知事記者会見 令和4年11月1日
知事記者会見
記者会見での発表事項等を紹介します
令和4年11月1日 知事記者会見
令和4年11月1日 記者会見室
令和4年度和歌山県文化表彰について
資料1(PDF形式 2,148キロバイト)
今日は発表事項四つ、話題事項一つです。まず、令和4年度文化表彰について、発表をさせていただきます。割と地味な紙ですが、文化賞は、武内和彦(たけうち かずひこ)さん。和歌山県は、武内さんにものすごくお世話になっていて、生物多様性の話或いは世界農業遺産とか、いろいろご指導いただいています。武内さん自身は、和歌山市出身ですが、東京大学の先生をしておられて、中央環境審議会の会長とか、環境、生態のことについて、日本の第一人者だと言ってもいいと思います。
文化功労賞は、TONPEI(とんぺい)さん、宮澤敏夫(みやざわ としお)さん、宮西照夫(みやにし てるお)さんのお三方です。TONPEIさんは、歌手で、主として和歌山で活躍中ですが、大変遅咲きの歌手で、この世界に入ったのは随分最近ですが、今の活躍ぶりは、大変なものがあるのではないかと思います。
宮澤敏夫さんは、音楽家で、今は静岡県にお住まいです。大阪で、大阪フィルハーモニー交響楽団にコントラバスの奏者として奉職されたのですが、その後、大阪フィルハーモニー交響楽団を立て直して、たまたま住んでおられた和歌山市で和歌山音楽振興会を主催し、数多くのクラシックの演奏を世界から呼び集めて、和歌山で根をおろすというようなことを、ものすごく長い間、約40年間にわたりそういうことをやってこられました。余談ですが、楽団の再建屋としても有名で、例えば、大阪は一番初めですが、北海道、静岡、そういうところでちょっとあまり元気がなくなっていた交響楽団を立て直して、立派にさせているという功績もある方です。
宮西照夫さんは、和歌山県立医大の卒業生で、精神科医です。一方、マヤ文明に興味を持っていて、この分野でも大変な学識を発揮しておられますが、文化と心の病をテーマに、数多くの研究をしておられます。最近では、社会的引きこもりについて、いろいろ研究をしたり、或いはそれに対する提言をしたりして、社会に貢献してくださっている方です。
文化奨励賞の岩田直樹(いわた なおき)さんは、聴覚に障害がありますが、グラフィックデザイナーとして、大変な新進気鋭の方です。随分、いろんなところで活躍していて、その(資料の)説明書に書いているような感じですが、これからものすごく期待されるグラフィックデザイナーではないかと思います。
寺下真理子(てらした まりこ)さんは、東京藝大を出られて、ヴァイオリンをずっと幼少の頃からやっておられたのですが、海外でも大変評価されて、今、日本でどんどん売り出し中のヴァイオリン奏者です。
冷水乃栄流(ひやみず のえる)さんは、出身地は橋本市で、東京藝大の作曲科を卒業し、若い作曲家として大変な名声を博しているし、テレビ或いはイベントの音楽もどんどん提供していて、和歌山県も、(紀の国)わかやま文化祭のための奏曲を作曲してくださったり、いろいろ多岐に渡って活躍しておられる作曲家です。
11月10日木曜日14時から、正庁で授与式を行います。ぜひ、ご取材ください。最近の例として、然るべきタイミングで(受賞者に)どんどん(作品を)披露していただくことをやっていて、それぞれのイベントがいくつかありますが、そこにはめて、演奏や展示をさせていただくつもりです。
和歌山県と国立大学法人東京大学が包括連携協定を締結します
資料2(PDF形式 117キロバイト)
次は、和歌山県と東京大学が包括連携協定を締結いたします。11月9日に、総長は新型コロナがなければ来てくださったのかもしれませんが、オンラインで参加をしていただきます。副学長で、この辺についていろいろ世話していただいた津田さんは、前にもお越しになったし、私もお訪ねして、いろんな打ち合わせをしてきた結果、こういうふうになりました。先端科学技術センターの神崎先生にも、いろいろ側面からご尽力いただいて、出席していただくことになっています。どういうことをするかは、(資料の)(1)、(2)、(3)、(4)と四つあり、特に(1)、(2)、(3)です。
