ようこそ知事室へ 知事からのメッセージ 平成19年9月
知事からのメッセージ
知事からのメッセージを紹介します。
平成19年9月のメッセージ
平成19年9月1日
暑い暑いと言っているうちに、8月は過ぎて9月となりました。もう秋です。しかし、まだ残暑も厳しく、まだまだそういう気がしません。
さすがに夏ですから、何人かの親切な方がお中元を公舎に届けて下さいました。就任以来、もともと一切頂戴しませんと宣言してありますものですから、宅配便の方に「すみません。お返しして下さい」と言って、全部持って帰ってもらいました。本来なら、送って下さった方に、お礼と申し開きを申し上げなければならないとは思いますが、あまりの多忙でできていません。非礼をお詫びします。どうかお気を悪くなさらないで下さい。ありがとうございました。
公舎に入らせていただいて、びっくりしましたのが二つあります。一つは、今住んでいる新しい公舎の中に、家具が何一つ無かったことです。その前はブルネイ大使ですので、大使公邸がありまして、全部揃っておりました。もちろん、諸費用は公と私で案分比例するのですが、一応、家具、備品、何もかもありましたので、今回の違いようにはびっくりしました。あわてて、色々買いましたが、家具が到着するまでの間は大変で、例えば、食事は立って食べていました。もう一つは、公舎に何故かたくさん物置がありますが、ここに膨大な量の発泡スチロールの魚なんぞを入れるケースがぎっしりと詰まっていたことです。庁舎を管理する管財課の諸君が万事片付けてくれていたはずなのですがそうでもなく、入居してふと物置を開けてみると、商売でもできそうな量の発泡スチロールケースが詰まっていました。そうか、今までの知事はこういうことだったんだなあと思って、贈り物は一切いただきませんと申し上げることに決めました。ちなみに、いただいてもすべてが違法ではありません。私がこちらにまいりましてから、知事も適用を受ける県職員倫理規則を作りましたが、それによると、県庁職員は5,000円を超える贈り物をいただいた時は、これを報告すればよいのです。結果は閲覧していただけます。それ以前は何もルールはありませんので、もらうことは違法ではありません。私は、これまで国家公務員でしたが、国家公務員には、国家公務員倫理法が適用される(ただし、大臣など特別職の人は適用外ですが)ので、こういう環境には慣れていましたので、まったく違和感はありません。
ところが、知事になるともう一つの規制がかかりまして、こちらは少々違和感があります。それは、公職選挙法です。選挙で選ばれた人は、第一に大っぴらに「応援してくれてありがとう」と、当選のお礼ができないのです。集会みたいな大勢がいる所で「ありがとう」と言ってはいけないそうです。葉書のようなお礼状も、肉筆で書いたもの以外は駄目だそうです。また、寄付のようなこともいけないそうです。この間、日本赤十字社(日赤)の和歌山支部の幹部が説明に来てくれて、「和歌山の日赤の活動はなかなかのものです。多くの人が寄付をしてくれます。我々職員も皆寄付しているんです」と言うので、「それでは、私もなにがしかの寄付をしないといけませんね」と言ったら、「それは違法です。知事は駄目です」とビシッと言われてしまいました。ちなみに、私は日赤の和歌山県支部長です。また、近所のお地蔵様の寄付をご近所様並みにしようとしたら、「それは選挙違反になりますから駄目です」とビシッと止められてしまいました。ご近所の皆さん、すいません。同様の判例まであるそうです。どうも、選挙で選ばれる人は不義理をせよと法律で言われているように思います。この制度は、寄付にかこつけて、よからぬ輩が買収をしようとするのを予防するという効果があるのでしょうが、どうも多くの場合、人倫の道、常識に反するような気がいたします。
県庁の仕事の方は、8月の暑い中にも多くの職員がよく頑張ってくれたおかげで、多くの成果がありました。春から新政策の議論をずっと続けていますが、段々と本格的ないい政策を、皆が考えてくれるようになりました。こういうことをもっと昔からやっていたらなあとも思いますが、一方、いい政策を実現するにも財源がいります。もう少し財政が豊かな時なら、こんないいことをどんどん採用してあげられるのになあとも思います。財政再建と両にらみで、20年度予算の編成に続けていく予定です。一方、新しい県の長期総合計画の議論も段々と拍車がかかってまいりました。これの方の眼目は、経済実態、財政事情ともに苦しい中にあっても、いかに県民に元気が出るような目標を掲げられるかです。今年から、従来の審議会での策定方式でなく、全員参加型の策定方式に切り替えています。県議会にも骨子の段階からお諮りしますし、市町村長の方々、有識者の方々とも、それぞれに会合を持って議論しています。
