令和3年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号(全文)


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令和3年2月 和歌山県議会定例会会議録 第5号

議事日程 第5号

 令和3年3月8日(月曜日)

 午前10時開議

 第1 議案第1号から議案第17号まで、議案第34号から議案第59号まで、議案第61号から議案第64号まで、議案第66号から議案第70号まで及び議案第73号から議案第85号まで(質疑)

 第2 一般質問

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会議に付した事件

 第1 議案第1号から議案第17号まで、議案第34号から議案第59号まで、議案第61号から議案第64号まで、議案第66号から議案第70号まで及び議案第73号から議案第85号まで(質疑)

 第2 一般質問

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出席議員(42人)

 1番 鈴木德久

 2番 山家敏宏

 3番 中本浩精

 4番 堀 龍雄

 5番 藤山将材

 6番 岸本 健

 7番 井出益弘

 8番 宇治田栄蔵

 9番 北山慎一

 10番 玄素彰人

 11番 中西峰雄

 12番 秋月史成

 13番 森 礼子

 14番 濱口太史

 15番 尾崎要二

 16番 冨安民浩

 17番 川畑哲哉

 18番 玉木久登

 19番 鈴木太雄

 20番 岩田弘彦

 21番 吉井和視

 22番 谷 洋一

 23番 佐藤武治

 24番 岩井弘次

 25番 中 拓哉

 26番 多田純一

 27番 新島 雄

 28番 山下直也

 29番 中西 徹

 30番 谷口和樹

 31番 藤本眞利子

 32番 浦口高典

 33番 山田正彦

 34番 坂本 登

 35番 林 隆一

 36番 楠本文郎

 37番 高田由一

 38番 杉山俊雄

 39番 片桐章浩

 40番 奥村規子

 41番 尾﨑太郎

 42番 長坂隆司

欠席議員(なし)

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説明のため出席した者

 知事         仁坂吉伸

 副知事        下 宏

 知事室長       細川一也

 危機管理監      森田康友

 総務部長       田村一郎

 企画部長       田嶋久嗣

 環境生活部長     田中一寿

 福祉保健部長     宮本浩之

 商工観光労働部長   大山 茂

 農林水産部長     角谷博史

 県土整備部長     庄司 勝

 会計管理者      城本 剛

 教育長        宮﨑 泉

 公安委員会委員長   中野幸生

 警察本部長      親家和仁

 人事委員会委員長   平田健正

 代表監査委員     保田栄一

 選挙管理委員会委員長 小濱孝夫

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職務のため出席した事務局職員

 事務局長       中川敦之

 次長         井邊正人

 議事課長       山田修平

 議事課副課長     岩井紀生

 議事課議事班長    岸裏真延

 議事課主査      松田太郎

 議事課主査      伊賀顕正

 議事課主事      浅田晃秀

 総務課長       嶋岡真志

 政策調査課長     神川充夫

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  午前10時0分開議

○議長(岸本 健君) これより本日の会議を開きます。

 日程第1、議案第1号から議案第17号まで、議案第34号から議案第59号まで、議案第61号から議案第64号まで、議案第66号から議案第70号まで及び議案第73号から議案第85号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、併せて日程第2、一般質問を行います。

 29番中西 徹君。

  〔中西 徹君、登壇〕(拍手)

○中西 徹君 皆さん、おはようございます。

 それでは、議長の許可を得ましたので、令和3年2月議会の一般質問を元気よく始めさせていただきます。よろしくお願いします。(「お願いします」と呼ぶ者あり)

 まず、項目1、デジタル化時代における今後の展開についてお伺いします。

 コロナ禍の中で、2020年9月16日発足した菅義偉内閣は、国全体のデジタル化を看板施策としてデジタル化の司令塔となるデジタル庁を2021年9月1日に発足させる方向性を決めました。

 政府におけるデジタル戦略は、これまでは内閣官房IT総合戦略室が所管してきましたが、新組織の位置づけとなります。国のデジタル化については、デジタル・ガバメント実行計画──令和2年12月25日閣議決定──で強調されているように、急速に進展するデジタル技術を十分に活用し、国、地方公共団体、民間事業者、国民、その他の者があらゆる活動においてデジタル技術の便益を享受し、安全で安心な暮らしや豊かさを実感できる社会を早急に実現する必要と、デジタル技術やデータを活用した利用者目線で新たな価値を創出するデジタルトランスフォーメーションの実現であります。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、日本の省庁や自治体の情報共有や行政手続のアナログさが露呈し、電子行政やデジタルトランスフォーメーションの必要性が重視されてきました。行政におけるデータのやり取りの迅速化やデジタル化による手続の迅速化は必須だと考えます。

 ビジネス分野においても、大量に流通するデータがデジタル化時代の新たな資源として注目を集めています。ICT産業はもちろん、これまで考えられなかった様々な業種でデータの活用が進み、革新的なサービスやビジネスモデルの創出などにつながっています。例えば、小売分野での需要予測や新商品・サービス開発、予防医療や防災など、様々な分野で新たな価値の創造をもたらす可能性を秘めています。

 データの利活用は、産業の競争力強化や社会の課題解決など、あらゆる面で大きな鍵となってきます。特に、コロナ禍において、行政サービスをはじめとした官民のデジタルトランスフォーメーションが一気に加速する中、今後さらにデータ利活用に関するニーズも大いに高まるものと思われ、官民のデータ利活用を活発化させるためにもデータを利活用できる環境整備が急務となっています。

 知事は、早くからデータの重要性に着眼し、地方創生の一環で国が進めた政府関係機関の地方移転において、統計局の誘致を強く働きかけ、本県への統計局・統計センターの一部移転を実現させました。その結果、平成30年4月に国のセンターが開所し、併せて県においてもデータ利活用推進センターを設置したところです。

 先進的なデータ利活用の推進拠点があるということは、本県にとっても大きな財産です。県においても、国と連携しながらデータ利活用をさらに推進し、政策立案や産業の発展につなげてほしいと考えます。

 開設から3年になりますが、県データ利活用推進センターにおけるこれまでの取組の成果とデータ利活用の推進に向けた今後の展開について、企画部長にお伺いします。

○議長(岸本 健君) ただいまの中西徹君の質問に対する答弁を求めます。

 企画部長田嶋久嗣君。

  〔田嶋久嗣君、登壇〕

○企画部長(田嶋久嗣君) 行政データ利活用促進についてでございますが、議員の御質問にもあるとおり、平成30年4月に総務省統計局及び独立行政法人統計センターの一部移転として統計データ利活用センターが開所し、県においても同時期に和歌山県データ利活用推進センターを設置しました。以降、県では国と連携して様々な分析、研究を行い、先進的な取組を実践するなど、日本のデータ利活用の拠点としての取組を推進してまいりました。

 具体的には、和歌山県データ利活用推進プランに基づき、全国の高校生、大学生を対象としたデータ利活用コンペティションや、データ利活用の重要性、有用性を発信するシンポジウムを実施し、未来のデータサイエンス人材の育成や普及啓発に取り組むとともに、大学研究機関と連携し、空き家の将来分布推計など行政課題の解決に資する先進的な分析・研究事業を進めてまいりました。また、全国に先駆け、証拠に基づく政策立案を推進するための組織体制を構築しました。

 さらに、民間企業等においてデータ利活用に関する機運が高まる中、県においてもデータ利活用をさらに推進する環境を整備するため、来年度の新政策では、個人を特定できないように加工する技術を用いて、個人情報の保護をしつつ、行政データを民間に提供できるスキームの構築に取り組み、民間活用を加速してまいります。

 今後とも、データ利活用に関する社会の大きな変化に対応しつつ、総務省統計局や関係部局と連携しながらこれらの取組を推進することにより、行政の課題の解決や県内産業の活性化につなげてまいります。

○議長(岸本 健君) 中西 徹君。

  〔中西 徹君、登壇〕

○中西 徹君 答弁ありがとうございます。

 多くのことに取り組まれており、特にこれからはデータを利用したエビデンスに基づく政策立案での行政運営が一層重要となってくると考えます。民間企業等においてのデータ利活用も、答弁でもありました行政データを民間に提供できるスキームの構築への取組に関しては、2020年の個人情報保護法の改正で導入された仮名加工情報に関係してくると思うんですが、個人情報としてもともと定められていた利用目的の範囲外でも利用できるとされており、この規制緩和は民間企業にとっても大きなプラスの影響を及ぼすのではないかと考えております。

 データ利活用の推進により、和歌山県の発展につなげていただき、今後も国と連携し、先進的な取組を行っていただきたいと思います。

 次、2番、和歌山ワーケーションについてお伺いします。

 新型コロナウイルス感染症の拡大で、3密──密閉、密集、密接を回避することが求められ、都市部だと大都市中心部の通勤の集中による満員電車の発生など、都市における過密という課題が改めて顕在化し、これまでの働き方や一極集中による住まい方を問い直すことが求められるようになってきています。

 企業においても、東京に拠点が集中していることをリスクと考え、過密の東京にいる必要はないと考えるようになっているところもあり、BCP(事業継続計画)を策定するとともに、テレワークを導入したり、地方に拠点を分散させる企業も出てきています。例えば、株式会社パソナグループは、2023年までに本社機能の大部分、社員の3分の2を兵庫県淡路島に移転していきます。また、茶類販売大手のルピシアは北海道に、ジャパネットホールディングスは福岡市に経営機能の一部を移転します。その他、医療品商社のイワキも本社機能を石川県に段階的に移転します。

 皮肉にも、地方創生戦略で一極集中の分散を目標に掲げ、できていなかったことが、コロナ禍によりパンデミックなどのことを考えると地方のほうが大都市より安全なことが確かめられた形になり、一部でありますが、企業が分散してきています。超高齢化で人口減少が進む日本においての地方活性化は急務であり、デジタルトランスフォーメーションで地方にいても大都市並みに仕事ができ、収入も得られ、楽しく幸せに暮らせるようになれば、長時間通勤の苦労から解放され、地方の活性化にも貢献でき、感染拡大の防止にもつながります。

 また、アフターコロナでは、リモート環境による働き方がグローバルで定着するだろうと考えますし、これからはリモートワークでできる仕事、できない仕事という働き方になると考えます。地方自治体側としては、それぞれの企業がどういう地方展開の戦略を持っているかも重要ですが、この機会をチャンスと捉えることも考えられ、企業と地方、双方のニーズを満たす環境づくりと場所づくりができるかどうかが課題になると考えます。

 そのような中、和歌山県としては独自のワーケーション事業に取り組んでおり、私としては非常に期待をしています。和歌山県として、ワーケーションの取組を今後加速化させるため、どのように取り組まれていくのか、企画部長にお伺いします。

○議長(岸本 健君) 企画部長。

  〔田嶋久嗣君、登壇〕

○企画部長(田嶋久嗣君) 本県は、平成29年度から全国の自治体に先駆けてワーケーションを提唱し、東京でのフォーラム開催や県内での体験会を実施してきました。

 本年度には、ワーケーションに来られた方々に対して、仕事のできる環境や余暇における体験や活動の場など、地域で受け入れるためのサービスを提供する事業者の登録制度を創設し、令和3年2月末時点で106のサービスを登録いただいております。

 令和3年度におきましても、ファムツアーとして情報発信力のある方々に現地を視察していただくほか、和歌山ワーケーションの認知度向上や地域への定着を促進するためのプロモーション活動を実施するとともに、ワーケーション受入れ事業者の拡大・PRにも取り組んでまいります。

 ワーケーションで和歌山にお越しいただくことをきっかけとして、観光振興や関係人口の創出、移住・定住、企業誘致など、地方の活性化につながる様々な波及効果を生み出せるよう、引き続き関係部局と連携しながら、積極的に働きかけを行ってまいります。

○議長(岸本 健君) 中西 徹君。

  〔中西 徹君、登壇〕

○中西 徹君 令和3年度の新政策で、南紀白浜空港展望広場内に、ICT環境が整ったレンタルオフィスやシェアスペース、会議室などを備えたビジネス拠点整備もPPP事業で取り組まれようと進められています。また今後の誘客を見据えた空港・港湾の受入れ体制の強化を行うこととなっています。ワーケーションは、今、答弁でもいただきましたように、他の県には負けない和歌山県発展のための一つの大きなツールであります。引き続き各部局が連携し、デジタル和歌山の実現も加速させ、和歌山県の高度な社会が一気に進められることを期待しています。

 次の質問に入ります。

 県証紙の段階的廃止についてでございます。

 現在、運転免許の試験手数料や更新手数料、学校受験料の納付などは、証紙の取扱窓口で、開業時間内に現金で購入し、支払い証明として証紙を貼付けし、申請書類を完成させています。証紙は金券の一種で、地方自治体が条例に基づいて発行し、自治体に対する使用料や手数料などの納付を行うための証票で、申請者が証紙を購入する際は売りさばき所を利用します。

 和歌山県では、紀陽銀行ほか、一部の町役場、交通安全協会等の売りさばき人と振興局の地域振興部等の売りさばき機関で取り扱っており、県内には77か所存在します。証紙を購入して行う手続としては、運転免許試験の申請、運転免許証の交付、教員免許状授与証明書の申請などで、約60万件あり、年間約15億円規模の徴収実績があると聞いております。

 長い間、申請等における支払い証明書としての機能を果たしてきた証紙ですが、東京都や広島県、大阪府や横浜市、長野市、福知山市では廃止し、福島県なども検討中となっています。わざわざ証紙を購入せず、現金やクレジット決済が行える申請手続が行えるようになれば、県民の利便性向上に資するのではないでしょうか。廃止を行った3都府県では、事務事業の見直しを行う中で、住民の利便性の向上、事務の効率化、大阪府においては民間を中心とした支払い方法の電子化の進展に伴い、収納方法の多様化の必要性など、様々な観点から証紙制度の在り方について検討した結果、廃止に至ったと聞いております。

 和歌山県証紙条例は、昭和39年に制定されています。証紙制度は、導入した当時においては事務の効率化の面から一定の効果があったと考えております。しかしながら、この証紙制度による納入は、書類を受け付ける窓口、そして別に証紙を販売する窓口などを設置する必要があります。また、私もそうですが、県民の側から見ると、証紙を購入して貼り付ける手間もかかることから、申請時の事務に時間を要し、デジタル化時代にそぐわない制度になってきているのではないかと思います。住民票などの申請は現金納付が当たり前となっている中、キャッシュレスが進む中で事務処理は簡略化すべきだと考えます。

