令和5年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(全文)


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令和5年6月 和歌山県議会定例会会議録 第5号

議事日程 第5号
 令和5年6月23日(金曜日)
 午前10時開議
 第1 議案第78号から議案第95号まで及び諮問第1号(質疑)
 第2 一般質問
 第3 議案等の付託
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会議に付した事件
 第1 議案第78号から議案第95号まで及び諮問第1号(質疑)
 第2 一般質問
 第3 議案等の付託
 第4 休会決定の件
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出席議員(42人)
 1番 坂本佳隆
 2番 三栖拓也
 3番 秋月史成
 4番 川畑哲哉
 5番 藤山将材
 6番 森 礼子
 7番 井出益弘
 8番 尾崎要二
 9番 玉木久登
 10番 佐藤武治
 11番 濱口太史
 12番 鈴木太雄
 13番 冨安民浩
 14番 吉井和視
 15番 鈴木德久
 16番 玄素彰人
 17番 岩田弘彦
 18番 中本浩精
 19番 中村裕一
 20番 谷 洋一
 21番 山家敏宏
 22番 北山慎一
 23番 堀 龍雄
 24番 谷口和樹
 25番 新島 雄
 26番 山下直也
 27番 高田英亮
 28番 小川浩樹
 29番 中尾友紀
 30番 岩井弘次
 31番 藤本眞利子
 32番 浦口高典
 33番 山田正彦
 34番 坂本 登
 35番 小西政宏
 36番 浦平美博
 37番 中西 徹
 38番 林 隆一
 39番 片桐章浩
 40番 奥村規子
 41番 尾﨑太郎
 42番 長坂隆司
欠席議員(なし)
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説明のため出席した者
 知事         岸本周平
 副知事        下 宏
 理事         田嶋久嗣
 知事室長       北廣理人
 危機管理監      福田充宏
 総務部長       吉村 顕
 地域振興監      赤坂武彦
 企画部長       前 昌治
 環境生活部長     山本祥生
 福祉保健部長     今西宏行
 商工観光労働部長   三龍正人
 農林水産部長     山本佳之
 県土整備部長     福本仁志
 会計管理者      﨑山秀樹
 教育長        宮﨑 泉
 公安委員会委員長   竹田純久
 警察本部長      山﨑洋平
 人事委員会委員長   平田健正
 代表監査委員     森田康友
 選挙管理委員会委員長 小濱孝夫
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職務のため出席した事務局職員
 事務局長       林 伸幸
 次長(秘書広報室長事務取扱)
            萩原 享
 議事課長       長田和直
 議事課副課長     岩谷隆哉
 議事課議事班長    伊賀顕正
 議事課主任      菅野清久
 議事課副主査     西 智生
 議事課副主査     林 貞男
 総務課長       葛城泰洋
 政策調査課長     岩井紀生
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  午前10時0分開議
○議長(濱口太史君) これより本日の会議を開きます。
 日程第1、議案第78号から議案第95号まで及び諮問第1号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、併せて日程第2、一般質問を行います。
 41番尾﨑太郎君。
  〔尾﨑太郎君、登壇〕(拍手)
○尾﨑太郎君 おはようございます。議長の許可を得ましたので、一般質問をいたします。
 統一地方選挙が終わりました。選挙となると、どの議員も選挙区中を走り回ります。県民の方ともお話をする機会も増えるわけであります。よく聞かれた質問の一つが、岸本知事ってどんな人、岸本知事はどうなんですかというものでした。16年ぶりに知事が替わったわけですから、県民の関心が高いのも当然であります。新知事への期待と少しの不安がのぞきます。
 私は、知事と同じ高校の出身ですが、大先輩にお互いの共通の支持者がいらっしゃいます。時折、大先輩の下で、岸本当時衆議院議員のお話を拝聴する機会もありました。和歌山のために働くという姿勢は、与野党とも一致しているわけで、岸本議員の高い教養、見識、豊富な人脈に期待するところもあり、政治上のヒントをいただいたこともありました。
 とはいえ、特に親しくしていたわけでもございませんので、この一般質問は、県民の「知事ってどんな人」に応える一助となるように努めてまいりたいと存じます。
 私は、一地方議員にすぎませんが、保守を標榜し、政治に関わってまいりました。真の保守などといった物言いがされることがありますが、政治的な文脈で使われる「保守」なる用語はいささか混乱しています。
 今の若い世代の人たちからは想像もできないでしょうが、米ソの冷戦下における昭和の時代は、我が国に共産主義革命を起こそうとする勢力が一定の影響力を持っていました。革命がそれなりの現実感を持って語られていたのです。政界も経済界も相当な危機感を抱いていました。そこで、マルキシズムに染まっていないグループは反共という点で結束する必要があり、これを保守として一くくりにしました。
 安倍元総理の暗殺犯は、犯罪に至った動機に、安倍元総理と統一教会の接点について語ったとされています。統一教会は、国際勝共連合という組織を傘下に擁していますが、この組織は、勝共とは共に勝つと書きますが、文字どおり半島と列島の赤化を防ぐために設立されたものです。
 防共、反共の一点でつながった自民党の一部議員と統一教会は、ある種の協力関係を築きます。いささかエキセントリックな教義を掲げる統一教会ではありますが、その組織力は、厳しい選挙を戦う身としては魅力的であったのでしょう。統一教会も、また反共産主義という点では保守勢力と捉えられていました。しかし、もちろん統一教会は、本来の意味での保守ではありません。我が国では、自由主義、新保守主義、新自由主義、右翼までもが保守として語られてきたのです。要は、保守とは、反共あるいは反社会主義的なもの以外の政治的姿勢の総称であったわけであります。
 では、本来の保守とはどのようなものでしょうか。ここで、岸本知事が2015年の民主党の衆議院議員時代に、安倍総理に対して行った予算委員会での質問を見てみましょう。
 「フランス革命の省察」の著者で保守思想の泰斗、エドマンド・バークの名を上げつつ、岸本議員は安倍総理に迫ります。「保守政治の前提をどこに置くか。保守とは何か。一言で言うと、人間が不完全であるということを認めるかどうか。人間の理性、人間の知性には限界があるんだということを認めるかどうか。認める立場が保守政治です」、「人間の理性は完全であって、明るい未来が描けるというのは保守政治ではない。それは、例えばソ連の共産主義であったり、ナチスの全体主義であったり、あるいは、戦争前、おじいさまの岸元総理をはじめとした日本の高級官僚や軍部が満州帝国で実験をした、言わば国家社会主義的な政治というようなもの、これらは人間の知性、理性に全幅の信頼を置く政治であります」。
 全く、岸本議員のおっしゃるとおりです。果たして安倍総理は保守政治家であるのか否か。安倍総理は答えます。「まさに、フランス革命というのは知性万能主義であって、自分たちが正義をつくる。そこで恐怖政治が始まったわけであります」、「しかし、それは変えてはいけないということではなくて、常に、それを変えてくるときに、先人たちが積み上げてきたもの、なぜ積み上げてきたか。そこに、理性的なアプローチではなくて、積み上がってきたというものの重みをしっかりと感じるということが大切なんだろう、こう思うわけでありまして、今を生きる私たちだけではなくて、過去から現在、そして未来への視座を常に持っていくという考え方なんだろう、こう思うわけであります」。
 岸本議員は食い下がります。「本当に謙虚な気持ちで保守政治家をするのであれば、理性とか知性に限界があるわけですから、この道しかないという物言いは保守政治家はしません。この道しかない、いや、この道もあるけれどもあの道もある、その道もあるかもしれない」。これは、岸本議員に一本といったところでしょうか。
 岸本議員の保守の理解はさすがですが、さらに付け足すとすれば、保守は権力の集中を警戒します。バークの「フランス革命の省察」には、こうあります。「政治の技術とは、かように理屈ではどうにもならないものであり、しかも、国の存立と繁栄に関わっている以上、経験は幾らあっても足りない。最も賢明で鋭敏な人間が生涯にわたって経験を積んだとしても足りないのである。だとすれば、長年にわたって機能してきた社会システムを廃止するとか、うまくいく保証のない新しいシステムを導入、構築するとかという場合は、『石橋をたたいて渡らない』を信条としなければならない。人間の本性は複雑、微妙であり、したがって政治が達成すべき目標も極めて入り組んでいる。権力の構造を単純化することは人間の本性に見合っておらず、社会の在り方としても望ましくない。政治体制を新しく構築するに当たり、物事を単純明快にすることを目指したなどと自慢する連中は、政治の何たるかを少しも分かっていないか、でなければおよそ怠慢なのだ。単純な政府とは、控え目に言っても機能不全を運命づけられた代物にすぎない」。
 保守にとってスピード感ある改革は警戒すべきものであり、多様な意見を集約していく手間や、あちらを立てればこちらが立たず的に利害の調整で汗をかくことによる政治決定のスローダウンこそが重要と考えます。要するに、決め過ぎを恐れるのです。
 私が最も影響を受けた評論家の福田恆存は、「現実は明らかに合理の領域と不合理の領域とを同時に併存せしめている。とすれば、現実を認識するということは、この二つの領域の矛盾を矛盾のままに把握することでしかあるまい」と述べています。保守の要諦は、ここに極まるでしょう。少なくとも小泉純一郎氏や小沢一郎氏は、この意味での保守政治家ではないでしょう。
 安倍元総理はどうであるのか。安倍元総理については、「安倍晋三回顧録」が出版されており、ベストセラーになっているとのことで、お読みになられた方も多いかと思います。憲政史上最長の政権を担った大宰相の回顧録ですから、面白くないはずがないですが、中でも安倍政権を倒そうとした財務省との暗闘は圧巻です。
 安倍元総理いわく「内閣支持率が落ちると、財務官僚は自分たちが主導する新政権の準備を始めるわけです。目先の政権維持しか興味がない政治家は愚かだ。やはり国の財政を預かっている自分たちが一番偉いという考え方なのでしょうね。国が滅びても財政規律が保たれてされえいれば満足なんです。私はひそかに疑っているのですが、森友学園の国有地売却問題は、私の足をすくうための財務省の策略の可能性がゼロではない」。行政府の長である内閣総理大臣の方針が気に入らないからと、その失脚を役人が画策するとは何たることでありましょうか。
 これが安倍元総理の生前に出版されていたら、大変な物議を醸しただろうなと思っていましたところ、果たして文藝春秋の本年の5月号に「『安倍晋三回顧録』に反論する」と題した小論が掲載されました。著者は、大蔵省の元事務次官・齋藤次郎氏。齋藤氏は、御自分でも書いておられますが、マージャンの上がりのときにデーンと声を上げることから「デンスケ」とあだ名される伝説の超大物大蔵官僚です。
 内容は、国民受けするばらまきに流れる政治家と、国の将来を見据え、財政規律を守ろうとする財務省という図式であり、財政規律の重視は、さきの大戦での反省から来ているとするものです。基本的には、文藝春秋の2021年11月号に掲載の当時の現役の財務事務次官・矢野康治氏の通称「矢野論文」と同様の主張です。齋藤氏は、現役の次官でありながら、この論文を書いた矢野氏を称賛しておられます。矢野氏は、最近のばらまき合戦のような政策論を聞いて、やむにやまれぬ大和魂からこの小論をお書きになったそうです。大和魂は、使い方によっては悲惨な結果を招くことは歴史の教えるところではありますが。
 消費増税に反対し続けてきた私としては、今回の齋藤論文で唯一賛同できる、「国民の理解なしで何事もなし得ません」とのくだりどおり、国民、県民の理解を得るべく再度反論しておきたいと思います。
 齋藤氏は、「安倍さんには、自分の考えと一致する少数の経済学者だけでなく、井手英策、小野善康、櫻川昌哉、野口悠紀雄、吉川洋など著名な経済学者の意見にも耳を傾けていただきたかったと切に思っています」と述べておられます。それならば、財務省も、ローレンス・サマーズ、ポール・クルーグマン、ベン・バーナンキらノーベル賞級の経済学者の意見にも耳を傾けていただきたいと切に願います。
 クルーグマン氏はこう述べています。「実際、アベノミクスが実行に移されてから株価も上昇し、景気も回復基調に入ろうとしていました。しかし、私はここへ来て、安倍政権の経済政策に懐疑心を持ち始めています。というのも、安倍政権は、この4月に消費税を5%から8%に増税し、さらに来年にはこれを10%に増税することすら示唆しているからです。消費増税は、日本経済にとって今最もやってはいけない政策です。今年の4月の増税が決定するまで、私は日本経済には多くのことがうまくいっていると楽観的に見ていましたが、状況が完全に変わってしまったのです。既に消費増税という自己破壊的な政策を実行に移したことで、日本経済は勢いを失い始めています」。
 ちなみに、齋藤氏のお気に入りである吉川洋氏は、以前の質問でも紹介しました。20年前の2003年、政府の債務がGDP比率140%になっていることから、「財政は既に危機的状況にあり、できるだけ早い機会に財政の健全化が必要。このままだと政府債務のGDP比率は200%に達するが、この水準は国家財政の事実上の破綻を意味すると言ってよい」と発言しております。既に200%を超えていますが、もちろん国家財政は破綻していません。極めて理性的で頭のよい吉川氏の理論が間違うはずはないのですから、きっと現実社会がおかしいのでしょう。
 安倍回顧録には、何としてでも消費増税をやろうとする財務省と、これを何とか阻止しようとする安倍総理の闘いが生々しく語られています。「職業としての政治」の著者、マックス・ヴェーバーによれば、本来的に官吏は政治をなすべきではない。官吏は行政を憤りも偏見もなく行うべきであるとします。もちろん、安倍総理の方針に反して増税を主張し、激しく争うのはよい。しかし、それは政治家であるべきなんです。ヴェーバーいわく、党派性、闘争、激情、つまり憤りと偏見は政治家の、とりわけ政治指導者の本領だからである。矢野氏の党派性、闘争、激情、つまり大和魂は役人の本分ではありますまい。
 ともかく、デフレ下での増税など常軌を逸しているとしか思えません。現に、消費増税のたびに我が国の経済は失速してきました。大体コロナ対策で100兆円も国債を出しましたが、財政危機など起きてはいません。デフレが収まるまで消費増税を延期したところで、何ほどもなかったことは明らかです。何度も申し上げてきましたが、変動為替相場制の下で自国通貨を発行する政府は、財政破綻しません。財務省ですら──あえて「すら」と言いますが、「ムーディーズ等の格付会社に対し、日米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない。デフォルトとしていかなる事態を想定しているのか」と抗議しているくらいです。
 国債が暴落し、金利が跳ね上がり、円が暴落してハイパーインフレが来ると財務省の応援団が叫び出してから20年以上になります。一向にその兆しがないことに、それでもオオカミは来ると恐怖をあおっていましたが、そのかたくなに現実を受け入れない姿勢はどこから来るのでしょう。
 私は、学生時代に、城山三郎氏の「男子の本懐」を読んで、いたく感動した口です。金本位制への復帰に、ライオン宰相と呼ばれた濱口雄幸と蔵相の井上準之助は命をかけます。金本位制は究極の財政規律、あらゆる抵抗勢力を乗り越え、健全財政を文字どおり死守する2人、友情、逆境、達成、非業の死など、およそ青年が感動するあらゆる要素が詰まったこの小説の影響で、実は私も金本位制こそ本来の通貨政策であると思い込んでいた時期もありました。若げの至りであります。
 しかし、彼らの国を憂う大和魂は、紛れもない本物であったにもかかわらず、健全財政路線は昭和恐慌を引き起こしてしまいます。これを収束させたのは高橋是清。高橋は、犬養毅内閣の下で4度目の蔵相に任命されるや、金本位制から離脱、国債を発行し、積極財政へと転換します。今に称賛される高橋財政の成果は目覚ましく、世界中が不況にあえぐ中、我が国経済はいち早く立ち直りました。
