令和4年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(全文)


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令和4年9月 和歌山県議会定例会会議録 第5号

議事日程 第5号

 令和4年9月21日(水曜日)

 午前10時開議

 第1 議案第93号から議案第127号まで(質疑)

 第2 一般質問

 第3 議案の付託

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会議に付した事件

 第1 議案第93号から議案第127号まで(質疑)

 第2 一般質問

 第3 議案の付託

 第4 休会決定の件

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出席議員(40人)

 1番 鈴木德久

 2番 山家敏宏

 3番 中本浩精

 4番 堀 龍雄

 5番 藤山将材

 7番 井出益弘

 8番 宇治田栄蔵

 9番 北山慎一

 10番 玄素彰人

 11番 中西峰雄

 12番 秋月史成

 13番 森 礼子

 14番 濱口太史

 15番 尾崎要二

 16番 冨安民浩

 17番 川畑哲哉

 18番 玉木久登

 19番 鈴木太雄

 20番 岩田弘彦

 21番 吉井和視

 22番 谷 洋一

 23番 佐藤武治

 25番 中 拓哉

 26番 多田純一

 27番 新島 雄

 28番 山下直也

 29番 中西 徹

 30番 谷口和樹

 31番 藤本眞利子

 32番 浦口高典

 33番 山田正彦

 34番 坂本 登

 35番 林 隆一

 36番 楠本文郎

 37番 高田由一

 38番 杉山俊雄

 39番 片桐章浩

 40番 奥村規子

 41番 尾﨑太郎

 42番 長坂隆司

欠席議員(1人)

 24番 岩井弘次

〔備考〕

 6番 欠員

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説明のため出席した者

 知事         仁坂吉伸

 副知事        下 宏

 理事         田嶋久嗣

 知事室長       赤坂武彦

 危機管理監      福田充宏

 総務部長       吉村 顕

 企画部長       長尾尚佳

 環境生活部長     生駒 享

 福祉保健部長     志場紀之

 商工観光労働部長   寺本雅哉

 農林水産部長     山本佳之

 県土整備部長     福本仁志

 会計管理者      中家秀起

 教育長        宮﨑 泉

 公安委員会委員長   竹田純久

 警察本部長      山﨑洋平

 人事委員会委員長   平田健正

 代表監査委員     森田康友

 選挙管理委員会委員長 小濱孝夫

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職務のため出席した事務局職員

 事務局長       出津野孝昭

 次長(秘書広報室長事務取扱)

            浜野幸男

 議事課長       長田和直

 議事課副課長     岩井紀生

 議事課課長補佐兼議事班長

            村嶋陽一

 議事課主任      伊賀顕正

 議事課主任      菅野清久

 議事課副主査     林 貞男

 総務課長       葛城泰洋

 政策調査課長     神川充夫

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  午前10時0分開議

○議長(尾崎要二君) これより本日の会議を開きます。

 日程第1、議案第93号から議案第127号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、併せて日程第2、一般質問を行います。

 17番川畑哲哉君。

  〔川畑哲哉君、登壇〕(拍手)

○川畑哲哉君 皆さん、おはようございます。

 質疑及び一般質問最終日となりました。1番目に登壇させていただきます。大変光栄でございます。

 議長よりお許しをいただきましたので、以下、通告に従いまして一般質問をさせていただきます。

 「この島に多いものは、岩、風、女性」と言われる大韓民国最南端の島、済州島を先月4日より訪問してまいりました。国策として給食の無償化を実施している韓国において、全国に先駆けて始めた済州特別自治道での有機農産物を使用した無償給食についての調査が主たる目的でございました。まずは、その報告からさせていただきます。

 現在の済州島は、済州市と西帰浦市の2市から成り、設置されている「道」は、我が国の県に当たります。

 私が8年間お世話になりました一般社団法人那賀青年会議所は、済州島における済州青年会議所と43年にわたり姉妹締結をしていまして、3年に1度行われる姉妹締結の調印式では、私も過去に3度調印の署名をさせていただいています。

 また、和歌山市は済州市と35年にわたって姉妹都市提携をされ、紀の川市は2007年より西帰浦市と姉妹都市提携をされています。さらに遡りますと、1965年(昭和40年)には、当時の那賀郡より当時の済州道へミカンの苗木35万本を寄贈した歴史があり、そのほか各種団体の交流も含めて、済州島は那賀地域を中心とした紀北に住む私たちにとって、ゆかりの深い地でございます。

 そんな済州島を訪れました8月4日の時点では、短期訪問ビザの発給が再開されていましたので、事前にウェブにて在大阪大韓民国総領事館の訪問予約を取り、パスポートや渡航券等の必要書類を整えて、実際に総領事館を訪れました。この際、ウェブ上での発給になるものの、3~4週間かかるかもとのことでございました。

 さらに、今月3日に中断されるまで、韓国へ入国する際には、自国を出国する48時間以内に受検したPCR検査の韓国語あるいは英語による陰性証明書等の提出が必要となっていましたので、ビザの発給を確認しつつ、陰性証明書作成及び限られた時間内で対応してくださる医療機関を探し、私の場合は渡航の2日前に日本赤十字社和歌山医療センターにて受検しました。費用は総額2万7500円でございました。

 さて、出国当日、関西国際空港の国際線ターミナルは、日本人の姿はあまり見かけませんでしたが、特にアジア圏へ旅立つ外国人の団体観光客らしき一団であふれていました。

 関空を出発する直前に、今回の視察の通訳や訪問先との調整事全般をお任せしているク・サンヒ氏に連絡をしてみたところ、「Q-Codeアプリをダウンロードしてください」との返信があり、慌ててダウンロードして各項目への入力を行い、自分の健康状態を表すQRコードを取得。これが韓国入国の際には、とてつもなく威力を発揮することとなります。

 このたびの往路は釜山経由でしたので、釜山空港に着陸した後、空港内に設置されたPCR検査センターを訪れました。予約がなくてもパスポートを見せて宿泊先のホテルや連絡の取れる携帯番号等を申請用紙に書き込むだけで受検でき、費用は6万5000ウォン、日本円で6500円から7000円でございます。

 木枠とアクリル板で豪壮に建てられた最初のブースにてクレジットカードで支払いをすると、PCR検査キットを手渡されます。それを持って隣のゴム手袋だけが外ににゅっと出ているブースに移動し、マイクで指示されるがまま、自分でPCR検査キットの封を切って中身を取り出すと、ブース内のスタッフさんがゴム手袋にブースの向こう側から手を入れてキットをつかみ、口腔内と鼻腔内との両方で検査をしてくれました。この間、恐らく10分程度でしょうか。検査結果はショートメールかeメールで送るとのことでございました。

 韓国では、7月25日より入国1日以内にPCR検査を受けることとなっています。ちなみに、この時期、日本へ帰国する際には、帰国前72時間以内のPCR検査による陰性証明書の提出が必要となっていましたが、私の場合、この1回の受検で両方を兼ねることができました。

 その後は、夕刻の便に乗って4年ぶりに済州国際空港へと降り立ち、その夜は電気設備業を中心に広く事業展開されているキム・マンチョル氏が催してくださった夕食会に出席し、御参加いただきましたジャーナリストや農業家の皆様と、両国の歴史や商売についてもろもろ意見交換をさせていただきました。

 さて、訪問2日目の8月5日、まずは国立済州大学教育学部附属小学校を訪れ、コ・ガ・ヨン校長及び栄養士のシン・ユンヒ教諭にお迎えいただきました。コ校長からは、学校の概要や有機農産物を使用した無償給食制度の意義等について御説明をいただき、シン教諭からは、いわゆる食育の具体的な授業内容や給食時間中の取組について御教示いただきました。

 その後は、知育や想像力、探求力等を刺激する工夫に富んだ校舎内や厨房・食堂等を御案内いただき、「次回はぜひ、夏休み中ではなく生徒がいる時期にお越しください」とお誘いいただきました。

 コ校長の教育にかける熱意はすさまじいものがあり、「子供は国の未来であり、まずは安全な食べ物をしっかり作って提供することから国の歩みが始まり、未来が開けると思う」という言葉が今も心に残っています。

 次に、済州市教育支援庁を訪問し、カン・ムンシク学生安全支援課長及びキム・ヤンヒ学校給食担当係長より、無償給食制度の成立背景や財源、農家の管理や使用する農産物の規定等について御説明をいただきました。

 韓国では、現在、幼稚園から高校まで、また障害者が通う特殊学校の全てが無償給食となっていますが、その経費は政府機関である教育庁が40%、道庁が60%を負担しているとのことでございます。

 続いて、済州市郊外へ向かい、ユーチューバーとしても高名な済州ボタリ農業学校の代表で大韓民国最高農業技術名人のキム・ヒョンシン氏を訪ねました。済州での無償給食制度立ち上げに参画されたキム代表からは、自身の研究史や独特の農法について御説明をいただいた後、園地の隅々まで惜しみなく御案内をいただき、とにかく持続可能なその地に合った農業を確立することが重要であり、そのためには、例えば肥料であれば、その地にあるものを研究して肥料としたり、既存の肥料に混ぜたりして使用することと御教示をいただきました。

 最後の訪問地は、済州親環境給食連合株式会社農業会社法人でございました。こちらでは、キム・キヨン代表理事及びセンドル営農組合法人のキム・キホン専務より、組合の成り立ちや給食制度を支える有機農産物等の集荷及び出荷等について御説明をいただきましたが、途中、政治家が果たした役割や済州島における選挙運動についても話は及びました。

 この日、給食を実施する現場である学校、制度を整える行政、生産者及び組合と立場の異なる4者を訪問させていただき、いかにして有機農産物を使用した無償給食が運営されているか、非常によく分かりました。今後の活動に鋭意反映させてまいりたいと思います。

 済州島での最終日は、亡き友人の墓参りをさせていただいたほか、キム・マンチョル氏主催の朝食会及び昼食会や意見交換会に出席させていただき、マーケット視察等を経た夕刻、済州国際空港を飛び立ちました。

 このたびの訪問に際し、本県国際課、和歌山市国際交流課の皆様には大変お世話になりました。また、訪問先では大変温かくお迎えいただき、極めて実のある調査となりました。お関わりをいただきました全ての皆様に厚く御礼を申し上げます。

 何より休日を返上して全力で通訳やアテンドをしてくださいましたク・サンヒ氏、変わらない友情を存分に表現してくださいましたキム・マンチョル氏に心から敬意を表し、感謝を申し上げまして、大韓民国済州島訪問についての報告とさせていただきます。

 それでは、これより質問へと入らせていただきます。

 国立済州大学教育学部附属小学校では、2009年より無償給食を始め、済州特別自治道で2012年に済州特別自治道環境に優しい農産物・無償給食支援に関する条例が制定されてからは、有機栽培や低農薬栽培で作られた農産物を使用した給食制度を実施しています。

 学校に配置されている栄養教諭を中心に、保護者や時には近隣の教員とも一緒になってメニューが作られ、学校内の食堂で子供たちが給食を食べる際には、食堂内のモニターを使用しながら、その食材がいかに体によいか、あるいはその食材はどのようにして栽培されているかというような話をされるそうです。

 済州では、韓国国内で最初に有機農産物等を給食に採用し、10年が経過しています。今では有機農産物が体によいということはすっかり理解され、次の段階に入っているとのことです。

 例えば、ある料理を食べる前に、そのメニューを食べる発祥となった歴史を一緒に教えるとか、スイカを食べる際にスイカの重さを当てるコンテストをクラス対抗で実施するとか、夏休み前には子供たちが食べたい世界のメニューを作って、その国の文化を学びながら食べるとか。つまり、食べ物としてただ食べるだけではなく、知識を得たり異国文化に触れたりということと連動させています。結果、子供たちは食べ物に興味を持ちながら食べるということにつながっていて、栄養教諭のシン・ユンヒ先生は、これが大切だと熱弁を振るわれていました。

 このような取組は、各学校に栄養教諭が配置されていてこそ可能になるものであり、子供たちの持っているアレルギー等を詳細に把握するという意味でも、各学校に栄養教諭が配置されるべきとのことでございました。

 また、長引くコロナ禍の中で、免疫力向上への意識が高まった方も多いのではないかと思います。免疫力を高めるためには、早寝早起きや入浴等の生活習慣に加え、やはり食べ物であり、バランスのよい栄養の摂取であると言われます。

 栄養学について、幼少の頃より適切に身につけていくことが、心身の健康を保ち、豊かな人生の歩みにつながると思います。そのためには、食育が非常に大切であり、栄養管理の専門家である栄養士に期待するところは大きいものがございます。

 そこで、教育長に2点お尋ねいたします。

 食育は教育の一環であり、心身とも健康に生きる力を育むという意味でも重要な課目であると考えますが、県教育委員会としてはどのようなお考えで、現在、どのように取り組まれているのでしょうか。

 また、より充実した食育を進めるに際して、給食の時間に専門家が食材やメニューの栄養価について、さらにはメニューの歴史的背景や食べ方等を語ることが極めて重要であると考えます。この食育推進の中核となる専門家こそ、食に関する指導と給食管理を一体のものとして行う栄養士の資格を持つ教諭の栄養教諭でございます。

 しかし、県内の市町村には、給食の単独実施校と共同調理場による実施校の別はあるものの、いずれも法律による栄養教諭等の配置基準を遵守する都合上、その栄養教諭や栄養士の資格を持って学校で給食管理の職務を行う学校栄養職員が1人も配置されていない学校が圧倒的でございます。また、学校栄養職員のみで栄養教諭が1人も配置されていない市町村もございます。

 このような栄養教諭等の空白校及び栄養教諭の空白市町村に対して、より充実した食育を進めるために、県教育委員会としてはどのような取組をされるのでしょうか。御答弁をどうぞよろしくお願いいたします。

○議長(尾崎要二君) ただいまの川畑哲哉君の質問に対する答弁を求めます。

 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 食育に対する考えとしては、生涯にわたって健全な心と体を培い、豊かな人間性を育む基礎となるものであり、家庭や学校において積極的に取り組んでいくことが重要です。とりわけ、農林水産業が盛んな本県においては、食を通じて生産者など食に携わる人々への感謝の気持ちや郷土を大切にする心の育成を目指しています。

 県教育委員会では、「紀州っ子のこころとからだをつくる食育の手引」を作成し、各学校において教育活動全体を通じて食育の推進を図るよう指導するとともに、栄養教諭や学校栄養職員の資質向上を図るため、毎年、給食管理や食育に関する研修を実施しています。

 また、児童生徒が地域の食材に対して親しみを持ち、食文化への理解を深めるため、県農林水産部局と連携し、学校給食等に県産食材を提供しています。

 次に、栄養教諭等の配置については、本県において、学校栄養職員を一定条件の下、栄養教諭に任用することで増員を行っており、その配置をより進めるために、新規での採用を検討していきたいと考えております。

 現在、栄養教諭、学校栄養職員のいずれも配置されていない学校については、拠点校の栄養教諭が未配置校に積極的に指導訪問することとしており、今後もこの取組を一層推進することにより、食育の充実を図ってまいります。

○議長(尾崎要二君) 川畑哲哉君。

  〔川畑哲哉君、登壇〕

○川畑哲哉君 教育長から答弁いただきました。新規採用の検討も含めて栄養教諭を増員し、積極的な指導訪問を一層推進していくということですので、しっかりとお願いをしたいと思います。

 ちなみに、私の地元の岩出市では、小学校6校と中学校2校の全児童生徒およそ4400名プラス教職員の給食を1か所の共同調理場で作っていますが、そこには栄養教諭1名と学校栄養職員1名が配置されています。法律の定める配置基準により、栄養教諭等2名となるわけでございますが、2名で8校をフォローしていくということは、現実には非常に厳しいものがあると思います。

 そこで提案でございますが、希望される市町村教育委員会があれば、例えば県栄養士会等と連携をして潜在栄養士等を県費で派遣する等の支援策が有効であると思いますので、ぜひ御検討いただければと思います。

