第8回地方自治体カジノ研究会開催結果の概要について

日時

平成16年3月31日(水曜日)午後1時から午後2時30分

場所

東京都庁第一本庁舎25階114会議室

開催結果の概要

本日、東京都、神奈川県、静岡県、大阪府、和歌山県及び宮崎県の6都府県の実務担当者による第8回地方自治体カジノ研究会を開催し、以下の議題に沿って意見交換等を行った。また、前回の第7回地方自治体カジノ研究会に引き続き、オブザーバーとしての参加の申し出があった14道府県のうち、北海道、群馬県、石川県、愛知県、広島県、香川県及び大分県の7道県(今回欠席は栃木県、茨城県、福井県、岐阜県、京都府、奈良県、愛媛県)と、今回新たにオブザーバー参加の申し出があった山形県の実務担当者が出席した。

前回の検討課題の修正報告について

前回、東京都から提案された「第8章日本における総合的なカジノ像の考察」について修正報告があり、了承された。

研究成果の公表について

第1回から第8回までの研究会の研究成果をとりまとめ、「地方自治体カジノ研究会研究報告書」として、本日、研究会終了後公表することとした。

今後の連携強化について

研究会を発展的に解散し、地方自治体カジノ研究会メンバーを中心に、新たに「地方自治体カジノ協議会」を発足し、カジノ法制化の実現に向けて活動を継続することで合意した。

地方自治体カジノ研究会研究報告書(概要)

第1章 日本におけるカジノ導入目的に関する考察

  • カジノの導入目的を大別すると、新たな観光資源の創出による観光振興、経済や雇用・財政への貢献、違法・無法カジノの排除の三つが挙げられる。
  • その他、新しいエンターテイメントの創出といった目的も考えられる。

第2章 日本におけるカジノ合法化に向けた動き

  • 平成12年ごろから、官民を問わず、国内各方面で合法化に向けた動きが活発になってきている。

第3章 日本におけるカジノの内容及びロケーションの考察

  • カジノの形態は立地等によって異なるが、どのような形態であっても、「非日常的な時間」を演出できることが要求される。
  • 大人の健全な娯楽として、幅広い顧客層に受け入れられるものになることが望まれる。外国人についても重要な顧客として重視すべき。
  • 既存のホテルやショッピング施設なども活用しながら、立地や環境にふさわしい施設をカジノに付帯して配置し、エリア全体の魅力を高めて集客促進につなげるべき。
  • カジノで行うゲームについては、客層・収益確保等の観点から組み合わせて選択することが必要である。また、ハイテク技術を活用した日本独自のマシーン導入も考えられる。
  • 立地条件としては、非日常性を演出できる環境であること、住宅地域から隔離性があること、交通アクセスがよいこと、採算の取れる利用者数が見込まれること、地域の合意が得られること等が必要である。
  • 立地場所には、観光資源を有する都市、歴史や自然環境に優れた観光地、独自の顧客誘致の目安が立てやすい地方都市での開設が考えられ、大都市近郊地域または温泉等の観光資源を有する地域には、立地場所としての適性・有利性があると考えられる。
  • 乱立による生活環境や採算性の悪化を防ぐためにも一定の設置数の規制は必要だが、魅力あるカジノ創出や全国レベルでの経済波及効果が期待できるよう、競争原理が有効に機能する程度の複数地域に設置できるようにすべき。

