令和元年12月 和歌山県議会定例会会議録 第2号(全文)


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令和元年12月 和歌山県議会定例会会議録 第2号

議事日程 第2号

 令和元年12月10日(火曜日)

 午前10時開議

 第1 議案第174号から議案第201号まで(質疑)

 第2 一般質問

 

会議に付した事件

 第1 議案第174号から議案第201号まで(質疑)

 第2 一般質問

 

出席議員(42人)

 1番 鈴木德久

 2番 山家敏宏

 3番 中本浩精

 4番 堀 龍雄

 5番 藤山将材

 6番 岸本 健

 7番 井出益弘

 8番 宇治田栄蔵

 9番 北山慎一

 10番 中西峰雄

 11番 秋月史成

 12番 森 礼子

 13番 濱口太史

 14番 尾崎要二

 15番 冨安民浩

 16番 川畑哲哉

 17番 玉木久登

 18番 鈴木太雄

 19番 岩田弘彦

 20番 吉井和視

 21番 谷 洋一

 22番 佐藤武治

 23番 岩井弘次

 24番 中 拓哉

 25番 多田純一

 26番 新島 雄

 27番 山下直也

 28番 中西 徹

 29番 玄素彰人

 30番 谷口和樹

 31番 藤本眞利子

 32番 浦口高典

 33番 山田正彦

 34番 坂本 登

 35番 林 隆一

 36番 楠本文郎

 37番 高田由一

 38番 杉山俊雄

 39番 片桐章浩

 40番 奥村規子

 41番 尾﨑太郎

 42番 長坂隆司

欠席議員(なし)

 

説明のため出席した者

 知事         仁坂吉伸

 副知事        下 宏

 知事室長       細川一也

 危機管理監      森田康友

 総務部長       田村一郎

 企画部長       田嶋久嗣

 環境生活部長     田中一寿

 福祉保健部長     宮本浩之

 商工観光労働部長   稲本英介

 農林水産部長     角谷博史

 県土整備部長     髙松 諭

 会計管理者      飯島孝志

 教育長        宮﨑 泉

 公安委員会委員長   中野幸生

 警察本部長      檜垣重臣

 人事委員会委員長   平田健正

 代表監査委員     保田栄一

 選挙管理委員会委員長 小濱孝夫

 

職務のため出席した事務局職員

 事務局長       中川敦之

 次長         中谷政紀

 議事課長       松山 博

 議事課副課長     山田修平

 議事課議事班長    岸裏真延

 議事課主任      保田良春

 議事課主査      伊賀顕正

 議事課主事      浅田晃秀

 総務課長       井邊正人

 政策調査課長     中平 博

 

  午前10時0分開議

○議長(岸本 健君) これより本日の会議を開きます。

 日程に先立ち、諸般の報告をいたします。

 過日提出のあった議案第178号から議案第181号まで及び議案第187号から議案第189号までは、いずれも職員に関する条例議案でありますので、地方公務員法第5条第2項の規定により人事委員会の意見を徴しましたところ、文書により回答がありました。また、監査委員から監査報告及び現金出納検査実施結果の報告がありました。いずれもお手元に配付しておりますので、御了承願います。

 日程第1、議案第174号から議案第201号までを一括して議題とし、議案に対する質疑を行い、あわせて日程第2、一般質問を行います。

 19番岩田弘彦君。

  〔岩田弘彦君、登壇〕(拍手)

○岩田弘彦君 皆さん、おはようございます。

 令和元年12月定例会質疑・一般質問、トップバッターというこの光栄な機会を与えていただきました先輩・同僚議員の御配慮に心から感謝申し上げまして、精いっぱい頑張らしていただきますので、どうかよろしくお願いいたします。

 ただいま議長のお許しをいただきましたので、質問に入らせていただきます。

 まず初めに、台風19号及び前線による暴風雨で県内でも防潮護岸の倒壊や農林水産業に被害が発生しておりますが、東日本を中心とした各地で多くの家屋が洪水や土砂災害により被災されました。お亡くなりになられた方々に御冥福をお祈りいたしますとともに、被害に遭われた地域の一日も早い復興を心よりお祈り申し上げまして、質問に入らせていただきます。

 大項目1番、令和2年度当初予算編成に向けた基本姿勢について、(1)令和2年度の新政策についてお伺いいたします。

 我が国の経済は、雇用・所得環境の改善が続き、緩やかに回復している一方で、景気回復の長期化や少子高齢化もあり、企業の人手不足感が大きく高まっております。厚生労働省の労働経済動向調査から企業の人手不足感を見ると、平成30年において常用労働者が不足していると答える企業の割合は全体で49%であり、さらに、これを企業規模別に見たところ、常用労働者が1000人以上の企業では40%であるのに対して、1000人未満の企業では半数を超えていることから、特に中小企業での人手不足感が強くなっております。

 また、第4次産業革命の到来、キャッシュレス決済などの世界的なデジタル化の流れ、人口減少に伴う生産性と成長力の伸び悩み、地方経済の活性化、大規模自然災害の勃発、持続可能な社会保障制度や財政構造の確保など、我が国が直面する大きな変化や喫緊の課題は数多くあります。

 安倍内閣は、これらの課題に対応するため、子供たちや子育て世代に大胆に投資して幼児教育・保育料の無償化、真に必要な子供たちの高等教育の無償化を実現するとともに、これまでの雇用制度や社会保障制度全体を見直し、誰もが幾つになっても安心して活躍できる全世代型社会保障へと改革を進めております。また、ソサエティ5.0時代に向けた人的、物的投資を一層喚起し、生産性を飛躍的に向上させることにより、潜在成長力を引き上げ、成長力の強化を進めることとしています。

 さきの台風15号や台風19号を初めとした一連の暴風雨では、全国的に被害を受けましたが、とりわけ東北や関東、甲信越を中心に甚大な被害が発生し、多くのとうとい命が奪われるなど、改めて自然災害の脅威を思い知らされました。

 特に本県においては、このようなたび重なる台風や集中豪雨による被害だけでなく、起こる確率が高まっている南海トラフ地震や、それに伴う津波を初めとする大災害に備え、国土強靱化を推進する重要性は言うまでもありません。

 さらに、少子高齢化と人口減少が全国よりも速いペースで進み、企業の99.9%が中小企業で占められていることから、政府が推し進める改革は当然のことながら本県にとって非常に重要なもので、まさに待ったなしの状況と言って過言ではありません。

 本県を取り巻くさまざまな課題に対し、県としては、平成29年3月に策定した長期総合計画に基づき、さまざまな施策を取り組んでいるとは承知しておりますが、計画の進捗状況も考慮しながら毎年度の新政策プロセスを通じ既存事業を見直すとともに、新たな政策を展開していく必要があると思います。

 そこで、まずは令和2年度新政策の基本的な考え方について、知事にお伺いします。

○議長(岸本 健君) ただいまの岩田弘彦君の質問に対する答弁を求めます。

 知事仁坂吉伸君。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 議員御指摘のとおり、全国より早い流れで少子高齢化、人口減少が進む本県において、これまで持続可能で元気な和歌山県を実現するため、長計を立てて、これに従い、子育てや教育環境を充実させるとともに、公共インフラの整備や新しい産業振興策など、さまざまな政策を講じてまいりました。

 しかしながら、人口減少は依然として深刻でありまして、さまざまな課題も未解決のものもたくさんございます。加えて、労働力不足、プラごみのような環境対策、少子化対策の新展開といった、特に注意を向け対策を急がなければならないような問題が重大な局面を迎えているというふうに認識しております。

 そこで、特に喫緊の五つの視点を重点事項として、令和2年度の新政策として取り組んでいきたいと考えております。

 まず一つ目は、子供を安心して育てる環境を充実するため、引き続き、紀州っ子いっぱいサポートによる経済的支援や保育人材の確保、保育所等の整備を進めるとともに、困難を抱える子供たちへの学習環境を整備していきたいと考えております。

 二つ目は、労働力不足を解消するため、IoT、ロボットの設備導入により県内企業や農林水産業での省力化を促進していく。さらに、高校生や大学生の県内企業への就職支援や農林水産業での労働力の確保を図るとともに、多様で柔軟な働き方を可能とするテレワークを推進していきたいと考えております。

 三つ目は、小型ロケット射場を核とした誘客や宇宙産業の振興を推進するとともに、IRの誘致に引き続き取り組んでまいりたいと思います。また、ICT企業の誘致とその集積を促進させ、新産業の創出や先端技術の導入を加速化してまいりたいと思います。

 四つ目は、県民の命と快適な暮らしを守るため、全国トップクラスの防災対策に磨きをかけつつ、これからも推進するとともに、医療提供体制の確保や健康づくりに向けた取り組み、プラスチックごみ対策の強化を図ってまいりたいと思います。

 五つ目は、紀伊半島一周高速道路の実現を初めとする道路ネットワークの早期整備を推進するとともに、人の流れをつくる移住・定住大作戦を強化することで、地域の魅力を高めてまいりたいと考えております。

 これらを含めた新たな施策につきましては、鋭意検討を重ねているところでございまして、議員の皆様を初め市町村の御意見等も踏まえた上で来年度予算案を作成し、2月県議会に提案をさしていただきたいと思います。

○議長(岸本 健君) 岩田弘彦君。

  〔岩田弘彦君、登壇〕

○岩田弘彦君 知事、県民の皆さんは期待していると思いますので、すばらしい来年度予算、出していただきますようによろしくお願いいたします。

 次に、財政運営についてお伺いいたします。

 少子高齢化と人口減少が全国よりも速いペースで進み、企業の99.9%が中小企業で占められている状況でもあることから、当然のことながら、本県の財政状況は非常に厳しいものがあるのではないかと県民の皆さんは思われているんではないでしょうか。

 そこで、新たな政策を進めていく一方で、財政の健全性を損なわないような財政運営を行っていくことが重要であります。

 これまでも知事は、新政策を積極的に推進しつつ、同時に県財政の健全性も確保するよう取り組んでこられてきたと思いますが、来年度の予算編成に向け、どのような財政運営をされようとしているのか、知事にお伺いします。

○議長(岸本 健君) 知事。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 財政運営につきましては、先ほど申し上げました新たな施策を着実に実施していくため、財政の健全性を同時に確保していく必要がございます。

 大体、施策を検討しておりますと、あれもやりたい、これもやりたい、全部やりたい、こういうふうになるんでございますが、そうなるといろいろとあちこち支障が出たり、横並びがおかしくなったり、いろんなことが起こりますので、全体の財政の健全性も考えて、取捨選択をしたり優先順位をつけたりしているところでございます。

 このため、特に財政の健全化という観点からは、令和3年度までの5年間の中期行財政経営プランを平成29年3月に策定いたしまして、財政運営に関しては、社会保障関係経費が増加する中、新たな施策の展開も図っていくため、人員体制の見直しや事業の見直しによる財源確保に全庁を挙げて取り組んでいるところでございます。

 また、自然災害等不測の事態に備えるため、プラン期間中、財政調整・県債管理基金については、少なくとも150億円を維持する方針をお示ししておるところです。

 このプランに従って、県庁の我々自身をみずから縛ると言ったらおかしいんですが、たがをはめながら、放らつな財政運営をしないように心がけております。

 昨今の本県経済は、緩やかな回復基調を維持しているものの、先行きについては通商問題の動向や海外経済の不確実性、消費税率引き上げ後の消費者マインドの動向等に留意する必要もございます。

 このような中、来年度の予算編成は、もちろん引き続き県税を初めとした歳入の確保に努めなければなりませんが、中期行財政経営プランの方針に基づきまして、国の予算編成の動向にも留意しながら、スクラップ・アンド・ビルド等の事業見直しの徹底、既存事業についてはマイナス5%のシーリングの実施によりまして、新たな施策の展開と、それから持続可能な行財政運営の両立に努めてまいりたいと考えております。

○議長(岸本 健君) 岩田弘彦君。

  〔岩田弘彦君、登壇〕

○岩田弘彦君 施策展開はきちんとして、そして財政の健全化は保つよということで、毎回それについては健全性も保たれた中で、的確に将来のための投資、そして活性化のための投資という考え方で新政策を出していただいてる知事ですので、また2月議会、大いに期待さしていただいておりますので、どうかよろしくお願いします。

 大項目2、IR誘致について、(1)事業用地の提供方法について質問さしていただきます。

 統合型リゾート(IR)は、成長戦略の一つとして我が国の観光立国政策に貢献するとともに、本県における新たな産業の創造や観光振興、地域振興、雇用拡大、財政改善、さらには人口減少の抑制など、将来の本県の発展に多大な貢献をもたらすことが期待できるものであります。このことから、去る令和元年9月定例会において、統合型リゾート(IR)の誘致に関する決議がなされ、県議会も当局と一丸となって誘致に取り組む姿勢を全国に向けて発信したところであります。

 IR誘致をめぐる全国の状況については、国土交通省が全ての都道府県と政令指定都市を対象に、IRの認定審査の意向に係るアンケート調査を実施いたしました。9月24日に発表された調査結果によると、8地域9団体が認定申請を予定または検討していると回答したとのことであります。本県のように既に申請の意向を表明している大阪府市、長崎県、横浜市のほか、北海道、千葉市、東京都、名古屋市においても申請の可能性が示されました。このうち北海道については、11月29日に鈴木知事が誘致を見送る方針を表明されましたので、現在は7地域8団体となっております。

 特定複合観光施設区域整備法では、国内で3カ所までIRの設置を認めており、今後、これらの7地域8団体を中心に激しい誘致競争が行われていくことになるわけであります。

 そのような中、最近は大阪や横浜などに比べ、マスコミへの露出が少ないなあと感じておりましたが、先般、県が事業用地の和歌山マリーナシティを購入するというニュースが流れ、今定例会においてIR推進のための不動産購入として76億8601万9000円の債務負担行為が上程されております。

 そこで、事業用地の提供方法についてお聞きいたします。

 和歌山マリーナシティにおける事業用地はほとんどが民間所有となっております。IRは民設民営事業であることから、本来であればIR事業者と土地所有者との協議で土地の提供方法については合意すればいいことだと思いますが、なぜ県が事業用地を購入しなければならないのか。

 また、購入する事業用地の面積はどの程度で、その価格はどのように算定し決定されたのか。

 あわせて、事業用地の購入は事業者が選定された後のことになるのではないかと思いますが、債務負担行為としてこの12月定例会に上程する理由は何なのか。

 また、その事業用地は実際にいつ購入することになるのか。

 以上4点について、企画部長にお伺いします。

○議長(岸本 健君) 企画部長田嶋久嗣君。

  〔田嶋久嗣君、登壇〕

○企画部長(田嶋久嗣君) IR整備法におきまして、国に認定申請するための区域整備計画を共同して作成する民間事業者の選定については、公募の方法により行うよう明示されており、また、国の基本方針案では、その公募を実施するに当たって、事前に県が策定する実施方針でIR区域の敷地面積及び土地代金を記載することが求められております。

 議員御質問の県が土地を購入する必要性につきましては、IR事業者の公平かつ公正な選定の観点から、いかなる事業者も同条件で土地を取得できるようにするため、県が一旦事業用地を購入し、選定した事業者に購入金額と同じ価格で売却することとしたものでございます。

 購入する土地の面積につきましては、IR事業用地として予定している約24万平方メートルのうち、県有地でない民間所有の部分で公簿面積が20万9428.30平方メートルとなっております。

 また、土地価格につきましては、不動産鑑定士による鑑定評価をもとに、1平方メートル当たり3万6700円の総額76億8601万8610円とし、この価格につきましては、和歌山県公有地価格審査会にて「適当である」との御意見をいただいているところです。

 今議会に債務負担行為を上程させていただいたのは、来年1月に予定されている国の基本方針の決定を受けて、速やかに実施方針の公表を行うためでございます。

 また、今議会で補正予算案をお認めいただければ、区域認定された後に売買の効力が発生する停止条件つき売買契約の議案を来年の2月議会に上程させていただく予定としております。

