令和4年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(全文)


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令和4年9月 和歌山県議会定例会会議録 第3号

議事日程 第3号

 令和4年9月16日(金曜日)

 午前10時開議

 第1 議案第93号から議案第127号まで(質疑)

 第2 一般質問

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会議に付した事件

 第1 議案第93号から議案第127号まで(質疑)

 第2 一般質問

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出席議員(40人)

 1番 鈴木德久

 2番 山家敏宏

 3番 中本浩精

 4番 堀 龍雄

 5番 藤山将材

 7番 井出益弘

 8番 宇治田栄蔵

 9番 北山慎一

 10番 玄素彰人

 11番 中西峰雄

 12番 秋月史成

 13番 森 礼子

 14番 濱口太史

 15番 尾崎要二

 16番 冨安民浩

 17番 川畑哲哉

 18番 玉木久登

 19番 鈴木太雄

 20番 岩田弘彦

 21番 吉井和視

 22番 谷 洋一

 23番 佐藤武治

 24番 岩井弘次

 25番 中 拓哉

 26番 多田純一

 27番 新島 雄

 29番 中西 徹

 30番 谷口和樹

 31番 藤本眞利子

 32番 浦口高典

 33番 山田正彦

 34番 坂本 登

 35番 林 隆一

 36番 楠本文郎

 37番 高田由一

 38番 杉山俊雄

 39番 片桐章浩

 40番 奥村規子

 41番 尾﨑太郎

 42番 長坂隆司

欠席議員(1人)

 28番 山下直也

〔備考〕

 6番 欠員

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説明のため出席した者

 知事         仁坂吉伸

 副知事        下 宏

 理事         田嶋久嗣

 知事室長       赤坂武彦

 危機管理監      福田充宏

 総務部長       吉村 顕

 企画部長       長尾尚佳

 環境生活部長     生駒 享

 福祉保健部長     志場紀之

 商工観光労働部長   寺本雅哉

 農林水産部長     山本佳之

 県土整備部長     福本仁志

 会計管理者      中家秀起

 教育長        宮﨑 泉

 公安委員会委員    細江美則

 警察本部長      山﨑洋平

 人事委員会委員長   平田健正

 代表監査委員     森田康友

 選挙管理委員会委員長 小濱孝夫

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職務のため出席した事務局職員

 事務局長       出津野孝昭

 次長(秘書広報室長事務取扱)

            浜野幸男

 議事課長       長田和直

 議事課副課長     岩井紀生

 議事課課長補佐兼議事班長

            村嶋陽一

 議事課主任      伊賀顕正

 議事課主任      菅野清久

 議事課副主査     林 貞男

 総務課長       葛城泰洋

 政策調査課長     神川充夫

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  午前10時0分開議

○議長(尾崎要二君) これより本日の会議を開きます。

 日程第1、議案第93号から議案第127号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、併せて日程第2、一般質問を行います。

 12番秋月史成君。

  〔秋月史成君、登壇〕(拍手)

○秋月史成君 皆さん、おはようございます。今月、9月2日で54歳を迎えました。今月は私の誕生日月となります。その辺を考慮していただき、県当局の皆様には前向きな御答弁をよろしくお願いいたします。

 それでは、議長の許可をいただきましたので、以下、通告に従い一般質問を行います。

 和歌山県では、今年度に策定した和歌山県森林・林業“新”総合戦略において、素材生産体制の強化、素材流通体制の強化、紀州材加工販売体制の強化、紀州材利用の拡大、林業担い手の確保・育成、適正な森林の管理の六つの柱を軸に、令和8年における素材生産量を現状より9万立方メートル増の35万立方メートルにするなどの目標を掲げ、精力的に取り組まれております。

 その中の素材生産体制の強化では、特に高性能林業機械やICTの導入など、スマート林業を積極的に推進するとされています。

 そこで、スマート林業の現状とICTの導入などの具体的な内容について、農林水産部長の御所見をお聞かせください。

○議長(尾崎要二君) ただいまの秋月史成君の質問に対する答弁を求めます。

 農林水産部長山本佳之君。

  〔山本佳之君、登壇〕

○農林水産部長(山本佳之君) 県では、平成25年度から、機械メーカー等と連携し、操作の無線化や荷かけ作業の無人化を可能とする油圧式集材機、苗木などの資材運搬が可能となるドローンの開発に取り組むとともに、林業事業体における高性能林業機械の導入支援により、令和3年度末の高性能林業機械導入台数は、平成27年度比42台増の146台となっています。さらに、今年度は、11事業体が林業用資材運搬ドローン、遠隔式原木荷外し機、プロセッサヘッドなどを導入する予定となっています。

 また、県では、航空レーザデータの解析による杉やヒノキの高精度な立木情報を活用し、素材生産者と製材所等が原木の需給情報をタイムリーにやり取りができる需要別原木判別システムの整備にも取り組んでおり、来年度から、原木ニーズに応じた効率的な商談を促進してまいります。

 今後も、スマート林業を積極的に推進することで、生産性の向上や素材の増産を図ってまいります。

○議長(尾崎要二君) 秋月史成君。

  〔秋月史成君、登壇〕

○秋月史成君 次に、本県の人工林資源は、年間約100万立方メートル増加していると伺っており、その資源を有効活用するため、素材生産体制の強化が重要である一方、皆伐した跡地に植林し、森林として適切に管理していくことも必要です。「切って、植えて、育てて使う」の好循環が必要です。

 このためには、再造林経費や下刈り経費の縮減が重要であると考えますが、林業従事者の賃金単価の縮減は、時代背景もあり、することはできません。“新”総合戦略においても、そのことについて触れられておりますが、今後、県では具体的にどのように取り組んでいくと考えられているのか、農林水産部長にお尋ねいたします。

○議長(尾崎要二君) 農林水産部長。

  〔山本佳之君、登壇〕

○農林水産部長(山本佳之君) 林業経営で必要となる育林経費のうち、約3分の2を占める再造林や下刈りの経費縮減は、循環型林業を推進するための重要な課題であると考えています。

 再造林については、伐採から植栽までを一体的に行う一貫作業システムの導入により、林地残材処理の省略などに加え、架線集材機を利用して獣害防止ネット等の資材運搬を行うことで、経費の縮減を図ることができますが、現在、再造林面積の3割程度にとどまっています。

 また、下刈りについては、成長に優れたエリートツリーを植栽することで、2年程度の下刈り期間の短縮が期待できます。

 今後も引き続き、事業体向けに実施している研修会の項目に盛り込むとともに、国の補助制度の活用を促すことにより、こうした技術の普及に努めてまいります。

○議長(尾崎要二君) 秋月史成君。

  〔秋月史成君、登壇〕

○秋月史成君 御答弁いただきました。

 スマート林業の推進、伐採後の再造林や保育対策については、県といたしましては、しっかり予算を確保していただき、林業振興に取り組んでいただきますことをお願いいたします。

 次の質問に移ります。

 本県の人工林資源が本格的な利用期を迎える中、建築用材の需要を拡大することは、林業・木材産業の持続性を高めるとともに、森林の有する多面的機能の持続的な発揮や脱炭素社会の実現に資するものであります。

 これまで、県では、公共建築物の建設に当たり、低層建築物の原則木造化の取組を行っていただいています。また、紀州材の無垢材を使用し、技術的な工夫により大スパンの木造建築物、具体的には、私の地元上富田町の熊野高等学校講堂、寄宿舎や和歌山市のドクターヘリ格納庫などを建築するなど、また、私の地元上富田町に建設途中の(仮称)南紀・はまゆう統合支援学校の内装材にもふんだんに木材が利用されていると聞いております。

 先月、8月18日に、完成間近の南紀白浜空港新ターミナルを見学させていただきました。内装材に紀州材を使用したとは聞いていましたが、どこに使っているのという印象です。私の感覚では、つじつま合わせのように少量使ったという印象でしかありません。きのくに和歌山の「きのくに」は、私は樹木の「木の国」が語源と思っております。空港を降りた観光客や地元の利用者でさえ、和歌山らしさを感じる建物では決してないという印象です。今さら、ほぼ建築が終了した建物をどうにかしろと言っているのでは決してありません。空港という施設の特性から、様々な制約もあろうかとは思いますが、非常に残念な施設であると思います。

 反省するけど、後悔しない。今後のさらなる紀州材の持続的な利用拡大に向けた取組は、林業の発展に資するものと存じますので、後悔するよりも反省することで、反省して悩み、それまでの失敗をしっかり両手で受け止め、前へ進めば、それが糧となり、大きく飛躍できます。そうして初めて、輝くあしたが見えてくると思います。

 今後の具体的な公共建築物における紀州材利用の計画等を含む方針について、県土整備部長にお尋ねいたします。

○議長(尾崎要二君) 県土整備部長福本仁志君。

  〔福本仁志君、登壇〕

○県土整備部長(福本仁志君) 県では、平成24年に策定した和歌山県木材利用方針において、低層の建築物は原則木造とするとともに、中高層、低層にかかわらず、県民の目に触れる機会が多いと考えられる部分を中心に、内装等の木質化を推進することとし、紀州材を活用した公共建築物の木造化、木質化に取り組んでいるところです。

 議員御指摘の南紀白浜空港国際線ターミナルにつきましては、この方針に基づき、利用者の目に触れる機会が多い出国ロビーや搭乗待合室などを中心に、木質化したところです。なお、壁や天井に使用した紀州材は、建築基準法で求められる不燃性能を満たすため、県外の工場へ持ち込み、不燃処理を施しております。

 一方、熊野高校講堂やドクターヘリ格納庫では、学識経験者の協力を得て、無垢の一般流通材を使用したトラス構造による大空間建築物の木造化を実現し、紀州材の製材から加工、組立てまで、一連の工程全てを県内で行うことができました。

 県としましては、整備する公共建築物の用途や規模に応じて、耐火性能や構造強度、コスト等を考慮しながら、新しい技術や工法を取り入れるなど、木造化を推進してまいります。あわせて、紀州材を使用した建築資材の積極的な採用など、木質化を一層推進することで、引き続き紀州材の利用拡大に努めてまいります。

○議長(尾崎要二君) 秋月史成君。

  〔秋月史成君、登壇〕

○秋月史成君 公共建築物の木造化や木質化につきましては、しっかり取り組んでいただいているようですが、県立学校等の建て替えの際は、教育現場から木造化に対し異論を唱えることもあると聞いております。現在の先進木造建築物の現状を現場の教員等にもしっかり理解していただき、さらなる公共建築物の紀州材利用拡大に努めていただきたいと思います。

 次の質問に移ります。

 現在、コロナ第7波であります。2020年1月20日に横浜港を出港したクルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の乗客で、1月25日に香港で下船した80代男性が新型コロナウイルス感染症に罹患していたことが、2月1日に確認されました。ちょうどその頃、自由民主党県議団で横浜港を視察中に、ダイヤモンド・プリンセス号上空を飛び交うヘリコプターを見たことを今も鮮明に覚えております。その当時、ここまで世界を震撼させる感染症の拡大につながるとは夢にも思っていませんでした。

 新型コロナウイルス感染症が世界に広がるまでは、災害といえば地震、台風等、自然災害しか頭に浮かぶこともなく、感染症による被害拡大は、私を含めた国民、県民には薄かったと思います。2年半を超えるコロナ禍の中で、感染症に対する恐怖心は、日本人をはじめとする人類に長い期間残ることと思います。しかし、人類が英知を絞り、必ずやコロナに果敢に立ち向かい、克服すると私は信じております。COVID-19という厄介なウイルスにも打ちかち、アフターコロナ、ウィズコロナの世界が近い将来、訪れると思っております。

 しかし、人間の脳裏に刷り込まれた恐怖心からの脱却は、ウイルスに打ちかつ以上に困難な問題だと感じております。コロナを克服しても、新たな感染症が人類または和歌山県を襲うのではないかという恐怖心です。

 そこで、質問です。

 これまで、2年8か月にわたり和歌山県が行ってきた新型コロナウイルス感染症対策を踏まえ、新たな感染症に対する今後の本県の感染症対策について、福祉保健部長、お答えください。

○議長(尾崎要二君) 福祉保健部長志場紀之君。

  〔志場紀之君、登壇〕

○福祉保健部長(志場紀之君) これまで、本県は、県民生活にはできる限り制限を課さず、保健医療行政の努力が重要と考え、感染者の早期発見・早期隔離、徹底した行動履歴の調査及び保健所の統合ネットワークにより、感染拡大を抑制し、保健医療体制の整備に努めてきたところです。

 しかしながら、新型コロナウイルス感染症第7波では、オミクロン株BA.5の猛威により県内でも急激に感染が広がり、一時1日に2000人を超えるかつてない新規感染者数となり、保健所や医療機関の業務が逼迫した状態となりました。

 こうした感染状況においても、保健医療行政としては、県民の命を守るためにやれるだけのことはやるという姿勢は崩さず、重症者や症状急変者の入院調整をはじめ、休日における検査・診療体制の強化、救急患者の一時待機所の開設、発生届の入力を全面的に行う保健所業務支援センターの開設等、柔軟かつ迅速に対応してきました。

 今後、新たな新興感染症が発生したとしても、これまでの対策でのノウハウを生かし、初動の検査・診断による感染者の早期発見、保健所の積極的疫学調査による早期介入、早期隔離・早期入院治療により感染を抑え込み、データを分析しながら県民や関係者に情報発信を行い、感染拡大防止に取り組んでまいります。

 また、核となる医療提供体制についても、平時から関係機関と連携し、感染症発生初期から蔓延時にも確実に機能するよう、病床確保、発熱外来、自宅療養等に係る健康観察、人材派遣など、保健医療提供体制を整備し、保健所の統合ネットワークを中心に保健医療行政がしっかりと対応することで、県民の命と安全のために感染症対策に取り組んでまいります。

○議長(尾崎要二君) 秋月史成君。

  〔秋月史成君、登壇〕

○秋月史成君 県民の命と暮らしを守るため、今後もしっかりよろしくお願いいたします。

 次の質問に移ります。

 今年、東京出張の合間を見つけ、自衛隊の学校時代の同期生と、短い時間ではありましたが、昼食を共にいたしました。現在、その同期生は、陸上自衛隊東部方面総監部援護業務課において、1等陸佐の退職自衛官の職業援護、再就職先を探す任務についております。同期生との話の中では、学生時代の思い出話やその後の家庭のこと、現在の仕事のことなど、様々な話題で盛り上がったと記憶しております。

 自衛隊においては、最終階級によって退職の年齢が違います。陸上自衛隊では、その任務の性格上、組織を常に精強な状態に維持するため、主として若年定年制及び任期制の制度を採用しております。人生100年時代にあって、若くして退職する自衛官の退職後の生活基盤を確保することは国の責務であることから、再就職の援助を組織的に実施しております。