 そこで質問なんですが、販売に係る手数料及び印刷費等の年間コストはどのようになっているのか、会計管理者にお伺いします。

○議長(岸本 健君) 会計管理者城本 剛君。

  〔城本 剛君、登壇〕

○会計管理者(城本 剛君) 本県の証紙の販売に係る経費といたしまして、証紙売りさばき手数料と印刷費用があり、3か年平均でそれぞれ約2800万円と約400万円となっております。

○議長(岸本 健君) 中西 徹君。

  〔中西 徹君、登壇〕

○中西 徹君 答弁ありがとうございます。大体平均で3か年で3000万円と少しかかっているということです。そこへ人件費も必要となってくると考えますし、その人件費が結構な額になってくるんじゃないかというふうに考えますけど、コストには見えてこない、また取扱いに対する住民や職員にも手間がかかると考えられます。

 3月1日の日本経済新聞にも書かれていました。これは民間企業の話だと思うんですけど、この春にも給料のデジタル払いが解禁され、会社が銀行口座を使わず、社員のスマホの決済アプリに給料を振り込めるようになるようです。お札や小銭を持ち歩かず、レジでスマホを出してピッというのは、今は普通の光景であり、そういう時代に急速になってきています。

 先日の3月5日の新聞に書かれていたんですが、紀の川市も県内で初めて窓口手数料の支払いにキャッシュレス決済サービスPayPayを導入しました。住民票や戸籍、印鑑証明書など、市民課が扱う全ての手数料サービスで実施するようで、4月1日からは納税証明などでも開始するということで、コロナ禍において非接触の支払いによる感染予防対策としても期待できるというふうに考えております。

 先ほど申し上げましたが、今議会においても新しい世界の対応と挑戦では、デジタル和歌山の実現や行政デジタル化などの政策がどんどん進められようとしている。その中で、キャッシュレス決済も進んでおり、私としては住民の利便性や事務効率化を考える上で、証紙廃止に向け段階的な取組も考えていくべきではないかというふうに思うんですけども、本県の考えについて、会計管理者にお伺いします。

○議長(岸本 健君) 会計管理者。

  〔城本 剛君、登壇〕

○会計管理者(城本 剛君) 証紙に代わる納付方法として、クレジットカードや電子マネーを利用したキャッシュレス決済は有効な手段であると考えております。

 しかしながら、現時点で証紙を廃止した3都府県においては、基本的に現金納付となっており、本県に当てはめますと申請窓口で現金管理の事務が新たに生じてまいります。

 県民の利便性を高めるためには、多様な納付方法としてキャッシュレス決済の実現は必要であり、電子申請などの本県における行政手続のオンライン化の推進に合わせ、収納システムの構築や運営に係るコストを勘案しながら段階的な導入を検討してまいります。

○議長(岸本 健君) 中西 徹君。

  〔中西 徹君、登壇〕

○中西 徹君 段階的に導入を検討してまいるということなので、よろしくお願いいたします。

 次の質問に移ります。

 3番、成年後見制度の利用促進についてお伺いします。

 成年後見制度とは、認知症、知的障害その他の精神上の障害があることにより、財産管理や日常生活等に支障がある方が、自分の財産を不当な契約などから守ることができる制度となります。成年後見制度の利用の促進に関する法律は、平成28年4月15日に公布され、同年5月13日に施行されましたが、全国的に利用が進んでいません。

 財産管理などが主になると考える成年後見制度は、任意後見制度と法定後見制度の二つに大きく分けることができます。

 まず、任意後見制度とは、本人に判断能力がある間に、信頼できる人、例えば子供やその他の親族と任意後見契約を結んでおき、本人の判断能力が不十分になったとき、任意後見を開始させるものであります。このことを行っておけば、本人の預貯金を医療費や施設入居費などで急に必要なときに引き出せなくなるようなことは起きません。

 次に、法定後見制度は、本人の判断能力が何らかの理由でなくなってしまった後に申立てを行え、4親等以内の家族や市町村等が家庭裁判所に後見開始の審判等を申し立て、家庭裁判所によって選ばれた後見人が本人の支援を行うもので、後見人の権限や選任などは家庭裁判所が決定することになり、時間もかかります。

 任意後見は、自分が選んだ信頼した方、子供やその他の親族に財産管理を任せられるのですが、法定後見の場合は家庭裁判所が選ぶことになり、家族が選ばれる場合もありますが、約7割が職業後見人、弁護士さんや司法書士さん、いわゆる第三者に財産を預けなくてはならないことになります。利用実態としては、ほとんどの方が知らないうちに本人の判断能力がなくなって、いろんな手続が何もできなくなった際に、やむを得なく法定後見制度を利用する状況になっています。

 私は、判断能力がなくなる前に準備しておく任意後見制度があることを多くの人に知ってもらい、利用できる人が増えればと考えています。銀行は現在、預金者の認知能力が低下したと判断した場合、本人以外による私的流用を防ぐため、口座取引を原則として停止します。裁判所が選任した第三者が財産を管理する成年後見制度に基づく法定代理人であれば、預金を引き出せますが、成年後見制度の利用者は、認知症や障害者手帳の交付を受けている知的障害や精神障害のある方の合計は全国で1000万人を超えているのに対し、利用率は2.1%にとどまっており、利用が進んでいません。それは、制度の利用に費用がかかることや、弁護士ら第三者に資産管理を委ねることへの抵抗感などの理由が考えられます。

 そのような状況の中、先ほども言いました本人の医療費や施設入居費などに充てるため、親族らが代理で引き出しを求めるケースが増えており、金融庁の審議会が銀行業界に対応を求めていたところ、令和3年2月18日、全国銀行協会は、認知症高齢者の預金について法的な代理権を持たない親族からの引き出しも条件付で認める見解を公表しました。今回の見解では、本人の認知能力の低下を面談や医師の診断書などで確認した場合、成年後見制度の利用を基本としつつ、本人の医療費や施設入居費などに充てる資金の代理での引き出しを認めることとなりました。私的流用のおそれは排除できませんが、本人の利益に適合することの確認を徹底することなどによって、リスクを低減できるとしました。

 これにより、少し緩和された部分がありますが、成年後見制度の基本は変わりません。この制度の利用を促進するためには、制度内容の周知が重要だと考えます。国では、これに関して、司令塔機能である中核機関の整備強化を推進する考えを示しておりますが、全国的に中核機関を設置している市町村は少ない状況です。私としては、新たに中核機関を設けずとも、まず既存の組織を活用して進めていけばよいのではないかと考えています。

 質問ですが、成年後見制度利用促進のための取組状況は、県内においてはどのようになっていますか。また、都道府県の役割は市町村をはじめとする関係機関の連携確保と取組促進に対し助言を行い、支援制度の理解を広げることだと考えていますが、県としてどのように取り組まれていきますか、福祉保健部長にお伺いします。

○議長(岸本 健君) 福祉保健部長宮本浩之君。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) 成年後見制度は、認知症などにより判断能力が低下した人や、精神・知的障害のある人などの財産管理や介護・福祉サービスの手続を成年後見人が代理で行い、不当な契約などから本人を守る制度です。全国的に認知症高齢者や単身の高齢者世帯の増加が見込まれる状況にありますが、制度そのものの仕組みや手続が複雑で分かりにくい、財産管理を任せることに不安を感じるなどの理由から、県民に対し周知と理解がなかなか進まず、県が令和2年3月に実施した高齢者等生活意識調査においても「制度内容を知らない」との回答が約7割以上を占めている状況にあります。

 平成28年度に成年後見制度利用促進法が制定されて以降、県では市町村とも連携しながら、ホームページや広報紙、パンフレット等での広報、周知に加えて、県社会福祉協議会と連携して出前講座を実施し、広く周知に努めてきたところです。

 しかしながら、制度周知が進まない中、今年度は制度利用が必要な方々の身近な支援者に、より詳しい情報が届くよう、ケアマネージャーや施設職員の集まる研修会等において制度内容を周知しております。

 加えて、現在様々な課題を複合的に抱え、地域や社会から孤立する世帯を早期の支援につなげるため、市町村、社会福祉協議会、民生委員・児童委員、自治会などの支援機関が福祉事務所ごとに連携する生活困窮者自立支援会議を活用し、支援が必要な人の把握に努めているところであり、引き続きさらなる制度周知と利用促進を進めてまいります。

○議長(岸本 健君) 中西 徹君。

  〔中西 徹君、登壇〕

○中西 徹君 答弁ありがとうございます。

 御坊市は、3月1日に地域包括支援センターを中核機関として整備しましたが、これも既存のネットワークを活用したと聞いております。このように既存組織を有効利用していただき、なかなか数字自体は伸びにくい面もあると思うんですけども、関係機関と連携し、制度周知と利用促進を進めていっていただきたいというふうに思います。よろしくお願いします。

 それでは、最後の質問に移ります。農業遺産の認定の取組についてお伺いします。

 和歌山県議会においても、農業遺産推進の取組については、尾崎要二会長を先頭に協議会も立ち上げ、農業遺産の認定に向け協議会、議員が一丸となって取り組んでいるところです。

 農業遺産は、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり継承されてきた独自性のある農林水産業と、それと密接に関わって育まれた文化、ランドスケープ及びシースケープ、農業生物多様性などが相互に関連して一体となった伝統的な農林水産業を営む地域を国際連合食糧農業機関(FAO)が認定を行う世界農業遺産と、農林水産大臣が認定を行う日本農業遺産があります。

 世界農業遺産は、世界において重要かつ伝統的な農林水産業を営む地域をFAOが定める「食料及び生計の保障」、「農業生物多様性」、「地域の伝統的な知識システム」、「文化、価値観及び社会組織」、「ランドスケープ及びシースケープの特徴」の五つの認定基準に基づき認定する制度です。

 また、日本農業遺産は、FAOが定める認定基準に、「変化に対する回復力」、「多様な主体の参画」、「6次産業化の推進」の日本独自の三つの基準を加えた認定基準に基づき認定する制度となっています。

 県内においては、平成27年12月にみなべ・田辺地域の「みなべ・田辺の梅システム」が世界農業遺産に認定されました。また、平成31年2月には、海南市下津地域の「下津蔵出しみかんシステム」が日本農業遺産に認定されています。さらに、「聖地 高野山と有田川上流域を結ぶ持続的農林業システム」と「みかん栽培の礎を築いた有田みかんシステム」の二つが、去る2月19日に日本農業遺産に認定されました。世界農業遺産の申請については、今回、承認に至りませんでした。

 そこで、今回の農業遺産認定、承認の状況について、農林水産部長にお伺いします。

○議長(岸本 健君) 農林水産部長角谷博史君。

  〔角谷博史君、登壇〕

○農林水産部長(角谷博史君) 今回の農業遺産認定・承認の状況についてお答えします。

 議員お話しのとおり、高野・花園・清水地域の「聖地 高野山と有田川上流域を結ぶ持続的農林業システム」と有田地域の「みかん栽培の礎を築いた有田みかんシステム」が、2月19日、日本農業遺産に認定されました。

 議員各位には、日本農業遺産認定に際して、いろいろとお力添えをいただきましたことに、厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。

 今回は、13地域から申請があり、10地域が認定・承認されました。このうち日本農業遺産に認定されたのは7地域で、再挑戦により認定された5地域と、新規に申請し認定された2地域となっております。

 世界農業遺産への申請が承認されたのは3地域で、過去に日本農業遺産に認定されていた3地域が、再挑戦により国連食糧農業機関(FAO)へ申請することが承認されました。

○議長(岸本 健君) 中西 徹君。

  〔中西 徹君、登壇〕

○中西 徹君 農業遺産認定地域の今後の取組についてお伺いします。

 私の地元である下津地域では、日本農業遺産に認定されて以降、システムを地域内外へPRするため、シンボルマークや動画の作成に加え、JR海南駅と加茂郷駅での看板の設置を行っているほか、シンボルマークを印刷した出荷箱によるミカン出荷や農業遺産の勉強会の開催など、多くの皆様が活動に参画されています。

 このように、農業遺産に認定されることにより、地域が活性化するなど多くのメリットが期待できます。

 そこで、今回の認定で県内の農業遺産認定地域が4地域となりましたが、認定された地域での今後の取組について農林水産部長にお伺いします。

○議長(岸本 健君) 農林水産部長。

  〔角谷博史君、登壇〕

○農林水産部長(角谷博史君) 農業遺産認定地域での今後の取組についてお答えします。

 農業遺産に認定されたことにより、議員お話しのように、多くの方々が活動に参画されるとともに、農業産出額や観光客の増加、担い手の定着といった効果が出ている地域が多くあります。

 県では、農業遺産認定地域での活動を促進するため、シンポジウムの開催をはじめ、集客施設や市場などでのPR、他の認定地域と連携した都市部でのフェア開催など地域内外への情報発信に加え、保全活動や人材育成の取組に支援しているところでございます。

 今後も、地域の活性化や所得向上に向けて、地元の協議会の皆さんと一体となって農業遺産を核とした活動にしっかりと取り組んでまいります。

○議長(岸本 健君) 中西 徹君。

  〔中西 徹君、登壇〕

○中西 徹君 和歌山県が日本農業遺産に申請した地域は全て認定されたことになると思います。世界農業遺産と日本農業遺産と、合計四つある県は和歌山県だけです。地域の皆様の頑張り、そしてまた部長をはじめ職員の皆様の努力もあってのことだとも考えます。今後も農業遺産を核とした活動を地域と一丸になって取り組まれることをお願いし、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

○議長(岸本 健君) 以上で、中西徹君の質問が終了いたしました。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 2番山家敏宏君。

  〔山家敏宏君、登壇〕(拍手)

○山家敏宏君 おはようございます。

 最初に、新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方々への御冥福と、今もなお感染症と闘っておられる方々の一日でも早い回復をお祈り申し上げます。また、最前線で働いてくださっている医療関係者の方々、社会基盤を支えてくださっている方々にも深く感謝の意を申し上げます。

 現在も、避け切れない大きな危機の一つと言われている感染症がパンデミックを引き起こしています。歴史を振り返れば、人類は度々感染症の流行に襲われ、その都度イノベーションにより抱えている課題を克服し、ニューノーマルな社会へと導き出してきました。もちろん、考え方は多種多様であると思いますが、このようなパンデミックを経験することで、人々の考え方や行動様式を劇的に変えるきっかけにもなり、時には世の中の大変革や進歩、社会の改善につながっていくこともあります。

 例えば、人間が活動を止めると、コミュニティーの範囲は狭まりますが、最も近しい人を知る機会にもなります。また、大気汚染が改善され、自然が回復します。そのほかにも、美しいものや自然、音楽、アート、会話、クリエーティビティー、祈り、健康等、何が大切で何によって支えられているかを知ることができます。

