知事記者会見 令和4年12月16日

知事記者会見

記者会見での発表事項等を紹介します

令和4年12月16日 仁坂知事退任記者会見

令和4年12月16日 記者会見室

仁坂知事退任記者会見

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 今日は退任の記者会見で、二つ目的があります。一言、報道の皆さんに「ありがとうございました」と言った方がいいのと、もう一つは、最後の最後になりますが、政策集(資料)を作りましたので、ご披露させていただこうと思いました。
 まず、第一で、皆さん本当にありがとうございました。16年前から一緒に仕事をさせていただいている人もこの中にはいますが、どんどんお変わりになる人もいて、報道の皆さん、いろいろありがとうございました。私は、16年前から知事をやらせていただいて、和歌山県の勢いを取り戻すため一生懸命頑張ってきたつもりですが、考えてみると、和歌山県のために尽くすことは生まれ故郷のために尽くすことであり、生まれ故郷も育てられたのも和歌山ですから、そういう意味で、非常に幸せな機会を与えていただいたと思っています。そういうことで、一生懸命やらなければ罰が当たるというつもりで、頑張って参りました。後は、岸本新知事に引き継ぎますが、私よりもっと良い県政をやってくれるのではないかと心から期待しています。皆さん、大変ありがとうございました。
 もう一つ、政策集ですが、なぜ作ったかというと、私は(知事を)16年やっていて、職員と話をしていると、政策がいっぱいあり、それぞれちゃんとやってくれていますが、最近、頓に、なぜそんなことをやっているのか分からなくなっている人が随分いる。すべての政策は、論理的に理由、「なぜ、どうして」があってやっていて、そうでないと無駄な政策になる。それで、「なぜ、どうして」の方を忘れると融通も利かなくなるし、「なぜ、どうして」の状況が無くなっている場合は(政策を)止めればいいし、「なぜ、どうして」の状況がまだまだ続いているのに、急に止めたり行革したりすると無茶苦茶になる。だから、「なぜ、どうして」が大事で、そういうことをきっちり残しておかないといけないが、担当職員がひょっとして忘れているとすれば、それを新知事に伝えることもできません。そういう意味で、一つは、新知事に対する引き継ぎとして作りました。もう一つは、考えてみたら、新知事だけにこっそり言う話でもなく、全部が公開資料で、その都度、こういう意味やこういう理由でやっていると発表しながらやってきた話なので、改めて、県民の皆さんに対する備忘録として発表し、残しておいてもいいのではないか。そういうふうに思いましたので、今日発表させていただきます。
 (政策は)たくさんありますが、改めて「なぜ、どうして」を言わなくてもいいと思うような中身が、他にたくさんあります。それについては省略しているので、この政策集が仁坂県政の全ての政策集ではない。もっとたくさん(政策は)あるけど、これは言っておかないと心を忘れるかなと思うような話は、一応、載せたつもりです。
 以上です。

質問と回答

産経:今日の退任という日を迎えて、改めて、率直な今の気持ちはいかがですか。

知事:あんまり、ないです。ちょっと格好が良すぎますが、無の境地ぐらいです。しみじみ思うこともないし、良かった良かったとワクワクすることもないし、寂しくもないし、今日で仕事が終わりで、まあそうかというだけで、ちょっとホッとしたぐらいです。
 でも、議会で申し上げましたように、和歌山県は永遠だし、和歌山県政は永遠ですから、この瞬間も明日からも和歌山県政や和歌山県は続きます。自分はもうその指揮官ではないが、和歌山県や和歌山県政が上手くいくことを、一県民、一市民として、心から願っています。

産経:ご発言で、和歌山県は永遠、県政は永遠というようなお話をされました。県政の長い歴史の中で、仁坂さんが務めた任期16年は、和歌山県の歴史の中で、どんな意義付け、位置付け、どんな期間でしたか。