一つは、学術研究で、和歌山県を中心とした周辺地域の文化・歴史・自然を究明するとともに、地域の現在及び近未来の課題解決に向けた学術研究を推進する。先端研とはすでに協力協定を結んでいて、いろいろな場面で先端研の先生方が、和歌山で、知的貢献或いは教育をしていただいている場面が大分増えてきた。今回は、全学ですから、特に和歌山で、ある程度まで盛んでかつ世の注目を浴びている、例えば、熊野、紀州、和歌山の歴史、そういうものについても研究対象としてやっていただけるのではないかと思うし、前に和歌山市に東京大学の一部の方がお住まいになって、いろいろ貢献していただいたのですが、まちづくり、人づくり、そういう点についても、いろいろこれから頼んでいきたい。
特に人づくりについては、2番目のところで、人材の交流と育成で、学生がグループ単位で地域から示された課題に対して、解決への道筋提案を行うフィールドスタディを県内で実施してもらうことが決まっています。
それから、こういうことに関するシンポジウムの開催を、もちろん東京大学だけに任せるのではなくて、県も参加してやりたいと思っています。
なお、特に、1番目のところでご説明したように、東京大学にも、随分知見があるから、研究に参加してもらいますが、我々自体も、例えば、文化人類学的或いは文化、歴史についての知見を、どんどんと自分たちも集めていかないといけないと思っています。そこで、県庁或いは県の組織だけの人材では、ちょっと十分ではないと思いますので、広く世の中に、こういう問題について興味のある方は参加してくださいというような研究会を、和歌山県で組織化していこうと思っています。中心は、和歌山県立博物館で事務局をやっていただいて、将来は、紀州学会というような感じの、学者さん或いは在野の研究者が集まるような組織ができて、そういう方々もみんな集っているところで、東京大学と一緒になって研究することができるといいなと思っていて、そっちの準備もボツボツ進めています。
株式会社キョウデンプレシジョンが紀の川市に進出します
資料3(PDF形式 482キロバイト)
企業立地案件が二つあり、キョウデンプレシジョンが紀の川市に進出することになります。これは、電子部品をプリント基盤の上に実装させる、或いはプリント基盤を搭載するためのメカ部品の製造、プリント基盤の上に実装するために受け皿とかの部品を作っているような企業で、西日本の販売を強化するということで、紀の川市にかなり大きな工場を作ってくれることになりました。新規雇用は49名、3年間で正社員が19名と非正社員が30名働いてくれることになっています。場所は、次のページにあり、紀の川市に進出してくれることになりました。11月7日月曜日13時30分から、紀の川市役所で、社長の海老塚さんと、紀の川市長と、私はサインをしていますが、林那賀振興局長と一緒に進出協定を結ぶことになっています。私が、なぜ(出席)できないかというと、全国知事会があって、この日は東京に行っています。
ITテクノロジーを用いて社会課題の解決に取り組む株式会社Will Smartが和歌山市に新オフィスを開設
資料4(PDF形式 819キロバイト)
その次は、デジタルサイネージなどをやって成長した、Will Smart(ウィルスマート)、アルファベットで書く会社ですが、Will Smartが和歌山市に新オフィスを開設してくれることになりました。デジタルサイネージ、電子看板などから、解決型の業務ソリューションまで、今どんどん(業務を)広げている会社です。東京にありますが、今、成長中の会社で、和歌山にもお店を出しましょうということで、ソフトウェアの開発、ハードウェアのキッティングとかをやってくれることになります。進出場所は、ニッセイ和歌山ビルになります。11月2日11時から社長に来ていただいて、市長とともに協定を調印することになっているので、取材してください。
和歌山キャンプの魅力を紹介するポータルサイト「わかやま“ほんまもん”キャンプ」を開設します!!
