中野BC株式会社社長中野幸生さん

名人対談

和歌山県には、様々な分野でそれぞれの道を究めた「名人」とも呼べる方々がおられます。このような方々は和歌山県の誇りであるとともに、その活動は県民の皆さんにとっても励みとなります。そんな「名人」から高い志や歩んでこられた人生についてお聞きし、県民の皆さんにご紹介したいと思います。

酒造分野だけでなくバイオケミカルの分野で世界に通ずる「ニッチトップのものづくり」を目指す中野BC株式会社社長中野幸生さんと仁坂知事との対談です。(中野BC長久邸)

仁坂知事:今回は100年企業表彰をご提案いただいた中野さんにお話を聞かせていただきたいと思ってやって参りました。よろしくお願いします。

中野社長:よろしくお願いします。100年企業について申し上げると、私は世の中見えないものに価値があると思っているんです。その意味で、100年続いている企業を表彰していただきたいとかねがね思っていたんですが、知事さんに取り上げていただいて大変喜んでいます。

仁坂知事:いや、当たり前のことですよ。

中野社長:37社表彰されましたが、その方々から、これからも頑張ってやりますとお礼のお手紙をいただいたり、知事さんにお褒めいただいたということが、バランスシートに載っていない価値だと皆さん大変喜んでいますよ。

仁坂知事:その言葉をむしろ中野さんにそっくりお返しいたしたいと思います。コロンブスの卵ですよ。一番始めにやろうと言い出した人が偉いんです。中野さんはどうして100年企業表彰を考えられたんですか?

中野社長:私はニュービジネス協議会というところで関西の副会長をやらせていただいているんですが、5年くらい前でしたか、そこの会合で大阪に1400年以上続いている企業があると教えられました。私は以前から長寿企業に非常に興味がありまして、これは勉強せなあかんと。何か秘訣があるんじゃないかと思いました。また、京都で100年企業表彰をやっていることも教えられました。そこで和歌山でも何とかできないものかと。長寿企業の秘訣をなんとか分析して集めたい、ノウハウを何とか皆さんに伝授いただけたらと考えていました。

仁坂知事:表彰するだけじゃなくて、今後分析をしていかないといけないわけですね。

中野社長
中野社長

中野社長:ビジネスモデルは大体30年サイクルで変わります。うちも最初は醤油、戦後は焼酎、清酒、今は梅酒・健康食品と、オールドビジネスからヘルスケアー産業のニュービジネスに転換しようとハンドルを切っています。そういう経営革新と技術革新が両方伴わないとなかなかできません。元気なときに種を蒔いておかないと次の種が育ってきません。調子が悪くなってから新しい事業に手を出しても資金がうまく回りません。
 アメリカでは短期で利益をあげるという考え方を持っているようですが、よく調べると非常に元気のある企業は内部留保を充実して、長期に利益を上げようとやっているところが長寿企業なんです。長期で利益を上げ、税金で社会に貢献していくというものの考え方が正しいんじゃないかと思います。

仁坂知事:そうですね。今おっしゃったことについて要素は2つあると思うんですね。一つは企業は30年サイクル位で変わっていきますから、技術的な連関性を追求していくこと。2つ目に社内にあるいろんな経営資源を活かしてやっていくこと。つまり、自分の自力を涵養しながらどんどん広がっていくことが非常に大事だと思うんです。
 中野BCさんは社長で2代目ですよね。充分古いんだけれど100年には満たない会社のトップでいらっしゃる中野社長さんが、経営協会会長として100年企業を提案していただいたのは非常にフェアだと思うんです。

中野社長:いやぁ。ありがとうございます。採択いただいて私ももの凄く喜んでいます。

仁坂知事:当然ですよ。話をお伺いしたとき、これは非常にいい話だと思いました。ただ、県の基準は少し厳しすぎたかも知れません。長寿企業でも従業員20人要件を満たせないところがあるんですね。

