、罰則として懲役3か月以下、または5万円の罰金ということですので、自転車の逆走は危険と背中合わせの大きな法律違反行為であるということを、ぜひ日頃から徹底して広報啓発と取締りに取り組んでいただきたいと強く要望させていただきます。
 これで、私の一般質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(濱口太史君) 以上で、長坂隆司君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時21分休憩
────────────────────
  午後1時0分再開
○副議長(中本浩精君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 23番北山慎一君。
  〔北山慎一君、登壇〕(拍手)
○北山慎一君 皆さん、こんにちは。
 午後の1人目として登壇をさせていただきます自由民主党県議団の北山でございます。
 早速ですけども、議長のお許しを得ましたので、質問に入らせていただきます。
 まず一つ目、学校における熱中症対策について質問してまいりたいと思います。
 これから冬本番の寒い季節を迎えますが、今年も全国各地にて児童生徒が関係する熱中症の事故が多発していたこともあり、来年の暑い季節を迎えてからでは遅いと思いましたので、今回、あえてこのタイミングで質問させていただきたいと思います。
 地球温暖化による気候変動の影響により、近年、日本の夏の気温は35度を超す日が当たり前であるように続き、猛暑の夏、酷暑の夏となります。そんな猛暑の中でも、人は日常生活を送らなければならないわけでありますが、それは児童生徒も例外ではありません。
 暑い夏を迎えると、毎年のように必ず新聞や報道等で目にしたり、耳にしたりする熱中症、今回、この熱中症について、学校ではどのように対策しているのかを質問していきたいと思います。
 この「熱中症」という言葉は、ここ10数年の間で定着してきた言葉で、私の子供時代、一昔前は「日射病」という言葉がよく使われていたと記憶しております。
 皆さんは既に御存じかと思いますが、熱中症とは、高温多湿な環境下等において、体温が上がり、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温の調整機能が働かなくなったりすることで、体温の上昇や目まい、けいれん、頭痛など、様々な障害を発症することをいいます。その熱中症の重症度は、軽症、中等症、重症の3段階に分けられており、重症ともなると、意識障害などの症状を起こし、命が危ぶまれることもあります。
 また、熱中症が起こりやすい主な状況としましては、気温が高く湿度も高い、風が弱く日差しが強い、照り返しが強い、急に暑くなったなどが上げられ、その他の状況としては、そこまで気温が高くない状況であっても、湿度が高いと熱中症になってしまうケースもあるようです。もちろんその状況下は屋外だけでなく屋内でも当てはまり、家の中などの建物内にいても熱中症になるおそれもあり、暑い夏の時期には特に注意が必要となります。
 近年、日本の気候は、5月頃から夏場のような気温の高い日が徐々に増え始め、特に今年は11月初旬に夏日を観測するなど、季節外れの暑さが続く、そのような気候に変わってきています。その年にもよりますが、桜が咲く陽春の候、紅葉が見頃を迎える清秋の候、こうした時候の挨拶を添える季節であっても気温の高い日があったりと、今後、日本は四季ではなく二季になっていくのではとも言われるような、そんな環境となってきました。
 とはいえ、先ほどにも述べましたが、暑いからといって熱中症をおそれ、日常生活を止めてしまうわけにはいきませんから、暑さ対策を講じて、特に熱中症にならないよう対処していかなければなりません。
 そんな熱中症に対して国では、環境省、厚生労働省等が熱中症の予防方法や対処方法を掲載したウェブサイトを開設したり、文部科学省においては、学校における熱中症対策ガイドラインを作成するなど、対策に取り組んでいるところです。しかしながら、多くの方が対策や予防をする中、毎年のように全国各地で熱中症による死亡事故が発生しています。
 今や熱中症は世間一般に知られており、それぞれが対策を行い、危険性も理解されてきているにもかかわらず、事故が発生したり、症状を訴える人が絶えません。事故の発生する状況は年代や場所等様々でありますが、熱中症に対する私の印象としましては、特に児童生徒が関係する学校関連、教育の現場で多く発生しているイメージを強く持っています。
 その学校においては、暑さ対策として教室には空調設備を整備、教室内の温度調整ができるようになり、児童生徒が授業に集中できる環境を整えています。ただ、熱中症を起こしている場所は、空調設備が整えられている教室ではなく、屋外の場合がほとんどで、体育の授業や部活動、また、体育祭・運動会の練習など、学校行事を行っている状況下に熱中症になることが非常に多くなっています。
 もちろん各学校で、熱中症には十分気を配り、対策もしながら屋外での様々な活動を行っていることと思いますが、本県における学校管理下での熱中症対策について、どのような取組をしているのか、教育長にお尋ねいたします。
○副議長(中本浩精君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
 教育長宮﨑 泉君。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○教育長(宮﨑 泉君) 熱中症による重大な事故を防ぐためには、一つは、教職員の指導力及び対応力を向上させること、もう一つは家庭の理解と協力を得ること、これらが相まって、児童生徒が自ら熱中症に対する知識や行動力を身につけ、体調管理をできることが大切であります。
 特に熱中症事故は、多くが体育やスポーツ活動中に発生していることから、暑さ指数に応じた活動を行うなど、よりきめ細かな配慮が必要であります。県教育委員会では、教職員に対して、登下校時を含む学校管理下における熱中症事故の未然防止や初期対応の知識、技能を習得させるための研修を実施しております。
 また、児童生徒自らが身を守る安全な行動を取ることができるよう、帽子等の着用や小まめな水分補給、適切な休憩や体調不良時における早めの申出など、発達段階等を踏まえた適切な指導について、今後も引き続き、県立学校及び市町村教育委員会に周知を図ってまいります。
○副議長(中本浩精君) 北山慎一君。
  〔北山慎一君、登壇〕
○北山慎一君 熱中症の予防として1番に上げられるのが、水分補給を小まめに行うことであると思います。その水分補給も、水やお茶を飲むより、スポーツドリンクのように塩分が含まれている飲物のほうが予防に効果があると言われています。夏の暑い時期における体育の授業や炎天下で行う運動会、部活動などの練習時には、そういった予防効果のあるスポーツドリンクを持参させるなどの対応も今後は必須となってくるのではないかと思います。
