知事からのメッセージ 令和4年9月22日

県政の重点と次の県政へのメッセージ

 令和4年9月15日、和歌山県議会で浦口高典議員から表記のような内容の質問がありました。

 (1)人口減少・少子高齢化に対する取り組み

 (2)「健康長寿日本一わかやま」を実現するために必要なこと

 (3)これからの和歌山県のための「経済再生」

の3点につき、どういう県政を展開してきたか、やり残したことはないか、あったら次の県政ではどうしたらよいかを自由に語れという質問でした。

 そこで、少し長めにそれぞれの項目ごとに県政のあらましとそのねらいを説明しました。目標をどのくらい実現したかというと、不満足なところは多々あるが、政策としてまた、やり残したことは全くなくて、それが分っていたら、今すぐ実行していると答えました。次の人は、また、一生懸命考えて、努力して、最高の県政を展開してくれたらよいということです。

 我ながら、なかなかうまく包括的に説明できたと思いますので、上記(1)(2)(3)のそれぞれについて以下に紹介します。

(1)人口減少・少子高齢化に対する取り組み

 少子化・高齢化を伴う人口減少は、地域経済や医療・福祉、教育など様々な分野に悪影響を及ぼし、自治体の存続まで危うくする可能性があります。

 議員のご指摘もありましたが、就任時、国立社会保障・人口問題研究所推計をベースにした本県の推計人口は、2017年に92.8万人程度になるとされておりました。その頃、長計を策定していたわけでございますが、その時の最新データの人口は2005年で103.6万人でありましたので、これは大ショックの数字であります。過去のデータから計量経済学的手法で推計していくものですので、私が知事になった時以前のトレンドがそのまま続くのなら、という数字であります。

 これではならじと長計で色々と政策を考えているのだから、その効果が出るはず、あるいは出てほしいということで推計したのが、5年経過した時の2012年で99.2万人、目標年の2017年で97.5万人という数字であります。実際は、98.8万人と94.8万人でしたので、少しはマシということでありました。こうして人口減少対策を県政の最重要課題として取り組んできたところでございますが、この長計の期間中、少しは人口減を食い止めたかな、でも目標には少し及ばないなというのが正直なところであります。

 次に取り組んだのが、私にとって2回目の長計でございました。この時は足元で1回目よりもっと大変な事態の変化が顕在化しておりました。それは何かというと、高齢人口が長寿命化であまり死ななかったのですが、もうそろそろ限界だから大量に亡くなる人が出てくるということが、計量経済学的トレンド以上に激しくなっていくと予想されたわけでございます。

 人口減少には自然減と社会減がございますが、特に自然減が拡大することになるわけです。出生数が減少していく中で、長寿命化によって死亡者数があまり増加しなかったことで、1995年頃までは自然増となっておりましたけれども、その後、長寿命化の限界が来て死亡者数が急増し始めて、現状では自然減がどんどん加速をしております。人口構造を急に大きく変えるのはなかなか難しいので、当面の自然減は避けられないと考えますが、なんとか減少に歯止めをかけるためには何をしたらいいかというと、少子化対策でございまして、これに懸命に取り組んでまいりました。

 具体的には、県独自の結婚支援や子育て世帯に対する全国トップレベルの経済的支援、待機児童ゼロを目指す保育人材確保、医療体制の整備、教育の充実など、子供を安心して生み育てられる環境づくりを進めてまいりました。また紀州3人っこ施策などお子さんを持っていただくことに直接働きかけるようなこともやってまいりまして、その結果と思いたいですが、合計特殊出生率が徐々に上昇いたしまして、2014年には1.55までいきました。ところがちょっと伸び悩みの上、残念ながらコロナの影響もあって2020年は1.43に留まっているということで、これは満足することはできません。

 社会減については、1990年代前半を除きまして、転出者が転入者を上回り一貫して減少をしています。その対策といたしましては、雇用の場を創出することが何よりも重要でございます。このため、企業誘致や創業支援、県内企業の競争力強化など産業政策を充実させてまいりました。加えて、UIターン就職の促進やまちなかへの大学誘致など若者の県内定着促進に懸命に取り組んできたわけでございます。産業の発展の条件となる高速道路ネットワーク、府県間道路、県内幹線道路ネットワークについてもちゃんと進めないといけません。一時、民主党政権の時に足を引っ張られましたが、ずっと熱心に取り組んでまいりました。

 また、防災、教育、保育、福祉、まちづくり、環境も、実は産業の立地を決める時には大いに効いてくるので、こういうことも一生懸命にやらなければいけないということであります。