 なお、区域認定が2021年以降になる見込みであるため、債務負担行為とさせていただいております。

○議長(岸本 健君) 岩田弘彦君。

  〔岩田弘彦君、登壇〕

○岩田弘彦君 答弁ありがとうございます。

 企画部長から答弁いただいて、公正公平な事業者選択の観点から事業用地を一旦購入する必要性があるということで、その点についてはよくわかりました。

 IRの事業者から見ても、やっぱり事業用地の価格が決まってなかったらなかなか計画も立てにくいだろうということで、それも理解できます。また、一番心配していたのは、県が費用負担することにならないのかという、やっぱり一番心配しますので、これは停止条件つきであるということでございますので、県が土地を購入する、一旦するけれども、業者にまた売却するということですので、県としての費用負担をすることはないという答弁でしたので、それについては安心いたしました。

 次に、今後のスケジュールについてお聞きいたします。

 9月に国の基本方針案が公表され、その中で検討中とされていた区域認定の申請期間についても、2021年1月4日から同年7月30日までとする案が11月に示されたところであります。

 国から申請期間案が示されたことを踏まえて、県は認定申請までの具体的なスケジュールをどのように考えているのか、企画部長にお伺いします。

○議長(岸本 健君) 企画部長。

  〔田嶋久嗣君、登壇〕

○企画部長(田嶋久嗣君) 現在、県では、和歌山県IR基本構想をもとに実施方針の策定を進めているところです。

 議員御質問のスケジュールにつきましては、来年1月に国の基本方針が決定されれば、春ごろまでには実施方針を公表して事業者公募に入り、秋ごろには事業者を選定する見込みとしています。

 その後、事業者と共同して区域整備計画を作成し、パブリックコメントの実施や和歌山市の同意などの手続を経た上で県議会の御議決をいただき、国が示す区域整備計画の認定申請の受け付け期間内に申請できるよう準備を進めてまいります。

○議長(岸本 健君) 岩田弘彦君。

  〔岩田弘彦君、登壇〕

○岩田弘彦君 答弁ありがとうございます。

 与えられた条件、大体出てきましたので、その中で最大の努力ということで、よろしくお願いしときます。

 次に、IR誘致の実現に向けて質問さしていただきます。

 本県の統合型リゾート(IR)は、圧倒的に大都市圏が有利であるにもかかわらず、与えられた条件のもと、地域の魅力を最大限に生かし、創意工夫をもって民間投資を呼び込み、正々堂々と取り組んでいると思います。当然、和歌山県が国際競争に勝ち抜き、大きな経済波及効果を巻き起こし、本県の発展に多大な貢献をもたらす大きな起爆剤として大きく期待できるからであると思います。

 また、現在、国が進めている地方創生の観点からも、本県の取り組みは大きく貢献するものであると思います。和歌山県の将来のため、日本の地方創生のためにも、必ずや実現させなければならないと私は思います。

 現在、大阪府市は、国の基本方針が出される前に実施方針案を公表し、年内にも事業者募集を行う予定であるなど、法的手続を繰り上げて実施しているようであります。大阪府市だけでなく、今後は自治体間の競争がより一層激しくなることが想定されます。

 そこで、国から3カ所の一つに選定され、実現に向かう知事の意気込みを改めてお聞きいたします。

○議長(岸本 健君) 知事。

  〔仁坂吉伸君、登壇〕

○知事(仁坂吉伸君) 大阪府市はいろいろ事情がおありなのか、前倒しで手続を行っておりますけれども、最終的には国の定めたスケジュール、手続に従ってしか物事は決まらないわけでございます。例えば、実施方針を先に公表したからといって、基本方針とちょっと矛盾したところがあったら、それは意味がないわけで、多分直さないといけないということになるわけでございます。

 和歌山県についてはそんな必要はないわけでございますので、きちんと法的手続にのっとった上で最速の準備をしていったらいいというふうに思います。

 来年1月には国の基本方針が決定されまして、区域認定に向けていよいよ自治体間の競争が本格的に始まるわけでございますが、つまるところ、どれだけよい区域整備計画をつくれるかということに尽きるわけでございます。

 県としては、3カ所の中に選ばれるために、地域の合意形成を図りながら、来年秋ごろに選定する事業者とともに、地域振興に大きく貢献し、国の観光立国政策に資するような、つまり法律が求めるようなすぐれた区域整備計画の作成に全力を挙げる所存でございます。

○議長(岸本 健君) 岩田弘彦君。

  〔岩田弘彦君、登壇〕

○岩田弘彦君 すばらしい計画つくっていただいてというのが一番肝心やと思いますので、まずそれをしていただいて、やっぱりこれにつきましてはもう知事を先頭に、和歌山県選出の国会議員さんも県議会も県民の皆さんももう一丸となって取り組んでいって、選定されるように頑張っていくべきものやと思いますので、まずは知事がええ計画をつくっていただくことが肝心でございますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、次、大項目3番、児童虐待防止対策の強化、(1)児童虐待に関する法改正について質問さしていただきます。

 児童虐待については、児童相談所への児童虐待相談対応件数が年々増加の一途をたどっており、子供の命が失われるといった重大な事件も後を絶たないなど、依然として深刻な社会問題となっています。児童虐待により子供が傷つけられ、時には命を失うようなことは決してあってはならないと、非常に胸が痛む思いであります。

 国においては、こうした状況を深刻に受けとめ、児童虐待防止対策のための制度改正や緊急総合対策を初めとしたこれまでの取り組みの実施について改めて徹底するとともに、児童虐待防止対策のさらなる強化を図るため、本年6月、児童虐待防止対策強化のための児童福祉法の改正案など、全会一致で可決され、一部を除き、来年4月より施行されます。

 主な改正点を挙げてみますと、親がしつけに対して体罰を加えることを禁止する、子供の安全確保を最優先とした適切な一時保護や施設入所等の措置の実施及び解除、子供の一時保護をする職員と支援を行う職員を分ける、児童相談所には医師と保健師を配置する、都道府県や児童相談所に虐待した親への再発防止の指導を努力義務と定める、引っ越しした場合に児童相談所間で速やかに情報共有することを規定する、学校や教育委員会、児童福祉施設に対して守秘義務の徹底を行う、子供を戒めることを認めた民法上の懲戒権も施行後2年をめどにあり方を検討するなどとお聞きしております。

 また、本県においても、平成25年に痛ましい死亡事案が発生しております。このようなことを二度と起こさないようにと、弁護士、学識経験者など外部の方々で構成する検証委員会を立ち上げて客観的に検討いただき、平成26年4月に報告書を広く公開しました。

 本県では、児童虐待を社会全体で取り組むべき重要な課題であると位置づけ、市町村、関係機関、地域住民と協力し、発生予防から早期発見、早期対応、社会的養護体制の充実、家族の再統合や自立の支援、また、地域において子育てや家庭への支援の充実、児童を虐待から守るための総合的な対策を推進する和歌山県子ども虐待防止基本計画を策定し、オール和歌山で先進的に取り組んできていると思います。

 そこで、県では、これまで児童虐待の防止にどのように具体的に取り組んできたのか、また、来年4月の改正法の施行を受けて、今後どのような姿勢で取り組んでいくのか、福祉保健部長にお伺いします。

○議長(岸本 健君) 福祉保健部長宮本浩之君。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) 児童虐待については、児童の安全を最優先に、初期対応から児童の家庭復帰後の市町村の見守り支援まで、切れ目なく対策に取り組んでいるところです。

 児童相談所や市町村に児童虐待通告があった場合は、速やかに児童の安全確認を行い、一時保護や児童養護施設等への入所措置等が必要な事案は専門的知識、技術を有する児童相談所が対応し、家庭での児童の安全が確保できないと判断された場合は、ちゅうちょなく一時保護を実施しています。

 一時保護や措置を行った場合は、虐待を行った保護者に対して、明確かつ詳細な援助方針を作成した上で、子育ての方法や親自身のストレス管理の学習、児童福祉司による家庭への助言、指導などの支援を行うなど、家族再統合に向けた取り組みを行っているところです。そして、児童が施設等から家庭復帰する際は、事前に地元市町村などと十分に協議し、民生・児童委員や学識経験者等で構成する措置専門部会に意見を求め、より慎重な判断をすることとしています。

 児童の家庭復帰後は、児童相談所の支援のもと、地元市町村が主体的に見守りを行うなどしているところですが、昨年度このような役割分担を改めて明確化した和歌山の子・みまもり体制に関する協定書を全市町村と締結し、地域での見守り体制を一層強化したところです。

 今後もこうした取り組みを継続するとともに、児童福祉法の改正の趣旨を踏まえ、虐待対応を適切に行うため、児童相談所において専門職員等の体制強化や介入的対応と保護者支援を行う職員の役割分担による効果的な支援の実施などにより、児童虐待防止対策の一層の強化を図ってまいります。

○議長(岸本 健君) 岩田弘彦君。

  〔岩田弘彦君、登壇〕

○岩田弘彦君 和歌山県の場合、私は全国でも割と先進的に頑張って取り組んでるほうやと思います。そうであっても、また法改正をきちんと理解していただいて、さらなるということで。ただ、決して命を失う子供が出ないように頑張っていただくということでございますので、知事も「二度と」って言うてますんで、絶対にないようによろしくお願いいたします。

 それでは、2番、児童相談所の体制強化について質問さしていただきます。

 児童虐待発生時の迅速・的確な対応を行うためには、児童相談所の体制強化が重要と考えます。児童虐待防止対策の強化については、以下のことが示されております。

 一時保護等介入的対応を行う職員と支援を行う職員を分けるなど、児童相談所における機能分化、次に、児童相談所において常時弁護士による指導または助言のもとで対応するための体制整備、児童相談所における医師、保健師の配置、児童福祉司、児童心理司などの計画的な増員と人材確保などがあります。そのほか、一定の人口規模のある都市部においては、特に支援の網の目を細かくし、関係機関が迅速に対応する必要性が高いことや、子育て支援から要保護児童施策まで一貫して児童福祉施策の実施が可能となることや、さらに、保健所が設置されている保健福祉にわたる総合サービスの提供も可能となることから、中核市の児童相談所の配置促進なども示されているようであります。

 これらの中でも、児童の安全を確保するためには、介入的機能と支援を分けることは有効であると考えます。また、児童相談所の体制強化をさらに進めていく必要があると思いますが、どのように取り組むのか、福祉保健部長にお伺いします。

○議長(岸本 健君) 福祉保健部長。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) 児童相談所では、児童虐待の対応において、主に一時保護等の介入的対応と家族再統合等の保護者支援の二つの役割を担っていますが、これを同じ職員が担当すると、介入的対応により親との関係が難しくなることを職員が意識する余り、強制的な介入をちゅうちょするケースがあり得ること、また、介入後の保護者支援が困難になる場合があることが全国的に指摘されています。

 そこで、今回の法改正では、来年度から介入的対応と保護者支援を担当する職員を分けることとされており、本県においても改正を踏まえた対応を行ってまいります。

 次に、児童相談所の人員体制については、急増する児童虐待に対応するため、平成26年度から令和元年度までの5年間で、児童相談の中核的な役割を担う児童福祉司8名を増員するとともに、平成23年度から現役警察官を、平成26年度から常勤弁護士を配置するなど、全国に先駆けた取り組みも実施し、国の定める基準を上回る配置をしているところです。

 さらに、今回の法改正などにより、令和4年度までに児童福祉司や児童心理司のさらなる増員や医師、保健師の配置が求められていることから、こうした専門職員の採用、配置を計画的に進め、年々複雑・困難化する児童虐待事案に対応するための人員体制を整備してまいります。

○議長(岸本 健君) 岩田弘彦君。

  〔岩田弘彦君、登壇〕

○岩田弘彦君 人員体制も強化して取り組んでいくということで、やっぱり児童相談所の皆さんはもう多忙で本当に御苦労されている。児童虐待だけを扱ってるんではないんですから、いろんなことを扱ってるんで、それは重々わかっておりますが、やっぱり児童相談所がかなめでございますので、どうか人員の充実とか、そして配置の充実とか、その辺も考えていただいて、子供の命を守っていただきますようによろしくお願いいたします。

 続いて、(3)連携・役割分担、市町村の体制強化についてであります。

 児童虐待を社会全体で取り組むべき重要な課題であると位置づけ、発生予防から早期発見、早期対応、社会的養護体制の充実、家族の再統合や自立の支援または地域における子育て家庭への支援の充実など、児童を虐待から守るための総合的な対策をオール和歌山で取り組むためには、市町村との連携、役割分担を初め、市町村の体制強化も非常に重要であると思います。

 国の児童虐待防止対策の強化において、2022年度までに子ども家庭総合支援拠点の全市町村への配置なども示されておりますが、市町村との連携、役割分担、市町村の体制強化についてどのように考えているのか、福祉保健部長にお伺いします。

○議長(岸本 健君) 福祉保健部長。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) 児童相談所と市町村との役割分担、連携については、先ほども申し上げたとおり、児童虐待事案で一時保護等が必要とされるものは児童相談所が、在宅での支援が可能なものは市町村が対応するなどの役割分担について改めて明確化するため、昨年度、全市町村と協定を締結し、地域での相談支援体制を一層強化したところです。

 また、児童虐待の未然防止、早期発見、相談対応などを効果的に行うためには、住民にとって最も身近な市町村において、子供がいる家庭の実態把握、子育て全般に関する相談への対応、要支援家庭に対する家庭訪問等による継続的支援など、子供に関する相談支援を行う体制を充実することが必要です。

 こうした業務は、これまでも市町村が行ってきたところですが、より専門性を高めるため、社会福祉士や保健師等の専門的資格を持った職員または児童と家庭の相談に応じるために必要な知識を獲得するための講習会を受講した職員を配置する子ども家庭総合支援拠点を、令和4年度までに全市町村で設置することとされています。

 県においても、市町村に対して子ども家庭総合支援拠点の意義や設置に向けた手続などを説明する研修会の実施や専門職員の採用、配置の呼びかけ、所定の講習会の開催などを行い、できるだけ早期に各市町村が拠点を設置できるよう働きかけているところです。

 県としましては、児童虐待の対応に当たっては、市町村が子ども家庭総合支援拠点を設置し、専門性のある支援を住民に対して行えるよう職員の資質の向上を図ることが不可欠であると考えており、今後も引き続き市町村に対し技術的な支援を行ってまいります。

○議長(岸本 健君) 岩田弘彦君。

  〔岩田弘彦君、登壇〕

○岩田弘彦君 市町村との連携、そして市町村の強化というのは僕も非常に大事やと思うんで、一番身近なところなんで。これは市町村に頑張ってもらわなあかんことなんですけど、一例を挙げますと、鹿児島県の事例が非常に気になってるんです。

 児相と警察と、そして市町村の担当者が、今住んでる市じゃなくて前の鹿児島県内の市に住んでて、その人が転居して次の新しい市へ行ったと。その市で一応経過措置みたいな感じで連絡は行ってたんですよ。行ってたんですけど、市町村がその後を見てたという形で、市町村の担当者がそこへ状態を見に行ったんです。その次の日にその子は亡くなってるんですね。

 前の市のときは、児相と市町村が一緒になっていって、やってたと。そのときは異常はなかったんですけど、まだ継続になってたんで、その後の見守りみたいな感じやって、ほかの市へ移って、市だけが行ったときには次の日にそういう事態が起こったということなんで、やっぱり市町村さんにも頑張ってもうてやっていっていかなければいけない部分もあるんで、そのためにはやっぱり市町村も人材配置も大変やと思うんです。それと指導もやっぱりしたってもうて、だから県と市がもう一体となって取り組むというスタイルというのが一番大事かなあって思いますので、その辺十分考慮していただいてよろしくお願いいたします。

 それでは、大項目4番、紀の川流域の浸水被害対策について、(1)紀の川の県内上流域の浸水被害対策についてお伺いいたします。

 平成29年10月の台風21号に伴う豪雨により紀の川沿川の各地で甚大な浸水被害が発生したことから、浸水被害の軽減に向けて、国に対する地元国会議員からの働きかけを初め、県議会からの意見書の提出や、県、関係市町による積極的な要望活動が行われました。

 この動きを踏まえ、国土交通省は、紀の川沿川の各地域における浸水被害に関する情報提供や今後の浸水対策について、効果的かつ効率的な整備につなげることを目的とし、国、県、関係市町を構成機関とする紀の川流域における浸水対策検討会を平成30年1月に設置しました。

 その後、当検討会において各市町単位でワーキングを実施し、国、県、関係市町の連携のもと、浸水被害の軽減に資する具体的な対応策について検討を進めていると聞いております。

