令和3年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号(全文)


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令和3年2月 和歌山県議会定例会会議録 第6号

議事日程 第6号

 令和3年3月9日(火曜日)

 午前10時開議

 第1 議案第1号から議案第17号まで、議案第34号から議案第59号まで、議案第61号から議案第64号まで、議案第66号から議案第70号まで及び議案第73号から議案第85号まで(質疑)

 第2 一般質問

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会議に付した事件

 第1 議案第1号から議案第17号まで、議案第34号から議案第59号まで、議案第61号から議案第64号まで、議案第66号から議案第70号まで及び議案第73号から議案第85号まで(質疑)

 第2 一般質問

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出席議員(42人)

 1番 鈴木德久

 2番 山家敏宏

 3番 中本浩精

 4番 堀 龍雄

 5番 藤山将材

 6番 岸本 健

 7番 井出益弘

 8番 宇治田栄蔵

 9番 北山慎一

 10番 玄素彰人

 11番 中西峰雄

 12番 秋月史成

 13番 森 礼子

 14番 濱口太史

 15番 尾崎要二

 16番 冨安民浩

 17番 川畑哲哉

 18番 玉木久登

 19番 鈴木太雄

 20番 岩田弘彦

 21番 吉井和視

 22番 谷 洋一

 23番 佐藤武治

 24番 岩井弘次

 25番 中 拓哉

 26番 多田純一

 27番 新島 雄

 28番 山下直也

 29番 中西 徹

 30番 谷口和樹

 31番 藤本眞利子

 32番 浦口高典

 33番 山田正彦

 34番 坂本 登

 35番 林 隆一

 36番 楠本文郎

 37番 高田由一

 38番 杉山俊雄

 39番 片桐章浩

 40番 奥村規子

 41番 尾﨑太郎

 42番 長坂隆司

欠席議員(なし)

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説明のため出席した者

 知事         仁坂吉伸

 副知事        下 宏

 知事室長       細川一也

 危機管理監      森田康友

 総務部長       田村一郎

 企画部長       田嶋久嗣

 環境生活部長     田中一寿

 福祉保健部長     宮本浩之

 商工観光労働部長   大山 茂

 農林水産部長     角谷博史

 県土整備部長     庄司 勝

 会計管理者      城本 剛

 教育長        宮﨑 泉

 公安委員会委員    竹田純久

 警察本部長      親家和仁

 人事委員会委員長   平田健正

 代表監査委員     保田栄一

 選挙管理委員会委員長 小濱孝夫

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職務のため出席した事務局職員

 事務局長       中川敦之

 次長         井邊正人

 議事課長       山田修平

 議事課副課長     岩井紀生

 議事課議事班長    岸裏真延

 議事課主査      松田太郎

 議事課主査      伊賀顕正

 議事課主事      松本 悠

 総務課長       嶋岡真志

 政策調査課長     神川充夫

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  午前10時0分開議

○議長(岸本 健君) これより本日の会議を開きます。

 日程第1、議案第1号から議案第17号まで、議案第34号から議案第59号まで、議案第61号から議案第64号まで、議案第66号から議案第70号まで及び議案第73号から議案第85号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、併せて日程第2、一般質問を行います。

 17番川畑哲哉君。

  〔川畑哲哉君、登壇〕(拍手)

○川畑哲哉君 皆様、おはようございます。

 本日は、3・9(サンキュー)、ありがとうの日でございまして、初心を忘れず、今までお関わりいただきました全ての皆様に感謝を忘れず、引き続き県勢のさらなる発展に邁進してまいりますことを、この場をお借りしまして改めてお誓いを申し上げます。

 岸本健議長よりお許しをいただきましたので、以下、通告に従いまして、心を込めて一般質問をさせていただきます。

 埼玉県といえば、全国5位となる人口およそ734万人にして、その人口密度は全国第4位でございます。くもん出版社の日本地図によりますと、主な特産品はホウレンソウとカブであり、今年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公にして、日本資本主義の父と呼ばれた渋沢栄一氏の故郷でもございます。さらに、国内最大規模の屋内ロックフェス「VIVA LA ROCK」が開催される世界最大の室内総合アリーナ、さいたまスーパーアリーナを要することでも有名でございます。

 そんな埼玉県にて、昨年3月27日、全国初となりますケアラー支援条例が議員提案により制定されました。その背景には、国民生活基礎調査によりますと、介護者の7割が悩みやストレスを抱えていることや、高齢者虐待防止学会によりますと、虐待の6割は孤立介護であること、さらに介護離職が年間約10万人、介護殺人が年間約40件、介護・看護疲れによる自殺は年間約300件等により、社会的、政策的な支援が必要でありながら、法整備ができていないということが挙げられています。

 この埼玉県が条例制定に向けて研究する途上、モデルとして実際に視察に行かれたオーストラリアの介護政策は、在宅介護、施設介護、ケアラー支援の三つを柱としているとのことです。

 ちなみに、埼玉県ケアラー支援条例では、第2条で、ケアラーとは無償で介護や看護をする人、ヤングケアラーとはケアラーのうち、18歳未満と定義しています。また、第9条では、県はケアラーの支援施策を推進するための計画を策定と規定し、これは、ケアラーの置かれている状況は多様であり、様々な施策を全て当該条例に規定することは困難であると考え、推進計画の中で具体的施策を規定するものとしたとのことでございます。

 そして、条例制定による効果ですが、例えば、新型コロナウイルス感染症対策としては、ケアラーが感染、隔離された場合にもケアが継続されるように、在宅介護を第三者に引き継げるシステムや、引き継げる介護者がいない場合には、一時保護ができてケアが継続できる体制を構築すべく、約4億円を予算化したそうです。

 さらに、学識者や支援機関、教育機関等からの委員15名による有識者会議を立ち上げ、実態調査の実施や具体的支援策策定等のケアラー支援計画を県議会に報告するとしています。

 和歌山県でも、誰もが安心して介護や看護ができる社会づくりを一層進めていくべきでございますが、ケアラーが介護や看護をする対象は、未成年者や障害者、高齢者、重病者等、介護度合いも含めて多岐にわたり、和歌山県庁内でも担当は複数の課に及びます。

 ケアラー支援は多様であり、個別具体の事例ごとに向き合った丁寧な対応が求められることから、対応する側の対応力や、それぞれの担当課及び市町村との情報、課題共有や連携が必要であり、ヤングケアラー支援では学校との連携も必要となってきます。

 新型コロナウイルス感染症等の感染症対策を考える上でも、ケアラー支援を強力に、そしてスピード感を持って進めていく必要があると私は考えていますが、県のお考えや取組状況はいかがでしょうか。福祉保健部長にお尋ねいたします。

○議長(岸本 健君) ただいまの川畑哲哉君の質問に対する答弁を求めます。

 福祉保健部長宮本浩之君。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) 県では、介護を必要とする高齢者が安心して生活を送り、家族など介護を行う者が過重な負担を強いられないよう、必要な介護サービスの支援に取り組んでおります。

 サービスを利用するに当たり、ケアマネジャーは、本人や家族と話し合い、生活状況をしっかり聞き取って把握し、レスパイト効果があるサービスを組み込みながら適切なサービスを導入するなど、介護者の負担が過度にならないように取り組み、その後も定期的に自宅を訪問し、状況に応じてサービスを調整するなど、無理のない介護体制が築けるように努めています。

 また、地域包括支援センターは、介護に関する総合相談窓口として、介護サービス事業者、医療機関、民生委員などの地域の関係者と連携し、地域の高齢者や家族の状況について把握に努め、介護が必要な方のサービス利用につなげるなど、個別のケースごとに、きめ細かい支援を行うとともに、介護者に対する相談支援を行っています。

 議員御指摘のとおり、コロナ禍の中でも必要なサービスが受けられるよう、介護サービス事業者に対して、県からも徹底した感染対策をお願いしているところでありますが、高齢者をはじめ介護を必要とする方が安心して生活を送ることができるよう、引き続き支援体制、相談窓口機能の強化に努めてまいります。

○議長(岸本 健君) 川畑哲哉君。

  〔川畑哲哉君、登壇〕

○川畑哲哉君 私は、今から3年ほど前に、和歌山県内の高校に通うヤングケアラーの存在を知らされました。もちろん、当時はまだヤングケアラーという言葉は聞かれませんでしたが、高校生にして施設に入る祖母のケアをしながら何とかクラブ活動を続ける、いわゆるヤングケアラーの姿でございました。本人だけでなく、周りの人間もどのような公的支援を受けられるのか分からないまま、必死に過ごす一日一日を重ねていたことと推察いたします。

 埼玉県では、昨年6月より、県内約5万5000人の全高校2年生を対象に実態調査を開始し、9月に回収をされています。結果、ケアラーである、過去にケアラーであったとの回答は4.1%の1969人、つまり25人に1人がヤングケアラーあるいはヤングケアラー経験者ということでございます。また、そのうち約6割は女性で、ケアをしている相手は、祖父母以上が36.9%、その状況は病気が28.6%、ケアの頻度は、毎日が35.3%、ケアを担っている理由は、親が仕事で忙しいためが29.7%ということでございます。さらに、6割近くが孤独やストレスを感じる、勉強の時間が十分に取れないなどの支障を感じ、6割以上が相談できるスタッフや場所などの支援を求めていると御報告されています。

 国では、先日、山本博司厚生労働副大臣をトップに、ヤングケアラーの支援に向けた福祉、介護、医療、教育が連携したプロジェクトチームを立ち上げたとメディアで報じられました。

 ヤングケアラーは、過度な責任や負担を背負うことで、学業や人格形成、進路等に深刻な影響が出るという課題があるものの、家庭内のデリケートな問題であったり、本人や家族に自覚がなかったり、支援が必要であっても表面化しにくい構造となっています。

 現在、厚生労働省と文部科学省が連携して全国調査を実施中で、結果は今春に出るとのことですが、あくまでサンプル調査であり、1人でも多くの支援が必要なヤングケアラーを救うためには、個別具体的なケースの調査に着手をするべきではないでしょうか。

 日本ケアラー連盟の日本女子大学名誉教授・堀越栄子代表理事は、「子供が安心してSOSを出せる環境をつくり、本人のニーズに合った支援策を現場で提供できる体制が必要だ」と話されています。

 その第一歩として、和歌山県でも速やかに全高校生、せめて全高校2年生を対象とした実態調査を実施すべきと私は考えますが、いかがでしょうか。福祉保健部長にお尋ねいたします。

○議長(岸本 健君) 福祉保健部長。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) 本県の介護者の状況については、昨年度実施した和歌山県高齢者等生活意識調査では、30歳未満と回答した方は全体の0.4%と、埼玉県での調査結果の1.9%と比べても、介護者に占める若い方の割合は少ない状況になっています。

 また、学校現場では、家族の介護等が要因で学校を欠席しがちなケースも見られたこともありますが、そのような場合は、医療、福祉など関係機関とも連携しながら対応しているところです。

 しかしながら、ヤングケアラーの実態把握については、本人が相談できない場合や、ヤングケアラーであることを認識していない場合など、全体像の把握が難しい状況にあります。

 現在、議員御指摘のとおり、ヤングケアラーの実態を把握するため、厚生労働省と文部科学省が連携し、中学校2年生及び高校2年生を対象に無作為抽出の全国調査が実施されており、今後、支援を検討するため、調査結果が分析されることとなっています。

 県としましては、国の調査・分析結果の動向を注視しながら、県独自の調査の必要性について検討してまいります。

○議長(岸本 健君) 川畑哲哉君。

  〔川畑哲哉君、登壇〕

○川畑哲哉君 再質問いたします。

 今御答弁にもございましたが、ヤングケアラーの実態把握が困難な理由の一つは、御本人がヤングケアラーであるということを認識できていない場合があるということでございます。

 学校を欠席するなど影響が表面化すれば、学校現場から関係機関へつないでいくというような対応をすることができると思いますが、表面化していない状況で、支援が必要な、あるいは支援が受けられると分かれば支援を求める、そんな潜在的なヤングケアラーの把握を学校現場に求めていくというのは、理想ではあるけれども、なかなか現実には難しいのではないかというふうに思います。

 そこで、潜在的なヤングケアラーの皆様にも、せめて自覚を促せるような、これまでより踏み込んだ啓発の取組をするべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。もう一度、福祉保健部長にお尋ねいたします。

○議長(岸本 健君) 福祉保健部長。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) 議員御指摘のとおり、介護の制度、福祉の制度、こういったことを生徒本人がきっちり理解することはもちろんですし、また学校現場のほうでも、そういったことについて理解を深めていくということは極めて重要だと考えています。

 教育委員会と連携しながら、パンフレット、リーフレットを活用しながら周知に努めてまいります。

○議長(岸本 健君) 川畑哲哉君。

  〔川畑哲哉君、登壇〕

○川畑哲哉君 前向きな御答弁をいただきまして、ありがとうございました。

 パンフレット、リーフレット等を御活用いただけるということですので、もし新たに御作成いただけるようでしたら、ヤングケアラーとはとか、どんな支援が受けられるのかとか、どういう手続を経てそういう支援が受けられるのかとか、2次元バーコードなんかも御活用いただいて、必要な方に必要な情報がもたらされるような、それでいて分かりやすい、そんな啓発のグッズを御活用いただきたいというふうに思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは次に、教育長にお尋ねいたします。

 実態調査や学校生活の中で課題を抱えるヤングケアラーに出会った際に、学校現場ではどのような対応が取られているのでしょうか。県教育委員会の取組について、御答弁をどうぞよろしくお願いいたします。

○議長(岸本 健君) 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 学校におけるヤングケアラーの大きな問題は、本来、大人が担うべき家事や家族の世話、介護等の対応を子供が日常的に担うことで、学業や学校生活全般に悪影響を及ぼし、将来の展望に支障を来すことです。周囲からこの問題は見えにくく、相談しづらい状況にあることが多いので、子供が長期にわたって抱え込み、事態が深刻化することもあります。

 学校では、学級担任や養護教諭等を中心に、日々子供たちとコミュニケーションを充実させ、ささいな変化にも気づくよう努めることが重要です。

 その上で、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーなどの専門スタッフとも連携をしながら、チームとして子供に寄り添った丁寧な対応を行うことが大事です。

 さらに、状況に応じて児童相談所や市町村の福祉部局等関係機関と連携を図り、適切な支援を受けることができるよう対応することも必要だと思います。

○議長(岸本 健君) 川畑哲哉君。

  〔川畑哲哉君、登壇〕

○川畑哲哉君 このヤングケアラー支援につきましては、福祉保健部、県教育委員会をはじめ各関係機関の連携をより密にして、御尽力いただきますように要望を申し上げます。私としましては、ヤングケアラーの実態把握には、やはり全数調査による実態調査が必要であると思います。ただ、法律や条例による根拠が乏しい現状では、プライバシー等とのバッティングや予算的な問題もあって、踏み込みにくいであろうことも理解できます。これよりは、それらの課題解決に向けて、お一人でも多くの支援が必要なヤングケアラーが一日でも早く救われますように、御一緒に取り組んでいただきますようお願いを申し上げます。

 それでは、次の質問に入ります。

 昨年8月に岸本健議長、濱口太史副議長、鈴木太雄議員と御一緒に千葉県を訪れ、太平洋岸自転車道の起点モニュメント除幕式に出席させていただきました。8月2日日曜日午前11時、JR銚子駅前にて、越川信一銚子市長、林幹雄自民党幹事長代理をはじめ、地元の皆様から本当に温かくお迎えいただき、式典がスタートしました。

 新型コロナウイルス感染症の感染予防に最大限注意を払われたしつらえで式典は進行し、御来賓の方々から様々な当該自転車道への思いが語られ、林代議士からは、国政の場にて自転車活用推進議員連盟が発足されて50年になることも御紹介されました。

 銚子市を起点にした1487キロメートルに及ぶ6県をまたぐ自転車道の終点は、和歌山市でございます。漁業やしょうゆなど、海路によってつながれたゆかり深い千葉県と和歌山県が、半世紀の時を経てサイクリングロードという陸路によってもつながれることになります。

 式典の後、起点モニュメントへ徒歩にて移動し、除幕のひもを引かせていただきました。千葉県のキャラクター「チーバくん」のりりしいサイクリング姿をかたどったモニュメントは、多くのサイクリストや訪れる方々に親しまれることでしょう。

 太平洋岸自転車道への皆様の大いなる挑戦と、そこで様々なドラマが紡がれますことを御期待申し上げますとともに、つながります6県のますますの繁栄を祈念いたします。

 その後、九十九里浜周辺等のサイクリングロードや道の駅を視察させていただき、成田空港より空路、関西国際空港を経て和歌山県へ戻ってまいりました。

 その節、式典出席や各地の視察など、信田光保千葉県議会議員をはじめ多くの御関係の皆様にお世話になりました。この場をお借りしまして、改めて心より感謝を申し上げます。

 また、終点モニュメントは、和歌山市にて間もなく整備が完了し、市主催により除幕式が行われるとお聞きしています。何日もかけて遠路を走ってこられたサイクリストの皆様をお迎えするモニュメントの完成を私も楽しみにしています。

 さて、我が国を代表し、世界に誇り得るサイクリングルートを国内外へPRするということで、ナショナルサイクルルート制度を創設すると国土交通省から発表されたのは、令和元年9月9日のことでございました。結果、第1次選定では、茨城県のつくば霞ヶ浦りんりんロード、滋賀県のビワイチ、広島県、愛媛県にまたがるしまなみ海道サイクリングロードの3ルートが指定されています。

 そして今年1月、千葉県、神奈川県、静岡県、愛知県、三重県、和歌山県の6県にまたがる太平洋岸自転車道が、ナショナルサイクルルートの候補ルートに選定されたことが国土交通省より発表されました。我が国を代表し、世界に誇り得るサイクリングルートとして国内外にPRされるという位置づけのナショナルサイクルルート指定をぜひとも受けていただき、国内外の多くのサイクリストたちに集っていただくことで、本県のさらなる発展につながればと願ってやみませんが、その指定に向けてはどのような取組状況でしょうか。県土整備部長にお尋ねいたします。

○議長(岸本 健君) 県土整備部長庄司 勝君。

  〔庄司 勝君、登壇〕

○県土整備部長(庄司 勝君) 本県における太平洋岸自転車道のナショナルサイクルルート指定に向けた取組状況についてお答えいたします。

 ナショナルサイクルルート制度は、自転車活用推進法第9条に規定する自転車活用推進計画に基づき、令和元年9月に創設された制度であり、その指定は国が行うこととなっています。本制度は、ルート設定や走行環境、受入れ環境等、五つの観点から成る指定要件を満たす質の高いサイクリングルートを指定することで、安全で快適なサイクルツーリズムを促し、新たな観光価値の創造や、地域創生を目的としています。

 議員御指摘の太平洋岸自転車道につきましては、本制度の創設以降直ちに、関係する国の機関と6県等を構成員とする太平洋岸自転車道ナショナルサイクルルート指定推進協議会を設立し、指定に向けて取組を始めたところです。