 こうした施策を積み重ねてきたことで、企業誘致では15年間で264社、3,410人、県外大学等への進学率も長らく続いた全国ワースト1位からようやく脱却するなど一定の成果が表れています。また、高校生の県内就職率もじわじわと高まっています。

 このような考え方に基づき、2016年には私にとって2回目の長計に取り組んだわけでございます。この時も国立社会保障・人口問題研究所の推計は、高齢者がお亡くなりになる数の増加などを加味しているためか大変厳しく、新長計の目標年度の人口は、85.9万人になってしまうとのことでありました。そうならないよう政策でがんばろうと、2026年に89.4万人で留めようという計画でございます。これについては、まだ結果は出ていませんが、4年が経った2021年の目標について、前回と同じ人口推計の考え方だと、92.8万人の目標でございましたが、実績は91.4万人と食らいついてはいるが不十分だということではないかと思います。

 依然として人口減少が続いており、長計の目標も完全達成というわけにはいかないことから、この流れを大きく変えようといろいろな新しいものに手を出しました。既存の施策に加えて、民間ロケット発射場など新しい投資プロジェクトの誘致に一生懸命に取り組んできたわけでございます。IR誘致もこの投資プロジェクトの一環でございました。IR事業はスケールが大きいので、最終的な試案で一気に4.8万人の新規雇用創出を見込むことができるということがございましたので、私も手を出したわけでございます。将来に、県の原案ではなくて別のやり方で実行してみせるという方もいらっしゃいますから、そのために申し上げますと、仮にこの4.8万人を直近の国立社会保障・人口問題研究所による2030年の本県推計人口に単純に加えて、2015年と比較すると、和歌山県は増減率が全国41位から19位へ一気に上がるということになったわけです。さらにその勢いが仮に乗数効果などで好循環を生み出すことができたら、もう少しよくなったかもしれないということであります。

 人口減少対策は、その効果が表れるまでに長期間を要することから、県民と意識を共有しながら、人口減少に向き合い、これまで積み重ねてきた政策を継続するとともに、地域経済をけん引する新しい投資プロジェクトの発掘・推進にも積極果敢に挑んでいくことが、持続可能で元気のある和歌山県の実現につながると考えております。

(2)『健康長寿日本一わかやま』を実現するために必要なこと

 県民が健康であることは本県にとっても、また豊かな人生を送るために個々人にとっても非常に重要なことでございます。

 この目標を長計でどう表現しようかと考えた時に、目標がせこせこしたものではなくて、高く掲げたほうが良いなと思って少しはできるかと思いながら思い切った表現をしましたが、浦口議員には常に県議会で正しいご指摘を頂いておりまして、現実には、数値の改善が私も大変不満足なので、いつもその都度寿命が縮んでいるという気がいたします。ただ、先ほど議員から、もっとできたのではないかという話がありましたが、実はこれはそうではございませんで、できると思ったことは全部やったというのが、これは私の力がないということを証明していることかもしれませんが、正直なところです。陸奥宗光の言葉で「他策なかりしを信ぜんと欲す」というのがございましたが、まさにその心境であります。

 浦口議員からも貴重なご提言がございました。それを3倍くらいに膨らませて実行したというのもこの中には含まれておりますが、それをご紹介申し上げますと、がん検診や特定健診の奨励など、従来の施策に加え、楽しく運動習慣を身に付けてもらう「健康づくり運動ポイント事業」、ラジオ体操、検診受診率向上や草の根的に健康づくりを推進する「健康推進員制度」の創設、働く世代の健康づくりを推進する「わかやま健康推進事業所認定制度」、がんやたばこを始めとした「学校等での健康教育等の啓発」、さらには県民の健康意識の高揚を図る「わかやま健康と食のフェスタ」の開催など、いっぱい取り組んできたところでございます。

 また、保健・医療提供体制を充実することが重要だと考えまして、救急医療やがん医療の充実など命を守る施策にも積極的に取り組んでまいりました。取り組んでなかったら、おそらくもっと事態は悪くなっていると思いますが、結果が日本一とはほど遠いのは事実でございますので、いつもこれを気に病んでおりまして、議会ごとに指摘されるので寿命が縮んでいるということでございます。