 また、県当局からも、紀の川本川の計画的な河川整備の加速化を初め、流下断面の確保や支川排水の円滑化に資する河道内樹木の伐採、円滑な流下を阻害する堆積土砂の撤去などについて強く国に働きかけるとともに、当該検討会の結果を踏まえて、必要に応じてさらなる支援を国に働きかけていただいております。この動きに、地元県民は大きな感謝と大きな期待をしているところであります。

 本県では、昨年度から記録的な集中豪雨、気温上昇など、気候の急激な変化に対応し、大規模自然災害等に備える河川の改修や砂防対策、ため池の改良など、「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」として集中的に取り組んでおります。

 そうした中ではありますが、本年の台風15号、19号を初めとした一連の暴風雨では全国的に被害を受けました。とりわけ東北、関東、甲信越を中心に甚大な被害が発生し、多くのとうとい命が奪われるなど、改めて自然災害の脅威を思い知らされました。それゆえに、地元県民はより一層の浸水被害対策に大きく期待していると思います。

 そこで、紀の川の県内上流域の浸水被害対策の進捗状況と今後の取り組みについて、県土整備部長にお伺いします。

○議長(岸本 健君) 県土整備部長髙松 諭君。

  〔髙松 諭君、登壇〕

○県土整備部長(髙松 諭君) 紀の川の県内上流域の浸水被害対策に関しまして、御質問いただきました。

 平成29年10月の台風第21号による出水以降、県では、紀の川本川の計画的な河川整備の加速化を初め、流下断面の確保や支川排水の円滑化に資する河道内樹木の伐採、円滑な流下を阻害する堆積土砂の撤去について、国に対して継続的に要望してきたところでございます。一方、全国的にも、平成30年7月豪雨、平成30年台風第21号等により、これまで経験したことのない事象が起こり、重要インフラの機能に支障を来すなど、多大な影響が発生いたしました。

 これを受けまして、国民の生命を守る重要インフラがあらゆる災害に際してその機能を発揮できるよう、全国各地で緊急点検が行われました。緊急点検の結果、特に緊急に実施すべき対策は3年間で集中的に実施することとされ、これらは平成30年12月に「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」として取りまとめられました。

 この点検は紀の川も対象となっておりまして、紀の川の河川管理者でございます国土交通省による点検に際しましては、県や市町の要望も踏まえて行っていただきました。このため、紀の川に関する緊急対策には、県や市町の要望も反映されたところでございます。

 幾つか具体例を申し上げますと、河川整備は下流から整備を進めることを基本としていることから、着手までに時間を要するとされておりました小田狭窄部につきまして、下流に負荷を与えない範囲内で堰上流の河道掘削が先行的に実施されました。また、川の中で木が生い茂っていたり土砂が堆積していたりして、川の流れが妨げられているのではないかとの心配の声がありました橋本市の南馬場地先や高野参詣橋付近では、樹木の伐採が行われているほか、堆積土砂の撤去も行われておりまして、国において着実に取り組んでいただいているものと認識しております。

 県といたしましては、さらに直轄事業の促進が図られ、その効果が早期に上流域へ波及するよう国に強く働きかけますとともに、事業の円滑な進捗が図られるよう市町とも連携しながら、引き続き国に協力してまいりたいと、このように考えております。

 また、あわせまして、市町に対しましても、河川への流出抑制等の事前防災対策につきまして検討していただくよう促してまいりたいというふうに考えております。

○議長(岸本 健君) 岩田弘彦君。

  〔岩田弘彦君、登壇〕

○岩田弘彦君 答弁ありがとうございました。詳しく答弁いただいてありがとうございます。

 ここで私、思うことは、やっぱり国、県、市が一丸となって、これは大きな川ですので、その流域も含めて取り組んでいかなあかんと思いますので、市町村にも頑張っていただく、国にも頑張っていただく、県も頑張っていただくとなれば、間に入るのは僕、県やと思いますので、県がやっぱり両方のバランスをとって上手にやっていただくというのが一番整備も進むしスピード感もあるし確実にできると思いますので、どうか県土整備部長、よろしくお願いいたします。

 次、(2)番、堤防の越水対策についてお伺いします。

 ことしは、浸水被害の脅威を改めて思い知らされました。台風19号の大雨で千曲川の堤防決壊によって川の水が一気に流れ込み、新幹線の車両基地が水没している映像がたびたびテレビ放映されました。決壊したのは長野県長野市穂保地区の千曲川左岸の堤防で、1984年に完成し、2007年に幅を7メートルから2倍以上の17メートルにまで広げる工事をしていたと報道されておりました。

 国土交通省によると、長さ約70メートルにわたり決壊するに至った主な要因は、越水で堤防の住宅側が削られ水圧に耐えられなくなった、いわゆる越水決壊とのことでありました。

 ところで、紀の川の堤防整備は計画的に行われているとお聞きしております。しかし、危機感を強く持ったのが、整備はされているが、一目でわかるような堤防高の低いところであります。特に橋本市の中心部の紀の川右岸堤防、橋本中央中学校横、延長約300メートル区間です。紀の川重要水防箇所調書においても、危険度ランクAであります。

 この地点に水が集中し、越水したと仮定した場合、橋本市の中心部が甚大な被害を受けるとともに、重要施設である伊都振興局、橋本警察署、橋本市役所、橋本消防署、橋本市保健福祉センターは全て短時間で確実に水没します。このような事態になると、橋本市は壊滅状態となり、伊都郡にまで多大な影響を及ぼします。このことにつきましては、特に千曲川の決壊以降、多くの地元県民の皆様から心配と不安の声をお聞きいたします。

 昨今、記録的な豪雨台風、集中豪雨、線状降水帯など、気象の急激な変化などを考えると、緊急的な対応が必要と考えますが、県土整備部長の御所見をお伺いします。

○議長(岸本 健君) 県土整備部長。

  〔髙松 諭君、登壇〕

○県土整備部長(髙松 諭君) 橋本市中心部の紀の川の右岸堤防に関する御質問をいただきました。

 岩田議員御指摘のとおり、橋本中央中学校に面しました紀の川右岸堤防につきましては、約300メートルの区間にわたりまして、前後の堤防より最大で約1メートル程度低い区間が存在しております。

 このような堤防は、遊水地へ洪水を越流させるためのものなどの例外を除けば、一般的には好ましい構造ではございません。そして、この当該区間につきましては、背後地は遊水地ではないという状況でございます。

 当該区間の堤防のように、一連区間の中で部分的に低い箇所が存在いたしますと、万一堤防を越えるような大規模な出水が発生した場合、その箇所を越えて流れる水の深さも相対的に深くなることで、水が堤防を削ろうとする力も相対的に大きくなるという状況になります。その結果、堤防決壊に至り、甚大な浸水被害につながるおそれがあると、こういう状況でございます。

 当該区間の堤防につきましては、現時点で必要な河川の断面をおおむね確保できている状況ではございますけれども、昨今、雨の降り方が激甚化している中で、国が管理いたしますような整備水準が高い大河川におきましても、堤防決壊による甚大な浸水被害がたびたび発生している状況にございますため、岩田議員の御指摘も踏まえ、一連区間の堤防高さが同一となりますよう、県としましても国に対して対策を強く要望してまいりたいというふうに考えております。

○議長(岸本 健君) 岩田弘彦君。

  〔岩田弘彦君、登壇〕

○岩田弘彦君 答弁ありがとうございました。

 紀の川につきましては、国交省さんも一生懸命計画的に堤防の整備もしていただいてると思うんです。千曲川の事例を言わしてもらいますと、それも堤防は一応ある程度の想定のもとに皆計画は立てていると思うんですが、もう完全に想定を上回る水やったというだけのことやと思うんです、堤防も幅広げて。

 だから、そういうことが起こるということですので、かといっても全部その想定を上げてせえって言うてもそんなの無理な話になると思うんで、今の現計画の中できちんとやることをやっていただいて、僕の思うところは、リスクの大きいところはちょっとやっぱり並行して緊急対策も打っていかないと、想定上回ることが起こってますんで、現実に。というので、僕はここ非常に心配やったんで。答弁のほうは強く働きかけていただきますということで、ありがとうございます。どうかよろしくお願いいたします。

 以上をもって、私の一般質問を終わります。清聴ありがとうございました。(拍手)

○議長(岸本 健君) 以上で、岩田弘彦君の質問が終了いたしました。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 23番岩井弘次君。

  〔岩井弘次君、登壇〕(拍手)

○岩井弘次君 おはようございます。2番手で登壇さしていただきます。

 本年も残すところあと20日余りとなりました。本年は、災害であったりとか子供の絡む痛ましい事件・事故であったり、本当に悲しい報道が多くあったようにも思います。最近では、アフガニスタンで本当に強い憤りを感じるような事件もございました。

 間もなく令和、新しい時代となって初めての新年を迎えます。どうかどうか、来年は明るいニュースであふれる1年になるように、このように願うものでございます。

 それでは、議長のお許しを頂戴いたしましたので、通告に従いまして一般質問をさせていただきます。

 まず、1項目めの質問ですが、今定例会に上程されております附属機関の設置等に関する条例の一部を改正する条例の議案における和歌山県特定複合観光施設設置運営事業者選定委員会についてお聞きします。

 先般公表されました国の基本方針案によりますと、事業者から提出された提案書類の審査において、公平かつ公正な審査を行うために、有識者等により構成される第三者委員会を設置する等、適切な民間事業者の選定体制を構築する必要があるとされていることから、事業者選定委員会を設置するものと考えています。

 今後、事業者選定委員会の構成委員が公表される時期及びその人数、また、どのような分野の専門家を想定されておられるのか、企画部長にお伺いいたします。

○議長(岸本 健君) ただいまの岩井弘次君の質問に対する答弁を求めます。

 企画部長田嶋久嗣君。

  〔田嶋久嗣君、登壇〕

○企画部長(田嶋久嗣君) 議員御質問の事業者選定委員会の構成委員につきましては、国の基本方針案の中で、「第三者委員会を設けた場合は、その構成員を募集要項等において事前に公表すること」と明示されていることから、本県の事業者募集要項の公表を予定しております来年の春ごろまでには決定したいと考えております。また、人数につきましては、10名以内と考えているところです。

 構成委員につきましては、国の基本方針案の中で、区域整備計画認定のための評価基準として、IR区域内の建築物のデザイン、観光や地域経済への効果、IR事業を安定的、継続的に運営できる能力、カジノ施設の設置運営に伴う有害な影響を排除する取り組みなどが評価基準として示されていることから、それぞれの分野を評価できる専門家を想定しているところです。

○議長(岸本 健君) 岩井弘次君。

  〔岩井弘次君、登壇〕

○岩井弘次君 御答弁ありがとうございました。

 建築物のデザイン性、観光に寄与すること、また、地域経済への効果や事業の安定性、継続性、そして何より県民が懸念するギャンブル依存や犯罪行為の抑止など、有害な影響の排除をということなので、医療や研究分野の方なども想定されるかと思います。どうかその選考過程において、公平公正で、かつ透明性を持って取り組まれますよう望んでおきます。

 それでは、2番目の項目に移らさせていただきます。

 県管理河川の災害対策について。

 日本列島はことし、相次ぐ豪雨災害に見舞われました。特に台風19号の被害は、12月2日現在、亡くなった方が災害関連死を含み13都県98人、行方不明者3人に上り、今なお約1700人の方が避難されております。お亡くなりになられた方々に衷心より哀悼の意を表しますとともに、被災された方々に心からお見舞い申し上げます。また、一日も早い復旧復興を願うものであります。

 今回の台風被害について、大石国土学総合研究所長は、気象の凶暴化に対する治水施設の不十分さを突きつけた台風19号であったこと、非常に脆弱な国土のため、インフラ整備なしに生命、財産は守れない、そして、防災・減災、国土強靱化への課題として、より長期的で大規模な新たな計画が必要であると提言されております。

 台風19号において豪雨により河川の氾濫が広域で発生したことは、予想以上の大雨であったことも事実ですし、それを処理するための治水施設が不十分であったことも事実であり、これらが相まって破堤だけで約140カ所という被害になったのではないかとも指摘されております。

 過去に伊勢湾台風で約5000人の犠牲者を経験するなど、たび重なる大きな被害を受けてきた我が国は、これまで防災インフラを一生懸命にやってまいりました。しかし、ここ30年くらいを見ますと、1時間に100ミリなど、見ているだけでも恐怖心が湧くほどの雨や、道路がたちまち川になるような豪雨の発生頻度がほぼ2倍になってきたと言われています。

 脆弱な国土について、中山間地が国土の7割を占め、山に覆われた我が国の河川は、他の国と比較してもその数も多く、流域面積や長さも狭く短いという特徴があり、降雨時には急激に増水し、ダム等で調整するものの支流からの流入も多く、下流域では特に浸水被害が起こることが見られます。また、九州北部豪雨では、福岡県管理の赤谷川で、土砂崩れによって発生した大量の流木が川の流れを変え、流域に甚大な被害をもたらしました。

 我が国にとって、豪雨による流木被害が今後も発生する可能性は高く、その対策も急務です。中小河川は全国に2万余りあり、このうち豪雨によって大量の土砂や流木が川に流れ込み、住宅や公共施設などに被害が発生するおそれのある場所はおよそ700カ所あることが国土交通省のまとめた緊急治水点検により判明しました。このため国交省は、緊急対策で流木や土砂を食いとめる効果の高い砂防堰堤などを今後整備する方針であるとのことです。

 また、河川の水が堤防を越える越水による浸水被害について、緊急点検によれば、400河川の約300キロメートル区間で、過去に洪水が発生したにもかかわらず十分な対策がとられていなかったとして、これについても今後取り組むと発表されております。

 市街地では、一時的に遊水地としての役割も果たしてくれていた水田が、後継者不足などの問題から宅地化され、減少してきているようにも感じます。県の資料を見ましても、この30年間で約4割減少しており、やむを得ないことではありますが、このようなことも浸水被害につながっている一因ではないかと考えます。

 以上のようなことから、河川整備は浸水被害軽減のために大変重要であります。

 そこで伺います。県管理河川の災害対策について、過去の浸水被害の状況をどのように把握しておられるのか、また、把握した状況を踏まえ、河川整備にどのように反映されておられるのか、県土整備部長にお伺いいたします。

○議長(岸本 健君) 県土整備部長髙松 諭君。

  〔髙松 諭君、登壇〕

○県土整備部長(髙松 諭君) 過去の浸水被害の状況の把握と河川整備への反映につきまして、御質問いただきました。

 本県は、県土の約8割が紀伊山系を中心とする山地でございまして、河川のほとんどはこれらの山々に源を発し、紀伊水道及び太平洋に注いでおります。比較的傾斜の急な山が多いことから、河川におきましても急勾配となり、上流で大雨が降った際には一気に洪水となって下流に押し寄せやすい地形となってございます。

 また、年間降水量は、北部及び紀伊水道沿岸部では1500ミリメートルから2000ミリ程度、南部では2000ミリメートル以上で、山間部では3500ミリメートルを超える、全国でも有数の多雨地帯でもございます。これらに加えまして、各水系の下流部には市街地が形成され低平地となっていることから、河川の氾濫等による浸水被害のリスクは極めて高いものというふうに認識してございます。

 このような認識のもと、岩井議員御質問の過去の浸水被害の状況の把握につきましてでございますけれども、基本的には国土交通省が公表しております水害統計を活用してございます。この統計は、統計法第19条に基づくものでございまして、毎年、都道府県や市町村等の協力を得て浸水家屋数等の被害実態を把握し、治水に係る各種行政施策の実施に必要な基礎資料を得ることを目的として作成されているものでございます。

 この統計に加えまして、昭和28年の7.18水害などを記録した「和歌山縣災害史」や「平成23年紀伊半島大水害記録誌」など、県独自の資料により各河川の浸水被害履歴を把握するとともに、出水時の雨量や水位のデータについても蓄積しているところでございます。

 次に、河川整備への反映につきましてでございます。河川整備への反映につきましては、このように把握いたしましたデータをもとに、既往最大洪水と同規模の出水を安全に流下させることを将来的な目標といたしまして、河川整備基本方針を策定しております。