中野社長:調べてみますと、世界で200年以上続く企業の4割が日本の企業です。ヨーロッパかと思っていましたが、日本が多いんです。

仁坂知事:ヨーロッパの企業はよく“since 何年”とか書いていますよね。200年以上続く企業は多いのかと思っていましたが、淘汰されて少ないからかえって自慢しているんでしょうかね。

中野社長:フランスにはエノキアン協会という組織があります。ここは、200年以上の歴史を持つ、代々血が繋がっていて業績の良い企業しか加入できないんです。

仁坂知事:代々繋がっていて長いのがいいんですね。

中野社長:先程知事さんがおっしゃったように、従業員の人数をもうちょっと少なくすれば対象は増えると思いますね。

仁坂知事:そうですね。今回、情報が届かなかった企業もありますしね。自分ところもそうなのにという企業もあるかと思います。またやりたいと考えています。

中野社長:家内の実家は植林業で19代目、家系図もあります。従業員は20人もいませんけどね。

仁坂知事:20人いなくてもいいと思いますね。

中野社長:経営者協会でも昨年60周年やりましたが、60年経つと7~8割の会社がなくなります。経営者協会でもそういう具合です。

仁坂知事
仁坂知事

仁坂知事:会社がなくなっているんですか?

中野社長:はい。名前が変わったところも入れてそれですから。いかに100年に値打ちがあるかということです。

仁坂知事:確かにそうですね。

中野社長:なかなか続かないものです。だから最近のIT関係など、新しいことをやっても10年20年と本当に続くのかなと思います。新しいビジネスモデルをどんどん開発しないと続かないですね。化学系でもなかなか難しいらしいですね。

仁坂知事:化学系の企業はほとんど古くから成長した企業で、この30年間ではほとんど生き残っています。だけど中身は全く違いますね。昔はみんな捺染の原料を作っていたんですね。今はほとんどみんな違うことをやってそれぞれ伸ばしておられる。立派ですね。

中野社長:企業は続くようで続かない。私はいつも会社で、経営には3つの坂があると言ってるんです。上り坂あり、下り坂あり、そして、まさかのさか。「まさかのさか」とは、例えば不渡り手形をもらったりするんだよと。
 新しいベンチャー企業、一円起業もできるようになりましたから、開業率がちょっと上向いていますが、「死の谷を渡る」、「ダーウィンの海を渡る」と言って続かないんです。「死の谷を渡る」というのは、技術革新するまでの間に全部谷でつぶれてしまうんだよと。大学発のベンチャー企業もたくさん出てきましたが、実っているのはほんのわずかです。谷を渡る間にアルバイトをしないとつぶれてしまうんですね。成功しているのを見ると、技術開発するためにはお金がいりますから、それまでの間アルバイトをしています。そういうところが生きて技術革新をして次の谷を渡ると。

仁坂知事:「ダーウィンの海」とは何ですか?

中野社長:これは、ハーバード大学のブランスコム名誉教授たちのいうイノベーションのプロセスのイメージで、ダーウィンの進化論からきています。海は時代と共に変化するんだよと。すなわち、研究成果は生存競争をしている多くの生命体が満ちあふれる「ダーウィンの海」に入り、サメやシャチなどの怖い外敵や荒れ狂う嵐に耐えて生き抜いたものが進化して、イノベーションやニュービジネスの岸にたどり着くということで、商品の変遷のことを言っています。それを渡るのは非常に難しいと。要するに時代に適応した者だけが生き残る。

仁坂知事:時代は変わっていくということですね。

中野社長:恐竜でもなくなっていますしね。大きい企業、例えばアメリカではエネルギー会社のエンロンがつぶれましたね。小さいからがつぶれるかというと、そうではないですね。大きいからつぶれる場合もありうるわけです。大小なく、時代にいかに適応していくかが難しい。これが鍵だと思うんです。

仁坂知事:それは例えば経営者からすると、そういう動きは、結果として、成功した人はうまく乗り切った人だと思うんですが、これから時代を乗り切ろうとしたときに、どういうことを考え、何に注意を払えばいいんでしょうか?