 積極的な財政出動は、財政赤字を拡大させます。例によって大蔵省は、赤字の拡大を懸念し、増税を求めます。高橋いわく、「しかしながら現内閣が時局匡救、回復のために全力を傾注しつつあるこの際、増税によりて国民の所得を削減し、その購買力を失わしむることは、せっかく伸びんとしつつある萌芽を剪除するの結果に陥るので、相当の期間までこれを避くるを可なりと認めたる次第であります」。安倍総理と高橋蔵相のコンビならば、消費増税は止められ、力強い日本経済の回復が認められたことでしょう。
 近頃は、国債は戦争を誘発するという言説を見かけることが多くなりました。齋藤氏も、財政規律に厳しい理由として、「戦費調達のための軍事国債を大増発、身の丈に合わない軍備拡張を繰り返した挙げ句、敗戦国となりました。その教訓を踏まえ、戦後の財政法は国債発行に非常に厳しい財政規律を課すことになりました」と述べています。財政法第4条の規定、健全財政の原則が、憲法第9条の戦争放棄をより確かなものにするために設けられたことは、起案者の認めるところであります。要するに、戦争ができないように軍備を持たせてはいけない、念のために戦費の調達にも足かせをはめておこうとするものです。
 しかし、むしろ戦争は、我が国の防衛力が他国に対して脆弱であるときに引き起こされるものであり、現実の平和がパワーバランスの上に成立していることを直視すれば、必要とされる軍事力は相対的なものであり、隣国が著しく軍事費を増額しているときに、対GDP比ですらない我が国のプライマリーバランスの黒字化などということにこだわるあまり、東アジアのパワーバランスを取り損ねれば、それこそ平和は失われてしまいます。軍事的なパワーを持たなければ、なるほど日本から戦争を仕掛けることは不可能です。しかし、他国からの侵攻──すなわち戦争ですが──の蓋然性が高くなることは明らかではないですか。現行憲法の問題点は、我が国に徹底的なリアリズムの欠如をもたらしたことかもしれません。
 最近、書店で面白い表題の本を見つけました。「ザイム真理教」、著者は森永卓郎氏です。森永氏によれば、財務省は自らつくり上げた財政均衡主義という教義を持ち、その教義を正当化するために、日本の財政は破綻状態だという神話をつくり上げてきたというのです。
 「ザイム真理教」という言葉は、ネットの世界で使われるようになっていたとのことですが、このシュールな表題を見て、なるほど財政均衡主義はある種の宗教なのかと合点がいきました。ノーベル経済学賞の受賞者である元FRB・連邦準備委員会議長のベン・バーナンキが「日銀の金融緩和は中途半端で、どんどんお札を刷り、国債を買うべき」と発言しても、異教徒のたわ言と一蹴するはずです。聞く耳を持ってもらいたいと先ほど述べましたが、宗教であるならば説得はもはや不可能でしょう。
 後書きによれば、本書の内容には、御自身の体験と公的統計、公表資料に基づいていて、絶対の自信を持っているとのことです。面白いので、御一読をお勧めいたします。
 知事の日頃の発言を追いますと、保守的な教養に加えてハイエク的な自由主義の要素が感じられます。官僚御出身ではありますが、役所が経済活動を指導できるなどはお考えになっていないようです。知事は、国会議員から転身されたわけですが、地方自治体の財政運営と国のそれとは根本的に違います。国とは違い、県独自の徴税は極めて限定的なものですし、何よりも県には通貨発行権がありません。現実に破綻することもあり得る地方自治体の財政運営を預かる知事が、最悪を想定し目配りするのは理解できるところではあります。
 もっとも、今日の国の財政運営が地方自治体の財政運営のようになされていることは大いに問題であります。知事は、本年2月6日に財政危機警報を発出されました。過日の一般質問に対する答弁で知事は、「これはまさに賢いやりくりでありまして、私自身は、歳出カットするとは言ってませんので、従来どおり補正予算がつけば、国土強靱化を中心に県の負担の少ない地方債を出して、できる限り公共事業をしたい。今後、費用対効果あるいはニーズがどの辺にあるかということを検証しながら、既存事業につきましては、これを見直すという意味での予算の賢いやりくりということで、財源を確保してまいりたいと思っております」と述べています。賢いやりくりとは何かを知る上で、博物館と射撃場は県民の注目を集めているところであります。
 保守主義とハイエク的な自由主義はもちろん違いますが、集中された権力により合理的に社会が制度設計されることを警戒し、共同体、家族などの自然発生的な秩序を重んじる点では親和性があります。しかし、国境へのこだわり等にはかなりの隔たりがあります。外国人の受入れなどについても、意見に大きな違いが出てくるでしょう。
 1982年制定の入管法の趣旨は、外国人の日本への入国資格を厳格に定め、どのように管理するかというものでした。しかし、人手不足を背景に政府は、1993年、外国人技能実習制度を発足させました。我が国で培われた技能、技術または知識の開発途上国等への移転を図る新たな研修制度として外国人を受け入れ、研修後に技能検定試験を受け、一定水準に達していれば実務実習として事実上の就労を行うというものです。
 さらに、2012年には、外国人登録法を廃止しました。それまで外国人登録原票より法務省が管理していた外国人は、住民基本台帳で地方自治体が管理することになりました。その後、2018年の入管法の改正により、在留資格に特定技能が加わりました。これにより、極めて熟練した技能を有する者は、特定技能2号として期限の制限なく、家族を伴い在留することができるようになりました。ちなみに、特定技能1号は、家族は伴えず、最長5年の在留期間です。
 さらに本年4月、政府の技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議は、中間報告書をまとめました。技能実習とは建前で、もともと安い賃金で外国人を事実上雇用する手段として同制度は利用されてきたことは周知の事実で、現実との乖離が大きくなり過ぎ、賃金の不払いや失踪なども問題化していました。
 今までは、ある意味タブーであった人材確保を正面から目的とする新制度の創設を目指すとのことで、事実上の移民政策としての色はますます濃くなってくるでしょう。人手不足は深刻な問題ですが、労働者にとっては賃上げの契機になりますし、固定費の上昇は経営者に生産性を上げるための死に物狂いの努力を強います。この苦しみこそがイノベーションを生み、経済を成長させるのだとする立場もあります。
 他方、人手不足は既に日本経済の息の根を止めかねない極めて深刻な状況にあり、一刻も早く生産年齢人口を増やすため、移民を積極的に受け入れるべきだとする立場もあります。移民の増加による社会の不安定化は、ヨーロッパ諸国の現状を見れば明らかですが、ともあれ、我が国は外国人の受入れをさらに進める方向にかじを切りつつあります。もっとも、我が国の現状は、韓国や台湾に比べても外国人が稼げる環境ではなくなってきており、果たして優れた技能を有する人材が日本へ来てくれるかどうかも分からないありさまでありますが。
 しかし、県内の企業が中小企業から大企業に至るまで、このままでは存続が危ぶまれるレベルで人材難に陥っていることは確かなことであります。かつて、ジャパン・アズ・ナンバーワンと称され、世界経済の18%を占めた我が国経済は、もはや見る影もありません。
 そこへウクライナへのロシアの侵攻です。それまで何となく地域紛争のような軍事衝突はあっても、大国による本格的な戦争は起きないだろうとの楽観論が冷戦終結後の世界を覆っていましたが、もちろん、もはや世界は戦争に備えざるを得なくなってきています。
 さきの大戦は、石油の禁輸が直接の引き金になりました。どんなに戦闘機や軍艦をそろえたところで、石油がなければ丸腰と同じです。ウクライナ戦争による物価の高騰、金利の上昇のリスクは、財政危機警報が発出された大きな要因ですが、多くの資源を外国に頼っている我が国は、直接の軍事行動による侵攻を受けずとも敵国の輸出の制限だけで経済は崩壊し、息の根が止まる、国防の点から極めて脆弱な状況にあります。安いものを世界の市場から調達するという新自由主義的な発想は、もはや何の説得力もありません。
 知事は、第一次産業を県経済成長の原動力とするとの見解をお持ちですが、誠に炯眼であると思います。しかし、肥料の原料である窒素、リン酸、カリのほぼ全てを輸入に、とりわけ大陸に頼っている現状をどのようにお考えでしょうか。東アジアの緊張の高まりは、いつ何どき肥料原料の輸出制限につながるとも限りませんし、台湾有事となれば、それこそ輸入が途絶するおそれがあります。
 昨年の10月9日の読売新聞によりますと、国もいよいよ肥料の国産化を進めるとのことで、岸田首相は、化学肥料への依存度を引き下げ、エネルギーや食料危機に強い経済構造への転換を図ることを指示しました。
 その切り札は、下水汚泥の再利用です。私の子供の頃は、まだ和歌山市内にも肥だめが残っており、下肥が普通に使われていました。昭和の時代の子供たちは、お尻にセロハンを貼る蟯虫検査をしたものです。18世紀の終わりぐらいまで、花の都パリでは、ふん尿は家から道路に投げ捨てられていました。ハイヒールは、ふん尿を避けるために考案されたようです。ヨーロッパの大都市は皆似たようなものでした。
 一方、我が国では、江戸時代には都市圏のふん尿を農家が買い取るシステムが整備されていました。何とふん尿にもランクがあって、買い取る値段にも差がありました。市議会議員時代に先輩議員から聞いた話ですが、四箇郷の女子刑務所は、地元の農家の方々が囚人のふん尿を利用するために誘致したそうです。かつて、ふん尿は、窒素、リン酸、カリを含む資源であり、汚物ではありませんでした。まさに究極のリサイクルが成り立っていたのです。現在は、ふん尿は下水道汚泥となり、産業廃棄物として、その多くは焼却処理された後、灰は最終処分場に埋め立てられています。
 化学肥料の確保が不透明な時代となった今、肥料原料を豊富に含む下水道汚泥の肥料化は焦眉の急であります。実は本県には、以前から下水道汚泥を肥料化すべく奮闘──しゃれではありませんが──している企業があります。私は、数年前からこのくみ取りならぬ取組に注目してまいりました。この企業のすごいところは、下水汚泥を産業廃棄物として処理することが当たり前だった時代から、巨額の設備投資を伴う本事業に果敢にチャレンジしてきたことであります。原料となる下水汚泥を確保するには、汚泥は産業廃棄物なので、いかに安価に、また安定的に処分するかと頭をひねってきた所管する各役所の意識改革が不可欠ですし、出来上がった肥料を利用してもらうにも農家の方々の理解を得なければなりません。どんなに社会的意義があろうとも、この見通しのないまま事業化に乗り出すには、通常は多額の補助金を得た場合か第三セクターで行う場合に限られるのではないでしょうか。
 私は、この企業を意気に感じ、少しでもお手伝いできないかと数年前から関係各課に対し、県外企業でなされていた流域下水道の汚泥の処分先として、この企業を検討するように要請してきました。ありがたいことに少しずつではありますが、この企業への受入れ量は増えてはきています。しかし、まだまだ事業として成り立つ程度には至っておりません。さて、どうしたものかと思っていたところへ、ロシアのウクライナへの侵攻が始まったのです。
 状況は一変しました。私はこの機を逃してはならじと、下水汚泥利用の第一人者である東京大学の加藤裕之教授を訪ね、教えを請いました。加藤先生は、下水汚泥資源の肥料利用の拡大に向けた官民検討会のメンバーであり、元国交省の官僚でもあったことから、現実に役職が動く原理についても熟知しておられ、非常に勉強になりました。同検討会の事務局は、農水省と国交省が共同して受け持っており、政府の下水汚泥の肥料化促進に向けての本気度がうかがわれます。ぜひ、先生のお話を県庁をはじめ和歌山市役所の関係各課にも聞いてもらいたいと思い、本年2月に加藤先生に和歌山にお越しいただき、勉強会を開催しました。当日は、多数の職員の方々が御出席くださり、活発な質疑応答もあり、有意義な勉強会となりました。
 下水汚泥から窒素など有益な元素を取り出す方法は様々考案され、その幾つかは実行されていますが、資源を取り出すためにかかる費用は莫大で、費用対効果の点で多額の補助金や公的負担なしに普及することは困難です。加藤先生によれば、下水汚泥に含まれる有益な元素の活用は、現時点では肥料化が最も現実的であるとのことであり、先生は、本県の企業が全くの民営でここまでの設備投資をし、製品の安全性や周辺環境にも十分配慮した事業を行っていることに感心されていました。
 国交省と公益社団法人日本下水道協会らが行う「BISTRO下水道」という事業があります。2010年度より、下水の水や汚泥を資源として有効活用していく道を地方自治体と連携しながら促進していこうとする事業です。下水道由来の水や肥料というと、どうしてもマイナスのイメージが持たれがちです。BISTROとは、ちょっとした食堂、居酒屋の意味ですが、下水を利用して作られた食材等を楽しむユニークな事業です。どこか牧歌的なこの事業の意義は十分理解できるものの、事態は急を要しています。
 3月17日には、国交省の下水道部長から、「発生汚泥等の処理に関する基本的考え方について」の通知が出ております。これによりますと、下水道管理者は、今後、発生汚泥等の処理を行うに当たって、肥料としての利用を最優先すること、焼却処理や燃料化は肥料利用が困難な場合に限り選択すること、肥料利用の拡大に当たっては、民間企業の施設、ノウハウ等も積極的に活用するとされており、市町村へも周知せよとのことです。
 本県では、令和3年3月に和歌山県流域下水道事業経営戦略を定めていますが、本通知を受けて一部見直すべきであると思料します。令和4年12月に決定された食料安全保障強化政策大綱は、2030年までに化学肥料の使用量の20%低減、堆肥・下水汚泥資源の使用量を倍増し、肥料の使用量に占める国内資源の利用割合を40%まで拡大することを目標としています。
 本県には、幸いにも下水汚泥の肥料化に関しては、民間事業者がかなりの規模の設備、ノウハウも経験も兼ね備えた状況にあります。庁内の関連部局の密接な連携と各市町村の理解を得て、ぜひとも下水汚泥資源化の和歌山モデルを確立していきたいものであります。そして、それは1次産業を政策課題の柱とする岸本県政にとっても、まさに必要とされる試みでありましょう。
 以上、申し述べましたことを踏まえ、知事にお尋ねいたします。
 まず、知事の政治信条、姿勢、県政に対する思いとはいかなるものであるのか。
 2番目に、財政危機警報発出の経緯並びに賢いやりくりとは何か。また、それに鑑み、射撃場の可否について、知事独自の視点はあるのか。
 3番目、県内の人手不足の問題をどのように認識しているのか。外国人の本県への就労に関してはどのように考えているか。また、技能実習制度の廃止など国において大きな改正が見込まれるが、県としてそれに伴う施策を考えているのか。
 4番目、知事は、第1次産業をとりわけ重視しているが、肥料の高騰、有事における枯渇のリスクをどのように捉えているのか。また、下水汚泥の肥料化については、これを推進していくには各部局との連携が不可欠なことから、連絡会議のようなものを設置すべきであると考えるがどうか。和歌山県流域下水道事業経営戦略の見直しについてはどう考えるか。
 以上お尋ねして、一般質問といたします。
○議長(濱口太史君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
 知事岸本周平君。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) ただいまの尾﨑議員の御質問に順次お答えをしてまいりたいと存じます。
 まず、議員の御質問の中で、安倍元総理と私が衆議院議員でありましたときの予算委員会でのやり取りがございました。大変懐かしい思いであります。その意味で、安倍元総理が凶弾に倒れられて、はや1年がたとうとしております。改めまして、この場で安倍元総理の御冥福をお祈り申し上げたいと存じます。
 それで、政治信条ということでありますので、語り始めると朝までかかってしまう、1日かかってしまいますので、簡潔に申し上げたいと思います。
 私自身は、これまで本当の意味の、今、尾﨑議員が御紹介いただいた意味での保守政治家であると思っております。一方で、リベラルという、これもまた定義が難しいので、詳しいことは申しませんが、私はリベラルと保守というものが同じものだというふうに考えていますもんですから、リベラル保守という言葉遣いもしてまいりました。
