○和歌山県防災対策推進条例

平成20年3月24日

条例第32号

和歌山県防災対策推進条例をここに公布する。

和歌山県防災対策推進条例

目次

前文

第1章 総則(第1条―第8条)

第2章 災害予防対策

第1節 県民の役割(第9条―第14条)

第2節 自主防災組織の役割(第15条―第19条)

第3節 事業者の役割(第20条―第23条)

第4節 県の役割(第24条―第36条)

第3章 災害応急対策

第1節 県民の役割(第37条・第38条)

第2節 自主防災組織の役割(第39条)

第3節 事業者の役割(第40条)

第4節 県の役割(第41条―第44条)

附則

和歌山県は、その地理的条件により過去幾度となく台風などによる風水害に見舞われ、また、周期的に起こる大規模な地震災害により甚大な被害を被ってきた。「稲むらの火」で語り継がれる濱口梧陵に代表される私たちの先達は、これらの自然災害に対し、自らの命を守るだけでなく、他の命を助けるという尊い偉業を残してきたところである。近い将来、東南海・南海地震の発生の可能性が極めて高いとされる今こそ、私たちは、この精神を受け継ぎ、いかなる災害にも対処できる準備が必要である。

これまで、防災対策は、県及び市町村など公的な機関を中心に実施されてきた。しかし、阪神・淡路大震災やそれ以降に起こった災害で教訓となったのが、まさしく和歌山県民が誇りとしてきた、自らの命は自らで守る自助、自らの地域は互いに助け合って守る共助の精神であった。被害を軽減させるためには、県民、自主防災組織、事業者自らが自助、共助を実践し、県及び市町村などがこれらを補完しつつ公助を実施し、地域社会における防災力を向上させることが重要である。

ここに、私たちは、災害から県民の生命、身体及び財産を守るため、共に力を合わせて防災対策に取り組み、災害に強い地域社会を実現するため、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、防災対策に関し、基本理念を定め、並びに県民、自主防災組織、事業者及び県の責務を明らかにするとともに、災害予防対策及び災害応急対策の基本となる役割を定めることにより、防災対策を総合的かつ計画的に推進し、もって災害に強い地域社会づくりに寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は当該各号に定めるところによる。

(1) 災害 暴風、豪雨、洪水、高潮、地震、津波その他の異常な自然現象により生ずる被害をいう。

(2) 防災 災害を未然に防止し、及び災害が発生した場合における被害の拡大を防ぐことをいう。

(3) 防災関係機関 災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第2条第5号に規定する指定公共機関、同条第6号に規定する指定地方公共機関、公共的団体及び防災上重要な施設の管理者をいう。

(4) 事業者 県、市町村及び防災関係機関以外の事業を行う法人並びに個人事業者をいう。

(5) 自主防災組織 住民の隣保協同の精神に基づく自発的な防災組織をいう。

(6) 災害時要援護者 高齢者、障害者、乳幼児、妊婦、外国人、傷病者、難病患者等で、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合の避難等に援護を要する者をいう。

(7) ハザードマップ 災害を予測し、被害の範囲及び程度、避難場所及び避難所等の情報を地図に表したものをいう。

(基本理念)

第3条 防災対策は、県民が自らの命は自らで守る自助を原則とし、地域において互いに助け合う共助に努めるとともに、県及び市町村がこれらを補完しつつ公助を行うことを基本として実施されなければならない。

2 防災対策は、県民、自主防災組織、事業者、県及び市町村がそれぞれの責務と役割を果たし、相互に連携を図りながら協力して着実に実施されなければならない。

(県民の責務)

第4条 県民は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、自ら防災対策を行うよう努めるものとする。

2 県民は、地域における防災活動に積極的に参加するよう努めるとともに、県及び市町村が実施する防災対策に協力するよう努めるものとする。

(自主防災組織の責務)

第5条 自主防災組織は、基本理念にのっとり、地域住民と協力して、地域における防災活動を実施するよう努めるものとする。

2 自主防災組織は、地域住民の自ら行う防災対策に協力し、地域住民の安全を確保するよう努めるとともに、県及び市町村が実施する防災対策に協力するよう努めるものとする。

(事業者の責務)