中野社長:いろいろと調べてみますと、これには4つのキーワードがあるように思います。一つは、古いといわれる企業でもアンテナをあげて新しい情報をいっぱい収集しているということ。次に、従業員の方に喜んでもらっている。これは非常に難しいんです。

仁坂知事:従業員の方にですか?お客さんじゃなくて?

中野社長:そうです。それから得意先とビジネスの周辺の人を非常に大事にしています。これが共通していますね。それから3番目には得意分野の技術、生きていくために持っている技術をどんどん深掘りしている。川上に上って技術を集積しているんですね。これが大事ですね。技術革新もしていかないといけませんしね。

仁坂知事:深掘りしないとすぐに真似されてしましますからね。

中野社長:そういうことになりますからね。それともう一つ、資金については非常に保守的な考え方です。これは共通なんです。借金をして一時ぐっと伸びる時があっても、ほとんどの長寿企業は資金的には無借金経営でやっています。

仁坂知事:そうすると成長スピードが時代とあわないのでは?

中野社長:そこなんです。長寿企業を調べていますと、商いは屏風と同じように、広げれば広げるほど倒れるやすいと。上り調子の時は広げてもいいんだけれど、なかなか縮まらない。だからうまくいかないんですね。あまり広げすぎるといけませんね。

仁坂知事:しかし、例えば業種とか技術の種類によっては、大きくならないと時代に合わないもの、小さくてもニッチトップ的なものといろいろあると思うんですね。従って、前者の場合はあまり保守的に経営していると隣が“だーっ”と広げてくるとダーウィンの海へ行ってしまうと。

中野社長:そこは技術開発でいろいろ変えていくということですね。

仁坂知事:なかなか、言うは易く行うは難し、ですね。

左 仁坂知事 右 中野社長
左:仁坂知事 右:中野社長

中野社長:そうですね。だから会社がある程度元気な時に次の種を蒔くというより育ってきているというふうにしないと乗り切れないですね。だから私は大黒柱1本で家はたたないと言っています。亡くなった会長は清酒ばかり意地になってやっていましたけどね。それだけでは絶対家は建たない。何本か柱があって合掌の棟が上がって家が建つんです。だから4本も5本も6本も立てないと家の格好にはならない。それぞれ太さは違ってもね。そういう考え方で何か新しいことをやって芽を出していこうよと言ってます。

仁坂知事:なるほどね。

中野社長:うちは決算書を全部貼り出します。私は「利益が上がったら全部こう分けます。私は取らないよ。」という思想です。うちは「思想が社長」ですから。

仁坂知事:思想が社長ですか。それは凄い!

中野社長:私は他の経営者とはちょっと違うところがあるんです。私は責任を取って大きな方針は出します。私はそれに向かって行くからみんなもそれに向かって頑張ってくれるか、というやり方です。調べてみますと、長寿企業の中には非常にいい家訓を持っているところがありますね。

仁坂知事:県庁もそうかなと思います。県庁だけじゃなく、公務員とか、ありとあらゆる組織がそうですね。どっちへ行きたいかトップが明示しとかないとわからないです。良かれと思ってやっていてもどっち向いて努力すればいいのかわからないですからね。

中野社長:そうですね。私どもは、中野BC−バイオケミカル・クリエイションと名前を変えました。これからは研究開発型でないと生き残れないということです。今まで会社は地域で儲かっていましたが、いろんな業種を見ても、だんだんと地域では儲からなくなってきています。世界で売っている、日本でも売っているというふうに、マーケットを広くしないと儲からない時代になってきています。

仁坂知事:そうですね

中野社長:そのためには、うちは技術革新をする世界の本当の小企業でいいよと。そうすると生き残れる。そのかわり特異な技術を持っていると。例えば健康食品「梅肉エキス」のムメフラールという物質は、こんなふうに作用して健康産業に貢献できるんだという一つのポリシーと、それと「三方よし」という理念、買った人も、私どもも、地域の梅とかみかんを作っている人にとってもいいと。理念がきちっとしていたら、共鳴してくださって皆さんが協力してくれる。そこを評価いただいて、昨年「モノづくり300社」に入れていただけたと思うんですね。

仁坂知事:思想が評価されたということですね。(笑)
 もちろん、思想だけじゃなく技術も実績も十分ありますからね。

中野社長:まだまだこれからです。
 今、紀北の方では柿が成木になりつつあって柿が余ってきてしまう。これを何とか開発してくれないかと4、5年前に県の農林水産部長さんに言われまして、何とか貢献できないかなと。それで今、青柿を研究しています。

仁坂知事:青梅の次は青柿ですか?

