○和歌山県手話言語条例

平成29年12月26日

条例第60号

和歌山県手話言語条例をここに公布する。

和歌山県手話言語条例

ろう者は、物の名前、抽象的な概念等を手指の動きや表情を使って視覚的に表現する手話を音声の代わりに用いて、思考と意思疎通を行っている。

我が国の手話は、明治時代に始まり、ろう者の間で大切に受け継がれ、発展してきた。

しかし、明治13年にイタリアのミラノで開催された国際会議の決議を受け、我が国においても読唇と発声訓練を中心とする口話法がろう教育に導入され、昭和8年にはろう学校における手話の使用が事実上禁止されるに至り、ろう者の尊厳は著しく傷つけられ、和歌山県のろう学校においても、こうした歴史の影響を大きく受けてきた。

そのような手話が厳しく排除された時代にあっても、ろう児は手話を必要とし、喜怒哀楽の意思表現や意思疎通ができる喜びとともに、手話を代々大切に引き継いできたのである。

その後、平成18年に国際連合総会で採択された障害者の権利に関する条約において、言語には手話その他の非音声言語を含むことが明記され、憲法や法律に手話を規定する国も増えている。また、明治13年の決議も、平成22年にカナダのバンクーバーで開催された国際会議で撤廃され、手話はろう者が大切にしてきた独自の言語体系を有する文化的所産であるとの認識は広まっている。

我が国においても、平成23年に改正された障害者基本法(昭和45年法律第84号)において言語に手話が含まれることが規定されたが、手話に対する理解が十分深まっているとはいえない状況にある。

手話は「言語」であり、そして、ろう者の「いのち」である。

手話に関する理解を深めるとともに、ろう者とろう者以外の者が「言語」である手話を架け橋として心を通わせ合い、互いを理解し、尊重し合う共生社会を実現するため、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、手話が言語であるとの認識に基づき、手話の普及及び習得の機会の確保に関する必要な事項を定めることにより、ろう者(聴覚障害者のうち、手話を言語として日常生活又は社会生活を営む者をいう。以下同じ。)とろう者以外の者が共生することのできる地域社会を実現することを目的とする。

(基本理念)

第2条 手話の普及は、手話が、ろう者が知的で心豊かな日常生活又は社会生活を営むために大切に受け継いできた独自の言語体系を有する文化的所産であるという基本的認識の下に行われなければならない。

2 手話の普及は、ろう者の意思疎通を行う権利を尊重し、ろう者とろう者以外の者が、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生することを基本に行われなければならない。

(県の責務)

第3条 県は、前条の基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、市町村その他の関係機関と連携し、ろう者の社会的障壁の除去について必要かつ合理的な配慮を行い、手話の普及及び習得の機会の確保その他の手話を使用しやすい環境の整備(以下「手話の普及等」という。)を推進するものとする。

2 県は、ろう者及び手話通訳者等(手話を使用して通訳を行う者をいう。以下同じ。)の協力を得て、基本理念に対する県民の理解を深めるため、必要な措置を講ずるものとする。

(市町村等との連携)

第4条 県は、基本理念に対する県民の理解の促進及び手話の普及等を行うに当たっては、市町村その他の関係機関、ろう者及び手話通訳者等と連携し、及び協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第5条 事業者は、基本理念にのっとり、ろう者に対してサービスを提供するとき又はろう者を雇用するときは、手話の使用に関して配慮するよう努めるものとする。

(県民の役割)

第6条 県民は、基本理念にのっとり、手話に関する理解を深めるとともに、手話の普及等に関する県の施策に協力するよう努めるものとする。

2 ろう者は、前項に規定するもののほか、手話の普及等に関する県の施策に協力するよう努めるとともに、基本理念に対する県民の理解の促進及び手話の普及に努めるものとする。

3 手話通訳者等は、第1項に規定するもののほか、手話の普及等に関する県の施策に協力するよう努めるとともに、手話の技術の向上、基本理念に対する県民の理解の促進及び手話の普及に努めるものとする。

(計画の策定及び推進)

第7条 県は、障害者基本法第11条第2項の規定による和歌山県障害者計画において、手話の普及等に必要な施策を定め、これを総合的かつ計画的に推進するものとする。

(手話を習得する機会の確保)

第8条 県は、市町村その他の関係機関、ろう者及び手話通訳者等と連携し、ろう者が乳幼児期からその保護者又は家族とともに手話を習得する機会の確保に努めるものとする。

(手話を学習する機会の確保)

第9条 県は、市町村その他の関係機関、ろう者及び手話通訳者等と連携し、県民が手話を学習する機会の確保に努めるものとする。

(手話を用いた情報発信等)

第10条 県は、ろう者が県政に関する情報を円滑に取得することができるよう、情報通信技術の活用に配慮しつつ、手話を用いた情報発信の推進に努めるものとする。

2 県は、災害その他非常の事態が発生した場合に、ろう者が手話により安全を確保するために必要な情報を速やかに取得し、円滑に他人との意思疎通を図ることができるよう、市町村その他の関係機関及び手話通訳者等と連携して、必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(手話通訳者等の確保、養成等)

第11条 県は、手話通訳者等及びその指導者の確保、養成及び手話の技術の向上を図るものとする。

(学校における手話の普及)

第12条 聴覚障害のある幼児、児童又は生徒(以下「ろう児等」という。)が通園し、又は通学する学校の設置者は、ろう児等がその特性に応じて手話を学び、又は手話を用いて学ぶことができるよう、手話を指導する者を確保し、及び教職員の手話に関する技能を向上させるために必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

2 ろう児等が通園し、又は通学する学校の設置者は、ろう児等及びその保護者に対する手話に関する学習の機会の提供並びに教育に関する相談への対応及び支援に努めるものとする。

3 県は、学校において、基本理念及び手話に対する理解を深めるため、手話に関する啓発その他の必要な措置を講ずるよう努めるものとする。

(事業者への支援)

第13条 県は、事業者がろう者に対しサービスを提供し、又はろう者を雇用するために行う手話を使用しやすい環境の整備及びそのための取組に対して、必要な支援を行うよう努めるものとする。

(財政上の措置)

第14条 県は、手話の普及等に関する取組を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

附 則

この条例は、公布の日から施行する。

和歌山県手話言語条例

平成29年12月26日 条例第60号

(平成29年12月26日施行)