 しかし、新型コロナウイルス感染症による災禍は、まだまだ社会全てに困難を与え、回復への見通しが立たない状況を引き起こしています。私はよりよく、より強く、再生可能な生き方ができる世の中を目指し、必ずコロナ禍も近い将来克服できると信じています。

 それでは、議長のお許しをいただきましたので、通告書に従い一般質問をいたします。

 まず、全国比較での本県の横断歩道における自動車の一時停止状況及び啓発活動の推進について質問いたします。

 運転者のルールでは、横断歩道や自転車横断帯に近づいたときには、横断する人や自転車がいないことが明らかな場合のほかは、その手前で停止できるように速度を落として進まなければなりません。また、歩行者や自転車が横断しているときや横断しようとしているときは、横断歩道や自転車横断帯の手前、停止線があるときはその手前で一時停止をして、歩行者や自転車に道を譲らなければなりませんとなっています。

 また、歩行者のルールでは、横断歩道や信号機のある交差点が近くにあるところでは、その横断歩道や交差点で横断しなければなりません。また、横断歩道橋や横断用地下道が近くにあるところでは、できるだけその施設を利用しましょうとなっています。しかし、現状の歩行者の死者数は、道路横断中であったことが約7割を占めています。

 この状況を踏まえ、令和2年度和歌山県の年間推進重点項目として「横断歩道における歩行者優先の徹底」を掲げていますが、実際私が感じているのは、横断歩道の自動車の一時停止状況は、歩行者が横断歩道を渡ろうとしているのに、ほとんどの自動車は一時停止をしていないということです。そのほかにも、私の自動車が一時停止しているにもかかわらず対向車は数台通り過ぎ、はっと気づいた車両のみが一時停止するという現状であります。

 最近の話になりますが、私の前を走っていた自動車は、横断歩道を渡ろうとしている登校中の中学生に対して、出てこないようにわざとクラクションを鳴らし、走り去っていくということがあり、私はその行動に腹立たしい思いをしたのを覚えています。私も歩行者として横断歩道を渡るとき、自動車はなかなか停止してくれないので、走行していないのを確認してから走って渡っています。

 なぜ一時停止をしてくれないのかを疑問に思い、知人に話したところ、一時停止をしなければならないことを知らなかったという事実もございました。一時停止をあえてしないのではなくて、一時停止しなければならないということ自体を知らないのが一番の原因だと思います。そのことを知っていただくためにも、啓発活動はかなり有効で、重要であると考えます。

 そこで、本県の一時停止状況及び啓発活動の推進について、環境生活部長の答弁を求めます。

○議長(岸本 健君) ただいまの山家敏宏君の質問に対する答弁を求めます。

 環境生活部長田中一寿君。

  〔田中一寿君、登壇〕

○環境生活部長(田中一寿君) 議員御指摘のとおり、道路交通法において、信号機のない横断歩道では、その直前で停止できるような速度で進行するとともに、横断し、または横断しようとする者があるときは、横断歩道の手前で一時停止しなければならないと定められています。

 ところが、信号機のない横断歩道における自動車の一時停止について、平成30年に自動車関連団体が公表した調査では、本県の停止率は1.4%、全国ワースト3位でした。このため、季節ごとの交通安全運動において重点事項に位置づけ、警察をはじめ関係機関・団体と連携して、啓発ポスターを交通センターに掲示するなど、運転免許保有者に向けた啓発を強化するとともに、交通指導員などの交通ボランティアに対しても、この課題を取り上げた研修を通じて啓発を行ってまいりました。

 こうした取組と警察による取締りの結果、停止率は、令和元年には8.9%、昨年には15.9%に上昇してきており、徐々にではありますが、横断歩道では歩行者が優先し、車は一時停止しなければならないという意識が高まっているものと考えております。

 しかしながら、議員御指摘のように、横断歩道を渡ろうとする歩行者がいるにもかかわらず、いまだに一時停止をしない運転者や、そればかりかクラクションを鳴らして横断を妨害しようとする運転者まで存在することは承知しております。

 県としましては、こうした行為は重大事故につながる危険なものであることから、冒頭に御説明した、信号機のない横断歩道における基本的なルールを必ず遵守するよう、運転者はもちろん、将来運転者になる子供も含め、あらゆる機会を通じて教育、啓発を行ってまいります。

○議長(岸本 健君) 山家敏宏君。

  〔山家敏宏君、登壇〕

○山家敏宏君 答弁ありがとうございます。継続的な啓発活動として、答弁いただいた以外にも、運転免許証の更新講習時、県警のホームページ、リーフレット等、いろいろな方法で取り組んでいると聞いております。また、警察による取締りの結果、平成30年の停止率1.4%から昨年は15.9%に停止率が徐々に上がってきていることはうれしい限りです。しかし、現時点で、私は警察による取締りを強化していくことよりも、啓発活動によって県民の方々に知っていただくことが重要だと考えていますので、歩行者の命を守るためにも停止率ベスト1を目指して、継続的な啓発活動を続けていただきますようお願い申し上げます。

 そして、警察本部に対してですけども、横断歩道のライン及びダイヤマークが薄く、分かりづらい箇所があります。ソフトとハードは一対で取り組むことが重要ですので、今後とも早急な対応を要望し、次の質問に移ります。

 続いて、新型コロナウイルス感染症対策について質問いたします。

 小項目1の事業継続支援金の結果を踏まえた対応策について質問いたします。

 皆様御承知のとおり、事業継続支援金、事業者の継続を下支えし、再起の支援を図るための支援金は県独自の対策で、令和2年5月の臨時会で、全員賛成で可決されました。

 この対策の実施によって、多種多様の業種の方々の事業継続ができたことは大変すばらしく、仁坂知事をはじめ職員の方々に心からお礼申し上げます。

 この対策の第一の目的は、もちろん事業の継続ですが、県としては、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で苦しい状況になっているのはどのような業種なのかを把握し、今後の政策に有効活用されることが重要だと考えています。

 そこで、現時点での申請件数及び状況把握を踏まえた上での対応策について、商工観光労働部長の答弁を求めます。

○議長(岸本 健君) 商工観光労働部長大山 茂君。

  〔大山 茂君、登壇〕

○商工観光労働部長(大山 茂君) 事業継続支援金は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響により、非常に厳しい状況にある県内事業者の方々に対し、令和2年5月臨時会で議決をいただき創設しました。

 県内事業者の方々からは、当初の想定を超える申請をいただき、令和2年6月定例会、9月定例会及び12月定例会において増額の議決もいただき実施しているところです。

 令和3年2月末時点では、飲食業者3974者など、全体で3万917件の申請を受け付け、62億4780万1000円を支給しております。

 事業継続支援金の申請実績については、今議会にて2月補正予算として議決いただいた飲食・宿泊・旅行業給付金の創設に際し、対象事業者数の把握に活用したところです。

 今後も、事業者の方々の状況把握に努めて、時期を逸することなく対策を講じてまいります。

○議長(岸本 健君) 山家敏宏君。

  〔山家敏宏君、登壇〕

○山家敏宏君 御答弁ありがとうございます。この事業開始後、各市町村でも独自の政策を実施するために、申請している業種等の情報を県に問い合わせた市町村もあると聞いております。しかし、当時はいち早く支援金を届けることが最優先で、一市町村単位での情報提供は個人商店等を特定されるおそれがあるので、できなかったようです。

 このような情報提供を行うためには、和歌山県内を例えば数ブロックに分けることで、特定されることはないと思いますので、できる限り市町村に情報提供し連携を取っていただけるようお願いし、次の質問に移ります。

 続いて、新型コロナウイルス感染症に係る誹謗中傷等への取組について質問いたします。

 和歌山県では、新型コロナウイルス感染症に対して、積極的にPCR検査を行い、感染者の早期発見、早期隔離、徹底した行動履歴の調査により感染拡大防止に継続して取り組む和歌山モデルにより、爆発的な感染拡大防止ができています。

 このことは、県民の皆様の御協力はもちろんのこと、仁坂知事、野㞍技監を先頭に保健医療行政の職員の方々の1年以上にもわたる誠心誠意の対応に、この場をお借りしてお礼申し上げます。

 先日、私は2月19日の朝日新聞に掲載されていた、小学生の母親が語った家族への誹謗中傷の心境の記事を読みました。抜粋させていただきます。

 県内に住む母親の長男が1月11日に喉の痛みを感じ、13日朝に38.4度の発熱、関節筋肉痛や全身倦怠感などの症状が出て、PCR検査で陽性が判明した。

 長男が発症した13日中に、「東京に遊びに行って新型コロナになったんだろう」といううわさが流れていると人づてに聞かされた。市内からは出たことはなく、なぜ東京に行ったことになっているのか不思議だった。

 さらに、県の感染症発生状況の発表前に、インターネット上の掲示板には「きょうだいが感染した」、「東京に行かなかったら平和だった」などと書き込まれていた。

 入院中、母親は、職場や子供が通う小学校などの濃厚接触者らに「こんなことになってしまってすみません」と謝り続けた。

 不安なのは、新型コロナにかかったことが子供たちについて回ることだ。インターネットの掲示板には「こんな子と一緒の中学校に行きたくない」、「一番先になっているから、あの子がウイルスをまいた」と書き込まれた。「証拠もなく、ありもしないことで中傷している。うちの子が持ってきたと決めつけられることが悲しい。子供たちが見たら、どんな気持ちになるのか。自分の家族がなったとき、このようなことが言えるのか」。それでも母親は、助けてくれる人もいるからこの地域を離れたくないという、このような内容で掲載されていました。

 私の周りでも、いろいろなデマを聞きますが、私は人として、また子を持つ親として、このようなデマや差別、誹謗中傷を絶対に許さない決意です。これまでも、人権関係の挨拶とかをさせていただく機会には、あらゆる差別に対して匿名のインターネットへの書き込みは絶対に許せないということを訴えてきました。もちろん、これからも訴えていきます。

 そして、和歌山県では、全国で初めて、誹謗中傷等を行った人に対する説示や勧告を明記した和歌山県新型コロナウイルス感染症に係る誹謗中傷等対策に関する条例が令和2年12月24日に施行されています。しかし、新型コロナの感染者数は、令和2年11月末時点で452名から、先月末時点、2月末で1163名と比べると、約2.5倍以上に増加しています。このことを踏まえた上で、さらなる誹謗中傷を行わないような取組が喫緊の課題だと思います。新型コロナウイルスに関する差別は犯罪です。絶対に許してはなりません。新型コロナウイルスに感染された方々は、被害者なのです。

 新型コロナウイルス感染症を理由にしたデマや差別、誹謗中傷等が生じたとき、県はどのように取り組み、許されないということを県民にどう訴えていくのでしょうか、企画部長の答弁を求めます。

○議長(岸本 健君) 企画部長田嶋久嗣君。

  〔田嶋久嗣君、登壇〕

○企画部長(田嶋久嗣君) 県では、新型コロナウイルス感染症を理由としたデマや誹謗中傷等を許さないとの思いから、新型コロナウイルス感染症に係る誹謗中傷等対策に関する条例を施行したところです。

 しかしながら、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、感染者やその家族、医療従事者などに対するデマや誹謗中傷等が増加しています。

 県では、デマや誹謗中傷等が発生した場合には、誹謗中傷等を行った人から聞き取りを実施し、本条例に基づき、誹謗中傷等を行った人に対して、誹謗中傷等を行わないことやインターネット上に投稿した情報を削除するよう説示を行い、従わない場合にはやめるよう勧告します。

 また、そもそも議員の御指摘のとおり、デマや誹謗中傷等は犯罪であり、許されないものです。名誉毀損罪、業務妨害罪、脅迫罪などの刑事上の責任が問われ、懲役や罰金などの刑事罰が科される場合があるだけではなく、さらに被害者から損害賠償を請求される場合もあります。誹謗中傷等は、被害者だけではなく、誹謗中傷等を行った人自身の人生も変えてしまうものであり、デマや誹謗中傷等を決して行わないよう、県の広報媒体による啓発や自治会等を通じた啓発チラシの配布などにより、全ての県民に対し強く訴えかけてまいります。

○議長(岸本 健君) 山家敏宏君。

  〔山家敏宏君、登壇〕

○山家敏宏君 答弁ありがとうございます。和歌山県新型コロナウイルス感染症に係る誹謗中傷等対策に関する条例を十分に活用しながら、人がつくる風評や根拠のないうわさに振り回されることがなくなり、今まで以上に、絶対に差別は許さないという姿勢で取り組んでいただきますよう強く要望いたします。

 また、感染者の退院後の心のケアとフォローアップは大変重要です。現在も各振興局の専任の担当者が、健康状態だけでなく、生活上の困り事などにも対応し、きめ細やかなフォローアップをしていただいていると聞いております。これからも柔軟な対応を含め、引き続きよろしくお願いいたします。

 次の質問に移ります。

 強い紀州材の需要喚起対策について質問いたします。

 最初に、攻めの“紀州林業”推進プロジェクトについて質問いたします。

 和歌山県の森林は、36万ヘクタール、県土の約77%を占めています。この森林からは、良質な水を育む水源涵養機能、洪水や土砂災害の防止機能、地球温暖化の要因である二酸化炭素の吸収等、様々な恩恵を受けています。この森林をきっちり整備していかなければ、逆に集落等への危険度が高まるおそれがあります。これらのことを踏まえて、森林を県民の財産として守り育て、次の世代に引き継いでいくことを目的とした二つの条例、紀の国森づくり税条例、紀の国森づくり基金条例が、先輩議員の方々の御尽力で、平成19年4月1日に施行されました。現在、この基金は、子供たちに森林体験、木工体験、出張木工教室等の様々な事業に有効活用されています。

 昨年、私も林業関係者の方からいろいろとお話を聞かせていただいて、現時点において、バイオマスでの木材需要はかなり多いが、構造材としての需要は伸びていない、また人手不足等の課題があると報告を受けました。人手不足の解消、森林を守るためには、紀州材の付加価値を高め、安定した価格で供給できることが最重要であり、それが人件費向上につながり、人手不足の解消になると考えます。

