知事からのメッセージ 令和2年5月22日
知事からのメッセージを紹介します。
令和2年5月22日のメッセージ
新型コロナウィルス感染症対策(その28) - 緊急事態宣言の変更-
5月21日国の緊急事態宣言の内容が変わり、関西の3府県が特定警戒都道府県から外れました。国からも改めて各県への要請があり、また、この3府県では、これまでの緊急事態措置の内容を随分緩和しました。そこで、和歌山県では、5月21日和歌山県新型コロナウィルス感染症対策本部会議を開いて、5月23日からの和歌山県の対応を決定し、5月22日記者会見で、私からこれを発表いたしました。その中味は次のとおりです。ほぼそのままご紹介します。
『まず、基本的な考え方は、前回と、つまり1週間前と変わっておりません。すなわち、見直し、これはどんどん緩くしていっているわけですが、見直しの基本的な考え方は、次の三つであります。(フリップ1)
第1に、先週からすでに、不要不急の外出は自粛してください、とは求めませんと言ってあります。代わりに、基本的な考え方として、県民全体の安全な生活、安全な外出を目指しましょうというふうに呼びかけようとしております。
もう一つは、県だけで完結できるところは、和歌山県は少ないので、他府県等への配慮がやっぱり必要です。隣がどんなふうになっているかとかも考えながら、見直しをしていかないといけないということであります。
それから、急にやると、いろいろ混乱も起こるし、守るべきところが間に合わないということになるので、段階的にやりましょうということで考えております。
本日の発表では、この考え方に立って、次のようにさせていただきたいと思います。(フリップ2)
これは明日の午前0時から、こういうふうにお願いしますということです。
まず、安全な生活、安全な外出ということで、密接はダメと書いております。3密は、書いておりませんが、もっと駄目です。3密でないからいいだろうという考え方は、もう止めにしようと。政府がいくら言おうと、止めにしようと。密接があったら、やっぱりうつるから、うつらないように気をつけましょう。これが安全な生活ではないか、そういうふうには思っております。
体調がすぐれない人は、出勤や外出、もちろん通学もそうですが、みんな止めていただいて、風邪かなという方は、クリニックへ行ってもらえばいい。クリニックへ行っていただければいいというのが和歌山モデルです。そのあとは、もしコロナだったら、優秀な先生方、クリニックの先生方も含めて、和歌山中の医療機関が、きちんと手当できるように体制ができていますから、安心して行ってくださいということです。
次に、接待を伴う飲食店・サービスには、行かないように自粛して欲しい。これは継続したいと思います。これは、政府の対処方針もそのようになっておりますし、我々も、幾ら区域を外れたからといって、これは一番うつりやすい所なので、やっぱり自粛した方がいい。段階的にやるにしても、ここはまだ、自粛してもらおうと思っております。
そのほかでは、多くの業種・施設で、休業の解除をいたします。これは、さっき、徐々にやって行こうという考え方をお示ししましたので、しかも安全な生活、安全な外出が目的ですから、ガイドラインに沿って、徐々に営業してもらうということであります。
今回もまた、いくつかの業種、いくつかの施設、これを休業要請から外します。基本的には、安全なというところと、他県に合わせたというところがあるのですが、大阪と全く一緒ということではありません。例えば、大阪府が新しい休業要請システムを作るわけですが、それと同じにしておかないと人の移動が起こるなというのと、これはこちらだけで考えてもいいかなあというふうに思うところと両方あるので、こちらだけで考えたらいいと思うところは、安全な生活、安全な外出の観点から、やっぱり、ちょっと今はまだ早いんじゃないかっていうところは、休業要請を続けたいと思います。
そこで、もうどんどん減ってきましたが、休業要請を続けるところは、以下の通りです。(フリップ3)
我々がたくさん休業要請をお願いした中で、残るのは、キャバレー、ナイトクラブ、ダンスホール、スナック、バー、パブ、性風俗店、デリヘル、ライブハウスです。最後のライブハウスを除くと、キャバレー、パブなどと書いてありますが、全て接待を伴うサービスをするところということです。つまり、人と密接にくっつくというところは、やっぱり、一番最後まで休業要請をしておく必要があるなということであります。
