令和4年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(全文)


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令和4年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号

議事日程 第6号

 令和4年3月9日(水曜日)

 午前10時開議

 第1 議案第1号から議案第17号まで、議案第34号から議案第42号まで、議案第44号から議案第61号まで及び議案第63号から議案第73号まで並びに報第1号及び報第2号(質疑)

 第2 一般質問

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会議に付した事件

 第1 議案第1号から議案第17号まで、議案第34号から議案第42号まで、議案第44号から議案第61号まで及び議案第63号から議案第73号まで並びに報第1号及び報第2号(質疑)

 第2 一般質問

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出席議員(41人)

 1番 鈴木德久

 2番 山家敏宏

 3番 中本浩精

 4番 堀 龍雄

 5番 藤山将材

 7番 井出益弘

 8番 宇治田栄蔵

 9番 北山慎一

 10番 玄素彰人

 11番 中西峰雄

 12番 秋月史成

 13番 森 礼子

 14番 濱口太史

 15番 尾崎要二

 16番 冨安民浩

 17番 川畑哲哉

 18番 玉木久登

 19番 鈴木太雄

 20番 岩田弘彦

 21番 吉井和視

 22番 谷 洋一

 23番 佐藤武治

 24番 岩井弘次

 25番 中 拓哉

 26番 多田純一

 27番 新島 雄

 28番 山下直也

 29番 中西 徹

 30番 谷口和樹

 31番 藤本眞利子

 32番 浦口高典

 33番 山田正彦

 34番 坂本 登

 35番 林 隆一

 36番 楠本文郎

 37番 高田由一

 38番 杉山俊雄

 39番 片桐章浩

 40番 奥村規子

 41番 尾﨑太郎

 42番 長坂隆司

欠席議員(なし)

〔備考〕

 6番 欠員

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説明のため出席した者

 知事         仁坂吉伸

 副知事        下 宏

 理事         田嶋久嗣

 知事室長       赤坂武彦

 危機管理監      細川一也

 総務部長       吉村 顕

 企画部長       横山達伸

 環境生活部長     生駒 享

 福祉保健部長     志場紀之

 商工観光労働部長   寺本雅哉

 農林水産部長     岩本和也

 県土整備部長     安部勝也

 会計管理者      真田 昭

 教育長        宮﨑 泉

 公安委員会委員    中野幸生

 警察本部長      遠藤 剛

 人事委員会委員長   平田健正

 代表監査委員     森田康友

 選挙管理委員会委員長 小濱孝夫

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職務のため出席した事務局職員

 事務局長       出津野孝昭

 次長         中井 寛

 議事課長       山田修平

 議事課副課長     岩井紀生

 議事課課長補佐兼議事班長

            岩﨑 亮

 議事課主任      伊賀顕正

 議事課主査      菅野清久

 議事課主事      松本 悠

 総務課長       須田剛司

 政策調査課長     神川充夫

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  午前10時0分開議

○議長(森 礼子君) これより本日の会議を開きます。

 日程第1、議案第1号から議案第17号まで、議案第34号から議案第42号まで、議案第44号から議案第61号まで及び議案第63号から議案第73号まで並びに報第1号及び報第2号を一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、併せて日程第2、一般質問を行います。

 11番中西峰雄君。

  〔中西峰雄君、登壇〕(拍手)

○中西峰雄君 おはようございます。

 質問の機会をいただきましたけれども、私の質問を始める前に、一言、ロシアとウクライナの問題について触れさせていただきたいと思います。

 2014年のクリミアの併合、そして今回のドネツク、ルガンスク州の一方的独立とその承認、ウクライナ領土への全面的軍事行動は、まさしく力による現状の変更であり、明白な国際法違反、国際秩序を破壊する侵略行為であり、断じて許されてはなりません。

 戦争ほどむごいものはございません。この戦争によって命を落とし、あるいは傷つくウクライナ・ロシア双方の兵士たち、そして、ウクライナ市民を思うとき、誠に断腸の思いを禁じ得ません。

 プーチンは、ウクライナからのネオナチ勢力の排除を軍事行動の理由としていますが、逆に彼こそが21世紀に再来したヒトラーと言わなければなりません。

 私たち自由主義国家は団結して、うそにまみれ残虐非道なプーチンの試みを打ち砕かなければなりません。

 圧倒的に軍事力に勝るロシアに対し、ひるむことなく立ち向かっているゼレンスキー大統領、ウクライナ政府とウクライナ軍兵士、そしてウクライナ市民に心からの称賛と尊敬の念を抱くとともに、日本政府が西側諸国と共に、ウクライナに対してできる限りの支援をすることを期待して、私のウクライナへの連帯の表明に代えさせていただきます。

 それでは、質問に入ります。

 1番、集住率と立地適正化計画、まちづくりについてであります。

 人口減少が進んでおります。県では、長期総合計画で2060年の人口を、何もしなければ約50万人と予想される人口を、政策努力で70万人程度にとどめることを目標としています。策定後の人口を見ると、期待よりもかなり大きな右肩下がりとなっています。人口減少率は全国でも高い数字となっております。

 今後、人口減少は幾ら努力しても避けられない所与の条件であり、人口減少が避けられないとしても、これから私たちが考えなければならないのは、いかにうまく縮むかだと思います。人が減っても一人一人が豊かに暮らしていける社会をどうやって構築するかだと思います。

 一定規模の人口なしでは生活に必要な公的サービスのみならず、医療や商業などの民間サービスも成り立たなくなります。それを考えると、生活に必要な財の提供が成り立ち得る一定規模の人口のある地域づくりが求められます。いわゆるコンパクトシティーも同じです。

 そこで質問ですが、本年1月8日付日本経済新聞に集住率についての記事が掲載されました。この集住率についてお尋ねしてみたいと思います。

 私もそれを読むまで集住率という言葉さえも知らなかったのですが、総務省の国勢調査結果、正確には国勢調査人口等基本集計を使って新聞社が算出した指標だそうです。何かといいますと、1平方キロメートル当たり4000人以上等という条件を満たす人口集中地区に住む人口を全域の人口で割って算出するものです。4000人以上の地区に住んでいる人口の合計が全人口に占める割合はいかほどかというものです。当然のことながら、東京など大都市のあるところは高くなりますし、和歌山県のような地方県は低くなります。それはそうなんですけれども、この記事では、2010年と2020年を比較した場合に、集住率がどう変化したかという一覧が載せられています。

 お手元に配付した資料を御覧いただきたいのですが、和歌山県の集住率は2010年と比べて1.7ポイント低下し、集住率のポイントの増減が全国最下位となっています。この全国最下位というのはかなり気になることでして、それでこの質問をしてみようかなというふうに思いました。

 この記事、記事は一覧の表しかないんですけども、その記事の中に、もう一点興味深い記述がありました。それは、集住率の向上と経済成長の伸び率が連動する傾向があるという記述です。実際、集住率が向上したトップ3の滋賀県、宮城県、佐賀県の実質県内総生産の伸び率が、全国平均を上回って10%台を記録したということであります。これだけで集住率の向上が経済成長に結びつくとは言い切れませんけれども、経済的にもプラス効果が期待できるのではないかと思われます。

 さて、持続可能な都市づくりのためには、住民の居住地を集中させる集住が必要というのは分かるんですけども、果たしてこの集住率という新聞社の指標が、和歌山県のような地方県にとって、まちづくりを考える指標として妥当なのかとも思います。1平方キロメートルに4000人の居住というのはかなりの密集度です。人口が減少する中でも一人一人が豊かな生活を持続するために、これぐらいあればいいなという規模感かなというふうに推測はするんですけども、実際和歌山県を見たときに、それだけの集住を実現し、今後も集住率を高められる市町が果たしてどれだけあるのかというふうにも思います。

 県として、新聞社のいう集住率という指標についてどう考えるか、持続可能なまちづくりについて、どれぐらいの規模感を持っておられるのか。また、2010年から2020年までの集住率のポイントの増減が全国最下位となった理由についてお尋ねしたいと思います。答弁よろしくお願いいたします。

○議長(森 礼子君) ただいまの中西峰雄君の質問に対する答弁を求めます。

 県土整備部長安部勝也君。

  〔安部勝也君、登壇〕

○県土整備部長(安部勝也君) 県は、長期総合計画において、にぎわいのあるコンパクトな都市づくりを掲げ、医療や福祉、教育文化等の都市機能の集約を図るなど、市町と協力して都市構造の再構築を進めています。

 議員御指摘の集住率は、人口集中地区、いわゆるDIDにおける居住人口の集約度を示す指標ですが、そもそも本県には人口集中地区が7市町に9地区しかなく、都市部のごく限られた地域だけを評価した指標にすぎないと考えます。

 次に、人口集中地区の人口密度は1平方キロメートル当たり4000人以上とされていますが、本県の場合、持続可能なまちづくりには何人以上が適正かという、いわゆる規模感の御質問については、都市機能の集約は、地理条件や産業構造、歴史的な経緯等、地域の実情を踏まえて検討すべきものと考えますので、数字で一律に申し上げることは困難ではないかと考えます。

 最後に、集住率の増減が全国最下位になったことに対する評価については、確かに10年前と比較すると1.7ポイントの減ですが、5年前と比較すると0.5ポイントの増になっているなど、サンプル数が少ないがゆえに評価時点が変わることで値も大きくぶれるものと認識しています。

○議長(森 礼子君) 中西峰雄君。

  〔中西峰雄君、登壇〕

○中西峰雄君 確かに集住率、和歌山県ではなかなか適切な指標とは言い難いのかもしれません。

 では、和歌山県の全国の順位をちょっと申し上げますと、2010年で全国39位、2020年で全国37位でした。だから、人口の多さの順番は大体それぐらいかなというふうに思います。

 じゃ、次に、立地適正化計画についてお尋ねいたします。

 次に、規模感は別といたしましても、都市への居住の集約というものを進めていかなければならないわけですけども、県としては、従来まちの中心部への居住を進める立地適正化計画の策定を進めようとしておられます。

 集住率が向上したトップの滋賀県では、全19市町のうち11市町が策定済みか策定中です。また、集住率向上4位の福井県では、立地適正化計画を策定した市町村が6割を超えています。集住率の向上と立地適正化計画には相関関係があることがうかがわれます。

 和歌山県では、現在5市町が策定済みとのことですが、なかなか他市町に広がっていきません。なぜ進まないのか、県としてどのように進めようとしているのかをお尋ねいたします。

○議長(森 礼子君) 県土整備部長。

  〔安部勝也君、登壇〕

○県土整備部長(安部勝也君) 県内では、都市計画区域を有する23市町のうち5市町で立地適正化計画が策定されており、決して高い数字とは言えない状況です。

 計画策定が進まない理由の一つは、立地適正化計画策定の前に、その基盤となる都市計画マスタープランに都市機能の集約化を位置づける市町が多いからです。実際に、現在9市町においてその取組が進められています。

 県といたしましては、立地適正化計画の早期策定を促すため、都市計画マスタープランの策定に当たって、市町に対し、引き続き技術的な支援を行います。

 その上で、策定後速やかに立地適正化計画の策定に移行できるように、計画策定のメリットやベストプラクティスを丁寧に説明するとともに、国が2分の1、県が500万円を上限とする4分の1の補助により、計画策定の支援を行う所存です。

○議長(森 礼子君) 中西峰雄君。

  〔中西峰雄君、登壇〕

○中西峰雄君 御答弁いただいたんですけれども、策定が進まない理由として、前提となるマスタープランへの位置づけが遅れているというふうに答弁いただきました。

 私は、果たしてそれが主たる理由かというと、ちょっと違うんじゃないかなというふうに感じています。立地適正化計画の策定には、最大4分の3の補助があるとしても、1500万円から2000万円ほどの費用がかかると聞いております。しなければならないこと、あるいはしたいことが幾つもある中で、市町村にとって立地適正化計画の優先順位、プライオリティーが低いというのが最も大きな原因ではないかと私は考えています。

 じゃ、なぜ優先順位、プライオリティーが低いのかといいますと、政策決定をする首長や議会の理解がないことが一番の原因だと思います。市町がお金を何に使うかは全て政治判断、Political Issueです。首長や議会が大切さに気づき、その気になってくれなければ進みません。ですから、県が市町の理解を得るように働きかけていくというのは分かります。

 しかし、その首長や議会を動かすのは何かといいますと、民意です。住民要望にはからっきし弱いというのが私ども議員であり首長です。住民が要ると思ってくれれば事は進みますけれども、そうでないとなかなか進みません。

 ところが、人が減っても一人一人が利便性の高い豊かな生活をしていくために、先を見据えたまちづくりの計画が必要なんだ、立地適正化計画が必要なんだということが住民さんにも全く御理解いただけていないと思います。住民が必要と思っていないから、首長も議会もなかなかつくろうとしないのではないでしょうか。ですから、策定を進めるためには、県民の皆さんにも理解していただくことが必要だと思います。

 そこで、再質問になりますが、お尋ねいたします。県として、市町の理解を得るように働きかけることはもちろん必要ですけれども、住民、県民の理解を得るための取組も要ると思うのですが、いかがでしょうか。御答弁お願いいたします。

○議長(森 礼子君) 県土整備部長。

  〔安部勝也君、登壇〕

○県土整備部長(安部勝也君) 県といたしましても、議員の御指摘のとおり、これまでどおり市町への周知に努めるとともに、住民に対してもSNSの活用や県政おはなし講座等を活用して周知に努めてまいりたいと考えております。

