長期総合計画 第2章 第3節 いのちを守る

第3節 いのちを守る

第1項 自然災害への備え

1.「災害による犠牲者ゼロ」の実現

<現状・課題>

[南海トラフ地震]

・南海トラフ地震は、今後30年以内に70%程度の確率で発生すると予測(2017(平成29)年1月13日地震調査研究推進本部公表)されており、本県では、東海・東南海・南海3連動地震(以下「3連動地震」という。)で最大1万9千人、南海トラフ巨大地震で最大9万人という死者数を想定しています(2014(平成26)年公表の地震被害想定)。

[中央構造線断層帯を起震断層とする地震]

・中央構造線断層帯(近畿地方の金剛山地の東縁から伊予灘に達する長大な断層帯)が和泉山脈に沿って県を横断しており、今後30年以内の発生確率は0.07~14%と予測され、「S*ランク」(地震が起こる可能性が最も高いランク)に分類(2017(平成29)年1月13日地震調査研究推進本部公表)されており、本県では、最大13万7千棟の全壊・焼失被害が発生し、4千人強の死者が出ると想定しています(2006(平成18)年公表の地震被害想定)。

[風水害・土砂災害]

・近年、増加傾向にある集中豪雨や台風により、河川の氾濫等による市街地等の浸水リスクが高まっています。
・土砂災害危険箇所が18,487か所(全国6位)と多く、がけ崩れ等の土砂災害も毎年のように発生しており、甚大な人的被害、物的被害が発生するおそれがあります。


<めざす方向>

本県は、地形的・気象的な特性ゆえに、度重なる災害を経験し、多くの尊い人命を失ってきました。物的被害は元に戻すことはできても、失われた尊い命は永久に戻ることはありません。何よりも守らなければならないのは人命であり、「災害による犠牲者ゼロ」を実現するための防災・減災対策を最優先で実行します。


<実施する主な施策>
1 地震・津波対策の推進
(1) 耐震化等の推進

ア 住宅の耐震化をより一層進めるため、耐震診断・耐震設計・改修への支援制度を推進します。
イ 医療施設、社会福祉施設、公共施設、公共交通機関の施設など、多数の者が利用する建築物の耐震化をより一層進めます。
ウ 家具の転倒・落下による直接被害を防ぐとともに、円滑な避難を可能とするため、家具固定をより一層進めます。

(2) 津波から逃げ切る対策の推進

ア 津波避難困難地域(津波到達までに安全な場所へ避難することが困難な地域)の全ての住民が津波から避難できるよう、優先的、緊急的に対策を実施し、2024(平成36)年度までに津波避難困難地域を解消します。
イ 住民が津波から迅速に避難できるよう、県津波予測システムやエリアメール等による情報伝達体制を強化します。
ウ 住民がどのような場所に逃げるべきかを各自判断できるよう、津波避難先の安全レベルを設定し、より安全レベルの高い避難場所へ避難することを徹底します。
エ 地震により倒壊した建築物等が避難を妨げず、安全かつ確実に津波からの避難が可能となるよう、津波からの円滑な避難に係る避難路沿いの建築物等の制限に関する条例に基づき、円滑な避難に係る避難路の提案を市町に働きかけて、特定避難路の指定を進めます。
オ 高台への避難路や避難階段を整備し、避難経路を確保します。
カ 新たな津波避難ビルの指定や津波避難タワーの整備など、避難場所を確保します。
キ 住民一人一人の避難可能な経路を設定し、避難計画を作成した上で、津波避難訓練や教育・啓発を実施します。
ク 避難時間の確保が必要な3町6地区については、堤防・護岸の嵩上げや耐震化により、津波第1波の浸水を抑制します。
ケ 地域の経済被害を抑制し、早期の復旧・復興を実現するため、15市町の6港湾、10漁港について、既存施設の嵩上げ、堤防の拡幅等により津波への対応を強化します。
コ 水門・樋門の自動化・遠隔操作化や、津波により漂流し、人的・物的被害を生じさせる原因となるプレジャーボートの移動・撤去を計画的に実施します。
サ 「3連動地震」より規模の大きい「南海トラフ巨大地震」の津波避難困難地域のうち、上記の全ての対策をもってしても課題が解決しない地域について、高台移転や複合避難ビル等の構造物の整備などの地域改造も含めた対策を市町とともに進めます。