 そこで、今議会で新施策として、攻めの“紀州林業”推進プロジェクトが提案されていますが、趣旨と内容について、農林水産部長に答弁を求めます。

○議長(岸本 健君) 農林水産部長角谷博史君。

  〔角谷博史君、登壇〕

○農林水産部長(角谷博史君) 攻めの“紀州林業”推進プロジェクトについてお答えします。

 県では、紀州材の需要拡大を図るため、これまで県内での住宅建築や公共建築物の木造・木質化に加え、都市部での大規模展示会への出展等を支援してまいりました。

 しかしながら、強度が強い紀州材の特性が価格に反映されていないことや、県外での紀州材のシェアが低いといった課題がありました。

 こうしたことから、県では、紀州材の付加価値を向上させ県外でのシェア拡大を図るため、令和3年度新政策として攻めの“紀州林業”推進プロジェクトの予算を今議会にお願いをしております。

 具体的には、県内の原木市場に出荷される構造用丸太に強度や施業履歴等を表示することにより付加価値をつけ、県内外から多くの買手を呼び込むことで競りを活性化させます。

 また、都市部の工務店と県内の製材所が利用協定を締結し、わかやま紀州材利用推進店として認定した上で、紀州材の使用量に応じて支援を行うことで、他県産材等からの転換を誘導し、都市部でのシェア拡大を図ってまいりたいと考えております。

○議長(岸本 健君) 山家敏宏君。

  〔山家敏宏君、登壇〕

○山家敏宏君 答弁ありがとうございます。この攻めの“紀州林業”推進プロジェクトの名称からは、さらなる活力を注ぎ取り組んでいくという姿勢が感じられ、大変すばらしいと思っております。紀州材の付加価値を高め、県外にもシェアを広げていくということですので、攻めの政策を成功させていただきますようお願いいたします。

 次の質問です。

 紀州材のブランド力強化への取組について質問いたします。

 先ほどは、構造用丸太の強度を表示し付加価値を高める、また県外の工務店に対しても紀州材の使用量に応じた支援を行い、付加価値を高めていくということでしたが、次の段階として、ブランド力を高めるためには、紀州材の新たな商品開発を進めていくことが重要であると考えています。今までもいろいろな取組を行っていただいているとは思いますが、紀州材商品の開発に対する取組状況と今後について、農林水産部長に答弁を求めます。

○議長(岸本 健君) 農林水産部長。

  〔角谷博史君、登壇〕

○農林水産部長(角谷博史君) 紀州材のブランド力強化への取組に関する御質問にお答えします。

 住宅着工数が減少する中、建築用材の販売だけでなく家具などの商品開発を行うことは、所得向上を図る上で有効な取組であると考えております。

 このため、県では、試作品開発から販売促進までの取組を県単独事業で支援をしてございまして、これまで紀州材製のオーダーキッチンやテーブル、椅子等が商品化されております。

 また、商品のデザイン性を向上させるため、著名なプロダクトデザイナーを講師に招き、木の国わかやま木工塾を令和元年度から開催しているところでございます。

 このような取組により、有田川木材協同組合では製材部会を立ち上げ、杉材を使った厚みのある床材などの商品開発が行われております。

 今後も、特色ある商品の開発をはじめ、大規模展示会や設計士を招いた産地見学会等でのPRに加え、丸太に強度や施業履歴の表示等を行うことにより、紀州材のブランド力向上を図ってまいります。

○議長(岸本 健君) 山家敏宏君。

  〔山家敏宏君、登壇〕

○山家敏宏君 紀州材は、杉とヒノキがメインですが、他県にもある材種なので、付加価値をつけるのは非常に難しいと思います。

 しかし、例を挙げさせていただくと、例えば紀州材の杉のフローリングは吸湿性に優れ、傷がつきにくく、また健康面でのメリットがある等の科学的な根拠を提示できれば、付加価値が高まり、安定した価格での供給ができると考えられます。このようなことも考慮いただきながら、紀州材の付加価値を高め、林業関係者、製材所、工務店、設計者等と連携を取りながらの取組を引き続きお願いいたします。

 最後の質問です。

 次代につなぐ漁村づくり支援事業の要件緩和について質問いたします。

 令和2年2月の定例会に私が質問させていただいた内容と重複する部分もございますが、御了承いただきたいと思います。

 この事業は、漁業の新規就業者を確保するために、研修生の給付金等を支援するということを目的としています。令和2年2月の定例会の段階で、対象者は、3親等以内の親族ではないということが要件となっていましたけども、親族でさえも後継者になりづらいということを踏まえると、未経験者が漁業に携わり、継続し続けていくことは誠に困難であり、まずは親族の方に後継者になっていただくことが担い手不足の解消に有効だと考え、担い手不足解消のためには「この要件を見直す必要があるのではないでしょうか」と質問し、農林水産部長からは、「本県での担い手の減少が大きいこと、また、漁業者等からの要望が強いことから、議員の御指摘を踏まえ、要件の見直しを検討してまいりたいと考えております」と答弁をいただきました。

 その後、部長を先頭に職員の方々の御尽力で、昨年4月からは、3親等以内の親族でない者という要件については変更をしていただき、ありがとうございます。この場をお借りし、お礼申し上げます。

 このように、要件緩和を令和2年度から実施していただいておりますが、令和2年度の実績と、要件緩和後の状況について、農林水産部長の答弁を求めます。

○議長(岸本 健君) 農林水産部長。

  〔角谷博史君、登壇〕

○農林水産部長(角谷博史君) 次代につなぐ漁村づくり支援事業の要件緩和に関する御質問にお答えします。

 次代につなぐ漁村づくり支援事業は、漁業の新規就業者を確保するため、漁協と市町が一体となって実施する漁業研修や研修生の給付金支給等を支援する事業でございます。

 漁業研修の対象者については、国の基準と同様、指導者との関係が3親等以内の者を除くこととしておりましたが、議員御指摘のとおり、親が指導者となり子供を独立させるために行う研修も対象とするよう、本年度より要件を変更いたしました。

 本年度は、8地区で14名が研修に参加し、このうち5名が就業、引き続き9名が研修に取り組んでおります。うち1名が要件を変更した結果、親元での研修に取り組んでおり、これ以外にも幾つかの相談を受けております。

 今後も、漁協や市町と連携を図りながら、都市部で開催される漁業就業支援フェアや漁業者が多く集まる場で事業のPRを行うとともに、就業希望者と受入れ漁協とのマッチングを行い、漁業就業者の確保にしっかりと取り組んでまいります。

○議長(岸本 健君) 山家敏宏君。

  〔山家敏宏君、登壇〕

○山家敏宏君 ありがとうございます。

 要件変更を行った結果、現在1名の方が親元での研修に取り組んでいるということであり、質問をさせていだたいた意義があったんやなと思っております。

 しかしながら、農業では、農業次世代人材投資事業により、就業後も5年間給付金により支援を行うとともに、都市部での就農相談会の開催に加え、ミカンの厳選出荷や農地のあっせんなどの取組により、近年は毎年120名~140名の方々が新たに就農しています。

 また、林業では、森林環境譲与税を活用し、東京や大阪など都市部での林業体感セミナーの開催や就業相談から事業体へのあっせんまでの一貫した支援などにより、令和元年度は32名の方々が林業に新規就業し、令和2年度はさらに増加する見込みであると聞いております。

 本県にとって、漁業も重要な産業でありますので、次代につなぐ漁村づくり支援事業により、親元での研修を含めて研修生をさらに増やしていただくとともに、農業や林業のように様々な施策を展開し、多くの若者を漁業に呼び込み、漁村の活性化を図っていただきますよう要望し、私の一般質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

○議長(岸本 健君) 以上で、山家敏宏君の質問が終了いたしました。

 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。

 この際、暫時休憩いたします。

  午前11時20分休憩

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  午後0時59分再開

○副議長(濱口太史君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 40番奥村規子君。

  〔奥村規子君、登壇〕(拍手)

○奥村規子君 皆様、こんにちは。

 それでは、議長のお許しを得ましたので、通告に従い一般質問をさせていただきます。

 本日、3月8日は、折しも3・8国際女性デーの記念日でございます。この国際女性デーは、1904年3月8日にニューヨークで起きた婦人参政権を求めるデモを記念し、1910年の国際社会主義会議で提唱されたと言われています。アメリカによるベトナム侵略戦争が激化する中、世界中の女性たちが、侵略戦争に反対して連帯しようと声を上げた歴史があります。

 2015年9月、ニューヨークの国連本部にて193か国の合意の下、2030年までに全ての国が達成すべき17の持続可能な目標を採択しました。日本政府も、その達成を約束しています。一つ目は、貧困をなくそう、二つ目は、飢餓をゼロに、三つ目は、全ての人に健康と福祉を、四つ目は、質の高い教育をみんなに、五つ目が、ジェンダー平等を実現しようとなっています。

 日本のジェンダー平等は、世界水準から大きく立ち後れた現状にあります。最近では、東京オリンピック・パラリンピック組織委員会前会長の森喜朗氏が、女性蔑視と思われる発言によって辞任に追い込まれました。また、コロナ禍において、全国的に一層、ジェンダー格差が浮き彫りになっています。失職、家事・育児の負担増大、DVなど、様々な困難に直面し、自殺者の急増などが報道されています。

 一方、国において、男女共同参画基本法に基づき第5次計画が策定されました。パブリックコメントが5600件以上寄せられたということです。ジェンダー平等を目指す世論、運動のかつてない高まりを感じています。

 そこで、県としては、第5次計画を策定することになっていることから、ジェンダー平等の取組について質問をさせていただきます。

 まず、先日、令和2年度男女共同参画に関する県民意識調査について、資料提供をしていただきました。県民意識調査の結果を踏まえ、和歌山県の男女共同参画の現状をどのように認識しているのか、環境生活部長にお尋ねいたします。

○副議長(濱口太史君) ただいまの奥村規子君の質問に対する答弁を求めます。

 環境生活部長田中一寿君。

  〔田中一寿君、登壇〕

○環境生活部長(田中一寿君) 令和2年度男女共同参画に関する県民意識調査は、令和2年8月から9月にかけて、県内全市町村から無作為に抽出した満20歳以上の男女各1500人、合計3000人を対象にアンケートを実施したもので、1402人の方から回答をいただきました。

 アンケートの結果、男女の地位の平等感については、学校教育の場では、半数以上の方が平等であると回答し、男性が優遇されていると回答している方は10%程度にすぎませんが、社会全体で見ると、男性が優遇されていると回答した方が約3分の2に上るなど、男性のほうが優遇されていると感じている割合が依然として高くなっています。

 また、男は仕事、女は家庭という固定的役割分担意識につきましても、男女ともに否定的な意見が増加しておりますが、4分の1程度の方は賛成と回答しており、いまだこうした意識が根強く残っていることが分かりました。

 さらに、家庭生活、子育てや子供の教育、就労などの質問項目においても、報告書に記載のとおり、男女共同参画社会の推進に向けて、幾つもの課題が残されていることを認識させられる結果となりました。

 また、男女共同参画の言葉についての認知度を問う設問において、県の施策である和歌山県男女共同参画推進条例、和歌山県男女共同参画センター「りぃぶる」、性暴力救援センター「わかやまmine(マイン)」などの認知度が低かったことから、それぞれの取組や広報の在り方について再検討していかなければならないと考えているところです。

○副議長(濱口太史君) 奥村規子君。

  〔奥村規子君、登壇〕

○奥村規子君 今、県民意識調査の結果に関して答弁をいただきました。和歌山県の男女共同参画については、進んでいる面がある、その一方、まだまだ課題もありますとおっしゃられました。その点について、私は、非常に、男女間の賃金格差の問題や独り親家庭に対する支援の面についても、今後、もっと取組が必要になってくると思います。

 令和4年度からの5か年を計画期間とする第5次和歌山県男女共同参画基本計画の策定作業が来年度に行われるということですが、計画策定に当たっての基本的な考え方についてお伺いいたします。環境生活部長にお尋ねいたします。

○副議長(濱口太史君) 環境生活部長。

  〔田中一寿君、登壇〕

○環境生活部長(田中一寿君) 県では、これまでの4次にわたる和歌山県男女共同参画基本計画に基づき、仕事や家事、育児、介護、地域活動などのあらゆる分野に男女が共に参画できる社会の実現に向け、固定的役割分担意識の払拭のための啓発、各分野での女性の登用促進等、様々な施策を展開してまいりました。来年度には、令和4年度からの5年間を計画期間とする第5次の基本計画の策定作業を行うこととしております。

 近年、女性の就業率が上がっていることなど、多くの分野で女性の活躍が進んできている一方で、固定的な性別役割分担意識を背景に、家事、育児、介護等、家庭生活における女性の負担が依然として大きいことや、長時間労働を前提とした働き方などにより、仕事と家庭の両立が難しい状況が残されています。

 次期基本計画につきましては、今後、和歌山県男女共同参画審議会において御審議いただくとともに、県民の皆様の御意見も伺いながら決定することとなりますが、あらゆる分野で女性の参画を推進するとともに、議員からお話がありました賃金格差の問題や独り親家庭に対する支援を含め、就業環境の整備や子育て・介護支援の充実など、ワーク・ライフ・バランス──仕事と生活の調和──が実現できる環境整備を目指し、より実効性のある計画にしてまいりたいと考えております。

○副議長(濱口太史君) 奥村規子君。

  〔奥村規子君、登壇〕

○奥村規子君 最後に、今お答えいただいたことから、これからの男女共同参画計画がさらに県民の願いに応えるものになるよう、ぜひお願いしたいという思いで要望をさせていただきます。

 意識調査では、特に着目すべきことは女性の理想の生き方として、「結婚や出産に関わりなく、職業を持つ」を理想とする女性の割合が調査開始以来、初めて50%を超えたと報告されています。一方、実際になりそうな生き方、現実にそうなっている生き方の問いに対して、これまで同様「結婚または出産を機に一時仕事を辞めるが、その前後は職業を持つ」が約40%となっています。

 厚生労働省の賃金構造基本統計調査(2018年)では、和歌山県は、全産業で決まって支給する現金給与額、男性は約33万円、女性は25万円で8万円の差があります。年間賞与ほか特別給与額、男性は88万円、女性は57万9000円となっています。30万円の差があります。2017年の就業構造基本調査では、非正規の割合は男性22%、女性58%となっていることなどが影響しているのではないかと思います。

 さらに、母子世帯の平均所得は、一般世帯の平均所得の約50%です。非常に大きな差が出ていると、和歌山県子供の貧困対策推進計画に述べられています。世界経済フォーラムが毎年公表しているジェンダーギャップ指数によると、日本は153か国中121位です。とりわけ、政治分野において144位、経済分野においては115位で、後進性が際立っています。国の第5次男女共同参画基本計画には、賃金格差の解消へ、女性が多い職種における賃金の実態等についてぜひ調査分析を行っていただきたい、そういった計画も盛り込んでいただきたいと思っています。