 先ほど述べさせていただいた1等陸佐、他国の軍隊では大佐と呼ばれる階級となります。私の同期生は、現在3等陸佐、少佐であります。公務員の定年延長の時期が迫る中、現在のところ1等陸佐は57歳で定年、2等陸佐、3等陸佐までは56歳、下士官である1等陸曹から1等陸尉までは55歳の退職年齢となっております。55歳から57歳といえば、まさに、民間企業に例えるならば、その企業の中核を担う年齢となります。

 本県和歌山県でも、危機管理局災害対策課の主幹として、陸上自衛隊の元1等陸佐が再就職されております。陸上自衛隊では、その任務の特性から職域は広い分野となっております。県に現在お勤めの危機管理局の主幹は、通信科職種であります。私は、航空科職種でありました。以前の危機管理局の主幹は、普通科、いわゆる歩兵出身であります。

 1等陸佐の階級になるには、CGS・指揮幕僚課程、FOC・幹部特修課程、TAC・技術高級課程を修了することが必須となります。この三つの課程は、制服組のキャリアコースとも呼ばれ、陸上自衛隊の中でも狭き門となります。防衛大学校を卒業しても、この三つの課程を修了しなければ、2等陸佐止まりと言われております。

 以前の危機管理局の主幹が普通科職種、現在の主幹が通信科職種、和歌山県の災害対策に、その長年培ったノウハウが浸透されていると私は感じております。お聞きしたところ、和歌山県の場合、兵庫県伊丹市に駐屯している中部方面総監部と協議の上、退職自衛官の職業紹介所でもある自衛隊援護協会に求人を募集し、危機管理局の主幹を迎えると聞いております。

 急峻な地形、海、山、川などの巨大地震並びに、先ほどの質問にもありました感染症対策等から県民を守るには、複雑多岐にわたる幅広い知識や経験が必要となり、県庁内にその多くのノウハウが蓄積されていることが望ましいと考えます。現在の災害対策課の主幹が次の定年を迎えるのは、あと2年ほどと聞いております。

 そこで、質問です。

 今後、次の人材の採用に関する自衛隊との協議の際、県はどのような要件で人材を求めていくのか、危機管理監の御所見をお聞かせください。

○議長(尾崎要二君) 危機管理監福田充宏君。

  〔福田充宏君、登壇〕

○危機管理監(福田充宏君) 県では、平成17年度から、自衛隊時の階級が1等陸佐以上の要件で退職自衛官を採用しております。

 1等陸佐以上の自衛官は、司令部や第一線部隊など幅広く勤務するとともに、災害派遣や派遣部隊への支援に従事するほか、自衛隊全般についても熟知していることから、災害発生時にはその経験や知見を生かし、機動的に災害対応ができる高い能力を備えているため、採用の要件としているところです。

 最近では、鳥インフルエンザ防疫措置や水管橋崩落事故の給水支援に係る自衛隊の派遣要請、現地での活動調整など、その能力を遺憾なく発揮しています。

 そのようなことから、今後も、採用に際し、引き続き1等陸佐以上の採用を要件とすることで、災害対応能力の高い人材を確保してまいります。

○議長(尾崎要二君) 秋月史成君。

  〔秋月史成君、登壇〕

○秋月史成君 餅は餅屋ということわざがあります。確かに1等陸佐以上の陸上自衛官は幅広い知識や経験を有しておりますが、現職時代の職種には特に精通しております。得意分野となります。

 以前の主幹は施設科、普通科、現在は通信科職種、募集要件をあまり細部に絞り過ぎると、和歌山県に来てもらいにくい状況を生む可能性もありますが、状況に応じて、和歌山県の防災に必要な職種の1等陸佐をリクエストしてみるのもいいかもしれません。例えば、私がいた航空科職種、MOと呼ばれるメンテナンスオフィサー、整備幹部、Pと呼ばれるパイロット、飛行幹部など、航空統制を行うときなどは最適な人材となります。今後、頭の片隅にでも置いていただければ幸いかと存じます。

 次の質問に移ります。

 「人は石垣、人は城」、戦国武将の名将と言われる武田信玄の名言として、現在も残されている言葉です。立派な城があっても、人の力がないと役に立たない。国を支える一番の力は人の力であり、信頼できる人の集まりは強固な城に匹敵するという信玄の考え方や生き方を表しております。

 県議会議員にならせていただき8年目を迎える私ではありますが、和歌山県庁の職員の皆様は、まさに「人は石垣、人は城」に当たると思います。しかし、その石垣にも隙間が全くないわけではないと思います。城も、経年変化における劣化があるかもしれません。和歌山県民の命を災害等から守ると考えたとき、緊急事態が発生したとき、瞬時に判断し行動するには、長年訓練を積み重ねてきた人材が必要であると思います。

 残念ながら県庁職員の皆様は、幹部自衛官に比べ、指揮官教育、幕僚としての教育は、その職務の特性から薄いと思います。平時はもちろんのこと、いざ緊急事態となったときに、長年訓練を積んできた元自衛官が1人では、自衛隊との調整、連携能力が乏しいと思います。優秀な指揮官には、優秀な参謀が必ず存在いたします。民間企業でも同じことです。いい会社には、必ずよい番頭がいます。

 そこで、質問です。

 先ほどの質問でも述べたとおり、自衛官は、その任務の性格上、若年定年制であります。今後、和歌山県の防災を考えたとき、退職自衛官の複数採用をしてはいかがかと考えますが、危機管理監の御所見をお聞かせください。

○議長(尾崎要二君) 危機管理監。

  〔福田充宏君、登壇〕

○危機管理監(福田充宏君) 県が採用している退職自衛官は、平時は、自衛隊で身につけた知識や能力、経験を生かして、訓練の企画立案をはじめ防災・危機管理対策を行い、災害発生時には、危機管理監を補佐するとともに、自衛隊との連絡調整を担っています。

 防災・危機管理対策や災害発生時の対応には、退職自衛官をはじめ各種専門職員の知見や経験が必要であるため、危機管理局に警察官や消防職員も在籍しています。

 今後、危機管理局の組織強化を総合的に検討する中で、退職自衛官の複数採用も検討してまいります。

○議長(尾崎要二君) 秋月史成君。

  〔秋月史成君、登壇〕

○秋月史成君 冒頭にも述べさせていただきましたとおり、現在、私は54歳となりました。あと数年で、私の同期生も定年を迎える年齢となっております。学生時代も、一緒に過ごしたやんちゃ坊主だった同期生の現在は、立派な自衛官となっております。自分の同期生を褒めるわけではありませんが、ほんまに優秀やなあというのが率直な感想です。私の同期生だけではなく、自衛官は、厳正な規律の下、常に厳しい訓練や苛酷な任務をこなしております。そんな退職自衛官を今後、危機管理局の組織強化の中で複数雇用していただきますことをお願いいたします。全ては、県民の安心・安全のために。

 次の質問に移ります。

 現在、ウクライナとロシアの戦争において、農産品及び天然資源の高騰に伴い、物価高となっております。まちの自動車整備工場の経営者である私は、塗料、塗装副資材、油脂類、タイヤ、バッテリー等、度重なる仕入れ品目の値上げが仕入れ業者から通知される書面が数多く寄せられております。同僚議員の中でも、事業を行う議員との会話の中で、原材料の高騰に伴う元請企業との価格交渉に苦慮しているという話題をよく耳にいたしております。テレビ等でも、食品メーカー等の値上げの情報が流されております。率直な私の感想を述べます。メーカーはいいなあ。

 メーカーでない企業が得意先に値上げをお願いすることは、非常に困難なことになります。元請企業に値上げをお願いして、取引先を変更されるのではないかという恐怖心が先立ち、利益を圧迫している現状があります。また、昨今の最低賃金の上昇、福利厚生の充実に加え、原材料の高騰等、和歌山県の経済を支える小規模事業者にとっては死活問題になるのではとの不安があります。小規模事業者の経営者の役員報酬や給与を削って、社員の賃金、福利厚生、原材料の支払いに回しているという現状があります。

 そこで、質問です。

 和歌山県として、原材料高騰に伴う下請取引について監視を強化し、適正な下請取引を促してはいかがかと考えますが、その対応について、商工観光労働部長にお伺いいたします。

○議長(尾崎要二君) 商工観光労働部長寺本雅哉君。

  〔寺本雅哉君、登壇〕

○商工観光労働部長(寺本雅哉君) 我が国の経済は、原油高や円安、またロシアによるウクライナ侵略などにより、本年8月の企業物価指数が前年同月比でプラス9.0%と、18か月連続の上昇となっております。

 そのような中、輸出採算のある大企業においては、円安の効果により過去最高益を更新する企業も存在するなど、好調な状況にありますが、その大企業を支える地方の下請中小企業には影響があまり及んでいないのが現状です。本年8月に県が実施した県内企業への調査でも、コスト上昇分を取引価格に完全に転嫁できているとの声は少数でした。

 本県においては、かつて、取引価格の上昇が見込めず、当該事業からの撤退を余儀なくされた事例が発生したことから、平成30年7月に、全国で初めて和歌山県下請等中小企業者の取引条件改善に向けた取組に関する連携協定を経済産業省と締結し、国の下請Gメンと連携した企業ヒアリングの実施や国と共催でシンポジウムを開催するなど、下請取引の改善に取り組んできました。

 本年度も、国に対し、下請取引改善に向けて強力に取り組むよう政府提案を行ったところ、概算要求の段階ではありますが、下請Gメンのさらなる増員など国の施策にその趣旨が反映されたところです。

 今後も引き続き、下請Gメンと連携した企業へのヒアリングにより監視につなげることや、下請事業者との望ましい取引慣行の遵守を宣言するパートナーシップ構築宣言について、宣言企業を増やすよう国に働きかけるとともに、県内企業にもこの制度の周知を図ることなど、下請取引の適正化に向け取り組んでまいります。

○議長(尾崎要二君) 秋月史成君。

  〔秋月史成君、登壇〕

○秋月史成君 10数年前、私が自動車車体整備業界の青年部の全国組織の役員をしていた頃、東京にて、独占禁止法と下請代金支払遅延等防止法に特化した法律事務所弁護士を数名招聘し、勉強会を開催いたしました。そこで分かったことは、私たちはいじめられていたんだと、元請、下請の取引の中で商慣習だと勝手に理解していたことが実際にはいじめに当たることを、そのとき初めて気づかせていただきました。

 和歌山県の下請業者の中には、いじめられていることや不当な扱いを受けていることに気づいてない事業者もいるかもしれません。今後も引き続き、下請取引の監視強化をお願いいたします。

 次の質問に移ります。

 今年の夏も酷暑でありました。毎年毎年、夏になると、「今年の夏は異常に暑いな」という言葉を交わすのが恒例となっております。また、報道では、熱中症で体調を崩した学校に通う児童生徒のことや熱中症で命を落とす人の話題もよく取り上げられております。災害は、季節を選んではくれません。この夏のように、酷暑に災害が発生することも予測されます。南国和歌山と言われる本県ではありますが、冬場には零下となる日もあります。

 県当局にお聞きし、調査したところ、県立学校では、所在する市町村から災害時における避難所等と指定される協定書を交わしている学校が多く、県立高等学校36校中、避難所指定数は33か所、支援学校11校中2校が避難所指定されている状況であります。

 学校施設については、児童生徒の学びの場であると同時に、災害発生時には避難所としての重要な役割を果たす場所でもあります。県立学校のその施設の大半が体育館を避難所として指定されていながら、体育館へのエアコンの設置は全くなされておりません。ちなみに、普通教室は、高等学校、支援学校とも100%、特別教室は、高等学校においては62.7%、支援学校では99.1%とお聞きしております。

 私が小さい頃、学校や学校施設にエアコンが設置される時代が到来することなど、夢にも思いませんでした。家庭では、父母の寝室だけにクーラーがついており、私や妹の自室には扇風機だけであったと記憶しております。時代が変わり、家庭でも部屋ごとにエアコンが設置され、また、台所にもエアコンが設置されることが当たり前のようになってきております。エアコンがぜいたく品、子供たちを甘やかせる設備とは現在なってはおりません。

 快適な教育環境の整備も必要な時代とはなっております。今後、県立学校の体育館等施設へのエアコン設置について、優先順位をつけて逐次推進してはいかがかと考えますが、教育長の御所見をお聞かせください。

○議長(尾崎要二君) 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 県立学校におけるエアコンにつきましては、完全学校週5日制の導入と併せて、各学校が夏季休業期間短縮に取り組んだことから、教室への整備を進めてきました。

 現在、各学校のエアコンは、設置から13年以上経過した設備が多く、老朽化に伴う設備更新が必要となっており、順次更新できるよう準備に取り組んでおります。

 体育館へのエアコンにつきましては、昨今の猛暑による熱中症対策として必要であるとともに、災害発生時の避難所における環境整備としてニーズがあることは認識しております。

 特別支援学校の体育館へのエアコン設置については、国の補助制度の活用を検討するとともに、高等学校の体育館等については、補助制度等の新たな創設を国に働きかけてまいりたいと考えております。

 まずは、高等学校の施設の老朽化対策や、特別支援学校の過大規模化解消を見据えて取り組んでまいります。

○議長(尾崎要二君) 秋月史成君。

  〔秋月史成君、登壇〕

○秋月史成君 よろしくお願いいたします。

 次の質問に移ります。

 和歌山南漁協では、田辺市や白浜町から、約20年間にわたって計7600万円を不正受給したことが発覚、漁協は、市に解決金3500万円、町には返納金約2118万円を分納で支払うことにしている。このほか、町には約574万円を返納していると、和歌山南漁協の不正受給においては、一定の収束が図られたように新聞報道等では伝えられております。

 しかし、2022年2月2日付の地元紙紀伊民報において、和歌山南漁協日置支所で主任として働いていた当時50歳だった男性が、このほど、在職中に役員からパワーハラスメントを受けて退職を余儀なくされたとして、漁協と組合長ら役員3人に1100万円の損害賠償を求める訴えを和歌山地裁に起こしたとされています。

 訴状や男性の話によると、漁協が田辺市や白浜町から補助金などを不正受給した問題をめぐり、2018年春にテレビ局の取材を受け、事実関係を認める趣旨の話をし、問題を受けて当時の役員が辞任し、2019年10月に新役員が決まった後、呼び出されて不正の告発者との関係を何度も問いただされ、懲戒免職の話も持ち出され、これらが原因で眠れなくなり、神経症と診断され、昨年4月に退職した。役員の言動は、内部告発者を保護する公益通報者保護法に違反するとも主張している。男性は、既に別の仕事に就いていて、精神的な苦痛を和らげるための薬を現在も服用しているという。取材に対して、「ずっと続けるつもりの仕事だった」と語ったと報道されています。