 これも説明すると長くなりますが、リベラルというのは自由主義なんですけれども、自由のほかに寛容という意味があります。本当のリベラリズムというのは、寛容ということであります。保守も、先ほど御紹介いただきましたように、保守というのは人間の知性や理性を信じないものであります。人間というのは愚かなものであります、必ず失敗します。ですから、極端な革命とか大きな改革とかということには慎重になるというのが保守でありますし、また保守は、想像力について非常に重きを置きます。自分以外の立場を自分のものとして考える。したがいまして、自分以外の考え方の人を尊重いたします。英語で言いますとアグリー・トゥ・ディスアグリーということがありまして、合意できないことを合意すると、あなたとは意見が違う、あなたとは意見違うということをお互い尊重しましょうと、こういうのが保守でありますので、まさに寛容の精神であります。
 例えば、県が今進めようとしておりますLGBTQの問題なども、いろんなお考えがあっていいと思いますけれども、少なくとも自分がその立場だったらどうだろうか、自分の息子や娘や兄や妹がその立場だったらどうだろうか、親しい友人がその立場だったらどうだろうかという想像力を働かせるのが保守の立場であります。そういうふうに私は考えています。
 そうしますと、本当の意味のリベラル、寛容ということと保守というのは、非常に親和性があるということであります。もはや時代が進んで、昔で言う、まさに尾﨑議員も言いましたけど、右翼とか左翼とか、右とか左とかというようなことにほとんど意味がなくなっております。私は、あくまでも自分たちがそんなに賢くないと、過ちを犯すものだという前提で慎重に県政を行っていきたいと思っております。
 これも、大蔵省の先輩であります大平正芳元総理が常におっしゃってたことで、これも尾﨑議員がおっしゃってましたけど、元大平総理はこうおっしゃってまして、「自分はできるだけ物は決めないんだ、物すごく慎重にするんだ。だって、間違うことがあるから権力は使わないほうがいいんだ」と、こういうことをずっとおっしゃっておりまして、私も昭和55年に大蔵省に入りましたときに大平元総理のけいがいに触れて、そのことを今でもよく覚えております。
 その上で、県政につきましては、私自身は現場主義、草の根主義を一番大事にしたいと思っております。19年目に入ります私の政治活動は、全て現場主義、草の根主義でございましたので、それを貫いてまいりたいと思っております。タウンミーティングというのも、その意味で行わさせていただいております。
 それから、二つ目は、やっぱり多様性を尊重すると。いろんな立場の人に思いをはせて、寄り添いながらいろんな多様性を尊重していくと。その意味では、今後いろんな意味で県条例についても、今、障害者差別解消の条例はございませんし、あるいは部落差別解消条例もさらにブラッシュアップできないだろうか。あるいは、現在パートナーシップについては、実体がもう完成しておりますもんですから、それをどう形づけるのかとか、これまた県議会の先生方と御相談をしながら、一歩ずつ、一歩ずつ着実に進めていければいいと思っておりますし、県庁内の女性職員の幹部登用、あるいは男性職員の育児休暇の取得とか、できるだけ多様な人材が活躍できる組織に変えていきたいと思っております。
 3点目は、県政を運営する際には、やはり前例にとらわれないということを大事にしていきたいと思っております。私の政治信条はともかく、何より県民の皆様の声をよくお聞きしたいと。その意味でも、県民の皆様に直接お聞きすると同時に、県民の皆様を代表して選挙で選ばれておられます県議会の皆様とも十分なコミュニケーションを図ってまいりたいと考えております。
 二つ目の御質問でございます。
 賢いやりくりということでありますけれども、これは申し上げてますとおり、10年の推計をさせていただきましたところ、やはり公債費や社会保障関係経費の増加によりまして、大変厳しい財政運営が余儀なくされるというふうになりましたので、財政危機警報を出させていただきました。
 これも尾﨑議員が質問の中で御指摘いただきましたが、国は赤字国債が出せます。県は出せないんです。県は赤字県債は出せないんで、全く運営の厳しさが違っておりますので、そういう意味では賢いやりくりが必要だろうと思っております。これも質問の中でおっしゃってましたように、私の尊敬する山田方谷という政治家が、江戸時代、備中松山藩の財政改革をしたときに、歳出カットと増税では財政再建はできないと言い切ってやられたことを模範として、いたずらな歳出カットや増税ではなくて、賢いやりくりでやっていきたいということを従来から申し上げております。それも、例えば交付税措置の高い借金をできるだけしていくと、同じ借金であれば。そういう知恵の出しようがあるのではないかと思っております。
 今、具体的には県営射撃場の建設について御質問いただきました。県営射撃場につきましては、これは私が就任する前から、三つの条件で判断をするということで、一つは事業費が適正なのかどうか、それから財政的に健全な運営が可能なのかどうか、市町村の積極的な協力と住民理解が得られるのかどうかという3条件をクリアした場合には前へ進めましょうということでしたが、現状、この3条件は必ずしも満たされていないという判断をいたしましたものですから、今年度の予算計上は見送っております。
 今後も、限られた予算の中ですけれども、賢いやりくりをする中で、事業の効果、それからコストなどに加えて、他の射撃訓練場施設との関係なども踏まえながら、総合的に検討してまいりたいと考えております。
 3番目の御質問でございます。外国人労働者の受入れについてであります。
 県内の人手不足、これも尾﨑議員御指摘のとおり大変厳しい状況であります。労働者にとりましては、賃金が上がっていくことの助けになりますけれども、中小企業にとりましては人材の確保に大変だということであります。
 そして、本県の外国人労働者の対応の考え方でありますけれども、外国人の労働者を一時的な労働者不足の解消手段と考えたり、あるいは安い労働力と考えるという考え方は全く取りたくありません。私たちの仲間として受け入れていくということで、一緒に多文化の共生社会をつくっていく、まさに仲間として受け入れていきたいと考えております。
 現在、国におきましても、新しい制度の創設が検討されておりますので、今後、有能な外国人材の確保については、国内の各自治体間での競争になると思います。もちろん、尾﨑議員が御指摘のように、ほかの国との競争もなると思います。その意味で、我が県としては、和歌山県が外国人労働者の就労先として選ばれるように、労働者の送り出し国や当該国の地方政府、私も今度ベトナムのほうに参りますけども、ベトナムの省と──県に当たりますけれども──よくよく相談をしながら、本県で就労される外国人労働者及びその家族が地域コミュニティーとうまくつながりを持って、安心して働けるよう、例えばですけど、日本語教育の問題とかいろんなことについては、和歌山県としての環境整備を進めてまいりたいと思っております。
 今後は、他府県の先進事例も参考にしつつ、積極的に外国人材の受入れを推進していく所存でございます。
 最後に、下水道汚泥の肥料化の取組について御質問がありました。
 私も全くここは同感でありまして、私も議員時代、ずっと草の根で回っておりますときに、多分同じ会社ではないかと思いますけれども、下水道汚泥などの肥料化の最新の事例である企業を存じ上げております。これは、本当に大事なことでありますので、今後、県庁内の関係部門間の情報交換の場を設け、連携を図りながら、下水汚泥などの肥料化を一層推進していきたいと考えております。ぜひ、お力をお貸しいただければと存じます。
 和歌山県流域下水道事業経営戦略につきましては、2019年度に公営企業会計へ移行したことに伴い、総務省の経営戦略策定ガイドラインに基づきまして2021年3月に策定をしたところであります。今後、この経営戦略の改定に当たりましては、社会情勢も注視しつつ、尾﨑議員御指摘の国土交通省通知をしっかりと踏まえまして、見直しを行ってまいりたいと思います。
 御質問ありがとうございました。
○議長(濱口太史君) 答弁漏れはありませんか。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(濱口太史君) 再質問を許します。
  〔「なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(濱口太史君) 以上で、尾﨑太郎君の質問が終了いたしました。(拍手)
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 24番谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕(拍手)
○谷口和樹君 皆さん、おはようございます。24番谷口和樹でございます。
 質問に入ります前に、一言御挨拶を申し上げます。
 先般の豪雨災害におきましてお亡くなりになられました方々、そして御遺族の皆様方に謹んでお悔やみを申し上げます。また、被災された皆様方に謹んでお見舞いを申し上げます。
 やはり12年前の紀伊半島大水害を思い出します。一日も早い復旧と、元の暮らしに少しでも早く戻れることを祈っています。
 今回は、4期目の議席をいただき、初の質問ですが、長年支え続けていただいたふるさとの皆様方に心から感謝をしつつ、改めて4年を通じて一日一日をこれからの和歌山県のために全力で頑張りたいと思っています。
 それでは、質問に入りたいと思います。
 その前に、少しだけ自分の話をさせていただきたいと思います。
 実家が自動車整備工場をやっていまして、ベビーブーマーの父親が中学校を出て職業訓練学校、今の田辺産業技術専門学院を出まして、母親と始めましたのですが、その自動車整備工場で、20代はメカニックとして働いていました。その後、販売会社の代表を経験して、退職して今に至るわけなんですけども、そのメカニック時代というのは、今から約30年弱前なんですけども、車にカーナビがたくさんつき出したそういう時代です。その中で、初めてHDD、ハードディスクがカーナビにつき出した。そういう時代に取付けというような作業が多かったので、たくさん取付けをした覚えがあります。
 その後、仕事以外で、いろんなまちおこしのイベントに関わる中で、ステージのディレクターというか、そういう役割をよくしました。その中で、特に照明や映像を使うのにパソコン、電子機器というのをたくさん使ったこと、そのことが今にずっと続いている。あわせて、映画の撮影の補助なんかをした中で、ゲームやアニメといったサブカルのクリエーターの方々ともよく交わることというのがありました。
 そういう中で、いろんな資料や、一緒にイベントをやったりとか、そういうやり取りの中で、徹夜でこの映像をつくったりとかプレゼンの資料を作ったりとか、追い詰められて仕方なく電子機器を使い、様々なアプリも使い、使いまくって経験したというのを、今までの経験の中でそういう時期があります。今年に入って、画像生成ソフト、画像生成AIですね、これで画像をつくったり、ChatGPTの4.0で絵本のシナリオをつくったりと、こういうことも今やってます。
 というわけで、まず自分の背景というのをお話しさせていただいたんですけども、昨日の質問で三栖議員がITコンサルの最前線で活躍されていると、そういうお話もありましたけども、私は今までそういう経験の中で電子機器をたくさん使ったりとか、そういうまた違った立場からのアプローチということで、今回、DXやAI駆動型言語処理ツールについて質問をさせていただくわけですけども、今回からタブレットの持込みが議場に許可されています。ぜひ、ちょっと分からないというか、横文字も多いので、皆さん、ちょっと調べていただきながらやっていただくということで、遠慮なく横文字をそのまま使わせていただきます。
 そういうことで、これから質問に入りますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、1問目、県立高等学校におけるMicrosoft Copilotの活用及びプロンプトエンジニアリング教育の必要性について質問さしていただきます。
 AI、特にOpenAI社のChatGPTやグーグルのBardについて、昨年から大変話題になっていますが、日常のツールとして見ると、全く使ったことのない新しいことができるようになった面もありますが、それよりも、今までできなかった人たちの能力を補うといった側面のほうが興味深いと感じます。特に、私を含めたデジタルネーティブではない世代の方々にこそ、便利に、簡単にできるようになったことのほうが画期的かと思います。
 せんだって、田辺で、町内会の会報などを役員で話し合ってChatGPTを使ってやっています、非常に便利ですといった、70代後半のNTTのOBの方々にお話を聞きました。それぐらいのスピードで浸透をしていってるということです。
 AI駆動型言語処理ツールについては、よく誤った情報を表示するとか、使うと考える力が衰える、試験などで悪用するんじゃないかと言われる方もいらっしゃいますが、予想以上のテクノロジーの変化に直面したときというのは、そういう意見が結構出ます。それ以上にプラスがあるのと、実社会で進むに当たって、はるかに欠かせないものであるという現実でもあります。いずれにせよ、多くの大人が関わってこれからも決めていかれることと思いますので、多くの場で議論の末、膠着して、そもそもAIってよく分からないね、そういうことで取扱いについて見送るといった、来春以降も様子を見るといったことになりはしないかと懸念をしています。
 その上で、県立高校において活用されるマイクロソフトのアプリにもOpenAI社のGPT──GPTはジェネレーティブ・プリ・トレーニド・トランスフォーマーという略らしいですが、搭載されたCopilot、副操縦士という意味ですが、この機能というのが新たに始まるということですので、その活用について聞いていきます。
 その前に、先ほどの同じGPTを使っているのに、Microsoft CopilotとChatGPTとどう違うのですか、そういうことを聞かれたことがあります。マイクロソフトのアプリに追加されるCopilotは、マイクロソフトが開発した自動的に書類やデータを作成、整理してくれるAIで、ワード、エクセル、パワーポイント、アウトルック、TeamsなどといったMicrosoft 365のアプリケーションに統合されており、それぞれ様々な機能を提供していきます。対してChatGPTは、自然言語対話の生成を目的としています。ユーザーからの入力に対して、人間らしい応答を生成します。これは、質問への回答、小話、詩、物語など、あらゆる種類のテキストを生成することができます。
 両者は、GPTという同じ基礎技術に基づいていますが、それぞれが特定のタスクに特化したモデルとして訓練されています。したがって、Microsoft Copilotは、自動的に書類やデータを作成・整理でタスクのアシスタントに、ChatGPTは自然言語の対話の生成に特化しています。
 そもそも、前出のものも含めたAI全般については、皆さん御承知のとおり、既に様々な分野で使われており、その社会実装は日々進んでいます。現在、日常生活に沿ってどのように使用されているかを大まかに例を挙げてお話しさせていただきます。
 一つ目、スマートフォンのフェースID。AIは、スキャンした顔と保存されている顔の情報を比較して、携帯電話のロックを解除しようとしているのが持ち主であるというのを判断します。
 二つ目、ソーシャルメディアでは、AIが過去の履歴に基づいてフィードに表示される内容をパーソナライズしてます。友達の提案やフェイクニュースの特定と除外にも使用されています。
 三つ目、電子メール等メッセージングについては、AIがスペルチェックなどエラーのないメッセージの草稿を支援します。受信側では、スパムの疑いのある電子メールを仕分します。
 4、検索エンジン。AIは、インターネット全体をスキャンし、また広告などは、ユーザーの検索履歴に基づいてカスタマイズされます。
 5、音声アシスタント。Siri、アレクサなどAIによって駆動される自然言語処理とジェネレーターを使用して、回答を返します。
 六つ目、スマートホームデバイス。スマートサーモスタットが冷暖房の好みや毎日の習慣を学習して、その心地よい温度というのを調整します。例えば冷蔵庫、スマート冷蔵庫などというのもあります。冷蔵庫になくなったものに基づいて買物リストを作成する、こういうものもあります。
 七つ目、自動車。自動運転など運転支援技術のほか、AIはリアルタイムの交通状況や気象状況を提供します。
 八つ目、バンキング。金融取引では、AIは取引の不正行為を検出したり、高度な投資戦略の設計など多くの用途を持っています。
 九つ目、オンラインショッピング。AIアルゴリズムは、使用者の好きなものと、使用者と同じような他の人が購入したものを学習し、カート内のあなたが好みそうなものを推奨します。アマゾンでは、予測配送アルゴリズムにより、ユーザーがクリックして購入する前でも商品配送日を予測します。