 また、登下校時においては、帽子の着用などは既に取り組んでいただいていることではありますが、加えて、徒歩で帰宅する児童生徒には傘を差すことも熱中症対策になりますので、お勧めしたいと思います。日傘がなければ、雨傘でもいいと思います。直射日光を浴びないよう傘で陰をつくることで、熱中症になるリスクを少しでも減らすことができます。そういった少しでも暑さを軽減できる対策を積極的に取り入れていっていただきたいと思います。
 人によって暑さの感じ方はそれぞれに違い、統一した見解はなかなか難しいところもありますが、熱中症対策には十分気を配っていただきたいと思います。教育長、よろしくお願いいたします。
 それでは、次の質問に移ります。
 電動キックボードの安全対策について質問してまいりたいと思います。
 この質問は、令和5年2月定例会において、私が警察本部長に対し質問させていただいた項目になります。当時は、法改正が適用される7月1日の施行日までまだ4か月程度の期間があったため、警察庁の方針や具体策等も示されておらず、検討が進められている状況でした。警察本部長の答弁においても、「警察庁において、現在、検討が進められていると承知しており、その検討を踏まえつつ、7月1日の施行に向けた準備を着実に進め、電動キックボード等をめぐる交通安全対策に万全を尽くしてまいります」とお答えいただいています。
 その施行開始日に当たる7月1日は過ぎ、施行から約5か月が経過していることから、改めて本県における電動キックボードの安全対策はどのようになっているのか、お尋ねしたいと思います。
 まずは、2月定例会でも述べさせていただきましたが、簡単に電動キックボードとはどういった乗り物かを改めておさらいしていきたいと思います。
 電動キックボードとは、モーターとバッテリーを搭載した電気を動力に公道を走れる新たなモビリティーとして2020年から2021年頃に普及してきたコンパクトで小回りの利く乗り物です。時には、キックスケーターとも呼ばれたりもしています。
 電動キックボードは、これまで原動機付自転車いわゆる原付として区分されていましたが、法改正において、特定小型原動機付自転車、略称・特定小型原付という車両区分が新設されたことにより、特定小型原付の条件を満たす電動キックボードは、16歳以上であれば運転免許は不要、さらに、ヘルメットの着用は努力義務での運転が可能となりました。
 先ほども申しましたが、電動キックボードの新ルールは、2023年7月1日から施行されており、公道での走行が可能となっています。現に東京や大阪などの都市圏では、利用者が増加してきており、本県においても時折、電動キックボードを利用している方を見かけるようにもなってきています。今後も、電動キックボードの利用者は増加していくものと推察され、その利用者の中心は若者になっていくものと思われます。
 その理由としては、やはり16歳以上であれば免許がなくても利用できる、公道を走れる移動手段として手軽に使える、自走しなくていい電気で動く乗り物であるということが、まず理由として上げられるのではないでしょうか。加えて、電動キックボードは若者が好む形、デザインである、そのようなことも相まって、今後、若者を中心に利用者が増えていくのではないかと私は思っています。
 電動キックボードは、活用の仕方によっては大変便利な乗り物になるとも私は思っており、都市圏において既に始まっているシェアリングサービスなどは、その代表ではないかと感じています。
 タクシーや電車、また、バスや自転車などの移動手段に加え、電動キックボードという新たな移動手段が加わることで選択の幅が広がり、行き先によっては移動時間や待ち時間の短縮につながります。また、その電動キックボードのシェアリングサービスは、好きなタイミングで借りることができ、好きな場所に返すことができる非常に便利で利用しやすい環境となっており、電動キックボードの利点を生かした活用方法となっています。
 また、直近の動きとしては、バスやタクシーなどの移動手段が潤沢でない地方での観光地巡りに電動キックボードを取り入れ、観光客の利便性を向上させる取組をする地域も出てきているなど、電動キックボードは、活用次第では大変便利な乗り物になると思います。
 しかし、それは、交通ルールを守り走行すればの話となります。この交通ルールやマナーという点が、電動キックボードにおいて一番心配、懸念される問題になるであろうと私は考えております。
 さきにも述べましたが、2023年7月以降は免許が不要となりました。免許が必要ということであれば、免許を取得するために教習所等に通い、運転技術や交通ルールを学びます。その後、試験を受験し合格となれば、免許証が交付され、公道を走ることになります。加えて、免許を有する方は、3年ないし5年に1度免許証の更新もあり、改めて交通ルール等に触れる機会があります。
 しかし、免許を持たない方においては、交通ルールを学ぶ機会が少なく、標識や標示物、また、交通ルールをよく理解できていないこともあるかと思います。電動キックボードが免許不要の乗り物であることを考えれば、当然そのような状態で運転する利用者もあると思います。手軽で便利な乗り物である電動キックボードの利用者が増えていく状況になれば、必然と事故や交通トラブルの発生も増えていくのではと懸念いたします。
 今回、電動キックボードが区分される特定小型原付の速度制限は、時速20キロ以下と定められました。時速20キロ以下で走行する乗り物とはいえ、一定程度のスピードは出ます。それに加え、ヘルメットの着用は努力義務。着用しない利用者ももちろんいるでしょう。公道を走れば、歩行者や自転車、また、バイクや自動車なども行き交い、交通量の多い道路など、危険な箇所もあるでしょう。また、そのような走行に関する問題に加えて、電動キックボードの置き場所や盗難に対する備えなど、利用者が増えるにつれ様々な問題も出てくると思います。
 電動キックボードを利用する年代は、恐らく10代や20代の若者が中心になってくると思われますが、電動キックボード利用者に対する安全対策や規制など、本県での取組について、警察本部長、お答えください。
○副議長(中本浩精君) 警察本部長山﨑洋平君。
  〔山﨑洋平君、登壇〕
○警察本部長(山﨑洋平君) いわゆる電動キックボードの利用者への安全対策については、特定小型原動機付自転車の販売やシェアリングサービスを行う事業者が販売や貸し渡しの際に安全教育を行うことが努力義務とされており、県警察といたしましては、これら事業者を把握し、購入者等への安全教育が確実に行われ、かつ実効的なものとなるよう助言、指導を行っております。