 具体的には、本県の取組といたしまして、全線にわたる統一した案内看板や、矢羽根型路面表示等の設置、レンタサイクル等の受入れ環境の整備、既設サイクルステーション等の太平洋岸自転車道の施設としての位置づけを行ってきたところです。

 本県を含む関係機関において、これらの取組を進め、指定要件を満たしたことから、1月29日に候補ルートに選定され、2月25日に開催された第1回ナショナルサイクルルート審査委員会により指定に向けた審査が始まったところです。

 県といたしましては、関係機関と連携を図りながら、審査委員会による審査の際、これまでの取組や指定されることによる効果等を丁寧に説明することにより、早期の指定を実現させたいと考えてございます。

○議長(岸本 健君) 川畑哲哉君。

  〔川畑哲哉君、登壇〕

○川畑哲哉君 次に、太平洋岸自転車道の今後の活用策についてお尋ねいたします。

 ナショナルサイクルルートに指定されるとされないにかかわらず、6県の関係者や千葉県とのゆかりを形づくってこられた本県の先人たち、また、この自転車道に思いを寄せられている多くの皆様の御期待に沿えるよう、有意義に活用していくべきでございます。

 そもそも、サイクリング政策とは多岐にわたり、和歌山県庁内でも複数の部局にまたがる政策でございます。道路整備に始まり、地域活性化、観光、健康増進等が挙げられ、自転車による通勤や通学を考えますと、さらに担当部局は広がります。滋賀県のように、担当室を設置している自治体もございますが、それぞれの専門課の連携を強めることで、より広がりのある政策を遂行していくことが可能になるとも考えられます。

 私たちも、令和元年に全国初の実施となりましたサイクリング王国わかやま検定に向けた受験勉強を契機として、自由民主党県議団内に有志の同好会を立ち上げ、機を見てサイクリング活動団体の皆様や担当課の皆様をお招きして、勉強会を開かせていただいています。今後は、そのような場からも県勢発展につながる有意義な政策案を誕生させて、御提案してまいりたいと考えているわけでございますが、サイクリング王国わかやまの確立に向けて、これまでの受入れ環境の整備や誘客促進の取組も踏まえ、太平洋岸自転車道の今後の活用につきまして、県当局としてはどのようにお考えでしょうか。企画部長、商工観光労働部長よりそれぞれ御答弁いただきますようお願いいたします。

○議長(岸本 健君) 企画部長田嶋久嗣君。

  〔田嶋久嗣君、登壇〕

○企画部長(田嶋久嗣君) 県では、これまで、サイクリストが安心して走行できるよう、休憩スペースやトイレ、空気入れ等を備えた約300か所のサイクルステーションの設置やサイクリングマップの作成、ウェブサイト「和歌山県サイクリング総合サイト」やSNSによる情報発信など、サイクリストの受入れ環境の充実を図ってまいりました。

 また、平成28年度から、紀の川サイクリングロードを活用した大規模サイクリングイベント「わかやまサイクリングフェスタ」を開催し、和歌山県がサイクリングに適した魅力ある地域であることを発信してきたところです。

 令和3年度以降は、太平洋岸自転車道をはじめとする県内サイクリングロードのさらなる活用に向け、民間事業者等によって新たに開催されるサイクリングイベントを支援することとしており、これにより、自主的かつ継続的な民間主体のイベントが県内各地でより活発に開催されるものと期待しております。

 あわせて、サイクリストがイベントへの参加や太平洋岸自転車道などを走行することでポイントが獲得できるようにし、ウェブサイトへのランキング表示や完走特典の付与など、何度でも走りたくなる仕組みを構築することとしています。

 今後とも、サイクリストの受入れ環境のさらなる充実に取り組むことにより、太平洋岸自転車道の利用促進につなげてまいりたいと考えております。

○議長(岸本 健君) 商工観光労働部長大山 茂君。

  〔大山 茂君、登壇〕

○商工観光労働部長(大山 茂君) サイクリングは、爽快さ、楽しさを気軽に体感できるアクティビティーであり、従来の交通手段だけでは訪れることのできないような地域を自転車で巡っていただくことで、県内周遊の促進、さらに地域での消費拡大につながるものと考えています。

 このため、県では、県内全域にわたる約800キロメートルのサイクリングロードと世界遺産「高野山・熊野」や絶景、温泉など豊富な観光資源を組み合わせて紹介し、和歌山がサイクリングの最適地であるというイメージを定着させるため、サイクリング王国わかやまとしてその魅力を発信し、誘客に取り組んでいるところです。

 これまで、幅広く誘客を図るため、サイクリング専門誌をはじめ、県観光情報誌「紀州浪漫」での特集や公式フェイスブックで定期的に発信するとともに、海外向けにはCNN、BBCや、世界最大のスポーツメディア・ユーロスポーツのウェブサイトでのプロモーション動画の配信、また、元有名ロードレーサーをインフルエンサーとして本県に招聘し、SNSで世界に発信、さらに、有名アニメとのタイアップなどにより、国内外に向けて情報発信を積極的に行ってまいりました。

 また、受入れ環境については、サイクリストが安心、快適に滞在できる宿泊施設として、「サイクリストに優しい宿」を本年2月末現在で65施設を認定するとともに、首都圏からのサイクリスト向けに南紀白浜空港を「サイクリストに優しい空港」に認定するなど、充実を図ってきたところです。

 今後、本県を含む太平洋岸自転車道がナショナルサイクルルートに指定されることになれば、県内にある他のサイクリング推奨ルートと結びつけ、太平洋岸自転車道を十分に活用する取組として、まずは、現在継続で実施しているモバイルスタンプラリーの特別版を新たに企画するなど、県内指定ルートの周遊促進を図るとともに、情報発信も強化しながら、国内外に誇れるサイクリング王国わかやまとしての地位を確立するよう取り組んでまいります。

○議長(岸本 健君) 川畑哲哉君。

  〔川畑哲哉君、登壇〕

○川畑哲哉君 世界に誇れるサイクリング王国わかやまの確立に向けて、ぜひとも引き続き頑張っていただきたいと思います。

 両部長の御答弁から、ポイント制度やスタンプラリーのお話がございましたが、それは非常にシンプルなルールですが、魅力的でいいと私も思います。

 先月、私も、県が開催しているスタンプラリーの検証をやってみました。「わかやまの休日2ndスタンプラリー」でございます。県内12か所のグランドスラムを達成されました岸本健議長には及びませんが、私も楽しみながら5か所で押印をさせていただき、行く先々で誘客の御繁盛具合をお尋ねしましたところ、どのスタンプポイントでも押印に来られるお客様は多いですよと、その効果を実感されているようでございました。現在、わかやま記紀の旅周遊スタンプラリーに挑戦中でございます。

 引き続き、和歌山ならではの魅力的なスポットと魅力的な景品の組合せによるすばらしい企画を繰り出していただきますように、御期待を申し上げます。

 それでは、次の質問に入ります。

 2019年12月定例会におきまして登壇させていただいた際に、私たちの有志のチーム「Tosaka Labo.」主催にて避難所泊体験事業「共助大作戦」を開催させていただいたこと、また、静岡県が考案されました避難所運営ゲーム・HUGを活用したことなどを御報告させていただいた上で、本県オリジナルの避難所運営ゲームを作成すべきと御提案させていただきました。

 この共助大作戦の開催理由は、自助、共助、公助と声高に叫ぶものの、自助には限りがあり、公助は常に間に合うとは限りませんので、1人でも救える命を救うためには共助が極めて大切であり、しかし、現代の生活において、共助キャリアを積む機会が潤沢にあるとは言えないこと、そもそも私たちの周りには、生まれてこの方、避難所に避難した経験のある人が少なく、最初の3日間でストレスのピークがやってくると言われる避難所生活への備えが脆弱であること、さらに避難の際に用意するグッズを机上の学としては把握できていても、実効性を持った認識はできていない場合が多いこと、また、避難所生活を送る方々に対する慰問や激励のキャリアも乏しいこと、加えて、避難所内をもっと衛生感があり、もっと快適感のある空間構築を提案すべきなどの思いから、それらを実体験によってクリアしていこうということでございました。

 また、避難所運営ゲーム・HUGを活用しましたのは、多様な価値観が集う避難所という空間をスムーズに運営していくためには、事前のシミュレーションが大切であり、HUGは参加者が一丸となって避難所運営のシミュレーションができるツールとして作成されたものであったからでございます。

 その折、我が家のハリネズミ・トリニティーの飼育記も御紹介させていただきましたが、大なり小なりの反響を呼び、多くの皆様からハリネズミの生態や飼育法についてお尋ねをいただきました。

 間もなくコロナ禍が始まり、ステイホーム期間へ入ったことで、これまで以上に多くの皆様がハリネズミをはじめとするペットを飼い始めたとお聞きしています。

 私が懇意にしていただいている方は、カメレオンを飼い始め、思いが高じて、餌となるコオロギを自家繁殖させ出したとのことでございましたので、避難所へ避難される際には、恐らくそれらと御一緒にされることでしょう。

 先月13日23時7分頃、福島県沖を震源としてマグニチュード7.3の地震が発生しました。宮城県と福島県で最大震度6強が観測され、東北新幹線が長期運休し、各地で断水や停電が起こり、一部地域で一時携帯電話が使用できなかったり、つながりにくい状態になったりなどの被害が出たとのことでございました。

 その2日後の15日13時28分頃には、和歌山県北部を震源とするマグニチュード4.1の地震が発生し、この県庁舎も随分揺れたとお聞きしました。予測し切れない災害の発災時期がすぐそこまで来ているのではとの思いが頭をよぎりました。

 感染症の感染拡大期に災害が発災しますと、感染予防に留意しながらのさらに困難な避難所運営が求められます。ますます、HUGのようなゲーム感覚で避難所運営のシミュレーションができるツールを活用して、共助キャリアを積んでいく必要性が高まってきていると思います。

 とはいえ、HUGは、静岡県の考案により、登場する地名や人名、絵柄は静岡県にゆかりのあるものとなっていることから、和歌山県民の皆様になじみのある地名、人名、絵柄が登場する和歌山県のオリジナル避難所運営ゲームを作成するべきと御提案させていただきましたところ、森田康友危機管理監より「本県の実情に合い、誰もが気軽に参加でき、避難所の生活や運営について身をもって体験できる和歌山県オリジナルを開発する方向で検討してまいりたい」と、極めて前向きな御答弁をいただきました。

 そこで、森田危機管理監にお尋ねいたします。

 あれから1年と少しがたちました。その後、県オリジナルの避難所運営ゲームの作成状況はいかがでしょうか。また、完成後はどのような活用法を考えていらっしゃるんでしょうか。御答弁よろしくお願いいたします。

○議長(岸本 健君) 危機管理監森田康友君。

  〔森田康友君、登壇〕

○危機管理監(森田康友君) 議員から御提案いただきました本県オリジナルの避難所運営ゲームの作成の進捗状況についてでございますが、県庁内にはいわゆるボードゲームのサークルもございまして、そこのメンバーの御意見も反映させながら、和歌山県独自のボードゲームとなるよう検討してきたところでございます。3月末までに完成させて、公表したいと考えております。

 ゲームの構成要素は二つございまして、南海トラフ地震発生後、津波から逃げ切るための避難行動と、避難所内で発生する様々な課題への対応を模擬体験できるようにしております。

 また、ゲームで使用するボードやカードには、和歌山県らしいイラストや県、市町村の施策を取り入れるなどの工夫もしているところでございます。

 次に、完成後の活用法についてでございますけれども、県で行っております「紀の国防災人づくり塾」や「出張!減災教室」などで活用していくとともに、市町村の防災訓練や各地域での自主防災組織の活動等においても活用いただけるよう、説明会を実施してまいります。また、小中学校や高等学校等の防災学習においても活用いただけるよう、関係機関に働きかけてまいります。

 さらに、一般への貸出し用として約400セットを準備することとしておりまして、振興局や市町村を通じて、県民の皆さんに貸出しを行うほか、より多くの方々に活用いただけるよう、ホームページからも印刷できるようにしたいと考えております。

 県といたしましては、より多くの県民の皆さんに体験していただき、楽しみながら、津波から逃げ切るための迅速な避難行動や円滑な避難所の運営方法について理解が深まるよう、引き続き取り組んでまいります。

○議長(岸本 健君) 川畑哲哉君。

  〔川畑哲哉君、登壇〕

○川畑哲哉君 うれしい御答弁をいただきました。完成を心待ちにしています。

 御答弁にございましたが、例えば、各小学校単位くらいで幼少時より避難所運営ゲームに慣れ親しむことで、和歌山の人や和歌山で生まれ育った子供は避難所運営に強いと呼ばれるようになることも期待できます。もちろん、有事の際には、培った知識やキャリアで、1人の命も失うことなく難を乗り越えていくことにつながると信じています。引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、最後の大項目に入ります。

 令和3年3月5日付「県民の皆様へのお願い」によれば、会食に関する項目は、特に感染が拡大している地域に出かけて、接待を伴う、遅くまで、集団での会食について自粛を要請しています。加えて、医療・福祉施設の職員には、家族以外との会食自粛を要請しているものの、感染予防、感染拡大防止の観点から、上記の場合において自粛を要請しているのであって、会食をあまねく県民の皆様へ全面的に自粛要請をしているわけではないと私は解釈しています。

 また、新型コロナウイルス感染症の第3波におきまして、和歌山県では、和歌山方式確立による保健行政の御奮闘と県民の皆様の御努力により、緊急事態宣言対象区域となっている、あるいはなっていたわけではなく、飲食店等に営業時間の短縮を要請しているわけでもございません。

 ところが、メディア等を通じた大都会や緊急事態宣言対象区域等の時間短縮営業要請に係る報道、感染拡大状況等の報道の影響が大きいのではと推察しているところでございますが、全国的に全面的な会食控えの雰囲気が形づくられ、会食自粛警察的な地域の目も形成されてきていると聞き及んでいます。和歌山県でも、これらの状況は例外ではなく、地域からの見られ方を気にした会食控えが深刻化し、結果、県内の飲食業も他府県同様に大きなダメージを受けています。

 そこで、私も、1月中旬より勝手ながら自主的な飲食店応援キャンペーンを開始させていただきました。就退職や昇進、事業の成功や開催など、そのときだからこその会合の名目があり、参加人数は3名前後とし、メンバーは近日、感染拡大地域との往来をしていないこと、お店選びは業種別ガイドラインを遵守し、個室などで自分たちだけの空間が確保でき、各自治体のプレミアム商品券やGoToイート事業等への参加など、誘客に向けた企業努力が見えるなどの自主基準を策定し、会合日は数日間隔で設定することで万が一に備え、何らかの不安を感じた際には、家族や当事務所スタッフも含めて自主的にPCR検査を受けられる体制を整えた上で実施をさせていただいています。

 今日に至るまで、スナックやバーも含め、複数のゆかりのある店舗を回らせていただく中で、経営者やスタッフ、また同席者から様々な御意見や御提案、何より心の奥底からの悲鳴めいたお声を聞かせていただきました。まだまだお伺いすべきお店を回り切れてはいませんが、時節を見ながら引き続きこの活動を続けていきたいと思っています。

 飲食店の中には、新型コロナの第1波を乗り越え、第2波の頃にはテークアウトに切り替え、GoToイート事業にも参画しようと思ったら、テークアウトのみの店舗は対象外とされたと肩を落とされたり、テークアウトやデリバリーを試みようにも、そもそもこの観光地には地元の人に外食文化が根づいていないと嘆かれたり、訪れる先々で苦しい胸のうちを吐露していただきます。

 1月下旬から2月初旬にかけては、ほぼ全ての店舗の皆様より、本県における緊急事態宣言発出の可能性を尋ねられ、そのうち多くの皆様が、和歌山県でも緊急事態宣言の発出を政府に要請してほしいという思いを持たれていたと思います。先日、県内の有志の飲食事業所約1000店舗より窮状を訴える署名が集められました。

 私は思います。本県の飲食業の皆様が苦しんでいらっしゃる根本は、緊急事態宣言の発出の有無や、それに伴う協力金の有無ではなく、気持ちの問題でございます。食事に行きたいけれども、社内でいわゆる第1号になりたくないとか、会食に行くだけで周囲から白い目で見られるとか、自粛に至らざるを得ない空気が蔓延しています。食事を共にすることで、より大きな共感や感激を生んだり、同じ釜の飯を食うということで日頃のストレスが緩和されたり、さらなるチームワークを生んだりします。その場から陽性者及び感染者を出さない努力をし合うということも思いやりであり、そのキャリアを重ねることで職場に好循環をつくり出すこともあるでしょう。そんな気持ちをそっと押していく環境づくりこそ、今最も飲食業の皆様が求めていることではないでしょうか。

 マナーとルールを守り、知恵を出して工夫していくことが大切でございます。マナーとルールを守って、会食をはじめとするリフレッシュ活動を行っていただくということが、感染予防、感染拡大防止と社会経済活動の両立、つまりコロナ禍から経済と県民の暮らしを守るということであり、そのための努力を求め、その努力を支援していくということが、新しい世界への対応と挑戦という、これからの本県の2大政策のテーマに沿うものであると私は思います。

 飲食業は、食材や飲料の供給に始まり、裾野の広い業種であり、地域の雇用も守り、何より観光立県を支える大切な業種の一つでございます。

 新型コロナウイルス感染症の終息後には、和歌山県へも多くの観光客が訪れていただけることと予想していますし、心から期待もしています。また、県民の皆様の会食を楽しまれることと思います。その際、県内飲食業の皆様に大いに御活躍いただくためにも、いましばらく踏ん張っていただくべく激励すべきではないでしょうか。例えば、少人数や感染予防に留意されたメンバーで、ガイドラインを遵守しているお店での会食等、会食すること自体を全面的に自粛要請しているわけではなく、何らとがめられるものではないということを今改めて知事に確認させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 飲食業への思いも込めた仁坂知事の明確な御答弁をよろしくお願いいたします。

○議長(岸本 健君) 知事仁坂吉伸君。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) ただいまの御質問、極めてごもっともでございまして、私は、御趣旨に即してずっと言い続けているんです。それで、県の使えるありとあらゆるメディアでそういうことを言っているんですが、なかなか東京を中心にして発信されるメディアのほうが圧倒的にたくさんの時間を使って、飲食店が危ないと言って宣伝をするもんですから、なかなか効果がないというのが、残念に思っているところであります。

 県内の新型コロナウイルスの感染状況を見ると、飲食を介しての感染がこれは確認されております。県でも、徹底的に調べておりますけれども、クラスターも発生しているし、それから、病理学的に言うとマスクを外して口を開けますから、飛沫も飛びやすいということは自明でありますので、感染と飲食が関係ないとは言い切れないというふうに思います。