○議長(森 礼子君) 中西峰雄君。

  〔中西峰雄君、登壇〕

○中西峰雄君 なかなか難しいことですけども、よろしくお願いいたします。

 じゃ、次の質問に移らせていただきます。

 次の質問は金融教育(お金の教育)についてであります。

 昨年の12月定例会の文教委員会でもお尋ねしたのですけれども、金融教育について再度お尋ねします。

 今年の4月から成人年齢が18歳になります。高校在学中か、卒業するとすぐに成人になります。未成年は保護者、正確に言いますと親権者ですけど、親権者の同意のない法律行為は取消し可能ですが、成人になると義務を負う契約を単独で結ぶことができるようになり、いわゆる消費者トラブルに巻き込まれるケースが増えるのではないかと懸念されております。

 そこで必要なのは、お金に関する知識です。ローン払い、消費者金融からの借入れや怪しい投資話が危険なことを十分に理解できるようにならなければなりません。これらはいわゆる消費者教育の範疇です。消費者教育は従来も幾らかやっているように思いますが、より一層充実させる必要があります。

 また、高校の学習指導要領で金融教育の実施が2022年から始めることが盛り込まれました。これまでは預貯金が中心の家計管理や商品・サービスの売買契約に重点が置かれてきました。新しい学習指導要領では、投資の社会的、経済的役割への理解を深めることや、ライフプランニングや収支計画を考えての資産形成ということにも入っていきます。株式や債券、投資信託など、金融商品の特徴にも触れることになります。また、これは国民の資産を貯蓄から株式等の投資に向かわせたいという狙いもあるようです。

 これにつきましては、高校でわざわざ教える必要はないんじゃないかと、習う必要はないんじゃないかという意見もあります。あるんですけれども、教育委員会としてどのようにお考えなのか、お尋ねいたします。

○議長(森 礼子君) 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 来年度から実施される新学習指導要領では、金融に関する学習は、公民科と家庭科で行うこととなっています。公民科では、金融の意義や役割等について、家庭科では、家計管理について学習するとされています。

 両教科の学習において、基本的な金融商品の特徴、様々な金融商品を活用した資産運用におけるリスクやリターン、資産形成の視点でのリスク管理等について、概括的に学ぶこととなっています。

 金融に関する学習で大切なことは、金融商品等の知識理解にとどまることなく、これからの社会の在り方や変化を踏まえつつ、自分のライフステージを形成していく上で、金融に関する知識を実社会や自分の生き方に結びつけて考える力を獲得させることだと考えております。

○議長(森 礼子君) 中西峰雄君。

  〔中西峰雄君、登壇〕

○中西峰雄君 教育委員会としては、学習指導要領に盛り込まれたことでもあるし、これはやっていくべきだとお考えだという御答弁かなというふうに思います。

 では、その次に、金融教育の現状認識についてお尋ねいたします。

 生きていく上で、お金とどう付き合うかということは大変大事なことなんですけども、これまで恐らくお金の教育というのは学校教育の場でほとんどされてこなかったんでないかというのが私の認識なんです。こう言いますと、文教委員会でも高校の公民科と家庭科で約20時間学習することになっているという答弁でしたけれども、果たしてどれだけできているのか、甚だ疑問に思っています。

 私には26歳になる子供がいますけれども、彼や彼の周辺の子に聞いてみても、例えば公的医療保険制度、年金制度等の社会保障制度、税制度、iDeCoやNISA、財形貯蓄といった制度について、習った記憶があるという子はほとんどいません。試しに皆さんも周りの若い人に聞いてみてください。恐らく同じだと思います。

 これは、金融教育だけじゃないのかもしれませんけれども、学校は教えたつもり、でも子供たちは習った覚えがないというのはほとんどというのが私の現状認識です。

 どうしてそうなのかと推測してみますと、一つには、教える側の金融知識、お金に関する知識、金融リテラシーの不足や意識の不足です。そもそも学校を出て教員になる人たちというのは、なってしまえば、公的社会保障制度についてはオートマチックについてきますから、自分でどうこう考える必要があまりありません。金融教育を受けたこともないだろうと思います。

 一度、新規採用教員にiDeCo(個人型確定拠出年金)、企業型DC(企業型確定拠出年金)、NISA、財形貯蓄って何かと聞いてみてください。きちっと答えられる人は少数だと思います。そういう人たちが教えるといっても、そもそも無理があるんじゃないかなというふうに思います。

 県教育委員会の金融教育の現状についての認識をお尋ねします。

○議長(森 礼子君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 現行の学習指導要領においても、金融に関する学習は公民科と家庭科で行うこととなっており、金融を含む消費生活を中心に、貯蓄や年金、保険等の学習を取り扱ってきました。

 近年、経済社会における金融分野の進展は目覚ましいものがあり、担当する教職員は、様々な機会を捉えて教科指導力の向上に努めています。その中で、日本銀行の関連組織である和歌山県金融広報委員会が開催する教員セミナーや金融教育研究校の授業研究なども活用しております。

 さらに、全ての県立高等学校に配付されている消費者庁作成の教材「社会への扉」を活用し、クレジットカードやローン、金融商品等について、今日的な課題についての学習の充実に努めています。

 さらに、専門家を招聘しての教員向けの研修や高校生への特別講座などに取り組んでまいります。

○議長(森 礼子君) 中西峰雄君。

  〔中西峰雄君、登壇〕

○中西峰雄君 高校を出てすぐに今成人になる子供たちには、最低限知っておいてほしいお金についての知識が幾つもございます。

 例えば年金制度です。年金制度とはどういうものか、国民年金と厚生年金、企業年金との違い、どれだけ負担するのか、将来もらえる年金はいかほどになるのか。学生の間は納付の猶予制度はありますけれども、猶予であって、10年以内に納付しなければ納付期間に算入されなくなって、将来もらえる年金が減ることとかもきちんとやっぱり教えてあげるべきだろうと思います。

 また、今の子供たちは、就職してから5年以内に4割ほどの人が離職します。離職して公的年金をかけていないと、入っていないと、もし障害者になったときに障害年金ももらえないということも起こり得るわけです。こういうこともきちんと身につけてほしい知識です。

 そのほかにも、消費者教育の範疇のこともあれば、投資の際のリスクの管理もあります。学習指導要領があるにしても、金融教育を充実させるには、限られた時間で何をどう教えるかについて十分に調査研究する必要がございます。

 そういったことも教員各人に任せるのではなく、県教育委員会として取り組むべきと考えます。また、教員への研修、金融教育についての授業のモデルづくりなども県教育委員会のするべき仕事ではないかと考えます。

 先ほども若干御答弁いただいたかとは思いますけれども、金融教育充実のために、県教育委員会はどう取り組もうとされているのかをお尋ねします。

○議長(森 礼子君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 金融に関する教育の目的の一つとして、生徒が生涯や将来についての展望を抱き、自ら積極的に情報収集し、的確に対応しようとする意欲を育てることがあると思います。

 成年年齢の引下げにより、自分の意思で契約できるようになるなど権利面が拡大すると同時に、自己の行動への責任と自覚も強く求められるようになるので、金融や消費、年金等について、これまで以上に深く理解することが重要です。

 当該教科の授業の充実は当然として、総合的な探究の時間やホームルーム活動、特別講座・講演等の様々な機会を捉えて、金融や経済の専門家である金融広報アドバイザーを招くなど、金融に関する質の高い教育を推進してまいりたいと考えております。この際には、地域社会との積極的な協働や協力を進めることも重要であると考えております。

 また、金融に関する教育に先進的に取り組む教員や学校を育て、支援するとともに、ICTを活用した授業の展開が広がっていることから、専門性の高い教員の優れた授業を県内全ての高校生が受講できるような取組も進めてまいりたいと考えております。

○議長(森 礼子君) 中西峰雄君。

  〔中西峰雄君、登壇〕

○中西峰雄君 ありがとうございます。頑張っていただきたいと思います。

 これは金融教育だけじゃないと思うんですけども、学校あるいは教員はやったつもりといいますか、教えたつもり、でも、生徒たちはほとんどスルーしてしまって記憶に残っていないということが、金融教育だけじゃなくてありますのでね。

 それと、本当に金融教育で一体何をどう教えるのかという、限られた時間でどうするかというのは、実際難しいと思うんですよ。私も、例えばこの質問をするについて、金融庁の金融教育向けの動画も見てみたんですが、あれを見ても全く面白くないというか。多分私、高校生だったら途中で見るのをやめると思うんですけども、本当に生徒は自分のこととして捉まえていただくような授業をするというのは難しいと思いますので、県教育委員会として、そういうことにならないように頑張っていただけることをお願いいたします。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 次の質問は、国道371号バイパスの進捗状況と供用開始時期についてであります。

 これは同僚議員であります岩田議員、中本議員ももう既にされているわけですけども、橋本市にとって大変重要な道路であり、一日でも早い供用が期待されておりますので、私も時々「あれ、いつ通れるようになんねん」というふうに住民さんから尋ねられます。期待されておりますので、再度私のほうからもお尋ねさせていただきます。

 照明などの施設工事を残して、仮称・新紀見トンネルはできておりますけれども、大阪府側ができていないため、供用ができないでいます。府県間にある仮称・新紀見トンネルの施設工事を含む大阪府側の工事の進捗状況について、具体的に説明をお願いするとともに、供用開始時期についても改めて再度お尋ねいたします。よろしくお願いします。

○議長(森 礼子君) 県土整備部長。

  〔安部勝也君、登壇〕

○県土整備部長(安部勝也君) 国道371号の河内長野市天見から橋本市柱本に至る3.7キロメートルの未供用区間は、大阪府が橋梁、トンネル及び盛土工事を進めています。

 現在の進捗状況としては、橋梁については架設中であり、53メートルのトンネルについては今月末より掘削に着手する予定です。また、約5万立米に及ぶ盛土工事については2月末時点で約1割の5000立米の盛土を終えたと聞いています。

 残る工事についても、例えば令和5年2月末を工期とする一般国道371号府県間トンネル照明設備工事を今年1月末に契約するなど、工事の進捗が着実に図られているものと認識しています。

 開通の見通しについては、府からは2020年代前半の供用を目指すと聞いていますが、一日も早い全線開通ができるよう、府に対して強く働きかけてまいります。

○議長(森 礼子君) 中西峰雄君。

  〔中西峰雄君、登壇〕

○中西峰雄君 できるだけ一日でも早くできるようによろしくお願いしたいと思います。御答弁ありがとうございました。

 これで私の一般質問を終わらせていただきます。(拍手)

○議長(森 礼子君) 以上で、中西峰雄君の質問が終了いたしました。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 4番堀 龍雄君。

  〔堀 龍雄君、登壇〕(拍手)

○堀 龍雄君 2月議会の一般質問登壇の機会を与えていただきました先輩・同僚議員に心からお礼を申し上げます。また、前回同様、このような声でお聞き取りしにくいところも多々あるかも分かりませんけれども、一生懸命、御理解をいただけるように頑張りますので、よろしくお願いいたします。

 議長のお許しをいただいておりますので、一般質問に入らせていただきます。

 この質問をさせていただくのは、私たちが今まで経験したことのない新型コロナウイルス感染症により、人の移動を抑制しなければいけない状況になり、地方の経済が落ち込みました。インバウンドを含む観光客が激減し、それに伴いホテル業、飲食業、土産物店、交通機関、そして地場産業まで、数え切れないほどの業種が不況にさらされております。そのことにより経済が沈静化し、まちから人の声が聞こえなくなり、笑い声も聞こえなくなりました。今だからこそ笑顔で物言える希望の持てるまちづくりをしなければいけないと思い、夢を実現できるように質問に立たせていただきました。

 知事説明要旨でも、「オミクロン株の猛威により、私たちの周りにもこれまでにない危険な状態が続いております。これまで本県は、できるだけ県民の生活や経済活動に制限を課すことなく、保健医療行政の頑張りで感染拡大を抑えてまいりましたが、オミクロン株の驚異的な感染力により、拡大の勢いが止まらなかったことから、あらゆる手を尽くすことが必要と判断し、まん延防止等重点措置を国に要請しました」とおっしゃいました。

 私は、よい判断をしていただいたなあと思っております。それは、私たちの身の回りでも大きなクラスターが数多く発生しています。いまだに私たちの地域では、ある程度感染者が下がっておるんですけれども、高水準を保っております。保っているとはよい言葉でないのかもしれませんけれども、下がっておりません。早い終息を願っております。

 また、令和4年度の新政策の項目で、「新型コロナウイルス感染症の闘いは2年を超え、今もなお試練が続いております。一方、コロナ禍で生じた世界の変容は、本県にとって新たな未来を切り開く絶好のチャンスであり、この機に臨み、本県の発展につなげていかなければなりません」ともおっしゃいました。私も同感です。口を開けば愚痴ばかりでは、和歌山県の発展はないと思います。

 そこで、県民の皆様が希望を持てるプロジェクトを提案させていただきたいと思います。これは、2月13日の新聞記事に「おいしい米宇宙から判別」という見出しの記事でした。

 福井県では、人工衛星を打ち上げて稲を撮影し、米のおいしさを決めるたんぱく質の含有量を推定する実証実験を2022年から始めます。人工衛星を使った米の品質把握は全国でも珍しいそうです。

 稲は、肥料が多過ぎると、たんぱく質を多く含んだ粘りのない硬い米になります。福井県では、同じ品種なのに品質に偏りが生ずることが課題だったそうです。

 県は、短時間で広範囲に画像を撮影できる人工衛星のカメラに着目し、600キロメートル上空から2.5メートル四方の精度で撮影して得られたデータをコンピューターで解析し、たんぱく質の含有量を推定します。結果を農家に伝えて、翌年の栽培で肥料の量を調整してもらう計画です。

