令和4年12月 和歌山県議会定例会会議録 第4号(全文)


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令和4年12月 和歌山県議会定例会会議録 第4号

議事日程 第4号

 令和4年12月8日(木曜日)

 午前10時開議

 第1 議案第136号から議案第164号まで(質疑)

 第2 一般質問

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会議に付した事件

 第1 議案第136号から議案第164号まで(質疑)

 第2 一般質問

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出席議員(40人)

 1番 鈴木德久

 2番 山家敏宏

 3番 中本浩精

 4番 堀 龍雄

 5番 藤山将材

 7番 井出益弘

 8番 宇治田栄蔵

 9番 北山慎一

 10番 玄素彰人

 12番 秋月史成

 13番 森 礼子

 14番 濱口太史

 15番 尾崎要二

 16番 冨安民浩

 17番 川畑哲哉

 18番 玉木久登

 19番 鈴木太雄

 20番 岩田弘彦

 21番 吉井和視

 22番 谷 洋一

 23番 佐藤武治

 24番 岩井弘次

 25番 中 拓哉

 26番 多田純一

 27番 新島 雄

 28番 山下直也

 29番 中西 徹

 30番 谷口和樹

 31番 藤本眞利子

 32番 浦口高典

 33番 山田正彦

 34番 坂本 登

 35番 林 隆一

 36番 楠本文郎

 37番 高田由一

 38番 杉山俊雄

 39番 片桐章浩

 40番 奥村規子

 41番 尾﨑太郎

 42番 長坂隆司

欠席議員(1人)

 11番 中西峰雄

〔備考〕

 6番 欠員

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説明のため出席した者

 知事         仁坂吉伸

 副知事        下 宏

 理事         田嶋久嗣

 知事室長       赤坂武彦

 危機管理監      福田充宏

 総務部長       吉村 顕

 企画部長       長尾尚佳

 環境生活部長     生駒 享

 福祉保健部長     志場紀之

 商工観光労働部長   寺本雅哉

 農林水産部長     山本佳之

 県土整備部長     福本仁志

 会計管理者      中家秀起

 教育長        宮﨑 泉

 公安委員会委員長   竹田純久

 警察本部長      山﨑洋平

 人事委員会委員長   平田健正

 代表監査委員     森田康友

 選挙管理委員会委員長 小濱孝夫

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職務のため出席した事務局職員

 事務局長       出津野孝昭

 次長(秘書広報室長事務取扱)

            浜野幸男

 議事課長       長田和直

 議事課副課長     岩井紀生

 議事課課長補佐兼議事班長

            村嶋陽一

 議事課主任      伊賀顕正

 議事課主任      菅野清久

 議事課副主査     林 貞男

 総務課長       葛城泰洋

 政策調査課長     神川充夫

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  午前10時0分開議

○議長(尾崎要二君) これより本日の会議を開きます。

 日程第1、議案第136号から議案第164号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、併せて日程第2、一般質問を行います。

 38番杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕(拍手)

○杉山俊雄君 おはようございます。

 昨日、玄素議員が、ミサイルが飛んできたらどうするのかというような質問して、先制攻撃としての敵基地攻撃能力の保有が閣議決定をされようとしていて、何と物騒な世の中になってきたなあというふうに感じながら、その話を聞いていました。

 そして、今日は、僕、分からなかったんですけども、新聞見たら12月8日で、ハワイの真珠湾に先制攻撃をした日だと、そして、4年後に日本が戦場となって、原子爆弾が広島、長崎に投下された、破滅への第一歩となった日だというふうに思って、教師であったから、憲法前文の「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにする」との決意を思ったわけであります。

 また、政治の責任として戦争が起こらないようにする、こういうふうな平和外交の視点での論議が必要ではないかなあと、今日は新聞を読みながら思ったということを前置きとして、議長の許可を得ましたので、化学物質過敏症や、これ、香り害と書いて香害というんですが、それについて質問をしたいと思います。

 1点は、化学物質過敏症や、香害に関する周知啓発についてです。

 化学物質過敏症とは、空気中を漂う化学物質を吸入することにより症状が出てくる病気です。2009年に保険病名に登録されています。この病気が厄介なのは、血液検査などの客観的な指標で識別することが難しく、ほとんどが自覚症状です。患者は100万人以上で、予備軍も入れると1000万人とも言われています。

 化学物質過敏症は、新しいタイプの公害病です。従来の公害病は特定の地域で発生していたのに対して、この病気は個別の家の中で起き、さらに、家族の中でも発症する人と発症しない人が出ます。地域とも家族とも共通項を持てない発症者は、周囲の無理解から孤独感と疎外感で大きな苦しみを味わうことになります。

 2008年頃から香りの強い海外製の柔軟剤がブームになったのをきっかけに、香りの刺激で化学物質過敏症を発症する方が増えています。柔軟剤、消臭除菌スプレー、制汗剤、芳香剤、合成洗剤などの強い香りを伴う製品によって健康被害が生じる化学物質過敏症を香害といいます。体臭は含まれません。

 日本消費者連盟が事務局を務める香害をなくす会が行ったアンケート9000人分以上の結果で、切実な実態が明らかになっています。

 香りつき製品の匂いで具合が悪くなったことがある人は約8割を占め、そのうち86%が柔軟剤と回答しています。次いで香りつき合成洗剤が66%以上です。洗濯に使われる日常品で被害が多いことが分かります。香水、除菌・消臭剤、制汗剤、アロマと続きます。自由記述欄では、整髪料、洗髪料、芳香剤があります。化粧品全般、ハンドクリームにはかなり匂う製品があり、会社や電車の中で塗り直すことがあるため、被害を感ずることが多いようです。

 最も多い症状は頭痛、吐き気です。続いて、思考力低下、せき、疲労感、めまい、鼻の粘膜の痛み、目の痛みや充血、呼吸困難と続きます。

 具合が悪くなる場所で一番多いのは乗り物の中、次いで店、公共施設、隣からの洗濯物の匂い、職場、病院、学校の順です。路上や公園、駅等、擦れ違った人や人混みなども含まれ、給食エプロンなど子供が持ち帰ったものとの回答があります。保育園や幼稚園、宅配の人、修理や工事の人、荷物にも香りが付着しているということが目立ちます。まさに、人がいる場所であれば、ほぼ全ての場所や場面で遭遇してしまうのが現状のようです。

 香害で体調が悪くなった人のうち、休職や退職、欠席や休学など、日常生活に支障を来す人は約2割に上ります。その中に、職を失った、長期間休むことになった、電車に乗れないという深刻な事例もあります。学校に通えない、休みがち、不登校という子供の事例もあります。柔軟剤のような日用品で労働や教育の機会が奪われている。収入が断たれ、学業を中断せざるを得ない実態が明らかになりました。

 香りつきの製品や場所から離れると改善する人が7割、残り3割は原因から離れても体調の悪い状態が続くと回答、数日間寝込むケースもあります。具合が悪くなった人のほとんど全ての人が香害対策を求め、柔軟剤などの家庭用品へのマイクロカプセル使用の中止を求めています。製品の中止を求めたいが、まずはマイクロカプセルだけでも中止してほしいとの声ではないかと思われます。

 早稲田大学理工学部環境資源工学科の大河内博教授は、香害を引き起こす化学物質を特定することは困難ですが、アンケートで柔軟剤と香りつき合成洗剤が重大な原因となっていることが明らかになった意義は大きいと言います。

 県内在住のAさんは、新築マンションの建材の匂いや柔軟剤の香りで吐き気や頭痛がひどく、仕事が続けられなくなりました。お隣さんに「香りつきの柔軟剤で寝込んでしまうので使うことを控えていただけませんか」と頭を下げましたが、「皆さん使っていますよね」と言われると、それ以上言えません。理解してもらえない、人間関係が崩れてしまう、そのことに一番苦しんでいます。健康を害しただけでなく、家の売却で借金が増え、仕事ができず、普通に暮らす生活がなくなりました。あまりのつらさに死を考えたことは、一度や二度ではありません。誰もが相談できる窓口があると安心する。啓発だけでなく、受け入れてもらえる環境を整備することが大変重要と訴えています。

 そこで、福祉保健部長にお伺いします。

 化学物質過敏症で苦しまれている方にとっては、周囲の理解と配慮が不可欠です。社会全体がこのことを認識するためにも、化学物質過敏症や香害に関する啓発に取り組む必要があると思います。しかし、和歌山県のホームページを化学物質過敏症、香害で検索しても、すぐにアクセスできません。配付資料1に埼玉県草加市のホームページがありますが、このように、草加市のように入力すればすぐにアクセスでき、情報量が多く利用しやすいようにホームページを変更していただけないでしょうか、お答えください。

 また、香害をなくす会が行ったアンケート調査で、乗り物や学校、病院などの公共の場での被害が多いことを考えると、今は症状が出ていない人も含めて、社会全体で認識、理解して、香りの自粛や柔軟剤などの使用自粛、安全性の高い製品の開発などの検討が必要となっています。香害は特定の人だけの問題ではありません。誰でも突然症状が出てくることがあります。小さい子供への影響はさらに深刻です。過敏な人が安心して生活できる環境は、全ての人にとっていい環境です。

 2021年8月に香害をなくす会が要請していた香害の周知と香り製品の自粛を求めるポスターを国の5省庁が連名で配付資料2のように作成、発行をしました。国が発行したことは一歩前進です。

 米国の疾病対策予防センターは、2009年、1万5000人の職員に、香水だけでなく、香りつき洗剤や柔軟剤などで洗濯した衣類を身につけて職場に来ることの自粛を要請し、施設内での香りつき製品の使用を禁止しました。職場における空気環境をよい状態に保つことは、職員の健康と仕事の環境を維持するための予防的措置につながるからであります。

 2019年以降、全国各地で香害をなくす運動が広がり始め、地方自治体での陳情、意見書採択、学校での周知や自粛の呼びかけなどの取組が進んでいます。2020年6月現在、香りや化学物質の害を知らせるポスターやチラシなどを作成した自治体は51、ホームページで呼びかけた自治体は94に上っています。

 そこで、福祉保健部長にお伺いします。

 香害がみんなに知ってもらえるレベルになるようなポスターを作成し、県庁各部局の職員が香害への理解を深めるために庁内で周知するとともに、県ホームページへの掲載や公共施設への掲示等に活用してもらいたいと考えますが、お答えをよろしくお願いいたします。

○議長(尾崎要二君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。

 福祉保健部長志場紀之君。

  〔志場紀之君、登壇〕

○福祉保健部長(志場紀之君) 化学物質過敏症は、ごく微量な物質に対しても過敏に反応し、様々な身体的・精神的症状が現れるものとされておりますが、現時点では医学的にその定義が確立されておらず、発症に至るメカニズムも不明確であり、その症状や原因が患者によって様々であることから、客観的な臨床検査法や診断基準が確定しておりません。しかしながら、柔軟剤等の香りにより頭痛や吐き気が生じるなど、その症状に苦しみ、周囲の配慮が必要な方々がいらっしゃることから、県としましては、このことを正しく認識していただけるよう、周知啓発に取り組むことは重要であると考えます。

 県では、これまで化学物質過敏症に関するホームページの作成や「県民の友」での周知啓発を行ってきたところですが、議員からの御指摘を踏まえ、ホームページにつきましては、より簡単にアクセスできるようにするとともに、具体的な症状例や症状を誘発する可能性のある物質について掲載するなど内容の充実を図り、ホームページを利用される方にとって、より分かりやすくなるよう改善してまいります。

 また、ポスターによる啓発につきましても、国が作成した香りへの配慮に関するポスターを活用し、庁内各部局に対して周知するとともに、県ホームページへの掲載や公共施設での掲示等に取り組んでまいります。

○議長(尾崎要二君) 杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕

○杉山俊雄君 答弁ありがとうございます。

 香害で苦しんでいる方は、理解されないのが一番つらいと言っています。ホームページの改善や庁内へのポスター掲示等により啓発を行っていただくことが、理解してもらえる第一歩になるというふうに思います。理解が進めば、アメリカのように、パブリックの場にプライベートを持ち込ませない取組が広がるというふうに思いますので、よろしくお願いをいたします。

 次に、学校における実態把握、周知啓発についてです。

 学校では、教室等の環境に関わる6種類の揮発性有機化合物について、学校薬剤師と連携し、年1回検査を行い、基準を超えた場合には必要な措置を行っています。しかし、学校の検査は、建物とか建材とか備品から放散される揮発性有機化合物の対策が中心です。教職員や子供たちが教室内に外から持ち込む香りつき柔軟剤、洗剤、消臭除菌スプレー、制汗剤等から発散される揮発性有機化合物の健康被害については検査されていません。

 しかし、平成24年1月には文科省から、健康的な学習環境を維持管理するためのガイドラインが示され、学校における化学物質による健康被害に関する留意点として、換気に努めることや、芳香剤、消臭剤を可能な限り使用しないようにすることが書かれています。

 そこで、教育長にお伺いをします。

 シックハウス症候群や化学物質過敏症の児童生徒は、より学校生活上で配慮が必要です。本県の学校において化学物質過敏症等により、学校内での香害や工事、ワックスがけなどの際に体調不良を起こしやすい生徒の実態を把握する必要があると考えますが、お答えをよろしくお願いします。

