令和4年6月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(全文)


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令和4年6月 和歌山県議会定例会会議録 第6号

議事日程 第6号

 令和4年6月15日(水曜日)

 午前10時開議

 第1 議案第76号から議案第89号まで及び報第5号(質疑)

 第2 一般質問

 第3 議案等の付託

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会議に付した事件

 第1 議案第76号から議案第89号まで及び報第5号(質疑)

 第2 一般質問

 第3 議案等の付託

 第4 休会決定の件

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出席議員(39人)

 1番 鈴木德久

 2番 山家敏宏

 3番 中本浩精

 4番 堀 龍雄

 5番 藤山将材

 7番 井出益弘

 9番 北山慎一

 10番 玄素彰人

 11番 中西峰雄

 12番 秋月史成

 13番 森 礼子

 14番 濱口太史

 15番 尾崎要二

 16番 冨安民浩

 17番 川畑哲哉

 18番 玉木久登

 19番 鈴木太雄

 20番 岩田弘彦

 21番 吉井和視

 22番 谷 洋一

 23番 佐藤武治

 24番 岩井弘次

 25番 中 拓哉

 26番 多田純一

 27番 新島 雄

 28番 山下直也

 29番 中西 徹

 30番 谷口和樹

 32番 浦口高典

 33番 山田正彦

 34番 坂本 登

 35番 林 隆一

 36番 楠本文郎

 37番 高田由一

 38番 杉山俊雄

 39番 片桐章浩

 40番 奥村規子

 41番 尾﨑太郎

 42番 長坂隆司

欠席議員(2人)

 8番 宇治田栄蔵

 31番 藤本眞利子

〔備考〕

 6番 欠員

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説明のため出席した者

 知事         仁坂吉伸

 副知事        下 宏

 理事         田嶋久嗣

 知事室長       赤坂武彦

 危機管理監      福田充宏

 総務部長       吉村 顕

 企画部長       長尾尚佳

 環境生活部長     生駒 享

 福祉保健部長     志場紀之

 商工観光労働部長   寺本雅哉

 農林水産部長     山本佳之

 県土整備部長     福本仁志

 会計管理者      中家秀起

 教育長        宮﨑 泉

 公安委員会委員長   竹田純久

 警察本部長      遠藤 剛

 人事委員会委員長   平田健正

 代表監査委員     森田康友

 選挙管理委員会委員長 小濱孝夫

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職務のため出席した事務局職員

 事務局長       出津野孝昭

 次長秘書広報室長事務取扱

            浜野幸男

 議事課長       長田和直

 議事課副課長     岩井紀生

 議事課課長補佐兼議事班長

            村嶋陽一

 議事課主任      伊賀顕正

 議事課主任      菅野清久

 議事課副主査     林 貞男

 総務課長       葛城泰洋

 政策調査課長     神川充夫

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  午前10時0分開議

○議長(尾崎要二君) これより本日の会議を開きます。

 日程第1、議案第76号から議案第89号まで及び地方自治法第179条第1項の規定による知事専決処分報告報第5号を一括して議題とし、議案等に対する質疑を行い、併せて日程第2、一般質問を行います。

 13番森 礼子さん。

  〔森 礼子君、登壇〕(拍手)

○森 礼子君 おはようございます。森礼子でございます。久しぶりの質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 議長のお許しをいただきましたので、それでは一般質問を行わせていただきます。

 初めに、おもてなしトイレ大作戦の徹底について、始めます。

 これまで仁坂知事は、数々の大作戦政策を提案し、取り組んでこられました。中でも和歌山県おもてなしトイレ大作戦は、公衆トイレは汚いという従来のイメージを一変し、県民はもとより、国体やインバウンドなどを通して県外からのお客様に評価され、本県のイメージアップ、各種の旅行ランキング向上に役立ちました。私が問題提起したJR和歌山駅のトイレも、本県の玄関口にふさわしいきれいなトイレになりました。

 そして、今や、きれいなトイレは女性活躍社会の象徴として、国の政策になりました。トイレの清潔性、快適性、安全性を向上させることは、日々の暮らしに加え、地方創生の観点からも重要であり、ジャパン・トイレ・チャレンジと銘打ち、成長戦略に盛り込み、快適なトイレを増やすための各般の取組を実施すべきであると言っています。

 しかしながら、本日はここで真逆の実例を御報告しなければなりません。

 和歌山のシンボル紀の川の河川敷には、多面のスポーツグラウンドがあります。これらのグラウンドでは、和歌山の将来を担う少年少女たちが、日々、サッカー、野球などの練習にいそしんでおり、和歌山市軟式野球連盟学童部はじめ、各クラブの主催試合や近畿大会などの定期大会が開催されています。

 しかし、私の元には保護者からトイレに関する苦情が寄せられており、他府県の関係者からは、トイレが汚いから大会には参加できないとの返事があるそうです。私も保護者と共に何度も和歌山市に足を運びましたが、予算等の理由で改善されていません。

 グラウンドを利用する各クラブでは、トイレを少しでも衛生的に使えるよう自主的に掃除を行っています。しかし、トイレ設置状況は、配付資料のとおり、老朽化、不衛生、悪臭、不安、不可能などの悪い条件が重なり、現状の簡易水洗では水の流れも弱く、また、流せないトイレもあるなど、不衛生極まりない状態であります。

 野球クラブでは、最近の傾向として女子選手が増加しており、女子選手、女性保護者はトイレを使用しないで我慢しているとのことです。何より女性においては月の日もあり、後に男子選手が使うと思うと絶対に使えない状況です。

 そもそも、人がたくさん集まる施設を設置しながらトイレを我慢させるという状況は、人権的にも問題があるのではないかと思います。女性社員のトイレに行く回数を数えることで、体調を壊し、精神的に病んでしまったブラック企業の事例がありましたが、使用のできないトイレ環境は、同様にひどいと思います。

 おもてなしトイレ大作戦を大成功させた知事として、このような状況、女性が悩むトイレ事情をどのように思われますか。知事にお伺いいたします。

 国交省では、平成29年より、女性が輝く社会づくりにつながるトイレ等の環境整備・利用のあり方に関する取りまとめを行っています。アンケート結果によると、公園などの公衆トイレの項目においては、掃除が行き届いていない、清潔感がない、トイレ内やトイレ周辺の環境により安心して利用ができないの三つがトイレに行けない理由のトップ3に挙げられています。

 国交省では、建設現場においても、女性技術者などに不評であったトイレについて、平成28年10月1日以降に入札手続を開始する土木工事から、快適トイレ(女性も活用しやすいトイレ)を原則化することとし、快適トイレの標準仕様を決定しています。今や女性目線で快適なトイレの整備は必須であると私は考えます。

 ちなみに、先日の熊野川総合水防演習では、安心して使えるトイレが設置されており、やる気があればできないことはないと勉強させていただきました。ちなみに、水防演習に設置されていたトイレの場合、購入設置で価格は350万円ぐらいだそうです。

 観光だけがおもてなしでないことと、おもてなしトイレを女性目線の快適トイレ大作戦へとバージョンアップをされてはいかがでしょうか。知事の御所見をお伺いいたします。

○議長(尾崎要二君) ただいまの森礼子さんの質問に対する答弁を求めます。

 知事仁坂吉伸君。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 清潔な公衆トイレは、地域の印象をよくすることで、おもてなしの気持ちを表すものだというふうに思います。

 公衆トイレの快適化、美化については、知事就任以来、一生懸命取り組んでおりまして、森議員の議会質問に──これはかつての議会質問ですが──触発されたこともありまして、平成25年度からは、和歌山おもてなしトイレ大作戦として公衆トイレを整備・改修し、快適性向上や美化促進を図るとともに、適切な維持管理を実施する取組を開始したところでございます。

 御存じのように、標準仕様といたしまして、温水洗浄便座とセンサーつきの男性用小便器、それにできるだけ福祉対応の設備を備えたものとし、市町村等への補助金、半額の補助金ですね、これの予算措置を行い、維持管理は市町村にやっていただくということにしたわけでございまして、これまでに約700か所の公衆トイレの改修・整備を実施してきたところでございます。

 おかげで「週刊文春」で、これは絶賛されました。私の知る限り、この20年間で「週刊文春」は、人の悪口は物すごく言いますが、人を、人というか、褒めたのは、これは私が見る限り初めて、唯一の例だというふうに思っております。

 トイレのきれいな地域というのは、地域の力の一つでございます。あるいは重要なインフラだと言ってもよろしいかと思います。これによって観光に来る人も増えるし、その好感度が移住とか立地とか、そういうものにもつながります。また、市民の文化、スポーツ、レジャー活動にもプラスだと思うわけであります。

 和歌山市の紀の川の河川敷トイレについては、私もちょっと見落としていたんですが、女性が使用しづらいトイレがあるという点について、議員御指摘の点は誠にごもっともであるということから、県としても、和歌山市に対して、おもてなしトイレ大作戦の補助金、予算名称といたしましては観光施設整備補助金の対象となることを伝えたところでございまして、和歌山市からは、都市公園の整備全体の中で検討していく方針であると聞いております。

 私も、今後も応援をするから、和歌山市に対してですね、応援をするからぜひとも取り組んでほしいとお願いをしていく所存でございます。私も県内各地を回って、一つでも問題の公衆トイレを見つけたら、早速担当部局に指令を出して改善をしてもらっております。

 和歌山はおもてなしトイレだと公言をしているわけでございますので、少しでも、ちょっとでも、一つでもそうでない事案があったら、うそつき県と悪評が立つのが倍返しになるということも恐れるわけでございまして、今後も市町村に対して、誰もが気持ちよく使用できるトイレの整備について、積極的に働きかけてまいりたいと考えております。

○議長(尾崎要二君) 森 礼子さん。

  〔森 礼子君、登壇〕

○森 礼子君 力強い答弁をいただきまして、ありがとうございます。

 これまでの知事の御尽力による県内のトイレは本当にきれいで、たくさんの皆さんが喜んでくださっております。本当にありがとうございます。

 でも、河川敷においては、河川法に基づいたトイレの設置になるため、手洗いの自動水洗など難しい点もあり、快適にはハードルが高い部分がたくさんありました。でも、申し上げたように、最近では多様なシーンで女性目線の快適トイレの導入が始まっておりまして、河川敷に設置されるトイレにもきれいな工夫がたくさんされるようになってきました。

 「水の国、わかやま。」とアピールしている和歌山県です。どうか河川敷においても快適トイレの導入が進んでいくように、県としての優しい取組を要望いたします。

 続いてお願いします。

○議長(尾崎要二君) 森 礼子さん。

○森 礼子君 次は、出産・子育ての安定と安心について質問いたします。

 昨年12月、新宮市立医療センターが本年3月1日から産婦人科の分娩を休止することが報道され、県民に衝撃と不安が走りました。ニュースはNHKでも大きく取り上げられ、改めて医師不足が全国的な地方の課題であることが明らかになりました。

 その後、多くの関係者の御尽力で、近畿大学病院や東京慈恵会医科大学などから常勤、非常勤の医師が派遣されることになり、難局を乗り越えることができました。しかし、現在でも那賀地域では分娩対応がない状態が続いています。

 かつて全国的に医師不足の状況の下で、当時、知事、南條学長が国や二階代議士、鶴保参議院議員に働きかけ、県立医科大学の入学定員が平成20年度に85人、平成22年度から100人になり、もう10年以上が経過いたしましたが、いまだに医師不足が続いています。

 知事は、この状況をどのようにお考えでしょうか、御答弁をお願いいたします。

○議長(尾崎要二君) 知事。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 県では、医師不足を抜本的に解消するため、国に粘り強く働きかけを行い、当時の医科大学の入学定数を増やさないという閣議決定を結果的には覆してもらいまして、平成20年度以降、和歌山県立医科大学医学部の入学定員を60名から100名に順次増員するとともに、近畿大学医学部にも和歌山県地域枠を設け、医師の確保に取り組んでまいりました。

 これまで、いわゆる地域枠である県立医科大学県民医療枠、地域医療枠──これは狭義の地域枠なんですけど──及び近畿大学医学部和歌山県地域枠の卒業医師数は260名であり、現在、初期臨床研修及び後期研修の医師を除く110名が地域の病院に勤務しております。

 今後、これらの卒業医師が順次増加し、令和8年度には150名の若手医師が地域医療に従事する見通しであります。

 しかしながら、議員御指摘のとおり、産科の医師不足については、これまで現行の地域医療枠卒業医師において、原則内科勤務として地域へ派遣するところを、産科の専攻を認め、産科医として派遣するなど、医師確保対策に努めてきたところでございますが、それでも産科医の不足と志願者の少なさが顕在してまいりました。

 医大の専門の教授陣の奮起も大いに期待したいというふうに思いますけれども、緊急的な対応策を取らざるを得なくなりました。それを頑張って何とかいたしました上に、さらに長期的な対策として、県立医科大学において、新たに産科など不足診療科の入学枠を設け、将来に備えて医師の偏在策を強化したところであります。これは科目別偏在ということでございます。