 人工衛星は県と地元の企業が開発し、昨年3月、全国で初めて自治体主導で打ち上げられました。農業など第1次産業や防災にも活用することを目的とされております。

 和歌山県は、ポストコロナからウィズコロナへと新政策で「新たな産業を育む」と打ち出されております。世界規模で経済、産業構造が大きく変革する中、和歌山県が成長し続けるためには、長期的な視点を持って、時流を捉えたこれまでにない産業を育てていくとあります。

 誘致した全国初の民間小型ロケット発射場「スペースポート紀伊」では、令和4年に打ち上げを始める予定です。今後、世界の小型衛星打ち上げ需要が大きく増加することも見込まれることから、需要を取り込むために、発射場を核として宇宙ロケット関連産業など成長分野の誘致、集積を図っていくとあります。

 和歌山県には、優秀な企業があります。優れた大学、工業専門学校もあります。高校、工業技術センターもあります。企業のノウハウや数々の能力を結集し、和歌山型衛星プロジェクトを立ち上げてはいかがでしょうか。県民の皆様に活力と希望を持っていただくためにもよいタイミングではないでしょうか。知事の御所見をお願いいたします。

○議長(森 礼子君) ただいまの堀龍雄君の質問に対する答弁を求めます。

 知事仁坂吉伸君。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 衛星がどんどん重要になり、これとどう向き合うかを考えないといけないというのは議員御指摘のとおりだと思います。その中で、福井県の県民衛星というのがございまして、議員御指摘のように、福井県がそれに自分で保有しようというふうに思っておられるわけでございますが、これは有力県内大企業の提案で、県がたくさんお金を出して、それで開発を行って、昨年の3月に1基の打ち上げに成功したと聞いております。

 また、現在は、御指摘のように衛星からの画像を農業振興とかあるいは防災とか、そういうところなど、県の対策に役立てる目的で利用していくんだというふうに承知しております。

 一方、小型衛星を利用したビジネスはどんどん多様化が進み、自社だけで1万基の衛星を組み合わせてネットワークを構築して、通信や情報サービスのために使用しようとする企業が出てくるような勢いで、既に世界で熾烈な競争が繰り広げられております。

 このような競争領域で考えますと、衛星をどんどん使うということを考えるというのはこれからの趨勢であり必要だと思いますけれども、その在り方とか、どんな頻度でいつ利用するかという、どんなニーズがあるのかというのと事業の採算、これを考慮して、自分で衛星を持ったほうが得か、あるいは人がつくっているサービスを利用したほうが得か、それはやっぱりよく研究しておく必要があると思います。

 実は、和歌山県でも、どんどん衛星情報を使っておりまして、災害発生時の状況把握なんかは衛星で見る情報というのは物すごく役に立ちます。既にもうどんどん使っています。

 また、最近では、熱海市の変な盛土が崩れた、それで県内の全部のチェックをいたしましたが、これも衛星だけでやったわけじゃございませんが、もう一つの補足資料として、衛星で上から見て、何か怪しいなというのを摘発して、それをまた調べに行くというダブルチェック、トリプルチェックの一つとしてこれを使わせてもらいました。

 こういう需要家としての衛星への関与と別に、本県では、国内民間初の取組として、本年末、スペースポート紀伊から小型ロケットが打ち上げられる予定だと。これは小型化が進む人工衛星を宇宙に運ぶという世界でもあまり類を見ない最先端の取組であり、そういう意味ではちょっと世界史的な動きの中に立ち会っているなというふうに思えるところもございます。

 スペースワン社は、初号機の打ち上げを機に、2020年代半ばには年間20機の打ち上げを計画しておりますが、中長期的には、実はこんなもんじゃないというぐらいの量だと思いますので、この宇宙・ロケット分野の産業がスペースポート紀伊を核として、ほかにもどんどん投資してもらって、それで集積していくことを期待しておるわけでございます。

 さらに、ロケット打ち上げ時には多くの県物客の来訪が見込まれるんで、近隣の観光資源とうまく組み合わせてPRするというと、随分これは和歌山県の発展には役に立つし、一方、交通渋滞への対策もちゃんとしなきゃいけないということで準備を進めているところでございます。

 また、地域ではロケット関連の土産物の開発も進められたり、いろいろ盛り上がりもあって、いいことだなあというふうに思っております。

 県としては、さらに宇宙関連産業の企業誘致とか県内企業の参入促進、そういうものを狙っていって、数も増やすし、裾野産業、そういうのもどんどん定着させていくということで、地元経済の好循環を生み出すような取組を実施していきたいと思っておりますが、衛星はどんどん多用途に身近になっていき、恐らくコストも下がってくるということでございますので、福井県的なやり方、御提唱がありましたが、いつも念頭に置いて、それは考えていかなきゃいけないということかなというふうに思っております。

○議長(森 礼子君) 堀 龍雄君。

  〔堀 龍雄君、登壇〕

○堀 龍雄君 ただいま知事のほうから御答弁をいただきました。

 人材育成については、昨日もこの場でいろいろと新政策が打ち出されておりますので、公立学校では全国で初めて宇宙専門コースを串本古座高校普通科に新設して、宇宙について学びたい生徒を県内外から募集し、宇宙に対して夢と希望を持った全国の少年少女が学べる環境をつくりますと。また、和歌山大学や東京大学、JAXAなどと連携して、世界をリードする宇宙人材の形成を目指すということを言われております。本当にすばらしいことだなあと思います。

 今、それでは環境の面ではどうかと言われたときに、知事の答弁で「自ら衛星を打ち上げるのが得か、ほかの衛星を利用したほうが得か」ということをおっしゃられました。費用対効果もあろうかと思うんですけれど、県の行政として、県民の方に希望を与えるというのも大きなメリットになるんではないでしょうか。

 東京オリンピック・パラリンピックでも、1年延びたんですけれども、池江璃花子選手が、本当に私、感動を受けました。彼女が言ったのには「逆境に打ちかつには、希望という力が必要です」と。そのオリンピックに出るという希望の下で、つらい治療にも耐えて、そして、見事プールに戻ってきました。これは希望という力があったからです。

 もう一人います。パラリンピックで道下美里選手、この人は小学校4年のときに角膜の病気を患いました。小学校4年です。中学校2年になって右目を失明しました。そして、悩んだんでしょう、26歳になって盲学校に入学したそうです。そして、自分のダイエットのためにジョギングをし出したそうです。それがマラソンを走るきっかけになり、本格的に30歳になってマラソンをしたそうです。目が不自由なため、伴走者がいます。伴走者の走る喜びと自分が走る喜びが一緒になって、そして2人で──ごめんなさい(「頑張れ」と呼ぶ者あり)──オリンピックへ出るという夢を持って頑張ったそうです。

 やはり県民の皆様にも、そういった民間企業も、希望の持てる環境づくりをしていかなければいけないんではないんかなあと。費用対効果ばかりの行政では、人はついてこないんではないかな。そういう希望を与える行政にしていただきたいと希望を申し上げときます。

 次の項目に入らせていただきます。

 和歌山県の認知症の状況についてということで入らせていただきます。

 和歌山県では、新年度新政策で認知症手前の軽度認知障害(MCI)と判断された人などを対象に、居場所をつくって支援する事業を始めるとありました。

 高齢化に伴い、認知症になる人の数はますます増えつつあります。我が国の認知症の数は、2015年で517万と推測されており、これが2025年には65歳以上の高齢者の実に5人に1人に当たる700万人に達すると見込まれております。

 和歌山県の認知症の状況とこれまでの取組はどうなっているのか、福祉保健部長にお尋ねをいたします。

○議長(森 礼子君) 福祉保健部長志場紀之君。

  〔志場紀之君、登壇〕

○福祉保健部長(志場紀之君) 本県における認知症の方は、国が示している推計を基に算出すると、2015年では約4万8000人、2025年には約6万2000人となります。

 本県では、認知症になっても自分らしく日常生活を過ごせる共生と、認知症になるのを遅らせ、なっても進行を緩やかにする予防を車の両輪とした国の認知症施策推進大綱を踏まえ、普及啓発、適切な医療・介護の提供、介護家族への支援、若年性認知症対策を4本の柱として施策を実施しています。

 具体的には、市町村や関係機関と共に、認知症に関する正しい知識を持つ認知症サポーターの養成、医療・介護従事者への対応力向上研修、介護家族への相談窓口の設置や若年性認知症の方を支援するコーディネーターの配置など、認知症対策に取り組んできたところです。

○議長(森 礼子君) 堀 龍雄君。

  〔堀 龍雄君、登壇〕

○堀 龍雄君 人口減少に伴い、公共交通機関も減少しております。各地域でコミュニティバスや巡回バス事業も行ってくれてはいますが、私たちの住んでいる場所は、移動するには車が必要です。車社会です。75歳から自動車免許の更新時に認知機能の検査があります。高齢者の運転する車が家に飛び込んだり、逆走したりする事故が起きていることは承知しております。認知症ばかりとは言えませんが、認知症では免許証の更新はできません。

 MCIの人は、認知機能の低下はあるものの、日常生活にはほとんど影響がない状態を指しますが、年間で10から20%の確率で認知症に進行すると言われております。

 認知症にならないようにMCIを早く発見し、予防と改善をするために居場所をつくるとありますが、新たな認知症予防の取組について、福祉保健部長にお尋ねをいたします。

○議長(森 礼子君) 福祉保健部長。

  〔志場紀之君、登壇〕

○福祉保健部長(志場紀之君) 本県における軽度認知障害、いわゆるMCIの方は、国が示した推計を基に算出すると、2012年では約4万人となっています。

 MCIの方は、記憶力の低下はあるものの、日常生活には支障がなく、気づかれにくいが、本県では全国と比べ、県認知症疾患医療センターでの鑑別診断においてMCIと診断される割合が高くなっています。

 これは、高齢者の免許保有率が全国より高く、75歳以上の方に義務づけられている運転免許更新時の検査を契機に発見されることが多く、早期の段階で把握しやすい環境にあると考えられます。

 MCIの一定割合の方は回復するとされており、社会参加による役割の保持や運動などが認知症の発症を遅らせる可能性があると示唆されていることから、この段階で適切に対応していくことが重要となります。

 このため、医師会等と連携して、正しい知識と理解、本人やその家族の気づきや早期に専門医療機関への受診を促すガイドを作成し、医療機関受診時や運転免許更新時に啓発し、早期発見につなげたいと考えております。

 また、県認知症疾患医療センターにおいて、精神保健福祉士などが診断を受けた方への日常生活上の不安軽減や生きがいにつながる社会参加の提案など、診断後の相談支援機能の強化を図ってまいります。

 さらに、園芸など心身機能の維持や生活の質の向上に資するプログラムを提供する介護事業所等に対して、その立ち上げに要する経費を支援し、市町村や関係機関と連携協力しながらMCIの方への居場所づくりを進めていくなど、一連の取組により、状態に応じた適切な支援を行ってまいります。

○議長(森 礼子君) 堀 龍雄君。

  〔堀 龍雄君、登壇〕

○堀 龍雄君 福祉保健部長から御答弁をいただきました。

 私もそろそろ通っていく道です。不安でいっぱいであります。私の住んでいるところは、公共交通も通っておりません。移動は車に頼っております。車がなければ何も手に入れることができません。一番近いコンビニでも2キロメートルは離れております。

 また、MCIの方は免許証を取れるよということで、自分らもMCIになってでも機能が戻ってくる、また改善される、もしくはそれ以上進まない居場所をつくってくれるとあります。誰もがその居場所に足の運びやすい、「自分、今日は行けますよ」、「行きたいですよ」と言われるように、敷居の低い居場所づくりをしていっていただきたいなと思います。

 続いて、次の質問に入らせていただきます。

 子供の貧困についてということで、貧困状況と対策はということでお尋ねをいたします。

 内閣府が昨年2月から3月、全国の中学2年生とその保護者5000組に調査を実施し、2715組から有効回答が得られました。現在の暮らしについて、「大変苦しい」「苦しい」と答えた保護者は、全体では25%でした。世帯年収が低い貧困世帯、親1人子供1人の場合、年収225万未満に当たるんですけれども、その方で57%、そして独り親世帯では52%に上りました。貧困世帯の38%の方が食料を、47%の方が衣料を買えない経験があったとありました。

 一方、貧困世帯で学用品費などを補助する就学援助の利用は59%、独り親世帯の児童扶養手当の受給は66%にとどまったとありました。

 公表は昨年12月にされ、子供の貧困に関する初めての全国調査で、年収の少ない世帯や独り親世帯の子供が置かれている厳しい状況が浮き彫りになりました。

 子供の貧困状況と対策はどうなっているのか、福祉保健部長にお尋ねをいたします。

○議長(森 礼子君) 福祉保健部長。

  〔志場紀之君、登壇〕

○福祉保健部長(志場紀之君) 本県における子供の貧困状況については、平成30年度に行った和歌山県子供の生活実態調査によると、回答のあった県内の小中学生及びその保護者約7000組のうち、17.4%が食料・衣類の購入や光熱水費の支払いができなかった経験などがあるとの回答がありました。

 次に、子供の貧困対策については、平成29年3月に策定した和歌山県子供の貧困対策推進計画に基づき、教育支援、生活支援、保護者に対する就労支援、経済的支援の施策を総合的に推進しているところです。

 特に貧困の世代間連鎖を断ち切るためには、家庭の経済力に左右されることなく、十分な教育環境を整えることにより子供の学力を高めることが大変重要であると考えます。

 そこで、子供たちの学習習慣の定着と自己肯定感の高揚を図るため、学校の空き教室等を活用し、放課後等に学習支援や体験活動を提供する学校でも家庭でもない子供の居場所の全小学校区への設置を進めているところです。

