3 地震がおきたときの対応

3 地震がおきたときの対応

共通事項(障害者、高齢者、難病患者)

地震が発生したら、まず身の安全を守らなければなりません。
大災害がおこると、防災関係機関の対応能力にも限界があります。
自分自身の的確な行動と、となり近所の方など周囲の人に救護をどう求めるかも大切です。

  • 身の安全を守る
    地震の大揺れは数十秒から1、2分程度続きます。この間は、落下物などから身を守ることが最も大切です。
    近くにテーブルなどがあればその下にもぐり、その足を持って揺れがおさまるのを待ちましょう。テーブルなどがない時には、座ぶとんやクッションなど近くにあるもので頭を守りましょう。
    外出しているときは、持ち物か持ち物がない場合は、両手で頭を落下物から守りましょう。
  • 揺れがおさまったら
    ガラスの破片などによるケガをしないために、揺れがおさまってもむやみに歩かずに、まずは、スリッパ、厚手の靴下、靴などをはきましょう。
    使っていた調理器具や暖房器具の火を消し、ガスの元栓を閉め、電気のブレーカーも「入」を「切」にします。(家族がいる場合は、協力して確認する。家族がいない場合は、遠慮せずにとなり近所の方に安全確認を頼みましょう。)
    ストーブやコンロの上にヤカンや鍋がのっていると、地震のゆれでひっくり返り、大やけどをするする危険があります。揺れているときは、無理に火を消そうとして近づかないようにしましょう。
    外出しているときは、周囲の人に声をかけて、安全な場所に誘導をお願いしましょう。
  • 家の中に閉じこめられたら
    建物の倒壊により閉じこめられたり、ケガをして動くことができない場合は、外の人にわかるように大声を出す、笛を吹く、物をたたく、懐中電灯を点滅させるなどにより、自分の居場所を知らせ助けを求めましょう。
  • 火災が発生したら
    大きな地震が起こると、火災が発生することがあります。万一身近なところで火災が起こったら、近くにいる人たちに知らせ、助けを求めましょう。自分で火を消すことができないと思ったら、すぐに逃げ出しましょう。
  • 情報の把握
    テレビ、ラジオ、行政の広報などで情報を入手し、正しい情報に従って行動しましょう。
  • 避難するときは
    津波の危険性があったり、火災が発生したり、建物倒壊の恐れがある場合には、安全な場所へ避難することが必要です。となり近所の方などに避難所までの誘導を頼み、非常持ち出し品をもって、早めに避難しましょう。
  • 避難所では
    避難所ではみんなが不安を感じています。人のうわさやデマにまどわされず、ラジオなどから正しい情報を聞き、まわりの人たちと協力して行動しましょう。

2 障害等に応じた対応

(1)視覚に障害のある方のために

  • 揺れがおさまったら
    移動するときは、まず、スリッパ、厚手の靴下、靴などをはき、家の中でも、白杖などを使用し、落下物やガラスなどに十分注意しましょう。
  • 避難するときは
    地震の後には道路上に障害物が増え、いつもと同じように歩行する事が難しくなります。となり近所の方などに避難所までの誘導を頼み、早めに避難しましょう。
  • 避難所では
    避難所では、避難所職員や周りの人に、避難所の中を誘導してもらい、どこに何があるのかを確認しましょう。

支援する方たちへ

  • 安否の確認
    地震がおさまったら、安否を確認すると同時に、調理器具や暖房器具などから火災が発生していないか、ガス漏れしていないかなど、安全確認をしましょう。
  • 避難所などへの誘導
    視覚に障害のある方は、ふだんの生活ではどこに何があるか頭の中に入っています。しかし災害が発生すると町の地図が変わってしまい、自分で行動する事が大変難しくなりますので、避難所への誘導を行いましょう。
    誘導の方法は、白い杖の反対側に立って、腕あるいは肩を持ってもらい、半歩前を歩きます。手や腕は引っ張らないようにしましょう。
  • 情報の伝達
    避難所では、行政からの広報や生活に関する情報は文字で書かれたものも多いため、必ず何が書いてあるのか知らせるようにしましょう。

(2)聴覚・音声言語に障害のある方のために

  • 情報の把握
    的確な情報を得ることが大切です。地震が起きたら、テレビ、文字のでる携帯電話、となり近所の方からの情報などを利用しましょう。
  • 避難するときは
    テレビやラジオ、行政の広報などで避難の呼びかけがあった時には必ず伝えてもらうよう、となり近所の方たちにお願いしておきましょう。
  • 避難所では
    避難所の中で行政などからのお知らせがあった時には、手話やメモなどに書いて教えてもらうよう、避難所の職員や知人にお願いしておきましょう。

