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令和元年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号(全文)


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令和元年12月 和歌山県議会定例会会議録 第3号

議事日程 第3号

 令和元年12月11日(水曜日)

 午前10時開議

 第1 議案第174号から議案第201号まで(質疑)

 第2 一般質問

会議に付した事件

 第1 議案第174号から議案第201号まで(質疑)

 第2 一般質問

出席議員(42人)

 1番 鈴木德久

 2番 山家敏宏

 3番 中本浩精

 4番 堀 龍雄

 5番 藤山将材

 6番 岸本 健

 7番 井出益弘

 8番 宇治田栄蔵

 9番 北山慎一

 10番 中西峰雄

 11番 秋月史成

 12番 森 礼子

 13番 濱口太史

 14番 尾崎要二

 15番 冨安民浩

 16番 川畑哲哉

 17番 玉木久登

 18番 鈴木太雄

 19番 岩田弘彦

 20番 吉井和視

 21番 谷 洋一

 22番 佐藤武治

 23番 岩井弘次

 24番 中 拓哉

 25番 多田純一

 26番 新島 雄

 27番 山下直也

 28番 中西 徹

 29番 玄素彰人

 30番 谷口和樹

 31番 藤本眞利子

 32番 浦口高典

 33番 山田正彦

 34番 坂本 登

 35番 林 隆一

 36番 楠本文郎

 37番 高田由一

 38番 杉山俊雄

 39番 片桐章浩

 40番 奥村規子

 41番 尾﨑太郎

 42番 長坂隆司

欠席議員(なし)

説明のため出席した者

 知事         仁坂吉伸

 副知事        下 宏

 知事室長       細川一也

 危機管理監      森田康友

 総務部長       田村一郎

 企画部長       田嶋久嗣

 環境生活部長     田中一寿

 福祉保健部長     宮本浩之

 商工観光労働部長   稲本英介

 農林水産部長     角谷博史

 県土整備部長     髙松 諭

 会計管理者      飯島孝志

 教育長        宮﨑 泉

 公安委員会委員    竹田純久

 警察本部長      檜垣重臣

 人事委員会委員長   平田健正

 代表監査委員     保田栄一

 選挙管理委員会委員長 小濱孝夫

職務のため出席した事務局職員

 事務局長       中川敦之

 次長         中谷政紀

 議事課長       松山 博

 議事課副課長     山田修平

 議事課議事班長    岸裏真延

 議事課主任      保田良春

 議事課主査      伊賀顕正

 議事課主事      浅田晃秀

 総務課長       井邊正人

 政策調査課長     中平 博

  午前10時0分開議

○議長(岸本 健君) これより本日の会議を開きます。

 日程第1、議案第174号から議案第201号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。

 39番片桐章浩君。

  〔片桐章浩君、登壇〕(拍手)

○片桐章浩君 おはようございます。

 議長からお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問を行います。

 今回は、宇宙教育に絞りまして質問をさせていただきますので、御清聴方よろしくお願い申し上げたいと思います。

 令和元年11月16日、串本町においてスペースワン株式会社主催のロケット射場の建設工事祝賀会が開催されました。祝賀会は盛大で、知事からは「これまで和歌山で開催された祝賀会の中で最も豪華な参加者だと思います」という挨拶があり、会場の雰囲気はロケット射場建設への期待の高揚が感じられるものでした。

 ロケット射場の名称は「スペースポート紀伊」、紀伊の国、和歌山県でのロケット事業は世界を目指す鍵になるという意味が込められています。くしくも南紀白浜空港のコンセプトも「世界のKiiへ」ですから、このロケット射場も南紀白浜空港も世界を目指す紀伊の国を掲げることになります。

 初号機打ち上げは令和3年、もう2年先には和歌山県からロケットが発射されることになります。本州で和歌山県串本町を超える適地はなく、民間における宇宙進出の分野でほかに追随を許さない先進県になります。

 また、令和3年は和歌山県誕生150年という年でもありますので、和歌山県の記念すべき年にロケットが発射されることは、この上ない栄華なことであると思います。

 さて、来賓の中にはJAXA山川理事長を初めとする理事や役職の方々が多数参加していました。祝賀会の前日、和歌山県出身の元JAXA役員の上野精一さんのお別れの会がJAXA今井理事と東海大学・坂田名誉教授が発起人となり東京で開催されたのですが、そこに出席をした山川理事長を初めとする役員、元役員、職員の方々が串本町までお越しいただきました。このお別れの会には、知事の代理として東京事務所長にも来てもらっております。

 そのお別れの会では、御自身も和歌山での宇宙教育にかかわってこられた上野さんの奥さんが僕の弔辞の内容に感動し、同じく和歌山での宇宙教育を支えてくれた司会担当のJAXA岩本部長が会の最初に読み上げてくれたことを知り、JAXAの方々と宇宙教育についての話を交わしました。

 僕が和歌山県における宇宙を意識したのは平成21年でした。当時、上野精一さん、上野敦子さん、次のような話を交わしたことを覚えています。

 当時は宇宙、そして、ロケット発射場を和歌山県、特に紀南地域の起爆剤にという私たちの発想を真に受け取る人はほとんどいませんでした。「そんな夢みたいなことを」と冷ややかな反応で、最初はとても冷たく皆に笑われたことを覚えております。

 当時、「宇宙が和歌山にやってくる!」と命名したプロジェクトを、また夢が始まったと笑う人が大半でしたが、ロケット射場の誘致が、形を変えたとはいえ、現実味を帯びた現在、「夢がかなったね」と上野さんは喜んでくれていました。

 JAXA宇宙教育センターと共同して和歌山大学が取り組んだ宇宙教育プログラム「JAXAスペースティーチャーズ和歌山」の設立は、同大学観光学部、宇宙教育研究所がタッグを組んで進め、時間をかけて少しずつ宇宙を和歌山に浸透させる結果となっています。

 上野精一さんへのオマージュの意味を込めて、この経緯を振り返ってみます。

 和歌山における宇宙の始まりは、平成21年5月29日から6月14日、「宇宙が和歌山にやってくる!」の開催でした。「宇宙が和歌山にやってくる!」の盛況ぶりと反響の大きさに目を見はったJAXAの協力を得て、同年12月27日、宇宙へ出発する準備に入る直前の山崎直子宇宙飛行士の参加の許可を取りつけ、「宇宙飛行士さん・こんにちは!~宇宙へ出発間近の山崎直子さんとライブで交流~」を開催しています。お手元の資料にチラシがあろうかと思います。

 平成22年3月に打ち上げられたスペースシャトル・アトランティス号で国際宇宙ステーションへ向かった山崎宇宙飛行士と和歌山の会場にいる子供たちをインターネットでつなぎ、ライブで交流を行うイベントでした。3カ月後に宇宙飛行士としてスペースシャトルに乗り込むことが決定していた山崎さんが和歌山県の子供たちと交流、和歌山県の子供たちは当日が誕生日であった山崎さんにサプライズのバースデーケーキを用意。山崎宇宙飛行士は大感激でした。これから宇宙に旅立つ人とそのような触れ合いが子供たちの心に残したインパクトは鮮烈で、画期的な経験になったと思います。

 ここでは、山崎宇宙飛行士とのライブ交流を通して、子供たちの冒険心や好奇心を引き出し、宇宙への夢や科学する心を育てる宇宙教育「子供の心に火をつける」の一環として行われたものですが、宇宙の持つ魅力とインパクトが和歌山の子供たちの心に火をつける瞬間を目の当たりにさせてくれた最初のプログラムであり、これが和歌山に宇宙教育を定着させていくきっかけとなりました。

 この企画は宇宙航空研究開発機構(以下「JAXA」)と和歌山大学及び日本宇宙少年団、通称YACと呼ばれますが、日本宇宙少年団和歌山分団らが連携、協力して実現さしたものです。

 平成22年7月31日、和歌山大学観光学部はJAXA宇宙教育センターと連携し「JAXAタウンミーティング&ユース・スペース・プログラムin和歌山」を開催しています。これは宇宙教育を推進していた和歌山大学の提案により、従来のJAXAタウンミーティングと宇宙教育を融合させたJAXAにとっても初めての試みでした。宇宙を無限の可能性を持つ教材と捉え、宇宙といえば理科、理系、理数と限定されがちな既成概念にとらわれることなく、広く外国語教育、環境教育、平和教育、芸術等の分野にもその可能性を広げ、和歌山県教育委員会、和歌山市教育委員会を初めとする地域の教育機関、行政機関の協力を得ながら和歌山発となる新しい教育プログラムの構築を目指すことを目的としたものです。

 実施内容第1部、ユース・スペース・プログラムとして、JAXA宇宙教育センターによる宇宙の魅力と宇宙開発に関係する仕事を紹介しています。日本代表としてボーイング・教師のためのスペース・キャンプ・プログラムに参加した──これはNASAで行われたものなんですが──県教育委員会教師による宇宙授業、これは宇宙が持つ教材としての無限の可能性、理系にかかわらず文系も求められる新しい産業分野としての宇宙の可能性などを学ぶ機会となりました。

 第2部はJAXAタウンミーティングで、登壇者としては、お手元に資料がございます、仁坂知事、樋口JAXA副理事長、そして、上野精一、当時のJAXA有人宇宙環境利用ミッション本部事業推進部長が参加されております。宇宙航空研究開発全般から、宇宙開発が国民にもたらす具体的な利益、新しい産業分野としての宇宙開発の可能性に至るまで議論を交わしています。

 JAXAが手がける宇宙航空研究開発の成果を宇宙教育研究所も開設した地元和歌山大学が取り組む「宇宙教育を基盤として地域再生に生かす」という観点から、タウンミーティングと宇宙教育プログラムを融合することで、宇宙をキーワードに教育から地域活性化までをリンクする具体的な形を示すという新しい試みとして開催したのです。

 また、平成22年4月開設された和歌山大学宇宙教育研究所が、同年6月13日、小惑星探査機「はやぶさ」の地球帰還のときのカプセルが大気圏に突入したときの様子をインターネットで中継して、文部科学省から表彰されています。そんな宇宙教育において注目を集める和歌山大学の取り組みを地元に広め浸透させ、宇宙をキーワードに教育から地域活性化までをリンクするという新しく挑戦的な試みもこの場で伝えられました。

 そこで示された、宇宙をキーワードに教育から地域活性化までをリンクするという発想こそが、宇宙教育によって宇宙への理解や認識、期待が育まれた土壌──これは和歌山県ですが、ロケットの射場誘致という流れをつくったと言っても過言ではないと思います。

 続けます。和歌山県教育委員会では、平成22年10月8日から10月10日まで、JAXA筑波宇宙センターでの「JAXA教師のためのスペース・プログラム」に教師を参加させています。この取り組みは、和歌山大学とJAXA宇宙教育センターとの共同企画で、この宇宙本物体験プログラムと教員研修を組み合わせることで、教員に対して大きなインパクトをもたらす経験とともに、宇宙を教材として利用を啓発する、教員のためのJAXAスペース・プログラムとして企画したものです。

 ここに参加した教師には、宇宙の持つ教育素材としての無限の可能性を実感し、宇宙教育及び宇宙を切り口とする教育への理解と興味の増進を図り、加えて宇宙を教育素材として提供することにより、児童生徒の理解促進及び教師の指導方法の広がりに貢献することが期待されました。

 この研修会には私も当時参加したんですが、参考までに、研修内容は次のようなものでした。講義として、宇宙開発と宇宙飛行士(閉鎖環境心構え)、宇宙飛行士訓練体験プログラム、宇宙教育センター長から「宇宙教育とは」、実技として、宇宙教材学習「宇宙服を体験しよう」、音響体験など、講義と実習として、宇宙素材の宇宙教育への活用及び教材実習、宇宙教育の活用方法の提案とレポート作成などでした。

 続いて、平成22年11月15日の出来事です。

 10月、JAXA教師のためのスペース・プログラムに参加した和歌山県の教師が筑波宇宙センターでの経験に基づき、当初の期待以上にすばらしい宇宙教育の活用方法を示したことで、宇宙と教育をリンクさせることの有効性、有用性を納得したJAXA宇宙教育センターと和歌山県教育委員会は、全国初となる宇宙教育活動に関する連携協定を締結しました。

 この協定は、それまでも和歌山県での宇宙教育に関する多様なプログラムを実施するもとになるものとして、宇宙教育プログラムの開発支援など、JAXAの教育活動に対して協力していた和歌山県教育委員会との協力関係を確固たるものとし、さらなる宇宙教育活動の発展を目的とするために締結したものです。

 宇宙を素材とした教員向け研修プログラムの開発及び実施、社会教育支援、学校教育支援などの活動を通じて相互の関係を深め、宇宙教育を推進することを目指す決意のあらわれでした。

 翌平成23年3月31日、さきに締結された宇宙教育活動に関する連携協定に基づき、JAXA宇宙教育センターと和歌山県教育委員会は、前年10月に実施したJAXA教師のためのスペース・プログラムに参加した教師をJAXAスペースティーチャーズ和歌山に委嘱し、活動をスタートさせました。これも、お手元の資料に当時の様子が、お配りさしていただいております。

 JAXA宇宙教育センターは、さらなる宇宙教育の推進に向けて、全国に波及できるようなモデルとなるよう、和歌山県におけるこの取り組みに協力してくれることになったわけです。

 ここで思い出すのが、当時の山口教育長の言葉です。筑波宇宙センターで行った試験的プログラムで教師が見せつけたプロの教育者としての実力と輝きを目にした山口教育長は「今の先生たちは、学級崩壊やモンスターペアレンツへの対応などに忙しくて本来の教育に専念できず、疲れ切っています。その先生たちのこんなに生き生きと幸せな顔を見るのは久しぶりです」と感激され、和歌山県とJAXAとの間で全国初の宇宙教育協定が締結されることになったわけです。

 教師が生き生きする姿は子供たちにも伝わります。教師の輝き、教師の意欲と熱い思いが、その教師から教えを受ける子供たちの心に火をつけるのです。初代JAXAスペースティーチャーズに選ばれた先生方から宇宙教育を受けた子供たちはきっと楽しく学習をして、宇宙と宇宙教育を通して日本の技術のすばらしさ、日本のすごさ、それを支える日本人の心を学んだことだと思います。

 今から10年以上も前から和歌山県教育委員会が宇宙教育を推進し、今日の基礎を築いているわけです。上野さんの呼びかけに応じた和歌山県教育委員会は、今日を予測するかのように実に先見性があったと思います。早くから宇宙を取り込んできた和歌山県の斬新な教育が、地元に宇宙を産業として受け入れるための素地をつくったと思います。

 今さらながらですが、元JAXA役員の上野精一さんは、和歌山県の宇宙教育のために、ふるさとへの熱い思いを胸に心ある取り組みをしてくれていたと思います。子供たちに宇宙に関心を持たせることによって、それを教育に生かす宇宙教育プログラムをつくり、そのプログラムをいにしえから日本人の精神性を育んできた地であるふるさと和歌山県で実践することで子供たちの能力がより高まる、世界に通用する日本人らしい心を持った人材を育てよう、そして、和歌山県から始まった宇宙教育プログラムが日本の教育の新しいスタンダードになることを目指そうと考えてくれていたものです。