資料5(PDF形式 199キロバイト)
話題事項で、和歌山キャンプの魅力を紹介するポータルサイト「わかやま“ほんまもん”キャンプ」を開設します。新型コロナもあったからかもしれませんが、キャンプとか自然派が増えてきて、広々したところで、キャンプで楽しみたい、バーベキューをやりたいとか、そういう方が随分増えてきています。この間、和歌山県も串本の施設をやっていた企業の若い経営者が、白浜に大規模なキャンプ場を開設しています。同じようなことは、あちらこちらでそんな話があって、これから多分増えていくのではないか。ちゃんとゴミなどを出さないような形で、上手くキャンプをしていただいて、安全に楽しんでいただくための、いろいろなサービスや施設とかがこれから盛んになり、それによって雇用も増えるし、つまりお金も取れるというふうにしていくといいというふうに思っています。そこで、次の観光のターゲットとして、キャンプに着目して、わかやま“ほんまもん”キャンプというポータルサイトを作ります。
なお、キャンプ用品などを売っている、かつらぎ町のOrange(オレンジ)という会社がありますが、このOrangeが結構流行っている。大阪なんかから、プロチックな用品を求めていっぱいくるということですが、そこで自社開発をした調味料「ほりにし」という調味料シリーズがありますが、「ほりにしブラック」が調味料日本選手権で堂々優勝しました。なんで「ほりにし」かと言ったら、それを一生懸命開発した従業員の名前がほりにしさんだそうです。ちょっと、変わったネーミングですが、そういう会社も出てきて、この世界はどんどん今後広がっていくのではないかと思います。「ほりにし」も、どんどん皆さん宣伝して、取材してやってください。面白いようです。
以上です。
質問と回答
産経:企業誘致2件、発表がありました。最近、特に集中しているというか、かなりペースが上がっていると感じていますが、その辺りのご所感と、何で誘致が増えているのか、どういう要因が考えられますか。
知事:基本的に、一生懸命努力をしてきて、たまたま今、収穫期に入っている。それが集中したので、そんなに大きな理由はない。ただ、何もしなかったら来ません。
バックグラウンドは二つあり、一つは新型コロナです。新型コロナで、テレワークをやってみたら意外といいという感じもあり、東京でこれ以上たくさん人を集めて作り続けるより、地方に出て、環境の良いところ、或いは住環境や通勤環境が良いところで、従業員がゆったりとソフト開発をするのがいいのではないかと思うようなWill Smartのような会社が、おそらく増えているのだろうというのが一つです。
もう一つは、交通の便があって、これがすごく悪いと、空港から自分のオフィスにたどり着くまでものすごい時間かかってどうしようもない、或いは自動車であちこち走っていく時も、にっちもさっちもいかないとかになると、やっぱりあまりいい立地環境ではない。そういう点では、このところ、京奈和もできたし、一周高速道路もだいぶ南ぐらいまで延伸できたし、4車線化もできたしというようなところが、バックにあるのではないか。こちらから努力したバックと、たまたま新型コロナという世の中で時代の変わり目の環境変化がプラスになっていることは事実です。後は、ずっと一生懸命やってきたので、たまたまコロコロ出ているというような感じはあります。
共同通信:東大との包括連携協定についてですが、これも、どういったバックグラウンドがあるのか、もう一度経緯をお聞かせいただきたい。
知事:ものすごく細かい経緯を言うと、和歌山県に山東さんという県庁OB、今でも再任用(再任用ではなく非常勤)で、退職後も博物館に籍を置いて活動してもらっていますが、ものすごい、文化とか歴史に関して知的水準の高い人がいます。その人に、みんな集めて紀州学会を作ろうと言って、あなただけが頼りというのはまずいから、在野でも或いは他所の県の大学でも、和歌山県や熊野、高野に興味を持ってくれている人は随分たくさんいるので、そういう人たちを集めてきて、一種の学問的サークルを作ろうではないかという企画をずっとやってきました。そのプロセスで、どうヒットしたのかよく分からないけど、東京大学の津田さんのグループに非常に近くなって、向こうも興味を持っていて協力協定を結びたいと言っているがどうだというから、ぜひやれということで、どんどんプッシュして進めてもらったのが流れです。