第6条 事業者は、基本理念にのっとり、自ら防災対策を実施するよう努めるとともに、地域における防災活動を実施するよう努めるものとする。

2 事業者は、地域における自主防災組織等の防災活動に協力するよう努めるとともに、県及び市町村が実施する防災対策に協力するよう努めるものとする。

(県の責務)

第7条 県は、基本理念にのっとり、災害から県民の生命、身体及び財産を守るため、国、他の都道府県、市町村、防災関係機関等と連携し、防災に関する総合的な施策の推進に努めるとともに、市町村、県民、事業者及び自主防災組織等が行う防災対策等への支援に努めるものとする。

(市町村の役割)

第8条 市町村は、基本理念にのっとり、基礎的な地方公共団体として、災害から当該市町村の住民の生命、身体及び財産を守るため、国、県、防災関係機関、自主防災組織、事業者等と連携し、防災対策の推進に努めるものとする。

第2章 災害予防対策

第1節 県民の役割

(防災知識の習得等)

第9条 県民は、自主防災組織、市町村及び県が行う防災訓練及び研修に積極的に参加し、防災に関する知識及び技能を習得するよう努めるものとする。

2 県民は、自らが生活する地域における災害危険箇所及び災害の発生の危険性等を確認し、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合における避難経路、避難場所、避難方法その他の安全の確保に必要な事項について、あらかじめ、ハザードマップ等により確認するよう努めるとともに、家族との連絡方法等を家族で確認しておくよう努めるものとする。

(建築物等の防災対策)

第10条 建築物の所有者は、必要な耐震診断を行うよう努めるとともに、その診断結果を踏まえ、耐震改修その他の適切な措置を行うよう努めるものとする。

2 県民は、家具、窓ガラス等について、転倒、飛散等による被害の発生を防ぐための対策を行うよう努めるものとする。

3 ブロック塀、広告板その他の工作物又は自動販売機(以下「工作物等」という。)を設置する者は、当該工作物等の強度を定期的に点検し、必要に応じて補強、撤去等を行うよう努めるものとする。

(生活物資の備蓄等)

第11条 県民は、災害に備え、食料、飲料水、医薬品、簡易トイレその他の必要となる生活物資を備蓄し、及びラジオ等の情報収集の手段を確保するよう努めるとともに、避難の際に必要な物資を持ち出すことができるように準備しておくよう努めるものとする。

(用具の備え)

第12条 県民は、災害を未然に防止し、及び災害による被害の拡大を防ぐため、消火器その他の必要な用具を備えるよう努めるものとする。

(自主防災組織への参加等)

第13条 県民は、地域における防災活動を円滑に行うため、自主防災組織を結成し、積極的にその活動に参加するよう努めるものとする。

(災害時要援護者の協力)

第14条 災害時要援護者は、市町村、自主防災組織等に対し、あらかじめ避難の際に必要となる自らの情報を提供するなど援護体制の整備に協力するよう努めるものとする。

第2節 自主防災組織の役割

(災害危険箇所の確認等)

第15条 自主防災組織は、国、県及び市町村等が提供する災害及び防災に関する情報を活用し、地域における災害危険箇所及び災害の発生の危険性等を確認するよう努めるとともに、避難経路、避難場所及び避難方法をあらかじめ把握するよう努めるものとする。

2 自主防災組織は、災害が発生した場合において応急的に生活用水として利用する水の確保ができるよう、井戸等の所在についてあらかじめ把握するよう努めるものとする。

3 自主防災組織は、前2項の規定により確認し、及び把握した情報その他の防災に関する情報について、ハザードマップ等により地域住民に周知するよう努めるものとする。

(防災意識の啓発等)

第16条 自主防災組織は、地域住民に対し、防災意識の啓発及び防災に関する知識の普及を図るための研修を実施するよう努めるものとする。

(防災訓練の実施等)

第17条 自主防災組織は、地域住民が主体となった防災訓練を実施するよう努めるとともに、市町村及び県が行う防災訓練及び研修に積極的に参加するよう努めるものとする。

(資機材等の備蓄)

第18条 自主防災組織は、初期消火、負傷者の救出及び救護その他の応急的な措置に必要な資機材及び物資を備蓄するよう努めるものとする。

(災害時要援護者の情報把握及び援護体制の整備)

第19条 自主防災組織は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合における災害時要援護者の避難誘導、介助その他の対策を円滑に行うため、市町村、防災関係機関等と連携し、あらかじめ、地域における災害時要援護者に関する情報を把握するよう努めるとともに、援護体制の整備に努めるものとする。