中野社長:青みかんもやっているんですが、今は青柿です。青柿はメタボに効果がありそうなんです。マウスでは効き目がありました。今は実証段階に入っています。

仁坂知事:これは薬品じゃなくて健康食品でやっているんですか?

中野社長:薬はものすごくお金がかかりますから。本当は特保をとると良いのですが1億から3億かかります。特保をとって売れるかということなんです。少し突っ込んで表現できるだけのことですからね。健康食品でも表現が柔らかくなるだけですから。

仁坂知事:特保というより薬品の例ですが、ものすごく設備投資がかかるから、今、世界の薬品企業は一社じゃもたなくなってどんどん合併し始めていますね。

中野社長:健康食品の場合は、アメリカとヨーロッパは、聞いている限りでは、会社の自己責任という形でやっているようですね。そうすると、効用の表現については飲んだ方がある程度良いのか悪いのか判断するという形です。しかし、日本の場合は薬事法があり難しいんです。でもやはりエビデンス(検証結果)を集積してると柿は非常にいいですね。

仁坂知事:それはいいですね。

中野社長:今、岐阜と筑波の農林水産省の研究所と一緒にやっています。

仁坂知事:岐阜県と国と一緒にですか?

中野社長:はい。岐阜も柿の産地です。圧倒的に和歌山の方が多いですけどね。

仁坂知事:中身も勝ってますけどね。

中野社長:向こうは研究してたんです。だから一緒に行こうということでね。トップセールスでないと話はまとまりませんから、私もすぐに行きました。うちは青梅をやっているし、青みかんもやっている。だから青柿も一緒にやりますと。特許とりましょう、とやっています。まぁ楽しみですよ。

仁坂知事:青三大話ですね。(笑)

中野社長:技術で生き残っていって、長寿企業になりたいと思います。中野BCは今76年目です。会長は二十歳の時に醤油を作りました。そこからですから。技術革新をしながらやっていかないと10年同じことをしているとつぶれてしまいます。私は、人も企業も商品も変わらなければ捨てられる、といつも言っているんです。非常に難しいと思いますね。

仁坂知事:中野さんの本業の方の梅酒についてね、私の乱暴な予言なんですが、梅酒はヨーロッパで絶対売れると。何となれば、ヨーロッパのワインの産業構造と日本の梅酒の産業構造はものすごく似ていると。ヨーロッパには、いいワインを扱う、太くないけれど非常に精緻なネットワークがあると思うんです。そうすると、そこにぱちっとはまればすうっと流れると思うんです。日本のビール産業のように巨大な単一の会社が流すんじゃなくて、みんなが中堅・中小企業のところで、美味しさ、グレードに応じてきれいに流すというマーケットができている。そこに和歌山の中野BCさんの梅酒がかちっと合えば、何百億円というわけにはいかなくてもうまく流れると思うんです。初めにはまらないといけませんから、今年は是非ヨーロッパで梅酒とワインを売っていきたいと思っています。

中野社長
中野社長

中野社長:いいですね。うちも是非一緒に行きたいですね。今、一部ヨーロッパへ行っています。細いチャンネルですけれどね。実はモスクワでは結構売れています。5年くらい前にモスクワへウォッカの工場を見に行きました。ウォッカはアルコール40度くらいです。うちの「貴梅酎」は、梅酒をもう一度蒸留して40度のものを作ったんです。これは全国で初めて作ったんですがね。そういうふうに地域に、和歌山県に根ざした商品構成を作っていこうと。和歌山は田舎だからいいんだと。東京の住宅地のすぐ近くだとだめだと。田舎の、高野山の麓から発信していくことが一番尊いんだと。そして、「紅南高」は、去年、天満天神の梅酒大会でグランプリをいただきました。これはアルコールが20度もあります。