 しかしながら、生活や経済を考えると、飲食、あるいは外食による飲食は、我々の基本的な営みになっているわけであります。これを押さえつけてしまうのはマイナスが大きいということは明らかであろうかと思います。また、一般に県民の行動を抑制してしまうということは弊害が大きいし、新型コロナによるリスクよりももっと生命の危機に影響を及ぼすようなことが起きかねないというのは、いろいろと考えると明らかなわけであります。

 したがって、本県では、徹底した保健医療の行政の努力によって感染拡大を抑え込んで、県民の行動の制約は最低限にしようと。その一つとして、現在までに、実は会食全体を非難するようなことは1回もしたことはありませんし、全面自粛をしたこともありませんし、飲食店に対する時短要請などの営業の制限をしたことはございません。

 つまり、できる限り県民の皆様への制限をしないで、経済との両立を図り、長く続くであろう新型コロナウイルス感染症の危機を乗り越えようと取り組んでまいりました。その結果、夏以降は、感染の拡大を抑えつつ、県内の経済は回復傾向が続いていたわけです。

 しかし、11月から始まった新型コロナの第3波では、首都圏でこういうことをちゃんとやってくれなかったもんですから、抑え切れなかった感染が次々に爆発して、本県においても感染者数はかなり増えてまいりました。そうなりますと、全国全体で新型コロナへの恐怖心から人々のマインドが冷え込んでしまったというところがあると思います。

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会とか、そういうところで活躍しておられる専門家などが、私に言わせると、より重要な県の保健医療行政による積極的疫学調査の立て直しのことなどすっかり忘れてしまって、飲食店での感染が感染対策の急所だと言って、なかなかいいことをおっしゃるもんですから、有名になってしまいました。また、政府の基本的対処方針でも、飲食店を中心に対策を行うことが示されました。それが毎日のようにマスコミで流されるものですから、全国的に会食すること自体が悪いといった意識が植え付けられてしまったなあというふうに思っています。

 しかしながら、先ほど述べたような考えで、我が県では、飲食を含め、特に制限をしようとは考えておりません。飲食業に関しては、事業者の方々が業種別ガイドライン──これは他の業種もそうなんですが、これを自主的におつくりになって、それを自主的に遵守して営業している方が大多数である。特に和歌山では大多数であるというふうなことが我々の調査でも分かっておりまして、リスクはかなり低いというふうに思います。県民の皆様は、自らもいろいろと言われている感染対策をなされた上で、業種別ガイドラインを遵守したお店かどうかということなんかを選択の念頭に置きながら食事をしていただければというふうに考えております。

 一方、このように、今年になって特に打撃を受けた業種もございますが、飲食業もその一つであります。いつも申しておりますように、計算するとこれは明らかなんですけど、行政として民間の経済活動を、行政が補って民間の経済活動を助けられるかというと、それはかなり限定をしているわけでございますけれども、打撃の大きさから、やっぱり支援が必要だと考えまして、先日議決いただきました2月補正予算に、このような業種への、打撃を特に受けた業種への事業継続のための給付金を盛り込んでいるところでございます。

 このコロナ禍を乗り越えるため、今後も状況に応じて必要な支援に取り組んでいく所存でございますけれども、その一つとして、先ほど言われていたように、和歌山県も宣言をしてもらってくれないかなあというような声が出るのは、実は宣言下の地域に対しては助成が出やすいというところがあるわけであります。

 考えてみたら、感染を大爆発させてしまった地域には助成が手厚くて、それの影響を受けた、とばっちりとまでは言いませんが、その影響を受けた地域への助成は極めて薄いということで、これはちょっとおかしいんじゃないか、全国的に打撃を受けているんだから、それは打撃の度合いに応じて助けられるように制度的に配慮してくれないかということを、同じような地方県がたくさんありますので、その地方県と一緒になって、政府にこれからどんどん働きかけをしようと、そんなふうに思っている次第でございます。

○議長(岸本 健君) 川畑哲哉君。

  〔川畑哲哉君、登壇〕

○川畑哲哉君 力強い知事の御答弁を聞かれた多くの飲食業の皆様が勇気を持たれたことと思います。ありがとうございました。

 いよいよ、歓送迎会のシーズンに入ってまいります。リバウンドや新型コロナの第4波の到来を決して招いてはいかんなあというふうに私も思いますけれども、いろいろと知恵や工夫を凝らしていただいて、各地で本当に思いのあふれる歓送迎の場がつくられて、そして第二の人生に進まれる方や、また新しい人生のスタートを切られる方の英気が養われるような、やる気が出るような、すばらしい思い出がつくられるような、そんな場がたくさん生まれることを期待申し上げたいと思います。

 では、その飲食業への支援についてお尋ねをいたします。

 資本主義の原理にからしますと、私は、休業してお金を得る形よりも、頑張っている事業者や頑張ろうとしている事業者の背中を押したり、時には腕を引いたりする支援こそがあるべきと考えています。

 頑張って努力を重ねることで夢が実現し、思いが形になるからこそ、事業者の皆様も夢を描き、思いを募らせられるのだと思います。そして、そんな夢のある豊かな思いにあふれた店舗を訪れることで、お客様の満足度がさらに上がり、また訪れたいと感じるのではないでしょうか。今本当に苦しい思いをされている飲食業の皆様がもうしばらく頑張ろうと思えるような県の取組や、先ほど知事からも御答弁ございましたが、先日議決をさせていただきました飲食・宿泊・旅行業給付金も含めた具体的な支援策について、商工観光労働部長にお尋ねをいたします。

○議長(岸本 健君) 商工観光労働部長。

  〔大山 茂君、登壇〕

○商工観光労働部長(大山 茂君) 県では、これまで事業を継続し、県経済を牽引していただくことを念頭に、多くの事業者の方々を対象に事業継続支援金や無利子融資など、県独自の包括的な支援策を実施してまいりました。

 その中で、飲食事業者の方については、事業継続支援金で約4000件の申請をいただくなど、県の支援策を活用していただいているところです。

 また、感染予防対策に取り組みながら頑張っている飲食店を応援する国のGoToイート事業については、県から事業者に対し、販売停止や利用自粛の要請を行うことなく、これまで引き続き実施されてきたところです。

 そういった状況の中、県が2月に実施した年末年始における新型コロナウイルス感染症による県内事業者の影響調査によると、県内飲食事業者は、令和2年12月売上高では対前年同月比38%の減少、令和3年1月売上高では対前年同月比47%の減少となっており、特に影響を強く受けているものであると思います。

 そこで、同様に大きな影響を受けている宿泊事業者と旅行事業者も対象にし、飲食・宿泊・旅行業給付金を創設させていただいたところです。

 県では、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、県内事業者の資金繰りに十分対応するため、融資枠1200億円を確保し、経営改善に取り組む事業者への融資等を新設、拡充することとしています。また、デジタル化の導入のための専門家派遣や、事業再構築に取り組むための支援体制の構築などを図ることとしております。

 引き続き、県内事業者の経営状況等を注視し、状況に応じて必要な支援を検討してまいります。

○議長(岸本 健君) 川畑哲哉君。

  〔川畑哲哉君、登壇〕

○川畑哲哉君 答弁いただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

 GoToイート事業、私はいいなと思います。発売された頃よりもローソンの店頭でも買いやすくなってきていますので、ぜひ多くの皆様に御利用いただきたいなと思います。

 いずれにしましても、新型コロナの第1波のときのように具体的な支援策のPRを引き続きしっかりやっていただきたいということと、実のある支援をしていくという意味でも、小まめに現場の声を聞いていただいて、そして飲食業へも情のある御対応、御支援を引き続きしていただきたいということを要望申し上げまして、私の人生13度目の一般質問を終了させていただきます。

 御清聴どうもありがとうございました。(拍手)

○議長(岸本 健君) 以上で、川畑哲哉君の質問が終了いたしました。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 39番片桐章浩君。

  〔片桐章浩君、登壇〕(拍手)

○片桐章浩君 おはようございます。

 議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問を行います。

 本定例会の冒頭、知事から新年度の二つの柱についての説明がありました。その柱の一つが、新しい世界への対応と挑戦の取組です。

 地方分散の動き、デジタル化の推進、生産基盤の国内回帰など、世界が変わる兆しが生まれていることから、和歌山県の強みを生かした戦略で企業誘致を強力に進めていく決意を聞かせていただきました。それは、宇宙関連産業や南紀白浜空港国際線新ターミナルの設置など、将来の我が県の発展の機会となるものが県の強みだというもので、世界に開かれた和歌山県の将来への希望を感じる政策の柱です。

 コロナ禍において仕事や生活スタイルが変わっていますが、その中で頻繁に活用しているツールがリモート会議で、僕も最近はこれを活用しているところでありますが、これまで気づかなかった和歌山県の強み、魅力を世界からの見方で聞くことができています。世界とつながるリモート会議の活用で和歌山県の強みを知ることができ、企業進出に関しては次のような強みがあると感じています。

 一つ目、和歌山市は、関西国際空港に最も近い県庁所在地であること。

 二つ目、南紀白浜空港があること。これは、聞くまでは知らなかったけれど、説明をしてくれたので、和歌山県にこういう空港があることに気づいたもので、地形的なものを調べると関西の玄関口になれる要素があること。

 三つ目、エネルギーの供給県であり、かつ環境意識の高い県であること。

 四つ目、和歌山県には2681年の語れる歴史があること。

 外国のビジネスパーソンと話をしている中で、主にこの4点が強みだと思うようになっております。

 1点目の説明をさせていただきます。

 アジアのある国の方は、「日本の強みは、優れた設備、優秀な人材、高品質の材料、そして成熟した市場にあります」、このように話してくれました。これらの条件は、外国企業にとって投資するのに適しており、加えて日本に進出することは、政情が安定していることや世界に通用する高いブランドイメージを含めて魅力的だということです。

 その中で和歌山県は、「インフラの整った広大な用地が必要であり、首都圏など土地が高くては進出の対象にはなりません。また、関西国際空港が近接していることは、これはとても優れているので、これらの条件に合った県というのは、日本中を探してもそれほど多くありません。アジアから見ると日本は一つであり、和歌山県は国際空港に近く、あるいは有することになり、工業用地もあるので、進出のための条件を満たしているよ」、こういうことであります。

 2点目は、大きな強みです。南紀白浜空港の存在は知らなかったと当初言われましたが、今年10月目途に国際線ターミナルを設置することを伝えると、その和歌山県における位置を確認してくれて、「ここは、関西の玄関口になり得る空港で、ビジネスジェットの格納庫、駐機場を設置することで、世界からビジネスパーソン、世界的企業を迎え入れる空港にできると思います。また、同空港からエアタクシーを配置することで、国内の移動も円滑にすることができるのではないでしょうか」、こういう意見もいただきました。

 南紀白浜空港から和歌山県に入り、ビジネスと観光で宿泊してもらう。和歌山県を拠点として関西圏や首都圏に出かけるスタイルが、アフターコロナの時代の国際ビジネスになるチャンスと思います。

 4点目、これは私たちも実は気づきにくかった視点だったのですが、和歌山県は歴史を語れることが強みだということを再認識させてくれました。

 和歌山県は、日本の中心地に位置していて、歴史と文化、観光と医療などを組み合わせてお客さんを迎え入れることができる観光資源を有しています。そこにビジネスを組み合わせることで、ビジネスでの往来と世界企業の日本でのビジネスの拠点となる滞在型の県になることができるというものです。特に、西日本の新産業のビジネス拠点を目指す素地があると思います。

 我が国は、2681年の語れる歴史がありますが、和歌山県はその全ての歴史に登場する希有な県であるということです。

 この幾つかを紹介させていただきます。

 まず、神武天皇の東征から始まる我が国の誕生に関係していること。ゆかりの地は、和歌山県刊行の「記紀の旅」で訪ねることができます。

 二つ目、平安時代には上皇の熊野御幸、天皇の行幸の舞台であったこと。言うまでもなく、世界が認めた価値を有しております。

 三つ目、世界に類を見ない寛容の精神の地、高野山を有していること。

 四つ目、戦国時代では珍しい共和制を取っていた歴史があること。これは、ルイス・フロイスの「日本史」によりますと、「紀州の地には四つ五つの共和国的な存在があり、いかなる権力者もそれを滅ぼすことができなかった」と記されております。これは、豊臣秀吉の紀州攻めによって壊滅されることになるのですが、こういった中世の歴史がございます。

 その後に続く徳川御三家の文化と歴史が今も残っていること。

 近代、近世です。

 明治時代には、国の近代化のモデルとなり、不平等条約を改正した陸奥宗光外務大臣など多くの偉人を輩出していること。特に世界的なコロナ禍においては、日本で初めて国産天然痘ワクチンの開発に成功した和歌山県の偉人・小山肆成氏も注目されています、こういうことでありました。

 このような話を外国の方から聞きますと、和歌山県は日本の歴史──有史以来ですけども、語れる県であると改めて気づくことができます。日本は、2681年の歴史がありますが、中でも和歌山県はその歴史を語ってくれて体験できる県であることに価値を見いだしてくれているのです。このことを「和歌山県は重厚な歴史を持っている」、こういう言葉でも表現をしてくれております。

 和歌山県が投資先として魅力的な理由の一つに、現在も継承されている優れた歴史があるという点は非常に新鮮です。それは、歴史を大切に育んできたこと、それは文化、環境保全の価値であり、現在最も価値を生み出す資源の一つになっていると思います。

 そして、これらは今からつくれるものではなく、つくることのできない本物であり、外国ではそこに価値を感じてくれているのです。日本人が気づかない、そして和歌山県人もあまり気づくことの少ない価値があり、ここを拠点にビジネスをする価値があるということであります。誇りと自信を持って、和歌山県発展のために企業誘致に取り組みたいというふうに思う次第であります。

 ただ、日本とビジネスをする際に関して、二つの欠点の指摘がありました。その二つというのは、国際感覚とスピード感です。

 まず、国際感覚については相当欠けている、こういう指摘があり、また、日本は慎重に判断する国ですが、意思決定のスピードが遅いことは致命的なので、もっとスピード感を持った判断をすべきです、このような話もしていただきました。なるほどと思うところがあります。

 そして3点目、世界も我が国も2050年のカーボンニュートラル社会に向けた動きが加速しています。エネルギー事業者だけではなく、全ての事業者が環境保全に意識を向けているので、企業誘致においてもその環境を整えることが求められるようになっていると思います。

 そこで、和歌山県でも、これらの企業を誘致するためには、RE100を打ち出すことも戦略としてありだと思います。ある方からは、日本全国から企業誘致の話が来ていますが、和歌山県に進出すべき理由が欲しい、和歌山県に立地する場合の特徴、強みを伝えてほしいという話はありました。

 そこで、このRE100の考えに基づいた工業団地を造り、誘致することは、非常に有効だと考えています。

 このRE100のエネルギーと環境負荷低減を実現することによって、和歌山県は次世代の日本スタンダードの工業団地を目指せることになるのではないでしょうか。その理由として、RE100に加盟しているのは、国内外の世界的な企業だということです。世界を舞台にしている企業は、このRE100のビジョンを持っていますから、これらの企業と交渉するためには、この基準を満たすインフラ環境を整える必要があります。そうしないと、今後、これらの世界的な企業から進出に適切ではないと判断されることも考えられます。

 言うまでもなく、パリ協定以降、脱炭素化は、国だけではなく企業にとっても大きな課題となっています。脱炭素化への取組が企業価値に直結している時代になっているので、投資家の判断材料の一つとしても重視されています。RE100に加盟することは、環境先進企業として認められる条件になっているので、必須だと、これらの企業にとっては、これからの世界にとっては必要だと思います。

 参考までに、加盟企業は、現時点で世界で約300社、日本ではちょうど50社が加盟している状況であります。

 この加盟条件は、影響力のある企業であることが前提ですが、その主たる定義は、次のとおりです。

 世界的な企業または国内で認知度や信頼度が高い企業や多国籍企業及び年間の電力消費料が100ギガワットアワー、ただし、日本企業においては50ギガワットアワー以上の企業となっております。

 知事は、世界を相手に交渉を挑む視点をお持ちなので、これらの企業を受け入れるためにRE100の価値を理解していると思います。

 少し前の平成29年1月になりますが、和歌山県で開催されましたシリコンバレー流ビジネスプランコンテスト・GTEの開会の挨拶で、「私たちの社会では、皆さんの周りにグローバリゼーションが浸透しています。皆さんの活躍の場は、国内だけにとどまりません。物事は国境を越えて世界規模に広がります。ビジネスの成功は、国際的な競争の成果によって維持されます。今日、国際社会のメンバーとしての視点で、この環境を自覚することを促します」、このように語っておられます。

 知事の御指摘のとおり、和歌山県も、国際的な競争の結果によって維持されている、維持されるであろう社会に存在しており、世界は、生産拠点をより安定した国に移すことを検討しているようです。これらの企業誘致も、国内、他府県との競争の結果によってもたらされることになると思います。

 和歌山県も、企業進出においては、地球環境問題への対応は避けられない課題であり、このRE100に対応することが企業誘致のポイントになると思います。かつて仁坂知事が、和歌山県は日本のシリコンバレーを目指したいと話したことがあると聞いたことがあります。すばらしい着想であり、それを実現するために、進出企業が望むインフラや、企業が世界市場を相手にするために希望する条件を整えてほしいと思います。

 ここで、もう一度、和歌山県の強みを整理してみたいと思います。

 一つ目、世界から見ると和歌山県は日本の中心に位置している心臓部であり、東西の交通の要所であり、地の利があります。関西国際空港と南紀白浜空港があるので、世界のゲートウエーになれる県であり、グローバルビジネスに適した県だということです。

 二つ目、コロナ禍において考え方が、あるいは行動が非接触に変わりました。国際ビジネスの移動の手段は、本格的なビジネスジェットの時代に入ろうとしています。ビジネスジェットは、富裕層だけが利用するものではなく、国際ビジネスにはビジネスジェットが利用されているので、南紀白浜空港を有していることが大きな利点になります。

 三つ目、日本は、優秀な人材、サプライ、整った設備がありますが、今後ますます多国籍企業と組まないことには、単独でグローバル化に対応できないと思います。半導体、宇宙関連産業、電気機器、通信機器など、既に多くの分野で世界一の企業は我が国ではなく外国にありますから、これらの企業と組む機会を持つべきです。空路、海路を活用できる和歌山県には大きなチャンスがあると思います。

 四つ目、デジタル情報の時代においては、データセンターの設備は必須です。データセンターのある県は付加価値が高くなるので、設備環境を整えることが必要です。これらの分野にも、和歌山県は可能性があると思います。

 五つ目、次世代のグリーンエネルギーとしての水素の製造が有望で、和歌山県は港湾に面した工業用地がありますから、水素の製造拠点になれる可能性があります。

 また、昨年からのコロナ禍において、製造業の中には組立てに必要な部品の調達ができていない業種も出ています。国内で半導体などが調達できないことから、組立てができない事態が発生しています。これは、国内産業の弱さをかいま見たようにも感じますが、国内産業でハイテク産業に必要な部材が不足したために生産活動ができない、こういった状況を考え直す機会となりました。