 10個目、ストリーミングサービスでは、例えばNetflixなどでは、サービスはAIを使用して、ジャンル、俳優、時間帯など過去の視聴履歴に基づいて見たいものを推奨します。
 そのほか、医療においては、医療データの解析や疾患の早期発見などに使われています。製造業では品質保証の自動検査、エネルギー管理では電力需要の予測、学習アプリでは個々の学生のスタイルに合わせた個別最適化教育が既に始まっています。様々な社会実装の例を挙げましたが、実際このように既に今までも多くのAIが社会実装されています。
 そのような中、昨年秋にChatGPT3.5の無料版が発表され、その後、続けざまにウェブブラウジング機能やプラグインが可能になった有料版のChatGPT4が開始され、文章生成機能が秀逸なことで世界中において話題になりました。そして今回、県内の多くの高校でも使用されているマイクロソフトの様々なアプリケーションに近々OpenAI社のAIが搭載されたCopilotという名前で追加されるとアナウンスされています。
 このMicrosoft Copilotについて、先ほど簡単に説明しましたが、学生たちがよく使うワード、エクセル、パワーポイント、Teamsなどでの働きについて少し触れたいと思います。
 ワードでのCopilotでは、私たちでいえば日本語ですね、簡単な日本語の指示、プロンプトだけでユーザーの代わりに初稿を作成し、必要に応じてグループ全体から情報も引き出します。また、テキストを要約したり、セクションや文書全体をより簡潔にすることができるということです。
 二つ目、エクセルでのCopilot。使用者と協力してデータの分析と探索を支援します。データセットに関する質問というのは、数式だけじゃなくて自然言語でも行います。相関関係を明らかにして、What-ifシナリオというのを提案して、質問に基づいて新しい数式を提案し、質問に基づいてモデルを生成し、データを変更せずに探索できるようにするということです。
 パワーポイントでのCopilotは、簡単な日本語の指示から、すぐに新しいプレゼンテーションを開始したりすることができます。ワンクリックのボタンで長いプレゼンテーションを圧縮したり、自然言語コマンドを使用してレイアウトを調整したり、テキストを再フォーマットしたりします。
 TeamsでのCopilotは、会議や会話にCopilotを追加することで、現在の論点を要約したり、チャット履歴に基づく会議録の作成、次のスケジュール設定などの一般的なタスクを支援します。現在、Microsoft 365 Copilotは、テストが進められ、今後数か月の間で広範囲な顧客に広げられるということです。
 もちろん、教育現場での具体的な活用には考えられる課題もあると思いますが、Copilotの活用により期待できる五つの効果というのを以下に述べます。
 一つは、学習者一人一人に合わせた学習。
 二つ目、問題解決スキルの強化。
 3、プログラミングのロジックの理解。
 4、現実の業務への適応力。現実の業務環境で使うので、使いながら多様なスキルを得られるということです。
 五つ目、AIとの協働スキル。Microsoft Copilotを使用することで、学習者はAIとどのように協働するか、共に働くかを学びます。これらは、AI技術が広範囲に利用される現代社会において非常に重要なスキルとなります。
 今後、社会に出る高校生には、これらの社会実装されたAI技術に対する知識とアプリケーションを使いこなす技術が必須であるということから、現在、県立高校の多くで使用されているTeamsなどマイクロソフトのアプリケーションに合わせて、今後のMicrosoft Copilotの活用について重要になってくると考えます。
 また、ほかに文書生成AIや画像生成AIを使うに当たって、プロンプトという指示を出す役割の文書をつくり出す能力と技術というのが非常に重要で、日常の使用によって身につくものです。
 そういう意味も併せて、県立高等学校におけるMicrosoft Copilotの活用及びプロンプトエンジニアリングの教育の必要性について、教育長にお聞きをいたします。
○議長(濱口太史君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
 教育長宮﨑 泉君。
  〔宮﨑 泉君、登壇〕
○教育長(宮﨑 泉君) 学習指導要領において情報活用能力は、情報及び情報技術を適切かつ効果的に活用して、問題を発見したり、自分の考えを形成するために必要な能力と位置づけられているところです。しかし、Microsoft Copilotを含め生成AIの学校現場での利用については、児童生徒の批判的思考力や創造性への影響等、リスクの整理が必要であると考えられております。これらを踏まえ、文部科学省では、生成AIの学校現場での利用に関するガイドラインを近日中に公表すると聞いております。
 県教育委員会としましては、新たな技術である生成AIを活用する視点は必要であると考えており、国のガイドラインが公表され次第、学校現場での適切な活用について研究してまいります。
 次に、プロンプトエンジニアリング教育の必要性についてですが、ChatGPTをはじめ生成AIからの成果をより最適にするために、生成AIに対し行う適切な指示、いわゆるプロンプトを作成する能力の必要性は認識しております。
 今後、国のガイドラインを踏まえ、当該能力の育成について研究し、これまでプログラミング教育で先進的に取り組んできたきのくにICT教育をさらに進めてまいります。
○議長(濱口太史君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 動向を注視していくとか、見守っていくとかいうお答えなんかをたまに聞くことがあったりするんですけども、そういう答えでなくてよかったです。動向を注視していくとか見守っていくというのは、時折、取りあえずよく分からないので、今は考えるのをやめますというような感じで受け取るときなんかもあったりするので、今回そういう答えでなくてよかったなあと思います。
 お伝えしたいことは、やっぱり次年度4月以降ですね、そこに間に合わせて、もしそこ、ずれると、その1年、その次の年となってくるので、できたら4月の次年度に合わせて進めていただけたらなということをお伝えしたかったところです。ぜひよろしくお願いします。
 いろいろちょっと使ってみてなんですけど、Copilotはまだ使ってないですけど、話題にはなってますけど、使う側からすると便利になった機能が追加されたということぐらいじゃないかなと思うんです。そういうことも踏まえて、別に、ガイドラインも当然大事なんですけども、そこを踏まえた上で考えるに当たって、自分ところの自治体で決めてもいいぐらいのものじゃないかなとも思ったりするんです。ぜひ、次の年度の子供たちに間に合うようにジャッジしてもらえたらなと思います。どうぞよろしくお願いします。
 それでは、二つ目の質問に入ります。
 和歌山県におけるChatGPT、Microsoft Copilot及びWindows Copilotを含めたAI駆動型言語処理ツールなどを活用した技術についてお聞きをいたします。
 小項目の1です。和歌山県の公式ウェブサイトにおけるウェブスクレイピングの対応について聞きます。
 和歌山県の公式ウェブサイトですけども、ウェブスクレイピングとウェブアクセスの主な違いというのが、スクレイピングというのは、前者が自動化されたプロセスで、大量の情報を取り込むということで、収集するということで、ウェブアクセスは手動で行われ、一般的な個々のウェブページに対する詳細なやり取りなんかも含まれるということです。これが、ウェブスクレイピングとウェブアクセスの違いです。
 そんな中で、先日、ChatGPTを活用しまして情報収集をしていたら、和歌山県の公式ホームページで、一部情報の取得に失敗したというような結果というのが多々ありました。何回やっても出てくる中で、県が取り扱う公式データや政策の公開というのは、民間の様々な取組の推進にも大変役立つものであって、公開している情報というのを支障なく情報提供できるように対応していくことというのが大変望まれるところです。
 近年、生成AI等新たなツールが公開されていく中、和歌山県のホームページにおいて時代に即した対応が必要だと考えますので、その対応について知事室長に見解をお聞きします。
○議長(濱口太史君) 知事室長北廣理人君。
  〔北廣理人君、登壇〕
○知事室長(北廣理人君) 議員の御指摘にありましたChatGPT使用時の検索エラーにつきましては、和歌山県ホームページにおいて必ず再現されるものではないと承知しております。ChatGPTをはじめとする生成AIについては、近年公開され、現在も改良が続いていることから、現段階ではその動向を見守っているところです。
 生成AIに限らず、技術の進歩や利用者のニーズの変化とともに、ホームページの在り方も変わっていくものと考えております。今後も、その状況に応じて、検索しやすく見やすいページづくりに努め、アクセシビリティーの向上を図ってまいります。
○議長(濱口太史君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、二つ目のデジタル人材の中途採用について質問させていただきます。
 和歌山県庁の行政事務のDXにおいて、ChatGPT、Microsoft Copilot及びWindows Copilotを含めたAI駆動型言語処理ツールを活用した技術は、以下のような役割を果たすことができると考えています。
 一つ目、情報の整理と提供という意味では、大量の情報を高速に検索し、個々に必要な情報を整理して提供することができます。これによって、県民に必要な情報を効率的に得ることが可能になります。
 2、24時間対応のカスタマーサービス。これを実現した場合、AI駆動型言語処理ツールを採用したFAQや、手続ガイダンスの自動化は、24時間365日、県民の問合せに対応することができ、県民満足度を上げると同時に、多言語に対応できるため、外国語を話す観光客などの支援にも役立ちながら、職員の手間というのを大幅に減らすことができます。
 三つ目、教育とトレーニング。新たなシステムや政策について教育やトレーニングを提供し、職員の理解とスキルの向上を助けていきます。
 意見収集とデータ分析では、AI駆動型言語処理ツールで県民の意見やフィードバックを収集し、その大量のデータを分析することで、職員による行政サービスの改善や政策決定に役立つ洞察を提供することができます。
 五つ目、文書作成の支援。文書作成の支援を行うことで、職員の手間を大幅に削減します。
 これらの機能を利用することで、和歌山県庁は効率的で顧客満足度の高い行政サービスを提供しながら、職員に係る負担を大幅に削減することができます。その上で、さらに今後、ChatGPT、Microsoft Copilot及びWindows CopilotをはじめとするAI駆動型言語処理ツール──以降、AI駆動型言語処理ツールと呼びます──を活用した技術を行政事務のDXに活用していくためには、以下のような準備が考えられます。
 一つ目は、データの準備です。高精度の回答を生成するために大量の正しいデータが必要になってきます。
 2、プライバシーとセキュリティーへの対応。個人情報の取扱いには十分な注意が必要です。AI駆動型言語処理ツールを活用した技術を導入する場合、その情報の保護と使用に関する明確なガイドラインと制度、また、AIを公共サービスに使用する際には法規制を遵守する必要があります。
 3、テクノロジーの理解。AI技術とその利用についての理解を深める必要があります。職員がこの技術を効果的に利用するために教育とトレーニングが必要となります。
 4、システムの統合。AI駆動型言語処理ツールを活用した技術と既存のITのシステムというのを統合する必要があります。これには、技術的な課題や時間がかかる場合があります。
 五つ目、ユーザーエクスペリエンス。AI駆動型言語処理ツールを活用したユーザーインターフェースは、誰でも簡単に使用できるように設計する必要があります。
 6、信頼性と精度と可用性──可用性というのは常に安定して使えるということです。AI駆動型言語処理ツールを活用した回答の信頼性と精度を確保するために、定期的なテストと改善が必要となります。また、新しい機能や改善を取り入れてサービスの質を維持し続けるためには、継続的な更新と改善が必要になります。
 7、アクセシビリティーの問題。全ての市民がAIサービスを利用する能力があるわけではありませんし、視覚や聴覚に障害がある方々、高齢者など様々な状況の方々に配慮が必要です。
 このような準備を踏まえて、AI駆動型言語処理ツールを活用した技術を行政事務のDXに活用していくことを想定すると、以下のようなリスクが想定されます。
 一つ目、データ漏えい。個人情報が不適切に公開されることで、第三者に漏えいするなどプライバシーを侵害するリスクがあります。
 2、誤った情報の提供。AI駆動型言語処理ツールは常に完璧ではないため、間違った情報を提供したり不適切な対応をする可能性があり、県民に混乱を起こしたり法的リスクを被る可能性があります。
 3、システムのダウンタイム。予期せぬダウンをする可能性があります。
 4、技術的な問題。ソフトウエアのバグやハードウエアの問題がシステムのパフォーマンスを悪化させる可能性があります。
 5、法的な問題。AI駆動型言語処理ツールを活用した技術の使用に関連する法的な問題が発生する可能性があります。これは、訴訟や罰金のリスクももたらす可能性があります。
 6、データの偏り。AIは学習データに基づいて動作しますが、そのデータに偏りがあると応答も偏る可能性があります。
 このように、AI駆動型言語処理ツールを活用した技術を行政事務のDXに活用していく際には、準備はしていても様々なアクシデントや問題が想定されます。繰り返しになりますが、十分備えるために以下のような対策というのが必要になります。
 個人情報の保護、正確な情報の提供、適切な応答の確保、システムの可用性などなど、以上のことを考慮に入れた上で、リスクに備える必要があります。
 さらにその上で、AI駆動型言語処理ツールを活用した技術を的確に安全に活用しようとするならば、以下の種類の技術者が想定されます。
 1、AIや機械学習の専門職。AIモデルのトレーニングやチューニング、性能のモニタリング、そしてモデルの改善に関する作業を行います。また、その能力を最大限に引き出すために、特定の業務や問題領域に対するAIの適用に関する知識も必要です。
 2、データエンジニア。データの収集、クレンジング、管理及び準備に必要な技術を持つ人です。これらの業務は、AIモデルのトレーニングと評価に不可欠です。
 3、ソフトウエアエンジニア。カスタマイズしたAI駆動型言語処理ツールを既存のITシステムやプロセスに統合していくために、ソフトウエアエンジニアが必要です。カスタマイズしたAI駆動型言語処理ツールと他のシステムとの間のインターフェースを開発、施工、管理する役割も担います。
 4、セキュリティーの専門家。データ保護とプライバシーの問題を扱うためにセキュリティー専門家が必要です。
 5、プロジェクトマネジャー。プロジェクトを成功するために、プロジェクト全体の進行を管理して、異なるチーム間のコミュニケーションを調整するマネジャーというのが必要です。
 6、UXデザイナー及びユーザーエクスペリエンスの専門家。使用するエンドユーザーの方々の視点から、使いやすいシステムのインターフェースを体験、設計するデザイナーが必要です。
 7、法律顧問。AIと個人情報を扱うときには、データプライバシーや情報セキュリティー、知的財産権などの法律問題に関する助言を提供する法律顧問が必要となります。
 これらの役割は、技術的な専門性だけでなく、公共部門の業務と市民のニーズについての理解も必要なので、片手間ではなく、多様なスキルと視点を持つ専門のチームで作業に当たることが望ましい、重要と考えます。
 和歌山県庁にも、今、たくさん優秀な職員が多く在籍していますし、副業人材や顧問でついていただくケースで今まで対応されてきたとは思いますが、私が言うまでもなく、資格を持ってます。打てますというだけでなく、これからは今以上にプロジェクトチームのポジションを担って活躍できるデジタル人材の採用が一定数必要であります。
 そう考えると、現実的には経験者の積極採用となるわけですが、和歌山県における今後の積極的なデジタル人材の中途採用について知事にお聞きをいたします。
○議長(濱口太史君) 知事岸本周平君。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) 谷口議員の御質問にお答えをさせています。