2 風水害・土砂災害対策の推進

ア 土砂災害や浸水被害の可能性、施設の階層・構造等を考慮した風水害避難先の安全レベルの考え方に基づき、避難先の見直しを一層促進します。
イ 市町村長が避難勧告等の発令を的確に判断し、住民が迅速に避難できるよう、県気象予測システム等による情報伝達体制を強化します。
ウ 浸水想定区域図の公表や洪水情報の迅速かつ適切な提供を行うとともに、県内主要河川等の整備や、下水道、農業用排水路の整備を一体的に進め、近年増加傾向にある局地的な集中豪雨や台風に対応した総合的な洪水対策に取り組みます。
エ 県営3ダム(二川ダム、椿山ダム、七川ダム)において事前放流による洪水調節を計画的に実施するとともに、民間の利水ダムについても洪水調節に係る緊急時の協力体制を確保するなど、ダムを有効活用した治水対策を推進します。
オ 集中豪雨等による決壊の危険度が高い、ため池の改修を加速度的に実施します。
カ 土砂災害が発生するおそれのある区域を明らかにし、危険性を周知するため、土砂災害警戒区域等を指定するとともに、砂防関係施設や治山施設の計画的な整備を進めます。
キ 県土砂災害啓発センター内に誘致した国土交通省近畿地方整備局「大規模土砂災害対策技術センター」と連携して、深層崩壊等の大規模土砂災害の調査・研究を進めるとともに、得られた成果や過去の災害の教訓を後世に伝える啓発活動に取り組みます。


<進捗管理目標>

指 標

基準値

(2015年度)

目標値

(2026年度)

耐震性を有する住宅の割合

75%

100%

津波避難困難地域

[3連動地震]

4町22地区

[南海トラフ巨大地震]

12市町61地区

解消

(2024年度)

津波による犠牲者をゼロとするための一人一人の避難計画の作成

沿岸市町全て

(2019年度)

津波第1波に向けた堤防整備・港湾整備(3町6地区)

完了

(2019年度)

経済被害を抑制し、早期の復旧・復興を実現するための港湾・漁港整備

(15市町)

完了

(2024年度)

プレジャーボート収容率

[港湾] 68%

[漁港] 72%

(2014年度)

100%

(2018年度)

県管理河川の河川整備率

※人家等保全すべきものがない山間部など改修不要区間を除いた区間の改修率

37%

46%

ため池改修加速化計画に基づく改修 (233か所)

23か所

完了

土砂災害警戒区域等指定率

42%

100%

(2020年度)

土砂災害対策における保全人家の

割合

17%

24%


2.発災直後の迅速な救助体制と早期復旧体制の確保

<現状・課題>

・災害発生時の人命救助は、72時間が経過すると生存率が急激に低下すると言われています。
・被害が広範囲にわたる大規模災害が発生した場合、被災地情報の途絶、人員・資材等の不足などにより、行政の的確な初動対応が困難となるおそれがあります。
・南海トラフ地震では、道路など交通施設や上下水道、電気などライフラインの広範囲にわたる被害が想定されており、必要な食糧・飲料等が不足したり、医療や避難生活に必要な機器が電力不足で使えないなどの事態が懸念されます。


<めざす方向>

県民の命を守るため、発災直後からあらゆる人的・物的資源を総動員して「スピーディな災害対応」を行い、救える命を必ず救うための応急体制をより一層強化します。
また、災害から守られた命が、その後の避難生活で失われることがないよう、必要な食糧・飲料や生活の基盤となるライフライン機能の確保に取り組むとともに、避難所運営の質の向上や早期復旧の鍵となるボランティア受入れ、罹災証明書発行、災害廃棄物処理などの各課題への取組を加速します。
さらに、自分の命は自分で守る意識をもつための教育を義務教育の段階から徹底するとともに、防災・減災について地域で学ぶ機会の提供や、地域の防災・減災活動の中心となる人材の育成などにより、地域住民の助け合いによる災害対応力を向上させます。


<実施する主な施策>
1 救助・救援体制等の充実強化

ア 消防や警察の機能強化に取り組むとともに、災害拠点病院等の医療機関やDMAT(災害派遣医療チーム)の機能をより一層強化します。
イ コスモパーク加太に新設した消防学校において、大規模災害や救急高度化に対応した教育訓練を実施するなど、消防吏員・消防団員の技術力向上を図ります。
ウ 自衛隊や緊急消防援助隊、警察災害派遣隊などによる救助・救援活動を迅速かつ円滑に受け入れることができるよう、広域防災拠点の開設・運営訓練をはじめ、関係機関と連携した実践的な訓練を実施し、広域受援計画にその成果を反映します。
エ コスモパーク加太や旧南紀白浜空港跡地などの大規模用地については、防災対策用地としても有効に活用します。