どういうことで何とかという細かい話、どうやって津田さんと山東さんが仲良しになったのかは忘れてしまいましたが、そういう元々の素地が活動によってくっついたということです。
共同通信:連携項目が何点かありますが、協定を結んで、来年度からやっていくのですか。
知事:そうでしょう。そんなにたくさんお金がいるようなものでもなく、多少の活動費は予算をつけたらいいと思いますが、予算がなくても十分活動できます。
NHK:東京大学との包括連携協定について追加で質問です。連携項目で、例えば、東京大学の教授が和歌山県に来て講義をするとか、授業の中で和歌山県のことを研究する授業を作るとか、そういった具体的な予定があるのかどうか、教えていただいてよろしいでしょうか。
知事:来年度に向けて、そういうのが決まっていくと思います。大きなシンポジウムをせっかくだからやろうと思っていて、東京大学でやるか、和歌山県でやるか、両方やったらいいのではないかと思いますが、そういうような、研究成果をバーンと集めてアピールするようなものもあった方がいい。それから、それだけでは駄目だから、地道な研究をやりたいことがたくさんあるようで、例えば、熊野の民俗みたいなものは、学者先生も、ものすごく興味がある。何でそんなふうになっているのか、例えば宗教学の人、文化人類学の人、いろんな人たちがいて自分の研究領域があるけど、それを、例えば、みんなで集まって、学際的な研究なんかしたら面白い。しかも、それを現地側、すなわち和歌山県側も結構レベルが高いみたいで、これは特に山東さんのレベルが高いのだけど、県庁挙げてそれをお助けして、在野の研究者もいっぱいいるから、そういう方々も糾合をしてやると、もっとレベルの高い研究サークルができていくのではないかと、そんなふうにどうも思ってくれたみたいな感じがあります。
NHK:県が大学とこういう協定を結ぶというのは、何例目ですか。
知事:例えば、その前は、中身は違いますが、先端科学技術研究センターと同じような協力協定を結んだ。いくつかあると思いますが、ものすごく、たくさんあるわけではない。
NHK:全学と結ぶというのは、初めてですか。
知事:女子栄養大学なんかは全学ですか。
知事室長:そうです。就職の関係ならもうちょっとあります。
知事:就職の関係はうじゃうじゃありますから、これはちょっと別です。
紀伊民報:東大との連携協定のことですが、(1)のところで、世界ジオパーク認定に向けた取り組みなんかも、協力を得たりするのでしょうか。
知事:あまり、それを具体的に議論して、ターゲットしている感じはしません。何事も排除する必要はないので、やってもらったらいいと思いますが、私は、あまりそれをターゲットして、何かやって欲しいと言った覚えはありません。
紀伊民報:ジオパークの話に移ります。先日、国内推薦から漏れましたが、何が原因だったと思われていますか。
知事:残念でした。よく言われているのは、まだ我々の勉強というかレベルが達しなかったと、一応言われています。我々のレベルとは何かと言ったら、実は、ジオパークガイドはたくさんいますが、世界遺産語り部の方が結構多い。世界遺産について語りながらジオについて語るという点では、ものすごく魅力的な存在だけど、例えば、ジオパークの解説の時に、上手くジオと世界遺産を結びつけて解説するという点で、ちょっとまだ足りないのではないかという印象を持ちましたと言っておられました。だけど考えてみたら、世界遺産は無いところが多い。ジオだけ説明して、世界遺産のところと説明が融合していなかったからといって、和歌山はもっと融合する可能性はあるが、それだけで落とされなくてもいいのではないかという感じはします。でも、言っても仕方がないので、さらに、我々がレベルを上げようと思ったら、そういうことをやったらいいので、早速、ジオガイドの方々にも、今のようなことをもうちょっと勉強していただいて、両方上手くすり合わせることができる、例えば、この地形があるからあの物語が出てきたと思いますというような説明が上手くできるよう、さらに勉強していただこうと思っている。勉強するには、やれと言ってもいけないから、県庁の我々のグループが、そういうカリキュラムをもっと充実させて、ジオガイドの方々に勉強いただくことで、レベルが上がっていくのではないかと思います。