 一方、この際、気をつけておかなければならないのは、こういう対策が取り得るのも、医大がレベルの高い人気のある大学だからでございます。そのためには学問的水準を高く保ち、大学の魅力を維持することも大事でありまして、目下の急務である医師派遣だけに着目した措置を取ると、大学の質という金の卵を壊しかねません。したがって、ここは微妙なバランスで考えていかなきゃならないということを申し上げたいと思います。

 このように、医師を派遣、養成し、確保することは息の長い取組であり、本県の医療崩壊を食い止め、新型コロナウイルスなど新興感染症の発生時はもとより、将来にわたって地域医療を堅持するためには、今後もこれまでと同様、広義の地域枠の卒業医師を育成し、地域の病院や僻地診療所に供給し続けなければならないと思います。

 一方、実は国は、将来的な医師の過剰を防ぐという観点から、このところずっと臨時定員である地域医療枠の撤廃や内科専門研修募集定員のシーリングなど、地域の医師の養成数で医師の地域偏在や診療科偏在の是正を進めております。このことは、県民の命を守るためには、これは詳しく御説明しませんが、これまで本県で取り組んできた医師の確保対策をないがしろにするものであって、大きな問題と認識し、これに対して国と大分対峙をしてきたわけでございます。

 具体的には、国に対して、医師の偏在を是正するための手段としては、地域ごとの医師養成数をターゲットにするのではなくて、実際に医師が地域に就職し、定着する支援を和歌山県のように重視するということをすべきであって、臨時定員を存続させ、専門研修募集定員のシーリングを、こんなものは撤廃すべきだと訴え続けております。

 また、全国で少子化対策を進めると、これは日本国全体がターゲットでありますが、産科医の確保が全国的に困難であるという状況を踏まえまして、現行の臨時定員や恒久定員とは別枠で産科医の不足に対応する地域枠の設定を認めるよう強く、現在、働きかけを行っているところであります。

 県としては、引き続き、県内医師の地域偏在と診療科偏在の解消に向けた取組を推進し、県民が安心して適切な医療が受けられる体制づくりに取り組んでまいりたいと考えております。

○議長(尾崎要二君) 森 礼子さん。

  〔森 礼子君、登壇〕

○森 礼子君 これまでの地域枠の効果については、内科医に関してはとても充実していると高い評価を私も耳にいたします。一方で、産科、小児科、精神科など、不足する診療科があり、研修医を指導する中堅医師が少ない実態は、これまでの地域枠のやり方では十分ではないのかなというふうに感じています。

 先日の川畑議員に対する答弁にも「責任者レベルの医師の確保と複数人体制が必要である」とありましたが、新政策の受験枠も全国対象であり、和歌山県で他府県の子供を入学させて学ばせ、9年間だけのお勤めの後が自由であればいいというなら、いよいよ働き盛りの中堅医師が少なくなるのも当たり前ではないかなというふうに感じます。10年先、責任者レベルの医師の確保、複数人体制を整えることが可能なのかなというふうに不安が残っています。

 WHO、自治医大は、医師不足の地域の子弟を優先的に入学させることが医師不足の解消につながると示しています。三重県、島根県の国立大学の実践効果をお手本にしていただきたいと思います。御答弁の熱い思いを、どうか和歌山県の医療の安定、安心につなげていただけますよう期待いたします。

 続けてお願いします。

○議長(尾崎要二君) 森 礼子さん。

○森 礼子君 次は、出産に関する提案を申し上げます。

 妊婦健診は母子ともに健康に出産を迎えるための大切な検診で、出産までに数週間に1回、14回ほど受診する大仕事です。時間や費用もかかり、これまで悲しい事故を繰り返し、今日では公的な助成も受けられるようになりました。

 現在、県内では、妊婦健診は何とか確保できていますが、問題点として、検診を受ける病院まで距離的に遠いことなどが挙げられています。

 そこで、他県では先進的な取組が始まっています。一つは奈良県宇陀市の移動診療バスで、もう一つが札幌市にある天使病院の出産ビレッジ──仮称であります──の取組です。

 出産ビレッジとは、分娩対応病院の近くに周産期に入った妊婦が短期間生活できるハウスのことで、安心して出産の日を迎える体制を整えることができます。

 県は、医師確保として、産科に特化した選択受験枠の創設を進めていますが、実際に医師として現場に勤めていただくまでには先が長く、即効性のある対策が必要であると思います。

 そこで、どこで暮らしていても安心して出産を迎えられる対策として、出産ビレッジの導入が有効的であると考えますが、福祉保健部長の答弁を求めます。

○議長(尾崎要二君) 福祉保健部長志場紀之君。

  〔志場紀之君、登壇〕

○福祉保健部長(志場紀之君) 県では、住み慣れた地域で安心して出産できるよう、保健医療圏域ごとの分娩体制を堅持するため、産科医の確保に向け、産科指定の入学枠の設定や寄附講座の設置、産婦人科専門研修を受ける若手医師への研修資金の貸与など、地域の中核を担う公立・公的病院の産科医確保に努めているところです。

 分娩医療機関の近くに妊娠後期の妊婦が宿泊、滞在する取組については、陣痛開始後に遠距離を移動することのリスクや妊婦の不安を解消する方法として、分娩医療機関まで距離が離れている地域のある北海道や離島のある自治体で実施されております。

 議員御提案の出産ビレッジの設置に当たりましては、分娩医療機関に遠隔地の妊婦を受け入れる余力があるのか、近隣に滞在施設は確保できるのか、また、滞在施設で妊婦の健康状況を把握する助産師の必要性や、小さい子供がいる場合の保育の確保、設備等の費用分担など、今後関係機関も交えて整理すべき点が多々あると考えます。

 一方で、県内でも新宮市立医療センターにおいて、産科医退職に伴い分娩を休止した際に、新宮市及び那智勝浦町が受診するエリアに応じた交通費、宿泊費の支援を決定いたしました。

 県といたしましては、まずは各保健医療圏域内での分娩継続を最優先として、産科医の確保に全力で取り組みつつ、将来を見据え、地域の状況に応じて周産期医療体制の堅持に必要な取組も検討してまいります。

○議長(尾崎要二君) 森 礼子さん。

  〔森 礼子君、登壇〕

○森 礼子君 出産ビレッジの発案は、天使病院の事例を知る前に、ドナルド・マクドナルド・ハウスの支援がヒントとなりました。病気と闘う子供たちとその親御さんに向けたサービスで、病院の近くにシェアハウスを設置し、1泊1000円で宿泊ができる、子供に寄り添う優しい取組です。

 この取組を産科対応に広げることはできないかとマクドナルド財団に聞いてみたところ、「日本ではまだ産科対応がないが、アメリカでは移動診療車に加えて産科対応もしている。もし国内の1例目として展開できればすばらしいし、行政から要望があり、双方で明るい兆しがあれば話合いを進めていく可能性は大きい」との回答がありましたので、御紹介をいたします。

 また、マクドナルドさんとのつながりは、コロナ禍のときに、当県の医療従事者さんにほぼ行き渡るほどのハンバーガーの利用券を頂きまして、そのときに御縁ができていますので、どうぞまた御検討いただければというふうに思います。

 それで、また、出産ビレッジを集める対策ですけれども、移動診療バスは、妊婦初期において出向く対策は有効的であると思います。また、デジタル田園都市・オンライン診療の推進なども含めて御検討を要望いたします。

 続けてお願いします。

○議長(尾崎要二君) 森 礼子さん。

○森 礼子君 先日、若いお母さん世代の皆さんとの意見交換会で、産後の仕事復帰の大変さを聞いてきました。皆さんのお話では、産後の仕事復帰の時期は断乳を目安としており、職場復帰の前にわざわざ断乳をしている女性が多いことが分かりました。

 また、断乳ができない場合は、職場で搾乳をして、胸の張りを取ってから仕事をしているそうです。搾乳しないと胸が痛み、乳腺炎を引き起こすことがあります。そのため、トイレで搾乳し、母乳は捨ててしまうのです。そして、彼女たちの共通の意見は、「会社に搾乳室があればよかったのに」ということでした。

 その体験談を聞いたので、ネットで「職場 搾乳」と検索してみると、「いざ復帰 立ちはだかる搾乳の壁」、「搾乳スペースがない」など、多くの女性が搾乳の悩みを抱えていることが分かりました。

 WHOでは2歳まで母乳育児を続けることを推奨していますが、アメリカでは、職場に搾乳室の設置を法律で義務化しています。一方で、日本では搾乳室を自主的に導入している企業は出てきているものの、まだごく一部にとどまっています。

 子育て支援をすることが少子化対策の切り札であることは、今や先進国の常識になりつつあります。私は、まず県庁がお手本を示すことで、わかやま結婚・子育て応援企業同盟など、県内企業への普及につながると考えます。

 搾乳室はごく僅かなスペースに椅子、流し台、冷蔵庫があれば十分です。ちなみに冷蔵庫は母乳を保管する大切な器具です。幸い県庁内には、来客用の授乳室があります。優しい職場づくりとして、搾乳室を併設することはできないものでしょうか。知事の御答弁をお願いいたします。

○議長(尾崎要二君) 知事。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 県では、仕事と子育てが両立できる社会を実現するために、わかやま結婚・子育て応援企業同盟というものを提唱して、自らも加わっているわけでございますけれども、そういう方々と共に、セミナーの開催とか出前講座とか優良事例作成などを通じて、育児休業を取得しやすいような環境整備や円滑な職場復帰を促進するような機運の醸成を図っているところであります。

 県職員の場合、育児休業は最長で子供が3歳に達する日まで取得可能であります。知事部局において、育児休業を取得している職員は、6月1日時点で48名、そのうち離乳食の完了期となる産後1年で復帰を希望する職員は2名のみであり、半数以上の職員が2年を超える育児休業の取得を希望しております。

 このように、現時点においては長期間の育児休業を選択する傾向が見られまして、搾乳室の設置を希望する声は聞きません。今後、早期の職場復帰を希望する職員の声にも耳を傾けながら、搾乳室の必要性についても、もちろん検討していきたいと思います。

 少子化対策のためにやれることはどんどんやろうという考えでおりまして、実は度重ねて、県庁に直接保育室を造ろうということも検討したんですが、どうも需要がないと。周りの保育所との関係でも、むしろ民業圧迫ということになってしまうというようなことがあって、やめています。

 ただ、こういうことは、全て時代とともに、また需要環境が変わってくるんで、変わってきましたら、どんどん取り入れてまいりたいと考えております。

○議長(尾崎要二君) 森 礼子さん。

  〔森 礼子君、登壇〕

○森 礼子君 県庁は県内最大の事業所であり、お手本となるので、広い目線できめ細やかな対応を希望いたします。

 そして、その県庁内への保育があればという質問を私も以前にさせていただきまして、今知事がおっしゃられた答弁をそのままいただいた記憶がありますが、その後、いろんな職員さんと話す中では、県庁内に保育園があればうれしいよという声もありましたので、申し添えます。またいろんな情報を収集していただければと思います。

 続いてお願いします。

○議長(尾崎要二君) 森 礼子さん。

○森 礼子君 最後に、在宅ケアを支える食事について質問いたします。

 昨今、介護や医療が必要になっても住み慣れた自宅や地域でサービスが受けられる在宅介護・医療が普及し、利用者の希望に寄り添い、医療費が抑制できることから、国も積極的に推進しています。

 その在宅のケアには、食事、排せつ、入浴、コミュニケーションなどのサービスがありますが、ヘルパーが特に安全性において気をつけなければならないのが食事だと言われています。その理由として、利用者が喉に詰まらせないように嚥下食やとろみ食を作る必要があり、調理師免許は要らなくても、その調理方法を学ぶことが要求されます。もちろんヘルパーと同様、在宅でケアをしている家族にとっても同じことであります。

 しかし、県内には、現在のところ、介護食や病態食の調理を学習できる場所がありません。全国的には公益社団法人の全国調理職業訓練協会が調理技術を向上させる目的で介護食士という資格まで創設されていますが、そもそも本県には調理師学校がありません。

 介護や医療の現場から、また、給食会社からも、介護食、病態食の調理技術習得の必要性を訴える声が聞こえています。和歌山県調理師会へも同様の要望が寄せられているということです。

 高齢化、在宅化がさらに進む本県で、介護食、病態食の調理技術習得の必要性について、知事はどうお考えでしょうか。また、調理師会からは、研修施設開設の必要性並びに講師派遣等の協力の表明がされております。県立和歌山産業技術専門学院等への研修施設の開設について、併せて御質問いたします。

○議長(尾崎要二君) 知事。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 高齢者は、そしゃくや嚥下能力の衰え等も現れるため、身体の状況等に応じた食事を提供することが重要であります。