2 必要な救援物資の確保

ア 県・市町村・民間事業者・社会福祉施設等が連携して食糧・飲料水・医薬品等を計画的に備蓄するとともに、各家庭における1週間分の備蓄を進めます。
イ 協定を締結した物流関係企業等と連携した救援物資の搬入・搬出訓練や、ヘリコプター等を活用した物資輸送訓練を実施することで、災害時にスムーズな救援物資供給ができる体制を構築します。

3 救助・救援に資するルートの確保

ア 紀伊半島一周高速道路の実現など、災害時の迅速な救助や物資供給に必要な広域的な道路網の整備促進を図ります。
イ ルートの代替性を確保する観点から、県内幹線道路やそれを補完する道路を引き続き整備し、県内各地に迅速かつ確実に人員や物資を送るための道路網の整備推進を図ります。
ウ 災害時においても緊急輸送道路の円滑な通行を確保するため、橋梁耐震化や道路斜面対策を進めます。
エ 南海トラフ地震などの津波浸水や内陸部の風水害に対して、国・市町村・関係機関と連携し、災害後の迅速な道路啓開を行うための計画の策定を進めます。
オ 迅速な道路啓開や応急復旧を実施するため、建設業協会や測量設計業協会等と連携し、資機材の保有情報を事前に共有するとともに、災害時の被害状況調査や応急対策業務等への協力体制をさらに充実します。
カ 災害時の重要な交通手段として、被災者の搬送や、物資・人員の受入・輸送の拠点となる空港や港湾の機能を確保します。

4 ライフラインの機能確保

ア ライフラインを迅速かつ効果的に復旧するため、被災状況や道路啓開状況等に関する関係機関との情報連絡体制を堅持します。
イ 水道施設の耐震化を一層進めるとともに、被災市町村への応急給水支援体制を構築します。
ウ 災害拠点病院や災害支援病院への自家発電装置の設置や避難所等への再生可能エネルギー導入など、非常用電源の確保をより一層進めます。
エ 重要施設や災害対応車両、救援車両で使用する燃料を確保します。
オ 下水道施設や集落排水施設の耐震・耐津波化、老朽化対策をより一層進めます。

5 避難者の安心確保

ア 避難所運営マニュアルの充実や避難所運営リーダーの養成を行うとともに、災害時に避難者のこころのケアを実施するなど、避難所運営の質の向上に取り組みます。
イ 特別な配慮を必要とする人が適切な支援を受けられる福祉避難所の設置をより一層進めます。
ウ 避難所における不足物資等の対応を迅速に行うため、県から災害時緊急機動支援隊を市町村に派遣し、タブレット端末等を用いて避難者のニーズを的確に把握します。

6 地域防災力の強化

ア 「出張!県政おはなし講座」や「出張!減災教室」を通じた啓発等により、住宅の耐震化、家具固定、ブロック塀の安全対策、火災予防対策など、家庭や地域での防災・減災対策をより一層進めます。
イ 地域における応急活動や救急活動の中心となる地域防災リーダーの育成をさらに進め、地域住民の助け合いによる災害対応力を向上させます。
ウ 義務教育の段階から、自らの安全を確保するための判断力や行動力を育成する防災教育を充実するとともに、避難所運営訓練等を行う高校生防災スクールを全ての県立高等学校で実施します。
エ 学校と地域が連携した、実践に即した避難(防災)訓練をより一層広めます。
オ 自力での避難が困難な住民一人一人の避難を支援するための計画を作成するなど、必要な支援体制の整備を進めます。
カ 都市公園や道の駅、高速道路のサービスエリア・パーキングエリアなどの防災機能の強化を図り、避難場所や災害時の活動拠点としての利用を進めます。
キ 「世界津波の日(11月5日)」制定の由来となった濱口梧陵の精神を全世界に発信し、次世代に過去の災害の教訓を伝えることで、津波防災意識をさらに向上させます。

7 行政の災害対応力強化

ア 災害対策本部の機能維持など行政機関の災害対応力を強化します。
イ 市町村の機能が著しく低下し、迅速かつ十分な災害対応ができなくなることを想定し、災害時緊急機動支援隊を被災市町村に派遣します。
ウ 廃棄物行政の経験が豊富な県職員をあらかじめ災害廃棄物処理支援要員に任命し、発災後速やかに、被災市町村に派遣します。
エ 住家被害認定業務を市町村と協力して円滑に進める「住家被害認定士リーダー」(県職員)を、被災市町村に派遣します。