紀伊民報:今のところ次の国内推薦に向けた申請は、いつ頃を予定されていますか。
知事:毎年あるはずだと思うので、1年後を目指して、また頑張ったらいいのではないかと思っています。
紀伊民報:来年ですか。
知事:はい。だけど、2年後ではないかという人もいます。僕は1年後ではないかと言っています。
紀伊民報:話が変わりまして、不登校の件ですが、小中学校の不登校者数が過去最多を更新し続けているということで、その受け止めとお考えを教えてください。
知事:不登校については、和歌山県が七、八年前、人口当たり日本一になったことがありました。その前は、いじめはまだあるけど、いじめを少し下火にさせたところがあったので、これはえらいことだといって、今度は不登校を頑張ろう。不登校はすごく難しい。多分、紀伊民報さんもおられたので、私は何度も言っているけど、ものすごく多様な原因がある。その多様な原因のどれに当たるかによって、不登校を解消していく時の解も違います。そういうことをちゃんと勉強してもらって(いくにも)、勉強するのも自分でするのも、これはちょっと分からない感じがあったので、今はお亡くなりになりましたが、不登校対応で文科省で一番中心になってやっておられる先生を、そのまま借りてきて、その方のもとに研究会を作って、私も出て、熱心にいろいろ勉強してもらいました。
その結果、主として先生に読んでいただく或いは生徒自身が読んでもいいというような感じの不登校マニュアルを作り、保護者に、不登校っぽい兆候が現れてきたらどうしたらいいかについて分かるような、保護者マニュアルも作りました。
もう一つは、今もそうかもしれませんが、時の文科省は、不登校は30日以上来ないと不登校とみなして報告せよとしています。でも、30日もほったらかしといたら焼きついてしまうので、和歌山県だけは、もっと短い3日ぐらい欠席したらえらいことだといって、ちゃんと対応に走ろう、報告もしろということにして、それが一番良かったのではないかと思いますが、相対的な不登校の比率は少し下がってきた。
だけど、全国が増えているから、相対的には今でも下がっているけど、和歌山県も減っているわけではない。社会がいろいろ大変になってきて、しかも新型コロナで、学校でペースを掴んでいた子供たちが、新型コロナで(外へ)出ないことによって、また人と人との関係で上手く間合いが取れないような人が出てきている可能性があって、今、とても危機です。ですから、文科省の調査も非常に時機を得ていると思いますが、我々は、もう一度不登校について、考え直さないといけない。その材料はありますが、そんなのあったっけという人が、たくさんいればいるほど無茶苦茶になる。私は自分が当事者だから鮮明に覚えていますが、若い先生も入ってきて、そのことを理解していない人もいるでしょう。そうすると対応ができないので、全員が、そういうことを理解するようにマニュアルをもう一度自分のものにしよう、マスターしようと、今、教育委員会に指令を発したところです。
紀伊民報:これまでのマニュアルとかの徹底を、もう一度やっていく形ですか。
知事:あれだけ勉強したから、それが一番大事なことだと思います。その上で、真面目に対応していると、何か変ではないか、マニュアルがおかしいというような議論も出てくる可能性があるので、その時は変えればいい。或いは全体的に変だ、新しい現象がいっぱいあってあまり役に立たないとなると、全面的に勉強のし直しもあり得るかもしれません。だけど、少なくとも、全国に比べると、和歌山県だけがバカバカ増えていない。しかも、和歌山県は、割合神経質です。少なくとも、マニュアルを作ったあたりから、ちょっとでも休んだらすぐやるという話になっているので、割と(不登校の生徒を)たくさん発見しているのではないかという気もする。そういう意味では、まず、マニュアルをもう1回見直して、自分のものにする、マスターする。その上で、欠けているところがあったら補うということです。
