○和歌山県子どもを虐待から守る条例
平成20年7月4日
条例第43号
和歌山県子どもを虐待から守る条例をここに公布する。
和歌山県子どもを虐待から守る条例
目次
前文
第1章 総則(第1条―第11条)
第2章 予防(第12条)
第3章 早期発見及び早期対応(第13条―第16条)
第4章 指導及び援助(第17条・第18条)
第5章 人材等の育成(第19条・第20条)
第6章 和歌山県子どもを虐待から守る審議会(第21条―第26条)
附則
子どもは、私たちの大切な宝であり、かけがえのない存在である。子どもには、一人の人間として生きていくための当然の権利がある。子どもは、その権利が保障される中で健やかに成長していくことが大切である。
しかしながら、子どもを取り巻く環境は大きく変化し、子どもの権利が脅かされることが増えている。なかでも、虐待は、子どもに対する著しい人権の侵害であり、子どもの人権を守ることは私たちの責務である。
私たちは、和歌山県の未来を託す子どもを虐待から守るため、一人ひとりが協力し合い、地域の力で子どもと家庭を支えることを目指し、この条例を制定する。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、子どもを虐待から守ることについて、基本理念を定め、及び県、県民、保護者等の責務を明らかにするとともに、子どもを虐待から守ることに関する施策の基本となる事項を定めることにより、当該施策を総合的かつ計画的に推進し、もって子どもの人権が尊重され、かつ、子どもが健やかに成長することができる社会の実現に寄与することを目的とする。
(1) 子ども 児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号。以下「法」という。)第2条に規定する児童をいう。
(2) 保護者 法第2条に規定する保護者をいう。
(3) 虐待 法第2条に規定する児童虐待をいう。
(4) 通告 法第6条第1項の規定による通告をいう。
(5) 通告機関 通告を受けた市町村、福祉事務所(県が設置するものに限る。以下同じ。)又は児童相談所をいう。
(6) 関係機関等 学校、児童福祉施設、病院その他児童の福祉に業務上関係のある団体及び学校の教職員、児童福祉施設の職員、医師、保健師、弁護士その他児童の福祉に職務上関係のある者をいう。
(基本理念)
第3条 虐待は、子どもに対する著しい人権の侵害であり、何人も、虐待を決して許してはならない。
2 子どもを虐待から守るに当たっては、子どもの利益を最大限に配慮しなければならない。
3 県民全体として、子どもが健やかに成長することができる社会の実現に向けて取り組まなければならない。
(県の責務)
第4条 県は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、子どもを虐待から守ることに関する施策(以下「虐待防止策」という。)を策定し、及びこれを実施するとともに、必要な体制を整備しなければならない。
2 県は、虐待防止策を実施するに当たっては、市町村及び関係機関等と連携し、並びに県民及び虐待の防止に取り組む地域の団体の協力を得るものとする。
3 県は、市町村が実施する子どもを虐待から守ることに関する施策(以下「市町村の施策」という。)及び関係機関等が行う子どもを虐待から守ることに関する取組(以下「関係機関等の取組」という。)を支援するよう努めなければならない。
(県民の責務)
第5条 県民は、基本理念にのっとり、子どもを虐待から守ることに関する理解を深めるとともに、虐待防止策、市町村の施策及び関係機関等の取組に協力するよう努めなければならない。
(保護者の責務)
第6条 保護者は、基本理念にのっとり、自らが子育てについての第一義的責任を有することを認識し、子どもの心身の健全な発達に努めなければならない。
(市町村の責務)
第7条 市町村は、基本理念にのっとり、市町村の施策を実施するとともに、必要な体制を整備し、県及び関係機関等と連携するよう努めなければならない。
(関係機関等の責務)
第8条 関係機関等は、基本理念にのっとり、虐待防止策及び市町村の施策に協力するとともに、その専門的な知識及び経験を生かして関係機関等の取組を行うよう努めなければならない。
(基本計画)
第9条 知事は、虐待防止策を総合的かつ計画的に推進するための基本的な計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。
2 基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
(1) 子どもを虐待から守ることに関する目標及び虐待防止策についての基本的な方針
(2) 前号に掲げるもののほか、虐待防止策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 知事は、基本計画を定めようとするときは、あらかじめ、和歌山県子どもを虐待から守る審議会の意見を聴くほか、県民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない。
4 知事は、基本計画を定めたときは、これを公表しなければならない。
5 前2項の規定は、基本計画の変更について準用する。
(年次報告)
第10条 知事は、毎年、虐待防止策及び市町村の施策の実施状況について、報告書を作成し、公表しなければならない。