 一方、この整備には多大な費用と相当の期間を要することから、早期に一定の整備効果を発現させるために、既往最大洪水に次ぐ大きな被害をもたらした洪水等と同規模の出水に対しまして、家屋の浸水被害を解消することを目標といたしました河川整備計画を策定し、段階的な整備を進めているところでございます。

 県が管理いたします河川の河川整備計画の策定につきましては、流域内の人口や資産が多く、河川の氾濫による社会的影響がより大きな河川から優先的に取り組んでいるところでございます。これまでに面積ベースで約9割に当たる16の水系と四つの圏域の合わせて20の河川整備計画の策定が完了しているところでございます。

 これらの河川整備計画に基づく整備につきましては、国の「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」の予算も最大限に活用するなどいたしまして、引き続き事業の進捗に努めてまいりたいというふうに考えております。

○議長(岸本 健君) 岩井弘次君。

  〔岩井弘次君、登壇〕

○岩井弘次君 ありがとうございます。

 和歌山市におきまして、和田川流域浸水対策事業の促進として、近年頻発する突発的な局地的集中豪雨による浸水被害を改善するため、1級河川和田川の支流である前代川及び永山川について準用河川改修事業により整備を促進してこられております。老朽化した護岸改修を充実させることにより、豪雨時の越流等を現状より減少させる、結果として浸水被害の被害低減を目指すとしています。

 和田川流域では、これまでよく豪雨により浸水被害が発生しておりましたが、現在取り組まれている整備工事のおかげで、最近ではかなり改善されてきたように思います。それらの中小河川など支流の流入先としての県管理河川の整備は、流域の被害軽減につながっております。

 そこで、和歌山市内の七瀬川、和田川及び亀の川について、その整備状況はどのようになっていますか。県土整備部長にお伺いいたします。

○議長(岸本 健君) 県土整備部長。

  〔髙松 諭君、登壇〕

○県土整備部長(髙松 諭君) 和歌山市内の七瀬川、和田川及び亀の川の整備状況につきまして御質問いただきました。

 これらの三つの河川の整備につきましては、先ほど答弁申し上げました国の「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」の予算も活用いたしまして、事業の進捗を図っているところでございます。

 まず、七瀬川につきましては、平成23年8月に紀の川水系和歌山市域河川整備計画を策定しており、平成7年7月の洪水と同規模の出水を安全に流下させることを目標としてございます。整備の対象は、紀の川合流点の鴨居樋門から七瀬川橋までの約2.7キロメートルの区間とし、河道拡幅などを行うこととしてございます。

 現在は、紀の川合流点から鴨居川合流点までの約1.6キロメートルの区間を1期の工区といたしまして重点的に整備を進めてございます。この区間の川の断面は約12平方メートル、例えるならば小学校の黒板2~3枚分しかないことから、たびたび浸水被害が発生していると、こういった状況でございます。このため、抜本的な対策といたしまして、川の断面を約8倍に拡大する整備を行ってございます。

 これまでに下流から国道24号までの約900メートルの区間につきましては概成してございまして、鴨居川合流点までの残る区間につきましても、令和2年度の完成を目指して事業の進捗を図っているところでございます。また、上流の鴨居川合流点から七瀬川橋までの2期工区につきましても用地取得を進めており、約70%の取得を完了しているところでございます。

 次に、和田川につきましても、平成23年8月に紀の川水系和歌山市域河川整備計画を策定しており、こちらのほうは平成12年9月の洪水と同規模の出水を安全に流下させることを目標としております。

 整備の対象は、和歌川合流点から前代川合流点までの約6キロメートルの区間とし、護岸工や河道掘削などを行うこととしております。また、前代川合流点から上流の狭窄部においても河道拡幅などの整備を行うこととしております。

 現在は、和歌川合流点から前代川合流点までの区間において、川の断面を約1.4倍に拡大し、流下能力を向上させる整備を進めております。特に平成24年6月の浸水被害を契機に、平成25年度より5カ年で床上浸水対策特別緊急事業として集中的投資を行った結果、これまでに下流から米田排水機場付近までの約4.2キロメートルの区間の整備が完成してございます。また、上流の伊太祈曽地区におきましても、狭窄部の河道拡幅を進めているところでございます。

 最後に、亀の川についてでございます。亀の川につきましては、平成22年10月に亀の川水系河川整備計画を策定しており、平成7年7月の洪水と同規模の出水を安全に流下させることを目標としてございます。

 整備の対象は、河口から紺屋橋までの約4.8キロメートルの区間とし、堤防整備や河道掘削などを行うこととしております。現在は、河口から羽鳥橋までの約1.6キロメートルの区間において、川の断面を約2倍に拡大し、流下能力を向上させる整備を進めており、これまでに下流から約700メートルの区間の整備が完成してございます。また、羽鳥橋から上流におきましても、河道掘削を進めているところでございます。

 これらの河川を含めました県内各河川の整備につきましては、今後ともさまざまな機会を通じて予算を確保いたしまして、引き続き事業の進捗に努めてまいりたいというふうに考えております。

○議長(岸本 健君) 岩井弘次君。

  〔岩井弘次君、登壇〕

○岩井弘次君 ありがとうございます。予算も時間もかかるかと思いますが、よろしくお願いしたいと思います。

 この2日の参議院本会議におきまして2018年度決算の審議がなされ、公明党・宮崎勝参院議員は、防災・減災、国土強靱化に関する質問で、「気候変動に伴う頻発化、激甚化する水害に備えるため、中小河川を含めた河川の改修、整備や流域における遊水地や調整池の整備、利水ダムを活用した水害対策の支援に集中的に取り組むべき」と訴えられました。

 それに対し、赤羽国土交通大臣は「流域全体で備える総合的な水害対策を計画的かつ着実に進める」と答弁され、また、「防災・減災、国土強靱化を着実に推進するには、重要インフラの点検から改修完了まで、施設や設備の本体だけでなく附随施設、設備の全てを一体として整備する必要がある」と指摘した上で、国土強靱化に取り組む人材、担い手の確保に向けた取り組みも重要だと対策拡充を求めました。それに対し、安倍総理大臣は、「必要な予算を確保し、国土強靱化をパワーアップさせる」と答えられております。

 浸水被害の防止、軽減のため、国の動向も注視し、そのためのあらゆる予算も活用され、より駆け足で河川整備に御尽力いただきますようよろしくお願いいたします。

 それでは、次の項目に移らさせていただきます。

 幼児教育・保育の無償化に伴う便乗値上げについてお伺いします。

 幼児教育・保育の無償化が、本年10月1日から全国で始まりました。幼保無償化は、少子化の打開に向けて、消費税率10%への引き上げによる増収分を財源に実施され、対象となる子供は全国で約300万人に上ります。

 概要は、就学前3年間、3歳から5歳児の全世帯、住民税非課税のゼロ歳から2歳児が対象で、幼稚園や認可保育所、認定こども園、障害児の発達支援などの利用料が無料になりました。ただし、子ども・子育て支援新制度に移行していない幼稚園は利用料が自由に設定できることから、月2万5700円を上限に保育料が補助されます。

 ベビーシッターなどを含む認可外保育施設や幼稚園の預かり保育も、補助額に上限を設けて無償化となりました。当初5年間は、ほぼ全ての認可外施設が無償化の対象となります。しかし、5年後からは職員数や設備をめぐる国の指導監督基準を満たすことが必要となりますので、各施設の質の向上へ行政も支援していくこととしております。

 今回の無償化では、幼児教育・保育料の部分が対象であり、副食費については保護者負担が原則です。和歌山県では、県と市町村が多子世帯について副食費の無償化が継続されるよう9月補正予算で措置されております。

 11月7日の新聞報道によりますと、厚生労働省と文部科学省は、10月に導入された幼保無償化に伴う保育料の便乗値上げが全国に少なくとも33施設あったとの調査結果を明らかにしました。質の向上など合理的な理由があると見られる値上げも幼稚園で広がっており、無償化で保護者負担が軽減されたことで値上げに踏み切る動きもあることが浮き彫りになっております。

 調査は、私立幼稚園と認可外保育施設の計1万2000カ所を対象に都道府県が実施、私立幼稚園の15%に当たる619園が10月に保育料を上げており、このうち5園は質の向上を伴わない理由のない値上げに該当する可能性があるとしました。478園は値上げを妥当とし、残る136園は調査中としています。

 認可外保育では値上げに合理的理由がない施設が14あり、消費増税分の2%以上の値上げを実施するなど、理由に疑義がある施設も14あり、幼稚園と認可外保育を合わせて33の施設で便乗値上げと見られる事例があったとのことです。

 認可外施設は保育料を変更しても届け出の必要がないため、全体での値上げが何施設あったかは把握されておりません。今後、施設に対する調査や指導を進めることで、便乗値上げとされる事例がさらにふえることも考えられます。引き上げは、保育士の処遇改善や保育の質の向上などに寄与するものであるのかどうかなど、合理的な理由が求められます。

 そこで伺います。県内の幼児教育・保育の無償化に伴う便乗値上げについて状況を把握しておられるのか、また、便乗値上げがあった場合、どのような対応となるのか、福祉保健部長、企画部長の順にお答えください。

○議長(岸本 健君) 福祉保健部長宮本浩之君。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) 幼児教育・保育の無償化対象施設のうち、大部分を占める認可保育所や認定こども園の保育料については、国において価格が設定されているため、いわゆる便乗値上げの問題は発生しませんが、認可外保育施設や子ども・子育て支援新制度に移行していない私立幼稚園の保育料については、施設と保護者の間の契約で決められる自由価格であるため、無償化に伴う便乗値上げの発生が懸念されます。

 そのため、県では、無償化が開始された10月時点で県内の認可外保育施設に対して調査を行いましたが、保育料の便乗値上げが疑われる施設はありませんでした。

 これまでも、認可外保育施設が設置されている市町においては、定期報告や立入調査の際に保育料の設定状況等を確認してきたところですが、今後も保育料が変更される場合には、設備の充実や職員の処遇改善等の合理的な理由があるか否かや、施設への掲示や書面の交付等により保護者へ十分な説明がなされているか否かを確認し、不適切な事例を把握した場合には施設を指導するよう市町に徹底してまいります。

○議長(岸本 健君) 企画部長。

  〔田嶋久嗣君、登壇〕

○企画部長(田嶋久嗣君) 私立幼稚園が授業料、いわゆる保育料の変更をする際には、学校教育法施行令の規定により県への届け出が必要です。届け出を受理する際には、設備の充実や職員の処遇の改善等の合理的な理由があるか否かを確認しておりますが、保育料の便乗値上げが疑われる園はありませんでした。

 これまでも合理的な理由のない保育料の値上げは行わないよう指導してきたところですが、今後、私立学校振興助成法に基づく検査の際などに不適切な事例を把握した場合には、私立幼稚園設置者に対し改善されるよう指導してまいります。

○議長(岸本 健君) 岩井弘次君。

  〔岩井弘次君、登壇〕

○岩井弘次君 御答弁ありがとうございます。

 私ども公明党は、現在、実現した政策の効果について検証を怠らず、課題が見つかれば迅速に対応することは政党の責務との思いから、この幼児教育・保育の無償化について、実施後の評価や政策ニーズを把握するため、現在、全国の議員が子育て家庭や施設関係者にアンケートを行う実態調査運動を実施しております。

 来年1月下旬には最終報告を行う予定となっておりますが、中間時点での最も多い今後取り組んでほしい政策は、保育の質の向上が約半数を占めています。保育士の絶対数が足りていない問題が要因と思われ、引き続き処遇改善などを進め、保育士の確保が望まれます。今後もよりよい制度に改善していくため、現場の声を受けとめ、実情を把握し、調査の結果はネットワークを生かし、政策に反映させる努力をする方針です。

 先ほども申しましたが、少子化対策として、未来を担う子供を産み育てやすい環境づくりのための無償化です。ただ、質の向上や保育士の処遇改善、保育士不足などの課題等、値上げを伴わなければできないこともあるかと思います。しっかりと見張るというより、寄り添い、見守っていただきたいと望んでおりますので、よろしくお願いいたします。

 次に、重要文化財(建造物)における防火対策についてお伺いいたします。

 記憶に新しい首里城火災、10月31日、沖縄県那覇市の世界遺産・首里城跡に建つ木造3階建ての正殿から出火して、北殿、南殿などに延焼、6棟約4200平方メートルをほぼ全焼するという非常に悲しい火災事故が起こりました。

 首里城は1429年から450年間存在した琉球王国の政治や外交、文化の中心地です。太平洋戦争中の沖縄戦で焼失しましたが、沖縄の本土復帰後の1992年に国営公園として復元、首里城跡は中国と日本の築城文化を融合した独特の建築様式などに価値があるとされ、2000年に世界遺産として登録されました。沖縄県民の皆さんだけでなく、全国、全世界からも再建を望む声や募金活動など、皆さんの思いが向けられ、政府も再建に向けた支援をしていきたいとしております。

 首里城の火災では、法令上の問題はなかったものの、スプリンクラーが設置されていなかったほか、火元の正殿1階には炎や熱を感知するものよりも早く火災を知らせる煙に反応する火災報知器がないなど、専門家からは設備が十分ではなかったのかとの指摘が上がっております。

 国や地域の歴史や伝統を次の世代に継承していくためには、その礎としての文化財は非常に重要です。また、地域の魅力の発信、観光客を誘致する上でも欠かせないものです。

 文化庁は、本年4月のフランス・パリのノートルダム大聖堂において発生した火災を受けて、国宝や重要文化財に指定された建造物の防火対策指針を策定しましたが、本県における重要文化財(建造物)の数及びその防火対策について、教育長にお伺いいたします。

○議長(岸本 健君) 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 県内の重要文化財の数及びその防火対策についてお答えします。

 県内では、84件149棟の建造物が重要文化財の指定を受けています。これらの大多数は木造建築であり、火災で焼失すると回復は不可能なことから、国や県の補助金により、自動火災報知設備や消火設備の整備を進めており、大部分は設置済みでありますが、未設置の数カ所については早急に進めているところでございます。また、設置済みの設備のうち4分の1程度が30年以上経過していることから、老朽した設備の改修を所有者等に働きかけているところです。

 県教育委員会といたしましては、今後とも市町村や消防本部等と連携を深め、文化財の防火対策に取り組んでまいります。

○議長(岸本 健君) 岩井弘次君。

  〔岩井弘次君、登壇〕

○岩井弘次君 御答弁ありがとうございました。

 首里城の火災を受けて、文化財の防火対策を強化しようという動きも出てきております。名古屋市は、名古屋城の天守閣を木造で復元する際にはスプリンクラーをおよそ800個設置する方針を表明しました。

 萩生田文科大臣は、3日、首里城の火災を受け、文化庁の文化財防火対策指針を年内にも改定する考えを示されております。指針は、建造物の材質に応じて必要となるスプリンクラーや消火栓といった消火設備を明記し、電気系統の老朽化や夜間の消火態勢などの点検項目を示し、所有者に対策を促しています。現在は国宝や国の重要文化財が対象となっており、これらに国指定の史跡などにある建造物を加えるとのことです。

 県内に84件149棟の建造物があり、その大多数は木造建築であるとのこと、残り数カ所とお聞きしました。補助金の交付があるとはいえ、所有者、管理者の負担もあり、困難な道のりかと思いますが、どうか粘り強くお取り組みいただきますようにお願いいたします。

 最後に5点目ですが、要望させていただきます。就職氷河期世代への支援について。

 去る11月26日、政府は就職氷河期世代の支援に向けた官民協議会、全国プラットフォームの初会合を開催しました。就職氷河期世代とは、1993年から2004年に学校卒業の時期を迎えた世代のことで、90年代初めのいわゆるバブル経済崩壊後に新卒採用に臨まざるを得なかったため、無業や不安定な就労環境に陥っている人が多く、現在30代半ばから40代半ばに当たる人で約1700万人おられ、このうち正規雇用を希望しながら非正規で働く人は約50万人、仕事をしていない人は約40万人に及ぶと言われています。

 和歌山県は、11月5日、就職氷河期世代を対象とした採用を実施すると記者発表されました。報道によりますと、和歌山県以外では兵庫県内の3市、愛知県や茨城県境町などが就職氷河期世代を対象とした職員募集を実施する予定だそうですが、まさに先駆けたすばらしい反応というか対応だと思います。