 また、芳香剤や柔軟剤などに使われている香料には多種類の危険な合成化学物質が使われていて、化学物質の影響を受けやすい発達期の子供に注意が必要です。日本では香料や香りの有害性に対する認識が薄く、匂いには個人差があり、なかなか健康被害だと言えない、いいと思って使っている人に話題にするのは気が引けるなど、香害が表面化しにくい事情があります。

 2007年、アメリカ・ミネソタ州では、健康局と教育省が協力してワーキンググループを立ち上げました。その目的は、学校の生徒や教職員に、香りつき製品がぜんそくや化学物質過敏症を引き起こす可能性があることを知らせるためです。また、匂いを吸い込んだ子供は、呼吸器だけでなく、学習能力にも影響を及ぼす可能性があることの認識を広く共有するためであります。

 香害について、来校される方に呼びかけるポスターを学校の玄関に掲示する、また、保護者向けにチラシを配布する必要があると思います。

 そこで、教育長に伺います。

 長野県安曇野市では、教育委員会から「香料についてのお願い」という通知を全小中学校に配布されています。ほかにも、宮城県多賀城市、茨城県つくば市などが保護者向けにお便りを出しています。県教委が率先して教員、保護者などへの周知啓発をしていただきたいと思います。よろしくお願いをします。

○議長(尾崎要二君) 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 学校における化学物質過敏症の実態把握についてお答えをします。

 教職員が児童生徒の健康管理を行うに当たっては、保健調査票等を活用し、既往症を含む児童生徒の健康状態を把握するとともに、丁寧に聞き取りを行った上で適切な対応を行うこととしています。

 化学物質過敏症を有すると考えられる児童生徒についても、発生要因や症状が個人によって異なるため、実態をより詳細に把握することが必要です。そのため、保健調査票への記入内容や面接時の質問項目の工夫により実態を把握し、転入学時の引継ぎや教職員同士の情報共有を徹底するよう、県立学校及び市町村教育委員会に働きかけてまいります。

 次に、学校における周知啓発についてお答えします。

 国が作成した香りの配慮に関するポスターの掲示等により、柔軟剤等の使用に係る周囲への配慮について啓発するよう、令和3年8月に県立学校及び市町村教育委員会に周知を行いました。引き続き、チラシ、ポスター等を活用して教職員や保護者に啓発を行うとともに、県立学校や市町村教育委員会の担当者を対象とした研修会等において、柔軟剤等の香りにより体調不良となる生徒がいることや、該当児童生徒に対しての学びを保障する観点から、適切な配慮が必要であることを啓発してまいります。

○議長(尾崎要二君) 杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕

○杉山俊雄君 答弁ありがとうございます。

 学校でも、まだまだ十分にこの化学物質過敏症は理解をされていないと思います。声を出せない生徒にとって、保健カードに化学物質過敏症の項目を追加する。アレルギーについては項目があるんですが、化学物質過敏症に関する項目がないので、これを保健カードに記入するなどしていただければ実態の把握が進み、教職員間でも共有することができますので、よろしくお願いをしたいと思います。また、ポスターやチラシの活用での啓発もよろしくお願いをいたします。

 次に、続いて、五條市の2000メートル滑走路建設計画の和歌山県への影響について質問を行います。

 五條市の2000メートル滑走路計画について、簡単に経緯を述べておきます。

 五條市は、2007年に陸上自衛隊駐屯地を要望し、2013年に奈良県が陸上自衛隊駐屯地の誘致と防災ヘリポートの建設を立ち上げました。2014年に奈良県が調査費等を予算化し、18年までの5年間に約1億8000万円が使われています。そして突然、2018年に2000メートル滑走路案が出てきました。

 予定地は五條市のプレディアゴルフ場内で、和歌山県境、橋本市恋野から500~600メートルの場所にあります。計画では、早期整備のため、第1期は広域防災拠点として東のゴルフ場5ヘクタールを2年かけて造成、整備をする。第2期は西のゴルフ場46ヘクタールを造成し、600メートル級滑走路を8年かけて建設をする。第3期では73ヘクタールを造成、整備し、2000メートル級滑走路を10年かけて建設する計画です。建設費は約1000億円で、少なくとも20年はかかる計画です。

 2000メートル級滑走路建設は全国的に例がなく、国は、第7次空港整備計画で地方空港整備を抑制して大都市圏の拠点空港の整備を優先する方向に転換しました。民間空港としての奈良五條空港は不可能になっています。

 2000メートル滑走路の目的は、空港ではなく、防災と防衛しか考えられません。2021年1月に奈良県知事は、県広域防災懇談会で、内閣府参事官から紀伊半島をカバーする大規模な広域防災拠点を歓迎するとのお墨つきをもらったと言い、2021年3月議会で、2000メートル級滑走路が必要なのは、南海トラフ巨大地震の発生時に県内外からの大量の人的・物的支援を受け入れ、迅速に被災地を支援するため、大型ヘリ、C-1輸送機の離発着が可能な600メートル級滑走路から、最新の固定翼輸送機や自衛隊輸送機の離発着が可能な2000メートル級滑走路に変更したと説明をしています。

 財源の裏づけとして、100%起債適用で7割交付税措置という緊急防災・減災事業債の適用を計画、総務省への要請で大臣が応援すると言ったと答弁をしています。2021年6月に内閣府の知見を得て奈良県大規模広域防災拠点整備基本計画を策定しています。今年10月30日に建設予定地で式典が行われ、本格的な事業開始に向け、くわ入れが行われました。

 2000メートル滑走路は奈良県単独の事業で、和歌山県への負担はないと言っています。広域防災拠点としての位置づけなので周辺自治体と共同運営するという名目で、2021年11月に3知事名で国へ大規模な広域防災拠点の緊急防災・減災事業債の適用を総務省に申入れをしています。

 事業債を活用して2000メートル滑走路ができたとしても、維持管理に大変な負担がかかります。ちなみに、大規模広域防災拠点としての静岡空港では年間維持費に5億2000万円が必要で、静岡県財政に重い負担をかけています。

 防衛省は、防災目的だけの駐屯地建設はあり得ないとしています。もともと自衛隊誘致を目的とした滑走路計画ですから、管理維持費を捻出するために自衛隊を誘致して、特定防衛施設周辺整備調整交付金を当てにしようとしているとしか考えられません。

 そこで、危機管理監に伺います。

 陸上自衛隊駐屯地が誘致されれば、自衛隊軍用機の飛行訓練に伴う騒音被害が心配です。実際に航空自衛隊岐阜基地では、夜間や朝の訓練はやめてほしい、家の窓がビリビリ音を立てる、子供がおびえて大泣きをするなどの声が寄せられ、体調不良や睡眠障害を訴えるなど、基地周辺の騒音被害は深刻です。

 また、オスプレイの訓練場になり、演習のため頻繁に離発着します。オスプレイは欠陥機で、最近、南紀白浜空港にトラブルで緊急着陸しています。オスプレイは、エンジンとローターを接続するクラッチ内の不具合がよく起こり、墜落も多く、橋本市上空を飛べば騒音や墜落の危険があり、住民に甚大な被害をもたらすことが予想されます。

 広域防災拠点としての滑走路計画は、一概には反対できませんが、県行政には市民・県民の命を守る責任があります。奈良県五條市の2000メートル滑走路計画を推進するのではなく、中止するよう進言すべきではないかと考えます。お答えください。

○議長(尾崎要二君) 危機管理監福田充宏君。

  〔福田充宏君、登壇〕

○危機管理監(福田充宏君) 南海トラフ地震など大規模災害が発生した場合、県民の命を守るため迅速に対応する必要があります。そのため、全国から応援部隊や支援物資を受け入れ、あらゆる資源を総動員して災害対応を行うこととしております。

 本県に隣接する五條市に奈良県大規模広域防災拠点ができれば、捜索・救助などを行う消防、警察、自衛隊などが迅速に参集でき、食料や水、医療物資などの支援物資も早急かつ大量に受け入れられるなど、本県はもとより近畿地方全体にとって大きなメリットがあります。

 そのため、国が定めた南海トラフ地震における具体的な応急対策活動に関する計画における大規模な広域防災拠点として位置づけることや、緊急防災・減災事業債の適用について、紀伊半島知事会議、近畿ブロック知事会議において連携して要望してきたところです。

 議員御指摘の滑走路使用による騒音や安全への対策については、奈良県から、周辺地域で必要な影響調査等を進めていくと聞いておりますが、和歌山県も含めた地域の調査等を行うよう申し入れております。

 今後も、奈良県大規模広域防災拠点の施設整備や平時を含めた運用計画について、本県への影響を注視しながら、引き続き奈良県と協議を行ってまいります。

○議長(尾崎要二君) 杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕

○杉山俊雄君 答弁ありがとうございます。

 ヘリ等の騒音や安全対策は、奈良県が進めているということであります。しかしながら、一番大事なのは、騒音や安全対策について周辺住民や自治体へ十分に説明をして理解を求めることだというふうに思っています。

 埼玉県では陸上自衛隊朝霞駐屯地があり、県と周辺自治体の四つの市等で基地対策協議会を立ち上げ、防衛省や外務省に住宅の防音対策の拡充や安全飛行の徹底等を求める要望活動を行っています。

 防音・安全対策を奈良県任せにするのではなく、県として積極的にこのことに関わっていってもらいたいというふうに思いますので、ぜひ、奈良県や五條市をはじめ橋本、高野町など周辺自治体を含めた協議会を立ち上げていただくことを要望しておきます。

 これで、私の一般質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)

○議長(尾崎要二君) 以上で、杉山俊雄君の質問が終了いたしました。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 30番谷口和樹君。

  〔谷口和樹君、登壇〕(拍手)

○谷口和樹君 皆さん、おはようございます。30番谷口和樹でございます。一般質問、どうぞよろしくお願いいたします。

 今日は4点質問させていただくんですけども、少し横文字も多かったり聞き慣れない言葉もあるかと思います。ぜひ、その辺も広いお心でお聞きいただけたらなと思います。どうぞよろしくお願いします。

 それでは、質問に入ります。

 一つ目、高校生のタブレットについて質問をさせていただきます。

 国の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金で県内の高校生に整備されたタブレットですが、新型コロナウイルス感染症の蔓延の中、緊急に迅速に整備されたものとして、関係部署の取組に心から敬意を表します。

 2022年の報道ですが、NHKが各都道府県に、この春高校に入学する生徒への端末の整備方針を聞いたところ、全額公費で負担して貸与すると答えたのが21府県、一定程度公費で補いつつ保護者にも負担を求めるのが2都県、原則全額保護者に負担を求めるとしたのが18道府県でした。

 保護者に負担を求める自治体は、困窮世帯に支援策を講じるとしていますが、保護者の負担額は5万円前後になるところが多く、中には9万円になる端末が推奨されている高校もあり、公費負担で無償となる自治体との間で大きな差が生じています。

 そういった意味で和歌山県の取組は、オンライン授業にも緊急対応しつつ、あまり学校にノウハウのない状況、生徒にも差がある状況での整備であり、十分なものであったと考えます。

 一方、後々他府県では、タブレットなどではなくスマートフォンによる代替を認める県もあったほか、その後、幾つかの機種から選べるようにする自治体も出てきたとのことです。

 和歌山県においては、既に県内各小中学校では、地域によって機種もばらばらでタブレットが整備されていますので、高校入学に際してマイクロソフト社製のタブレットに統一するとなると、使い慣れた環境でない生徒も出てきます。また、現在、タブレットで利用するサービスのほとんどはクラウド経由ですので、そもそも統一したタブレットを持つ必要がなくなってきています。

 理想的なのは、県内の小・中・高校と全額公費で統一したハイスペックのPCとタブレットをセットで配布することだと私は考えますが、まず、こういう理由から、県立高校でタブレット整備の際に端末の種類を生徒に選択できるようにできないかという提案です。

 さらに、MMD研究所の2022年スマートフォンOSシェア調査で、スマートフォンを所有する18歳から69歳の男女1万人を対象に現在メインで利用しているスマートフォンについて聞いたところ、iPhoneが44.1%、Androidが51.5%で、その他のスマートフォンが4.4%となったということですが、年代別に見てみますと、女性10代の84.1%、女性20代の70.2%、男性10代の70.1%、男性20代の57%がiPhoneを使用しているとのことです。

 ユニバーサルクリップボードなどを同期・連携することで、さらにパソコンの機能を拡張させられることから、今の傾向から見ると、年々PCもMacが増えるであろうと予測されます。

 今後、高校が社会に出る間際に迫る時期と考えるならば、やはり社会の実情に合ったデバイスを使用し、より実情に合った技術を取得するほうが社会に出た際に役立ちますし、戸惑いも少なくなると考えるのは過保護に映るかもしれませんが、より実践的で効率的かと考えます。

 一部では採用されていますが、例えば将来的に、iPadなどに代表されるような占有率の高いハイスペックのタブレット、こういうものも含めて生徒に選択できるようにするといったことは考えられないか、教育長にお聞きをいたします。

○議長(尾崎要二君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。

 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 生徒所有の端末を学校で活用させる都道府県がある中、本県では、新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用して、全ての県立高等学校に統一した端末を整備しました。