 また、地域の子供食堂についても食事の場所の提供だけでなく、学習支援や地域交流の拠点となる子供の居場所としての機能が最大限発揮できるよう支援するとともに、子供食堂活動の充実を図るため、令和4年度から子供食堂と関係機関の連携強化のためのネットワークを構築し、コーディネーター派遣を通じて子供食堂を支援してまいります。

 加えて、家庭の経済力を高めるために、保護者が自立し、安定した生活を営むことができるよう、各種給付金、貸付金などの経済的支援、就労に向けた資格取得や求職活動のサポート等の就労支援についても取り組んでいるところであり、特に独り親家庭の方の生活安定を図るため、令和4年度から離婚時における公正証書の作成や養育費保証に係る費用を給付するなど、養育費の確保支援に取り組んでまいります。

 このような支援策を含めた子供の貧困対策につきましては、県において庁内会議を設置し、毎年事業の実施状況を確認するとともに、その課題解決に向けた施策の取組を今後とも全庁挙げて推進してまいります。

○議長(森 礼子君) 堀 龍雄君。

  〔堀 龍雄君、登壇〕

○堀 龍雄君 内閣府の調査では、生活保護や自立支援相談窓口を利用したのは1割に満たなかったとありました。和歌山県では、部長がおっしゃってくれたみたいに様々な施策があると伺い、安心をいたしました。

 利用していない理由は、「収入などの条件を満たさず制度の対象外だと思うから」が、いずれの制度でも最大でした。「就学援助を利用したいが制度を知らなかった」、「手続が分からなかった」などとの回答は計10%でした。

 また、困っている人は食べるのに精いっぱいで、目の前のことに気づかず、制度や頼れる人とのつながりもないなどがあり、厳しい状況が浮き彫りになりました。支援制度があっても十分使われていない実態もあり、支援が必要な人々に積極的に周知する必要があると思いますが、福祉保健部長にお尋ねをいたします。

○議長(森 礼子君) 福祉保健部長。

  〔志場紀之君、登壇〕

○福祉保健部長(志場紀之君) 子供の貧困対策に係る各種施策の周知につきましては、県のホームページやテレビ、ラジオなどの広報活動に加え、昨年度からはスマートフォン等で子育て全般に係る施策、情報が検索できるチャットボットシステムにより24時間365日対応することができるよう取り組んでいるところです。

 また、地域の子育て経験者や保健師、民生委員、児童委員等による支援チームが家庭等を訪問し、家庭教育についての情報提供や相談対応を実施する取組を推進しています。

 とりわけ、独り親家庭への支援として、児童扶養手当を新たに受給する世帯について支援員が訪問したり、「ひとり親家庭のしおり」を作成し、市町村やハローワーク等関係機関へ配布するとともに、市町村での児童扶養手当現況届提出時などの機会を活用し、各種制度の周知に努めているところです。

○議長(森 礼子君) 堀 龍雄君。

  〔堀 龍雄君、登壇〕

○堀 龍雄君 いろいろな方面での手厚い手当や補助、そして助言まであることが分かりました。働くのに精いっぱいで周りに目を向けることができず、たくさんある制度に気づかないことがまだあるように思われました。

 部長の答弁でも、平成30年の調査の結果、まだ17.4%の方が食料・衣料の購入や光熱水費の支払いができなかった経験があると答えているという報告がありました。こういうことのないように、やはり周知徹底するということが大変必要でないかと思いますので、早く17.4%の人がなくなりますようによろしくお願い申し上げます。

 これで、私の一般質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

○議長(森 礼子君) 以上で、堀龍雄君の質問が終了いたしました。

 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。

 この際、暫時休憩いたします。

  午前11時16分休憩

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  午後1時0分再開

○副議長(鈴木太雄君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 18番玉木久登君。

  〔玉木久登君、登壇〕(拍手)

○玉木久登君 皆さん、こんにちは。

 午後一番、この場に立たせていただきました先輩・同僚議員に深く感謝申し上げます。

 早速ですが、議長のお許しをいただきましたので、一般質問に入らせていただきます。

 まず1番目、ENEOS和歌山製油所の製油所機能停止発表を受けてであります。お聞きしたいのは、これまでの経緯と今後についてお聞きしたいと思います。

 1月25日、ENEOS株式会社は、2023年10月を目途として、和歌山製油所の精製、製造及び物流機能の停止決定を発表しました。この報道を受け、地元有田市、海南市はもとより、県内では驚きと大きな不安が広がり、そして全国においても大きな関心事となっています。

 新年を迎え、市行政をはじめ地元商工会議所は、世界が脱炭素社会に向かう中、工場の存続と今後も共存できる体制づくりについて嘆願書を提出しようとしていた矢先の出来事でした。

 この発表を受け、仁坂知事は翌26日にはENEOS本社を訪れ、ENEOS・大田社長との会談の席で、和歌山製油所の存続と新エネルギー分野においての和歌山製油所の活用に言及し、地域の雇用確保を強く求めたと聞き及んでいます。

 和歌山県行政の長として県民の気持ちを最優先に考え、行動に移した仁坂知事は、支持こそされても、切り取られた報道の一部だけを捉え、非難されることなどは断じて許し難いことであります。

 この知事の行動に、市民はじめ関連企業関係者は勇気と希望を抱き、大変感謝をしています。また、市外関連企業にとっても、大きな期待を持って今後の展開に注視しているところであります。

 さきにも述べましたが、世界の産業構造の変化とともに脱炭素社会の実現へと向かう中、昨年12月定例会一般質問において、和歌山県における新分野への取組についてENEOS和歌山製油所を取り上げ、知事からも答弁をいただいておりました。その危惧が現実となってしまったことは、非常に残念でなりません。

 ENEOS和歌山製油所も石油精製企業としての役割と新エネルギー分野への取組、多様化など、合理化の推進は当然理解するものであります。また、長年にわたり地域経済の大きな柱として稼働もしていただき、その恩恵は計り知れないもので、感謝の気持ちでもあります。

 しかしながら、80年もの間、地域と共に歩んできた大企業がその地域から姿を消すことは、地域経済に甚大な影響を及ぼすことは明確であり、今後の対応が急がれます。

 これまでの経緯と今後について、知事の見解をお聞かせください。

○副議長(鈴木太雄君) ただいまの玉木久登君の質問に対する答弁を求めます。

 知事仁坂吉伸君。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 和歌山製油所は、1941年、東亜燃料工業株式会社和歌山工場として操業開始以来、80年の長きにわたって、地域一体となって支えてきた存在であります。

 現在、和歌山製油所は、県の製造品出荷額の20%弱、有田市では90%以上のシェアを占めており、経済のみならず、雇用面においても地域経済の基盤でございます。

 2011年に和歌山製油所の閉鎖がささやかれた際、当時、エクソンモービルの支配下にありました東燃ゼネラル石油株式会社に、地域にとって和歌山製油所の存在がいかに大切か、そんなに切り捨てたら駄目だといって、あなたは損するぞとかなんかそんなことをいろいろ言いまして、何とか存続に御理解いただいた次第であります。

 このように地域と共に歩んできた和歌山製油所について、1月25日、突如、ENEOS株式会社から製油所機能の停止が発表されました。議員御指摘にありますように、私もそういうことが危ないなあというふうにずっと思っていたもんですから、十分営業をできなかったというのは大変じくじたるものがあります。

 発表翌日の1月26日に、たまたまその日に東京へ行く予定で、実はこのニュースは東京へ行く交通の中で聞いたんですけど、ENEOS本社に早速乗り込み、大田社長と面会させていただきまして、次の展望を示さないままで停止することに大変遺憾であると話すとともに、脱石油化の流れの中での会社の立場もあろうが、下請も含めた地域の雇用を守る取組を示してほしいと強く要望いたしました。

 その場で、これは公平の観点からあえて申し上げなきゃいけませんが、大田社長のほうから、そういうことは考えておるんだと、何がしかですね、具体的には全然ありませんが、したがって協議会の設立をしましょうというお話があって、私から、和歌山県、地元市町村、市長、市だけではなくて、やっぱりいろいろな技術的な動向とか国の立場とか分かっている経産省に入ってもらいたいという話をその場でしまして、それでその方向で、そこで話がついたということであります。

 それで、その協議会をどんなふうにするかという話をいろいろと協議をしておりまして、1か月後の2月25日に、ENEOS主催という形にしましたが、県、有田市、海南市に加えて経済産業省に参加いただいて、和歌山製油所エリアの今後の在り方に関する検討会が発足いたしました。

 ここまでちょっと引き寄せたという感じではありますが、まだ中身が安心できる状態ではありません。

 カーボンニュートラルの大きなうねりの中で、石油の需要が減少し、石油業界全体が縮小をしていくというのは、これは前回申し上げましたように、どうも宿命的なところがあるんですが、一方、ENEOSは日本を代表する企業であります。世界的にも立派な企業なんで、これからも世界をリードするエネルギー企業として脱皮し飛躍をしていくということを彼らは考えているわけでありますので、石油精製に代わる何らかの新しいエネルギー事業を考えているはずであります。

 和歌山製油所の地には良港もあり、交通も随分最近はよくなってきました。県内の交通インフラは整備され、それは日本の交通につながっております。地元には立派な技術を持った方々がたくさんいらっしゃいます。したがって、県としては、今後このような和歌山県のポテンシャルも活用して、ENEOSが考える脱炭素の構造転換にチャレンジする未来志向の新しいエネルギー産業分野の展開を、他の地域ではなくて和歌山で実現してくれということを切望するとともに、その間、下請も含めて地元の雇用が守られるようにぜひお願いしますという方向で運動して、新しいENEOSと有田市の共存共栄が図られるようにしていきたい、そんなふうに考えております。

○副議長(鈴木太雄君) 玉木久登君。

  〔玉木久登君、登壇〕

○玉木久登君 知事から答弁いただきました。

 検討会というのがENEOSさんのほうから提示をされた。知事が本社に行って、強くその撤退というんですか、製造停止を延長してくれと言ってくれた中で出てきた話なのかなと思っています。検討会、そこに国が入るということが物すごくよかったんではないかなと私は思っています。それも検討会をこんなに早く開催されたということが、非常に有田市の中でも皆さん喜んでいます。

 今後の最重要課題なんですけども、これは言うまでもなく、やっぱり雇用の確保と、今後、製油所の跡地になるのか現在のものを生かすのかというのは別として、そこの利用だと思います。

 現在、製油所関連施設で働いている関連企業の皆様から求められていることは、スピード感なんです。来年10月をめどとして製油所機能等を停止する。その後、残った石油を無害化工事というらしいんですが、2年間かけて掃除をするんだということが示されています。その間の来年10月、そしてその2年、何もオペレーションの内容、それが協力会社のほうには示されていないということを協力会社さんのほうからお聞きしています。結局それが示されないと、その間、やはりその協力企業さんが雇用面で、その間、何をするかが分からない人を従業員としてつなぎ止めること、これが非常に難しい。

 また、ある協力会社は、精製機能をコントロールする、その重要な部分のオペレーションを受けて仕事をやっています。製造停止までの1年間、無事故でそのオペレーションをこなしていかないと駄目なんですね。それは企業としては確かに仕事をいただいているので当たり前かもしれませんが、働く従業員さんにとってみては、これから先がどうなるか不透明の中でモチベーションを保ちながらその仕事を続けていくということは、大変困難なことではないかなと思っています。

 そのような意見を踏まえて、今後の検討会に対する要望、これは皆様から寄せられている声をある程度まとめさせていただいたので、申し上げたいと思います。

 機能停止を経て無害化工事完了までの約3年間の雇用確保等について、早く明確にしてもらいたい。ENEOSさんの今後の核となる新エネルギー分野などの主力となる工場は、和歌山製油所跡を活用していってほしい。ENEOSさんの主体性、これを重視するというのは物すごく大事なことだと思っていますが、あらゆる方向性、あの土地は250万平方、かなりの広大な土地なので、しっかりしたゾーニングを決めて早急に、この場所では何とか、そういうものを示せるようにしっかりと検討会では意見を上げていってほしいなと思います。

 知事の提案により、経済産業省資源エネルギー庁、そして近畿経済産業局が検討会に参画してくれていること、これ、非常に心強く思っています。国としてのサポート、またあらゆる情報の提供を国にも求めていきたいと思っています。そして何より、トップ会合であったり実務者会議、これを密に進めていっていただきたい、それが皆様からの声であります。どうかよろしくお願いしたいと思います。

 最後に、私から、都市部と地方はやっぱり違うんですね。やはり大きな企業がそのまちからなくなるというのは、ただそこに働く人だけじゃなくて、地域経済というものに物すごく暗い影を落としていると思います。そんな中で、やっぱりこれから有田市が新年を迎えて、さあ、やっていこうと気合を入れる席が行われた互礼会の後ですぐの発表だったということが、非常に大きなショックをみんなは受けています。

 このことも考えた上で、あらゆる方向に全力で取り組んで私もいきたいと思いますので、何とぞよろしくお願いしたいと思います。

 1項目めについては、これで終わりたいと思います。

 2項目めに移ります。下津・有田地域における世界農業遺産認定に向けた取組についてであります。

 まず一つ目、申請への取組状況と今後の活動についてお伺いをしたいと思います。

 和歌山県においては、2015年、「みなべ・田辺の梅システム」が世界農業遺産認定地域とされ、日本農業遺産については、2019年の「下津蔵出しみかんシステム」、2021年には「聖地 高野山と有田川上流域を結ぶ持続的農林業システム」、「みかん栽培の礎を築いた有田みかんシステム」が地域認定されています。