支援する方たちへ

  • 手話ができなくても大丈夫です
    聴覚に障害のある方には、手話を主なコミュニケーションの手段としている方(ろうあ者)と中途失聴者のように相手の言うことは筆談でという方がいます。
    ろうあ者に正確に情報を伝えるには、手話通訳が必要ですが、手話ができなくても、様々な工夫で情報を伝えることができます。大切なのは情報を伝えるという心です。正面から口をやや大きく動かし、ゆっくりと話せば理解できる人もいます。筆談で文字や絵を組み合わせ、相手の意志を確認しながら伝えることで正確に伝えることができます。
  • 情報の伝達
    周辺で災害が発生しそうな時、行政から避難の指示が出された時、ラジオやテレビで警報が発令された時などには、何が起こっていてどう行動するように言われているかをわかりやすくメモに書いてわたすなど、緊急情報を知らせるようにしましょう。
  • 安否の確認
    地震がおさまったら、必ず安否の確認とともに情報が正確に伝わっているかを確認しましょう。
  • 避難所では
    避難所などでは様々な情報が伝えられますが、その情報を文字に書いて伝えるようにしましょう。なるべく速く、避難所にFAXを備え付けてください。FAXが使えない時に、聴覚に障害のある方が知人などに連絡をとりたいとき、内容を紙に書いてもらい電話などで代行して伝えるようにしましょう。

3 肢体不自由の方のために

  • 身の安全を守る
    ふだん生活する場所には、物が落ちたり、倒れないように、家族やとなり近所の人たちに手伝ってもらって家具の固定を必ず行いましょう。
    車いすに乗っているときに地震が起きたら、家具などから素早く離れて、ストッパーをかけ、頭を守りましょう。
  • 避難するときは
    地震の後には道路上に障害物が増え、車いすでの通行も困難になります。となり近所の方などに避難所までの誘導を頼み、早めに避難しましょう。

支援する方たちへ

  • 安否の確認
    地震がおさまったら、安否を確認すると同時に、調理器具や暖房器具などから火災が発生していないか、ガス漏れしていないかなど、安全確認をしましょう。
  • 避難協力体制づくり
    地域の中に自力で避難することが困難な方がいる場合は、日頃からいざという時の避難協力体制を検討しておきましょう。
  • 車いすを介護するときの注意
    車いすに乗る時、降りる時はもちろん、止まったら必ずブレーキをかけます。車いすの乗り降りはフットレストをあげて行い、乗り終わったらフットレストに足を乗せて移動します。
    車いすに乗っている人は押している人が感じる以上のスピードを感じるので、左右をよく確認し、ゆっくり押してください。
    段差を超える時には押す人の足元にあるバーを踏み、車いすの前輪を上げ、段差に乗せてから後輪をもち上げ、すすめます。段差を降ろすときは、後ろ向きに後輪からゆっくり降ろします。
  • 避難所では
    車いすや両松葉づえが通るためには最低80センチメートルの幅が、車いすが回転するためには直径150センチメートルが必要です。
    避難所に車いすや松葉づえの利用者がいるときには車いすなどが通れる通路を確保してください。
    また、避難所のトイレが使用できない場合などが考えられますので、支障を生じることがないか、本人によく確認しましょう。

4 心臓・腎臓など内部に障害のある方のために

  • 非常持ち出し品の用意を
    大きな災害が起こると、当分の間、医療行為が受けられなくなる可能性があります。必要な医薬品や医療機材などを常に備えておくと共に、かかりつけの医療機関と相談し、いざという時にすぐ支援の得られる医療機関のリストを作っておきましょう。
  • 避難所では
    内部障害者は外見からはわからないため、知らない人から誤解を受けるようなこともあります。避難所の職員の方たちに、早めに自分の身体の状況や生活上の注意事項などを伝えておきましょう。

支援する方たちへ

  • 避難協力の体制づくり
    地域の中に自力で避難することが困難な方がいる場合は、日頃からいざという時の避難協力体制を検討しておきましょう。
  • 避難所では
    酸素が必要な人、定期的に人工透析が必要な人、人工肛門を使っている人、ペースメーカーを埋めている人などは、外見からは分かりませんが、災害時に医療行為が受けられなくなると、生命に関わる人がいます。また体力がないので、避難所などでの共同作業をみんなと同じようにできないこともあります。
    避難所では、自分で器具の消毒をしたり器具の交換をする人もいますので、手当てをすることができる清潔な治療スペースを設けてください。
    また、身体の状態によって、水、タンパク質、塩分、油分などの制限をしなければならない人もいますので、食事を提供する時には本人によく確認しましょう。
  • 医療行為を受けられるように
    避難所の中にいる内部に障害のある方で、医療行為を受ける必要のある人は自主的に申し出てもらい、行政と連絡をとって早急に受け入れ病院の確認や移送手段を確保しましょう。