 私は、先ほど部長がおっしゃられた役割分担という、そういう状況の中で男女差が生まれてきたその背景というものにもっと県民全体が考えていく、そのことが大事ではないかと思っています。戦争後の復興で経済成長をする中で、長時間労働、男性が仕事をし、そして女性が家事という、そういった社会的な役割分担が押しつけられてきたようにも思います。そんな点でも、来年度の計画は、皆さんの声をぜひ酌み上げてよろしくお願いしたいと思います。1項目めは、これで終わらせていただきます。

 次、2項目めの質問をさせていただきます。

 新型コロナの検査体制の拡充についてお尋ねします。

 今日から新型コロナワクチンの第1弾、約4000人分が、医療従事者などを優先的に、順次、ワクチン接種が行われるということが報道されていました。ワクチン接種は、新型コロナの終息への有力な手段として期待がある一方、不安の声もお聞きします。ワクチンの安全性、有効性、副反応などのリスクについて、国内外のデータを迅速かつ徹底的に県民に明らかにしていくことが大事だと思っています。

 ワクチン接種が始まっても、社会全体に効果が確認されるまでは、かなりの時間がかかると専門家の指摘があります。感染防止対策とワクチン接種を同時並行して、二つの大事業に取り組まなければなりません。県民も、自治体の職員の皆さんも、大変なことだと思います。

 新型コロナの第3波では、クラスターの発生が増えました。現在、下火になっているときにこそ、徹底して感染を拡大させないことが重要ではないでしょうか。医療・福祉施設への社会的検査を国の責任で行うよう、強く求めていただきたいと思います。医療・福祉施設でのクラスター発生を防止するための検査は、重症者を減らし、医療への負担を軽減する上で決定的に重要です。そのためには、医療機関、高齢者施設、障害者施設などが、民間機関も活用した自主検査を定期的に行う必要があると思います。

 また、昨年夏の新型コロナの第2波に至った教訓からも、クラスター対策だけでは、感染が少し下火になると検査も減らすことになり、感染を抑え込むことはできないと考えます。濃厚接触者に限定せず、感染リスクのある接触者を広く検査できるようにすることが大事だと思います。厚労省は、今は接触者について広く行政検査の対象とすることを可能としています。

 今後、検査体制の充実にどのように取り組むのか、福祉保健部長にお尋ねいたします。

○副議長(濱口太史君) 福祉保健部長宮本浩之君。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) 本県においては、早期発見、早期隔離、徹底した行動履歴の調査を保健所の統合ネットワークシステムにより進める取組により、感染拡大の防止に努めてきました。

 早期発見に不可欠となるPCR検査は、感染者を早期に発見し、早期に入院させて隔離するための検査であり、希望する全ての人を対象に実施するものではなく、感染すると集団感染につながり、重症化して病床を逼迫するおそれがある医療・介護施設等の関係者についてもトリアージを行い、十分に必要性を判断しながら取り組んでいくものです。

 11月から始まった新型コロナの第3波では、首都圏で抑え切れなかった感染が次々に爆発し、京阪神等に飛び火した結果、県内の感染者が急増し、1月下旬には、1日当たりの新規感染者数、入院患者数とも最多を数えたほか、高齢者施設等でのクラスターが多数発生するなど、県内の感染状況は非常に厳しい状況となりました。

 こうした感染状況等も踏まえ、今後の取組としては、救急医療機関に対し、迅速に検査が可能な簡易型検査機器の配備支援を行うとともに、環境衛生研究センターに遺伝子解析機器を新たに導入し、感染経路の早期究明への活用を図るなど、さらなる検査体制の充実に努めているところです。

 加えて、これまでも申し上げてきたとおり、重症化リスクの高い高齢者等が入所する施設や入院医療機関での集団感染を防ぐことが極めて重要であることから、同施設に簡易に検査できる抗原検査キットを配付し、新規入所者等を対象とするスクリーニング検査を実施することで、施設内での感染拡大を徹底的に防止するよう取り組んでまいります。

○副議長(濱口太史君) 奥村規子君。

  〔奥村規子君、登壇〕

○奥村規子君 今、部長のほうから、さらに医療機器を導入し、ハード面での整備とか、また、簡易なキットを利用しての検査を広げていくというような答弁をいただきました。

 政府は、医療体制を充実すると言いますが、逆に医療従事者の給料が減らされるなど、支援の手が届いていません。同じ医療従事者として、とても憤りを感じています。

 医療機関では、どこに新型コロナの陽性者がいてもおかしくない状況の中、職員も、患者・利用者も、陽性かもしれないとの前提で感染を広げない対応をしており、緊張感で疲労が積み重なっています。患者さんや利用者の家族への面会制限もつらいと言われています。家庭内感染も心配です。クラスターを防ぐため、医療・介護・福祉現場で公費での定期的なPCR検査ができるように、また、さらに無症状感染者を発見するという点でも、重ねて検査体制を拡充していくことを求めていきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。今のは要望でございます。

 次に、保健所体制の充実について質問をさせていただきます。

 感染症が発生、流行した場合、実際に治療、予防の拠点となるのは地域の専門医療機関や保健所ですが、医療費削減、採算重視を求める政府の路線の下、感染症指定医療機関は100施設、3400床も削減され、保健所も、地域保健法改定前の1994年の847か所から2019年の472か所に、ほぼ半減させられました。空港、海港などでの水際検疫の体制もこの間、検疫官の定数増が図られてきましたが、海外渡航者の激増には追いついていないのが現状ではないでしょうか。世界的規模で拡大する感染症を予防するため、抜本的な対策の必要性が新型コロナウイルス感染症によって明らかになったと思います。

 そこで、県は、保健所職員が、疫学調査や感染者等の健康観察など感染拡大防止に専念できるような体制を維持するため、応援体制を中心にお考えですが、保健師の増員や保健所の役割が大変重要なことから、保健所体制の充実についてどうお考えか、福祉保健部長にお尋ねいたします。

○副議長(濱口太史君) 福祉保健部長。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) 地域保健法の施行に伴い、全国的に保健所の再編が進められる中、本県においては、地域住民の生活に不可欠となる保健予防、公衆衛生の水準を維持することが重要と考え、保健所を各圏域単位に設置する体制を堅持するとともに、保健師をはじめとする職員の配置についても、その必要性を十分認識の上、適正な配置に努めてきました。また、今年度から、多様化する保健・福祉ニーズにより的確に対応するため、保健所の組織改正を行い、機能強化を図ったところです。

 感染症への対応に当たっては、保健所は、疫学調査や感染者等の健康観察など、最前線において感染の拡大を食い止める役割を担う非常に重要な機関です。

 今般の新型コロナウイルス感染症への対応では、県立保健所間での相互応援などによる体制強化を図るとともに、検体搬送など特に専門性を要しない業務については、他部局の職員が後方支援を行うほか、和歌山県看護協会や県内市町村とも保健師派遣体制を構築するなど、職員が疫学調査など専門的な感染拡大防止対策に専念できる体制を整備しているところです。

 今後も、引き続き、感染の状況を見極めながら、保健所間の相互応援や市町村等との連携体制などの取組により、保健所が有する保健・衛生などの専門性を十分発揮し、地域住民の安心・安全の拠点としてその機能を十分に果たすことができるよう、全力で取り組んでまいります。

○副議長(濱口太史君) 奥村規子君。

  〔奥村規子君、登壇〕

○奥村規子君 ここで、また要望をさせていただきたいと思います。今後も予想される様々な感染症の発生、流行に備え、拠点病院の専門医・看護師の配置、公立病院の統廃合の中止と体制強化、医療機器の整備、保健所の体制強化、ワクチンの研究・製造システムの確立、こういった点について、国、また県に求めてまいりたいと思います。

 保健所の体制強化に関して、国は、人的補強では、保健所の恒常的な人員体制強化のため、保健師を令和3年度から2年間にかけて現在の約1800名から約2700名へ5割増強できるよう、地方財政措置が拡充されているということをお聞きしています。そういった点からも含めて、今後、ぜひとも公衆衛生に情熱を持ち、やる気のある人材が育っていけるようによろしくお願いしたいと思います。

 先日、保健所が減らされなかった要因、また、これからの保健所と保健師の在り方ということで座談会が開かれ、その記録を見せていただきました。その中では、これまでの野㞍技監が保健師と一緒に活動した地域活動の方向性が高く評価され、また、保健所の医者として、そういったことを体験をもって蓄積されてきた、それに対する敬意や、これからも頑張ってほしいと、そういった声が聞かれました。

 また、元保健師だった皆さんの中からも貴重な意見を聞くことができました。「保健所の役割、公衆衛生の原則をはっきりさせんと、何となく保健所が形骸化されてきている」、「対人サービスが市町村に移されてから、公衆衛生に情熱を持ち、やる気のある所長が来ても、やる気をなくして異動したり、辞めていく先生も何人か知っています。だから、御坊保健所長時の野㞍技監はほんまにまれな人や」、「若い人が公衆衛生に興味と展望を持っているような状況をつくらないと」というような意見もお聞きをしました。

 こういった点でも、今後、ぜひとも保健師だけではなく、保健所の役割を強めていっていただきたいと思います。どうかよろしくお願いいたします。

 次に、コロナ禍における高い国保料の負担軽減についてお尋ねいたします。

 2018年4月から、国保の財政運営が都道府県単位となり、政府は、毎年3400億円の財政支援の拡充がされております。これまで、子育て世帯の経済的負担となっている子供の均等割の軽減措置や、新型コロナウイルス感染症により収入が減少した場合の保険料の減免措置など、経済的に困窮している方や家庭について、負担軽減措置の拡大、継続を考えるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。福祉保健部長にお尋ねいたします。

○副議長(濱口太史君) 福祉保健部長。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) 国民健康保険における子供に係る均等割については、国民健康保険制度が被保険者全体の相互扶助で支えられていることから、応分の保険料を負担していただく必要があるため、世帯員数に応じて均等に賦課されているものであります。そのため、子供の数が多い世帯ほど保険料負担が増加し、経済的負担が大きくなります。

 県としましては、子育て支援等の観点から、軽減措置の導入について、これまでも全国知事会を通じて国に要望してきたところです。

 国は、少子高齢化が急速に進む中で、全ての世代の安心を全ての世代で支え合い、持続可能な社会保障制度を構築することを目指し、その一環として、子育て支援を拡充するため軽減措置を導入することとし、現在、国会に関連法の改正案が提出されております。内容については、令和4年度から、未就学児を対象に一律5割を公費により軽減するものであり、軽減措置の導入について一定の前進があったものと考えております。

 次に、新型コロナウイルス感染症に係る保険料の減免制度については、感染症の影響により主たる生計維持者の収入が前年と比べて3割以上減少するなど、一定の要件を満たす場合に保険料を減免し、国がその費用の全額を特例的に財政支援を行うものです。この措置は令和2年度限りですが、令和3年度における保険料減免の財政支援については、国において、今後の感染状況等を踏まえながら検討していくとされているところです。

 県としましては、被保険者の負担軽減について、これまでも全国知事会等を通じて国に要望してきたところですが、今後も引き続き働きかけてまいります。

○副議長(濱口太史君) 奥村規子君。

  〔奥村規子君、登壇〕

○奥村規子君 今答弁をいただき、知事会からも、また働きかけを強めていただけるということでございます。議会でもこれまで要望をさせていただいた子供の均等割の負担についても、国会に今、法律の改正案が出されているということで、少しでも軽減されていくということで、非常に期待したいなというふうに思います。ただ、就学前の子供が対象ということなので、ぜひとも対象をさらに広げていただきたいなということで要望させていただきます。

 また、全体のコロナ禍において、国保が非常に高く大変だという点について、ぜひとも要望をさせていただきたいのは、国保料・税が協会けんぽなどの被用者保険と比べて著しく高くしている大きな要因は、世帯員の数に応じてかかる均等割、各世帯に定額でかかる平等割という国保独自の保険料算定式です。

 低所得者には一定の減額があるものの、先ほどの子供の数が多いほど国保料・税が引き上がる均等割には、まるで人頭割、子育て支援に逆行しているという批判の声があります。全国知事会などからもそういった要望をしていただき、今回、就学前までの子供に対しては減額されるというようにお聞きしています。

 全国で、均等割、平等割として徴収されている保険料・税額は、およそ1兆円です。公費を1兆円投入すれば、均等割、平等割をなくすことができ、多くの自治体で協会けんぽ並みの保険料・税にすることができます。その上で、所得割の保険料率の引下げや、低所得世帯に重い資産割がかかる問題の改善などを行って、各自治体の負担軽減の取組と併せて、所得に応じた保険料・税への改革に踏み切っていただけるよう、ぜひ国に求めていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 これは要望して、次の最後のカジノを含むIR誘致問題についてお聞きをいたします。

 県は、1月7日に実施方針を確定しました。15日に事業者の応募を締め切りました。現在は、優先権者の選定作業を行っている状況とお聞きしています。応募したのは、クレアベストニームベンチャーズ株式会社と、サンシティグループホールディングスジャパン株式会社の2社と発表されています。県民の反対の声があるにもかかわらず、県がIR誘致を進めていることには大変残念な思いです。

 現在の取組状況を踏まえた上で、事業者の選定、具体的な事業計画の内容などについて、いつ頃県民に示され、県民への説明をどのように行っていくのか、まずお尋ねをいたします。

○副議長(濱口太史君) 企画部長田嶋久嗣君。

  〔田嶋久嗣君、登壇〕

○企画部長(田嶋久嗣君) まず、IR誘致に関する現在の取組状況ですが、事業者公募の締切りである本年1月15日に2者から提案審査書類が提出され、現在、事業者選定委員会において審査を行っており、春頃を目途に優先権者の選定を行う予定となっております。

 議員御質問の事業者選定の内容につきましては、優先権者選定後に、提案審査の結果を「選定方法及び評価の過程並びに結果に応じた選定過程の透明性を示すための資料」と併せて、速やかに公表いたします。

 また、具体的な事業計画をお示しする時期につきましては、選定された事業者の提案内容を踏まえて、国へ申請する区域整備計画素案を作成する本年秋頃を予定しており、その際には、パブリックコメントの実施や公聴会の開催等、県民の皆様からの御意見を反映するための手続を行ってまいります。

 なお、事業者選定後、区域整備計画素案を作成するまでの期間におきましても、その時点においてお示しできる事業計画等につきましては、シンポジウムや市民向け説明会、出張!県政おはなし講座などを通じて積極的に発信してまいります。

