令和4年度 新政策と予算編成の方針

令和4年度新政策と予算編成の方針

10月5日記者発表
令和4年度新政策と予算編成の方針

資料(PDF形式1,229キロバイト)(令和3年10月) 

I. 令和4年度新政策について

 ~ポストコロナ時代に挑み、和歌山を飛躍させる

 コロナ禍が長期化する中で、徹底した感染拡大防止対策に取り組みながら、県民の暮らしを守り、苦境に立っている地域経済を支え、雇用を維持していかなければならない。

 一方で、ワクチン接種が進み、世界経済も回復基調にあることから、今後の景気回復とポストコロナ時代における社会の変革に備えるとともに、コロナ禍を契機としたテレワーク勤務の普及などにより生じている地方分散の動きを捉えていかなければならない。

 このため、加速するデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)や脱炭素社会の実現など、世界の変化をチャンスと捉え、いち早く対応することで県内産業を成長させるとともに、この好機を逃すことなく、人や企業から選ばれる地域となるため、「和歌山の強み」に更に磨きをかける必要がある。

 令和4年度新政策は、『新しい世界で飛躍する和歌山』『飛躍を支える基盤づくり』の2つの政策を柱として、新たな施策を展開することで、ポストコロナ時代に挑み、和歌山を力強く飛躍させる。

1.新しい世界で飛躍する和歌山

(1)「DX和歌山」の推進(産業DX、自治体DX)

(2)ポストコロナ時代に挑戦する産業支援

(県内事業者の成長支援、農林水産業の振興、観光産業の再生・発展)

(3)人と企業を和歌山へ呼び込む(移住定住、企業誘致)

(4)新たな産業を育む(ロケット、IR、ICT企業誘致)

2.飛躍を支える基盤づくり

(1)コロナから暮らしと経済を守る

(地域医療体制の堅持、事業者支援・雇用対策、コロナ禍で困難を抱える人への支援)

(2)安心・安全で暮らしやすい地域づくり

(子育て、健康づくり、高齢者・障害者福祉、教育、防災・減災対策、防犯・交通安全、生活環境、自然環境・文化)

(3)成長を支えるインフラ整備

1. 新しい世界で飛躍する和歌山

(1)「DX和歌山」の推進

 コロナ禍で移動や接触の制限を余儀なくされる一方、テレワークやオンライン教育、電子商取引の活発化をはじめ、生活様式や企業活動におけるリモート・オンライン化が一気に進むなど、世界規模でDXが加速化している。

 この動きを逃すことなく捉まえ、社会全体でDXを強力に推し進めていく必要がある。産業の競争力強化と優位性の確立のため、新たに「わかやまデジタル革命推進プロジェクト」として、シンポジウム開催による機運醸成、知識や技術を習得するための各種講習会、課題解決のための専門家派遣や設備投資への助成など、DX実現に向け、一貫した支援を実施する。

 また、令和3年9月にデジタル庁が設置されたところであり、デジタル社会実現に向けて、行政サービスのデジタル化について、国・地方が一体となった取組が求められている。

 本県においても、行政のデジタル化を進め、制度や組織の在り方等をデジタル化に合わせて変革させることで効率的な行政運営、住民の利便性向上を図る。そのため、県庁内にDX本部を立ち上げ、国と連携を密にしながら、マイナンバーカードの取得を促進し、電子申請の対象手続きを拡充するとともに、行政データ利活用を推進するなど県内市町村を含む行政のあらゆる分野において、DXを強力に推進する。

(2)ポストコロナ時代に挑戦する産業支援

県内事業者の成長支援

 コロナ禍を契機とした社会変革や世界的なデジタル投資、グリーン投資の加速化により、これまでにない新たなビジネスを生み出す好機を迎えている。そこで、AIやIoTの活用、新技術や新サービスの創出、DXや脱炭素化など新しい時代に対応した県内事業者の事業革新を強力に支援する。

 また、国内外で活躍する和歌山発ベンチャー企業を創出するため、起業家組織と連携し、新たな創業者の発掘・育成を行い、資金提供や取引先の紹介など多彩な支援がある和歌山の魅力を発信するとともに、中小企業の高付加価値化を図るため、デザイン力を取り入れた経営手法の導入を支援する。

②農林水産業の振興

 コロナ禍を契機に非接触・非対面による取引需要が拡大していることから、引き続き、e-コマースを活用した販売を促進するとともに、生産基盤の強化やICT技術等の導入によるスマート化を進めることで、高品質化や生産性向上を図る。 