 また、配置基準が定められているのは昭和33年の法律でございますので、時代が変わってきています。現代に応じた配置基準を政府に要望していくということもお願いしたいと思います。

 なお、本県には、栄養教諭を養成する大学、短大、大学院修士課程の機関がございません。県内に栄養教諭の養成機関がないのは、香川県、愛媛県と本県の3県のみでございます。今後、このことにつきましてもお考えをいただきたいというふうに思います。

 それでは、次の質問に入ります。

 ちなみに韓国では、環境に優しい農産物、いわゆるオーガニックを「環境に親しい」と書いて「親環境農産物」と呼ぶことも多いようですが、ソウル市在住の地域ファシリテーター、カン・ネヨン氏によりますと、幼稚園から高校まで全て無償となっている韓国の給食で親環境農産物を使用している割合は、2018年に日本の農林水産省に当たる農林畜産部の調査で39.0%、しかも学校給食の予算が毎年拡大されているので、親環境農産物を使用する量は増加傾向にあるとのことでございます。この割合は地域ごとに差があるようですが、ソウル市では68.0%、済州では75.0%と非常に高い割合となっています。

 韓国では98%が学校直営で給食を作っていることもあり、学校別に受発注していると、関係者間で現実的な困難が生じることも考えられますが、自治体設置の学校給食支援センターや、済州市で訪れました済州親環境給食連合株式会社農業会社法人のような食材の供給や配達等を担う専門的な機関が給食制度を支えているようでございます。

 済州市教育支援庁にて、カン課長及びキム係長に給食で使われる農産物の規定についてお尋ねしましたところ、「学校給食法施行規則に規定があるのでそれを遵守している。つまり『原産地が表示された農産物を使用』、『親環境農産物を優先使用』とあり、ついては認証された有機農産物等及び無農薬農産物や農産物標準規格『上』等級以上の農産物を使用することにしている」とのことでございました。

 そのほか、食材についてもろもろの決め事や供給体制の管理、自治体による残留農薬検査や事業者の事後評価制度等も整備されていて、指摘事項が2回以上繰り返される事業者への参加制限も規定されています。

 2015年9月に国連サミットで採択されて以来、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際指標SDGsが呼びかけられている今日でもあり、有機農業等の環境に優しい農業はこれまで以上に推し進められるべきであると思いますが、農家にとって、作った農産物が売れるという安心感がなければ、有機農業を始めることに二の足を踏んでしまうことも理解できます。

 韓国の場合は、条例を制定して給食に使用するとうたったことで、農家には必要な量を作らなければならないというプレッシャーも生まれる傍ら、作れば買ってもらえるという地域への信頼感も生まれたことでしょう。

 環境に優しい農業をこれまで以上に広めるためには、作り手の養成と確保、有機農産物等への地域の理解を深めることと販路の確保、給食に使用する際には必要な食材の種類と量の確保、公による農産物の基準策定と検証、これらを一体的に進めなくてはならないと思いますが、いずれにしましても物が作れなければ話は始まりません。

 有機農業によって農産物を作るには、そもそもその栽培方法が確立されていてこそであり、これから有機農業を始めようと志す農家の方からすれば、県など公の施設が主導することで安心感が増します。

 7月に議員有志で兵庫楽農生活センターを訪問させていただいた際に、兵庫県から指定管理者・公益社団法人ひょうご農林機構へ出向されている椿野健次センター長に有機農業の課題についてお聞きしましたところ、「我が国では、有機農業の栽培方法が確立されているとは言えない」との御回答をいただきました。

 一方で、済州島で訪れました済州ボタリ農業学校のキム代表によりますと、「有機農業は日本のほうが先行しているでしょう」とのことでございました。

 そこで、農林水産部長にお尋ねいたします。

 本県では、有機農業等の環境に優しい農業の推進について、どのようなお考えをお持ちでしょうか。また、それに係る農法の研究等も含めて、どのような取組をされているでしょうか。御答弁よろしくお願いいたします。

○議長(尾崎要二君) 農林水産部長山本佳之君。

  〔山本佳之君、登壇〕

○農林水産部長(山本佳之君) 県では、これまで有機栽培を含めた化学農薬や化学肥料に過度に頼らない環境と調和した持続的な農業として、環境保全型農業を推進してきたところです。

 具体的な取組として、県の慣行栽培基準に比べ、化学肥料、化学農薬の3割程度の削減を目指すエコファーマーの推進、5割以上削減する特別栽培農産物の振興、さらに、化学肥料、化学農薬を一切使用しない有機農業を推進してまいりました。

 また、有機農業や化学肥料、化学農薬の5割以上の低減と草生栽培などを組み合わせた環境保全型農業に取り組む農業者に、国の直接支払交付金を交付しております。

 さらに、試験研究機関において、有機栽培で使用できる特定防除資材や性フェロモンによる防除技術、黒星病抵抗性を持つ梅の品種育成など、総合的な病害虫防除技術の研究開発に取り組んでおり、開発された技術は、実証モデル園や研修会など、様々な機会を通じて普及を図ってまいります。

 本年7月に施行された、いわゆるみどりの食料システム法において、国は2050年に全国の耕地面積の4分の1に当たる100万ヘクタールまで有機農業を拡大することを打ち出しており、県としましても、有機農業をはじめとする環境保全型農業をより一層推進してまいります。

○議長(尾崎要二君) 川畑哲哉君。

  〔川畑哲哉君、登壇〕

○川畑哲哉君 農林水産省は、地域ぐるみで有機農業に取り組む市町村等の取組を推進するため、2025年までに100市町村、2030年までに全国の10%以上の市町村によるオーガニックビレッジ宣言を目指しています。

 オーガニックビレッジ宣言とは、有機農産物の学校給食への導入等、有機農業振興に関する自治体等の取組を推進するもので、今、部長からも御答弁ございましたが、有機農業産地づくり推進事業、みどりの食料システム戦略推進交付金を活用し、補助を行うとされています。

 昨今、県内外の自治体で給食の無償化が広がりつつあります。確かに義務教育課程においては給食も教育の一環であるとの解釈からは、給食の無償化も導くことができます。とはいえ、無料化と無償化とは違う概念であり、家庭の負担なく給食が提供されればとにかくよしというものではないと私は考えています。

 環境にも体にもよい農産物や食材を、家庭の負担を増やすことなく子供たちに提供することが理想であり、その理想実現のために惜しみなく尽力してこその教育行政であると思います。

 韓国では、給食費に各食材の値段がついていますが、親環境農産物を使用する際には補助金がアップされるので、親環境農産物を高い値段で購入することができる環境づくりもされています。

 ちなみに、先述のカン氏によりますと、ソウル市の場合、親環境無償給食の実施により、給食の品質を上げ、輸入農産物の比重が激減し、農家の収入も13.3%増加したとの経済的効果に加え、農産物を提供し合うことで自治体間の交流や食育の拡大、住民の農業や農産物への関心の高まり等の社会的効果も認められ、学生や保護者、栄養士の約70%が健康増進についてよい影響があったとアンケートに答えているそうです。

 そこで、教育長に2点お尋ねいたします。

 本県でも有機農産物等の環境に優しい農産物の給食への導入を推進するべきではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか。

 また、併せて導入を検討する県内の自治体への支援施策も検討すべきと思いますが、いかがでしょうか。この2点目につきましては、農林水産部長のお考えもお尋ねしたいと思います。

 教育長、農林水産部長より、それぞれ御答弁をどうぞよろしくお願いいたします。

○議長(尾崎要二君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 有機農産物等の給食への導入についてお答えいたします。

 学校給食は、設置者である市町村が実施するものであり、各調理場においては、学校給食衛生管理基準に基づき、各地域の実情を踏まえ、安全で安心な食材の確保に努めてまいります。

 学校給食に有機農産物等を使用し、その意味を説明することは、児童生徒が食についての理解を深めることにつながることから、大変有意義であると考えております。

 次に、自治体への支援についてお答えします。

 学校給食への有機農産物等の導入を進めるに当たっては、地元で安定的に生産・供給されることが鍵となります。

 そのため、今後、各地域で有機農産物等を栽培している生産者や供給可能な量及び種類等の情報を、県農林水産部局を通じて収集し、各市町村教育委員会に提供することで、有機農産物等の使用拡大につなげてまいります。

○議長(尾崎要二君) 農林水産部長。

  〔山本佳之君、登壇〕

○農林水産部長(山本佳之君) 議員御指摘のとおり、有機農業に地域ぐるみで取り組む市町村に対して、国の有機農業産地づくり推進事業で支援が行われるようになりました。

 この事業は、みどりの食料システム法に基づき、基本計画を策定した市町村において、有機農産物の生産、流通、加工のそれぞれの部門での取組のほか、学校給食での利活用に向けたメニュー開発や体制づくりにも活用できます。

 一方、県では、平成29年度から地元で生産された農産物が学校給食で円滑に利用される取組を行っており、市町において、農家や直売所と学校関係者とのマッチングを行い、給食メニューに合わせた農産物の生産と提供が行われています。

 県としましては、国の新たな支援策や既存の直接支払交付金等を効果的に活用し、まずは有機農産物等の生産拡大を図るとともに、学校給食に利用できる地場農産物のリストに有機農産物を加えることにより、給食で活用してもらえる機会を増やす取組を推進してまいります。

○議長(尾崎要二君) 川畑哲哉君。

  〔川畑哲哉君、登壇〕

○川畑哲哉君 それぞれ答弁いただきました。

 有機農産物等を給食に導入しようという市町村が出てきた際には、ぜひ、できる限りの支援をしていただきますようにお願いを申し上げます。

 それでは次の項目、ネーミングライツについてお尋ねいたします。

 令和4年3月に改定されました和歌山県公共施設等総合管理計画によりますと、公共建築物の老朽化、公共建築物の大規模改修等・更新に係る莫大な経費という問題点に対する解決の糸口として、民間ノウハウによる利便性向上等につながるPPPの活用やネーミングライツの導入に取り組むと記載されています。

 PPPとは、Public Private Partnershipの略であり、いわゆる官民連携のことを指し、ネーミングライツとは、スポーツ施設や文化施設にスポンサー企業の社名やブランド名等を愛称として付与する権利で、命名権とも呼ばれます。

 ネーミングライツは、1980年代以降、スポーツ施設の建設・運用資金調達のための手法として米国で広がり、イチロー選手が大活躍されたシアトル・マリナーズの本拠地は「セーフコ・フィールド」と保険会社名が冠せられていて、2019年からは「T-モバイル・パーク」と携帯電話会社名が冠せられています。

 ちなみに、我が国では、株式会社東京スタジアムと味の素株式会社との間で初の契約が結ばれ、2003年3月1日より東京スタジアムは「味の素スタジアム」と名称を変えています。契約内容は、5年総額12億円ということでございまして、今日までに3度の契約更新がなされています。

 本県内の公共施設に目を移してみますと、2006年に日高町にある多目的スポーツグラウンドが松源社と3年総額300万円、2007年に有田市で有田市民球場が同じく松源社と10年総額600万円のネーミングライツ契約を結び、直近では、今年4月に橋本市が運動公園や産業文化会館、温水プール、歩道橋でネーミングライツを導入し、年間総額275万円の収入を得るとのことでございます。

 県内の某企業によりますと、「自治体が公共施設にネーミングライツを導入することで、安定的な財源確保による継続的な施設運営ができ、施設の魅力向上やイメージアップにつなげることができる。住民にはそれによって魅力が向上した施設を利用することができるようになり、住民サービスが向上する。出資する企業は、企業の社会的責任や地域社会への貢献という、いわゆるCSRの評価が向上し、自社の広告宣伝効果が見込める」とネーミングライツへの参画に積極的な姿勢を持たれています。

 人口減少による各自治体の税収が減少していくことに対応して、2008年5月よりふるさと納税制度が始まり、各自治体が歳入確保に努力を重ねられています。努力の結果、独自の財源を確保された自治体は、コロナ禍においても充実した住民サービスを実施されているとお見受けいたします。

 各自治体にとって、住民サービス向上のために一層の歳入確保を目指すものの、直線的な歳入確保の手段が限られているわけでございますが、ネーミングライツは一つの現実的な選択肢であると思います。

 そんな折、本県のネーミングライツ導入ガイドラインが策定されました。県がネーミングライツを導入することによって、いまだ導入に至っていない県内の各自治体が背中を押され、さらなる住民サービスの向上を目指して積極的に導入されることが期待されます。その意味でも、県が速やかにネーミングライツの導入を実現させることは大変意義深いと私は考えています。

 そこで、総務部長にお尋ねいたします。

 和歌山県ネーミングライツ導入ガイドラインには、県のどのようなお考えや目的を持って策定されているのでしょうか。

 また、制度を設計されても、実施されなければ意味をなしません。県のネーミングライツ導入の実現に向けて、今後の進め方はどのようにお考えでしょうか。御答弁どうぞよろしくお願いいたします。

○議長(尾崎要二君) 総務部長吉村 顕君。

  〔吉村 顕君、登壇〕

○総務部長(吉村 顕君) 県では、和歌山県公共施設等総合管理計画において、文化、体育、社会教育等施設を対象にネーミングライツの導入に取り組むこととしております。

 企業名、商品名等を冠した愛称を命名する権利を取得した事業者が、愛称を付与する代わりに県に命名権料を納付するもので、事業者の選定につきましては、公平性、公正性が担保されるよう、公募により幅広く入札参加の機会を提供するものとなっております。

 ネーミングライツ導入のために策定したガイドラインは、県と命名権者との協働の下に、県有施設を有効に活用することにより、県の新たな歳入の確保と施設サービスの維持向上を図ることを目的としているところです。

 今後の進め方につきましては、施設所管課において、施設の選定、事業者の募集、事業者の選定、愛称の決定・使用を担当することとなっており、ガイドラインでは、この期間の目安を8か月としているところです。

 また、現在、ガイドラインを策定した管財課と施設所管課において、ネーミングライツの導入に適した対象施設の選定を進めているところです。

 今後、管財課と施設所管課が連携し、このガイドラインに沿って手続を進め、県有施設を有効に活用することにより、歳入の確保に努めてまいります。

○議長(尾崎要二君) 川畑哲哉君。

  〔川畑哲哉君、登壇〕

○川畑哲哉君 とにかくネーミングライツの導入につきましては、県庁挙げてスピード感を持って取り組んでいただきたいと思います。一日も早く県が導入を実現させることで、他の市町村が背中を押され、各地で野球場やスケートボードパーク、eスポーツスタジアム等の建設が見えるようになってきます。

 また、民間同士でも導入が促進されますと、運営に苦慮されている子供食堂の運営費等、展望が開けてくると思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、最後の項目に入ります。

 私が生涯スポーツ及び生涯学習として登山を意識し出したのは、2年ほど前のことになります。これまで野球をはじめ、ゴルフやテニス等をたしなんでまいりましたが、40代に入り、10代や20代の頃と比べて、明らかにプレースタイルが変わってきていることを意識いたします。このまま自分が60代、70代に至れたとして、スコアやアベレージはともかく、さらに変わり行くであろう自分のプレースタイルを想像した際に、自分が納得できるかどうかを自問自答したことがきっかけでございました。

 山登りのスピードは、体力だけによるものではなく、天候や気温の変化から身を守るすべや山中でのトラブルへの対応力等、キャリアを重ねるほどに知識も含めたスキルが上がるものということでございます。

 もともと、山中にてガスバーナーで湯を沸かしてコーヒーを入れることが趣味であったことも後押しし、入念な登山靴の選択を経た2020年10月より、地元の根来山げんきの森へのハイキングを封切りに、名草山等、近隣の山への登山を開始いたしました。

 中でも龍門山へは、岸本健・現紀の川市長や私の登山チーム及び行政職の皆様とも何度か登山し、県指定天然記念物キイシモツケの群生状況や登山道はもちろん、明神岩、磁石岩等の現況を確認しつつ、また、植物や昆虫観察もしつつ、登山客にとって一番の土産となる晴れやかな眺望確保のための調査等を重ねてまいりました。