知事:それは、自分で言うのは不遜だと思います。誰か分析してと言って、産経新聞にやってくださいというのが正直な気持ちですが、不遜なことを言えと言われたのであえて言うと、和歌山県が上手くいかなかった、たくさんの、制度、やり方、要素、状況があります。そういうのを、できるだけお掃除して、綺麗な形に整え、新しく作って、という制度設計をやり直した時代かなというふうに思います。
 制度設計をやり直したら、すぐにバーッと世の中が良くなっていくはずですが、効き目が出るまでなかなか時間が掛かるところもあって、まだまだ、宿題をたくさん抱えている県だと思います。だけど、大分、制度を直して条件を整えているから、これからは随分やりやすくなるのではないかと、私は期待している。

毎日:以前、講演会で道半ばだというご発言をされたかと思います。今も、まだまだ宿題を抱えている県とおっしゃっていますが、特に、知事が道半ばだと思っている分野は、どういったところですか。

知事:高齢化が進んでいるし、人口は減っているし、若い人たちの比率が減っていて、そんなにたくさんいるわけではない。これがやっぱり県の力を削いでいくところがある。例えば、単に現在稼ぎが少ないというだけではなく、将来、その構造が続いていくとすると、高齢者に対する福祉をきちんとしていかないといけないので、だんだんと苦しくなっていく。だから、一気に人口が減らないように頑張ろうとしてきましたが、十分それができたかというと、少しはましかもしれないぐらいの感じです。そういう意味では、和歌山県の大変な所は、まだまだ続くのだろうと思います。
 ただ、今まで足を引っ張られた要因、例えば、ひょっとしたら誰か汚職するのではないか、そうすると自分もそういうふうに行動しないと生きていけない、そんなことでは、絶対に地域は発展しなくて、他の地域からの評判も悪くなる。そういうことは、無くなったと思います。それから、インフラは随分良くなってきたので、自分のビジネスの構想を立てやすくなっている。それから、今の所に住んでいても、近くの所まで通えるようになってきた。そういう意味で、生活や経済活動の条件は、大分良くなっているのではないかと思います。だから、今後に期待です。

毎日:県議会の質問でもありましたが、今後の和歌山県との関わり方として、仁坂知事自身、今後何をされていくのか、決まっている段階のことを教えてください。

知事:実は、全く決まっていません。決まっていませんというのは、一つのこと以外は決まっていません。政治団体としての仁坂吉伸後援会の名前を変えて、選挙はしませんから資金管理団体ではない、和歌山研究会という組織を作って、そこで日程管理とか、前々からのお友達とか交流のあった方々と、いろいろ楽しく語らうというような場はできた。
 ただ、何かの定職にはまだ就いていないので、何もありません。別に、一切就かないで閉じこもるつもりはないので、何か機会があったら何でもやりますが、もちろん、常勤の仕事はやる気はありません。世の中の役に立つことがあったら、お誘いいただければ、ご検討させていただきます。

紀伊民報:16年間、どうもありがとうございました。今日、オレンジのネクタイを絞めていらっしゃいますが。

知事:最後ですから。初登庁の時と退庁の時は、(オレンジのネクタイを)絞めておいた方がいいかと思いまして。

紀伊民報:知事のカラーということで、今日はどういう意味合いでということをお聞きしようと思ったのですが。

知事:元々の意味は、オレンジ色が好きだし、みかんや柿とか和歌山の特産品の色と同じですから、私の勝負ネクタイは、オレンジにしています。だけど、選挙の時に、勝負といって使っていたので、しょっちゅうやっていると、また政治的に頑張っているのですかというふうに思われるので、最近は絞めにくくなって、ちょっと遠慮していたのですが、退庁の日はいいだろうと。この間の議会の初日にもやってきましたし、晴れの日はいいだろうというふうに思っています。

紀伊民報:政策集の中で一つお聞きします。人口減少が大きな課題の一つだったと思いますが、83ページに、乳幼児の医療費補助で、中学校まで県一律でやらない理由が、地方自治の観点から市町村がそれぞれ特色ある施策をするべきだと書かれていますが、こういったことも、仁坂知事のお考えということでよろしいですか。

知事:結構、ずっと毎年のように、市町村長から、県で肩代わりしてください、競争で隣の町がどうのこうのと言われるから、(県で)全部やってくださいと言われてきたのですが、お断りをしていた。お断りをしていた「なぜ、どうして」は、そういうことですと書いている。もちろん改めてもいいのですが、「なぜ、どうして」断ってきたのかはこういう理由ですという、「なぜ、どうして」の典型的なものです。