 こうした観点から、訪問介護員となるために受講する初任者研修等においても、高齢者の状態に応じた食事や食べさせ方、食事の際の正しい姿勢等をカリキュラムに盛り込んでおりまして、各研修実施機関において、座学と実習を適切に組み合わせた形で研修が行われておりますが、この際、調理師の方々に御足労願うことも大変多いんじゃないかというふうに思っております。

 一方、御指摘のあった調理技術の習得のために、別途専門研修を行うべきかということについては、和歌山県ホームヘルパー協会とか和歌山県訪問介護事業所協議会という、言わば担い手の方々からは、現時点ではそのような要望はいただいておらず、理論的にもそれで不都合なことは、恐らく今のところ見いだせていないということなんで、義務づけて一律に実施する必要はないんじゃないかというふうに思っております。

 一方、高齢者を介護する家族等への支援といたしましては、市町村において、介護食をはじめ介護に関する知識や技術を学ぶ介護教室等を実施しております。引き続き、こうした市町村の取組を県としても支援してまいりたいと考えております。

 将来的に、御指摘のように介護食等の調理方法を習得したいというニーズがもし高まりまして、その機運が醸成したときには、御指摘の料理教室の開設についても検討しなければならないと考えております。

○議長(尾崎要二君) 森 礼子さん。

  〔森 礼子君、登壇〕

○森 礼子君 前向きのようで前向きではないような答弁に思いました。やっているとのことですが、十分なのかなというふうに感じています。県に要望がないからやらないのかなと、とても残念な気持ちであります。私には、高齢者を支える食事を学びたいという声が聞こえていました。

 本県は、高齢化が進み、介護認定率が全国的にも高い中で、高齢者に寄り添い、何が必要かを感じ取り、要望がなくても率先して積極的に取り組むのが行政の在り方であるというふうに思います。

 これまで地域や仕事、家族のために尽くしてきた高齢者にとって、食事は大きな楽しみであり、高齢者に合ったおいしくて栄養のある食事を提供する仕組みをつくることは、高齢者施策の大きな柱であるというふうに思います。

 余談でありますが、私は県内に調理師養成学校がないことがとても残念に思っています。現在、大学と同様に、調理師を目指す子供たちはわざわざ大阪など他府県に行かなければなりません。本県は食材の宝庫ですが、それを生かすのは調理師の腕次第です。

 県では観光立県を標榜していますが、観光の大きな楽しみ、グルメを創作する調理師の養成なくして観光立県はあり得ないというふうに思っています。

 調理師養成学校については、また次の機会に質問したいというふうに思います。

 これで私の質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

○議長(尾崎要二君) 以上で、森礼子さんの質問が終了いたしました。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 30番谷口和樹君。

  〔谷口和樹君、登壇〕(拍手)

○谷口和樹君 おはようございます。谷口和樹です。質問のほう、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、一つ目の質問に入らせていただきます。

 10年を迎えるインド・マハラシュトラ州との交流について、MOUの更新について質問をさせていただきます。

 IR案がなくなったことで、賛否はともかく、よく聞く御意見には大きく二つあるのかと思います。一つは、やはり今後の経済的な不安、特に予定地の和歌山市を中心に、今後の経済的な不安の声が大きいこと。もう一つ、混じって聞こえるのは、和歌山は革新的なことに挑戦できないのではないか、そういったことへの不安の声です。

 今後、IRに代わる起爆剤を探すのが近々のミッションであります。そして、県民の信頼をいただくには、率先してクリエーティブで求心力のある政策が必要であると考えます。

 そんな考えの中、単刀直入に質問内容を申し上げますと、観光と食品加工、企業間協力のMOUではありますが、インドで力になってくれる「人」に恵まれ、インドの経済成長という「時」に恵まれ、知事がまいた種を、国際課を先頭に、10年の努力でしっかり基盤もできていますので、このMOUの取組を次の和歌山再浮上の起爆剤にしていきましょう、そういう思いでMOUの更新について質問をさせていただきます。

 その前に、まず前段に、私は2019年秋に初めてマハラシュトラ州を訪問しました。ちょうど茨城国体の時期で、国体の会場で教育委員会の谷田昇選手がレスリング競技で初優勝したのを見届けて、そのまま成田からデリー便に乗ったことを昨日のように記憶しています。その後、想像以上の人であふれるムンバイ空港で、国際課マハラシュトラ州派遣の大西職員に出迎えていただき、和歌山県がお世話になっている各所に御案内をしていただきました。

 そんな中で最初に御挨拶に伺ったのが、マハラシュトラ州マリック情報局長官でありました。和歌山県とマハラシュトラ州のMOU締結に際して様々な御尽力をいただいたこと、その後の相互交流に向けて発案された高野山へのインド憲法の父と言われるアンベードカル博士の記念碑建立に御尽力いただいたことをはじめ、多くの功績について、和歌山県への期待と熱意、母国への愛情を交え、お話をお聞きしました。

 今回、そのマリック情報局長官が和歌山県知事表彰を受賞されると聞き、心からうれしく思っています。まず、冒頭でお喜びを申し上げたいと思います。

 これから本題に入る前に、国際交流は相互支援、相互協力、相互発展が大切であります。和歌山県とマハラシュトラ州のMOUも、経済最優先ではありませんが、数ある説明手法の一環として、経済視線でお話を進めますことを御了承いただきたいと思います。

 少し簡単にインドとマハラシュトラ州について、おさらいをさせていただきます。

 皆さん御存じのとおり、世界的に見たインドの成長の可能性については、様々なメディアなどに共通してありますが、せんだっても、落合陽一氏の著書「2030年の世界地図帳」を読ませていただくと、その中にもこれから来るインドの成長について記述がありました。

 テクノロジーの進化と人口はある程度予測できるということはよく言われますが、データを基に、今後のインド全体の驚異的な成長の予測というのが様々な報告や文献に見られます。

 先ほどの「2030年の世界地図帳」に沿って、2030年を軸に少し例を挙げていきますと、過去30年で5億人増えてきて現在14億人のインドの人口は、2030年には15億人に達し、世界一になると言われています。単純計算で、2030年世界人口84億人の18%がインドにいることになります。

 現在、インドの平均寿命は69歳で世界140位、人口の約50%が20歳代以下というピラミッド型の人口動態ですが、これから平均寿命が延びながら、2030年に向けて徐々にピラミッド型から釣鐘型の人口動態に変化していく期間に入ります。

 そのタイミングとともに、インドとの時差12時間を利用したアメリカの情報通信などのテクノロジーと投資の流れ込みが今以上に加速していくと予測されています。

 実際、この5月に見学したインド第2のIT都市と言われるマハラシュトラ州プネー市では、五つのITパークがあり、その中でも資料1枚目、右の写真ですけども、サイバーシティーと呼ばれるITパーク、中央の緑化公園から放射状にIT企業のオフィスビルが立ち並ぶ、その姿というのはまさしくシリコンバレーをほうふつさせる、そのようなITオフィスパークでありました。

 2016年からGDP成長率は世界一の約250%になると予想されており、2030年までに日本を抜き、自国内に世界人口の18%という成長する国内市場を持ちながら、テクノロジーと資源をふんだんに持つGDP3位の国に短期間で成長すると言われています。

 そして、そのインドの中でもマハラシュトラ州は、人口1億2000万人で、国際金融都市ムンバイを州都に持つ、まさにインド経済の中心。さらには、先ほどの州内にある人口600万人のプネー市も、もともとは大学が集まる歴史的な文化教育都市のところに、「優秀な人材×テクノロジー」ということで、インド第2のIT都市として飛躍的に経済水準も生活水準も所得も上昇していっています。

 まだ和歌山県ではあまり知られていませんが、マハラシュトラ州は経済、金融、ITだけでなくて、環境面での取組もはるかに進んでいます。2018年には、インドで初めて使い捨てレジ袋の製造、ストローなど一部プラスチック製品を全面禁止し、本年5月22日にはグローバル・プラスチック・アクション・パートナーシップ(GPAP)に加盟をし、プラスチック汚染の根絶に取り組んでいくなど、環境問題への意識も高いことを申し添えておきます。

 和歌山県も今後は常にSDGsを共通言語に交流していくことが、互いの国際的なブランドを高めるのではないかと感じています。

 以上が、改めてマハラシュトラ州について申しました。

 そして、質問の主題である10年になる和歌山県とマハラシュトラ州のMOUについてですが、せんだってお聞きするところによると、プネー市と友好提携を検討している岡山市が和歌山県の取組の視察に来県され、そして、それについて勧めたのがインド総領事であったとお聞きをしています。

 このことからも分かるように、知事を先頭に和歌山県国際課の取組は、マハラシュトラ州だけでなく、インド全体の機関であるインド総領事からも信頼を得ていることが分かります。

 また、これまでの交流でいえば、日印協会の功績も小さくはありません。過去2回の訪印でも、カレ会長、スワティ事務局長の和歌山県へのホスピタリティーと献身的なサポートには、常に驚かされました。

 そして、今回訪れた5月の際にも、多くの民間の方々との会談がセットされましたが、常に和歌山県との交流にプラスが生まれるよう積極的に提案がなされ、熱意と配慮がそのたびに強く感じられました。

 日印協会は、当然日本の他府県市からも引き合いがあると思いますが、和歌山県との信頼関係は非常に深く、マハラシュトラ州へ派遣された職員の10年分の努力は、信頼や人脈といった点で大きな成果を上げていると感心しました。

 そしてまた、そうまでなったのには駐在する派遣職員の存在があって、ここにもマリック長官を中心に、マハラシュトラ州から長期にわたるオフィスや宿舎の提供など、特筆すべき協力体制も併せて大きくあると思います。

 ですので、当然、コロナ禍で現在止まっていますが、マハラシュトラ州からの思いに応えるために、マハラシュトラ州への職員派遣も早期に再開することが必要です。

 今、知事をはじめ当局の皆さんの10年の努力の末に、マリック長官、インド総領事、日印協会を筆頭に、将来飛躍的に発展すると言われているインドから和歌山発展の鍵となる人脈を得ています。この人脈に恵まれたマハラシュトラ州とのMOUは、インドの飛躍的な成長という「時」にも恵まれ、その上10年間の国際課の努力がマハラシュトラ州に信頼の基盤、これの上にある状況です。

 この10年を迎えるマハラシュトラ州とのMOUは、消えてしまった大型案件に代わるくらい将来の和歌山県再浮上への可能性を秘めていると考えますが、一つ、10周年を迎えるMOUの更新と現地での式典について、二つ、10周年MOU現地更新の際の県産品PR、ビジネスマッチングなどの訪問団について、三つ、今後の職員派遣再開について、以上の点を踏まえて、和歌山県とマハラシュトラ州とのMOU更新について、知事にお伺いします。

○議長(尾崎要二君) ただいまの谷口和樹君の質問に対する答弁を求めます。

 知事仁坂吉伸君。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 議員御指摘のとおり、インドはかねてから無限の可能性を秘めた国であると認識しております。

 谷口県議におかれましては、このコロナ禍の中、不便を克服してマハラシュトラ州を訪問されたことに敬意を表したいと思います。

 和歌山県は、地方対地方の姉妹関係など、そういう交流がございますけれども、こういうのはあまり多過ぎると、マンパワーとの問題で関係の維持が大変困難であると。例えば、私のような者の相互訪問と乾杯だけに終わる可能性があるので、私が知事にならしていただいてからは、どんどん制御をしてまいりました。

 しかし一方、当県の繁栄につながるような対外関係は強化をしてまいりまして、そのようなときに、当時の在大阪・神戸総領事であったヴィカース・スワループさん、この方は、実は「スラムドッグ$ミリオネア」というアカデミー賞の作品賞を取った映画の原作の作者でもありますが、この方の紹介によりまして、インド経済を牽引するムンバイを州都とするマハラシュトラ州と相互協力をするMOUを結んだらどうだと、こういう提案がございました。

 これはすごいなあというふうに思いまして、いろいろ交渉をしたりいたしまして、国会議員にも助けていただきまして、2013年10月、観光、食品加工分野における相互協力の促進、拡大を目的とした覚書を締結したところであります。2018年1月には覚書の更新を行いまして、より広範囲な分野における交流を実施しております。

 御指摘のように、この州は、人口が和歌山県の100倍以上、経済力ではインド、恐らく第1位か2位、中央銀行がございまして、金融や財閥のヘッドクオーターがずらっと並んでおりまして、かつ、御指摘のようにIT集積地もあるわ、大農業州でありますし、それからアジャンタなどの世界遺産もずらずらっとございまして、ボリウッドまであるという大きな州で、きっとこういうところと付き合っておくと、いろんな意味で我々も産業界の発展とか、そういうことが期待できるんじゃないかと、こういうことで協力をずっと続けているわけでございます。

 交流を深めるに当たっては、マハラシュトラ州情報局長官のスミット・マリック氏の御尽力によるところが大きくて、両県州の交流のあかしとして、インド憲法の父であり同州の英雄であるアンベードカル博士の記念碑が高野山大学へ設置されるよう、州幹部に働きかけを行っていただきました。また、同州との覚書締結、更新を執り行うに当たり、本県と同州とのかけ橋として寄与いただくなど、相互交流促進に顕著な功績が認められることから、令和4年和歌山県知事表彰をお贈りすることとしたわけでございます。