 これらの成果につきましては、さらに精査をした上で改めて御報告と御提案をさせていただきたいと思います。

 それはそれとしまして、新型コロナウイルス禍の影響から、サイクリングやゴルフ、キャンプ等の例に漏れず、登山やハイキングの人気も高まってきているようです。

 登山は、観光や福祉増進施策としても期待されることと思いますが、一方で、遭難事故も2017年から2020年までは年間7~8件だったところ、2021年は11件、今年は8月末までで既に7件と増加傾向でございます。

 毎日新聞の今年の7月20日付の記事には、過去5年半において、遭難事故は48件あるものの、その中で事前の登山届は1件も出されていなかったと記載されています。記事によりますと、IT企業インフカム社の今吏靖社長は、「初心者ほど遭難の可能性が高いにもかかわらず、登山届の存在すら知らない人が多い」とのコメントを出されていますが、確かに私たちの周りでも登山届の存在を知っているメンバーはほぼ皆無でございます。

 公益社団法人日本山岳協会のホームページでは、登山届の事前提出を義務化している複数自治体の条例が紹介されていて、中には期間や地区を指定して登山を禁止したり、不適当な届出内容への勧告や未届けの者への罰金を規定したりしている条文も見られます。

 本県では、最高峰の1382メートルを誇る龍神岳をはじめ、1372メートルの護摩壇山等、美しい山々が連なるものの、罰金を科すような条例はなじまないものと考えますが、万が一に備えるべく、登山届の周知と事前提出の促進は必要であると思います。

 県警察本部として、今後どのように取り組まれるのでしょうか。警察本部長の御答弁をどうぞよろしくお願いいたします。

○議長(尾崎要二君) 警察本部長山﨑洋平君。

  〔山﨑洋平君、登壇〕

○警察本部長(山﨑洋平君) 議員御指摘のとおり、平成29年以降、本年8月末までの間に警察で認知した49件の山岳遭難事故を分析しますと、いずれも登山届の提出はありませんでした。

 この登山届は、遭難等万一の場合の素早い捜索救助の手がかりとなる上、作成に当たっては、登山者自身が登山ルートや携行する装備品等を事前に確認していただくきっかけとなりますので、県警察としましては、登山を行う皆様方に登山届の事前提出をお願いしているところであり、引き続きテレビ、新聞等、様々な媒体を活用しての広報啓発を行ってまいります。

 あわせて、ハイキングや山菜取りなど、登山目的以外で山に入られる方につきましても、万一に備え、家族や知人に対し、いつ、どの道を通って山に入るのかなどを伝えていただくとともに、下山予定時刻を過ぎても帰宅しない場合には、速やかに警察に通報するよう依頼していただくことも広報してまいります。

 また、最近では、スマートフォンから容易に登山情報が入力でき、下山予定時刻から一定時間を過ぎても下山通知が入力されない場合、家族等の緊急連絡先に通報される民間のアプリも開発されておりますので、このような便利なツールも併せて広報してまいりたいと考えております。

○議長(尾崎要二君) 川畑哲哉君。

  〔川畑哲哉君、登壇〕

○川畑哲哉君 いよいよ秋も本番を迎え、山々が彩りに包まれる絶好の登山・ハイキング日和となります。県外からも多くの登山客が来られることと思いますが、県警察の皆様には安全に、そして安心して和歌山県の山を楽しんでいただけるよう、引き続き、どうぞお取り組みいただきますようお願い申し上げますとともに、ひいては和歌山県勢のさらなる発展につながりますことを心より御期待申し上げまして、私の16度目の一般質問を終了させていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

○議長(尾崎要二君) 以上で、川畑哲哉君の質問が終了いたしました。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 26番多田純一君。

  〔多田純一君、登壇〕(拍手)

○多田純一君 おはようございます。公明党の多田純一でございます。

 尾崎議長から御了解いただきましたので、通告に従い、大項目3点について質問をいたしたいと思います。

 まず、1点目でございますけども、死因究明制度と今後の県の対応についてお伺いをしたいと思います。

 「独り暮らしの高齢者の孤独死や働き盛りの突然死、乳幼児の不審死など、死因が不明な異状死の数が増えている。その数は、犯罪に関わるものを含めて、この10年で3割増の17万件。実に亡くなる方の7人に1人の割合だ」とNHK「クローズアップ現代」で、増える原因不明死が報道されました。

 こういう社会問題を背景に、令和2年4月に、死因究明等推進基本法が議員立法で施行されています。第1条、その目的は、「死因究明等(死因究明及び身元確認)に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって安全で安心して暮らせる社会及び生命が尊重され個人の尊厳が保持される社会の実現に寄与する」とあります。

 先日、和歌山県立医科大学法医学教室・近藤稔和教授と、この問題について教授の問題意識をお伺いいたしました。その際、「犯罪死の見逃しを予防するという目的だけでなく、死因究明は人が受ける最後の医療行為であり、死因を正しく判断されるということは、亡くなった人の尊厳を守るために必要である」と強調されておられました。

 日本は現在、高齢化がますます進み、多死社会に突入をしております。2020年には約137万人だった年間死亡者数は、団塊の世代が全員75歳以上になる2025年には約153万人、2040年には約170万人近くになると予測されております。

 高齢化の進展により、自宅など病院以外の場所で亡くなる人が増えていることから、国は警察や医師会、大学の法医学教室と連携した死因究明の拠点を一部の自治体に試験的に設け、体制の強化を進めていく死因究明拠点整備モデル事業を今年度から開始いたしました。

 周りに気づかれずに孤立死するケースが各地で相次いでいるほか、新型コロナウイルスの感染拡大以降、自宅などで症状が悪化して亡くなる人も多くなっております。現在の日本の制度では、事件性がない場合、死因について詳しい調査を行うことはほとんどないため、国は、死因の究明の拠点整備の成果を今後自治体向けのマニュアル等に反映し、横展開を図る考えのようです。

 死因の究明をめぐっては、これまでにも解剖が行われず暴行などが見落とされていたケースもあります。相撲部屋の17歳の力士が死亡。当初は急性心不全と医師の判断があったものの、両親が不審に思い解剖した結果、暴行による事実が発覚した事件です。死因がはっきりしないことで、遺族が死を十分に受け入れられない問題も起きております。

 医療過誤の問題も、2015年、医療事故調査制度として、医療法に基づき新しい制度として設置されております。制度ができて昨年の12月までの約6年間で、2248件が日本医療安全調査機構に報告されております。

 自然死とは、人が亡くなるとき、病気や外傷によるものではなく、全身の臓器の機能が衰えて自然に死に至ることをいいます。かかりつけ医や病院に入院して最期を迎える方は、ほとんどが自然死として扱われるケースが多いとされております。

 それに対し、不自然死、もしくは異状死とも呼ばれておりますが、それ以外の亡くなり方を指します。例えば、自宅で亡くなる方や交通事故や事件、そして最近目立ってきているのが孤独死とされております。

 不自然死のこの数年の県内の実態について、警察本部長にお尋ねをいたします。

○議長(尾崎要二君) ただいまの多田純一君の質問に対する答弁を求めます。

 警察本部長山﨑洋平君。

  〔山﨑洋平君、登壇〕

○警察本部長(山﨑洋平君) 和歌山県における不自然死の過去5年の死体取扱数は、年間平均1500体前後であります。そのうち、年齢65歳以上の独り暮らしの死者数の占める割合は、全体の約30%となっております。

 また、警察では、犯罪死の見逃し防止のほか、遺体の死因や身元を究明する観点から、各種解剖を実施しております。その年間の解剖数は200体から250体の間であります。

○議長(尾崎要二君) 多田純一君。

  〔多田純一君、登壇〕

○多田純一君 実態が報告されました。自然死の場合、かかりつけ医や入院先の医師が死亡診断を書き、埋葬への手続が進められます。しかし、それ以外の不自然死は、警察の検視官の判断の下、決められた検案医の判断を仰ぐことになります。

 御答弁にありましたように、不自然死もしくはこの異状死の死体取扱い数は、年間平均1500体前後ということであります。そのうち65歳以上の高齢者独り暮らしの死者数は約30%とお答えいただきました。検視官や医者の検案医の判断で解剖に処する件数が200から250体ということでございました。

 それは、解剖に回すことになりますので、一定の見識や判断が伴うことになります。場合によっては、事件性を見逃す危険もはらんでいることにもなります。死因究明の大事な一歩と言えます。

 検視官や検案医の配置の考え方について、改めて警察本部長にお聞きしたいと思います。

○議長(尾崎要二君) 警察本部長。

  〔山﨑洋平君、登壇〕

○警察本部長(山﨑洋平君) まず、検視官の体制や役割等についてでありますが、当県警察では、令和2年4月、警察本部捜査第一課内に検視官室を設置の上、捜査経験が豊富で検視の専門的知識を有する検視官7名と検視補助者8名の15名体制で、24時間、県下全域の検視業務に当たり、主に死因の究明や犯罪死の見逃し防止に努めています。

 次に、検案医師の体制や役割等についてですが、検視業務に深い理解を持ち、法医学に関する知見を有する医師23名に対して検案業務を嘱託し、検視への立会いや死亡認定、死因の究明等に取り組んでいただいているところであります。

 しかしながら、これら検案医師は、通常の診療業務に加えて検視業務も実施しており、また、深夜・休日の対応も生じ得ることからその負担が大きく、さらに検案医師の高齢化も進んでおり、将来的には成り手不足が懸念されているところであります。

 警察としましては、県や市町村の医師会及び死因究明等推進協議会と連携を図りつつ、検案業務への深い理解と協力を得ながら、今後も引き続き、検案医師の必要な体制整備を進めてまいりたいと考えております。

○議長(尾崎要二君) 多田純一君。

  〔多田純一君、登壇〕

○多田純一君 お手元に資料を配付させていただきました。この資料は、和歌山県立医科大学法医学教室の資料になります。

 和歌山県立医科大学法医学教室の近藤稔和教授は、死因究明は最後の医療行為ということで、再三私に説明をされておりました。

 図1は、法医学から見た認知症や孤独死の実態についてまとめたものです。資料の枚数はもっとありましたけども、許可を得て抜粋紹介をしたいと思います。

 先日の議会での指摘もありましたが、高齢化率の進展とともに独り暮らしの高齢者率が右肩上がり。もちろん若年層の独り暮らしで亡くなるケースも目立ちますが、令和3年1月現在、県内の独り暮らしの高齢者は7万1386人、65歳以上の人口の23%となっております。

 図2では、異状死(不自然死)、病院以外の自宅やその他で亡くなるケースが増えているという現状が分かります。高齢者の増加で約76%が自宅、52から55%が孤独死と指摘されております。先日も海南市の高齢者御夫妻が自宅で亡くなっており、息子が発見。「家族も突然なことで驚いている。詳しい死因を司法解剖して調べる」と報道されておりました。

 図3で、その下にあります法医解剖とは、万が一事件性があった場合に公正な判断ができるよう、医学的根拠を持つために行う解剖のことであり、自宅死亡例が3割から5割に増加、また、孤独死例も4割から6割に増加しているようです。

 図4では、認知症に係る行方不明者が増えている現状が分かります。

 図5では、和歌山県のこの15年間の中でも、認知症を患って亡くなっている方で内因死(病気で亡くなる方)は9例、外因死(外傷や事故で亡くなる方)が圧倒的に多く、70例。特にその中でも、川や海、そして用水路・側溝が多いと指摘されております。

 昨日の北山議員の指摘にもありましたが、ため池も危ない箇所として、安全面の確保を取る必要があります。

 このデータは法医学教室で取り扱った例だけですから、検案医の数を入れるともっと多くなるものと考えます。

 図6の最後のまとめでは、認知症関連事例の屋外死亡の実態として、一つ、70代から80代の高齢者が多い。二つ、外因死が圧倒的に多い。三つ、死因では溺死が多い。四つ、自宅から徒歩での移動が多い。五つ、時期は寒い季節の暗い時間が多い。先日、警視庁が発表された交通事故も、これから訪れます10月から12月、日没前後に多発しているという指摘もされております。

 認知症や孤独死による不自然死が増えていることに近藤先生は警鐘を鳴らし、死因究明することで死者と向き合い、その原因を解き明かしていこうとされております。

 地域に応じた孤独死の対策や認知症の行方不明者の実態、そして見守り等のサポート体制や、用水路や側溝での死亡を防ぐための環境整備など、社会的弱者への配慮などを強調されていました。ぜひ孤独死や認知症対策の施策の参考にしていただきたいと考えております。

 事件だけではなく、死因究明をすることで分かってくる社会の課題や問題点があるはずだと気づかされました。死因究明等制度が令和2年に法整備され、それぞれの都道府県で死因究明等推進協議会を立ち上げ、その役割や目的を協議することが義務づけられております。

 和歌山県も40番目と遅まきながら、昨年12月に第1回目の協議会を立ち上げております。第1回目ですから、それぞれの委員の方から意見や要望が出されたと思います。

 協議会の内容や今後の県の対応について、福祉保健部長にお聞きいたします。

○議長(尾崎要二君) 福祉保健部長志場紀之君。

  〔志場紀之君、登壇〕

○福祉保健部長(志場紀之君) 先ほど議員から提出された資料にもございましたが、死因究明につきましては、大規模災害により亡くなられた方の身元確認や、亡くなった理由を正確に知りたいという遺族の思いに応えるだけでなく、高齢化に伴う在宅での孤独死等が増加し、死因究明が困難な事例も見受けられることからも、その重要性は高まっていると考えます。

 和歌山県死因究明等推進協議会は、令和3年3月に、県立医科大学や県警察本部、県医師会等を構成メンバーとして設置し、同年12月に第1回協議会を開催いたしました。

 まず、第1回協議会では、出席者がそれぞれの立場から現状と課題を報告し、情報交換が行われる中で、検案医の不足や高齢化、検案医に対する処遇改善などの課題が明確となりました。

 これらの課題を踏まえ、今年度は、まずは医師会や歯科医師会等の関係機関においても死因究明に対する認識を深め、検案医の確保を進めていくために、オンラインによる研修会を開催する予定です。

 また、県としましては、死因究明等推進計画における死因究明等に関し講ずべき施策について、国と役割分担を行いつつ、その地域の状況に応じた施策を策定し、実施する責任を負うことから、死因究明等推進協議会を最大限に活用した上で、具体的な施策の推進を図ってまいります。

○議長(尾崎要二君) 多田純一君。

  〔多田純一君、登壇〕

○多田純一君 協議会のメンバーだけじゃなくて、対象者を増やして地元でいろんな御意見を賜っていきたいと、そんな御答弁でございました。

 死因究明等推進白書というものが今月9日に閣議決定されて、初めて策定されました。それぞれいろんな事例が取り上げられており、報告もされているようでございます。

 社会は──社会というか県民の方々は、この死因究明制度についてあまり知らされておりません。したがって、こういう県民の方への周知をする必要もあるんじゃないかなと思いますので、ぜひこういうことも含めて、住民への周知に関して検討していただきたいと思いますので、要望させていただきます。

 引き続いて、2点目の質問に入ります。

 チャイルドファースト社会の実現についてお聞きしたいと思います。

 こども基本法の施行や、こども家庭庁が新たな行政機関として来年4月に設置が決まりました。

 1994年に日本が子どもの権利条約を批准して30年がたち、今年6月15日、通常国会において、こども家庭庁設置法、こども家庭庁設置法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律及びこども基本法が成立。明年4月1日にこども家庭庁を創設し、子供政策を強力に推進していくための新たな司令塔として、「こどもまんなか社会」を実現し、子供を誰一人取り残すことなく、その健やかな成長を支援していくとされております。