 また、そのパワハラ訴訟については、フジテレビの番組内でも取り上げられ、NHKでもニュースとなっております。テレビでは、その内容を音声で録音されていることも報道されていたと聞いております。組合長は、取材に対し、「注意することはあったが、そうした発言の背景には人生を預かっているという親のような思い、責任感があった。パワハラと受け止められているのであれば残念。組合へ戻ってきてほしいというのが願いだ」と語り、パワハラについては真っ向から否定し、報道とは著しく乖離したコメントを発していました。

 事実認定においては、今後、訴訟により判明することとなりますので、裁判の推移を注視し、見守りたいと思います。

 不正受給が認定され、また、それに関してのパワハラ訴訟と立て続けの不祥事と思われる事象、地元の人々の中には、和歌山南漁協に対する嫌悪感の言葉をよく耳にいたします。また、「指導監督する立場の県水産局は何をしているんだ」という言葉も、私の耳にも届いています。これだけマスメディアで取り上げられ、地元の皆様が不信感を抱く和歌山南漁協という組織の一連の事案に対し、県当局としてどのような認識をお持ちなのか、農林水産部長、お答えください。

○議長(尾崎要二君) 農林水産部長。

  〔山本佳之君、登壇〕

○農林水産部長(山本佳之君) 和歌山南漁協は、田辺市及び白浜町から、イセエビ放流事業や漁業放流事業等の補助金を不正に受給していました。

 そのため、県としましては、補助金不正受給発覚後、直ちに水産業協同組合法に基づき報告徴収命令を発するとともに、JF和歌山南経営改善策検討委員会にも参画し、漁協組織のガバナンス体制、事務処理体制、チェック体制及び法令遵守意識を抜本的に見直す改善策の策定を指導しました。その結果、漁協では、運営体制や諸規定の整備、資金の一元管理などの経営改善策が実行されているところです。

 しかしながら、補助金不正受給が発生したことや、議員が申し述べられているようなパワーハラスメントの件が訴訟にまで発展したことは、大変遺憾に思っております。県としましては、今後も、漁協の運営状況や訴訟の推移を引き続き注視し、漁協運営の健全化はもとより、漁協役職員の法令遵守意識の徹底にも取り組んでまいります。

○議長(尾崎要二君) 秋月史成君。

  〔秋月史成君、登壇〕

○秋月史成君 法令遵守意識を抜本的に見直す改善策の策定を指導。指導が行き届いていなかったから、パワーハラスメントの件が訴訟にまで発展したのではないでしょうかと思ってしまいます。

 最後の質問に移ります。

 パワーハラスメント、パワハラ、最近よく聞く言葉であります。パワハラだけではなく、ハラスメントという言葉に、最近は非常に敏感となっております。

 私が学生の頃は、ハラスメントという言葉を耳にすることもなく、厳しい父親に育てられたこともあり、家庭内でもしつけの一環として鉄拳制裁もよく受けたと記憶しております。また、自衛隊時代は、厳正な規律の下、厳しい訓練の中、現在ではパワハラに当たると思われることも散見される時代でした。また、私の会社は、技術を売る会社ということもあり、技術者というより職人の世界のため、時には、私自身、口汚く叱った経験も恥ずかしながら持っております。しかし、どんなに口汚く叱っても、叱られた社員は現在でも勤めておりますし、精神疾患にもなってはおりません。

 私は、元来、決してきれいな言葉遣いをできる人間ではありませんが、ハラスメントという言葉が一般的になった昨今は、社員に接する際も言葉遣いは慎重にし、ハラスメントに当たらないよう、その指導にも細心の注意を払っております。

 組合長は、パワハラについて真っ向から否定していますが、元職員は精神疾患に陥り、退職した事実は否定できません。和歌山南漁協及び組合長をはじめとする訴訟で訴えられた漁協幹部には、規範意識が欠落している可能性は否定できないと思います。

 そこで、質問です。

 今後、県水産局として、当該組合に対し、どのような助言、指導を行っていくのか、農林水産部長、具体的にお答えください。

○議長(尾崎要二君) 農林水産部長。

  〔山本佳之君、登壇〕

○農林水産部長(山本佳之君) 議員が申し述べられています職場におけるハラスメントについては、労働施策総合推進法を所管する労働局において、事業主や労働者等に助言、指導や調停による紛争解決援助が行われています。漁協職員から、職場におけるハラスメントに関する相談が県のほうにあった場合には、労働局など専門の相談窓口を紹介するなど、適切に対応することとしています。

 一方、県では、農林漁業関係団体の研修担当者を対象とした人権研修会や、和歌山県漁業協同組合連合会と共催で、各漁協のガバナンス強化を目的とした役職員研修会を開催しています。

 今後も、そういった場でハラスメントに関する研修も行うなど、漁協の役職員一人一人の人権尊重や法令遵守の意識向上に努めてまいります。

○議長(尾崎要二君) 秋月史成君。

  〔秋月史成君、登壇〕

○秋月史成君 答弁にもありましたように、漁協の役職員一人一人の人権尊重意識や法令遵守意識向上に努めていただきますことをよろしくお願いいたします。

 これで、私の一般質問を終わります。最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。(拍手)

○議長(尾崎要二君) 以上で、秋月史成君の質問が終了いたしました。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 35番林 隆一君。

  〔林 隆一君、登壇〕(拍手)

○林 隆一君 皆様、おはようございます。日本維新の会の林隆一でございます。

 まず、ちょっと和歌山市の補欠選挙の件です。そうですね、身内が出たということで、こっそり出したつもりなんですが、登庁したら職員の方々におめでとうございますと、また、特筆すべきは、先輩・同僚議員の皆様も「林君、おめでとう」と、「よかったね」と言っていただいて本当に幸せを感じている次第でございます。たとえ今期限り、1期だけの県議会ということであったとしても、県議会に来てよかったなと、そういうふうにつくづく感じております。改めまして感謝申し上げます。

 それでは、議長のお許しをいただきましたので、通告に従い一般質問をさせていただきます。

 さて、7月28日付の報道によりますと、令和4年4月19日に行われた全国学力・学習状況調査の結果が公表されております。

 この調査は、学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる目的で、全国の公立小学校の第6学年と公立中学校の第3学年が対象となり、県内でも、小学校223校で約6600人、中学校117校で約6200人がこのテストを受けております。

 その結果を見ますと、小学6年生の算数と理科の正答率は63%で全国平均と同率、国語の正答率が65%で全国平均に比べてマイナス1ポイントで、全国順位はそれぞれ、算数が15位、理科が17位、国語は23位となっております。一方で、中学3年生については、数学が50%で全国平均に比べてマイナス1ポイント、理科が46%、国語が66%で、どちらも全国平均との差がマイナス3ポイントとなっております。全国順位では、数学が28位ですが、国語と理科が全国46位であります。どうやら中学生の方に課題があるように見受けられます。

 私は、学習に関して、高校生ぐらいになりますと、それぞれ進路の違いもあり、生徒自身の学ぶ方向性や姿勢が学習状況に大きく影響すると思いますが、やはり義務教育段階では、先生から教えていただいた基礎的な学力をしっかり身につけることが大事であると考えております。

 この調査の実施要領を見ますと、教科に関する出題範囲は、身につけておかなければ、後の学年等の学習内容に影響を及ぼす内容や、実生活において不可欠であり、常に活用できるようになっていることが望ましい知識、技能などとされておりますので、なおさらのことでございます。

 そこで、質問いたします。

 今回の全国学力・学習状況調査における和歌山県の結果について、どのような原因や課題があるとお考えでしょうか。教育長にお伺いいたします。

○議長(尾崎要二君) ただいまの林隆一君の質問に対する答弁を求めます。

 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 平成19年から実施されている全国学力・学習状況調査は、児童生徒の学力や学習状況を把握、分析し、学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てること等を目的としています。

 本調査の継続的な実施と継続的な検証改善サイクルによって、全国的には学力が底上げされ、都道府県間の差は縮小しているなど、義務教育の水準の維持向上には成果が上がっています。

 本県では、校種や教科に問わず、基礎的、基本的な知識・技能に関する学力に比べて、それらを活用する能力に課題があるとされてきました。教員への研修や教材作成に取り組み、学力調査結果では全国平均との差異は縮小するなど、一定の改善は見られています。

 本県の小中学生は、全般的に、書かれた文章をしっかり理解し、それらを利用して思考する力や、複数の条件を基に判断して考える力等に課題があり、それらの力を身につけさせる授業を各教科において十分に実施できていないことが原因であると考えています。

○議長(尾崎要二君) 林 隆一君。

  〔林 隆一君、登壇〕

○林 隆一君 御答弁いただきました。

 本県の小中学生は、全般的に、書かれた文章をしっかり理解し、それを利用して思考する力や、複数の条件を基に判断して考える力に課題があり、それらを身につけさせる授業を各教科において十分に実施できていないことが原因であるとのことでございました。

 しかしながら、先ほども申し上げましたように、この調査は、教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てるのが目的であるとされております。先ほどの御答弁にもありましたように、平成19年からこの調査が実施されているとのことですので、県といたしましては、どのような学力向上に向けた取組を行ってきたのでしょうか。教育長、お答えください。

○議長(尾崎要二君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 県教育委員会では、これまでの全国学力・学習状況調査で明らかになった課題に対し、大きく三つの観点で取組を行ってきました。

 一つ目は、授業力向上や授業改善に学校を挙げて組織的に取り組むことが弱かったことへの対応として、管理職を先進地等に派遣し、学校マネジメントの向上を図る取組を進めてきました。

 二つ目は、教員の学習指導力を向上させるために、研究授業の充実や優れた指導力を有するOB教員を学校に派遣して、個々の教員への指導や支援を行ってきました。

 三つ目は、児童生徒の学びに対する意欲を高めるために、各教科の評価問題集を作成し、学習のどこでつまずいているか、どのようなステップで取り組めば改善できるか等について指導をしてきました。

 これらについては、定着する等成果も上がっていますが、まだ充実、改善の余地があり、今後も引き続き取組を進めてまいりたいと考えています。

○議長(尾崎要二君) 林 隆一君。

  〔林 隆一君、登壇〕

○林 隆一君 御答弁をいただきました。

 管理職の先進地等への派遣による学校マネジメントの向上を図る取組や、優れた指導力を有するOB教員の学校への派遣による個々の教員への指導や支援などの取組をされてきたということは分かりました。答弁いただいた取組だけではなく、他府県の状況などを把握され、検討を重ねた上で様々な取組を実施されてきたと思います。

 ただ、残念なことに、現在の問題形式となった令和元年度以降で、新型コロナウイルス感染症の影響により調査が実施されていなかった令和2年度を除く3か年で、全国の平均正答率との差を見ますと、小学生は、令和元年度の算数ではマイナス1ポイントとなっている以外は、全国平均と同率ですが、中学生については、数学で1ポイントから2ポイントのマイナス、国語については3ポイントから4ポイントのマイナスが続いている状況となっております。

 今、お伺いいたしました取組などが、近年の状況から見て、あまり効果が見えていないようにも見受けられます。このような状況を改善するためにも、今後、どのように取り組んでいかれるのでしょうか。教育長にお伺いいたします。

○議長(尾崎要二君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 今回の調査では、中学校の国語と理科は全国平均を3ポイント下回り、全国で下位という厳しい結果となったことを深刻に受け止め、臨時の市町村教育委員会教育長会議を開催しました。そこで、各市町村の課題を共有するとともに、各市町村が主体的に計画した学力・学習状況の改善策を県教委がバックアップをするなど、県と市町村が一体となって取り組んでいくことを確認いたしました。

 また、今年度から新政策として、中学校の県学習到達度調査を年2回実施し、学習内容の定着状況をきめ細かく把握し、教員の授業改善に生かしています。喫緊の取組としては、中学校国語科の全教員を対象に、文部科学省の学習調査官を招き、授業における指導と評価についての研修を実施しました。

 さらに、県内八つの地域で、読解力等を育成するための示範授業、まあ、いわゆるこういった授業はどうですかというような内容で提案をするような授業のことでございますが、その示範授業を中学校国語科の全教員を集めて開催する予定で、授業者と県の指導主事等による授業案づくりの事前研修を3回実施します。

 本県の児童生徒は、文章や図表をしっかり理解し、そこから思考する力や、複数の条件の下に判断して考える力を伸ばすことが必要ですが、特定の教科の指導にとどまらず、小中学校の全ての授業において取り組まなければなりません。このことを全ての教員が認識し、日々の指導で取り組むように、意識改革と授業実践の交流を進めております。

 また、今後、一人一人の課題や特質に応じた個別最適な学びの実現に向け、ICTを活用し、個々の学習到達度に応じた指導や、児童生徒が自らのペースで粘り強く取り組む態度の育成などに取り組んでまいります。

○議長(尾崎要二君) 林 隆一君。

  〔林 隆一君、登壇〕

○林 隆一君 御答弁をいただきました。

 先ほど申し上げましたように、私は、義務教育段階で先生方から教わることは実生活において不可欠なものが多く、基礎的な学力をしっかり身につけることが大事であると考えております。先ほど、原因の一つとして答弁にあった、書かれた文章をしっかり理解し、それらを利用して思考する力などは、まさに必要なものであると考えております。

 今まで、全国学力・学習状況調査の結果が幾度となく議会や委員会などで議論されてきたと思いますが、しかし、生徒が毎年変わっても成績がよくない状況が続くというのは、教師の教え方が悪いのか、そもそも教える能力が低いのか、どちらかであると思っております。

 ちなみに、私は教員免許を持っておりまして、高校の地理と歴史の教科は教員一種免許、公民や中学の社会科に関しては、上級免許である教員専修免許を持っております。しかし、教員専修免許を持っているからといって、生徒の成績が上がる授業ができるかといえば、そうではございません。通常の授業もできないぐらいのレベルだと思っております。

 私は、政治家になる前は、民間職業訓練校を経営する傍ら、自ら資格試験対策の講師として宅建やマンション管理業務主任者、ファイナンシャルプランナー、証券外務員、簿記などの講師を担当しておりました。最近、議員になってからは、美容専門学校で2年近く、週1回でありますが、1限か2限でしたが、非常勤講師を務めておりました。プロフェッショナルと自負していた時期もありました。しかしながら、今となっては、講師として、よほど勉強しないと授業にならないぐらい低いレベルであるというふうに自覚しております。