 かつては、高い技術力が日本の得意分野でしたが、情報やハイテクの時代に入り、それらの技術はアジアの国々が優位性を保つような時代になっています。台湾、中国、そして韓国の企業は、高い技術力を持ち、GAFAなどの企業に対して部品供給を行うようにもなっています。我が国よりもアジアの国でハイテク技術が進んでいる分野があることは現実であり、我が国が将来に備えて世界市場で優位性を持つためにも、国内で情報やハイテク技術が供給できる体制を整えることを目指す中に和歌山県がいるべきだと思います。

 以上のことから、和歌山県の強みを生かした企業誘致について、質問をさせていただきます。

 和歌山県として、全国でいち早くRE100の理念を掲げた企業誘致に生かしてほしいと思います。RE100の加盟企業は世界的な企業ですから、和歌山県への誘致を強くアピールできると思います。和歌山県の強みを生かした企業誘致を強力に推進するための取組として、RE100の考え方を取り入れることについて、知事の答弁をお願いいたします。

○議長(岸本 健君) ただいまの片桐章浩君の質問に対する答弁を求めます。

 知事仁坂吉伸君。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 県では、これまでも、新たな産業の創出による地域経済の振興と雇用の創出を目指しまして、ICT企業を誘致するための施設整備の支援や工場誘致のための用地開発を行うことで、企業誘致を推進してまいりました。

 和歌山県は、関西国際空港から近く、南紀白浜空港を有しているため、首都圏からのアクセスが大変よろしいと思います。また、世界とのアクセスも大変よろしいということであります。今後、紀伊半島一周高速道路の整備が進むことで、大阪や名古屋にも近いという利点も、またどんどん高まってまいります。

 コロナ禍を踏まえ、今後、製造業の国内回帰や新たな投資が進むというふうに考えられることから、こうしたビジネス環境の強みに加え、快適な生活環境を職住近接モデルとして、オンライン面談や企業訪問を織り交ぜながら、国内外の企業に現在働きかけをしているわけでございます。

 事業運営を100%再生可能エネルギーで賄おうというRE100の考え方は、豊かな自然を保全しながら再生可能エネルギーの導入拡大に向けた取組を推進している本県の方針と、精神的に合うものだと思われます。

 こうしたことから、環境先進企業として位置づけられる国内外のRE100参加企業に、和歌山でぜひ活動してもらったらいいんだけどなあというところは、議員と全く同感なんでございますし、努力はせないかんと思うんですが、あんまりぜいたくを言ってより好みをする地合いでは和歌山県はありません。

 したがって、広く対象を捉えて頑張らなきゃいけないのですが、時代は新型コロナによって大いに変わりつつあるので、とはいえ、ぼうっとしていると取り残されるので、積極的に誘致活動に取り組んでまいりたいと考えております。

○議長(岸本 健君) 片桐章浩君。

  〔片桐章浩君、登壇〕

○片桐章浩君 知事から答弁をいただきまして、より好みをしている場合ではないというのは当然でございますけども、特にこういったRE100関連企業というのは、基本的基幹産業の一つでもありまして、裾野が広がる、裾野が広がるのは外から来るという部分もありますし、県内企業とタッグを組むという、こういう側面もありますから、経済活性化、産業振興につながると思います。ぜひ、誘致に関して取組を進めていただきたいと思います。

 この項目の二つ目であります。

 関西広域連合として水素社会の実現を目指している中、和歌山県が水素エネルギーの供給基地を目指すことについて、どう考えているでしょうか。水素エネルギーは、工場をはじめ公共交通にも利用できますから、和歌山県が目指す環境先進県としての取組にもつながるものと思います。

 また、現在作定中の第5次和歌山県環境基本計画の中に、再生可能エネルギー導入促進が示されております。それは、地域の環境と調和した再生可能エネルギーの導入を促進すること、海流発電など実用段階にない再生可能エネルギーの実用化に向けた取組を進めること、水素エネルギーや電気自動車、蓄電技術など再生可能エネルギーの利用を後押しする技術の普及を推進することとあります。

 さらに、和歌山県長期総合計画においては、世界とつながる愛着ある元気な和歌山を掲げ、この中の第2項の2、新たな産業の創出において、「電力移出県として近畿の電力需要を支えていますが、将来、資源の枯渇が危惧される化石燃料への依存度の低減や地球温暖化に対応するため、再生可能エネルギーの導入促進が求められています」という目標も掲げていると思います。和歌山県が再エネ先進県と近畿のエネルギー供給基地を目指すためにも、関西における水素エネルギー拠点として供給県を目指すことが必要だと思いますが、知事の考えをお聞かせいただきたいと思います。

○議長(岸本 健君) 知事。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 水素は、昨年12月に経済産業省で策定されました2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略において、発電、産業、運輸など幅広く活用されるカーボンニュートラルのキーテクノロジーとして位置づけられており、水素産業は成長産業の一つとして非常に期待されております。

 この戦略では、水素発電タービンや燃料電池トラックの商用化、水素運搬船や水電解装置の大型化やコスト低減が課題とされておりまして、その解決に向けて取り組むこととされております。

 和歌山県では、水素社会の実現に向けて、令和元年6月にわかやま水素社会推進ビジョンを策定いたしました。まずは、認知度の低い水素エネルギーについて、その意義や有用性等の理解促進を図るために、県においても、燃料電池自動車の「MIRAI」を公用車として導入するとともに、県民や県内事業者向けに、水素の利用や技術動向等に関して最先端を行く専門家の方から講演をいただくセミナーを開催するなど、普及啓発に取り組んでいるところでございます。

 また、令和元年7月には、県内初の水素ステーションが整備されました。さらなる整備に向けて、燃料電池自動車の需要喚起を図るとともに、事業者への働きかけとか、あるいは協力をして立地場所を情報提供するとか、そういうことを行っていっている次第でございます。

 加えて、今後、国や産業界の動向を踏まえ、水素産業への県内事業者の参入支援なども行っていきたいと考えております。

 今のところ水素は、利用するほうは、なかなかそういう意味で、水素ステーションがちょいとないとか、いろいろな技術開発をたくさんしなきゃいけないということもありますが、そのもともとのエネルギーをどこから持ってくるのかということについても、大変な技術開発がこれから必要になってくると思います。

 今、電気が起こされれば、電気分解して水素など簡単にできるんですが、これは究極の原発モデルだというふうに伝統的には思われるわけであります。また、産油国で大変な化石燃料を原料として、膨大な化石燃料を燃料として、それで水素をたくさん大量に作って運搬船で運んでくるという、かつての──かつてというか、LNGモデルのようなものも、これは現在の制度として、技術としても確立しているというふうに思われます。

 しかし、それだと地球環境問題に対する究極的な解にならなかったり、あるいは原子力に関してはなかなか反発する向きも多いと思います。したがって、どうやって水素を作るのかということについても、これは、これからたくさん技術開発が進んでいかなきゃいけないというふうに思うわけであります。

 私も、いつも勉強しておりますけども、太陽光発電を使ってちょっとローカル的に、と言っても物すごい規模なんですけど、水素を作るというようなプロジェクトが始まりつつあって、これがもっと小型化されてくると、県内のいろんなところでその水素も作っていくということができるような時代になってくるんじゃないかな。そのときは、作る、それからサプライチェーンをちゃんとつくって、それでちゃんと供給する、そういうことについて、なかなか楽しい水素社会ができてくるんじゃないかな。そういうことを期待しつつ、あるいは努力しつつ、これからもやっていきたいと考えております。

○議長(岸本 健君) 片桐章浩君。

  〔片桐章浩君、登壇〕

○片桐章浩君 知事の答弁にありましたように、水素エネルギー、御存じのように水素を作る段階でCO2を出すということなんで、全くのカーボンニュートラルではないということで、これは大きな課題でありまして、知事、最後におっしゃっていただきましたように、和歌山県においては再生可能エネルギーらしきもの──らしきっておかしい、太陽光とかそういったものを含めた技術を利用した、今開発している技術を利用してカーボンフリーな水素を作ろうと、こういう話をしていただいたところが、まさに今回の鍵でありまして、和歌山県における水素供給拠点化というのは、例えば今言いました太陽熱であるとか太陽光、そういったもののハイブリッド型の水素製造というのをぜひ全国に先駆けて実現してほしいなと、このように思っておりますので、しっかりとこの部分については、わかやま水素社会推進ビジョンに沿った形で、これ多分フェーズ2、3ぐらいに出てこようかと思うんですけども、早期の実現に向けて取組をお願いしたいと思っております。

 続きまして、この項目の3点目であります。

 さきに述べたコロナ禍において、ビジネスの在り方も違ってきている、あるいは違ってくるのではないかなと思います。

 世界のビジネスはスピードで動いていますから、和歌山県の強みの一つである南紀白浜空港をぜひ活用していただきたいと思います。和歌山県が関西のゲートウエーとなり、世界をビジネスジェットで結び、国内の移動は白浜を拠点としたエアタクシーで連携することで、世界レベルの都市、県になれるのではないでしょうか。

 世界で考えると、半島であることは一切関係なく、和歌山県は北に関西空港、南に南紀白浜空港の両国際線ターミナルを持った空港であるところが強みになろうかと思います。この強みを生かすためには、南紀白浜空港にビジネスジェットの駐機場が必要となります。これからは、ビジネスジェットと企業誘致はセットになっていくと思いますから、和歌山県の強みとして世界的企業に発信することができます。

 企業誘致のために、ビジネスジェットの駐機場整備は必須だと考えますので、南紀白浜空港にビジネスジェットの駐機場整備に関して、また、新型コロナウイルス感染症終息後を見据えた台湾や韓国など新規路線の就航についても、観光とともにビジネス需要を開拓する必要があると思いますので、その考えについて知事の答弁をお願いしたいと思います。

○議長(岸本 健君) 知事。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 議員御指摘のとおり、和歌山県に南紀白浜空港が立地しているということは、本県が持つ強みの一つでございます。

 現在、新型コロナウイルスの影響で定期便の航空需要が減少している一方、不特定多数の人と同席せず安全に移動できる手段として、ビジネスジェットが注目されておりまして、特に大阪・関西万博の開催、本当はその前にオリンピックがあったんですけど、IR誘致、またロケット射場整備などによる観光需要やビジネス機会の拡大と相まって、今後その利用者も増加するものと想定しております。

 実は、南紀白浜空港の航空便は、全国の飛行場の中でも最も回復が実は早かったんでございまして、それでコロナ禍で、特に緊急事態宣言の1回目のときに需要ががたがたになりましたけれども、その後の回復から大変順調にお客さんを増やしていて、一時は4便飛ばしてやろうかというようなぐらいの感じに実はなっておったんでございますが、先ほどからるる説明しているように全国的にむちゃくちゃになって、現在またちょっと大分減っていると、こういう感じでございます。

 その中身は、観光客はもちろんでありましたけれども、最近少し増えてまいりましたビジネス客、これも大きな原因となっているんだというふうに航空会社なんかは言ってくれておりました。

 こういう好機を逃がすことなく新しい時代の挑戦を体現する取組の一つとして、ビジネスジェットに活用できる駐機場を造っとかないかん。これは、結構お金がかかるんでございますけども、造っとかないとお断りということになりますので、この拡張を少しずつしていこうということで、手始めといたしまして、令和4年度の完成を目指しまして、来年度に、一つ着手いたします。それから、今後とも段階的にどんどん増やしていきたいというふうに思っております。

 一方、国際線の誘致、これは白浜空港の民営化のときの大テーマでございまして、それを頑張るという企業に運営をお任せしている一方で、設備については県で造らないといけないということなもんですから、予算をお願いいたしまして、今年秋には予定されている国際線ターミナルができるということになっているわけでございます。

 これを起爆剤にして、中国、韓国、台湾、ロシアなど近隣アジア諸国からの就航につなげるというところに来ていたんでございますが、残念ながら新型コロナのためにその遂行がストップということで、現在はなかなかつらい状況になっております。でも、新型コロナもいつかは終わるわけでございますので、そのときに一気に、もともと考えていたようなことを実現したいんだということで、今準備を一生懸命やっているということであります。

 観光も、それからロケット、IR、サテライトオフィスなどによるビジネスも、それからワーケーションもどんどん進めまして、それで需要のほうも高めて、それで供給のほうは先ほど言ったみたいにハードウエアの整備も徐々に増やしていって、かつ民間活力、今、南紀白浜エアポートでやっていただいている、大変有能な企業の力もお借りして、かつ地域の盛り上がりも期待して、地域の活性化につなげていきたいと考えております。

○議長(岸本 健君) 片桐章浩君。

  〔片桐章浩君、登壇〕

○片桐章浩君 知事、お答えいただきまして、来年度からビジネスジェットの駐機場も着工する、そして令和4年以降も順次増やしていくというお考えをお示しいただきました。これも、大きな空港は、なかなかこのビジネスジェットの発着ができないんですけど、アジアといったら九州が、こういった同様の誘致というんでしょうか、取組も進めていようかと思いますので、それよりも早く準備を整えていただけたらなというふうに思ってございます。

 そして、恐らく今、検討というんでしょうか、参加しようとしているスーパーシティー構想の中にも、こういった白浜を玄関口にするというふうなアイデアがもしかしたら出てくるかもしれないというふうに思ってございますので、こちらのほうも期待しておりますので、よろしくお願いしたいと思います。

 そしたら、2点目の項目に入ります。

 コロナ禍における事業者の支援についての項目に入らせていただきたいと思います。

 さきの川畑議員の質問と重複のないように、ちょっと質問をさせていただけたらと思います。

 コロナ禍において、和歌山県内の事業所、観光業界、飲食業界など、その全てが大きな影響を受けています。物流やインターネットメディア、テレワーク機器のメーカー、オンライン教育のメーカー及び医薬品・医療機器を製造するメーカーなど、業種によっては好調になっている企業もありますが、しかし、和歌山県のような地方では、好調な業種はほとんどありませんから、ほぼ全域的に不況に陥っていると言ったほうが間違いないのではないでしょうか。

 コロナ禍で景気が悪くなっている業種は、外出自粛の影響を受けたものがほとんどです。言うまでもなく、バス、タクシー、鉄道、飲食店などは、感染者が多い都市で午後8時までの営業自粛を求めたことに連動した影響があり、業績を落としています。また、製造業においても、原料の調達が難しくなっていることや、自動車や建築関係の……(傍聴席で発言する者あり)自動車や建築関係の需要が減少するなどの影響で、県内企業の多くは業績を落としています。

 我が国では、第2の緊急事態宣言が出されて以降、地方においても飲食店、観光、交通事業者など多くの事業者は、もう後がない、こういう言葉で表現されるような状態に陥っていると思います。

 中でも、和歌山県の飲食店は個人経営のお店が多く、経営者は望みがないというところまで追い込まれている状況だと認識しています。しかも、皆さんから聞く意見の中には、お客さんが来てくれないと従業員を含めてのモチベーションが下がります、どれだけお店が感染症対策を実施してもお客さんが来てくれない、飲食店が感染源であり、行かないことが望ましいという意識をお客さんが持たれているので、もうこれ以上対策のしようがないというところまで来ていると思います。

 これまでは、飲食店が地域を支えているし、お客さんに元気を与えている、和歌山県の将来のために必要な役割を果たしているという思いがあったのですが、1月から2月にかけての状況から、もう自分たちの取組だけではどうしようもない、こういう言葉が聞かれるようになってきました。

 このことについて、和歌山大学経済学部・足立基浩副学長は、携帯電話の位置情報を基にしたデータに基づき、和歌山県の感染者が少ないのは、県民の意識が高いという分析をしております。これは、和歌山県や市町村からの呼びかけに呼応していると言えそうです。この分析から推測すると、県民性として、自分の身は自分で守る意識、周囲に迷惑をかけてはいけないという意識、環境への順応性が高いなどの特徴があるかもしれません。そして結論として、外食産業や観光産業の努力も限界を迎えつつあり、今後は、これまでの新型コロナの感染防止に加え、特に零細な企業に対してはきめ細かい財政支援が必要だと思います、官民連携モデルでさらなる和歌山モデルの第2弾を期待したい、このような指摘もいただきました。

 そんな状況下を察して、新型コロナの第3波を踏まえた対応策の追加対策として、飲食・宿泊・旅行業給付金を支給する制度をつくってくれたことはありがたいことです。消えかけていた、飲食店の方々の言葉を借りると「希望」、これをともしてくれたことになります。小さな希望の灯こそが望みを回復する原動力であり、社会が緊急事態から脱却していく状況下において、対応していく源になるものであると確信しています。

 そこに加えて、さらに希望を感じさせてくれたのが、全国知事会の今後の新型コロナウイルス感染症対策についての緊急提言です。これは、たくさんの方から反響いただきまして、これまで和歌山県の飲食業の組合、あるいは県内の約1000店の飲食店から要望が出されている内容と、その趣旨は一致しているものであり、仁坂知事をはじめとする全国の知事が、地元の飲食店が置かれた状況を的確に把握してくれた上で、不公平感や県民の皆さんの自粛ムードを感じて提言してくれたものだというふうに思っております。

 この中には、緊急事態宣言対象区域の飲食店とそれ以外の県との支援の差はひどく、県内飲食店からは、これ以前から同様の支援をお願いしたいと訴えていたところであります。

 全国知事会からの要望の一部にこういうものがございます。一時支援金の支給対象地域も含めた支給対象の拡大や支給額の上限引上げ、売上げ要件の緩和を図るほか、持続化給付金や家賃支援給付金などの再度の支給や要件緩和・企業規模に応じた支給額の引上げ、特に飲食業等自粛の影響が強く現れた業種には、速やかに実効性のある対策を講じることを強く要望してくれております。

 和歌山県として、飲食・宿泊・旅行業給付金を決定した後に、速やかにさらなる提言を行ってくれたことは、県内飲食店などにとって希望であり、知事の行動を頼もしく感じでくれていることでしょう。

 しかし、今後、大きな問題が既に見えております。それは、令和2年の緊急事態宣言の時期に金融機関からの借入れの問題であります。

 多くのお店は、最初の5年以内の返済猶予を条件に借り受けているので、早ければ令和4年から返済が始まります。多くのお店は、この資金を現在まで運転資金として活用しているので、返済が始まると今以上に経営が厳しくなります。つまり、返済しながら営業を継続するためには、新型コロナ以前のようにお客さんが戻るだけでは足りず、元の売上げ以上になる必要があろうかと思います。今から2年後、3年後には、本当に経営が苦しくなる時期が訪れると予測できますので、今を切り抜けながら将来とも事業継続ができるように、継続した支援が必要だと思います。

 そこで、質問をさせていただきます。

 厳しい環境にある飲食店への支援は、将来への投資と考えて飲食・宿泊・旅行業給付金を支給し、これに続いて仁坂知事をはじめとする全国知事会が緊急提言として、一時支援金の対象地域も含めた支給対象の拡大や、飲食店など自粛の影響が強く現れた業種には、速やかに実効性のある対策を講じることを求めています。