5 知的障害のある方のために

  • ゆれているあいだ
    ゆれている間は、上から落ちてくるものなどから身を守りましょう。
    近くにテーブルなどがあればその下にもぐり、その足を持ってゆれがとまるのを待ちましょう。テーブルなどがないときには、座ぶとんやクッションなど近くにあるもので頭を守りましょう。
  • ゆれがとまると
    割れたガラスなどでケガをしないように、ゆれがとまってもすぐに歩かずに、スリッパ、靴下(厚いもの)、靴などをはくなどして落ち着いて行動しましょう。
    もし、近くで火事が起きたら、大きな声でまわりの人に知らせましょう。コンロやストーブなどを使っていたら、となり近所の人などにたのんで、必ず火が止まっているか見てもらいましょう。
  • 家の中に閉じこめられたら
    こわれた建物に閉じこめられたり、ケガをして動けない場合は、外の人にわかるように大声を出す、物をたたく、懐中電灯があればつけたり消したりするなど、自分のいるところを知らせ助けを求めましょう。
  • 避難するとき
    避難するときには、家族、となり近所の人たちといっしょにいきましょう。家の外にいるときは、無理に動こうとせずに、まわりの人に防災カードを見せ、安全な場所や最寄りの避難所に連れていってもらいましょう。
  • 避難所では
    避難所では、たくさんの人たちがいっしょに生活をします。家族や職員の言うことにしたがって、落ちついて行動しましょう。何か困ったことがあったら、避難所の人に相談しましょう。

支援する方たちへ

  • 身の安全を守る
    まず、動揺している気持ちを落ち着かせましょう。
    わかりやすく説明し、安全な場所まで誘導しましょう。
  • 非常持ち出し品の用意
    大きな災害が起こると、病院も当分の間診療ができなくなる可能性があります。常時薬を服用している方は、ふだん飲んでいる薬の種類などを書いたリストを作り保護者が持っておきましょう。
    また、かかりつけの医療機関と相談し、いざという時にすぐ支援の得られる医療機関のリストを作っておきましょう。
  • 避難所では
    知的障害者の中には、環境の変化を理解できずに気持ちが混乱したり、状況に合わせた行動ができない人がいます。
    また中には、治療や投薬が欠かせない人もいますので、障害の状況に応じた支援を行いましょう。

6 精神障害のある方のために

  • 避難するときは
    自分で決められた避難所まで行けない場合には、となり近所の方たちなどに誘導を頼み、早めに避難しましょう。
  • 非常持ち出し品の用意
    大きな災害が起こると、病院も当分の間診療ができなくなる可能性があります。毎日薬を飲んでいる方は、自分の病名やふだん飲んでいる薬の種類などを書いた一覧表を作っておきましょう。
    また、かかりつけの医療機関と相談し、いざという時にすぐ支援の得られる医療機関の一覧表を作っておきましょう。
  • 避難所では
    大勢の人たちと一緒に生活をする避難所では、ストレスがたまり調子をくずすことがあります。毎日服用している薬は忘れずに飲みましょう。
    落ち込みやイライラ、不安、幻覚妄想などが出たときや眠れない時には、医療救護所や精神科医師に相談し、症状に応じた手当を早めに受けましょう。

支援する方たちへ

  • 急な環境変化に適応しにくいのです
    精神障害者の中には環境の変化に適応できず、感情が高ぶりイライラして落ち着かなかったり、状況に合わせた行動ができない人がいます。地域でともに暮らす方や友人は親身になって心のケアや相談にのってあげてください。そのことが精神的支えになるのです。また、症状が急に変化したときには、専門の相談所などに相談するよう助言してください。
  • 避難所では
    精神障害者の中には心理的に孤立してしまう人もあります。知人や仲間といっしょに生活できるように避難所係員に配慮を求めてください。
    慣れない避難所生活は身体ばかりでなく、精神の症状も悪化しやすくなります。
    また、災害直後よりも、被災してしばらく経過した方が疲れや精神的な不安が強くなってくるものです。薬を正しく服用しているか注意をしてあげるとともに、身体や心の調子に何らかの症状が出たときには、早めに医療救護所やかかりつけの医師に相談するようにしましょう。
    また、精神障害者とともに生活している家族や保護者の方たちの苦労を理解して、避難所などで一緒に生活できるよう、協力できることには手を貸し、思いやりを持って支援しましょう。