 今後、詳細は県人事委員会と協議し決定されるそうですが、受験資格は36歳から45歳で、直近過去1年以内、正規雇用で就労していないこと、かつ正規雇用で就労した期間が通算3年以下の方を対象に5名程度募集する予定であるとのことです。

 国みずからも積極的に国家公務員の中途採用について今年度から具体的に取り組むとし、まずは3カ年の集中的な取り組みにより、現状よりもよい処遇、働くことや社会参加を促す中で、同世代の正規雇用者について30万人ふやすことを目指すとしています。

 そして、政府は、2020年度の予算概算要求に総額1344億円を盛り込みました。ハローワークへの専門窓口の設置やリカレント教育──学び直し──の支援、就職氷河期世代を採用した企業への助成金の拡充などが柱となっています。

 今後、非正規雇用の人を正規雇用にする、就職できない無業の人に就業機会をつくる、ひきこもり状態の人に対して社会との接点やコミュニケーションができるようにしていくことなど、さまざまな支援策が具体化されていくと思います。今後、それら支援の重要なかなめとなるのは、実施主体となるであろう県や市町村となってきます。

 AIなどテクノロジーの進化によって人手不足の解消も講じられていくとは思いますが、全体的には深刻な人材不足が懸念されております。どうか、我がまちの支え手の育成としてしっかりと取り組んでいってくださいますよう強く要望させていただき、私の一般質問を終わらせていただきます。

 御清聴ありがとうございました。(拍手)

○議長(岸本 健君) 以上で、岩井弘次君の質問が終了いたしました。

 これで、午前中の質疑及び一般質問を終わります。

 この際、暫時休憩いたします。

  午前11時34分休憩

 

  午後1時0分再開

○議長(岸本 健君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 29番玄素彰人君。

  〔玄素彰人君、登壇〕(拍手)

○玄素彰人君 議席番号29番の玄素でございます。就任以降2回目の一般質問をさせていただきたいと思います。まだまだふなれな部分もあるかと思いますが、当局の皆さん方にはよろしくお願い申し上げたいと思います。

 早速ではありますけども、一般質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、1点目でありますが、県が管理する道路の維持修繕に係る予算についてを質問させていただきます。

 現在、和歌山県が管理している道路は約2600キロあると聞いております。当然のことながら、経年や急激な交通量、ダンプなどの過剰走行で、道路の通行を阻害する問題が出ております。道路や歩道の白線が薄くなっている、路面が隆起している、水たまりができている、道路ののり面にひびが入っている、沿道の木が道路に覆いかぶさってきている、草が生えている、落石がある、側溝に水がたまっていて水が流れないなどです。

 私もこれまで、こういった道路の維持修繕に関する陳情を数々いただいてきたのですが、県議に就任させていただいて以降、その頻度が多いように感じております。

 また、そういったメンテナンスができていないところは、仕方がないと言われるかもしれませんが、どうしても中心部より交通量の少ないところに散見されます。

 維持修繕については、別に道路だけの問題ではなく、河川のしゅんせつ、家の裏の急傾斜などでも言えることですが、予算がないとか、まだ大丈夫などの理由で待たされることが少なくないと聞きます。和歌山県の、特に今回は道路の修繕に関する予算については、毎年一定で推移をしていると聞いているところですが、こういった維持修繕に関する要望についてはかなりあると考えます。

 先般、地方紙に和歌山県人の交通マナーが悪いという記事が掲載されておりました。確かに悪いのかもしれませんが、ちょっと見方を変えれば、交差点の白線が見えなくてとまれないようなところも少なからずあって、現状、私がお願いしている箇所でも3カ所ございます。そういったことからいうと、維持修繕ができていないがゆえに交通マナーが悪くなってしまうということも考えられます。

 また、アメリカ連邦緊急事態管理庁──FEMAでありますが──の調査であったと記憶しておりますけども、「防災対策にあらかじめ1ドルを投じれば、災害時に生じる7ドルの損失を回避できる」という言葉もございます。道路の維持修繕を単に修繕の問題と捉えるのではなく、交通安全対策や防災対策とも捉え、言われたからやるのではなく、言われる前にやるという意識転換を図ると同時に、当然のことながら、県道のメンテナンスに関する予算をふやすべきと考えますが、当局の見解を求めます。

 以上で、1回目の質問を終わらしていただきます。以降、質問、再質問については、対面式の演壇で行わせていただきます。よろしくお願いします。

○議長(岸本 健君) ただいまの玄素彰人君の質問に対する答弁を求めます。

 県土整備部長髙松 諭君。

  〔髙松 諭君、登壇〕

○県土整備部長(髙松 諭君) 道路の維持修繕に係る予算についての御質問をいただきました。

 道路の維持修繕につきましては、予算の観点から大きく二つに分けて実施しているところでございます。

 一つ目でございますけれども、橋梁、トンネルなどの構造物の修繕でありまして、平成25年の道路法改正に基づく5年に1度の点検及びその結果に基づく修繕を国の防災・安全社会資本整備交付金を活用し、計画的に進めているところでございます。

 二つ目は、道路の区画線、舗装等の修繕や定期的に行う除草、街路樹の剪定などの維持でございまして、道路パトロール、地域の方からいただく御意見などをもとに通行の安全確保の観点から実施しておりますが、小規模な維持管理であることから交付金の対象となっておりませんで、必要性とともに優先度を考慮の上、県の単独費で維持修繕を行っているところでございます。

 玄素議員御指摘のように、区画線等の維持修繕の必要性は十分認識してございまして、近年、予算を増額したり、あるいはバイパスなどの整備でふえ続けてきた県管理道路の並行する現道──現道というのは、もともとの旧道の意味でございますけれども、この現道を市町村に移しかえするなどしまして、維持管理を重点化できるように取り組んでいるところでございます。

 また、特に今年度におきましては、全国的に痛ましい交通事故が発生している状況も踏まえまして、県下全域で区画線の状況調査を行い、重点的に修繕を行うこととするなど、安全な通行の確保に努めているところでございます。

 引き続き、必要な維持修繕予算の確保や重点化に努め、県管理道路の安全な通行の確保に取り組んでまいりたいと考えてございます。

○議長(岸本 健君) 玄素彰人君。

  〔玄素彰人君、登壇〕

○玄素彰人君 重点的にされるという旨の答弁であったので、了といたしたいと思います。ただ、今回質問させていただいたというのは、やはり維持修繕に対する要望が多いということはゆめゆめお忘れなきようお願いをしたいと思います。

 今回の私のこの質問の趣旨というのは、やっぱり言われる前にやるということが大事であるということであります。そうすることが最終的には安全面、またコスト的にも安くつくというのは、冒頭、質問で1ドル、7ドルの話をさしていただいたんですけども、そういうことにつながってくるというふうにも思っております。

 例えば、こんなことも。僕じゃないということで理解をしてほしいんですが、サイクリングロードの青線を引かれる予算で、平成29年で6億、30年度で5億、それから今年度で1.7億消化されております。もちろん国費の事業であるので、多少は国費で入ってるのも理解してるんですけども、やっぱりメンテナンスができてないというところの中でそういうところにお金を使うと、どうしてもそのことに対して、青線引く余裕あったらメンテナンスしてねというような声もあるというのはぜひともお聞き届けいただきたいというふうに思いますし、ハインリッヒの法則というのがあるんですね。何かというと、大きな重大事故の下には29のかすり傷程度ぐらいの事象、その下にはさらに300ぐらいのささいな出来事というのが包含されているということの法則なんですけども、これ、やっぱり道路に当てはめますと、小さいメンテナンスというのをおろそかにしてしまうと、最終的には重大事故を招くんであろうという思いもいたしております。

 何度も申し上げるようで恐縮なんですが、言われる前にやる、その認識の転換というのを図っていただけるよう私からは述べさせていただいて、1点目の質問は終わらせていただきたいと思います。

 それでは、2点目の質問に移ります。

 公文書管理条例の制定についてでございます。

 行政機関等における公文書の管理については、国は2009年7月に、公文書等の管理に関する法律、いわゆる公文書管理法を基本法として制定しております。そして、同法34条には、地方公共団体の公文書の管理に関して必要な施策を策定し、これを実施するよう努力義務が課されております。

 こうしたことから、公文書管理条例について、都道府県においては、現在では、東京都、鳥取県、島根県、香川県、熊本県、愛媛県、山形県、滋賀県、高知県及び兵庫県の10都県が制定済みで、11の道県では制定へ準備や検討を進めていると理解をしております。

 公文書の管理に関して、国レベルで申し上げると、近年では、南スーダンにおけるPKO派遣に係る日報問題や森友問題における文書の管理、最近では桜を見る会における文書管理などが記憶に新しいところです。

 また、都道府県レベルで申し上げると、お隣の徳島県では、包括外部監査を実施した際に、決裁済みの書類の金額を砂消しゴムで消して書きかえたということも数件報告されておりますし、先週、神奈川県で発生した県文書のディスク流出事件は既に皆さん御承知のことと存じます。

 本県における文書管理は、現状、文書管理規程のみで運用されておりますが、規程には条例のように理念も目的も定められていませんし、また、管理する部局も行政、教育、公安、議会などばらばらで、かつ規程の内容も違います。さらに、運用がお粗末であれば、さきに述べたように、決裁後であっても、いかようにでも改ざん、別途作成することができ、また、議会や住民の目に触れることなく保存期間や内容を変更することも可能であります。

 これでは、県民の財産とも言える公文書が一方的な管理のもとで行われていると言わざるを得ません。ゆえに、半数近くの都道県が条例を制定済みか制定を目指している中、本県はどのように考えておられるのか。文書管理条例の制定を目指していくのか、当局の見解を求めます。

○議長(岸本 健君) 総務部長田村一郎君。

  〔田村一郎君、登壇〕

○総務部長(田村一郎君) 本県における公文書管理につきましては、地方自治法の定めるところにより、条例、規則その他の規程に基づく事務として、訓令により公文書管理規程を定めて、県報やホームページで公表しております。

 また、地方公務員法の定めるところでは、規程は地方公共団体の職員がその職務を遂行するに当たり従わなければならないものであり、これに違反した場合は懲戒処分の対象となり得るものであるとされておるところでございます。

 これらを踏まえて、本県では、公文書管理規程に基づく適正な事務処理に取り組んでおります。

 公文書管理規程においては、公文書の作成、保管、廃棄に関する具体的な手続、各所属への公文書管理責任者等の配置などを規定するとともに、毎年、研修会を開催し、実践的な内容を盛り込むなどにより、全職員の理解に努め、加えて、各所属に自主的な点検を促しております。

 平成21年に制定されました公文書等の管理に関する法律におきましても、地方公共団体は、保有する文書の適正な管理に関して必要な施策を策定し、これを実施するよう努めなければならないとされているところでございますが、以上のとおり、本県においては、きちんとした制度のもとで、運用についてもチェックしながら取り組んでおります。

 なお、昨年発生しました虚偽有印公文書作成・行使事件のような極めて不適切な事案に対しては、地方公務員法に基づく懲戒処分の基準に沿って厳正に処分を行い、再発防止に努めたところでございます。

 今後とも、公文書を取り巻く情勢の変化を踏まえつつ、公文書管理規程に基づき、県民の財産である公文書の適正管理に努めてまいります。

○議長(岸本 健君) 玄素彰人君。

  〔玄素彰人君、登壇〕

○玄素彰人君 文書管理条例というよりも、今の制度できっちり運用していくという趣旨の答弁であったと思います。

 文書管理というのは一般的な考え方として、今までは、文書は役所が持っていて、役所が管理するというのが一般的であったと思うんです。ですけども、そういって一方的に管理をしてしまうと、どうしてもやっぱりまずいなというようなことが出てくる。だからこそ条例化の流れというのが出てきたんだろうなというふうに理解をしております。

 そこで、それは運用されていくということは、規程で運用されていくということはそれでいいんですけども、平成の29年に国のほうで、都道府県に対して文書管理をどのようにしてますかという問い合わせがあったというふうに思うんです。その中で、誤廃棄──誤った廃棄──を防ぐためのマニュアルの作成であるとか、誤廃棄──誤った廃棄──を防ぐために複数人でこれをちゃんと監視するような体制をつくってくださいねという問い合わせに対して、規程で運用しているほかの都道府県って結構それはできてあったんですけども、和歌山県ができていなかったように思うんです。それは今は運用されてるのかどうかというのがちょっと気になりますんで、再答弁でお答えをいただけたらと思います。よろしくお願いします。

○議長(岸本 健君) 総務部長。

  〔田村一郎君、登壇〕

○総務部長(田村一郎君) 今再質問ございました国からの調査という形でございますけども、公文書の管理につきまして、廃棄に当たってどのような形でやっておるのかと、そういったことを確認する中の選択肢の中に、今議員が御指摘がありましたように、複数人で確認しているのかということが、そこのところは選択肢の中にありました。その中で、本県においてはチェックはしてない、チェックというか、回答においてはチェックせずに回答したところでございます。

 現状でございますけども、公文書の誤廃棄防止のための対策としましては、従前から、公文書管理責任者等を対象としました研修会において注意喚起をしているところでございますけども、さらに今年度に入りましてからは、より詳細な廃棄にかかわる手続、注意点などを盛り込んだ説明などをしているところでございます。

 それで、廃棄にかかわります事務フローチャート、こういったものを作成して、これを各所属のほうに配布するという形において、それで見てもらうという形にしております。また、点検チェックシート、こういったものをつくりまして、これによって各人においてチェックしていただくという形で進めているというところでございます。それにおいて誤廃棄をしないようにするというふうに進めているところでございます。

 いずれにしましても、職員の公文書管理の意識向上を図っていきたいと考えてございます。

 以上でございます。

○議長(岸本 健君) 玄素彰人君。

  〔玄素彰人君、登壇〕

○玄素彰人君 今の答弁を聞いてますと、多分まだ実施をされてないのかなというふうに理解をしました。

 ただ、そこを僕からどうなんだ、どうなんだと言うよりか、やっぱり文書をきっちりやっていただきたい、管理をしていただきたい、説明責任の果たせるものであってほしいという思いから質問をさせていただいたということを御理解いただきまして、この質問は終わらせていただきたいと思います。

 次に参ります。次、3点目でありますけども、農業収入保険等への助成についてを質問させていただきます。

 さて、私ごとで恐縮ですが、私の両親は、現在、農業を営んでおります。また、私自身も、農業者の気持ちに寄り添えればと考え、数年前から30坪程度でありますが、各種農作物を育てております。ゆえに、農業を経営することの難しさは多少は理解しているつもりであります。

 近年の気候の変化、台風などの自然災害、土砂崩れによる園地被害、鳥獣害による被害、農産物の目まぐるしい価格の変動、そのリスクは今後さらに上がっていくように思います。

 そんな中、平成29年にできたのが、農業者の農業経営収入保険制度です。この保険は、青色申告が必要であることが要件の一つでありますが、さきに述べたようなリスクに加え、倉庫の浸水、取引先の倒産、盗難や運搬中の事故、農業者の病気等による収穫不能、為替による損失など、あらゆる損失を補塡してくれる保険です。平成30年から募集が始まり、現在2年目、和歌山県の加入者数は全国で26位、農業共済組合の加入推進目標の15%と、少し出おくれているといった感じを受けます。

 近所で農業をやめていく人を見ていると、その契機となるのが、年齢はもちろんでありますが、突発的なリスクに対処できないことによるものも多いと思います。また、たび重なる災害、鳥獣害による被害、価格の変動などで、自分は農業していても子供に継がせようとは思わないと考えている農業者も少なからずいると考えます。

 そういった中で、リスクを軽減できるというのがこの収入保険だと私は考えております。

 現在、収入保険は国の公的保険の位置づけで、ざっくり言えば、所得に応じた保険料の50%、積立金の75%は国費で賄われております。経費に算入することはできますが、農業所得に応じて算定される高額な保険料等がネックになって入りづらいという話も、先般、同級生の農業者から聞きました。

 最近は、ラジオでCMが流され、令和2年からは補償額に応じて保険料額を減らすものもでき、種類が豊富になります。また、共済組合の職員さんが農業者を戸別訪問し、加入後のシミュレーションをしてくれているようですが、加入率向上という結果につながっていないのは、あと一押し足りないからだと思っております。