 新たな就業者が参入しやすい仕組みを導入するため、法人化を含め地域の受入体制の整備や新規就業者の育成を支援し、県内の農林水産業を支える新たな担い手を確保する。

 特に、農業経営の基盤強化のため、「和歌山版遊休農地リフォーム化支援」事業の対象を拡大し、農地集積を加速化する。 

 また、林業・木材産業の生産性向上や紀州材利用促進のため、市場ニーズに即した取引が出来るシステムを導入するなど「紀州林業収益向上プロジェクト」を推進する。

③観光産業の再生・発展

 国内の外出・移動自粛の緩和や海外との往来再開による爆発的な観光需要増に備え、引き続き、「蘇りの地、わかやま」キャンペーンを展開するなど和歌山の魅力を発信する。

 また、ワーケーションなど「新たな旅のスタイル」の普及・促進、アウトドア観光など新たなコンテンツ造成とともに観光周遊のデジタル化の推進、多言語化など外国人観光客の利便性向上などに取り組み、県内の観光産業の再生・発展を支援していく。

 加えて、南紀白浜空港へのビジネスジェット、チャーター便、新規路線の誘致を進めていくとともに、クルーズ船の旅を安心して楽しめるよう徹底した感染防止対策に取り組みながら、寄港増に取り組んでいく。

(3)人と企業を和歌山へ呼び込む

 コロナ禍を契機としたテレワーク勤務の普及などにより生じている地方分散の流れを捉まえて、和歌山へ人と企業を呼び込むため、「①個人移住」「②農林水産業の担い手として移住」「③企業誘致に伴う移住」「④転職なき移住」の4方面をターゲットに戦略的に施策を展開する。

 移住については、施策の要となるワンストップパーソン(移住のあらゆる相談に対応)のコーディネート力を強化する。加えて、「住まい探しサポートポータルサイト」の新設など、移住希望者の住まい探しを円滑に支援するための仕組みを導入するとともに、安心して空き家を購入できるよう住宅の検査制度(インスペクション)の費用を支援する。

 企業誘致については、全国最高水準の企業立地奨励金に加え、和歌山のビジネス環境の良さと安全で快適な生活環境の強みを活かした「New Work ✕ Life Style」を提案することで、他県との競争に打ち勝つ。

 さらに、シェアオフィスやコワーキングスペースなどテレワーク拠点の整備を促進するとともに、副業人材を県内に呼び込み、県内事業者の抱える経営課題解決を支援する。

 加えて、地域に根ざした活動を行い、その地域への定住・定着が期待できる地域おこし協力隊の受入を拡大するため、OB・OGによる支援体制を構築するとともに、東京・名古屋・大阪で市町村合同募集説明会を新たに開催するなど、PRを強化する。

(4)新たな産業を育む

 世界規模で経済・産業構造が大きく変革する中、和歌山が成長を続けるために、長期的な視点をもって、時流を捉えた、これまでにない新しい産業を育てていく。

 誘致した全国初の民間小型ロケット発射場『スペースポート紀伊』では、令和4年に初打ち上げを迎える予定である。今後、世界の小型衛星打ち上げ需要が大きく増加することが見込まれていることから、この需要を取り込むため、発射場を核とした宇宙・ロケット関連産業など成長分野の企業誘致・集積を図っていく。

 また、IR(統合型リゾート)については、令和3年7月に、和歌山IRを実施する事業者を選定し、8月に選定した事業者と基本協定を締結したところであり、令和9年の開業を目指して取り組んでいく。

 加えて、オフィス整備促進によるICT企業誘致や医工連携による県内ヘルスケア産業の活性化にも取り組む。

2.飛躍を支える基盤づくり  

1)コロナから暮らしと経済を守る

地域医療体制の堅持

 県を挙げて徹底した感染拡大防止に取り組むため、ワクチン接種を推進するとともに、感染者や濃厚接触者特定のための積極的疫学調査等を保健所の統合ネットワークにより実施する。また、医療提供体制を充実させることで、全国唯一の全員入院体制を堅持する。

 加えて、コロナ禍においても、安心して必要な医療を受けることができるよう、救急医療体制を守り、医師の地域偏在や特定診療科の医師不足解消に取り組むことで、医療提供体制を堅持していく。