 こども基本法は議員立法、特に自民党、公明党で進めてきており、子供の権利を守る理念を規定したものでございます。

 政府は、子供政策の大綱を策定し、総理をトップとするこども政策推進会議を設置し、法律の施行後5年をめどに、評価と措置を検討していくとなっております。

 公明党は、子供の幸せや子育ての安心が確保される社会こそ、国民全てに優しい社会であるとの考え方に立ち、子育てを社会の中心軸に位置づけ、社会全体で支援するチャイルドファースト社会の構築を目指して取り組んできております。2006年には、党として少子社会トータルプランを策定し、妊娠・出産への支援や教育費の負担軽減、働き方改革など、同プランに基づく政策を着実に具体化してまいりました。

 近年では、2019年10月から幼児教育・保育の無償化がスタートいたしました。その翌年、2020年に、党として幼児教育・保育の無償化に関する実態調査も実施したところ、今後取り組んでほしい政策として、保育の質の向上との回答が過半数に上りました。

 今回、このこども家庭庁には、幼稚園や保育所の一元化は先送りされておりますので、早急にこの問題も取り組むべきと考えます。

 国会での議事録を読むと、様々な議論が出てまいります。衆議院で30時間、参議院で25時間、合計55時間。重要な法案となりました。

 先日、内閣官房に設置されておりますこども家庭庁設立準備室を訪問し、企画官と参事官補佐にお会いしてまいりました。内閣府の外局に置き、各省大臣への勧告権を持つ組織だそうです。

 子供政策は、現在は文科省、警察庁、総務省、法務省、厚労省、経産省にまたがっており、新しくできるこども家庭庁は総勢約300人規模になるようでございます。来年に向けた概算要求は4兆7000億円。これまでの子供関係予算の倍を目指すとされております。

 私は、子供を取り巻く環境の中で、例えば学校不登校の問題では、不登校の児童生徒は全国で20万人を超えていますし、本県においても大きな教育課題になっております。ひきこもりも社会問題になって久しい感じです。児童虐待も、児童相談所が対応した人数も全国で20万件を超えております。子供の貧困問題は、全国的には7人に1人という報告にもなっております。わいせつ事件も相変わらずなくなりません。最近では、ヤングケアラーの問題など、数々ある中で、子供の社会の中で生きづらさをどう取り除いていけるのかが問われている気がいたします。

 このこども家庭庁やこども基本法という新たな国の動向に対し、県の考え方をお聞かせいただきたいと思います。仁坂知事にお聞きしたいと思います。

○議長(尾崎要二君) 知事仁坂吉伸君。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 子供を大事にして、子供がたくさん生まれ、元気に育っていくというのが大目標であります。このため、子供に関する施策については、県としてこれまで待機児童対策、幼児教育・保育の無償化及び児童虐待やいじめ防止対策の強化など、物すごく多岐にわたる様々な施策の充実に取り組んでまいったところでございます。

 その一環として、議員がおっしゃるとおり、生きづらさや困難を抱える子供への対応が特に重要であると考え、権利擁護に先進的に取り組んでおります。

 具体的には、これは新しく始めましたが、弁護士等のアドボケイトが、児童相談所で一時保護を行っている子供に代わってその声を周囲に伝える意見表明支援事業を実施しているところでもあります。

 また、様々な経済的困窮やいじめ、不登校、虐待など、複合的に課題を抱えているケースも多くて、教育委員会だけではなくて、福祉部局とか警察も動員をし、それから市町村にも協力を願って、包括的に対応しているところでございます。

 しかしながら、正直に申し上げますと、これほどいろいろと手を打っているんですけれども、全国的にもそうでございますが、当県でも少子化の進行に歯止めがかかっておりません。また、これも全国的な傾向ですが、児童虐待相談や不登校の件数が過去最多になるなど、子供を取り巻く状況は深刻さを増しております。

 こうした中、子供関連施策を総合的に推進するため、御指摘の国においてこども基本法が制定され、こども家庭庁が設置されるということは、大変時宜にかなったよい動きだというふうに思います。

 今後、こども家庭庁を中心に子供関連施策の見直し、拡充についての議論が深まっていくことを大いに期待するとともに、県としても、この法律に基づいて子供を取り巻く状況や子供、養育者等の意識等の調査を実施し、課題を分析して、脆弱な状況にある子供や子育て当事者等の意見を反映させる県こども計画を策定しなければならないということでございますので、これをしっかりやっていくし、そのほかにも国レベルの議論に資する県の取組や意見を伝え、国と連携して、全ての子供たちが健やかに成長できる社会を実現してまいりたいと考えております。

○議長(尾崎要二君) 多田純一君。

  〔多田純一君、登壇〕

○多田純一君 意識調査を行い、また、こども計画を県として策定されると、そういう御答弁をいただきました。

 子供の貧困問題でも明らかになっている独り親家庭への支援や、また、先ほど申し上げましたヤングケアラーも新たな問題としてこの議会でも取り上げられ、実態調査なども行われております。様々な課題を抱えた子供の中で、県は保護者が養育できない児童について、施設ではなく里親への委託を原則とし、また、里親への委託が困難な児童については、施設で養育される場合でも施設の小規模化・地域分散化を行い、できる限り家庭的な環境で養育することが求められております。

 このことを踏まえ、児童がより家庭的な環境で健やかに成長できる環境を保障するため、県社会的養育推進計画を策定し、令和2年度から令和11年度までを前期・後期と5年間ずつ区切って計画を進めておられます。計画の進捗状況をお示しください。福祉保健部長にお尋ねいたします。

○議長(尾崎要二君) 福祉保健部長。

  〔志場紀之君、登壇〕

○福祉保健部長(志場紀之君) 県社会的養育推進計画の進捗状況につきましては、まず、施設の小規模化・地域分散化に関しては、県内8児童養護施設においても順次、小規模グループケアの整備などの改築整備が行われ、令和5年度中には全ての施設における施設整備が終了する見込みとなっています。

 続いて、県内の里親登録数に関しては、市町村や関係機関を巻き込んだ地道な広報啓発や新規里親の開拓の取組により、令和6年度目標の198世帯に対して、令和3年度末現在で既に176世帯の登録に至っており、里親登録数は順調に増加しております。

 一方で、里親委託率に関しては、令和6年度目標の31.5%に対して、令和3年度末現在では20.1%となっており、近年伸び悩んでいる状況にあります。

 その要因としては、里親の希望に偏りがあり、児童とのマッチングが難しいことなどが考えられることから、令和3年度からは、登録後の里親に対して、里子に対する希望の幅を広げるため、施設での実地教育や週末里親への参加を通じて里親体験を積極的に推し進めるとともに、不安や悩みに個別に対応するため、定期的な里親宅への訪問や休日夜間の相談支援体制を充実させたところです。

 今後も引き続き、保護者の元で養育されることが困難な全ての児童が家庭と同様に養育される環境づくりを進めてまいります。

○議長(尾崎要二君) 多田純一君。

  〔多田純一君、登壇〕

○多田純一君 ありがとうございました。

 続いて、この問題の最後の質問に移りたいと思います。

 里親制度や社会的養護施設を退所した後の課題が指摘されております。里親や施設を離れて18歳での自立は極めてハードルが高く、退所後、孤立して生活苦に陥るケースなどが相次ぎ、見直しを求める声が上がっています。

 最近では、ケアリーバー、ケアとは保護、リーブとは離れる、ということでございます。

 厚労省が行った全国実態調査では、生活費や学費の問題や非正規就労が多いため、5人に1人が収入より支出が多い赤字生活であることが明らかになっております。

 また、社会的支援の必要性から、児童福祉法の改正により22歳までとなっていた自立支援の年齢制限が撤廃されましたが、一度退所するともう施設に戻れない。全国児童家庭支援センター協議会の橋本達昌会長は、晴れて施設を出た後、数年で失職し、行方不明になる事例が多く、施設や里親が所在を把握できていないケアリーバーが約7割に上るという事実を指摘されております。戻る場所やアウトリーチの拡充を訴えておられます。

 特に今回の児童福祉法改正では、ケアリーバーの拠点事業について、都道府県の業務と位置づけられております。ケアリーバーへの支援強化について、県のお考えを福祉保健部長にお尋ねいたします。

○議長(尾崎要二君) 福祉保健部長。

  〔志場紀之君、登壇〕

○福祉保健部長(志場紀之君) 県では、里親家庭や児童養護施設等から自立予定の児童に対して、法律問題や金銭問題などの生活技能等を習得することを目的とした講習会の開催のほか、自立後の児童等に対しても、生活上の不安や悩み等の相談に支援員が応じる児童養護施設退所者等アフターケア事業をこれまでも実施しています。

 事業の対象となる自立予定児童に関して、令和元年度までは、施設退所直前の高校3年世代児童のみを対象としていたため、退所までに支援員が児童に関わる期間が短く、児童との信頼関係が築きづらいという課題があったため、令和2年度からは、対象児童の範囲を高1年代まで広げるとともに、支援員が毎月対象児童と面談し、施設等を退所した後も気軽に相談してもらいやすい関係の構築に努めているところです。

 また、高校に進学せず児童養護施設を退所した児童が主に入居する自立援助ホームについて、平成20年4月に本県で初めて設置された後も順次整備が進んでおり、現在は6施設が県内各地に所在し、これらの児童等が社会的自立に向けた活動を行う拠点としての役割を果たしています。

 議員御指摘のとおり、改正児童福祉法が今般成立し、令和6年4月には、自立支援に係る年齢制限が撤廃される予定となっていることも踏まえて、県としては国における検討状況も見極めつつ、これらの児童に対してどのような支援が必要とされるのか、支援の充実強化のための実態調査を行い、そのニーズを把握していきたいと考えております。

○議長(尾崎要二君) 多田純一君。

  〔多田純一君、登壇〕

○多田純一君 最後に要望とさせていただきたいと思います。

 今、御答弁もいただきましたけども、このこども基本法というのは、子供の抱える問題を行政のど真ん中に据えて取り組んでいきたいと、そういうことで新たな行政府ができるわけでございます。

 先ほども申し上げましたが、子供の社会の中で生きづらさをどう取り除けていけるのかということが問われている気がいたします。しっかり子供に寄り添い、子供の声をしっかり聞いていただいて、新たな計画づくりをしていただきたい、そういうふうにお願いを申し上げます。

 それでは、3点目の質問となります。

 教育力の向上を目指して、お尋ねをいたします。

 本県における免許外教科担任の解消について、2月議会で取り上げました。文科省は、相当免許状主義として、教育職員は教育職員免許法に基づいて授与される免許状を保有しなければならないし、勤務する学校種及び担任する教科に相当するものでなければならないと定めております。

 教員免許状は、取得したい教科の教職課程がある大学、短期大学等に入学し、法令で定められた科目及び単位を修得して得られる資格です。教育実習なども経験させ、教員の資質確保として得られる免許となっております。

 免許外教科担任も現実的な運用として、難しい側面も考慮して1年以内の期間を設定し、抑制的に例外として行うようにと文科省から指針も出されております。

 しかし、本県ではこの10年間、免許を持たない教員の教科担任が常態化しており、現状を指摘し、改善を求めたところでございます。具体的には、中学校では技術・家庭、また数学や理科、国語のほか美術や保健体育。高校では情報や公民などの免許外教員の配置が目立っていると申し上げました。

 学校現場では、その担当の先生が当該教科の免許を持っている先生かどうかなどは子供たちには分からず、教えられているのが現状です。

 2月の県議会で私の指摘に対し、宮﨑教育長は、「教科専門性に応じた質の高い授業を提供し、生徒に興味、関心を育むという学校教育の目標達成において大きな課題と認識しています。教育長として重く受け止め、改善に向けて真摯に取り組んでまいりたい」という御答弁をいただいております。

 私が指摘した各教科における令和4年度の状況をお示しください。

○議長(尾崎要二君) 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 質の高い授業を提供するためには、免許外教科担任は課題の一つであると考えており、その改善に向けて取り組んでいるところであります。

 今年度、免許外教科担任が授業をしている学校数は、中学校においては、国語7校、数学7校、理科10校、美術9校、保健体育9校、技術69校、家庭65校、また、高等学校においては、公民15校、情報12校となっております。

 中学校においては、学校の小規模化が進んでいる中で、その改善策として、免許を有する教員の複数校勤務も一つの有効な方法でありますが、教職員や学校、市町村教育委員会との共通理解が十分進んでいない状況にあります。

 高等学校においては、直接学校に働きかけ、教員配置や校内担当を見直すことで改善が進んでいるところです。

 一方で、免許外教科の授業を担当する教員は、教材研究に日々熱心に取り組み、教科の指導に必要な知識、技能を補うことで授業の質の保証に努めてまいります。

○議長(尾崎要二君) 多田純一君。

  〔多田純一君、登壇〕

○多田純一君 御答弁いただきました。理科で10校、数学で7校、保健体育で9校、技術で69校、家庭科で65校、国語で7校、美術で9校と、そういうお話でございました。

 一方で、ちょっと気になるのが、7月に発表されました令和4年度の全国学力・学習状況調査の結果です。この問題につきましては林議員も取り上げておりましたけども、小学校は6年生で国語と算数と理科、中学校は3年生で国語と数学と理科が対象になっています。その中で小学校は、各教科とも全国平均レベルになってきました。気になるのが中学校の学力調査の結果です。国語や理科の課題が大きいようです。

 国語は読む、すなわち読解力、理科では結果の意味を考え、探求の過程の見通しを持つことに課題があると分析されております。この中学校3年生は3年前、平成31年、令和元年ですけども、小学校6年生のときにも全国学力・学習状況調査を経験しております。このときは国語も算数もほぼ全国平均の結果となっております。同じ生徒が対象です。

 中学3年間で状況がよくなっていれば安心できますが、課題が多くなったとすれば、何か教え方に改善が必要なのではないでしょうか。このことをどのように捉えているのか、教育長にお尋ねしたいと思います。

○議長(尾崎要二君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 議員御指摘のように、今年度の全国学力・学習状況調査において、小学校の3教科及び中学校の数学は全国平均と同程度でしたが、中学校の国語と理科は全国で下位であり、3年前の調査と比較して、課題があります。

 これまでの調査において、小学校、中学校ともに基礎的・基本的な知識・技能に関する学力に比べ、それらを活用する能力に課題があるとされてきました。

 これは、書かれた文章をしっかり理解し、それらを利用して思考する力や、複数の条件の下に判断して考える力等に課題があります。学力調査の対象教科だけではなく、小学校、中学校における全ての教科の授業において、そのことを意識した授業が十分でないために、学年が上がるにつれて課題が顕在化していると考えられます。

 特に多くの教科を1人の教員が教える小学校に比べ、教科担任制を取る中学校では、授業づくりや学力向上の取組を組織的に行わなければなりません。授業力向上や授業改善に向けて、学校を挙げて取り組むように学校マネジメントの向上が必要です。

 さらに、今年度、喫緊の対応として、二つのことを実施しています。一つ目は、中学校国語科の全教員に対する研修です。文部科学省の学力調査官を招いた授業実践の講義と示範授業を参観する研修を実施しています。

 二つ目は、年2回実施する県学習到達度調査の有効活用です。学力の状況を経年で把握、分析することにより、今後の教育施策の検証、改善に役立てるとともに、学習内容の定着状況をきめ細かく把握し、教員の授業改善に生かしています。

○議長(尾崎要二君) 多田純一君。

  〔多田純一君、登壇〕

○多田純一君 御答弁をいただきました。

 免許外の先生方もいろいろ工夫はされていると思います。長く続けている免許外教科担任もなかなか、基礎力はついてきたと思うんですけど、応用力がね、いろいろ課題があると思うんです。その応用力というのは非常に難しい面ではないかと思うんです。この免許外教科担任もその一因ではないかと、こんなふうに思えて仕方ないですね。

 ですから、早く免許外教科担任の解消をしていただきたいと思いますし、それなりに、やっぱり大学のときにその教科を目指して勉強して、また、それなりにやっぱり工夫をする先生が、本当に教壇に立ったとき、いろんな意味で分かりやすく、先生に接せられるんじゃないかと思うんですね。