ライブハウスは、映画館とか劇場と同じようなところがあるのですが、大阪でかなり大々的にクラスターが起こったということで、大阪は最後まで閉じています。それに加えて、これがもし、例えばガイドラインを守っていただいて、営業ができる業種かというと、多分できないのじゃないかなと思います。そこで、休業要請をしておこうと思います。要請期限は5月31日の24時までということです。
先ほどのところ(フリップ2)に戻りまして、
さらにお願いをすべきは、病院や集団生活を行っている施設は細心の注意をして欲しい。これが、うつった時に一番危ないところです。病院の院内感染とか高齢者福祉施設、或いは障害者福祉施設、そういうところでうつったら、多くの人がかかるし、かかるだけじゃなくて、身体的な弱者がそこにいらっしゃるわけですからとても危ないので、ここはもう細心の注意をずっと払って欲しいと思っております。言っていることは、前と一緒であります。
それから、他府県との関係。これがちょっと難しくて、最後まで悩んだところです。政府の基本的な考え方として、緊急事態宣言の解除区域が39県から42県になりましたが、やっぱり他府県とは、不要不急の外出の往来は避けようというのが残っているので、大阪なんかとも相談の上、他府県等へ遊びに行かないこと、それから他府県等からの来客の受け入れは自粛してもらうこと、これはちょっと辛いところですけど、残しました。大阪も、表現は違いますが、同じように言ってくれているはずであります。そんなことで、今回の発表に含めております。
それに対して、そんなにいっぱい外して大丈夫かという話が出てくると思います。それに対しては、基本的な考え方として、実は、この感染症の拡大防止というのは、こういうふうに世の中できてるんです。(フリップ4)
すなわち、医療保健行政の働きと、それから行動・営業の自粛、これの足し算です。和歌山県は、医療保健行政の働きはきちっとしているし、大体の地方の県は、きちんとされてるんです。しかし、そういうことができていない大都会から往来によって、たくさんの人が入ってくると、とてもじゃないが、一生懸命対応していても、キャパを超えてしまうという恐れがあるので、全国的に行動・営業の自粛が行われたということであります。
大都会なんかでも、随分感染者が減ってきました。これは行動・営業の自粛で、国民が本当に努力をされた、理性的な自粛の努力をされた結果だと私は思っています。国民に助けられて、我々行政は、何とか息をつくことができた。和歌山県は別に息をつくことができないことにはなっていませんでしたけれど、それでも大分楽になったわけです。
従って、これからは、医療保健行政で、これまで以上に我々もきちっとやっていきますから、体制もさらに強化されていますので、行動・営業の自粛については、あまりにも神経質にやっていただいた結果、経済がぐちゃぐちゃということにならないようにしてもらった方がいい、これが基本的な考え方だと思います。
よく、例えば、県外の車を見たら、ものすごく危ない、すぐうつっちゃってすぐ死んじゃうというような気持ちで、いろいろ言ってくださる方もいます。今まではかなり強めに、行動の自粛、或いは営業の自粛を言っていましたから、ルールとしてもそういうふうにしていました。県外との関係でいうと、依然として遊びには行かない、遊びのお客様をお迎えしないっていうのは残しますけれども、1台車が走っていたからといって、ものすごく危ないというふうに思うのは、ちょっとオーバーかなという気持ちでいいんじゃないかと思います。それはなぜかというと、行政の方で、今まで以上に頑張って、県民に負担をかけないようにしますから、その全体の足し算で対応していきましょうと、これが私の申し上げたいところでございます。