 そこで、飲食店へのこれまでの支援の状況を示していただくとともに、引き続き厳しい環境が予想される飲食店の今後の支援の在り方について、商工観光労働部長に質問いたします。

○議長(岸本 健君) 商工観光労働部長大山 茂君。

  〔大山 茂君、登壇〕

○商工観光労働部長(大山 茂君) 県では、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた多くの事業者の方々を対象に、事業継続のための支援金や補助金、また、3年間の無利子融資や国の持続化給付金や雇用調整助成金の申請サポート体制の整備など、包括的な支援策を実施してまいりました。

 その中で、飲食店については、本年2月までに事業継続支援金で約4000件、事業継続推進補助金で約1000件、家賃支援金で約1700件、無利子融資で約800件の支援をしており、特に家賃支援金では申請者全体の約4割が飲食店です。

 また、飲食店を応援するための国のGoToイート事業においては、県から事業者に対して、販売停止や利用自粛の要請を行うことなく、これまで事業が継続されてきたところです。

 県では、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、徹底した感染防止対策と経済活動の両立に取り組み、地域経済と雇用、県民の命と暮らしを守り抜くため、県内事業者の資金繰りに十分対応するための融資枠1200億円を確保し、経営改善に取り組む事業者への融資等を新設、拡充することとしています。また、新たな挑戦への支援として、デジタル化の導入のための専門家派遣や、ウィズコロナの中で感染リスクへの接触を最小限にできるキャッシュレス決済や電子商取引の導入等の支援を行うこととしています。

 県としては、様々な制度の周知を図り、飲食店をはじめ事業者の皆様に支援策を活用していただき、事業が継続、成長できるよう取り組んでまいります。

○議長(岸本 健君) 片桐章浩君。

  〔片桐章浩君、登壇〕

○片桐章浩君 答弁を全ていただきましたので、終わらせていただきますけども、今、飲食店の置かれた現状については、本当に各店で聞き取りますと、小さいながらも雇用を守っている、スタッフを大事にしているというお店が多くて、今までそれほどリリースするというんでしょうか、そういうことはないような状況をしっかりと守ってくれておりますし、それから新型コロナ明けについても100%に戻るという考えではなくて、多分戻っても80%ぐらいまでは回復する、それで営業が継続できるような仕組みをつくろうと、それぞれの店も頑張ってくれているところであります。

 今を乗り越えながら、融資の返済が始まる時期にもしっかり県として支えていっていただける、このことをお願いさせていただきまして、一般質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

○議長(岸本 健君) 以上で、片桐章浩君の質問が終了いたしました。

 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。

 この際、暫時休憩いたします。

  午前11時46分休憩

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  午後0時59分再開

○副議長(濱口太史君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 38番杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕(拍手)

○杉山俊雄君 こんにちは。

 早速、議長の許可を得ましたので、通告に従って一般質問を行います。

 一つ目は、鳥インフルエンザの経営に関して、国の手当金の交付状況について質問をします。

 西日本の養鶏場で高病原性鳥インフルエンザの発生が相次ぐ中、昨年12月10日に紀の川市の養鶏場で発生が確認されました。

 県は、直ちに対策本部を立ち上げ、その日のうちに鳥の殺処分を開始、翌11日に6万8000万羽の殺処分を完了しました。また、12日から13日にかけて、飼料・鶏ふんの処理、消毒作業を行い、防疫措置を完了しました。県当局の迅速な対応、また、本庁及び那賀振興局の県職員、自衛隊員の昼夜分かたぬ御尽力に感謝を申し上げます。

 今冬1例目は、昨年11月5日の香川県三豊市で確認されています。この農場では、33万羽の採卵鶏が2階建ての鶏舎で飼養されていました。三豊市では、12例が連続して発生しています。

 昨年11月下旬から、香川県だけでなく西日本の全域に広がり、全国屈指の主産地である鹿児島県や宮崎県、12月末には千葉県にも飛び火し、北陸の富山県でも発生して、いまだに猛威を振るっています。国内の発生件数は、17県51例で、殺処分羽数は1000万羽近くにもなっています。

 渡り鳥が大陸に帰るまでは感染のおそれが続き、5月の初旬までは予断を許さない状況です。一たび発生すれば、財産である鶏を全て失うことになります。

 殺処分された鶏などの補償については、農場内の鶏、卵、飼料を県職員と専門家が評価し、家畜伝染病予防法に基づく手当金として国で補償されます。従業員の給料については、新型コロナ特例の雇用調整助成金は対象外なので、特例以外の雇用調整助成金は、要件を満たしても支給額が少なく、支給日数も100日が限度で十分に補償されません。

 経営再開までには、農場内の消毒などに3か月、鶏舎の穴の修繕やネット等を再点検し、再度消毒をして、鶏舎にモニターの鶏を導入し、ウイルスがないことを確認した後、この作業を順次行い、ひなの導入となります。生後3か月ぐらいの少し高額なひなを購入予定なので、卵を産むまでに3か月ほどかかります。産み始めの卵は、小さいので販売価格は低く、元の状態になるのに1年はかかると見込まれています。その間の生活費や従業員の生活を守らなければなりません。

 そこで、国の手当金の交付状況について、農林水産部長にお伺いいたします。

○副議長(濱口太史君) ただいまの杉山俊雄君の質問に対する答弁を求めます。

 農林水産部長角谷博史君。

  〔角谷博史君、登壇〕

○農林水産部長(角谷博史君) 発生農家に支払われる国の手当金の交付状況についてお答えします。

 家畜伝染病予防法に基づき、鳥インフルエンザ発生農家へは、殺処分された鶏に加え、処分された卵や飼料の評価額が国から手当金として交付されることとなっております。ただし、伝染病の発生予防または蔓延防止に必要な措置を講じなかった場合は、手当金の全額または一部が交付されないこととなっております。

 議員御指摘のとおり、経済的に極めて苦しい立場に置かれている発生農家にとって、速やかな補償が行われることは、経営を維持、再開していく上で重要です。

 このため、本県で発生が確認された昨年12月10日に、知事が国に対し手当金の早期交付を要望するなど、迅速な交付に向けて取り組んできたところであり、現在、国で審査中の状況ですが、3月中に交付される見込みと聞いております。

 発生農家の経営再開に支障を来すことのないよう、手当金の早期交付について、引き続き国へ要望してまいります。

○副議長(濱口太史君) 杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕

○杉山俊雄君 答弁、大変ありがとうございます。

 手当金について、知事が国に要望していただいていますので、早く交付されれば養鶏業者は安心すると思います。

 しかし、国から交付される手当金は、実際、鶏が生きていて得られるはずだった販売価格との間には差があって、十分に補塡されません。また、国は、手当金の引上げについては拒んでいます。その上、手当金が全額補償されるのかは分かりません。答弁にあったように、厳しく評価され減額されます。手当金が減額されれば、自分たちで積み立てていた互助基金にも連動し、減額されることになります。手当金は、当初2月中旬予定と聞いていましたが、全国的な拡大で遅くなっています。

 経営再開までには多くの困難があり、大変厳しい状況にあります。手当金が満額決定されるのか大変不安です。国に手当金の引上げも要望していただきますよう、よろしくお願いいたします。

 それでは、2問目の鶏舎の修繕費用に対する県の支援について質問を行います。

 鳥インフルエンザウイルスは、渡り鳥のカモなどの水禽類を宿主とします。紀の川市には、ため池や山田ダムがあり、多くの渡り鳥が飛来します。

 渡り鳥から鶏への感染経路については、カモなど渡り鳥が国内へのウイルスの運び屋になります。カモの腸内でウイルスは増殖し、排せつされたふんには多くのウイルスが含まれ、そのふんが感染源となり、農場付近に生息する野鳥やネズミなどの小動物を介して、鶏舎に持ち込まれると言われています。

 また、池やダム湖などの水がウイルスに汚染され、その水から野鳥やネズミなどの小動物を介して鶏舎に侵入することも考えられます。感染は、鶏舎の構造の違いによらず、どのような鶏舎でも発生している状況です。

 宮崎県は、家禽飼養農場における飼養衛生管理の自己点検結果は遵守率100%ですが、これまで12例の発生があり、92万8000羽が殺処分されています。また、千葉県では、これまでに11例の発生があり、477万羽が殺処分されています。うち3例は、飼養羽数100万羽以上で、最新式のウインドレス鶏舎で飼養されていましたが、それでも発生しています。

 どのように侵入防止対策を取っても、渡り鳥が多く飛来し、越冬に最適なため池等がある地域では、感染のリスクは高く、人災ではなく自然災害ではないでしょうか。

 農家は、消毒や、野鳥など小動物の侵入防止対策に必死です。侵入を防ぐネットの補強、鶏舎の修繕等に大変なコストがかかります。どれほどの額になるかは分かりません。高額だと、経営再開にも影響します。国の事業では、規模が大きいということが要件となっており、農家個人の鶏舎の修繕等の補助はありません。

 そこで、農場の修繕等への県の支援をぜひお願いいたします。農林水産部長、県のお考えをお聞かせください。

○副議長(濱口太史君) 農林水産部長。

  〔角谷博史君、登壇〕

○農林水産部長(角谷博史君) 鶏舎の修繕等に対する県の支援についてお答えします。

 発生農場に対する国の疫学調査チームの調査結果では、鶏舎側面の金網等の破損や、壁に小型の野生動物が侵入可能な穴もあったことが指摘されており、経営再開に当たっては、これらを修繕し、国が定める飼養衛生管理基準を満たす必要があります。

 県では、畜産業での衛生管理の強化等を推進するため、令和3年度新政策として、畜産施設衛生管理強化支援事業の予算を本議会にお願いをしております。

 今後、本事業の推進を通じ、養鶏農場での衛生管理の強化を図ってまいりたいと考えてございます。

○副議長(濱口太史君) 杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕

○杉山俊雄君 大変ありがとうございます。新政策で鶏舎の補修等の支援が得られれば、経営再開の助けになると思います。

 養鶏業者は、県から指示がないので、鶏舎の修繕等の金額がどれほどの額になるかが不安で、高額だと再開のめどが立たないと言っていました。香川県は、国の長期融資を受ける場合、無利子で融資が受けられる資金支援事業を創設しています。また、国の雇用調整助成金の決定を受けた中小の事業主に、鳥インフルエンザ対応雇用調整助成金支給事業を設けています。

 養鶏農家が希望を持って営業再開ができますよう、国に支援を求めるとともに、県においては、さらなる支援の拡充をよろしくお願いいたします。

 続いて、2番目の高校再編計画について質問を行います。

 一つ目は、答申から骨子案に至る変更についてです。このことについては、昨日の藤本議員と同じ問題意識です。多くのことが重なりますが、よろしくお願いいたします。

 昨年の11月24日、議会閉会中に臨時の文教委員会が開催され、高校再編問題が議論されました。多くの議員から問題ありとの発言があり、県教委は、当初年度末としていた実施計画の作成を、拙速との声に押され、柔軟に対応するとしました。しかしながら、高校削減計画のプログラム案を年内に作成することに固執しました。

 12月14日の文教委員会では、プログラム案の年内作成を断念し、再度、各高校で説明会を開き、地域の意見を聞く中でプログラム案につなげる方向にかじを切りました。

 新型コロナの影響で、この計画は延期され、議会開会までの2月9日から22日までの間に、県下15会場で説明会・懇談会を開催することに変更しました。

 一方、県教委は、これに先立ち高校校長会を開き、県立高等学校再編整備計画・実施プログラムの骨子案の中身を説明、各高校では、校長から教職員に骨子案の説明が行われました。また、県議会議員全員に説明を行うとして、1月23日には共産党県議団に説明がありました。15会場の説明会では、この我々に説明をした骨子案で臨むとしていました。

 答申の中身は、「削減ありきで拙速だ」、「地域の声に耳を傾けよ」、「少人数学級に対応していない」など、県民の強い批判を受けて、骨子案を提起したものと思われます。

 2月9日から、骨子案の説明会が行われましたが、10日には骨子案が論点整理へと、1日にして説明内容が変更されました。県教委の説明では、「再編」、「計画」という言葉が入れば、もう既に決まったかのような印象や誤解を与えるから変更したと説明をしています。広く意見を聞くことや公平な情報を提供するという観点からはあり得ないことであり、御都合主義ではないでしょうか。

 そこで、教育長にお伺いします。

 12月文教委員会で、なぜ突然方針を転換したのか。また、答申と骨子案の大きな違いについて、さらに、1日にして骨子案から論点整理に変更した理由をお聞かせください。

○副議長(濱口太史君) 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 議員御質問の点につきましては、昨日、藤本議員の御質問とも重複いたしますが、改めてお答えをいたします。

 これからの県立高等学校の在り方につきましては、今後の深刻な少子化の中で、本県高校教育の課題の改善や教育の質の向上を図るという点と、学校をどのように整備していくかという点の二つの観点で考えております。

 昨年12月までは、答申に沿った説明をする中で、県民の皆様方から様々な御意見をいただきました。再編は必要だと御理解いただきながらも、丁寧な対応を求める声もあり、案の提示までに、県教育委員会の基本的な考え方をお示しする段階を設けました。

 2月の説明会・懇談会では、具体的な案は示さず、意見の分かれる点において論点の整理をしつつ、あくまで意見を聞くことを主眼に、各会場の状況に応じて丁寧に説明をしてまいりました。

 県教育委員会では、広く意見を聞き、検討を重ねながら進める姿勢で一貫しており、そのような対応の中で、県民の理解は着実に進んでいると感じております。今後も、県民の信頼、信用を大切に取り組んでまいります。

○副議長(濱口太史君) 杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕

○杉山俊雄君 今、教育長から答弁をいただきましたが、教育長は、2月の説明会・懇談会では具体的な案を示さず論点整理に変えたと言いますが、12月の文教委員会では、案よりも砕けた形を示して、プログラム案を練り上げていきたいと答弁しています。「砕けた形を示して」とは、具体的なものを提示するということではないのですか。教育長の先ほどの具体的な案を示さずという答弁と、12月の文教委員会での答弁とは矛盾すると思いますが、どうでしょうか。

 また、1月23日の共産党県議団には、論点整理なるものの説明はなく、骨子案を説明し、この骨子案で説明会・懇談会に臨むとしていました。一夜にして、骨子案から論点整理に変えたという事実は重いと思います。信じ難いことであります。このことを申し添えて、次の質問に移ります。

 二つ目は、骨子案の問題点についてです。

 今回の骨子案には、地域の声が一定数反映され、今ある32校の県立高校を充実させ、可能な限り存続させ、自宅から通学可能なところに高校を確保するという再編整備の基本的な考えが示されています。

 また、適正規模6学級については、目標であるとした上で、4から8学級に収まるような再編整備を目指すとし、少人数学級の実現や教育環境の大きな変化には、計画を修正し、柔軟に対応するとしています。

 しかし、骨子案にはいろいろな問題があります。その一つは、特に期待される使命を達成するために導入される仮称・特任高校をつくるということです。答申には、旧帝国大学や医学部といったいわゆる難関大学への進学実績について、近隣府県に比べてかなり低い状況にあるとの認識が示され、難関大学に入る少数の子供を教育するという点では、今回の骨子案も答申と大差はないものと思われます。仮称・特任高校を目指して受験競争が激化し、高校間にさらなる格差が生まれるのではないでしょうか。

 二つ目の問題点は、県立高校32校を7区分し、役割や使命を明確化していることです。教育行政が高校の役割、使命を明確化し、特色化を図ることは、意図しなくても高校を格付し、序列化につながるもので、ゆがんだ高校教育観を県民に植え付けかねません。全県1学区制の導入以来、地域外の高校へ通学する生徒が増えるとともに、高校間格差が深刻になっています。行政による特色化は、その状況にお墨つきを与え、拍車をかけるおそれがあります。

 三つ目は、県教委は、今ある高校をできる限り存続と言っていますが、今回の骨子案でも、生徒減を理由に多くの学校を削減するであろうことは見逃せません。高校が削減されれば、遠距離通学や不本意入学が増えます。不登校等への教育課題への対応がより困難になることが予想されます。生徒急増期は、高校新設より学級数増で対応してきたのだから、減少期は、高校削減ではなく、学級規模の縮小、少人数学級で対応すべきだと考えます。15年先に30人学級が実現すれば、中学卒業生が2000人減少しても、現在の学級数が必要になります。高校を削減する必要はありません。

 少人数学級の実現は、多くの教職員の配置で高校生の豊かな学びが保障され、地域コミュニティーの拠点となる学校をたくさん残すことにつながります。また、小規模な学校では、一人一人の個性が育まれ、地域と深く結びつくことで大規模校とは違う学びを保障することができます。そのことによって、地域に活力が生まれます。

 四つ目は、地域中核高校の位置づけです。長期にわたって持続可能かつ活性化し、地域の高校教育の中核となる学校としています。文科省は、普通学校の機能別分化を進め、高校魅力化に新たな競争原理を持ち込んでいます。地域に高校がありながら、魅力化で地域外の高校に進学すれば、地域中核高校と言えなくなります。

 地域中核高校に位置づけられるであろう粉河高校についていえば、紀の川市の地元4中学校からの進学者は、1学年だけでいうと27%です。近くに高校がありながら、3割にも満たない子供しか通っていません。高校魅力化で地域中核高校を目指し、努力せよというのでしょうか。30年以上も前に、粉河高校には地元4中学から98.7%の子供が進学していました。35年たって、なぜこのような状況になっているのでしょうか。

 以上、骨子案の問題点について述べてきました。これら4点について、県教委の見解を求めます。

○副議長(濱口太史君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 議員の御質問4点は、相互に関連するものであり、今回の再編整備を進める上で、県教育委員会が意を尽くしている部分でありますので、今後の県立高校の在り方、教育の在り方について、包括的にお答えいたします。

 各地域において中核となる高校は、主に普通科教育を希望し、多様な進路希望を有する生徒を対象にした学校とすることを想定しています。こうした高校においては、多様性や活力ある学校生活を可能とするため、一定の規模を必要としますが、その学校内では、10人程度の少人数学級や通級による指導を行うほか、大学進学の希望をかなえる教育課程や科目選択を担保し、地域で存在感を発揮する学校だと認知していただけるよう取り組んでいきたいと考えています。

 一方、工業や商業などの専門教育や、特色化した教育等を希望する生徒も少なからずおります。こうした教育を行う様々な高校を展開することも重要だと考えております。

 昨日の藤本議員の御質問にお答えしたとおり、地域の中核となる高校と特色を明確にした全県的な高校は、中学生の進路希望に即したものであります。各学校の特色化を図り、その特色に基づいた進路選択を促すことこそ、議員御指摘の高校の格付、序列化の改善につながるものと考えています。