 日本農業遺産は、我が国において、重要かつ伝統的な農林水産業が営まれ、固有の農文化や農業生物多様性が育まれている地域を「農林水産業システム」として、日本農業遺産の認定基準に基づき、農林水産大臣が認定するものです。

 世界農業遺産とは、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた独自性のある伝統的な農林水産業と、それと密接に関わって育まれた文化、ランドスケープ及びシースケープ、農業生物多様性などが相互に関連して一体となった、世界的に重要な伝統的農林水産業を営む地域を国際連合食糧農業機関が認定する制度です。

 以前にも世界農業遺産地域認定に向けた質問をしてまいりましたが、やはりこの世界農業遺産という冠、これを取ることによって、ブランド力はもちろん上がると思いますし、販売力も当然上がると思います。それが単価にも反映されます。何よりその地域の農家さんの皆さんのモチベーション、これが上がるのは間違いないと思います。それによる相乗効果は計り知れないと感じています。

 今回、国内初の取組として、下津蔵出しみかんシステムと有田みかんシステムとを融合させた形での世界農業遺産地域認定に向けた取組が今なされています。

 申請への取組状況と今後の活動はどのようになっているのか、農林水産部長にお伺いいたします。

○副議長(鈴木太雄君) 農林水産部長岩本和也君。

  〔岩本和也君、登壇〕

○農林水産部長(岩本和也君) 下津地域、有田地域のみかんシステムにつきましては、「下津蔵出しみかんシステム」が平成31年2月に、「みかん栽培の礎を築いた有田みかんシステム」が昨年2月に日本農業遺産に認定され、それぞれの地域でPR動画やロゴマークの作成等、認定を契機とした国内外への情報発信と認知度向上の取組を進めているところです。

 世界農業遺産への認定につきましては、有田地域の日本農業遺産認定時に、隣接する下津地域のシステムとうまく融合し、共同で取り組むことが有効という意見を農林水産省の世界農業遺産等専門家会議からいただいたことから、県では、両地域推進協議会の御理解と御協力の下、地勢と地質の組合せから生まれる多様な自然の特徴を巧みに生かし、400年以上ミカンを栽培し続けてきた農家の営みを整理し、これまで申請に向け検討を進めてまいりました。

 具体的には、国際連合食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産科学助言グループ委員に現地で意見をいただいたほか、認定時に指摘を受けた世界的重要性や他産地との比較に関して、各国大使館、FAO、ジェトロなどを通じ生産情報を収集、分析するとともに、生物多様性に関して研究者から石垣園地における生物相の特徴を聴取するなどして、昨年11月に融合システムの素案を作成し、同委員をはじめ国際柑橘学会日本代表委員、国連大学等の有識者から意見を聴取したところです。

 今後、システム案を両地域推進協議会にお諮りした上で新たな協議会を設立し、本年6月に予定する世界農業遺産認定申請に向け取り組んでまいります。

 申請後には、書類審査、現地調査及びプレゼンテーションによる審査が行われ、国の承認が得られれば、FAOへの英訳申請書の提出、書類審査及び現地調査を経て、令和6年2月頃に認定地域が決定する予定です。

 県といたしましては、地元協議会をはじめ関係者と一体となり、認定に向け全力で支援するとともに、地域全体のさらなる機運向上に取り組んでまいります。

○副議長(鈴木太雄君) 玉木久登君。

  〔玉木久登君、登壇〕

○玉木久登君 農林水産部長から答弁をいただきました。

 プロセスについては、了解です。しっかりやっていただけているんだなあと思っています。そこはそこでよしなんですけども、今後は、地元協議会と地域の関係者の機運、これをどのように高めていくかというのがやっぱり課題かなと思っています。

 それぞれの地域から協議会メンバーを選ぶと思うんですけど、お互い相互理解を軸に、しっかり進めていただきたいなと思います。

 ここまでの認定に向けた取組というのはやはり書類とかが多いですから、県主導でやっていただいていたところがあるのかなと思うんですけど、認定後どのようにするかというのはやっぱり地域で担うことが非常に重要だと考えています。例えば、面として捉えた場合は、当該地域はもちろんのこと、近隣地域との連携も重要と考えています。

 日本農業遺産認定地域であります「聖地 高野山と有田川上流域を結ぶ持続的農林業システム」等の観光的交流、これは非常に重要だと私は考えています。また、大学や企業と連携して、今後の地域課題や新たな商品開発など、世界農業遺産認定が地域の活性化と農業の発展へとつながるように今後も密に取り組んでいただくことを望みたいと思います。

 最後になりますが、県議会としても、和歌山県議会農業遺産推進協議会、これを軸として、この取組を今後もしっかり支援していきたいと思っておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 3項目めに移ります。

 三つ目です。県内農業を支える新たな担い手の育成と農業の生産力強化に向けた取組について質問したいと思います。

 まず一つ目です。これは担い手の育成というか人材育成の面からだと思いますが、わかやま農業教育一貫プロジェクトの状況についてお伺いをしたいと思います。

 農業系高校4校と農林大学校によるわかやま農業教育一貫プロジェクトが新年度からスタートいたします。以前から関心を持って意見交換や提案もさせていただいていましたので、非常に楽しみでもあります。

 入学者選抜制度を設け、紀北農芸高校、南部高校の2校については、農業科特別選抜として、県内はもちろんですけども、全国選抜も実施されました。その状況も気になるところであります。

 和歌山県の基幹産業である農業に関心を持ち、将来の農業従事者の育成、農業法人・行政機関への就職への道筋、また農業を学問として学ぶ場として期待もしています。そのためには、従来の教育内容から専門性を有する教育カリキュラムも必要となってきます。

 その点を踏まえ、わかやま農業教育一貫プロジェクトの入り口の部分である高等学校における入学者選抜の状況と農業教育内容について、教育長にお伺いいたします。

○副議長(鈴木太雄君) 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) わかやま農業教育一貫プロジェクトは、農業系高校4校と農林大学校がカリキュラムで連携することで、5年一貫の教育システムを構築する事業です。

 初年度は、二つの内容について取り組んでまいりました。

 まず、農業系高校で学ぶ生徒の意識を高める取組として、和歌山駅でのわかやま農業高校マルシェの開催と農業科特別選抜の導入です。

 本年2月に実施した農業科特別選抜においては、紀北農芸高等学校と南部高等学校の2校で、全国選抜7名と県内の特別推薦12名が合格内定しています。

 また、農業系高校の教育内容の特色化を図るため、農林大学校と研究施設、地元農家の協力も得ながら、より専門的で実践的な実習や研究を行ってまいります。

 さらに、農業の専門家などから構成されるわかやま農業教育推進協議会を立ち上げました。農業系高校の現状や課題を基に、実務的な視点から教育内容や取組について充実を進めてまいります。

 このような取組を通じて、農業系高校の魅力化と活性化を図るとともに、これからも和歌山県の重要な産業である農業を支え、牽引していく農業人の育成につなげてまいります。

○副議長(鈴木太雄君) 玉木久登君。

  〔玉木久登君、登壇〕

○玉木久登君 教育長から答弁をいただきました。

 まず、当初予定していた農業科の特別選抜なんですけど、県内外ともほぼ予定どおりの人数が入っているという報告をいただいて、少し安堵しております。来年度以降もぜひ期待したいなと思います。

 また、高校生自身が農業に関心を持ってもらう取組として、わかやま農業高校マルシェ、これ、コロナの影響でいろいろと大変だったというお話もお聞きしたんですけども、これも継続して行っていっていただきたいなと思います。

 義務教育課程の働き方について少しお話をさせていただきたいなと思っていたんですが、高校生自らが小学校、中学校に農業の魅力を伝えに行く試み、これも農業系高校で考えていこうとされているというお話も聞きまして、ぜひやっていただきたいと思っています。

 また、昨年7月に、堀龍雄議員、それと今の現紀の川市長であります岸本健市長と共に、農林大学校において農業系高校の校長先生との意見交換会をさせていただいたことがあります。校長先生のほうからは、やはり学問としての受皿、これが明確であること、それで思いやりを持つ人間形成や、農業系企業や行政機関への就職など将来像が明確であること、これが逆に農業系高校に進むという目安になるんではないかというお話をいただいております。その点についても研さんを積んでいただきたいなと思います。

 そして、先ほど答弁の中にあったんですが、わかやま農業教育推進協議会というのがあると。ここの重要性についてちょっと聞きたいなと思います。

 農業の専門家の意見ですから、これを教育に取り入れていくというのは、農業系高校ですから本当に有益なことだと思います。ただ、生徒は理解できても、教える側の先生がそのスキルについていけないと、やっぱり大変なんじゃないんかなとちょっと危惧するのです。そこのスキルアップというのは絶対不可欠であろうかなと思いますので、これから、今年から始めていくわけですよね。そういう中で課題とかもやっぱり出てくると思うので、その点しっかり抽出していただいて、いろんな形でこれからの子供たち、人材育成の部分で生かしていっていただきたいなと思います。

 あと、今日はちょっと触れないんですけど、農業系高校の受皿である農林大学校との連携、これはもとより、県の有する農業の試験場ですね、ここの連携、これって非常に重要だと思います。より専門的なことを学ぶことにより、学問としての受皿が当然これから県内に必要になってくるのではないかなと思います。

 県内既存の大学に農学部の設置、これは以前、知事からも継続して取り組んでいくという答弁をいただいていますが、別の意味での農学部誘致、これについても今後取り組んでいきたいし、取り組んでまいりたいと思っていますので、さらなる県の支援をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 小項目2、最後の質問になります。ミカンの生産力強化に向けた取組についてお伺いをしたいと思います。

 ミカンに関する新政策については、その都度一般質問をしてまいりました。今回も、令和4年度新政策である農業生産力の強化支援の中で輸出の促進として拡充された輸出産地への改植、高接ぎ──これ、ミカンの改植対象品目を拡大すると、品種を拡大する──ということについて少しお伺いしたいと思います。

 昨年10月1日、ベトナム向け温州ミカンの輸出が認可となり、国内輸出第1号として有田みかんが出荷されました。現地では大変好評であったとお聞きしました。今後も期待したいところです。

 今回の新政策では、輸出の促進として、生産量が減少する温州ミカンの生産力アップのための施策として改植事業の補助対象品種を追加するものと理解しています。この施策を行うには、以前も指摘させていただきましたが、改植には苗木の安定供給が不可欠であります。その点についても取組がなされていると思います。

 そこで、県の取組状況と今後の展開方向について、農林水産部長にお伺いいたします。

○副議長(鈴木太雄君) 農林水産部長。

  〔岩本和也君、登壇〕

○農林水産部長(岩本和也君) ミカンの生産力強化に向けた取組についてお答えいたします。

 本県は果樹農業が盛んであるため、果実産出額の拡大や果樹農家の所得向上を図ることが重要であると考えており、県では、ミカンの厳選出荷やマルチ栽培の拡大、ゆら早生等の戦略品種の早期産地化など、果樹農業の活性化に向け様々な取組を実施してきたところです。

 戦略品種の早期産地化では、苗木生産者と農家との苗木調達でのミスマッチがこれまで課題でしたが、今年度、県が仲介することで、苗木生産者とJAが苗木栽培の契約を交わし、苗木の計画生産と安定供給が実現できたところです。

 また近年、全国のミカン生産は高齢化や担い手不足により、生産量は80万トンを下回り、既に国内需要に見合う生産量を確保できていないとの国の認識が示される中、本県産ミカンのベトナムへの輸出が始まるなど、ミカンをはじめ国産果実の海外需要はますます高まっております。

 このことから、県では、ミカンの生産力を強化し、将来にわたって安定した生産量を確保できる産地づくりを実現するため、新たな取組として、老木率の高い本県の主要品種である宮川早生を改植事業の補助対象に追加し、ミカン産地の若返りを進めてまいりたいと考えております。

 今後、厳選出荷やマルチ栽培の拡大、戦略品種の産地化に加え、果樹産地の若返りを進め、果実生産力を強化することで、輸出を含めた国内外のニーズに応える産地づくりを進めてまいります。

○副議長(鈴木太雄君) 玉木久登君。

  〔玉木久登君、登壇〕

○玉木久登君 部長から答弁いただきまして、戦略品種の苗木調達に関する取組というのは重要だと思っています。近年、好調なゆら早生をはじめ主力品種である宮川早生の改植事業、この補助対象の追加はありがたいと農家の人も思うと思うんですね。輸出も視野に入れた戦略についてはこれからだと思うので、頑張ってやっていっていただきたいなと思っています。

 そして、つい最近なんですけど、これまた別の話で申し訳ない、興津早生という品種があるんですね。これ、わせですけど、一樹変異種というらしいんですけど、極おくて品種・あおさんというのが、先日、うちの事務所に届けてくれた農家さんがいて、それを食べてみろということで頂きました。この時期ですから、2月、本当はおくてのミカンで、皮がちょっとごつくて、それはそれで僕も好きなんですけど、食べた感じがもう極わせと一緒なんですね。皮が薄いし、じょうのう膜という中の薄い皮ですけど、あれも薄いんですよ。食味も物すごくよくて、味も全然ぼけていないし、うわあ、これはいいなと思ったんです。

 わせの性質を持っていながら、この時期におくてとして収穫できる品種、これは産地によっては物すごく有効な品種なんじゃないんかなとちょっと思ったので、今後も有望品種として、あと2年ぐらいはかかるだろうとは言われているんですけど、この時期に、また和歌山の新しい戦略として温州ミカンが出せるというのがこれは大きな武器だと私思うので、ぜひとも有望品種としての産地づくり、これを進めていっていただきたいなと思います。