 また、関係機関・団体と連携し、街頭における広報啓発や高校生をはじめとする16歳以上の若者等に対する安全教育など、様々な機会を捉え、守るべきルール等の周知を行っております。
 さらに、飲酒運転はもとより、通行区分違反や信号無視をはじめとした、危険性が高く重大な交通事故に直結し得る違反の根絶に向け、現場における指導取締りを推進しております。
 県警察といたしましては、いわゆる電動キックボードの県内における普及状況を注視しながら、引き続き交通安全対策に万全を尽くしてまいります。
○副議長(中本浩精君) 北山慎一君。
  〔北山慎一君、登壇〕
○北山慎一君 では、次の質問に移ります。
 電動キックボードは、16歳以上であれば免許が不要の乗り物となり、16歳以上となると、そこには高校生も含まれます。先ほどの警察本部長の答弁において、高校生をはじめとする16歳以上の若者等に対する安全教育等、様々な機会を捉え、守るべきルール等の周知を行っていますと県警の取組状況をお答えいただきました。
 しかし、高校生という枠組みを考えますと、県警が主導となる対策だけでは限界があり、高校生を預かる教育の現場での取組も非常に大切になってくると私は考えています。
 そこで、教育長にお尋ねいたします。
 県教育委員会では、どのような取組をしているのか、お答えください。
○副議長(中本浩精君) 教育長。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○教育長(宮﨑 泉君) 高校生に対する交通安全教育は、変化する交通社会において、交通ルールを遵守し、自他の生命を尊重するなどの意識や行動力を育むことが大切であります。
 県立学校では、従来より、全ての学校を対象とした標識等の交通ルールを問う交通安全テストや警察と連携した交通安全教室を実施しています。また、電動キックボード等に関する法律が施行される前の本年6月に、改正内容である年齢制限や通行場所、最高速度等の正しい知識を生徒が理解するよう県立学校に周知しています。
 県教育委員会では、今後も警察及び関係機関と連携し、電動キックボードとその法律内容も含めた交通安全教育の実施を積極的に働きかけてまいります。
○副議長(中本浩精君) 北山慎一君。
  〔北山慎一君、登壇〕
○北山慎一君 答弁いただきました。
 電動キックボードの利用者は、今後、間違いなく増加していくことと思います。県警、県教育委員会をはじめ関係機関においては、安全対策に万全を期していただきたいと思います。
 今回、電動キックボードに焦点を当て、質問させていただきましたが、交通ルールを遵守することは、電動キックボードなどの乗り物だけに限らず、歩行者も含め全ての人に言えることであります。
 その交通ルールは、幼少期に家庭で教わる「赤信号は止まりましょう」からイロハを学び始めます。小学校に通い出すと、徒歩での通学や自転車に乗り始めることで行動範囲も広がっていき、公道を通る機会が増えていきます。また、中学、高校においては、通学はもちろんのこと、部活や塾など行動範囲はさらに広がり、帰宅時間が遅くなることもあり、暗い状況の中、公道を通ることも増えてくることと思います。
 交通安全という部分にフォーカスを当てると、県警の取組が大変重要であると思います。しかし、安全教育という部分においては、児童生徒が日々通う学校でのウエートが大きく占めてくると私は考えています。県警、県教育委員会双方における取組をそれぞれがしっかりと継続して行っていくことに加え、より強力に連携していくことで、県内の児童生徒の交通ルールの遵守や交通マナーの向上等につながっていくものと私は思っています。
 そのことが将来的に県全体に浸透し、交通安全を意識する県民の増加につながり、交通事故の減少などの交通安全に結びついていくことになりますので、それぞれに答弁いただいたように、交通安全対策及び教育にしっかりと取り組んでいただくようお願いいたします。
 それでは、次の質問に移ります。
 三つ目の質問として、119番映像通報システムについて質問させていただきます。
 近年、私たちを取り巻く様々な環境がデジタル化されていく中、消防の現場、いわゆる救急や火災等の現場でもデジタル化されていく傾向が全国的に進んできています。今回質問させていただく119番映像通報システムは、その一つで、通報現場を見える化することができる新たな通報スタイルとなります。
 119番映像通報システムは、民間会社が開発したシステムを使い、通報者がスマートフォンのカメラ機能を利用し、現場の映像をリアルタイムで消防機関に送信できる大変画期的なシステムとなっており、現在普及が進み始めているところです。
 このシステムの一番の売りは、通報現場の状況や情報が音声からだけでなく映像としても確認ができ、119番通報を受け付ける消防指令センターがより正確な状況や情報を把握することができるところであります。
 音声通話による通報の場合、救急や火災の現場等にいるいずれかの方が119番に電話をかけ、会話、言葉のみで状況を説明しています。音声での通報は、時には得られる情報に限りがあり、通報現場の状況を即座に把握することがままならず、消防指令センターでの状況把握に時間を要する場合があります。現場が見えていない相手に言葉だけでどれだけ細かく状況を伝えられるでしょうか。急を要する現場で、通報者が平静を保ち、落ち着いて事細かに状況を伝えられるかなどを考えると、なかなか難しいのではないかと思います。
 しかし、119番映像通報システムでは、音声に加え、現場の映像がリアルタイムに映し出されます。映像が送信されることにより、通報者は、状況を映しながら様々な情報を伝えることができ、その後の初動対応を適切に行うことも可能となり、救助や救急活動が効果的に行われるものと思います。
 そんな期待を持てる119番映像通報システムですが、先月、本県でも和歌山市、岩出市、紀の川市、海南市及び紀美野町で共同運用している和歌山広域消防指令センターにて実証実験を開始したという報道がありました。先んじて大変よい取組をしていただいているなと感じる一方で、まだ取り組まれていない消防本部が和歌山県下には数多くあるのであれば、このシステムを導入することにより、消防全般の活動がより円滑に遂行できると考えられます。
 そこで、危機管理監にお尋ねいたします。
 私は、県内の消防本部で119番映像通報システムの導入が進むことは大変望ましいことだと思いますが、県内消防本部における現在の導入に向けた取組状況はどのようになっていますでしょうか。また、119番映像通報システムの導入に対する県の考えをお聞かせください。
○副議長(中本浩精君) 危機管理監福田充宏君。
  〔福田充宏君、登壇〕