今のは根本治療ですが、そんなことを言っても、すぐ学校へ戻れない子はいるでしょう。その子を戻るまで教えないわけにいかないので、家庭に居ても学習に付いていけるような工夫を、特にオンラインで結構している。ちょっと症状が進んでくると、先生が教えに行っても、部屋に入らないでくれというのも結構あるので、そういう時はオンラインで勉強してもらうと、割と抵抗なく勉強できる。そういうことを今やっていて、補習とかもやっていますが、それがあるから学校に来なくてもいいというのは、間違いだと思います。できるだけ学校へ来て、みんなと人間関係を上手く作ってもらう訓練をすることも、大事だと思います。
産経:高速道路の話が出たので教えてもらいたいのですが、知事になられてから、かなり延伸して、経済面や防災面で、いろいろな効果が出ていると思います。改めて、仁坂知事の任期中に何でこれだけ伸びたのか、どういうふうにご認識ですか。
知事:なんでこんなふうに伸びたのかは、まず、伸びる余地があったからです。つまり、遅れていたからで、これが一番大きな原因です。1万4000kmの計画からすれば、それをプラスしたわけではない。だから、本当だったら全国並みに出来ていないといけないところが、なぜか、和歌山県だけではないけど、和歌山県は特に遅れていた。充足率で言えばビリに近かったので、これはいけないのではないか。
どういうことかというと、産業活動をするとか生活の利便性とかを考えれば、それだけみんなが不利で、ハンディキャップを負わされて重荷を背負って歩いているようなものなので、他所と競争しろといってもなかなか難しい。そういうことについて、私は非常によく分かる。なぜ分かるかというと、世の中の相場みたいなものも見てきたし、自分で企業誘致に駆けずり回ったら、みんなにぼろくそ言われて、道路もちゃんとしてないような不便なところへ行けませんとバシッと言われたり、そういう苦労をしているから、そんなもの要らないのではないかという人より、はるかによく分かる。それで、努力を一生懸命してきて、民主党政権の時にちょっと取り上げられてショックだったけど、その後に政権交代があって、国土強靱化のお金が加わって、全国もそうですがまた大分進んで、全国並みになりつつあるという感じはあります。
そうすると、やっぱり競争上は大分違ってきて、高速道路があるから便利ですと言って、立地してくれる所が増えてきました。今回のものはそれほどでもないと思うけど、一番典型的に、絶対に高速道路がなかったら来ていないのはこの間のコメリで、あの大物流基地なんてあり得ない。そんなものもちゃんと勝負できるようになったということは、やっぱり良かったのではないかというふうに思います。
産経:紀伊半島一周の事業化がようやく決まった状況で、串本から先や、まだ日程が決まってないところ、4車線化の要望が出ているところもまだまだあります。知事も、歴代の知事が背負ってきたものを引き継いで続けてきたという前提がありますが。
知事:あまり引き継いだ感じはしなくて、急に騒ぎ出した感じはする。
産経:それも踏まえて、今後の県政として、道路の問題を、どういうふうに取り組んで欲しいという要望があったりしますか。
知事:それは、例えば、経済原理とかを論理的に考えたら当たり前のことで、当たり前のことを当たり前になるように叶えていくことが、行政の第一歩です。ですから、高速道路はちゃんと繋がるように早くしたほうがいいし、県内のネットワークも改良未完成のところがあるから、それは改良を早く終わってしまったほうがいい。逆に言うと、あなたを応援してあげるから家の前を綺麗にしてくれとか、そういう大きく考えて論理的でないような動機で事業をしたら、全体が前に進みません。それは心して論理的にやっていこうという癖は付けたつもりですが、大分(道路ネットワークは)完成だし、何とかなるでしょう。
産経:これからも続けていくというか繋がっていく。
知事:その方向で、どんどん頑張ってもらったらいいと思います。
読売:東大の件ですが、連携項目の一つ目で、地域の現在及び近未来の課題解決に向けた学術研究の推進とあります。これは今、どういったことを想定されていますか。