 大変貴重な御提言を種々いただいておりますし、大変専門的な御説明が多かったもんですから、私も追いつくのが精いっぱいでございますが、人材の採用の件でありますので、少し安心してお答えをさせていただければと思います。
 デジタル化の進展に伴いまして社会が変容し、新たな課題が発生するということにつきましては、まさに議員御指摘のように、デジタル技術の知識や資格で解決できる課題ばかりではありません。関係の部署や職種が連携しまして、様々な観点から意見を出し合って取り組んでいく必要があると考えております。
 県では、これまでも情報職をはじめ必要な職種の採用を行っております。また、一般行政職でも、理系出身の職員や民間企業等での職務経験を有する職員など多様な人材を活用してきております。また、採用後には、職員の能力、スキル向上のための派遣研修を含め、人材育成に取り組んでおります。
 このほか、日々進歩する新たなデジタル技術に対応するため、今年度、DX推進に係る実務経験を有する人材を和歌山県DX推進アドバイザーとして任用し、専門的、技術的見地から知見をいただいております。先般も、県内の市町村長及び県庁幹部、私を含めて、DX推進アドバイザーから御指導いただきまして、大変理解が進んだと思っております。
 このように、人材確保におきまして、選択肢は一つではありません。中途採用だけではなくて、外部人材の活用も含めて、必要な人材の確保に向けて不断の努力をしてまいりたいと考えております。
 なお、今後、和歌山県庁といたしましては、デジタル人材にかかわらず全ての職種におきまして、積極的に中途採用を増やしていく所存でございます。
○議長(濱口太史君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 すみません、再質問します。
 全体の話、人事のことであるので、知事に少し踏み込んでお聞きをしたいと思います。関係部署、職種が連携する部署連携というんですか、そういうので対応していくという方法も今まで取られてきたかと思うんですけども、やっぱり県庁というのは、これから民間企業と比べると、はるかに膨大で詳細な個人情報という個人資産を抱えながら、新しいテクノロジーの進化という脅威からデータのプライバシーを守らなければなりません。今回、DXの推進アドバイザーという方を採用されて、新しい取組がされるということですけども、部署で連携して困ったときだけ相談するアドバイザーというのではなくて、やっぱりせっかく優秀な方が来られたら、その下にチームで働く体制というのが要るんじゃないかなあと思います。
 そういう意味で、このチームを組んで当たることについてどう考えるかというのが一つ目です。
 もう一つは、そもそもこのAI駆動型言語処理ツールの活用の仕方について、どう考えているかということなんですけども、例えばチャットを使った県民からの苦情対応なんかを導入すると、職員のストレスというのがすごく大幅に軽減すると考えています。そんな中で、AI駆動型言語処理ツールなどを活用する技術や、そのものを活用せずに職員の、AI駆動型言語処理ツールを活用せずに、職員の心や体の作業負担の軽減というのは実現できないと自分は思ってるんですけども、その点について知事にお聞きします。
 三つ目、先ほどウェブスクレイピングの話をさせていただきましたけども、外部からのスクレイピングなどからのコンプライアンスや漏えい対策など、さらなる付随したトラブルから、この専門職員のチームなしに部署連携だけで県庁職員を守れるかというのを考えているんです。いずれは、このセキュリティーの専門を扱う部署なんかも必要なんじゃないかなと思うんですけども、専門チームとその部局の将来性について少し質問します。
 以上です。
○議長(濱口太史君) 知事。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) 御質問にお答えいたします。
 DX推進アドバイザーは、現在、行政企画局と一体となって県庁内の行政DXに取り組んでいただいております。行政企画局の中には情報基盤課というのがございまして、まさに情報技術を専門とするプロの集団であります。そのプロの情報の専門家の皆さんがある意味チームとして、まさに民間企業でしっかりと長年DXを推進してこられた、さらにその上のプロ中のプロのアドバイザーと一緒に県庁内のDXを推進しているところであります。
 それから、谷口議員の二つ目の再質問の御指摘のとおりでありまして、ChatGPTをはじめとする生成AIの業務利用につきましては、確かにリスクと可能性、両方ありますので、リスクについてはもちろん踏まえながらでありますけれども、その可能性については積極的に今考えております。
 したがいまして、現在、行政企画局の中で、どういう使い方をするのが実際可能なのか、あるいはそのときに留意すべき事項はどういうことなのかということを現在検証を行っております。これはしっかりと議員の御指摘を踏まえて、職員の教育訓練を含めた環境整備なども考えながら、リスクと可能性、両方をしっかりと踏まえながら前へ進めていきたいというふうに考えております。
 それから、情報セキュリティーにつきましても、議員御指摘のとおり最も大事なことであります。これも先ほど申し上げました行政企画局の中の専門職員集団である情報基盤課が担当しております。当然、日々能力やスキルの向上に取り組んでおりますけれども、さらに今後進歩するデジタル技術に対応するため、能力向上には取り組んでいきたいと思っております。
○議長(濱口太史君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 今まで以上に備えねばならないなと思うところで御質問なんですけども、今の部署も頑張ってます、プロの集団です、当然そうなんですけども、新しい進化であったりとか技術の進歩なんかの中で、もうちょっと体制を変えて備えなければならないんじゃないかという自分と知事との間でやり取りをしながら備える体制を進めれたらなあと思っています。
 ぜひとも体制の変更ですね、そこはもうおいおいちょっとできたら考えていただきたいなと思います。
 続いて、3番の質問に入ります。
 サテライト観光局を南紀白浜空港にということで質問します。
 知事の就任時の挨拶で、振興局にもっと役割を担ってもらうという旨の発言があったように記憶してます。振興局発信の主体性のある事業を増やすということかと好意的に受け取っていますが、また当然、ガソリンを入れずに今以上に走りなさいということではないと思いますので、同時に予算配分も増やすということかと考えますので、南北の経済格差や過疎地域の偏りを考えると、現状の人口減少の激しい地域を抱える中紀、紀南にとって、特に観光振興を中心に少し光明かと感じています。
 そのことを踏まえた上で、表題の質問に入ります。
 現在、和歌山県はダイヤモンドイヤーと位置づけ、2023年から2025年にかけて観光振興を進める計画を公表しています。計画の柱は、環境に優しい持続的な観光地づくり、大阪・関西万博に向けた誘客推進、滞在期間の延長と消費拡大の3点です。
 以下に現在の施策のよい点と課題というのを上げてみます。
 一つ目、関西万博に向けた誘客推進では、これによって地域経済の活性化を図るという意味でよい点だと思います。
 二つ目、持続可能な観光地づくり。環境に配慮した観光地の開発により、長期的な観光業継続を目指すと書いています。
 三つ目、滞在期間の延長と消費拡大。観光客の滞在時間を長くし、その結果として地域経済に対する消費を増やす。
 今、よい点を上げていっています。
 4、世界遺産を核とした広域周遊ルートの構築。世界遺産を活用して新たな観光ルートを開発し、観光客の体験価値を高める。
 五つ目、デジタル化によるストレスフリーな観光地づくり。デジタル技術を活用して観光体験の利便性を高める。
 6、インバウンド受入れ環境の整備と強化で、外国人観光客へのサービス向上を図って、多様な観光客の獲得を目指す。
 7、高付加価値な観光コンテンツの創出、磨き上げということで、新たな観光資源の創出と既存の資源の魅力向上により観光客の満足度を高める、このようなよい点があるかと思います。
 課題については、2022年の観光客動態調査から推測すると、以下のような今後の課題というのが出てきます。
 一つ目は、新型コロナウイルスの影響です。経済は、観光業を特に中心に大きく落ち込んでおります。その回復というのが期待されています。
 2、外国人観光客の減少。コロナの影響でかなりの外国人観光客が減りました。その回復というのが期待されています。
 三つ目、デジタル化の推進。デジタル化を進めるために、技術的な課題や人材の確保などが課題にあります。
 4、環境保全とバランス。持続可能な観光地づくりを進める中で、観光振興と環境保全のバランスを取ることが課題です。
 五つ目、大阪・関西の万博への連携をどの程度実現していくか。
 6、交通アクセスをどのようにして今以上に改善していくか、観光客の利便性を高めていくか。
 7、観光資源の活用で、地元資源を効果的に活用し、それを観光資源として売り出すことができるかどうか。
 8、観光客の滞在時間、これをさらに延長するためには、観光地の魅力やサービスの質を上げるところというのが課題となると思います。この滞在時間延長をどのように進めるか。
 9、地元住民とどのような協力関係を結んでいくか。この地元との良好な関係というのは、やはり地域全体で観光振興を進める役割があります。
 以上が、観光振興施策についての自分なりの分析であります。
 このような課題を考慮に入れた上で、和歌山県の観光振興をよりよく前進させるために、いろんなものが少ない中でやりくりをするわけですが、特に紀中、紀南には国内外に評価の高い観光資源が多くあることに併せて、観光の浮き沈みで地域経済への影響が大変大きい特徴があります。言わば紀中、紀南の観光振興で和歌山全体の浮き沈みを左右しますし、これからの知事はじめ県の手腕というのが問われます。
 そこで、南紀白浜空港に県の観光拠点を置くことで、効率的に、かつ顧客満足度を高める観光振興が合っているのではないかと考えまして、その提言をしつつ、その仮定の下でメリットとデメリットを上げてちょっと考えてみたいと思います。
 メリットというのは、一つ目、アクセシビリティーの向上。空港にサテライトの観光局を設置することで、観光客が情報にすぐアクセスできる、また観光客に対して観光PRや活動提案をすぐすることが可能になります。
 二つ目、空港の活用促進、この局を置くことで、空港の活用というのが促進されると同時に、観光客の空港での滞在時間や使用率、認知度というのが向上する、そういう可能性があります。
 三つ目、空港に観光局があることで、観光客の行動や嗜好をダイレクトに観察し、より効果的にマーケティング戦略を立てることが可能になります。
 4、国際観光客へも対応がよくなります。今後、チャーター便などが増えるであろう県の政策に合わせて、そのことがメリットとして出てきます。
 五つ目、空港での待ち時間を観光の情報を取ることに利用できる、そういうプラスがあります。
 六つ目、観光の情報を空港で直接観光客と接することで、サテライト観光局は常に最新の観光情報を、特に首都圏に移動する飛行機利用者に提供することができます。
 七つ目、これも当然なんですけども、そこに来ることで地元の経済の活性化に直接関与して、プラスの効果を生み出すという長所が考えられます。
 デメリットとしては、やはり移転コスト、空港内でのスペース確保、空港には営業時間がありますので、その運営時間に左右されます。
 四つ目、やっぱり保安の環境にも影響されると思うので、そういうデメリットも考えられます。
 五つ目、観光客の分布です。全ての観光客が空港を使うわけではありませんので、一部の観光客からは遠くなってしまう、そういうデメリットもあります。
 人員配置では、やっぱり通う距離が問題になってきたりということがあります。
 七つ目です、ノイズ問題。空港は、大きな着陸音というのが出ますので、そういう意味でも業務に支障が出るかもしれません。
 最後に、八つ目です。非常時、何らかの理由で空港が利用できなくなった場合、観光局の業務に大きな影響が出る可能性があります。
 以上のメリット、デメリットを考察してみました。空港については、今、公共バスのハブとしての機能であったりとか、ITオフィスの機能であったりとか、たくさんの期待がかかっています。今後、ロケットの打ち上げなんかもありますし、その空港を利用した観光機能の補強が必要なのは明らかであります。
 以前しました質問の内容と重複しますけれども、サテライトの観光局を南紀白浜空港につくって、紀南のコロナ復興につながる観光振興に取り組んではどうかという御提案です。知事に所見をお伺いします。
○議長(濱口太史君) 知事。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) お答え申し上げます。
 今、谷口議員がおっしゃいましたように、和歌山県の観光産業全体を考えますときに、南紀白浜空港が民営化された結果、大変、和歌山県の観光産業を牽引するトップランナーであるということは、よく理解しておりますので、今の御提案は一つのアイデアとして、大変高く評価をさせていただければと思います。
 ただ、西牟婁郡に観光局のサテライトを置くということになりますと、和歌山県には伊都郡もありますれば、東牟婁郡もございますので、そう簡単なことではなかろうかと思いますと、まず私どもは振興局がございます。振興局にも観光担当がおりますので、それぞれの振興局ごとに、まず観光局の意を体して、できる限りの業務をさせていただく中で、今後、その振興局の活動も見ながら、谷口議員の御提案につきましては検討してまいりたいと考えております。
○議長(濱口太史君) この際、申し上げます。所定の時間まで残り5分です。質問は簡潔にお願いいたします。
 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 ぜひ、前向きに御検討していただいて、よろしくお願いいたします。
 四つ目の質問に入ります。過疎地域の人口再生につながる県営住宅の新築・建て替えについて質問いたします。
 過疎化が進む地域でも、経済拠点として機能しているところには、人口政策や、平均から見た所得の低い若年世帯支援、結婚増政策、子育て支援の視点から、人口再生や地域コミュニティーの復元が重要であります。それに対する考え方と、それにつながる県営住宅の新築再開及び建て替えを早急にすべきではないかという質問です。
 一つ目の過疎地域の若年世帯、新婚世帯の流入促進についてお聞きをいたします。
 結婚を契機とした新居を得る場合、貸家や新築一軒家よりも、まずはマンションニーズ、公共住宅ニーズが高い傾向にあります。賃貸での居住者が地域に安定して住んでいないということではありませんけれども、一定割合で世帯単位での生活期間において、仮の住まいとしての賃貸を選ぶ方々は存在していると考えます。それは、生活拠点をどこにするか、生活設計をどうしていくかにおいて、お試し住居としてのニーズという場合もあれば、修繕費や固定資産税といったランニングコストや、転職といったことを理由に資産を持つことも、そもそも持たない選択肢を選ぶ層も増えてきてると聞いています。
 しかしながら、過疎が進む地域の中には、公営住宅や賃貸マンションでの居住を経験し、住み心地を確認した上で、定住年数の長くなる傾向のある一戸建てに移る世帯もよく見かけられます。戸建てだから、ふるさと意識を持つかどうか分かりませんけれども、そこに行き着くまでのコミュニティー形成に重要な町内会の加入率は、おおむね賃貸マンションが低い傾向にありますが、細分化すると、公営の賃貸住宅は民間賃貸住宅に比べて明らかに入会率が高い傾向にあります。そういう意味でも、公営住宅の必要性とコミュニティー意識の高い人口再生を進める意味でも有効じゃないかと考えています。
 そこで、まず、知事の若年世帯、新婚世帯の流入促進を視野に入れた過疎地域の人口再生や地域コミュニティーの基盤となる集落の維持、活性化についての考え方をお聞きいたします。
○議長(濱口太史君) 知事。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) お答え申し上げます。
 県では、過疎地域に住民が安心して住み続けられますよう、暮らしや産業、担い手等の地域が直面している様々な課題を解決するために行う住民主体の取組を総合的に支援する過疎集落支援総合対策事業を実施し、集落の維持、活性化に取り組んでまいりました。
 議員御指摘のとおり、若年世帯や新婚世帯の流入促進が重要であると私どもも認識しております。和歌山における田舎暮らしの魅力を県外の若者にも広く情報発信するとともに、起業補助金などの仕事に関する支援のほか、住まいや暮らしについても同時に支援することで、過疎地域への若者の呼び込みを積極的に進めてまいります。