仁坂知事:今年初めにフーデックス・ジャパンに出展しましたが、あれは大当たりでしたね。十分有名なところよりも、県内にそんなところがあったのか、という小さい業者の方が大当たりでね。どんどん引き合いがきています。航空会社の機内食へ採用いただいた会社もありました。攻めていかないとね。

中野社長:消費者の方々にモノを見ていただくのは大事です。当社も時間とお金を掛けてそういう展覧会には是非出したいと思っています。

仁坂知事:お声かけをしますからどんどん出ていただいて、特に外国へね。外国で当たれば、東京の消費者にかえって受けたりするんです。

中野社長:物事にはトレンドがありますからね。

仁坂知事:これから中野さんのような立派な経営者が続々と若い世代に現れてくることを期待しているんですが、芽はいっぱいあります。かつての実績もある。和歌山の歴史をみてみますと、創業100年くらいの企業の場合は現在の経営者のおじいさん、あるいは曾おじいさんの世代になりますが、そのころにものすごく勃興しているんですね。それからしばらく頑張っていて、戦後焼け野原になってから、もう一度すごく頑張ってこられた。それから、その後少し揺らぎ出して、それで、和歌山全体、もちろん個々では、すばらしい企業、大成功した企業もたくさんあるが、全体としては数がちょっと足りないと思いますので、これからもっと増やしていかなければならない。その増やすときに、若い経営者の方がどういうことに着目すれば、立派にビジネスで成功するとお考えですか。

中野社長:そうですね・・・出会い、ですかね。企業家精神を持った人が集まることで、ものすごく刺激になると思います。私も若い時に色んな団体に入ってやってみました。他の人が何を考えているのか、もっと進んだ人が一杯いるんだ、と思いましてね。今はアントレプレナーシップ、企業を起こそうという精神を持っている人が少ないですね。まだまだ増やさないといけない。若い人にそうした環境を作ってあげるというのは非常に大事ですね。
 企業というのは人が作る生き物ですから非常に不安定なものなのです。日本では、事業に1回失敗すると烙印を押されてしまってだめになってしまいます。アメリカのように「七転び八起き」できる、一回つぶれてでも再起し、3回目に株式を公開したということが出てきていいと思うんですね。日本もこれからそのような時代に入って行くんだろうと思います。

仁坂知事:これは、だけど制度であったり、周りの人の目があったりしますよね。

中野社長:税制の問題もありますしね。

仁坂知事:やってる人、本人の心構えはどうですか?

中野社長:これは非常に大事です。技術よりも、マインド、やる気が大事ですね。人の能力よりも、何倍も気持ちの方が勝っている人の方がノウハウを早くつかんだり、技術革新しているように思います。マインドを高めるものは若い人たちの出会いにあると思います。

仁坂知事:出会いですか。

中野社長:出会いです。

仁坂知事:出会いの相手は和歌山の中で、例えば経営者協会の中とかで良いんですか。もっと全世界とか全日本とかから集めてこなくても良いんですか?

中野社長:地域でも良いんです。経営者には、色々なチャンネルがあって、人によっては視点が違っています。経営を見る視点が違いますね。私は前から見ていますが、もっと進んだ人は裏から見ている。そういう人に刺激を受けて教えてもらうことが大事です。その意味ではコンサルの人には教えてもらうことはあまりないですね。

仁坂知事:そうですね。コンサルはわかったようなことを言うだけだったりしますから。

中野社長:真剣に自分の首をかけて仕事をやらしてもらっていると。活き活きと働いてくれるような環境をつくっていけるかどうかとか、労務の問題とか悩みが色々あります。そういうことを互いに話すと、ぽろっと目から鱗が落ちるんです。あぁそんなもの考え方をしたら楽やなぁとか。自分が苦労していたことが、精神的にころっとね。
 企業は握っていようとするとものすごくしんどいです。私は、「思想が社長」と言ってますので、企業を横からも斜めからも見れるようにしています。だから福祉施設もやらしてもらっています。そちらも準優良法人になりまして、優良法人を目指しています。和歌山市で70社くらいありますが、海南では少ないですね。

仁坂知事:その出会いの場は、どこが設けるんでしょうか?経営者協会でしょうかね?