例えば、交通事故をとってみると、交通事故もどこで起こるかわからないので見えない危機なんです。今年1月から4月まで、和歌山県で交通事故が何件起こっているかというと、人身事故は600件ぐらいなのです。1月から4月までの間に、コロナの患者が何人出たかというと63人。ですから10倍ぐらいの危機が交通事故においてあるわけです。だけど、じゃあ、車を全部止めろとか、車が通っていたら危ないと我々は言いません。それはなぜかというと、警察の力がちゃんとあり、市民がルールを守って動いているからです。それでも事故は起こるけれども、全部止めろということにはならない。そんなふうにだんだん考えていかないと、我々の社会生活が維持できなくて経済から死んでいって、結局は、もっと多くの人が、別の原因で死ぬ可能性だってあるということを、だんだん思うようにしましょうと思っております。
今、交通事故の話しをしましたが、4月だけをとりますと、コロナの患者さんが40人内外いたのです。一方、交通事故は120件足らずです。交通事故のレベルの3分の1ぐらいに近づいたのです。さっき、交通事故も起こりますって言ったけど、暴走族が暴れ回るような世界だったら、それはやっぱり道路も止めて、そういう人が入ってこないようにしないといけないということも必要です。ですから、状況を見て、今のコロナの状況はどうだということを思いながら、経済活動も徐々に再開していくということが大事なんじゃないかと私は思っております。
なお、県民の皆さんには、例えば今交通事故でいうと、暴走族が暴れ回るような状態には規制が強化されるように、ちゃんとこの規制レベルの引き上げ基準というのも発表しています。これは、新規陽性患者が、和歌山県でいうと5人以上ずっと続くようだったら、ちょっと気をつけないといけない。これはもう一番下の病床使用率のところに繋がっていくのですが、和歌山県はそんなに大きな県じゃありませんから、気を付けないといけません。今まで、発生した患者さんは全員、手厚い看護のできる病床に入っていただいてきました。しかし、それがいっぱいになるようだとあんまりよろしくない。東京や大阪は、それがもうできなくなっている。今それが回復しつつありますが、そういう事態になったら困るということで、ならないようにずっとし続けないといけません。5人以上ずっと続いたら、それはいつかいっぱいになります。そういうことを、我々は考えて、危険信号が出たら、また県民の皆さんに頭を下げてお願いをして、自粛をしてもらわないといけないということになると思います。
それから、近隣府県のことも気になります。我々が5人っていうのは、例えば人口比で一番大きいところ、本当を言うと大阪ですが、大阪の人口は和歌山県の8倍もあります。その大阪で40人以上の患者さんが出た。或いは、奈良県みたいなところでも、40人以上の患者がわっと出ているという状況だったら、これはちょっとまずいなということになりますので、この規制というか自粛要請レベルを上げていかないといけないというふうに、我々は、県民の皆さんに初めから申し上げて、こうならない限り、我々は必死で頑張りますから、だんだんと市民生活を回復して、それで経済的にも成り立つような、仕組みを作っていきましょうとこういうことを申し上げたいと思っているわけです。
何度も言いますけれども、今までこの強い自粛の期間中でも、頑張って、社会生活を支えてくれている人がいるのです。公務員はもちろんそうですが、例えば、医療関係者は全員そうだし、それから、例えば、スーパーの店員さんとか、或いは運送の方とか、もうありとあらゆるところで、仕事を止められないような人がたくさんいましたが、そういう人は、コロナが怖いなと思いながらも頑張ってくださったわけです。そういう方々の努力、それから、家にとどまってくださった方の努力によって、ここまで来たわけで、次は、一番初めに申しましたように、私ども行政が頑張って、コロナが発生しても封じ込めますから、先ほど発表したレベルで皆さんよろしくお願いします。また、そもそも段階的ですから、事態の変化を見て、さらに緩めていくということはありうるだろうというふうに思っております。これから毎週、事態の推移を見て段階的にさらに緩めていくことになろうと思います。』
これに関して、本日5月22日NHKの朝の7時のニュースを見ておりましたら、ノーベル賞学者山中伸弥さんがコロナについて語っていました。山中さんの立論は、コロナはどうしても0にはできないので、出たら、検査をして隔離をどんどんやっていきながら、他の人は気を付けながら生活をするしかない。もし1人でも出てはいけないということにすると、まず国民がよく言われているように80%人との接触を絶つという生活をずっと続けなければならない。これも現実的でないというようなお話をしておられました。私も特に2つの点でまったく賛成です。