○議長(濱口太史君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 よろしくお願いします。
 最後の質問です。県営住宅の新築、建て替えについてお聞きをいたします。
 冒頭でもお話ししましたとおり、過疎化が進む地域でも経済拠点として機能しているところには、人口政策や、平均から見た所得の低い若年世帯支援、結婚増政策、子育て支援の視点から公営住宅の整備が必要であると考えます。
 そこで、県営住宅の新築再開及び建て替えを実施できないか、県土整備部長にお聞きをいたします。
○議長(濱口太史君) 県土整備部長福本仁志君。
  〔福本仁志君、登壇〕
○県土整備部長(福本仁志君) 現在、公営住宅では、住環境を維持、向上させるための長寿命化をはじめとした老朽化対策が喫緊の課題となっております。県営住宅につきましても、改修による長寿命化を基本に、老朽化が著しい団地の建て替え等を行っているところであり、特に1970年代に建設した大量の団地が更新時期を迎えることから、全く新しい建設につきましては困難な状況であります。
 このため、県といたしましては、各地域の需給バランスを考慮しつつ、若年世帯や新婚世帯の流入促進など、地域づくりの観点も含め、市町村と協議しながら建て替えを進めてまいります。
○議長(濱口太史君) 谷口和樹君。
  〔谷口和樹君、登壇〕
○谷口和樹君 ぎりぎりになってすみません。質問ありがとうございました。よろしくお願いします。
○議長(濱口太史君) 以上で、谷口和樹君の質問が終了いたしました。
 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。
 この際、暫時休憩いたします。
  午前11時46分休憩
────────────────────
  午後1時0分再開
○議長(濱口太史君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 40番奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕(拍手)
○奥村規子君 議長のお許しを得ましたので、通告に従って、今回は大項目2点について質問させていただきます。
 その前に、皆さん方からもお見舞いのお話がございましたが、私も本当に今回の台風2号、梅雨前線によって大雨がもたらされ、その被害を目の当たりにいたしました。こういった中で、私自身、あまり和歌山市のことしか考えられていなかったんですけど、川の氾濫のすごさ、そういったことを本当に身にしみて、これからも、私自身ももっと考えていきたいなあと思いました。
 皆さんの本当に今奮闘されている、復帰に向けて、もちろん被災の方、おうちの方や家族の方、そして職員や御近所の方、奮闘していただいていると思います。どうかお体にぜひお気をつけていただきたいと思います。また、亡くなられた方には、本当に心からお悔やみを申したいと思います。
 それでは、一つ目、県民の暮らしと物価高騰対策について質問をさせていただきます。
 長年続く格差社会にあって、今、県民の生活はコロナ禍と物価高騰に見舞われ、生活困窮者が増えています。これは県外なのですが、ある野宿者ネットワークの方のお話では、電気やガス、ガソリンの値上がりで、ここ毎年エアコン代が大変だからと、部屋があるのに野宿している人に度々出会うと報告されていました。
 現役世代、非正規4割の時代の中、給与が上がらないのに全世代への重い社会保障負担がのしかかっています。この物価高が生活破綻のとどめとならないようにしなければと思います。
 最も物価値下げに効果があるのは、まず、消費税5%への減税を考えるべきときではないでしょうか。そのことを申し上げておきたいと思います。
 県においては、今回の補正予算58億5000万円を提案されており、さらに災害に対して140億5100万円の増額補正が追加提案されました。その中で、物価高騰の影響を受ける子育て世帯の負担を軽減するためとして、子供食堂への支援が挙げられています。
 子供食堂は、子供の貧困対策や居場所づくり、地域の交流の場など、重要な役割を果たしています。地域社会にとって、重要な存在になっていると思います。その場所の確保や運営費の問題など、困難を抱える食堂も見受けられます。
 そこでお尋ねいたします。現行の補助支援制度の内容と現在の開設状況を福祉保健部長に、まずお尋ねをしたいと思います。御答弁よろしくお願い申し上げます。
○議長(濱口太史君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
 福祉保健部長今西宏行君。
  〔今西宏行君、登壇〕
○福祉保健部長(今西宏行君) 県では、2016年度から子供食堂の立ち上げ支援として、新規開設に係る備品購入費等の費用の2分の1を補助する制度を開始し、2020年度からは学習支援や世代間交流に必要な経費についても補助対象に追加し、支援を行ってきたところです。
 その結果、県内においては、2023年3月末時点で、15の市町で50の子供食堂が活動していることを把握しております。
○議長(濱口太史君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 次に、今後3年間で全ての小学校区約200か所、子供食堂設置を目指すとしていますが、これをどのように取り組むのか、お答えください。
○議長(濱口太史君) 福祉保健部長。
  〔今西宏行君、登壇〕
○福祉保健部長(今西宏行君) 子供食堂への支援を強化するため、補助制度を拡充し、上限はありますが、備品購入等に係る経費の全額を県で負担するよう6月補正予算に提案しているところです。
 このような支援により、子供食堂の開設に関心のある団体等を後押しするとともに、多くの子供食堂に地域コミュニティーとしての機能も備えていただきたいと考えております。
 県といたしましては、補助制度や子供食堂の意義について広く広報するとともに、市町村や社会福祉協議会の協力も得ながら、地域のボランティア団体等に届くよう周知を行ってまいります。
 さらに、子供食堂を始めたい方、運営している方、応援したい企業等のネットワークづくりをしっかり支援し、子供食堂同士の交流や地域の人材発掘につなげ、子供食堂が地域に根差し、支えられながら、息の長い活動ができるよう取り組んでまいります。
○議長(濱口太史君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 今、福祉保健部長のほうからお答えいただきました。この間、やはり50か所広がってきているということが分かりました。これは当初、多分子供の貧困対策に関する大綱とか貧困についての問題が国会でもいろいろと出てきた中で、法律が決まる前からも和歌山市においてもボランティアの皆さんたちが自主的に居場所をつくり、また、食材を寄附してもらったり、料理を作るのはボランティアの方、そういった皆さんの力で最初取り組まれたように聞いてるんですが、そういった中で、県としても支援がしていただけるようになって、今やっと50か所、各和歌山市外でもそういった取組がされているというような状況になってきたと思います。
 そういった点で、これからくまなく小学校区に200か所つくっていくということは本当に歓迎するところなんですけど、それを運営する、今も部長がおっしゃってくださった地域の子供食堂同士の交流や地域の人材発掘とか、こういったことというのがかなりいろいろと広報したりとか、いろんなことを働きかけたり、いろんなことを中心的にする方がやっぱり必要なんじゃないかと思うんです。
 そういった点でいえば、ほかにも運営費になかなか補助されていないように先ほどの答弁の中でもお聞きしたので、そういった点も、一時的な備品購入とかそういったことだけでなくて、実際の人、マンパワーを広げていくというようなことで、ぜひともそういった点でも補助制度が拡充されることを要望いたしまして、次の質問に行かせていただきます。よろしくお願いします。
 次に、昨日も質問をされていましたが、私からも小中学校の給食費無償化についてお尋ねをさせていただきたいと思います。
 保護者が負担する学校給食費における県内の年平均額は、小学校で約5万2000円、中学校では約5万6000円と聞いています。急激な物価高によって、給食の食材費負担も厳しい家計の中から出さなければなりません。
 給食費の無償化が全国的にも各自治体で広がり、和歌山県下でも広がっていると思います。新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金の拡充で創設されたコロナ禍における原油価格・物価高騰対応分などを活用したり、期間限定で実施する自治体も広がっています。
 2005年の6月に制定された食育基本法の前文では、「二十一世紀における我が国の発展のためには、子どもたちが健全な心と体を培い、未来や国際社会に向かって羽ばたくことができるようにするとともに、すべての国民が心身の健康を確保し、生涯にわたって生き生きと暮らすことができるようにすることが大切である。子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付けていくためには、何よりも『食』が重要である」と書かれています。日々成長する子供たちへの食の支援を最優先の課題にすべきと私は考えます。
 そこで、給食の無償化について、県としてどのように取り組んでいくのか、知事の意気込みも含めて、ぜひお答えいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○議長(濱口太史君) 知事岸本周平君。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) 奥村議員の質問にお答えいたします。
 まず、先ほど御質問いただきました子供食堂でありますけれども、これも私の公約で、子供食堂の充実は一丁目一番地で訴えておりますので、奥村議員の応援もぜひお願い申し上げたいと存じます。
 そして今、学校給食費の無償化につきましても、奥村議員と全く問題意識を同じくしております。
 子育て世帯に対する経済的負担の軽減につながる学校給食費の無償化は、それのみならず、学校での給食費徴収のための事務負担の軽減にもつながりますので、一石二鳥だと思っております。
 ただ、お金が要ります。仮に県内全ての児童生徒を対象に無償化いたしますと、毎年約33億円余りの財源、仮に2分の1補助とした場合でも、約17億円の巨額の財源が必要になってまいります。
 したがいまして、まずは、私どもとしては、国に対して学校給食費の無償化の恒久的な財源措置を講じるよう、今回申入れをいたしました。さらには、先月開催されました近畿ブロック知事会の国への要望にも、新たに学校給食費の無償化を入れていただいたところであります。そして、さらに全国知事会でも、声を大にして国に対してお願いをしていきたいと考えております。
 また、それが待てない場合のことも考えながら、市町村とも相談しつつ、負担の在り方、あるいは負担の度合い等を検討していくとともに、財源確保ができないかどうか、賢い予算のやりくりについても努力してまいる所存でございます。
○議長(濱口太史君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 知事の答弁の中でとても印象に残ったのは、「待てない場合は」というお話があったかと思うんですけども、私は、やはり子供が1年生から給食があるとか、また、子供の成長というのは先ほども申し上げました。日々成長していく中で、たくさんの体験をしながら、私たちの1時間の密度とまた違う意味合いで非常に大事な時間だと思います。
 そういったことから含めて、子供の成長を、健康を育んでいくということで、国もこども家庭庁の中で「子供を真ん中にして」と、「子供真ん中」ということがよく国会の中でも言われたかと思うんですけど、そういうことを含めて、何としても、どんな出発の仕方というのは、全部を100%にならないとというようなことでなくて、先ほどおっしゃってくださった市町とぜひ御協議していただいて、実現を早急によろしくお願いしたいと思いますので、よろしくお願いします。
 次に、それで国民健康保険料の件についてなんですが、この間、私が取り上げさせていただいているのは、やはり物価高騰になって暮らし向きが大変な中で、少しでも軽減できるところはないか、国独自で軽減していけることがないのかと、そういう点でちょっと質問をさせていただいてるんですけど、そういった点では国民健康保険料、これについては世帯の問題もたくさんあるんですが、今回ここでは、子育て世帯への経済的支援の一つとして、国保の就学前の均等割に対して県が補助することができないのかというようなことでお聞きをしたいと思っています。
 国民健康保険料(税)には、世帯の人数に比例して負担が増えるという均等割の仕組みがあります。昨年度から国は、やはり皆さんの声も国会に届く中で、就学前まで半額の負担軽減を行っています。行うようになってきました。
 この負担軽減策に係る公費負担額は、まずお幾らでしょうか。また、そういった中で県が補助することはできないのか、そこのところをぜひお聞きしたいと思いますので、福祉保健部長にお尋ねいたします。
○議長(濱口太史君) 福祉保健部長。
  〔今西宏行君、登壇〕
○福祉保健部長(今西宏行君) 国民健康保険における均等割保険料(税)は、国民健康保険制度が被保険者全体の相互扶助で支えられていることから、応分の負担をしていただく必要があるため、世帯員数に応じて均等に賦課されているものです。
 県としましては、子育て世帯への経済的負担軽減や医療保険制度間の公平性を図るため、全国知事会等を通じて国に要望してきた結果、2022年度からは、未就学児を対象に、均等割保険料(税)の5割を公費により軽減する措置が導入されたところです。
 2022年度における公費負担額は、国が約2719万円、県と市町村がそれぞれ約1360万円、合計約5439万円となっております。
 未就学児の均等割保険料(税)の軽減措置は、全国一律の制度として公費を投入し、被保険者間の公平性を確保した上で実施されており、国の基準を超えて、独自に保険料(税)の減額賦課について条例で定めることはできないこととなっております。
 県としましては、子供の均等割保険料(税)の軽減措置については、対象者や軽減幅のさらなる拡充を図るよう、引き続き全国知事会等を通じて国に要望してまいります。
○議長(濱口太史君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 先ほども申し上げましたが、昨年の4月から、国はやっと子供に係る保険料等の均等割額の減額措置が実施されているということですが、少子化対策を進めるためには、子供に係る保険料の均等割そのものを廃止すべきではないかと思います。その点も含めて、ぜひ知事会へ要望を強く提案し、そして、国へ求めていただけるようよろしくお願いいたします。
 これまで子供に関することで質問をさせていただきましたが、この30年間の貧困率の推移を世代別に見ると、男性高齢者の貧困率はどんどん下がってきているが、女性の高齢者は五、六年前から上がってきています。東京都立大学教授の阿部子ども・若者貧困研究センター長が言われています。
 そこで、高齢者の方々から「介護・後期高齢者医療保険の負担がきつい」という声をよくお聞きします。その点でぜひ質問をさせていただきます。
 年金生活の高齢者にとって、社会保障費の自己負担は大変厳しく、物価高が追い打ちをかけています。介護・後期高齢者医療保険料の引下げを求めるものですが、この中で財政安定化基金というものがあります。この目的と残高、この基金を活用して保険料を引き下げるということができないでしょうか。その点について、福祉保健部長にお尋ねいたします。
○議長(濱口太史君) 福祉保健部長。
  〔今西宏行君、登壇〕
○福祉保健部長(今西宏行君) 介護保険財政安定化基金及び後期高齢者医療財政安定化基金は、いずれも見込みを上回る給付費の増加や保険料の収納不足により財源不足となった保険者に対して、貸付け・交付を行うために設置された基金です。
 2023年3月31日現在の残高は、介護保険財政安定化基金が約14億9400万円、後期高齢者医療財政安定化基金が約23億5100万円となっております。
 介護保険財政安定化基金につきましては、先ほど申し上げた設置目的から、保険料引下げのための財源に充てることはできません。
 後期高齢者医療財政安定化基金につきましては、特例措置として、次期保険料算定時において、保険料の増加抑制のために活用することは例外的に認められているものの、基金の活用については、安定的に後期高齢者医療制度を運営するため、将来における給付費の伸び等を考慮した上で慎重に検討する必要があります。