○危機管理監(福田充宏君) 県内の取組状況についてでございますが、各地域における消防指令センターの共同運用に向けた取組の中で、ほぼ全ての消防本部において119番映像通報システムの導入に向けた検討を始めていると聞いております。
 県といたしましては、和歌山広域消防指令センターが行っている実証実験の結果を注視してまいりたいと考えておりますが、このシステムの導入により、傷病者への適切な処置の指示、事故等の救助事案や火災事案における現場の状況把握など、消防活動を行う上で幅広く効果が期待でき、より適切な初動対応が行われることによって、県民が安心して暮らせる消防力の向上につながるものと考えております。
○副議長(中本浩精君) 北山慎一君。
  〔北山慎一君、登壇〕
○北山慎一君 このシステムが導入されることにより、消防の現場は大きく変わっていくものと思います。救助や救急の現場においては、1分1秒を争う状況が多く、初動対応の遅れが生命、命の存続に大きく関わってきます。救急のプロでない一般の方が、通報現場で音声だけの指示で自信を持って応急手当てができるでしょうか。不安いっぱいだと思います。
 ただ、映像通報システムが導入されたとしても、不安を全て取り除けるとは思いません。しかし、映像でつながっている状況であれば、適切な指示を受けることができ、間違いがあれば指摘してくれるなど、不安はありながらも応急手当てを行うことができると思います。映像を送信しながら通報することで発生する通信費の負担の問題など、課題もいろいろあると思いますが、スマートフォンが普及している現代社会の利点を生かしたすばらしいシステムであることに違いはありません。
 県民の安心・安全を守る消防の現場で地域差が生じないよう、県内全ての地域で導入が進むようしっかり注視していただくよう、よろしくお願いいたします。
 それでは、最後の質問に移ります。
 午前中の一般質問で、長坂議員がカスタマーハラスメントについて質問されていましたが、私からはSOGIハラスメントについて質問をさせていただきたいと思います。
 皆さんは、カミングアウトやアウティングという言葉を聞いたことはありますでしょうか。カミングアウトとは、本人が自らの意思で自分の性的指向や性自認を他人に伝えることであり、アウティングとは、本人の了解を得ずに、本人が公にしていない性的指向や性自認を他の人に伝えることをいいます。
 性的少数者の方が職場の同僚や上司に自分の性的指向や性自認を伝えた際、カミングアウトを受けた人から周囲に広がり、周りからの嘲笑や嫌がらせにつながることがあります。こういった精神的、肉体的な嫌がらせは、SOGIハラスメントとして決して許されてはならない人権侵害とされています。
 このSOGIハラスメントの「SOGI」とは、性的指向・好きになる性のSexual Orientationと性自認・心の性、Gender Identityのそれぞれの頭文字を取った略称で、性に関して特定の人のみが持つ要素ではなく、全ての人が持つものとされています。
 近年、ハラスメントと名のつくものは、数え切れないほどたくさんある世の中となってきています。例えば、性的な嫌がらせをするセクシュアルハラスメント、略してセクハラ、地位や役職の優位性を利用して相手に精神的、肉体的苦痛を与えるパワーハラスメント、略してパワハラ、そして、先ほど述べましたSOGIハラスメント、略してSOGIハラなどです。今後も新たなハラスメントが出てくる可能性もあり、自らの言動や行動には、より一層気をつけていかねばならないと思います。
 そのような様々なハラスメントを抑止すべく、国において、2020年6月に大企業に対し、2022年4月には中小企業を含む全事業主に対し、パワーハラスメント防止措置を講じることを義務づけ、防止対策を強化いたしました。
 また、厚生労働省が定めた防止指針においては、SOGIハラに相当する言葉も明記され、ハラスメントのない社会の実現に向けて取り組んでいるところですが、職場で行われるハラスメント行為に対するものに限定されています。
 さらに、本年6月には、性的指向や性自認の多様性に寛容な社会の実現を目的として、性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律、いわゆるLGBT理解増進法が成立いたしました。この法律では、国や地方公共団体、事業者などが国民の性の多様性に対する理解増進のためにそれぞれが取り組むことに努めると規定されており、全国各地において積極的に取組を進める自治体が増える傾向となっています。
 そうした状況において、人権侵害や不当な差別が行われることなく、全ての人の人権が尊重される社会の実現を目指す和歌山県においても、SOGIハラスメントが起こらないよう人々の性の多様性に対する理解を深めていくような取組が必要だと考えますが、環境生活部長の答弁を求めます。
○副議長(中本浩精君) 環境生活部長山本祥生君。
  〔山本祥生君、登壇〕
○環境生活部長(山本祥生君) 性的少数者は、様々な調査により、人口の3から10%と推定されており、我々の身近な存在であるにもかかわらず、その方々に対する認識や理解は十分ではありません。
 本年6月に成立した性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律において、地方公共団体の役割は「理解増進に関する施策を策定し、実施するよう努める」と規定されており、県民の皆さんが性の多様性に対して正しい認識を持ち、理解することで、アウティングなどのSOGIハラスメントが起こらないようにすることが必要だと考えております。
 県といたしましては、県職員の認識や理解を深めるため、昨年7月、性の多様性に関する職員ガイドラインを策定し、職員に周知するとともに、職場研修のテーマとしても取り上げました。さらに、市町村や企業においても、性の多様性に対する認識や理解を深めてもらうために、行政職員や企業の経営層、人事担当者を対象にしたセミナーを開催しております。
 ほかにも、性的少数者支援として、県男女共同参画センターにおいてLGBT専門相談を実施しているところです。
 また、県では令和3年度に、夫婦等が対象となる県の行政サービスや制度について、原則、法律婚、事実婚と同性カップルを同様に取り扱うこととし、不利益や不都合な取扱いの解消を図りました。さらに今年度は、この取組の周知と取扱いの明確化を図り、市町村や企業における性の多様性への理解が広がるよう、パートナーシップ宣誓制度の導入に向けて準備を進めております。
 今後も、全ての人の基本的人権や幸福追求権が尊重され、性別や性的指向等に関係なく多様な生き方を認め合う社会の実現を目指し、様々な施策に取り組んでまいります。
○副議長(中本浩精君) 北山慎一君。
  〔北山慎一君、登壇〕
○北山慎一君 答弁ありがとうございました。