読売:お疲れ様でした。和歌山研究会という組織を作られるというお話でしたが、概要を言えばどういったことをする会になりますか。

知事:株式会社でもNPOでも改組するのが面倒なので、政治団体にしています。だから、資金管理団体ではないのですが、政治団体のレギュレーションに基づいて、届出や報告をしないといけない団体になります。
 何をするかは、和歌山県のために、和歌山県はどんなふうになったらいいのか、そのためにどんな勉強をしたらいいのかお互いに意見を言い合いましょう、そういうようなことをみんなでしましょう、そういう人は会員になってくださいというぐらいの感じで、まだあまり細かいことは決めていません。ただ、一応(政治団体としての)ルールがあるから、その枠の中でやらないと(いけない)。もし、枠の外へ出るようなことがあるなら、例えば、株式会社に変えるとかもあり得るかもしれません。

読売:先ほどから人口減というようなお話も出ていますが、人口減が止まらない一方で、社会減の減り幅が、知事の16年間の中で、大学の誘致などもあったりして、少し減っている。これまで5,000人規模だったのが1,000人台の減り幅になっているところで、この16年の評価といいますか、自分のやってきたことへの受け止めは。

知事:それは、当たり前ですが一生懸命やっているので、そのぐらい減ってもらわないとかなわないというふうに思います。本当は、増になるぐらいを狙っていたのですが、そこまではいかなかった。
 自然減は、しばらくはしょうがないと思います。なぜならば、ものすごい長寿命化して、お年寄りがまだ頑張っておられるわけですが、やっぱりいつかは寿命が来ます。だから、寿命が短い時だったらもっと前にお亡くなりになっていた人が、今よくお亡くなりになるということなので、自然減が、しばらくものすごい数になるのはしょうがないと思う。それでも、自然増減ではなくて、出生数をやっぱりもうちょっと大きくしたかったです。それから、社会減は食い止めるだけではなくて、社会増にならないかなというぐらいの気持ちでしたが、結果はこのぐらいでした。

読売:今、お話を聞いていると、一定の成果を残せたというご自身のお考えですか。

知事:あれだけ一生懸命やったら、少しぐらいというか一定の成果が出るでしょう。

読売:ネクタイの話が出ましたが、これは初登庁の時と同じ物ですか。

知事:まず、経緯を言いますと、16年前に選挙をやりますとなりました。その時に、選挙のアドバイザーから、何となくカラーを決めなさいという話があって、やっぱりオレンジだとなって、オレンジ色のネクタイを探してきて絞めたり、運動員のパーカーをオレンジ色にしてもらったり、そういうようなことをやりました。従って、選挙の時からこういう形です。それで、そのまま初登庁したので、私の記憶によれば、この色で来たような気がするけど、違うかもしれない。選挙の時は、少なくともこれを使っていました。

読売:16年前に着けていた物を、今日着けているというわけではない。

知事:違うでしょう。結構、いっぱい持っています。

時事通信:ご自身の任期を県政の長い歴史の中でどう位置付けるかというお話の中で、制度設計をやり直した時代とおっしゃっていましたが、具体的に、制度設計をやり直した事例としていくつか挙げられる事例は。

知事:事例は、政策集に書いてあること全てですが、一番初めに、前知事が逮捕されたところから始まっているので、そういう制度を残しておいたら、また同じようなことが起こるわけですから、それは直さないといけない。それから、選挙をやっていたら、道の状況は、何だこれはと思ったので、道のネットワークをちゃんと理論的に考えてやっていかないといけない。それから、ちょっと別かもしれないが、もちろん高速道路をきちんと整備しておかないと日本から取り残される。それから、農業も含めた産業政策では、政策の体系みたいなものをちゃんと作っておかないと上手くいかない。少子化対策を強化しておかないと、なかなか(上手く)いかない。いっぱいあって、ここに書いている全てです。

わかやま新報:16年間お疲れ様でした。私は、16年前、就任会見の時もいた覚えがあり、すごく懐かしいこともあります。また、ネクタイの方は、ぜひその時の写真を確認したいと思います。