 ところが、今年、「悪いけどあんた、数学と社会担当してよ」と言われて、数学の免許は持っていますけども、社会の免許は持っていない、そういう先生がいらっしゃるんですよ、実態的には。だから申し上げているんです。

 全国的には、これの解消を進めています。だから、和歌山県はこの10年間、ずっと常態化しているということを2月のときにも申し上げましたし、事例を紹介させていただきました。

 早く解消しないと、応用力というのは一長一短ではなかなかつかないんじゃないかと思うんで、その辺の課題をよろしくお願いしたいと思います。

 したがいまして、今年度に取組を行ったその内容と、基本計画にも入れて、今後数年にわたって是正していくというお考えもお伺いしておりますので、今年度の取組と策定中の第4期和歌山県教育振興基本計画で今後どのように進めていかれるのか、お考えをお示しください。

○議長(尾崎要二君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 免許外教科担任を解消する取組としましては、今年度の採用試験において、不足している教科の免許保有者を優遇するための加点制度を拡充するとともに、受験しやすくするために、音楽、美術、家庭、保健体育で中高共通募集にいたしました。また、大学を訪問し、積極的な免許取得の要請や広報活動を実施いたしました。さらに、受験機会を増やすために追募集を行います。

 このような取組により、不足する教科の出願者数は増加傾向にあり、今後の採用者数の増加が見込まれます。

 また、高等学校の情報科については、今年度から5年計画で情報科免許を取得するための認定講習を実施しているところです。

 今後の採用につきましては、小規模校に配置できる教員数や他教科とのバランスも考慮しながら、将来を見通した長期的な計画の下、実施してまいります。

 また、非常勤講師の配置や必要とする教科の教員が未配置の近隣校との兼務、それから、指導力向上のための研修の実施、ICTを活用して他校の専門の教員の授業を受講できるようにすることなど、地域や学校の規模等によらず、質の高い指導ができるよう取り組んでまいります。

 現在策定中の次期和歌山県教育振興基本計画におきましても、教育環境の整備の一つとして、教職員の資質、能力の向上に関連して、免許外教科担任の改善に取り組んでいきたいと考えております。

○議長(尾崎要二君) 多田純一君。

  〔多田純一君、登壇〕

○多田純一君 ぜひ早急に解消できますように計画を進めていただきたいと思います。

 先ほど教育長のほうからもお話がありましたけども、質の高い授業を提供し、生徒に興味や関心を育むという学校教育の目標と、こういう話がありましたね。

 最近、STEAM教育ということが言われ出しておりますけども、教育長、御存じですか。(「はい」と呼ぶ者あり)さすがですね。STEAM教育というのは、探求と創造、知るということから今度は創る、「創る」というのは「創造」の「創」ですけども、クリエーティブな発想で問題解決を図り、実現していく手段を身につけさせるために必要な教育とされております。

 このSTEAMというのは、SはScienceでTはTechnology、EはEngineering、AはArt、最後のMはMathematics。科学、中学でいうと理科ですね。それから技術、先ほどから言いましたけども、技術、それから工学、芸術、数学、こういうことを分野横断的にしていく教育概念だと言われております。

 アメリカではオバマ大統領の頃から、そしてヨーロッパでもこれが広がっておりますし、日本でも今、中高一貫教育などで徐々に取り入れられているそうでございます。

 しっかり理科や技術、そして芸術性も入れて、発想を楽しく、また、それぞれ持っている才能を磨いていく大事な要素ではないでしょうか。

 受験に役立つ中学生の英数国理社の主要5科目と言われて久しいですけども、そういうことにとらわれがちなんです。

 ですが、ぜひ教育長、このSTEAM教育なども参考にしていただいて、宮﨑教育長の時代に教育の課題に対してしっかり向き合っていただいて、いろんな挑戦をして改善をしていただきたいということを心から念願いたしまして、私の一般質問を終わらせていただきたいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手)

○議長(尾崎要二君) 以上で、多田純一君の質問が終了いたしました。

 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。

 この際、暫時休憩いたします。

  午前11時33分休憩

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  午後1時0分再開

○議長(尾崎要二君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 38番杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕(拍手)

○杉山俊雄君 こんにちは。

 議長の許可を得ましたので、早速質問に移ります。

 初めに、生活保護世帯の大学生に奨学金を支給してほしいとの思いで質問をします。

 生活保護世帯の大学等進学率について、全国は、77%に対して生活保護は37.3%で、全国の半分です。一方、和歌山県では、全県で73.5%に対して生活保護世帯は23.9%で、3分の1以下です。全国に比べて、非常に低いのが特徴です。

 生活保護世帯の大学等進学率が低い理由は明白です。それは、配付資料のグラフを見れば歴然です。グラフを見てください。

 こういう色つきのグラフ(資料を示す)、折れ線グラフが四つあります。上二つ、赤と紫は、これは高校の進学率であります。だいだいは、これは全国の平均です。それから、紫は生活保護世帯の高校進学率です。5%ほどしか格差はありません。それから下二つ、青と、これは黄色かな、ウグイス色か。その二つがありますが、青は大学進学率であります。下のウグイス色は、生活保護世帯の大学進学率です。

 高校進学で、格差がほとんどなく、高い進学率を示しているのは、生活保護法による高等学校等就学費と県の奨学給付金があるからです。高等学校等就学費には、教材費、授業料、入学料、入学考査料、交通費、学習支援費等があります。また、県の奨学給付金、年額3万2300円の支給もあります。このように、生活保護世帯には高等学校の教育費のほとんどが給付されています。心配なく高校教育が受けられる条件が整っています。

 一方、生活保護世帯で大学などに進学した子供は、支給の対象外で、自立して生活を営まなければなりません。親元の世帯は、対象家族の減少で生活保護費が減額されます。高校を卒業すれば、自立して生活しなければならないので、生活費や学費を賄うのは容易ではありません。自宅外では家賃など、さらに出費がかさみます。

 50年前、国立大学の授業料は、月額1000円で年間1万2000円でした。家庭教師等のアルバイトをすれば、下宿をしても大学生活を心配なく送ることができました。

 今の物価は、50年前と比べて約50倍になっています。一方、労働者の賃金は約5倍にしか増えていません。賃金ベースでいえば、大学の授業料は年間6万円ぐらいが妥当ではないでしょうか。それが今では、国立大学の授業料は年間58万円で、その上、入学金は約23万円必要です。初年度には約80万円が必要になります。私立大学なら、それ以上の学費等がかかります。自宅通学ならば約10万円、自宅外なら約16万円の必要経費がかかります。

 生活保護世帯の子供は、一人で自立して大学に通うことは困難です。奨学金は貸与が多く、大学卒業後に返済ローンが待っています。大学へ行くより、就職するほうが家計を助けることになり、大学進学を諦めざるを得ません。教師になる夢も、負担増に耐えられないと進学を諦めたという生徒もいます。給付奨学金があれば安心して大学に行けるのに、生活に困っているから大学なんて考えられない、そんな状況ではないでしょうか。

 生活保護世帯であるがゆえに、教育の機会が奪われています。大学等進学率の大きな格差を生活保護差別と捉えるべきだと思います。公教育には、格差を是正する役割があります。貧困の連鎖を断ち切らなければなりません。

 私は、6月の文教委員会で、生活保護世帯の子供の大学等進学率の低い理由を尋ねると、「様々な理由があると思うが、これといった決め手はないと思う」との答弁でした。私は、教育の機会均等という観点から、経済力に応じて大学進学が決まり、その上、全国よりも非常に低い状況に危機感を持ってほしいと指摘しました。これに対して、県教育委員会は、「国・県の制度を知ることなく進学を諦めることのないよう、学校を通じて周知している」との答弁でした。

 確かに、生活保護世帯及び非課税世帯への大学進学に関する国・県の給付奨学金制度があります。国では、令和2年度から高等教育の修学支援として、経済的に困難な学生の支援を目的として、授業料や入学金の免除とか、給付奨学金の支給80万円を実施しています。しかし、県は、生活保護世帯及び非課税世帯の何割が利用しているか把握していません。

 また、県では、大学生等進学支援金として、年間60万円を4年間貸与する制度があります。大学等卒業後3年間、県内に居住し、県内外に就職すれば免除となる制度です。今年度、50名の募集で42名が内定しています。対象は非課税世帯や生活保護世帯ですが、これらの世帯の何割が利用しているかも、県は把握をしていません。

 令和2年度の生活保護世帯の卒業生は44名です。県の生活保護世帯の大学進学率23.9%を当てはめれば、10名程度が大学に進学している可能性があります。これを全国平均の大学進学率まで高め、生活保護差別を是正していく必要があると考えます。

 そこで、教育長にお伺いします。

 生活保護差別をなくすため、県の制度については、生活保護世帯を含む低所得者世帯の大学進学希望者を対象に、4年制大学、評価3.5、3年間県内居住、日本学生支援機構の奨学金を受給していること等の条件をなくし、給付にすれば、安心して進学できます。制度を変更してはどうですか。お答えください。

○議長(尾崎要二君) ただいまの杉山俊雄君の質問に対する答弁を求めます。

 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 現在、国では、高等教育の無償化制度として、真に支援が必要な低所得世帯の生徒に対する授業料等の減免と給付奨学金があります。

 高い進学意欲を持っていながら、国の制度を活用してもなお経済的に進学が困難な生徒に対しては、県独自の支援策として、大学卒業後に県内就職等すれば、返還免除となる和歌山県大学生等進学支援金を実施しているところであります。

 限られた財源の中で、少子化対策の一環として大学卒業後に県内に就職等することを支援することには合理性があり、意味があると考えております。

○議長(尾崎要二君) 杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕

○杉山俊雄君 今あるように給付できる制度があると、国と県を合わせて受給できれば、よい制度だと私も思っています。

 しかし、県では生活保護世帯の大学進学率が全国平均の3分の1以下であり、私は、これだけの格差を教育格差、先ほどから言っている生活保護差別と捉えています。教育長は、この格差をどのように捉えているかお聞きしたいと思います。

○議長(尾崎要二君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 格差というふうにおっしゃいますが、県内で学びたい子供の希望が県内でかなえられるように、できるだけ条件整備を行うということが教育の目的の一つだというふうに考えております。

 例えば、経済的理由によって修学が困難な子供には、可能な限りの経済的な支援、それから、スポーツを頑張りたいなという子供には、体育施設を整備したり、そういったことを、例えば勉強したいという子供には、補習授業をしっかりとするとか、そういったことを今後も県内で学びたい子供たちに対して、可能性を伸ばせるように最適な支援に努めてまいりたい、このように考えています。

○議長(尾崎要二君) 杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕

○杉山俊雄君 私が問うたのは、この教育格差をどのように認識しているかというふうに聞いたと思うんですよ。

 それに対して、格差と認識するのかどうかもあまりはっきりと答えなかったというふうに思いますし、それをなくしていくには、当然生活保護世帯の子供が何人受給しているのかということ、例えば県の条件付貸与も、何割の生活保護世帯の子供が受給しているのか。あるいは、国の制度も何割の生活保護世帯の子供が受給しているのか。こういうことをいっこも分からない、不明、こういうふうに言うんですよ。そういうことを分からずにして、格差が埋められるのか。格差をなくそうと思えば、どこに原因があって、そのためにどういうふうな対策をするのかということをしっかりしないと、僕は、格差は縮まらない。

 前の文教委員会のときは「周知をしています」。だけど、周知をしていても、しているだけで、進学率を伸ばそうという、そういうふうなことが見られないと、周知だけで進学率が上がるとは僕は思っていません。だから、条件なしで給付にしていただければ、安心してやれる。

 県内に住むのは、それなりの合理性があると言うんですけども、そうでなくても、給付にして全国へ行っても、また帰ってくるかも分かりませんし、貧困の連鎖を断ち切るということは、それは社会に還元してくれるとは思うんですね。大学を出て、それだけの知識を持てば、それは、和歌山県であろうと全国であろうと還元されてくると、生かせると、こういうふうに思うので、ぜひそんなふうにしてほしいと思うんです。

 周知は、県はしていると言うんですけど、周知も、高校3年生でそういうことを知ったって、もう既に進学を諦めているというふうに思うんですよ。高1に入った時点で進学を──もうこれは大学なんか行くよりも家計を助けて、そのために就職したい、こういうふうに思って進学を諦める。私もそうでした。高1のときに進学コースに入っていましたが、高2では就職組に入って、もう進学を諦めたという経験があるので、高3で幾らこういう支援がありますよと教えていただいても、もう既に進学を諦めている。だから、周知の仕方も、どういうふうにすれば希望が持てるのか、そういうところはきっちり押さえてやってほしいなと、こういうふうに思います。

 それから、僕は、限られた財源だと言うんですけど、日本共産党県議団で県立和歌山さくら支援学校の調査に行きましたときに、その支援学校よりも私がびっくりしたのは、その隣接している北高等学校の西校舎のプールでした。50メートルプール4コースがざっとあるんですね。おお、すごい。室内プールです。ネットで調べたら、その建設費は、格技場があって複合施設ですけれど、5億6000万円。そして、1時間以上かかる子については寮もあります。水泳部は、14名のうち8名がその寮に入っているというふうに聞きました。寮は建設費2億円です。すごい。1日1000円ちょっとでもう生活できるように、1か月3万円幾らで生活できます。

 この和歌山スイム、要は子供たちのアピール、水泳部のアピールを見せてもらったら、すごいです。基本的に週9回練習をします。それから、いろんな機械があって、酸素カプセルが2基あります。エアロバイクといって、体力なんかをトレーニングするものもあります。パワーマックスといって、スピードや持久力をつける機械もあります。それから、InBody370とかというようなので、体力の状況を、いろんなことを測定できる機械がある。こういうふうに至れり尽くせりで、アスリートを育成する。

 それから、栄養学、(チラシを示す)これを見ると、栄養学の先生を呼んで、年10回ぐらい講義をして、そして、「アスリートのための食事」とここに書いているんですけど、そういうことまでもして、プールの練習後にすぐにおにぎりが食べられるように、週2回、「女の先生が」と書いてあります。女の先生が作って、それを週2回用意すると。

 そんなふうに、本当に至れり尽くせりの、アスリートにはこれだけのことをしていただける。それをアスリートじゃなくて、全ての県立高校の生徒にこういうことをしていただければありがたいし、生活保護世帯の子供、去年ですか、40数名、50名あるかどうか、全て大学へ行くとは限りません。半分だとしてもその20何人、20人から30人あっても、年間60万円としたら1800万円とか、そういうお金で済むと思うんです、貸与にしても。

 だから、ぜひそういうことをお願いして、次に進みたいというふうに思います。

 二つ目は、中学校英語が難しくなっていることについて質問をします。

 東京都世田谷区の中学校1年生が、「先生が英語で全部話しているから分からない」と涙を流し、1学期の定期テストの平均点が40点台との記事を読んで大変驚きました。60年前に英語を習った人間には分かりません。小学校から英語を取り入れ、時代の要請だと言われても、日本語を十分に理解できていない子供にオールイングリッシュの授業は酷ではないでしょうか。私がアメリカで授業を受けているようなものだと思いました。

 今年4月から学習指導要領が変わり、「授業は英語で行うことを基本とする」になり、文法については、「繰り返し使用することで、気付きを促したりする」としています。つまり、文法が分からなくても進むというのです。

 なぜ中学校の英語が難しくなったのかを何人かの英語教師に聞きました。簡単にまとめると、四つぐらいあります。

 一つ目は、教科書の見開き2ページを1時間で学習しますが、単語数が多く、覚えられません。小学校では600語を学んでいますが、書けません。中学校では、新たに1600から1800語を学びます。