 このような上野精一さんの理念で始まった和歌山県の宇宙教育をさらに発展させることが、後を託された者たちの責務だと考えています。しかも、民間ロケット射場が実現する運びとなり、和歌山県のこれからの働きかけによって、和歌山県、紀伊半島を宇宙教育実践の場にすることができるのです。

 上野さんが描いた宇宙教育プログラムは、全国だけではなく海外も視野に入れています。和歌山県とJAXAとの間での宇宙を素材とした教員向け研修プログラムの開発は、普遍性を持たせ、そこに実地研修の場を持たせることで、和歌山県で宇宙教育プログラムを学ぼうと全国から、海外からも教師や生徒を呼ぶことが可能になります。

 上野さんは、日本を、日本人であることを心から誇りに思えるために、日本を背負って仕事をする日本人には、日本とその文化や精神性に対する確固たる思いと誇りを持ってほしいと願っていました。

 今ここに来て、日本は今まで以上に世界の中における立場と存在価値を明確にすることが求められています。それゆえ、なおさら全国で最初に宇宙教育プログラムを手がけた和歌山県教育委員会は、この宇宙教育プログラムを通して立派な日本人を育て、その有効性を全国の教育委員会に示していかなければならないと思っています。

 教師がやる気と元気を取り戻し、日本人としての確固たる誇りと自信、精神と哲学を持って教壇に立ってくれれば、それはあっという間に全国の青少年に波及し、一気に日本の未来を明るくしてくれるはずです。

 我が国が国策として進める宇宙産業を支える社会の意識と担い手を育てることはもちろん、上野さんと交流のあった東海大学・坂田名誉教授らが唱えられている宇宙に対する「One Japan」の体制を築くためにも、そして、戦後教育ですっかりなえてしまった日本人としての誇りを取り戻すためにも、教育による啓蒙、啓発は不可欠と思います。

 宇宙には、人の心を揺さぶるとてつもない力、魅力があることは、和歌山県において試験的に行われた教育プログラムで明らかでした。ですから、宇宙を素材として文系、理系の枠を超えた宇宙教育を和歌山県として継続すべきだと考えています。もちろん、宇宙教育は宇宙のことだけを教える狭義のものではないことは言うまでもありません。

 和歌山県には、JAXAスペースティーチャーズ和歌山が存在しています。何といってもJAXAスペースティーチャーズ和歌山は、和歌山県発で全国初、和歌山県は宇宙教育においては先駆者なのです。この取り組みは和歌山県固有のもので、全国に誇れる教育だと思います。

 今、中央では、JAXA内でも宇宙関連企業の間でも「上野さんの遺志を継ごうと宇宙教育に注目が集まっているらしい」、「何といっても山川理事長は──これJAXAの理事長ですが──教育者ですから」ということが聞こえてきます。

 ここで、伝えたいと思います。この分野で和歌山県は10年前から宇宙教育を始動しているトップランナーなのです。

 上野さんは「和歌山県で実施している宇宙教育を教育システムとして確立し、全国に、そして世界に展開できる。和歌山県では、教育から始まった宇宙という希望や夢が10年かけて育まれ、ロケット射場の誘致までつながった。JAXAスペースティーチャーズ和歌山はこのままではもったいない。これを全国に、世界にという当初の目的に向かうべき。そうすれば、多くの人が全国から、世界から和歌山県を目指すようになる」と言われていました。和歌山県は宇宙教育のトップランナーですから、上野さんが伝えてくれているような取り組みになることを目指してほしいと思います。

 和歌山県の底力はそれだけにとどまりません。紀南には世界遺産の紀伊山地、熊野があります。日本人の心、精神が宿る紀伊半島で研修を受けることによって、あの空海も紀伊半島、高野山で宇宙とつながったように、和歌山県以外では体験できない宇宙教育を展開することができます。全てが包括されている宇宙は「和」なのです。和は日本人の精神性の根幹です。その精神が宿る紀伊半島、熊野で宇宙を実感し宇宙につながることは、日本人の心を学ばせる宇宙教育に欠かせないことになります。

 ここで、宇宙飛行士・若田光一さんの話も聞かせてもらいました。若田宇宙飛行士が東洋人初の国際宇宙ステーションのコマンダーとしての高い評価を受けた最大の理由は、和の精神を掲げ、クルーのチームワークを図ったことにあるそうです。15の国で運用する多国籍の国際宇宙ステーションにおける若田さんのコマンダーとしての成功は、若田さんが日本人であり、外国人同士であっても仲間であるという和の精神を持っていたからであります。

 現在、エデュケーションツーリズム、学びの観光ですが、観光の新領域の一つとして注目を集めているとも聞いています。もし宇宙教育プログラムが完成し、実地研修ができる環境を整えることができたなら、全国から、海外からもスペースエデュケーションツーリズムの候補地として和歌山県が選ばれることになります。

 人の意識も植物と同じで、種をまき、気持ちを込めて育てればしっかり育つのだと思います。その種まきが教育、しかも情緒教育だと思います。真、善、美、思いやり、これを感じることができる日本人独特の感性を情緒といいます。花を見て「きれいだな」と思う心が情緒です。最近の教育にはここが欠けています。情緒を感じる青少年でなければ、情緒を教えておかなければ、正しい宇宙教育は理解できません。これをしっかりとしていかなければ本物の人材を生むことはできません。

 時は飛んで、平成30年10月13日。國學院大學渋谷キャンパス百周年記念館記念講堂で「古事記に学ぶ日本のこころ~古事記と宇宙」の講演がありました。本当にすばらしい内容の講演でした。上野精一さんの宇宙と宇宙開発に対する理念と思いを、上野さんの資料をもって上野敦子さんが伝えています。このとき上野精一さんは病気療養中であったことから上野敦子さんが講演することになったのですが、お2人の合作は聞く人を諭してくれているようで、感動の講演でした。

 この中で、宇宙飛行士が語った言葉が紹介されました。1人はアポロ14号パイロットのエドガー・ミッチェルの言葉です。「最高の喜びは帰路に待っていた。窓から2分ごとに地球、月、太陽が見えた。見渡す限り広大な宇宙空間。圧倒されるような経験だった。そして、私は気づいた。己の肉体の分子も宇宙船の分子もクルー仲間の肉体の分子も、全てはつながっていて一体なのだと。ほかと私ではなく、万物は一体なのだと。私は恍惚感に包まれた。真の自己に悟り、触れたのだ」というものです。外国の宇宙飛行士が日本人らしい心を語ってくれております。

 もう1人、アポロ8号、アポロ13号に乗船したジム・ラヴェルの言葉です。「我々は月を知ることで、実は地球について知った。遠く離れた月で親指を立てると親指の裏に地球が隠れる。全てが隠れる。愛する人たちも、仕事も、地球が抱える問題も全て隠れてしまう。我々は何と小さな存在だろう。だが、何と幸せなのだろう。この肉体を持って生まれてきて、この美しい地球で人生を謳歌することができて」という言葉です。同じく日本らしい精神が宿って語られています。

 そして、最も感動したのが、JAXAの月探査機「かぐや」が撮影した月の地平線から「地球の出」の動画です。音も色も何もない荒涼とした月から見た地球。青い地球が灰色一色の月面から真っ暗な宇宙空間に姿を見せる瞬間の美しさはまさに感動。感動という言葉以外、適切な言葉は見つかりません。

 上野さんは語ってくれました。「地球は宝石のように美しい奇跡の星」。上野さんの言葉どおり、地球は宇宙における奇跡であり、宝石だと思います。地球から見た月はきれいですが、実際は人が住める星ではなく、荒涼とした灰色の星です。しかし、月から見た青い地球は実に美しく宝石のようで、真っ暗な宇宙に浮かぶその姿はまさに奇跡の星だと思います。

 この地球に命が与えられている私たちが悩むこと、争うこと、言い争うことなどは取るに足らない小さなことだと気づきます。宝石を包むように、相手を包むような優しい心で接することこそ、私たちがすべきことだとも感じさしてくれます。

 そして、上野精一さんの思いはこう締めくくられました。「いにしえからおてんとうさまを拝み、月をめで、地球の自然に添ってありがたい、ありがたいと感謝して生きてきた日本人。そのような日本人の精神が地球に暮らす全ての人々に浸透すれば、この世界から争いや破壊が消えるのではないでしょうか。宇宙から地球の美しさを見るとそれがわかるのです」と。

 宇宙から見た地球は小さな存在ですが、その美しさはほかにありません。比類なき唯一無二の美しさです。同様に、地球の中の日本は小さな存在ですが、その凜とした精神とその精神を育んだ深く豊かな自然の美しさは特別です。日本人の価値観が世界に広がれば、平和な世界が実現すると思います。宇宙を知る教育は、日本人の精神の崇高さを知り、それを世界平和へとつなげるものなのです。

 日本の中の和歌山は小さな存在ですが、ロケット射場が実現しますし、JAXAの協力を得て宇宙教育を実践している県でもあります。和歌山県は、高野山、熊野に代表される、いにしえから崇高な精神と文化を有しています。宇宙に視線を置くことで、和歌山県が誇り、世界遺産としても認められているすぐれた精神性が宿る地としての価値を全国に、そして、世界に発信できると確信しています。

 「古事記と宇宙」の講演を聞いて、地球環境と平和を守れる精神性を有している和歌山県こそ日本の代表県であり得る、日本人の心を世界に発信する拠点となるべき県だとも感じました。

 僕が紹介したこの講演を聞いた1人の方から、「古事記と宇宙を組み合わせたセンスのよさと未来志向の考え方に感動しました。こんな方がいるのですね。歴史を学び日本人が持っている精神性を理解すること、そして、未来にその価値を伝えていくための活動を行うこと、それこそ私たちが求めている価値観です。日本人のあり方を見事に解説していますし、世界の中の日本、日本の中の和歌山県が存在していることに価値があることを伝えてくれるすばらしい講義でした」、こういう意見をいただきました。

 日本人が日本人であると言えるのは、自然を崇拝する精神性を宿す国という世界の中での日本の存在意義を認識していることだと思います。そして、その日本の中でも、その精神性を深く雄大な自然の中で育んできた紀伊半島の存在意義を誇りに思える人でありたいと思います。

 平成31年3月25日、ことしですが、前年から上野さんに依頼していた講演会を和歌山市内で行いました。東京から和歌山に来てくれた上野さんは、そのとき体調がすぐれないように見えましたが、90分の講義と参加者からの質疑に答えてくれました。

 うれしいことに、この講演会場には、平成22年に開催したJAXAタウンミーティング&ユース・スペース・プログラムin和歌山に参加していた少年も来てくれました。当時小学生だった彼が今では高校生になり、あのときと同じように上野さんに質問をしたのです。そして、彼は講演を終えた上野さんに歩み寄り、宇宙産業の担い手となることを目指していることを伝えてくれました。10年前から実施している教育の成果があらわれている、宇宙教育はもっと推進すべきだと感じた瞬間でした。

 上野さんはそのとき僕に、「ことし3月末でJAXAを退職しますが、和歌山県にロケットの射場がやってきます。だから、引き続きふるさと和歌山県の宇宙教育にかかわっていきたい」、このように話してくれました。僕が上野さんに会ったのは、これが最後となりました。串本町で開催された祝賀式に上野さんも来たかっただろうなあと思いながら、JAXAの皆さんと、上野さんの思い出話、そして、これから和歌山県でその遺志を実現させることについての話を交わしました。

 以上の経緯に基づいて質問をいたします。

 和歌山県の宇宙教育は「宇宙をキーワードに教育から地域活性化までをリンクする」という新しく挑戦的な試みとして、知事も登壇者として出席したJAXAタウンミーティング&ユース・スペース・プログラムin和歌山からその取り組みをスタートさせています。

 前回の東京オリンピック誘致に関して、東京にオリンピックを呼んだ男と言われているのが、ふるさとの偉人、和田勇さんです。地元が和田さんを誇りに思っているように、上野精一さんのことを和歌山に宇宙を呼んだ男であることを誇りに感じてほしいと思っています。

 もちろん、JAXAで残した功績も大きく、現在稼働している宇宙からの防衛システム構築のかなめとして上野精一さんの存在は不可欠であったそうです。上野精一さんが日本の誇りを背負って国内外で活躍した人物であることは言うまでもありません。

 知事の高校の後輩でもある上野精一さんが、命をかけて和歌山県に残してくれたのが宇宙教育です。和歌山県内においてこれまで実施してきた宇宙教育の取り組みとその成果について、教育長から熱い答弁をお願いしたいと思います。

○議長(岸本 健君) ただいまの片桐章浩君の質問に対する答弁を求めます。

 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 宇宙教育の取り組みとその成果についてでございます。

 県教育委員会では、JAXAと連携協定を結び、学校への出前授業や高校生の種子島宇宙センターへの見学を実施してまいりました。また、連携協定にお力添えいただいた、当時JAXAの事業推進部長であった上野精一氏には、県教育委員会主催の講演会において、高校生などに対して宇宙に関する夢を熱く語っていただきました。

 さらに、JAXA主催の教師のためのスペース・プログラムに本県教員が参加し、これまでJAXAスペースティーチャーズ和歌山として活躍してまいりました。公益財団法人日本宇宙少年団の和歌山分団では、水ロケットの製作や打ち上げの指導、勤務する学校ではNASAで評価を受けるような教材を開発し、授業や部活動の指導に生かしております。今後も、スペース・プログラムのような研修の機会を与え、学ぶ意欲のある教員を支援していきたいと考えております。

 また、高校生が模擬人工衛星を打ち上げる缶サット甲子園では、全国5カ所で予選会が開催されていますが、缶サット及び打ち上げ用小型ロケットまでも自作しているのは、和歌山を含め2カ所しかございません。和歌山大学宇宙教育研究推進室の協力を得ながら、近隣府県からも多くの高校生が参加し、高いレベルの競技が行われています。昨年度は桐蔭高等学校が全国優勝し、イタリアで開催された世界大会に出場しました。このとき中心となった先生は、初代JAXAスペースティーチャーの1人です。また、向陽高等学校は、缶サットの技術についての研究を京都大学サイエンスフェスティバルで発表し、最優秀賞に当たる総長賞を受賞しました。

 このように、本県では、宇宙やロケットに関する教育に早くから取り組み、その成果として、旺盛な意欲、関心と高度な知識、技術を有する生徒が育ってきております。

○議長(岸本 健君) 片桐章浩君。

  〔片桐章浩君、登壇〕

○片桐章浩君 ロケット射場が運用を開始した後は、観光振興とともに宇宙を切り口とした教育に力をさらに注ぐべきだと思います。これまで宇宙教育に関する協定、教師の育成、講演会などの積み重ねがありますから、その土壌はできていると思います。

 ロケットの実機に触れる機会を持った宇宙教育にすれば効果はさらに上がりますし、全国から教育関係者が訪れるなど、モデル地域となることができます。今後の宇宙教育にどう生かそうと考えているのか、教育長にお尋ねいたします。

○議長(岸本 健君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 今後の宇宙教育にどのように生かしていくかでございます。

 こうした取り組みや成果がある中、串本町が日本で最初の民間ロケット射場として選ばれ、今後、子供たちがロケット発射の様子を直接見ることができるようになります。その迫力や高度な技術を間近にすることで大いに刺激され、好奇心や探究心、地元に対する誇りが生まれるなど、学習の幅が広がるものと期待します。