 高校の再編整備は、将来にわたって充実した高校教育を保障するための方法であり、大局的に考えなければならないテーマです。議論を今ある高校の存廃に終始させることなく、まして30人学級のように、法整備の行方も不透明な仮定の話で論じることなく、現実的な再編整備の考え方をもって、和歌山の将来を担う子供たちに、豊かで確かな教育を継承するという観点で進めていく必要があると考えております。

○副議長(濱口太史君) 杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕

○杉山俊雄君 今答弁をいただきましたが、各学校の特色化に基づいた進路選択を促すことこそ、高校の格付、序列化を大きく改善できると言っています。促すというのは、せき立てる、仕向けるという意味であります。このことは、中学校教師に7区分の高校へ生徒を振り分けよと言っているように聞こえます。生徒が主体的に進路を切り開くものにはなっていません。特色化は高校の格付、序列化を大きく改善できると県教委は言いますが、真逆です。

 まだ幾つか指摘したいことはありますが、時間の関係で文教委員会へ譲ることとします。

 三つ目に、高校全員入学と全県1区制の見直しについて質問を行います。

 生徒減少期だからこそ、地域の衰退に拍車をかける高校の削減ではなく、少人数学級を見据えた高校の存続が求められます。

 現在、希望すれば、全ての子供が高校に進学できる状況にあります。だからこそ高校の選抜制度をやめて、近くの高校に進学できる体制を整えることが望まれます。これこそが、戦後の教育改革で掲げられた高校全員入学と高校3原則ではないでしょうか。

 かつて文部省は、高校全員入学を方針に掲げていました。1947年の「新制中学校・新制高等学校望ましい運営の指針」には、新制高等学校は、その収容力の最大限まで国家の全青年に奉仕すべきものであるとして、全入をうたっています。

 また、選抜制度については、一部の人々は、新制高等学校は、社会的、経済的及び知能的に恵まれた者からより抜いた者のためにのみ存在する極めて独善的な学校であるべきと実際に信じていた。この考えに同意するようではいけない。選抜しなければならない場合でも、やむを得ない害悪であって、経済が復興して、適当な施設を用意することができるようになれば、直ちになくすべきものであるとして、選抜制度を否定しています。世界第3位の経済大国の今こそ、害悪である選抜制度をなくし、全ての子供たちに高校教育を無償で保障すべきではないでしょうか。

 また、高校3原則についていえば、全県1学区制が最大の問題です。2003年に全国に先駆けて、中学区制を撤廃して全県1区にしました。学区撤廃で受験競争が過熱し、高校間格差が拡大してきました。高校の魅力化、特色化で新たな競争原理を持ち込むのではなく、全県1区制を見直し、通学費や通学時間の負担が少ない地元の高校で安心して学ぶことができる制度に改善すべきではないでしょうか。

 高校の存続は、地域の持続可能性と不可分な問題です。トップダウンではなく、高校生、保護者、教職員、地域住民の願いや自治体の意見が反映される学校づくりを支援し、時間をかけて県民的な議論を長いスパンで取り組むことを県教委に期待します。

 そこで、伺います。

 高校再編問題については、県民的な議論を重ね、長いスパンで取り組むこと、また、高校全員入学と全県1区制の見直しについて、県教委の見解を求めます。

○副議長(濱口太史君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 今後の本県高校教育の在り方につきましては、行き詰まった状況になる前に長期のスパンで検討し、計画的に取り組む必要があると考えております。

 再編整備を含む高校教育の在り方を考えるに当たっては、きのくに教育審議会の委員をはじめとする有識者や各方面の方々との議論や寄せられた御意見、御要望を基に、丁寧かつ慎重に進めていくという方針を堅持しており、今後も大事にしていきたいと考えております。

 これまで、県は、和歌山の子供たちの希望に沿った学びを県内の高校でかなえることができるように、条件整備に努めてまいりました。近年の全日制高校の入学者選抜の出願倍率が0.9倍前後となっていることからも、そのことは御理解いただけるものかと思います。

 昭和50年代から60年代にかけては、中学校卒業生徒数の増加と普通科志向の高まりを受けて、一部地域では、地元の高校、普通科へ進学する運動が積極的に行われていたことは承知しています。

 その後、平成の時代に入り、生徒数の減少と軌を一にして、多様な普通科系教育を求める希望が広まったことを背景に、通学区域が撤廃されました。

 少子化がさらに進んだ今日、通学区域を再び設定しても、30年以上前の状況に戻ることはあり得ず、かえって住民の流出や県外高校への進学など、新たな深刻な問題が生じることが懸念されます。

 今求められているのは、地域の中学生や保護者から信頼され、期待される高校を各地域に整備することであり、そのことが将来にわたって地域の持続可能性を高めることにつながると考えます。

 県教育委員会や学校関係者が、その地域で教育を受けたいと考える全ての生徒を受け入れ、興味関心や進路希望に応じた教育を行う地域の中核となる高校の整備に真っ向から取り組むべきであり、今回の再編はその契機となると確信しております。

○副議長(濱口太史君) 杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕

○杉山俊雄君 今答弁をいただきましたが、昭和50年代から60年代にかけて行われた地元高校受験運動は、実質、小学区制を目指した運動で、学校の序列化や学校間格差を解消しました。

 学区の縮小は、遠距離通学が減少し、競争よりも協働の教育が進みやすくなり、現在起こっている教育課題の減少にもつながると思います。また、地元中学や地域住民との連携や関係も深まり、地域に根差した高校をつくり、地域再生、まちづくりにとってもプラスになると思います。地域の中核となる高校をつくるためにも、全県1区制は見直すべきだと思います。

 教育長は、地域で教育を受けたいと考える全ての生徒を受け入れ、地域の中核となる高校の整備に真っ向から取り組むと答弁しました。この姿勢は、選抜制度のない高校全員入学の理念と一致するものと思います。

 今回の再編整備が、全入や全県1区制の見直しの契機となることを期待して、次の三つ目に移ります。

 三つ目は、メタンハイドレート事業についてであります。この事業の調査の進捗状況と商業化のめどについて質問を行います。

 県は、2月15日に県立向陽中学校で、将来を担う若い世代にも関心を持ってもらうため、次世代のエネルギー資源と言われるメタンハイドレートに関する出前授業を行いました。内容は、メタンハイドレートと和歌山県沖での調査と、燃焼実験と新エネルギーについてでした。大変興味深かったのですが、参観ができなくて残念でした。

 教師時代、ドライアイスを使用して試験管内でプロパンガスを液化させる燃焼実験を行いました。試験管の温度によって沸騰が変化し、炎が大きくなったり小さくなったりする場面で歓声が上がります。プロパンガスの沸騰を観察させるのに大変いい教材だったことを思い出し、メタンの燃焼を見たかったものであります。

 メタンは、CO2排出量が石油の半分で、成分に硫黄や窒素を含まないので、大気汚染がなく、メタンハイドレートは新エネルギー源として注目されています。

 メタンハイドレートは、天然ガスの主成分であるメタンを籠状の水の分子が取り囲んだ固体の物質で、低温高圧の海底下や海底面及び永久凍土下に存在します。大陸周辺の海底に分布している堆積物の特徴は、非常に細かい粉砕物や鉱物粒子などのほかに、有機物や有孔虫などの生物遺骸が含まれる海底泥質堆積物です。

 日本近海には、世界有数のメタンハイドレート埋蔵量があり、西日本の南海トラフに最大の推定埋蔵量を持つとされています。日本海側には、海底表面に純度が高く塊の状態で存在していることが海洋研究開発機構などの調査で分かっています。

 特に、南海トラフなど太平洋側のメタンハイドレートは、分子レベルで、深海における泥や砂の中に混溜しており、探索、採取が極めて困難であると言われています。現時点においても、有効な採掘方法の確立には至っていません。回収方法については、様々な提案がされていますが、解決しなければならない数々の問題が存在しています。

 和歌山県は、平成24年度から、メタンハイドレート開発の促進を目指して、表層型メタンハイドレート賦存状況調査を毎年実施しています。メタンハイドレートが存在する特徴的な地形及び複数のプルームを確認し、その海底下にメタンハイドレートが存在する可能性があるとしています。

 表層型メタンハイドレートとは、深海表層堆積物中に塊状、脈状、粒状で存在するメタンハイドレートで、メタンプルームとは、海底から立ち上がるメタンガスの気泡密集帯で、メタンハイドレート探査のよい目印となります。

 県では、漁業調査船「きのくに」の魚群探知機を使用して、毎年200万円ほどの予算で調査が行われています。その調査の進捗状況と商業化の見通しについて、商工観光労働部長にお伺いします。

○副議長(濱口太史君) 商工観光労働部長大山 茂君。

  〔大山 茂君、登壇〕

○商工観光労働部長(大山 茂君) メタンハイドレートの賦存状況に関する調査の進捗状況につきましては、平成24年より漁業調査船「きのくに」で実施しており、これまでの調査により、串本沖においてメタンハイドレートの存在を強く示唆する気泡の柱、いわゆるプルームが観測されているところであり、さらに範囲を広げて調査を進めているところであります。

 商業化の見通しにつきましては、国は、海洋基本計画に基づき、令和9年度頃までに民間企業が主導する商業化に向けたプロジェクトが開始されることを目指しており、現在、大学・研究機関等と事業参入に関心を持つ企業等が連携して、生産技術の研究開発等が進められています。

○副議長(濱口太史君) 杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕

○杉山俊雄君 答弁ありがとうございます。

 令和9年までに商業化のプロジェクトが開始されることを目指すということなので、本格的に商業化されるまでには、まだまだ遠い道のりであることが分かりました。

 それで2番目に、このメタンは、地球温暖化を加速させ、脱炭素社会に逆行するのではないかということについて質問を行います。

 大気中のメタンは、二酸化炭素の20倍を超える温室効果があると言われています。アメリカの地質調査研究所は、メタンハイドレート開発によって発生するメタンのうち、回収し切れずに大気中に放出されるメタンが気候変動を加速させる可能性があると警告しています。

 一方、メタンハイドレートは、放置したままでも、海水温の変化や海流の影響で僅かずつメタンを乖離し、海中から大気中に放出されてしまうため、積極的に開発し利用して温暖化の効果を抑制すべきであるという意見もあります。しかし、現在のところ、技術的には多くの課題があり、採掘は極めて危険な行為であると言われています。

 地球温暖化が進み、海水温が上昇し、これまで海底で安定状態にあったメタンハイドレートからメタンが乖離し、大気中に放出されます。さらなる温暖化の進行で、メタンが多く排出される悪循環を引き起こすことが予測されています。

 環境省は、今の地球温暖化が抑えられなかったら、2100年の夏の天気予報では、日本列島は沖縄を除いて全てが最高気温40度以上で、大阪では42.7度と予想しています。また、台風は巨大化し、中心気圧870ヘクトパスカル、瞬間最大風速90メートルのスーパー台風がどんどん襲ってくると予測しています。

 既に、産業革命時と比較して、地球の平均気温が1度上がってしまっています。これをパリ協定では、1.5度以内に抑え込まなければなりませんが、現在提出されている各国の目標の合計では、21世紀末には3度上がると予想されています。灼熱地獄のような地球になってしまいます。待ったなしの対策が求められます。

 政府は、2050年に炭素排出量を実質ゼロにすると宣言しました。大量に排出する発電産業も転換を迫られています。炭素排出をゼロにするには、ほとんどの発電所を再生可能エネルギーにしなければなりません。ところが、政府のグリーン成長戦略で打ち出したのは、50年時点での参考値で、CO2回収を前提とした火力発電所と危険な原子力発電所の合計で30%から40%を維持、肝腎の再生可能エネルギーは50%から60%という低さです。

 自然エネルギー財団のまとめによると、欧州などでは、2050年を待たずに2030年の節目で既に高い目標が掲げられています。スペイン74%、ドイツ65%、アメリカのニューヨーク州で70%などです。日本の2030年における再生可能エネルギーの発電比率目標は22%から24%と低さが際立っています。

 メタンは、石油や石炭と同じように化石燃料の一種で、再生可能エネルギーには含まれません。炭素排出ゼロ社会を目指すのであれば、メタンは、CO2排出量が半分であっても化石燃料であることには変わりがありません。今優先されるべきは、再生可能エネルギーへの転換を大規模に進めることではないのでしょうか。商工観光労働部長に見解をお願いいたします。

○副議長(濱口太史君) 商工観光労働部長。

  〔大山 茂君、登壇〕

○商工観光労働部長(大山 茂君) メタンガスは、そのものが温室効果の高いものですが、プルームとして自然に発生しているものであるため、そのまま放置するよりはそれをエネルギーとして活用するほうが合理的と考えます。また、海底からメタンハイドレートを回収する際に湧出するメタンガスも回収できるよう、海底面にドーム型の膜構造物を設置する技術の研究も行われています。

 そのまま放置しますと、メタンが大気に出てくるものと思われます。その上、メタンとCO2では、地球環境に及ぼす効果も異なるものと考えるところです。

 メタンハイドレートは、石炭や石油を燃やすよりもCO2排出量が約30%も少ない上、日本の周辺海域に相当量存在すると言われており、我が国にとって貴重な国産資源と言えます。

 本県としましては、国のグリーン成長戦略の動向を注視しながら、再生可能エネルギーや水素分野を引き続き推進していくとともに、和歌山県沖でメタンハイドレートの開発が行われれば地域の発展に大きく寄与するものと考えるため、今後もメタンハイドレートの調査を継続してまいりたいと考えております。

○副議長(濱口太史君) 杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕

○杉山俊雄君 答弁をいただきました。

 3月2日、国連事務総長は、温室効果ガスを多く排出する石炭火力発電所について、2030年までに段階的に廃止するよう訴えています。6月のG7首脳会議までに具体的な計画を示すよう要求しています。菅政権は、温室効果ガスの排出ゼロを掲げながら、石炭火力の新増設、原発再稼働に固執しています。対応が迫られるのではないでしょうか。

 パリ協定の1.5度の目標を達成するためには、石炭火力発電からの段階的な撤廃こそ唯一の重要なステップだと国連事務総長は訴えています。目標を達成しないと、地球は、宇宙のオアシスから灼熱の星になってしまいます。次世代に責任を持ってオアシスの地球を引き継げません。

 メタンは、石炭や石油よりCO2排出量が少なく、いいエネルギー源だと言われています。石炭、石油から天然ガスへの切替えは必要だと思いますが、CO2を排出します。1.5度の目標を達成するためには、再生可能エネルギーへ大きく切り替えていくべきではないでしょうか。また、メタンハイドレートを採掘するのに必要なエネルギーを1とすれば、そこから得られるエネルギーは1に満たないという主張もあります。採掘すればするほど赤字になります。商業化には、長い長い道のりと大変なリスクがあるのではないでしょうか。

 和歌山県は、自然豊かで、再生可能エネルギー資源の宝庫です。コージェネレーションシステムなど省エネを活用しながら、地域で必要なエネルギーは地域でつくり出し、地域内で消費する地産地消による再生可能エネルギーに転換していくべきではないでしょうか。全国に先駆けて、和歌山県がそのリーダーになることを期待して、私の発言とします。どうもありがとうございました。(拍手)

○副議長(濱口太史君) 以上で、杉山俊雄君の質問が終了いたしました。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 41番尾﨑太郎君。

  〔尾﨑太郎君、登壇〕(拍手)

○尾﨑太郎君 議長の許可を得ましたので、一般質問をいたします。

 昨年当初の議会において、全会派を代表して新型コロナウイルスに関する緊急質問をいたしました。全国でも初のクラスターが発生した県として、連日メディアにも取り上げられ、まるで本県が、このウイルスがしょうけつを極めた地のごとく言い募る国民もいる中、県民に対する誹謗中傷も少なからずあったように思います。

 知事をはじめとする県職員、また医療関係者の皆様の御尽力で、後に和歌山モデルと称される対策を確立し、被害を最小限に食い止めてきました。

 当時は、まさかこのコロナ禍が1年以上も終息せずに続くとは思ってもみませんでしたが、今回再びこの問題について質問せざるを得ないことは誠に残念であり、犠牲となられた方々の御冥福と闘病中の方々の一日も早い御回復をお祈りいたします。

 この1年間、私はできる限り、感染症やウイルスに関する書籍、文献を読んできました。もとより生物学的な素養が全くないことに加えて、書籍、文献によっては正反対のことが書かれており、一体真実はどこにあるのかと路頭に迷ったような気がしたことも一度ならずありました。8割おじさんとして有名になった西浦博教授の著作から、新型コロナウイルス感染症は単なる風邪で、インフルエンザよりも毒性がないと主張する小林よしのり氏の著作まで、広く渉猟してきました。

 正しく恐れると言われますが、正しくとは何を意味しているのか。正しさは誰かが決めてくれるのか。誰の言うことを聞けばよいのか。パンデミックを恐れることはよいとして、インフォデミック、根拠のない情報が大量に拡散されることを恐れざるを得ないほどに、ちまたには情報があふれ、その真贋を見分けるのは困難になっています。

 ちなみに、前回の質問のときにも御紹介した本県在住の作家である榎本憲男氏の巡査長真行寺弘道シリーズの新作「インフォデミック」は、いつかは必ず死を迎える我々にとって守るべき価値とは、自由とはと問う、コロナ禍を題材としたちょっと考えさせられる面白小説でした。お薦めです。

 緊急事態宣言やGoToトラベル、GoToイートの取扱いをめぐり、新型コロナウイルス感染症対策専門者会議と政府との連携がややぎくしゃくしているかのような印象もあり、テレビ等に出演している専門家と称する方々の意見もまちまちで、県民の中にも、私と同じような思いを抱いた方は多かったのではないでしょうか。

 そこで、今回の質問では、当局とのやり取りを通じて、新型コロナウイルスとその対策について、できる限り科学的で現実的な知見を得られるようなものにしたいと考えています。

 敵を知ることから始めたいと思います。2019年11月、大陸の武漢で原因不明のウイルス性肺炎発生。翌年2020年1月7日には、これが新型コロナウイルスと判明。同年2月初旬には、このウイルスを国際学術委員会がSARSコロナウイルス2と名づけます。

 私は、COVID-19というのが新型コロナウイルスの名称だと思っていましたが、これは病気の名前なのですね。SARS・重症急性呼吸器症候群、MERS・中東呼吸器症候群のような病名です。いわゆる風邪は、普通感冒と言うらしいのですが、ウイルスが引き起こす以外の風邪もありますが、コロナウイルスが引き起こすものがおよそ10%から35%ぐらいあると言われています。

 人に感染するコロナウイルスは、これまで6種類が知られていまして、そのうちの4種類が普通感冒、風邪を引き起こします。コロナウイルス以外にも、風邪を引き起こすウイルスとしては、ライノウイルスやヒトメタニューモウイルスなどがあります。この4種類以外のコロナウイルスが、SARSとMERSを引き起こすコロナウイルス2種類で、合計6種類となるわけです。

 新型コロナウイルスは、SARSコロナウイルス2と名づけられたことからも分かるとおり、SARSウイルスによく似た、人に感染する7番目のコロナウイルスということになります。人には感染しないコロナウイルスも約50種類程度あり、犬や猫、豚などに感染します。