 国際交流を推進していくに当たっては、このような人と人とのつながりが重要でございますので、英語の研修も併せて和歌山県職員をこれまで3名インドに派遣してまいりました。現在、コロナ禍の影響で派遣が止まっておりますけれども、状況が改善すれば再開を検討したいと考えております。

 また、マハラシュトラ州はああいう大きな州でありますが、日本における拠点が今のところありません。したがって、和歌山県東京事務所でその窓口を代理してさしあげております。

 今回の覚書の更新に当たっては、これまでの観光や経済交流、青少年交流の成果を踏まえまして、本年10月にインド・マハラシュトラ州から州政府幹部をトップとした訪問団を受け入れる予定でございます。また、来年2月には、旅行会社とか県内外の企業、教育関係者などで編成される代表団が同州を訪問いたしまして調印式を行うとともに、できれば県産品の商談会とか観光プロモーション、ビジネスマッチングなどを実施してまいりたいと考えております。

○議長(尾崎要二君) 谷口和樹君。

  〔谷口和樹君、登壇〕

○谷口和樹君 ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。

 ちなみに、今回訪印の際に、現地の若い方々に決まった質問というのを幾つかさせていただきました。その中で、大学を出てからの卒業後の初任給は幾らぐらいですかというのを聞くと、大体8万円前後という答えが多かったです。スマホの普及率であったりWi-Fiの月額の料金、通信料の月額料金なども聞いたんですけど、大体若い世代の80%に普及していて、Wi-Fiの月額使用料も800円ぐらいということでした。

 日本のイメージは比較的よくて、イメージを聞くと最初に出てくるのが日本のアニメですね。アニメの印象というのがいいということで聞きました。ちなみにアジアでは韓国、若い人を中心にK-POPであったり、そういう文化的なところの評価というのがつながっているんじゃないかという答えが多かったです。

 そういう簡単な質問なんかでもそうだと思うんですけども、恐らくまだまだよく知らないということが多いかと思います。インターネットなんかでは、調べるとインド全体のことというのはよく引き出すことはできるんですけども、我々が求める、和歌山県が求めるマハラシュトラ州の正しい情報なんかはまだまだ少ないんじゃないかなあと思います。

 10年を迎えるに当たって、やはりやっていくことは当然リサーチであると思うので、マハラシュトラ州について少し調べていただくことが必要じゃないかなあと思っています。

 それでは、二つ目の質問に入ります。

 二つ目は、今後の取組についてお聞きをいたします。

 まず、スポーツMOUの経過についてお話をさせていただきます。

 2019年の訪問時に、マリック長官から御提案がありまして、和歌山県とマハラシュトラ州、両レスリング協会同士のスポーツMOUをしたらどうだというような、そういう提案がありました。その後、マハラシュトラ州レスリング協会のランゲ副会長をはじめ役員の方々がお出迎えいただいて、意見交換させていただき、翌年、2020年2月に再度伺いました。その際は、和歌山県レスリング協会から、現アンダー17の日本代表監督であります和歌山北高校の森下先生、そして、当時3名の元日本代表経験者の選手とマハラシュトラ州合宿を行いました。

 そのことで、やはり一度交流というか練習というか、やっぱりお手合わせすると一気に距離も近づき、信頼もすごくされたと思うんです。3人の選手が開いてくれたということだと思うんですけども、そこで大きく交流が進展しまして、このときは、ちなみに、続けて教育委員会の橘局長と児嶋副主査が先頭に立って、マハラシュトラ州のレスリング協会からの紹介で、インドのレスリング協会に東京オリンピックの合宿誘致に選手団を連れていってくれています。

 当然マハラシュトラ州からの紹介でしたんで、お返事も快い返事をいただいていたんですけども、直後、新型コロナの世界的な蔓延で、五輪の延期、合宿もなくなってしまいました。そういうことも、そのときありました。

 ただ、コロナ禍で行き来ができなくなったところでも交流というのは続いてまして、特にマハラシュトラ州レスリング協会のアモルブチャティ先生の御協力で、オンラインでの技術講習、実戦講習などを重ねたこともあって、話が進んで、この5月に、ゴールデンウイークに、再度スポーツMOUの協定書の草案をマハラシュトラ州レスリング協会のほうに直接確認してもらうために、マハラシュトラ州を伺いました。帰国後、すぐにマハラシュトラ州経由で合意の連絡をいただくこととなりました。

 ここに至るまで、発案いただいたマハラシュトラ州情報局マリック長官をはじめ、マハラシュトラ州関係者の皆様方、カレ会長、スワティ事務局長はじめ日印協会の皆様方、ランゲ副会長はじめマハラシュトラ州レスリング協会の皆様方の御尽力に心から感謝をしています。

 今後、11月にマハラシュトラ州のレスリング大会があって、そこへの参加のお誘いなんかもあります。日本と違いまして、屋外で5万人ぐらい集まるような会場でやるということで、選手にはすごい国際経験になると思いますので、ぜひ、許されるならば実現できたらなと思っています。

 協会としては、マハラシュトラ州の熱意に応えたり、和歌山県との国際交流のかけ橋になることも光栄ですけれども、和歌山県の子供たちにレスリングを通じた国際経験と、レスリング選手のセカンドキャリアとして、世界の指導者への道筋をつけたいと考えています。

 以上、スポーツMOUと5月の報告も兼ねてお話をしました。

 そして、この訪問を踏まえてですけれども、5月の訪問の際も日印協会の計らいで、多くの現地の方々とミーティングをさせていただきました。その際、資料に併せて和歌山県の観光パンフレット英語版をたくさんお持ちして、配りながら和歌山のPRというのをさせていただいたんですけども、第2外国語が英語ということなんですけども、やはりマハラシュトラ州の全ての方々が使えるわけではないような感じでした。

 1億2000万人のマハラシュトラ州から、観光客誘致や和歌山県のよさを伝えるに当たって、やはり公用語であるマラーティー語をはじめ現地の言葉で各種資料というのが必要だということを感じました。交流10周年に当たって作成できないか、お聞きします。

 もう一つ、この10周年に合わせての和歌山産品のPRなんですけども、今回の訪印の際に、お伺いした期間でお聞きしたんですけども、現地にしては高額ながら、和歌山県のクラフトジンが売れたということも聞きました。お酒の需要というのは、パーセントとしては低いとは思うんですけども、人口の総数が大きいことで結果が出たのではないかと思います。10周年に合わせて、和歌山産品のPRができないか、お伺いいたします。

 また、先ほどの和歌山県で初めてになるスポーツMOUの締結についてですけれども、やはり今回行って感じたのは、実際我々はマハラシュトラ州の皆さんに聞きながら進むことができましたけれども、和歌山県が必要とする基礎的なマハラシュトラ州のスポーツ環境について、詳しい情報というのは多くはありません。

 スポーツを通じての国際交流は、互いを知り、尊重し合うのに大きな効果を及ぼすのは御存じのとおりかと思われますが、特に若い世代のスポーツ交流は、将来、間をつなぐ人材を育てるための効果の大きい人的投資でもあると思います。今後のスポーツMOUの取組についてお聞きします。

 最後に、現在、和歌山県からマハラシュトラ州まで移動するとすれば、空路になります。マハラシュトラ州までの空路というのは乗り継ぎも多くて、非常に時間がかかります。

 そこで、関空─ムンバイ便の就航の働きかけについてですけども、大阪・関西万博などを契機に、和歌山だけじゃなくて関西の他府県もインドからの人流が必要なはずであると思います。関西広域連合など関西の皆さんと協力することで、関空─ムンバイ便の就航の働きかけができないかということをお聞きしたいと思います。

 一つ、先ほどの資料の現地語での作成について、和歌山産品のマハラシュトラ州PR、10周年に合わせてのPRについて、和歌山県で初めてのスポーツMOUについて、関空─ムンバイ便の就航の働きかけについて、以上を踏まえて、今後の取組について、知事にお聞きをいたします。

○議長(尾崎要二君) 知事。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 先ほども申し述べましたように、インド・マハラシュトラ州は大変経済力のある州でございまして、観光や経済をはじめ様々な分野で交流を進めていくことは、本県にとって大切でございます。

 本県の観光情報や県産品PRについては、かねてから英語による情報発信を実施してまいりましたが、より本県への理解を深めていただき、認知度をさらに向上させるため、覚書締結10周年を契機に現地語での発信にも取り組むなど、情報発信力を強化してまいりたいと思います。また、御指摘の産品PRもこの際、熱心に取り組む所存であるというのは、さきの答弁で述べたところでございます。

 青少年、スポーツ分野では、2019年10月から議員が取り組まれているレスリング交流において、コロナ禍でもオンラインで相互に技術を披露するなどの交流が実施されておりまして、同州と本県の覚書更新に合わせて、それぞれのレスリング協会同士の覚書が結ばれることになったと聞いております。

 このような交流を成功モデルと位置づけ、同州及び県内競技団体の意向を踏まえつつ、他競技においても同様の交流が実現するよう、県としても築いてきた人脈を活用して協力してまいりたいと考えております。

 さらに、御指摘の同州との経済的なつながりを強めるための関西国際空港からインド・ムンバイへの直行便の就航については、関係自治体及び関西経済界と協力して、航空会社に働きかけを行ってまいりたいと思います。

 マハラシュトラ州との覚書更新を契機に、双方のゲートウエーとして、より一層活発な交流に取り組んでまいりたいと考えております。

○議長(尾崎要二君) 谷口和樹君。

  〔谷口和樹君、登壇〕

○谷口和樹君 御答弁ありがとうございます。ぜひよろしくお願いいたします。

 後述で少しだけお話しさせていただきたいと思います。今回の5月の訪問、そして前回2回もそうなんですけども、ムンバイ、そしてプネー市というところを中心に訪問をさせていただきました。

 先ほどの資料にもありましたけども、サイバーシティーなんかを見てもらうと、IT企業の成長というのは目覚ましい。特に2年空いて5月に行ったときには、もっと肌に感じた次第でございます。

 ぜひ、やはり和歌山にもワーケーションという働き方がちゃんと実証されていますので、こういうことを切り口に、IT企業とのつながりをつくっていただきたいなと思います。

 もう一つ、訪れた期間の中で、訪問中に州の機関の中で動物園の運営と水問題で苦労しているという話も聞きました。こういう話も、特に和歌山県でもお互いにできることがあるんじゃないかなあと思って帰ってきました。ですので、ぜひ検討いただけたらなと思います。

 また、先ほどのスポーツMOUのオンラインでの交流というのがありましたけども、やはり距離というのがありますので、そこの障壁を乗り越えるためには、当然オンラインの活用というのがあるかと思います。

 和歌山県にもeスポーツ協会という、頑張っておられる皆さんがいるので、eスポーツをきっかけに、これも交流の一環としてやっていけたらいいんじゃないかなと思います。

 特に日本のゲームに対する興味なんかも大きいと思うので、ぜひこういう切り口をたくさんつくりながら、交流を深化させていただきたいと思います。

 10周年に向けて、県民の皆さんへの意識の醸成というのも大事になるかと思いますので、さらなるマハラシュトラ州との交流の深化、経済浮上の新しい起爆剤としてMOUが更新されますこと、この取組に対して要望しまして、次の質問に移ります。

○議長(尾崎要二君) 谷口和樹君。

○谷口和樹君 大項目二つ目の質問に入ります。

 コロナ禍を経験しての和歌山県の医療体制について、一つ目、地域医療構想の見直しについて質問をさせていただきます。

 超高齢化社会にも耐え得る医療提供体制構築を目標に、2014年、医療介護総合確保推進法によって制度化された地域医療構想は、2次医療圏を基本に設定した構想区域単位で、将来の人口推計を基に、2025年の医療需要と必要となる病床数(病床の必要量)を高度急性期、急性期、回復期、慢性期の四つの医療機能ごとに推計し、定めるもので、2016年度中に全ての都道府県で策定されました。

 今般の新型コロナウイルス感染症では病床の不足が問題になりましたが、県が2016年に策定した和歌山県地域医療構想では、2025年までに病床機能の転換を図りながら、約3000床の削減をすることになっています。

 地域医療構想の進捗状況を伺うとともに、新型コロナを受けて、地域医療構想を見直してはどうかという声もあるが、県の考えを福祉保健部長にお聞きいたします。

○議長(尾崎要二君) 福祉保健部長志場紀之君。

  〔志場紀之君、登壇〕

○福祉保健部長(志場紀之君) 地域医療構想は、団塊の世代が75歳以上となる2025年を見据え、将来の医療需要に応じた病床機能の転換や病床数の適正化を通じて、効率的で質の高い医療提供体制を構築するものです。