 それと、輸出というか国内需要というのは量が足らないという状況ではあるんだろうと思うんですけど、実際、目を移してみると、国内需要、これ、細かな分析が必要だと思うんです。消費者のニーズは明らかに変わってきていると思うんですよ。昔は、大昔はもう20キロ箱だったんかな。それが15キロになり、ほんで、ちょっと前まで10キロやったのが、もう今5キロが主力と。ここ最近では、もう3キロとか2キロの箱に対応していかないとあかんというような話が多いんです。

 当然、自分自身の地元というのはミカンどころですから、個選とかいろんなミカンの商売をされている方が多いですから、やっぱり小箱に対応していけないと、なかなか消費者ニーズに合わないので、買ってくれないよというような話も多く出てきているのが現状だと思います。

 その点については、出荷量をこなしていくJAとかはやっぱり大変だと思うんですね。そういうことや細かいことに対応できるかというたらなかなか難しいので、ここは大変苦慮する点だと思うんですけど、そういうことにも県としても支援策として何か考えていかないといけないことも出てくるかなと思います。

 俗に言う、eコマースと言うたりとかしますけど、ネット販売ですよね。これ、直接消費者に届く販売ルートとしては、農業法人さんであったり果物の仲買業者、また個選農家さんはもうこれが主力にだんだんなってきているんだと思います。従来の市場に出すというのより、直接もう消費者に届く。それがもう仕事としてなってきているのかなと。

 消費者ニーズを的確に捉えるというのは、そういう販売拡大のノウハウ、それを蓄積している、そういう細かい動きができる業者さんとか個選農家さん、そういうところからノウハウを聞くというのが一番の近道じゃないかなと最近思っています。

 だから、これから和歌山県産ミカンをどんどんやっぱり販売も拡大していく中で、情報収集というのは非常に大事だと思いますので、今後も進めていっていただきたいなと思います。

 いろいろ課題とかもあると思うんですけど、私は有田市生まれなので、ミカンのことをこれからもやっていきたいなと思っております。

 以上で、私の一般質問を終わります。御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

○副議長(鈴木太雄君) 以上で、玉木久登君の質問が終了いたしました。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 39番片桐章浩君。

  〔片桐章浩君、登壇〕(拍手)

○片桐章浩君 こんにちは。

 今週末、また3月11日、東日本大震災から11年目を迎えるということになります。当時の記憶を風化させないために、和歌山県として、石巻にありました大川小学校、ここで児童生徒74名が津波被害で命を落としたということがありまして、その命のヒマワリ、そのときの子供たちを思って保護者が大川小学校のところにヒマワリを植えたんです。その種を和歌山県が、命を大切にする県だということでもらい受けまして、和歌山市内では20校、県内の小学校でもそれぞれ植樹をしていると思うんですが、植樹を続けております。

 そして、記憶に新しいというところでは、紀の国わかやま国体の会場にも、このヒマワリを和歌山県が育てまして、選手団をお迎えして、復興を和歌山県は支援している、こういうアピールをさせていただきました。

 そして、そのヒマワリの種を、3月11日、近づいてきたので、どうしても私たちの手で育てたいと、こういうお話もいただいて、そういう方も今日いらっしゃっております。ここにそのひまわりの種が(ヒマワリの種を示す)延々と命を和歌山県が受け継いでいるわけなんですけども、こういう強くて優しい和歌山県であるというふうに認識しておりますので、その観点から今回質問をさせていただきたいと思います。

 それでは、議長のお許しをいただきましたので、一般質問を行います。

 まず1点目、和歌山県の価値向上に向けた企業等への取組についてという項目でさせていただきます。

 本定例会の冒頭、令和4年度の和歌山県の新政策が示されました。オミクロン株、物流の停滞、エネルギーコストの上昇など、経済は厳しい環境にありますが、和歌山県民の皆さん、県内事業者の方々が安心して生活、お仕事できる環境づくりにつながる政策を打ち出しているところであります。

 昨年から今年にかけて、東京、アメリカなどで長くビジネス経験のある方をはじめ、台湾、韓国とビジネスをしている方々と一緒になりまして、和歌山県の価値とは何だろうかという、こういう懇親の機会を持っております。

 懇談の一つのテーマに、和歌山県への企業進出や企業活動の可能性、こういったテーマでもお話をしているところであります。

 この結果、いい話もたくさんあるんですが、残念なことに、東京に本社のある大企業から見ると、今も和歌山県は大型の投資対象にならない状況は変わらず、民間投資の機会に恵まれていないという現実が浮かび上がりました。

 また、投資以前の問題として、和歌山県の土地の価値についても考えさせられる話がありました。

 これは、リバースモーゲージの件です。ある地方銀行の和歌山支店から連絡があり、「銀行本部から和歌山市の物件は取り扱わない」、こう言われたことの報告がありました。これは、都市銀行のみならず、関西を拠点とする地方銀行ですら和歌山市の──これは一等地だったんですけども── 一等地を評価しないという事実を突きつけられたものです。

 銀行からは、「東京、大阪なら問題はないのですが、和歌山市は……」と、こういうコメントが続いたわけなんですが、つまり和歌山市の土地の価値が低い、価値なし、将来性なしとみなされてしまったということです。

 参考までに、都市銀行でも和歌山市はリバースモーゲージの取扱対象にはなっておりません。

 コロナ禍で意識や考え方が大きくシフトし、密を避けて、ゆとりを求めて東京23区からの転出者も増えている中、ここでうまくタイムリーに動けば、コロナ禍以前はネガティブとみなされていた要因でさえポジティブな強みとしてシフトさせ、一気に和歌山県の価値を引き上げる機会ができるのではないかと思っているのですが、銀行からの現実的な評価を受けたことは非常に悔しくて残念なことです。

 上場企業や都市銀行が和歌山県は投資の価値が低いと評価している現実があった上に、関西が拠点の地方銀行さえも、和歌山市の価値が低い、価値なし、将来性なし、こう評価されていることは衝撃であり、新しい年度を迎えて、さあやるぞというときに、ここまで評価が低かったのかと、少しというか、かなり残念に思っているところであります。これがまず和歌山市の置かれた金融機関筋からの現状だろうなあというふうに思います。

 次に、ある経営者と懇談したときの話です。和歌山県の観光のキャッチコピーですが、「水の国、和歌山。」、これをうたっている。これ、とてもいいことだよと。和歌山県の長所として豊富な水をアピールするのであれば、観光へのアピールだけではなく、住環境における長所としての河川の清らかさや、産業振興の観点から企業誘致の長所としてアピールできるよと。例えば、工業団地への工業用水を完璧にするなど、同時にアピールする状態に整えておくことが必要ではないだろうかと、こういうアドバイスもいただいております。

 つまり、県の中で個々別々ではなく、和歌山県の未来をどこに導くのかという壮大かつ現実的、具体的な計画の下に、産業も観光も県民の生活を担う部署もそれぞれが連携し、創造的に切磋琢磨しながら、同じ目標に向かって進む。そして、うねりを捉え、波を逃さないように迅速に動くことが肝要だと思います。

 続いて、元県職員さんと話をいたしました。かつて撤退の話もあった紀の川市にあるパナソニックの電池工場は、今回、EV自動車の新型リチウムイオン電池「4680」工場へと変貌を遂げるために、数百億円を投じて生産ラインを立ち上げる準備を行うことになりました。この新型リチウムイオン電池は、アメリカ大手のテスラへの供給を想定しているようなので、私たちにとってはとてもうれしいことです。

 これは、当時、松下電池から工場撤退の情報を得た県職員さんが、松下電池、その親会社に出向いて、「和歌山県で事業活動をこの先もしてもらえるのなら、県としてやれることは何でもやります。継続して残ってもらいたい」という交渉を行ったと聞きました。その結果、存続につながり、テスラ向けのリチウムイオン電池製造のための今回の投資につながったことになったことを受けて、この職員さんは、当時の仕事が今の県政のお役に立てたと非常に喜んでくれておりました。

 このときの取組が松下電池の工場撤退を回避しただけではなく、それが世界的ネームバリューを持つテスラ向けの新型電池の製造工場につないだことは、まさにあっぱれと、たたえられるべき成功例だと思います。

 一つ成功させると、人間はその成功にやりがいや面白みを感じ、それが次の成功へ挑む原動力となるものです。情報網を張り巡らし、そこから得た情報に基づき先手を打つ。相手、呼び込みたい企業や観光客などの動向を見て、それに合わせるだけではなく、より積極的に世界の潮流を読み、産業、観光、人を和歌山へ誘導する作戦を立てる。つまり、和歌山県が望み意図する方向に導くぐらいの気概を持つ、そのような気概こそが県の職員さんの心にも、県民の心にも、やる気を湧き起こし、そのチャレンジから生まれる成功が郷土への誇りを育み、そこに暮らす人々の誇りが和歌山県の価値を引き上げる具体策を生み出す。負のスパイラルから正のスパイラルへの転換ができる。そういう力になろうかと思います。

 今回、時代の先端を走るテスラ向けの新型電池の製造工場が地元にあることは、和歌山県にとっての価値であり、銀行からや企業の投資を呼び込む力になるものだというふうに思います。

 今回生まれたテスラとのつながりという価値をほかの分野でもどう生かせることになるのか、ぜひ県職員の皆さんは、皆さんの先輩が生み出した価値を大切にして、一緒に考えていただき、斬新かつ具体的なアイデアを提案してくれることを期待しているところであります。

 ただし、県内の製造業は、部材・部品調達が難しい、困難な状況にあることは確かなことで、それに伴う供給の制約、コスト上昇などによって収益が悪化している状況にあると思います。

 さらに、今回のロシアのウクライナ侵攻によって影響を受けている資源、原油や天然ガスの高騰によるエネルギーコストの上昇と円安の進行などから、さらに仕入価格が上昇しているにもかかわらず、コスト転換ができないこと、調達コストや人件費などの固定費も上昇していることから、会社経営はさらに厳しい状況になっていくのではないかと危惧しているところであります。

 県内企業の中には、既に国の経済対策を絡めた有利な融資、雇用調整助成金を受けていることから、企業活動は継続できていますが、実質債務超過に陥っている企業もあると聞いていますし、消費の拡大が見られない中、メーカーなどへの必要経費の転換は容易ではないため、ますます収益性が悪化する企業も出てくるのではないでしょうか。

 我が国はインフレ傾向にありながら賃金が上がらない、こういう状況があり、企業が売上げを増やすことも簡単なことではなく、売上げを伸ばせない企業の財務体質はさらに悪化していくことで、今後の事業継続や、この秋以降の経済に影響を及ぼす可能性はあると思います。

 このように厳しい経済環境にあることや、さきに述べたような都市銀行や県外の上場企業から積極的な投資をしないことを暗黙の決め事のようになっていることを前提として、県政を考える必要があろうかと思います。

 つまり、銀行や上場企業から「和歌山県の案件に投資させてください」と言わせるような政策や計画が必要で、和歌山県が一気に注目を集めるためには、日本どころか世界が注目する計画を仕上げるぐらいの意気込みが必要だと思います。

 和歌山県の価値を高めることを目指して、新しい産業や先端企業を呼び込む、投資をさせるぐらいの意気込みを持って和歌山県の価値を高めてほしいと思います。

 また、「物価が上昇しているけど所得が上がらない」、そんな声をあちらこちらから聞いております。これは1980年代、レーガンのアメリカですね、あのときのスタグフレーションという怪物が幽霊が出てきたんですけど、そのときの状況に似ているんではないかと言われておりますが、こういうことが日本でも現実になろうとする気配が漂い始めております。

 もう知っている方のほうが多いと思いますが、2020年の平均所得、これはOECDの出典によるんですが、主要先進国35か国中、日本は22番目と、こういう位置にあります。これまで日本の所得は高いと思い続けていましたが、実際はそうではなかったわけです。

 2020年の1位、参考までにアメリカ、6万9391ドル。この数字を出典時のレートである1ドル110円に換算して日本円に置き換えますと、年収です、約763万円。2位はアイスランドで742万円、3位がルクセンブルクで724万円と続いております。

 日本の平均所得が低いことが分かったのは、日本が3万8515ドル、約424万円で22位、韓国が4万1960ドル、約462万円で19位になったことが報道されたことが大きいと思います。

 さらに、1997年から2020年までの平均年収の上昇率は、先に日本を抜いてしまった韓国が45%の平均年収の上昇、それに対して日本は僅か0.3%と、ほとんど給料が上がっていなかったと、こういう状況があろうかと思います。つまり、20年以上も平均年収が上がっていないことで、次々とほかの先進国に追い抜かれていったのです。

 参考までに日本の下はどんな国があるかといいますと、23位以下、順にスペイン、イタリア、ポーランド、このように続いております。日本人の感覚というか私の感覚としては、それほど経済情勢がよくない国々が続いているわけなんですが、世界から見ると日本もそのグループに入っている、これが世界の現実であります。

 平均年収の数字が全てとは言えませんが、物価上昇の局面にありながら所得が上がっていない、このことを前提としても政策を考える必要があります。

 世界はデジタル社会に突入してから久しく、情報通信や半導体をはじめとする先端技術に後れを取ってからも久しくなっております。推測するところ、デジタル社会を迎えた世界の潮流に乗り遅れたことも経済力の低下の原因の一つではないだろうかというふうに思います。

 しかし、まだまだ「日本はまだ大丈夫」、「技術と経済では先進国」、こう言って意に介していない人がいるのも事実であります。さらなるデジタル化や企業価値の中にカーボンニュートラルが組み込まれていることへの対応、さらにハイテク産業誘致などに対応していかないことには、ますます世界との差、全国との差が広がるばかりです。

