知事からのメッセージ 令和2年5月3日

知事からのメッセージを紹介します。

令和2年5月3日のメッセージ

新型コロナウィルス感染症対策(その22) 全国初の県民に対する独自の救済策  

 和歌山県は、5月1日全国トップを切って県民に対する独自の救済策を発表しました。とにかく速いスピードでコロナで苦境にある県民を助けなければという気持ちで、スピードを最大限に上げて対策を考え、実行します。
 コロナによる被害を受けている人々に対する救済については、5月1日に政府の補正予算案が通り、政府の様々な救済メニューがこれからどんどん使えるようになりますし、和歌山県は、もう2月1日からいつでも使えるような中小企業の救済低利融資制度を作ってあって、もともと使える県社会福祉協議会の個人に対する救済貸付と並んで、すぐに大変という方々には使っていただけるようにしていました。
 しかし、世の中では変な所にばかり焦点があたってしまって、多くの県で休業補償金がひねり出されて、その言葉をそのまま使うのはさすがに法律的にはどうかということでしょうか、休業に伴う協力金という名前で支出されることになるようです。
 新型コロナ特措法は、感染防止のために特に必要だと県知事が判断したら、法律で定める特にリスクの高い業種に限って休業の要請ができることになっています。たいていの県で、夜の接待を伴う接客業とか、パチンコ店などの遊興施設とかを指定して休業要請をしたのですが、真っ先に休業要請を出した小池東京都知事が、どういう意図かは存じませんが、要請業種に対して補償金を出すべきだとおっしゃったものだから、世の中は補償金を出すか出さないかの大議論になり、いくつかの県を除いて、休業要請を出した多くの県で、県の財政力を反映して、10万円から100万円までの「協力金」又は「補償金」を出すことにしています。この点については、さすがに小池知事の発信力が大きいためか、マスコミが補償金を出すのが当たり前というような報道をしているため、要請業種にだけ補償金を出すのはおかしいと言っている上記いくつかの県の中の1つ和歌山県は肩身のせまい思いをしてきました。もっと言うと世の中の人の救済を求める心が全部この補償金に向いてしまった感があります。よく考えると、この問題は人々の心を惑わす3つの問題をはらんでいます。

 第1は、補償金を払うのが正義だと人々が思い込んだこと。

 第2は、法律上の営業自粛要請業種のみに対する補償金なのに、すべて業績が悪い人に対する補償金のように人々が信じ込んだこと。

 第3は、人々の救済のためには、この補償金しかないのだと人々が信じ込んだこと。

 私はいずれも間違いだと思いますが、いくら論理立てて説明しても、報道の影響力が強いので、大変苦労をしましたし、今後も苦労するかもしれません。

 第1に休業要請は感染防止上本当に必要だから知事が出すのであって、補償金にはなじみません。道を作るからどうしても立ち退いてもらう必要があるので払うような補償金とは断然違うものだと思いますし、世界各国コロナで大変なことになっていますが、各国とも国または地方公共団体が命令又は要請で営業や行動の制限をしていますが、それに補償を出すなんて聞いたことがありません。コロナが大変な時に最も感染を広げそうな業種の店が、やめてやるから協力金よこせと、言うようなことを正当化するような報道をしている日本という国は何という甘い国なのでしょうか。国の尊厳をおとしめることだと私は思います。営業の自粛要請は台風などの自然災害の際の避難指示や通行止めのようなものだと思います。そういう時にその関係者に補償金を出すでしょうか。さらに言えば営業自粛要請業種以外にもコロナで一時的な外出自粛、訪店自粛を各首長が言っている中で営業が無茶苦茶になって自粛休業している店もあるし、営業していても売り上げはいつもの10%というような店がたくさんあると思いますが、そちらには一銭もあげないで、協力要請をした業種、施設だけに「協力金」というのは不公平だと多くの人は思わないのでしょうか。

 以上のことから、営業自粛要請をした業種だけに対して補償金とか協力金とかのお金を県が差し上げることは致しません。
 しかし、そう言うと県内の事業者からも驚くべき反応がありました。それが第2の点で、新聞などで報じられている補償金を和歌山県知事は出さないと言っているが、困っている人々を救おうともしないのか、という意見がいっぱい来ました。私は毎日投書を皆見ていますが、例えばこんなものがあります。「私はコロナで客もほとんどなくなり、店をしめているラーメン店であるが、そういう休業をしている人に知事は一銭も補償を出さないのか。人でなし!休業補償をせよ!」といったものです。それに対して私からは「報道などで議論になっている休業補償というのは、あなたの店の隣のナイトクラブには何10万円か出すが、休業要請をしていないラーメン店のあなたには一銭も出さないということですよ。他県でやっているのはそういうことですよ。そんな不正義なことはできないので、和歌山県はすべての人を対象として、救済を考えるのです。」といった返事を返して言います。報道の力は大きいので、私なんかが個別にお返事を出して一々誤解をとくよりも、もうちょっと報道で休業補償の意味を正しく報じてくれたらとどんなにか思ったことでしょう。