知事:ひょっとしたら違うかもしれないが、選挙で扱ったことは事実です。(オレンジのネクタイを)絞めたりすると、また選挙をするのか、もう一回出るのかとか言われたらかなわない。6月に辞めますと言ってから、また(オレンジのネクタイを)やっていたら、やっぱり(知事を)やるのではないか、やってとか、ワァワァ言って来るから、今年は絞めにくかった。

わかやま新報:就任当初の頃に知事がおっしゃっていたのが、知事選に出るために和歌山へ帰って来た時に、昔は、和歌山出身を、すごく大いに自慢にして、誇りにして語っていた。ところが、談合事件があって、和歌山が悪いイメージで言われるようになり、それが残念でならないとおっしゃっていました。そういうイメージを払拭することも、すごく大きな目的として、お仕事されてきたと思いますが、16年間の県政を終えられて、今、知事が思っている、和歌山のイメージがどう変わったか、そのあたりを教えていただけないでしょうか。

知事:汚職とかが頻発していたから、残念でしょうがないというのはありました。それから、和歌山と言うと、みんなプププッと笑ったりするから、ものすごく腹立ったりもしましたし、私は違いますが、他の人は和歌山(出身)を隠していましたといって、歌にもあります。そんな風潮があって、これでは駄目です。それから、選挙であちこちを回っていると、何か元気がなくておかしいと思って、県庁に入ってからすぐに統計を作ってもらって調べたら、なんと私が大学へ入ってから長い間の成長率がビリです。もともと絶対収支は高いからビリではないのですが、これではいけない。
 それで、いろいろ考えて、特に、公共調達制度は、論理的に考えると汚職が起こりません。部分的には、私的談合を誰かがやっていると、公正取引委員会や警察に捕まったりするような話はありますが、官製談合で県ぐるみでというのは絶対に起こりません。起こるのならどこでどう起こるか言ってみろというくらい、システムで汚職を防止しましょうというのをやった。
 一方で、地元の建設業界は、非常に大事な雇用の元だし、地域の核です。わかやま新報は違うけど、私が就任した時は、談合3兄弟が出て、とにかく建設業界は悪いから徹底的にいじめろ、できるだけ入札価格を安くしたほうがいい、そんな感じの世論だった。私は、本当は、そういう時は世論に乗った方が人気が出るけど、あいつはまた汚職したいのかというふうに見られた可能性があるぐらい、それはおかしいのではないかと言って、違法でも不当でもないけど、建設業界の方がちゃんと地域に残れるような制度を作ろうと思って、郷原委員会を作って、一緒にやらせてもらった。そこから、いろいろ微修正を加えて現在に至りますが、和歌山県で16年も経ったら、昔あったらしいけど(ぐらいで)、今はそんなこと誰も思っていないでしょう。
 それから、災害、新型コロナ、産業、いろんなことがあって、観光もちょっと栄えているし、イメージは悪くない。和歌山というと、地方の田舎ですねという感じは全国的にあるかもしれないが、イメージの悪い田舎ですねと、誰も思っていないと思います。そういう意味では良かったなというふうに思います。

朝日:どうもお疲れ様でした。戦後で見ると、4期以上勤めた知事は3人目とお聞きしたのですが、16年という時間については、どういう実感、思いでしょうか。

知事:あっという間に過ぎて、もう16年も経ったかというぐらいの感じです。年をとると時間が短くなると言うけど、それだけでもなくて、とにかくあっという間に過ぎました。実は、1日はすごく長い。ものすごくやることがたくさんあって、サボらないできちんとやっていましたから、1日はすごく長い。1週間もまあまあ長い。だけど、1ヶ月ぐらいになると、あれもうこの月が終わったかというぐらいの感じで、1年だともう1年経ったか、16年はもっと早いというぐらいが、私の実感でした。毎日、一生懸命やっているので、何をやりましたかというと、その都度一生懸命やっているというのが答えになってしまいますが、16年間は短かかったです。

朝日:今後、東京と和歌山を拠点とする、いわゆる2拠点生活というか、デュアルライフというようなことでしょうか。

知事:東京は、家内の看病というのはおかしいけど、一緒に居させていただくのが主たる目的で、こちら(和歌山)は親睦を深めるのが主たる目的です。それに加えて、今後、何かプラスアルファがあるかもしれないし、ないかもしれない。