 ところが、和歌山県に漂う空気、繰り返しますが、「まあ何とかなるだろう」、「今までどおり、ほかについていけば何とかなっていくんじゃないの」、こういう空気感というのを感じているところであります。

 そこで、知事に質問であります。

 新政策では、変化する世界への挑戦を掲げて県政に果敢に取り組もうとしております。その中で、企業のDX化の推進、和歌山県への人と企業を呼び込むための企業誘致や宇宙関連産業の集積などによる県内所得の向上に向けた取組について、知事の答弁をお願いしたいと思います。

○副議長(鈴木太雄君) ただいまの片桐章浩君の質問に対する答弁を求めます。

 知事仁坂吉伸君。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 和歌山県の価値を向上させるためには、何といっても議員御指摘のように、たくさん投資を和歌山に持ってこないといけません。「和歌山なんかにお金を出すもんか」と言っていた大銀行なんかがしまったと後で思うような、そんなふうにしてやるぞというふうに思って頑張っているわけでございます。そのために、考えられる全ての領域で、あらゆる手段を講じ、取り組んでいかなければならないと思っております。

 そのためには、産業におけるデジタル化とか起業家への支援の強化などによって県内産業の成長を図ると、これは王道だと思っております。それとともに、IR誘致とか宇宙関連産業とかICT企業の誘致、集積などによって新産業を育成していくということも大事でございます。

 さらに、和歌山県は特色のある農林水産業がございますので、これを振興して、生産力強化などの競争力を高める取組を加速し、観光もなかなか有望ですから、大いにプロモーションや受入れ環境整備など、数十年前の無敵であった時代から比べるとちょっとそうでもなくなっていたのを反転攻勢すると。そういう反転攻勢に備えた取組を進めることで、コロナで随分いろいろな打撃を受けているんですけれども、そういう特に観光産業の再生、発展を図っていくということも大事でございます。

 製造業はいいのかというと、そんなことはございませんので、コロナで製造業の国内回帰もあって、経済安全保障という観点から、やっぱり日本でも生産基盤は必要だという議論が今、出ております。

 その一環として、パナソニック株式会社エナジー社が和歌山工場で電気自動車向け新型車載電池を量産することについて、ついに発表できるというところまでこぎ着けました。随分前から聞いていたんですけども、会社の意思決定ですから、ちゃらちゃらやってはいけないということで、ついに、現在はちゃんと我々も議論できるようになりました。もう既に、水面下も含めて応援体制に入っております。

 こういうことをきっかけにして、できればもっとたくさんということで、新たな電池関連産業の集積を目指した取組も進めていきたいと思います。

 付け加えますと、さっき「あっぱれ」と言われた経緯がございますが、これは若干短絡しておりまして、正確に言うと、僅か10年ちょっとの間に1波、2波、3波と実は動きがあるんでございまして、現在はその3波目なんですが、御指摘の御議論の中では1波と2波が短絡していると、ショートしている感じがありました。詳しくは御説明申し上げません。

 また、ENEOS株式会社が製油所機能を停止するということになったのは大変な打撃であるんですけれども、同社が世界をリードするエネルギー企業として脱皮、飛躍するための新事業を和歌山で実施されるように取り組んでいってもらいたいということで、一生懸命頑張ろうとしているところでございます。

 議員が「投資を呼び込むような、そういう気概を持って頑張れ」というお話がありまして、そのとおりだというふうに思っておりますが、実は気概どころか世界的に名の通った企業の投資をということで、何度か挑戦をして、具体的なところで、もう一歩とは言いませんが、2歩、3歩ぐらいのところまで行っていたのが幾つかあったんですけれども、残念ながらプロジェクト自体が消えてしまったというのが多くて、実現はできていませんでした。

 一方、これらの新しい雇用を増やす方向の、すなわち競争力をつける投資を増やしていく取組、これに加えまして、県内の所得を向上させるためには大企業からの富の分配が必要でありまして、取引条件を改善させることが大変重要であると思っております。近年の円安等の効果によりまして、輸出採算のある大企業の雇用、所得環境は大きく改善しているのです。その大企業を支える調達先とか下請企業には影響があんまり及んでいないというのが現状だと私は思っております。

 大企業の本社というのは東京に多くて、下請企業は地方にあることが多いんで、地方の企業に富が分配されません。地方の従業員の賃金がなかなか上がらないということで、地方の消費が伸びない。そうすると地方の景気がよくならない。これが地方の低迷につながっていると私はずっと思っております。

 大企業が不況の頃、自社を守るため、調達価格をできるだけ安くしてというのがモラルとしていいことだというふうに固定してしまったのが今も続いていまして、県が実施した調査においても、なかなか価格転嫁がなされていないというのが現状です。中には、違法不当な行為もございまして、県としても取引条件の改善に向けて、企業の声も十分聞きながら、政府に強く働きかけて、政府の取組につなげていかなきゃいけないと思って努力してまいりました。

 実は、安倍内閣のときにも、安倍内閣自身が、政府自身が大変好意的にこれに取り組んでくれたことも事実でございます。経産省も大変熱心に取り組んでくれて、和歌山県でも、経産省と和歌山県が共同で取引条件の改善に関するシンポジウムを大変大きな規模でやったというようなこともございました。

 ただ、現実には、1個1個の取引に関わる話でございますので、なかなか十分な成果がまだ出ていないなあと私はまだ思っております。

 今後も、成長を促す投資に結びつくような政策を進めるとともに、取引条件の改善に向けた取組を通じて成長と分配の好循環が生まれるように、全力で取り組んでまいりたいと思っております。

○副議長(鈴木太雄君) 片桐章浩君。

  〔片桐章浩君、登壇〕

○片桐章浩君 知事からお答えをいただきました。

 まず、これも昨日、いろんな会社の方とちょっと話をさせていただいたんですけど、既に原料の調達価格が上昇しておりまして、プラス30%、それからこのままいったら40%ぐらいになるんじゃないのかなあというふうな話も聞かしていただきました。今から計画をしても、実際資材を入れて例えば建築をするとかそういった場合には、今の見積りを30%も40%も超えてしまったら、なかなか採算取れないよなあみたいな、こんな話もちょっと交わさせてもらったんです。まずこういったこともありますから、これの対応、県では難しいんですけども、何とかできないのかなというのと、それから消費者物価ももう10%ぐらい実質上がっているんではないだろうかなというふうに思われます。これ、もうスーパーとか行ったら明らかなんですけども、つまり10%も上がるということは、実質賃金が10%低下、これではますます県民の我々の生活が厳しくなるということになりますので、こういった県民生活を守るという姿勢も強く打ち出していただきたいというふうに思います。

 それから、もう一つ、今お答えいただきました新産業の誘致についてでありますが、既に和歌山県が取り組んでいる遠隔医療が、これ、宇宙医療に使えるというふうな研究を医療メーカーそれから宇宙関連産業から話がありまして、話はしていると思いますし、世界が開発競争を進めている6G携帯、これについても話があろうかと思います。それから、これは企画部長が多分知っていると思いますが、HAPSモバイルの実証の件も来ているというふうに思っています。これらは全て宇宙関連産業になろうかと思いますから、このような状況下、これらを止める理由はないと思います。しっかり進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 続いて、この項目の2点目であります。

 「新しい世界で飛躍する和歌山」の取組の一つで、和歌山IRの誘致を進めているということが本会議の冒頭で知事から説明がありました。本県成長の原動力になるとして、経済波及効果と雇用創出効果、この2点が大きな柱になっているのかなというふうに思います。

 そこで、先日頂きました、国への提出用の和歌山県特定複合観光施設区域整備計画(案)、これを読ましていただきまして、和歌山県が和歌山IRで直接雇用する従業員の見込み数が6285人、そしてこの計画の新規雇用が3万5000人、これは約ですけども、示されております。施設運営などの委託に関する雇用創出が見込まれるため、関連事業でも和歌山県の人材が必要になるのかなあというふうに思います。

 その上、計画では、優先順位の1番目として、Uターン、Iターンの人材を受け入れますよと。2番目として、和歌山県民から募集をしますよと、このようになっております。ここでは、既存事業者に配慮しつつ、地元雇用を優先的かつ積極的に行うこととし、それでも人が足りない場合は国内外からの募集へと移るようですから、この点から雇用確保と定住人口は期待できるのかなというふうに思っています。

 人口流出や現役世代の減少、働く場所が少ないことから、地元にリターンできない学生さんなどに対応できるので、この雇用創出は和歌山県が求めていることであり、今回の計画の重要なファクターになろうかと思います。

 ただし、ここで問題があります。

 以前、IR施設で働いている方と会って懇談をさせていただいたことがあります。その方はもともと東京で働いていたホテルマンだったんですが、現在はIRのホテルに転職している方なんですけども、こういう話です。現在、実績を重ねて統括マネジャーの職に就いておりますが、「世界からお客さんをお迎えできるので、これまで勤務したシティーホテルと比べてもやりがいがある仕事です。食事にしても世界中から一流の食材を取り寄せて選定していますし、お客さんに喜ばれるメニューの開発なども行っています。私は転職組ですが、研修を受けたときから世界が広がりました。若い人にとってやりがいのある仕事だと思います」と、こういういい面を紹介してくれたわけです。

 その後がいいのか悪いのかというのがちょっと判断に難しい話なんですが、所得についても実は尋ねさせていただきました。そうしたところ、「給与は、ホテル勤務のときよりも高くなりました。私の勤務していたホテルは、誰でも知っている一流ホテル」──名前を言えばすぐ分かるホテルなんですけれども──「一流ホテルでしたが、そのときと比較しても年収は倍増しています」。つまり、明確には言いにくいんですが、1000万超の2000万以下、2000万に近い数字、これが年収だということであります。IRのホテルというのは、管理職かも分かりませんけども、相当高い給料だなというふうに思っているところであります。

 雇用された若い従業員の方々が直ちにこの水準になるとは思いませんけども、一般的に同業種の中では、これ、ホテルのみならず、レストランであれ、ほかの施設であれ、所得水準が高くなるのかなというふうなことを予測しております。それはよいことで否定はしません。

 ただ、地域にとっては問題がここで発生すると思います。和歌山IRで果たしてアルバイトがあるかどうか分かりませんけども、外国のIRのパートタイムの時給を基準として、今回、仮に時給2000円になると仮定します。現在の和歌山県の最低賃金は859円ですから、IR関連施設で働くと、その2倍以上の単価の給与というんでしょうか賃金が得られることになります。この場合、どちらで働きたいと思うのかは明らかであります。もし、正社員、アルバイトの募集があれば、現在、和歌山市周辺あるいは和歌山県内で働いている人たちは、この時給の高いIR施設で働くことを希望することになろうかと思います。そうすると、和歌山市内をはじめとする事業所や、特にサービス業の方からの不安の声が多いんですけども、「人手が不足していくんではないだろうか」、「人材不足等、給与格差で空洞化が起こり、働く人がさらにいなくなっちゃうよ」と、こういう話を聞いております。

 和歌山IRだけに人が集まり、県内の会社や事業所、特にサービス業の分野では人材がいなくなる、こういうことにもなりかねません。

 じゃ、それを防止して人材を引き止めるためにはどうしたらいいのか。事業者は時給を2000円近くまで上げる必要があろうかと思いますが、そんなことは、一気に引き上げられる力のある事業者はいないと思いますし、もし引き上げられるという事業者があるのであれば、既にもう引き上げているというふうに思います。現実問題として、会社の業績が上がらない限り、「給料を上げる」と掛け声だけではこの議論は成り立たないと思います。

 では、県内事業者の雇用を守るために、IR施設で働く和歌山の人たちの時給も1000円に抑えてくださいよということは、これまた本末転倒で、これではいつまでたっても和歌山県の所得水準は上がらない、こういうことになろうかと思います。

 そこで、和歌山IRの所得のこの問題についての質問でありますが、和歌山IRで直接雇用6285人、雇用創出効果約3万5000人は、大企業が進出してくれたようなものであり、直接雇用と委託事業者の収益向上につながるもので、和歌山IRがあることで県民所得を押し上げる効果はあると思います。果たして、試算している従業員の給料水準及び県外からの居住者数はどの程度に見込んでいるのでしょうか。

 また、和歌山IRで県民所得が上がることは、これはよいことだと思いますが、県内事業者から不安の声があるように、賃金格差が生じることによって起きる人材不足の問題、雇用の問題、雇用の確保、これについてはどう考えていますか。田嶋理事の答弁をお願いしたいと思います。

○副議長(鈴木太雄君) 理事田嶋久嗣君。

  〔田嶋久嗣君、登壇〕

○理事(田嶋久嗣君) 和歌山IRでの直接雇用や幅広い産業である雇用創出により、県内の雇用環境の充実や給与水準を押し上げる効果が期待できます。

 一方で、周辺地域の雇用環境に悪影響が出ないように、事業者公募時においても、市場競合に配慮等を行い、計画的かつ確実に実施するよう事業者に求めていたところです。

 議員の御質問にもございましたように、現在お示ししている区域整備計画案においても、従業員の確保の方針として、まずはUターンやIターン人材を積極的に受け入れることを優先し、その次に、和歌山県の既存事業者に十分配慮しつつ、地元雇用を優先的かつ積極的に行うこととしています。

 具体的には、地元雇用に当たっては、経済団体等と協議しながら、地域の同内容の職種の給与水準と極端には乖離しないように給与を設定するなどして、地域の雇用に支障を来さないように配慮する方針です。