 ただデータを詳細に見ると担当職員も言い分があるそうで、それをご紹介しながら政策の説明をさせていただきます。議員配付の資料を見ると、要支援1から要介護5までを不健康期間としたもので、男女とも低い状況でございますけれども、平成17年から令和2年への延びをみると、男性がプラス2.94年で13位、女性がプラス2.02年で16位となっており、男女ともに伸び率では上位となっている。また、どちらかというと、要介護2から要介護5までを不健康期間とすることが世の中では一般的でありまして、その場合、本県は男性が36位、女性が35位となり、議員の資料よりも良い順位となるわけであります。ただ、本県における要支援及び要介護1の認定人数が、全国平均より多いことは事実でございまして、こうした人が健康を維持し、介護度が進まないようにすることも重要な課題であります。そのため、県としては、この課題に最近は重点的に取り組んでおりまして、介護予防を推進するため、和歌山大学と共同で開発した高齢者向け運動指導プログラム「わかやまシニアエクササイズ」の各市町村での普及を支援するとともに、自立につながる適切なプランを検討するための「地域ケア個別会議」の実施を、全ての市町村に拡大させ、ケアプランに適切なリハビリテーションを反映させるなどの「自立支援」の取組を進めてきております。その結果、全国平均の要支援及び要介護認定率が上昇している中、本県は、ほぼ横ばいでございまして、今後の状況によっては、健康寿命の順位がより改善されるということも期待できます。

 なお、健康寿命の別の指標である、国民生活基礎調査における「日常生活に制限のない期間」でもですね、平成28年は男性43位、女性32位でありましたが、令和元年では男性32位、女性31位と男女ともに改善しているところでございます。

 また、一般社団法人日本リカバリー協会が行った「元気な人」が多い都道府県ランキングで、男女とも和歌山県が日本一となっております。これは、厚生労働省のストレスチェック制度の健康状態項目を基にして、ストレスが少なく元気だと感じている人の割合が一番高いのは和歌山県という調査結果であります。人生元気で伸び伸び楽しく暮らすことが何よりであり、そこで日本一というのは、和歌山県として大いに誇ってよいことであるという考え方もあります。ただし、これは主観でありまして、客観的によろしくない状態の前で主観があんまり楽観的すぎると改善しようという気にならないので、これがどうかという議論も一方ではあると思います。

 次の県政を担う者への具体的なアドバイスと言われますけれども、ご存じのように健康長寿である長野県においても約半世紀をかけて健康長寿日本一を実現したものでございます。和歌山県で私がリードしてやったことというのは、あったら直ちに実行したものでありますので、後世やったらどうだということは何一つ今はありません。あったら今やっております。したがって「他策なかりしを信ぜんと欲す」の心境であるということは今述べたとおりでございます。ただ長野県の例にも明らかなように、和歌山県の目標実現には、まだまだ遠い状況でございますが、しかし、子供の時から老年期に至るまで、また健康な時から健康づくりの意識を高めてもらうための健康教育が大切と考えております。そして県民自ら主体的に健康づくりに取り組んでもらえるような仕組みづくりが重要と考えております。加えて、県民に身近な市町村とともに、民間の事業者も参加して「オール和歌山」で取り組む必要があり、長い時間がかかるかもしれないが、道は険しいが一歩一歩着実に取り組んでいくしかないと考えております。

(3)これからの和歌山県のための「経済再生」について

 経済再生はどうしたらいいかということでございますが、大きく項目を言うと、経済再生というのは経済活動でございますので、産業活動の前提となる条件となる環境条件を整えるというのが大事で、その環境条件を整えた上で企業の方々に精一杯頑張ってもらうと、もちろん新しい血も導入しながら頑張ってもらうということがその次で、それから3番目に時代がどんどん変わっていって、新しい動きも出てくるので、それには、それをチャンスととらえて、適切な手を打っていく。全てを、やっぱりみんな論理的な話なので、きちんと理詰めで考えて説明をしながらやっていくということではないか、そんなふうに思います。

 経済再生のためには、1番目に産業活動の環境条件ということを言いました。先ほどもちょっと申し上げましたが、例えば、私が知事になったときの状況でいうと、こんな他県より劣る高速道路とか、府県間道路とか、県内の幹線道路のネットワークとか、都市計画道路とか、こんなもんで民間の方に、他県より負けないように競争しようと言われても、絶対に負けるに決まってるじゃないかというふうに思いました。それが、コンクリートから人へのキャンペーンに私は敢然として逆らった理由であります。人が競争に負けて生きていけなくなる和歌山県で、コンクリートから人へと言われても、それはどうしようもないじゃないかということでございます。あの時の動きで5年は遅れましたけれども、その後、様々な方々のご努力で今だいぶ、人並みになってきておりますので、そういう意味では環境はだいぶ整ってきたなということであります。最近、企業立地なんかもだいぶ引き合いが出てきておりますが、これは明らかにそういうところが背景にあるということだと思います。