 生徒に同じ端末を貸与したことで生徒同士が操作方法等を互いに教え合えるなど、端末の活用に不慣れな生徒も安心して学習できる環境を整えることができています。また、教員は、機器のトラブルやセキュリティーなどに対しても一元的に対応できています。

 一方、生徒がおのおのの端末を選択した場合、使い慣れた端末により学校と家庭での継続的な学習が促進され、端末を日常的に活用できるという面もあります。本県における1人1台端末の更新等、今後の在り方については、国の補助の状況や他県の動向を注視していく必要があります。生徒による端末選択については、次期更新に向けた検討を慎重に進めてまいります。

○議長(尾崎要二君) 谷口和樹君。

  〔谷口和樹君、登壇〕

○谷口和樹君 ありがとうございます。

 全国的な状況を見せていただくと、今になってですけども、やっぱり無償で生徒の手元に端末が届いた、しかも迅速に届いたというのは本当に恵まれた状況やったんだなあと思いますし、迅速にやっていただいた当局は本当にすばらしいなと思っています。

 その上で、やっぱりこういうことも必要になってくるかと思うので、ぜひとも検討を進めていただけたらなと思います。

 それでは、二つ目の質問に入ります。

 和歌山県のふるさと納税におけるNFTの活用について質問をさせていただきます。

 人口減少の著しい新潟県旧山古志村では、インターネット上の仮想空間メタバースに旧山古志村をつくり、デジタル住民票を発行することでデジタル村民の帰省を促したり、メタバースを活用した交流人口の増加への取組が進められています。

 また、特産のニシキゴイの模様を、ニシキゴイのNFTをデジタル住民票にするなどして新しい価値の創造に取り組んでいます。

 このNFTについては一番分かりやすかったので、ソフトバンクニュースの文から引用させていただきます。

 NFTとは非代替性トークンと言われていますが、このトークンとはお金の代わりになる印のようなもののことで、これをデジタル形式で発行したものがデジタルトークン、これが単にトークンという名前で呼ばれることが増えて定着したということです。

 ビットコイン、そしてNFTで取引の多いイーサのような暗号資産も、このNFTも、ブロックチェーンという技術を使ったという点では同じデジタルトークンでありますが、ビットコインがファンジブルトークン、代替性のあるデジタルトークンであるのに対して、NFTは他と取替えが利かないノンファンジブルトークン、非代替性のデジタルトークンであります。

 例えば、ビットコインはお互い1ビットコインをAという方とBという方が取り替えても何の問題はありませんけれども、このNFTは、Aの所有するものとBの所有するものをそれぞれ一点物とすることで代替することができないということから、非代替性のデジタルトークンということです。

 一つは、このようなNFTの特徴を活用すれば唯一無二の価値を持つデジタル資産を流通させることができるということ、さらにもう一つは、プログラムアビリティーで2次、3次の流通、転売するときに、著作権者に流通手数料が入るようにできるなど、価値ある作品をつくると流通のたびに報酬が得られるようなこともできます。著作権者の権利が拡大するということです。

 このような点がNFTの最も画期的な点で、今、様々な企業がNFTを活用した新しいビジネスはできないか、イノベーションを起こせないかと試行錯誤をしています。

 今後は、予測するに、クリエーターファーストの時代が到来するということでもあり、県内でデジタルクリエーターの起業や育成を促進すべきタイミングでもあります。

 ちなみに、先ほどのブロックチェーンとは、暗号資産を扱う基盤技術として開発された取引履歴をまとめた台帳のようなもの、インターネットに接続した複数のコンピューターで、ブロック単位の記録をチェーンのようにつないで記録をします。典型的なパブリックブロックチェーンの場合は、管理者がいなくて不特定多数の人が取引の正当性を検証することとなるため、改ざんが極めて困難だと言われています。

 ちなみに、このNFTの代表的な取引サービスとして知られるオープンシー、2021年1月に約8億円だった月次の取引高は、翌月2月には約100億円に急成長したということで、NFT取引は非常に活気のある市場として注目されています。

 元のNFTの活用に戻りますけれども、今、デジタルのイラスト、NFTアートをふるさと納税の返礼品に採用する自治体というのが増えています。ワールドビジネスサテライトの記事によりますと、岩手県遠野市は、ゲーム・オブ・ザ・ロータスのキャラクターがふるさと納税の返礼品になっており、ふるさと納税サイト、ふるさとチョイスで寄附をした人にNFTアートを提供するようになっています。

 買って終わりではなく、続きがあり、5万円を寄附するとNFTアートであるキャラクターが1体もらえ、さらに、自治体の提携先の施設に設置されているQRコードを読み込むと新たにアイテムがもらえる仕組みとなっていて、返礼品を受け取った後も寄附先の自治体を実際に訪ねたくなる仕組みを設けることで地域振興につなげています。

 また、NFTアートを返礼品にする取組を真っ先に始めた北海道余市町は、人気のキャラクター、クリプトニンジャとコラボしたイラストを3万円の寄附で1枚受け取れます。受付開始から僅か3分ほどで、用意した222枚全てに寄附が集まったということです。

 さらに、この余市町は、ワインの原料となるブドウの産地として知られ、NFTアートの所有者にワインの優先購入権を付与することで、デジタル上のイラストだけではなくて現実でも特典を得られるようにすることで、町そのものに関心を持ってもらうようになっています。

 余市町では、NFTをはじめ様々な取組によって、ふるさと納税による税収というのは12倍に増加したということです。

 またこの近くで言いますと、泉佐野市でもふるさと納税にNFTアートが採用される、近隣でもそういう動きが出ています。

 せんだって白浜町で国内外と地元の有志によるNFTフェスティバルというのが行われました。開催されました。多くの国内外のクリエーターやコレクター、バイヤーが現地を訪れるとともに、メタバース内でも開催され、NFTアートの取引も非常に活発に行われましたが、主催の実行委員長は本県の方でもあり、近年、県内でもNFTアートのクリエーターや取引業者が活躍をしています。

 話は変わりますけれども、和歌山県にもきいちゃん、キノピー、わかぱんなど、様々な御当地キャラクターがございますので、眠ったキャラクターも含めまして、それらをオープンにしてNFTに活用するであったり、県内の観光地とコラボした活用というのも同じように考えられていくのではないかと思います。

 ふるさと納税返礼品へのNFT採用などの取組は、県内のNFTを活用した起業を促進したり、デジタルアーティストや様々なクリエーターの育成につながり、こういう方々は住む場所にこだわらない方も多く見られますので、その結果、本県最大の課題である人口減少や経済縮小対策にもつながります。

 御存じかと思われますが、田辺市龍神村にドラゴンミュージアムという施設が夏にオープンしています。造形大賞と連動して、入選作品をはじめ、すばらしい作品が展示をされていますが、この取組の背景には、数十年前に過疎対策として和歌山県が推し進めた芸術村構想をきっかけに移住をされた方々が大活躍をされています。

 ゼロから、またはあるものから新しいものを生み出すクリエーターというのは、地域のやっぱり財産であり、環境とインセンティブをしっかり整備すれば移住してきてくれるということも成果として出ています。そういった意味でも、NFTの活用を通じてクリエーターの創出や育成というのは非常に大切であります。

 このような理由から、まず、和歌山県もふるさと納税にNFTアートを取り入れられないか、県のNFTの活用について、総務部長にお聞きをいたします。

○議長(尾崎要二君) 総務部長吉村 顕君。

  〔吉村 顕君、登壇〕

○総務部長(吉村 顕君) ふるさと納税は、ふるさとへの感謝や応援したいという気持ちを具体化させるとともに、税の使途を自分の意思で決めることを可能とする制度です。

 また、返礼品を通じて地域の活性化や地場産品の振興を図ることができるという側面もあることから、県ではプレミア和歌山の商品を返礼品とし、寄附をきっかけに、以後継続的な購入につなげていくことも目的としております。

 NFTについては、偽造・改ざんができないデジタルデータであり、従来複製される可能性があったデジタルアートなどに唯一性を持たせることで資産価値や流通性が高まることから、近年市場が拡大しつつあるものと承知しております。

 確かに、NFTは地域活性化や関係人口の増大を目指す上で有益な手段となり得る可能性を有するものでありますが、価格の高騰に伴う高額での取引事例が報道されているように、価格の安定性を欠く投機的な目的を持った取引が起こりやすい面があることも否めません。

 このような現状でNFTアートを返礼品とすることについては、ふるさと納税制度の趣旨から外れるような返礼品の転売を目的とした寄附が発生する可能性を排除し切れず、県としての導入には慎重にならざるを得ないと考えております。

 今後の検討課題の一つとして、他団体の動向を注視してまいります。

○議長(尾崎要二君) 谷口和樹君。

  〔谷口和樹君、登壇〕

○谷口和樹君 ありがとうございます。

 確かに、今のふるさと納税には、仁坂知事がつくられたプレミア和歌山という制度に裏づけられたハイクオリティーな返礼品が用意され、顧客満足度もすばらしく、おかげで大きく和歌山県のブランド力を高めています。

 今新たにNFTのような新しいテクノロジーの進化によって生まれたデジタルの産物を入れなければならない理由はないかもしれません。しかしながら、時代の進化に応じた新しい取組を準備していくことも大切であります。

 先ほどの答弁にありました投機的な取引、返礼品の転売目的とした寄附というのがニュースに出ていますというようなことがあったんですけども、これに関しては、既に転売規制を条件に採用されている市町村があることも考えると、いささか、やはり部長の答弁をそのまま取ると、一部の高額売買のネットニュースに引っ張られているのではないかと思います。

 例えば、ワインなども一部年代物は高額で取引されますけれども、多くのワインは価値に合わせて取引されますし、2次流通もされません。同じように、NFTも大半は価値に合った価格で取引され、価値に合ったものだけが2次流通するという至って当たり前の市場の原理で流通しています。

 ここで再質問ですが、総務部長はDXのリーダーとして御活躍をされていますが、このNFTというテクノロジーの進化で生まれたデジタルの産物の取引、これを否定されるのでしょうか。総務部長にお聞きをいたします。

○議長(尾崎要二君) 総務部長。

  〔吉村 顕君、登壇〕

○総務部長(吉村 顕君) 先ほども申し上げたとおり、NFTは地域活性化や関係人口の増大を目指す上で有益な手段となり得る可能性を有するものであり、NFTによる取引や流通というものを否定するものではございません。

 県としては、ふるさと納税制度について、資産性があるものの希少価値を狙った射幸的な寄附行為を招くようなものと理解されることを避けたいと考えております。

 NFTの全てがそのようなものであると考えてはおりませんが、NFTを付されたアートを返礼品とすることには、広く販売されている物産品の場合と異なり、慎重な検討を要すると考えております。

 そのため、現時点ではプレミア和歌山を返礼品としておりますが、これと同等の認定基準ですとか、一点一点のアートをどのように選定するのかといった点などについても十分な検討が必要であると考えております。

 このようなことから、今後の検討課題の一つとして他団体の動向を注視してまいりたいというふうに御答弁申し上げました。

○議長(尾崎要二君) 谷口和樹君。

  〔谷口和樹君、登壇〕

○谷口和樹君 ありがとうございます。

 ちょっとかぶるところもあるんですけども、やっぱり現物で取引されるものだとちょっとぐらい値段が上がったり下がったりする部分があったとしてもよしと、よく分からないデジタルの世界だと、少しその投機的に取引される部分があるとしたら、デジタルの世界はよく分からないので駄目と、そういうことではなかなか論理的な整合性というのが取れていない答えなんじゃないかなと思っています。

 部長は、DXのエースとして今活躍されているので、これからもしっかり勉強しながら、質問させていただきたいなと思います。ぜひ、NFTのふるさと納税の返礼品について調査をしっかりしていただいて、検討していただけたらなと思います。

 それでは、三つ目の質問に入ります。

 選挙管理委員会のDXということで、ポスター掲示板位置図について質問させていただきます。

 告示の日に大きく重たい地図を持ちながら、広大な選挙区をひたすらポスター掲示板を探しながら、時には目印のない山の中であったりとか、時にはどこ見ても同じ雰囲気の住宅街をひたすら探し歩くという選挙の際のポスター掲示でありますが、昭和から変わらないこのアナログな作業に大きく人の時間と労力が割かれます。

 これでは、経験している現職はまだしも、新人には果てしなく高いハードルで、闊達な選挙を大きく阻害しているのではないかと思います。

 そこで、非常に簡単なDXですが、掲示板の位置をスマートフォンなどで位置確認できるようにできないかという質問です。

 お手元の資料を見ていただくと分かるんですけども、大分県中津市のDXのサイトを見せていただくと、選挙ポスター掲示板が中津市内だけで264か所あり、当然、候補者は紙の地図を手に各地の掲示板を探し、ポスターを掲示していたのですが、これでは効率が悪いということで、中津市では昨年の衆議院議員総選挙のときから、参考資料にありますデジタルマップでの情報提供を始めたということです。

 このデジタルマップでは、ナビ機能を使って掲示板設置の場所までのルート表示ができるほか、地図を複数人で共有して地域ごとに分担するといった使い方もできるようで、山の中や町の中をぐるぐるぐるぐる回って探し回るというのがなくなるということになります。