 県では、これまで2次医療圏単位に全ての病院と地元医師会、市町村などで構成する地域医療構想調整会議を設置し、各医療機関の役割や必要な病床数などについて協議を進めてまいりました。

 その結果、地域医療構想を策定した平成28年から令和3年までの6年間で過剰となっている高度急性期、急性期、慢性期の病床を合わせて2028床減らす一方、不足となっている回復期病床を959床増やし、機能転換を図りながら県全体で1069床の減少につながったところです。

 本県においては、高齢化と人口の減少が続いており、今後も医療ニーズの質や量が変化することが見込まれるため、各医療機関が機能分化と連携を図り、患者の病症に合った適切な医療が提供できるよう、引き続き地域医療構想は進めていく必要があると考えます。

 しかしながら、地域医療構想を策定するために国が推計した医療需要には新興感染症等が考慮されておらず、推計どおりの病床数に収れんされると感染拡大時の病床の不足を招き、地域医療に大きな影響を与えることが懸念されます。

 そのため、県では今年5月、国に対し、今般の新型コロナウイルス感染症への対応で見えてきた課題を踏まえて再検証し、改めて2025年に必要な病床数の考え方を示すように要望したところです。

 県としましては、新型コロナウイルス感染症のような新興感染症等が発生したときには、県民の命を守る医療提供体制に万全を期するとともに、引き続き各医療機関と丁寧に協議し、合意形成を図りながら、県民が住み慣れた地域で安心して適切な医療が受けられる体制づくりに取り組んでまいります。

○議長(尾崎要二君) 谷口和樹君。

  〔谷口和樹君、登壇〕

○谷口和樹君 ありがとうございます。

 続いて、小項目の2ということで、コロナ禍を経験しての看護職員の確保についてお聞きをいたします。

 先般、看護職員の皆様方と懇談する機会がありました。その中で、このコロナ禍において、看護師を募集してもなかなか応募が少ないということを伺いました。

 看護職員は、平常時にもそうですが、コロナ禍など非常時には特に不足すると思います。医療体制を堅持するためには、医療人材を常に確保することは重要なことであると思いますが、看護職員の確保に対する県の取組を福祉保健部長にお聞きをいたします。

○議長(尾崎要二君) 福祉保健部長。

  〔志場紀之君、登壇〕

○福祉保健部長(志場紀之君) コロナ禍において、看護職員の確保は非常に重要であると認識しております。

 本県における看護職員の確保につきましては、養成力確保、就業促進、離職防止、そして資質向上の4本柱を中心に取り組んでいるところです。

 まず、養成力確保については、看護師等学校養成所に対して、教育資材の充実などの運営支援を行っています。

 県では、これまで医療看護系大学の誘致を進めてまいりましたが、今年3月には東京医療保健大学和歌山看護学部の1期生が卒業し、大学関係者、医療機関の尽力により、その約9割が県内に就職したところです。

 加えて、民間の看護師等学校養成所の大学化への支援を行い、今年の4月には、宝塚医療大学和歌山保健医療学部看護学科に1期生56名が入学したところです。

 次に、就業促進の取組は、高校生を対象にした県内医療機関での体験学習や看護師等学校養成所による進路相談会を開催するとともに、看護学生を対象にした就職説明会や返還免除つきの修学資金の貸与を行っています。

 また、離職防止の取組は、働きやすい勤務環境の整備に努める医療機関への支援として、病院内保育所の充実等を図るとともに、離職した看護職員に対して、復職に向けた実務研修などを実施しています。

 さらに、資質向上の取組として、特にコロナ禍においてクローズアップされた感染管理認定看護師の養成や、看護師が実施可能な特定行為の研修支援を行っています。

 今後も、これらの取組を和歌山県看護協会や看護師等学校養成所、医療機関等と協力し、総合的に実施することで、県内全域において医療体制を堅持するため、看護職員の確保に努めてまいります。

○議長(尾崎要二君) 谷口和樹君。

  〔谷口和樹君、登壇〕

○谷口和樹君 ありがとうございます。ぜひ今後も取組をしっかり工夫を凝らして、よい環境をつくっていただけたらなあと思います。よろしくお願いいたします。

 それでは、最後の質問に入ります。三つ目、メタバースの利活用について質問をさせていただきます。

 13年前の2009年、ジェームズ・キャメロン監督の「アバター」という映画が公開されました。歴代興行収入が世界1位で、第82回のアカデミー賞では美術賞、撮影賞、視覚効果賞の3部門を受賞した画期的な視覚効果を世界で絶賛された作品です。本当にたくさんの方が見られたと思います。

 今年の12月には、全5部作の2作目が公開される予定になっていますが、この「アバター」、13年前に多くの皆さんが目にしていると思いますけれども、いわゆるアバターというのはこういうものだというのが全世界で認識された、そういう映画でもあったかと思います。VRや仮想空間のイメージにも直結しているかと思います。

 また、特に世界の若いデジタルネーティブの日本に対する評価の中にも、世界を圧倒する日本アニメのクオリティーというのがあります。

 デジタルがインフラになって、GAFAMやテスラ、世界のIT企業がグローバル企業の中心になって、そういう時代の中で、今回大阪・関西万博というのが開かれます。そういう中で、この間、ホームページのバーチャル大阪というのを拝見しまして、その中にユーチューブでバーチャル大阪にカウントダウンセレモニーというのがあって、これがずっと公開されています。

 1970年開催の万博は、入場者数が1億6421万人ということで記録されたということです。実際このときは、私が小さい頃に聞いたアポロ12号の月の石や人類の英知というような、そういう高揚感というのがあったと思うんですけども、やっぱりちょっと今のユーチューブの動画なんかを見ると、まだまだそこまでいくような高揚感がないのではないかなあと思いながら、今度の大阪・関西万博、特にテクノロジーという分野でちょっと不安やなあと思いながら拝見しました。

 そういう個人的な見解も申し上げながらですけども、はばかりながら、メタバースの活用についてお聞きをしたいと思います。

 今、よくDXという言葉が耳に入ります。県でも取組をされていると思うんです。2月議会でも申し上げましたけれども、DXというのはソフトが新しくなったりPCの性能が上がったり窓口でQR決済ができたり、そのような単なるプロセスのIT化ではなくて、それらも全部ひっくるめて、DXはテクノロジーを使ってどのような便利で楽しい社会をつくるか、そういうビジョンというのが大事だということも申し上げました。

 そういう意味では、メタバースを利用した観光への利活用というのは、大きな可能性を秘めていると考えています。

 少し分かりにくいと申し訳ないので、ちょっと恥ずかしいんですけども、はばかりながら、その活用の一例を示しながらお話をさせていただきたいと思います。

 「メタバース×観光」ということで、仮想空間上に紀三井寺競馬場の復活というのを少し提案してみたいと思います。

 惜しまれつつ廃止された競馬場の姿や歴史を仮想空間内で再現することで、その歴史を保存できるということは当然ですけれども、廃止された競馬場をメタバース内に復活させるということは日本でも初めてなので、少し話題性もあるかと思います。

 資料2枚目を見ていただくとちょっと分かるかと思うんですけども、今も和医大の周辺というのは当時の紀三井寺競馬場の面影を色濃く残していることから、メタバースを呼び水に、元紀三井寺競馬場の史跡巡りという観光コンテンツをつくることができると思います。写真を見ていただくと、当時の形というのがうっすら見えるかと思います。

 さらに、その観光に、史跡巡りという観光にストーリーを乗せていくということはよくあるかと思います。馬のひづめに打つ蹄鉄というのはUの字に飾ると幸せがたまると言われていますので、例えば和医大の病室のドアであったりとか便箋のロゴであったりに蹄鉄のロゴを入れるだけでも、長く愛された元競馬場跡に建てられた大学病院にまつわるストーリーというのを現実の世界に乗せていけます。これは和医大のイメージアップや、診察に訪れた方々を和ませると同時に、和医大周辺の元紀三井寺競馬場跡地の史跡巡りという観光コンテンツから、ストーリーの乗っかった聖地巡りという観光コンテンツを、メタバースを呼び水につくることができます。

 さらに、特にここで申し上げたいのは、実際のゲームユーザーをターゲットにした「×エンターテインメント」であります。

 例えば「Winning Post」「ダービースタリオン」「ウマ娘」などに代表されるオンラインの競走馬育成ゲームシリーズというのがありますけれども、現在の競走馬育成などの育てることを楽しむプログラムというのは、eスポーツが牽引する対戦型に匹敵するジャンルでもあります。

 ゲームエイジ総研の調べを見せていただくと、2021年のスマホの起動時間というのは1日平均約4.5時間で、そのうち30%がアプリゲームのプレー時間だと言われています。昨年リリースの「ウマ娘」は、アクティブユーザーが347万と全体で4位、シミュレーションゲームでは2位、「どうぶつの森」の約3倍のユーザー数を抱えると言われています。和歌山県の人口の4倍以上の方がアクティブでプレーをされているということです。

 おのおのが育成した馬を気持ちよく出走できるよいコンテンツをつくることができれば、仮想空間内の人流を生み出し、情報発信や参加収入、物販収入を得ることもでき、さらに人気が出れば、現実の競馬場跡を巡る聖地巡りに拍車がかかり、地域に経済効果というのを生み出すことになります。また、メタバース内では、名称や認可などの使用料を得るといった方法もあるかと思います。

 せんだって、質問の中でもございました重粒子線治療の質問もございましたけども、こういったメタバースを利活用した収益というのを医大の設備投資に還元する、こういう方法もあるかと思います。もちろん失敗しても、経験値という意味でも、他府県に先んじてやれば取り組む価値は高いのではないかと思います。

 前段はあくまで、はばかりながら私の示す一例でございますけれども、いずれにせよ、今後の自治体運営にはメタバースを意識した組立てが必要かと思います。ぜひ先んじて、和歌山県らしい発想でメタバースを活用して、和歌山県の観光をPRできるような取組が展開できないかなど、メタバースの利活用について、知事のお考えをお聞きします。

○議長(尾崎要二君) 知事。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) メタバースとは、御指摘のようにインターネット上にある多人数参加型の仮想空間でありまして、現実とは異なる仮想空間内に建物などを再現いたしまして、アバターによる交流や物販をはじめ、親和性のあるアニメやゲームなど、様々な分野での活用が検討されていることは了知しているところでございます。

 一方で、和歌山県の観光は、高野山・熊野を中心とした世界遺産をはじめ、海・山・川の豊かな自然と人の営みによって培われた歴史と文化が大きな魅力となっております。

 そのため、メタバースという仮想空間内で、和歌山県のこの雄大な自然とか歴史・文化などをどこまで再現できるかというのは、ちょっと未知数かなという気持ちもあります。

 しかしながら、本県では、大阪・関西万博で、VRを使って県の自然や歴史、精神文化を背景とした観光資源について紹介を行おうと予定しているところでございますし、新しい技術を活用した観光PRの取組も考えているところです。

 今のところ私をはじめ我々の想像力ではこの程度でございますけれども、技術進歩と若い人々の想像力は無限でございますので、将来的にはメタバースとかVRの仮想空間での疑似体験技術を活用していくことで、インスタグラムやユーチューブなどに次ぐ新たな観光プロモーションツールの一つとなる可能性はあるものと考えますので、今後、DXを活用した観光戦略を推進していく中で研究してまいりたいと考えております。

○議長(尾崎要二君) 谷口和樹君。

  〔谷口和樹君、登壇〕

○谷口和樹君 御答弁ありがとうございました。横文字も多い中で御答弁をいただきまして、心から感謝申し上げます。

 これからもしっかり勉強しながら、当局の皆さんに、少しでもよい和歌山県をつくっていくために、協力して何かできるように、そういう思いで質問も続けていきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。ありがとうございました。(拍手)

○議長(尾崎要二君) 以上で、谷口和樹君の質問が終了いたしました。

 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。

 この際、暫時休憩いたします。

  午前11時33分休憩

────────────────────

  午後1時0分再開

○議長(尾崎要二君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 35番林 隆一君。

  〔林 隆一君、登壇〕(拍手)

○林 隆一君 皆様、こんにちは。日本維新の会の林隆一でございます。よろしくお願いいたします。

 それでは、議長のお許しをいただきましたので、通告に従い、質問をさせていただきます。

 さて、日本では、少子高齢化が急速に進展した結果、平成20年をピークに総人口は減少に転じており、人口減少時代を迎えております。

 総務省統計局のホームページに掲載されている人口推計によりますと、令和3年10月1日現在で全国の人口は1億2550万2000人となっており、知事が就任された年である平成18年の調査では1億2790万1000人で、234万人減少しております。割合では1.9%減少しているんです。

 本県においては、令和3年10月1日現在で人口91万4000人、同様に、平成18年調査人口102万9000人に比べますと11万5000人減少し、割合では約11%の減少となっております。近畿府県でも、同じ統計で同様の期間を調べますと、滋賀県は139万人が141万1000人と増加しておりますし、奈良県では138万9000人が131万5000人と減少しておりますが、減少率も5%と本県に比べますと低い状況であります。近畿府県の中では、一番和歌山県の減少率が大きくなっています。また、県で発表されていますが、令和4年4月1日現在の推計人口では、90万7000人弱となっておりますので、来年度には90万を割るというような予想が出ております。