 議員御指摘の和歌山IR従業員の給与水準については、和歌山県の職種ごとの平均給与を基礎に算定しておりますが、従業員に占めるU・Iターン者の比率やその家族等を含めた居住者については目標値を定めているわけではありません。

○副議長(鈴木太雄君) 片桐章浩君。

  〔片桐章浩君、登壇〕

○片桐章浩君 理事にお答えいただきまして、雇用創出、これの目的の一つですけど、例えば今言いました6000人強の雇用、これ、真水で生まれるのだったらいいんですけど、例えば市内からこちらに替わるだけだったらそのまま増えるわけじゃない。本当は県外からも来てもらわなきゃいけないわけです。ところが、県外からばっかり来てしまうと、県内の若い人を中心としたところが押し出されてしまう。クラウディングアウトされちゃうわけですよね。これでは意味がないということで、本当にこれ、ジレンマなんですよ。こういった課題がありますから、この辺しっかりと考えて、何がベストミックスなのか分からないですけど、今のところでは。しっかり考えてこの計画を練って、計画できているわけなんですけども、考えていただきたいなというふうに思います。

 そして、2点目の問題です。

 項目は大多数の幸せを導くことについてとテーマをしておりますが、やっぱり県政の目的というのは、多くの人を幸せにすることをするのが本道だというふうに思います。これに関わる人にとっては明るい未来が得られるとしても、それ以外の人たちにとって和歌山県で暮らすことの幸せにはつながらないのではないだろうかということです。

 県政は、最大多数の幸せを目指すべきであり、最小特定者の特別な幸せであってはいけないと思います。IR誘致の本質的な問題は、大多数の幸せを導くための答えを出すことにあろうかと思います。つまり、僕が思うことですが、多くの人が楽しめて幸せを感じられるようなものを誘致すべきだということです。

 例えば、もし和歌山IRがするとすれば、週末にイベントが開催されていて、行って楽しめるであるとか、疾病でお悩みの方が先端医療を受けられるとか、そういった環境が整っている。あるいはIRに観光に来たお客さんが、ここにとどまることなく、県内の観光にあちこちに散らばってくれるという、こういうことを仕掛ける必要が、これもっとあるのではないかなというふうに思います。

 そういったものがなくて、特定の人だけが楽しめる、こういう施設になってしまいますと、それは違うでしょうということになりますし、お客さんを囲い込んでしまうようなら、地域にも経済界にも受け入れられることはないと思います。

 施設周辺地域、県全体が潤う状況にすべきだと思いますが、田嶋理事の答弁をお願いしたいと思います。

○副議長(鈴木太雄君) 理事。

  〔田嶋久嗣君、登壇〕

○理事(田嶋久嗣君) 議員御指摘のとおり、IRは最小特定者の特別な幸せではなく、大多数の幸せを導くためのものでなければなりません。そのため、和歌山IRは、カジノやMICEなど、特定目的での施設来訪者向けの施設だけではなく、プールドームやeスポーツセンター、キッズ広場など、ありとあらゆる人々が楽しめるボーダーレスな娯楽空間をテーマにした施設を配置することで、ビジネスからレジャーまで、また大人から子供まで、幅広い来訪者が満足できる施設とします。

 また、IR誘致によりもたらされる経済効果、雇用効果は、IR施設内にとどまるものではなく、施設外の商業や飲食業、宿泊業はもちろん、農林水産業、交通運輸業、警備業、情報通信業などに至るまで様々な産業に及び、県全体に大きな波及効果をもたらします。その結果、県内産業の給与水準を押し上げることになります。

 さらに、日本型IRには、IRへの来訪客に日本各地の魅力を紹介し、日本各地へ送り出す機能も求められております。和歌山IRにおいては、熊野古道や熊野三山など県内の観光資源の魅力を臨場感あふれる形で発信し、来訪者を県内各地へ送り出すことで、和歌山県内での旅行消費額の向上を目指します。

 和歌山IRの実現により、和歌山県で暮らす多くの県民の生活が豊かになり、本県が持続的に発展できると考えています。

○副議長(鈴木太雄君) 片桐章浩君。

  〔片桐章浩君、登壇〕

○片桐章浩君 田嶋理事からも今回もお答えいただきまして、IRというのは本当に、何ていうんでしょう、大きな力を持つような産業なんですよね。大きなエンジンみたいなものを持っている設備なので、そういった強力なエンジンを搭載するのであれば、やっぱりリーダー、引っ張っていく県というのは、強いリーダーシップをやっぱり持ってほしい、芯が強くあってほしいというふうに思いますし、船体、これ和歌山県の観光とか経済、産業界、これはやっぱり強くならねばもたないというふうに思います。経済や雇用、文化、スポーツ、福祉など全ての分野において今よりも強化して発展させていく、こういうことをしなければ、和歌山県民の生活、文化が維持できないのかなというふうに思いますので、こういう計画を誘致している県の皆さんにはリーダーとしての覚悟と責任を持っていただきたいというふうに思います。

 そして、この項目の最後の質問に移ります。

 県民の皆さんが、和歌山県IRを県の利益と考える条件の一つとして、和歌山市あるいは海南市から和歌山マリーナシティに至る周辺地域の道路の整備、それから交通機関の利便性を向上させることにあろうかと思います。

 交通分析結果によりますと、国道42号の混雑悪化が懸念されることや、マリーナ入口、琴の浦の交差点において、ピーク時に交通渋滞が予測されるという問題が指摘されております。

 また、公共交通機関に関しては、増便を伴うほどの混雑影響はないと予測されております。拠点駅から和歌山IRまでの交通アクセスの強化が必要と同時に問題提起がされておりますが、今のところ具体的なのが出ていないかと思います。

 これらの道路の渋滞対策としてのハード整備は当然必要だと思いますし、大阪のIR事業者が公共交通の事業費を負担するように、和歌山県として事業者に道路整備に関わる応分の費用負担を求めるべきではないかと思います。特に混雑時の交通量抑制などで対応すべき──計画に示されています。混雑時は交通量を抑制することで対応すると書いていますが、こんな簡単なものでは解決できるような案件ではないと思います。

 地元の皆さんの理解と、新しい世界に挑戦する、飛躍する和歌山県にふさわしい道路整備を行うべきだと考えますが、いかがでしょうか。田嶋理事の答弁をお願いします。

○副議長(鈴木太雄君) 理事。

  〔田嶋久嗣君、登壇〕

○理事(田嶋久嗣君) 「新しい世界に飛躍する和歌山」にふさわしい道路整備を行うべきという御質問ですけれども、現時点において行っています大規模開発地区関連交通計画マニュアルに基づく交通量の分析では、マリーナ入口、琴の浦交差点などにおいて交通渋滞が想定されますが、交差点改良などのハード対策や信号現示の調整などのソフト対策を行うことで、周辺住民などへの影響を最小化できると考えています。

 一方、区域認定後、より詳細な分析を改めて実施し、追加の対策が必要となった場合は、道路管理者、交通管理者と協議、調整を行いながら、必要な対策の実現に向けて連携して取り組んでまいります。

 次に、道路整備の費用負担についてです。議員御指摘のとおり、IR誘致は大企業が進出するようなものですが、和歌山県が企業を誘致する際に、周辺の交通量の増加により道路整備が必要となる場合には、整備に要する費用は行政側が負担し、企業などには負担を求めないことが一般的です。

 このため、和歌山IRにおいても、交通アクセス整備に係る事業費の負担等については、あらかじめ事業者に費用の負担を求めるのではなく、各関係者とIR事業者で協議することを条件に事業者公募を行いました。

 現時点では、先ほど申し上げたマリーナ入口などの交差点改良等に約40億円かかると試算しており、うち約20億円を事業者が負担し、残額は入場料納入金を活用することとしています。

 今後、追加の対策が必要となった場合の事業費の負担等については、各関係者とIR事業者で協議してまいります。

○副議長(鈴木太雄君) 片桐章浩君。

  〔片桐章浩君、登壇〕

○片桐章浩君 理事のお答えをいただきました。

 今回の説明会の中でも、この道路に関しては、「今の夏の花火大会でも渋滞しているのに、こういうのが来て、本当に年間で1300万人も来るようだったら、慢性的な渋滞で生活が脅かされるやないか」と、こういう声もあったというふうに思います。やっぱりこういったハード整備というのはしっかりしていかなきゃいけませんし、本当に例えば湾岸道路を造ってしまうとか、そういうことも含めて考えていかないことには解決できないのかなというふうに思います。

 また、一部事業者がこの道路改良の費用を負担するというのは、一部というか、かなりの金額ですけども、負担するというのをお聞きしました。

 無理を言うつもりはありませんけども、今後、マリーナシティに至る道路網の整備など予測していないこととか、ここ改良せなあかんという状況があるかも分かりません。そういったときには、ぜひ事業者に負担を求めるという姿勢もしっかりと持ち続けていっていただきたいというふうに思います。

 現時点で計画をよしとしたものではありませんけども、この事業というのは長期にわたるものですから、しっかり事業者との信頼関係を築いて、物が言える、県がしっかり物を言える、こういう歯止めをかけていただきたいというふうに思います。

 それでは、質問項目2点目に移らせていただきます。アユの冷水病対策についてであります。

 新年度予算として、従来そうなんですけども、内水面漁業振興対策の予算が提案されています。その事業内容の一つとして、主要河川における内水面水産資源の増殖を図るため、アユの種苗放流の取組を支援する、こういう施策があります。

 この中で問題になるのが、全国で今言われているアユの冷水病です。冷水病は低水温期の稚魚に発生し、死亡率が高い病気で、和歌山県も例外ではなく、河川に放流されたアユの多くが冷水病になっているとの話を釣り愛好家の方から聞いております。

 和歌山県では、アユの養殖場において、1991年に初めて発生が確認されていて、その後の被害は県内各河川に広がっているようです。

 冷水病の原因は、保菌が疑われている放流種苗やおとりアユなどが河川に持ち込まれていることが原因だと報告されております。

 また、全国的に見ますと、この冷水病は、1987年、徳島県の養殖場で初めて確認されており、その後、和歌山県を含む全国に拡大し、現在は、養殖アユだけではなく、天然アユにも影響が出ているようです。

 この冷水病は5月から6月に発生することが多いようですが、これは水温が病原菌の活動に適した16度から20度ぐらいの水温になるからで、冷水病の病原菌は水の中だけで生きられるので、冷水病に感染したアユを河川に放流してしまうと、また冷水病が広がってしまう、こういう循環が繰り返されていると思います。

 和歌山県では、これまでも冷水病を抑えるための研究がなされているとは思いますが、残念なことに抜本的な予防や治療法などの対策はないようです。他県では冷水病に強いアユを生産したとの情報もありますが、全国的に、そして和歌山県でもアユに深刻な被害を与えているのは間違いなく、難しいことですが、予防と治療法の研究の成果を出してほしいと思います。

 そこで、アユの冷水病の現状、それから和歌山県の対策について、農林水産部長の答弁をお願いします。

○副議長(鈴木太雄君) 農林水産部長岩本和也君。

  〔岩本和也君、登壇〕

○農林水産部長(岩本和也君) アユの冷水病は、低水温期に発症する致死率の高い細菌感染症であり、主な症状としては、えらや内臓の貧血及び体側や尾部、尾の部分での潰瘍の発現などがあります。

 議員お話しのとおり、県内では1991年に発生が確認され、その後、県内各河川で拡大したため、関係機関と連携し対応に当たってまいりました。

 冷水病菌は、河川にアユが存在しなくなる冬場にも残存するため、抜本的な対策は非常に難しい状況ですが、アユの放流等による外部からの冷水病菌の持込みをできるだけ抑えることで被害の低減を図っています。

 具体的には、放流種苗の保菌検査や飼育施設での消毒の徹底に加え、病気に強い海産稚アユの放流などを指導しているところです。

 また、県内の内水面漁業協同組合を通じて、遊漁関係者に対し、釣り具の消毒や、おとりアユの河川間移動の禁止を周知しております。

 さらに、県水産試験場におきましては、冷水病の発生を抑えるため、ワクチンの製造メーカーと共同で冷水病の予防に有効なワクチン開発や予防技術の研究に取り組んでおり、十分な安定性の獲得にはまだ課題を残すものの、ワクチン投与による予防効果の確認という一定の成果を見いだしたところです。

 県としましては、引き続き、健康な種苗放流の指導に加え、関係者への巡回指導や啓発による防疫対策を行うとともに、有効なワクチンの実用化等に向け取り組んでまいります。

○副議長(鈴木太雄君) 片桐章浩君。

  〔片桐章浩君、登壇〕

○片桐章浩君 全ての答弁をいただきました。

 今回、令和4年度新政策についての議論を交わすということで、多くの方に、今日は議場に来ていただきました。この中には、まん延防止等のときに非常に飲食関係で厳しい環境にありながら、何とか和歌山を元気にしようとイベントを打ってくれた方もいらっしゃいます。それから、コロナの感染に気をつけながら、所得が上がらない中、障害者の施設をしっかり守ってきて、感染を出していない、こういう経営者の方もいらっしゃいます。そのほか、本当に病気で苦しみながら、実はどれだけあと命がもつか分からない、そういう環境、健康状態にありながら、県政に期待してということで傍聴に来てくださっている方もいらっしゃいます。

 そういった全ての人の思いをぜひ知事、当局の皆さん、受け取っていただきまして、大多数の幸せを導ける和歌山県であってほしいと思います。

 以上で、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

○副議長(鈴木太雄君) 以上で、片桐章浩君の質問が終了いたしました。

 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。

 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。

 本日は、これをもって散会いたします。

  午後2時36分散会

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