 この夏に開催された「宇宙シンポジウムin串本」には、近隣の中学生や高校生が多数参加し、地元にできるロケット射場への期待や夢を膨らませたことと思います。

 県教育委員会としましては、地元教育委員会や関係機関と連携し、本県の子供たちの宇宙を初めとする科学への興味、関心はもとより、地域貢献への意欲や国際的な感覚を培うなど、多方面にわたる学習意欲の喚起につなげてまいりたいと考えております。

○議長(岸本 健君) 片桐章浩君。

  〔片桐章浩君、登壇〕

○片桐章浩君 答弁をいただきまして、前向きにしていただけるというふうに、今後、教師の派遣等々含めてお答えいただいてます。教育長は恐らく御存じないと思いますが、この資料にあります、2ページ目、JAXAスペースティーチャーズ和歌山も、もともとこれは「スペースティーチャーズ和歌山」という名称だったんですが、JAXAの冠を実は取り入れていただくことができた。このわずか四つの「JAXA」を入れることに関して、どれだけの時間と多くの人がかかわって、和歌山のためにこの名称を、冠をつけてくれたかということを、ぜひ覚えておいていただきたいと思います。

 そして、資料のこの3ページ目、「研修を受けている『JAXAスペースティーチャーズ和歌山』のメンバー」というこの写真、これが当時、山口教育長がこの目を見て、この教師の本気さを見て、これはこの教師に期待しよう、和歌山県の教育を宇宙教育で全国一にしようとした、その写真がこれです。今見てもすばらしいと思います。ぜひこういった、先にこの教育に取り組んだ人たちの思いというのをしっかり覚えておいていただきたいと思います。

 続けて、3点目です。

 宇宙教育は、和歌山県こそその舞台にふさわしい地域だと考えています。串本町の背景にある世界遺産紀伊山地・熊野が持つすばらしい精神性とともに宇宙を学ぶ企画は、エデュケーションツーリズム、教育観光、学びの観光に適していると思います。

 空海が高野山から宇宙につながったように、宇宙は神々に通ずるものがあります。観光面から宇宙と神々の宿る紀伊山地・熊野を組み合わせたスペースエデュケーションツーリズムの企画実現を図ってほしいと思います。

 これまでJAXAとの連携が図れているわけですから、民間ロケットビジネスが開始した後は和歌山県とJAXA、そしてスペースワン株式会社との間で宇宙教育に関しても連携を図ってほしいと思います。

 和歌山県とJAXA、そしてスペースワン株式会社と連携を行い、紀伊半島をスペースエデュケーションツーリズムの拠点にしてほしいと思いますが、これらを視野にした県の教育旅行誘致の取り組みについて、商工観光労働部長にお尋ねいたします。

○議長(岸本 健君) 商工観光労働部長稲本英介君。

  〔稲本英介君、登壇〕

○商工観光労働部長(稲本英介君) 教育旅行は、将来のリピーターになり得る国内外の児童生徒に和歌山の魅力を知ってもらう絶好の機会であることから、現在、市町村、県及び県観光連盟等で構成する体験型教育旅行誘致協議会を設立し、誘致に取り組んでいます。

 これまでも、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の保全活動をテーマにした学習プランを初め、和歌山の特色ある観光資源を活用した教育的効果の高いテーマ別学習プランに、地域の人と交流する民泊体験を組み合わせた和歌山ならではの教育旅行プログラムをセールスポイントとしてきました。

 このため、教育旅行誘致の実績についても、昨年度、国内63校、海外36校の計99校と年を追うごとに順調に伸びてきているところです。このような状況のもと、串本町にロケット射場ができることは新たな和歌山の魅力となり、観光面でも大きなインパクトがあるものと期待しております。

 今後、ロケット射場が完成した際には、宇宙やロケットに関する教育の取り組みも踏まえつつ、世界遺産を初め和歌山の特色ある観光資源を活用した既存の教育旅行のメニューに加え、宇宙をテーマとした学習プランを取り入れることにより、さらなる教育旅行の誘致に努めてまいります。

○議長(岸本 健君) 片桐章浩君。

  〔片桐章浩君、登壇〕

○片桐章浩君 それでは、4点目です。

 ロケット射場立地に伴う和歌山県の取り組みについて、次の3点についてお答えいただきたいと思います。

 串本町で起工式に出席した知事の思いについて、観光面や施設整備での取り組みについて、宇宙教育に生かすことについて、以上、知事にお答えをお願いいたします。

○議長(岸本 健君) 知事仁坂吉伸君。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 11月16日、串本でスペースワン株式会社によるロケット射場建設工事の起工式が行われました。県議会議員の皆様や自由民主党の二階幹事長を初めとする県選出国会議員、地元関係者、キヤノン株式会社の御手洗会長などに御参加いただき、国家プロジェクト級の陣容となったことから、国内初の民間ロケット射場への大きな期待があらわれていると思います。

 また、同日、「スペースポート紀伊」という射場名称が発表されました。この名前は、宇宙への扉を開き、宇宙と地球をつなぐ新たなゲートウエーとしての鍵、キーとなる射場だという意味も込められているというふうに説明されました。紀南地方が宇宙へのゲートウエーになるというのは、大人から子供まで、全ての県民にとって夢のある話と考えております。私は聞きながら、アルファベットで「SPK」だから勝手にスパークと呼んで、紀南発展の点火剤になったらいいなあと思いながら聞いておりました。

 小型化が進む人工衛星は、これからの世界を変えるようなビジネスの展開が予想されると思います。これは私の意見ですが、多分観測と、それから通信、放送のスイッチングと、それからさらに将来的にはいろんなものの制御というのが衛星を通じて行われていくんじゃないかなあというふうに思っております。そうすると、たくさん、どんどんどんどん小さいものを打ち上げるということになりますので、ロケットが重要になってくるということになります。

 宇宙に運ぶロケットという事業は、世界でもこれからの最先端の取り組みでございますんで、これが和歌山県で進みつつあるというのは大変誇らしいことであって、まずは引き続きスペースワン社の取り組みを応援していかないといかんというふうに思います。

 ロケットの打ち上げといいますと、必ず多くの人が見に参ります。これも県経済には大プラスであります。この際、単なる見学だけでもなくて、どういうふうにして見学者、観光客の方々を、もともと和歌山県にある、例えば世界遺産である熊野古道とか温泉とか美しい自然とか、そういう近隣の観光資源とうまく組み合わせて長く逗留していただいて利用していただくということができるといいなと思って、PRをしていきたいと考えております。

 一方で、見学者がたくさん見えると、交通渋滞とかそういうことが予想されます。通常考えると交通規制ぐらいということになるんですが、それだとあんまり効果はないし、ちょっと夢のない話なんで、したがって見学場の整備というようなものをつくったり、あるいはどこに車をとめてもらって、どこへ泊まってもらって、そこからこう送るとか、多少のインフラの整備も伴う地域の設計をし直しておかないと、いろいろと混乱が起こって不便なんじゃないかというふうに思っております。

 そのようなことを、広域的な検討が必要であるということになりますので、県が中心になって串本町や那智勝浦町、あるいは近隣の市町、あるいは商工団体、交通関係の機関等から構成される協議会を10月に設立いたしまして議論を現在始めてるところでございまして、これは2021年度中に予定されている初回の打ち上げに向けて早急に結果を出して、それで整備を進めたり用意をしとかないといかんというふうに思っております。見学のための地元全体のシステムづくりをしていかなきゃいかんということだと思います。

 また、スペースワン社がロケットを打ち上げるということなんですが、単なる射場だけだとちょっとおもしろくないというところもあります。どのぐらいまでいけるかというのは、それは企業の問題ですから無理なことは言ってもだめなんですが、できるだけ私は地元で関連施設をつくってもらったり、あるいは研究部門とか組み立て部門をできるだけ多くしてもらうとか、そういうことをお願いしていきたいと思っておりまして、もう既に一番初めからお願いはしてるところでございます。

 そういたしますと、そういうのができていきますと、それを核としてだんだんと関連機能とか関連業界とか、そういうのが集結していくはずなんでございます。そうすると、後で申し上げます、きょう議員がたくさん言われた覚醒した子供たち、そして、その道を志した子供たちが地元でも働けるというところがふえていくわけでございますので、これもまた層が厚くなってくる原因になってまいります。そんなことも志していかないといかんと考えております。

 それから、何といっても、きょう議論がありました教育であります。串本といえば宇宙、そしてロケットだと思ってもらえるように情報発信をしていくことも大変重要でございまして、そういうことが先ほど答弁申し上げました教育旅行ですね、こういうものの誘致にもつながってくると思います。何といっても地元が一番大事でございますんで、本年8月にその第1弾の取り組みとして串本で開催した宇宙シンポジウムには、関心の高さを物語って約600名参加してくださいました。子供たちにも大きな関心を持ってもらったと思っております。加えて、同会場ではスペースティーチャーである桐蔭高校の教員に缶サットの取り組みを紹介していただきまして、大変好評でありました。

 かつて、といってもちょっと前ですが、新宮がJAMSTECの「ちきゅう」の母港になったときに、JAMSTECの方々にお願いをいたしまして、子供たちにお話をしてくれということで、海洋少年をつくっていこうというふうに思いました。宇宙少年も大事でございますんで、上野精一さんの御研修とか地元の方々の大変な協力とか、それによって培われてきた宇宙教育を、さらにもう一つの要素、強力な要素がここに加わるわけでございますので、子供たちにどんどんどんどんいろんな情報を与えてもらうということも工夫をしていけば、和歌山全体が、海もあり宇宙もあるというような、他にない教育環境ができ上がってくるんじゃないかというふうに思います。

 何よりも、未来を担う子供たちにとって、ロケット打ち上げ事業という世界最先端の科学の英知が集まる取り組みが紀南地方で実現するという明るいニュースがもたらす影響は大きいと思います。本事業が和歌山の子供たちに希望と夢、故郷の誇りを与え、世界に羽ばたくきっかけとなるように、スペースワン社と連携して、今後も取り組みを進めてまいりたいと思っております。

○議長(岸本 健君) 片桐章浩君。

  〔片桐章浩君、登壇〕

○片桐章浩君 教育長、知事、それから部長からも答弁をいただきましたように、宇宙教育に関してまたうれしいニュースが一つ飛び込んでまいりまして、今、知事最後にお答えいただいた串本でのシンポジウムがきっかけとなりまして、日本宇宙少年団、これ東京にあるんですけど、これ余り今、教育委員会さんとも連携はできていないと思いますが、こちらから8月の潮岬青少年の家でプレ活動を行った──いわゆるYACですよね──YACの本体が行ってくれたので、このときの高揚感から、和歌山県の紀南地域にぜひとも日本宇宙少年団の設立を本格化させたいという依頼が、近々県に来ようかと思います。

 和歌山市には分団があるわけなんですが、紀南のほうには分団じゃなくてもう一個上の支部を立ち上げたいと。支部というのは今のところ、さいたま、金沢、静岡にしかないんですけど、同規模のものを和歌山でも支部を立ち上げたい、こういうのが串本のほうできっかけになっておりますので、これはぜひ、商工労働のほうに来ると思いますので、受けて立っていただきたいというふうに思います。

 それから、宇宙教育に関しては、教育長も先ほどお話しいただきましたように、10年近くやっている中で、当時缶サット甲子園へ出た子供たちがもう今や社会人となって、例えばJAXAへ行ってる、あるいは宇宙工学の大学に行っている、それとおもしろいところでは、北海道ではホリエモンがやってるロケット会社、こちらへ行ってるとか、いろんな子供たちがこの分野で成長して担ってくれているという実績があることもお聞きしました。

 知事が今言いましたように、単なる発射場だけじゃなくて集積する、例えば工場。どこまでいけるかわかりません、民間ですから。工場、ラボ、教育機関などを入れることによって、こういった子供たちが県外へ行くんじゃなくて、また地元で最先端の仕事にかかわっていただける、こういう和歌山県になればすばらしいなと思いますので、ぜひまいていただいてる種を大きく育てていっていただきたいというふうに思うのを切に御要望申し上げまして、一般質問とさしていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

○議長(岸本 健君) 以上で、片桐章浩君の質問が終了いたしました。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 38番杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕(拍手)

○杉山俊雄君 失礼します。議長のお許しをいただきましたので、発言通告に基づいて、1番目の教員の確保について質問をします。

 初めに、教員志願者が年々減少している問題についてです。

 9月1日の「朝日新聞」に、「公立小中学校教員の志願者が減っている」、「教委側は『教員の質に影響が出かねない』」との記事が掲載されました。

 文科省のまとめによると、18年度の採用試験の受験者は10万5000人で、12年度の12万2000人から6年間で約1万7000人が減少しています。「朝日新聞」が各地の教育委員会に調査したところ、19年度は約9万8000人で、さらに落ち込んでいます。同時に採用者はふえているため、採用試験の競争率は下がっています。

 採用試験の競争率はピークが2000年度で、小学校が約12.5倍、中学校が17.9倍でした。その後は減少が加速化して、18年度は小学校が3.2倍、中学校が6.8倍でした。「朝日新聞」の調査では、19年度はさらに落ち込み、小学校が約2.8倍、中学校が5.5倍でした。

 和歌山県でも、15年度の受験者数は1849名でしたが、2019年度では1579名となり、4年間に270名減少し、全国と同様、減少傾向にあります。競争率は、15年度から2019年度までの推移を見ると、小学校では3倍から2.4倍に減少し、中学校では高いときで9倍、低いときで6倍と年度によって波がありますが、全体として4.8倍から3.9倍に下がっています。競争率が下がっているのは、受験者が減少して合格者が少しふえているからであります。

 文教委員会で宮崎県に調査に行きましたが、宮崎県では小学校の競争率が1.2倍で、希望すれば誰でも教師になれる状況にあります。有能な教員が採用されるか不安を覚えています。

 全国的にも和歌山県においても、教員志願者が減少しています。同時に競争率も低下しています。この背景とその対策について、教育長にお伺いします。

○議長(岸本 健君) ただいまの杉山俊雄君の質問に対する答弁を求めます。

 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 教員志願者が減少している背景とその対策についてでありますが、教員志願者が減少している主な背景としましては、マスコミなどの影響により学校現場は厳しいという意識が学生に広がっているということや、好景気で民間企業の採用意欲が旺盛となっていることなどが考えられると思います。

 本県において、競争倍率については近年の大量退職に伴う大量採用によりまして、若干の低下傾向が見られます。一方、志願者数については、一時に比べると減少しているものの、深刻な状況ではないと認識をしております。

 そうではありますが、採用説明会には私自身が赴き、教員の魅力を伝えるとともに、教員が生き生きと働ける環境づくりへの取り組みをアピールするなど、さまざまな機会を捉えて積極的に教員の魅力を発信しているところです。さらに、採用試験の日程を短縮するなど、試験制度の見直しも行います。

 こうした取り組みなどを充実させることにより、意欲あふれる優秀な志願者の確保に努めてまいります。

○議長(岸本 健君) 杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕

○杉山俊雄君 競争率が減少しているのは答弁のとおりで、団塊の世代の大量退職で新規採用を大量に採用しているからであります。その上、志願者が減少しているからであります。志願者が減少しているのは、答弁のとおり、民間企業の好調と教員の長時間労働による学校の落下があります。