事業者支援と雇用対策

 需要の減少や資金繰りの悪化など、コロナ禍で甚大な影響を受けている事業者に対して、金融支援を始めとした県独自の包括的な支援策に加え、産業別に細やかに業況を把握し、必要に応じて迅速に施策を講ずるとともに、下請等中小企業の取引条件改善を図るなど、事業継続を強力に支援する。

 コロナ禍で雇用情勢が悪化し離職を余儀なくされた失業者の早期就職や第2就活を支援するため、正社員の採用を求める企業との研修を通じたマッチングや業種・職種転換を伴う職業訓練などの就職対策を実施するとともに、オンラインを活用して就活情報の発信力を強化するなど就活サイクルプロジェクトを拡充する。

 また、高校生の就職について、早期離職の要因である就職ミスマッチ解消のため、複数企業から就職先を選択する複数応募制を導入したところである。そこで、就職を希望する生徒の主体的な企業選択を支援するため、必要となるノウハウや企業情報をオンラインで提供し、学校等で活用していくとともに、高校生向け就活サイトを新たに開設することで就職支援体制を強化する。

③コロナ禍で困難を抱える人への支援

 コロナ禍が長期化する中で、収入減少による生活不安や人とのつながりが希薄になったことによるストレス増加により、複合的かつ多様な課題を抱える人が、セーフティネットからこぼれ落ちることがないよう、地域の多機関協働による包括的な支援を行い、誰一人取り残すことのない社会を実現していく。

 また、SNS等でのコロナに関する誹謗中傷等に対しては、今後も断固とした措置を講じる。

(2安心・安全で暮らしやすい地域づくり

①子育て環境の充実

 コロナ禍でも安心して妊娠・出産ができる環境を提供するため、引き続き、オンラインを活用したきめ細かな保健指導や情報発信を行う。 

 また、多子世帯の経済的負担の軽減のため、保育料の無償化に加えて、3子以上の世帯について、県が実施している修学奨励金等の支給対象を拡大するとともに、保育士の労働環境改善を支援することで、子供を安心して育てられる環境を充実させる。

 さらに、子供達が社会の中で孤立しないよう、第三の居場所となる子供食堂のネットワーク化を図り、継続的に活動していける体制を構築するとともに、ひとり親家庭が困窮することがないよう、新たに離婚時の養育費の確保支援に取り組む。

②健康づくりの推進

 コロナ禍が長期化する中、感染不安から、過度に外出や検診受診を控えることで、健康を損なうことがないよう、健康推進員を活用し、検診受診や健康づくり運動の実践について強く働きかけていく。

 特に、高齢者が介護を受けることなく、自立した生活を送れるよう、運動機能の改善等を図るサービスを受けることができる体制を整備する。

 また、認知症発症前の軽度認知障害(MCI)等にある高齢者を、健診等を通じて把握し、進行抑制予防に向けた啓発及び行動を促すとともに、改善が見込まれるプログラムを提供する事業所を支援する。

③高齢者・障害者福祉の充実、困難を抱える人への支援
 質の高い介護や障害福祉サービス提供のため、引き続き、人材確保や施設整備等を強力に支援する。
 特に、乳幼児期(0~2歳)における聴覚障害を早期に発見・支援していくため、新たに聴覚障害児支援中核拠点を設置し、療育相談や市町村保健師等への研修を開始する。
 また、アルコール、ギャンブルやゲームなど様々な依存症に対して、予防教育や相談・医療・回復支援などの対策を総合的に推進する。
 加えて、ヤングケアラーなど新たに表面化してきた課題に対して、関係機関が連携して取り組み、発見、相談、支援を適切かつ円滑に行っていく。
 また、法律婚、事実婚や同性カップルが、不利益や不都合な取扱いなく、行政サービスや制度を利用できるよう取り組む。

④次代を担う人材の育成
 情報化やグローバル化が進む世界においても、自らの力で未来を拓いていける人材を育成するため、導入した1人1台端末を活用し、本県独自のプログラミング教育を行うとともに、県立高校では優れた授業動画や実験動画を用いた授業を行う。併せて、1人1台端末環境の円滑な運用を支えるため、教員へのサポート体制の充実を図る。
 加えて、課外活動として、スタンフォード大学との遠隔講座による実践的な英語教育や宇宙教育に取り組み、学びを深める機会を提供するとともに、学校や地域の課題解決に資する学校独自の先駆的取組を支援する。
 「全国学力・学習状況調査」で中学校(国語・数学)の平均正答率が全国平均を下回っていることから、新たに「学習支援プログラム(仮称)」を導入し、学力向上の取組を強化する。
 また、いじめ根絶、不登校の解消に向けた取組を徹底するとともに、コロナの影響をはじめ家庭の経済状況で進学をあきらめる子供を出さないよう、奨学金や給付金の活用を積極的に支援する。

