知事からのメッセージ 令和4年9月20日

令和4年9月20日のメッセージ

エリザベス女王の死去と日本の皇室

 長く王位にあって、英国民に慕われた英国のエリザベスII世女王が9月8日に亡くなられました。日本は総じて親英的な国柄ですが、そうであるなしにかかわらず、エリザベス女王は、世界中で人気があり、存在感の大きかった方だと思います。その女王でも、ダイアナ元妃の事故死の対応では英国民の中でも批判が高まった時もあり、身内に多くのスキャンダルを抱えて、心の休まらぬ日々もあったことと思います。その中でも、ご自身はきちんと身を律され、立憲民主主義国家の元首を間違いなく務められましたし、若干おちゃめな性格が多くの人に愛されたと思います。世界中でその死を悼み、その葬儀には世界中の貴顕も参列されたと報じられています。わが日本の天皇皇后両陛下もご出席になられましたが、昭和天皇から続く、わが皇室とエリザベス女王とのご関係を考えるとその流れは誠に自然だと思います。
 今や世界中の人々がエリザベス女王がお亡くなりになったことを悼み、好感をもってその人生と英国王室を評価しています。

 しかし、私は英国王室にもまして、もっと素晴らしいものが日本の皇室であると思います。あれだけ英国王室を賛美するマスコミや週刊誌ジャーナリズムが皇后さまのご健康や秋篠宮家のことなど様々に書き立てるにつけ、私はいつも眉をひそめています。私は、これまでの職業柄や今まで知ることのできた数々の知識から、外国の国家元首や王室のことなども多少は分かる立場にありましたが、それらを踏まえても日本の皇室の素晴らしさをいつも感じ、つくづく日本に生まれてよかったと思っています。国家は品格がないと尊敬されません。その国家を代表するのは国家元首です。英国のエリザベス女王も品格のある国家元首でしたが、日本の歴代の天皇陛下も本当に素晴らしい方々で、その結果、日本の品格につながるところ大と思います。

 私は現職の前にブルネイ駐箚大使を務めていましたが、その際ブルネイの皇太子殿下のご結婚式があり、当時皇太子殿下であられた天皇陛下が国を代表して参列されました。その時私は大使としてお仕えしましたが、陛下のお人柄に感激のし通しでした。なかでも陛下のご帰国の際に感じた感動と日本人としての幸せは忘れられません。
 私は昨年ブルネイ時代に採集した蝶の記録を「ブルネイの蝶」(NRC出版)として上梓しましたが、必ずしも蝶マニアでない読者のための工夫として様々な話題を提供したコラムを所々に挿入しました。その中の1つがブルネイへの訪問者というシリーズで、その最後のコラムが天皇陛下のブルネイへのご訪問です。そこで私は上記陛下が私はもちろんのこと、多くのブルネイ人にお与えになった感動を書き記しました。

 ブルネイへのご訪問 天皇陛下
 筆者のブルネイ在住の日々(2003年-2006年)は、もちろん日本大使としての公務の日々でもある。たくさんの事件があり、苦労があり、楽しいこともあったが、なんといってもその白眉は、天皇陛下が、当時は皇太子殿下として、ブルネイの皇太子の御成婚式に天皇陛下の御名代として御出席になるため、ブルネイを御訪問されたことであった。
 ブルネイ王室の婚礼の儀式は長いので、天皇陛下は3日間にわたりブルネイに御滞在になり、その間お側にいて、ご公務の補弼をさせていただいたことは、筆者にとって最大の宝である。申すまでもなく、陛下は婚礼の式典の各局面において、それは素晴らしい皇室外交を展開された。日本人の一人として本当に誇らしく、有り難いことだと思えた。また、婚礼の式典の合間の時間には、「ブルネイ博物館」などブルネイの各地をご案内し、テニスもご一緒させていただいたが、そのすべての局面で、陛下の自然科学から歴史、文化にわたる該博なご学識をお聞きすることができ、また、誰にでも優しく気を遣われるお心に接することができ、大変幸せであった。3日間のご滞在期間は瞬く間に過ぎ、ご帰国の運びとなって、陛下のお車は空港に着かれたのであるが、車から降りられた陛下は、接遇担当の大臣には当然のこととして、お世話をしてくれたブルネイ政府の役人一人ひとりに、さらには護衛のオートバイの警官の一人ひとりに丁寧に御礼を言われてから機上の人となられた。最高位にある人が、このようにどんな人々にもねぎらいをかけられ、優しさを示されたのを見るにつけ、多くの国の国家や政府の高位の人々と交わる機会のあった筆者としては、そういう皇室を奉じている日本という国を心から誇りとすることができ、思わず感涙を禁じ得なかった。特別機がブルネイ空港を離陸する時、それまでの曇り空から太陽の光が降り注ぎ、天も我が陛下を嘉したもうかとの感慨に浸ったのがつい昨日のことのようである。
 そして、令和の御代となり、皇室において天皇陛下ご即位の数々の儀式が行われたが、即位礼正殿の儀にブルネイのボルキア国王が参列され、これに続く饗宴の儀において、陛下の隣の席で和やかに陛下とお話になっているのを報道で見た時、あのブルネイの時代と、そのブルネイを彩ってくれた美しい蝶たちが鮮やかに脳裏に蘇ってきた。

 エリザベス女王が英国の品格を代表されたように、陛下をはじめ我が皇室は日本の品格を表してくださっていると私は思います。国の品格を世界の人が感じる時、国家元首の品格がものを言います。そして都道府県はどうでしょう。我が愛する和歌山県は品格ある県と人々に思ってもらいたい。前県知事の官製談合による逮捕で評判が地に落ちたところから登場した私にとってそれは切実な願いでありました。そのためにこの16年間、人に後ろ指をさされることがないように懸命に務め、身を律してまいりました。なんでも率直すぎる物言いをし、もとより粗にして野なる私がその任を全うできたかどうか自信はありませんが、和歌山県の品格を高めようと努力した知事がいたことを後世の人が覚えていてくれたら幸いです。また、後に続く知事も、和歌山県の品格を汚すことなく、さらに高めるよう心してもらいたいと思います。

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