 二つ目は、動詞について言えば、今まで見開きはbe動詞だけでした。今は、be動詞と一般動詞が入ります。進度が倍加し、ついていけません。

 三つ目は、教科書本文の文章量が多く、内容が深過ぎます。高校で教えている絶滅危惧種──専門用語だそうですけども──など、ふだん使用しない単語が中3で出てきます。

 四つ目は、文法では、高校で学んでいた仮定法など8種類が下りてきて、理解するのが困難です。

 私の後輩であるオールイングリッシュで授業をする先生がいるんですが、その先生でも、「中1では、文法は日本語で説明します。そうでないと理解できないから」と言っています。別の英語教師は、中1の学年集会で「英語好きな人、手を挙げて」と言ったら、3人ほどしか手を挙げなかったと言います。「英語、無理なんよ、私」と話し、別の生徒は「英語が一番嫌い」と言ったということです。小学校から英語に親しんでいるのに、どうしてこんなに英語嫌いが増えるのか、不思議でなりません。

 和歌山大学の江利川名誉教授は、学習指導要領が変わったのは、「1割のエリートを育成するために9割を切り捨てる、安倍政権の負の遺産」と指摘しています。小学校で英語教科化、中学校では英語で授業の方針は、2013年4月の中央教育審議会答申には盛り込まれていなかったのが、翌6月に第2期教育振興基本計画で閣議決定されました。理由は、結果の平等主義から脱却し、トップを伸ばすためと説明、決定過程には、英語教育の専門家はいなかったといいます。語彙が倍増したのは、中国や韓国への対抗心からで、「素人集団が妄想で決めたもの。今でも英語嫌いが増え、かえって英語力が落ちてしまう」と新聞のインタビューに答えています。外国との対抗心で、こんなに詰め込まれてはたまりません。ゆとりを持って、基本をしっかり学ぶ必要があると思います。

 鳥飼玖美子立教大学名誉教授は、新聞のインタビューで、「中学生は、英語の基礎を身につける最適な時期。中学校で最低限の土台と学習の自立性を身につければ、高校や大学、社会に出てから自分で学んでいくことができる。英語の基礎として、音とリズム、基本的な語彙、文の組立て、論理構成を学ぶ。日本語と英語はまるで異なる。英語では、主語が来て動詞が来る。文の組立てをこの時期に教える。教科書の単語や簡単なフレーズを何度も繰り返し覚えることが大切」と語っています。また、将来話せるようになる英語の基礎を身につけるには、授業時数の確保、少人数学級と同時に、英語を学ぶ面白さや音声学に基づいた音声とリズム、文法を分かりやすく教えられる教員の力量こそが必要とも語っています。

 そこで、教育長に伺います。

 中学校英語について、現場の先生方は、「語彙数が2倍になった」、「文法では高校レベルが中学校に下りてきている」、「本文内容が難しくなっている」と言っています。難しくなっているとの認識はありますか。また、その要因は学習指導要領にあると思いますが、見解をお聞かせください。

○議長(尾崎要二君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 平成29年度に、小中学校の学習指導要領が改訂されました。外国語学習を円滑に進めるため、小学校では従来、小学校5年生から外国語に慣れ親しむために行っていた外国語活動を小学校3年生から始めるとともに、中学校から教科として学習していた外国語を5年生から始めることとなりました。

 小学校から教科化されていたことで、中学校の学習指導要領では、互いの考えや気持ちなどを伝え合う言語活動がより重視され、生徒の興味関心を高めるため、日常的な話題のみならず、社会的な話題に関しても扱うようになりました。それに伴って、語数や文法事項などの学習内容が見直されています。

 このように、小中学校の体系的な教育を進める中で、中学校英語教育が大きく変わったと認識しております。県教育委員会としては、学習指導要領改訂に向けて、これまでも小中学校新教育課程説明会や研修などを通じて、改訂の趣旨や要点などを周知徹底するとともに、学校訪問を通して教員の授業改善を図ってまいりました。

 また、中学校英語担当教員が、小学校の学習内容などを十分知った上で指導に当たることが大切であることから、小学校の英語の授業を参観する機会を設けるなど、小中学校の連携の推進を図っております。

 しかしながら、議員御指摘のとおり、中学校英語担当教員が変化に対する戸惑いや不安を感じることがあるかもしれません。大切なのは、生徒が興味関心を持ち学習することであり、そのことが生徒の英語力向上につながります。県教育委員会としましては、教員の指導力向上に資する研修を引き続き充実させてまいります。

○議長(尾崎要二君) 杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕

○杉山俊雄君 答弁は、指導要領に沿って着々と進めていると、教員には、しっかり研修を積んで指導力向上を図っていく、だから私には、生徒が英語嫌いと泣いているのは、教師の指導力不足だというふうに聞こえました。いつも何か生徒の点数が低ければ、教員の指導力不足だ、伝家の宝刀が抜かれますが、そういうふうに言われると、40年間教師をしていた私にとっては大変つらいものがあります。そんなことはない。いやいや、まあそれはいいですけど。

 昔、新幹線授業という言葉がありましたが、今はそれよりも早く授業が進む。一部の子しかついていけません。和歌山大学の江利川先生の「1割のエリート育成」との指摘どおりだと思いましたし、鳥飼先生は、基礎が大事やから何度も繰り返し覚えることが大切と語っています。しかし、今の授業では、ゆっくり教えられる時間的余裕はありません。

 そして、和歌山大学の江利川先生は、素人集団が決めた方向で学習指導要領が改訂されていると、だから、英語が分からない子供が増えているんだ。この先生は、「学習指導要領の撤回を求めている」とコメントをしています。そのことを申し上げ、次の質問に移ります。

 次は、「輝く!紀の国の教育」第47号の教育長のエッセイ、「二つのトピックス」について質問をします。

 初めに、部活に関するトピックスです。大変違和感を覚えました。

 一つ目は、部活が抱えている今日的な問題と、過去から引きずっている問題を同列に述べていることです。学校規模が小さくなり、教員数の減少で休止、廃部する部活が出てきたり、複数校で一つのチームをつくるなどは今日的な問題です。一方、やりたい競技が部活にない場合や競技を専門に指導できる教員がいない問題は、学校規模が小さくなったからではなく、昔から抱えていた問題であります。

 二つ目は、教員の業務量増加を部活の負担に矮小化している問題です。教育長は、「部活動指導の負担により教員の業務量が増え、多忙化や過労に繋がるとの指摘もある」と述べています。教員の業務の増加は、部活動だけではありません。部活動は、ここ何十年も同じように行われています。教員の業務の増加は、学テの学力向上事業に関わる会議や研究授業、それに伴う指導案、授業案づくり、また、教育委員会からの報告書類の処理等が多岐にわたるからであります。部活動が長時間になってきた要因は、勝利至上主義に偏った部活動の在り方が問題で、大会やコンクールの縮小や廃止を決断すれば解決すると思います。

 また、部活動の負担による業務の増加が「教員への道を躊躇、断念する一因にもなっている」と述べています。しかし、教員志望をちゅうちょ、断念するのは、教員の働き方が異常な長時間労働であることが教員養成大学の学生たちに浸透しているからであります。多忙化を招いている教育行政の責任にあると思います。

 三つ目は、専門性の高い教員が今の部活にじくじたる思いを持っているということです。教育長は、「部活動に高い専門性を有し、より意欲的に取り組みたいと思っている教員指導者にとっては、今の部活動に忸怩たる思いを持っている人もいると思います」と述べています。

 じくじたる思いとは、辞書で引くと「内心恥ずかしく思う」とあります。専門性の高い教員が現在の部活に内心恥ずかしく思うというのですが、意味がよく理解できません。他者の行動について語るときには通常使いませんが、多分誤用だと思います。他人に対して、恥だ、腹が立つ等の意味で使っているのだろうと文脈から推測しました。専門性を有しない教員が部活動を指導することが恥だと言われているように感じます。名もなき杉山のような専門性を有してない教員は、部活指導を恥じなければならないのでしょうか。専門性を有していなくても一生懸命部活動に携わってきた一人として、いたたまれない気持ちになってしまいます。教育長は何を恥と思っているのか、具体的に述べていただきたいというふうに思います。

 文科省は、「部活動の顧問は必ずしも教師が担う必要のない業務である」と答弁しています。県教委も文科省と同じだと言っています。「恥だ」と言われたら、私だったら「ばかにするな」と言って部活顧問を拒否すると思います。教育長の発言は、教師間に分断を持ち込むものであると思いますし、部活を担当している教員は、お互いに励まし合って、和気あいあいと部活の面白さを共有し合っていることを知らないのでしょうか。

 四つ目は、学校の部活の地域移行の問題です。文科省は、地域移行を、来年度から休日を段階的に移行し、令和7年度末をめどに進めていくこととしています。休日の進捗状況を検証してから、平日にも移行する計画です。

 検討会議の提言で、教師等の中には、専門的な知識や技量、指導経験があり、地域でのスポーツ指導を強く希望する者もいると述べられています。教育長は、「今後、学校の教員もスポーツクラブの指導者としての立場で指導に当たる仕組みを構築できれば、教員としてのやりがいや誇りを持って指導に当たることができると思う」と述べています。提言と同じ内容の発言だというふうに思います。

 専門性の高い教員が地域のスポーツクラブの指導員になった場合の所属はどうなるのか、はっきり分かりませんが、教員ではありません。その専門性の高い教員が、教員としてのやりがいや誇りを持って指導に当たれることができると言いますが、専門性を発揮できますが、教員ではありません。教員としてのやりがいや誇りは学校教育の中で発揮してもらいたいし、分かる楽しい授業にやりがいや誇りが持てるような教育環境を整備してもらいたいものです。

 そこで、教育長に伺います。

 部活の負担が業務を増やし、多忙化や過労につながると指摘していますが、多忙化や過労の要因は部活動ですか。

 また、専門性の高い教員のじくじたる思いは、今の部活のどのような状況を言っているのですか。具体的に述べてください。専門性の高い教員に「恥だ」と言わせることは、教師間に分断を持ち込むことになりませんか。

 それから、県の地域移行の全体像や課題、また、専門性の高い教員の所属等を教えてください。

 以上、3点にわたってよろしくお願いいたします。

○議長(尾崎要二君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 部活動が多忙化や過労につながる要因かについて、お答えをいたします。

 部活動は、学校教育の一環として学習指導要領に位置づけられた活動である一方、今日までの部活動は、教員の献身的な勤務によって支えられており、長時間勤務の要因の一つであることや、特に、指導経験がない教員には多大な負担となっているとの声もあります。同様のことがスポーツ庁においても示されております。

 次に、じくじたる思いが部活動のどのような現状について言っているのか、お答えをいたします。

 部活動指導については、担当する部活動の競技経験があるなしにかかわらず、全ての教員は日々懸命に指導に当たっていることはよく承知しております。私は、教員を競技の専門性が高いか、高くないかで区別するような発想は全くありませんでしたので、議員の質問を聞いて、正直、驚いております。

 教育広報紙の私のエッセイでは、「部活動に高い専門性を有し、より意欲的に取り組みたいと思っている教員指導者にとっては、今の部活動に忸怩たる思いを持っている人もいる」と記しています。

 私が直接話を聞いた教員のじくじたる思いとは、競技スポーツ経験で培ってきたことを実際の公立中学校の部活動指導で十分に発揮できていない自分と、かつて競技でしのぎ合ってきた仲間の中に、高いレベルの指導で成果を上げている者がいることへの自身の素直な思いであります。同僚教員のことを恥ずかしく思う等といった議員の解釈は、的外れでありまして、かえって、現場で日々真摯に部活動指導に取り組んでいる教員に失礼なことではないかと思います。

 運動部活動における地域移行の全体像や課題等についてですが、スポーツ庁有識者会議「運動部活動の地域移行に関する検討会議」の提言では、令和5年度から令和7年度までの3年間を改革集中期間とし、まずは、公立中学校等における休日の運動部活動から段階的に地域移行を進めると示されています。

 その中では、課題として、運営主体や指導者の確保、会費や保険等、保護者の費用負担などが挙げられており、本県においても同様の課題がございます。

 また、休日の指導を希望する教員は、教員としての立場で従事するのではなく、兼職兼業の許可を得た上で、地域部活動の運営主体の下で従事すること等についても示されています。

○議長(尾崎要二君) 杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕

○杉山俊雄君 じくじたる思いをあの中で読んでいくと、どうしても自分に思っているというふうには取れなかったので、私は誤用だと決めつけて質問をしました。そのことについては、大変申し訳なかったというふうに思っています。

 しかし、教育長が紹介した専門性の高い教員に、今の話を聞いて、私のあれは心外だというふうに言いましたが、私はその教員に大変失望しています。なぜか。専門競技の部活を持てずに、仲間の活動と比較して、悔しいや歯がゆいや腹が立つという、自分にそういうふうに思っている教員というのは恥ずかしくないんだろうか。どんな状況でも、自分が培ってきた知識や専門性を生かすのが専門性のある教員だと思っています。中学校段階では、技術指導よりも、基礎体力をつけるというのが7割から8割だというふうに思うからであります。

 それから、地域移行で専門性を発揮したいというのは理解ができますが、先ほども言いましたように、教員としての立場ではありません。それを教育長は、教員としてのやりがいや誇りを持って指導に当たれるというふうに言っていますが、教員でない者がそういうふうに持てるということ、そこには、どうも立場を混同しているんではないかなというふうに思っています。

 地域移行では、教員としての地位とか身分で部活を行っているのではないということを申し上げ、次の質問に移ります。

 次に、学習に関するトピックスです。

 少し疑問というか、違和感を覚えた一つ目は、学テを苦手克服のチャンスにするについてです。

 教育長は、県学テ2回実施で、「点数の高低に拘らず、苦手や解らないところを克服して、理解を深めるチャンスにして欲しい」と述べています。各自の点数は7月初旬に返却されますが、弱点が分かる個票はありません。なければ、苦手や分からないところを克服しようがありません。言っていることに矛盾はありませんか。苦手や弱点は、日々の授業で克服すべきだと思います。

 二つ目は、教員に対して、「学テ結果を生徒理解のツールにし、有効活用して力量を高め、生徒の学習意欲を高めてほしい」と言っています。学テが業務増加の要因になっていて、教員にゆとりがなく教材研究する時間もない中で、力量を高め、興味を引きつける授業をしろというのは酷であります。教育行政の責任で、教材研究する時間を確保してほしいものであります。

 最後に、教育長は、「二つのトピックスをうまく噛み合わせて、中学校教育が充実していくよう努めてまいります」と述べていますが、理解ができません。部活で業務が増え、学テでも業務が増えています。業務が倍以上に増えている中で、増えている二つの要因をうまくかみ合わせて充実した中学校教育に努力していくと言いますが、それは困難だというふうに思います。かみ合わせて業務が減る方法を教えていただきたいものであります。

 そこで、教育長に伺います。

 生徒には、学テを苦手克服のチャンスにしてほしいと述べていますが、その材料はありません。チャンスにする具体的方法を教えてください。

 それから、教員には、有効活用して力量を高め、学習意欲を引き出してほしいと述べています。教材研究する時間をどこで生み出すのか、また、かみ合わせて業務が減る方法を教えていただきたいというふうに思います。

 以上2点、よろしくお願いをいたします。

○議長(尾崎要二君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) まず、県学習到達度調査を生かす具体的方法についてお答えします。

 調査結果については、7月上旬に、生徒個人の教科ごとや領域ごとの正答率等が記載された個票として、各学校に返却しています。

 その結果を基に個別面談等を行い、担任から各生徒に対して、苦手分野の克服に向けて指導、助言をしています。また、個票とともに一人一人の課題に応じた復習用教材が示されますので、それらを活用して学習内容の定着につなげています。

 教員は、調査結果から、学習集団の特徴、定着度等が分かることから、今後の授業の改善、充実を進めることができます。

 次に、教員の業務軽減についてお答えします。

 教員が指導力向上に努めることは職責の一つであり、そのためには、教員の業務負担を軽減することが必要なことだと考えています。本県では、中学校において、三つの点で業務軽減に取り組んでいます。