第3節 事業者の役割

(安全を確保するための対策及び事業を継続するための計画)

第20条 事業者は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合に備え、事業所に来所する者、従業員及び地域住民の安全を確保するための対策を実施するよう努めるとともに、事業者の規模及び業態に応じ、中核となる事業を継続し、又は早期に復旧するための計画を作成するよう努めるものとする。

(建築物等の耐震性の確保及び資機材等の備蓄)

第21条 事業者は、その所有し、又は管理する建築物、工作物等の耐震性の確保並びに設備、備品等の転倒及び落下の防止に努めるとともに、応急的な措置に必要な資機材及び食料、飲料水等を備蓄するよう努めるものとする。

(防災訓練の実施等)

第22条 事業者は、防災訓練及び研修を積極的に行うよう努めるとともに、自主防災組織、市町村及び県が行う防災訓練及び研修に積極的に参加するよう努めるものとする。

(地域への協力)

第23条 事業者は、その所有し、又は管理する施設を避難場所として提供することその他の地域における防災活動について、地域住民、自主防災組織及び市町村に積極的に協力するよう努めるものとする。

第4節 県の役割

(防災意識の啓発等)

第24条 県は、県民、自主防災組織及び事業者が災害に備え、適切な防災対策等を実施できるよう、市町村、防災関係機関等と連携し、防災意識の啓発及び防災に関する知識の普及を図るものとする。

(自主防災組織への支援)

第25条 県は、地域における防災活動の効果的な実施に資するため、市町村と連携し、自主防災組織の結成及び活動が推進されるよう必要な支援に努めるものとする。

(ボランティア活動の環境整備等)

第26条 県は、災害が発生した場合において、ボランティアによる防災活動(以下「ボランティア活動」という。)が円滑に実施されるよう、あらかじめ、市町村、防災関係機関等と連携し、ボランティアの受入体制の整備等ボランティア活動の環境の整備に努めるものとする。

2 県は、市町村、防災関係機関等と連携し、ボランティア活動を目的としている団体と、平常時から連携を図るよう努めるものとする。

3 県は、市町村、防災関係機関等と連携し、ボランティア活動への参加について啓発を行うとともに、ボランティア活動への参加方法、ボランティア活動時の注意事項等ボランティア活動を行うために必要な知識の普及を図るよう努めるものとする。

(防災リーダー等の育成)

第27条 県は、自主防災組織が行う防災活動及びボランティア活動が効果的に行われるよう、市町村、防災関係機関等と連携し、防災リーダー(自主防災組織による防災活動において適切な指示を与える等当該自主防災組織の中で中心的役割を担う者をいう。)、ボランティアコーディネーター(ボランティア活動が円滑に行われるようボランティア相互間の調整等を行う者をいう。)の育成に努めるものとする。

(情報収集伝達体制の整備等)

第28条 県は、国、市町村、防災関係機関等と連携し、あらかじめ、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合における気象、被害その他の災害に関する情報の収集及び伝達ができる体制を整備し、県民等への的確な情報の提供ができるよう努めるものとする。

2 県は、国、市町村、防災関係機関等と連携し、災害の発生により、帰宅することが困難となり、又は移動の途中で目的地に到達することが困難となった者が帰宅し、到達し、又は避難するために必要な情報を提供できるよう努めるものとする。

(災害時要援護者に対する避難誘導等)

第29条 県は、あらかじめ、市町村、自主防災組織等が実施する災害時要援護者に対する避難誘導、介助その他の対策を推進するために必要な支援を行うよう努めるものとする。

(物資等の備蓄)

第30条 県は、市町村と連携し、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合における応急対策に必要な物資等の備蓄に努めるものとする。

(事業者等との協定)

第31条 県は、物資等の供給、緊急輸送の確保、応急の復旧に係る工事の施工その他の応急対策が的確かつ迅速に行われるよう、あらかじめ他の地方公共団体及び事業者等との協定の締結に努めるものとする。

(医療救護体制の整備)

第32条 県は、あらかじめ災害による傷病者への治療の拠点となる病院を指定するなど、災害が発生した場合における広域的な医療救護体制の整備に努めるものとする。

(公共施設の整備)