○議長(濱口太史君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の保険料の引上げを柱とする改正健康保険法などが与党などの賛成多数で可決、成立をいたしました。子供が生まれたときに支給する出産育児一時金の財源の一部を後期高齢者医療制度から負担する仕組みも新たに導入されます。75歳以上のうち、年金収入が年153万円を超える約4割の方が負担となります。来年度から段階的に保険料を引き上げるということです。
 昨年10月からは、窓口負担が倍増している人がいます。後期高齢者医療費に占める国庫負担の比率は、制度発足から減っています。また、介護保険制度も来年度、第9期の策定の時期です。保険料は、第1期、2910円、第8期では6541円にも引き上げられています。弱い者同士で負担を押しつけ合うような仕組みになっているのではないかと思います。
 こういった点で、制度に合わせるのではなく、先ほどおっしゃっていただきましたそういった面で、基金の使い方、制限があったり目的が違ったりというようなことになっているということは分かりましたが、実際に、今現にこういった災害があり、またコロナ災害、また自然のそういったいろんな災害がある中で、そして今また物価高騰と、こういった状況が変わる中でこそ、もう一度しっかりと県民の暮らしを真ん中において、ぜひこれが適切なのか、適切でなかったらやっぱり制度を変えていくというようなことにまで踏み込んでいただければなあというふうに思いますので、この意見もぜひお聞きいただきたいと思います。
 次に行きます。大項目の2番目に、(仮称)和歌山印南日高川風力発電事業計画地についての質問をさせていただきます。
 皆さんのお手元に資料を配らせていただいていますので、今回はこの資料のところもちょっと目を通していただきたいなと思っています。
 私は、この計画があるということを知らされて、実際に6月7日に現地調査をさせていただきました。このときに、当然専門家の皆さんにも一緒に行っていただき、地元の方にも一緒に行っていただき、説明をお聞きしました。それについてまとめて皆さんに御報告をしたいなと思い、今回は、冊子まで至らなかったんですけど、このようにプリントでお渡しをできることになりました。
 この事業計画地というのが日高川と切目川の分水嶺をなす真妻山から清冷山に伸びる山稜で、広範囲に自然林の生態系と豊富な生物多様性が保全されています。豊かな自然環境と森林生態系、地形的自然景観に恵まれて、地域の生活環境と農林業の基盤になっているところだと感じました。
 地形としては、日高川・切目川流域は、フィリピン海プレートとユーラシアプレートによる南北性の圧縮応力場と、太平洋プレートによる東西性圧縮応力場が加わって、東西及び南北に連なる山脈が、2ページのところにあるように、発達しています。ちょうど計画地ということで印を入れています。
 事業計画地の山稜は、貴重な地形に指定されている日高川下流域の穿入蛇行と対をなし、紀伊半島の地形形成に関わる学術的に重要な地形群となっています。真妻山から清冷山に至る山稜域は、写真の1ページに見るように、隆起が著しい急峻な山地で、深い谷と急斜面が発達しているところです。
 事業計画地の地質は、四万十付加体の竜神付加コンプレックスを基盤に照葉樹林体が形成されており、森林生態系において、豊富な生物多様性が保全されています。
 龍神付加コンプレックスとは、次のページの図2にあるように、4ページです、遠洋性泥岩層・海洋性岩石─海底扇状地堆積体から成って、10数メートルから数百メートル規模でスラスト─褶曲構造が繰り返す、写真2のように、覆瓦構造が発達しています。
 この辺りを歩いてみますと、3ページの写真3、4にあるように、厚い風化帯が形成され、随所で地滑り、岩盤の緩みが見られました。素人の私にもはっきり理解できるものでした。
 この地域は隆起が著しく、険しい山稜と河谷が発達する山地で、梅雨前線、台風─秋雨前線による豪雨など、度重なる土砂災害、洪水などの山地災害を被ってきた地域です。
 付加コンプレックスの地質特性が山地災害に強い影響を及ぼして、規模の大きな地滑りや岩盤の緩み、崩壊地形が随所に認められました。
 5ページ、6ページの写真5、6、7に見られるように、6月2日の大雨でも、至るところで土砂流出がありました。
 さらに、この事業計画では、既存林道の拡幅と進入路・作業道路の新設が必要となります。これらの道路計画と残土の発生量、盛土等の見積りなど、具体的な計画が示されていません。風車の設置、進入路・作業道路の工事に伴い、森林の伐採、地盤の切土、残土の発生、土砂の流出は避けられません。山地災害が頻繁に発生すると予測されます。
 概要計画から判断すると、相当量の土砂の流出と斜面崩壊が発生する可能性があり、下流域の洪水・浸水被害が推測されるところです。林地開発における許可基準を満たさないと考えられます。
 配慮書における知事意見には、「想定区域内には、崩壊土砂流出危険地区が多く含まれているが、想定区域の設定に当たって、何も考慮されていない」としています。これが方法書においても全く考慮されていないことは、事業者が県指定の危険地区を無視しているとしか言いようがありません。
 あわせて、この地域では、過去にマグニチュード6程度の地震が発生し、近い将来発生するとされる南海トラフ地震では、震度6弱から6強の地震動が予測されています。山地の斜面崩壊や地盤の緩み、道路や盛土等の崩れが想定されるのです。
 本方法書では、地震による災害予測や地盤に対する評価や建造物の耐震性等についても検討されていません。調査と評価を求めるものです。
 繰り返し申し上げているように、この計画地は紀伊山地の中央部に位置し、特有の地形発達が見られ、地形学的に重要な位置を占めています。照葉樹林と一体となって、地形学的に貴重な自然景観が形成されています。
 計画されている風力発電事業によって、重要な地形、地質現象とともに、照葉樹林帯生態系が広範囲に失われます。紀伊山地中央部における森林に育まれた豊かな生物多様性が維持できなくなると考えます。失われると推測される国民・県民の貴重な自然資源としての価値は、この発電事業に、はるかに上回ると考えられます。
 以上、この風力発電事業は、地域住民にとって、保全に取り組んできた貴重な自然環境・景観の喪失、土砂災害・洪水などの要因となる負の遺産を将来にわたって引き継ぐことになるのではないかと心配をします。この貴重な自然環境、自然資源が発電事業によって広範囲に失われ、生活環境と生活基盤に大きな影響を受けることを認めてはならないのではないかと思います。計画を再考し、断念されるよう求めるものです。
 そこでお尋ねをいたします。この事業計画の概要について御説明いただき、環境影響評価法の手続に係る進捗状況を環境生活部長からお答えをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○議長(濱口太史君) 環境生活部長山本祥生君。
  〔山本祥生君、登壇〕
○環境生活部長(山本祥生君) (仮称)和歌山印南日高川風力発電事業につきましては、印南町と日高川町との行政界付近に、単機出力約4300から6100キロワットの風力発電機を最大で22基、合計出力約9万4600キロワットの風力発電設備を設置する計画となっており、環境影響評価の手続中です。
 その手続を大きく区分すると、配慮書、方法書、準備書、評価書の順に四つの手続があり、現在、事業の実施に伴う生活環境や自然環境への影響を事業者がどのように調査、予測、評価していくのかについて記載した方法書に係る手続を実施しているところでございます。
○議長(濱口太史君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 2番目の住民の不安の声と今後当面の手続についてお尋ねいたします。
 5月29日に、専門家の方々の和歌山県環境影響評価審査会があり、地元の方も含めてたくさんの傍聴があったとお聞きしています。
 それを受けて、6月6日に、二つの担当課と地域の方との話合いがありました。この話合いの場では、時間が足りないほど発言が相次いだとお聞きしています。
 住民の不安の声を認識されているのでしょうか。今後の当面の手続についても、併せて環境生活部長からお答えをいただきたいと思います。よろしくお願いします。
○議長(濱口太史君) 環境生活部長。
  〔山本祥生君、登壇〕
○環境生活部長(山本祥生君) 土砂崩れなどの災害発生、動植物や生活環境に与える影響等について、住民に不安の声があることは認識しております。
 県といたしましては、今後当面の手続として、事業者から提出された方法書に対して、有識者で構成される和歌山県環境影響評価審査会などの意見も踏まえ、発電事業に係る主務大臣である経済産業大臣に知事意見を述べてまいります。
○議長(濱口太史君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 次は、農林水産部長にお尋ねします。林地開発の許可要件についてお尋ねします。
 山地災害の水害を発生させる危険については、るる申し上げてきたとおりです。また、周辺地域の水の確保に著しく支障を及ぼす危険、周辺環境を著しく悪化させるおそれがあると思います。これでは開発許可は到底出すことができないのではないでしょうか。
 その際、必要となる周辺地域をどこに置くのかによって、しばしばニュアンスが変わります。この事業計画においては、森林が関係してきますので、森林法に基づく手続が必要であるかと思います。この手続における許可基準の内容はどうなっているのでしょうか。また、地域住民との合意形成の確認方法についても、併せてお答えいただきたく思います。農林水産部長、よろしくお願いいたします。
○議長(濱口太史君) 農林水産部長山本佳之君。
  〔山本佳之君、登壇〕
○農林水産部長(山本佳之君) 環境影響評価の方法書によると、当該計画地は森林法に基づく森林地域になっており、一般的事項として、開発に当たっては保安林の有無などの状況に応じ、法で定められた手続が必要となってまいります。
 例えば、林地開発許可に際しては、森林法及び和歌山県林地開発許可制度事務取扱要領に基づく災害の防止、水害の防止、水の確保、環境の保全といった四つの許可要件を満たす必要があります。
 また、地元自治会等との合意形成が図られているかについては、同要領に基づき、書面により確認します。
○議長(濱口太史君) 奥村規子さん。
  〔奥村規子君、登壇〕
○奥村規子君 御答弁ありがとうございました。県としても、住民の声が届き、しっかり受け止めていただいているということでは安心をいたしました。
 そのことについて、ぜひとも今後、審査会も重ねられるかと思いますので、その審査の中で、ぜひ厳しい、今、部長がおっしゃってくれた林地開発の4点の点も含めて審査をしていただきますようよろしくお願いを申し上げまして、私の一般質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○議長(濱口太史君) 以上で、奥村規子さんの質問が終了いたしました。
 質疑及び一般質問を続行いたします。
 26番山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕(拍手)
○山下直也君 議長のお許しをいただきました。令和2年9月定例会以来、約2年9か月ぶり、通算34回目の一般質問となります。
 今回、先輩・同僚議員の皆様方の御配慮にて、最終質問者を務めることとなりました。しばらくの間、お付き合いのほどよろしくお願いを申し上げます。
 まず初めに、去る6月2日の豪雨災害でお亡くなりになられた御遺族の方々に、心からお悔やみを申し上げるとともに、被災されました皆様方に心よりお見舞いを申し上げます。
 先月8日に、これまでの生活様式等を大きく変えた新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが、皆様御承知のとおり、5類感染症となり、法律に基づき、行政が様々な要請や関与をしていく仕組みから、個人の選択を尊重し、自主的な取組をベースとした対応に変わり、これまで我々が経験したことのなかった大きな危機からの出口がようやく見えてきたと感じた、まさにその矢先の災害発生でありました。
 私も多くの現場を歩き、被災された方々から多くの御意見や御要望を頂戴いたしました。早く何とかしなくてはならない課題ばかりではありましたが、なかなか難しく、被害を受けた箇所があまりにも多く、その全てを早期に復旧することは大変難しいのかなというふうに実感をしたところであります。
 この点に関しましては、今議会、一般質問初日に、我が自由民主党県議団の尾崎要二議員が、住家被害を受けた被災者の方への支援策、農林水産業における復旧に向けた対策や公共土木施設の復旧対策等について質問、知事はじめ関係部長から幅広く答弁をいただいており、早期の復旧を期待するところであります。
 このように、世界を震撼させた新型コロナウイルスの猛威や今回の豪雨等の自然災害、また、いつ来るか分からない南海トラフ巨大地震や北朝鮮による度重なるミサイル発射実験など、我々に振りかかる危機事象を数え上げれば、切りがないわけであります。
 いかにこの危機事象から県民の生命と財産を守っていけるのか。例えば県当局の職員数は、そういった危機対応に充足できているのでしょうか。様々な分野の行政経験を持つゼネラリストより、他県で導入予定の防災職のような、言わば専門職員も必要なのではないかなど、多くの思いが頭をよぎります。
 いずれにしましても、災害は忘れた頃どころではなく、いつやってきてもおかしくないという意識で、今後、県当局と議論をしていきたいと考えております。
 それでは、質問に入ります。
 1項目め、がん対策についてであります。
 このことにつきましては、これまで和歌山県がん対策推進条例制定に座長として関わり、今日まで議員活動の中で、がん対策を最重点事項の一つとして取り組んできたところであります。
 条例制定当時、本県において、がんは県民の死亡原因第1位の疾病であり、当時、肺がん、大腸がん、胃がん等の死亡率が長年にわたって極めて高い状況にあるという現状に鑑みれば、県を挙げてがんとの闘いに取り組むべき状況にあったと言えるかと思います。
 そこで、県議会の全会派から選出された私を含め15名の委員で、平成23年12月16日に第1回の検討会を開催し、計10回の検討会において議論を重ね、平成24年12月定例会において、全会一致で議員提案によるこの条例は可決されました。
 可決されたとき、私はがん患者を含む全ての県民が安心して生活することができる地域社会の実現に大きな一歩を踏み出すことができたという実感とともに、がん対策に関し、「できることは全てやる」の信念の下、生活習慣の改善等の1次予防、早期発見のための検診等の2次予防や罹患した場合の治療、そして罹患後の雇用も含めた経済的不安の軽減など、あらゆる段階に応じたがん患者とその家族の不安を取り除くための具体的施策を実現しようと心に誓ったことを記憶しております。
 あれから早くも10年が経過をいたしました。条例制定後も私は当局の取組状況について計8回、がん対策に係る一般質問を行ってまいりました。
 平成25年12月定例会では、啓発、粒子線治療及び緩和ケアについて質問。翌平成26年12月定例会では、がんの予防・早期発見の取組、人材の育成、BNCTの整備について。平成27年12月定例会では、予防と早期発見、がん医療、緩和ケア、がん登録、先進医療について。平成29年9月定例会では、第2次和歌山県がん対策推進計画の全体目標の成果について。平成30年6月定例会では、第3次がん対策推進計画の目指す目標について。令和元年6月定例会では、がんに罹患した方々が自分らしく働き続けられる、そういう環境整備について。令和元年9月定例会では、治療と仕事の両立のための企業経営者の理解と協力を得るための取組とBNCTについて。そして、令和2年9月定例会では、条例制定時からの検診受診率の推移と受診率向上の取組について、加えて、新型コロナウイルス感染拡大による検診への影響について、さらには子宮頸がんワクチンについて、多々当局の考えをお尋ねしてきたところであります。
 特にこの子宮頸がんワクチン接種の推進につきましては、年間約1万人が罹患し、そのうち約3000人が命を失っており、特に20代から40代の若い女性の罹患率が非常に高く、治療に伴う疾病負荷や妊孕性への影響が大きな問題であったにもかかわらず、接種との因果関係を否定できない副反応事例が複数報告されたことから、平成25年6月14日に、国から当該定期接種の接種対象者への市町村からの個別判断を差し控えるよう勧告がなされ、ワクチンの接種希望者が大きく減少していましたが、その後、接種を促進したいという、また、副反応に対する対策も大きく進み、熱意のある県医師会及び県産婦人科医会の先生方の御指導の下、私と志を同じくする当時の岸本健議長、川端議員と、他県の事例調査や国会議員及び関係者の方々との意見交換などを通じて、ワクチン接種に係る県民の皆様への個別案内、周知活動再開を働きかけ、最終的に、当時の仁坂知事が御決断いただいたわけでありますが、実現できたことは誠に意義深いと感じました。