 一つ目の人的支援としては、国の制度を利用した教員業務支援員や学習指導員、部活動指導員等を配置し、その軽減に努めています。

 二つ目の県学習到達度調査については、今年度から、採点や調査結果の分析、生徒個人の課題に応じた復習用教材の提供等を業者委託とすることで、教員の業務量を減らしています。

 三つ目の中学校の部活動については、地域移行を円滑に進めることにより、教員の負担軽減につなげようとしています。

 こうした取組により時間的な余裕が生まれるので、それぞれの教員が指導力向上に資するとともに、生徒に正面からじっくり向き合って、丁寧な指導を行うことが、中学校教育のさらなる充実につながると考えています。

○議長(尾崎要二君) 杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕

○杉山俊雄君 かみ合わせて業務を削減する、時間的余裕が生まれて教育の充実につなげると、こういうふうなお話でした。

 私は、6月の一般質問で、業務の負担増は二つあって、一つは、教員の定数が少なくなったということと、それと、スクラップ・アンド・ビルドができない県教委のせいにあり、新事業をしても、それに代わるものをなくせない、だから、どんどんどんどん積み上がっていく、そのことで業務が増えるんだというふうな話をしました。

 何ぼ今、教育長が言ったようなものをかみ合わせても、時間的余裕がありません。英語では研修が大事だ。学テでも研究授業が大事だ。研究、研修のオンパレードであります。そういうふうに私が言うと、担当教員から反論されました。研究授業は教師の命だと、こういうふうに言われました。なるほど、そうであります。命である研究授業に時間を惜しまずやれと言わんばかりに聞こえました。そしたら、教師の命である日々の研究授業、先ほども研究授業は大切だと言いましたが、それをどこで生み出すのですか。8時間の持ち時間の中では、勤務時間の中では、それを生み出す条件が今の学校現場にはありません。そのことは、小学校であれ、中学校であれ、12時間近く勤務をしている実態を見れば明らかであります。皆、持ち帰るか、残って一生懸命教材研究をしています。

 かみ合わせて、どこで生まれるのか。要は、労基法が通らない職場だから、自主的に研修するのは当たり前だというふうに私には聞こえてなりません。そういうことでいいのか。何ぼ労基法が通らない職場であっても、長時間労働を野放しにすることは許されないというふうに申し上げ、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)

○議長(尾崎要二君) 以上で、杉山俊雄君の質問が終了いたしました。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 34番坂本 登君。

  〔坂本 登君、登壇〕(拍手)

○坂本 登君 9月議会一般質問も最後の登壇となりました。皆さん方には、大変お疲れのところでありましょうけども、もう少しの間御静聴のほど、どうかよろしくお願いをいたします。

 ただいま議長の許可をいただきましたので、質問を行います。

 今回は、農業者の確保に関すること及び人口減少対策について若干の提案を申し上げ、これに対する知事の所感を求めるものであります。

 第1は、農業者の確保に関する質問であります。

 連日、テレビ、新聞は、ロシアのウクライナ侵攻を報道しています。もちろん私も、一日も早い終戦と平和が実現することを強く望む者の一人でありますが、一方で、私は、ウクライナの小麦の輸出制限に大きな関心を持ちました。世界第7位、2600万トンを生産するウクライナにとっては重要な国内産業であるとともに、この食料によって、世界中の人々が食生活、命を確保しているんだということを再確認いたしました。同時に、我々の日々の生活にとって、食料事情がどうなっているのか、改めて考えさせるきっかけとなりました。

 今、我が国の食料自給率は38%です。とりわけ、小麦、油類、大豆の自給率は極端に低くなっております。小麦は、86%が輸入に頼り、アメリカ、オーストラリアなどに依存しております。大豆はそのほとんどをアメリカに依存し、輸入は94%です。小麦や大豆、さらには、これらを原料として作られる食料品は、例えばパンや麺類、豆腐などのことを考えれば、もはや私たちの生活は、外国の農業によって支えてもらっていると言っても言い過ぎではありません。

 我が国では、まだ食糧不足までには至っていませんが、これらの価格はじりじりと確実に値上がりをしています。我々の生活が足元から脅かされ始めています。このあたりでもう一度立ち止まって、日本の食糧のこと、食料生産を担う農業のこと、その農業を担う農業者のことを抜本的に考え直す時期に来ているのではないでしょうか。

 ちょっと寄り道になりますが、今、世界の食糧事情はどうなっているのか、簡単に御紹介をしたいと思います。

 国連の報告によりますと、2021年、世界の飢餓人口は8億2800万人で、世界の人口の9.8%に当たるそうであります。1分間に17人の人間が飢餓で死んでいる。特にアフリカ辺りでは、深刻な事態を迎えているようであります。世界の人口は、2050年には92億人程度になり、食糧は今の70%程度の増産が必要と言われております。このため、食糧価格が高騰し、世界の食糧事情を圧迫するとともに、自国の食糧を囲い込む動きが強くなってきております。食糧を生み出す農業は、それだけ重要な産業であります。

 しかしながら、我が国の農業を取り巻く状況は、重要性とははるかに遠くかけ離れ、他の産業と比較しても、労働環境、所得など、全てにかなり苛酷な環境下に置かれていると言っても言い過ぎではありません。これでは、農業に取り組もうとする若者がいなくなる。子供に農業を継げと言う親はいなくなります。

 私は、今日、幾つかの視点から農業の実態を紹介し、最後に私なりの提案を申し上げ、当局の認識をお伺いするものであります。

 和歌山県の農業の実態を大ざっぱに見てみますと、現在、農家は、主業農家と準主業農家、副業的農家という三つの分類で考えられているようであります。主業農家とは、年間60日以上農業をする65歳未満の人がいる農家のうち、農業所得が所得の50%以上である農家をいい、65歳未満の農業者がいても、農業所得が所得の50%未満の農家を準主業農家、年間60日以上農業をする65歳未満の人がいない農家を副業的農家と言っておるそうであります。2009年の和歌山県の農家数は、おおむね1万7600戸で、そのうち主業的農家は5700戸、準主業農家は1900戸程度だそうであります。農業所得を主としている農家は、大体全体の3分の1程度だということが言えます。

 では、その農家の所得を見てみます。農家の収入は、おおむね農業所得と農業以外の農外所得、そして年金所得の三つで構成されていますが、既に皆様もお分かりのように、増えているのは年金所得のみ、特に農業所得の減少は大きいものがあります。これでは、農業をしようという若者、いわゆる農業後継者が減る一方になります。

 今、和歌山県で実際、農業を中心に生活されている基幹的農業従事者はどうなっているかを見てみますと、総数で2万8100人のうち、64歳以下の農業従事者、すなわち他産業でいう定年までの生産年齢人口は9600人、65歳を過ぎてなお農業で頑張っておられる方は1万8500人で、若くして農業を中心になって支えている方々は、全体の3分の1程度になります。

 この3分の1の農業就業人口が多いか少ないかについては、意見の分かれるところだと思います。農業をやめたい人を離農させ、その農地を、もっと規模の大きい農業をやってみたいという人を集め、大規模に圃場整備をして大型機械を入れて、生産性の高い大規模・高生産性農業を育成するという現在の国の農政を考えれば、この方向は正しいかもしれません。

 しかし、私は、県内の農業や農村の耕作放棄地の多さ、雑草で見る影もない農地、後継者がいなく廃屋になっている農家、こうした実情を見ますと、本当にこれでいいのかという思いに駆られます。北海道のように農地の大規模化が可能で、大型機械による生産性の高い地域の農業施策を一律に全国に適用できるのか、大いに疑問であります。

 全国のほとんどの地域は、小さな区画の農地です。地域によっては、段々畑を利用した農業生産も多く見られます。その所有形態も飛び地があり、さらに、農地の他用途への転用が可能な地域はさらに集約が難しくなってまいります。そこには、外国のような大規模で大型農業機械による農業形態はなじみません。地形に合った、日本人が得意としてきた手間をかけた労働集約型農業や、丁寧に耕してきた土地集約型のいわゆる日本型農業が一番適しているように思います。

 農業基本法以来、一貫して流れる農業の大規模化を進め食料自給率を高めていくといった政策は、米や麦、大豆といった単一作物の農業には適しているかもしれませんが、農業は自然条件や地形に大きく影響されます。結果的に見れば、米以外は我が国では定着しなかったと言ってもいいと思います。

 一方、食料には当然のごとく、野菜や果物といった手間をかけ、目を配りながら育て、私たちの毎日の食卓に新鮮を届けてくれる農業の役割も大きく、こうした分野はこれからもますます必要不可欠な分野となり、こうした農業を担う農業者の確保もまたますますその重要性を高めてくるのではないでしょうか。

 ここまで、私は、農業の実態と現在の農業政策の矛盾を指摘してきました。そして、何よりも日本の農業を支え、私たちの毎日の食卓、健康を守ってくれる農業者の確保の必要性を指摘してきました。

 ここからは、私の提案です。

 一言で言えば、農業者にも労働基準法並みの働き方と最低賃金制の導入をということであります。

 もちろん、労働基準法は、「労働者とは、事業に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と定義されていますので、自営業の農業者とは本質的に違います。当然、農業者には労働基準法は適用されません。

 しかし、農業従事者を取り巻く労働環境は、先ほどからも申し上げてきましたように、大変厳しいものがあります。農村には、昔から「朝は朝星、夜は夜星」という言葉があり、朝早くから暗くなるまで働くものと無言の教えがあります。今どき他産業では死語になっているこのような労働環境では、誰も喜んで積極的に農業をしようとは思いません。

 さすがに最近は、農業を取り巻く労働環境も改善されてきているようですが、それでも、他の職場のように出勤簿を押す、タイムカードを入れるといったような就業形態ではありません。加えて、新しく農業に従事した若者は、当分は家計を親が握り、サラリーマンのような就職したその月から給料をもらえるといった立場ではありません。このような農業の労働環境を放っておけますか。今のままで、日本の農業を支える農業者の確保はできますか。私は、到底無理だと思います。

 日本人の食料は大丈夫ですか。日本人の命は大丈夫ですか。私は、これからの食料安保は、農業者の確保、育成にかかっていると言っても過言ではないと思います。

 そこで、私は、例えば「農業者労働基準法」といったものを提案します。

 内容は、農業にも1日8時間労働という他産業並みの労働環境を適用したい。そして、新たに農業に従事する若者には、自立までのスタートアップ事業として、最低賃金支給制度を適用したいというものであります。8時間労働、週休2日制、他産業では当たり前のルールであります。農業に従事される方々にも、1日8時間労働をベースとした労働環境を整備する。また、先頃、和歌山が定めている時給889円という最低賃金は、1日8時間労働を前提に、労働者の権利を守る最低賃金法に基づく労働者のセーフティーネットであります。なぜ農業労働者にも適用できないのでしょうか。

 私は、64歳までの農業従事者を「農業者」と定義し、その方々にも最低限の労働環境を守ることを提案するところであります。県内の64歳以下の基幹的農業労働者は約9600人でありますが、百里の道も一歩から、私は、まず改革の第一歩は、新しく農業に就職する新規就農者から始めたいと思います。最近は、大体150名余りの若者が毎年、新しく農業に就職をしております。

 私が考える農業者育成支援資金の概要を紹介します。幾つかの前提条件を置きます。

 まず、新しく農業に就職する農業者は年間150人とし、最低賃金1時間当たり889円とします。支給期間は3年間、石の上にも3年と言います。3年支えれば、根づくのではないかという期待を込めています。支給率は、1年目は100%、2年目は75%、3年目は50%とします。2年目、3年目は、多少なりとも農業収入も見込めますので、段階的に支給率を下げました。1日の労働時間は8時間、1か月の労働日数は15日。15日は少ないように思われるかもしれませんが、農作業には、季節による繁忙があり、また、雨や台風で働けない日もあります。平均で15日と仮に設定しました。

 この前提で計算しますと、新規に就職した若者は、1年目は月額10万6000円余、年間128万円程度の育成支援金が支給されます。2年目はこの75%、すなわち月額8万円、年に96万円ほどになり、3年目になりますと支給率は50%になりますので、月額5万3000円、年間64万円ほどの支給額となり、この事業に要する事業費としては、1年目は150人が対象ですので1億9200万円、翌年は、2年目の農業者が75%の支給となりますが、新たに150人が加わりますので3億3600万円ほど、3年目も新たに150人が入ってきますので、同じような計算をしますと、事業費は4億3400万円ほどが必要になってまいります。4年目からは、この4億3000万余の予算が続きますので、財源の議論が避けられません。大いに議論し、検討する必要があります。

 事は、日本人の食糧の安全確保に直結する政策であります。国も同じようなことを考えておりまして、こうした新規農業就業者を対象に、経営支援事業として1人当たり年間150万円を3年間、総額450万円の支援金を支給する制度を設けています。本県では、150名余が対象になっているようであります。しかしながら、日本の農業の実情を見ますと、その効果は十分とは言えません。

 そこで、私は今回、この国の制度に上乗せをする形で、県単独事業としてより手厚い支援事業を提案しているところであります。今後、仮にこの県単独の事業費4億円余の半分を国が負担してくれても、毎年約2億円余の県の予算が必要となります。

 財源の維持のため、例えば10年後、農業経営が安定した段階から出世払いという返済の方法も考えられますが、この8月10日には、全国農協中央会の中家会長さんが、岸田第2次内閣で新しく農林水産大臣になられた野村大臣に対し、「食料安全保障の強化に向けた取組が重要」、「JAとしても全力で支える」と声明を出されています。農業県和歌山として、ここは重大な転換点と捉え、思い切った施策を打ち、全国の先進的な、先導的な立場に立って、国やJAに対して働きを強めてはどうでしょうか。

 大胆で斬新な発想が求められる時期を迎えております。先ほど紹介しました国の経営支援事業の一律150万円を加えますと、国・県合わせて1年目は278万円、2年目は246万円、3年目は214万円の支援金が支給されます。和歌山県で農業をやってみたいという若者は出てきませんかね。私は、希望を込めて、その可能性を信じているものであります。当然、農業に8時間労働はなじまない、昔から朝早くから夜遅くまで働くもんだとか、もっともっと稼いでいる農家は多いからそんな金額では効果がないとか、農業は自由だからいい、あまりお金で縛るのはどうか、そんな予算はないなどなど、様々な意見が出ることは十分承知しています。

 それでも、私は言いたい。日本人の食糧を、健康を、命を守っている職業は農業である。このままでは、日本の食料安全保障は本当に大丈夫かと声を大にして言いたい。農業は、それに携わる農業者がいて初めて成り立つものであることを改めて強調したいと考えております。地方も、若者の声が響いてこそ地方の活力も出てきます。地方の基幹産業である農業へのてこ入れが、地方の活性化を実現する最短の施策であると私は信じております。1次産業の振興なくして地方の活性化はない、私が一貫して主張している点であります。

 少々むちゃを承知で、日本人の食料自給率の必要性に触れ、農業者の確保、農業者の身分の向上に対する一つの方策として提案してみました。実務の話ではありません。考え方の問題ですので、知事の御所見をお伺いいたします。

 次に、少子化対策について触れてみたいと思います。

 我が国で、人口減少、特に子供の出生者数が少ないことが大きな問題として指摘されてから、もう相当時間がたちました。正三角形の人口ピラミッドから逆三角形の人口ピラミッドへ、このことによる弊害が様々な面から指摘されています。高齢化社会を支える現役世代の人数が、かつての8.5人から、2010年には2.8人まで下がり、将来、高齢者が1人に対し1人の現役世代がこれを支えるという社会が予測されてまいります。支える若者も大変でしょうが、支えられる高齢者の方も深刻な社会問題を抱えることになります。何より子供が生まれないと、国全体の経済の活力が失われるのではないか、国力の低下につながるのではないかとの心配が絶えません。