○副議長(濱口太史君) 奥村規子君。

  〔奥村規子君、登壇〕

○奥村規子君 再度、お尋ねいたします。

 県としても、透明性の確保について、資料の公表やパブコメ、公聴会、シンポジウムや市民向け説明会、出張!県政おはなし講座などを進めていくと答弁していただきました。

 こういった点について、再度確認いたしますが、審査項目の中でも、安定的・継続的な事業運営及び区域全体の魅力維持・向上に関して、事業運営能力について、選定後にそれに関する説明資料が公開されるのでしょうか。その点について、お尋ねをいたします。

○副議長(濱口太史君) 企画部長。

  〔田嶋久嗣君、登壇〕

○企画部長(田嶋久嗣君) ただいま議員の御質問にありました事業運営能力につきましても、審査の評定項目に入っておりますので、当然その結果、どういう評価をして、どういう内容であったのかということについては、公表させていただく予定にしております。

○副議長(濱口太史君) 奥村規子君。

  〔奥村規子君、登壇〕

○奥村規子君 区域整備法の12条には、実施方針や民間事業者の選定、区域整備計画の作成について、協議するための協議会を組織することができるとされています。協議会は、次に掲げる者をもって構成する。一、都道府県等の長、二、立地市町村等の長、三、公安委員会、四、都道府県等の住民、学識経験者、関係行政機関その他の都道府県等が必要と認める者となっています。

 大事なのは、4番目の住民や学識経験者の参加できる規定が生かされていないのではないのかと考えます。この協議会は、既に確定している実施方針の策定、現在行われている選定作業についても関与することになっているのではないでしょうか。現在行われている選考作業についても関与することになっています。現在、選考作業に係る選考委員会は、この協議会に代わるものではありません。第12条は、「組織することができる」とされています。必ずつくらなければいけないということにはなっていませんが、住民の声を聞くという最も大事なことが軽視されているのではないかと思います。

 これまでなぜ設置してこなかったのか、今後とも設置するお考えがないのか、その点について御答弁をお願いいたします。

○副議長(濱口太史君) 企画部長。

  〔田嶋久嗣君、登壇〕

○企画部長(田嶋久嗣君) 議員の御質問にございましたように、IR整備法には、知事、立地市の長、公安委員会、学識経験者、住民等で組織する協議会をつくって、区域整備計画の作成等に当たって協議する、そういったことができるというできる規定になっています。

 和歌山県におきましては、あくまで任意設置の規定ですので設けておりません。その一つの理由としまして、例えば有識者に関しましては、事業者選定に当たっては、先ほど答弁させていただきましたように、事業者選定委員会を設けておりますし、区域整備計画を作成するに当たっては、また別途、有識者会議を設置しておりまして、そこで有識者の御意見を聴くというふうなことを考えておりますし、住民に関しましては、もともと法の立てつけ上、区域整備計画の案をつくった段階で、先ほど御答弁させていただきましたように、公聴会ですとかパブリックコメント等で広く御意見を聴くと、そういう仕組みになっておりまして、私どもとしては、その仕組みを使って広く住民の意見を聴いていきたいと、そのように考えております。

○副議長(濱口太史君) 奥村規子君。

  〔奥村規子君、登壇〕

○奥村規子君 やはり組織することができるとされているわけですから、住民のカジノを誘致するということについてはやはり賛成できないという意見も、そちらのほうに届いていると思うんです。

 そういった住民の意見も含めて、やはりきちっと協議会で話合いを、協議を重ねていくというようなことができるわけですから、それをやっぱりやっていくということがなければ、この説明──住民に説明するということで、これまでも計画の段階のときも説明会を重ねてしていただきましたが、やはり一方的な、カジノがありきという、そういった形での進め方がされてきていると思うんです。

 そういった点も含めて、やはりきちんと組織的に、仕組みとして、都道府県の住民ということも含めて構成される協議会について設置すべきだと思うんですが、その点で、今後とも設置する考えはないのか、お尋ねいたします。

○副議長(濱口太史君) 企画部長。

  〔田嶋久嗣君、登壇〕

○企画部長(田嶋久嗣君) 先ほど申し上げましたように、今後とも協議会を設置することは予定をしておりません。

 議員、ちょっと想像していただきたいんですが、協議会を設置するとした場合、その協議会に住民がどの程度選ばれるのかということを考えたときに、数名になるんですね、協議会という組織上。そういった数名が選ばれた住民の方でもって住民の意見の代表としていいのかというのは、我々はちょっと疑問に思っておりまして、むしろ、先ほどから申し上げていますように、パブリックコメントですとか公聴会の場で広く多くの方々の御意見を聴くと、こちらのほうが意味のあることだと思っておりますし、制度上、最終的には、住民の皆様の代表である議員の、県議会の皆様に御議論いただいて、そこで賛否を問うと、そういう非常に民主的な仕組みになっておりますので、我々は、その法に定められた制度に従ってやっていきたいと、そういうふうに考えております。

○副議長(濱口太史君) 奥村規子君。

  〔奥村規子君、登壇〕

○奥村規子君 私の手元にもたくさんの疑問が寄せられています。その点についてもしっかりと、やはり説明ということじゃなくて、合意をしていくというようなことが書かれていると思うんです。そういった点も含めて、しっかりと住民の意見を聞いていただいて、今後とも考えていただきたいと思いますので、ぜひよろしくというお願いを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

○副議長(濱口太史君) 以上で、奥村規子君の質問が終了いたしました。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 31番藤本眞利子君。

  〔藤本眞利子君、登壇〕(拍手)

○藤本眞利子君 皆さん、こんにちは。

 本日最後の登壇ということになりまして、少々お疲れかと思いますが、しばらくの間御静聴よろしくお願いします。

 本日は、先ほど奥村議員もおっしゃっていましたように、国際女性デーというふうなことで、日本でも、女性の生き方を考える日として、HAPPY WOMAN FESTAというものが各地で展開されているようであります。日本でも、この3月8日はアクションする日として、社会的ムーブメントになっていければいいなあというふうに思っています。

 さて、議長のお許しをいただきましたので、通告に従って質問いたします。

 まずは、教育委員会の高校再編のことについて、基本姿勢についてお伺いしたいと思います。

 昨年8月に教育審議会からの高校再編に向けての答申を受け、県教育委員会は、まず県内5か所で、続いて団体・グループの要請に応じて20か所で、説明会を行い、本年1月より、29校全ての全日制高校において説明会を開催すると発表いたしました。その後、新型コロナウイルス感染者の増加に伴い、説明会を行う箇所を減らし、15か所で説明会を行ってきました。私も何か所かに行かせていただきました。

 まずは、宮﨑教育長、清水教育企画監はじめ教育委員会の皆さんの御努力をねぎらいたいと思います。教育長が自ら足を運び、説明を行うということは、今までなかったことだったと思います。本当に御苦労さまでした。

 しかし、この高校再編の進め方に対しては、やはり一言申し上げなければならないと考えまして、質問に立たせていただいています。

 昨年の11月24日の高校再編に係る臨時の文教委員会で、教育長は、「8月に答申をいただき、12月に事務局案を出し、3月末までに策定したいと考えており、様々な御意見を伺っているところである。確かに拙速であると感じられることはあるかもしれないが。プログラム案については、決して拙速に進めることは考えていない。案を出した時点で皆様からの御意見を頂戴したい。その中で、3月までに策定は無理だという話になるかもしれない。まずは教育委員会としてのプログラム案を見ていただき、様々な意見をいただきながら進めていきたい。プログラム案をつくることはぜひ了解していただきたい」というふうなことを述べられています。

 ここでは、3月までに高校再編の策定は無理だという話になるかもしれないとしながらも、高校再編の計画を進めるプログラム案は検討していただきたいという姿勢を崩していませんでした。さらに、さきの12月議会においても、坂本議員の質問に、「現在、いただいた御意見を尊重しながら再編整備実施プログラム(案)を作成しているところです。これを基に、引き続き、県民の皆様への説明や理解に向けた取組を行っていきたいと考えています」と、こういうふうに答弁され、再編整備プログラム案を何が何でも出したい、これを基に検討していただきたいとしている、こういうことでした。

 ところが、12月14日の文教委員会の説明では、「実施プログラム案の提示時期については、年内の発表を見送り、柔軟に考えてまいりたいと考えている。そのことで生まれた時間を有効に活用し、県議会の方々をはじめ、これまでいただいた様々な意見を参考に、県教育委員会として再編整備の考え方を整理し、それを基に、地方別懇談会などを再度実施していきたいと考えている。そこでいろいろな御意見をいただきたいと思う。その上でプログラム案につなげていきたいと考える」と答弁されました。

 12月8日の本会議において、今、プログラム案を作成していて、それを基に説明や理解に向けた取組を行っていくとの答弁が、12月14日の文教委員会では、再編整備の考え方を整理し、再度、地方別懇談会を実施した後にプログラム案につなげたいというふうにしました。

 答弁がこのようにころっと変わるということは一体どういうことなのか、理解に苦しむものです。

 その後、年が明け、改めて説明会を開催しているのですが、2021年2月9日に和歌山市で行われた再編整備に係る説明会では、県立高等学校再編整備計画・実施プログラムの骨子案というふうに書かれたプリントが配られましたが、2月11日の南部高校で配られたプリントでは、これからの高等学校教育を考える上での論点整理となっています。1日の違いで説明会の目的が変わっているということは、どういうことなのでしょうか。説明会をしながらも変遷していっているのは、最初に聞いた方と最後に聞いた方では、認識が違ってくるのではと思います。教育委員会の中でしっかりと議論をされているのか、疑問に感じています。

 教育委員会としての基本姿勢が問われると思うのですが、教育長に見解を求めたいと思います。

○副議長(濱口太史君) ただいまの藤本眞利子君の質問に対する答弁を求めます。

 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) これからの県立高等学校の在り方につきましては、今後、深刻化する少子化の中で、本県の高校教育の課題を改善し、教育の質の向上を図るという点と、学校をどのように整備していくのかという点の二つの視点で考えております。

 昨年までの段階では、答申内容に沿って説明し、県民の皆様から様々な御意見を伺ってまいりました。その中で、再編は必要だが、丁寧な対応を求めるとの声が多く寄せられたことから、案の提示に至る環境を整えるため、県教育委員会の基本的な考え方をお示しする段階を設けることといたしました。

 2月の説明会、懇談会では、具体的な案を示すことは控え、意見が分かれる項目について論点を整理しつつ、意見を聞くことを主眼に、それぞれの会場の状況に応じて丁寧に説明をしてまいりました。

 県教育委員会では、広く意見を聞き、検討を重ねながら進めているところであり、県民の理解は着実に進んでいると感じております。今後も、県民の信頼、信用を大切に取り組んでいきたいと考えております。

○副議長(濱口太史君) 藤本眞利子君。

  〔藤本眞利子君、登壇〕

○藤本眞利子君 答弁いただきまして、教育委員会は、広く意見を聞いて、検討を重ねながら進めているところだということですので、県民の理解は着実に少しずつ進んでいると感じています。説明会の様子では、和歌山市内と郡市の反応は少し違ったように思いましたが、教育委員会、けしからんなあというふうな、そういった意見は、割と確かに少なくなってきているというふうに私も感じています。

 ただ、危惧しているのは、まだまだ関心の高い一部の皆さんには御説明をされているんですが、やはり大勢の県民の皆さんが、それぐらいの理解をしているのかなあというと、少しやはり温度差があるんじゃないか。本県の高校教育の課題を改善して、教育の質の向上を図るということと、学校をどのように整備していくのかという視点を大切にしながら、今後とも丁寧に進めていかれるように要望したいというふうに思います。

 じゃ、次の質問です。

 次に、今後整備する普通科高校の特色についてお伺いしたいと思います。

 教育委員会は、再編整備の基本的な考え方として、今ある32校の県立高校を充実させ、可能な限り存続させる、自宅から通学可能なところに多様性と活力がある高校を確保する、特色や質の高い学びを保障すると説明されました。

 そこで、まず、自宅から通学可能なところに、多様性と地域の核となる活力がある学校を1校、各地域に確保するという点についてお伺いします。

 地域の中核となる高校の復権ということも説明されており、これからの取組が注目されていますが、現状、生徒は、地域の学校へというより、自分の成績に見合う学校を選んでいるという状況です。偏差値で輪切りにされた高校をどのようにして地域の核となる高校に変えていけるのか。教育委員会も高校も地域も、真剣に考えなければならないと思います。

 説明では、特に期待される特色のある高校を実現するために、高校を整備していきたいとしていますが、まず、地域のこの中核高校を、どのような中身の高校を考えているのか。

 また、県内に2校、これは仮称でありますが、特任高校を確保するとしています。このような状況の中、この2校、仮称・特任高校を指定することで、高校選別の固定化になるのではと危惧しています。地域の中核となる高校を復活させたいというのであれば、高校の序列化につながる仮称・特任高校というような指定は矛盾するのではないかと考えます。

 教育委員会として、地域の中核高校の中身と仮称・特任高校の在り方について、どのような見解なのか、教育長にお伺いします。

○副議長(濱口太史君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 普通科高校についてでございますが、これまで中学生にとって、高校で何を学ぶかが明確でないことによって、偏差値による一面的な高校選択や、それによる高校間格差を招いてきたという見解があります。また、その高校に合格すること自体が目的となって、入学後に燃え尽きたり、目標を見失ったりするなどの弊害を招いてきたという指摘もございます。

 そのような状況を変え、普通科教育を中心に多様性と活気がある高校教育を保障するためには、その地域で普通科を希望する全ての生徒が学ぶ学校として、地域の中核となる学校を整備することが必要だと考えております。

 一方、工業や商業などの専門教育や特色化した教育等を希望する生徒も少なからずおり、こうした教育を行う様々な高校を展開することも重要だと考えております。

 これら地域の中核となる高校と、全県的な視野でそれぞれの特色を明確にした高校は、中学生が高校でどのような学びを希望するかに対応したものです。中学校のキャリア教育がさらに充実し、希望する学びに基づく進路選択が行われるようになれば、偏差値などに基づく格差や序列の改善が期待できると考えております。

 また、役割や使命を明確化したこれらの高校の設置が、多様な学校の存続や今後の新たな高校教育の充実につながるものと考えております。

○副議長(濱口太史君) 藤本眞利子君。

  〔藤本眞利子君、登壇〕

○藤本眞利子君 そのことについての要望は、後でちょっと言いますね。

 次に、特色ある高校の再編を進めるために、じゃあ、どんな手だてを考えているのかということについてお伺いしたいと思います。

 現場の先生というか教師は、教科指導とか生徒指導とかで1日の大半を費やして、今、自分のいる高校をこのように変革していこうと考えている先生というのは、あまりいないというふうに思います。地域と共にと口では言えても、行動が伴った変革につなげていくのは並大抵ではありません。今の偏差値重視の高校を1校1校、特色のある高校に変えていくためには、これからの不断の努力が必要かと考えます。