 日々勉強していかないと、記憶力やあらゆる面で落ちていくのは周知のとおりでございます。特に、生徒に理解してもらえるように教えるということは、相当難しいことだと考えております。そのためには、教師自身も相当勉強していかなくてはならないと思っております。そのような点でいうと、この読解力等を身につけることについては、生徒はもちろんでございますが、先生方の生徒を育成する方法自体が改善されていかなければならず、今回の新政策として御紹介のあった各地方で実施されている読解力等を育成するための授業研究のような取組をしっかりと進めていっていただきたいと、そういうふうに思っております。

 また、この調査とともに行われたアンケートでは、読書習慣について、月曜から金曜の授業以外にどれくらい読書をするかという問いがありまして、県内の中学生の半数近くの45.7%は「全くしない」と回答しており、全国平均の39%に比べると6.7ポイントも高い数値となっております。読書についても、既にいろいろな取組をされていることと思いますが、小さい頃から読書を習慣づけることは、読解力の向上には大変役立つと思いますので御検討いただければと、そういうふうに思っております。

 最近の学校を取り巻く環境は、新型コロナウイルス感染症の流行によって大きく変化しており、在宅での授業やタブレットを使った授業など、指導される先生方も大変であると、そういうふうに思っておりますが、本日御紹介いただいた様々な取組により、来年度の全国学力・学習状況調査では平均正答率がよくなることを期待いたしまして、この質問を終わります。

 次の項目に移ります。

 2点目は、新型コロナワクチンに関する問題でございます。

 まず、この質問に入る前に、新型コロナウイルス感染症によりお亡くなりになられた方々に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、罹患された方々及びその御家族、関係者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。

 さて、新型コロナウイルス感染症が令和2年1月に日本で発生してから、約2年半が経過いたしました。和歌山県におきましても、令和4年9月15日時点で累計12万7499人の方が感染されております。また、最近では、感染のピークも第7波となり、オミクロン株のBA.5系統と言われるものに流行が切り替わってからは、日々の新規感染者が連日のように1000人を超えたり、2000人を超えたりという日もあり、医療従事者の方や保健所の方なども大変な御苦労をされているというふうに思っております。

 なかなか特効薬が一般に流通しない中で、このような未知のウイルスに対して、感染を防止し、収束に向かわせる現時点の手段として新型コロナワクチンが開発され、現在も接種が進められております。

 そのスタートは、令和3年2月にファイザー製のワクチンが薬事承認を受け、本県におきましては、令和3年3月からは医療従事者を対象に、4月からは住民向けの接種が開始され、市町村の集団接種会場や病院、クリニックでの接種だけではなく、職域接種など様々な機会を捉えて接種が進められてきました。その結果、県全体で、2回目の接種を受けた方は人口の約8割、3回目の接種を受けた方は約6割を超えているとのことでございます。

 そのような中、新型コロナワクチンで気になる点といたしましては、副反応の問題があります。知人の中にも、ワクチンを接種して、接種したほうの腕が上がらなくなったとか、接種した箇所が腫れた、場合によっては高熱が出たなどという話はよく聞きます。また、ニュースなどによりますと、ワクチン接種との因果関係は不明ですが、接種された方が亡くなったという報道も耳にしたりするところでございます。接種された方の年齢や持病の状況、アレルギー反応の強さなど、様々ですが、接種によって副反応が出ることに対して、県民の皆様も不安に思われるところだと思っております。

 そこで、福祉保健部長にお伺いいたします。

 この新型コロナワクチンの接種に伴うこれまでの副反応の状況はどのようになっているのでしょうか。また、どのような検証がなされているのでしょうか。福祉保健部長、お答えください。

○議長(尾崎要二君) 福祉保健部長志場紀之君。

  〔志場紀之君、登壇〕

○福祉保健部長(志場紀之君) 医療機関からの副反応疑い報告は、ワクチン接種と因果関係が不明な場合も含め、独立行政法人医薬品医療機器総合機構に提出されることになっています。

 それによると、令和4年8月7日までに全国での接種件数3億325万9747回に対して、因果関係は不明であるが、接種後に何らかの症状があると医療機関から報告された件数は3万4612件で、うち重篤数は7720件、死亡数は1392件となっています。なお、県内の医療機関からは、8月末までに接種件数230万7089回に対して270件の報告がされており、うち重篤数は82件、死亡数は17件となっています。

 これらの報告は、国の厚生科学審議会及び薬事・食品衛生審議会の部会で評価されており、死亡事例では、ワクチンと死亡との因果関係が否定できないものに分類されたものはなく、ワクチンと死亡との因果関係が認められないもの、または情報不足等によりワクチンと死亡との因果関係が評価できないものに分類されています。その他、死亡事例以外の副反応についても評価され、その結果、ワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められず、ワクチン接種を継続していくとされているところです。

 なお、予防接種による健康被害を救済する制度におきましては、全国で9月9日現在、死亡事例3件を含め920件への支給が決定されています。

○議長(尾崎要二君) 林 隆一君。

  〔林 隆一君、登壇〕

○林 隆一君 御答弁をいただきました。

 国の審議会等において評価され、ワクチン接種体制に影響を与える重要な懸念は認められておらず、ワクチン接種を継続していくとされていることはよく分かりました。

 そのような中で、国立感染症研究所の報告などによりますと、令和4年2月頃に、デルタ株からオミクロン株というものに全国的に置き換わっているとされております。最初、BA.1系統とされていたものがBA.2系統に変わり、それがさらに形を変え、現在の第7波と言われる感染流行の主流となっているBA.5系統になっているとのことでございます。

 先ほども申し上げましたように、本県におきましては、医療従事者の方や保健所や市町村など、様々な方が感染拡大の防止に努めていただき、限界をはるかに超えた対応をしていただいているにもかかわらず、1日1000人、2000人と新規感染者が出ております。感染された方の詳細な感染に至る事情は、私では分かりませんが、中には、決められた期間を守って、ワクチンを3回接種した方でも感染されている方はいらっしゃるということも聞いております。

 また、マスクについても同様です。新型コロナウイルスの感染について、当初は飛沫感染であるとされ、マスクの着用が進められてきました。その結果、夏の暑い時期や会話したりするときは息苦しく思うこともありましたが、マスクをして1日の大半を過ごすのが当たり前のようになってきております。このマスクに関して、先ほどのワクチン接種と同様で、マスクをしていても1000人、2000人と感染者が出てきているわけでございます。

 特に、最近の感染に関しては、感染者から放出された飛沫よりも細かい粒子が空中に数分から数時間にわたって浮遊し、それを暴露することで感染すると言われている、いわゆるエアロゾル感染により感染するとも言われております。

 そこで、質問いたします。

 ワクチン接種をしたり、マスクをしていても、1日1000人、2000人と新規感染者が出ている状況ではございますが、それらには効果があるのでしょうか。福祉保健部長にお伺いいたします。

○議長(尾崎要二君) 福祉保健部長。

  〔志場紀之君、登壇〕

○福祉保健部長(志場紀之君) まず、ワクチン接種の効果についてですが、接種をしてからの時間経過に伴う効果の逓減や新型コロナウイルスが変異株に置き換わっていることもあり、ワクチン接種によって免疫がついても、感染を完全に防ぐことはできません。

 しかし、県内の年齢別人口に対する感染者数とワクチン3回接種率の相関関係を調査したところ、ワクチン3回目接種率が高い年代では感染率が低いという結果が出ていることから、ワクチン接種によって感染を予防する効果はあると考えております。また、ワクチン接種には、重症化を予防する効果も認められており、その効果は、時間がたっても比較的高く保たれるという報告も複数あることから、ワクチンを接種していただく意義は十分あります。

 なお、従来株とオミクロン株に対応した2価ワクチンも開発され、9月下旬以降に順次接種が可能となる見込みですので、医療機関や市町村と協力しながらワクチン接種を進めてまいります。

 次に、マスク着用の効果についてですが、季節性インフルエンザ等の飛沫感染予防にも効果があるとして、以前から推奨されてきました。新型コロナウイルス感染症は、無症状者も含め、感染者の鼻咽頭や唾液の中にもウイルスがたくさん含まれ、会話やせき、くしゃみ等を介して飛沫感染が起こりやすい特徴があります。この飛沫感染を防ぐため、お互いが不織布マスクを着用することで、浴びるウイルス量を約70%減らすことができるという実証実験があり、マスク着用は飛沫感染する新型コロナウイルスの伝播防止に一定の効果があると認識しております。

 しかし、マスクの着用だけでは、ウイルスの吸い込みを完全に防ぐことはできないため、特に会話や飲食の際には、相手との距離を保つ、大きな声を出さない、換気を十分行うなどの基本的な感染防止対策が非常に重要であると考えております。

○議長(尾崎要二君) 林 隆一君。

  〔林 隆一君、登壇〕

○林 隆一君 御答弁をいただきました。

 なかなか特効薬が一般に流通しない中で、ワクチン接種やマスクの着用、換気や一定の行動制限をうまく組み合せて対応していくことが重要であるということが分かりました。

 今後も引き続き、感染予防などに必要な情報を県民の方に広く周知いただきますようお願いするとともに、これからオミクロン株に対応したワクチンの接種が始まる中で、ワクチン接種された方への接種後のケアなどの体制についても、しっかりと行っていただきますことをお願いいたします。

 また、現在、感染症法上の分類を2類から5類にするかどうかについて、国等で議論がなされているところでございます。条件が整い、季節性インフルエンザ相当の5類となった際には、新型コロナウイルスが猛威を振るう前の生活や経済活動を取り戻せますよう、様々な施策の実施をお願いして、私の一般質問を終了いたします。御清聴いただき、どうもありがとうございました。(拍手)

○議長(尾崎要二君) 以上で、林隆一君の質問が終了いたしました。

 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。

 この際、暫時休憩いたします。

  午前11時25分休憩

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  午後1時0分再開

○副議長(岩田弘彦君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 31番藤本眞利子さん。

  〔藤本眞利子君、登壇〕(拍手)

○藤本眞利子君 皆さん、こんにちは。

 議長のお許しをいただきましたので、質問をさせていただきます。

 先日、東京で行われました第30回全国おかみさん交流サミットin東京というところに参加をしてまいりました。この全国おかみさん交流サミットというものは、和歌山でも3年か4年前にみなべで行われたことがあったんですが、その大会が東京でありまして、そこに参加してまいりました。

 全国各地からおかみさんたちが集って、盛大に開催されました。アイリスオーヤマの大山社長のお話とか、それから、浅丘ルリ子さんがゲストでお見えになっておりまして、石原裕次郎さんとの交流のお話などされて、楽しいひとときを過ごすことができたんです。この会のことはあんまり今日の質問とは関係ないんですけど、ただ東京のほうへ出かけましたので、久しぶりに行きましたので、少し視察をしてまいりました。

 今回の第1問目は、首都圏を中心とした県産品販売活動の一層の促進についてお伺いしたいと思います。

 久しぶりの東京でしたので、和歌山のアンテナショップを視察、それから、知人から高知県のアンテナショップがいいよと聞いておりましたので、そこも一緒に視察させていただきました。和歌山県と高知県ともに人口減少に苦しみ、若者の県外流出にも苦しんでいるこの二つの県の取組を比べながら、質問させていただきたいと思います。

 高知県は、農業にも大変奮闘されておりまして、4年前に会派で高知県の視察に行った際、オランダのスマート農業をいち早く取り入れた大型ハウス栽培による四万十トマトの育成現場の視察、また、ニラやミョウガなど、他の野菜も全て高知家ブランドとして高知家プロモーションを全国展開している状況を聞いてきました。高知県庁にも、正面入り口に高知家と大きなのぼりが立てられていました。近所のエバグリーンにも、高知家ブランドの野菜が売られています。取組が目に見える形で表れています。

 人口も70万人を割り込み、和歌山県よりもさらに不利な条件の高知県ですが、道路に面した一つのビルに入っているアンテナショップまるごと高知は大変にぎわっており、四つあるレジには、ひっきりなしにお客さんが並んでいました。店頭でドリンクの販売と呼び込みをしていたお店の人も大変元気で、思わず買ってしまったというふうなことです。入り込み客数と売上高はどうなっているのだろうと、あんなに元気なのはなぜだろうと、その秘密を調べてきました。

 全国に先駆けて、人口減少、高齢化社会に突入した高知県、県内市場が縮小するなど人口減少の負のスパイラルが県経済の様々な面に表れてきていた高知県では、平成20年に高知県産業振興計画を策定、平成21年度より、地産外商を戦略の柱に、経済の活性化に向け様々な取組をスタートさせています。

 地産外商とは、活力ある県外市場に打って出る外商と、外商ができる「モノ」や「コト」を増やす地産の強化を打ち出したのです。そのことによって、地域地域で若者が誇りと志を持って働ける場を創出できる将来像を示したのです。

 平成21年度に取組をスタートさせると同時に、東京に一般財団法人高知県地産外商公社を設立させました。地産外商公社の目的は、高知県産業振興計画に基づき、活力ある県外市場に対して、官民が協働して高知県の豊かな資源を生かした県産品の販売や観光及び食文化等についての情報の発信を行うこと、高知県のブランド価値を向上させることを通じて、地産外商を強力に推進し、もって高知県の産業振興を図り、県民の生活向上に寄与することとあります。

 平成21年度に公社を設立し、東京有楽町に、まるごと高知を開店させます。1階は物産、2階は飲食、地下はお酒専門を販売するアンテナショップを展開させました。和歌山県のアンテナショップより後発のスタートでした。地産外商公社では、主に高知県内事業者等の販路開拓、販売拡大に向けた事業活動の支援を行い、公務員ではなかなかできない営業に力を入れ始めたのです。

 今日、資料を出しておりまして、表を見ていただけますでしょうか。これは、高知県産業振興計画の令和4年度版です。高知県経済の状況をグラフに表したものです。ちょっと細かくて見にくいんですが、産業振興計画を設定した平成21年度を境に、各分野で地産外商が大きく前進していることが分かるかと思います。

 表1のほうでは、地産外商公社のサポートで外商が飛躍的な拡大をしている様子が分かります。地産外商の公社のサポートによって、58倍に増加したというふうなことが示されています。また、産業振興センターのサポートで、外商の受注金額が大きく伸びています。高知県は、和歌山県と同様、東南海・南海地震の影響を直接受ける県ですので、防災関連産業の伸びも大きいものです。この産業振興センターのサポートによる外商が大きく飛躍したという表も見ていただくと、約37倍に飛躍しているというふうに表されています。防災にすごく力が入っておりまして、これは約170倍に増加したというふうな、そういった表になっています。