7 高齢者のために

  • 身の安全を守る
    ふだん生活する場所には物が落ちたり、倒れないように、家族やとなり近所の人たちに手伝ってもらって家具の固定を必ず行いましょう。
  • 非常持ち出し品の用意
    大きな災害が起こると、病院も当分の間診療ができなくなる可能性があります。常時薬を服用している方は、自分の病名やふだん飲んでいる薬の種類などを書いたリストを作っておきましょう。また、かかりつけの医療機関と相談し、いざという時にすぐ支援の得られる医療機関のリストを作っておきましょう。
    入れ歯や老眼鏡、補聴器など日常生活上必要なものは、日頃から身の回りにおくようにしましょう。
  • 避難所では
    避難所では行政からのお知らせなど、大切な情報が貼り出されたり配られたりしますので、知人や避難所職員などに必ず教えてもらえるようにお願いしておきましょう。

支援する方たちへ

  • 安否の確認
    近くに住んでいる一人暮しの高齢者や夫婦だけの世帯には、地震がおさまったら必ず声をかけて安否を確認すると同時に、火気器具や電気製品などから火災が発生していないか、ガス漏れしていないかなど、安全確認をするようにしましよう。日頃から、「さんは××さんが安否を確認する」という取り決めをしておきましょう。
  • 行動のサポート
    一人暮しの高齢者などの中には、日頃から近所づきあいが少ない方がいます。このような場合、いざという時に情報が伝わらない恐れもありますので、ふだんから声をかけるなどのコミュニケーションを心がけましょう。
    また、寝たきりの高齢者や歩行が困難な高齢者、また痴呆性高齢者など地域の中に要介護高齢者がいる場合には、日頃からいざというときの避難介護体制を検討しておきましょう。
  • 避難所では
    高齢者は他の人に迷惑をかけたくないという気持ちが人一倍強く、体調が悪くても我慢をしてしまうことがあります。誰もが強いストレスを感じる避難所での生活は、高齢者にとってはより一層厳しいものです。
    風邪を引くと、こじらせて肺炎になりやすかったり、避難所での食事が固かったり冷たかったりすると胃腸をこわすなど、若い人たちとは身体的な条件も違ってきます。生活支援については、高齢者の意見を十分に聞いてください。
    また、高齢になると排尿の回数が増えるので、避難所ではトイレに近い場所に高齢者の避難スペースを設けてください。オムツを使用している方もいますので、状況にあわせて、紙オムツ、ポータブルトイレなどを確保したり、オムツ交換の部屋を別に設けるなどしましょう。

8 難病患者のために

(重要)難病患者の場合、病気によって症状は様々です。病気による障害に応じて1から7で紹介した対応に従って下さい。ただし、病気ごとに症状が安定しないといった特徴がある点や日頃から医療を必要としているというところが注意すべき点です。ここでは、そうした注意点についてまとめています。

  • 災害に備えて
    難病患者は、定期的に薬を飲んで、症状を安定させたり、和らげたりする必要があります。そのため難病患者の場合は、災害発生時でも定期的に薬が飲めるよう、その方法等について医師と、充分に相談しておきましょう。
    また、難病患者の場合、その対応について専門的な知識が必要とされることが多いので、災害時にはできるだけ速く医師と連絡を取ることが大切です。災害時の、医師との連絡や患者の搬送等について、医師、難病専門医師、福祉施設、保健所(担当保健師)、防災機関等の関係機関と日頃から充分に相談しておきましょう。
  • 生命維持装置等を使用している難病患者停電したら
    ALS(筋萎縮性側索硬化症)、筋ジストロフィー等の難病にかかっている方のうち症状が重い人は、在宅で人工呼吸器等を使用していることがあります。災害時には、停電のおそれがあります。補助電源がついていない場合には、発電器を使用するか、自動車から電源を確保して、人工呼吸器が停電時も使えるようにしておきましょう。(自動車から電源を確保するためには専用の変圧プラグが必要です。)
  • 機械の故障に備えて
    また災害時の衝撃により機械が正常に動かなくなった場合に備え、アンビューバッグなど、手動で使用できる呼吸器を準備しておきましょう。予備の人工呼吸器がすぐに用意してもらえるように現在使用中の人工呼吸器のメーカー、機種番号等についてメモしておきましょう。電気式たん吸引器についても同じように準備しておけば安心でしょう。
  • 酸素ボンベの取り扱い
    人工呼吸器を必要としない低肺機能難病患者の方は、携帯用の酸素ボンベを用意しておくようにしましょう。ただし、火災が発生したときは、大やけどをする危険性があるので、火災発生現場から十分離れた場所で酸素ボンベを使用して下さい。また、災害発生時に備えて日頃保管している酸素ボンベについても、ストーブ等の暖房器具の近くや台所のように火を使う場所には保管しないようにしましょう。

支援する方たちへ

難病患者は、外見からは病気であることがわからないことが多く、また、症状が安定しないという特徴があります。避難所等で患者の症状が急変したり、体調の不良を患者が訴えたときは、係員にすぐ連絡するか、医療機関に連絡して下さい。
家族等が付き添っているときはその指示に従って下さい。

このページの先頭へ