 あわせて、本年6月3日に厚生労働省が発表した人口動態統計によれば、15歳から49歳までの女性が一生に産む子供の数を示す合計特殊出生率は全国で1.3となっており、これは、夫婦2人で1人のお子さんしか生まれないということですので、人口減少対策は喫緊の課題であると言える状況でございます。

 この人口減少自体は、日本全体の問題であるため、和歌山県だけでどうこうできる問題ではございませんが、暮らしやすいまちづくりをすることで、本県の人口減少の勢いを少しでも食い止めることができるのではないかというふうに私は考えております。

 今まで、県では、企業誘致や大学など教育機関の誘致など、人口減少対策に寄与する様々な施策を実施されていたことは承知しておりますが、私は、子育て家庭に対する負担の軽減などを行い、暮らしやすさをアピールすることで、昨今の民間企業におけるテレワークの普及状況からすれば、転職することなく移住する方も増えるのではないか、そういうふうに考えています。

 そこで、今回、私は子供・子育て支援に関連して質問をしたいと思っております。

 1点目は、医療費に関する問題です。

 最近の新聞報道等によりますと、東京都では、高校3年生までの子供に対する医療費の無償化を令和5年度から3年間に限り実施するとのことです。これは、誕生から成人まで切れ目なく子育て家庭の負担を軽減することを目的としており、小中学生を対象とした現行の支援制度を参考に、自己負担分から200円を除いた額を都と市区町村が半分ずつ負担するというものでございます。このような療育環境の充実をアピールすることで子育て家庭の呼び込みを図ることも、人口減少対策の一つの方法であると思っております。

 そこで、質問いたします。

 現在、和歌山県内の市町村と県が実施する子供に対する医療費の無償化の状況について、福祉保健部長にお伺いいたします。

○議長(尾崎要二君) ただいまの林隆一君の質問に対する答弁を求めます。

 福祉保健部長志場紀之君。

  〔志場紀之君、登壇〕

○福祉保健部長(志場紀之君) 和歌山県においては、乳幼児の健康の保持増進と子育て世帯の経済的負担の軽減を図り、安心して子供を産み育てることができる環境づくりを推進することを目的とし、特に抵抗力が低く、病気にかかると重症化しやすい小学校就学前の乳幼児を対象とする市町村への補助制度を創設し、所得制限を設けた上で、乳幼児までの部分を支援する制度として市町村へ補助をしているところです。

 なお、市町村では、さらに地域の実情に応じて、全市町村で中学校卒業まで、そのうち一部の市町村では高校卒業まで対象年齢等を拡大して、医療費の自己負担分を助成しております。

○議長(尾崎要二君) 林 隆一君。

  〔林 隆一君、登壇〕

○林 隆一君 御答弁をいただきました。

 市町村や県によって、無償化の取組としていろいろな支援が実施されていることは理解いたしました。しかしながら、県内の市町村は財政規模などの違いがあり、市町村長の思う十分な施策が実施できないということも考えられております。

 そこで、次の質問をいたします。

 県内の全市町村が高校生まで医療費の無償化ができるよう、東京都のように県が補助などにより助けることはできないのでしょうか、福祉保健部長、お伺いいたします。

○議長(尾崎要二君) 福祉保健部長。

  〔志場紀之君、登壇〕

○福祉保健部長(志場紀之君) 県としては、各市町村が現在実施している小学校入学以降の児童への医療費助成は、市町村がそれぞれの地域の実情に応じて施策の特色を出すために実施しているものと考えているため、現行の就学前の乳幼児を対象とした医療費助成制度を引き続き行っていきたいと考えております。

 なお、令和4年4月1日現在、子供の通院治療に対する都道府県の助成状況は、小学校入学前が26道府県であり、小学校入学以降は21都府県にとどまっております。

○議長(尾崎要二君) 林 隆一君。

  〔林 隆一君、登壇〕

○林 隆一君 御答弁いただきました。

 市町村間で財政規模は異なるのと同様に、東京都と和歌山県でもその規模は異なり、東京都と同じ施策を実施することは難しいかと思いますが、同じ水準のことをしていかないと、これからの時代、選ばれるまちにはならないのではないか、そういうふうに私は思っております。

 次は、学校給食に関する問題です。

 学校給食は、学校給食法により定められ、公布された昭和29年当時、戦後の食糧難ということもあり、学校給食法第2条では学校給食の目標が掲げられており、その中で、「適切な栄養の摂取による健康の保持増進を図ること」とされています。また、近年は、食育という観点から、食生活が食に関わる人々の様々な活動に支えられていることについて理解を深め、勤労を重んずる態度を養うことなどの目標が加えられており、私は、子供の学校生活において重要なものであると考えております。

 また、学校給食の経費のうち、食材費などは一般的に保護者の負担とされており、月額4000円から5000円であると聞いております。これも年間で考えますと約5万円の費用となり、子育て家庭にとっては一定の負担となっているものと思います。

 私は、小中学校の教科書が無償であるのと同様に、食育という教育の観点から考えれば、学校給食を無償化する妥当性は十分にあると思います。大阪市では、新型コロナウイルスの終息が見通せない中、経済的影響を受けた保護者等の負担軽減として、全児童生徒の学校給食費の無償化を継続されておりますし、他府県においても、一部の市町村が無償化を実施していることは報道を通じて耳にしております。

 そこで、質問いたします。

 小中学校における給食費の無償化について、県内の市町村の状況と県の対応について、教育長にお伺いいたします。

○議長(尾崎要二君) 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 学校給食は、設置者である市町村が実施するものであり、給食費の無償化は、各地域の実情や保護者等の要望に応じて市町村が施策として行っています。現在、全ての小中学校を対象に給食費の無償化に取り組んでいるのは10市町村です。また、一部を無償化しているのは、中学生のみが1町、18歳未満の第3子以降のみが4市町でございます。こうした状況等、必要な情報を市町村に提供してまいります。

 議員から御指摘のありました大阪市の無償化は承知していますが、大阪府の無償化は行っていないというふうに承知しています。(「はい、教育長。議長。失礼いたしました」と呼ぶ者あり)

○議長(尾崎要二君) 林 隆一君。

  〔林 隆一君、登壇〕

○林 隆一君 失礼いたしました。御答弁いただきました。

 市町村長によっては、給食費の無償化を実施したいものの、財源がなく実施できないというような声を聞くことがあります。県当局におかれましては、設置者である市町村の声にも耳を傾けていただきたいと思っております。

 次は、子供食堂に関する問題でございます。

 先日、私は、子供食堂を主催するNPO法人の方と話をする機会がありました。新型コロナウイルス感染症の感染拡大などもあり、この2年間は活動を休止されていたとのことです。やっと最近、活動を再開したということでございました。話の中で、子供食堂の運営は少しの料金と寄附などで賄われており、調理の方などはほとんどがボランティアで、本来であれば交通費程度はお支払いしたいところですが、それもままならない状況だということでございました。

 県のホームページを見ますと、和歌山市を中心に40を超える子供食堂があり、曜日と時間を決めて事前登録制など、運営されており、料金も子供は無料や100円程度、大人でも100円から500円程度しか徴収していない状況であることが分かりました。

 子供食堂は、全ての子供たちが安心して地域の大人と関わり、社会性を育む場として食事を提供し、学習支援や地域交流の拠点となる子供の居場所を身近な地域において提供するものであり、重要な役割があると私は思っております。

 そんな中、最近、新型コロナウイルスの感染拡大やロシアのウクライナ侵攻などにより、食材価格が高騰していると言われております。先ほどのNPO法人の方も、やはり食材費が高くなっているということで、運営に大きな影響を与えていると、そういうふうにおっしゃっておりました。

 そこで、質問いたします。

 子供食堂の運営に対する県の支援策はどのようになっているのでしょうか、福祉保健部長にお伺いいたします。

○議長(尾崎要二君) 福祉保健部長。

  〔志場紀之君、登壇〕

○福祉保健部長(志場紀之君) 県では、平成28年度から、子供食堂の立ち上げ支援として新規開設に係る備品購入等の費用を補助するとともに、令和2年度からは、食事の場所の提供だけでなく、学習支援や地域交流の拠点となる子供の居場所としての機能が最大限発揮できるよう取組に必要な経費の補助を行うなど、支援してまいりました。

 さらに、今年度から、子供食堂に係る総合相談窓口を設置し、開設時や運営に伴う相談に応じるとともに、必要に応じて子供食堂にコーディネーターを派遣し、役場など地域の関係機関との顔つなぎやノウハウの伝授など、丁寧に支援していくこととしております。

 また、議員御指摘のとおり、食材費やボランティアの確保等の負担が大きいため、子供食堂の運営が厳しいということは、かねてより運営者の方々から聞いております。そのため、県では、食材を提供していただける企業や福祉活動を行う住民や団体とつながりのある社会福祉協議会等と子供食堂の連携を強化するため、ネットワークを構築し、食材や人材面での支援の体制をつくってまいります。

 このような取組については、県ホームページの子ども未来課のページで広報しているところであり、子供食堂の運営者に対しては個別に情報提供するなど、周知を行っております。

 加えて、ボランティアや食材の提供者として多くの方に子供食堂の活動へ参画いただけるよう、今後は、市町村等の窓口にチラシを配置するとともに、県民の友等、あらゆる機会を通じて広く周知してまいります。

○議長(尾崎要二君) 林 隆一君。

  〔林 隆一君、登壇〕

○林 隆一君 御答弁いただきました。

 よい取組であると私は思っております。しかしながら、NPO法人の方は、私と話した際には県の新政策に関する話をしておりませんでした。また、食材に関しては、需要と供給の関係などから、農家の方が野菜などを廃棄しているというニュースなどを見たりしております。

 私は、この取組を成功させるためにも、子供食堂を運営されている方やより多くの事業者の方に向けてしっかり広報していただき、皆さん、多くの方に参画していただくことでネットワークを充実させることが重要であると、そういうふうに私は思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 私は、ここまで子供・子育てに関連した質問をしてまいりました。先ほども申し上げましたとおり、本県の人口減少の勢いを少しでも食い止めるために、子育て家庭の支援を行い、選ばれるまちになるよう施策を実施することが必要であるというふうに考えております。東京都などの大都市に比べて、財政力などに違いがあることは分かっておりますが、水準を合わせていかないと、ますます人口減少は進んでしまうのではないでしょうか。今回質問いたしました項目などと併せて、子育て家庭から選ばれるような住みやすいまちになるよう、総合的に施策を検討していただきますようお願いして、次の質問に移ります。

 次は、今般、マスコミでも連日取り上げられている日高川町にある和歌山南陵高等学校の問題を受けての質問でございます。

 和歌山南稜高等学校の様々な問題については、既に先輩・同僚議員がこの件に関して質問をされていますので、少し角度を変えてお伺いしたいと思っております。

 マスコミの報道によりますと、和歌山南陵高等学校において、教員への給与の未払いのため授業が実施されず、1日ではありますが、生徒たちはやむなく自習をしたということであります。

 そもそも私立学校とは、公立のように自治体の財源により設置されるものではなく、私人の寄附等を財源に学校が設置されていることから、独自の校風や建学の精神が強調されたり、所轄庁による規制ができるだけ制限されていることも承知しております。

 しかしながら、今回のように先生がストライキを行い、生徒が不利益を被るような事態が起こった以上、看過することはできないというふうに思っております。設置認可の段階で厳格な審査をしていれば、このようなことはなかったとも思っております。

 そこで、質問いたします。

 今回の和歌山南陵高等学校のような私立学校を認可するに当たり、和歌山県ではどのような手続や審査をされているのでしょうか、企画部長、お願いいたします。

○議長(尾崎要二君) 企画部長長尾尚佳君。

  〔長尾尚佳君、登壇〕

○企画部長(長尾尚佳君) 高等学校の設置については、文部科学省が定める高等学校設置基準、その他学校教育法等関連法令について基準を満たす必要があります。

 県では、和歌山県私立小学校、中学校及び高等学校の設置認可等に関する審査基準を定め、その基準に沿って、生徒数、学級数などの規模、教員の構成、施設や設備、資産などの状況を確認し、設置認可に関する法令等の基準に合致しているかを審査しております。

 また、より厳格な審査をするため、まず、学校設置の認可に係る計画書を事前に提出させ、これを審査し、その承認後、設置認可のための申請書を提出することとしています。さらに、学識経験者等で構成される和歌山県私立学校審議会の諮問を経て、認可の可否について知事が判断することとなっております。

