ウメ園の草生栽培調査結果(春まき緑肥編)

9月4日耕起+覆土 ウメ園の草生栽培には、有機物の補給、雑草抑制、敷き草による乾燥防止、地温上昇防止、根による深耕等の効果があります。特に春に播種し、夏に生育させ、秋に刈り取る春まきの作型では、これらの効果が大きいと思われます。
普及センターでは、秋まき緑肥作物に引き続き、下表の通り3種類の春まき緑肥作物の草生栽培展示ほを設置し調査を行いました。

市町村 設置場所 緑肥作物(春まき) 面積 播種時期
田辺市 秋津川パイロット マルチムギ 10アール 6月10日
田辺市 新庄パイロット 有機ソルゴー、マルチムギ、
エン麦(スタンドオーツ)
各2.5アール
(ソルゴー:5アール)
5月7日、6月24日
上富田町 有機ソルゴー、マルチムギ、
エン麦(スタンドオーツ)
各2.5アール 6月24日

調査結果

エン麦とマルチムギは発芽揃いとその後の生育が悪く、雑草より生育が劣り最終刈り取り調査ができませんでした。エン麦・マルチムギは雑草や暑さに弱く、春まきは難しいとのことでした。
ソルゴーは2園とも生育は良好でした。調査結果は下表の通りです。

作物名 設置場所 分類 播種日 1度刈り(8~9月) 2度刈り(11月) 合計

根が張って

いる深さ

草丈

1平方メートル

あたりの乾物重

草丈

1平方メートル

あたりの乾物重

乾物重

有機

ソルゴー

新庄

パイロット

新規

造成園

5月7日

170~180

センチメートル

0.95

キログラム

80~200

センチメートル

0.3~1.0

キログラム

1.6キログラム

毎平方メートル

55

センチメートル

6月24日

120~140

センチメートル

0.8

キログラム

80~90

センチメートル

0.3

キログラム

1.1キログラム

毎平方メートル

上富田町

熟畑 6月24日

170~240

センチメートル

1.9

キログラム

190~200

センチメートル

2.1

キログラム

4.0キログラム

毎平方メートル

55

センチメートル

新庄パイロット(11月1日撮影)
新庄パイロット(11月1日撮影)
上富田町岡(11月1日撮影)
上富田町岡(11月1日撮影)

まとめ

今回の調査結果から、ソルゴーの草生栽培によって得られる有機物量は、熟畑では約4キログラム毎平方メートル、新規造成園でも1~1.6キログラム毎平方メートル、となることがわかります。根も両園とも約60センチメートルの深さまで伸びていることが確認されました。
また、地温の上昇抑制効果については、新庄パイロットにてソルゴーの草生栽培をしている地点としていない地点(ほぼ裸地)の地下20センチメートルの地温を8月20日から10月15日の期間で測定したところ、 最高地温の差が最大で4度 となりました。
以上のことから、春まき緑肥作物について、ソルゴーが適しており、有機物の補給、地温上昇効果、根による深耕と深部への有機物補給効果があるといえます。
秋まきの緑肥作物と春まきの緑肥作物の併用によって、より効率的にウメ園の土づくりができますので、ぜひ積極的に取り入れてください。

播種方法の検討

上富田町岡のソルゴー展示ほでは播種方法の違いによる草生や有機物量の違いを調査しました。
播種量は全て4キログラム毎10アールです。
播種方法は以下の3通りです。
(1)管理機で耕起したのち播種。その後レーキで軽く覆土。
(2)管理機で耕起したのち播種、覆土なし。
(3)耕起なし。覆土なし。

調査結果は下表の通りです。

播種方法 1度刈り(9月) 2度刈り(11月) 合計 根が張ってる深さ
草丈 1平方メートルあたりの乾物重 草丈 1平方メートルあたりの乾物重 乾物重
耕起+覆土(1)

170~240

センチメートル

1.9キログラム

190~200

センチメートル

2.1キログラム 4.0キログラム

毎平方メートル

55センチメートル
耕起(2)

190~220

センチメートル

2.1キログラム

180

センチメートル

2.2キログラム 4.3キログラム

毎平方メートル

60センチメートル
不耕起(3)

180~190

センチメートル

1.5キログラム

200

センチメートル

2.2キログラム 3.7キログラム

毎平方メートル

55センチメートル
8月13日耕起+覆土
8月13日耕起+覆土(1)
8月13日耕起
8月13日耕起(2)
8月13日不耕起
8月13日不耕起(3)
9月4日耕起+覆土
9月4日耕起+覆土(1)
9月4日耕起
9月4日耕起(2)
9月4日不耕起
9月4日不耕起(3)

8月13日の写真からもわかりますが、発芽量は(1)→(2)→(3)の順に多く、始めの生育には大きな差がありました。しかし、(2)、(3)は密度が低い分ソルゴーが太く育ちました。その結果、1度刈り・2度刈り乾物重合計は、(3)については若干劣りましたが、(1)と(2)については大きな差がでませんでした。9月4日の写真からも、生育の差が見られないことがわかります。
このことから、ソルゴーに関しては播種後に覆土しなくても得られる有機物量はあまり変わらないといえます。また、播種時に耕起しなくてもある程度の有機物量が期待できるといえます。

ただし、このことは分枝が活発なソルゴーには当てはまっても、それ以外の緑肥作物にも当てはまるとはいえませんし、畑の条件や天候にも左右されますのでご注意ください。

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