 部長答弁で私の質問を終えたいと思っていたのですが、和歌山県がそういったハラスメントや人権が守られていく、尊重されていく社会の実現を推し進めていくには、やはり和歌山県のリーダーである岸本知事が先頭に立って取り組んでいく必要があると私は思っています。知事の思いをぜひお聞かせいただきたいと思います。
○副議長(中本浩精君) 知事岸本周平君。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) 北山議員の御質問にお答えします。
 このSOGIハラスメントを含むあらゆるハラスメントについて、北山議員と全く考えを同じくするものであります。
 この議会でも冒頭申し上げましたとおりでありまして、憲法13条というのは、「すべて国民は、個人として尊重される」という憲法の一番重要な条文であると考えております。その中で、「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、最大の尊重を必要とする」と書かれております。この条文に基づきまして、性的少数者の方、あるいは障害をお持ちの方──チャレンジドの皆さんですね──いろんな方々、お一人お一人全ての個人が、和歌山県民が幸福を追求する権利を守られるということを前提に政策を組み立てていきたいと考えております。
 今回も、この議会に障害者差別解消条例を提案させていただき、そして、部落差別解消条例の改正案、さらには、来年以降になりますけれども、運用上いわゆる性的少数者のためのパートナーシップ宣誓制度の準備も始めているところであります。
 また、9月の議会でお認めいただいた東京ガールズコレクションのユニバーサル共生ステージでありますけれども、最終選考が終わられたようです。実行委員会からお聞きしましたところ、13名のユニバーサル共生枠の出演者が決まり、その中には、性的少数者の方もおられれば、障害をお持ちのチャレンジドの方もおられれば、いろんな県民の方々が参加できるということになりましたので、ぜひとも私自身が先頭に立って、県民の基本的人権を守っていくということをお約束したいと思います。
○副議長(中本浩精君) 北山慎一君。
  〔北山慎一君、登壇〕
○北山慎一君 知事、御答弁ありがとうございました。
 差別のない社会、言葉では簡単に言えますが、実現するにはかなりの熱量、パワーが必要となります。
 全てのハラスメントや差別事象に言えることでありますが、行った側は気にも留めず、すぐに忘れてしまうことであったとしても、受けた側は心の中に深い傷としてずっと残ります。落ち込み、沈んだ悲しい気持ちのまま、毎日を過ごしていくことがどれだけつらいことか、我々県民はそのことを真剣に考えて行動していかねばなりません。
 部長答弁にあったように、全ての人の基本的人権や幸福追求権が尊重され、性別や性的指向に関係なく多様な生き方を認め合う社会の実現に向けて、和歌山県のリーダーである岸本知事が先頭に立ってさらなる取組を推進していただくよう切にお願いし、私の一般質問を終えたいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○副議長(中本浩精君) 以上で、北山慎一君の質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 9番高田英亮君。
  〔高田英亮君、登壇〕(拍手)
○高田英亮君 皆さん、こんにちは。
 今年4月の県議会議員選挙の紀の川市選挙区にて選出をいただきました高田英亮でございます。この県議会において、初めて一般質問をさせていただきます。初めての質問ですので不慣れな点もあるかと思いますが、御容赦くださいますようよろしくお願いをいたします。
 それでは、議長の許可を得ましたので、通告に従い、一般質問をさせていただきます。
 まず初めに、京奈和関空連絡道路についてであります。
 紀の川市では、京奈和自動車道路紀の川インターチェンジ付近から阪和自動車道路上之郷インターチェンジ付近へ直結させる自動車専用道路を京奈和関空連絡道路と称し、本道路の実現を目指しております。
 この道路の実現は、中村愼司前紀の川市長が市長選挙立候補の際に、有権者の皆様に対し、「紀の川市の玄関口として、関西国際空港と直結した高規格道路、京奈和関空連絡道路の実現に道筋をつけます。皆さんの生活を大きく支えるこれからの道のために、命をかけて取り組みます。どうか皆さん、力をお貸しください」と強く訴えるなど、中村前市長のまさにライフワークとなるものでした。
 中村前市長が先頭となって、本道路実現のための組織として、平成21年2月に泉佐野市と共に紀の川関空連絡道路促進協議会を設立し、近隣市町の賛同も得て構成団体が次第に増えていきました。平成27年7月には、近隣市町で構成する京奈和関空連絡道路建設促進期成同盟会を設立し、平成29年12月には奈良県内京奈和自動車道路沿線の5市にも賛同をいただき、令和5年4月現在、和歌山県、大阪府及び奈良県内14市8町の構成となっております。中村前市長が何としてでも実現するんだという熱い思いで、一生懸命国や府県に働きかけをしてくれました。
 そんな中、令和4年1月に中村前市長が突然亡くなられてしまいました。残念でなりません。その前市長の思いを引き継いで、岸本現紀の川市長も京奈和関空連絡道路の実現のため、一生懸命取り組んでいただいております。
 令和5年4月には、関係市町の商工会議所、商工会の24団体が期成同盟会の賛助会員として加盟していただくとともに、同年11月には、期成同盟会の会長であります岸本紀の川市長が副会長の千代松泉佐野市長、東川御所市長と共に、国土強靱化推進本部長であります二階俊博衆議院議員、鶴保庸介参議院議員などを訪問し、本道路の必要性や効果、地域の思いについてしっかりとお伝えいただいたところであります。
 中村前市長の熱い思い、これは全市民の熱い思いでもあります。その京奈和関空連絡道路が実現すれば、世界から、そして世界への物流輸送ルートの創出により、地域経済や産業を活性化し、接続沿線各地に企業立地を促進します。人、物の交流増進により、地域経済や生活圏の融合、一体化が加速され、周辺地域の発展が期待でき、ひいては和歌山県の発展に大きくつながります。
 具体的な効果といたしましては、京奈和自動車道紀の川インターチェンジから、世界への扉、関西国際空港まで17分でアクセスすることができるとともに、関西国際空港から世界遺産の霊場高野山や古都奈良への利便性が格段に向上し、新たな観光ルートを確立できます。
 また、大規模災害時の救護・救急活動ルートの確立により、地域の未来をつなぐ強靱な命の道ともなります。
 こういった観点から、本道路が県内全線開通を実現した京奈和自動車道路の次のプロジェクトとして早期に実現できますよう、大阪府や奈良県とも連携を取っていただき、今後とも国や関係機関に働きかけていただきたいと考えております。
