2-1 紀淡海峡周辺地域における風土・文化の特徴
この地域は、太平洋の黒潮を受ける高温多雨の気候や、中央構造線に沿った地質など、共通性をもった自然環境を有している。
表1のように、地質、街道、伝統産業、近代産業、農業などをみてみると、この紀淡海峡周辺地域で多くの共通点がみつかる。
自然環境の共通性は、その環境をもとに形成した風土にも、多くの類似性をもたしている。
さらに、そこで織り成された産業も、伝統産業から近代産業に展開されていくなかで、少なからぬ共通性がみられる。
それは単なる地理的条件の影響だけでなく、歴史のなかで、過去の地域間交流によって育まれてきたものでもある。
たまねぎ、みかん栽培については、地域間交流の賜物だろう。
たまねぎの大産地となった淡路は、和泉から栽培技術が伝播した。
『日本地誌』では、「1902年(明治35年)に賀集(淡路島・南淡町)の松原長太郎が大阪府和泉地方の種子を栽培してから、
その生産と販売が急速に伸びた」1)と記述している。
また、徳島のみかん栽培についても、「勝浦川中流の坂本(現勝浦町横瀬)の宮田辰次は、
寛政年間(1789~1800)紀州から温州みかんの苗を移入してみかん栽培を始め、
その後、勝浦川中・下流から那賀川下流山地斜面を利用したみかん栽培地域形成の端緒をつくった」
2)とされている。
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注 1)・注 2)『日本地誌』、日本地誌研究会、1973、二宮書店 |