朝日:和歌山研究会という政治団体は存在するが、積極的に政治活動をする気はあまりないという理解でいいですか。

知事:選挙に、自分も含めて誰かを押し立てるとか、自分の与党をどこかに送り込んでとか、そういうことをやる人はよくいますが、私は、そんなことをやる気は全くないし、特定の人を応援したりすることも、これからは止めようと思っています。そういう意味では、政治には関与しない。
 もう一つは、ひょっとしたら、公の場に前官礼遇で来賓で呼ばれる可能性があると思いますが、それも遠慮したいというふうに思います。なぜかというと、次の岸本知事に悪いから、遠慮しようと思っています。私的な立場で、例えば、県が主催するシンポジウムなどは、一般席でジッと見ている。こういうことはあるかもしれません。

日刊工業:知事は、新型コロナなどでも、中央に対してかなり意見を言われる機会がいくつかありました。16年務められて、関西広域連合長も務められ、地方分権は、この16年間、中央と地方との関係について、どのように変化したかお考えは。

知事:地方分権の、マスコミにおけるブームは、私が就任した時は結構高くて、今は低いという感じはあると思います。私は、地方分権というのは、お互いに助け合いながら責任は峻別する。責任を初めから分けて、それぞれに責任を持ちながら助け合うのが、地方分権だと思っている。そういう観点からすると、まだまだ考え方が十分ではないところは、地方側も政府側もある。これの逆は、私の言葉で正しい日本語かどうか分かりませんが、団子。誰の責任か分からないような状態でぐちゃぐちゃっとしているのを団子と言っていますが、正しい言葉に直していただいて結構です。
 例えば、新型コロナに関して言うと、感染症法上の実行権限は、ほとんど全部県にある。それから、特措法も県にあるけど、基本的対処方針として、地方が勝手なことをしないように縛ることができる。だけど、実際に起こったことは、まず政府側からいうと、あーしろこーしろと片っ端から言ってきます。それは、法律に基づく権限として言ってくるわけではなく、何となく、一般的な監督権や自分たちの方が見識が高いからちゃんと指導してあげますと言ってくる。特措法でも、基本的対処方針の中には、本来なら、こういうことはしてはいけません、こういうふうにしなさいぐらいは書いてもいいと思うけど、何々する時には国の了解を取ってからやれとかは、ひょっとしたら法律の精神に反するのではないかと思うようなことを、割合、平気でやる。それから、その見識が正しいかというと、間違っていることが半分、正しいことが半分あって、(間違いを)上げろと言われたら幾らでもあります。一方、地方の方も、自分で考えて、この県はこういうふうにしますとやればいいのに、私は言わないのですが、基準を示せとか、基本的な方針は国で統一しろとか、そういうことを言う人がものすごく多い。
 そういう意味では、地方分権は、そういうところから直していかないと駄目なのではないかというふうに思います。地方分権というと、すぐに、出先機関を移転しろとか道州制だとか、いろんなことを言うけど、実は、自ら責任を取る、その責任を分けるのが地方分権ではないかと思っています。

日刊工業:いろいろ制度設計をされてきた中で、私が着任した時に、産業別担当者制度を県庁に敷かれているのが、ミニ経産省を作られていると思いました。これが、今、県職員に定着しているか、県のインテリジェンスとして機能しているか、その辺りの評価を教えてください。

知事:100点ではないが、定着し機能していると思います。一応、そういうミッションを与えられているので、(私から)どうなっているか聞かれると、今こうですと言わないといけないから、時々(産業界から)話を聞いておかないと危ないと思っているかもしれない。それから、産業界全部に、一般的にきちっと説明して来いという話になったら、バッと行きます。そういう意味では、機能はしているけど、すごく偉いかと言われると、人によりますし、全体に凄いですというふうには、まだまだ言えないかもしれません。

毎日:先ほどの質問に関連して、地方と中央の関係についてですが、良いとこもあれば悪いところもあるというようなことだったかと思います。地方は、基準を示せと言ったりというような部分があるということですが、