 表2でも、この振興計画を立ててから後の成長を表しているんですが、コロナでやっぱりちゃんと落ち込んでしまっているんですけれども、それまでは、やっぱり各種生産額は増加に転じているのが分かっていただけるかと思います。有効求人数なんかもすごく突出して伸びておりますし、原木の生産量であったりとか、いろんな高知での分がこういうふうに伸びているということが、この表を見ていただければ分かるかと思うんです。

 この産業振興計画のすばらしいところは、高知で生産するものは全て売っていこう、こういう姿勢です。まず、農業分野、林業分野、水産業分野、商工業分野、食品分野、観光分野を産業振興という横串を刺しまして、そして、分野ごとに目指す姿を明示して目標を数値化、それに向かって取組を進めているのが分かると思うんです。目標を数値に表すことによって、産業振興を支える全ての人がその目標に向かって取組を進めることができます。県だけではなく、民間も共に協働する意識が培われているのだと推測いたします。

 この産業振興計画は、バージョン3ということですので、このような結果を出すまでには、やはり10年以上の取組があり、それを実践し続けているということがこの表を見ても分かるかと思いますし、その積み重ねというのが結果に表れていると思います。

 次に、参考となるのが、一般財団法人高知県地産外商公社の設立です。この産業振興計画を立てまして、すぐにこの地産外商公社をつくっているわけです。

 先ほども少し紹介しましたが、概要をもう少しお話しすると、事業内容としては、県内事業者等の販路開拓、販売拡大に向けた営業活動の支援、テストマーケティング等を通じた高知県内商品の価値向上の支援とアンテナショップの運営、観光事業、ふるさと情報、食文化の情報発信等々、目的を達成するための事業を行うとしています。

 東京に外商事務所、大阪に大阪グループ、愛知に名古屋駐在と、高知県庁内に高知事務所を構えています。基本財産は、県の出資55.9%、1億300万円、財団法人高知県市町村振興協会から6000万円、四国銀行、高知銀行から500万円ずつというものでスタートしています。

 次の表をちょっと御覧ください。これは、令和3年度の地産外商公社の経済波及効果と活動の成果の推移です。驚くべき数字が並んでいます。まず、令和3年度なんですが、外商の成約件数がコロナの時代にあって1万279件です。その金額は51.93億円、展示商談会が62回、延べ参加事業者が701社、うち実参加事業者が177社となっています。個別企業への営業訪問が3215件、産地視察への招聘が69回、高知フェアの開催が187回と、コロナ禍にもかかわらず、過去最高の外商成果となっています。

 和歌山でも、アクションプログラム2022をもって販売促進戦略を行っています。アクションプログラムでは、様々な取組をされていることは分かるのですが、例えば、商談会における参加バイヤー数や参加事業数、商談件数等の実績は掲載されていますが、どれだけの商品が取引され、成約件数や成約金額が幾らだったのか、その取組がどのような成果を出したのかなどがちょっとあんまりよく分かりません。食品流通課で把握されているかと思いますが、取組がどのような成果を上げているのかを数値に示すべきだと思います。結果を見て、次の戦略を考えなければなりません。

 また、高知県のアンテナショップの売上げは3.86億円と、コロナの中にあって飲食が苦戦した割には大変な成績を収めています。来店者数も56万2639人と、にぎわいはこの数字に表れていたのだと納得しました。この波及効果は、60億円にも及ぶものです。スタートした時点での出資は必要ですが、これだけの事業を進めるための必要経費だと思えば安いもんです。このように、県と公社と民間がタッグを組んで売り込みをしている姿が見えてくるかと思います。

 片や、和歌山県のアンテナショップの売上げは、東京交通会館の地下1階という悪条件の中で健闘しているとはいえ、令和元年度の約1億3000万円をピークに、コロナ禍の中、苦戦している現状です。東京交通会館の奥では、わざわざ行く人しか行きませんし、やはり表通りに面した店舗を構える必要があるんじゃないかというふうに思います。

 和歌山には7頭のパンダ、これは全国で一番の7頭のパンダがいるんですが、そのパンダをね、人目をぱっと引くような大きなパンダを店頭に飾るというふうな、そんなこともしてはどうかなあと思います。高知県では、坂本龍馬がこういうふうに立っておりまして、その写真を撮ってきたんですが、そんなふうに人目を引くような、やっぱりそういう店頭を飾るというのもいいかというふうに思うんです。

 また、売場面積に問題があるのか、品数が少な過ぎます。和歌山にはたくさんの名産品があるのですから、しっかり売れるように商品を並べてほしいものです。しょうゆや梅酒もあんまり、並んではいるんですが、数が少なかったです。ちなみに、扱っている品目は、令和3年度において、和歌山県は782品目、高知県では2192品目と和歌山の3倍の品目を扱っていました。

 先日、農林水産委員会の県内視察で、湯浅ワイナリー、新宮市のナマズの養殖場、株式会社食縁さんによるブリヒラの養殖場等々の視察に行かせていただきました。各地でも本当に頑張っておられる生産者や事業者の皆さんとの意見交換は、大変勉強になりました。

 行く先々で事業者の方がお話をされるのは、この製品の出口をしっかり探してほしいということでした。ナマズにしても、刺身にしてよし、フライにしてよし、新しい食材として大きな可能性を秘めているのですが、コロナ禍の中、出荷が思うようにいかないとのことでした。県の食品流通課も本当に頑張っておられますが、何分にも人の手も少なく、力不足は否めません。今の体制では、県内事業者の全てをカバーする力量はありません。特に、自らの販路を開拓できない小規模事業者の要望には応えられていないという状況です。

 県では、プレミア和歌山の認定も行っており、良い商品がたくさん認定されているにもかかわらず、その販路を拡大できないでいる状況です。事業者の皆さんは、少しでも自社の商品がよく売れるように、プレミア和歌山という付加価値をつけようと努力されているのに、県としてしっかりと後押しをし、応援してあげなければと思います。農業産出額も、食品分野の産出額も高知県とあんまり大差なく、中身では、私は和歌山県のほうが勝っていると思っているんですが、これらを売るための施策を抜本的に見直す必要があると思います。

 私、ちょっと提案させていただきたいんです。二つ、ちょっと考えてきたんですが、一つは、わかやま産業振興財団の中のわかやま産品販促支援事業を充実拡大する案です。今の産業振興財団の事業計画では、わかやま企業成長戦略事業(経営・販路・技術・研究)、こういうことに多くの時間と予算を組んでいます。わかやま産品販促促進事業にも取り組まれてはいるんですが、どちらかというと、物づくりに関わる商品の販促に力が入っているように思われます。

 財団の設立経緯から考えると、和歌山の物づくり産業の支援というもともとの性格は理解できます。しかし、プレミア和歌山の商品については、食品も含め、年に1回の販促活動をしているということもありますので、和歌山の産業振興という観点から、和歌山の産品であれば、農産物、水産物、食品、加工品等々を含めた販路開拓の事業を充実拡大する方向で進めてはどうでしょうか。わかやま産業振興財団の組織改革が一つの私の案です。

 もう一案は、県が主体となって、和歌山の全ての産業振興のために販路開拓の新たな組織をつくるというものです。全ての事業者、経営者の販路を開拓していく、1次産品は食品流通課、プレミア和歌山は企業振興課、物づくりはわかやま産業振興財団というのではなく、各課に地産の強化のお願いをし、連携しながら全国に、世界に展開する外商の担当課を組織するというイメージです。2025年には関西万博も行われるわけですが、観光とも連携して進めていければと考えています。

 あくまでも私の意見ですので、参考にしていただければと思いますが、高知県の言われる外商にもっと力を入れるべきだと思います。今の体制では限界があります。それが数字に表れています。県の発展のため、また、小さな事業者の皆さんの商売がうまくいくように考えていただきたいと心から願っています。

 そこで、首都圏を中心とした県産品販売活動について、和歌山県ではどのような支援を行っているのか。また、高知県は、本庁担当課に加え、公社も設立し外商活動を行っていますが、和歌山県では、今後どのように取り組んでいくのか、農林水産部長にお伺いします。

○副議長(岩田弘彦君) ただいまの藤本眞利子さんの質問に対する答弁を求めます。

 農林水産部長山本佳之君。

  〔山本佳之君、登壇〕

○農林水産部長(山本佳之君) 県では、毎年策定する農水産物・加工食品の販売促進戦略に基づいて、多様な販路の拡大や商談機会の創出に取り組んでいるところです。

 商談会については、首都圏で毎年開催される国内最大級の食品展示会であるスーパーマーケット・トレードショーやFOODEX JAPANといった大型展示商談会へ出展してまいりました。

 小規模事業者向けには、わかやま産品商談会in大阪やin和歌山等、参加しやすい商談会を開催するとともに、有名高級スーパー等のバイヤーを県内に招聘し、現地視察や商談会を行うといった取組も実施しています。

 また、コロナ禍を契機としてウェブ商談を積極的に取り入れるとともに、サイト上で商談可能となる「おいしく食べて和歌山モールFOR BUSINESS」の構築や、首都圏の商社OB等による商談代行制度を活用することで、首都圏へ出向くことなくバイヤーと商談が可能になるなど、時間や場所にとらわれない様々な機会の創出に取り組んでいます。

 さらに、商談会後も参加事業者に対して、その後の商談状況等についてフォローアップを行うとともに、県が招聘して行う商談会については、参加バイヤーに対しても商談会後に訪問し、成約に向けた商談が円滑に進むよう支援しているところです。

 このように、本県では、職員自らが販路開拓や生産者、食品事業者の商品力、販売力の向上支援に取り組んでいます。県としましては、議員からお話のあった高知県をはじめ他府県の取組を研究した上で、本県に有益と思われるものについては新たに取り入れながら、県内生産者や食品事業者へのさらなる支援に努めてまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 藤本眞利子さん。

  〔藤本眞利子君、登壇〕

○藤本眞利子君 県産品の販売活動の一層の推進について御答弁いただき、ありがとうございます。

 県が販路開拓に一生懸命取り組んでいただいているのは、もう十分理解しているんです。私も、ちょこちょこいろんなとこへ、大阪にも見に行き、大型展示場も見に行き、職員さん自らがほんまに骨を折って仕事をされているというのもよく分かっています。しかし、一旦数字の上で見比べてみると、あまりにも件数であったり、それから成約の金額であったり、その辺がちょっと大きな差が出てきているので、ここを何とかしていただきたいというふうな思いが強くなっているんですね。

 毎年の努力を、取組をされているのもよく分かっています。だけど、結果がどうなっているんか、去年と比べて今年の結果はどうなんだ、来年はどういうふうな目標を持ってこのことを進めていくんだということのやはり検証をしながら、次の戦略を考えていくというのがとっても大事なことだと私は思っておりまして、質問の中でも言わせていただいたように、今の組織の食品流通課の職員さんが汗をかいているんですけど、なかなかそういったところに結びついていかないので、抜本的な取組の見直しを提言させていただいたんです。

 現状のままの販促活動には、やっぱり限界があるんじゃないかなあというふうに思っておりまして、しっかりと研究していただいて、この販促活動に力を入れていただけることをお願いしたいというふうに思います。

 和歌山県は、この間から、旅行専門誌「じゃらん」においても、宿泊旅行調査の都道府県魅力度ランキングにおいても、総合満足度第1位になるなど、和歌山県の魅力が見直されておりますので、旅行調査でも食に関する関心は年々高まっております。今こそ、私はやっぱり首都圏で、いや、撤退しているアンテナショップもあるというふうなことも聞きましたけれども、やっぱりそこは打って出ることが必要なんじゃないか。よそがへっこむなら和歌山が出ると、そのようなことで取組を進めていただきたいということを切にお願いいたしまして、次の質問に移ります。

 2問目として、和歌山県立医大におけるハラスメント問題についてお伺いします。

 この事案は、今年の6月1日に発表されたもので、医学部の50代男性教授が部下の女性にセクハラやパワハラを繰り返したとして、停職3か月の懲戒処分をされたものです。

 男性教授は、昨年の12月から今年の1月にかけて、同部の部下の女性に不快感を与える性的な発言や人格や尊厳を傷つける発言を繰り返したほか、自宅や実家周辺をうろつくなどして付きまとったとされています。1月下旬に女性から大学に相談があり発覚、女性は、3月に抑鬱状態と診断され、一時休職に追い込まれたものです。

 この事案の何が問題なのか、少しお話ししたいと思います。

 まず、一つ目の問題は、セクハラ、パワハラに対する医大の対応について、時間がかかり過ぎているのではないかという点です。

 被害者は、昨年の12月から1月にかけて被害を受け、1月の下旬に危機対策室に相談しています。職場だけでなく、教授によるストーカーが発覚したので、被害者は警察にも相談しています。医大の職場環境の問題について、労働局にも相談されています。相談できるところを求めるも、なかなか改善されないため、そのうち時間が経過、心の均斉が取れなくなり、3月に抑鬱状態と診断され、一時休職に追い込まれてしまいます。

 1月下旬に危機対策室に相談したにもかかわらず、3月になって、やっと調査委員会が設置され、加害教授の正式な聞き取りが実施されることになったようです。相談してから対応するまで、あまりにも時間がかかり過ぎているように思います。その間、被害者はやはり恐怖というか、耐えなければならなかったと思います。しかも、処分が決まったのが6月ですので、半年もの時間がかかりました。というのが、私の把握です。

 次に、二つ目の問題は、セクハラ、パワハラの問題が判明した後、被害者が安全に職場において職務を遂行できるよう適切な職場環境が確保されていたかという点です。医大は、大学という特殊な職場環境であり、教科によっては教員の人数が少ない教室もあると思いますが、今回の事件のようなハラスメント行為が確認された場合、適切な職場環境が確保できていたのでしょうか。

 上記の2点の問題について、医大の対応に問題はなかったのか、福祉保健部長、お答えください。また、今回のハラスメント事案により、医大の教授を3か月の懲戒処分としたことに対して、医大はどのような見解を持っているのか、福祉保健部長、お答えください。

○副議長(岩田弘彦君) 福祉保健部長志場紀之君。

  〔志場紀之君、登壇〕

○福祉保健部長(志場紀之君) まず、和歌山県立医科大学の対応についてですが、被害者からの相談があったのは令和4年1月下旬であり、その際、今後の業務への支障を考慮し、その時点では行為者への接触はしないでほしいとの意向でした。

 3月上旬になり、被害者から、行為者の処分を望むので、学内調査を実施してほしいとの申告があったため、医大として直ちにハラスメント事案調査委員会を立ち上げ、双方へのヒアリングを複数回実施し、慎重に事実確認を行いました。