 ホームページには、「ちょっとした工夫ですが、一度デジタルツールの便利さを体感すると、もうアナログ(紙)には戻れません」とあります。

 また、高知県安芸市でも同様の取組がなされています。

 繰り返しですけれども、現職はもちろんですが、新たに立候補を検討する方々や応援する方々にとっては大きな障壁の一つ、特に若い世代の方々には、まるで山歩きで地図を見る訓練、オリエンテーリングのように感じて、アナログ過ぎて精神的に大きな障壁だろうと思います。

 担当は市町村かもしれませんが、県下全域での選挙となると、各市町村足並みそろえてのDXですので、県のリーダーシップが不可欠であります。

 若い世代からの活発な立候補や選挙事務の軽減のために、選挙掲示板の位置をスマートフォンなどで位置確認できるようにできないか、選挙管理委員会委員長にお聞きをいたします。

○議長(尾崎要二君) 選挙管理委員会委員長小濱孝夫君。

  〔小濱孝夫君、登壇〕

○選挙管理委員会委員長(小濱孝夫君) ポスターを用いた選挙運動は、視覚的に候補者の様子や主張を有権者に知らせることができる従来活用されてきた手段であり、今後も有権者への広報手段として広く用いられる選挙運動の一つであると認識しております。

 公職選挙法や条例に基づき、ポスター掲示場は市町村選挙管理委員会において設置し、その数は、和歌山県内で約5000か所であり、各選挙区でも相当数が見込まれることから、ポスター掲示に係る候補者の労力のほどは承知しているところであります。

 ただ、このポスターの掲示場の設置場所を表示した図面の交付など情報提供につきましては、公職選挙法施行令により市町村選挙管理委員会の努力義務というふうにされているところでございます。

 県選挙管理委員会といたしましては、行政のDX推進の観点から、その労力の負担軽減に資する取組について、議員が御指摘の事例を紹介し、導入の際には県内の各選挙区で差異が生じない取組となりますように、市町村選挙管理委員会に必要な助言等を行ってまいります。

○議長(尾崎要二君) 谷口和樹君。

  〔谷口和樹君、登壇〕

○谷口和樹君 委員長、ぜひよろしくお願いいたします。

 候補者の御苦労と言っていただいたんですが、ほんまに選挙の際は、ほとんどボランティアの皆さんとか手伝ってくださる皆さんに大変やっぱり御苦労をかけるので、今回ちょっとそういうことで質問させていただいたんですけども、候補者というよりは本当にたくさんの人が大変な目に遭っているということで御理解ください。

 それでは、四つ目の質問に入らせていただきます。

 行政のDXについて質問します。

 前々回ですかね、一般質問の中でも申し上げさせてもらったんですが、DXはプロセスのIT化ではないので、和歌山県も進めていく上で、やはり古い固定概念や変化への拒否感、強烈なデジタルアレルギーなんかも当然誘発していくと思うんで、大変な御苦労かと思いますが、これからの和歌山県を船に例えると、古い価値観から抜け出せずにテクノロジーの進化にあらがうと、船を丸ごと沈めてしまいかねないかもしれません。

 県組織のDXは、県内の民間企業も感動するようなDXを期待するとともに、享受する我々の一人一人も初めて手のひらサイズの携帯電話を持ったときのことを思い出して、テクノロジーの進化にあらがわないことが大切かと思います。

 実際、具体的にどのような業務の効率化と県民の利便性を向上させようとしているか、一例を取り上げつつお聞きしたいと思います。

 一つ目、業務の効率化について例を挙げながら質問させていただきます。

 和歌山県も率先してリモートワークの推進を民間企業に求めています。業務の効率化、特に身支度や通勤時間など、実際の労働時間以外の削減という点で、全日のリモートワークというのは大きく労働負担を軽減します。行政のDX、働き方の再構築として、和歌山県にリモートワークが十分導入されるか、総務部長にお聞きします。

 また、その先ですが、化粧品会社、資生堂さんが2016年に、オンライン会議中に表示される顔に自動でメイクや顔色補正を行うアプリで、マイクロソフトのオンライン会議サービスSkype for Business向けの試用モデル、テレビューティーというのを開発したと発表しています。

 業務の効率化や育児・介護などの両立を目的に、働く場所や時間を固定しないリモートワークが広がりつつある一方で、在宅勤務時にオンライン会議のためだけにするメイクというのが負担、自室を見られたくない、肌がきれいに見えにくいなどといった女性の意見を聞き、資生堂がこれまでに培ったメイク技術やメイクシミュレーション技術などを活用して、顔を画面に映すだけで4種類のメイクを施す自動メイク機能などがあるアプリを開発したということです。

 このメイクの負担というのは、今や性別に限ったことではありませんので、このようなアプリの使用の容認も含めて、働くことに関する労働時間以外の時間や負担、ストレスをテクノロジーの力で省くことで、良質なワーク・ライフ・バランスを実現することを県のDXにも求めます。

 同時に、17年後の2040年には、かなりの方が自分のアバターを仮想空間内に持つと言われています。

 当然、今からその完成形を導入するということではないですが、未来予測として見えている未来ならば、現時点のDXにおいてもその未来に対応可能なものにしていくことがテクノロジーの進化に素早く対応できるのではないかと思います。

 業務の効率化や通勤時間の削減という点で、県にリモートワークというものは導入されるか、また、通勤や身支度といった勤務時間外の労力やコストのカット、感染症対策、過度なコミュニケーションによるストレスの削減に向けて、将来的にメタバースを活用したアバター業務は県の視野にあるか、総務部長にお聞きをいたします。

○議長(尾崎要二君) 総務部長。

  〔吉村 顕君、登壇〕

○総務部長(吉村 顕君) 本県では、育児や介護への対応が必要となる職員が勤務し続けることができるよう、令和2年度から在宅勤務制度を導入しております。加えて、今般のコロナ禍において感染拡大防止の観点から、出勤によるリスクの軽減を図るため、積極的に在宅勤務を推奨してきたところであります。

 知事部局、議会事務局及び各種委員会における令和3年4月1日現在の正規職員数3747人のうち、令和3年度にこれらの制度を利用した職員は合計621人であり、利用日数は3460日で、その大部分は全日での利用となっております。

 この間、企業活動等において急速にリモートワークやウェブ会議の導入が進むなど、事業活動におけるDXが推進され、オフィスに縛られない勤務形態や対面以外のコミュニケーションが広く普及するなど、社会における働き方が大きく変わってきました。

 このような社会情勢の変化に対応するため、県庁におきましてもリモートワークの拡充による場所にとらわれない柔軟な働き方に変えていく必要があり、そのために必要な環境整備として、モバイルパソコンやモバイルルーターを導入するとともに、ウェブ会議やファイル共有ができるコミュニケーションアプリの試行導入など、職員が自宅等でも職場にいるのと同じような環境で仕事ができる業務環境の整備に取り組んでおります。

 リモートワークにつきましては、勤怠管理の面ではさらに研究を要するものでありますが、職員のワーク・ライフ・バランスの実現や業務の効率化の観点から、新たな働き方の推進に一層取り組んでまいります。

 なお、メタバース空間で業務を行うことにつきましては、議員御指摘のような身支度に時間を要しない等、男女問わず職員にとって勤務するための準備に費やす時間や負担を軽減することにつながるものと考えておりますが、現状そのような働き方を導入している企業も限定的であり、在宅勤務制度に重ねて新たに導入する場合の費用、技術、セキュリティー等の面で具体的に検討できる段階にはないものと認識しており、地方公共団体や企業での導入事例を注視してまいりたいと考えております。

○議長(尾崎要二君) 谷口和樹君。

  〔谷口和樹君、登壇〕

○谷口和樹君 メタバースでアバターを使っての会議はまだまだ時期尚早ということでしたが、かなりの方がアバターを持つようになって、それを使って生活するようになるまで、2040年というと17年後ということであります。そうそう遠い未来ではないと多くの識者が予測していますので、楽しみにしつつ、またお聞きをしたいなと思います。

 そこで再質問ですが、先ほど前段で述べましたメイクの負担についてです。

 働くことに関する労働時間以外の時間や負担、ストレスをテクノロジーの力により省くことで良質的なワーク・ライフ・バランスを実現することから、働き方のDXということで、オンライン会議の際のメイクのアプリの使用などは取り入れることができるでしょうか。総務部長にお聞きをいたします。

○議長(尾崎要二君) 総務部長。

  〔吉村 顕君、登壇〕

○総務部長(吉村 顕君) 御指摘のメイクアプリでございますが、現状、県の職員間においてもオンラインでの打合せが日常的に行われている状況にはなく、そのような働き方の実現に向けて実証的な取組を行っている段階であります。

 県において、県職員間でオンラインでの打合せが日常的に行われるようになると見込んだその時点において、導入されているアプリや職員のニーズ、コストなどを踏まえて要否を判断していきたいと考えております。

○議長(尾崎要二君) 谷口和樹君。

  〔谷口和樹君、登壇〕

○谷口和樹君 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。

 それでは、二つ目に移ります。

 DXによる県民の利便性の向上ということで、県民の利便性の向上という視点ですが、よく各種申請書類の提出において、市町村から国の出先機関など何か所に足を運ぶケースというのがあります。当たり前ですが、たとえ自治体が違おうと窓口が別々であろうと利用者からすれば同じ行政ですので、一括で申請でき、さらに家から出ずに申請が完結できたらもっと便利かと思います。

 せんだって計画の発表もありましたけども、市町村や国の出先機関をまたぐ各種申請書類がウェブ上で完結できるまで何年ぐらいかかるでしょうか。総務部長にお聞きをいたします。

○議長(尾崎要二君) 総務部長。

  〔吉村 顕君、登壇〕

○総務部長(吉村 顕君) デジタル庁では、行政サービスの目指す姿として、スマートフォンで60秒で手続が完結という目標が掲げられております。

 行政手続に係る添付書類の省略についてもデジタル庁が主体となり、マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループにおいて議論が始まっており、現在、行政機関間で保有する情報のデータ連携の実現に向けて、セキュリティーや個人情報保護など、システム、制度の両面での検討が行われている段階であると認識しております。

 県といたしましては、まず県庁に対する年間100件以上の申請がある手続について、オンラインで対応できるようにするための計画を策定しようとしているところでございますが、例えば、法令上書類の添付が必要なものなどもあり、オンライン化は令和6年度末時点でも5割程度であると見込んでいるところでございます。

 なお、法令上添付書類として提出を求められることが多い登記事項証明書については、国の行政機関間では令和2年10月から登記情報連携の運用が開始されているものの、地方公共団体における登記情報連携の全国的な利用拡大については、今後検討が行われるとされている状況であります。

 現状においては、議員御質問のウェブ上での申請手続が完結できるようになる時期を県として明示できる段階にはなく、引き続き、デジタル庁等の国の動向や新たなデジタル技術の進展等を踏まえながら、行政手続のオンライン化など、県としてできることから取り組んでまいります。

○議長(尾崎要二君) 谷口和樹君。

  〔谷口和樹君、登壇〕

○谷口和樹君 御答弁ありがとうございます。

 本当に、確かにスマートフォンで60秒で手続が完結という目標が達成されるというのは当然望むんですけども、そこだけじゃなくて、やっぱりいろんなところへ行かなあかん、何回も行かなあかんというのがやっぱりあるんですよね。

 やっぱりユーザー目線で考えると、そういう無駄な時間とか作業とかいうのは何であるのかなとやっぱり思うんですよね。ですので、和歌山でこれから総務部長は当然DXのリーダーとして、エースとして頑張っていただくんですけども、いずれ中央にも帰られると思います。ユーザーファーストのDXという行政を実現していただくこともお願いしたいと思います。

 今日は、総務部長に議場でちょっとやり取りさせていただくということで、昨日からちょっとどきどきしていて、本当にやっぱり質問させていただく、お聞きできるというのも、機会をいただけるというのも本当に光栄なことですし、貴重な時間の中でやり取りさせていただいて、本当に感謝を申し上げます。これからもよろしくお願いいたします。

 最後になりましたけども、先般発生しました鳥インフルエンザの殺処分に際して、知事をはじめ当局の皆様、職員の皆様、本当に迅速に対応されまして、その御苦労に謹んで敬意を表したいと思います。

 職員の皆様方は、急にデスクワークから現場へと行くわけですが、文句もなく速やかに一丸となって対処するあたりは、さすが和歌山県だなと思います。

 これまで和歌山県は、鳥インフルエンザや輪紋ウイルス等を経験していますが、仁坂知事を筆頭に感染症対策、特にウイルスに対する危機感の高さというのが、ここ3年の新型コロナウイルス感染症対策で世界に称賛された和歌山方式につながってきたのではないかとも考えています。

 任期16年で、今議会で御勇退されます仁坂知事におきましては、感染症対策をはじめ、残していただいたノウハウや功績に敬意を表しますとともに、仕組みなど引き継ぐべきところだけでなくて、この間もありましたけども、論理的思考に基づく政策立案など、イズムの部分もしっかり引き継いでいきたいなと思います。