 教育長は、志願者数の減少は深刻な状況にないと受けとめていますが、本当にそうでしょうか。もっと深刻な状況にあるのではないでしょうか。

 それは、和大教育学部の教授が「私のゼミの生徒は教師を志望しません。『学校がブラックでやりがいも魅力も感じないから』と言っているからです」。教育学部の生徒ですら今の教育に魅力を感じないということを真剣に受けとめるべきではないでしょうか。今の若者は、残業がなく、生活をエンジョイしたいと思っているのです。

 先日、人権・少子高齢化問題等対策特別委員会の調査で、福岡県の労働者ファーストの中小企業を訪問しました。この企業は30年前から労基法を遵守し、働きやすい職場環境づくりに力を注いでいます。トップの姿勢で、一つ、完全週休2日制、二つ、有給休暇の完全消化、三つ、残業ゼロ・休日出勤ゼロ、四つ、育児休業100%を実践し、労働者ファーストでも営業利益を上げていると聞きました。これまでの慣習や常識にとらわれないで大胆な業務の削減と人員をふやして、ゆとりを実現しています。

 大胆な業務の削減では、営業日報をやめノートで連絡、会議をやめて関係者同士による打ち合わせで調整するなどして時間短縮を生み出しています。また、人員をふやして一つの業務を複数で担当することによって、誰かが休んでもその穴を埋められるように工夫をしています。会長は「残業をゼロにするには、思い切って業務を捨てることですよ」と言っていました。その結果、毎年2~3名の新規採用者枠に数百人が殺到するようになっていると言っていました。

 県教委も、このような大胆な業務削減と人員増の政策をお願いしたい。トップの姿勢でできるはずだと思います。

 それから、今、教育長がおっしゃったように、大学などで生き生き働ける環境づくりをアピールしているリーフレット「和歌山で教員として働きませんか~夏休みはたっぷり30日~」についてですが、知事はこのリーフレットに関連して、授業時数や授業日数確保のために夏休みを縮小することに反対し、長期に確保することを提案しています。大賛成です。そうすれば、教師たちは30日の休みをたっぷり利用して自主的な研修に取り組めます。教員の教育力や人間力を高めることができ、わかる授業づくりとして子供たちに還元できます。ウイン・ウインの関係がつくられます。

 また、知事は、子供たちに個別の補習を望んでいます。しかし、今の教職員の勤務状況では、子供たちとゆっくり向き合える時間の確保ができません。そのため、知事は、生徒に接する以外の雑務仕事から先生を解放することを提案しています。子供たちも先生方も待ち望んでいます。学校現場の努力だけでは限界です。知事は、県教育委員会を挙げて皆で努力中と言っています。

 先ほど紹介した企業のように、労働基準法を遵守する職場環境づくりをぜひ実現してください。トップの姿勢で実践できるはずです。よろしくお願いいたします。

 二つ目に、教育に穴があく問題について質問をします。

 教員が足りなくて、産休、育児休業や病休の代替教員が見つからない、年度初めから担任がいないなど、教育に穴があく事態が全国で常態化しています。

 「朝日新聞」の8月5日朝刊で取り上げられている同社の全国調査では、公立小中学校において、5月1日時点で1241件の未配置があるということでした。最多は熊本県の103件、続いて茨城県の102件、愛知県は92件、宮城県は85件、神奈川県は82件となっています。

 東北地方のある小学校では、6月から産休をとった特別支援学級の担任のかわりが来ず、教務主任が担任を受け持ち、担任の仕事を終えてから教務主任の仕事を行ったため、1学期は夜9時過ぎまで職員室にいる日々が続いたということです。本県においても、必要なのがわかっている産休の補充が決まらない状況があると聞いています。県教育委員会の責任が問われるのではないでしょうか。

 また、同社の報道では、富山市の小中学校において4月1日時点で35人の講師が不足し、4月に学級担任を発表できなかった小学校もあるということでした。本県においても、担任が決まらないという状況には至っていないようですが、紀南地方で年度初めから入るはずの定数内講師が見つからない状況があったと聞いています。配置されるはずの教員が来ない学校では、他の教員がカバーをしており、子供たちにもしわ寄せがいっています。

 音楽の講師が他の地方で正式採用され、それにかわる教員が見つからず、非常勤講師を雇っていると聞いています。ある地方では、途中退職した教員のかわりに元校長や市町村の支援員を任用しているというふうに聞いています。

 また、事務職員の欠員補充を探すのに大変な思いをしている市町村教育委員会もあったと聞いています。県教育委員会の採用計画の甘さが問われるのではないでしょうか。

 このように教育に穴があく事態を招いている責任は県教育委員会にあると思いますが、この背景とその対策について、教育長にお伺いします。

○議長(岸本 健君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 議員御指摘の教育に穴があくことについては、学校に必要な教員が配置されていないという理解であると考えます。

 教員の配置が逼迫する要因といたしましては、近年の大量採用により、かつてと比較して講師登録者が減少したことや、子育て世代の教員の増加により補充教員の需要が増していることなどが考えられます。本県においては、教員の確保に懸命に取り組み、児童生徒の教育活動に支障がないようにしています。

 県教育委員会といたしましては、教員の質を引き続き確保できるよう、将来を見通した採用計画を立てるとともに、教員志望者の拡大に向けた広報活動や説明会の開催、退職教員等への呼びかけなど、あらゆる方法を用いて教員の適正配置に取り組んでまいります。

○議長(岸本 健君) 杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕

○杉山俊雄君 教育に穴があく原因の一つは定数崩しです。

 2001年の地方分権改革で義務教育の国庫負担制度が変更され、県教育委員会が人件費を抑制するために、正規教員を1人雇うのではなく、正規1人分の費用で安上がりの非正規教員を2人から3人雇い、細切れで働かせていることが背景にあります。正規教員を配置すべきところを最初から多くの非正規の講師等に頼り、答弁のとおり、年度途中で穴があいたときに入る補充の人がいなくなるのです。

 和歌山県の過去6年間の正規職員、正規教員、定数内講師、非常勤の人数変化を見ると、教員定数は児童生徒の減少に伴い230人減少しているのに対し、正規教員は376人も減少しています。定数内講師は343人から412人と年度によって変動が激しく、非常勤講師は100人も増加しています。このように教員定数の減少以上に正規教員が減少し、非正規教員が増加しているのです。正規教員がいない状況が常態化しているということがわかると思います。

 二つ目は、教員免許更新制です。

 2009年に始まった制度で、10年ごとの更新講習を受けなければ免許が失効します。若年退職した人は、お金も時間もかかるので免許を更新しません。永久ライセンスの人以外免許を失っていくので、供給できる退職教員はだんだん少なくなってきています。このことが教育の穴に拍車をかけています。私は永久ライセンスを持っていますので、昨年の秋から数件、講師依頼、病休の補充に呼ばれたことがありますが、このように多くの先生たちが免許を失っています。

 国は更新制という厳格な制度を使いながら、一方では、県には免許を失効している人に臨時免許を発行することを許可し、免許外の教科を教えさせることに矛盾を感じます。体育の先生に「あなたは日本人なんだから国語できるでしょう」と言って、3年有効の国語臨時免許を発行して国語科を教えている実態をNHKラジオで放送していました。子供たちがかわいそうです。

 非正規の先生は1年ごとに職場が変わります。子供たちの顔を覚えたと思ったら、次の学校でまた一からです。教育力はつきません。子供1人当たりの教員数をふやして教育力を上げる、授業担当時間を減らしてゆとりある教育活動を実現する、このことが大切ではないでしょうか。

 三つ目は、答弁のとおり、団塊の世代の大量退職とそれに伴う新規採用の大量採用による教員不足です。大量に採用した若い先生方の育休や産休の補充教員がいない。それと長時間労働によるストレスや体調不良による病休や精神疾患の休職者が多くいることも教員不足に拍車をかけています。

 精神疾患による休職者は全国で5000人ほどいると聞いています。原因ははっきりしています。まず、人を大切にしない定数崩しをやめることです。定数崩しによって正規から非正規へ、常勤から非常勤へという二重の臨時化が拡大し、教育の困難性を生み出しています。足りない分を非常勤で埋めるという構造的な問題を変えなければ、教員不足や未充足は解消されません。さきの企業の会長は「組織は人で成り立つ。働く人たちの幸せを犠牲にしてまで成長を追い求める必要があるのか」と語っていました。

 それと、年々教員免許を失効させる天下の悪法、免許更新制を廃止することです。そうすれば、教育に穴があいたときの補充は確保できます。

 教育に穴があく問題が全国に常態化しているのは、さきに述べたように、定数崩しと免許更新制という構造的な欠陥を抱えているからです。大量採用で講師登録が減少しているというふうに捉えていては、来年の採用計画は甘い見通しになるのではないでしょうか。

 教育長は、本県においては教育活動に支障がないようにしていると答弁していますが、私は各校の具体的な状況を詳細には語っていませんが、現場は穴埋めのために教員探しに奔走しているのです。しっかりした採用計画で教育に穴があかないようによろしくお願いしておきます。

 また、国会の附帯決議で示された財源確保を自治体に対してきちんと実施するように国に強く求めてください。あわせてよろしくお願いをしておきます。

 次に、教育については最後の問題、英語検定についてです。

 中学3年生の英語検定を全員受検から希望者のみに変更することについて質問をします。

 これについては、2013年に閣議決定された教育振興基本計画では、国際交渉や国際舞台でリーダーとして活躍できる実践的な英語力のある人材を育成するとしています。まさに、企業のための人材養成です。教育基本法の教育の目的、人格の完成を目指すと大きくかけ離れています。

 英語教育強化のために大学入試や生徒の英語力把握、また、教員の英語力向上に外部試験の活用をうたっています。まさに英語教育の民間活用です。

 大学入試の英語民間試験導入は公平公正な点で問題があり、強い批判を浴び、延期されています。大学入試共通テストの記述式問題では採点業務の民間委託に致命的な欠陥が指摘され、延長される見通しです。これらは、受験生や教育現場の声に応え、即時に中止すべきであります。英語力把握の英語検定試験もこの延長線上にあります。

 県教育委員会は、閣議決定された教育振興基本計画に基づいて英語教育改善プランをつくり、2020年までに中学校卒業時点で英検3級以上を50%にすることを目標にしています。この目標達成のために、中学3年生全員を対象として、英検受検が毎年10月に実施されます。3年卒業レベルが3級です。10月では一部未履修な部分があるのに3級が基本とされます。県教委は、10月に実施しても十分にたえられると説明をしています。学校にできるだけ全員3級を基本として受検するよう連絡してくるのは、50%目標達成のためであります。

 全国学力テストでは自分の成績は公表されませんが、英検は1次試験の際に何級を受検するかわかります。このとき「あの子5級やて」、「おまえレベル低いな」というような下げ比べ発言が見受けられます。それで「どうせ落ちるのなら5級より3級のほうが格好いい」と見えを張ることも起こります。

 リスニングが苦手な生徒は、説明時にもうマークシートに記入しています。筆記でも適当にマークし、考えずに回答している生徒もいます。

 結果発表時に全員の受検級がわかります。担任にとってはつらい瞬間です。教室という場で合否がわかるのは英検だけです。学力テストより生徒の心に傷をつけてしまう制度です。

 3年の英語担当教員は、受検級の確認や申請、教室の割り振り、名簿作成、2次試験の段取り等、余分な仕事に振り回されます。先進県の秋田に学び導入された制度ですが、現在、秋田県は実施していません。和歌山県は全額公費負担です。都道府県で全額負担しているのは、和歌山県以外ほとんどありません。

 受検料は5級2000円、4級2600円、3級3900円、準2級4900円、2級5500円です。3級以上には2次試験があり、1次の合否に関係なく受検料を前納するシステムになっています。3級1次に合格する生徒は半分程度なので、残りの半分の生徒は2次試験を受けません。それでも英検協会に受検料を払わなければなりません。

 この手法は大学入試の英語民間試験導入時にもありました。英検は民間試験で一番早く申し込みが開始され、予約金3000円はキャンセルしても返金されないとしていました。しかし、強い批判を浴び、撤回をしています。

 このように合格しない人の受検料まで事前に徴収する英検協会への財政支出は、無駄使いではないでしょうか。全ての子供がひとしく公費負担されるのはよい制度ですが、英検はできる生徒ほど公費負担割合が多くなります。また、自分を卑下したり、何も考えずにテストに向かうなど、英語嫌いをつくる制度にもなっています。英語の力をつけようとして、逆に格差を拡大しています。教育格差を解消すべき公教育としては、よい制度とは言えません。

 その上、全ての子供が希望しているわけではありません。全員を対象とせず、以前のように希望者だけが自費で受検すべきではないでしょうか。教育長にお伺いいたします。

○議長(岸本 健君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 県では、英語学習への意欲、関心を高めるために、平成27年度より公立中学校3年生全員を対象として、実用英語技能検定を実施しています。

 国が毎年実施しています英語教育実施状況調査の結果では、3級以上を取得している本県中学校3年生の割合は、全国平均を上回っています。また、過去4年間の受検状況を見ますと、3級より上位級である準2級や2級を受検する生徒が増加しており、英語学習についての意欲が高まっていると考えています。

 今後も、義務教育最終学年の全員にひとしく受検の機会を提供し、中学生の英語力の一層の向上に努めてまいります。

○議長(岸本 健君) 杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕

○杉山俊雄君 要望ですが、英語教育の充実と言うなら、英検受検料の2700万円は、英語が教科化される小学校の英語専任教員の増員に活用されることを要望して、次の河川の問題に移ります。

 三つ目は、貴志川流域の浸水被害と対策について質問をします。

 10月の台風19号によって、東日本の多くの河川で堤防が決壊し、氾濫して甚大な被害をこうむりました。犠牲になった方々にお悔やみと、被災された方々にはお見舞いを申し上げます。また、一日も早い復旧を願っています。

 台風19号による河川の決壊箇所は、国の管理河川で7河川12カ所、都道府県の管理河川で67河川128カ所、合計140カ所です。温暖化の影響で台風の大型化が今後も予想され、河川整備対策を強化する必要があります。

 治水、洪水対策は人の命を守るために行われます。想定を超える豪雨に対して、堤防が決壊しないように堤防の上部まで補強したり、越水しても堤防が削られないように耐越水堤防対策を行い、被害を最小限に食いとめることが求められます。

 国土交通省は、1998年に越水しても堤防の決壊を防ぐことを河川対策の基本方針にしていましたが、ダム建設の妨げになるとして2000年にこの方針を撤回し、洪水を河道の中に押し込める従来の考え方に戻ってしまいました。これ以降、堤防強化の越水対策を封印しています。実際に堤防強化、河床掘削、河川周辺の樹木伐採などの河川整備事業の予算は、18年度までの5年間で390億円削減されています。一方、ダム事業予算は512億円増額されています。

 この2000年の政令どおりに洪水を河道の中に押し込めようとすれば、河道に土がたまって河床が高くなっていたり、大きな木が生えていることは、河川の維持管理を怠っていることではないでしょうか。