 高校再編に当たって一番危惧しているのは、教育委員会が、特色のある高校に再編していくために、どのような手だてを講じていくのかという点であります。その点についての考え方を教育長にお伺いします。

○副議長(濱口太史君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 特色のある高校再編を進めるための手だてでございますが、偏差値など一面的な指標による学校選びから脱却するためには、まず、県教育委員会が長期的な展望を明確に示して、生徒が夢や希望を持って人生を切り開くことや、教師が前向きに取り組む中で資質、能力を向上させることを促し、結果として、各学校の魅力化、特色化につなげていくことが重要でございます。今回の再編整備は、まさにその具体化であり、鋭意取り組んでいるところでございます。

 また、校長や教員が、県教育委員会の示した方向性に基づいて、最大限のパフォーマンスを発揮することにより、各学校における教育の充実を図ってまいります。

 さらに、県内高校に対するふるさと納税制度や地元市町村からの支援などを活用しながら、これまでとは異なる観点で物心両面から学校を支援し、チーム学校の機能強化に努めてまいりたいと考えております。

○副議長(濱口太史君) 藤本眞利子君。

  〔藤本眞利子君、登壇〕

○藤本眞利子君 今、教育委員会からは、偏差値などによる一面的な指標による学校選びから脱却するためにというふうな答弁をいただきました。長期的な展望を明確に示すことは、大変画期的な意見だというふうに思います。

 ただ、先ほどの中核となる高校、あとの2校というのがどうもまだすとんと、それぞれが特色のある学校として整備していきたいというふうに、大きく考えれば、そういうことも含めて各学校の特色を生かしていきたいというふうに理解をしたいと思うんですが、やっぱり高校入試で、偏差値で今、輪切りにされていますよね。序列化した高校を変えていこうとしているわけですよね。

 それは、でも、とても難しくて、今の入試制度なんかだと5教科のテストがあって、それで輪切りされていくわけですから、その辺の入学者の選抜ということについても、先ほどの答弁では、入学者選抜制度を変えていくというのも一つのやり方やというふうな答弁もいただきましたけれども、それも私はいいなあというふうには思っています。

 それから、教育委員会は、役割とか使命を明確化した高校の設置が「多様な学校の存続や今後の新たな高校教育の充実につながるものと考えております」と御答弁されました。でも、これは、教育委員会だけが旗を振って実現するものではないと思うんですね。現場の皆さんだけでなくて、地域も含めて特色のある取組を真剣に考えていかなければならないというふうに思うんです。

 答弁では、校長や教員が、教育委員会の指し示す方向に基づいて最大限のパフォーマンスを発揮することでというふうな答弁をされているんですが、ある意味、私はやっぱり、それも必要かもしれません。やっぱりある程度の目指すべき方向を示すというのは、教育委員会の責任だと思いますけど、私は、トップダウンだけじゃなくて、ボトムアップの両輪で取り組んでいかないと、各高校の特徴は出していけないと思うんですね。頭ばっかりが一生懸命に言ったって、現場でそのことを実践するのは先生方なので、そのことも考えて、みんなが力を合わせていけることが必要だというふうに思います。

 そのような意識はまだまだ醸成されていないと思いますので、時間をかけて、やっぱり各学校で議論されていくことを期待していきたい。私も今後、注目しながら、議論に加わっていきたいなというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。

 次の質問に行きます。

 次の質問も教育委員会です。新規高等学校卒業予定者の企業への就職に係る複数応募についてお伺いします。

 この春の3月は、児童生徒、学生にとって卒業を迎える大切な時期であります。昨年を思い起こすと、国は、新型コロナウイルス感染症対策として、全国の小中学校、高校、特別支援学校に対し、3月2日から春休みまで臨時休校を要請しました。当初は春休みまでとしていたのですが、結局は、5月半ばまで休校を余儀なくされ、通常の再開となったのは6月下旬でありました。突然降って湧いたような事態に、3月1日に卒業式を予定していた和歌山県内の公立高校では、卒業式もできず、何とか卒業証書だけでも手渡したいと予行練習日に手渡したと聞いています。

 今となっては、臨時休校の措置が必要だったのか、そのために犠牲になった数々の出来事を思えば、不適切な政策であったと思わずにはいられません。臨時休校になったため、児童生徒、学生、保護者に強いた生活は、今さら言うまでもありません。6月下旬まで休校となった学校では、夏休みを返上して授業数を確保しなければならなくなりました。高校3年生にとって進路を決める大切な夏休みが、授業を確保するために使われました。

 特に、就職を希望する生徒にとって、特に難しい選択を強いたのです。いつもなら9月中旬に就職募集が解禁されるのですが、昨年は10月中旬と一月遅れになりました。どのような企業から応募があるのか、何人の募集があるのか、希望する企業に行けるのか、生徒も短期間で選択しなければならなくなりました。しかも、通常なら6月に応募前のサマー企業ガイダンスが開かれるのですが、それも中止となり、生徒の就職活動へのモチベーションもなかなか上がらず、就職先を決めるのが難しかったと聞いています。

 夏休みは、自分に合った企業を見つけるために会社訪問をしたり、履歴書の書き方や面接の練習に費やしたりするために、この夏休みというのは貴重な時間だったんです。それが、今年に限っては、準備も十分にできないまま就職先を選ばなければなりませんでした。

 また、今年は、新型コロナの影響もあり、募集企業も2割減という状況で、就職を希望する生徒全員を就職させることができるのかと奮闘されたのではないでしょうか。来年の求人募集はさらに厳しくなるのではと、現場の先生方の声であります。

 そのような御苦労もあって、それぞれの進路を選択して巣立っていく生徒を送り出す今年3月の卒業式は、生徒をはじめ、進路指導に御苦労された先生方にとっても、格別な思いを持って迎えられたと思います。

 これまで、高校では、この高校から何人欲しいと募集する指定校求人と、新規卒業者なら誰でも応募できる公開求人を併せて就職指導をしてきました。9月16日を解禁日とし、9月30日までの間に、その企業に就職したいという生徒を校内で選考し、就職につなげてきました。生徒は、どこの企業に就職したいか、1社を選んで受験してきました。その後、10月1日からは、指定校求人も公開求人も、どちらでも1人2社まで選択を可能とし、就職先を決めてきたのです。

 この方法は、何十年も続けられており、企業と学校の信頼関係をつくり上げてきました。募集する企業も、学校を信頼して各校に指定校求人を出しており、学校側も、生徒の様子を把握し、その子に最も適した企業を選択できるよう努力を重ねてきたのです。

 今年の高等学校卒業生の就職に係る例年にはない御苦労を御紹介した上で、今年1月に教育委員会が「新規高等学校卒業予定者の企業への就職に係る複数応募について」ということで、校長会に提案した内容についてお聞きしたいと思います。

 先ほどから、今年の卒業生の進路指導の難しさと併せ、就職に対しても十分な準備ができなかった現場の先生方や生徒たちの様子をお話しさせていただきました。それ以上に、コロナ禍の中、感染症対策をはじめ学習時間の確保など、学校はてんてこ舞いの状況でした。そんな中、教育委員会の複数応募制の突然の発表に、学校関係者は一同に驚き、不信を感じています。

 就職指導を行っている現場から、今のやり方の不備を指摘し、変えていくほうがいいという声があるのならば、十分に議論し変えていくのはいいと思います。しかし、今回のように突然の変更を一方的に押しつけるというやり方は、間違っていると思います。これまで1社しか応募できなかったものを複数応募できるようにと改正しようとしていますが、複数応募できる状況となったとき、よくできる生徒は何社も内定をいただき、最も困難な生徒たちが就職先を見つけられないという事態が想定されます。

 学区制の全廃の理由も、学校選択の自由を保障するという理由でしたが、結果、学力的に大変な子供たちが遠いところに通わざるを得なくなったという結果を生みました。同じような状況が生まれるのではと危惧しています。

 また、複数応募を採用している都道府県は、秋田県と沖縄県だけと聞いています。複数応募を採用しているにもかかわらず、やはり大半の学校は、1人1社推薦の方法を採用していると聞きました。大阪府も導入しようとしていたようですが、今年の状況を見て中止したと聞いています。近畿では、複数応募を採用している府県は見当たりません。和歌山県だけが導入しても、連携が取れないのではないでしょうか。和歌山から大阪に就職している子供たちもたくさんいます。

 そこで、高校生の就職の現状と複数応募制の経緯について、教育長に見解を求めます。

○副議長(濱口太史君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 高校生の就職の現状と今回の導入に至った経緯についてでございます。

 現行では、9月中旬の選考解禁日から2週間は、生徒は1社にしか応募できず、それ以降は複数企業に応募することができます。就職希望生徒の約7割は、1社募集で内定を得ています。

 また、求人には、企業が指定した学校に応募できる人数を定めた指定校求人と、学校や人数を制限しない公開求人があり、指定校求人による就職が主なものとなっております。

 指定校求人への応募者決定は、校内選考によります。校内選考は、生徒の希望を基に実施されますが、1回の選考会議でほぼ全てが決定されるので、生徒は、校内選考で希望する企業がかなわなければ、その後の就職が不利になると感じ、自身と他の生徒の高校3年間の成績を忖度して、働きたい企業よりも校内選考で選ばれる企業を希望する実態もあります。キャリア教育、インターンシップ、応募前職場見学などを通して、やりたい仕事、個性を生かせる就業を重視していますが、応募段階では校内選考を通ることが最優先されることもあるといった、校内選考がボトルネックをつくり出しています。

 結果として、生徒は、内定を得やすいものの希望しない企業に合格してしまうことになり、このことが早期離職の要因の一つになっていると考えられます。これ以外の問題点として、企業側が望む人材が校内選考で選ばれていないという問題意識をもたらし、高卒求人に消極的になりがちなことが懸念されています。

 今回、理解を得られる企業の求人について、選考解禁日から複数企業の入社試験に応募できる仕組みに変更することで、生徒たちが自らの可能性と適正に向き合い、展望を持った職業選択につなげることができるとともに、地域の産業界を担う若者の育成になると考えています。

○副議長(濱口太史君) 藤本眞利子君。

  〔藤本眞利子君、登壇〕

○藤本眞利子君 制度というのは、プラスもあれば、改正することによってマイナスということもあると思うんです。改正することで、マイナスを少なくしてプラスにしたいということだと思うんです。

 でも、改正するに当たっては、やっぱり当事者の意見とか、時期を考えて実施しなければ、現場に不安と混乱をもたらしてしまうというふうに思います。今回の改正も、生徒や企業や高校の先生の意見をしっかり聞いていただけたんでしょうか。現場の先生たちからは、教育委員会からの突然の説明であったと聞いています。

 生徒の意識はどうなんでしょう。7割の生徒が1社応募で内定を得ると答弁されましたが、1社応募で自分が行きたくない会社を選んでしまったという生徒は何人ぐらいいるんでしょうか。調査はされたんでしょうか。私は、もう早く就職が決まってよかったなあと思っている生徒のほうが多いんじゃないかなと、これも調査していませんから分かりませんけど、私はそんなふうに思います。複数応募制は、生徒に選択する力があってこその制度だというふうに思っていまして、制度を変える前にするべきことはあるんじゃないかというふうに思います。

 このことは、これで一応要望しておくのですが、時期についてのことを質問したいと思います。

 教育委員会は、複数応募に変更する理由として、離職率を上げられています。確かに離職率は高いようです。私の知っている高校生なんかも、行ったと思ったら辞めてきたりしておりますけれど、でも、離職した理由というのは、最初に選んだときのミスマッチが大きな原因ではなくて、入社したものの、言われていた最初の条件と合わんなあとか、それから、会社の人間関係がなかなかうまくいかんなあとか、それから、ちょっとパワハラに遭ったというふうなことを聞いておりまして、高校生は、就職に関する情報というのは本当に少ないと思うんです。高校生はそんなに就職のことを分かっていません。それだけに、就職に関しては、一社でも多く見学して、インターンシップを導入するなど、多くの情報を提供するなどの対策が求められていると思うんです。

 3年生からだけじゃなくて、全学年を通してのキャリア教育というのが、やっぱり離職率を下げる手だてと考えています。これは進学する生徒もそうだし、就職する生徒もそうだし、やっぱり全部の生徒たちに、就職という、会社というのはそういうものだということをやはりきちんと教えていく必要がある。離職率の高さを懸念しているのであれば、制度を変えるより、キャリア教育の積み上げが必要だというふうに思います。

 このようなことを踏まえて、複数応募制の早急な実施は、私は見直すべきだと考えますが、教育委員会の見解を教育長にお聞きします。

○副議長(濱口太史君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) キャリア教育については、10年以上も前から、小学校、中学校、高等学校、それぞれの発達段階に応じたキャリア教育の充実に取り組んでおります。キャリア教育は、結果として離職率の改善に役立つことは期待されますが、矮小化された目的のためだけに行われるものではありません。

 高等学校では、生徒一人一人が自らの在り方と生き方としっかり向き合い、世界観や価値観の構築につなげ、将来の展望を持った若者を育てることを最重点として考えています。

 先ほど答弁いたしましたように、これまでの指定校求人と一定期間の1社応募の制度が、キャリア教育の目的と相入れないと考えられるところがありますので、キャリア教育の充実の観点からも制度の変更が必要と考えます。

 制度改正については、長年の課題認識に基づくものであるとともに、コロナ禍で企業の求人活動が変化することが予測される中、必要なものと考えております。

 制度変更に当たっては、議員御指摘の点も踏まえ、企業の理解を求めながら、生徒や保護者、教職員に過度な不安感を与えないよう、就職指導の拡充などセーフティーネットの充実等を含め、丁寧に進めてまいります。

○副議長(濱口太史君) 藤本眞利子君。

  〔藤本眞利子君、登壇〕

○藤本眞利子君 もう何度も言いますけども、生徒にとっては大変な年だったんですよね。就職するだけでなくて、進学する生徒も大変な思いをしました。まして、働くことを選択した生徒たちにとっては、夏休みが少なかったことで十分な情報収集ができず、大変な思いをしたのです。

 教育委員会は、1社応募制はキャリア教育と相入れないと考えているようですが、私はそうは思いません。1社応募でも、自分の考えをしっかり持って選択できる生徒を育てることが大切なことだと思うからです。