 このように、がん対策に関し、「できることは全てやる」の信念の下、県当局の皆様はもとより、保健医療関係者や教育関係者など、条例における七つの主体の献身的な取組及び不断の努力等により、条例制定時から本県のがん対策は大きく進展してきたと考えています。
 先月27日、28日の両日、第10回目となるがん制圧や患者支援のためのチャリティーイベント、リレー・フォー・ライフ・ジャパン2023わかやまが開催され、参加をいたしました。これは、がん患者は24時間がんと向き合っているという思いを共有するためのイベントであります。
 和歌山で開催実績のなかったこのイベントについては、10年前に同僚の藤山議員と大阪府貝塚市で開催されたこのリレー・フォー・ライフを視察する機会を得、その後、熱意ある医療関係者の皆さん方や実行委員会の多くの皆さん方の御協力を得て、本県での開催が実現いたし、以降、毎年開催されるようになりました。
 がんに罹患し、つらいときであっても支え、支えられる。このイベントに今年は岸本知事も御参加をいただいております。一緒に歩きましたですね。このようなことから考えて、私はがん対策に対する思いを知事と共有できると思っております。
 そこで、本題に入ります。
 先頃、令和4年度のがん対策施策報告書が県当局から発表されました。各施策の目標に対して達成できたものもあればできなかったものもあると思いますが、条例制定前の平成22年と比べて死亡率はどうなったのか、また、今後どのような点に注力していくのかなど、本県におけるがん対策の現状と今後について、改めて知事の所感をお伺いしたいと思います。
○議長(濱口太史君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。
 知事岸本周平君。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) 山下議員の御質問にお答えをさせていただきます。
 私も国会議員のときに、今思い出しますと、和医大の学長さん、日赤の病院長さんとがん対策の勉強会がずっと県議会の先生、山下議員を中心に行われておりまして、私も参加をさせていただいておりました。今、途中でなくなってしまいましたけども、その際の山下議員のがん対策にかける情熱は、本当に敬意を表するばかりでありました。そのことを思い出しながら、お答えを申し上げたいと存じます。
 議員提案条例である和歌山県がん対策推進条例が制定される前の2010年における人口10万人当たりの75歳未満年齢の調整死亡率は91.8、全国で何と第44位ということでありました。
 県では、がん対策基本法及び同条例に基づきまして、第2次、第3次、累次の和歌山県がん対策推進計画を策定し、総合的ながん対策に取り組んだ結果、本県の2021年における人口10万人当たりの75歳未満年齢の調整死亡率は、現計画の目標値である68.3に対しまして68.6と僅かに足りなかったものの、全国平均との差は2010年と比べ、大きく縮まりました。
 県としては、予防を目的とした生活習慣の改善や受動喫煙等防止に向けた啓発や、早期発見のための市町村への個別受診勧奨支援、あるいは検診従事者等向けの研修会の実施、さらには県立医科大学附属病院や日赤和歌山医療センターでのがんゲノム医療、県立医科大学附属病院における膵がんセンターの設置等によるがん医療の充実など、これまでに実施してきた総合的な取組の成果が現れたものと考えております。
 また、2022年から積極的勧奨が再開された子宮頸がんワクチンの接種につきましても、県独自のリーフレットの作成に加え、市町村職員向けや定期接種対象者とその保護者向け研修会の開催などにより、接種者数が2020年と比べて大幅に増加しております。
 その一方で、国民生活基礎調査による本県における69歳以下のがん検診の受診率は、2010年と2019年とを比較すると高まってはきているというものの、現計画の目標値である70%に対しまして、大腸がんでは36.9%、子宮頸がんで38.5%など、全てのがんで大きく下回っております。
 早期発見、早期治療の観点から、2022年度からはナッジ理論を活用した受診勧奨をモデル的に実施しているところでありますけれども、より重点的に取り組む必要があろうかと認識しております。
 今後、県としては、包括連携協定を締結した企業や関係団体等の協力を得つつ、事業主や県民に対するアンケート等を行い、詳細に分析した上で効果的な受診勧奨につなげ、さらなる受診率の向上を図ってまいります。
○議長(濱口太史君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 知事、答弁ありがとうございました。
 今回、条例制定から10年が経過し、原点に立ち返ってがん対策を考えたいと思い、改めて知事に質問をいたしました。
 人口10万人当たり75歳未満年齢調整死亡率の全国平均との差が大幅に縮まってきたということで、県当局や保健医療関係者など、七つの主体の皆さんの御尽力に感謝を申し上げます。
 また、先日チラシを拝見したわけでありますが、がん治療を目的とした先進医療に要する費用を補助する県の支援制度につきましても、今年度から市町村民税の所得割合計額が非課税等、一定の要件を満たす場合に補助率を引き上げるなど、安心して先進医療が受けられるような環境整備を行っていただいているということ、重ねて感謝をいたします。
 この基金は、もともと自由民主党県議団の尾崎要二議員の知人である芝本十三さんの篤志により、平成26年に基金を設立、多くの方々の支えになってきました。現在は、本県のふるさと応援寄附により運営されていることを御紹介しておきたいと思います。
 しかしながら、知事に答弁をいただいたように、69歳以下のがん検診の受診率が目標を大きく下回るといった課題も見受けられます。
 また、私はこれまでBNCTや重粒子線療法などの先進医療について、県内への導入を主張してまいりました。県当局からは、情報収集に努め、慎重に検討していくといった答弁をいただいていますが、この間、近畿はもとより全国各地で施設の建設が進められてきました。
 様々な課題があるかと思いますが、できることは全てやる、がん患者を含む全ての県民が安心して生活することができる地域社会の実現に向けて、実効性のあるがん対策を総合的かつ効果的に実施していくようよろしくお願いをいたしまして、この質問は終わりたいと思います。
 次の質問に移ります。
 部落差別の解消に向けた取組についてであります。
 先日、岸本知事と会議で同席することがあり、知事の挨拶をお聞きしておりました。知事は、憲法第13条に基づく幸福を追求する権利が全ての人にあり、そこから考えると、他の都道府県で既に制定されている障害者差別解消条例が本県では制定されていないことや部落差別解消条例が現行のままでいいのかという趣旨の発言をされておられました。
 私は、障害者福祉につきましても今日まで一般質問や常任委員会において何度も取り上げており、知事の発言には大いに賛同したいと思います。
 障害者差別解消条例の制定につきましては検討課題であると思いますので、今後議論していきたいと考えております。
 皆様御承知のとおり、今年は和歌山県水平社が創立されてから100年の節目の年に当たりますので、部落差別の解消に向けた取組について質問をいたします。
 水平社の創立は、部落解放運動の歴史にとって画期的な出来事であり、封建的な生活と観念が変わらない限り差別も消えないと考えた水平社運動は、労働・農民運動や婦人解放運動、普通選挙権獲得運動とつながる民主主義運動の一つであったと思います。
 「人の世に熱あれ、人間に光あれ」、水平社創立宣言を起草し、本県とも縁の深い西光万吉さんの言葉が胸に込み上げます。
 翻って、県水平社創立から100年、部落差別は解消できたのでしょうか。
 私は高校の頃、友人から「好きな人がいてお付き合いをしているが、結婚はできないんだ」と打ち明けられたことがありました。そのときは、好きなら結婚すればいいのに、なぜそんなことを言うのかと思い、友人の言葉の意味がよく分かりませんでした。その後、部落差別の歴史とその現状を勉強していく中で、こんな理不尽な差別が続くことは断じて許されないとの思いを強く持つようになりました。
 39歳のときに県議会議員に当選させていただいて以来、同和対策特別委員会、現在の人権・少子高齢化問題等対策特別委員会の委員を務めております。定例会における一般質問だけでなく、この特別委員会でも幾度となく県当局に質問を行ってまいりました。
 特に印象深いのが、自由民主党県議団の吉井議員を中心として、部落差別の解消の推進に関する法律、部落差別解消推進法の制定に向けた取組であります。
 このことは同僚の佐藤議員も令和3年12月定例会の一般質問で取り上げてこられたところでありますが、平成27年9月3日に県議会で、「企業・団体等による部落差別撤廃のための法律」の早期制定を求める意見書を採択。2か月後の11月16日に、東京都内で人権フォーラムを開催し、共産党を除く超党派で法務省や自由民主党の当時の二階総務会長、稲田政調会長に議員立法での制定を要請、異例の速さで部落差別解消推進法が成立したことは、当時の志を同じくする議員の圧倒的な熱意はもとより、この問題が県議会議員、県当局のみならず、全県民、全国民が差別を解消しなければならないという強い意識の表れであると認識したところでありました。
 その法律の施行から6年が経過いたしました。今、部落差別は解消していますか。
 先ほど私が申し上げたとおり、県水平社の創立から100年であります。それよりずっと以前から被差別部落の方々はいわれのない不当な差別を受けてきたのであります。いつ解消されるのでしょうか。
 部落差別解消に向けた取組については、知事も国会議員時代から積極的に取り組んでこられたと私は認識をしております。特にインターネット上の人権侵害の防止や人権が侵害された場合における被害者の救済等、実効性のある法制度の整備や対策について、県としてできることは全てやらなくてはならないと思います。
 これまでの県の取組の総括と課題について、知事にお伺いをいたします。
○議長(濱口太史君) 知事。
  〔岸本周平君、登壇〕
○知事(岸本周平君) お答え申し上げます。
 まずもって、山下議員のこれまでの部落差別の解消に向けた活動に改めて敬意を表したいと存じます。
 また、私も国会議員時代、当時は超党派で、二階代議士を筆頭に、自民党の先生方の御指導もいただき、当時、私は野党の立場でしたけれども、野党の人権推進議員連盟の事務局長として部落差別解消推進法の制定に関わらせていただきました。その間、大変皆さんと一緒に苦労しましたけれども、私の国会議員としての活動の中で、一つの誇れる実績となったこと、この場を借りまして、改めて山下議員には御礼を申し上げたいと存じます。
 和歌山県では、国に先駆けて1948年に地方改善事業補助制度を創設し、地域の環境改善に取り組み、1969年の同和対策事業特別措置法施行後は、さらに市町村をはじめ県民と一致協力して、総合的かつ計画的に同和対策を推進し、住環境の整備等において大きな成果を上げてまいりました。
 2002年度からは、和歌山県人権尊重の社会づくり条例に基づき、和歌山県人権施策基本方針を策定し、部落差別の解消に向けて取り組んでまいりました。
 しかしながら、同和地区の問合せや差別発言等の許し難い部落差別が発生しておりまして、部落差別の解消を図るための新たな法律の制定が求められるようになったわけであります。
 そのため、議員御発言のとおり、2015年9月に県議会で採択された「企業・団体等による部落差別撤廃のための法律」の早期制定を求める意見書が契機となり、その後、東京で開催された人権課題解決に向けた和歌山県集会(人権フォーラム)を経ました。私も参加をさせていただいたことを昨日のように覚えております。そして、2016年12月に、部落差別の解消の推進に関する法律が制定されたわけであります。しかしながら、この法律には、部落差別に対する救済措置は含まれておりませんでした。
 県におきましては、部落差別の解消を一層進めるため、部落差別の禁止や差別を行った者に対する説示、促し、勧告を規定した和歌山県部落差別の解消の推進に関する条例を2020年3月に制定したところでありますけれども、今、山下議員が御指摘されたとおりでありまして、依然として差別発言やインターネット上への書き込み等が発生しております。
 特に匿名掲示板やSNS上への誹謗中傷や差別書き込みは、インターネットの匿名性と拡散性から、その対応が本当に重大な課題となっております。
 和歌山県では、モニタリングを実施し、誹謗中傷等の書き込みを確認した場合には、速やかにプロバイダー等に対し削除要請を行っておりますが、削除要請をしても全てが削除されるわけではありません。被害者救済については、和歌山県だけでの対応ではどうしても限界がございます。
 こうしたことから、国に対しまして、インターネット上の人権侵害防止対策も含め、独立性、迅速性、専門性を備えた第三者機関を創設し、行為者に対し、説示、促し、勧告を行うなど、実効性のある人権救済等に関する法制度の早期整備を行うよう、県の重点事項として今年も要望してまいりました。
 県のリーダーとして、引き続き国に対して要望を行ってまいりたいと存じますので、県議会の議員の先生方の御協力をぜひともお願い申し上げます。
○議長(濱口太史君) 山下直也君。
  〔山下直也君、登壇〕
○山下直也君 知事、どうもありがとうございました。
 国に対し、インターネット上の人権侵害防止対策も含め、実効性のある法制度の早期整備を行うよう県の重点事項として要望したとの答弁をいただきました。
 県当局と我々県議会は、よく車の両輪に例えられます。法制度の早期整備に関し、全ての人が幸福を追求できるよう、そういう目的地に早期に到達するためには、やはり政治の力も必要ではないでしょうか。
 県議会の同和対策委員会、現在の人権・少子高齢化問題等対策委員会は、昭和38年7月19日に設置をされました。今年で設置から60年であります。この間、大先輩であります岸本光造元衆議院議員をはじめ、多くの先輩方々の御努力、御熱意が委員会運営をリードしてきた、私はそのように感じます。
 また、本日、午前中の質問の答弁の中で、知事は、もし自分がその立場だったらというようなお話もあったと思います。そんな中で、和歌山県からあらゆる差別をなくしたいと考えて、そのような答弁になったわけでありますが、まさにそのとおりであると私は思います。
 そして今、人権・少子高齢化問題等対策特別委員会では、一昨日の6月21日に、部落差別の解消の推進に関する法律の改正を求める決議(案)を採択いたしました。先ほど申し上げましたように、県水平社創立から100年、政治の力による部落差別解消を強力に推進していかなくてはなりません。
 議会最終日の本会議において、この決議(案)が諮られますが、どうか先輩・同僚の皆様方には何とぞ御賛同いただきますようよろしくお願いを申し上げ、私の今回の一般質問を閉じさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(濱口太史君) 以上で、山下直也君の質問が終了いたしました。
 お諮りいたします。質疑及び一般質問を終結することに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(濱口太史君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決定いたしました。
 次に日程第3、議案等の付託について申し上げます。
 お手元に配付しております議案付託表のとおり、議案第78号から議案第95号まで及び諮問第1号は所管の常任委員会に付託いたします。
 お諮りいたします。6月26日及び27日は常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これに御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○議長(濱口太史君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決定いたしました。
 次会は、6月28日定刻より会議を開きます。
 本日は、これをもって散会いたします。
  午後2時16分散会

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