 そこで質問ですが、京奈和関空連絡道路の実現に向けた現在の県の取組状況はどのようになっていますか。県土整備部長にお伺いいたします。
○副議長(中本浩精君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
 県土整備部長福本仁志君。
  〔福本仁志君、登壇〕
○県土整備部長(福本仁志君) 京奈和関空連絡道路は、京奈和自動車道などの整備効果をさらに波及させる上で必要な道路と考えております。
 本道路の事業化には、府県をまたぐ地域全体で取り組む必要があることから、県では2016年度に大阪府、泉佐野市、紀の川市などで構成される京奈和関空連絡道路調査検討会を設立し、整備効果の検討などを実施するとともに、これまで機会を捉え、繰り返し国に対して早期事業化に係る要望を行ってまいりました。その結果、2021年7月に国が策定した近畿ブロック新広域道路交通計画において、高規格道路の調査中区間に位置づけられました。
 県といたしましては、引き続き、検討会において整備効果や必要性の検討を行うとともに、国において概略ルート・構造の検討に早期に着手するよう働きかけているところです。
○副議長(中本浩精君) 高田英亮君。
  〔高田英亮君、登壇〕
○高田英亮君 御答弁ありがとうございました。
 京奈和関空連絡道路の実現により、紀の川市をはじめとした周辺地域は劇的に発展するものと思われます。実現には多くのハードルがあるかと思いますが、知事共々、国への働きかけなど、引き続き頑張っていただきたいと思います。
 それでは、次の質問に移らしていただきます。
 2項目め、貴志川流域における浸水対策についてです。
 1番目の豪雨に伴う野田原川の復旧状況について、初めに、豪雨に伴う野田原川の復旧状況であります。
 和歌山県では、今年の6月2日に梅雨前線が西日本に停滞し、前線に向かって台風第2号周辺の暖かく湿った空気が流れ込んだため、大気の状態が非常に不安定となり、記録的な大雨になりました。この日は、令和3年度から運用を開始された顕著な大雨に関する気象情報が運用後、初めて和歌山県内に発表され、線状降水帯が発生したため、降水が長時間継続しました。
 この豪雨の影響で、県内各地で大きな被害が発生しました。県の発表によりますと、死亡者2人、行方不明者1人をはじめとして人的被害8人、住家被害については3147棟、公共土木施設被害は919件で被害額約163億円、農林水産業の被害については被害額約131億円と、紀北地方を中心に甚大な被害となりました。
 県内では、かつらぎ町かつらぎ観測所で、6月2日の降水量が300.5ミリと統計開始から10年目以降で最大の降水量を観測するなど、ふだんは降雨量が比較的少ない紀北地方においても記録的な豪雨となりました。このことから、川幅の狭い貴志川支川の野田原川や真国川はもとより、貴志川本川においても甚大な被害が発生しました。
 特に、野田原川沿いの野田原地区においては、河川が氾濫し、橋も流され、護岸も崩され、もちろん田畑においては何もなくなるくらい流されるなど、想像を絶する状況となりました。人口が少ない地域での大きな被害となり、私のほうにも地域の方から早期復旧を望む声が寄せられているところです。
 そこで質問ですが、豪雨に伴う野田原川の災害復旧の状況はどうなっていますか。県土整備部長にお伺いいたします。
○副議長(中本浩精君) 県土整備部長。
  〔福本仁志君、登壇〕
○県土整備部長(福本仁志君) 野田原川では、本年6月の豪雨により、紀の川市桃山町野田原地区等で多くの護岸が被災しました。これら被災した護岸については、9月までに災害査定が完了し、現在、工事契約に向け、順次入札手続を行っているところです。
 また、被災箇所周辺では、土砂の堆積も確認されましたので、護岸の復旧と併せて堆積土砂の撤去工事も行っていく予定としております。
 引き続き、これらの早期完了に向け、取り組んでまいります。
○副議長(中本浩精君) 高田英亮君。
  〔高田英亮君、登壇〕
○高田英亮君 御答弁ありがとうございました。
 復旧工事の早期完了に向け、取り組んでいただいているということなので、引き続きよろしくお願いいたします。
 次に、貴志川の河川整備計画についてであります。
 貴志川の流域では、過去から幾度となく洪水被害に見舞われており、和歌山県が策定した紀の川水系貴志川圏域河川整備計画では、「流下能力が不十分な区間が多く残されていることから、平成23年9月洪水と同規模の洪水において家屋浸水被害が生じないよう河川整備を行うことで、早期に一定の整備効果を発揮させる」とあります。
 しかし、本年6月のように線状降水帯が発生し、災害規模の豪雨が各地にもたらされるなど、一昔前では想定外の豪雨であったものが数年周期で発生する可能性が生じる近年の状況では、流域において浸水被害を生じさせないための河川整備について、待ったなしの状況になりつつあります。
 そこで質問ですが、今回の豪雨で貴志川でも水位が上昇し、多くの被害が発生しましたが、貴志川の河川整備計画における具体的な対策の進捗状況はどのようになっていますか。県土整備部長にお伺いいたします。
○副議長(中本浩精君) 県土整備部長。
  〔福本仁志君、登壇〕
○県土整備部長(福本仁志君) 紀の川水系貴志川圏域河川整備計画については、2017年におおむね20年間で整備を実施する計画として策定し、これまでに海南市孟子地区等で河道掘削を実施しております。
 現在、海南市野上中地区等において、河道掘削や、河道拡幅のための用地取得に取り組んでいるところです。
 引き続き、防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策の予算等を活用し、早期完成に向け事業の推進を図ってまいります。
○副議長(中本浩精君) 高田英亮君。
  〔高田英亮君、登壇〕
○高田英亮君 御答弁ありがとうございました。地域の浸水被害軽減のため、早期の完成をお願いいたします。
 それでは次、3番目の紀の川市調月地区、丸栖地区、前田地区における排水対策の進捗状況についてお尋ねいたします。
 紀の川市桃山町調月地区においては、いつも大雨が降るたびに浸水被害が発生しています。6月2日の線状降水帯発生による豪雨により、この地域の桃畑や田んぼも甚大な被害を受けました。もちろん家屋についても、床上浸水ということで家具等が使えないといった被害も発生しています。
 また、紀の川市貴志川町丸栖地区においても頻繁に浸水被害が発生しています。田んぼは水につかってしまい、道路も浸水で通れなくなり、長い時間通行止めが続くことになります。そのたびにポンプ車で排水してくれていますが、間に合わない状態です。