2 知事は、前項の報告書を作成するに当たっては、市町村及び関係機関等に対して必要な報告を求めるものとする。
(啓発活動)
第11条 県は、子どもを虐待から守ることに関する県民の理解を深めるために必要な広報その他の啓発活動を行うものとする。
第2章 予防
第12条 県は、虐待を未然に防止するため、市町村及び関係機関等と連携して子育てに関する支援を行うよう努めるものとする。
2 県は、虐待を未然に防止するため、市町村及び関係機関等が行う子育てに関する情報の提供又は相談に係る業務について、専門的な知識及び技術の提供その他必要な支援を行うものとする。
第3章 早期発見及び早期対応
(早期発見のための環境づくり)
第13条 県は、市町村及び関係機関等と連携し、虐待が早期に発見されることができるよう、相談しやすく、かつ、通告しやすい環境づくりに努めなければならない。
(調査及び安全の確認)
第14条 通告機関は、通告を受けたときは、子ども及びその家庭に関わる情報を把握するため、速やかに調査を行うものとする。
2 関係機関等は、前項の調査に協力するよう努めるものとする。
3 福祉事務所及び児童相談所が行う法第8条第1項の安全の確認(以下「安全確認」という。)は、通告を受けてから48時間以内に行うものとする。
4 県は、市町村に対し、通告を受けてから48時間以内に安全確認を行うよう求めるものとする。
(安全の確保のための協力)
第15条 知事は、法第9条第1項の規定による立入り及び調査若しくは質問、法第9条の3第1項の規定による臨検若しくは捜索及び同条第2項の規定による調査若しくは質問又は児童福祉法(昭和22年法律第164号)第33条第1項若しくは第2項の規定による一時保護を行うに当たっては、市町村に対し、子どもの安全の確保のための協力を求めるものとする。
(情報の共有)
第16条 県は、市町村及び関係機関等と通告に係る子ども及びその家庭に関わる情報を共有するとともに、子どもの安全の確保を行うに当たっては、これを十分活用するものとする。
第4章 指導及び援助
(虐待を受けた子ども及びその保護者への指導及び援助)
第17条 県は、市町村及び関係機関等と連携し、虐待を受けた子ども(虐待を受けたおそれのある子どもを含む。以下この条において同じ。)が、虐待から守られ、かつ、良好な家庭的環境で生活できるよう、虐待を受けた子ども及びその保護者に対し、身体的、心理的又は社会的な特性を十分考慮して指導及び援助を行うものとする。
(家庭復帰及び自立への指導及び援助)
第18条 県は、里親及び児童養護施設等と連携し、児童福祉法第27条第1項第3号及び第28条第1項の措置を採った子どもに対し、当該子どもの家庭復帰及び自立に向けた指導及び援助を行うものとする。
2 県は、前項の子どもの家庭復帰及び自立に当たっては、市町村及び関係機関等が実施する教育、居住その他の子どもの生活に関わる環境の整備が円滑になされるよう協力するものとする。
第5章 人材等の育成
(人材等の育成)
第19条 県は、市町村及び関係機関等における人材の育成を図るため、専門的な知識及び技術の修得に関する研修等を実施するものとする。
2 県は、地域における子どもと家庭を支える活動を促進するため、市町村及び関係機関等と連携し、子育てに関する支援及び虐待の防止に取り組む地域の団体等の育成に努めるものとする。
(要保護児童対策地域協議会への支援)
第20条 県は、市町村が設置する要保護児童対策地域協議会(児童福祉法第25条の2第1項に規定する要保護児童対策地域協議会をいう。)の運営の充実を図るため、必要な技術的支援を行うものとする。
第6章 和歌山県子どもを虐待から守る審議会
(設置等)
第21条 虐待防止策の推進に関する重要事項について調査審議するため、和歌山県子どもを虐待から守る審議会(以下「審議会」という。)を置く。
2 審議会は、この条例に定めるもののほか、虐待防止策の推進に関する重要事項について、知事の諮問に応じて調査審議するものとする。
3 審議会は、虐待防止策の推進に関する重要事項について、知事に意見を述べることができる。
(組織)
第22条 審議会は、委員15人以内で組織する。
2 委員は、優れた識見を有する者のうちから、知事が任命する。
3 委員の任期は、2年とする。ただし、委員が欠けた場合における補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
4 委員は、再任されることができる。
(会長及び副会長)
第23条 審議会に、会長及び副会長を置く。
2 会長及び副会長は、委員の互選によってこれを定める。
3 会長は、会務を総理し、審議会を代表する。
4 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるとき、又は会長が欠けたときは、その職務を代理する。
(会議)
第24条 審議会の会議(以下「会議」という。)は、会長が招集する。ただし、委員の全員が新たに任命された後最初に開催される会議は、知事が招集する。
2 会長は、会議の議長となる。
3 会議は、委員の半数以上の出席がなければ開くことができない。
4 審議会の議事は、出席委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
(庶務)
第25条 審議会の庶務は、福祉保健部において処理する。
(補則)
第26条 この章に定めるもののほか、審議会の運営に関し必要な事項は、会長が審議会に諮って定める。
附則
この条例は、平成20年8月1日から施行する。