 最終的に、調査委員会の調査結果を基に学内での審議を経て、令和4年6月1日付で停職3か月の懲戒処分を行いました。

 医大としては、被害者の意思を尊重した上で、可能な限り迅速な対応をしたものであり、適切だったというふうに考えております。

 次に、適切な職場環境の確保につきましては、被害者からの相談以降、速やかに両者の出勤日の調整や行為者の執務室の変更により、両者が学内で顔を合わせる機会がないよう対応を講じておりました。

 本件に関する医大の見解につきましては、教育現場である大学でのハラスメント行為というあってはならない事案であり、本来であれば学生の手本となるべき教員がこのような不適切な行為を行ったことにより、教育者としての信頼を損なう事態を引き起したことについて、医大としても非常に重く受け止めているところでございます。

○副議長(岩田弘彦君) 藤本眞利子さん。

  〔藤本眞利子君、登壇〕

○藤本眞利子君 御答弁いただき、ありがとうございます。

 医大においては、あってはならない事案が起きたという認識であり、それから、非常に重く受け止めているということですが、同じような事案が繰り返されないためにも、医大のハラスメント防止に関する取組が極めて重要であると考えます。

 つきましては、医大における現在のハラスメント防止への取組状況と今後の対応方針について、福祉保健部長、お答えください。

○副議長(岩田弘彦君) 福祉保健部長。

  〔志場紀之君、登壇〕

○福祉保健部長(志場紀之君) 医大では、ハラスメント防止規程及びハラスメント防止に関する基本方針を策定し、学内におけるセクシュアルハラスメントやパワーハラスメント、アカデミックハラスメント等のハラスメント行為の防止を推進しています。

 また、ハラスメント防止を含む研修を毎年実施することにより、職員の意識啓発に取り組むとともに、ハラスメントが発生した場合の相談窓口を整備し、ハラスメント防止に向けて全学的に取り組んでいます。

 なお、相談窓口については、相談員の連絡先を学内ホームページ等で広く周知するとともに、電話やメールによる相談も受け付けており、面談の希望者には個室で対応するなど、プライバシーにも配慮した環境を整備しています。

 医大における今後の対策としましては、引き続き、全職員及び全学生に対してハラスメント防止に関する研修を行うとともに、ハラスメントの悩みを一人で抱え込むことのないよう、相談窓口の活用を周知徹底することにより、全学を挙げて再発防止に向けた取組を行ってまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 藤本眞利子さん。

  〔藤本眞利子君、登壇〕

○藤本眞利子君 御答弁いただきました。

 全職員及び全学年に対してハラスメント防止の研修を行う、全学を挙げて再発防止に向け取組を行っていかれるということですので、よろしくお願いしたいと思います。

 様々なハラスメントによる事案が多発し、自殺してしまったりとか命を失う事案等も発生するなど、ハラスメントは、個々の問題ではなく社会問題であるという認識が定着してきています。世界的にハラスメント防止の取組を進めなければならないという動きの中で、仕事の世界における暴力及びハラスメントの撤廃に関する条約が2019年の6月、ILO総会で採択され、2021年の6月25日に発効しました。条約は、加盟国に対して、暴力とハラスメントを法的に禁止することを求めています。

 国内では、2020年6月に施行されたハラスメント対策関連法で、事業主にセクシュアルハラスメント、マタニティーハラスメント、ケアハラスメントに対して防止措置が義務づけられ、新たにパワーハラスメントについては、大企業では2020年6月に、中小企業では2022年4月から雇用管理上の防止措置を義務づけられました。しかし、国内法では、ハラスメントの禁止規定がなく、被害者、行為者の範囲が限定的で、条約と比較すると不十分な内容となっています。

 日本労働組合総連合会が実施した仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2021では、3割以上の人が職場でハラスメントを受けた経験があるとしています。ハラスメント対策関連法に基づく職場の対策の実施率は低く、「職場でパワハラの内容・方針の明確化や周知・啓発に関して何も行われていない」という答えが4割に上っているとの報告が上がっています。

 そこで、企業におけるハラスメント防止に関し、県としてどのような取組を行っているのか、商工観光労働部長にお伺いします。

○副議長(岩田弘彦君) 商工観光労働部長寺本雅哉君。

  〔寺本雅哉君、登壇〕

○商工観光労働部長(寺本雅哉君) 県では、これまで、ハラスメントのない職場づくりを推進するため、企業に対する人権研修の実施や労働セミナーの開催、また、「県民の友」に職場でのハラスメントの防止対策について掲載するなどの周知、啓発を行ってきました。

 また、令和4年4月から、パワーハラスメント防止措置が中小企業にも義務づけがされることを受けて、相談体制の整備や被害者に対する適正な配慮、再発防止措置など、企業が取り組まなければならない措置について、令和4年2月開催の労働セミナーにおいて周知したところです。

 一方、労働者から直接県に相談があった場合には、県が設置している労働センターの相談窓口において助言やアドバイスを行うとともに、必要に応じ、企業に対する指導や勧告、企業名公表の権限を持つ労働局に取り次いでおります。

 今後とも、ハラスメントのない職場づくりを推進するため、企業に対する研修やセミナーの開催などを通じて周知、啓発をしてまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 藤本眞利子さん。

  〔藤本眞利子君、登壇〕

○藤本眞利子君 最後の質問です。

 教育委員会における、近年のわいせつ行為に係る処分事案についてお伺いします。

 私は、わいせつ行為等を含む性暴力について、何度となく県議会でも取り上げ、その対策を問いただしてきました。いつになったら、こんな問題を取り上げなくてもいいのかなあというふうに思っています。

 今年8月、NHK NEWS WEBに、和歌山県教育委員会は、県立学校の30代の男性教諭が授業を受け持ったことがある高校の女子生徒とわいせつな行為を行ったとして、懲戒免職処分を行いましたと報道されました。教育委員会の調査で、教諭は、授業を受け持った後も女子生徒に教科を指導したり、学校生活上の相談に乗っていたりしていて、禁止されているSNSでの生徒と個人的なやり取りも行っていたことも分かりましたと伝えています。

 教育委員会は、個人的なSNSのやり取りが禁止されているにもかかわらず、そのような付き合いをしていたことが問題であると捉えているようにも思うのですが、生徒が教員に様々な問題を相談することは悪いこととは思えません。生徒と教員であっても、個人的な相談は信頼関係がなければできないと思うからです。そのことが問題なのではなく、そのことを利用してわいせつ行為を行った教員の資質に問題があると考えます。

 そのことが気になって、過去10年間のわいせつ行為等に関する懲戒処分を調査したところ、14件もの処分が列記されていました。概要は、淫らな行為が4件、盗撮が6件、相手の体を触る、自分の局部を触らせるが4件とあります。わいせつ行為等以外にも、先日も、印南町の小学校教諭が女性宅に侵入し、下着を盗んだとして逮捕されました。教員の資質がここまで低下してしまったのは、これは一体どういうことなのか。どんなふうに捉えたらいいのでしょう。

 わいせつ行為は、決して許されるものではありません。まして、子供たちを指導する立場にある教諭が生徒にわいせつ行為を働くということになると、生徒は誰を信用したらいいのでしょう。被害に遭った生徒の心情を思うと、やりきれない気持ちになってきます。

 そこで、被害児童生徒の心のフォローはどうなっているのか、その周辺の児童生徒へのフォローはされているのか、教育長にお伺いします。

○副議長(岩田弘彦君) 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 教員による児童生徒へのわいせつ行為は、生涯にわたって回復し難い心身の深い傷を与えることにもなる極めて悪質な行為です。

 被害児童生徒の心のケアを最優先に、人間関係が形成されている学級担任や教育相談担当等が児童生徒の気持ちに寄り添う姿勢で接することや、専門的な対応ができるスクールカウンセラー等を集中的かつ継続的に派遣して、支援に努めてまいります。

 さらに、被害児童生徒が心の傷を癒やし、落ち着いた日常生活を取り戻していく上で、家庭や保護者の理解や支援が大きな役割を果たすため、児童生徒への対応とともに、希望する保護者等へのカウンセリングも怠りのないように実施していきます。

 また、被害児童生徒に対する心ない言動やSNS等への無責任な投稿等は、さらなる苦しみや被害を招くことになるので、このことについては、周りの児童生徒に適切な機会と方法で指導を行ってまいります。

 さらに、教員によるわいせつ行為は、他の児童生徒に教員や学校に対する不信や不安を増大させ、学習や生活面での問題につながる場合もあるので、児童生徒のささいな変化も見落とすことなく、学校を挙げて信頼回復に取り組むよう指導してまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 藤本眞利子さん。

  〔藤本眞利子君、登壇〕

○藤本眞利子君 加害者である教諭には、懲戒免職という最も重い処分が出されています。その上、加害者は、3年間教員免許も失効するというふうなことを聞きました。しかし、3年後、免許を復活させることは可能ということですので、その後、どこかの学校等で勤務することもあるかもしれません。加害者も、その人の人生、その後の人生を歩んでいかなければなりませんので、私は何もかも否定するつもりはありませんが、子供に関わるとなると、それで大丈夫なんかなあと言いたくなります。

 わいせつ行為に係る犯罪は、再犯することが多いと聞きます。今後、教育委員会としてどのような取組を行っていくのか、教育長にお伺いします。

○副議長(岩田弘彦君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 再犯に対する取組でございますが、非常勤講師や臨時的任用を含め、教員採用に当たっては、文部科学省から提供された官報検索ツール等を活用し、経歴や処分歴等の十分な確認を行っております。

 また、将来にわたっての可能性を判断することは容易ではありませんが、教員採用試験の適性検査や面接等を活用して、特に問題となる傾向を有していないか等についても、慎重に見極めるようにします。

 さらに、過去にわいせつ行為で懲戒免職処分を受けた者を再び教壇に立たせることのないよう、過去にわいせつ行為により教員免許を失効した者に対して、原則、免許を再授与しない仕組みを整備してまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 藤本眞利子さん。

  〔藤本眞利子君、登壇〕

○藤本眞利子君 最後に、近年のわいせつ行為に係る処分事案について、県教育委員会としてはどんなふうに受け止めているのかと、そういうことを全般的にお伺いしたいというふうに思います。よろしくお願いします。

○副議長(岩田弘彦君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 児童生徒へのわいせつ行為は、教師という立場と信頼を悪用し、児童生徒の尊厳と権利を著しく侵害するものであり、断じて許されないことであります。

 児童生徒へのわいせつ行為に至った背景には、指導の際の子供との不適切な距離感や当該教員の心理的な不安定さによる場合等があり、徐々にエスカレートしていく場合もあります。教員が自らの言動、意識や精神状態について自己チェックする研修や、管理職が日々の観察や面接等を通じて教員一人一人の変化に気づき、適切な声かけや指導を充実するように取り組んでまいります。

 また、令和4年4月、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律が施行されたことを踏まえ、懲戒処分の指針等について必要な改定を行い、再発防止の徹底を図ります。

 最後に、和歌山県の教育現場で二度とこのような事態が生ずることのないよう、改めて全ての教職員に対し、強い姿勢で指導を行ってまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 藤本眞利子さん。

  〔藤本眞利子君、登壇〕

○藤本眞利子君 私は、この問題については、いろんな観点から考えられるかと思うんです。それで、先生方の多忙な様子もそうだし、職場はどうなっているんだろうかとか、強く上から指導するというんじゃなくて、日々のそういった教員の営みというか、教育に関する営みということをやはり丁寧に見ていく必要があるんじゃないかなあというふうな感想を持っています。

 処分された教員には、やっぱりきちんとした厳しい処分が必要だというふうに思いますが、日々奮闘されている教員についても、やはり丁寧に見ていただけるような、そういった手だてを、取組をお願いして、質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

○副議長(岩田弘彦君) 以上で、藤本眞利子さんの質問が終了いたしました。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 37番高田由一君。

  〔高田由一君、登壇〕(拍手)

○高田由一君 議長のお許しをいただきましたので、通告に基づき一般質問をさせていただきたいと思います。

 最初に、安倍元総理の逝去に伴う国葬に係る県の対応について伺いたいと思います。

 岸田首相は、安倍元首相の国葬を閣議決定し、9月27日に実施するとしています。私ども日本共産党は、これまでも談話を発表し、国葬が国家として安倍氏の政治を賛美、礼賛することになるとともに、憲法に保障された内心の自由を侵害して弔意の強制につながることが強く懸念されるとして、その中止を強く求めてまいりました。

 なぜ安倍元首相を特別扱いにして国葬を行うのか。先日の国会の閉会中審査を見ましても、私が納得できる説明はございませんでした。これは、私の主観だけではなく、その後のある世論調査を見ましても、賛成が38%、反対が56%となり、前回、8月調査の賛成が41%、反対が50%と比べて賛成が減り、反対が増えました。閣議決定のみを根拠に実施する国葬は、結局、時の内閣や政権党の政治的思惑によって、特定の個人を特別扱いすることにならないでしょうか。国葬の強行は、憲法14条が規定する法の下の平等に反すると私は考えます。

 また、岸田首相は、8月10日の会見で、「国葬は故人に対する敬意と弔意を国全体として表す儀式だ」と述べられました。我が国は国民主権の国であり、一人一人の国民に基本的人権が保障されています。国全体でというこの考え方は、憲法19条が保障する思想及び良心の自由に反すると私は考えます。

 岸田首相は、葬儀委員長として、国葬当日には、哀悼の意を表するため、各府省においては弔旗を掲揚するとともに、葬儀中の一定時刻に黙禱することとする決定を行っております。これは、各府省とそこで働く労働者に弔意を強制するものになりませんか。こうした動きが国の関係機関や地方自治体などに広がることが強く危惧されます。

 そこで、知事に伺いたいと思います。

 私ども日本共産党県議団は、県民への弔意の強制につながるような県としての態度を取らないことを先日、申入れをさせていただきました。この国葬について、県としてどのような態度で臨まれるのでしょうか。答弁をお願いしたいと思います。

○副議長(岩田弘彦君) ただいまの高田由一君の質問に対する答弁を求めます。

 知事仁坂吉伸君。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 国葬は、国の儀式として実施するものでありまして、その儀式への案内がございましたので、県知事として当然出席し、心から哀悼の意を表する所存であります。

 また、和歌山県といたしましては、本庁舎に半旗を掲げ、弔意を表します。

○副議長(岩田弘彦君) 高田由一君。

  〔高田由一君、登壇〕

○高田由一君 答弁をいただきました。

 私は、会場になる日本武道館に、国会議員、地方自治体の首長など、6000人もの参列者を集め、国葬として大々的に儀式を行うこと自体が日本社会全体に同調を迫るものであり、弔意を事実上強制する危険を持つと考えます。その国葬に合わせた形で、県の行政機関が半旗を掲げるなどの行動をすることは、私は避けるべきだと考えます。