 私自身も是々非々でしたが、学ばせていただけたところも多かったので、心から感謝を申し上げます。

 今後、仁坂知事におきましては、今後ますますの御活躍、御健康、御多幸、そして御家族の皆様方の御健康、御多幸を御祈念申し上げまして、今日の私の一般質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

○議長(尾崎要二君) 以上で、谷口和樹君の質問が終了いたしました。

 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。

 この際、暫時休憩いたします。

  午前11時23分休憩

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  午後1時0分再開

○副議長(岩田弘彦君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 2番山家敏宏君。

  〔山家敏宏君、登壇〕(拍手)

○山家敏宏君 こんにちは。

 今回で9回目の登壇をさせていただきます。9回目の登壇をさせていただいたのも、先輩議員、また同僚議員の御配慮によるものであり、この場をお借りして心からお礼申し上げます。

 それでは、議長のお許しをいただきましたので、通告書に従い一般質問をいたします。

 小項目1の国の重要文化財等の活用について質問いたします。

 本県には、建造物として多くの国宝・重要文化財に指定されている観光資源が豊富にあり、活用次第では、さらに観光客誘客につながると考えております。

 和歌山県公式観光サイトのトップページを見ますと、「和歌山のおすすめコンテンツ」として、「世界遺産 高野山」、「世界遺産 熊野・熊野古道」、「ほんまもん体験」、「サイクリング王国」、「水の国、わかやま。」等の案内がございました。重要文化財が見当たらなかったので、和歌山県内の重要文化財、日本遺産について、このページから検索をかけてみたところ、どちらも検索結果ゼロとなり、検索できなかったのが残念でしたが、今年の10月12日に開かれた国の文化審議会において、湯浅町湯浅のしょうゆ蔵元・角長(加納家住宅)の11棟を重要文化財(建造物)に指定するよう文部科学大臣に答申が出されました。湯浅町内では初めての建造物の重要文化財となります。

 角長は、湯浅町の重要伝統的建造物群保存地区の北西部にあり、しょうゆの積出しにも使われたとされる大仙堀に面して敷地を構えたしょうゆ醸造家の住居と醸造施設群、天保12年(1841年)に創業した歴史のある老舗であり、明治期以降に事業を拡大していく中で、創業当初の江戸末期の建物群を核としながら拡張、増築をしてきた過程がよく残り、保存地区内の歴史的建造物で醸造を続ける現役の施設であって、歴史的景観を色濃く残す貴重な文化財、今回指定されますと、県内の重要文化財(建造物)は国宝を含んで85件となり、本当にうれしく思っております。

 また、11月18日に開かれた文化審議会では、広川町の旧浦清兵衛商店が国の登録有形文化財に登録するよう答申が出されました。

 そこで、有田地方に追い風が吹く中、今まで以上に本県にある建造物としての重要文化財等を活用して誘客に取り組むべきだと考えますが、商工観光労働部長の答弁を求めます。

○副議長(岩田弘彦君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。

 商工観光労働部長寺本雅哉君。

  〔寺本雅哉君、登壇〕

○商工観光労働部長(寺本雅哉君) 本県には、84件の建造物が国宝・重要文化財に指定されているなど、歴史的・文化的資産が豊富にあり、このたび文化審議会において、角長の建造物群が重要文化財の指定に向け答申されたことは、非常に喜ばしいことであります。

 県では、このような歴史的・文化的資産を活用し、神話の時代から近代に至るまでの興味深い歴史、文化のストーリーに食、温泉、体験などを組み合わせた旅モデルを「わかやま歴史物語」として取りまとめ、角長についても、「日本料理の“味の原点”醤油の故郷を訪ねて」と題し、重要伝統的建造物群保存地区とともに、情報発信やスタンプラリーなどの周遊促進に取り組んでいます。

 また、歴史ファンに注目されそうな深掘りしたテーマを設定し、歴史や旅行専門雑誌等で情報発信を行うとともに、旅行会社と連携し、実際に本県への誘客につなげるよう、東京や大阪等において、知的好奇心を刺激するようなテーマで歴史・文化講座を開催しています。

 今後も、県内各地にある国宝や重要文化財等について、その背景にある歴史的・文化的価値を発信し、地域の観光資源と組み合わせることにより、来訪者の満足度を向上させ、さらなる誘客促進に努めてまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 山家敏宏君。

  〔山家敏宏君、登壇〕

○山家敏宏君 続いて、小項目2の湯浅・広川町の日本遺産等を活用した観光振興について質問いたします。

 全国では、104件の日本遺産が認定され、本県が含まれる日本遺産は7件になっています。

 その中で、有田郡湯浅町では、「『最初の一滴』醤油醸造の発祥の地 紀州湯浅」、広川町では、「『百世の安堵』~津波と復興の記憶が生きる広川の防災遺産~」と、隣接する町で別々のストーリーが認定されているのは、全国的にも貴重であります。

 また、湯浅町には重要伝統的建造物群保存地区、町なかを通る熊野古道、3か所の温泉等があり、お土産物では、しょうゆはもちろん、金山寺みそ、シラス、ミカン等がございます。広川町には、道あかり、稲むらの火の館、ほたるの湯、西広海岸、男山焼会館もあり、お土産物は稲むらの塩、稲むら味噌、稲むら最中等があり、有田川町では、あらぎ島、次の滝、蔵王橋等があり、お土産物はワサビずし、ブドウサンショウ、コンニャク、あらぎ島の米等がございますが、これだけの観光資源がありながら、やはり高野・熊野の中間地点でありますので、有田地方に立ち寄っていただくためには、さらなる取組が必要であると考えております。

 そこで、有田地方の広域的観光客を増加させるためにも、湯浅町並びに広川町の日本遺産を活用することは有効であると考えますが、商工観光労働部長の答弁を求めます。

○副議長(岩田弘彦君) 商工観光労働部長。

  〔寺本雅哉君、登壇〕

○商工観光労働部長(寺本雅哉君) 日本遺産は、世代を超えて受け継がれている伝承、風習などを踏まえたストーリーの下に、有形・無形の文化財をパッケージ化し、総合的に魅力発信することで地域の活性化を図るものであり、現在、本県で7件が認定されております。

 平成29年に認定された湯浅町の「『最初の一滴』醤油醸造の発祥の地 紀州湯浅」と、平成30年に認定された広川町の「『百世の安堵』~津波と復興の記憶が生きる広川の防災遺産~」は、隣接する町にそれぞれの別のストーリーが認定されている全国的にも珍しい事例で、湯浅駅を起点に二つの日本遺産を巡るまち歩きツアーや教育旅行の誘致など、事務局である両町を中心に、地域と県が連携しながらプロモーションに取り組んでおります。

 また、熊野古道の紀伊路が湯浅町、広川町を通っており、湯浅町の逆川王子や、紀伊路の難所と言われる広川町、日高町の境にある鹿ヶ瀬峠といった史跡もあります。これらのエリアは、JR紀勢本線からのアクセスがよいことから、歴史的・文化的景観に触れ、食、温泉などを楽しみながら気軽に歩くことができます。

 引き続き、日本遺産や重要伝統的建造物群保存地区や熊野古道紀伊路などの歴史、文化に加え、食や温泉、体験プログラムなど、観光素材を組み合わせて地域の魅力を発信し、国内外からの誘客に取り組んでまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 山家敏宏君。

  〔山家敏宏君、登壇〕

○山家敏宏君 日本遺産、重要文化財等の活用はもちろんですが、2024年が高野・熊野の世界遺産登録20周年であり、2025年には大阪・関西万博も開催されます。このチャンスを生かし、引き続き本県全体のさらなる誘客に向けての取組をお願いし、次の質問に移ります。

 続いて、大項目2の水道事業の広域化について質問いたします。

 令和2年2月定例会では、各市町村の水道事業の組織強化について質問し、県では、新水道ビジョン(平成25年3月)に掲げられた持続、安全、強靱の理念に基づき、令和元年6月に策定した和歌山県水道ビジョンの中に、一つの手段として5地域に区分けをした広域化の推進を明記しており、私は、「事業に対してのスケールメリットを生かす広域化可能な事業は、今後も推進すべきだと考えています」と発言させていただいておりました。当然、今も水道広域化を進めるべきだと考えております。

 そこで、和歌山県水道ビジョンでは、水道広域化推進プランを令和4年度末までに策定、公表し、市町村等の水道事業の広域化の取組を推進していきますと明記していますが、令和4年度も残り4か月です。現状の水道広域化推進プランの進捗状況を、環境生活部長の答弁を求めます。

○副議長(岩田弘彦君) 環境生活部長生駒 享君。

  〔生駒 享君、登壇〕

○環境生活部長(生駒 享君) 水道広域化推進プランにつきましては、現在、令和元年に策定した和歌山県水道ビジョンを基本に、県内水道事業の現状と将来についての分析や広域化の効果を盛り込んだ案がおおむねできたところであり、今後、その内容について市町村への説明を行い、今年度末を目途に公表したいと考えております。

○副議長(岩田弘彦君) 山家敏宏君。

  〔山家敏宏君、登壇〕

○山家敏宏君 続いて、プラン公表後の県の取組について質問いたします。

 広域化については、施設の共同化、管理の一体化、経営の一体化、事業統合と4段階があり、市町村の負担軽減のためには、できるだけ高い段階の広域化を進める必要があると考えております。

 現状では、老朽配管の入替え費用、施設整備等が必要になり、値上げを余儀なくしていかなければならない市町村も出てきております。広域化することにより、生活基盤施設耐震化等交付金による水道事業運営基盤強化推進事業の適用を受けることができ、施設整備に関する経費負担を軽減できるため、将来的に値上げ幅も縮小できるメリットもあります。

 先ほどの答弁では、令和4年度末を目途に公表していくということですが、プランは公表後の取組が最も重要であり、30市町村の協力を得るためには、スケールメリットの数字的なものはもちろん必要ですが、県の働きかけが重要であると考えます。広域化を推進するため、プラン公表後、県としてどのように取り組まれるのか、環境生活部長の答弁を求めます。

○副議長(岩田弘彦君) 環境生活部長。

  〔生駒 享君、登壇〕

○環境生活部長(生駒 享君) プラン公表後は、広域化の機運を高めるため、県主導で広域化についての研修会や協議の場を設け、合意が整った圏域から関係市町村等で構成する広域的連携等推進協議会を設置します。

 この協議会での議論を踏まえ、具体的な広域化の事業内容やスケジュールを定めた水道基盤強化計画を関係市町村の同意を得た上で策定し、当該計画に基づき、広域化を進めていきたいと考えております。

○副議長(岩田弘彦君) 山家敏宏君。

  〔山家敏宏君、登壇〕

○山家敏宏君 私は、県が主体性を持って市町村の機運を高めていく県の取組が重要だと考えておりますので、しっかりと取り組んでいただくようお願いして、次の質問に移ります。

 続いて、河川について質問いたします。

 最初に、河川に関する修繕費等の予算について質問です。

 私が県議会議員として約3年7か月活動させていただき、住民の方々から多くの要望をいただくのが河川のしゅんせつ、既設護岸のかさ上げ、河川管理道の草刈り等の要望で非常に多いです。

 以前の一般質問でも申し上げましたが、異常気象という言葉は報道からもよく耳にしますが、気象庁が発表している本来の定義は「過去30年の気候に対して著しい偏りを示した天候」であるとしています。しかし、この異常気象と呼ばれるゲリラ豪雨、超大型台風は、30年に1度等のレベルではなく、近年では1年に何度も起こっているのが現状であると発言させていただきましたが、事前に災害を防ぐためにも、少しでも多くの河川修繕を行うことが重要であります。

 当初予算ベースで申し上げますと、河川修繕費は、令和元年度11億3462万6000円、令和2年度15億6409万5000円、令和3年度15億6446万1000円、令和4年度15億8079万3000円となっており、令和元年度と令和2年度を比べますと4億2946万9000円増加しておりますが、これは緊急浚渫推進事業債の活用によるものであり、緊急浚渫推進事業債を活用できるのも令和5年度、令和6年度と2か年であります。

 また、令和2年度から令和4年度まではほぼ横ばいの予算になっておりますが、実際には、資材高騰、人件費単価増などを考慮いたしますと実質減額になっているのと同じであります。

 そこで、さらなる緊急浚渫推進事業債の活用と河川修繕費の必要予算の確保が必要であると考えますが、県土整備部長の答弁を求めます。

○副議長(岩田弘彦君) 県土整備部長福本仁志君。

  〔福本仁志君、登壇〕

○県土整備部長(福本仁志君) 議員御指摘のとおり、県内の河川における堆積土砂の撤去、既設護岸の修繕、河川管理用通路を含む堤防の除草などにつきましては、地域の皆様などから多くの要望をいただいております。

 県としましては、河川パトロールや住民からの要望、人家等への危険度の観点などを踏まえ、緊急性の高い箇所から順次対応を行っています。

 特に、堆積土砂の撤去については、限られた予算の中で、令和2年度に創設された緊急浚渫推進事業債などを活用し実施しています。

 今後とも、緊急浚渫推進事業債などを有効に活用していくとともに、経費を抑えるための工夫を行いながら必要な予算の確保に努め、河川の適切な維持管理を行ってまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 山家敏宏君。