知事:つまり、地方分権と言いながら、国にベタッと頼っていないか。分権だから、本当は権限が全部自分にあるはずで、自分で判断しなければいけないものを、基準を示せとか言い過ぎではないか。それは、国に頼っているということなので、その人たちが地方分権だと言っても、それはどうも迫力がないと思いますというふうに思っていた。

毎日:その度合いは、仁坂知事が就任した16年間で、より深刻になっていったのか、或いはずっと同じような感じなのか。

知事:全国ですか、和歌山県ですか。

毎日:全国と和歌山県のどちらも。

知事:和歌山県は、私がそういう考えで、もちろん国の知見とかは求めるし、権限のあることは従わないといけないが、権限があることを言ってきた時は、責任を取ってもらう。そういう方向できっちりやってきたので、問題はなかったように思います。一方、国の権限になっていることについては、国にお願いをするし、国が一生懸命やっていることを悪し様に言う人はまた別にいますが、それもまたおかしいので、そういう意味では、私は、国の行動や事業について、非常に重きを置いて尊敬していましたから、ある意味、国権主義も大事ですというふうに見えたかもしれない。
 全国について言えば、昔も今も、もたれ合いや団子の状態は続いていて、その雰囲気はやっぱり直さないといけないのではないか。歴史的に言うと、この雰囲気を一番問題にして直した行革は、橋本内閣の時です。その前は、例えば、厚労省の役人みたいな人が、県の役人として県庁に勤務していた。地方事務官という変な職種があって、地方の予算で地方から給料を出しているけど、指揮命令系統は中央省庁が持っているというような制度がありましたが、そういうのは一切無しにした。

その時に、例えば、機関委任事務とかを随分整理しました。法定受託事務として、こういうことであなたに委託すると言ったことをやってください、自治事務は勝手にやってください、こういうようなことで随分整理してやった。あの行革は、私はすごく評価している。
 だから、今、逆に言うと、地方支分部局なんていただいたら、あれと逆行するのではないかと思っているから、個人的にはあまり積極的ではなかった。広域連合で決まったことは、公人ですから自分で壊すようなことはしませんが、支分部局をいただくと、支分局の指揮命令は誰から来るかといったら、(例えば)整備局をいただいて整備局でこんな事業をしなさいというのは、国交省から来る。それを、完全に全部自分で決めるからお金をくださいと言ったら、お金をどうやって各地域に配分するかは難しい。それを、国交省が配分県を一律ではなく政策的に決めるのならば、その決められたことを我々がやるのは、ある行政領域の末端の下請けしかやっていないのではないかということになります。
 そういう意味では、地方分権というのは、この仕事は誰、この仕事はこっち、というふうにきちんと分けることではないかと私は思っているので、橋本行革は100%評価しますが、残りの話はあまり評価しない。現に、先ほど言ったみたいに、地方の方も、言っている割には国に頼りすぎだと思うし、国の方も、ちゃんと地方に渡したはずなのに、子離れしてない親みたいに、あーだこーだと言ってくる。しかも、間違ったこともよく言ってくるというような気持ちはある。

毎日:もたれ合いの雰囲気が全国で続いている理由は、どういうところだと思いますか。

知事:まず、地方の方から言えば、責任を取りたくないからでしょう。活動領域の中に収めたい仕事は、多い方が気分がいい。それは、一種の支配欲かもしれません。だけど、一方では、その中身については、自信もないし責任は取りたくない。そうすると、国が決めて言ってください、私はその通りやりますから自分に責任ありません、というふうなポジションに自分を置きたくなります。それは、あまり私は好ましくない。決めなければいけないことになっているものは勇気を持って決めればいいし、決めたことは責任を取ればいい。それで、やっていったらいいのだけどというふうには思っていました。

共同通信:お疲れ様でした。改めて、仁坂県政を支えた県職員に対して言葉があれば教えてください。

知事:本当にありがとうございました。結構、自分で客観的に言うのも変ですが、無理して客観的に言うと、私の要求水準は高いから、ついて行くのが大変。それは分かっているけど、県民のためにやらなければいけないことは、これまた分かっているから、職員に頑張ってもらったことがたくさんある。それにもかかわらず、反乱も起きず、よく仕事をしてくれました。県民の方々からの投書を私は全部読んでいて、時々、あの人の受け答えが悪かったとかはあるけど、一般論として、最近、県庁の職員はものすごくよく働いてくれて嬉しいというような投書が、いっぱい来るようになりました。或いは、発言でもそんなことをよく言われます。そういうのは、大変ありがたいことだというふうに思います。
 改めて、職員の皆さんに感謝を申し上げたい。ありがとうございました。これが私の気持ちです。