 しかし、環境条件といっても、交通ネットワークとか工業用水といった従来型の産業に近いところのインフラだけではございませんで、先ほどもちょっと申し上げましたが、医療や福祉、保育所の充実、教育水準、そういうものが良いか悪いか、そういう生活環境も総合的に見られます。したがってそこはきちんとしておかないと、産業活動の環境条件を整えたことにはならないというのが、今の時代の流れだと考えます。

 その中には、例えば、若者が集えるような中心市街地のあるまちづくりなんていうのも、ものすごく重要なファクターになります。私がかつて、農地をどんどん転用して都市が拡がり、市街地が拡がって、中心がなくなったら駄目じゃないか、というようなことをかなり強引に主張したのも、そういう背景であります。

 こうやって環境条件を良くした中で、県内の企業家の方々に頑張っていただき、また、企業誘致を積極的に行うことで、全体としてうまくいくように一生懸命やってまいりました。

 一方、例えば私が登場する前提になっておりました、背景になっておりました官製談合のような、見返りモデルですね、こういうものを排することは一生懸命やりました。こういうのがありますと、その人だけはいいんですけど、他の全員が、しらけてやる気をなくすということになると力が出ませんので、そういうことも、環境条件を整えて企業に頑張ってもらえる要件の一つだというふうに思います。


 2番目に県内企業には、技術開発とか販売促進を支援いたしまして、人材確保にも力を入れてまいりました。加えて、最近特に問題になっておりますが、価格転嫁が進まない等々、あるいはもっと、取引条件が無茶苦茶で、というようなことになったら、我が県の中小企業はひどい目に遭いますから、そういうことについての代弁をしながら戦うということも県の仕事だと考えてやってまいりました。

 幸いなことに、最近特に目立つのは、若い起業家とか、あるいは革新的な経営者とか、そういう方が色んな分野でたくさん出てまいりました。最近特に目につくのは農業の分野で、あるいは農産品加工業の分野で、あるいはサービスの分野でそういう人たちがいっぱい出てきて、これは楽しみだなあというふうに思いますし、昔からの老舗企業においても、色々支援策なんかも活用してもらいながら、海外進出を図るとか、あるいは新製品を開発するとか、経営をどんどん広げるとか、全国展開するとか、積極的に取り組んでくれるようになってきたのは本当にうれしい限りだと思います。

 新しい産業を創っていくためには、企業誘致も大切でございまして、製造業も結構数は稼いだんですが、これからの産業ということで、ICT企業の誘致がようやく本格的に展開できるようになってまいりました。また、パナソニックエナジーのリチウムイオン電池の量産に向けた増設とか、それから各地で今続々と出来ておるバイオマス発電も、だんだん大きめのものがどんどん揃ってまいりました。ロケット発射場の誘致を契機に宇宙産業の集積も、これから目指さなきゃいかんということだろうと思います。

 ENEOSについては、脱石油の中で、世界をリードするエネルギー企業として脱皮、飛躍していってもらわないといかんわけですが、そのための事業を和歌山でやってくださいと言って、一生懸命働きかけているところであります。

 観光産業においては、世界的な評価を、これは企みを色々やったんですが、高めてまいりました。また、特色ある農林水産業も振興してきたつもりでございます。


 3番目として、今後、コロナの中で起きた新しい動きに対して、これはピンチでもありますが、チャンスでもあるわけでございますので、新しい動きを見極めて、対応していかないかんと考えております。その第1は、テレワーク、あるいは都会生活にちょっともう限界を感じた等という人たちが随分出てきておりますので、ワーケーションも含めて、移住定住政策も活用しながら、新たな人とか企業を和歌山に連れてくる、そういうことが大事だと思います。

 第2に、コロナで製造のラインがズタズタになったというところもあって、ある程度、国内回帰の流れもございますので、パナソニックエナジー株式会社の取組もそうなんですが、それにとどまらず、他にもないかということは一所懸命探していかないといかんというふうに思います。

 第3は、コロナで動けないからオンラインだ、ということもその一環ですが、DXであります。これは産業のDXも大事だし、それから行政のDXも大事だし、それからDXそのものを業としている人たちも大いに入ってもらうように頑張っていかないといかん、ということだというふうに思います。

 第4に、脱炭素化への対応ということが、あらゆる分野で起こってくるはずなので、これをどうやって産業で取り上げてどうのこうのというようなことも、いつも我々は考えていかないといけないんじゃないかというふうに思います。

 未来に向けて、産業界の課題を洗い出すとともに、常に新しい情報、今新しい項目4つ申し上げましたが、そういうことのチャンスなんかも積極的に対応して、和歌山を元気にするために頑張り続けないといけないんじゃないか、そんなふうに考えております。

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