 露地物、施設物など、つくる作物によってそれぞれリスクは違うわけでありますが、農業に力を入れている県として、この収入保険の個人負担に係る保険料の一部または初期に係る積立金を、ほかの農業者を対象とする補助事業にあるように、県単独もしくは市町村と協力して補助してはどうかと考えますが、当局の見解を求めます。

○議長(岸本 健君) 農林水産部長角谷博史君。

  〔角谷博史君、登壇〕

○農林水産部長(角谷博史君) 農業経営収入保険制度は、自然災害や鳥獣被害だけでなく、市場価格等による収入減少について、一定額を下回った場合に最大90%を補塡するものとして平成31年1月にスタートした制度でございまして、農家の所得安定のために有効なものと認識をしております。

 農業共済組合の加入推進目標に対する本県加入率は現時点で15%と、全国平均の23%に比べ低くなっておりますが、これは、農業共済など他のセーフティーネット制度もある中、導入初年度であるため農家の理解が進んでいないことに加え、ミカンなどの市場価格が近年安定していること、複合経営により危険分散されていることなどが背景にあると考えております。

 議員御指摘の保険料等の負担については、国が保険料の50%、積立金の75%を負担するとともに、保険料は全額所得控除されることとなっており、補塡額の大きさに比べれば保険料負担額は高くないものと考えます。また、そもそも保険はみずからの経営を守るために自身で加入することが基本であり、県費での支援は難しいと考えております。

 引き続き、農業経営収入保険制度のPRを通じて農家の理解を促進し、加入推進を行うとともに、今後、制度内容等に対する生産現場の声を十分お聞きしながら、加入が進むような方策について研究してまいります。

○議長(岸本 健君) 玄素彰人君。

  〔玄素彰人君、登壇〕

○玄素彰人君 財源の要る話ですし、突発的な提案型の質問であったので、一定難しいというのは理解をしたいと思います。

 ただ、部長が農業をされた経験があるのかどうかはわかりませんけども、自身も例えば作物をつくった半分以上が台風なんかで被害を受けてしまう。私の今の申し上げた以上の被害というのは農業者の方が経験されていると思うんですけども、そういう方が聞いたら、ちょっと残念に思うかなというような所感を冒頭申し上げておきたいと思います。

 それと、最初に入る保険料もそうなんですが、そのときの積立金がやっぱりかなり、聞いておりますとネックになるそうですから、そのこともお伝えしておきたいと思います。

 その上で、この収入保障保険なんですが、先ほどの部長の答弁からいいますと、保険料というのは個人が享受するものであるから県はお金を出すのは難しいよということでありましたけども、この収入保障保険に関しては、国とは全く方針が逆だなというふうに思ったんです。国は、やっぱりこれからの農業というのはリスクがかなり大きいから、個人が入る保険料の半分を国が出して、その積立金の75%を出すということをされております。

 それは、やっぱり最終的には県も市町村もそういったところに倣ってもらって農業者のリスク管理に努めてほしいという思いもあったのかなというふうに想像するんですけども、先ほどの部長の答弁をお聞きしていると、国のその思いとは全く反対だなというふうな理解をしましたけども、部長に再度お伺いをしたいんですけども、そういう理解でよろしいんでしょうかということと、あと、そうでないなら、そうでない理由というのをお聞かせいただけたらと思います。よろしくお願いします。

○議長(岸本 健君) 農林水産部長。

  〔角谷博史君、登壇〕

○農林水産部長(角谷博史君) 先ほども答弁させていただきましたように、保険というのは、そもそもやっぱり自分の経営を守るために自分自身で入っていただくというのが基本であるというふうに考えておりますので、先ほど申し上げたとおりでございます。

 なお、農家じゃないんで気持ちがわからんという御指摘がございましたが、私は農家の気持ちに寄り添って、例えば、厳選出荷のミカンの制度を創設したり、あるいは、昨年の台風のときでも、国に対して、国に要望して支援策をつくっていただきましたし、それに県費でさらに上乗せをさせていただいて、全国に負けやんぐらいの制度をつくってきたつもりでございます。

 今後も、そういった気持ちでやっていきたいというふうに考えております。

○議長(岸本 健君) 玄素彰人君。

  〔玄素彰人君、登壇〕

○玄素彰人君 やっぱりお聞きをしてれば、国は農業者のリスク管理のために国がお金を出して、農業者の今言う個人の負担になるべきところへお金を出してるんですから、そのことに対する回答になってないということを申し上げときたいと思います。

 いずれにしても、これ、何回もやってても同じようなことになるんでしょうから、もう一つだけちょっと再質問させていただきたいんですけども、この農業収入保障保険の加入率というのがまあまあちょっと芳しくないねというお話を冒頭させていただきました。

 これ、2年目になるわけなんですけども、先ほど部長から、その啓発であるとか加入促進に努めますというお話をいただきました。それは評価したいと思うんですけども、この加入促進をするという行動については、30年の3月、また31年の3月に農林省の生産局長からしっかりPRしてねという通達なのか、僕はわかりませんけども、あったように思うんですね。その中では、市町村の担当者にしっかり知らしめてくださいね、県の農業者の団体との会合においては、そういったこともPRすると同時に、青色申告の方がいらっしゃったら、そういう情報を拾い上げて、収入保険の担当者に渡していいですかというぐらいのことまでやってくださいというふうな項目もあったように記憶してるんです。幾つかあったと思います。

 そういったことを今された上で、この加入率なのかどうかというのがちょっと疑問に思っているんですけども、県は、この収入保険の加入に対して具体的にどういったことをされて今まできたのかということと、これから収入保険の周知徹底、加入の向上に努めたいというお話をいただいたんですけども、部長の思いでも結構なんですけども、どういったような形でこの収入保険というのを加入率を上げていきたいとお思いなのか、答弁いただけたらと思います。よろしくお願いします。

○議長(岸本 健君) 農林水産部長。

  〔角谷博史君、登壇〕

○農林水産部長(角谷博史君) 県では、これまでテレビとかラジオなどの広報とか、あるいは農業者の集まるような場で、制度の周知を図ってきたところでございます。また、普及の現場で農家の方々と直接接しておりますから、そういった場で、こういった制度ができましたよ、リスク補塡になりますよというような啓発をやってきたところでございます。

 先ほど答弁させていただきましたように、今年度が初年度になりますから、そういった評価、農家の皆さんのお声を聞いた上で、何をすべきかということをよく考えた上で、例えば一方では、一つは国に対して制度の改正を要望していくとか、一方では農業共済組合に対して、もっともっと新しいタイプの保険の加入も含めて、戸別訪問とかによってどんどん加入を上げていくようなことをきめ細かく指導していきたいと、このように考えてございます。

○議長(岸本 健君) 玄素彰人君。

  〔玄素彰人君、登壇〕

○玄素彰人君 PRに努めていただける旨の答弁であったと理解をしたいと思います。

 共済組合に対しては、多分県は監督権があったんで、ああしろこうしろというようなことは言えるんだと思いますけども、並列に考えていただいて、とにかく加入率向上に、監督権限者という上から目線じゃなくて、同列でひとつやっていただけたらなというふうに思うんです。

 農業って、私、やっぱりもうけにくい。自分自身も小さな事業をやってますけども、農業と比べてどっちやるんなと言われたら、やっぱり私ね、農業を選択、ようしません。やっぱりそれだけ難しいというふうな僕は認識を持っているんです。だからこそ、今回この収入保険に対しても国はしっかりお金を出すという対処をされているんだというふうに思うんですね。

 ヨーロッパのほうへ行きますと、農業収入の約95%というのが補助金に裏打ちされた収入であるというふうに私、何かで読んだことあるんですけども、日本のそれは20%だそうであります。

 あくまで私の私見でありますけども、農業に対しては何も見境なく出したらいい、助成金を出したらええというものではないとは思いますけども、しっかりまだまだサポート、食料の安全保障の意味も踏まえてやっていく必要があるんだろうかなというふうに思います。

 最近は、農業所得を農業されてる方も規模化、大きくしていくというようなことをされて成功されてる方もいらっしゃいますけども、それはすなわち大きくするということはリスクも上がってくるということでありますから、そういうようなことも理解をしていただきたいと思いますし、今までの農業というのは、とにかく所得を上げるために政策を実施してくるということが主眼であったと思うし、私はそれは間違ってないというふうに思うんですね。県もしっかりやってくれてると思うんです。だけど、一歩立ちどまってもうて、リスクという、なるほど農業政策の観点もあるんだということをぜひぜひ今回の質問でひとつ頭の隅っこにでも置いてもうたらうれしいなと思いますので、その辺、御指摘を申し上げて、この質問に対しては終わらしていただきたいと思います。

 それでは、続いて4点目でございます。宿泊税の導入検討についてでございます。

 宿泊税について、現在、都道府県では、東京都と大阪府が既に実施、福岡県は導入を決定、広島県、沖縄県、宮城県、山梨県並びに北海道は導入を前向きに検討していると理解をしております。

 ホテルの耐震化などについては既に和歌山県も公費を投じているところでありますし、これは、直接的、間接的に宿泊者数をふやすことにかかわってくる予算だと認識しております。

 ほかにも、既に取り組んでいるおもてなしのトイレの整備、サイクリングロードの整備、世界遺産を初めとする観光資源の整備・保全のための費用、クルーズ船誘致の報奨金なども観光の費用と考えられると同時に、観光振興のためにこういった予算はさらにふやしていく必要もあると考えております。

 今後、これらの原資となる財源が一層必要になると思われる中、県と市町村の二重課税回避のためにも、宿泊税導入に向けて、少なくとも議論を始めてはいかがと考えますが、当局の見解を求めます。

○議長(岸本 健君) 商工観光労働部長稲本英介君。

  〔稲本英介君、登壇〕

○商工観光労働部長(稲本英介君) 宿泊者に課税する宿泊税については、東京都、大阪府、京都市、金沢市などで既に導入されており、令和2年度からは、新たに福岡県なども導入が決定している状況でございます。

 宿泊税導入の動きは、訪日外国人増加への対応や観光客の受け入れ環境整備などの観光振興策に充てる財源確保を目的とするものであると承知しております。

 しかし、本県においては、宿泊施設の稼働率が他府県に比べ決して高くない状況などから、宿泊税の導入が宿泊客の減少につながるといった観光需要への影響が懸念されるところです。

 宿泊税については現時点で直ちに導入する状況でないと考えておりますが、将来を見据えて、全国的な導入状況など他府県の動向及び本県における観光需要の状況などを見定めた上で、時期を見て慎重に検討してまいりたいと考えております。

○議長(岸本 健君) 玄素彰人君。

  〔玄素彰人君、登壇〕

○玄素彰人君 枕言葉は多うございましたが、ちょっと検討しますと最後に言っていただいたんで、了としたいと思います。

 今の答弁の中で、宿泊率というか宿泊者数というか、入居率と言わへんな、宿泊率が低いからちょっと難しいんじゃないかという旨の答弁がありましたけども、山梨県は、この9月に宿泊税導入に今かじを切ってます。その宿泊率がというと、和歌山県よりも低いということをまず御指摘を申し上げておきたいと思います。

 それと、なぜ山梨県が宿泊税の導入の検討を始めたかというと、実は、山梨県の旅館環境衛生組合、要は旅館の組合から検討をしていただけないかという旨の話があって、この導入検討をされたというふうに記事には書いておりました。

 だから、単にお金を旅館から徴収する、宿泊施設から徴収するというのが宿泊税じゃなくて、結局それを財源にして新たな投資をする、それによって最終的には旅館業の方にとってもプラスになるというふうに山梨県の方は判断したからこそ、そういう議論になってるんじゃないかなと。観光にもよし、旅館の皆さんにもよし、財源が新たに入るわけですから、一般財源を県から出さなくていい──少しですよ、全部が全部でないですけども──そういう三方よしの方向というのがこの宿泊税でやれるというふうに判断をされたからなということをちょっと考えると、ちょっと考察不足かなというふうに思いました。

 その上で、和歌山県どうかといいますと、30年度の予算で、観光の関連、先ほどおもてなしのトイレなんかも話させていただきましたけども、そういったものを含めて年間で35億円拠出しております。もちろん、ホテルの耐震化なんかに国費も入ってますから、実質的な財源で言えば17億出しております。この17億をさらに乗せていくために、やっぱり政策ってお金をつぎ込まなんだら実効力て出てこないと思うんですね。だから、実効力あるために、するために、どう財源を確保していくのかというて考えて思ったのがこの提案であるということを理解をしていただきたいと思うんです。

 宮城県で既に宿泊税に向けた議論が始まっていて、100円から500円までの案があるそうなんですね。100円だと8億円、ほんでマックスで500円で43億円という試算出てるんですけども、簡単な話で申し上げたら、200円上げたら今の和歌山県の実質の一般会計からの持ち出しの部分というのは確保できるし、さらにその200円分を丸々今の和歌山県の観光のために使えば、それは宿泊客の方も、もうかるやろうなと喜んで税を出してくれるのかなというふうに思いますし、この宿泊税の議論に関しては、平成29年に知事会からも国に対して法定税化するよう検討するよう要望書も出しているということの事案であるということもぜひぜひおわかりをいただきたいと思っているんです。

 とにかく、お金をただ単に徴収されるのが宿泊税というものではないということを再度申し上げて、御指摘させていただいて、この質問は終わりたいと思います。

 それでは、引き続き5点目に入らしていただきたいと思います。県職員住宅の空き部屋の活用についてでございます。

 和歌山県職員が入居できる職員住宅については、ことし11月1日現在で547戸あり、そのうち170戸が空き部屋の状態です。入居率は県全体でいうと68.9%ですが、私の地元の日高郡の入居率は25.9%と振るいません。

 全体的な傾向を見ていると、単身世帯向けの入居率は高いのですが、世帯向けの入居率が低い傾向にあります。プライベートにおいても職場の人間関係が続くのが煩わしいのか、住居手当が出るから、好きなところに住みたいからなど理由はあると思いますが、職員住宅は公費を投入しているものです。

 賃貸住宅を経営する観点から見ても、面積のとる世帯用の空き室が多いとなると、現状だと赤字の領域に入ると考えます。何も職員さんの入居に係る賃料を上げるよう申し上げているわけではないのですが、世の中には、65歳以上の単身者の方が民間住宅の受け入れを拒否されたり、低所得で住居に苦労される方もいらっしゃいます。

 また、Iターンの方のお試し住居や留学生の宿舎、ひきこもり対策、ひとり親家庭にも活用していただくことができるとも思いますし、整理して市町村や民間に売却したり、単身者の需要が高いのであれば、改修が必要になった段階で世帯用を単身者用に改修することだって可能です。

 これは、特殊性のある警察の官舎は別にして、条例の縛りのある県営住宅にも同じようなことが言えます。建物の改修する時期を迎えているものもある中で、県職員住宅の有効利用についての考えを総務部長に伺います。

○議長(岸本 健君) 総務部長。

  〔田村一郎君、登壇〕

○総務部長(田村一郎君) 県職員住宅の現在の入居状況につきましては、建設当時から比べますと、高速道路の延伸等の交通事情の変化による通勤範囲の拡大や職員ニーズの多様化により、単身者用では入居率が100%となる住宅が大多数である一方、世帯用では入居率の低い職員住宅もある状況でございます。

 職員住宅につきましては、職員の福利厚生を目的に建設された行政財産であり、本県の地域事情の中で、必要な職員に対し、安定して住居を提供するというその本来の目的を達成するため、これまでも適時適切な維持修繕や機会を捉えて入居の案内をするなど努めてきたところでございますが、今後は、さらに世帯用住宅を単身者用に改修するなど、職員のニーズの変化に対応した整備を行い、職員住宅の需給に見合った改善を図ってまいりたいと考えております。

 議員から御提案のございました職員住宅の有効利用につきましては、住宅戸数の適正化を図りつつ、例えば、平成23年の紀伊半島大水害の折に災害被災者の一時避難住宅として使用したように、一時的な利用をさらに拡大できないか、検討してまいります。