 また、紀の川市貴志川町前田地区も同様に浸水被害が発生しやすい地域であります。大雨のたびに周辺の田んぼが水につかってしまいます。地域内の雨水を丸田川に排出するための水門があるのですが、水位が上がっているときに開けると逆流してきて、かえって水が入ってきてしまいます。地域の中には、浸水により陸の孤島となるところもあり、地域で非常用の船を常備したり、大雨の際には、浸水被害に遭わないために車などを前もって移動させる方々もいるようです。
 この3地区については、大雨が降ると頻繁にこのような状態になってしまいます。各地区の皆様からこのような被害を聞くたびに、住民の皆様が安全で安心して暮らせるように何とかならないか、いつも考えております。
 そこで質問なのですが、これらの地域の浸水対策として、平成26年度から実施している国営総合農地防災事業和歌山平野地区や国営事業に附帯して実施する県営事業について、現在の進捗状況はどのようになっていますか。農林水産部長にお伺いします。
○副議長(中本浩精君) 農林水産部長山本佳之君。
  〔山本佳之君、登壇〕
○農林水産部長(山本佳之君) 貴志川流域では、近年の集中豪雨や地域開発等に起因した雨水流出量の増加により、浸水被害が発生しています。
 議員お話しの浸水被害を軽減する対策として、調月地区は、国営総合農地防災事業和歌山平野地区により工事が実施されています。また、丸栖地区、前田地区は、県営事業により排水機場の整備を進めています。
 調月地区については、貴志川への排水能力を増強するため、毎秒1立方メートルの排水能力を備えた東貴志排水機場の新設や調月導水路の改修を行っており、来年度中の供用開始を目指し、工事が行われています。
 丸栖地区については、毎秒2立方メートルの排水能力を備えた排水機場の新設工事を実施しており、2025年度中の供用開始を予定しています。
 また、前田地区については、来年度から毎秒2.5立方メートルの排水能力を備えた排水機場の整備に着手する予定としています。
 県としましては、早期の事業効果を実現できるよう事業の進捗に努めてまいります。
○副議長(中本浩精君) 高田英亮君。
  〔高田英亮君、登壇〕
○高田英亮君 御答弁ありがとうございます。
 流域の治水対策は、国、県、市が緊密に連携し、効果的な対策を早急に実施することが重要と考えます。今後も、国、県、市が役割を分担し、総合的な対策に取り組んでもらえるよう要望いたします。
 それでは、第3問目の貴志川高校の在り方についての質問に移らせていただきます。
 3項目めの県立貴志川高校の在り方についてであります。その一つとして、人間科学科募集停止の理由についてということで、まず初めに、貴志川高校人間科学科の募集停止についてであります。
 貴志川高校人間科学科は、平成11年に開設され、多くの卒業生を輩出してきました。同学科は、ふるさと和歌山のすばらしさを理解し、人々の幸せや地域社会の発展のために意欲的に取り組む生徒を育成することをモットーとして、大学等への進学や県内企業への就職など、卒業生は幅広い分野で活躍しており、紀の川市地域の学生が通学しやすい学校として一定の役割を果たしてきました。
 近年は、少子化の影響等で志望者が減少している状況が続いていたこともあり、令和6年度から人間科学科の募集を取りやめることが県教育委員会から発表されました。
 貴志川高校人間科学科は、特色あるカリキュラムと少人数の利点を生かして多様な人材を育成し、地域へも多大な貢献を果たしてきたと思われます。今回の募集停止に伴い、最も影響を受けるのは、同学科への進学を希望していた中学生であります。とりわけ同学科を志望していた地元の中学生にとっては、選択肢が一つ減ることとなってしまい、似たようなカリキュラムのある遠方の学校へ進学するか、ほかの学科、学校を選択肢に加えるか、いずれにしても当該学生に負担が生じる可能性があります。
 そこで質問ですが、改めて今回の貴志川高校人間科学科募集停止に至った理由について、教育長にお伺いします。
○副議長(中本浩精君) 教育長宮﨑 泉君。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○教育長(宮﨑 泉君) 貴志川高等学校人間科学科のような普通科系専門学科は、普通科に学区が設定されていた平成時代の前半に多くの高等学校で設置され、当初は学科が掲げる特別な教育に期待する中学生が志願し、大学進学などの進路希望をかなえることができました。
 その後、学区制撤廃をはじめとした高等学校入学者選抜の変更や、中学生の理系や文系に特化した普通科系専門学科より汎用性の高い普通科を志向する傾向等から、多くの普通科系専門学科は募集停止や普通科への改編となっていきました。
 貴志川高等学校では、少子化や志願者数の減少で全体の募集学級数が縮小していく中、普通科2学級と人間科学科1学級に細分して募集するより、合わせて普通科3学級として募集することにしました。そうすることにより、入学後に生徒のニーズに応じた少人数学級の編制や多様な科目選択を取り入れた教育課程とし、個に応じた丁寧な指導を実現することができ、地域の中学生に理解されると考え、今年度、人間科学科を募集停止いたしました。
 貴志川高等学校では、「人間として生きる力を身につけさせ、地域と社会に役立つ人材を育てる」を学校教育目標に掲げています。自他を大切にし、他者を思いやる心を育む教育の充実に引き続き取り組むとしていますので、地域の協力、御理解とともに、県教育委員会としても支援、指導をしてまいります。
○副議長(中本浩精君) 高田英亮君。
  〔高田英亮君、登壇〕
○高田英亮君 御答弁ありがとうございました。
 志願者の減少により人間科学科が普通科になるとのことですが、これまでの人間科学科が取り組んでこられたカリキュラムのよい部分を残しつつ、貴志川高校の特色である少人数教育のメリットを生かしたきめ細かな教育が普通科となっても継続していくことを望んでおります。
 次に、貴志川高校の今後についてです。
 貴志川高校の正門を入ると、左手に「磐座の神宿りし岩」があります。この岩は、学校創設当時、地域の方々が貴志川高校の守護、学校の発展・生徒の健やかな成長を願い、長い年月をかけて鳩羽山中腹から切り出したものであり、このエピソードからも、創設当時の地域の学校に対する期待の大きさがうかがえます。
 一方で、那賀地方には、岩出市に那賀高校、紀の川市に粉河高校と貴志川高校の2校、合計3校の高校があります。この地域は和歌山市からも比較的近く、JRの和歌山線や和歌山電鐵の貴志川線の沿線にあり、通学の便もよいことから、和歌山市内の学校に進学する生徒が多数いると聞いています。
 こうしたこともあり、特に貴志川高校については、地元からの志願者が少ないこともあって、ここ最近は募集定員を充足することが困難な状況となっています。志願者を増やしていくためにも、学校の様々な取組を地域や中学生にももっと知ってもらい、学校に対する地域からの信頼をさらに高めていくことが大切だと考えます。