<進捗管理目標>

指 標

基準値

(2015年度)

目標値

(2026年度)

高速道路の予定延長に対する供用率

77%

100%

避難所運営リーダーの養成人数

854人

4,500人

福祉避難所指定数

全市町村210か所

全市町村280か所

(2019年度)

地域防災リーダー育成講座「紀の国防災人づくり塾」修了者数

1,454人

2,500人

自主防災組織の組織率

85%

100%

(2019年度)

学校と地域が連携した避難(防災)訓練の実施率

小学校 80%

中学校 43%

高等学校 63%

100%


3.県民生活の早期再建と地域のより良い復興

<現状・課題>

・被災した地域の復旧・復興が遅れると、住民が生活を再建する気力を失うとともに、地域経済が停滞し、地域の活力も失われてしまいます。


<めざす方向>

大規模災害発生後は、地域の活力が失われないよう、迅速に復旧・復興を成し遂げる必要があります。住民の生活を迅速に再建させ、住み慣れたまちが「災害前よりもっと良いまち」になるよう、全ての市町村において、事前に、災害後の時間経過を意識した復旧・復興のまちづくり計画を策定しておくなど、「将来の礎となる復旧・復興」について、万全の準備を行います。


<実施する主な施策>
1 復旧・復興に向けた体制の整備及び人材の確保

ア 住家被害認定士や被災建築物応急危険度判定士など、復旧・復興を担う人材の確保をより一層進めます。
イ 住家被害認定業務を市町村と協力して円滑に進める「住家被害認定士リーダー」(県職員)を、被災市町村に派遣します。【再掲】
ウ 地域インフラの復旧・復興に不可欠な建設産業における担い手の育成・確保を、中長期的に進めます。
エ 災害発生現場における廃棄物の分別の徹底や、廃棄物処理の広域調整など、大量に発生する災害廃棄物を迅速かつ適正に処理するための体制を整備します。
オ 廃棄物行政の経験が豊富な県職員をあらかじめ災害廃棄物処理支援要員に任命し、発災後速やかに、被災市町村に派遣します。【再掲】
カ 長期避難者の避難環境を改善するため、公営住宅やホテル・旅館での受入体制を構築します。
キ 円滑な復興を進める上で重要となる土地境界や所有者の情報を明確に把握するため、地籍調査を一層促進します。

2 迅速な産業活動の再開

ア 地域経済の壊滅的な被害を防ぎ、迅速な復興を可能にするため、インフラの耐震・耐津波化を進めるとともに、危険物や有害物質の流出、コンビナート火災など重大な二次災害の防止に取り組みます。
イ 産業活動の基盤である道路や港湾など物流ネットワークや物流拠点の機能維持に取り組むとともに、民間企業等の事業継続計画の策定を支援することで、県内産業の持続性を強化します。

3 復旧・復興計画の事前策定

ア 迅速な復興により地域を持続していくため、どのように復興していくのかそれぞれの地域がまちの将来像をあらかじめよく議論し、復旧・復興計画を事前に策定しておく取組を全市町村で進めます。


<進捗管理目標>

指 標

基準値

(2015年度)

目標値

(2026年度)

復旧・復興計画の事前策定市町村数

全市町村


第2項 医療の充実と健康の維持

1.命を守る医療の充実

<現状・課題>

・県民が安心して暮らしていくためには、県内どこに住んでいても必要な医療を受けられる体制づくりが必要です。
・重篤な救急患者に24時間体制で対応する救命救急センターが受け入れている患者は軽症者が多いため、救命救急センターの医療体制に支障をきたすことがないように、広域的な医療連携体制を構築することが必要です。
・リスクの高い妊産婦や低出生体重児に対応するため、安心して産み育てられる環境づくりを進めることが必要です。
・がん、心疾患、脳血管疾患の生活習慣病が、本県における死亡原因の約半数を占めており、がんの人口10万人当たりの75歳未満年齢調整死亡率は全国平均を上回っています。


<めざす方向>

救急医療体制やへき地医療体制を堅持するとともに、子育て世代が安心して暮らせるよう周産期医療体制や小児医療体制を充実します。
また、「がんを知り、がんと向き合い、がんに負けることのない社会」を醸成し、がんによる死亡者を減らすとともに、患者ニーズの多様化に対応する高度で先進的な医療を促進します。