中野社長:昔、経営者協会で若い経営者が集まって青年経営研究会を作りました。順番に5分間ぐらいづつ順番に商売のことを話したりして良いところを取り入れ、それでまた刺激を受けるということをやっていました。その頃、商工中金の会もあって、非常によくまとまっていました。しかし、時代とともにお互い変わってきますから、今はほとんど活動もしなくなってしまいましたが。
 本当にビジネスの勉強したいという若い人たちのために会を作ってあげて、気持ちに火をつけてあげないとできませんね。

仁坂知事:県は何か役に立てることがありますか。

中野社長:あると思います。時に応じたアドバイスがありますからね。

仁坂知事:経営者協会と一緒になってやれということでしょうか。

中野社長:そうですね。経営者協会も「経営道場」というのをやっています。成功した人たちにお話をいただいても良いわけです。長いことお話を聞くわけではなく、ポイントだけでいいんです。そうすると、ごっつい刺激になります。皆、切り口が違うんですね。
 松下幸之助さんは、経営のコツというのは、みんな違うんだとおっしゃったそうです。「経営のコツ、ここなりと気づいた価値は100万両」というんですが、このコツには、ほんのちょっとのひらめきのコツがあるみたいですね。

仁坂知事:ひらめきのコツをひらめかすような機会をたくさん提供する、というのが、経営者協会とか行政とかの役割ということですね。

中野社長:そうですね。商工会議所の若手の経営者の青年部が最近できましたね。そういう組織は、本当は、商工会議所をはじめ経済5団体の中で作って、行政の方にも力を入れていただいて、出る杭をどんどん伸ばしていただくことが大事です。

仁坂知事
仁坂知事

知事:助成措置は結構あると思うんですね。それを使ってくださいよ、と言うんですが。こちらからあるぞ、あるぞ、と言わないと伝わらないんです。じっと座り込んでると、伝わらない。本当に伸ばしたい人には、むしろこちらからどうですか、と話を勧めてあげられるくらいでないといけないですね。そのために、座り込みスタイルではなく、企業担当者を決めて、まずはどうですか、と伺う。設備投資の気持ちもあるんだが金がなぁと聞いてきたら、こんな支援策がありますよ、こんな技術革新したいんだけど人がなぁ、というようなことをワンストップで相談できる体制を徐々に作ろうと思っているんですね。まあ。これは難しいです。

中野社長:今、中小企業は恵まれた時代にあると言えますね。国からも県からも補助金をくれたりしますし、今こそ、がんばっていかないといけないと思います。  ありがたいことに、技術に関してもお金を貸してくれる時代になりました。昔は、担保を持ってきなさい、担保が足りません、と言われたら、そうですかと引き下がらなければならなかった。そういう意味では、中小企業をバックアップしてくれる、本当に応援してくださる体制ができたと思いますね。
 第二創業をね、ベンチャーを育てて、アーリーステージ・ひな壇に乗せる。今やっている創業者が一代、二代、三代目であって、企業は一応ある。そのときに、新しい技術革新で第二創業、第三創業をやってもらう人がたくさん出てくるような環境。それに拍手をおくることは非常に大事であると思います。

仁坂知事:企業誘致をよく言われるんですが、企業誘致のためにもなると思っているのは、それによって地元の人も栄えないといけない。究極は、地元のワンセット揃っている企業がどんどん伸びていくというのが一番力になるんですね。そのために、何が、どこで、何をやっているかということをちゃんと調べて、和歌山の企業の「力」というものをPRしていく。それで、それだけあるんだから、ちょっと取りに言って企画に上げてもいいでしょうというのが意外といっぱいいるんです。