  〔山家敏宏君、登壇〕

○山家敏宏君 年明けから、また多くの資材が高騰すると聞いておりますので、引き続き必要な予算の確保に努めていただくよう要望し、次の質問に移ります。

 続いて、山田川について質問いたします。

 今回の質問の山田川とは、湯浅町を流れる本流の2級河川のことです。この河川付近には、多くの民家が立ち並んでいます。また、湯浅町洪水・土砂災害ハザードマップでは、30年に1度の計画規模降雨では、近年、多くの新築住宅が建築されてきております国道42号東側で、県営住宅青木団地付近の90度に曲がった法線から洪水浸水想定区域が広がっております。

 この付近の地元住民の方々からは、いつこの曲がっているところを改修してもらえるのかと不安のお声を聞くことがございます。また、西側においては、地震時の遡上津波についても不安の声をお聞きいたします。できる限り早く山田川の河川整備計画を策定する必要があると思いますが、現在の取組状況と今後のスケジュールについて、県土整備部長の答弁を求めます。

○副議長(岩田弘彦君) 県土整備部長。

  〔福本仁志君、登壇〕

○県土整備部長(福本仁志君) 国の予算を活用するような大規模な河川の整備には、流域の長期的な目標を示す河川整備基本方針の策定と、この基本方針に基づき、おおむね20年から30年の期間で整備する具体的な内容を示した河川整備計画の策定が必要になります。

 山田川では、河川整備基本方針の策定に向け、昨年度から河川の環境調査等の基礎調査に取り組んでいるところです。引き続き、必要な調査検討を進め、今後、学識経験者等の御意見も反映して河川整備基本方針の策定を進めてまいります。

 県としましては、山田川の河川整備基本方針と河川整備計画をできるだけ早く策定できるよう取り組んでまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 山家敏宏君。

  〔山家敏宏君、登壇〕

○山家敏宏君 おおむね20年から30年の期間で整備する河川整備計画を策定するということですけども、30年ということは、私、もう79歳になるんですね。また、本県の男性の平均寿命がちょうど79歳なんです。本当に部長、これ、住民の方々が少しでも安心して生活できるように、早く進めていただくよう強く要望し、次の質問に移ります。

 続いて、県立高等学校の施設整備状況について質問します。

 最初に、多目的トイレの設置状況について質問いたします。

 和歌山県福祉のまちづくり条例の前文には、

  私たち一人一人が自立し、生きがいを持ち、住み慣れた地域で安心して生活を営むことができる真に豊かな福祉社会の実現は、私たちすべての願いである。

  このような社会を実現するためには、一人一人が個人として尊重され、社会からのサービスを平等に享受でき、個性と可能性に応じたあらゆる分野での社会参加の機会が平等にもたらされなければならない。

  このためには、障害者や高齢者等の行動や社会参加の機会を阻んでいる様々な障壁を取り除き、すべての人が自らの意思で自由に行動し、主体的に社会参加ができ、共に地域社会で快適に暮らせる福祉のまちづくりを推進していくことが必要である。

  ここに、私たち県民は、福祉のまちづくりを推進するために、共に力を合わせ、不断の努力を傾けることを決意し、この条例を制定する。

とあり、この条例に基づいて、多目的トイレの設置状況は、和歌山県内の公共施設でも多くの施設に設置されており、また、民間の不特定多数の方が利用する施設でも多く設置されている現状がございます。

 学校施設においては、生徒のためにはもちろんのことですが、応急避難施設との意味合いからも、多目的トイレの設置は必須事項であります。現状の県立高等学校の多目的トイレの設置状況について、教育長の答弁を求めます。

○副議長(岩田弘彦君) 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 学校施設は、子供たちが一日の大半を過ごす学習や生活の場であるとともに、災害発生時には地域住民の応急避難施設となることから、様々な人々が利用しやすいよう、バリアフリーの観点で多目的トイレの整備に取り組んできたところです。

 県立高等学校の多目的トイレの設置状況については、令和4年5月1日現在、36校のうち35校に設置されております。

 なお、未設置校1校については、今年度実施しております大規模改修工事に合わせ整備することとしており、全ての県立高等学校で設置が完了する予定です。

○副議長(岩田弘彦君) 山家敏宏君。

  〔山家敏宏君、登壇〕

○山家敏宏君 今年度で全て完了するということなので、安心いたしました。

 続いて、エレベーターの設置状況について質問いたします。

 建築基準法第34条第2項に、「高さ31メートルをこえる建築物には、非常用の昇降機を設けなければならない。」と定められております。31メートルといえば、地上9階建てから10階建てになりますので、建築基準法だけ照らし合わせますと、本県の県立高等学校で該当する建物はございませんが、しかしながら、先ほども述べましたように、学校施設においては、生徒のためはもちろん、応急避難施設との意味合いからも、エレベーターの設置は重要であると考えます。現状の県立高等学校のエレベーターの設置状況について、教育長の答弁を求めます。

○副議長(岩田弘彦君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) これまでも、障害のある生徒が学校内の円滑な移動が確保でき、支障なく安心して学校生活を送ることができるよう、学校施設のバリアフリー化に取り組んできたところです。

 県立高等学校のエレベーターの設置状況については、令和4年5月1日現在、36校のうち3校に設置しております。

 なお、エレベーターの設置については、大規模な工事が必要となることから、校舎等の新設や増改築の機会を捉え、整備に取り組むこととしています。

○副議長(岩田弘彦君) 山家敏宏君。

  〔山家敏宏君、登壇〕

○山家敏宏君 続いて、エレベーターの設置の考え方について質問いたします。

 先ほどの答弁では、県立高等学校36校のうち3校に設置されているということで、設置率は僅か約8%です。

 そこで、エレベーターの設置の考え方、そして、現状での障害のある生徒への対応方法について、教育長の答弁を求めます。

○副議長(岩田弘彦君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 学校は、どの子供にとっても、自立した活動ができる場であることが大切です。

 エレベーターについては、和歌山県福祉のまちづくり条例の趣旨を念頭に、施設の新設及び増改築の機会を捉え、整備してまいりたいと考えております。

 現状においては、教室の移動等に支援が必要な生徒の入学に際し、保護者と必要な支援内容等を確認の上、スロープ、階段昇降機の設置や教室の配置など、学校生活に支障のないよう個別の対応を行っています。

○副議長(岩田弘彦君) 山家敏宏君。

  〔山家敏宏君、登壇〕

○山家敏宏君 新築及び増改築の機会を捉え、エレベーターを設置するなど、適切な対応に努めていただけるということであります。建築基準法では設置義務はございませんが、和歌山県福祉のまちづくり条例第13条では、「公共的施設を所有し、又は管理する者及び公共的施設の新築若しくは新設又は増築、改築、移転、大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする者は、当該公共的施設を整備基準に適合させるようその整備に努めなければならない。」とあります。この整備基準は施行規則第5条別表第2に明記されていますけども、要約いたしますと、新築等で2000平米以上の学校は、公共的施設のうち特定施設に該当するため、エレベーターを設置する義務があるということです。また、既存建物でも、条例第5条にある事業者の責務として積極的に取り組む努力義務が生じます。

 県は、指導的立場にあります。小中学校よりも、高等学校は科目別で階を移動する機会も多いため、エレベーターの必要性も高いと考えておりますので、条例も踏まえた上で、教育環境の一層の充実をよろしくお願いいたします。

 続いて、県外医学部の学生に対する本県の医師確保の取組について質問いたします。

 本県では、地域間や診療科間の医師の偏在があり、依然として課題になっており、特に2次医療圏では、有田、新宮の2地域が医師少数区域となっています。

 そのような状況ではございますが、本県の県立医科大学においては、医師偏在及び医師確保の観点から、募集定員100名のうち、県民医療枠20名、地域医療枠10名を設けており、医師確保に努めていただいていることは承知しております。

 あるときに、本県出身で他県の医科大学に在学中の保護者の方と話をする機会があり、いろいろと他県の医科大学の現状等を教えてくれました。保護者の方が本県の地域間や診療科間の医師偏在の課題を子供に話したときに、子供からは、周りの医学生の多くは、どこの都道府県で臨床研修を行いたいとかいうこだわりが強い人は少ないという話をされておりました。

 その話をお聞きしたときに、それならば、県外医学部の学生に本県の暮らしやすい魅力と本県の臨床研修を積極的にPRすることが医師確保及び偏在解消に有効な方法であると考えました。

 これらのことを踏まえて、県外医学部の学生に対して、Uターン、Iターンを含め本県に来てもらうための取組状況について、福祉保健部長の答弁を求めます。

○副議長(岩田弘彦君) 福祉保健部長志場紀之君。

  〔志場紀之君、登壇〕

○福祉保健部長(志場紀之君) 医学部の学生は、大学を卒業し医師免許を取得後、2年間の臨床研修を受ける必要があります。

 臨床研修先は、学生自らが全国各地の指定された病院の中から自由に選択して応募し、医師として採用されることになります。

 県といたしましては、この臨床研修医を県内で数多く確保し、将来の地域医療の担い手となるよう育成することが重要と認識しております。

 このため、本県では、再三にわたり国に働きかけ、臨床研修医の募集枠の確保に努めるとともに、和歌山県立医科大学をはじめとする県内九つの臨床研修指定病院、医師会、病院協会と県で構成する和歌山県臨床研修連絡協議会において、関係者が一体となって、全国から臨床研修医の確保に取り組んでいるところです。

 具体的には、臨床研修医一人一人のニーズに合わせ、選択可能な魅力ある研修プログラムづくりに取り組むとともに、全国の医学部5・6年生を中心に、オンラインも含めた合同説明会の開催、専用ウェブサイトやパンフレットによる情報発信など、本県での研修環境や県内各研修病院のPRを実施しております。

 こうした取組により、令和4年度には、県内の臨床研修医100名のうち約半数は県外大学からの採用となっているところです。

 今後とも、臨床研修医の募集枠の確保とともに、関係機関と連携しながら、研修環境の充実や積極的な情報発信などの取組を継続し、臨床研修医の確保に尽力してまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 山家敏宏君。

  〔山家敏宏君、登壇〕

○山家敏宏君 福祉保健部長は御存じだと思いますけども、ちょうど2か月前の10月8日に、湯浅町に診療所が開設いたしました。

 この医師は70歳を超えております。和歌山県立医科大学を卒業し、他県の病院で勤務医をしておりましたが、湯浅町出身ということもあり、有田地域の子供や高齢者の方々が休日や夜間に急に体調が悪くなると、よく和歌山市まで診療を受けに行くということを聞いており、何とか自分が地域のお役に立てないかと以前から考えてくれておりました。

 診療時間は、昼間は火曜日9時半から11時半、木曜日14時半から17時、日曜日は朝の7時から19時、夜間は休みなしの19時から朝の7時まで診療が可能です。

 通常、診療所の名称は名字を使った名前が多いのですが、この診療所は、あえて名字を使用しておりません。医師にお話をお聞きしますと、「私も高齢ですので、名字をあえて使わず、次の医師が引き継ぎやすいようにしている」というお話を聞きました。

 この診療所の開設をきっかけに、私自身も、本県の医師少数地域に診療所を開設していただけるような取組をしていかなければならないと考えております。引き続き、本県の医師確保の取組をよろしくお願いいたします。

 そして、仁坂知事、知事には初めて5年前にちょっと御要望をさせていただいたときのことを覚えているんですけども、私が町議会議員の立場で湯浅町の上山町長と一緒に知事室にお伺いさせていただいて、有田湯浅線の狭いところですね、トラックが来たら、もう車がバックせなあかんという現状を訴えさせていただいたときに、仁坂知事はよく知っていただいておりまして、その場で決断して広げましょうということでやっていただいたのを覚えております。その現場も、もう少しで完成するところまで来ていて、地元の方も大変喜んでおります。この場をお借りして、心からお礼申し上げます。

 また、本県のトップリーダーとして16年間、和歌山県のために御尽力いただきまして、心からお礼申し上げ、私の一般質問を終了いたします。(拍手)

○副議長(岩田弘彦君) 以上で、山家敏宏君の質問が終了いたしました。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 1番鈴木德久君。

  〔鈴木德久君、登壇〕(拍手)

○鈴木德久君 皆さん、こんにちは。

 議長のお許しをいただきました。少しボリュームがありますので、早速、質問のほうに入らせていただきます。

 農林水産委員会では、8月30、31日に県内調査を、10月3日から6日まで山梨、神奈川、東京において県外調査を行いました。その概要を報告させていただいた後、幾つかの質問をさせていただきます。

 まず、県内調査についてですが、1日目の最初に湯浅のワイナリーを訪問し、県内初のワイナリーということで、大変興味深くお話を伺いました。

 次に、みなべのJA紀州を訪問し、HACCPに沿った衛生管理の取組状況について調査させていただきました。

 HACCPとは、皆さん既に御承知のことと思いますが、食品事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去または低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法とされています。