 報道によりますと、各都道府県の対応もそれぞれのようです。くれぐれも県民への弔意の強制にならないように対応することを改めて求めたいと考えます。

 さらに、今回の国葬は、儀式に直接関わる費用だけで2.5億円、それ以外にも、警備費や外国来賓の接遇費の支出で14億円余と発表されました。費用の総額は、国葬を実施した後でないと明らかにならないとのことです。国会での議決もなしに、憲法と相入れない国葬に多額の税金をつぎ込むことは、認めるわけにはいかないということを表明しておきたいと思います。

 次に移ります。

 次に、現在の名称が世界平和統一家庭連合となっている旧統一教会と県行政の関わりについて伺います。

 この話題は、連日、報道等でも取り上げられている折ですので、詳しくは述べません。旧統一教会は、単なる宗教団体ではなく、霊感商法や高額献金の強要を繰り返してきた反社会的カルト集団であり、全国霊感商法対策弁護士連絡会のまとめによれば、昨年末までの35年間で受け付けた旧統一教会などに関する相談は3万4537件、被害総額も約1237億円に上るとされています。したがって、旧統一教会やその関連団体の活動に地方自治体が参加、関与することは、同会の活動へのお墨つきを与え、被害を拡大することにつながりかねません。和歌山県内でも、関連団体が主催する行事、ピースロードが実施されていたという情報もあります。

 そこで、知事室長に伺います。

 県行政と旧統一教会あるいは関連団体との間で、後援名義の使用承認などの関係は、これまでなかったのでしょうか。答弁をお願いしたいと思います。

○副議長(岩田弘彦君) 知事室長赤坂武彦君。

  〔赤坂武彦君、登壇〕

○知事室長(赤坂武彦君) 議員御指摘の旧統一教会の関連団体が主催する行事、ピースロードが和歌山県において実施されたことがあると聞いておりますが、県といたしましては、全く関与しておりません。

 県の後援名義の付与に当たっては、依頼があった事業が公共の福祉に寄与するものであるとともに、広く県民に公開されていること、特定の政治団体・宗教法人等の活動に関するものでないこと、営利を目的としたものでないことを審査した上で、承認しているところです。

 また、当該承認に当たっては、知事室秘書課の合い議を基本的には要することとしており、秘書課において過去10年間の後援名義使用の調査を実施いたしましたが、旧統一教会やその関連団体に対して承認した実績はございません。

○副議長(岩田弘彦君) 高田由一君。

  〔高田由一君、登壇〕

○高田由一君 答弁をいただきました。

 ほかの自治体の例ではございますが、この後援名義の問題だけではなくて、行事への協賛や、あるいは出席、あるいは祝電、さらには寄附金の受領など、様々な関わりが明らかになっているところもございます。今後、和歌山県におかれましても、さらに注意をして、こうした団体との関係をチェックしていただきたいということを強く要望をしておきたいと思います。

 次に、新型コロナウイルス感染症について伺います。

 まず、今後の県の対策について、これは要望をいたします。

 新型コロナウイルス感染症の第7波で、日本の新規感染者数は世界最多を続け、死者数は過去最悪となっています。医療機関や保健所は、際限ない逼迫状態が続き、現場の御苦労は想像に余るものがあります。

 ある保健師のお母さんからの声を紹介します。「コロナ担当になった娘は、連日16時間勤務が休みなしで続いた日も数か月ありました。過労死ラインはとっくに超えています。第7波では、担当する老人施設から、保健所はこの2年間何をやってきたんだとどなられることもしばしば。保健師とて人間です。ロボットではありません。保健所が何をやってきたのだというのではなく、国が何をやってきたのだということだと思います」と訴えられ、「第8波が来たら、保健師はみんな潰れてしまいます」と言っておられます。本当に何とかしなくてはなりません。

 重症者数は多くないという現在のオミクロン株ですが、ワクチンが普及し、オミクロン株が主流になる中で、肺炎を起こす例は極端に減ってきています。そのため、どんなに全身状態が悪くても酸素飽和度が下がらなければ、亡くなる直前まで軽症という扱いもあります。このように、これまでの新型コロナウイルス感染症で取ってきた対策だけでは、死者数が大幅に増えるという無残な結果となります。

 政府は、感染力が強いオミクロン株の特性を踏まえた全般的な対応方針が求められていたにもかかわらず、この間、無為無策で、基本的な感染対策をというだけで、国民は、お盆を前にして自粛していいのか、経済を回すために動いたほうがいいのか、分からないまま8月を過ごし、結果、感染の大爆発に至りました。

 そのような中、岸田首相は、先日、新たな対応方針の全体像をようやく発表されました。しかし、いきなり感染者の療養期間を10日間から7日間にする、実施は今日からだと発表したように、現場や感染症対策を担う県行政をわざと混乱させているのではないかと思うほどの唐突さで、事を進めようとしています。この療養期間について、厚生労働省のアドバイザリーボードの西浦教授は、発病後7から10日では、十分な2次感染を起こし得るウイルス量があると指摘しています。大変心配です。

 県としての新たな方針は、今、検討されているさなかというふうに伺いましたが、県民の命を守る立場で、この国の方針に縛られることなく、しっかり手を打っていただくことをこの場をお借りして要望しておきたいと思います。

 それでは、質問のほうに移ります。

 まず、公立学校の臨時休業の状況と抗原検査キットの活用について伺います。

 学校では、2学期が始まり、夏休みが明けての子供たちへの感染状況が気になります。県当局の報告では、乳児、幼児を除く20歳未満の方の感染状況は、7月初旬の夏休み前にその割合がぐんと増え、その後の県民全体への感染爆発へつながりました。今、また9月に入り、徐々に子供の感染割合が増えてきています。非常に心配な状況です。

 そこで、教育長に伺いたいと思います。

 この第7波が始まったとされる6月21日から現在にかけまして、公立学校での臨時休業の状況はどのようになっているでしょうか。あわせて、県立学校での抗原検査キットの活用は、第6波のまん延防止等重点措置のときには積極的に活用されたと伺っておりますが、現在の活用状況についてはどうなっているでしょうか。教育長の答弁をお願いしたいと思います。

○副議長(岩田弘彦君) 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 公立学校の臨時休業につきましては、県福祉保健部との協議により、当該集団における感染者及び有症状者の数や、感染経路等の状況を踏まえ、臨時休業の必要性や範囲を決定しているところです。

 第7波の公立学校における臨時休業の状況は、学級及び学年を対象としたものが301件、学校全体を対象としたものが12件となっております。

 抗原検査キットについて、県立学校においては、従前国の感染症対策補助金等を活用し、各学校に配備しており、感染症の発生状況等に応じて、教職員や児童生徒を対象に適宜活用しています。また、特別支援学校の教職員につきましては、定期的に抗原検査キットを使用し、まん延防止等重点措置を実施すべき区域に指定されていた3月には週1回、8月以降には週2から3回に拡充して検査を実施しています。抗原検査キットを使用することによって、僅かではありますが、校内へのウイルスの持込みを未然に防ぐことができた事例もあります。

 今後も、市町村教育委員会に対して、抗原定性検査等も活用しながら、適切に感染症対策を実施するよう周知を図り、感染拡大防止に努めてまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 高田由一君。

  〔高田由一君、登壇〕

○高田由一君 答弁をいただきました。

 今、これは県立特別支援学校の例として、8月以降には週に2~3回、この検査キットを使って検査を実施してきたという中で、僅かとはおっしゃいましたが、校内へのウイルスの持込みが防げたということでございます。ただ、この子供たちの数は僅かだったかもしれませんが、その後の家族内への持込みや地域社会での広がりということを考えれば、この効果は大きな成果があったと私は考えます。

 ぜひ、こうした県教育委員会の取組を市町村の教育委員会へも、答弁もいただきましたが、周知をしていただいて、この検査によって、子供たちへの蔓延を防いでいくということで取り組んでいただきたいというふうに思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に移ります。

 次は、一般検査事業について伺います。

 この一般検査事業というのは、各地で、無料で無症状の方に検査をしてもらうこの事業ですが、「感染拡大傾向時の一般検査事業」といいますが、これについては、これまで私どもも県に要望を上げ、実施場所を増やしてきていただいたりしました。

 しかし、現時点でも、県内あまねく全域にわたって、気軽に県民が受けられる体制にはなっていないというのが正直な状況です。特に紀南地方では、箇所数も少ない。有田市以南の地域では、県全体の検査所の数が107か所なんですが、有田市以南で28か所しか配置されていません。また、夜間や土日に対応できるところがほとんどなく、昼間働いている人などは非常に利用しづらい状況がございます。

 そこで、伺います。

 この一般検査事業をさらに充実させることはできないでしょうか。加えて、すぐに体制整備ができるまでの間、発熱等や軽微な症状等が出た場合に、今は利用できるんですが、自己検査・登録制度というものがございます。これと同様に、感染不安がある場合にも、つまり無症状の場合でも、こういう抗原検査キットを自宅に送付して自己検査をし、結果、陽性の場合は自分で登録手続をするような対応ができないものかと私は思いました。こうした対応が、特に検査所の少ない紀南地方では必要だと考えます。

 以上の点について、一般検査事業におけるPCR検査及び抗原定性検査を合わせた予算上の想定回数及びこれまでの検査実績と併せて、危機管理監の御答弁をお願いしたいと思います。

○副議長(岩田弘彦君) 危機管理監福田充宏君。

  〔福田充宏君、登壇〕

○危機管理監(福田充宏君) 感染不安を感じる県内在住の無症状者が対象となる一般検査事業については、令和3年12月28日から開始しており、令和3年度予算からの繰越明許費分と令和4年度当初予算分を合わせて76万回分を確保しており、令和4年9月13日時点で、実施回数は約10万件となっております。

 検査実施場所の確保に際しましては、議員御指摘のとおり、地域偏在や夜間・休日の検査体制の充実が課題と認識しており、これまで、薬剤師会を通じて、県内薬局への新規登録等の働きかけや大手の衛生検査所を誘致することなどで、9月13日現在、県内全域で107か所が開設されております。

 しかしながら、特に紀南地域においては、小規模な薬局が多く、個人で経営されている店舗などにおいては、通常の調剤業務を行いながらの検査対応が難しいこと、大手衛生検査所は、検体の搬送など迅速な対応が難しいことなどを理由に、これ以上の新設及び体制充実が厳しい状況にあります。

 抗原検査キットの自宅への配送を受けての自己検査については、国の制度上、所定の検査場所において検体採取を行い、その際、事前に研修を受けた者の立会いが必要であり、議員御質問の希望者への配付は困難です。

 このような状況の中、今月初旬には事業者の追加募集を行うとともに、既に開設している事業者に対して営業時間の延長等の働きかけを行っており、今後も、無料検査における県民の利便性の向上に努めてまいりたいと考えております。

○副議長(岩田弘彦君) 高田由一君。

  〔高田由一君、登壇〕

○高田由一君 答弁をいただきました。

 私としても、本当にこの感染大爆発が収束に向かえばそれでいいわけですが、変異株の発生というのも可能性としてはございます。私は、やはりさらなるこの公衆衛生、特に保健所の体制強化と併せて、検査事業も強化をしていただきたいというふうに思っております。

 この抗原検査キットの自宅への配送ということで質問させていただいて、なかなか困難があるよという御答弁でございました。でも、この抗原検査キットは、今、インターネットで申し込んでも買えるんですよね。私、どんなふうになるかと先日、ネットで買ってみました。そしたら、薬剤師のお名前が出てきて、いろんな質問にネット上で答えると、オーケーですと、送りますということで送ってきてくれました。だから、そうやって買った一般の抗原検査キットで、私が仮に陽性になって、このオンラインで登録をするということでもいけるわけですから、制度的にはね。だから、そういう点も考えていただいて、ぜひこの検査がなかなか受けにくいという状況を改善していただきたいということを強く要望しておきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 次の質問にまいります。

 この項目の最後に、飲食・宿泊・サービス業等支援金について伺います。

 提案されている今回の補正予算では、飲食・宿泊・サービス業等支援金が予算化されていません。私は、今回、この支援金の対象業種の拡大と併せて、コロナ禍による不況と原油価格・物価高騰への対応も含めた、地域経済の回復に向けた県独自の対策を要望しようと考えておりましたが、残念な思いです。まだまだ業種によっては厳しい状況が続く中、なぜこの支援金を終わりにしたのでしょうか。

 また、電気代や光熱水費などの値上げで、行政機関や公的価格が設定されている福祉部門などについては、その対策費用が今回の補正予算にも組まれています。これは、これで大変ありがたいことですが、こうした対応は多くの業種に必要なことではないでしょうか。

 こうしたことについて、県は、今後の対応をどのように考えておられるのでしょうか。商工観光労働部長の答弁をお願いしたいと思います。

○副議長(岩田弘彦君) 商工観光労働部長寺本雅哉君。

  〔寺本雅哉君、登壇〕

○商工観光労働部長(寺本雅哉君) 飲食・宿泊・サービス業等支援金は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による営業時間の短縮要請や外出自粛要請に伴い、特に大きな影響を受けた飲食・宿泊業及びそれに関連する業種をはじめ、売上げ減少が大きい業種を対象に支援金を支給したものでございます。

 現在のオミクロン株による第7波におきましては、県内でも過去最多の感染者数を記録したものの、行動制限は要請しておらず、社会経済活動は維持されております。

 このような状況の中、県が実施した直近の影響調査では、コロナ前と比較して売上げが減少していると回答した事業者の割合は大幅に改善しており、また、様々な業種において、営業努力により売上げを回復させている事業者も出てきています。

 そこで、今後の事業者向け支援については、売上げが減少した事業者への一律の支援策から転換し、前向きな投資を促す国の事業再構築補助金の伴走支援やわかやまリフレッシュプランSをはじめとした需要喚起策、資金繰り支援等に重点を置いて実施していきます。

 現在の原油価格・物価高騰への対応につきましては、地方自治体では、特に影響が大きい業種に対するピンポイントでの支援など、できることは限られていますが、引き続き社会経済活動の動向を十分注視しながら対応してまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 高田由一君。

  〔高田由一君、登壇〕

○高田由一君 答弁をいただきました。

 この9月に入ってから、また内閣府のほうから、新たな地方創生臨時交付金の創設をしたよという通知も来ているようです。予算規模で全体が6000億円というふうに書かれておりますけれども、ぜひこうした臨時交付金も使って、こうした物価高や原油高など、こうした全業種にわたる影響に対する支援ということも検討していただきたいというふうに思います。よろしくお願いいたします。