共同通信:今日という日を迎えるにあたって、家族からはどういうメッセージを受けましたか。

知事:それはありません。家内とは毎日電話していて、今日は病院に行くので何もありませんが、時々、東京へ行って一緒に過ごす時には、よくやっているねと褒めてはくれます。

和歌山放送:退任後ですが、和歌山研究所の話が出ました。知事は、蝶々の採集や研究が趣味ですが、晴れて退任され、プライベートでやってみたいことはありますか。

知事:プライベートでは、ものすごくたくさんあります。仕事が好きだと思うでしょうが本当は嫌いで、遊ぶ方が好きです。家に帰ると怠けていろんなものが溜まってしょうがないタイプで、使命感だけで仕事をしています。今度は、使命感がなくなる、知事としてやらなければいけない仕事が無くなると、やることはものすごくたくさんあり、きっとあまり退屈しません。しかし問題は、たくさんいろんなことやりたいと思ったけど、家内の調子が悪いので、あまり長く連続した時間を何かに充てる、例えば、海外に採集に行くとかはやりにくい。いろいろな制約がありますが、間を見つけて、やることはたくさんあるので、おそらく退屈はしないと思います。

和歌山放送:政策集をいただきましたが、例えば、16年間の政策や取り組んできたことを、講演などの形で発表するとかの予定はありますか。

知事:和歌山放送が呼んでいただければ、喜んでやらせていただきます。お声を掛けていただければ、何でもやります。ちょっとこれはやばい、趣旨がおかしいとか以外の良いと思うものは、いくらでもどんなところでも呼んでいただければ、お話に参上いたします。

紀伊民報:岸本新知事への引き継ぎが月曜日に予定されていて、こういう場合は、退庁される時に引き継がれることが多いと思いますが、なぜ、退庁後の月曜日に設定されたのでしょうか。

知事:それは、まず、彼の任期は17日の土曜日からで、次の日は日曜日です。それで、私が決めたわけではなく、良いのではないかと言っただけですが、せっかく岸本新知事が登庁するから、みんなでワーッとお迎えしないと悪いのではないか。(そうすると)職員に土曜日に来いというのも悪いから、月曜日にして、みんなが出勤している時にワーッとお迎えしてあげようということになった。私は、退庁しているので裏口からコソッと入ってきて、引継式をやります。よく閣議の時は、天皇陛下のところで認証式があった後、役所に来て引継書を交換してさよならとか、夜中に出て行くとか、せいぜい次の日(にすること)が多いのですが、土日があったので、そういうことになっています。ただし、私の理解では、岸本新知事は17日からイベントがあって仕事をしているのではないかと思います。
 一応、引継書を作っています。あまり悪口を言ってはいけないが、形式的なものを作っています。知事室長が責任を持って作ったけど、それだけだとちょっと悪いと思って、これ(政策集)を作った。その他にも、懸案集として、まだ仕掛品でこれから判断を要する、いろいろ困難もありますというようなものを詳しめに作っている。それから、資料集や失敗集を作っている。失敗集も発表しようと言ったのですが、それは止めてくれとみんなに羽交い締めにされたので、新知事にだけです。これは、外側向けの失敗ではなく内側の失敗で、当然、ちゃんと合意をしてやろうと決めて、みんなも納得してやっているのかと思ったら、何か誤解があってやっていなかった事件が、いっぱいあります。何でそんなふうに誤解したかという失敗ですが、そういう失敗も、やっぱり新知事には、こんなことになりますと分かっておいてもらった方がいいと思って作っています。
 それをお渡しして、形式引継書にサインをして、終わりです。

朝日:最後ということですが、もしIRが通っていたら、5期目があったのか。

知事:全然関係ありません。(IRが)あった方が良かったと思いますが、それでも、やっぱりいつまでも(知事を)長々とやるわけにはいきません。(IRは)ゴーサインが出ていたら、ちゃんと滑り出して職員のマシンが動き出しているはずなので、それは別にトップがいなくても良かった。何の関係もありません。

