和歌山県障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例

全ての県民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に寄与することを目的に、「和歌山県障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例」が施行されました。

和歌山県では、本条例の趣旨を踏まえて、障害を理由とする差別の解消に取り組んでいきます。

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和歌山県障害を理由とする差別の解消の推進に関する条例

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、障害を理由とする差別の解消を推進するため、全ての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)及び全ての県民の人権が尊重される豊かな社会の実現を図ることを目的とする和歌山県人権尊重の社会づくり条例(平成14年和歌山県条例第16号)の理念にのっとり、障害を理由とする差別の解消を推進するために必要な事項を定めることにより、全ての県民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会(以下「共生社会」という。)の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 障害者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。

(2) 社会的障壁 障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。

(3) 不当な差別的取扱い 障害者に対して障害を理由として、正当な理由なく、商品、サービス又は機会の提供を拒否すること、当該提供に当たって場所、時間等を制限し、又は障害者でない者に対しては付さない条件を付すことその他の差別的な取扱いを行うことをいう。

(4) 合理的配慮 障害者の権利利益を侵害することとなる社会的障壁の除去を実施するために、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて行う、必要かつ合理的な配慮をいう。

(5) 事業者 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律第2条第7号に規定する事業者のうち、県内で商業その他の事業を行う者をいう。

(基本理念)

第3条 障害を理由とする差別の解消の推進は、全ての県民が障害の有無にかかわらず、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられるよう、次に掲げる事項を基本理念として行われなければならない。

(1) 全ての障害者は、社会を構成する一員として社会、経済、文化その他あらゆる分野の活動に参加する機会が確保されること。

(2) 全ての障害者は、どこで誰と生活するかについて選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと。

(3) 全ての障害者は、言語(手話を含む。)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること。

(4) 全ての障害者は、性別、年齢その他の障害者であること以外の事由により、日常生活又は社会生活を営む上で、更に支障が生じている場合において、その解消のために適切な配慮がなされること。

(5) 障害を理由とする差別及び社会的障壁の問題が、全ての県民の共通の課題として認識され、その解決に向け、障害者と障害者でない者が相互に理解を深め、共同して取り組むこと。

(県の責務)

第4条 県は、前条の基本理念にのっとり、障害を理由とする差別を解消するために必要な体制の整備を図るとともに、共生社会の実現に向けた施策を総合的かつ計画的に策定し、及び実施するものとする。

(国等との連携)

第5条 県は、前条の体制の整備を図り、又は施策を策定し、及び実施するに当たっては、国、市町村、事業者、県民及び障害者に対する支援を主な活動とする団体と協力し、連携して取り組むものとする。

(事業者等の責務)

第6条 事業者及び県民は、第3条の基本理念にのっとり、障害及び障害者について理解を深めるとともに、県が実施する障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策その他の共生社会の実現に向けた施策に協力するよう努めるものとする。

(障害を理由とする差別の禁止)

第7条 何人も、障害者に対して障害を理由として差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。

(不当な差別的取扱いの禁止)

第8条 県及び事業者は、その事務又は事業を行うに当たり、不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。

2 県及び事業者は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者に対して障害を理由として、不当な差別的取扱いに該当しない正当な理由により、障害者でない者と異なる不利益な取扱いをすることとなるときは、当該障害者に対しその理由を説明し、理解を得るよう努めなければならない。

(合理的配慮)

第9条 県及び事業者は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明(障害の特性等により障害者本人による意思の表明が困難な場合は、当該障害者の家族、介助者等コミュニケーションを支援する者が、障害者本人を補佐して行う意思の表明を含む。次項において同じ。)があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、合理的配慮をしなければならない。

2 県及び事業者は、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重であって合理的配慮をすることができないときは、当該意思の表明を行った者に対しその理由を説明し、理解を得るよう努めなければならない。

(財政上の措置)

第10条 県は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を実施するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