⑤防災・減災対策の推進
 「災害による犠牲者ゼロ」を実現するため、巨大化する台風や線状降水帯などによる局地的豪雨、近い将来発生が懸念されている南海トラフ地震・津波への対策として、命を守る道路や河川・海岸整備など国土強靱化を着実に進めるとともに、道路、河川等のカメラ画像や航空測量データ等ICTを活用した施設管理の高度化を進める。
 また、発生頻度別の浸水想定区域図を作成することで、流域治水を踏まえた防災まちづくりに活用していくとともに、通行規制区間において異常気象時にいち早く規制情報を提供できる体制を整える。
 加えて、発災直後の迅速な救助体制と早期復旧体制を確保するため、県災害対策本部の機能を強化する。

⑥防犯対策・交通安全の推進
 犯人を迅速に追跡しその早期検挙を図るため、防犯カメラ映像をAI技術を用いて解析するシステムの運用を開始する。
 また、登下校時の児童生徒を含む歩行者の安全な通行を確保するため、利用状況や周辺環境に応じた整備手法を用いて、通学路など生活道路の歩道整備を加速化する。

⑦人口減少時代における生活環境の提供
 利用者人口が減少する一方で老朽化が進む上下水道施設の一元管理などによる持続的事業運営や合併浄化槽の普及促進など、市町村と連携した基盤強化に取り組む。
 プラスチックごみ削減を推進するとともに、監視及び警察等関係機関との連携を強化することで、廃棄物の不法投棄を抑止する。
 空き家の活用や処分を促進するため、市町村の特定空家等の認定支援を行うとともに、建物等が景観支障状態にならないよう予防保全型の仕組みを導入する。
 また、地域住民にとって不可欠な生活交通を維持・確保していくため、デマンド型交通等の実証実験など、市町村が行う地域に適した交通体系の再構築を強力に支援する。

⑧豊かな自然・文化の継承

 先人が守り、育んできた自然や文化を未来へと継承するため、自然環境の保全、文化の振興に取り組んでいく。

 まず、「南紀熊野ジオパーク」のユネスコ世界ジオパーク認定に向けた取組を進めるとともに、「南紀熊野ジオパーク探偵団」などにより、次世代を担う人材を育成する。

 また、自然環境を保全すべき地域での工事や開発に伴う生態系等への過度な負担を抑止するため、環境に配慮した工法等を推進する仕組みを導入する。

 文化の振興については、「紀の国わかやま文化祭2021」を通じて培った財産を未来へ継承するため、毎年11月を「きのくに文化月間」と定め、文化活動を集中的に開催するとともに、優れた活動をしている子供達を表彰する制度を創設する。

 また、近代美術館、博物館、紀伊風土記の丘において、収蔵品等のデータベース化を行い、その魅力をWebの活用により世界に発信する。

(3)成長を支えるインフラ整備

 生産拠点の国内回帰需要やポストコロナ時代におけるインバウンド需要回復を見据え、経済活動の基本的チャンスを保障し、大阪・関西万博の効果を最大限に発揮するため不可欠なインフラ整備を進めるとともに、紀伊半島一周高速道路や県内幹線道路等からなる道路ネットワークのさらなる充実を図る。

 また、南紀白浜空港での国際線ターミナルの活用やビジネスジェット受入拡大に向けた施設整備を進めるとともに、RORO船の定期航路誘致など和歌山下津港を経由した物流網の構築に積極的に取り組む。

 さらに、回復基調にある製造業の設備投資需要を取り込むため、あやの台北部用地の整備を進めるなど、本県発展に必要となる基盤整備を強力に推進する。

II. 令和4年度予算編成方針

 令和4年度の新政策を推進するとともに、引き続き財政の健全性を確保するため、スクラップアンドビルドや事務事業の見直しを徹底することとし、既存事業については▲5%のシーリングを実施する。

 また、投資的経費については、事業効果や緊急性等を精査しつつ、全体としての投資が財政健全化の妨げとならないように努める。

 ただし、上記重点政策に沿った事業は、原則としてシーリングを設定しない。

 なお、国の予算編成の動向等を踏まえ、予算編成過程において調整等を行うものとする。

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