知事:まず、関心があるのは、歴史や文化です。僕らはもちろんだけど、東京大学側にもすごくある。次に、文化人類学、文化、歴史から少し横へ行くと、自然地理学とか、経済学で地域発展論みたいなものもあります。そういうようなものも、研究対象としてはすごく面白いと思う。例えば、和歌山市が、どうしてDIDがこんなに膨れ上がってしまったのだろうか、逆に、解はどうしたらいいのだろうか、そういうことについて、学問的にこういうことは言えますというようなことを、いろいろ研究して我々に教えていただいたら、我々はそれを行政に活かして、論理的に正しいことはそのまま実現したら上手くいくはずなので、非常にいいのではないかと思います。
我々も、研究したらどうですかとそっぽを向かないで、こういうことを勉強していただけませんか、例えば、僕なんかすごい問題意識がありますが、まちづくりのやり方を勉強していただけませんかという話を、こっちから持っていって、メニューの討議があると思うので、一緒にそうねという話になったらやったらいい。我々がお願いするのは、委託ではないから、やって欲しいと言っても、向こうが、今あまりそういう研究者がいないし関心ないと言われたら、それはそれで終わってしまう。そこは、東京大学ばかりに頼る必要はないから、本当にやりたかったら委託でもすればいい。
読売:つまり、まちづくりという言葉がありましたが、歴史的な経過とかを研究して、それをさらにこの先に活かしていく。
知事:それは、僕が、今言ったのはちょっと別です。まず、まちづくりは現代的な問題で、それも勉強するには、なぜこうなったか、から勉強していかないと、どうしたらいいかは、なかなか答えが出ないから、そのグループは、近過去と現在と近未来、という流れでテーマがあると思います。
もう一つは、ずっとはるか昔の、例えば、和歌山の風土は、宗教とどんなふうに関連しているかとか、熊野学的な話がある。東京大学側にも、そのような話にきっと関心ある。だから、そういうこともやってもらったらいいし、何でもありです。
紀伊民報:人口の話です。近く90万人切るようなところまできていて、特に自然減が増えていますが、受け止めをお願いします。
知事:自然減のお亡くなりになる方は、もちろん一人一人お年寄りが死んだらいいと言っているわけではないのですが、医学が発達しても、助けられる或いは延命していただけるのは、ある程度限界があります。そうすると、自然減をなくすようにするには、少子化対策を一生懸命やって、赤ちゃんの数を増やすしかない。どこかで上回らないかと思っているけど、なかなか上手くいかない。特に、今ものすごい勢いで増えているのは、亡くなる人が多いからですが、それを、自然「減」というのは、減少、増加という差ですから、差をもっと縮めようと思ったら、少子化対策で赤ちゃんの数を増やすしかないのが、一つのシナリオです。これは、この間からずっと言っているように、いろいろ対策をやってきて、多子世帯に対する助成、或いは不妊治療とかも結構やったので、結婚して赤ちゃんを持ちたいと思っている人は、結構、赤ちゃんを持ってもらっていて、データに出てきています。しかし、結婚しない人がまた増えていてちょっと困る。或いは晩婚化もあります。それは、赤ちゃんの数が増えない原因の一つになっているから、これから大変な課題です。
人口の話でもう一つのグループは、社会増減です。これは、一時、5000人、6000人とかものすごい数で減っていて、ちょっと食い止めつつありますが、まだプラスにはならない。一部の市町村でプラスになっているところも増えてきた。例えば、すさみ町は、社会増減がプラスになっています。そういうところが、もっと全県全部に及ぶように(するには)、雇用を増やすということに尽きるから、産業活動なんかを盛んにして頑張っていくしかないのではないかと思います。
紀伊民報:出生数で言うと、過去最少が結構続いて来ているところだと思いますが、晩婚化対策や結婚の対策に、もっと力を入れれば改善する。
知事:そうなのですが、人々の自由を奪うわけにはいかないから、すごく難しい。だから、経済的な理由によって、赤ちゃんを持ちたいけど持てないというのは、こうやって助けましょうとかやりやすいけど、あなた結婚しませんかというのは、私の自由でしょうと言われます。紀伊民報でもキャンペーンでも張っていただけませんか。これは、すごく難しい課題です。