第2章 障害を理由とする差別を解消するための体制

第1節 相談体制

第11条 何人も、県に対し、障害を理由とする差別に関する相談(次項において「相談」という。)をすることができる。

2 県は、相談の申出があったときは、相談に係る事案の解決を図ることができるよう、次に掲げる業務を行うものとする。

(1) 相談に応じ、必要な助言及び情報の提供を行うこと。

(2) 相談に係る関係者間の調整を行うこと。

(3) 関係行政機関への通知その他相談の処理のために必要な事務を行うこと。

第2節 紛争の解決を図るための体制

(あっせんの申立て)

第12条 障害者及びその家族、後見人その他障害者を現に保護する者は、当該障害者が第8条第1項又は第9条第1項の規定に違反する取扱いを受けたと認める場合は、当該事案の解決を図るため、規則で定めるところにより、知事に対し、和歌山県障害者差別解消調整委員会(以下「調整委員会」という。)によるあっせんを申し立てることができる。

2 前項の規定によるあっせんの申立て(次項及び次条において「申立て」という。)は、前条第1項の規定により相談をし、県が同条第2項各号に掲げる業務を行っても、当該相談による解決の見込みがないと認められるときでなければ、することができない。

3 第1項の規定にかかわらず、次の各号のいずれかに該当するときは、申立てをすることができない。

(1) 行政庁の処分又は職員の職務の執行に関する場合であって、他の法令等に基づく不服申立て又は苦情の申立て等をすることができるとき。

(2) 当該事案が障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の規定に基づき解決を図ることができるものであるとき。

(3) 過去に当該事案につき申立てがなされたことがあるとき。

(4) 障害者の家族、後見人その他障害者を現に保護する者が申立てをする場合において、当該申立てをすることが当該障害者の意に反すると認められるとき。

(事案の調査)

第13条 知事は、申立てがあったときは、当該申立てがあった事案(以下「紛争事案」という。)に係る事実の調査を行うものとする。

2 紛争事案の当事者(当該紛争事案に関し、申立てをした者及び第8条第1項又は第9条第1項の規定に違反する行為をしたとされる事業者をいう。以下同じ。)その他の関係者は、正当な理由がある場合を除き、前項の調査に協力しなければならない。

(あっせん)

第14条 知事は、前条第1項の調査の結果に基づき、紛争事案の解決のために必要があると認めるときは、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、当該紛争事案を調整委員会によるあっせんに付するものとする。

(1) 紛争事案が解決したときその他あっせんの必要がないと認めるとき。

(2) 紛争事案について国又は他の地方公共団体が現に紛争の防止又は解決を図っているときその他あっせんを行うことが適当でないと認めるとき。

2 調整委員会は、前項の規定により紛争事案があっせんに付されたときは、前項各号のいずれかに該当することとなった場合を除き、あっせんを行うものとする。

3 調整委員会は、あっせんを行うため必要があると認めるときは、当事者その他の関係者に対して、説明又は資料の提出を求めることその他必要な調査をすることができる。

4 調整委員会は、あっせんを行うに当たっては、規則で定めるところにより、紛争事案の解決に必要なあっせん案を作成し、これを当事者に提示するものとする。ただし、前項の調査をした場合において、事業者が第8条第1項又は第9条第1項の規定に違反したと認められなかったときには、当事者にその旨を通知するものとする。

5 あっせんは、次の各号のいずれかに該当する場合には、終了する。

(1) あっせんにより紛争事案が解決したとき。

(2) あっせんによっては紛争事案の解決の見込みがないと認めるとき。

(3) 調整委員会が前項ただし書の規定による通知をしたとき。

(4) 前3号に掲げるもののほか、あっせんを行うことが適当でなくなったとき。

6 調整委員会は、第1項各号に該当する場合としてあっせんを行わないとき又は前項の規定によりあっせんを終了したときは、その旨を知事に報告するものとする。

(勧告)