○議長(岸本 健君) 玄素彰人君。

  〔玄素彰人君、登壇〕

○玄素彰人君 住宅の活用について、今の後半の部分については、非常に前向きな答弁であったと理解をします。

 教職員住宅にしても職員の住宅にしても官舎にしましても、税金、公のものであるという認識はやっぱり持っておく必要があると思うんですね。

 冒頭申し上げたように、日高郡の入居率というのは25.9%。別にこれはきのうきょうなったわけじゃなくて、今に至っているわけなんです。そのことも十分認識をしていただくと同時に、私が今度またこんな質問をしなくていいようにお願いを申し上げて、この質問は終わりたいと思います。

 それでは、6点目に移らしていただきたいと思います。

 6番目、水素社会実現に向けた本県の取り組みについてでございます。

 2017年12月、政府は、世界に先駆けて水素基本戦略を発表しました。これは、2050年を目標に水素社会を実現するための計画で、水素をカーボンフリーなエネルギーの新たな選択肢として位置づけております。同時に、安全保障の確保と温室効果ガスの排出削減の課題を同時進行で解決するとともに、我が国が水素利用において世界をリードし、世界に先駆けて水素社会を実現することなどが掲げられております。

 また、この計画では、ガソリンやLNGなどの従来エネルギーと同等程度の水素コストを実現するため、水素の生産から利用までの政策目標を提示しました。具体的には、おおむね2030年ごろを目途に、水素を低価格化、国際的な水素サプライチェーンを開発し、将来的には環境価値も含め、既存のLNG火力発電と同等のコスト競争力を目指すなど、商用化を進めているところです。

 こういった国の動きを受けて、和歌山県においても、本年5月、「水素社会実現に向けた最新動向」をテーマとしたフォーラムを開催、6月には、わかやま水素社会推進ビジョンを策定しました。7月上旬には、和歌山市太田に県下初の水素ステーションができるとともに、県の公用車にも水素を燃料とする車・燃料電池自動車(FCV)を導入したところです。

 水素は、さまざまな資源からつくることができ、貯蔵、運搬が容易であり、エネルギーとして使用する際に二酸化炭素を排出しません。また、例えば、災害により停電が発生したりガス供給が途絶したりした場合においても、蓄電池などを活用することによりエネルギー供給が可能となるケースがあることも考えられます。

 さらに、産業政策的な側面から申し上げると、世界的に低炭素化の実現に向けた水素の利活用が進めば、将来的に全世界で水素関連産業の市場規模が2.5兆ドルに成長し、新たに雇用が3000万人創出されるという試算も存在するなど、今後成長が見込まれます。

 水素社会を実現していくためには、水素の需要を喚起していく必要性と、いかに安価な供給体制をつくり出すかという大きなハードルがあります。国が定めた水素・燃料電池戦略ロードマップでは、2025年度までに320カ所の水素ステーションを整備し、これまで先行して整備を進めてきた4大都市圏だけでなく、全国的に水素ステーションネットワークを広げることを目指しております。

 そこで、質問でありますが、一つ目として、現在、国が水素社会実現に向けて進めている取り組みの一つとして、エネファームと言われる家庭用燃料電池の普及があります。県推進ビジョンの中にもその普及拡大がうたわれておりますが、具体的にどのようなアクションを起こされるのか、伺います。

○議長(岸本 健君) 商工観光労働部長。

  〔稲本英介君、登壇〕

○商工観光労働部長(稲本英介君) 議員御質問のエネファームと言われる家庭用燃料電池については、既存のガス設備を利用して水素を発生させ、空気中の酸素と反応させて発電するとともに、発電の際に発生する熱を給湯に利用できます。このため、電気と熱の両方を効率よく活用でき、また停電時においても発電が可能なので、災害対策の意味でも注目されています。

 2009年の発売後、徐々に導入されてきており、昨年度まで累計販売台数は、全国で約27万6000台、和歌山県で約2000台となっています。さらなる利用促進を図るため、県のホームページや環境イベント等を活用して、その有用性を紹介していきたいと考えております。

○議長(岸本 健君) 玄素彰人君。

  〔玄素彰人君、登壇〕

○玄素彰人君 まず、冒頭申し上げたいのは、この水素社会の実現というのは来年度の県の新政策の柱の一つということで位置づけられているということを申し上げておきたいと思います。

 その上で、エネファームと今ちょっと説明あったんですけども、要は、ガスを使って、そこに酸素を放り込んだら水素が発生して、その熱でお湯と電気をつくるという認識でよかったんかと思うんですけども、これを和歌山県では進めていきましょうということで、推進ビジョンの中に書かれているというふうに思うんです。

 今、これ100万ちょっとぐらいの値段がして、約で申しわけないんですけども10万ぐらいの補助金があったというふうに思うんですけども、これをやっぱり推進していくということであれば、県から幾らかの上乗せをしてということも含めて推進をしていっていただくように、これはエールを送らしていただいて、この質問はこれで終わりたいと思います。

 それでは、2点目に移らしていただきたいと思います。

 2点目、現在、県下における水素ステーションは、本年7月に設置された1カ所です。費用対効果、タイミングもあると考えますが、日本における水素社会実現の先駆者となり、その恩恵を享受すべく、先行投資的には民間事業者と共同して、また国費の支援を求めるなどして、可及的速やかに紀北の東端、紀中、紀南地域にも水素ステーションを設置してはと考えますが、当局の見解を求めます。

○議長(岸本 健君) 商工観光労働部長。

  〔稲本英介君、登壇〕

○商工観光労働部長(稲本英介君) 燃料電池自動車いわゆるFCVは、水素を燃料としてモーターの動力で走る車で、走行時に二酸化炭素を排出せず、環境に優しいクリーンな車であり、県においても、本年7月に燃料電池自動車1台を公用車として導入し、水素エネルギーの利活用拡大、県民理解の醸成を進めております。

 しかしながら、燃料電池自動車の保有台数は、2019年3月末現在、全国で約3000台であるのに対して、和歌山県では7台にとどまっています。また、水素ステーションについては、本年7月に岩谷産業株式会社により和歌山市内に整備されましたが、その一つにとどまっています。このような状況の中で、燃料電池自動車の普及には、燃料の水素を充塡するための水素ステーションのさらなる整備が必要不可欠と考えています。

 水素ステーションの建設費用については約3億円から3億5000万円と言われており、ガソリンスタンドの約1億円に比べ、コストが高くなっています。そのため、国において整備に係る補助金制度が設けられていますが、燃料電池自動車の現状から鑑みるに、設置事業者としては採算が合わず、簡単な取り組みではないと推察します。

 このため、県としましては、技術革新や量産化によるコストの動向、国の推進施策などを注視するとともに、和歌山県内に新たな水素ステーションが整備されるよう、事業者への働きかけや情報提供等の協力を進めていきたいと思います。

○議長(岸本 健君) 玄素彰人君。

  〔玄素彰人君、登壇〕

○玄素彰人君 答弁ありがとうございました。

 7台なんですよね。7台のために水素ステーションつくったんかというよりも、私は7台だからこそつくったという県の取り組みを評価したいと思ってるからこそ、この質問をさせていただいております。

 最初、投資的な経費とか時代を切り開いていくというのは、特に行政は苦手としている分野でしょうけども、だけど、やっぱりやらなきゃならないことはやらなきゃならないということで、やられているその姿勢は高く評価したいと思います。

 先ほど、水素ステーションをつくるのに3億ぐらいかかるんだというお話がありました。これ、だけど国費は3分の2出るでしょうから、実質負担は1億でできるというふうに私は理解をしておりますし、1億ということであれば、ガソリンスタンド一つつくるぐらいの値段であります。もちろん、今は岩谷さんにおんぶにだっこで、とにかくつくってくださいねというような話でやっておりますけども、やっぱり水素社会を実現していく、ある程度普及をさせていくということであるんならば、少なくとも橋本筋であるとか紀中とか紀南に対して、たとえ県が5000万、半分ぐらい出しても、それはやるということの気概がなかったら、何のためにこれを打ち出したんですかということになるんだと思うんですね。

 愛知県あたりがこれの先進の自治体らしいですから、そういったところの動向も踏まえて、とにかく停滞は衰退を招くだけでしょうし、この水素社会のゴールというのは2050年であったと思います。まさに国家百年の計ではありませんけども、とにかくこの水素社会実現に向けて、これは和歌山県がやるんだとなれば、しっかり取り組んでいただきたいということを申し上げて、この6点目の質問を終わります。

 以上で、私が予定しておりました質問を終わらしていただきます。

 今回、提案型の質問で、当局の皆さんにはちょっと厳しいことも申し上げたと思いますけども、和歌山県を思うがゆえということで、お許しをいただきたいというふうに思います。

 また、同僚議員におかれましては、拙い質問におつき合いいただきまして、ありがとうございました。感謝申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

○議長(岸本 健君) 以上で、玄素彰人君の質問が終了いたしました。

 質疑及び一般質問を続行いたします。

 1番鈴木德久君。

  〔鈴木德久君、登壇〕(拍手)

○鈴木德久君 皆さん、こんにちは。

 ただいま議長からお許しをいただきましたので、早速ですが、一般質問に入らせていただきます。

 今議会では、明治25年の紀州勝浦沖サンマ漁船遭難事件についてと本県におけるひきこもり支援対策についての2項目について質問させていただきます。

 まずは、明治25年の紀州勝浦沖サンマ漁船遭難事件についてであります。

 最近、悲惨な事件が毎日のように起きています。例えば、7月18日に起きた京都アニメーション第1スタジオの放火殺人事件による30数名もの死亡事件や、5月28日の川崎市の歩道でバスを待つ園児の列に刃物で切りつけ、園児と保護者が数人死傷した事件、あるいは、11月の青森県八戸市の中学生による女子児童切りつけ事件での男子中学生は、「誰でもよかった。人を殺してみたかった」と供述しております。また、幼い我が子にモデルガンを撃ち、その後、餓死させたといった幼児虐待も後を絶ちません。

 なぜこのような恐ろしい事件が多発するのか、そして、それを防ぐ方法はないのでしょうか。私は、やはりこれは教育に期待するよりないように思います。

 私の息子の小学校時代といいますと、ゆとり教育とか言われ、その後は、生きる力をつける教育とか言われましたが、もう少し踏み込んで、人間として最も大切な、人を思いやる心や情けの心、すなわち命の尊厳を中心とする教育を目指してもらいたいと思います。

 さて、「情け島」と言われる人口5000人の島があります。昨年10月22日と23日にこの島に行ってきた関係者の方に直接聞いた話を参考に、質問させていただきます。

 その事件の概要は、今から127年前、明治25年12月28日、那智勝浦町沖にサンマの大群が発生し、新宮から由良までの県下16漁協、60数隻の船で749名の漁師が那智勝浦沖に向かいました。それぞれの船はサンマを満載し、ええ正月ができると喜んでいたとき、突然の暴風に見舞われました。何とか陸にたどり着いた者291名、海で亡くなった者229名、その他、船が操縦できなくなり漂流した者229名は、東京都の八丈島、青ヶ島、御蔵島に漂着したのです。

 年末の八丈島などに突然229人もの痩せ衰えた人間の漂着、島の人々の驚きは想像を絶するものだったと思われます。絶海の孤島、流人の島、鳥も通わぬ八丈島、貧しい質素な生活をしていた当時の八丈島の人々に、32日間、けがの治療、看護、衣食住のお世話、死者の火葬、義援金の募集など、大変なお世話をいただき、翌年2月に軍艦「浪速」で和歌山に無事帰還したという、漁民の海難史上最大級とも言われるサンマ漁船遭難事件であります。

 この遭難事件の犠牲者229名の中に、さきの関係者の御先祖が2名おられ、菩提寺の田辺市の竜泉寺で1994年に100回忌の法要が行われたときに出席して、2名とも10代であった事実を知り、大変ショックを受けたそうです。

 この竜泉寺の山門をくぐった左手に、巨大な勝浦沖遭難の石碑があります。近くの学校で教師をされていた方が興味を持たれ、退職後に八丈島まで赴き、調査の結果、平成28年9月に「紀州勝浦沖秋刀魚漁船遭難の顛末:その真相と教訓」を発表され、新聞報道でも紹介されました。

 これと時を同じくして、遺族の方々を中心に、「八丈島に『感謝の碑』を建てる会」を結成。その後、多くの方々の御協力により、昨年10月23日に八丈島で除幕式がとり行われました。除幕式には、和歌山県側からは、建てる会の関係者、田辺市、那智勝浦町、和歌山県庁からの担当者と報道関係の18名、東京都八丈町からは14名が出席され、東京都の小池百合子知事からもメッセージが寄せられたそうです。

 そこで、農林水産部長にお尋ねします。

 漁民の海難史上最大級と言われるこの事件に関しまして、和歌山県としてどのように認識されているのか、お答え願います。

○議長(岸本 健君) ただいまの鈴木德久君の質問に対する答弁を求めます。

 農林水産部長角谷博史君。

  〔角谷博史君、登壇〕

○農林水産部長(角谷博史君) 紀州勝浦沖サンマ漁船遭難事件につきましては、229名ものとうとい命が犠牲となる、本県水産業の歴史を振り返ってもまれに見る痛ましい出来事でございました。また、これとともに記憶しておかなければならないことは、議員お話しのとおり、八丈島等に漂着した遭難者が島の人々からけがの治療や衣食住のお世話など、献身的な支援を受けたという史実であります。

 昨年10月には、遭難事件の御遺族や漁業関係者などの方々から成る「八丈島に『感謝の碑』を建てる会」の皆様が改めて感謝の気持ちを形にあらわそうと、和歌山県民感謝の碑を八丈島に建立され、その除幕式には県からも出席をし、知事のメッセージをお届けしたところでございます。

 こうした活動などを通じ、この事件の記憶と先人たちの思いを後世に伝えていくことは、県としても意義深いものであると認識をしてございます。

○議長(岸本 健君) 鈴木德久君。

  〔鈴木德久君、登壇〕

○鈴木德久君 私は、紀州勝浦沖サンマ漁船遭難事件につきましては、昨年、機会があって、「八丈島に『感謝の碑』を建てる会」の関係者からたくさんの資料とともにお話を伺いました。

 また、エルトゥールル号遭難事件につきましては、以前から、串本町紀伊大島の樫野埼灯台のそばにあるエルトゥールル号殉難将士慰霊碑やトルコ記念館に立ち寄ったこともあり、多少の知識はありましたが、映画「海難1890」で、より深く知ることができました。

 私は、この二つの海難事件を比較しながら思ったのですが、知れば知るほど、紀州勝浦沖サンマ漁船遭難事件のことを和歌山県民として後世に伝えなければならない事件だと思います。

 海に生きる島々の人々、串本・大島樫野の人々、また、八丈島の人々には、遭難・海難事故があれば助けて介抱するのが当たり前であり、それを殊さら恩着せがましく言わない、思わない暗黙の気持ちがあるようです。その日本人の美徳とも言うべきものが大和魂と言われたり、また、「刻石流水」という言葉があり、受けた恩は石に刻め、かけた情けは水に流せという意味だそうです。

 平成29年4月に、田辺市を中心とした関係者が八丈島を訪れた際、八丈島には、この事件に関する何の碑も痕跡も残っていなかったようです。そして、ほとんどの人々はこの事件を知らず、水に流して完全に忘れてしまっているようでした。

 エルトゥールル号事件では、大島村樫野を中心として、当時、台風で出漁できず、食料の蓄えもわずかだったにもかかわらず、住民は、浴衣などの衣類、卵やサツマイモ、それに非常用の鶏までも供出するなど、生存者たちの救護に努めました。この結果、樫野の寺、学校、灯台に収容された69名が救出され、生還に成功しました。

 この事件は、その後、トルコ国家からの返礼の行動、慰霊碑の建造、その後の交流へとつながる歴史的な出来事であります。1980年に発生しましたイラン・イラク戦争で戦場が激化し、1985年の劇的なトルコ航空による日本人救出劇へとつながっています。トルコ国民が95年も前の串本での海難事故で、串本・大島樫野の人々という狭い思いではなく、広く日本人から救助されたという恩を忘れずにいてくれたおかげだと思います。それは、トルコ国民が、あの事件をトルコの子供たちの教育の中に教材として取り入れているからだと聞きます。

 また、近年では、1999年のトルコ大地震、2011年の東日本大震災の際にも、日本とトルコ国との間にはお互いの助け合いの関係もあったようです。

 串本町では、現在に至るまで5年に1度、追悼式典が行われており、2008年6月7日には、訪日していた当時のトルコ国大統領が同国の大統領として初めてこの地を訪れ、遭難慰霊碑の前で行われた追悼式典に出席し、献花を行っております。