第33条 県は、その所有し、又は管理する避難所その他の応急対策を実施する拠点となる施設について、耐震性の確保並びに設備、備品等の転倒及び落下の防止に努めるとともに、非常用電源設備の整備に努めるものとする。

2 県は、その管理する道路、河川、砂防、港湾、公園等の施設について、防災上の観点から、定期的に点検を行うとともに、計画的な整備に努めるものとする。

(防災訓練の実施)

第34条 県は、国、市町村、防災関係機関、自主防災組織等と連携し、積極的に防災訓練を実施するよう努めるものとする。

(職員への研修等)

第35条 県は、職員に対し研修を実施し、職員の災害及び防災に関する知識及び技能の習得を図るものとする。

2 県は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、職員が的確かつ迅速に対応することができるよう、あらかじめ、緊急活動体制を整備するとともに、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合にとるべき行動を職員に周知徹底するものとする。

(防災に関する教育の充実)

第36条 県は、学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条に規定する学校及び児童福祉法(昭和22年法律第164号)第7条に規定する保育所において、幼児、児童、生徒及び学生が防災に関する理解を深めるとともに、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において自らの安全を確保できるよう、防災に関する教育の充実に努めるものとする。

第3章 災害応急対策

第1節 県民の役割

(避難及び避難所)

第37条 県民は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、当該災害に関する情報に留意し、必要と判断したときは自主的に避難するとともに、市町村から避難準備情報の提供又は避難勧告若しくは避難指示の発令があったときは、速やかにこれに応じて行動するよう努めるものとする。

2 津波による被害の発生が予想される地域に居住する住民、滞在者その他の者は、地震が発生した場合において、津波に関する予報が発表されたとき又は津波による被害の発生が予想されるときは、高台その他の安全な場所へ直ちに避難するものとする。

3 県民は、災害が発生した場合において、自主防災組織に協力し、初期消火、負傷者の救出及び救護を行うよう努めるものとする。

4 避難所に滞在する者は、その避難所の運営基準に従い、互いに協力して自主的な共同生活を営むとともに、避難勧告又は避難指示が解除されるまでの間、避難を継続するよう努めるものとする。

(車両使用の自粛等)

第38条 県民は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、災害対策基本法、道路交通法(昭和35年法律第105号)その他の法令の規定に基づき、公安委員会又は警察官が行う車両の通行の規制その他の交通の規制を遵守するとともに、当該交通の規制が行われていない道路においても、緊急通行車両の通行の妨げとならないように車両の使用を自粛するよう努めるものとする。

第2節 自主防災組織の役割

第39条 自主防災組織は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、市町村、防災関係機関等と連携し、情報の収集及び伝達、地域住民等の避難誘導その他の地域における防災活動を実施するよう努めるとともに、特に、災害が発生した場合においては、初期消火並びに負傷者の救出及び救護を積極的に実施するよう努めるものとする。

第3節 事業者の役割

第40条 事業者は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、事業所に来所する者、従業員及び地域住民の安全を確保するよう努めるとともに、地域住民及び自主防災組織等と連携し、情報の収集及び提供、地域住民等の避難誘導その他の地域における防災活動を積極的に実施するよう努めるものとする。

第4節 県の役割

(情報連絡体制の確立)

第41条 県は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、国、市町村、防災関係機関等と連携し、速やかに情報連絡体制を確立することにより、災害に関する情報を収集するとともに、県民等に対し、的確かつ迅速な情報の提供に努めるものとする。

(応急体制の確立)

第42条 県は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、的確かつ迅速な避難、救助、医療等の応急対策が講じられるよう、国、市町村、防災関係機関等と連携し、必要な応急体制を速やかに確立するよう努めるものとする。

(緊急輸送の確保)

第43条 県は、災害が発生した場合において、応急対策を迅速に実施するため、国、市町村、防災関係機関等と連携し、必要な緊急輸送を確保するよう努めるものとする。

(県から市町村への応援)

第44条 県は、災害が発生し、又は発生するおそれがある場合において、市町村から応援を求められ、又は応急対策の実施を要請されたときは、あらゆる手段を検討し、速やかな対応に努めるものとする。

この条例は、平成20年4月1日から施行する。

和歌山県防災対策推進条例

平成20年3月24日 条例第32号

(平成20年4月1日施行)

体系情報
第13編 警察・消防/第2章 防/第3節
沿革情報
平成20年3月24日 条例第32号