 秋田県、沖縄県で複数応募を導入してみたものの、1社応募の企業のほうが多いと聞いています。今回の複数応募の導入は立ち止まり、考え直すべきだと思います。最終的な結論はまだということですので、ぜひ関係者各位で十分に議論し、結論を急ぐことのないように要望します。

 最後に、高校教育では、卒業する全ての生徒の進路を保障していくという姿勢が大切にされなければなりません。そういった姿勢は、今後も続けていっていただきたいというふうに思います。教育委員会への質問は以上です。

 次に、知事にお伺いしたいと思います。

 性的指向や性自認を理由として困難な状況に置かれている人々を支援するための条例等について質問いたします。

 セクシュアルマイノリティーの皆さんの抱える様々な困難に、行政としてどのように取り組んでいくのかといった点から、幾つかお聞きしたいと思います。

 昨年も、セクシュアルマイノリティーの存在を訴え、差別と偏見に対して声を上げる運動、レインボーフェスタが和歌山城の砂の丸と那智勝浦の2か所で開催されました。このフェスタは、セクシュアルマイノリティーに対する理解を深めようと開催されていますが、フェスタ自体は大変楽しいものとなっています。ステージでは歌やダンスが披露され、出店で焼き鳥を買って一杯飲みながら楽しむ方もおられ、1日を楽しく過ごせるものとなっています。私も毎年楽しみにしています。

 今さら言うまでもありませんが、セクシュアルマイノリティーを表す言葉として、LGBTという言葉がよく用いられます。Lはレズビアン・女性の同性愛者、Gがゲイ・男性の同性愛者、Bがバイセクシュアル・両性愛者、Tがトランスジェンダー・心の性と体の性との不一致の頭文字からつくられた言葉で、性的少数者の総称として用いられています。

 LGBは、性的指向は、人の恋愛、性愛がどういう対象に向かうかを示す概念で、異性愛、同性愛、両性愛を指します。Tは、性自認を指し、自分の性をどのように認識しているのか、どのような性のアイデンティティー・性同一性を自分の感覚として持っているのかを示す概念であり、心の性と呼ばれています。トランスジェンダーは、性同一性障害として、医療的なケアを必要とする方もいれば、自分の身体の性別に違和感を持ちはするものの、特に医療的な治療を必要としない方も含まれています。

 このように、セクシュアリティーに関しては、特定の状況に当てはまらない方もおり、多様な類型に分かれています。そのために、新しい用語として、SOGI──性的指向及び性自認という、Sexual Orientation and Gender Identity、ソジという表現が最近は使用され始めています。ここからは、性的指向及び性自認という言い方が長いので、そのSOGIと表現いたしますので、よろしくお願いします。

 説明が長くなりましたが、人口の8%程度はSOGIと言われており、日本においては、様々な困難を強いられ、権利を侵害されています。SOGIの方への差別や偏見は、依然として大きく立ちはだかっています。日常生活を送る上でも、困難な問題が幾つもあります。

 例えば、病気になったとき、病院の無理解な対応や、入院した際の病室を無神経にあてがわれるといった問題もあります。県立医大での取組は、どのようになっているのでしょうか。医師や看護師向けの啓発、指導は、どのように行われているのでしょうか。様々な書類の性別欄が必要かどうかの問題もあります。最近は、確定申告や選挙はがきが性別欄を削除していますが、さらなる見直しが求められています。トイレの問題も、当事者にとっては切実な問題です。

 言い出せば切りがないぐらい様々な問題があると考えますが、そのようなことについて相談できる窓口の設置も必要なことです。また、教育、啓発も大変重要だと考えます。見直さなければならない問題が山積していると思います。一つずつ検討し、改善していかなければならないと思います。そのためにも、この問題についてのルールと基準を示さなければならないと考えます。

 県では、来年度の男女共同参画基本計画の改定に当たり、意識調査を実施しました。拝見しましたが、SOGIの項目の調査が見当たりません。先ほどから申し上げましたように、SOGIの皆さんが直面している問題を男女というくくりにしますと、対策が見落とされてしまうと考えます。

 まず、SOGIに対して県民がどのような意識を持っているのか、調査をする必要があると考えます。その上で、男女共同参画条例とするか、新たな条例とするかも含め、SOGIの問題の見直しをしていかなければならないと思いますが、知事に見解をお聞きします。

○副議長(濱口太史君) 知事仁坂吉伸君。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 性的指向や性自認を理由に困難な状況に置かれている人々に対しては、いかなる差別も決してあってはならないものでありまして、そのためには、困難を取り除いていかなければならないという点については、議員と全く同感であります。

 そのために、いろいろな御提案がありましたけれども、ちょっと通告というか、前に質問の内容ですよと聞いていたところに従ってお答え申し上げます。すなわち、条例を一つつくったらどうかというふうに言われていますということでありましたので、それについてお答えしたいと思います。

 性的指向や性自認を理由に困難な状況に置かれている人々の人権を守るためには、県民が多様な性の在り方を理解し、尊重することがまずは大事であると考えます。そのために条例をということだというふうに、勝手に理解をいたしまして、条例ということであるとすれば、実は条例が二つございまして、一つは、和歌山県人権尊重の社会づくり条例というのがあり、これに基づきまして、人権施策基本方針というのが定まっております。LGBTや性同一性障害のある人等の人権を守るために、これらの方々に関する多様な性の在り方について、県民の正しい理解を深め、誰もが自ら自分らしく生きていける社会を実現する取組を推進しなきゃいけないということが明記されているわけであります。

 もう一つは、和歌山県男女共同参画推進条例があります。これに基づきまして、男女共同参画基本計画というものが何度もつくられております。現在つくられている計画でも、もちろん次のもそうしたいと思いますけれども、性的指向や性自認を理由として困難な状況に置かれている人々が抱える問題の解消に向けた施策を盛り込む方向、盛り込まなきゃいけないということで検討を進めているところであります。

 条例とか計画にうたえばいいというもんではないと思うんです。人権を守るためには、どのような政策手段が一番効果的かということを不断に、いつも考えておかなければいけないということだと思います。

 まずは、県民意識の把握にも努めなきゃいけませんが、実務的に問題のあるところはどこかということを見つけて、今申し上げましたような、我が県としての規範を決めているわけですから、その規範に沿ったような形で、問題のあるところを見つけて直していかなきゃいけない。そういうことを一生懸命やっていきたい。その上で、必要があれば、別途の条例もあり得るかもしれないなと、そんなふうに思っております。

○副議長(濱口太史君) 藤本眞利子君。

  〔藤本眞利子君、登壇〕

○藤本眞利子君 性的指向や性自認という言葉はなかなか分かりにくい言葉ですし、まだまだ県民の皆さんが、多様な性の在り方を理解しているとは言い難いですよね。そういった社会です。

 それだからこそ、県はしっかりと取り組んでいただきたいというふうに思うんですが、条例や計画でうたっていればいいというわけじゃないのは当たり前のことで、もちろんそうなんです。だけど、条例や計画が、その差別をなくしていこうとする一つの手段なわけで、一つのルールづくり、そして点検し、改善を加えていくという、そういったことができていくわけですよね。そのために条例をつくってはどうか、計画をつくってはどうかと言っているわけです。

 まず、県は、言われているように、一番効果的な政策手段を考えて実行していただけるということですので、意識調査もしていただいて、今後、どういう形にするかというのは前向きに研究して、実現していっていただきたいというふうに要望したいと思います。この点については、また別の機会で質問をしたいと思います。

 次に、最後なんですが、同性パートナーシップ制度の導入についてお伺いしたいと思います。

 2015年、東京都渋谷区から始まった同性パートナーシップを自治体が認める動きが広まっています。渋谷区と認定特定非営利活動法人虹色ダイバーシティが共同で実施した全国パートナーシップ制度共同調査が行われまして、第4回の調査結果によると、現在74府県市区町でパートナーシップ制度が導入されており、人口カバー率でいうと、2021年1月8日の時点で33.4%がカバーされていると、交付件数は、2020年の12月31日時点で1516組でありますというふうな報告がされています。

 2021年の1月8日にスタートした明石市のパートナーシップ・ファミリーシップ制度は、これ、一番近い出来たてほやほやなんですが、これも画期的な施策であります。明石市のパートナーシップ・ファミリーパートナーシップは、同性カップルに限りません。異性カップルであっても制度を利用することができるようになっています。結婚しても別姓でいたいカップルや、高齢者カップルで、遺産相続なんかの問題があって、結婚には身内から反対されるという場合も適用されるんです。

 そもそもパートナーシップ制度は、法律上の婚姻とは異なるために、届出を出しても、法律に基づく権利や義務は発生しませんが、実質的な効果が伴うよう環境を整備し、その効果を高めるための取組が行えるようになります。

 例えば、県営住宅に入居したいと思っていいても、現行では申込みすらできません。入居の要件が世帯単位であることから、同性パートナーは認めてもらえません。パートナーシップ制があれば、入居条例の変更だけで申込みをすることができます。また、病気になったときでも、親族や家族と認めていただけなければ、家族として当然教えていただけることが、蚊帳の外に置かれているということになってしまいます。病院で家族として扱ってもらう意味は大きいと思います。

 企業によっても、同性のパートナーを配偶者として認めるよう社内規程を改定する動きも見られます。まだ大手の数社ではありますが、同性のパートナーにも福利厚生を適用しようとしています。これも、パートナーシップ制があれば、容易に証明することができるのです。

 同性のパートナーが認められる社会は、SOGIの自分の生き方を肯定できる社会、自尊感情を持って生きていくことのできる社会であると思います。同性であっても、異性であっても、全ての県民が自分自身を大切に自分らしく生き、互いに認め合える社会をつくっていくための具体的な一つの道筋がパートナーシップ制度です。パートナーシップ制度は、差別をなくしていく大きな目標の一つの方策であります。

 1月19日の記者会見で、知事は、このパートナーシップ制度についての考え方をこのように述べられています。「そんなに制度をつくってというのは、あんまり熱心に推進したいとは思っていないのですが、差別をしてはいけないというのは明らかで、そういう意味では、そういう人がいらっしゃって懸命に生きていこうとしているのは、応援してさしあげたいと思います」とおっしゃっています。差別をしてはいけない、応援しようと思っておられるのであれば、和歌山県でも率先して、このパートナーシップ制度を導入すべきであると考えます。

 最近の新型コロナの条例や部落差別解消の条例など、県は、差別を許さない姿勢を示してきました。SOGIの差別解消のため、制度を整えていく必要があると思います。その点についての知事のお考えをお聞きします。

○副議長(濱口太史君) 知事。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 同性同士がお互いを人生のパートナーとすることを宣誓するということを、公的に証明するものがパートナーシップ宣誓制度ということだと理解して、申し上げたいと思います。

 そのことについて、お尋ねがもし仮にあるとすれば、前に記者会見で申し上げたような見解を今でも持っています。

 なぜならば、これを自らが宣言した、宣言するということを公的機関が証明してほしいというのは、それによって生ずる法律関係の変化が整備されていないと、自己満足で終わってしまうと私は思うわけであります。

 ならば、整備しようとすると、これは、家族関係の在り方という民法の最も難しいところに突入してしまうことになって、なかなか県だけで、あるいは国もそうかもしれませんが、結論が出ない話になるんじゃないかなというふうに思うわけです。

 しかし、現実にそれをお選びになって、そういう生き方をお選びになって、懸命に生きておられるような人が、いろんな制度によって不都合を感じておられて、それで結果的には、それは差別じゃないかなあと思うようなことがあるとすれば、それをお直ししていくのが私たちに課せられた課題ではないか、そんなふうに思うわけです。それが、記者会見で申し上げた答弁なんですが、今でもその考えは変わっておりません。

 具体的に言うと、やっぱりあると思います。例えば、お挙げになった県営住宅の入居、これなんかはやっぱり時代に合わせて、同性の方なんかも、本当に事実上の自分たちがパートナーと思われるようなものであるとすれば、御入居を認めてさしあげたらいいんじゃないかなあというふうに私は思います。ただ、そういう制度というのは、いろいろとあちこちから光を当てて議論をしていかないといけないので、今、実は事務的にそういう問題をいろいろと洗い出して、改善点を探っているところでございます。

 その上で、やっぱりこれは、こんな制度がないと物にならんぞというようなことが見つかってくれば、それは、採用することにちゅうちょするところはございません。

○副議長(濱口太史君) 藤本眞利子君。

  〔藤本眞利子君、登壇〕

○藤本眞利子君 御答弁いただきまして、知事がもうよく言われるように、解消するために条例や計画に明記されればいいというようなものではないんです。もちろんです。その上で、知事は、当事者が実際にどのような状況で不利益な扱いを受けているのかを把握して、どのような対応がなされるべきか、個別的に検討することが重要やというふうに答弁されたと思うんですよ。

 私は、先ほどからも言っているのは、住宅を借りるときの不合理さもそうだし、病気になったときの不当な扱い等も具体的に聞いているわけですね。それで、それは個々の問題じゃないんですよ。これは、SOGIの皆さん、また別の観点でもあるかもしれないんですが、そういった性自認とか、性的なマイノリティーの皆さんが、往々に直面している差別の問題なんですよ。それを解消するための一つの方法としてパートナーシップ制度がつくられて、1516組もの方々が利用していると、今申し上げたんです。

 私は、パートナーシップ制度というのは、制度としても不十分なものだというふうに思うんです。というのは、法的な縛りもありませんし、法的な保護も何もないんです。ただ、パートナーシップ制度という制度の下で、お互いがパートナーというふうに社会に認められる。それから、この社会で2人で生きていってもいいんだというその安心感とか、充足感とか、自尊感情とかが何物にも代え難いものなので、それで、このパートナーシップ制度を何とか導入してほしいという願いなんですね。

 知事は、同性同士のパートナーであるという理由だけで、生きづらさを感じたり、不利益な扱いを受けることのないようにしていかなければならないというふうに言われているわけですから、やっぱりもうちょっとしっかりと、このパートナーシップ制度についても、意識調査も含めて、もう一回しっかり検討していただいて、どんな不都合があるのかということも調査していただけたらというふうに思うんです。

 状況をしっかり把握されて、生きづらさにつながるような制度がないのかを点検していただいて、改善が必要なものがあれば速やかに対応していただけるように、これは強くお願いして、私は、パートナーシップ制度を何とかぜひ考えていただきたいというふうに思いまして、質問を終わります。どうもありがとうございました。(拍手)

○副議長(濱口太史君) 以上で、藤本眞利子君の質問が終了いたしました。

 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。

 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。

 本日は、これをもって散会いたします。

  午後2時55分散会

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