<実施する主な施策>
1 命を守る医療体制の堅持

ア 県立医科大学附属病院、日本赤十字社和歌山医療センター及び国立病院機構南和歌山医療センターの救命救急センター機能を強化するとともに、地域の病院、開業医との連携を進め、県内の救急医療体制を堅持します。
イ ドクターヘリの運用による重篤な救急患者の迅速な搬送に取り組むとともに、近隣府県と連携した広域救急医療体制を充実します。
ウ 救急専門医の養成を進めるとともに、遠隔救急支援システムの導入により、地域病院の勤務医が救急業務を迅速かつ適切に行うことができる体制整備を進めます。
エ 県立医科大学地域医療枠卒業医師や自治医科大学卒業医師を派遣するとともに、遠隔医療システムの導入による医師への支援を強化することで、県内全域での医療体制を堅持します。

2 安心して出産・子育てができる医療サービスの充実

ア 総合周産期母子医療センター・地域周産期母子医療センターと分娩医療機関の連携を強化し、安心して出産できる体制を整備します。【再掲】
イ 病院勤務医と開業医の連携や医療機関間の連携を進め、各地域の小児救急医療体制の整備充実を図るとともに、県立医科大学附属病院、日本赤十字社和歌山医療センター及び紀南病院において24時間体制の小児救急医療のセーフティネットを堅持します。【再掲】

3 総合的ながん対策の推進

ア がんの早期発見・早期治療のため、市町村やわかやま健康推進企業等と連携して、がん検診の受診率向上を促進するとともに、検診従事者への研修を実施し、検診の質の向上に取り組みます。
イ がんに関する正しい知識やがん患者に関する理解を深める教育を進めます。
ウ がん診療連携拠点病院を中心としたがん診療体制を強化し、県内どこに住んでいてもがん医療を受けられる環境を整備します。
エ がん患者の診断情報を把握する「がん登録制度」により得られたデータを活用し、質の高いがん医療や効果的ながん対策を推進します。
オ がん患者やその家族に対する相談支援体制の充実を図るとともに、がん患者の就労支援を進めます。

4 難病患者への支援、感染症の予防と拡大防止

ア 難病患者及び小児慢性特定疾病児童等への適切な医療の確保、医療費の助成や相談・支援体制の充実に取り組みます。
イ 感染症の予防やまん延防止のため、発生動向の収集・分析に基づき、県民や医療機関への速やかな情報提供を行うとともに、感染症医療体制を充実します。

5 先進的医療の促進

ア がんをはじめとする疾病の治療のため、先進的な医療の提供を促進します。
イ 病院とかかりつけ医等との連携を強化するため、ICTを活用した遠隔医療の導入促進や診療情報の共有化を推進します。


<進捗管理目標>

指 標

基準値

(2015年度)

目標値

(2026年度)

三次救急医療機関の軽症患者割合

※三次救急医療機関とは、重篤な救急患者に

24時間体制で対応する救急救急センターを指す。

71%

50%

がんの年齢調整死亡率

(75歳未満 人口10万人当たり)

80.3

(2015年:暦年)

国が定める目標値を達成

※国のがん対策推進基本計画

における目標値は73.9

(2015年:暦年)

胃・肺・大腸・子宮頸・乳がんの各がん検診受診率

男性

胃がん 43%

肺がん 45%

大腸がん 37%

女性

胃がん 31%

肺がん 36%

大腸がん 30%

子宮頸がん 36%

乳がん 39%

(2013年度)

全て70%


2.医療提供体制の再編・充実

<現状・課題>

・高齢化が進展している本県において、65歳以上の高齢者人口は2020(平成32)年頃にピークに達すると見込まれています。
・人口構造や疾病構造が変遷していく中、多くの急性期病床に必ずしも手厚い医療を必要としない患者が入院するなど、医療ニーズと医療提供体制にミスマッチが生じています。
・医療介護総合確保推進法に基づき、将来の医療需要に相応しいバランスのとれた病床機能の再編を図っていく必要があります。


<めざす方向>

本県の将来の医療需要を見定め、医療機関の機能分化と連携、病床機能の再編を図り、患者の病状に応じた「切れ目のない質の高い医療提供体制」を実現します。また、今後、増加が見込まれる在宅医療については、全県的なネットワークを構築します。
こうした取組により、「県民誰もが住み慣れた地域で安心して適切な医療を受けられる社会」を実現します。


<実施する主な施策>
1 医療機関の機能分化・連携の推進

ア 地域の医療提供体制の将来のあるべき姿を示した「地域医療構想」に基づき、2025(平成37)年までに急性期から回復期への病床機能転換など医療機関の機能分化と連携を図り、患者の病状にあった質の高い医療提供体制を構築します。