また、県政にとって特に大事な道路と医療については、特段の進展がありました。道路については、8月28日、道路懇談会の提言と和歌山県道路整備中期計画の中間とりまとめを発表しました。国レベルでの議論の中に一部ある、「もう道路はいらない。田舎に高速道路などとんでもない。道路財源は一般財源化して、財政赤字補てんに向けろ」という意見に対するカウンターパンチとして発信したものです。和歌山の道路は全国でも大いに遅れていることは明らかですが、「今こそ何とか整備を」と我々が考えたまさにこの時に、昨年後半から道路特会の一般財源化の話が急浮上したのです。そこで、他県に先がけて、この流れに一石を投じるようなカウンターパンチを送ろうではないかと、この春から道路懇談会を組織して考えてもらいました。それも、「どうせ和歌山の田舎もんが自分の利益ばかり考えて」と言われるとしゃくですから、全日本で十分通用するようなメンバーで、日本中の人々がなるほどと共感するような理論武装を行おうと考えました。そのため、メンバーには和歌山の立派な人も入っていますが、そればかりでなく、石田東生筑波大学教授(委員長)、伊藤元重東京大学教授、木村陽子地方財政審議会委員、齋藤愼大阪大学教授、月尾嘉男東京大学名誉教授、村山敦関西国際空港株式会社社長といった、日本全体の世論をリードしているような人々に参加してもらいました。内容は詳説しませんが(県ホームページを参照して下さい。)、要は紀伊半島一周の高速道路や京奈和道路は、地方の人々が日本人として誰でも与えられるべきチャンスを得るための手段(機会としてのナショナルミニマム)だということです。私は、8月28日から31日まで、さっそくこれを東京で要人に配りました。このメッセージは多くの人々の共感を得つつあると思います。特に、国土交通省の方々からは、「よくぞこういう凄いレベルの話を作ってくれた。全県でも最もレベルの高い、しかも最もスピーディな対応です。我々も大いに使えます」とのコメントをいただいています。国レベルの本件の動きの山場である年末にかけて、さらに大いに努力をしようと思います。
もう一つの医療については、朗報がありました。8月31日に国レベルで緊急医師確保対策が決定されました。これにより、来年度から和歌山県立医科大学は、地域医療に10年間従事すると誓約した人につき、25人の定員増を行うことができるようになりました。関係者の方々に心から感謝したいと思います。こうして話すと話は簡単に聞こえますが、本件は難易度でいうとウルトラC級の難しさであったものを何とか実現できたということで、私にとっては感慨ひとしおのものがあります。知事になって知った大変なことは、地域医療が崩壊しかかっているということでした。しかも、地域の拠点病院で深刻な医師不足が発生していました。この崩壊を止めるために、ずっと努力をしてくれていた和医大と協力して、知事就任以来、医師が不足している病院に対する個別対応で頑張ってきましたが、これは抜本策を打たなければ、いずれ行き詰まると考えました。和医大は、全国でも珍しい60人の入学定員の大学なので、対応してもらうにも母数が少なすぎるのです。そこで、せめて他県並みに20名の増員を考えて、これを応援してもらおうと東京に出かけました。そして知ったことは、医療費の高騰を抑えるため、医大の定員増はもはや一切認めないという平成9年の閣議決定があり、特に医者の数が少ない10県だけは例外として10人だけ増員を認めるという、昨年の閣議決定があるという現実でした。和歌山県は、昨年の改正閣議決定の時も増員の機会を逸していました。世の中には「一事不再理」という一種の作法がありますので、これはえらいことだと私も絶望的になりました。しかし、一縷の望みを託して、「和歌山県はたった1県60人しか医者を養成していないので、せめて他の最少養成県並みに、あと20名増員を認めてほしい。ただし、過去の閣議決定の精神に反しないよう、この20名はすぐ開業する人ではなく、和歌山県の拠点病院において勤務するという誓約をした人に限ることとし、違約があった場合はそれなりのペナルティを課す」という案をこしらえ、春以降、これで厚生労働省、文部科学省、そして財務省に繰り返し働きかけを行いました。初めは異論もあったのですが、各大臣をはじめ各省の幹部の方々も、段々とこの考えに理解を示し始めてくれました。本件は、わいわい騒いでいる和歌山県のみならず、日本全国で起こっている問題だから、もはや放置できないということに気付かれたものと思われます。各省のお役人が気にしていると聞きましたので、中教審の先生方にまで根回しもしました。県選出の与党の国会議員の先生方も、大変熱心にサポートして下さり、とうとう事態は自民党を全面的にまき込み、政府与党の統一方針で全国一律5名の増員を認め、かつ、和歌山県のみは、それに加えて20名の増員を認めるということになりました。そして、諸々の手続きを経て、8月31日の決定になったものです。なお、この対策には、特に医師不足で崩壊の危機にある病院には、国が医師のあっせんをするという事項も含まれており、既に先食いの形で先月新宮市に立派な産科医が派遣され、新宮医療圏の分娩停止という最悪の事態は回避されています。これで、8年後は拠点病院の維持には目途がたちました。もちろん、このためには県も大枚をはたいてこれを支えるのです。大幅な定員増によって、教室も増築しなければなりません。しかし、この人たちが戦力となるあと8年の間、即戦力となる方々のリクルートをはじめ様々な手を打っていかなければなりません。県では、既にこのための手は講じていまして、本年大々的に青洲医師ネット(外部リンク)を使ってPRした結果、応募のあった13名の方々に、将来和歌山県の病院の産婦人科、小児科、麻酔科で働いてくれることを条件に奨学金をさし上げることにしています。また、ドクターバンク制度、自治医科大学の制度などを利用して、医師の確保に努めています。これまで、本件で努力して下さった関係者の皆さん、特に南條学長率いる和医大の方々の努力には本当に頭が下がる思いがいたしますが、まだまだ手を抜ける状態ではありません。苦労しておられるお医者さん、市町村の方々、県庁全員が協力して和歌山の医療、特に地域医療を守っていきましょう。