 生徒数が減少すると、学校の活力の低下が危惧されるところですが、実際、貴志川高校は現在でも活気に満ちあふれ、先生、生徒ともに地域の活動などに積極的に取り組んでいるすばらしい学校であると思います。
 例えば、本年7月には、国際交流でベトナム・クアンナム省の高校生が同校を訪問した際、生徒たちの自主的な運営により、茶道や柔道、また、いろいろなゲーム、バレーボールなど、思い思いに交流を図り、会場は本当に活気に満ちておりました。
 また、地元のまちを元気にしたいとの思いから、貴志川高校と貴志川中学校の生徒が合同でウオールアートを制作し、和歌山電鐵貴志川線西山口駅のホームに設置しました。このウオールアートは、通勤通学等により同駅を利用する方々の心を癒やすものとして、地域の皆様に楽しんでいただくものとなっております。
 さらには、紀の川市貴志川町の平池緑地公園で、今、開催されているイルミネーションの制作にも参加してくれていますし、エコスクール活動として地域の道路のごみ拾い、救援募金活動等の様々なボランティア活動、高校生防災スクールなど、活発に活動をしてくれています。
 また、貴志川高校は環境の整ったところにあります。小学校、中学校、生涯学習センター、高校と各種教育施設が近接しているところで、俗に言う文教ゾーンにあります。付近には貴志川が流れ、池も近くにあり、特に平池緑地公園はジョギングや散歩を楽しむ人も多いエリアであります。さらに、和歌山電鐵貴志川線の沿線でもあり、環境には申し分ないところであります。
 貴志川高校が建っております旧貴志川町は、以前から生涯学習の町として教育分野には多くの予算を投入し、先進的な取組を行ってきた地域でありました。当時、貴志川町の生徒たちの多くは貴志川高校へ行き、そのときの生徒たちは現在、民間企業や役所等、各所で活躍されている方も非常に多いと伺います。
 しかし、平成17年に近隣の4町と合併し、紀の川市が誕生してから、かつての生涯教育の中で育まれてきた地域の絆、学校と地域の絆も弱体化してきているのではないかと心配する声を聞くこともあります。
 また、貴志川地区は大規模な県の公営住宅団地が存在し、かつては、貴志川地区は和歌山のベッドタウンとして人口急増地区でありました。現在は人口が急激な減少に転じており、中学校でも生徒数の減少が顕著となってきています。さらには、学区制が撤廃されたことにより、和歌山市等の学校へ進学する地域の中学生が増加したことに伴い、さきにも触れましたとおり、貴志川高校への入学希望者が減少してきております。
 このような状況の中、令和4年3月、県立高等学校教育の充実と再編整備に係る原則と指針が県教育委員会から示されました。この原則と指針は、少子化による生徒数の減少等の現状を踏まえ、これからの高等学校教育の充実と再編整備に向けたスタートとすべく作成されたものであります。この原則と指針の中では、本県の高等学校教育の充実に向けた様々な方策が示されるとともに、県内を各エリア・地域に分け、それぞれのエリア・地域の高等学校の在り方について記載されています。当然のことながら、貴志川高校や貴志川高校を含めた那賀地方の高校の在り方についての記載もあります。
 今後、この原則と指針を基に様々な取組がなされていくと思いますが、中学校卒業生徒数はさらに減少していくことが見込まれることから、那賀地方の3校の中で最も定員数の少ない貴志川高校について、入学希望者が今後増えていかなければ、再編整備によりなくなってしまうのではないかとの声もよく聞きます。仮に貴志川高校がなくなってしまうと、同校に進学を希望する中学生の選択肢を狭めるだけでなく、さきに申し上げた同校生徒が長年取り組んできた地域との関わりが喪失することにより、地域自体の活力が低下してしまう可能性があります。高校の廃止については、慎重に議論する必要があるかと思います。
 そこで質問ですが、貴志川高校の今後についてどのようにお考えでしょうか、教育長にお伺いいたします。
○副議長(中本浩精君) 教育長。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○教育長(宮﨑 泉君) 県民の皆様の声を反映して、2022年3月に県立高等学校教育の充実と再編整備に係る原則と指針を策定いたしました。
 貴志川高等学校の改善、改革の方向性として、これまで同校が取り組んでいる少人数の学級編制や個々の状況に応じた丁寧な指導をより充実させ、志願者の安定的確保に努めることとしています。
 また、原則と指針では、紀の川市・岩出市域の高等学校の将来像として、当地域の中学生の地元校への進学率は約50%と低く、現在、地域の3校合わせて16学級の募集が約10年後には12学級程度になると予想されています。当面、学級数の調整を行いながら、3校の存続、充実に向けていくこととしています。
 一方で、紀の川市・岩出市域に限ったことではありませんが、学級数の減少が進めば、部活動や学校行事、カリキュラム等において活力や多様性が低下していくことが懸念されます。こうしたことから、貴志川高等学校を含め県内各高等学校の将来の整備については、学校を取り巻く状況を踏まえ、地域や関係者の御意見を十分に聞きながら在り方を構想していく必要があります。
 また、原則と指針には、紀の川市と岩出市域の3校のうち1校は、高等学校の施設の一部を活用して特別支援学校を新設し、高等学校との並置を含めた再編整備を検討するということも記載しています。
 学校長は、こうしたことを踏まえつつ、地域の声を聞きながら将来像を構想することとなります。県教育委員会としましても、学校長との意見交換を深めながら、その構想について地域との協議を進め、期待される高等学校教育が実現できるように尽力してまいります。
○副議長(中本浩精君) 高田英亮君。
  〔高田英亮君、登壇〕
○高田英亮君 御答弁ありがとうございました。
 少子化の流れの中で、高校の学級数が減っていくことは致し方ないことであります。その中で、那賀、粉河、貴志川の3校については、学級数の調整はありつつも存続、充実に努めるとのことです。学校の存続に向けて、学校や地域も頑張ると思いますので、県も先頭に立って頑張っていただきたいなあ、そのように思いますんで、よろしくお願いをいたします。
 これで、私の一般質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)
○副議長(中本浩精君) 以上で、高田英亮君の質問が終了しました。
 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。
 明日も定刻より会議を開きます。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時30分散会

このページの先頭へ