 また、この手法は、国連の食糧農業機関と世界保健機関の合同機関であるコーデックス委員会が策定し、各国にその採用を推奨している国際的に認められたものであります。

 次に、新宮市の熊野なまずの養殖場を訪ねました。

 熊野なまずは、地下水で育てられ、臭みが少なく、低カロリーでたんぱく質が多く、脂質が少ないということでヘルシー、女性や子供や高齢者、アスリート向けにぴったりの食材とのことです。令和2年2月には和歌山県優良県産品に認定されており、試食させていただきましたが、今までのイメージとは違い大変おいしく、今後の食材としての可能性を感じました。

 2日目は、株式会社食縁です。食べるえにしと書きますけども、そこでは近大種苗などを使用し、国内の養殖業者によって養殖されたブリヒラを自社工場でフィレ加工、冷凍して国内外に販売する事業を展開しています。

 会社としては、多くの企業が経営支援やノウハウを持ち寄り、「水平連携+垂直統合+ジェネリックマーケティング」というものを実現しながら、また、近畿大学各研究機関が種苗、飼料、鮮度保持フィルムを共同開発、海外マーケット開拓で協力しながら、持続的な成長を目指すとされています。

 また、近大種苗や近大技術の養殖魚を産地加工販売する出口の機能としての会社であり、日本の養殖魚を新市場に展開するため、加工とマーケティングを行う会社ということであります。

 その商品は、根拠のあるおいしさ、美しさ、安全性をうたっており、それぞれの確立されたメカニズムにより、最高の状態で提供されています。

 次は、近畿大学浦神実験場です。浦神実験場は、紀南地方でも真珠養殖から魚類養殖への転換の機運が高まり、地元の強い要望のあった1960年に開設されました。開設以来、約60年にわたり、種苗生産、初期発育、栄養要求などに関する研究に重点を置いて精力的に取り組み、紀南地方の魚類養殖の発展に大きく貢献してきました。中でも、かつては生餌でしか飼育できなかったクロマグロ稚魚期の配合飼料の開発は、浦神実験場の代表的な業績の一つです。

 現在、注目される取組は、2019年度から始まったウナギの完全養殖の実用化を目指すものです。ウナギの完全養殖は、水産研究・教育機構において2010年に達成されましたが、実用的なコストでの大量生産が困難なため、実用化には至っていません。特に仔魚期の餌や飼育技術の改善が完全養殖実用化に向けての大きな課題となっていますが、数多くの魚種の完全養殖化を成し遂げた近畿大学水産研究所の技術とノウハウ、浦神実験場の餌の開発力、さらに、若い学生の斬新な発想の融合によって、新たなブレークスルーが生み出されることが期待されています。

 以上が県内調査の報告となるわけですが、関係する幾つかの質問に入らせていただきます。

 まず、今回の調査の中で、HACCPによる衛生管理が食品事業者の方々にとって、食品の衛生管理や安全性管理はもとより、食品の輸出や大手企業との取引においても大変重要であることが分かりました。

 一方で、食品事業者の方々は、国際的に求められている衛生水準であるコーデックスのHACCPに取り組んでいることを証明するために、ISOなどの民間認証の取得にお金や時間を費やしているという話もありました。

 そこで、本県のこうした県内食品事業者への支援について、環境生活部長にお伺いします。

○副議長(岩田弘彦君) ただいまの質問に対する答弁を求めます。

 環境生活部長生駒 享君。

  〔生駒 享君、登壇〕

○環境生活部長(生駒 享君) 県では、輸出や国内販路の拡大を目指し、コーデックスのHACCPに取り組みたいと考えている食品事業者を対象にしたセミナーを毎年開催しております。

 このセミナーでは、座学に加えて、個別の支援として、受講者の事業所をセミナー講師などの有識者と県職員が訪問し、コーデックスのHACCPに取り組むためのアドバイスを行っています。

 また、議員御指摘のとおり、食品事業者がコーデックスのHACCPを要件とした民間認証を取得する費用が高額であることから、県では、和歌山県HACCPシステム認証制度を創設し、コーデックスのHACCPに取り組む食品事業者の負担軽減に努めているところです。

 引き続き、セミナーの開催や認証制度の普及により、県内の食品事業者を支援してまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 鈴木德久君。

  〔鈴木德久君、登壇〕

○鈴木德久君 今後も、県内事業者の競争力アップのためにも、よろしくお願いいたします。

 次に、熊野なまずの販路拡大についてお伺いします。

 パンフレットにも、近くて遠い食材だったナマズを近くておいしい食材として提供できるようになりましたとありますが、子供の頃、川で遊んだ者としては、非常に納得のしやすい表現だなと思いました。

 我々の川釣りのターゲットとしては、ナマズは高級な獲物であり、きれいな川で取れたナマズは、そんなに臭みもなく、ウナギと遜色のない食材として普通に食べていました。そして何より、ほかの魚に比べて、ウナギやナマズの生命力みたいなものを感じており、何か元気をもらえる食材というイメージがありました。

 今まで流通していなかったものへの挑戦とか、大きく言えば新たな食料確保の観点からも非常に期待するところで、プレミア和歌山にも認定されていますが、新たな販路開拓はなかなか大変だと思います。

 販路確保についての県のバックアップ体制について、農林水産部長にお伺いします。

○副議長(岩田弘彦君) 農林水産部長山本佳之君。

  〔山本佳之君、登壇〕

○農林水産部長(山本佳之君) 熊野なまずについては、新宮市の第三セクターである新宮港埠頭株式会社が平成30年から地域の特産品開発を目指し、地下水を使い、卵から成魚まで育てた完全養殖のナマズです。

 熊野なまずの販路拡大については、県としてこれまで、「和歌山県新宮市産熊野なまずフェアin銀座」の開催や各種商談会への出展、水産流通アドバイザーの活用などに取り組んできたところであり、今後とも、販路開拓の支援に取り組んでまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 鈴木德久君。

  〔鈴木德久君、登壇〕

○鈴木德久君 御答弁いただきました。今後は、学校給食等への導入についても取り組んでいただきますよう要望したいと思っております。

 続きまして、10月3日から6日に行った県外調査について報告します。

 最初は、山梨県甲州市勝沼町の大善寺において、令和4年7月に世界農業遺産認定を受けた「峡東地域の扇状地に適応した果樹農業システム」について調査を行いました。

 大善寺は、世界農業遺産の指定地域にあり、奈良時代、僧・行基により開山された歴史あるお寺です。山梨県内最古の木造建築物とされ、薬師堂は国宝、平安・鎌倉時代の重要文化財指定された仏像もたくさんあります。地元では、甲州ブドウ発祥のお寺とされており、通称「ぶどう寺」と呼ばれています。

 その後、シャトー・メルシャン勝沼ワイナリーを訪問しました。このワイナリーは、明治10年設立の日本初の民間ワイン会社、大日本山梨葡萄酒会社をルーツに持つワイナリーです。ブドウ園やワイン工場があり、特に日本のワインの歴史が体感できるワイン資料室が有名で、このワイナリーにおいてワイン醸造についての調査を行いました。

 2日目の最初は、藤沢市のインテグリカルチャー株式会社です。平成27年に設立された汎用大規模細胞培養システムを用いた有用成分、化粧品、食品、細胞培養肉の研究開発を事業内容とする会社で、多くの大手企業から出資を受けており、今回は培養肉について調査を行いました。

 次に、株式会社農業総合研究所東京営業所において、関東地域の農産物の流通についてお話をお伺いしました。

 株式会社農業総合研究所は、平成19年に設立された和歌山市に本社を置く会社で、事業内容は、生産者と提携し、顔が見える新鮮な農産物、都市部のスーパーマーケットでダイレクトに販売できるプラットフォーム「農家の直売所」事業や、農産物を登録生産者等から買い取り、スーパー等へ販売を行う「産直卸事業」が特徴です。

 3日目は、ソフトバンク竹芝本社と内閣府地方創生推進事務局を訪問しました。

 ソフトバンクは、皆さん御承知のとおり、移動通信サービスの提供やインターネット接続サービスの提供で有名ですが、今回は、地方自治体や地域とのつながりを深め、ICTを活用して地域社会の問題解決を支援する地方創生に取り組んでいる事業、特にスマート農業等についての調査を行いました。

 また、内閣府では、デジタルを活用して本県の農林水産業の課題解決や魅力向上の実現を図るため、デジタル田園都市国家構想推進交付金の概要及び農林水産業における具体的な事例並びに地方版総合戦略で作成した地域再生計画に基づく事業の実施に要する経費に充てるための地方創生拠点整備交付金、地方創生推進交付金についての概要説明を受けました。

 4日目は、農林水産省において、令和5年度農林水産予算概算要求の中で、和歌山県関係箇所の説明を受け意見交換を行い、その後、野村農林水産大臣に面会し、9月定例会で採択された意見書「漁業生産の維持・増大に向けた海洋環境変動への対策を求める意見書」を直接お渡しし、率直な意見交換をさせていただきました。

 そのほかにも、観音山フルーツパーラー銀座店や和歌山県アンテナショップわかやま紀州館、ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町における紀尾井町ゆかりの地、紀州和歌山県の魅力やSDGsに触れる旅「Back to the Roots-紀州・和歌山-」も訪問させていただいたところです。

 それでは、県外研修に関して幾つかの質問をさせていただきます。

 まず、農産物流通の多様化についてであります。農業総合研究所や産直市場よってってなどの農産物サプライチェーンをはじめ、インターネット販売など販売チャンネルが多様化していると思いますが、県としてはどのようにこの状況を把握し、今後、どう生産者を支援していくべきか、農林水産部長の考えをお伺いいたします。

○副議長(岩田弘彦君) 農林水産部長。

  〔山本佳之君、登壇〕

○農林水産部長(山本佳之君) 本県の特産である果樹については、出荷のピークが集中することから、安定的に効率よく販売できる手段として、従来卸売市場を経由した流通が主流であり、また、議員お話しの大都市圏小売店への産直卸や産地直売所等を活用した流通・販売も増加傾向にあります。

 さらに、新型コロナウイルス感染拡大に伴い販売額が急拡大しているインターネット販売など、生産者の販路は多様化している状況にあります。

 県では、新たな取組として、デジタル社会に対応した販売促進を支援するため、生産者を対象としたセミナーの開催やeコマース導入に向けた補助制度の導入、食の総合ポータルサイト「おいしく食べて和歌山モール」の開設といった取組を進めるとともに、商談会や見本市など、生産者とバイヤーが直接マッチングできる機会の提供などにより、総合的に支援しているところです。

 今後も、こういった取組を通じて、多様化する販売チャンネルに生産者が的確に対応できるよう、引き続き支援してまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 鈴木德久君。

  〔鈴木德久君、登壇〕

○鈴木德久君 最近では、水産業界においても新たなサプライチェーンが生まれてきているように思います。

 最近、日テレ系で水曜日の午後10時から、「ファーストペンギン!」という新しいドラマが放送されています。といいましても、ゆうべで何か最終回だったみたいですけども、原稿を作ったときは新しかったんです。シングルマザーの素人の方があるきっかけで漁業の世界に飛び込むところから始まり、新しい発想で古いしきたりなどの多い漁業の世界を大改革していくという物語です。

 このドラマは、実話を基にした物語で、そのモデルは山口県萩市・萩大島の坪内千佳さんです。先日、12、13日とすさみ町で行われた「2045スサミカンファレンス」、23年後のすさみを全員で考える2日間というイベントに参加させていただきました。日本を地域から元気にするにはといったテーマを参加者全員で議論する大変斬新なイベントでした。その基調講演を行ったのは、坪内千佳さんでした。

 坪内さんは、1986年福井県生まれで、萩市に移住後、ひょんなことから漁師たちから頼まれ、2010年12月に約60人の漁師たちを束ねて萩大島船団丸を設立し、代表に就任します。疲弊していた漁村を幾多の困難を乗り越え立て直していくサクセスストーリーですが、取ってくるだけが漁師の仕事だったのを、船上で血抜きをして顧客ごとの箱詰めを行い徹底的に鮮度にこだわる点や、契約先の料理店でどのように魚が提供されているかを漁師自らが経験するところなど、なるほどと思わせる点が幾つもありました。

 水産業における新たなサプライチェーンの在り方だと思いますが、最近の水産物の流通について、県の考えを農林水産部長にお伺いします。

○副議長(岩田弘彦君) 農林水産部長。

  〔山本佳之君、登壇〕

○農林水産部長(山本佳之君) 産地市場に水揚げされた魚などの漁獲物は、従来消費地の卸売市場を経由した流通が主流です。

 しかしながら、近年では、産地直売所やインターネットを活用した新たな販売方法が取り入れられ、本県でも、消費者に直接販売する漁業者も少しずつ増えている状況です。

 県では、今後とも漁業者の所得向上に向け、eコマース導入支援などを通じ、引き続き県産水産物の販路拡大に取り組んでまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 鈴木德久君。

  〔鈴木德久君、登壇〕

○鈴木德久君 漁業者の方が将来的にその仕事を続けていけるように、今後ともよろしくお願いしたいと思います。

 次に、農林水産大臣宛ての意見書の中の磯焼けの関連で、最近、温暖化防止に関する用語の中に、カーボンオフセットやカーボンクレジット、ブルーカーボンといった言葉があります。