NHK:最近の物価高の受け止めと、県として今後必要になってくることは、どんなことだと思われますか。
知事:まず、経済政策は地方ではできない。マクロの金融政策や物価対策は、地方で出来ないから、これは困ったと思うしかない。ただ、一方で、今もそうですが、デフレ対策が最重要課題です。デフレ対策の方が片づいて、もういいとなったら、金融政策とか、その辺の政策体系をコロッと変えていけばいいと思いますが、そっちの方もまだ片づいていない。だから、金融政策なども動員して、例えば、欧米みたいに物価対策に邁進するわけにはいかないし、黒田日本銀行総裁は、金融政策の基調は変えないと言っているけど、それは全く間違いともなかなか言えない。だけど、そろそろ、みんなが、デフレでもなくインフレになることもあると思い始めているので、デフレであるが故に消極的に行動した方が得だというマインドがどんどん減ってくると、そろそろ、金融財政政策も出口が見えてくるのではないかと思います。
今のところ、政府は、エネルギー価格を少し足すとか、財政で糊塗策をしようとしています。それについて、おおっぴらに批判はしませんが、なかなかそれでは止まらないかもしれません。
大事なことは、賃金や所得が上がることです。物価が多少上がっても、それ以上に賃金や所得が上がればいいわけです。賃金や所得が上がるためには、一部の大企業の輸出採算を持っているようなところは、円安で、円の持ち分を円資産換算した時に、自分の資産がガバッと増える。それを溜め込まないで、例えば、和歌山の仁坂下請けみたいなところに、あなたも原料高で困っているから少し値上げしてあげるという形で価格転嫁をしてくれれば、仁坂製作所の赤坂従業員にも給料が弾めます。或いは、弾まないと逃げてしまうので、賃金や所得の上昇の好サイクルは、増えていくはずです。だから、きっかけは、やっぱり私は価格転嫁だと思います。どうしても、これから不況になるかもしれないといってしがまえ込むのですが、それが今度は本当に不況を呼んでしまう。スタグフレーションになったら大変です。従って、財界も政府も、価格転嫁だけは熱心に進めてもらいたいと思います。
NHK:県として働きかけていく。
知事:ガンガンやっています。私は、少なくとも戦士の1人だと思っています。七、八年やっていますが、我が盟友の日商会頭の三村さんが、とうとう引退されました。この間、三村さんよくやってくれましたとお礼を言ってきました。あなたも辞めるのだねと言うから、そうですと言って、あまり早く辞めて何もしないと老けるぞと言われてきました。さらに、4日に経済産業省に行って、大臣のところへ行って、あなた、これをやらないと日本経済は良くならないと、ギリギリ言ってきます。
そもそも、この間、知事会に経団連の方がお見えになって、何となく来ていただいてありがとう、みたいな雰囲気ばかり漂っているので、私はちょっと嫌味だから、あなたのところの、パートナーシップ宣言に加盟している企業の中で、経団連の会員の割合は、一般の企業よりも圧倒的に少ないではないか、リーディング企業の集まりである経団連がそんなことでいいのかと言っておきました。
そういうのをちょっと調べたら、すぐに秘密が分かりますから、NHKで特集してください。そうしたら、ちょっとやり始めるかもしれません。期待しています。ジャーナリストの真骨頂です。
共同通信:11月に入って知事選が迫ってきていますが、以前、仁坂知事は岸本氏を支援するような考えを示しましたが、公示日に出向いたりとか、具体的な支援は。
知事:こんなのは、出しゃばったらいけないので、頼まれたら全部行きます。
共同通信:まだ何か具体的に頼まれたことはない。
知事:まだ、来てくださいと言ってこない。事務所開きの時は来てくださいと言われたけど、そこは公用があったので行けなかった。僕は、事務所開きは、あまり行っていない。だけど、朝の出陣式の時は、大体、都合をつけて行っています。頼まれたら間違いなく行きますが、頼まれなかったら行きにくい。頼まれると思いますが、急に頼まれるから。事務所開きの時は、政治ですから、知事室長代理というわけにはいかないので、後援会の木村局長に行ってもらいました。