2 在宅医療の推進

ア 病院、診療所、訪問看護ステーション、薬局などの関係機関が協力し、24時間のサポート体制をめざして「わかやま在宅医療推進安心ネットワーク」を構築することで、地域の実情にあった「地域包括ケアシステム」における在宅医療の機能を担います。
イ 回復期機能病床等を保有する病院を「地域密着型協力病院」として指定し、かかりつけ医を中心とした在宅医療を後方支援する体制を構築します。

3 医療安全の確保と医療情報の提供

ア 医療事故の防止や院内感染対策の取組を促進するとともに、患者・家族と医療機関との信頼関係を構築するため、医療安全相談体制を充実します。
イ 診療科目や専門外来など、医療機関の機能に関する情報を分かりやすく県民に提供します。

4 医薬品の安定供給と安全確保

ア 医薬品や医療機器の製造から販売に至るまで一貫した監視指導を行うことにより、医薬品の安全確保と安定供給を図り、健康被害発生の未然防止を図ります。
イ 薬局における医薬品の安全管理体制を促すとともに、「健康サポート薬局」として地域医療や県民の健康保持増進を積極的に支援する薬局の充実に取り組みます。
ウ 輸血用血液を確保するため、献血協力者の確保に取り組みます。
エ 和歌山県薬物の濫用防止に関する条例に基づき、啓発、規制及び取締りを総合的かつ計画的に推進し、薬物乱用の根絶に取り組みます。


<進捗管理目標>

指 標

基準値

(2015年度)

目標値

(2026年度)

高度急性期病床数

急性期病床数

回復期病床数

慢性期病床数

高度急性期 1,684床

急性期 5,874床

回復期 1,171床

慢性期 3,577床

未分類 234床

計 12,540床

(2014年度)

高度急性期 885床

急性期 3,142床

回復期 3,315床

慢性期 2,164床

計 9,506床

(2025年度)

わかやま在宅医療推進安心ネットワーク構築保健医療圏数

全保健医療圏

地域密着型協力病院数

40施設

在宅療養支援診療所数

164施設

264施設

在宅医療支援薬局数

85施設

200施設

在宅療養支援歯科診療所数

41施設

180施設


3.医療人材の育成・確保

<現状・課題>

・本県の人口10万人当たりの医療施設に従事する医師数は全国平均を上回っていますが、和歌山市周辺に約半数の医師が集中するなどの地域偏在や、小児科・産科等の特定の診療科における医師不足が生じています。
・薬剤師や看護師をはじめ、リハビリテーション専門職等の多様な医療人材が求められています。


<めざす方向>

医師の地域偏在や特定診療科における医師不足を解消するとともに、若手医師が地域で働きながらキャリア形成できる環境づくりに取り組みます。
また、医療の高度化・専門化や県民の多様なニーズに対応できる薬剤師や看護師など医療従事者を育成・確保します。


<実施する主な施策>
1 医師の育成・確保

ア 県立医科大学県民医療枠・地域医療枠の定員を堅持するとともに、これらの若手医師が地域で勤務しながら、医師として高度な知識を習得し成長できるよう、地域医療支援センターが中心となり、県立医科大学、地域の拠点病院、へき地の医療機関など、県内各地の医療機関が連携した卒後の医師キャリア形成支援体制を充実します。
イ 医師が不足する特定の診療科での勤務を条件とする研修・研究資金の貸与制度を積極的に運用し、地域拠点病院で勤務する医師を確保します。
ウ 県内の基幹型臨床研修病院が連携した医師臨床研修プログラムシステム「和歌山研修ネットワーク」により、魅力のある臨床研修の場を提供します。
エ 院内保育所の設置などによる女性医師の就労支援や、医療勤務環境改善支援センターによる支援により、医師の働きやすい環境づくりに取り組みます。

2 医療従事者の育成・確保

ア 県立医科大学薬学部や東京医療保健大学和歌山看護学部(仮称)等、新たな高等教育機関の設置・誘致を行います。
イ 看護師を確保するため、潜在看護師の再就業支援や新人看護師の離職防止対策に取り組むとともに、専門分野に応じた研修を充実し資質向上を図ります。
ウ 今後増加が見込まれる回復期病床や在宅医療を担うリハビリテーション専門職について、人材の養成と必要な人員確保を推進します。
エ 院内保育所の設置など、看護師等医療従事者の働きやすい環境づくりに取り組みます。


<進捗管理目標>

指 標

基準値

(2015年度)

目標値

(2026年度)

医療施設従事医師数

2,694人

(2014年度)