 私は、健康のために竜門橋と新龍門橋の間の堤防を毎日歩いていますが、少し気になることがあります。それは、何年か前に河道の樹木を切ってきれいにしていたのに、最近は河道の樹木が密林状態になっています。そこで、国土交通省近畿地方整備局和歌山河川国道事務所に、紀の川新龍門橋付近の河道掘削、樹木伐採を行う予定はあるかを尋ねましたが、当面はないという回答でした。貴志川も諸井橋から下流は国管理なので同様だと思います。新聞記事に、河道掘削や樹木伐採を実施しているところは浸水被害が少ないと掲載されていたので、大変心配しています。

 そこで、平成29年の台風12号で浸水被害が大きかった貴志川流域の浸水対策、特に紀の川市調月地区における排水対策について質問をします。

 紀の川市調月の宮ノ前排水機場近くで浸水被害に遭われた方に話を聞きました。27年前に移り住んだという人です。「当時、水の被害が心配であったが、地元の人の話では水害はないとのことであった。これまで床下浸水で済んでいた」、「この日、夕方避難の放送があったが、これまでどおりだろうと思い避難しなかった。ドアをあけたら水が入ってきていた。10分後見る見る上昇し、床上160センチ以上になった。2階で一夜を過ごす。朝、水がだんだん引いてきた。宮ノ前排水機は明け方まで動いていたように思う」、「朝、消防から避難するか尋ねてきたが断った。室内はどろどろで後片づけが大変。1階のテレビ、冷蔵庫、給湯器等、電化製品は全滅です。電化製品の点検だけで1機5000円かかり、車2台は廃車です。見舞金は市から3万円、県から5000円、自治会から1万円いただきました。保険に入っていなかったので大変でした。27年間住んでいるので、この地は離れたくない。異常気象の大雨で浸水被害が大変心配です。大きな水害がないようにしてほしい」と話していました。

 排水機が一日中稼働していたにもかかわらず、床上浸水をしています。これに対し、紀の川市の担当者は、「排水能力が余りにも小さく、水路の水を吐き出せない」と語っていました。

 下流の後島排水機場近くの住人にも話を聞きました。「真夜中、2時か3時ごろ、だんだん水位が上昇してきた。放送はなく、消防から電話で避難するようにと連絡があった。ドアをあけようとしたが、水圧であかなかった。ボートをよこしてくれと言ったが、断られた。平家なのでベッドに座布団を重ねてしのいだ。大変な恐怖でした。朝4時か5時ごろ水が引いてきた。冷蔵庫がショートして火花が散る。コンセントを抜くが使えなくなる。外の洗濯機、ボンベは浮いていた。軽トラック、軽自動車は水につかるが、バッテリーをかえるだけで済んだ。後島排水ポンプがちゃんと動いていたのか不安で仕方がなかった」と怒り心頭でした。

 このような状況の中、国営和歌山平野農地防災事業では、2028年度(令和10年度)完成予定で農業用用排水施設の機能回復等を目的とする総事業費456億円の工事が計画されています。このうち貴志川流域の右岸では、東貴志排水機場の新設と高嶋排水機場の改修などが計画されています。左岸では国営事業に関連し、県が丸栖地区、前田地区で排水機場の新設を計画しています。

 和歌山平野農地防災事業の計画では、10年に一度発生する3日間連続254ミリの降雨を対象としています。そこで、過去の水害被害について調べてみました。平成23年、平成29年の台風では約300ミリの雨量なので既存の排水機の限界は超えていると想像できますが、調月地区で2メートル近くまで浸水するのか疑問に思いました。

 本地区は貴志川の堤防に平行に用水路があり、下流に宮ノ前排水樋門、排水機場、最末端に添田樋門、後島排水機場があり、自然排水あるいは排水ポンプにより貴志川へ排水されており、下流流域に排水が集まってくる排水形態となっていました。

 そのことから、平成29年の浸水被害では今までにない床上浸水が多発しており、せっかく事業を実施するのであれば、できる限り被害軽減につながるような対策の実施が必要ではないかと考えています。

 そこで、調月地区における排水対策内容について、農林水産部長にお伺いします。

○議長(岸本 健君) 農林水産部長角谷博史君。

  〔角谷博史君、登壇〕

○農林水産部長(角谷博史君) 県では、貴志川地域も含めた紀の川流域の総合的な浸水対策の実施を国に要望し、平成26年度より国営総合農地防災事業により水路の改修や排水機場の設置等が国直轄で実施されてございます。

 議員お話しの調月地区につきましては、排水の集中を分散させるために、上流地点で毎秒1トンの排水能力を備えた東貴志排水機場を新設することとしておりまして、令和3年度から工事着手する予定となってございます。また、同地区では高嶋排水機場の改修も予定をされてございます。

 今後とも、国に対し地元の声をお届けするとともに、早期完成を働きかけてまいります。

○議長(岸本 健君) 杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕

○杉山俊雄君 またよろしくお願いしたいと思いますが、上流の東貴志排水機場の新設で下流の排水の集中を分散させる計画ですが、雨量254ミリの計画基準は変わらないので、記録的短時間雨量や台風の大型化が今後予想されます。大丈夫かと大変心配をしています。この事業計画で被害が軽減されることを祈っています。

 次に二つ目、貴志川における今年度の堆積の土砂撤去や樹木伐採の状況について質問をします。

 和歌山平野農地防災事業が完成すれば貴志川流域の浸水被害は軽減されると思いますが、近年頻発する想定をはるかに超えるような大雨では今以上の浸水被害が想定され、心配の種は尽きません。そうなると、さらなる浸水対策が地域の要望になります。しかし、先ほど申しました計画基準雨量など整備水準の向上は事業制度上困難ということであります。

 紀の川市長は、10月の大型で強い台風19号による東日本の記録的な大雨、強風による甚大な被害の発生に関連して、安心・安全な紀の川市にするために、治水対策は重要であると振興局主催の交流会で挨拶をされていました。

 また、桃山町調月区長会や貴志川区長会から、貴志川の上流、諸井橋までの土砂堆積のしゅんせつや樹木の伐採、また、排水機場の早期着工の要望が紀の川市や和歌山県河川国道事務所長に出されています。

 紀の川市の河川担当者は、「国交省事業の紀の川の岩出狭窄部対策とその上流の河道掘削で水位が下がり、貴志川の流れがスムーズになり、ことしの盆の大雨のとき、丸栖地区の樋門を閉じることがなく、ふだんなら浸水していたと思われるが、消防団が出動せずに済んだ」と河道掘削の効果を語っています。

 貴志川上流でも、土砂堆積の撤去や樹木の伐採で貴志川の河道水位を下げる取り組みが必要ではないでしょうか。和歌山平野農地防災事業による内水対策との相乗効果も期待できると考えます。

 そこで、貴志川の今年度の堆積土砂の撤去や樹木伐採の状況について、県土整備部長にお願いいたします。

○議長(岸本 健君) 県土整備部長髙松 諭君。

  〔髙松 諭君、登壇〕

○県土整備部長(髙松 諭君) 貴志川における今年度の堆積土砂撤去や樹木伐採の状況につきまして、御質問をいただきました。

 貴志川につきましては、紀の川合流点から諸井橋までの約6キロメートルの区間が国土交通省の管理区間となっております。令和元年度は、防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策の予算を活用するなどいたしまして、堆積土砂の撤去や樹木伐採を行っていると聞いております。

 具体的には、現在までに支川の丸田川との合流点付近において、約4000立方メートルの堆積土砂の撤去が完了しており、今後は北島橋から高嶋橋までの区間において、約1万9000平方メートルの範囲で樹木伐採を行う予定と聞いております。

 なお、県が管理いたします区間につきましても、国の事業と歩調を合わせながら、堆積土砂の撤去などの維持管理に努めてまいりたいと、このように考えております。

○議長(岸本 健君) 杉山俊雄君。

  〔杉山俊雄君、登壇〕

○杉山俊雄君 最後に、治水対策上、効果的と考えられる河道水位を下げるしゅんせつなど河道整備の実施や計画基準雨量の見直しによる整備水準の向上など、関係各方面への要請活動を、県の指導性を発揮し、取り組んでいただくことを要望して、一般質問を終わります。(拍手)

○議長(岸本 健君) 以上で、杉山俊雄君の質問が終了いたしました。

 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。

 この際、暫時休憩いたします。

  午前11時46分休憩

  午後1時0分再開

○副議長(森 礼子君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 3番中本浩精君。

  〔中本浩精君、登壇〕(拍手)

○中本浩精君 皆様、こんにちは。

 一般質問2日目、3番目に登壇させていただきます中本浩精です。どうもありがとうございます。(発言する者あり)ありがとうございます。

 それでは、議長のお許しをいただきましたので、通告に従いまして一般質問させていただきたいと思うんですけど、このたび、大きく二つの項目について質問させていただきたいと思います。

 まず、1項目めの紀の川の浸水対策についてでございますが、先日、同僚議員の岩田議員も質問していただきました。とても大切な重要なことであると思いますので、私からも一般質問をさせていただきたいと思います。少し答弁等で重なるところがあるかわかりませんけど、御了承いただけますようによろしくお願い申し上げます。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 まず、小項目1、紀の川流域における浸水対策検討会の状況についてお尋ねいたします。

 本年10月12日から13日にかけて、強い勢力を維持して伊豆半島に上陸した台風第19号は、関東や甲信、東北地方を中心に記録的な豪雨をもたらし、多くのとうとい命が失われました。この場をおかりして、亡くなられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災された皆様には、心よりお見舞い申し上げます。一刻も早く復興が進み、被災者の皆様がいつもどおりの生活に戻られることを願っております。

 さて、このたびの台風第19号による記録的な豪雨により、河川の氾濫や土砂災害が相次いで発生し、東日本を中心に、広範囲において家屋や農作物などに甚大な被害をもたらしました。

 本県の紀の川においても、2年前の平成29年10月の台風第21号において水位が上昇し、内水の排水機能が低下したことにより、紀の川沿川の地区では、床上・床下浸水が800戸以上にも及ぶ被害となりました。また、橋本市学文路地区では、ここ10年で3回の浸水被害が発生しており、平成29年の台風第10号では、150戸以上の家屋が浸水しています。

 平成29年10月の台風第21号により、紀の川沿川の各地域で発生した内水被害の軽減に向けた対策として、平成30年1月、国土交通省は、効果的かつ効率的な整備につなげることを目的として、国、県、関係市町を構成機関とする紀の川流域における浸水対策検討会を設置しました。

 昨年9月議会にも、その検討内容について質問いたしましたが、県土整備部長からは、「各市町の担当者で構成するワーキングを実施しており、引き続き、国、県、関係市町の連携のもと、浸水被害の軽減に資する具体的な対応策についての検討が進められているところ」と御答弁をいただいたところです。

 一方、同じ平成29年の台風第21号で被害の大きかった新宮市の市田川では、既に対策の取りまとめが終了し、整備の段階に移っていると聞いておりますが、紀の川流域における浸水対策検討会における具体的な対応策は、いつごろまでに取りまとめられる予定でしょうか。また、検討会における現在の取り組み状況及び橋本市学文路地区を流下する大谷川における取り組み状況はいかがでしょうか。県土整備部長にお伺いいたします。

○副議長(森 礼子君) ただいまの中本浩精君の質問に対する答弁を求めます。

 県土整備部長髙松 諭君。

  〔髙松 諭君、登壇〕

○県土整備部長(髙松 諭君) 紀の川流域における浸水対策検討会の状況につきまして御質問いただきました。

 平成29年10月の台風第21号による豪雨によりまして、紀の川沿いの地域におきましては、橋本市の学文路地区を初め、多くの地区で浸水被害が発生いたしました。

 こうした浸水被害の軽減に向け、国土交通省が、国、県、市町を構成機関とする紀の川流域における浸水対策検討会を平成30年1月に設置をいたしました。これまでに幹事会を4回、それから検討会を3回開催しました結果、中本議員御質問の大谷川を含めまして、具体的な対応策を検討する前提となります浸水発生要因の分析が完了したという状況でございます。

 一方、浸水対策の取りまとめにつきましては、ことしじゅうに行うとの説明を国から受けてございましたが、現時点では、事実上、不可能となってございます。県といたしましては、一刻も早く取りまとめるよう重ねて国に要請してまいりたいと、このように考えてございます。

 このような状況に鑑みまして、県では、河川課あるいは各振興局の建設部の職員が関係市町に出向きまして、浸水対策に関する要望や悩み、地形や土地利用の状況、歴史的経緯などを事細かに聞き取りをいたしました。河川に精通した土木技術者が少ない市町の実情等も踏まえ、今後、これらの聞き取り結果を国に余すことなく伝えるなどいたしまして、国と市町との間の調整を図ってまいりたいと、このように考えてございます。

 浸水被害が発生した以降も、紀の川とその支川におきましては、紀の川水系河川整備計画に基づく堤防整備、河道掘削等について、国、県ともに、防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策の予算を活用するなどして進めているところでございますけれども、既にこの浸水被害から2年が経過しておるところでございますので、一刻も早い浸水対策を策定していただきますよう、国に対して重ねて働きかけてまいります。

○副議長(森 礼子君) 中本浩精君。

  〔中本浩精君、登壇〕

○中本浩精君 ただいま、県土整備部長より具体的に詳しく御説明いただきました。そしてまた、県の前向きな取り組みに心から感謝申し上げたいと思います。

 平成29年の浸水被害から既に2年も経過しながら、いまだ要因分析にとどまっている状況という答弁だったと思います。このたびの台風第19号や平成30年7月豪雨など、毎年、全国的にも洪水被害の状況が報告されている中、地域の方々の心情を察しますと、行政としてもっとスピード感を持って取り組むべき課題だと考えます。災害は、いつやってくるかわかりません。備えあれば憂いなし。国に対して一刻も早く紀の川の浸水対策の方向性を定めるよう、県からもしっかりと働きかけていただくことを強く要望いたしまして、次の質問に入らせていただきます。

 小項目2、紀の川水系河川整備計画の進捗状況についてお尋ねいたします。

 本年の台風第19号では、国土交通省が管理する1級河川の千曲川や那珂川などで、河川の氾濫により堤防が決壊するなど、甚大な被害が発生したと聞いております。紀の川においても、一たび河川が氾濫すると大規模な災害につながると思われます。

 こうしたことを踏まえると、紀の川での紀の川水系河川整備計画に位置づけられた狭窄部対策や河道掘削といった河川整備が重要だと考えますが、その進捗状況はいかがでしょうか。特に狭窄部対策について、岩出井堰、藤崎井堰、小田井堰の対策状況並びに今後の見込みについて、県土整備部長にお伺いいたします。

○副議長(森 礼子君) 県土整備部長。

  〔髙松 諭君、登壇〕

○県土整備部長(髙松 諭君) 紀の川水系河川整備計画の進捗状況につきまして御質問いただきました。

 現在、国が行っております紀の川の河川整備は平成24年12月に策定されました紀の川水系河川整備計画に基づき実施されており、下流部についての一定の整備が完了しておりますことを受けて、岩出、藤崎、小田の狭窄部対策など、中流部、上流部における整備を進めることが計画に位置づけられております。

 まず、岩出狭窄部対策につきましては、平成28年度に工事に着手しておりますが、令和2年度の完成に向け、今年度は拡幅水路の整備や井堰上流の河道掘削が順調に進められております。