1つは、当局の検査隔離という機能が大変大事だということです。これがうまくいかなくなると、感染爆発が起こるわけで、そうなると、国民に行動自粛で地方保健行政の失敗を助けてもらわなければならない。これが今回起こったことです。
2つめは、国民生活がいつまでも80%接触カットということを続けていけば、もちろん経済は死んでいきますし、国民の生活自体も壊れてくるでしょう。子供達の教育も永久にできません。従って、リスクを0にすることに狂奔してはいけないということです。その代わり、ある程度の所までは、保健医療行政当局の地方官庁が責任を持って、感染拡大を止めるということでしょう。実は私も知事なので責任重大で大変なのですが、自らの能力欠如や失敗を、国民一般に転嫁するよりは良心が痛みません。
考えてみれば実は日本は国民が自粛を始めたところ、1ヶ月で発症者が急減したのです。一方、欧米は科学技術も医療も先進国のはずなのに、かつ、戒厳令みたいな外出規制と営業停止を課しているのに、あまり新規患者発生が止まりません。
これはどういうことでしょうか。私はふと思いついて、ある仮説を立てて、その道の専門家を探し出して聞いてみました。そしたらやはり、そうでした。日本と欧米の違いは、感染症法による隔離権限と、その機構である保健所の有無であります。(ざっくり言っていますので、ドイツなどには保健所という名の機関はありますが、機能が日本のそれと同一ではありません。)日本は、まがりなりにもその装置が機能しているので、人々が自粛をして、行動を抑制した途端、隔離による効果が一挙に出てくるのに対して、欧米は発症したら病院での手当しかないので、患者はどんどん増え、病院もパンクして人が死ぬということになるというわけです。マスコミでよくドイツはえらいと言って得々としている人がいますが、患者数も死者数も人口比で日本の15倍もある国がどうしてえらいのでしょうか。従って、日本は感染症法の隔離と保健所の機能というこの機能をきちんと発揮させておけば、いつもいつも国民の行動抑制にだけ頼らなくても、乗り切れると私は思います。
ところが、そのことに気付いていないか、その失敗を言いたくなかった大都市のトップや政府の専門家が国民の行動の抑制だけで勝負しようとして行われたのが緊急事態宣言だったと私は思います。
ただ、あの時点では、実際大都市の保健行政はパンクしていたし、和歌山県のような所もそうそう危なくなる可能性もあったわけですから、あの国民の一丸となった行動抑制自粛には感謝をしなければならないとも思います。しかし大事なことは、こうして国民に救われて、感染者が減って余裕ができた今こそ、大都市を中心とする保健当局と行政は、今こそ責任を持って、その機能を再建しなければならないし、和歌山県のようなそれが破綻しなかった地方も、さらに次に備えてその能力を高めておかなければならないのであります。
もし、これが忘れられているとすると、日本はまたコロナの大流行に襲われ、欧米のように、大変なことになる心配もあります。
政府におられる専門家の方々こそ、この事をきちんと進言すべきでありましょう。しかし、ひょっとしたら、このような方々は、あまりにも伝統的で、あまりにも地味で、そしてあまりにも日本固有の(近隣諸国には教えています。)制度に気がつかず、欧米の感染症対策、人間の接触抑制という手法しか頭に浮かばないのかもしれません。私が教えを乞うたある先生が次のように言っておられました。
「日本のシステムは、結核への対応から作られました。多分日本の大学での研究や公衆衛生を勉強した研究者には理解できないと思います。何しろ日本独特のものですから。全国の医学部に公衆衛生学講座がない時代に作られています。それを指導してきたのは大学ではなく、むしろそこと対立してきた感じもします。」
足許の現場に真実がある。何か「下町ロケット」とか「プロジェクトX」を見ているような感じがします。それにしても、これを見抜いたような発言をされる山中先生はやっぱり偉いと思います。