 皆さん既に御承知のことと思いますが、カーボンオフセットとは、市民、企業、NPO、自治体、政府等の社会の構成員が自らの温室効果ガスの排出を認識し、主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、ほかの場所で実現した温室効果ガスの排出削減・吸収量等を購入すること、または、他の場所で排出削減・吸収を実現する活動を実施することにより、その排出量の全部または一部を埋め合わせるという考え方です。

 また、カーボンクレジットとは、削減・吸収された温室効果ガスの効果を数値化したもので、ブルーカーボンとは、海域で吸収・貯蓄されている炭素のことです。これに対して、森林などで吸収・貯蓄されている炭素のことをグリーンカーボンといいます。

 海藻類は、食料資源としての利用など水産上重要であるとともに、近年、光合成能力におけるCO2吸収効果と炭素固定・貯蔵効果によるカーボンオフセットへの活用が注目されており、藻場や海藻養殖場はブルーカーボン生態系として重要な役割を果たすと期待され、拡大を期待する声が高まっています。

 国においても、令和4年3月25日に閣議決定された新たな水産基本計画で、カーボンニュートラルの観点から、二酸化炭素の吸収源としても重要である藻場の保全・創造の必要性が述べられています。

 このように、漁業生産上重要な役割だけでなく、環境保全の面からも期待される海藻でありますが、本県沿岸では磯焼け現象などにより藻場が衰退しています。今後、県としてどのように取り組んでいくのか、農林水産部長にお伺いします。

○副議長(岩田弘彦君) 農林水産部長。

  〔山本佳之君、登壇〕

○農林水産部長(山本佳之君) 海藻類は、漁業の対象としてだけでなく、稚魚の生育やアワビ類等の餌としても重要です。

 県では、磯焼け対策として、藻類移植や食害生物駆除など、藻場を回復するための取組を行う市町に対し支援を行っています。

 今後も、水産試験場の研究成果や技術を活用しながら、海洋環境の変動に応じた藻場造成等の取組を推進するとともに、国の動向も注視し、沿岸漁業の再生に取り組んでまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 鈴木德久君。

  〔鈴木德久君、登壇〕

○鈴木德久君 引き続き、よろしくお願いいたしたいと思います。

 次に、首都圏における観光戦略についてお伺いします。

 4日目に訪れたザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町では、「Back to the Roots-紀州・和歌山-」という和歌山の魅力を発信するフェアが開催されていました。

 東京紀尾井町の名前の由来は、江戸時代に、紀州藩、尾張藩、井伊家のお屋敷があったところから来ているとのことですが、今回のフェアでは、歴史のルーツとして縁のある紀州和歌山県の食、SDGs、アート、ステイなど、多様な魅力を体験できるコンテンツを用意、特に、和歌山県の豊かな食材や特産品を味わえるメニューはもとより、近畿大学水産研究所のSDGsへの活動に賛同したサステーナブルなメニューも提供するとのことでした。

 また、国内で最多の7頭のパンダファミリーが暮らすテーマパーク、アドベンチャーワールドのパンダたちの特別映像をパンダグッズとともに楽しめるステイプランも用意しているとのことで、端的で非常に分かりやすく、センスよく和歌山をPRしていると感じました。

 東京近辺では、まだまだ和歌山の知名度が低いと言われたり、最近、白浜空港の利用者が過去最高を記録し続けているのは、パンダが7頭もいることを民間会社が一生懸命アピールしたからだといった声も聞こえてきます。先ほどのホテルのイベントも和歌山県の協力とのことで、県の取組のごく一部だと思いますが、首都圏における観光戦略について、商工観光労働部長にお伺いします。

○副議長(岩田弘彦君) 商工観光労働部長寺本雅哉君。

  〔寺本雅哉君、登壇〕

○商工観光労働部長(寺本雅哉君) 人や情報が集中する首都圏をターゲットとした観光戦略は大変重要なものであり、県では、毎年、観光振興アクションプログラムを策定し、その重点項目の一つとして首都圏戦略を定め、メディアや旅行会社へのプロモーションや南紀白浜空港を活用した誘客などに取り組んでいます。

 具体的には、わかやま紀州館をはじめ県内自治体や事業者等との連携の下、首都圏テレビ局との紀行番組の作成や、雑誌メディアと連携したセミナーイベントの開催、首都圏版の新聞広告を活用した誘客PR告知など、誘客に効果的なテレビや雑誌、新聞、ウェブメディア等を活用した情報発信を行っています。

 また、首都圏のメディアや旅行会社等約200名を招待し、プレゼンテーションや商談会を行う「“和みわかやま”東京レセプション」を開催し、パンダやアウトドアなど、首都圏でニーズの高い話題性のあるテーマを生かした観光プロモーションを実施しています。

 さらに、首都圏からのワーケーション利用を促進するため、企業のワーケーションを活用した研修やCSR活動を誘致できるよう、企業に対する営業活動に取り組んでいます。

 加えて、首都圏からの紀南の玄関口となる南紀白浜空港を活用した観光誘客にも積極的に取り組んでおり、特に、来年2月に4往復8便化の実証運航も予定される中で、継続的な利用促進を図るため、旅行会社への商品造成の働きかけやファムツアーの実施など、さらなる観光誘客に向けて取り組んでいるところです。

 今後も、わかやま紀州館を中心に、積極的な首都圏プロモーションに努めてまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 鈴木德久君。

  〔鈴木德久君、登壇〕

○鈴木德久君 次に、首都圏でも注目度の高い熊野古道について少しお伺いします。

 最近では、入国規制も緩和され、熊野古道を歩く外国の方々も増加傾向にあります。また、修学旅行などで熊野古道を歩かれ、道普請を体験される学生もいるとのことです。

 10月及び11月には、東京都内の高校生がそれぞれ約300人、修学旅行で熊野を訪れ、語り部の案内で古道を歩かれたと伺っております。コロナ禍で疲弊した地元観光関係者も、この傾向は今後ますます増加するのではないかと期待しているところです。

 ただ、残念なことに、2011年の紀伊半島大水害で被害を受け、11年たっても、いまだに中辺路ルートの一部、仲人茶屋から湯川王子の間、岩神王子周辺約3.5キロは通行止めとなっており、迂回路を通らなくてはならない状況です。その迂回路も急峻なルートのため、訪れた方々や案内する語り部にとっても評判が芳しくありません。

 地元関係者にお伺いしますと、観光客の少ないコロナ禍の間に復旧されればと期待していたようですが、今現在も通行止めは解消されていません。

 2年後の2024年、世界遺産登録20周年を迎えるに当たって、県としても様々な対応を計画されていることと思いますが、このような状況は許されないのではないかと危惧する次第です。災害復旧の事業主体である田辺市と緊密な連携の下、一刻も早い復旧を図っていただきたいと思います。

 地滑りの状況を計測するセンサーも、2年ほど前に田辺市において撤去されたとのことですが、被害の規模及び今後の復旧見込みについて、教育長にお伺いいたします。

○副議長(岩田弘彦君) 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 議員御指摘のとおり、熊野参詣道中辺路の小広峠から湯川王子までの区間は、2011年の紀伊半島大水害で岩神王子近くの地面に亀裂が入り、地滑りの兆候が確認されたことから、現在は通行止めとなっており、迂回路が設定されています。

 田辺市によると、昨年10月の調査で安全性が確認された後、被害状況を調査し、40か所以上で路面や路肩の欠損、倒木等を確認しているとのことで、今年1月には、県の世界遺産緊急保全対策事業補助金を活用して岩神王子付近の階段補修を実施しており、今後は、通行止め区間の両側から点検、修復を進める計画とのことです。

 被害が広範囲に及ぶため、完全復旧には時間を要することが想定されますが、県といたしましても、田辺市に対して補助金による支援や、整備保全手法や国庫補助金事業の活用に係る助言を行うなど、今後増加が見込まれる熊野参詣道を訪れる皆さんが安全で安心して歩けるよう、田辺市と連携して復旧に取り組んでまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 鈴木德久君。

  〔鈴木德久君、登壇〕

○鈴木德久君 最後の質問になりますが、小栗街道の世界遺産追加登録についてお伺いします。

 小栗街道は、近畿で最も長い南北道で、大阪天満八軒家を起点として、熊野本宮までのおよそ300キロの道のりです。

 最近、関係者により、印南町から熊野本宮までの間を踏査した絵地図が作成されました。特に、田辺市大塔地内では、古道としてすばらしい道も残されているところもあるようですが、現在では道が消滅して歩くのが困難なところもあり、大変苦労を重ねての調査だったとのことです。

 絵地図には、周辺の状況や伝承等のほかに、距離や写真での説明等々、非常に多岐にわたって詳細に掲載されています。販売している書店もあるようですので、ぜひ県民の皆様にも御覧いただきたいと思っています。

 さて、小栗街道にまつわる話ですが、熊野本宮大社近くにある湯の峰温泉は、熊野詣の湯垢離場として、また、庶民の湯治場として古くから親しまれ、小栗判官蘇生の地としてもよく知られています。温泉街には、小栗判官が湯治したと言われる世界遺産に登録されたつぼ湯や回復を試した力石、髪を束ねた稲わらを捨てたところ実ったとされるまかずの稲、照手姫が小栗判官を乗せてきた土車を埋めたと言われる車塚など、市指定の史跡があります。

 熊野の小栗物語は、常陸の国に伝わる小栗一族の歴史と一遍上人以後の藤沢を中心とした小栗伝承を併せ持っているようで、一遍上人が熊野に籠り、権現の夢のお告げを得て全国を遊行し、熊野信仰を民衆に根づかせた宗教活動とともに広がったと考えられています。

 小栗判官と呼ばれる小栗助重は、約600年前の足利時代に実在した人物です。「鎌倉大草紙」によると、常陸の国に城を構えていた小栗氏は、鎌倉公方足利持氏と戦って敗れ、城主の子助重は、落ち延びる途中、相模の国で盗賊に毒入りの酒を盛られるが、遊女照手の機転により藤沢に逃れ、遊行上人に救われます。しかし、毒の入った酒による病が重くなった小栗は、遊行上人、照手をはじめ多くの人々に助けられて熊野に詣で、熊野権現の加護と湯の峰温泉の薬湯の効により全快、小栗城15代城主となりました。この物語が説教節や浄瑠璃として話が膨らんで、多くのバリエーションが生まれていったと思われます。

 泉州から熊野にかけては伝承も多く残されており、泉州では熊野古道を小栗街道と呼び、その道も幾筋かあるとされています。これは、小栗一人だけではなく、長い年月にわたって重い病を抱えた何千、何万の小栗が苦行に耐えながら熊野を目指し、そういう人たちが歩んだ道がやがて小栗街道と呼ばれるようになったと考えられます。

 貴賤、男女の隔てなく、信・不信、浄・不浄を嫌わず。熊野はまさにそういうところであり、かつてハンセン病が誤解によって恐れられていた時代にも、湯の峰温泉の一角には、そういう人たちのための宿泊施設もあったとされています。それは、熊野の人々の温かい人情と極楽浄土を信じる心があったからだとされ、説教節では、熊野に向かう小栗の車を次々に「えいさらえい」と引いたとありますが、小栗の話はまさにそういう人々の心を伝えたかったのではないかと思われます。世界的な広がりを見せているSDGsの基本である誰一人取り残さない精神を何百年も前から実践してきたとも言えます。

 このように多くの伝承がある小栗街道について、世界遺産への追加登録候補になり得る資産と考えますが、今後の取組について教育長にお伺いします。

○副議長(岩田弘彦君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 世界遺産登録資産の一つである熊野参詣道では、行幸に使用されたルートのほか、多数の派生ルートがあり、議員御指摘の小栗街道は、男女の別や信仰の有無などを問わず参詣者を受け入れてきた熊野参詣の精神を示す道の一つと考えられます。

 世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」は、平成16年に世界遺産登録された後、平成28年に追加登録が行われましたが、高野参詣道や熊野参詣道には、小栗街道のように史跡指定等の保存措置が講じられていない区間があり、これらの区間についても、できるだけ早い時期に適切な保存措置を講ずることが必要であると考えています。

 県では、紀伊路などで世界遺産追加登録の前提となる国史跡指定や、さらなる機運醸成に向けた取組を関係市町と共に進めているところですが、小栗街道についても、田辺市など地元自治体の意向を踏まえつつ、国史跡指定に向けた調査への協力など、必要な支援を行ってまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 鈴木德久君。

  〔鈴木德久君、登壇〕

○鈴木德久君 今回の県内県外調査を通して、和歌山の1次産業や観光面における実力、将来性について改めて認識させていただいたとの思いがあります。今後も、地域産業の発展に少しでも貢献できるように活動していきたいと考えております。

 本当に最後になりましたが、私も仁坂知事に初めてお目にかかったのは、就任して初めて熊野古道を奥様と訪れた際、発心門王子の近くで、市の職員として流しそうめんのお手伝いをしたときに少しお話をさせていただいた記憶がございます。改めて、あっという間の16年でしたが、この16年間の知事の御活躍に深く感謝を申し上げ、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

○副議長(岩田弘彦君) 以上で、鈴木德久君の質問が終了いたしました。

 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。

 明日も定刻より会議を開きます。

 本日は、これをもって散会いたします。

  午後2時26分散会

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