 次に、藤崎狭窄部対策につきましては、岩出狭窄部対策の完成から切れ目なく工事に着手する予定と聞いております。さらに、藤崎狭窄部よりも上流にある小田狭窄部の対策につきましては、予算の状況にもよりますので、着手の時期については流動的になりますけれども、藤崎狭窄部対策と並行して調査検討を行う予定であると、このように聞いております。

 このほか、九度山町の慈尊院地区では、堤防整備や河道掘削に着手するための調査、検討などを行っていると聞いております。

 県といたしましては、これらの狭窄部対策や堤防整備などについて、より進捗が図られるよう国にお願いしてまいりますとともに、防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策に続く予算措置などにつきましても、あわせて強く働きかけてまいりたいというふうに考えております。

○副議長(森 礼子君) 中本浩精君。

  〔中本浩精君、登壇〕

○中本浩精君 次の質問に入ります。

 小項目3、紀の川の樹木繁茂や土砂の堆積についてお尋ねいたします。

 よく市民の皆様から、今いろいろと工事をしていただいてるんですが、どの樹木を伐採して、どの樹木を伐採しないんかとか、いろいろと質問を受けるところがあります。なかなか勉強不足で、きょうはそういうことでちょっと質問さしていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 平成30年7月豪雨など、近年激甚化してる被害が頻発していることを受けて取りまとめられた重要インフラの緊急点検の結果及び対応方策等を踏まえ、特に緊急に実施すべきものについて、防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策のもと取り組まれているところですが、その中には河川内の樹木繁茂や堆積土砂等の対策についても盛り込まれ、国の国土強靱化対策で予算措置されていると聞いております。

 紀の川においても樹木繁茂や土砂が堆積している状況が見受けられ、これらの対策も大変重要と考えておりますが、一方で、測量結果を見ると、それほど堆積していなかったり、この程度の樹木繁茂であれば問題なしといった見解も聞かれるところです。

 予算に限りがある中で、しっかりと優先順位をつける必要があると思われますので、一般論として、どのような場合には対策が必要で、どのような場合には対策が不要となるのか、県土整備部長から説明をお願いいたします。

○副議長(森 礼子君) 県土整備部長。

  〔髙松 諭君、登壇〕

○県土整備部長(髙松 諭君) 紀の川の樹木繁茂や土砂の堆積につきまして御質問いただきました。

 一般論といたしまして、対策をするかしないかといった対策の要否につきましては、基本的には、樹木繁茂や土砂堆積の状況を把握し、どれだけ河川の流れを阻害しているかを踏まえて判断するものでございます。

 具体的に申し上げますと、河川の断面積に対して流下を阻害する断面積の割合、上下流の区間と比較した河川の断面積の相対的な大きさ、それから、経年的な洗掘や堆積の傾向、支川の水位上昇への影響、堤防の高さや背後地の状況、樹木の根の侵入による堤防や護岸などへの構造上の影響、河川監視カメラの視認性への影響、その他、河川環境などを総合的に勘案して判断することとなります。

 仮に、河川の断面積に対して流下を阻害する断面積の割合が小さいといった場合ですとか、上下流の区間と比較して河川の断面積が十分に大きい場合、あるいは経年的な洗掘傾向にある場合などは、必ずしも対策が必要であるとは限らないと、こういう状況になります。

 また、例えば、砂州が発達している箇所は、目視だけでは堆積しているように見えますけれども、水面下では深掘れを起こしていると、こういう状況がありますので、河川の断面積に対して流下を阻害する断面積の割合は必ずしも大きいとは限らないということになります。こういった箇所で土砂撤去を行いますと洗掘を助長する可能性があり、堤防や護岸、橋梁などの構造物の損壊にもつながるおそれがございます。そのため、目視での判断のみにとらわれず、測量結果などの定量的なデータに基づきまして慎重に判断することが重要だというふうに考えております。

 紀の川におきましても、このような考え方に基づきまして、必要性の高いところから順次対策が行われているものと認識してございます。

○副議長(森 礼子君) 中本浩精君。

  〔中本浩精君、登壇〕

○中本浩精君 次の質問に入ります。

 小項目4番目の浸水対策の役割分担についてお尋ねいたします。

 先日、建設委員会の県外視察で、四国の吉野川、四万十川に行ってまいりました。そこでは、国、県、市町が連携して、さまざまな役割分担のもと、それぞれが実施すべき対策を立案していました。

 例えば、1級河川の吉野川支川のほたる川では、平成16年の台風第23号による浸水被害が発生しましたが、その対策として、関係機関が協議会を立ち上げ、ほたる川総合内水対策事業を策定し、国土交通省、徳島県、吉野川市がおのおの連携して対策を進めていました。

 具体的には、国土交通省が排水機場の新設を、ほたる川を管理する徳島県はほたる川の河川改修を、吉野川市は流域貯留施設の整備、また土地利用規制を行うことにより開発に一定の条件を付すなど、国、県、市がそれぞれの役割をしっかりと果たすことにより、河川の総合的な内水対策を効果的に進めている事例だと感じました。こうした国、県、市の連携した取り組みは、紀の川でも参考になると思われます。

 ただし、浸水対策の役割分担を考える際、そもそも浸水の要因として、川の水があふれる外水、降った雨を川に流し切れないことで発生する内水がありますが、内水については市町が対策を行うこととされているものの、この対策の役割分担について、市町が必ずしも理解できていない可能性があるように思われますので、一般論としてどのような役割分担となるのか、県土整備部長から説明をお願いいたします。

○副議長(森 礼子君) 県土整備部長。

  〔髙松 諭君、登壇〕

○県土整備部長(髙松 諭君) 浸水対策の国、県、市町の役割分担につきまして御質問いただきました。

 私も、建設委員会の議員の先生方の皆様とともに同行させていただきましたけれども、国、県、市町が役割分担をして非常に緊密な連携がなされているということで、すばらしい取り組みだったということで、改めて感心をした次第でございます。

 まず、外水対策でございますけれども、河川管理者が河川の水を河川の外にあふれさせないように対策をするということが第1番目の対策としてございます。

 例えば、紀の川水系でございますけれども、紀の川水系は、国土保全上または国民経済上、特に重要な水系として1級水系に指定されております。この中で重要度の高い区間は国が直接管理することとなってございまして、和歌山県内の紀の川本川は全てこれに該当しております。同様に、支川の貴志川につきましても、紀の川合流点から諸井橋までの約6キロメートルの区間は国が管理をしていると、こういう状況でございます。

 一方、これら以外の支川でございます1級河川、例えば橋本川などは都道府県知事が管理するものと指定されておりまして、法定受託事務として県が河川法に基づき管理を行っております。ただし、橋本川の紀の川合流点付近のように、紀の川本川の改良工事と一体として施工する必要がある場合、いわゆるバックウオーター現象による影響を受ける場合には、国が橋本川の影響区間も含めて工事を施工し、その後、完成した構造物を県が国から引き継いでおります。

 また、紀の川本川の堤防に設置されている樋門は、堤防と一体として管理する必要があるため、国で管理をしております。ただし、この操作につきましては、一般的には市町村に委託されております。

 次に、内水対策についてでございます。

 内水対策は、降った雨を川などに排出し、低地の浸水が発生しないように対策をするものでございます。例えば、雨水を排除するための排水管や排水ポンプ場などを整備する下水道がございますけれども、下水道法では、下水道の管理は市町村が行うものと規定されております。また、排水路等の設置もしくは管理については、従来より市町村が行います自治事務であると承知をしております。

 まとめますと、河川の水をあふれさせないようにする外水対策は、河川法に基づく河川管理者でございます国、県の役割であり、降った雨を排除する内水対策は、自治事務としての市町村の役割となります。このような役割分担のもと、県管理河川の河川整備の進捗に努めますとともに、国に対しても紀の川の河川整備の促進が図られるよう強く働きかけてまいります。

 また、あわせまして、市町に対しても河川への流出抑制等の事前防災対策について検討するよう促してまいりたいと、このように考えております。

○副議長(森 礼子君) 中本浩精君。

  〔中本浩精君、登壇〕

○中本浩精君 1項目めの最後の質問に入らせていただきます。

 紀の川の総合的な浸水対策についてお尋ねいたします。

 先ほどから、紀の川水系河川整備計画の進捗状況、樹木繁茂や土砂の堆積への対策、また浸水対策に係る行政の役割分担について、それぞれ県土整備部長から本当に詳しく答弁をいただきました。ありがとうございます。

 浸水被害の軽減に向けた国、県の取り組みや市町村との役割分担についてはよく理解できましたが、最後に総括して、紀の川の浸水被害軽減に向けた知事の意気込みをお聞かせください。

○副議長(森 礼子君) 知事仁坂吉伸君。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 紀の川では、昭和28年水害や昭和34年の伊勢湾台風による水害で堤防が決壊するなど、川沿いの市町では幾度となく激甚な災害を経験してまいりました。また、平成29年10月の台風21号による豪雨では、大規模な浸水被害が発生し、多くの県民の皆さんが大変な被害に遭われたところであります。

 この台風21号による浸水は、いわゆる内水氾濫によるものでありました。しかし、ことしの長野県の千曲川がそうであったように、紀の川の堤防が決壊し、外水氾濫が発生するような事態になれば、これは重大な災害に発展するおそれがございます。

 このため、ここの紀の川の特に和歌山県側は国が管理しておりますので、国によって堤防整備や河道掘削が継続して実施されております。

 最近は、大滝ダムがございますので、ちょっと安心というところもあります。考えてみますと、もう大滝ダムの完成の直前ぐらいに、費用を余計、負担金を出してくれと国交省に言われまして、もうお金を一切出すなと、この議会でも一部の方々にさんざん言われた思いがございますが、あれが完成してなかったらと思ったら、ぞっとするところがたくさんあります。そういう意味では少しましになっとるということでございますが、安心はできないというふうに思います。

 特に、大滝ダムにつきましては、今、暫定運用なんでございます。これはなぜかというと、大滝ダムの水位を台風に備えて猛烈に下げると、その分だけ事前に放流をしなきゃいけないことになります。その放流をする量が多過ぎると、現在の吉野川、紀の川の容量だとちょっと苦しいということになるんで、ほどほどに放流してるわけでございます。これをたくさん放流できるようにするためには、紀の川側も狭窄部、これをちゃんと直さないといけません。そのために、先ほどお話がありましたように、藤崎、小田の両狭窄部についてもしっかりと早目に直してもらわないといかんということになるわけでございます。

 その前に、実は紀の川大堰を直してくれていまして、これもちょっと不十分なところがあるんですけども、とりあえずリスクは少し少なくなったので、今度は上流を先にやらせてくれということで、今、順番にやっていただいてるわけですが、要はスピードの問題だと思います。

 これと軌を一にして、奈良県側の吉野川も、これは実は奈良県側があふれるから水を出せないというわけにはいきません。和歌山県側が十分な容量が出たら、そしたら今度は奈良県側もそれに合わしてもらわないかんので、これについては荒井知事にどうぞよろしくお願いしますというふうに、この間も注意を喚起するというか、お願いをしたところであります。

 一方、県も、この流れと軌を一にいたしまして、河川の予算、この10年で倍増させ、整備に力を入れております。県の管轄するところは日高川とか有田川とかいう、ああいう大きな川もございますけれども、紀の川に流れ込むほとんどの河川、中小河川は県の担当でございます。これは大谷川、これは平成29年の浸水被害を受けておりますけれども、速やかにしゅんせつを実施するなどしていかないといけないということで、実際にやり始めているところでございます。

 近年、雨の降り方が激甚化し、毎年のように大水害が発生しております。紀の川でもいつ大水害が発生するかわからない状態ですから、先ほど言いましたように、国もやってもらわないかんし、県もできるだけ加速をしていかないといけない。そういう意味で、県民の生命と財産を守り抜くために、紀の川の流域の関係者、我々でございますけれども、一体となって対策を考える必要があるというふうに思います。

 これは、もう一つは農業用水の問題があって、国営農地総合防災対策の対象にしていただいて、少しずつ進んでるんでございますが、こっちもやってもらわないかんし、実は、ちっちゃいところでいうと、内水対策で市町村にお願いをせないかんところもございます。そういう意味では、みんなが一体となってやらなきゃいけないということであると思います。

 そういう意味で、県の部分については議会にもお願いをして、予算を確保して、できるだけ早くやっていきたい。それから、従来の枠組みや概念にとらわれずに、積極的に提案を行うというようなことをして、国とか市町との調整役もやっていきたいと、そんなふうに思っております。

○副議長(森 礼子君) 中本浩精君。

  〔中本浩精君、登壇〕

○中本浩精君 知事の意気込みをしっかりと聞かせていただきました。ありがとうございます。

 今、知事の答弁にもございましたけど、県というのは、みずから行う対策に加えて、国への要望や市町への支援等、国や市町と調整しながら、うまく対策を進めていくことも重要な役割の一つだと思います。どうか仁坂知事のリーダーシップのもと、国、県、市町が一体となって、これまで以上のスピード感で紀の川の浸水対策が進捗するよう期待いたしまして、次の質問に入らせていただきます。

 大項目2、太陽光発電について、小項目1、和歌山県太陽光発電事業の実施に関する条例についてお尋ねいたします。

 皆さん御承知のとおり、今まさにスペインで地球温暖化対策を話し合う国連の会議・COP25が開かれているところです。

 地球温暖化は、産業革命以来、化石燃料を多量に使用し、二酸化炭素、つまり温室効果ガスを大気中に放出し続けた結果もたらされたものであり、その解決のためには、二酸化炭素を出さない脱炭素社会を目指す必要があると言われています。

 そういう意味で、無限に降り注ぐ太陽光を利用し電力を得る太陽光発電は、発電時に温室効果ガスを排出せず、地球温暖化対策にとって非常に有効な発電方法であり、それを進めることは本県としても豊富な日照時間等の自然資源を生かせるなど、メリットが大いにあるものだと考えます。

 しかしながら、光があるところに影があるように、太陽光発電にも負の側面があります。平地が少ない本県では、山林や傾斜地を開発する太陽光発電の計画が増加しており、防災上の問題、環境面や景観面での悪影響が懸念されています。また、太陽光発電は、規模や設置場所によって関係法令の適用を受けない場合があります。さらに、事前に地域住民等に説明が行われないまま事業が実施され、地域でトラブルが生じる事例もあります。

 このように、太陽光発電そのものは進めていくべきものではありますが、その設置に際し、さまざまな問題点があることから、本県では、昨年の2月議会において、本県の環境にふさわしい太陽光発電事業の普及を図るため、和歌山県太陽光発電事業の実施に関する条例を制定し、昨年6月22日に全面施行されたところです。

 なお、都道府県レベルで同様の条例は、本県以外では、兵庫県が平成29年3月に、岡山県が本年7月に制定しているのみとのことで、和歌山県は全国的に見ても先進的に太陽光発電に関する取り組みを進めていただいております。

 さて、そこでお聞きしたいと思います。

 和歌山県太陽光発電事業の実施に関する条例が施行され約1年半が経過したわけですが、条例の運用状況はどのようになっているでしょうか。また、県が条例を制定したことを受け、県内でも幾つかの自治体が太陽光に関する条例を制定したとも聞いております。その状況についてもあわせて環境生活部長にお尋ねいたします。