中野社長:そう思います。

仁坂知事:これをPRしようとする材料を今いっぱい作ろうとしています。従来どこの県でも成功してなかったと思うんです。県の中に何があるのかは、必ずしも県庁は知るべき立場にはないですね。全部受け身で、何か頼みに来たら、その人に何かないですかと聞いてきた。そうではなくて、初めに県の中に何があるか、困っている人がいたら助けに行って、こういうのもありますよと助言するとか。ご不満を持って怒っている話なら、原因が合理的であれば解決するようにもっていく。それとともに、状況を全部把握して、それを企業誘致にも活かしていく。企業誘致で、和歌山って何もないんじゃないか、と言われたら、いやいやこれだけありますよ、と。

中野社長:それ一番いいですよね。

仁坂知事:そういうことになるような材料をどんどん作っていって、今度は、実際に来てくれた人と、地元の人が新しい関係を結べれば、地元の人も売り上げが増えて、利益が上がるんですね。または発展できる。そういう「正の循環」を作っていきたいと今がんばっています。

中野社長:そうですね、そうなってくると、企業も芋づるように芋がぽこぽこついてあがってきます。産業として育ってきますからね。

仁坂知事:なかなか大変なのは、「こんにちは」と言って社長さんとこへ行って、「何か用か」と言われて、「用はないけどちょっと話をしに来ました。何かないですか」と言うのはみんなおっくうなんですよ。そういうのに慣れてないんですから。

中野社長:そうですね、役所がもう少し前へ出て歩いていただいて、企業の悩みとか聞いていただけたら、非常にいいですよね。

仁坂知事:そういうことのできる県になりたいなぁと。それが成功すれば、和歌山の評価というのは格段に上がりますね。そんなとこどこにもないんですから。

中野社長:そうですね。この間、工業技術センターの所長さんがお見えになられたとき、質問内容がストレートで、悩んでいるところは何ですか、といきなり言われまして、面食らいました。
 質問内容が全然違います。すごい人来てくれたなぁと思いました。

仁坂知事:公募なんですよ。五人くらい応募がありました。所長の専門はエネルギー技術で、日本や世界に顔がきく方です。昔の大阪工業試験場、現在の産業総合研究所の関西センター長だったんですが定年で辞められて。定年になると大体大学に呼ばれるか、筑波の会社や大企業に呼ばれたりするんですが、それでは、おもしろくないと。和歌山で、一発みんなのために働いてみたい、特に中小企業の振興をやってみたいと。自分の人生一回しかないから、どれだけできるかわからないけれど、一発やってみたいと志願してくれました。

中野社長:本当に、新規性があるとか創造性であるとか、そういうものがあるわけですから、卒啄同機という言葉はありますが、卵がふ化するするときに、ちょっとくちばしをいれていただく、それが大事ですね。

仁坂知事:大事ですよね。

中野社長:今、進めているのは、和歌山の研究開発水準の向上です。和歌山県のお金はちょっとしかありませんから、国や独立行政法人から研究費をもらってくるんです。例えば、ナノテクノロジー分野では、始めからテーマに合わせて、企業とコンソーシアム(共同研究体)を組んで、それを10ぐらい作って、がんばれと応援すると、がばっと伸びていける可能性があります。

左 仁坂知事 右 中野社長
左:仁坂知事 右:中野社長

中野社長:うまくいくといいですね。ものの考え方ひとつでころっと変わりますからね。

仁坂知事:ちょっといいものを寄せてこようと考えているんです。

中野社長:やっぱり、発明的なものがいっぱいあっても、世の中に出て、商品になって、地域にも貢献できて、法人にも利益還元できるというふうに、地域で産業が活性化していくほど、町は発展していくと考えています。なんとしても和歌山県は、今、産業のことに力を入れていただいているのでありがたいと思っています。

仁坂知事:中野社長さんも、10年間で10倍くらいになって下さい。

中野社長:いやいや、まあ本当にがんばりますよ。

仁坂知事:本日どうもありがとうございました。

中野社長:ありがとうございました。

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