 さて、ウイルスとは一体どんな存在なのでしょう。ウイルスは、生命を持たない物質であるとされています。大ざっぱに言えば、遺伝子とそれを包む殻だけの存在です。ウイルスの遺伝子は、DNAのこともあれば、RNAのこともあります。コロナウイルスはRNAで遺伝子情報を保持しています。

 少し高校の生物の授業をおさらいしましょう。DNA遺伝子は二重らせん構造をしていました。2本の鎖がお互いの情報を補い合うので、仮に一部に不具合が出ても、対となっている鎖がこれを修復することができます。DNA遺伝子を持つものは変異が起こりにくいといいます。RNA遺伝子は1本の鎖なので、不具合が出れば修復することはできません。RNA遺伝子を持つもの、すなわちコロナウイルスは変異が起きやすいウイルスであると言えます。

 生命とは、細胞を持ち、代謝を行い、自己複製をするものと一般的に定義されています。我々人も、約60兆の細胞を持ち、食物でエネルギーを取り、生殖して子供を増やします。ウイルスは、細胞も持たず、代謝もしませんが、生物の細胞を利用して自己複製し、増えていきます。これが感染です。

 よく細菌とウイルスを混同する方がいますが、細菌は細胞を持つ生物であり、ウイルスとは全く違います。細菌は単細胞の生物であり、その細胞にもある種のウイルスは感染し、増殖します。このようなウイルスをバクテリオファージと総称しています。

 ウイルスが感染した細胞は、自力では自己複製できないウイルスが増殖するための工場として使われることになります。増殖したウイルスは、外に飛び出るときに細胞を殺してしまうこともあります。

 細菌の大きさは、1マイクロメートルから5マイクロメートル程度、マイクロメートルは1000分の1ミリメートルです。一方、ウイルスの大きさはナノメートル単位で、ナノメートルは100万分の1ミリメートルです。ウイルスは、最小の生物である細菌と比べて何桁も小さいのです。

 この小ささゆえに、マスクをしていても、マスクの網の目をやすやすとウイルスが通り抜けることから、マスク着用の効果についての議論がありました。当初は、WHOもマスク着用の是非について明確なメッセージを出せず、迷走し、国際的な世論に混乱をもたらしました。

 欧米人のマスクに対する拒否感は、我々の想像を絶するものがありますが、マスクの着用に特段の違和感を持たない我が国でも、2018年、厚生労働省は、インフルエンザの予防にマスクは推奨していないとのコメントを出しています。

 私も、マスクに感染を予防する効果を過度に期待するのは妥当ではないと認識していますが、まず、福祉保健部長にマスク着用の意義についてお尋ねをします。

○副議長(濱口太史君) ただいまの尾﨑太郎君の質問に対する答弁を求めます。

 福祉保健部長宮本浩之君。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) マスク着用の効果としては、正しく着用した場合、感染者のせきやくしゃみなどにより放出されるウイルスの飛沫量を大幅に減少させることが挙げられます。また、飛沫に含まれるウイルスの吸い込みについても一定程度抑えられるということが、東京大学医学研究所が行った研究でも明らかにされています。

 こうしたことから、マスクで鼻と口の両方を確実に覆い、隙間のないようマスクを押さえるといったマスクの正しい着用は、基本的な感染防止策の一つとして重要であると言えますが、もちろんマスクの着用だけでは、ウイルスの飛沫や吸い込みを完全に防ぐことは困難であり、会話の際には、相手との距離を保つ、大きな声を出さないなどの配慮も非常に重要であると考えています。

○副議長(濱口太史君) 尾﨑太郎君。

  〔尾﨑太郎君、登壇〕

○尾﨑太郎君 無症状の感染者からの感染が確認されている現在では、自分が無症状の感染者であるかもしれないと仮定して行動することが大切な心がけです。マスクを着用することは、他者への配慮であり、多くの人々が行動すれば、社会全体の飛沫による感染リスクを大きく下げることになり、結果として、自分が感染するリスクが下がることになります。情けは人のためならずならぬ、マスクは人のためならずであります。

 しかし、やはりマスクの直接的な感染予防効果は限定的であることは肝に銘じておくべきであります。

 無症状の感染者による他者への感染、インフルエンザなどの感染症と新型コロナウイルス感染症が決定的に違う点です。症状が出やすい感染症では、感染者の発見は比較的容易であり、そもそも症状があって体が弱っているのですから、感染者も出歩くことはあまりありません。

 新型コロナウイルスの場合は、他人に感染するウイルスをまき散らしながら町を徘回する若者、こんなイメージが横行し、PCR検査を無作為に実施し、無症状の感染者を洗い出し、隔離せよとの意見が後を絶ちません。世論を二分する論争になっているかのようです。

 では、PCR検査とはどのようなものなのでしょう。PCRとはpolymerase chain reactionの略ですが、訳するとポリメラーゼ連鎖反応となります。これは簡単に言うと、RNAは不安定なので、これをDNAに変換して特異的なDNAだけを増幅する。この増副反応のことをいいます。

 鼻から綿棒を挿入して採取する咽頭の拭い液や唾液から、RNAというウイルスの設計図が書き込まれた核酸だけを取り出します。これを増幅するのですが、特異なDNAのあったことが確かめられれば、体内にウイルスがいたことになります。ごく大ざっぱに言えば、PCR検査とは、ウイルスの遺伝子の僅かな断片を鋳型に増幅して検出するものと言えます。

 PCR検査を実施する目的、意義について、当局の見解をお尋ねします。

○副議長(濱口太史君) 福祉保健部長。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) PCR検査は、医師が新型コロナウイルスの感染を疑う者に対し、診断を行うために実施する病原体検査です。

 感染者が確認された場合、感染症法に基づき、入院、隔離を行うとともに、疫学調査を基に濃厚接触者等を特定し、感染の可能性がある者の検査を実施するなど、感染の拡大を防止するために必要な措置を講じていくことになります。

 また、PCR検査は、一定の潜伏期間を含んだ検査前の感染の有無を判定しているものであり、検体採取時点後の陰性は全く保障することはできません。

 実際、いわゆる世田谷方式のように、施設関係者の一斉検査を実施している都市部の地域もありますが、限られた保健所のマンパワーでは、施設内の入所者を守ることはできても施設外の感染拡大を抑えることができず、多数の感染者が発生している現実もあります。

 感染の可能性を考慮せず、検査数を増加させることにより、本来保健所が対応すべき疫学調査等の感染拡大防止対策に支障を来すことは避けなければなりません。このため、濃厚接触者等、感染の可能性が高い者から優先的に検査していくことが最も合理性があると考えており、やみくもに検査を実施すればいいというものではありません。

 本県では、PCR検査の重要性を認識し、県の検査機関における機器増設や医療機関への機器配備をいち早く進めたほか、地域の身近なクリニック等で簡易、迅速に検査ができる体制の構築など、感染者の早期発見に不可欠となる検査体制の強化、拡充に努めてきたところです。

 その検査体制の下で適切に検査対象者を選定し、広く迅速に徹底したPCR検査を実施する本県のスタイルにより、引き続き感染拡大防止に取り組んでまいります。

○副議長(濱口太史君) 尾﨑太郎君。

  〔尾﨑太郎君、登壇〕

○尾﨑太郎君 少々専門的な用語になりますが、「感度」というものがあります。これは、陽性を見逃さない能力のことで、例えば感度90%の検査ならば、10人に1人は、本当は陽性だけれども、検査では陰性とされるという意味です。

 もう一つ、「特異度」というものがあります。これは、陰性を正しく陰性であると判断できる能力のことで、特異度90%の検査なら、10人に1人は、本当は陰性であるのに、誤って陽性と判断されてしまうという意味です。

 医学の世界では極めて権威ある専門誌である「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」の掲載論文によれば、PCR検査の感度は70%とされています。すなわちPCR検査は、陽性患者を3割も見落としてしまう検査なのです。しかも、感度は一定ではなく、感染後変化し、実は発症するまでの間は一層悪くなります。発症後24時間後ではかなり良好であることからも、無自覚の感染者をあぶり出す目的でPCR検査を行うことは、ナンセンスであることが分かります。

 3割を見落としても7割を捕捉できるならば、やらないよりはいいのではないかという意見があるかもしれません。しかし、リソースは無限ではありません。やみくもに検査を拡大しても、大量の偽陰性の方を生み出しますし、なまじ検査で陰性と出てしまっているので、行動が大胆になり、他者への感染リスクを高める可能性もあります。

 中には、安心するために検査を受けたいという方もいますが、仮に真の陰性であったとしても、将来の感染リスクがそれで僅かでも軽減されるわけでもないのですから、現在何の症状もなく、濃厚接触者でもないならば、ほとんど受ける意味はありません。

 PCR検査の特異度のほうは99%以上となっています。数字だけ見れば陰性なのに、間違って陽性とされてしまい、隔離されてしまう危険は少ないと感じるかもしれませんが、少し考えれば、仮に100万人にPCR検査を実施した場合、1万人もの偽陽性者、感染していないのに感染したとみなされる人が出てくることになり、医療関係者に無用の負担をかけることになりますし、何よりも隔離を余儀なくされる本人の負担たるやいかほどのものでありましょうか。

 要するに、PCR検査は、陽性の判定には役立つが、陰性を証明するものではないということを理解しておくことが肝要です。

 PCR検査は、医師が症状などから見て感染の疑いが濃厚であるとする場合や、状況から見てクラスターが発生したところなど、陽性の可能性の高い関係者に実施すべきものなのです。専門用語では、検査前確率といいますが、これを上げておくことがPCR検査を実効性のあるものにします。

 まさに、和歌山モデルと呼ばれるものがこれであり、効果を上げてきたことは広く国民の知るところとなりました。あたかも、PCR検査の数を増やすことがコロナ禍から国民を守ることになるなどと語る政治家や評論家がいますが、全く論外と言わざるを得ません。

 次に、感染経路について考えてみたいと思います。

 新型コロナウイルスの基本再生産数、免疫がある人が1人もいない状態で、感染者1人から何人に感染させるのかという平均値ですが、8割おじさんの西浦教授は、これを2.5と見積もっています。これに対して、免疫や様々な対策、ワクチン接種などがなされている場合の生産数は、実行再生産数といいます。これが1以下になれば、自然終息することになります。

 うつりやすさの指標である再生産数は、感染経路に大きく左右されます。いわゆる空気感染するはしかの基本再生産数は、12から18もあります。もし新型コロナウイルスが空気感染するならば、基本再生産数はとても2.5程度では収まらなかったでしょう。インフルエンザも、およそ1から3となっています。

 首都圏の満員電車は、密の最たるものですが、クラスターが発生したとの報告はありません。空気感染するものであったならば、そうはいかなかったでしょう。この事実は、テレビでよく見かける飛沫が飛び散るスパコンのシミュレーション──これはいかに想像しているよりも遠くに広く飛沫が拡散していくかを映像で表したものですが──よりも、よほど感染の実態を雄弁に物語ります。現実にはあり得ない状況を設定し計算したところで、連日、数え切れないほど運行されている満員電車での感染の実態ほど、実証的なものがほかにありましょうか。過剰に恐怖をあおる報道には注意したいものです。

 新型コロナウイルスの感染には、一定量のウイルス数がいるのでしょう。ウイルスの種類によっては、新型コロナウイルスよりはるかに少ない粒子数で感染が成立するものもあり、それらは、いわゆる空気感染をするものと考えられます。

 新型コロナウイルスの場合、感染成立には、少なくとも1万個のウイルス粒子が必要であると推測されます。やはり実際的には、感染予防にはいわゆる飛沫に気をつければ十分であり、空気感染を過剰に恐れる必要はないと考えますが、当局の見解をお伺いいたします。

○副議長(濱口太史君) 福祉保健部長。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) 新型コロナウイルス感染症は、一般的に飛沫感染と接触感染で感染するものとされています。

 これまでの感染事例の分析から、飲酒や接待を伴う会食、多人数や長時間に及ぶ飲食、マスクなしの近距離での会話など、飛沫のリスクが高まる場合において感染リスクも高くなることが明らかになっています。

 なお、空気感染とは言えないものの、屋内で換気が不十分な場所では、せきやくしゃみなどの飛沫を浴びることはなくても、ウイルスだけが感染性を有して浮遊するエアロゾルによる感染の可能性も指摘されていることから、できる限り小まめに換気を行い、3密を回避するなど、基本的な感染防止対策が非常に重要であると考えています。

○副議長(濱口太史君) 尾﨑太郎君。

  〔尾﨑太郎君、登壇〕

○尾﨑太郎君 この感染症が発生して以来、免疫について勉強した人も多かったのではないでしょうか。知れば知るほど、人体の不思議に魅せられますが、複雑過ぎて理解するのは大変です。しかし、最低限の知識を持っておくことは、情報のリテラシーを高めるために有効です。

 まず、免疫には自然免疫と獲得免疫があります。自然免疫は、とにかく侵入してきた病原体を攻撃する仕組みで、好中球、マクロファージ、樹状細胞等がこれに当たります。

 獲得免疫は、それぞれの病原体の特徴に合わせて抗体をつくったり、ウイルスに乗っ取られた細胞を殺したりするもので、主にT細胞、B細胞などがこれに当たります。獲得免疫は、液性免疫と細胞性免疫に分けられます。液性免疫は、抗体を使って防衛する仕組みですが、抗体は可溶性の糖たんぱく質で、体液中に存在することから、液性免疫と呼ばれます。

 抗体は、ウイルス等に結合し、その活動を妨げます。抗体をつくる指示をするのがT細胞で、これをつくるのがB細胞です。細胞性免疫は、ウイルスの増産工場と化している細胞を殺すもので、T細胞が主に担っています。

 さて、はしかは一度かかれば二度とかからないことはよく知られていますが、新型コロナウイルスでは、3か月ぐらいで抗体の量が下がってくると言われています。

 実は、免疫系を定量的に測定することはできず、抗体の量だけは抗体価として量ることができます。しかし、確かに抗体価は免疫のバロメーターの一つではありますが、抗体だけが免疫を担っているわけではありませんので、我々は、自分の免疫系の状態を数値的に知るすべはありません。ただし、感覚的には分かっています。分かっていながら、この感覚を我々は近年、軽んじ過ぎてきたのではないでしょうか。

 免疫が、あるものには一生効果があり、あるものには数か月で消えてしまうことは、分子生物学的にいまだ全くの謎だそうです。

 新型コロナウイルスに感染しないよう行動するのはもちろん大切ですが、たとえ感染しても、大事に至らぬよう自らに備わっている免疫系を整えておくことも重要だと考えますが、現在の新型コロナウイルス対策では、この点が見落とされています。

 新型コロナウイルスに暴露しても──暴露とは、ウイルスにさらされても、いまだ細胞内にウイルスが侵入していない状態のことですが──自然免疫がこれを撃退してくれます。自然免疫がしっかりと機能すれば、水際で感染をかなりの程度抑えることができるのです。

 血圧のように、デジタルで免疫の状態は測れなくても、我々は経験的に知っているはずです。適度な運動と十分な休息、睡眠と栄養、暴飲暴食を慎み、体を冷やさないようにする。どれも風邪がはやっているときにおばあちゃんに言われたことばかりですが、確実に免疫機能を充実させるはずです。

 このウイルスが、全く未知の存在であったときはともかく、飛沫感染が主な感染経路であると判明した今日では、過度に引き籠もり、戦々恐々とするばかりでは、かえって免疫系をはじめとする我々の体が持つポテンシャルを損ない、新たな健康問題を惹起することになるのではないかと危惧しますが、この点について、当局の見解をお伺いします。

○副議長(濱口太史君) 福祉保健部長。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) 新型コロナへの対応が長期化する中、外出控えや運動不足などによる健康への影響が懸念されるところです。

 新型コロナウイルスに罹患しないように行動することはもちろん大切ですが、大事に至らぬよう、自らに備わっている免疫系を整えておくことが大切で、そのためには適度な運動と十分な睡眠、暴飲暴食を慎むことなどが重要との議員の御指摘もありましたが、コロナ禍においても、県民の皆様が食事や運動に気を配り、健康づくりに取り組むことは非常に重要であると認識しています。

 特に、糖尿病などの生活習慣病や肥満の方が新型コロナウイルスに感染した場合は、重症化しやすいことも分かっていますので、日頃からの健康管理は重要と考えます。

 そのため、本県では、保健医療行政が懸命に努力して感染拡大の防止を図り、県民の皆様の行動にはできるだけ制限を課さないことを徹底しており、過度な生活の自粛とならないよう、感染防止に係る最低限の注意の下で、安全な生活、安全な外出など、ふだんの生活を心がけていただくよう繰り返しお願いしてきたところです。

 県民の皆様には、新型コロナを恐れ過ぎることなく、必要な医療や検診の受診、適度な運動や食事などによる健康管理を適切に行っていただくよう、引き続きお願いしてまいります。

○副議長(濱口太史君) 尾﨑太郎君。

  〔尾﨑太郎君、登壇〕

○尾﨑太郎君 大阪大学免疫学フロンティア研修センターの宮坂昌之教授によれば、自然免疫は鍛えられることができるそうです。筋肉も負荷を与えなければ鍛えられないように、清潔過ぎる環境にいては自然免疫は鍛えられません。何事も「過ぎたるは猶及ばざるが如し」であります。

 また、伝統的によいとされてきた生活習慣が、免疫学的にも理にかなったものであると学術的に分かったのは、実はごく近年のことらしいですが、何千年もこの列島に暮らしてきた我々の先祖は、幾度となく流感にさらされてきたのであり、免疫という言葉は知らなくても対処の仕方は知っていたのです。

 世界的に著名な米国のラホヤ免疫研究所の「Cell」誌掲載の論文によると、新型コロナウイルスに感染したことがないにもかかわらず、新型コロナウイルスに反応するT細胞を持っている人が存在するとのことです。

 宮坂教授によれば、コロナウイルスが引き起こす風邪に繰り返しかかるうちに、新型コロナウイルスを認識できる特殊なT細胞が現れると考えられるとのことで、交差免疫と呼ばれるこの仕組みは、あるウイルスの感染を克服した免疫が維持され、そのウイルスに似たウイルスの感染にも免疫が機能するというものです。

 人体の不思議につくづく感じ入りますが、我々の体は、健康であれば、ちょっとやそっとのウイルスにやられるようなやわなものではないようです。

 ワクチンについてであります。

 一度かかった病気にはかかりにくくなるのは、獲得免疫が免疫細胞の遺伝子を変化させて、抗体やT細胞受容体などに様々なパターンをつくって準備を整えているからです。

 この準備をさせておくために、人工的に弱いウイルスに感染させるのが生ワクチンです。ジェンナーの種痘がその嚆矢であることはよく知られています。

 その後、ウイルスそのものではなく、成分だけを精製して注入する不活化ワクチンが主流となります。これによりワクチンの安全性は格段に高まりました。しかし、この方法は、まず、原料のウイルスを増やさなければなりません。