 次に、食料の県内自給率向上に向けて伺います。

 現在、日本は、食料の6割以上を海外に依存しており、食料自給率が37%と過去最低に落ち込みました。その危うさが、地球規模の気候変動やコロナ感染拡大の中で浮き彫りになりました。さらに、ロシアのウクライナ侵略が世界の食料情勢に深刻な影響を及ぼしています。日本の食料の安定供給を揺るがす危機が現実化しかねない状況です。食料自給率の向上は、待ったなしの課題だと考えます。

 ところが、現実はどうなっているでしょうか。これまで、政府は、食料・農業・農村基本法に定められた計画で、5年ごとに食料自給率の上昇を目標に掲げてこられました。現状で38%前後の食料自給率を、それらの計画では10年後に45%にするよということを、これは繰り返し何度も言われてきました。しかし、1999年から始まったこの計画、この20年間の取組で上がるどころか、逆に下がっている状況です。

 この現状を打ち破るためにも、私が提案したいのが、国全体で食料自給率が仮に目標の45%に達したときに、農業農村にどんな変化が起こるのかシミュレーション、試算を地域ごとにしてみることです。

 例えば、和歌山県のカロリーベースの食料自給率は、現在27%です。お配りしている私の質問に関する資料の1枚目に、それが書いてございます。これは、決して高くないんですが、やはり和歌山県は果樹生産を主力にしていますから、この数字自体が悪い数字だと言うつもりは私にはありません。逆に言えば、果樹以外の穀物生産や畜産などに余力があるとも言えます。

 国全体で45%に、現状より7%、カロリーベースですが、この食料自給率をアップさせるなら、和歌山県でも、少なくとも5%ぐらいは今よりも自給率がアップするのではないかと仮定します。そのとき、県内でも、麦や大豆、芋類、畜産なども含めて多種多様の生産が進むはずです。そうしたときの経済波及効果をシミュレーションして、この自給率アップがどれだけ県経済へ波及効果があるのかを見てみる。農業生産の経済波及効果は、中山間地にも幅広く及びますから、農村の展望というものも見えてくるのではないかと考えています。

 そして、大事なのが担い手です。認定農業者などの規模もしっかりした農業者のみでその達成をするんじゃなくて、地域の家族農業がその食料増産の担い手になるべきです。国連が、地球温暖化の防止など17項目の持続可能な開発目標、いわゆるSDGsを掲げ、国連家族農業の10年をスタートさせているように、その達成には家族農業、小規模農業の役割が欠かせないものに位置づけられています。

 既に、福島県などでは、少し前のレポートなんですが、(レポートを示す)ここにございますが、県内で農林水産業部門の自給率を上げた場合、どれぐらいの経済波及効果があるのかレポートを出しています。カロリーベースの食料自給率を上げるのは、和歌山県のような果樹県では難しい面もあります。それは承知をしておりますが、国が本気で農政のかじ取りを変えるなら、麦や大豆、芋類、畜産の自給率、数%の上昇でも、かなりの経済効果が永年にわたって続いていくことが期待できます。こうした試算があってこそ、国民世論としても、食料自給率を高めたら地域も展望が出てくるなというように、賛同が広がるのではないかなというふうに私は考えました。

 このような試算を、県としても研究していくことはできないものでしょうか。これについて、知事の御答弁をお願いしたいと思います。

○副議長(岩田弘彦君) 知事。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 食料の安全保障の観点から考えると、食料をベースにした国の安全保障、これを考えますと、国全体で食料自給率の向上を図ることは意味がございます。

 しかしながら、都道府県単位で自給率の向上や、その経済波及効果を論ずることは疑問であります。なぜならば、県間で安全保障の観点から物資の移動制限が起きるなどということは考えられないからであります。自給率の達成を含んで、およそ人為的に経済活動を制限しようとすると、人々の経済的利益は減ります。したがって、意味のないことをやってはいけません。

 それぞれの地域では、気候、風土、地形などの特徴を踏まえ、長い年月を経て、その土地に適した作物の生産を行い、また、生産性向上のための技術を培ってきたと思います。

 言うまでもなく、本県では、傾斜地を生かした高品質な果実の生産や温暖な気候を生かした施設栽培など、収益性の高い農業を行ってまいりました。また、平野部を中心に稲作が行われてまいりましたが、米どころと呼ばれる県に比べると、平地が少なくて、スケールメリットを生かせる大規模経営が難しいため、裏作で収益性の高い野菜を栽培するなど、複数品目の栽培により農業所得の向上を何とか図ってまいったわけでございます。

 こうして最も比較優位のあるものを作り、それを磨き上げ、利益が上がるようにするのが農家の利益でございますし、地域の利益でございます。

 カロリーベースでの食料自給率向上だけを目指すのであれば、麦、大豆などの穀物や芋類、畜産用の飼料米の導入に注力することになりますけれども、そのような取組は、本県では、新たな設備投資や人件費に見合う収入が恐らく得られず、農業所得の向上につながらないばかりか、むしろマイナスになってしまうと考えます。

 したがって、もうかる農業に重点を置き、農業産出額の向上に取り組むことが重要であり、こういった取組が県内各地で展開されることにより、経済的な効果が得られ、県民の幸せにつながると思います。

○副議長(岩田弘彦君) 高田由一君。

  〔高田由一君、登壇〕

○高田由一君 答弁をいただきました。

 私は、何も県境に壁を造って安全保障をというつもりはなくて、地域全体を考えて食料自給率というレポートも出ていたので、その一つを紹介させていただきました。

 特に、関西広域連合なんかでも、この域内での地産地消ということも、これは知事も熱心に取り組んでいただいているというふうに聞いておりますから、私は、やはり和歌山県全体でも、そういう多様な農業生産というのが維持されていくべきだと思います。ただ、知事もおっしゃいましたが、なかなか今、畑作穀物、芋類でもうかるということにはなっていないというのは、承知をしております。

 しかし、私が先ほど述べたように、国全体で食料自給率を上げようと思ったら、やはり今の政策の枠にははまらない新しい何かの政策を打っていかないと、自給率全体が上がっていかないというのは、これまでの経験から、まあ20年もやってきたんで、その間、上がってこなかったんですから、経過を見れば分かると思うんです。その新たな仕組みをこの国民合意の下でつくるためにも、地産地消がさらに進み、食料自給率も上がった状態の農村を、私のイメージで言えば、夢を描くようにシミュレーションしてみることは、そんなに意味のない、的外れな提案だとは、私は考えておりません。

 和歌山県内でも、多種多様な生産が盛んになってこそ、かつてのような農村の豊かな環境、そして、それと調和の取れた農業、農村山村がよみがえってくるのではないかと思います。また、こうした方向でこそ、この中山間地の多い和歌山県のようなところで、少子高齢化も食い止められる可能性があるのではないかと私は考えました。財界系のレポートなんかでも、地域の食料自給率の可能性ということで、そんなことも出ております。ぜひ御検討をお願いしておきたいと思います。

 次に、これは要望です。学校給食への地場産物使用についての要望です。

 お配りしている資料の2枚目を御覧になっていただきたいと思います。

 こちらにございますように、これは学校給食における地場産物の使用割合というのを、いつも文部科学省が出している、その資料でございます。果樹県である和歌山県にピンクを引いておりますが、地元産の食材を使う機会は今のところこの28%ということで、大変低い状況なんですが、でも、同じような果樹県でもある愛媛県を見ますと、高い数字となっています。

 私の地元のすさみ町では、既に学校給食が無償化されています。その中で、できるだけ地元の農産物を食材に使おうということで、取組を以前から進められております。和歌山県全体でも、このことについてはまだまだ工夫の余地があると私は考えております。さらにこの地元産の食材を使う給食の取組を進められるよう、これは要望をしておきたいと思います。

 最後になりました。

 最後に、今議会に提案されております議案第95号、個人情報保護法施行条例について伺います。

 この条例制定の根拠は、昨年5月に成立したデジタル関連法にあります。デジタル関連法は、首相の下に強い権限と予算を持ったデジタル庁を新設、国や地方自治体のシステムや規定を標準化、共通化して、個人情報を含むデータの利用を強力に進めるとしています。

 このことで、地方自治体が持つ大切な個人情報を、匿名の加工をするということを条件に営利企業が利用できるようになります。既に、県では、早い段階から非識別加工情報として情報提供ができる体制をつくっていました。県ホームページにも、個人情報ファイル簿として作成、公表されたものがリストアップをされております。それが、おつけしている資料の3枚目、このピンク色の網がかかった資料でございます。

 これは、一部の抜粋だけなんですが、例えば健康推進課で見ると、被爆者台帳、あるいは小児慢性特定疾病受給者ファイルなどなど、あるいは振興局へ行きますと、生活保護被保護者世帯名簿など、かなりセンシティブな個人情報が含まれたものばかりです。

 県当局の説明では、これまでのところ非識別加工情報としての利用はされていないということですが、個人情報保護法の改正で、来年4月からは全国の自治体で個人情報を含むデータの利用が始まるため、今後、これらの個人情報を利用したいという企業が現れれば、県が情報を匿名加工した上で利用者に渡すことになります。

 今回の条例制定の最大の目的は、匿名の加工情報として、それを営利企業に売り渡すという制度づくりにあると考えます。行政機関等匿名加工情報制度は、自治体にとっても負担になると思います。個人情報を匿名加工するために、その作業を外部に委託することになります。膨大で詳細な加工前の個人情報が委託先の外部の民間会社に渡ることになるため、本当に個人情報が守れるのか、私はこれまでの個人情報流出の事例を見れば、そんな保証はできないと考えています。

 そこで、伺います。

 今回の条例制定の行政機関等匿名加工情報制度において、個人情報は本当に守れるのでしょうか。この匿名加工をする段階で漏れる可能性もあるのではないでしょうか。総務部長の答弁をお願いしたいと思います。

○副議長(岩田弘彦君) 総務部長吉村 顕君。

  〔吉村 顕君、登壇〕

○総務部長(吉村 顕君) 和歌山県個人情報の保護に関する法律施行条例案は、個人情報の保護に関する法律の施行に必要な事項を定めるものであり、行政機関等匿名加工情報に関しては、その利用に係る手数料のみを定めるものです。

 同法の規定により、県が行政機関等匿名加工情報を取り扱う場合には、情報の漏えい防止に必要な安全管理措置を講じなければならず、加えて、正当な理由なく個人の秘密に属する事項を外部に提供した場合には、罰則も適用されます。また、同法の規定により、県が行政機関等匿名加工情報の取扱いを外部に委託する場合には、委託先も県と同じ安全管理措置を講じなければならず、罰則も適用されます。なお、再委託、再々委託等を受けた者も安全管理措置を講ずる必要があることから、委託先には、2以上の段階にわたる委託を含むと規定されているところです。

 県としましては、個人情報の保護について十分な措置が講じられるよう、法の規定に基づき、適切に運用してまいります。

○副議長(岩田弘彦君) 高田由一君。

  〔高田由一君、登壇〕

○高田由一君 答弁をいただきました。

 部長の答弁でも、もし外部に提供した場合は罰則もあるよということと、県から第1次の委託先だけではなしに、2次、3次と委託があった場合も、そういう罰則は適用されるんだということで御答弁をいただきましたが、そういう大事なものが再委託、再々委託みたいな、そういう制度の中で、何か本当に大丈夫なんかなということをかえって思った次第です。

 それで、法律全体の話として最後に申し上げておきたいと思います。

 昨年3月、スマホを持つほとんどの人が利用していると言われるほどのユーザーを持つコミュニケーションアプリ、LINEで、ユーザーの個人情報が中国から閲覧可能になっていたことが大問題になりました。当時の武田総務大臣は、総務省のLINE利用を停止すると発表するまでに至りました。

 この問題の本質は、2017年に施行された中国の国家情報法によって、中国当局が国内の企業に対し、個人情報の提供を強要できるようにした下で、中国国内の企業にLINEの個人情報の閲覧をフリーにさせていたことになります。この国家情報法では、いかなる組織及び個人も、法に基づき国家諜報活動に協力し、国の諜報活動に関する秘密を守る義務を課していること、求めに応じて情報を提供した組織、個人を手厚く保護し、表彰や報奨まで行い、不利益が生じた場合には補償する制度まで用意して情報提供を進めようとしていることなど、大きな問題があります。

 このLINE問題について、日本政府の個人情報保護委員会は、中国政府から情報提供を求められたことはないとLINE側が説明しているというふうに言いましたが、のんきな話です。LINEは、中国の国家情報法の秘密を守る義務があるため、個人情報を中国当局に提供していても言えるわけがありません。

 問題は、中国だけではありません。政府は、2020年10月から、第二期政府共通プラットフォームと呼ばれる日本の中央省庁向けのクラウドの運用をアマゾンウェブサービス・AWSを利用して開始しました。アマゾンは、御承知のとおりアメリカの企業であり、そのアマゾンの管理するサーバーに政府の保有する情報が保存されることになります。

 ここで問題なのは、中国同様、アメリカの諜報機関がアクセス権を持っていることです。アメリカでも2018年、通称クラウド法という法律で、データが米国内に存在するか否かにかかわらず、自国の企業に対してデータの提供を求めた場合、企業はこの命令に従わなければならないとなっています。この法制度と軌を一にして、アマゾンの取締役に、あのエシュロンという国際的な傍受システムで有名な諜報機関、米国国家安全保障局・NSAの元長官キース・アレクサンダー氏が就任していることを見れば、背筋が寒くなる思いです。

 今、政府が進めている地方自治体の情報システムを集約して標準化するガバメントクラウドについても、米国のグーグル社のサービスを使うとしていることも同様の心配があります。

 実は、こうした国家ぐるみの強制的な情報提供の仕組みに対して、EU各国の政府機関は、米国企業の提供するクラウドからの撤退を進めています。個人情報の海外移転は、原則禁止されています。また、先ほど紹介した中国は、さらにしたたかです。自分が国家情報法で企業などが持つ個人情報を手に入れるようにしながら、国内には、昨年8月、個人情報保護法をつくり、国内企業には個人情報の中国国内での保存を義務づけ、データの海外持ち出しを事実上制限しています。まさに世界では、個人情報をめぐり争奪戦が行われているような状況です。そんな中、日本政府はデジタル関連法で個人情報の利活用を進めようとしているのですから、心配し過ぎることはないと考えます。

 したがって、現時点で議案第95号については反対せざるを得ないということを申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

○副議長(岩田弘彦君) 以上で、高田由一君の質問が終了いたしました。

 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。

 次会は9月20日定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。

 本日は、これをもって散会いたします。

  午後2時43分散会

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