○副議長(森 礼子君) 環境生活部長田中一寿君。

  〔田中一寿君、登壇〕

○環境生活部長(田中一寿君) 和歌山県太陽光発電事業の実施に関する条例は、事業者が県及び関係市町村との協議を経て、太陽光発電設備に係る土地の造成やパネルの設置から事業廃止に至るまでの事業全般に係る計画を作成し、それを県が地域住民や市町村長及び県太陽光発電事業調査審議会の意見などを踏まえて審査し、認定の可否を判断する制度となっており、これまで6件の太陽光発電事業について計画を認定したところです。

 現在、協議中の案件が14件、認定申請書が提出され審査を行っている案件が6件となっており、中でも和歌山市内の大規模開発案件については、多くの地域住民から環境面や防災面で不安があるとの意見が出されていることから、審議会の意見を聞いて慎重に審査を進めているところです。

 次に、県内市町村の条例制定状況につきましては、現在、和歌山市、橋本市、新宮市及び古座川町において太陽光発電に関する条例が制定されているところです。

 県といたしましては、県条例の対象とならない出力50キロワット未満の太陽光発電事業については、それぞれの市町村において地域の実情に応じた対応をしていただきたいと考えており、その際には、助言、協力をしていくこととしております。

 引き続き、県条例を適切に運用するとともに、市町村とも連携しながら、本県の環境にふさわしい太陽光発電の普及を進めてまいります。

○副議長(森 礼子君) 中本浩精君。

  〔中本浩精君、登壇〕

○中本浩精君 環境生活部長より答弁いただきました。ありがとうございます。

 答弁をお聞きしまして、和歌山県では、県が地域住民や市町村長及び専門家の意見などを踏まえて審査し、認定の可否を判断する先進的な取り組みをされているということがよくわかりました。県の負担も相当なものだと思いますが、安全・安心な太陽光発電の普及のためにも、引き続き、県条例の適切な運用に努めていただきますようよろしくお願い申し上げます。

 次の質問に入ります。小項目2、太陽光発電のFIT買い取り期間終了後の対応についてお尋ねいたします。

 太陽光や風力など5種類の自然エネルギー発電を対象とした固定価格買取制度、いわゆるFIT制度は2012年にスタートしましたが、それに先駆けて、2009年11月にその前身となる余剰電力買取制度がスタートし、FIT制度の開始に伴って同制度に移行しています。

 余剰電力買取制度では、住宅用太陽光発電の買い取り期間は10年間と設定されており、ことしの11月から順次、買い取り期間の満了を迎える太陽光発電が出てきているところです。経済産業省の予測では、2019年だけでも全国で53万件、その後も毎年20万件から30万件の期限が切れ、2023年までに約165万件、670万キロワットの太陽光発電がFITを卒業する見込みです。

 しかしながら、太陽光パネルは、一般的に20年から30年間、あるいはそれ以上、発電できるものだとされています。たとえ国の制度に基づく10年間の買い取り期間が終了した後でも、発電自体は続けることができます。

 買い取り期間終了後の対応としては、電気自動車や蓄電池などと組み合わせて自宅などの電力として使う自家消費、もしくは、それぞれの家庭と小売電気事業者などが個別に交渉して契約を結ぶ相対・自由契約により、余った電力を売電するという選択肢があります。住宅用太陽光発電の設置者が買い取り期間終了後にどのような選択肢や対応があるのか、必要な情報を適宜収集できる環境整備が重要です。

 神奈川県では、ことしの9月、かながわ蓄電池バンク、かながわ余剰電力買取プランバンクの二つの取り組みを開始し、太陽光発電設備を導入している県民に対し、事業者が提供する蓄電池設備の設置プラン及び余剰電力の買い取りプランの情報を提供することにより、余剰電力を今後どのように扱うか検討する際の参考となるよう支援しています。

 太陽光発電には、温室効果ガスを排出しない、また、国内で生産でき、エネルギー安全保障にも寄与できるなど、さまざまなメリットがあります。固定価格での買い取り期間が終了した後も、より多くの太陽光発電設備が自立的な電源として継続して稼働することが重要と考えますが、県ではこのことについてどのように考えているのでしょうか、商工観光労働部長にお伺いいたします。

○副議長(森 礼子君) 商工観光労働部長稲本英介君。

  〔稲本英介君、登壇〕

○商工観光労働部長(稲本英介君) 太陽光発電については、エネルギー自給率の向上や温室効果ガス排出の低減という点ですぐれたエネルギーであり、本県でも、平成20年度から平成28年度まで、住宅用太陽光発電設備導入に係る補助制度を設けて導入促進を実施してきたところです。

 買い取り期間が満了した後の住宅用太陽光発電については、蓄電池を導入して効率的に自家消費していく、あるいは新たに小売電気事業者などと個別に契約して余剰電力を売買するといった選択肢があります。

 県としましても、買い取り期間満了後も継続して発電していただくことを重要と考えており、資源エネルギー庁のホームページで公開されている蓄電池に関する情報や売電できる事業者の情報を本県のホームページで紹介するなど、その普及啓発に努めてまいります。

○副議長(森 礼子君) 中本浩精君。

  〔中本浩精君、登壇〕

○中本浩精君 ただいま答弁いただきました。

 住宅用太陽光発電設備の導入については、県が進めてきた施策でもありますので、より多くの発電設備が継続して稼働するよう、今後の普及活動や広報活動についても積極的に取り組んでいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 最後の質問に入らせていただきます。

 太陽光発電事業終了後のパネルなどの適正な処理についてお尋ねいたします。

 先ほども申しましたとおり、太陽光発電に使用する太陽光パネルは、製品寿命が約20年から30年とされています。そうすると、FIT開始後に始まった太陽光発電事業は、2030年代中ごろから2040年ごろにかけて終了し、太陽光発電設備から太陽光パネルを含む廃棄物が出てくることが予想されています。

 太陽光パネルには、パネルの種類によっては、鉛、セレン、カドミウムなどの有害物質が含まれており、有害物質の流出、拡散防止のために、発電事業中のパネルの適切な管理はもちろんのこと、事業終了後はパネルを適正に処理することが求められています。

 事業終了後の太陽光発電設備について、住宅や事業所など建物に設置されたものについては、建物の撤去の際にあわせて廃棄されるのが一般的です。借地で行われている事業用太陽光発電についても、借地期間終了の際に原状復帰が義務づけられているのが一般的で、放置される可能性は低いと考えられています。

 問題となるのは、事業者が所有する土地で行われている事業用太陽光発電設備です。実質的に事業が終了していても、コストのかかる廃棄処理を行わずに、有価物としてパネルが放置される可能性があります。また、廃棄の費用を捻出できない、あるいは準備しなかった場合、他の土地に不法投棄されるのではないかという懸念もあります。

 放置や不法投棄対策として、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法、いわゆるFIT法や和歌山県太陽光発電事業の実施に関する条例では、事業計画認定時に事業終了後の廃棄に関する記載も義務づけられており、違反した場合、事業計画の認定が取り消されますが、実質的に事業が終了している段階において事業計画の認定が取り消されても、適正な撤去、処分は担保できません。

 こうした放置や不法投棄を防ぐためには、電気を売って得た収入の一部を廃棄などの費用としてあらかじめ積み立てておくことが有効ですが、実際に積み立てている事業者は多くないそうです。

 そこで、お伺いします。

 FIT法に基づく固定価格買取制度のもと急速に導入されている太陽光発電設備について、今後発生すると予想される発電事業終了後のパネルなどの適正な処理について、県ではどのように考えているのか、商工観光労働部長にお伺いいたします。

○副議長(森 礼子君) 商工観光労働部長。

  〔稲本英介君、登壇〕

○商工観光労働部長(稲本英介君) 発電事業終了後の太陽光発電設備の適正な処理については、法令において一定の放置対策が講じられているものの、適正な撤去、処分を確実に担保する仕組みがありません。また、固定価格買取制度の調達価格は廃棄費用も含めて価格設定がなされていますが、廃棄費用を積み立てていない事業者もいると承知しています。

 このため、県としましても、国に対し、発電事業終了後、太陽光発電設備が放置される事態が発生しないよう、発電事業者による廃棄等費用の積み立てを担保する仕組みについて法整備を行うなど、実効性のある対策を早急に講じるよう、昨年度から要望しております。

 国において、現在、太陽光発電設備の廃棄等費用の積み立てについて、原則として外部積み立てを求める方向で専門家による議論が行われておりますので、その状況を注視してまいります。

○副議長(森 礼子君) 中本浩精君。

  〔中本浩精君、登壇〕

○中本浩精君 答弁いただきまして、ありがとうございます。

 太陽光発電事業終了後のパネルなどの適正な処理については、本当に全国的な課題でもあります。また、将来に向かってとても重要な課題だとも思います。そういう中で、和歌山県は全国でも太陽光発電事業に関しては本当に先進県だと私は思っておりますので、今後も引き続き国に対してしっかりと働きかけていただきますようお願い申し上げたいと思います。

 また、先ほども申しましたとおり、太陽光発電は、地球温暖化対策、また今後のエネルギー対策にとって重要なエネルギー源であり、ますます普及を進めていくべきものであると思います。

 しかしながら、その普及に際しては、地域への十分な配慮が必要です。地球環境だけではなく、地域環境にも十分配慮していただき、安全・安心な太陽光発電の普及に向け、より一層の取り組みを進めていただきますことお願い申し上げまして、私の一般質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

○副議長(森 礼子君) 以上で、中本浩精君の質問が終了いたしました。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 22番佐藤武治君。

  〔佐藤武治君、登壇〕(拍手)

○佐藤武治君 皆さん、こんにちは。

 議長のお許しが出ましたので、通告に従い、私の一般質問を行います。

 2日目の4番目ということでありますので、少し皆さん方もお疲れのことと思いますけども、もう少しの間、おつき合いのほうをよろしくお願いいたします。

 師走に入り、はや10日が過ぎ、令和元年も残すところ20日余りとなりました。私の県議生活も7カ月を過ぎ、委員会調査、県の行事や市町村の行事等に参加をさせていただく中で、住民の皆さんから多くの御意見をいただくことがありました。今、県議としての重責を痛感しているところであります。

 今回の一般質問は、大項目で2点の質問を行いたいと思います。

 まず、1点目でありますけども、4月に国・公・私立学校の小学校第6学年、中学校の第3学年を対象にした全国学力・学習状況調査の件であります。

 この調査の目的は、実施要領で見ますと、「義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図るとともに、学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立てる。さらに、そのような取組を通じて、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立する」こととなっています。

 そして、その調査内容につきましては、一つ、教科に関する調査であり、国語、算数、数学、英語で出題されています。2として、生活習慣や学習環境に関する質問紙調査も同時に行われているところです。

 また、要領では、結果の公表に関しては、調査により測定できるのは学力の特定の一部であること、学校における教育活動の一側面であることなどを踏まえるとともに、序列化や過度な競争が生じないようにするなど教育上の効果や影響等に十分配慮しつつも、教育委員会や学校が、保護者や地域の住民に対して説明責任を果たすことが重要であると記載されております。

 そこで、質問をいたします。

 和歌山県教育委員会では、県全体の調査結果の公表を毎年7月末に行っていますが、県内の市町村教育委員会で、管内の保護者や地域住民に対して説明責任を果たすべく調査結果を公表しているところはあるんでしょうか。

 また、私の住む潮岬中学校では学校便りを発行しており、私はその結果について知る機会に恵まれているところです。ここに持参しておりますこのA4の用紙(資料を示す)、表裏であるんですが、半分を割いて、科目ごとや課題等も添えて、生徒や保護者、地域住民の方々に向けて説明をされているところです。もちろん、学習意欲や学習方法、学習環境、生徒の諸側面等に関する質問紙調査の結果もここに紹介をされております。

 県内の小中学校における公表については、どれだけの学校が公表されているんでしょうか。私は、点数ばかりにこだわるのはよくないとは思いますが、現状を把握、分析し、その改善策も含めて公表することで保護者や地域住民が学校に協力しようと考える、そういうこともあるのではないかと思います。

 そういった点で、県教育委員会では、学校と保護者や地域の皆さんが、ともに知恵を出し合い、学校運営に意見を反映させることで、一緒に協働しながら、子供たちの豊かな成長を支え、地域とともにある学校づくり、これを進めるきのくにコミュニティスクールの推進に取り組まれていますが、その中で学力向上を話題にすることで、学校、保護者、地域住民が協力し合う取り組みへとつながるのではないかと考えますが、教育長の考えをお伺いいたします。

○副議長(森 礼子君) ただいまの佐藤武治君の質問に対する答弁を求めます。

 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 全国学力・学習状況調査の結果については、保護者や地域住民に対して説明責任を果たすことが重要であることから、積極的に公表することを啓発しているところです。現在、30市町村のうち半数の自治体が結果を公表しています。また、ほぼ全ての学校が状況等の説明を行っています。

 議員御指摘のとおり、学力向上の取り組みについては、学校はもとより、家庭や地域の協力を得ることも大切であると考え、取り組みを進めております。本県が推進しているきのくにコミュニティスクールにおいても、学校運営協議会で学力調査の結果を協議し、退職教員等が放課後の補充学習を支援するなど、学力向上にかかわっている取り組みも報告されています。

 教育委員会といたしましては、コミュニティスクールの推進を通して、学校、家庭、地域がそれぞれの役割を分担しながら、学力向上を初め、さまざまな面における子供たちの豊かな成長を支援していきたいと考えております。

○副議長(森 礼子君) 佐藤武治君。

  〔佐藤武治君、登壇〕

○佐藤武治君 今、教育長のほうから、県としては積極的に公表することを啓発して、30市町村のうちで約半数という答弁をいただきました。そしてまた、ほぼ全ての学校については、地域、学校、保護者関係について、状況等の説明を行ってるということでありますが、積極的に公表しているということでありますんで、今後、私は、できたら公表する部分のほうがメリットも大きいんではないかというふうな考えを持ってるわけですけども、そこらひとつ県の教育委員会としてでも十分加味していただいて、今後、今以上の、また公表をするところがふえればいいんかなあというふうには思っておるところです。ひとつ積極的な取り組みをお願いしておきます。

 続きまして、次の質問に入ります。

 この調査結果については、全国平均と同程度の調査結果となっている科目が多くあります。これは、これまでの取り組みの成果が出ているかなというふうには思います。

 しかし、まだまだ課題もあるように考えているところです。そのことについてはどのように考えているのか。その課題の改善に向けた取り組みも含めて、ひとつ教育長にお伺いをいたします。

○副議長(森 礼子君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 調査結果での課題についてでございます。

 本年度の全国学力・学習状況調査の小学校の国語、算数、中学校の数学では、全国平均と同程度の結果となっています。しかし、中学校の国語においては、平均正答率が全国平均を3ポイント下回り、特に文章を読み取る力に課題が見られました。その課題の改善に向け、担当教員を対象に、読解力を身につけさせるための授業研修を充実させています。