 そこで、今度は、ウイルスを増やさずに、ウイルスの一つの成分の設計図、遺伝子を用意して、大腸菌などの細胞で増やして精製するという成分ワクチン──コンポーネントワクチンと呼ばれるものが生まれました。

 これらのワクチンは、対象となるウイルス、またはその一部を人の体に注入するという点では、基本的に同じ発想に基づいています。しかし、現在接種を検討されているワクチンは、これらのワクチンとは全く違ったものです。

 一つは、無害なウイルスを遺伝子の運び屋──ベクターとして使い、人体に感染させて、新型コロナウイルスの一部の遺伝子の設計図を基に、人の細胞で新型コロナウイルスの一部をつくり出すものです。英国のアストラゼネカが開発しているワクチンがこのタイプで、これがベクターワクチンです。

 もう一つは、遺伝子の設計図であるDNAや指示書であるRNAといった核酸を直接人体に注入するものです。核酸ワクチンと総称されています。米国のファイザーやモデルナ、ドイツのビオンテックなどが開発しています。

 いずれも人の細胞のたんぱく質製造システムを使い、ウイルスの成分をつくるという意味で、遺伝子工学的な手法を使ったワクチンであると言え、従来のものとは一線を画します。

 ワクチンに対する国民の関心は、やはり有効性と安全性でしょう。ファイザーとモデルナは、それぞれが自社のワクチンの有効性を95%、94.1%と発表しています。多くの方が、これは、100人にワクチンを打てば、95人はかからないと受け取るのではないでしょうか。実は私もそう思っていましたが、これは、100人のうち95人の感染を防いだという意味ではありません。

 これはリスク比で、例えばファイザーのワクチンなら、ワクチン接種以外の条件が同じ集団とで比べた場合、例えば、非接種が162人感染し、接種が8人感染したということです。比べているのは感染者の割合なのです。ですから、当然、ワクチンを打たなかった場合の感染者の数が変われば、この比は変わります。ワクチンなしでの患者の発生率が、日本を含めた東アジアと欧米では大きく違うため、この有効率も変わります。恐らく日本のほうが、欧米よりもかなり低いはずです。

 安全性はどうでしょう。実用化される核酸ワクチンについては、今回が人類に初めて適用されるものであり、本来であれば、10年単位の時間をかけての治験を経て承認されてしかるべきものであります。そういう意味では、国民が少々接種に不安を覚えたとしても、無理からぬことであります。

 変異が起こりやすいウイルスでは、抗体と結合することで、病状がかえって悪化する抗体依存性感染増強・ADEが起こる可能性もあります。ワクチン開発では、ADEに細心の注意が必要なことは言うまでもありません。幸いに、諸外国の接種状況を見れば、現在のところ目立った副反応は報告されておらず、許容される範囲内に収まっているようです。我が国でも、重いアレルギー症状であるアナフィラキシーが2例報告されていますが、すぐに回復したとのことです。

 また、従来型の成分ワクチンの開発が我が国の塩野義製薬で進んでいると聞いていますが、県民が接種するワクチンは、どのようなタイプのワクチンが予定されているのでしょうか。当局の見解をお伺いいたします。

○副議長(濱口太史君) 福祉保健部長。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) 令和3年2月16日に厚生労働大臣は、臨時の予防接種を行うことを指示し、ファイザー社の販売名「コミナティ筋注」を使用するワクチンとしました。

 このワクチンは、メッセンジャーRNAワクチンであり、新型コロナウイルスを構成するたんぱく質の遺伝情報を筋肉への注射により体内に入れ、その遺伝情報により、ウイルスのたんぱく質の一部がつくられ、そのたんぱく質に対する抗体がつくられることで免疫を獲得するものです。

 なお、メッセンジャーRNAは、数分から数日といった時間の経過とともに分解されるため、長期に残るものではないと考えられています。

 次に、有効性と副反応についてですが、ワクチンを2回接種した場合の有効性は95%であることが認められており、インフルエンザワクチンの有効性約40%から60%と比較すると、高い効果が示されています。

 副反応は、国内治験では、ワクチン2回接種後に接種部位の痛みが約80%、37.5度以上の発熱が約33%、疲労が約60%の人に認められているほか、急性のアレルギー反応であるアナフィラキシーは、米国において100万人当たり5人程度と報告されています。

 なお、アナフィラキシーは、90%が接種後30分以内に症状が現れると報告されていることから、今回の接種では、接種場所で接種後15分から30分の経過を見ることとなっており、万が一アナフィラキシーが起きても、その場で医療従事者が適切な対応を行うことができると考えています。また、副反応による健康被害は極めてまれではあるものの、避けることができないことから、救済制度も設けられています。

 その他、現在想定されているワクチンとしては、政府において供給を受ける契約を締結しているアストラゼネカ社のウイルスベクターワクチン、モデルナ社のメッセンジャーRNAワクチンがあり、アストラゼネカ社は2月5日に、モデルナ社は3月5日にワクチンの承認申請を行っているところです。

 なお、使用するワクチンが2種類以上となった場合は、接種を受ける時期に供給されているワクチンを接種することとなります。

 ワクチン接種は、副反応のリスクがあるものの、新型コロナウイルスに感染し発症することや、重症化、後遺症といったリスクを考慮すると、接種に有益性があると思われることから、県民の皆様にはぜひ接種してもらうことを強く推奨いたします。

○副議長(濱口太史君) 尾﨑太郎君。

  〔尾﨑太郎君、登壇〕

○尾﨑太郎君 1960年に、我が国で急性灰白髄炎──ポリオが大流行しました。いわゆる小児麻痺です。

 当時、我が国では、ポリオウイルスの不活化ワクチンが接種されていましたが、十分な効果が得られず、急遽1300万人分の生ワクチンを輸入しました。無料で供給された生ワクチンは劇的な効果を上げ、およそ3か月後には、さしものポリオウイルスも終息します。現在は、副反応のリスクから、ポリオウイルスの生ワクチンは使われておりませんが、当時の決断は、その後の経過から見てマクロ的には正しかったと言えるでしょう。

 政治、行政には、マクロ的な視点が欠かせません。もちろん、個々人の生を確率的に語ることは妥当とは言えない場合があります。しかし、広く用いられている麻酔薬でも重篤な状態を招来することもあり、当人にとってはとても受け入れ難いことですが、行政的には重篤に至る確率を考慮せざるを得ません。

 近年では、子宮頸がんワクチンの積極的勧奨が取り下げられるということがありました。子宮頸がんはヒトパピローマウイルスが引き起こすもので、このワクチンを接種すれば、ほぼ完全にウイルスが細胞に入るのをブロックできる優れものです。

 100%確実な安全を求めるあまり、社会全体としてはトータルとして有意義なものを排除してしまうのはいかがなものか。若い女性の死亡原因の子宮頸がんの低くない割合を見るとき、再考してみる余地があるように思います。やはりマクロ的、確率的な視点の大切さを痛感いたします。

 最後に、誤解を恐れずに言えば、この新型コロナウイルスが本当に未知のものであったときはともかく、その姿がある程度あらわになった今となっては、我々の社会が許容できる感染の程度を探り、対策を講じるのが政治、行政に課せられた使命だと思います。この程度は、数値でデジタルに測れる類いのものではないので、ある意味、相場観のようなものですが、この相場観は優れた為政者に必須の資質であり、この相場観をもって、社会全体の安定のため、時に特定の個人にとっては受け入れ難いことにもなる決断の責任を引き受けなければなりません。

 さて、生物ではないウイルスは、活性を失うと、しばしば死滅したと表現されます。もちろんウイルスには、状態の変化があるだけで生死はありません。しかし、その振る舞いの表現は擬人化せざるを得ません。まさに生物と無生物の間と呼ぶにふさわしい存在です。

 ウイルスと聞くだけで、何やら恐ろしい病原体を連想するかもしれませんが、一体どれくらいの種類があるのかも定かでないウイルスの中で、人に感染し病気の原因となるウイルスは、実は僅かなものです。

 非常に単純化して言えば、あるウイルスは、決まった型のたんぱく質をつけている細胞にだけ侵入します。そこにあるのは、侵入してやろうという意思ではなく、単なる化学反応です。お目当ての細胞に出会えるかどうかは全くの偶然です。さらに、その細胞に吸着できるかどうかもさらなる偶然です。ウイルスは、水分子の熱運動に身を任せて、細かく振動しながら、たまたまうまく決まった型のたんぱく質にくっつくしかないのです。

 圧倒的多数のウイルスは、感染する生物を殺しません。インフルエンザウイルスも、もともとは水鳥の腸に存在していました。このウイルスが原因で水鳥が病気になることはありません。これに何らかの変異が起きて、人の細胞にも感染するようになりました。こういうケースでは、ウイルスは人に対する病原体となる場合が多いと考えられています。

 大陸の珍獣が新型コロナウイルスの起源だと報道されたこともありましたが、大いにあり得ることで、中共政府が野生動物の食用を禁じたとの報道もありました。発生当初にWHOの調査団が大陸へ入れなかったことは、大変残念であります。

 人の細胞にも常にある種のウイルスが感染していますが、そもそもそれらのウイルスなしに人の生命活動は維持できません。人にとって、この種のウイルスは不可欠な存在なのです。

 例えば、母親免疫系にとり、父親由来の遺伝形質を持つ胎児は異質な存在ですが、母親のリンパ球は、ある細胞膜によって胎児の血管に入ることはできません。しかし、その細胞膜は、母親からの栄養や酸素は通すのです。これは、人に内在するウイルスの働きによることが2000年に明らかになりました。病原体だと考えられていたウイルスが、人の生命活動に必須のものであったのです。

 それどころか、最近の研究では、生命の進化に深くウイルスが関わっていたことが分かってきました。人のDNAの塩基配列、すなわちヒトゲノムは2003年に全て解読されましたが、その結果、かなりの塩基配列がウイルス由来のものであることが判明したのです。ウイルスが意図して単細胞生物を人へ進化させたわけではありません。生命は、合目的的ではありません。気の遠くなるような偶然の積み重ねが、今日のホモサピエンスを生み出しました。

 命とは本当に不思議な存在です。人は約60兆とも言われる細胞でできていますが、人の一部とは言えない存在、ウイルスや細菌などがいなければ、人の生は成り立ちません。人は、他者──それは生物とは限りません、外部との関係の中で、辛うじて命の火をともしているようにも見えます。自己とは、私という存在は、大きな生命の潮流から見れば、我々が思うほどはっきりとした輪郭を持つものではないのかもしれません。

 自然が見せるあまりにも精妙、絶妙なバランス、人の世においてもまたバランスは最も心がけるべきことの一つでありましょう。経済活動と感染対策のバランス、感染リスクと適度な運動の効能、あるいは人生の充実とのバランス、感染対策と費用対効果のバランスなどなど、バランスを欠いては、新型コロナウイルスは封じ込めたものの世の中が悪くなってしまったということにもなりかねません。最近の自殺者の増加を見ても考えさせられるところです。

 そこで、知事に、本県の感染対策について、特に心がけていることは何かをお尋ねいたします。

○副議長(濱口太史君) 知事仁坂吉伸君。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) これまで1年余り、新型コロナウイルス感染症対策に取り組む中で、初めは、新型コロナを一気にせん滅だというふうに私は思っておりました。そうしたら、生活、経済もV字回復できると思っていて、春の緊急事態宣言のときも政府の呼びかけに100%従って、制限を結構厳しくしてきました。

 しかしながら、世界の感染状況を見ると、あるいは県民の生活と経済の疲弊の状況を見ると、これは違うなあというふうに気がついたわけであります。これ以上、同じことはできない。だから、感染症の拡大防止と経済再生の両立を図ることが大事であると考えるに至りました。

 ただ、そのときに、政策手段が国民の、あるいは県民の行動の制約の一つだけだと、この両立は大変難しいわけであります。制約を厳しくし過ぎると、感染の拡大防止に効果はあるけれども、経済や生活が深刻な打撃を受けるし、過度な自粛の生活から健康障害や他の病気の悪化、果ては心理ストレス、極端なケースでは自殺といった命や健康に関わる問題も発生してしまいます。

 そうかと言って、制約を緩めてしまうと感染がぶり返すことになってしまい、いつまでたっても両立ができないということになるわけであります。

 今、菅総理をはじめ政府が苦しんでいるということがこれだと私は思います。

 先ほど、議員は、相場観ということを言われました。相場観を持つことは大事だということでございますが、これは結構難しいわけでございます。なぜならば、感染の流行が起こると人々の恐怖感が一気に高まって、それで、適切な相場観をリーダーが持っていたとしても、直ちにそれを攻撃に行き、堅持することは難しくなるということが、まさに今起こっているなというふうに思います。

 ところが、実は、これを両立できるということは、経済政策の理論が分かっておれば説明できることだと私は思います。それが、ティンバーゲンの定理とマンデルの定理であります。ティンバーゲンの定理というのは、一定数の独立した政策目標を達成するには、少なくとも同数の政策手段がなければならないというものでありまして、マンデルの定理は、それぞれの政策目標の達成のために、相対的に最も有効な政策手段を割り当てていかなければいけないというものであります。

 すなわち、感染症の拡大防止と経済再生の両立のためには、行動の制約だけではなくて、保健医療行政という二つ目の政策手段が必要であって、感染症の拡大防止には、保健医療行政が頑張って、経済の再生のためには行動の制約は最小限に抑えること、これが学問の教えるところだと私は思います。

 これは、他県のように、新型コロナを大変だ大変だ、今自粛の正念場だ、ステイホームなどと強調しないものでありますので、県民から見ると、ひょっとしたら知事は真剣に取り組んでくれていないんじゃないかというふうに思われがちであって、事実、そういう批判はいっぱい来ます。しかし、本当に県のため、県民のために考えたら、そんな人気とか、そういうことはあんまり気にしていられないというふうに私は思っております。

 したがって、本県では、この方針を徹底してきた結果、実は夏以降は感染の拡大を一定程度を抑えつつ、県内の経済は回復傾向が続き、一部の宿泊施設では昨年実績を上回るまでの回復に至ったということになっていたところでした。

 まずまずだなあと思っておったのですが、ところが、11月からどんどん始まった第3波では、首都圏で抑え切れなかった感染が次々と爆発して、連鎖して、京阪神に飛び火いたしました。それが県内にも影響した結果、年を明けてから1月下旬には、新規感染者数、入院患者数とも最多になったというように、かなり増えてしまいました。全国ではもっと増えました。

 専門家も政府も、感染被爆は──感染爆発をしたところの知事も、住民の行動拡大が全ての元凶で、特に飲食は急所だと言い、メディアもそれをがんがん流すわけですので、経済は一気に冷え込み、人々は恐れて、飲食や宿泊などの需要も大きく落ち込んで、感染をある程度コントロールしている和歌山でも、県民経済に多大な影響が出てしまったということであります。

 緊急事態宣言が発出されまして、新型コロナの第3波は収束に向かいつつあるものの、第1波、第2波後の教訓を踏まえると、首都圏において、感染の大爆発で機能不全となった保健医療行政を立て直し、積極的疫学調査をはじめとする基本的な感染対策を徹底して感染拡大を抑え込まなければ、結局、また首都圏の感染が収まらなくて、地方への感染波及と、それに伴う経済の停滞で日本全体が大変になると懸念されるところであります。

 ところが、現実に起こったことは全く逆でございまして、保健所も大変になったので、もう感染者を100%追わなくてよろしいという命令を神奈川県や東京都などがされたわけで、これでは感染は絶対に抑えられません。こういう点で、苦しみながらも頑張った関西と違って、首都圏の感染の収まりはなかなかスピードも遅いということからもこれは明らかであります。それが全て政府のせいだというふうにされているのは、ちょっと気の毒だなあというふうに思うわけであります。

 したがいまして、私は、以前から保健医療行政の立て直しと疫学調査の強化をずっと提唱し続けてきました。最近になって、ようやく政府もこのことに気づいてくれております。今般の緊急事態宣言の延長に当たり、よーく見ますと、積極的疫学調査の対応強化や保健所の体制強化など、保健医療行政の立て直しを図るよう、特別措置法の基本的対処方針が見直されたところであります。これと呼応して、東京都や神奈川県も、今まで緩くてよろしいと言っていた命令を元へ戻したというところでございます。

 でも、私は、それでいいわけではないと思います。一頃に比べると感染者が少なくなったんですから、この際、首都圏の各都県にあっては、保健医療行政による積極的疫学調査を以前よりもうんと強化しないといけないと思います。そのために、感染をうまく抑え込むことができている地方県の動向も参考に、大至急手段を強化して、一生懸命取り組んでいただきたいというふうに思います。

 また、病院の病床確保も、この際もっとやっておかなければいけません。東京のように区任せにしていては、積極的疫学調査も、あるいは病院の確保もできるはずがないと私は思います。

 いずれにしても、本県としては、保健医療行政が懸命に努力をし、県民の皆様には最低限の注意だけをお願いして、生活、経済への過度な制限はしないことを徹底する方針を堅持し、引き続き、全力を尽くして県民の命と暮らし、そして経済を守り抜いていきたいと思います。

 でも、こうやって県のことを守ろうとしている姿勢よりも、新型コロナが怖い国民には、大変、大変だと、皆で気を引き締めて自粛しましょうと言っているほうが、自分たちのことをよく考えてくれていると人気があるわけであります。メディアなんかでも、毎日この方向、大変、大変のほうがいいという報道を毎日のように流されると、なかなか県民といえども分かってもらえにくいなあと、議員のように分かっていただいている人がたくさんだといいのになあというふうに思っている次第でございます。

○副議長(濱口太史君) 尾﨑太郎君。

  〔尾﨑太郎君、登壇〕

○尾﨑太郎君 本当に難しい問題だと思うんですね。それぞれの変数は独立じゃないですよね。経済対策も、知事のおっしゃった保健医療体制に対する政策も、それぞれの変数は独立していない。

 それぞれが密接に関連した変数ですから、これをどのように解いていくのかというのは、この人間社会の複雑さを見たときに、とてもこれだ、これが正解だというのはなかなか示しにくいと思うんですね。それにはやっぱり実証して、成果が出ているところは、おおよそこれがいいんじゃないかというふうに見ていく、機能的に見ていくことが大事だと思います。

 そういう意味では、和歌山県のこの成功例を、最近ちょっと国も知事のお話では見てくれたと感じるところもあるようですから、できるだけこの成功例、実証的なものを見て、判断をしてほしいなと思っています。

 菅総理におかれては、大変な職務を担っていらっしゃるわけでありますけれども、国民の一人として、政府と協力して、一日も早くこのコロナ禍を克服して、力強い経済成長ができるように頑張ってまいりたいと思います。

 質問を終わります。(拍手)

○副議長(濱口太史君) 以上で、尾﨑太郎君の質問が終了いたしました。

 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。

 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。

 本日は、これをもって散会いたします。

  午後2時48分散会

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