3,200人

臨床研修医の県内採用定員充足率(マッチング率)

86%

100%

従事看護師・准看護師数

13,068人

(2014年度)

16,400人


4.健康づくりの推進

<現状・課題>

・県民の平均寿命は男女ともに年々延びていますが、全国順位は下位の状況です。
・健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間である健康寿命を伸ばすことが、人々の幸せのために大事ですが、全国順位は中位の状況であり、健康に問題があると推測される要介護認定率は全国でも高いレベルです。


<めざす方向>

生涯にわたり健康を維持して暮らすことができるよう、地域住民相互のつながり(ソーシャル・キャピタル)を深め、心身の健康づくりに関する県民運動を全県的に展開するとともに、県民が自らの健康状態を正確に把握できる機会を充実させることにより、「健康長寿日本一わかやま」を実現します。


<実施する主な施策>
1 県民一人一人の健康づくりの全県的展開

ア 生涯にわたり健康を維持するため、全県的に楽しく健康増進を図る仕組みを構築し、地域コミュニティに密着した健康づくりを推進します。【再掲】
イ 県民の主体的な健康づくりに取り組む機会を充実するため、健康推進員などによる地域住民相互のつながりを生かした普及活動を行います。
ウ わかやま健康推進企業の認証など健康づくりに取り組む企業活動を推進します。
エ ラジオ体操など手軽にできる運動を奨励し、県民一人一人の運動習慣の定着を図るとともに、年代に応じた食習慣の改善を推進します。
オ 市町村と連携し、住民が主体となって運営する多様な介護予防の通いの場を充実します。
カ 80歳になっても自分の歯を20本以上維持することを目的とする「8020運動」などを推進し、幼児期から高齢期まで歯科疾患の予防や口腔機能の増進を図ります。
キ 禁煙を推進するとともに、公共施設や職場における受動喫煙防止を進めることで、たばこによる健康被害を防ぎます。

2 健康状態の「見える化」

ア 県民がそれぞれの健康状態を正確に把握し改善できるよう、市町村が実施する特定健康診査や特定保健指導の受診率向上を促進します。
イ 健康に関するデータ分析に基づく効果的な健康づくり施策を展開します。

3 こころの健康づくり

ア 保健所や精神保健福祉センターにおける相談機能を充実させるとともに、こころの健康に関する正しい知識の普及啓発を行います。
イ 県立こころの医療センターの精神科救急を充実し、県内の休日・夜間における精神科救急医療体制を確保します。


<進捗管理目標>

指 標

基準値

(2015年度)

目標値

(2026年度)

平均寿命

男性 79.1歳

女性 85.7歳

(2010年:暦年)

男性 82歳

女性 89歳

(2025年:暦年)

健康寿命【再掲】

男性 71.4歳

女性 74.3歳

(2013年度)

男性 75歳

女性 78歳

(2025年度)

特定健康診査の受診率(市町村国保)

32%

60%

特定保健指導の実施率(市町村国保)

30%

60%


第3項 安全な社会の実現

1.治安・交通安全の向上

<現状・課題>

・県内の刑法犯認知件数は2002(平成14)年から減少し続けていますが、県民を脅かす犯罪は後を絶たず、さらには、サイバー空間での犯罪の増加など、新たな課題が顕在化しています。
・県内の交通事故件数は2002(平成14)年から減少し続けていますが、総件数に占める高齢者が関係する交通事故割合は増加傾向にあり、これに関連する重大な結果を招く事故も後を絶ちません。


<めざす方向>

犯罪抑止対策や、徹底検挙に向けた捜査力・機動力の強化、悪質・巧妙化する犯罪に対応した体制づくりを推進することで、「犯罪に強く安心を実感できる社会」を実現します。
また、高齢者及び歩行者の安全確保を中心とした取組を推進することで、「安全で快適な交通環境」を構築します。
さらに、県民の期待と信頼に応える「強さと優しさを兼ね備えた警察」づくりを推進し、安全で安心な和歌山を実現します。


<実施する主な施策>
1 犯罪に強く安心を実感できる社会の実現
(1) 総合的な犯罪抑止対策の推進

ア 街頭防犯カメラの設置拡充や防犯ボランティア等と連携したパトロール活動の強化に取り組むとともに、不審者情報や防犯情報を地域住民へ迅速に伝達する体制を構築します。
イ 特殊詐欺被害を予防するため、金融機関等と連携し、高齢者への声かけ運動や犯罪手口に関する情報発信を強化するとともに、電話録音装置など被害防止のための機器の普及を促進します。
ウ 少年の健全育成及び将来に向けた犯罪抑止の基盤づくりの観点から、街頭補導活動や立ち直り支援活動等の非行防止対策を推進します。