第4章 日本におけるカジノに関する法規制

  • カジノ合法化のためには、カジノ特別法を制定して政策的に違法性を阻却する方法と、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」を改正して営業する方法の2通りが考えられるが、法的位置づけや政策的意義が明確になり、新たな総合的・体系的制度設計が可能な「特別法制定」が望ましい。この場合、合法化の条件となる公益は、収益が地方自治体や国の収入を増加させ、その収入が公益増進に寄与することとなる。
  • カジノ特別法を検討する際には、違法性を阻却する政策目的の設定、公的信頼のある団体に実施行為者を制限すること、実施地域の指定、設置に対する国の関与、実施団体の組織事業に関する詳細な規制、実施方法の規制、払い戻し方法の規定、罰則等の規定等について考慮し、厳格な制度設計を行う必要がある。
  • カジノは経済・雇用効果等の好影響のほか、設置地域において様々な影響を及ぼすことも予想され、地域の利害と密接な関係を持つことから、その収入は基本的に地方自治体の地域振興財源とすることが適当である。ただし、国民全体に等しくメリットのある政策に収入の一部を割り当てることも考えられる。

第5章 日本におけるカジノの運営システムに関する考察

  • 犯罪の追放、適正な利益水準、会計処理・手順の完全性・透明性の確保、利用者に対して公正なカジノの保証の4項目を満たすため、設置・運営主体、地域・施設、運営に関する規制の内容が検討されねばならない。
  • 規制については、カジノ特別法により制度化される基本的項目と、施行・運営面の規則として制度化される項目に分けられるが、全国画一的でなく、それぞれの施設の顧客層や地域の実情に合わせた形での制度化が望ましいものもある。
  • 公共が主体となって厳格な規制・監視を行うべきことは当然であり、規制主体そのものはあらゆる干渉から独立していなければならず、不正・利権・腐敗の発生を未然に防ぐ仕組みが必要。
  • 具体的なカジノの設置・運営について、基本的には公共の関わりは必要最小限にとどめることが適当であり、望ましい公共が担うべき役割とは、地域におけるカジノの位置づけ(開設目的の明確化)、地域における合意形成、地域におけるカジノ実施の枠組みの提案である。
  • 国全体の統一的なルールは法律等により決定されるべきだが、カジノ設置の発意や委託業者の選定など、具体的な設置・運営に関する役割は地方が担うべき。
  • カジノの設置主体については公共・民間のいずれのケースも想定できる。
  • カジノ施設の運営主体については、厳格な規制の中で、という条件のもと、民間に任せたほうが効率的である。国際的な競争環境の違い、事業リスクの本質的な違いなどから、公営競技のような公設公営は望ましくない。
  • 事業者数等に関し、導入初期などカジノ産業の成長に応じて競争環境をコントロールする必要もある。

第6章 日本におけるカジノ収益に関する課税等のあり方

  • カジノ合法化の目的を観光振興、地域振興とする場合には、その収益についても、基本的には当該地域の振興のために活用することが適当である。
  • 収益の使途を法律等で規定する場合は、基本的な枠組みのみにとどめ、具体的使途は都道府県の条例に委ねるなど、地域事情や地域住民の意向等が充分に反映できることが望ましい。
  • カジノ利用者は当該地域だけでなく国内外に及び、様々な影響が国全体に広がること等を踏まえ、国民全体に等しくメリットのある施策や、カジノに対する不安を解消する施策に収益の一部を活用することも考えられる。
  • 想定される課税等には、ゲーム収益への課税、カジノ使用機器への課税、ライセンスに関する費用負担、利用者への課税等が考えられるが、カジノについては収益に対する直接的課税だけではなく、経済波及効果による関連産業も含めた法人関係税等の増収も見込まれることから、カジノ利用者の動向等を分析し、総合的見地から課税のしくみを検討する必要がある。
  • カジノ導入の際には、導入目的や収益の使途等について議会での議論等を通じて充分に情報提供を行うとともに、カジノの経営状況や収益の使途等の状況について、国、地方自治体、カジノ事業者がそれぞれの立場で情報公開を徹底する必要がある。