○議長(尾崎要二君) 林 隆一君。

  〔林 隆一君、登壇〕

○林 隆一君 御答弁いただきました。

 認可の制度については分かりました。しかし、この認可制度により県が認可していたにもかかわらず、今回のように経営悪化となってしまったわけであります。県が認可している学校だから安心して学校に入学したはずなのに、和歌山南陵高等学校の在校生は、現在、大変不安な思いをしているのでないかというふうに私は思っております。文部科学大臣も今回の件を受け、「学校法人南陵学園におきましては、法人運営に混乱を生じていることはもう明らかでございます。大変遺憾なことであります」というコメントをされております。このような事態になってしまい、結局困るのは在校生たちであります。

 そこで、質問いたします。

 生徒さんたちをこれ以上不安にさせないためにも、認可した県が経営不安定な私立学校に対して支援する制度はないのでしょうか、企画部長に答弁をお願いいたします。

○議長(尾崎要二君) 企画部長。

  〔長尾尚佳君、登壇〕

○企画部長(長尾尚佳君) さきに議員が述べられたとおり、私立学校とは、私人の寄附財産等により設立されたものであるため、その運営を自律的に行うこととなっております。また、私立学校振興助成法第3条では、自主的にその財政基盤の強化を図ることが学校法人の責務であるとも規定されています。

 現在、県では、私立学校の経常的経費である専任教員給与費、教育に必要な教育研究費及び教育管理費を補助対象に、和歌山県私立高等学校等経常費補助金として、私立学校に在籍する生徒に係る修学上の経済的負担の軽減を図るとともに、私立学校の経営の健全性を高めるための助成を行っており、今回のような経営悪化に伴う事案についてのさらなる支援制度はございません。

○議長(尾崎要二君) 林 隆一君。

  〔林 隆一君、登壇〕

○林 隆一君 御答弁をいただきました。

 今回のような事態に対する支援制度はないということは分かりました。少子化の時代でもあるのですから、これから私立学校を安定的に経営していくというところは大変なことであるというふうに思っております。今後も、このような学校が増えていくことも予想されます。

 今、国では、学校法人における円滑な業務の執行、幅広い関係者の意見を反映、逸脱した業務執行の防止・是正を図るため、運営状況をチェックする機能の強化等に向けた私立学校法の改正についての議論がなされていると、そういうふうに聞いております。私も、今後の国の動向を注視したいと思っております。

 最後に、県におかれましては、子供たちが安心して学校生活を送ることができ、勉強やクラブ活動に励める場であり続けるよう、一層の御尽力をしていただきたいと思いますとともに、私立学校の設置認可の審査については、現時点で申請のある学校やこれから申請のあるものについては、南陵高等学校のようなことが起こらないように厳格な審査をしていただきますことを強く要望し、私の一般質問を終了いたします。御清聴いただき、ありがとうございました。(拍手)

○議長(尾崎要二君) 以上で、林隆一君の質問が終了いたしました。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 22番谷 洋一君。

  〔谷 洋一君、登壇〕(拍手)

○谷 洋一君 令和4年6月定例会、最後の質問者としての機会を与えていただきました先輩・同僚議員各位に感謝を申し上げます。

 議員生活27年で、初めて最終での登壇となります。その重責を感じつつ、質問をさせていただきますので、お付き合いのほどよろしくお願いいたします。

 さて、今年の世界情勢において、常にニュースとして見ない日がないのがウクライナの状況です。2月にロシアがウクライナへの侵攻を開始して以降、日々悲惨な状況が飛び込んできます。歴史的、政治的な背景があるとしても、国家が国家に対し、世界の反対を無視し、国内の世論を抑え込み、軍事侵攻を行うことは信じ難いことであり、決して許される行為ではありません。改めてウクライナに早期に平和が訪れることを願うばかりです。なぜロシアの行動は止まらないのかということを考えますと、いかに信頼できる公正なリーダーを持つことが重要かということを実感させられます。

 それでは、議長のお許しをいただきましたので、通告に従い、2点質問をさせていただきます。

 まずは1点目、在外県人とのつながりについてをお尋ねします。

 私は、これまで、議員活動において在外県人との交流を重要な役目の一つとし、様々な行事に関わるなど、懸命に取り組んでまいりました。海外で努力を重ねられた先人たちに対し敬意を表するとともに、その交流関係を後世につないでいくため、我々県議会は、歴代の知事らと共に、在外県人会の周年式典などにこれまで積極的に参加してまいりました。アメリカ、カナダ、ブラジル、アルゼンチン、メキシコ、ペルーなど、訪れた回数でいえば数え切れないほどになります。特に、仁坂知事が就任してからは、滞在日程を十分に確保し、現地で和歌山県のPRを併せて実施するなど、和歌山と現地を結びつける積極的な取組が行われております。

 しかしながら、こうした交流を重ねるものの、月日の流れとともに、在外県人会の構成メンバーは、移民者本人から2世、3世、4世へと世代がどんどん移り変わっています。また、県人会に参加するメンバーの高齢化も進んでおり、交流関係の継続には様々な困難が生じています。

 また、これらは、現在県人会組織が存在する地域に限ったことではありません。例えばアメリカのハワイ州などは、平成14年に和歌山県人会が解散しており、本県にルーツのある方を探していくことすら困難な状況となっています。私も、平成29年と平成30年の2度にわたりハワイを訪問し、様々な関係者に協力をいただき、交流再開の糸口を探すべく取り組みましたが、成果を得ることはできませんでした。

 ハワイをはじめ、この在外県人会とのつながりは本県にとって貴重な財産であり、このつながりを維持し、将来の和歌山県民にしっかりと引き継いでいくことは非常に大切なことだと考えておりますが、年々難しい状況となっております。こういった地域の方々とのつながりの維持については、県国際課の職員の方々が地道に努力を続けていただいており、引き続き御尽力をお願いいたします。

 そのような中、令和元年11月に本県で初めて和歌山県人会世界大会が開催されました。海外や国内の県人会からたくさんの方々が和歌山県に集いました。和歌山県民文化会館において記念式典や記念コンサートが盛大に開催され、その後、ホテルを会場に歓迎レセプションも開催されました。新型コロナウイルスの影響を受ける前のことであり、本当に大勢の人でにぎわった盛大な式典やレセプションでありました。

 翌日からは、ふるさと巡りツアーとして、在外県人会の方々に三つのコースに分かれていただき、県内各地を訪問していただきました。

 訪れた県内の各地域では、縁故者や地域の住民、国際交流団体などの皆さんから盛大な歓迎を受けられ、交流を深めていただくとともに、県内の自然や名所旧跡を見ていただき、ふるさと和歌山を体験していただきました。また、県内の高等学校等において、次世代を担う県内の青少年に移民の歴史、世界で暮らす和歌山県人の話などを知ってもらう貴重な時間をつくることができました。我々県議会としても、各議員がこれらの行程に加わり、おもてなしをする側として積極的に参画させていただきました。

 この和歌山県人会世界大会が開催された後、参加いただいた海外県人会の方々や地域で受入れを行い、おもてなしを行った県内の方々からの感想はいずれも好評であり、この県人会世界大会が果たした役割は非常に大きかったと思います。

 今後、世界の和歌山県人とのつながりを維持していくことが難しくなっていく中、再びこのような催しを行うことは、世界の和歌山県人とのつながりを維持し、世界の和歌山県人同士のつながりを広げ、また、世界中にいる和歌山県ゆかりの方々にメッセージを発信し、新たなつながりを生み出すことにもつながると思います。

 県人会世界大会を先駆けて実施している沖縄県では、海外から7000人以上のウチナーンチュが沖縄県を訪れるなど、40万人以上を動員する盛大な規模で開催され、在外沖縄県人と沖縄県民の双方にとって欠かせないイベントになっているように思います。

 本県の県人会世界大会は、沖縄の大会とは規模こそ異なりますが、参加した方々の気持ちはそれに勝るとも劣らない、ふるさと和歌山への強い気持ちがあふれていたように思います。このような大会を大切にし、末永く続けていくことは、世界中の和歌山県人をつなげる心のふるさとをつくるものだと思います。

 和歌山県として、この大会を継続し、育てていくことが後世に向けて必要なことだと私は考えます。これまでも、在外県人との交流に積極的に取り組んでこられた仁坂知事に、県人会世界大会の今後の開催に対する思いをお尋ねします。

○議長(尾崎要二君) ただいまの谷洋一君の質問に対する答弁を求めます。

 知事仁坂吉伸君。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) ふるさと和歌山から海外に移住した方々は、言語や風習、文化が異なる異国の地で幾多の困難を乗り越え、ゼロから生活の基盤をつくり上げ、日本人が持つ勤勉さ、創意工夫、誠実さで信頼を勝ち取り、今日の繁栄を築いておられます。

 海外で努力を重ねてこられた方々とのつながりは重要であると考え、これまで在外県人会とは、周年事業に参加するなど交流を続けてまいりました。加えて、在外県人の方々がふるさと和歌山に一堂に会し、我々県民が異国異郷の地で活躍された方々の御労苦に敬意を表するとともに、その歴史と思いを理解し、共有する機会をつくりたいと考え、令和元年に和歌山県人会世界大会を初めて開催したところでございます。

 大会期間中は、議員の皆様をはじめ地元の方々が県内各地で温かく迎えていただいたおかげで、多くの参加者や県民に喜んでいただき、成功裏に終えることができました。

 この大会を世界中の和歌山県人が集い、郷土への誇りを高める大会として育てるべく、およそ5年ごとに開催することとし、第2回和歌山県人会世界大会については、来年10月に開催を予定しているところでございます。第2回大会については、1人でも多くの和歌山県ゆかりの方々に参加いただき、県民と在外県人とのつながりが一層広がる契機となるよう、前回大会で得た経験や教訓も生かしながら、しっかりと準備を進めてまいりたいと考えております。

○議長(尾崎要二君) 谷 洋一君。

  〔谷 洋一君、登壇〕

○谷 洋一君 御答弁いただき、ありがとうございました。

 その後のことなんですが、答弁いただいた後で、前回の県人会世界大会に参加されたお二人の方の話をさせていただきます。

 1人目は、ブラジル和歌山県人会の顧問を長らく務められたブラジル和歌山県人会の中心的人物の下本八郎さんです。下本さんは、日系2世で、御両親が那智勝浦町出身の方になります。世界大会の際、ふるさと巡りツアーで地元の那智勝浦町を訪問し、御両親の地元の方々に、ブラジルに渡って成功することができたことを知ってもらうことができたと大変喜んでおられました。

 2人目は、ペルー和歌山県人会の初代会長も務められましたアルフレッド・サカタさんです。サカタさんも日系2世で、父親は新宮市の御出身になります。平成30年に開催された和歌山県人ペルー移住110周年記念式典の開催に際しましては、大変尽力された方です。県人会世界大会での来県を心から楽しみにしてくれた1人で、宿舎で開催した懇親会で、余興のゲームをすごく楽しんでおられたのが印象的でした。

 このお二人が、前回の世界大会の後、お亡くなりになられております。それぞれの県人会において長年御活躍いただいた名物とも言うべきお二人であり、次の世界大会を最も楽しみにしてくれていたお二人だと思います。心から御冥福をお祈りするところでございます。

 各県人会は、こういった長らく牽引してこられた方々から次なる世代へと移行が進んでいるところであり、この県人会世界大会に期待する思いは、私にとっても、また県人会の方々にとっても非常に大きなものであり、今後の開催を楽しみにしているところであります。県当局の皆様には、引き続き御尽力のほどよろしくお願いいたします。

 議長。

○議長(尾崎要二君) 谷 洋一君。

○谷 洋一君 続けて、2項目めに入ってまいります。

 2点目の4期16年の県政運営に入らせていただきます。

 本年12月、仁坂知事の4期目の任期が満了を迎えます。いよいよあと半年を残すばかりとなりました。これまでの仁坂県政を見続けてきた議員として、ここで仁坂県政の4期16年を振り返ってみたいと思います。

 前知事が官製談合で逮捕されるという県政史上にない未曽有の混乱の中、勇気を持って出馬を決意し、平成18年12月に仁坂県政の1期目がスタートしました。混乱する県政において知事は、真っ先に公共調達制度の改革を断行し、失われた県政の信頼回復に努められたことがその第一歩となりました。

 2期目は、災害への対応力を発揮した4年間でした。2期目が始まってすぐの平成23年2月に県内で鳥インフルエンザが発生し、3月には、あの東日本大震災が発生しました。そして、この年の9月、我々にとって忘れることのできない紀伊半島大水害が発生しました。私の住む那智勝浦町をはじめ県内全域で甚大な被害が発生し、61名もの犠牲者が出た未曽有の大水害でした。

 このとき、知事は、自ら陣頭指揮に当たり、官僚としての経験、政治家としての手腕を遺憾なく発揮し、驚異的な速さで県内の復旧・復興を成し遂げたことは、特筆すべき成果であったと思います。

 3期目は、県民に夢と感動を与えた4年間でした。平成27年に半世紀ぶりとなる紀の国わかやま国体を開催し、県民みんなで勝ち取った天皇杯という栄誉はもとより、その後の紀の国わかやま大会を含めた県民挙げてのおもてなしは、県民が一丸となったすばらしい大会となり、記録と記憶に残る大会となりました。