 ここで、簡単に我が国の子供の出生について、概要を紹介します。

 2020年、1年間に全国で新たに生まれた子供の数は84万835人、出生率は1.33で減少を続けています。人口は、出生率の2.07で現状が維持されるそうであります。

 和歌山県は、5732人の子供が生まれ、出生率は1.43で全国22位であります。参考までに、最も子供の数が多い東京の出生率は1.12で、全国最下位だそうです。この後の議論のために、和歌山県内の5732人の内訳を見てみますと、一つの世帯で3人以上生まれた子供は867人、4人以上は200人、5人以上になりますと63人となり、すなわち3人以上の子持ちの家庭で生まれた子供の数は全部で1130人になります。

 原点に返って、なぜ生まれてくる子供の数が少ないのでしょうか。私は、原因として次のように考えています。

 一つは、日本全体の人口減少と同じような傾向で、子供を産む世代の女性が少なくなっていること。あわせて、結婚しない女性や子供を持たないと決めている女性の方が増えていることなどがあろうかと思います。

 なお、念のために申し上げますが、私は、女性は子供を産むものだといったような考えに基づいて言っているわけではありません。子供を産むか産まないか、それは全て個人、あるいはそれぞれの家庭が決めることであり、外部からとやかく言うべきではないことは当然であります。誤解なきよう、念を押しておきます。

 二つ目は、子供を持つ世帯でも子供の数を抑える傾向があるということであります。理由は単純でありませんが、最も大きな理由は、家計収入に対し、子供の養育費がかかり過ぎることにあるように思います。特に、教育に要する費用については、最近、とりわけ大きくなってきているようであります。子供に高い教育をつけてあげたい、親なら誰もが思うことであります。それには、子供の数は3人より2人、2人より1人がいい。この傾向は、日本だけではなく、お隣の韓国などでも見られるようであります。

 愚痴を言ってばかりでは解決にはなりません。では、どうするか。

 一つは、発想の転換です。地方から大都市に一方的に流れる人の動きのごく一部でもいい、地方に逆流することができないのか。特に、比較的年齢の若い若年層が定住してみようかという魅力を地方が整備することができないのでしょうか。地方の努力と併せて、一極集中の弊害が指摘される国全体の新しい人口再配置計画の策定が期待されます。

 そうした観点から、私は、仁坂知事がこれまで取り組んできた和歌山市内への高等教育機関の誘致や、串本町で設置が進んでいる民間ロケット打ち上げ場の誘致などは、確実に地方における人口対策になり、こうした具体的な施策の積み重ねが人口減少に歯止めをかけ、若者の定住を促し、いつか子供の出生率の向上につながっていくものと大いに期待し、高く高く評価をしております。

 二つには、働く環境づくりであります。かつては、地方の安い土地を材料に工場の地方展開を図り、地方の就業チャンスを増やすといった施策が主流でありましたが、我が国の企業の技術開発や超先端分野への志向が強まるにつれ、あまり大きな用地も必要としなくなりました。地方の優位性は低下しています。

 代わりに、今、注目されているのは、地方の生活環境です。コロナ禍も手伝って、リモートワークが大きな注目を集めています。情報化社会が生み出したこの新しい技術は、これまでの企業の立地要因を大きく変えました。

 立地場所は、心豊かに働き、生活することができるリゾート地がいい。周辺は、自然豊かで歴史的環境が望ましい。休日には、生活をエンジョイするゴルフや釣りといったレジャー環境が近くにあればいい。交通の手段は、東京との最短の手段、すなわち空港が近くにあればいい。今、こうした職場環境が企業の立地先として注目されてきています。はやりの言葉で言えば、こうした新しいライフスタイルのことをワーケーションと言うそうであります。ワーケーションという新しい潮流が、今後の産業再配置の主流になりそうであります。

 こうして見ますと、これまで比較的注目されなかった和歌山県の南部辺りが大きな候補地となってきます。聞くところによりますと仁坂知事は、全国のワーケーション自治体協議会の会長さんをなさっているとか。和歌山の特徴を踏まえ、時代を先取りしたすばらしい取組であると高く高く評価をしております。

 白浜周辺の地域は、今でも多くのこうした企業が立地しています。この流れをより大きく呼び込んでいただいて、若者が集まる新しいタイプの企業立地地域として和歌山の活性化に御尽力いただきたい。若者の流れを呼び込もうとする施策、その効果が徐々に現れている今、この流れを一層大きなものにしていきたい。その後押しをしたいと考えております。これも、仁坂知事の今までのやってきたことであります。

 こうした背景や認識を踏まえ、人口減少に対する私の提案です。すなわち、子供の出産・育児を応援する子育て支援金制度の創設を提案し、知事の所見をお伺いいたします。

 せっかく結婚しても、子供をもうけない夫婦も増えてきています。もちろん、このことは夫婦の問題であり、外部が干渉すべき問題ではないことを再度、念を押しておきます。一方で、子供を持ちたいと願う家族にとって、子供ができてから育児にお金がかかり過ぎる。経済的な負担を考えれば、1人、せいぜい2人といった選択になりがちであります。

 そこで、提案であります。

 3人以上の子供を育てる世帯を対象に、新たに生まれてくる子供さん1人に対し、500万円程度の子育て支援金制度を創設してはどうでしょうか。本当は1000万円と言いたかったんですけど──という提案であります。

 資料があまりありませんので、随分乱暴な議論を続けます。

 参考までに、2020年の本県の子供の数は5732人だそうです。3人以上の子供がいる世帯、すなわち3人目、4人目、5人目の子供として生まれる子供の数は1130人です。私の提案は、こうした3人以上の子持ちの家庭に対し、ちょっとでも育児の負担を軽くしてあげたい。また、こうした応援をすることによって、ひょっとしたら3人目の子供を、4人目の子供をと考えておられる家庭への応援になるのではないかという淡い期待を持っての提案をいたしております。

 和歌山県で子供を産み育てれば、自然環境にも恵まれ、子供を伸び伸びと育てることができる。その上、随分と経済的にも助かる。和歌山で子育てをしてみようかなあということにはなりませんかね。

 今後、子供をめぐる情勢がどうなるのか予測がつきませんので、仮に、今後も2020年のような出産の状況が続きますと大胆に仮定しますと、1年間に生まれる子供の数は1130人、ざっと1100人として計算しますと、1100人の新生児に対して、1人当たり500万円の育児資金を支給します。合計では55億円の事業費が必要となります。

 問題は、この財源の確保です。お叱りを覚悟で乱暴な議論を続けます。

 令和4年度の県の当初予算額は、おおむね6044億円、うち土木費が741億円、農林水産業費が235億円、土木費と農林水産業費のどちらかといえば建設的分野の予算合計が977億円であります。今、私が提案している子育て支援金55億円、全体予算の0.9%、土木と農林水産予算を合計した予算の5.6%に当たります。もちろん県土の整備も重要、農林水産業の振興も重要、当然のことであります。県の予算に無駄なところはありません。みんな大切な予算ばかりであります。

 それでも私は、今こそ、人への投資に焦点を当てた予算の編成を強く主張するところであります。予算の優先順位の問題であります。今このときに何を優先しなければならないのか、今を生きる私たちの世代の責任が、そして、政治が問われる大きな大きな課題であります。貴重な予算の中から55億円という大きな予算を確保することは、相当な覚悟と勇気が必要であります。覚悟と勇気を持って、将来の子供のため、和歌山県の次の世代を担う若者対策のため、子育て支援金制度を発足してみませんか。

 また、併せて子育て支援・募金制度の創設も提案いたします。

 現在の少子化に危機感を持っている県民の方々も多いように思います。和歌山県の将来に、和歌山県の未来を担う子供のために、子育てを応援する方々から寄附を募ってはどうでしょうか。もちろん寄附金は、課税免除とします。財源の一部を県民の善意で賄う、後世に残る県民運動となるでしょう。

 今、私たちの世代が思い切って発想を変え、大胆な行動を起こさない限り、必ずや10年後、30年後、50年後には、私たちの次の世代にとって大きな大きなツケとなり、跳ね返り、悔やみ切れない後悔をすることになると私は思います。思い切った発想の転換で、子供を育成するための支援制度を創設する。いかがでしょうか。知事の御所見をお伺いいたします。

 以上で、第1回目の質問を終わります。(拍手)

○議長(尾崎要二君) ただいまの坂本登君の質問に対する答弁を求めます。

 知事仁坂吉伸君。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 坂本議員の御質問は二つあると思います。一つは農業者の確保、もう一つは、人口減少対策としての子育て支援金制度、この二つについて順に御答弁申し上げます。

 まず、農業者の確保でございますが、本県にとって重要な基幹産業である農業を維持発展させるためには、毎年、安定した数の農業者を確保、育成することが重要であるとの認識は、議員と同じであります。議員が数を挙げられましたけども、まだ少しというか、大分不足という感じは、私はあると思っております。

 最近では、しかし、都会でも農業をしたいという人が増えていることから、こういう人を和歌山県に来てもらう政策を今こそ熱心に取り組まなければならない、そういう状況でございます。そこで、そういう方に対して、就農相談会の開催などで本県の農業の魅力をアピールしているところであります。

 ただ、人々は、どこで何をして働こうかという選択の中にありまして、和歌山で農業をすると有利だと思ってもらわなければなりません。そのためには、何よりも農業がもうかることを示すことが必要であります。

 そのために、県では、ミカンの厳選出荷とか、ネットを使った販売とか、輸出市場の開拓とか、見本市等への積極的な参加などによる販売促進とか、さらには、施設園芸、果樹双方での生産力強化、それから経営力強化、そういうものに取り組んでまいりまして、他産業並みの所得が得られるように努めてまいりました。これは、かなり手応えを感じておりまして、データで見ても大分よくなってきております。最近では、あちこちで全国ニュースに取り上げられるような若い人たちの積極的な動き、新しい工夫、そういうものも出てきております。

 しかし、就農をするということに当たりましては、生産技術の習得とか、販路開拓とか、機械施設への投資などのリスクがありまして、農業で安定した収入を確保できるかという不安があることから、やっぱり新規就農に踏み出しにくい、あるいは踏み出さないでいるという人が結構いるというのが実情ではないかというふうに思います。

 そこで、お金を足してあげるということになります。経営が安定するまで段階に応じた手厚い支援が必要でございまして、本県では、農林大学校での技術習得、あるいは受入協議会での実践研修、農の匠などの篤農家での研修、それから、機械購入や施設整備等への補助、国の給付制度──御指摘がありましたが──これに県独自で年間30万円の上乗せの実施など、全国の中でも手厚く支援しているところでございます。

 もちろん、もっとという考えもあるわけでございまして、議員の御提案もその一つではないかと思います。それでも十分かどうか、就業者の不安をカバーできるかどうかということもございます。

 一方、就農のルートには、自ら農業を始める自営と農業法人などに従業員として雇用される二つのルートがあります。考えてみますと、自営農としての就農は、商工業の創業と同じでありますので、ちゃんと暮らしていけるかとか、リスクがあってとても不安定なものだとかということは、みんな分かっていると思います。

 そこで、着目されるのは、第一歩はサラリーマンで就農ということでございまして、このような形で成功している農業法人によりますと、都会から、大卒で農業をしたいという人を困難なく採用できるんだというようなことも多く聞かれます。

 したがいまして、JAや農業法人に雇用され、安定した収入を得ながら、まずは技術習得や農地確保を図り、数年後に独立するルートについても用意しておかないといけないというふうに私は思います。そこで、雇用の受皿となる農業法人の育成とか、JAによる法人の設立、農家の協業化等も推進してきたところであります。

 このように、県としては、もうかる農業の推進により農業の魅力を高め、就農を希望する人を増やし、併せて就農ルートの複線化を図ることで、新たな担い手の確保、育成を進めていく所存であります。その中で、実態をよく見ながら、坂本議員の御提案もよく検討していくべきものだというふうに考えております。

 次に、子育て支援金制度についてでございます。

 子供を持つか持たないかということは、基本的に自分たちで考えて決めることでございますけれども、子供が欲しいのにハードルがあって困っているという人は少なくございません。

 このため、県としてはこれまで、結婚支援や不妊治療支援等、あらゆる施策を講じて少子化対策に取り組んできたところであります。特に、多子世帯に対する経済的支援の必要性を強く感じ、紀州3人っこ施策とか、保育料の無償化、在宅育児支援、渡し切り奨学金など、様々な施策を進めてまいりました。

 その結果、第3子以降の出生数の全体に占める割合は、私が知事に就任した平成18年の14.9%から、令和3年には20.2%まで上昇するなど、一定の効果が見られました。しかし、まだまだ少子化に歯止めをかけたとは申し上げられません。

 特に、最近の分析では、結婚をしたカップルの子供の誕生はまずまずなんでございますが、結婚をしない人が徐々に増えてきているのが大問題であります。さらに、これは、コロナ禍によって婚姻数が想定を上回るスピードで減少しまして、出生数が将来人口推計よりも7年程度早く減少しているというゆゆしき一大事になっているわけであります。

 こうした状況におきましては、どうしても出生数を増やそうといたしますと、思い切って議員御提案のような多額の子育て支援金制度や、あるいはうんと高額の結婚奨励金のようなインパクトのある施策を実施したくなるものでございます。

 かつて、実は、民主党政権のときに子ども手当というのがありました。これじゃ少ないんじゃないかと、インパクトがないんじゃないかということで部内でも随分検討しまして、そこで、ちょっと試しに県庁内の若い人たちをサンプルにいたしまして、匿名のアンケートをして「例えば100万円あげると言ったら、子供をつくるか」というような話をいたしましたが、答えはノーでございました。うんと高額であると、ちょっと話は違うとは思うんでございますが、そのときの検討では、そもそも結婚や出産をそういうお金でつるというようなことがよいのかというような部内の反論もありました。また、財政が大変なことになるという議論もありまして、私は踏み切れておりません。

 本県における今後の財政収支の見通しというのは、実はあまり楽観視できる状況ではございませんので、私など、毎年ヒーヒー言って予算編成しておりますが、予算の割当てで、私が政策的に合理的に左右できる、これ、あっち、こっちと、こういうことができるお金は全体で100億円ぐらい、つまり全体ということは義務的な経費、こういうのを除きますと、大体そのぐらいということになるわけでございます。

 また、寄附でというようなことも言われましたが、これは本当に難しゅうございます。私も、国体のときとか、ワールドマスターズゲームズなんかで駆けずり回りましたけど、そう簡単にお金が集まるわけではありません。

 こうしたことから、議員御提案のような思い切った施策には、なかなか踏み切れないでいるというのが正確なところでございます。

○議長(尾崎要二君) 答弁漏れはありませんか。

  〔「なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(尾崎要二君) 再質問を許します。

 坂本 登君。

  〔坂本 登君、登壇〕

○坂本 登君 私のやや無謀とも言える質問に対し、丁寧にお答えをいただき、ありがとうございました。

 これまで仁坂知事に対し、本会議を通し、あるいは知事室で様々なことをお願いし、要望をしてきました。中には礼を失した内容もありましたが、知事は、常に真摯に、そして丁寧に対応してくれました。県政全般に当たりましても、様々な新しい種をまき、育て、和歌山県の将来を明るいものにしてくれました。この際、知事に対し、心からお礼を申し上げ、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

○議長(尾崎要二君) 以上で、坂本登君の質問が終了いたしました。

 お諮りいたします。質疑及び一般質問を終結することに御異議ございませんか。

  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(尾崎要二君) 御異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問を終結いたします。

 次に日程第3、議案の付託について申し上げます。

 お手元に配付しております議案付託表のとおり、議案第93号から議案第125号までは所管の常任委員会に付託いたします。

 お諮りいたします。9月22日及び26日は常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これに御異議ございませんか。

  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(尾崎要二君) 御異議なしと認めます。よって、9月22日及び26日は休会することに決定いたしました。

 次会は、9月27日定刻より会議を開きます。

 本日は、これをもって散会いたします。

  午後2時45分散会

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