第15条 調整委員会は、あっせん案を提示した場合において、第8条第1項又は第9条第1項の規定に違反したと認められる事業者が、正当な理由なく、あっせん案を受諾せず、又は受諾したあっせん案に従わないときは、知事に対し、当該事業者に対して障害を理由とする差別を解消するために必要な措置を講ずることを勧告するよう求めることができる。

2 知事は、前項の規定による勧告の求めがあった場合において、必要があると認めるときは、当該事業者に対して障害を理由とする差別を解消するために必要な措置を講ずることを勧告することができる。

(公表)

第16条 知事は、前条第2項の規定による勧告を受けた事業者が、正当な理由なく、当該勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。

2 知事は、前項の規定による公表をしようとする場合は、当該公表の対象となる事業者に対して、あらかじめその旨を通知し、当該事業者又はその代理人の出席を求めて、意見の聴取を行わなければならない。ただし、これらの者が正当な理由なく意見の聴取に応じないときは、この限りでない。

第3節 和歌山県障害者差別解消調整委員会

第17条 紛争事案について、第14条第2項の規定に基づき、あっせんを行わせるため、調整委員会を置く。

2 調整委員会は、委員10人以内で組織する。

3 委員は、次に掲げる者のうちから、知事が任命する。

(1) 学識経験を有する者

(2) 障害者又は障害者の福祉に関する事業に従事する者

(3) 事業者又は事業者により構成される団体の役職員

(4) 関係行政機関の職員

(5) 前各号に掲げる者のほか、知事が適当と認める者

4 委員の任期は2年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。

5 委員は、職務上知ることができた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。

6 前各項に定めるもののほか、調整委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

第3章 障害を理由とする差別を解消するための施策

(普及啓発)

第18条 県は、障害を理由とする差別の解消について県民の関心と理解を深めるため、障害及び障害者に関する正しい知識の普及及び啓発その他必要な施策を講ずるものとする。

(学校教育における理解の促進等)

第19条 県は、学校教育において、障害及び障害者に関する正しい知識を得るための教育が行われるよう、情報の提供その他必要な施策を講ずるものとする。

2 県は、共生社会を実現する上で学校教育が果たすべき役割の重要性を鑑み、障害者と障害者でない者が共に学び、障害の有無にかかわらず十分な教育を受けることができるよう、必要な支援体制の整備及び充実に努めるものとする。

(就労の促進)

第20条 県は、障害者の職業選択の自由を尊重しつつ、障害者がその能力に応じて適切な職業に従事することができるようにするため、関係機関と連携し、障害者の多様な就業の機会の確保及び職場への定着の促進を図るとともに、個々の障害者の特性に配慮した職業相談、職業指導、職業訓練及び職業紹介の実施その他必要な施策を講ずるものとする。

(情報の取得等のための手段の利用促進等)

第21条 県は、点字、手話、要約筆記その他の障害の特性に応じた情報の取得及び利用並びに意思疎通のための手段が広く利用されるよう必要な施策を講ずるものとする。

2 県は、障害者の情報の取得及び利用並びに意思疎通を支援する者の確保、養成及び資質の向上のために必要な施策を講ずるものとする。

3 県は、障害者が容易に県政に関する情報を取得することができるよう、点字、手話、要約筆記その他の障害の特性に応じた情報の取得及び利用並びに意思疎通のための手段を利用して情報を発信するよう努めるものとする。

(人材の育成)

第22条 県は、障害を理由とする差別に関する相談に係る事案の解決を図るため、専門的な知識及び技能を有する人材の育成に努めるものとする。

第4章 雑則

(規則への委任)

第23条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行について必要な事項は、規則で定める。

第5章 罰則

第24条 第17条第5項の規定に違反して秘密を漏らした者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。

附 則

(施行期日)

1 この条例は、公布の日から施行する。ただし、第9条(事業者に係る部分に限る。)、第12条から第17条まで及び第24条の規定は、令和6年4月1日から施行する。

(準備行為)

2 調整委員会の委員の任命その他調整委員会の設置のために必要な行為は、前項ただし書に規定する規定の施行の日前においても行うことができる。

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