第7章 日本におけるカジノに対する懸念や反対意見と対応策

  • 暴力団等組織悪介入への懸念に対しては、世界各国で広く採用されているライセンス制度を構築し、厳格な審査、調査、監査等を行うことが不可欠と考えられる。
  • 犯罪増加、治安及び環境の悪化の懸念については、徹底した入場者チェックや厳格な監視・パトロール体制を確立することで、未然に防止することが可能である。また、カジノの立地を慎重に検討して地域の合意を得ることが重要で、地域の防犯や美化活動については、地域社会との連携が不可欠である。
  • 青少年への悪影響を及ぼす懸念については、年齢制限を設けることは当然として、この厳守を徹底するため、違反したカジノに対しては、アメリカと同程度(数十万ドルの罰金)の厳しいペナルティを課す必要がある。その他、設置について青少年の行動範囲と重ならないような立地を検討する必要がある。
  • ギャンブル依存症者が増加する懸念については、依存症者本人あるいは家族の申し出による入場拒否の申請制度や相談連絡先の明示等カジノ内での対策を講ずる一方で、治療・回復施設の充実や自助グループへの支援といった社会的対策を実施する必要がある。こういった社会的対策には、国や、パチンコや他の公営競技等とも連携した、一体的な仕組みづくりが不可欠である。
  • これ以上ギャンブル等は必要ないのではないかという意見もあるが、カジノは健全な娯楽、また非日常的なエンターテイメント、公営競技等とは異なった商品特性を持つ新たな娯楽、成熟した社会における多様な娯楽機会のひとつとして意義を持つ。
  • 健全な娯楽として日本では定着しないという懸念であるが、カジノを健全な娯楽として定着させていくには、厳しい営業管理による不正の排除や、高い還元率やゲームルールの統一化・明確化によって誰でも安心して遊戯できる環境設定等が必要である。健全性を国民に理解してもらうためには、経営や収支状況に関する情報公開や報告の義務付け、ルールの法制化によって、健全性をアピールしていく必要がある。

第8章 日本におけるカジノ像に関する総合的考察

研究結果を踏まえ、法案が作成される場合に検討されるべき主要項目の方向性(法案骨子)を以下のとおりまとめた。

合法化の方法及び目的

  • 法的位置づけや政策的意義が明確になり、総合的で体系的な制度設計が可能な新たな特別法を制定する必要がある。
  • 地域の公益増進に寄与することを条件とし、導入目的を明確化する。(観光振興、経済や雇用・財政への貢献、違法・無法カジノの排除等)

経営主体の考え方

  • 設置主体は、地方自治体または民間企業とする。
  • 運営主体は、民間企業とする。
  • 設置・運営主体の資格に関する詳細な規定を設け、それを満たす団体にのみ設置・運営主体者を制限する。

設置に関する基準

  • 設置数については、「乱立による弊害防止」等の観点から、一定の制限を設ける。
  • 設置場所については、「非日常空間の創出」「青少年への悪影響排除」「採算性」等の観点から、日常生活空間からの隔絶要件、用途地域要件、地域の合意等、地域要件を設定する。

運営に関する基準

  • 国全体の統一ルールは法律等により決定するが、設置の発意や委託業者選定、併設施設、営業時間や従業員の雇用条件等具体的内容については、施設の顧客層や地域の実情に合わせ地方が条例等で定められるようにする。

規制・監視に関する考え方

  • カジノが公正・透明に行われることを確保するため、厳格な資格審査・監視機関を設置する。この機関は中立性確保のため、あらゆる干渉から独立した機関とする。
  • 罰則等についても厳格に規定・適用する。

税等収益に関する考え方

  • 収益は基本的に地方税とし、地方自治体の地域振興財源とする。
  • 収益の使途は、地域事情や地域の意向が充分に反映できるよう条例で規定する。
  • 環境対策や文化芸術の振興等、国民の共通の利益の増進に収入の一部を割り当てることも考慮に入れる。

社会的影響に関する考え方

  • 暴力団の関与、治安の悪化、青少年への悪影響等の懸念には、厳格な規制の実現により対応する。
  • ギャンブル依存症対策は、国や、他の公営競技、パチンコ業界等とも連携した一体的対策を講じる。

全般的事項

  • 充分な情報提供を行うとともに、情報公開を徹底する。

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