(2) 犯罪の徹底検挙に向けた警察力の強化

ア 迅速・的確な初動捜査の強化を図るとともに、科学技術の発展に伴い高性能化する機器や情報分析、捜査支援システム等の導入・活用を推進することで、県民生活を脅かす犯罪を徹底検挙します。

(3) 多様化するサイバー犯罪対策の推進

ア インターネット関連サービスのさらなる発展に伴うさまざまな犯罪への迅速な対応と事案解決のため、人材の育成、機器の整備を推進し、サイバー犯罪に対する捜査力の向上を図ります。
イ サイバー犯罪被害を未然に防止するため、サイバーセキュリティに関する広報・啓発活動を推進するとともに、サイバー犯罪に関する相談や被害への迅速な対応を図ります。

(4) 組織犯罪対策の推進

ア 暴力団の弱体・壊滅を図るため、その不法行為には厳正に臨むとともに、和歌山県暴力団排除条例に基づいた社会のあらゆる場面からの暴力団排除、県暴力追放県民センターと連携した地域住民等による暴力団排除活動の支援や関係者の保護対策を推進します。
イ 銃器犯罪や違法薬物事犯の根絶を図るため、末端乱用者や密売人・密売組織の徹底検挙、違法銃器に関する情報の収集や薬物乱用防止啓発活動を強化します。

(5) テロ対策の推進

ア 国際テロの脅威が現実のものとなっている中、テロを未然防止するため、関係機関や民間事業者と連携し、水際対策の強化や駅・大規模集客施設などの多くの人が集まる場所の警戒警備等、官民一体となったテロ対策を推進します。

2 安全で快適な交通環境の実現

ア 歩行者の安全な通行を確保するため、通学路など生活道路における歩道整備を加速させるとともに、信号機の新設や高度化、見やすく分かりやすい道路標識の設置等、交通安全施設の整備を推進します。
イ 自動運転や衝突回避システム、ドライバー異常時対応システムなどの技術の発展を見据え、事故を未然に防ぐ安全機能付き車両の普及を促進します。
ウ 高齢者の交通事故防止に重点を置いた啓発活動や体験型交通安全教育を推進します。
エ 運転免許の自主返納を促進するため、市町村や公共交通機関等が実施する返納者優遇制度などの取組を支援します。

3 強さと優しさを兼ね備えた警察づくり

ア 時代の要請に応えつつ、悪に対峙して、いささかもひるむことのない「強さ」と、県民に寄り添って誠実かつ親切に職務を行う「優しさ」を兼ね備えた警察を確立します。
イ 事件・事故発生後の被害者の日常生活や心理的外傷からの回復を支援するため、県や関係機関の相談・カウンセリング機能を強化します。
ウ 増加傾向にある訪日外国人に対する治安情報等の提供体制を強化するとともに、外国人対処能力を身につけた国際的な警察官を育成します。


<進捗管理目標>

指 標

基準値

(2015年度)

目標値

(2026年度)

刑法犯認知件数(年間)

6,360件

(2016年:暦年)

連続減少を更新

刑法犯検挙率

42%

(2016年:暦年)

昭和期の高い検挙水準

(概ね60%)

交通事故発生件数(年間)

2,914件

(2016年:暦年)

連続減少を更新


2.その他の危機事象への対応力向上

<現状・課題>

県民の社会経済活動や日常生活、県の行政運営に支障をもたらす重大事件や重大事故、新型インフルエンザなどの新たな感染症の発生、さらに近年、世界各地で発生しているテロをはじめとした緊急対処事態や武力攻撃事態など、危機事象は時代と共に多様化・複雑化しています。

<めざす方向>

国、市町村、関係機関との連携強化を進め、迅速かつ正確な情報提供を行うとともに、適切な措置を講じることで、さまざまな危機事象から県民を守ります。


<実施する主な施策>
1 日常生活等に重大な影響を及ぼす危機事象への対応

ア 個別危機対応マニュアルの整備充実や研修・訓練を実施するとともに、危機事象の発生時には、県民への迅速かつ的確な情報提供を行います。

2 武力攻撃事態等における県民の保護

ア 国、市町村、関係機関と連携した訓練の実施等により国民保護計画の実効性を向上させるとともに、武力攻撃事態等が発生した場合は、J-ALERT(全国瞬時警報システム)等により迅速かつ確実に警報の伝達を行います。

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