 エルトゥールル号海難事件との違いはあろうかと思いますが、和歌山県として、何か歴史的事実として後世に残す方法、道はないものでしょうか。教育長の見解をお示し願います。

○議長(岸本 健君) 教育長宮﨑 泉君。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 紀州勝浦沖サンマ漁船遭難事件を後世に伝えるためについてでございますが、この遭難事件に関する歴史資料につきましては、田辺市に慰霊碑が、それから那智勝浦町に記念碑が残されております。また、大正6年に編さんされた「紀伊東牟婁郡誌」に事件の詳細な記録があります。

 歴史的事実を後世に伝えるためには、それぞれの地域において残された資料を良好な状態で保存しておくことが重要であります。関係市町の取り組みに協力をしてまいりたいと考えております。

○議長(岸本 健君) 鈴木德久君。

  〔鈴木德久君、登壇〕

○鈴木德久君 御答弁いただきました。

 一連の感謝の碑建立の行事の後、これまでの経過を関係者の方々が取りまとめられ、1冊の記録集「紀州漁民漂流譚 なさけの島を忘れるな」として発行され、田辺市内の小中学校、高校初め関係部署へ配布されました。田辺市では、興味を持たれたある中学校の先生により道徳の研究授業で取り扱われ、大変注目を集めたように伺っております。

 県民がこの事件についてより詳しく認識し、後世に語り伝えていくためには、トルコ国民がトルコ航空での日本人脱出に協力した事例のように、この事件を子供のときから継続的に教えていくことが重要だと思いますが、教育長の見解をお聞かせください。

○議長(岸本 健君) 教育長。

  〔宮﨑 泉君、登壇〕

○教育長(宮﨑 泉君) 学校教育での活用についてでございますが、明治期に紀州の漁師が船団を組み、やぐら船で勇敢に沖合遠くまで出たこと、また、このような遭難事故で多くの方が亡くなり、また献身的な救援活動があったことなど、地域の史実等を学習することは大切なことであります。

 ふるさと教育の中で、このような各地域の史実を取り上げ、創意工夫ある学習をすることは、ふるさとへの愛着と誇りを持ち、貢献できる人を育てるために有意義であると考えております。

○議長(岸本 健君) 鈴木德久君。

  〔鈴木德久君、登壇〕

○鈴木德久君 御答弁ありがとうございました。

 平成4年に、八丈空港滑走路のかさ上げ改修工事の件で八丈町長さんが国に陳情に行った際、時の運輸政務次官であった和歌山県選出の国会議員さんに八丈島と和歌山県の深い縁をお話しされたところ、政務次官の国会議員さんは早速悪天候の中へ、ヘリコプターを飛ばして視察され、後の工事の計画、着工が順調に進み、完成に至り、八丈島の方々に大変感謝されたという話がございます。私は、八丈島の島民の方々へ、和歌山県民を代表して、100年前のサンマ漁船遭難のお礼を果たしていただけた話ではないかと思います。

 また、八丈島での除幕式では、建てる会の会長さんは、「八丈島の恩を忘れるなという先人の言葉を後世に語り継ぐよう努力したい」と挨拶されました。八丈町の町長さんは、「祖先の行動が今回の感謝の碑につながったことを誇りに思います」と話されました。東京都知事は「助け合いの精神や感謝を伝えていくことは意義深い」とされ、仁坂知事も「黒潮でつながる和歌山と八丈島の交流が深まるよう期待します」とメッセージを寄せられました。

 さらに、八丈町に感謝の碑を建立した縁で、来年1月20日から3日間、八丈町町会議員の方8名と職員2名が田辺市に視察に来ることになっており、交流が続いております。

 県として、今後の交流のあり方について、農林水産部長の答弁をお願いいたします。

○議長(岸本 健君) 農林水産部長。

  〔角谷博史君、登壇〕

○農林水産部長(角谷博史君) 今後の交流についてでございますが、遭難事件から120年以上が経過し、この大惨事について知る人も少なくなる中で、和歌山県民感謝の碑除幕式での交流を一時的なものとせず、八丈町と田辺市初め関係市町が交流を続けていくことは、遭難事件の記憶と八丈島への感謝の思いを次の世代の県民に引き継いでいくためにも非常に意義深いものであると考えております。

 県といたしましても、黒潮でつながる和歌山県と八丈島の交流がさらに深まることを期待するとともに、このような交流の輪を広げていく取り組みについて、関係市町の求めに応じて協力してまいります。

○議長(岸本 健君) 鈴木德久君。

  〔鈴木德久君、登壇〕

○鈴木德久君 ありがとうございます。

 「八丈島に『感謝の碑』を建てる会」の方によりますと、会の活動にかかわり、昨年の除幕式に参加したことによって、八丈島をより深く知ることができたそうです。

 八丈島には、これまで黒潮に乗って漂流してきた人々を数え切れないほど救助してきた歴史があり、また、追放された多くの流人も島の人々の情けに心を癒やされて生き延びてきたのです。

 そしてまた、八丈島には流人の墓はないそうです。八丈に来れば、どんな人でも島人であり、島民と同じ墓地に葬られるのです。情けの心があるから、そういう慣習になっているのでしょう。命を大切にしてきた歴史が今も連綿と続いており、これこそが今の日本に求められている情けの心なのではないでしょうか。このことが今後の教育等に生かされることを期待して、一つ目の質問を終わります。

 次に、県内のひきこもりの現状と支援の取り組みや課題についてお尋ねします。

 近年、我が国の若者や中高年層をめぐっては、厳しい雇用情勢の中、就労の不安定化や親への依存の長期化及び社会への関心の希薄化など、社会的に自立ができず、社会との関係が途絶え孤立してしまう、いわゆるひきこもりの状態にある方が増加しており、社会的な問題となっております。

 社会とのつながりを失い、社会的に孤立したひきこもりの状態にある方の増加は将来にわたる重大な問題であり、その方々への支援は、国、県、市町村が連携して取り組むべき喫緊の課題であるとされています。

 内閣府は、平成28年に15歳から39歳の若年層において全国で約54万1000人、本年3月には40歳から60歳の中高年層において全国で約61万3000人、合わせると115万人以上の方がひきこもりの状態にあると発表されております。

 私の地元である田辺市では、平成13年から健康増進課にひきこもり相談窓口を開設し、保健、医療、福祉、教育など幅広い分野の方、学識経験者や自助グループの方などで構成されたひきこもり検討委員会を設置し、行政と連携しながら、特に10代から30代、主に思春期・青年期の方を中心とした支援を展開してきました。

 また、和歌山県におかれましても、平成16年度から、全国に先駆けて県と市町村との共同でひきこもり者社会参加支援センター事業が創設され、15年間にわたり実施してこられました。この和歌山県の取り組みが認められ、国庫補助事業・ひきこもりサポート事業が創設され、今年度4月からこの事業を活用し、ひきこもりの状態にある方への支援が継続されています。

 私の知人の話になりますが、友人とのコミュニケーションを絶ち、家庭での自室だけで過ごす方の御両親から相談を受けたことがあります。御両親は家庭内で話し合ったり、親戚にも相談しましたが、このような状態が改善されることはありませんでした。

 御両親は、地域でひきこもりの状態にある方の支援を行っている地域の事業所に相談を行いましたが、事業所の相談員の方が何度も家庭を訪問するも、本人は面接に応じない状況が長く続いたそうです。

 御家族や事業所の相談員の方などの粘り強い働きかけがあり、あるとき、本人がみずからの意思でその事業所内にある居場所の利用を希望しました。同じ境遇にある方と一緒に居場所を利用することにより、ひきこもりの状態にあった方が徐々に社会性を取り戻し、今では事業所の支援を受けながら地域で生活をしています。

 このように、ひきこもりの状態にある方の支援については、相談につなげること、居場所での社会とのかかわりを取り戻すことが重要な支援であると考えますが、現状では七つの町で地域に居場所を設置できていないと聞いております。

 そこで、福祉保健部長にお尋ねします。

 現在、本県での社会的な問題となっているひきこもりの現状と県の取り組みや課題について答弁をお願いいたします。

○議長(岸本 健君) 福祉保健部長宮本浩之君。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) 本県におけるひきこもりの状態にある方は、内閣府の抽出調査を参考に算出すると約8000人と推計されますが、県精神保健福祉センター内に設置したひきこもり地域支援センターや県内保健所など相談窓口での相談件数は、平成30年度で延べ2400件にとどまっています。

 ひきこもりの状態にある方は、社会との関係が途絶え、孤立しがちとなります。その家族も相談窓口がわからない、いつかは社会に復帰してくれるだろうという期待、また、家族内のことを外部に知られたくないという思いから、相談につながりにくい状況です。

 そのため、県では、「県民の友」やホームページなど、さまざまな広報媒体を通じ、相談窓口の周知を図るとともに、保健所の相談につながった方に対し、必要に応じ、家庭訪問をして相談対応するいわゆるアウトリーチを強化しています。その中で、徐々に社会とかかわり、みずからの意思で行動する力を取り戻し、同じ境遇にある人たちが集まることのできる居場所につなげていけるように取り組んでいるところです。

 現在、ひきこもりサポート事業により、ひきこもりの状態にある方が利用できる居場所が県内に7カ所あり、23市町村において体制を整備していますが、議員から御質問があったように、県内の7町では、圏域内に事業所がないということや居場所の利用を希望する方がいないという理由から、体制を整備するまでには至っていません。

 そのため、県では、体制を整備してない7町に居住されている方が居場所の利用を希望した際には、近隣市町村にある居場所を利用できるようにするとともに、できるだけ身近な場所で居場所が提供できる体制を整えるよう働きかけているところです。

○議長(岸本 健君) 鈴木德久君。

  〔鈴木德久君、登壇〕

○鈴木德久君 御答弁ありがとうございました。

 冒頭に申し上げましたとおり、現在、ひきこもりについては社会的な問題となり、国を挙げて取り組むべき喫緊の課題であると考えております。

 ひきこもりの状態にある方は若者に限らず、中高年の方もいらっしゃいますし、ひきこもり状態が長期化することにより、相談につながることや支援も困難となってきます。ひきこもりの状態にある方やその御家族が少しでも相談を行うことができるよう、窓口の広報啓発や県内の保健所において支援に努めていただきたいと思います。

 また、県と市町村がより一層協力し、相談や居場所の提供を行う事業者が増加し、より多くの方が身近な場所で居場所の支援を受けられることになるよう御尽力をいただき、全国に先駆けて対策を行ってきた和歌山県でありますが、常にひきこもり対策の先進県であり続けるよう継続した取り組みを行っていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 次に、県内のひきこもりの状態にある方への就労支援の現状と今後についてお聞きいたします。

 ことし1月、札幌市のアパートの一室で、82歳の母親と52歳の娘の遺体が発見されました。検針に来たガス業者が電気がついているのに応答がないことを不審に思い、事態が発覚したもので、死後数週間がたっていたとのことです。

 警察によりますと、2人の死因は栄養失調による衰弱死で、母親が先に亡くなり、娘がしばらく後に亡くなられたということです。近所の話によると、娘は10年以上のひきこもり状態で、買い物や食事の世話は母親がしながら、地域とのつながりを避けているように暮らしていたといいます。

 このように、ひきこもりの状態にある方で、特に中高年層においては、8050あるいは7040という言葉があるとおり、親が高齢化し、本人もひきこもりの状態が長期間にわたり継続しているケースは、若者より相談、支援につながることが難しいと言われており、今は親が健在で生活が維持できているが、親亡き後は生活に困窮することが危惧されます。

 ひきこもりの状態にある方には、ほかの人とかかわることができる居場所を提供することで少しでも社会性を取り戻し、次の段階として就労に向けての支援を行い、みずから生活を維持していくことができるよう、長期的な継続した支援を行っていくことが重要であると考えます。

 平成25年12月、生活保護に至る前の段階の生活困窮者への支援を強化することを目的に生活困窮者自立支援法が成立し、全国の自治体においてさまざまな課題を抱える生活困窮にある方に対して支援を行うこととなっており、また、自立に向けての就労支援についても規定されたところです。

 この制度はひきこもりの状態にある方だけを対象とした制度ではありませんが、こういった制度を積極的に活用しながら、みずから生活を維持していくことができるよう支援を行っていくことが重要であると考えます。

 田辺市においても、ひきこもりの状態にある方に、それぞれの状況に応じた必要な支援を多角的に展開している事業所があります。その事業所は、ひきこもりの状態にある方から相談を受け、他の人とのかかわりを持てる場としての居場所を提供するとともに、事業者が経営するカフェや事業者が近隣農家と連携して行う梅の収穫の手伝いなど、就労体験を通じて就労に向けた準備段階の支援を行い就労につなげるなど、ひきこもりの状態にある方がみずから生活を維持していくことができるよう、さまざまな支援を積極的に展開されております。支援開始から4年間の実績では、居場所を利用した方の中から25人の方に就労支援を行い、そのうち13人の方を一般就労につなげ、2人の方を福祉的就労につなげております。

 このように、ひきこもり対策は、ひきこもりの状態の方に寄り添って社会性を回復させ、就労に向けた準備段階の支援を行い、就労につなげ、みずから生活を維持していくことができるようになるまで地道に切れ目なく長期的な支援を行う必要があると考えます。

 そこで、福祉保健部長にお聞きします。

 県内のひきこもりの状態にある方への就労支援の現状と今後について答弁をお願いいたします。

○議長(岸本 健君) 福祉保健部長。

  〔宮本浩之君、登壇〕

○福祉保健部長(宮本浩之君) 県においては、現在、生活保護を受けている方や生活困窮にある方に対する就労支援を行うため、那賀振興局を除く6振興局及び串本支所に就労支援員を配置し、求人情報の提供などの求職活動支援を行っております。

 また、生活リズムが崩れている、社会とのかかわりに不安を抱えている、勤労意欲が低下しているなどの理由により就労に向けた準備が必要な方には、社会福祉法人を初め、地域で福祉支援を行う事業者が運営する施設での簡単な作業の手伝いや事業者と近隣農家が連携して行う農作物の収穫の手伝いなど、決められた時間で他の者と一緒に作業を行うことを通じて規則正しい生活リズムを取り戻し、協調性を身につけてもらうなど、就労に必要な基礎能力を形成するための支援を行っております。

 特に、ひきこもりの状態にある方は、社会性を回復するまでにも相当の時間を要し、就労につなげることが難しいため、焦らず、粘り強く、そして切れ目ない支援を行うことが重要であると考えます。

 今後も、ひきこもりの状態にある方が社会性を回復し、みずからの生活を維持していくための就労につながるよう、市町村や地域で支援を行う事業者と緊密に連携してまいります。

○議長(岸本 健君) 鈴木德久君。

  〔鈴木德久君、登壇〕

○鈴木德久君 御答弁いただきました。

 繰り返しになりますが、ひきこもりの状態にある方が社会性を回復されて就労につながって、みずから生活を維持していくことができるよう、市町村や地域で支援を行う事業者と連携を図り、長期的に継続した支援を行っていくことが大変重要であると考えます。

 特に、地域には、ひきこもりの状態から脱却するため、他の人とのかかわりを持つことのできる居場所や、社会性を取り戻した方が店舗や農作業の手伝いなどの就労体験を通じて就労につながるよう、専門的な支援を行う事業者が必要となります。

 県においては、地域連絡協議会のネットワーク構築や、支援機関や市町村への後方支援体制構築のための助言といった役割を持つひきこもり地域支援センターのより一層の充実を目指しながら、今後も市町村や事業者との連携を図り、ひきこもりの状態にある方に対する支援を行っていただけるよう、また、地域で支援を行う事業者には人材や場所などの確保が必要となりますが、運営上の問題から難しい面もあると思いますので、そういった事業者に支援を行っていただけるよう要望し、私の一般質問を終わらしていただきます。ありがとうございました。(拍手)

○議長(岸本 健君) 以上で、鈴木德久君の質問が終了いたしました。

 これで、本日の質疑及び一般質問を終わります。

 明日も定刻より会議を開き、質疑及び一般質問を続行いたします。

 本日は、これをもって散会いたします。

  午後2時31分散会

 

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