 そして、現在の4期目は、その大半が新型コロナウイルス感染症への対策に明け暮れたと言っても過言ではありません。令和2年2月に県内で発生した病院でのクラスターは国内初の事象であり、その対応は和歌山モデルとマスコミで大きく取り上げられたことは記憶に新しいところです。このことは、アメリカのワシントン・ポスト紙にも取り上げられ、まさに世界が注目するリーダーの姿であったと思います。

 その後も、保健医療行政を基軸とした対応により、早期発見・早期隔離、徹底した行動履歴の調査、保健所の統合ネットワークシステムの4本を柱として、感染拡大防止に徹底して取り組み、県民生活や県経済への影響を最小限にするため、その制限を極力小さくするといった行政スタンスは、県内外で高く評価されました。

 そのような中、希望をもたらす施策にも取り組まれ、串本への日本初の民間ロケット発射場の誘致に成功し、今年中に第1号が打ち上げられることが決定しています。また、和歌山市内に五つの大学、学部の誘致を果たし、県外の大学への進学率ナンバーワンという状況を42年ぶりに打破し、町なかににぎわいを呼び戻しつつあることは、現在のコロナ禍において明るい話題となっています。

 そのほかにも、道路インフラの整備を県勢発展の基礎に据え、4期16年を通じて一貫して取り組んできた実績は、途中の民主党政権誕生による停滞があったものの、紀伊半島一周高速道路実現への見通しがつき、議員生活の悲願としてきた私にとっても感慨深いものがあります。

 この道路インフラの整備が進むにつれ、力強く取り組んできた観光振興策の効果が発揮され、コロナ前までの観光客数は増加の一途をたどっておりました。また、海外メディアからの注目も飛躍的に向上し、インバウンド観光においても十分に成果を発揮されました。あわせて、企業誘致にも戦略的に取り組み、これまで約270社もの誘致に成功するなど、県内での働く場の確保にも尽力されています。

 また、県民の命を守る政策にも計画的に取り組んでおり、過疎地の多い本県の地域医療体制を守るため、県立医科大学の入学定員を大幅に増加させたほか、産婦人科などへの医師の確保にも対策を講じておられます。加えて、東日本大震災や紀伊半島大水害の経験を踏まえ、県内の防災・減災対策も着実に進んでいます。

 さらに、就任以来、全国植樹祭、紀の国わかやま国体、紀の国わかやま大会、ねんりんピックや紀の国わかやま文化祭などのビッグイベントを立て続けに本県で引き受け、これらを県民総参加の下、成功裏に終えることができたことも、仁坂知事だからこそできた大きな功績ではないでしょうか。

 一方では、県政にはまだまだ課題が山積しているのも事実であります。人口減少や少子高齢化に歯止めがかからない中、和歌山県の衰退を何とかしてでも食い止めなければなりません。また、ENEOSの撤退といった喫緊の課題への対応も欠かせません。そして何より、このポストコロナ時代を乗り越えていくには、新たな潮流を的確に捉え、和歌山を再び浮上させていくスピード感を持った政策の実行が重要となります。

 このような和歌山県の置かれた現下の状況を鑑みたとき、これらの県政を牽引していくリーダーには、どのような資質が求められるのだろうかと考えます。私が考えるには、自分のことを第一に考えるのではなく、何よりも県民の幸せを優先し、真摯に追求する者こそが本県のリーダーにふさわしいのではないかと思います。また、一つ一つの課題を丁寧に解決していく粘り強さや県民の声に耳を傾ける謙虚さといった資質も必要と考えますが、何よりも今、求められるのは、将来の世代の幸福を見据え、公平公正な判断ができ、そして、勇気を持って決断し行動するリーダーこそが県民から強く求められているのではないでしょうか。

 先般より、知事の政治姿勢に関する意見も取り上げられておりましたが、県知事という仕事は、県行政の先頭に立ち、ありとあらゆる分野について常にベストな判断を追い求め続けることにあると思います。しかし、様々な事業を進める中、置かれた条件や環境など、困難な状況にあることも多々あり、場合によっては提案した議案が否決となるようなこともあります。しかし、議案の可否は、決して勝ち負けという形で評価されるべきものではありません。知事の評価というのは、仮にどんな状況にあったとしても、常に県民のためということを考え、懸命に取り組んでいるかどうかという点で評価しなければならないと私は考えます。

 私の元には、「仁坂知事は次もやってくれるんやろ」という県民の声がたくさん届いております。そして、私自身も、今この時代だからこそ、責任を持って仕事ができる仁坂知事に和歌山県政のかじを取ってもらわなければと思っていますし、それ以外ほかに選択肢はないとこの場で申し上げたいと思います。

 そこで、仁坂知事にお伺いします。

 これまで、知事は、記者会見などの場において、自らの進退は、県議会の場において、議員の質問に対し答えるというのが和歌山県のよき伝統であると発言されてきました。県政の両輪を担う知事と議会という関係の下、私もこれは本当に和歌山県のよき伝統だと思います。

 冒頭にも申し上げましたが、知事の4期目の任期もあと半年となっています。これまで議会の場で知事にこのことを聞く機会がありませんでしたが、ここでお聞きしたいと思います。来る次の知事選において、5期目を目指して出馬し、引き続き県政を担う意思があるのかどうか、この議場において、知事の考えを直接お聞かせ願いたいと思います。

○議長(尾崎要二君) 知事。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 尊敬する谷洋一議員から、私の16年間にわたる治績につき多大の評価をいただいたことは、身に余る光栄であります。また、和歌山県政を担う車の両輪である県議会において、自らの出処進退をお聞きいただき、開陳申し上げることをお許しいただいたことに深く感謝を申し上げます。

 就任以来、私は、いささか退潮の見えておりました県勢、県の勢いを盛り返すべく、自らの全てをかけて県知事として県行政に没頭してまいりました。その間、御指摘くださったような成果を上げることもできましたが、それはひとえに議会のお働きがあり、私についてきてくれた県職員の献身があり、そして、県下30市町村の首長さんをはじめ、県民の方々が必死で努力をされた結果だと思っております。

 一方、和歌山県は、数々の難問もあり、まだまだ手放しで楽観できる状態ではありません。そのような和歌山県を引き続き引っ張って難問を解決し、県を発展軌道に乗せるため、今後も県政を担ってくれという声が山のように寄せられていました。また、最近の和歌山県の政界の動き、政局に関する不協和音によって、この声はますます高まってきております。もちろん一方では、私が退陣したほうがよいという意見と動きがあることも、私はよく承知しております。

 私としては、このような状況下、特に真摯な続投の御要請の前に心から悩みました。そして、悩み抜いた結果、ここに、次のような理由から、私の知事としての務めは今任期限りとさせていただきたいという希望を申し上げたいと思います。

 その第1の理由は、多選はあまり好ましくないということであります。

 今年の初め頃からずっと、多選を理由に、仁坂知事の次期選挙は応援をすべきではないという動きがあることはよく承知しています。実は、この多選は好ましいとは思わないという意見は、私自身が記者会見その他で折に触れて申し上げてきたことであります。多選は、ともすればマンネリ化を呼び、行政への想像力が失われるリスクがあります。もちろん、だからといって、いいかげんなリーダーと交代したらもっと事態が悪くなります。

 したがって、和歌山県のためには引き続き頑張ったほうがいいかなと考えまして、マンネリに陥らないように身を引き締めて、この16年間、我が身にむちを打って重責を背負ってまいりました。今年の春先くらいまでは、こういう考え方に基づいて、「これからもずっと知事をしてくれよ」と言われる方々には、「はい、頑張ります」と答えてまいりました。しかし、自分だけが県政を担える存在だと考えることは不遜だと思うようになりました。

 また、私も選挙の頃は72歳です。まだまだ元気で、現在のところ、365日24時間勤務の知事の激務に耐える自信はありますが、永久にこれが続く保証はありません。仮に、もう一期知事を続けさせていただいたとしたら、その分、このようなリスクは増加します。私が知事にならせていただいたときは、私は56歳でした。国の役人として、いろいろと大変な仕事をやらせてもらい、その分知見も身につけていましたし、政界、官界、財界、学界にもおかげさまでいっぱい人脈ができて、県政に生かすこともできました。後で考えてみると、ちょうどいい時期にならせていただいたと思います。

 全国の同僚知事もかなり若返ってきており、そういうことから、この際、私がそうであったように、ある程度長く知事を続けてもらうこともできる人に後を託したほうが和歌山県のためではないかと思うようになりました。

 第2の理由は、県政界における次のリーダーをめぐる対立であります。

 望むらくは、皆さんが協力して様々な県政の問題を解決していくべきところ、このような対立は県政の円滑な遂行に禍根を残しかねません。ならば、ここは当事者である私が身を引いたほうが、このような対立が解消されることにつながるのではないか、また、私が次期知事選挙に立候補しないと言明することによって、新しい立派な方が積極的に名のりを上げてくれやすくなるのではないか、そのように考えました。

 さらに第3に、大変個人的な理由で申し上げにくいのですが、365日24時間の知事のフルタイムの勤務を続けるのがつらい事情があります。

 私の家内の体調が思わしくありません。もう少しそばにいてやりたいと思う気持ちが、家内の体調の推移とともに募ってまいりました。私の職業生活は異常なほどの忙しい毎日でしたが、家内はその間ずっと私を支え続けてくれ、ある意味、私の犠牲になってくれました。現在の体調を見るにつけ、あと4年この状態でいることは人倫にもとるなあとだんだんと思うようになりました。

 今、辞められたら、和歌山がどうなるのだ、和歌山県民のために知事を続けてくれという恐らく多くの県民の期待に応えられないのは申し訳なく、断腸の思いでありますが、県のリーダーは私に代わるよき人が現れる可能性があるけれども、私の家内にとって夫は私一人しかいないと思うことをどうかお許しいただきたいと思います。

 以上の理由で、私は、12月に行われるであろう次の知事選挙に立候補せず、知事としての仕事はこの4期目の任期限りとしたいとの希望を表明させていただきます。

 次回以降も私に知事を続けるようにと望まれた全ての方々におわびを申し上げるとともに、至らぬ私をサポートしてくださり、共に頑張ってくださった全ての県民の方々に深く感謝を申し上げます。とともに、私などよりもっと優れたすばらしい方が現れ、多くの有力な方々がこぞって推し、そして、私が最も敬愛をする賢明な和歌山県民の審判によって、新たな県政の担い手が和歌山県に登場することを望みます。

 とはいえ、私の任期はまだ半年あります。次期選挙に出ないからといって、知事としての神聖な務めに手抜きをすることはありません。難問は山積であります。私は、もとより、自分に有利になるからとか、自分の立場を守るためとか、もっと端的に言うと次の知事選に有利になるからといった自分中心の動機で職務、職責を考えたことはありません。国の役人のときもそうでしたが、知事に就任してからは、自分の職業の客体としての県の将来と県民の幸せのために自分を律してまいりました。その私が、次がないからといって手を抜いているなと言われるようなことはあってはなりません。

 県議会の皆様、どうかこの半年間、変わらぬ御指導、御鞭撻、御批判、御叱責、叱咤激励を賜りますように心からお願い申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

○議長(尾崎要二君) 谷 洋一君。

  〔谷 洋一君、登壇〕

○谷 洋一君 今、知事のお考えを聞かせていただきました。

 知事は、以前から、自身の進退についてはこの議場で話すと言われ、今まさに、ここでその意思を表明されました。これまで議会との信頼関係を重視してこられた仁坂知事らしい表明の形であったと思います。残念ながら、5期目を担っていただくことは難しいということであり、私としても大変残念であり無念でありますが、これも信頼する仁坂知事自身が決めた判断であり、しっかりと受け止めたいと思います。

 しかしながら、任期はまだ続いております。県政は、止まることは許されません。知事におかれましては、任期の最後の日まで、県民のため、将来の県政のため、御尽力賜りますようお願い申し上げ、私の質問といたします。終わります。(拍手)

○議長(尾崎要二君) 以上で、谷洋一君の質問が終了いたしました。

 お諮りいたします。質疑及び一般質問を終結することに御異議ございませんか。

  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(尾崎要二君) 御異議なしと認めます。よって、質疑及び一般質問を終結いたします。

 次に日程第3、議案等の付託について申し上げます。

 お手元に配付しております議案付託表のとおり、議案第76号から議案第89号まで及び知事専決処分報告報第5号は所管の常任委員会に付託いたします。

 お諮りいたします。6月16日及び17日は常任委員会審査のため休会といたしたいと思います。これに御異議ございませんか。

  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○議長(尾崎要二君) 御異議なしと認めます。よって、6月16日及び17日は休会とすることに決定いたしました。

 次会は、6月20日定刻より会議を開きます。

 本日は、これをもって散会いたします。

  午後2時8分散会

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