NHK:16年間、お疲れさまでした。冒頭のお話の中で、岸本さんについて、もっと良い県政をやってくれるのではないかというようなお話もありましたが、新しい知事に期待することがありましたら、教えてください。

知事:能力の高い人だと思うので、県民のために、思いっきりいろいろ考えて、実行して、活躍していただければ、一和歌山県民、和歌山市民として幸せである。こういうふうに思っています。期待しています。

NHK:これまでのお話の中で、制度設計の話、新型コロナの話、16年間あっという間だったというお話もありましたが、16年間の中で、思い出深いというか、印象深い仕事や取組がありましたら、教えてください。

知事:毎日あります。毎時間あるといった時もある。だから、これだけというのは一番難しいのですが、一番ショックだったのは、やっぱり紀伊半島大水害です。これは大ショックで、新型コロナよりも大ショックです。本当に大変でした。

NHK:そのあたり、どういうふうな思いで取り組まれていたのか、ちょっと振り返っていただければ。

知事:思いというか、災害が起こった時は、本当は四つだけど三つあって、まず、人命救助をしないといけない。それから、復旧しないといけない。それから、復興しないといけない。全部やらなければいけないのですが、大事なのは、共通項としてスピードです。人命は、スピードが遅かったら、どこかに取り残されている人が死んでしまう。復旧は、すべての活動が止まった状態なので、早く復旧しないといけない。復興は、元通り或いはそれ以上の勢いを取り戻すような新しいことを考えていかないといけない。それを、超スピードでやっていかないといけないので、大変でした。
 片や思いがあって、災害というのは悲惨です。61人の方が亡くなったり行方不明になったりで、今でも残念だと思っています。そういう人にお悔やみを申し上げている暇もなく、とにかく残っている人を救わないといけないので、大騒ぎしていました。

それで、本当は自分に権限がないことにも口を突っ込んで早くやれとか、命令権限がないのに命令してしまう。それは、やっぱり県民のために、すべてのこと早くしないといけないから、大変強引なことをしていました。その時に、咄嗟に思いつきながらいろんなことやっていますが、それらはすべて、今、常備軍化しています。この(政策集の)中に載っていますが、現在では、知事がやれと言わなくても、バッと動き出すようになっているので、昔に比べれば、格段と能力が高まったと思います。

それから、四つめは、事前の災害の予防です。それについても、この26の中に入っていますが、いろいろ対策をしておかないと実際に起こってしまうことがあるので、随分、常備軍化をたくさんしています。
 そういう意味では、前よりは強くなったと思うけど、ものすごいものがやってきたり、或いはこっちが油断していたりすると、ひょっとしたらどこかで綻びが出る可能性がある。それから、すべての対策がまだ全部終わっていないので、これも急いでやらないといけない。

テレビ和歌山:16年間お疲れ様でした。いろいろ今お話されて、最初の談合事件の時の県民のショックや、大水害の時の大変さ、今も続いている新型コロナ、その度に、私の肌感覚や県民の皆さんのお話も含めて、立ち止まったり気落ちしたりして、なかなかこれは立ち上がれないというような声もありました。ですが、その時々で、和歌山県庁や仁坂知事が一生懸命やっているから、県民も一生懸命立ち上がっていこうというような声も、何度も聞いてきました。
 和歌山県はこれからも続くし、県政も続くというようなお話もあって、明日から新知事の元で続いていくと思いますが、一つの節目として、改めて、和歌山県民に、心持ちとして持っておいていただきたいと感じることを、ぜひお願いします。

知事:和歌山県民は素晴らしいです。能力は非常に高いし、頭が良いので、自信を持って、条件は大分良くなっているから、積極的にいろんな行動をしていただければ、きっと報われ、それが積み重なって、和歌山県の力が大きくなっていくのではないかと思います。従って、しらけたり諦めたりすることなく、ぜひ和歌山県のために頑張りましょう。私も、知事は辞めましたが、まだ生きていますから、一県民として頑張ります。
 どうもありがとうございました。

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