 また、生徒質問紙調査結果から、「全く読書をしない」と回答した生徒の割合が高く、読書時間も少ないという課題等があります。読書好きな子供の育成のために、学校司書や学校図書館ボランティア等の協力を得ながら、学校図書館の充実を図ってまいります。

○副議長(森 礼子君) 佐藤武治君。

  〔佐藤武治君、登壇〕

○佐藤武治君 今、教育長の答弁の中から、文章を読み取る力に課題が見られましたと、そして、読解力を身につけさせるための授業研修を充実させていますという、こういう答弁をいただきました。

 つい先日の12月3日であったと思います。経済協力開発機構──OECDといいますけども──そこによる国際的な学力調査の結果が公表されております。それによりますと、今、教育長からも答弁がありましたように、日本の若者の読解力低下が浮き彫りになったということであります。実際に、大学やビジネスの現場で文章を正しく読み取れない、言いたいことを正確に伝えられないという国語力の危機を感じている関係者がいると言われております。

 大手予備校の講師、ある大学の准教授がともに、「原因の一つに、SNSの普及があると考えている」と、こういうふうに言っております。スマホを使って、友人らと短文でやりとりができるLINE、これは単語や略語だけの気軽な話し言葉で通じる。そして、スタンプ、イラストを使えば、感情を言葉にする必要もない。「読書などを通じて正しい日本語に触れる機会が減っている上に、正しく書かなくてもいいという、こういう環境も生まれたことが言葉の乱れにつながっているのでは」と言っております。

 また、日本の15歳の読解力は、前回の8位から15位に急落しました。「国語力の危うさは社会に出てからも問題となる」とも言っています。まさに、私もそのとおりだと感じておるところであります。

 全国学力・学習状況調査の児童生徒質問紙調査における県の状況でも、「本を読んだり借りたりするために図書館に行きますか」という問いに、「ほとんど、または、全く行かない」と回答した割合が、小学校では全国より低い、中学校では全国より高いとされていますが、中学校でも数年前から見ると数字が下がってきているようであります。

 このような課題の改善に向け、さらなる授業改善と学校図書館の充実に取り組むことが大切だと思いますが、よろしくお願いします。

 続いての質問に移らせていただきます。

 私は、この調査の順位にそれほどこだわるほうではないんですが、全国学力・学習状況調査の結果を見ると、上位に来る都道府県が毎年ほぼ決まっているように思います。県教育委員会として、上位に来る県を見習って取り組んでいることはあるのでしょうか、教育長にお伺いいたします。

○副議長(森 礼子君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 学力上位県の取り組みを見習っているかということでございますが、県教育委員会といたしましては、上位と言われている福井県教育委員会で学力向上の取り組みを推進してきた牧野氏を平成27年から3年間、招聘をいたしました。

 その指導のもと、学力向上の取り組みについて、本県教育委員会と市町村教育委員会の連携強化や学力向上プログラムに基づいた検証改善サイクルの確立など、多くの学力向上対策を構築し、現在も続けて取り組んでおります。また、学力調査で好成績を同じくおさめている秋田県に教員を派遣し、授業実践を学ぶ研修も進めています。

 一人一人の子供の確かな学力を身につけさせるために、今後も取り組みを充実させてまいります。

○副議長(森 礼子君) 佐藤武治君。

  〔佐藤武治君、登壇〕

○佐藤武治君 答弁ありがとうございます。

 いわゆる上位の県を見習って、福井県なり秋田県等への先進県に教員等を派遣して研修も行っていただいてるというところであります。

 ただ、これはそれでしっかりと続けていただいたらと思うんですが、勉強に子供たちが取り組むこの姿勢、子供が前向きに勉強に取り組むという、この部分が非常に大事だと思います。そういう意味では、家庭の環境であるとか、家庭の保護者が積極的にやっぱり責任を持って、自分の子供でありますから、少しでも学力向上に向けてのそういう協力といいますか、そこの部分も本当に家庭の役割が大きいと、私はそう思うところであります。

 けさのニュースで見ましたけども、皆さんも御存じだと思いますが、小学校4年生の児童が何か数検の1級に合格したというニュースがありました。この子供さんは、1歳のときに聞いた数字の歌とかいう、そういうものに興味を持って、数学にずっと取り組んできて、数検の合格を目指してきたというふうな、そういうニュースがありました。

 私もちょっと詳しくわからないんですが、2018年の合格率が何か5.7%、超難関の数検に小学校4年生の児童が合格したと。何か書いてる数字を見たら、数字じゃなしに英語というのか、あんなんばっかしで、私は全然理解できなかったんですが、すごいなと。その後押しを多分、その家庭の保護者がされたんだろうなあと、こういうふうに推測するところであります。

 最後に、先ほどは私は順位にはこだわらないと申し上げたんですけども、他の都道府県と比べ極端にやっぱり低いと、保護者も地域もそうでありますけども、学校や教師に何か問題があるのではないんかというふうなことにもなりますから、ある基準以上はしっかりと保たれていくような指導をお願いしたいと思います。

 中学生ともなれば、人間力をつける大事な時期であると考えます。今後、一層の努力をお願いして、この質問を終わります。

 そしたら、次の質問に移らしていただきます。

 9月に、厚労省が全国1455の公立病院や日赤などの公的病院のうち、診療実績が乏しく、再編・統合の議論が必要と判断した424の病院名を公表いたしました。これまでも検討を促してきたが、そういう進んでおらないことから、異例の対応に踏み切ったなと思います。

 高齢化による膨張する医療費を抑制するのが狙いであるとのことですが、本県では、公立・公的の五つの病院が対象と公表されています。そのことで不安に感じている地域住民も多いと思います。実際、紀南で公表されたある地域では、戸惑いや不安、心配される声を聞くことがありました。

 一方で、医師等の医療従事者の確保が困難なため、やむを得ず統廃合を考えなければならない状況も将来的に出てくるのではないかと懸念をしています。特に紀南地域のように、人材の確保が難しい地域は深刻な問題であると考えております。

 医師の確保については、県立医科大学の県民医療枠や地域医療枠などの医師を養成し、地域の公立・公的病院へ配置することで地域医療を担う医師を確保していると聞いていますが、病院の医療スタッフの中心となる看護職員の状況はどうなのでしょうか。私の地元にも公立病院があります。そこも慢性的な看護職員不足で大変であると聞いているところであります。

 日本看護協会の平成29年統計資料で見てみると、看護職員の就労数が順調な右肩上がりになっています。そのため、職員不足と耳にしても、なかなか危機感を覚えにくいかもしれません。

 しかし、看護業界における人材不足が深刻化しているのには理由があります。就業者数に対して人材ニーズが急激に増加していることと、決して低いとは言えない離職率であります。慢性的な人手不足は、1人当たりの業務負荷を増大させ、看護師の離職を招きます。また、ベテランが抜けた穴を経験不足の人材が埋めることで、医療サービスの低下につながるケースも起こってきます。

 日本看護協会が全国の病院8361施設を対象に行った2018年の病院看護実態調査というものがあります。それによりますと、今後の看護職員の総数を「今年度と同じ」、「今年度よりふやす予定」と答えたのが88%に上り、「減らす予定」と答えたのは、わずか3.2%でした。

 また、厚生労働省の第2回看護職員需給見通しに関する検討会では、令和7年になるまでに必要とされる看護職員は約200万人と推測されています。平成29年看護関係統計資料集によりますと、2016年(平成28年)の末時点での看護職就業者総数は約166万人にとどまっています。今後、仮に毎年3万人のペースで増加したとしても、2025年の看護就労見込みは約193万人になり、需要を下回ると予想をされています。

 2018年病院看護実態調査によると、正職員として勤務する看護師の10.9%、新人看護師では7.5%が離職をしているということです。退職率そのものは他の職業と比べて多くはありませんけども、需要に供給が追いついていない中で、この離職率は人手不足に追い打ちをかける要因となっていると言えます。

 主な退職理由で多いのは、人手不足で仕事がきつい、賃金が安い、休暇がとれない、夜勤がつらいなどとなっています。実際に看護業界における人材不足が続くと、1人当たりの業務量がふえて、患者のケア、新人教育、その他雑務における担い手が不足し、患者への安全性が低くなると言われています。

 そこで、まず、県内の看護職員の状況についてお聞きします。

 現在、県内にどれだけの看護職員が働いているのでしょうか。知事は、医療系大学の誘致に熱心に取り組み、新たに看護大学も誘致されましたが、それにより県内の看護職員の養成人数はふえるとしても、県内の看護職員の養成状況はどうなのでしょうか。それで将来的に県内の看護職員は充足するんでしょうか。

 先般、看護職員の需給推計が出されたと聞いています。今回の推計では、超過勤務や有給休暇の取得状況条件を幾つか設定し、需要数を算出されているようですが、その中間的な条件では、全国的な充足状況、県内の充足状況はそれぞれどのようになるのでしょう。福祉保健部長にお伺いいたします。

○副議長(森 礼子君) 福祉保健部長宮本浩之君。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) まず、県内で就業している看護職員数につきましては、看護職員従事者届によりますと、平成30年末時点において1万4705人となっております。また、県内には看護職員の養成校は12校あり、平成30年度に東京医療保健大学和歌山看護学部が開設したことにより、各学校の1学年定員の合計人数は50人増加し、560人となっております。

 次に、将来の需給見込みにつきましては、今年度、国の策定方針に基づき、2025年の医療や介護ニーズ等を踏まえた看護職員の需給推計が全国的に行われたところであり、働き方改革の影響も一定考慮した推計となっております。

 この推計によると、全国では、需要推計数に対し、供給推計数の充足率は92.0%となり、特に東京都や大阪府などの都市部で充足率は低くなっています。一方、本県の充足率は97.1%と全国平均を上回ってはおりますが、需要推計数1万5500人に対し、供給推計数1万5055人となり、約450人不足する結果となっております。

○副議長(森 礼子君) 佐藤武治君。

  〔佐藤武治君、登壇〕

○佐藤武治君 今、答弁いただきますと、30年度に東京医療保健大学和歌山看護学部が開設して、合計人数、1学年50人増加したよということでありますけども、その状況であってでも将来的には約450人不足すると、こういうふうな見通しという話であります。

 質問の2に続きますけども、そうする中で、県内の看護職員は将来的にやはり不足、全国的には大都市圏を中心に大きく不足するということですけども、そういった状況の中で、県は今後どのような確保対策をしていくのでしょうか、福祉保健部長にお伺いいたします。

○副議長(森 礼子君) 福祉保健部長。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) 看護職員の確保対策につきまして、県では、養成力確保、就業促進、離職防止が重要であると考えております。

 まず、養成力確保の取り組みとして、高校生に看護の仕事に興味を持ってもらうために、県内各地の病院で体験学習を開催したり、看護職を目指す学生を対象に、返還免除つきの修学資金の貸与を行っております。

 加えて、教育資材の充実など、確実な看護師の育成につながるような取り組みを行う養成所に対して支援を行っております。

 また、高校生の大学志向が高まる中で、平成30年度に新たに東京医療保健大学和歌山看護学部の誘致を実現し、県内の養成力強化を図ったところです。

 次に、就業促進の取り組みとして、県内の看護学生に対しては、県内医療機関による就職説明会、県外に進学した看護学生に対しては、県内の医療機関の情報提供を行っております。さらに、離職防止の取り組みとしては、病院内保育所の充実を初め、働きやすい勤務環境の整備に努める医療機関に対し支援を行っております。

 なお、離職した看護職員に対しては、医療機関等に関する情報提供や個別相談に加え、復職に向けた実務研修などを実施しているところです。

 今後も、これらの取り組みを総合的に推進し、看護職員の確保に努めてまいります。

○副議長(森 礼子君) 佐藤武治君。

  〔佐藤武治君、登壇〕

○佐藤武治君 今、答弁いただきました中で、それぞれいろんな対策、確保対策をしていただいていると伺いました。

 私、その中で、今、答弁にありましたけども、離職した看護職員に対して復職、こういうところの対応をしっかりとしていただきまして、いわゆる結婚を機にやめたと、その中で子育てが終わったと、そういう方がやっぱりある程度、力を持った方だと思いますので、その方たちへの再雇用というんですかね、そういう部分をしっかりとやはりやっていただくと、少しでも看護師不足を解消する一つのあれになるんじゃないかなと、このように思いますので、ぜひ強力に進めていっていただきたいと、このように思います。要望しておきます。

 それでは、もう最後になりますけども、紀南地域の確保対策、県立看護学校の役割についてというところであります。

 2025年を見据えた国の推計では、近隣の大阪府も看護職員が大きく不足する傾向と聞いていますが、そのことから、今後、都市部へ看護人材が流れ、地方の人材確保がますます難しくなるのではと危惧しておるところであります。県全体の状況では、看護職員は都市部に比べ不足数が少ない結果となっていますが、それも県の北部と南部では状況は異なるのではないかと感じています。

 紀南地方は県内でも少子高齢化がより一層進んでいる地域が多くあり、若い人材の確保が難しい地域であります。東牟婁地域に県立の看護学校がありますが、学生の確保状況や就職状況はどうなっているのか、紀南地域の看護職員をどう確保していくのか、福祉保健部長にお伺いをいたします。

○副議長(森 礼子君) 福祉保健部長。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) まず、新宮市に設置しております県立なぎ看護学校につきましては、地元高校を訪問し、学校の説明などを行うことで、入学定員を確保しております。しかしながら、卒業生の県内への就職につきましては、最近5カ年では約6割程度であり、紀南地域に限ると約3割程度となっています。

 こうしたことから、紀南地域の看護職員を確保するための取り組みとしまして、県立なぎ看護学校の学生を対象に、紀南地域の医療機関を中心とした就職説明会を開催するとともに、紀北地域で開催する就職説明会においても、紀南地域の医療機関に積極的な参加を働きかけております。

 加えて、修学資金貸与制度においても、紀南地域では、返還が免除される就業対象の医療機関の要件を紀北地域に比べ緩和しているところです。さらに、県立なぎ看護学校では、紀南地域の医療機関に魅力を感じ、就職先として考えるきっかけとなるよう、先輩卒業生が地元病院の勤務環境や経験談等について在校生と意見交換をする機会を設けております。

 今後も、紀南地域の医療機関との連携を強化しながら、地域医療の担い手として活躍できる看護職員の確保に努めてまいります。

○副議長(森 礼子君) 佐藤武治君。

  〔佐藤武治君、登壇〕

○佐藤武治君 答弁いただきました。

 特に私は、先ほど言いましたように、紀南地域については非常に確保が難しいというふうには常日ごろから感じて、病院関係者とも話をする機会が多々あるんですけども、やはり本当に大変やったという話を聞いております。で、今回、この件を取り上げさせていただきました。

 今、部長のほうから、かなり紀南については優遇措置をとっているという答弁でございましたので、引き続き、その旨、お願いをいたします。

 今後、高齢化が進む中で、在宅で療養する高齢者の増加も見込まれるところです。訪問看護師など、地域で活動する看護職員の需要も高まってきます。地域に必要な医療を堅持していくため、紀南地域の看護職員の確保について引き続き県の積極的な取り組みをお願い申し上げまして、私の一般質問を終わりたいと思います。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

○副議長(森 礼子君) 以上で、佐藤武治君の質問が終了いたしました。

 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。

 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。

 本日は、これをもって散会いたします。

  午後2時28分散会

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