 さらに第3の点になるのですが、和歌山県は、休業を余儀なくされて困っている人に何もしないのかということを、何故かすぐ言われてしまうのです。日本の報道は議論のあるところに焦点が当たるので、10万円の給付と、この補償金ばかりが救済のように皆が思い込んでいるように思います。考えてみると、お金持ちの東京都でも休業要請企業に100万円が限度ですから、従業員もなしでお店をしている個人事業主なら1か月か2か月はそれでつなげるでしょうが、少しは大きい企業や店ならそれだけで事業が継続できるはずがありません。だから政府も和歌山県もたくさんのメニューをすでに用意してあって、休業要請業種であろうとなかろうと、これらを目一杯使って生き延びてもらおうとしているのです。これは既に17日に県民の皆さんに分かりやすい形にして発表しております。休業要請業種のなかには、すぐに要請に応じなかったりして、マスコミで大いに話題になって注目が集まった企業もありましたが、和歌山県は職業、業種に貴賎はなく、ただ今はコロナの感染リスクだけで業種を選んでいるだけですから差別するつもりはありません。休業要請に応じて休業している店は収入が0ですから、真っ先に何らかの支援が必要かを検討しなければならない存在でしょう。しかし、その隣で、コロナで営業不振で自主的に休業をしている店も等しく救済の対象だということなのです。

 和歌山県では県民にまずこのことをよく分かってもらうとともに、メニューをうまく使って生き延びてもらうように個別に相談をしようという窓口を充実し、かつ、日本中どこでも使える国のセットメニュー、和歌山県の既存のメニューに加えて、県独自の上乗せ策を検討するチームも別途作り、その両方を統括する支援対策本部を28日に立ち上げました。今回の独自措置は、この本部(本部長:下副知事)で考えた和歌山県の独自策です。

 先述のように、現在のところ和歌山県以外の各県の独自策は法律上の休業要請業種、施設に対する一律「補償金」又は「協力金」の給付だけなので、一部それに若干の上乗せをしている県もありますが、包括的に県独自の上乗せ救済策を打ち出したのは和歌山県が初めてです。
 上述のように、国と県の今回の補正予算に基づく、あるいは既存の制度活用による救済策はかなりのもので、これをどんどんうまく使って生き延びるというのが一番大切なのですが、和歌山県ではそれに加えて、現行の国等の制度だと不十分だったり、もれていたりするものについて、独自に県民に使っていただこうとする対策を考えたわけです。コロナによる被害は甚大かつ広範囲ですから、とにかく、一刻も早く対策を打ち出し、県民の方々の少しでも安心感を勝ち得ようという考えで、超特急で対策を考えて5月1日に打ち出しました。
 これが東京や大阪の出来事なら、全国のニュースなどに大きく取り上げられるので、その都や府や県の人々も目に入りますから簡単に認識してもらえるのですが、和歌山県のことはあんまり大きく取り上げてくれないので、県民に対してちゃんと分かってもらうだけでも一苦労です。しかし、それは承知の上の事なので、県庁をあげてPRをして、県民の方々に認識してもらい、これを利用して少しでも苦境から脱してもらおうと思っています。

 この県独自対策においてまず強調したい事は、今回の対策の原則は次の3つです。
 

支援の3原則
  1. 全業種、全ての人が対象  
  2. 困っている人を助ける  
  3. 事業継続に資する       

 法律上の営業自粛業種であろうとなかろうと県民全体、県のすべての企業、人が対象だというのが第1の原則です。
 第2に、困ってる人から助けないといけません。緊急を要する人がいるかもしれません。困っている人を助ける、これが第2の原則です。
 さらに何が大切かというと、コロナが過ぎ去るまで生き延びることです。だから事業継続が大事です。休業補償で20万円もらったからといって、それで生き延びることができなければ、あんまり意味がありません。どうしたら事業が継続できるか、それは事業の大きさによって支援のスケールも違うはずですし、過去の蓄え、事業不振の中でも出ていくお金の額などによっても違うはずです。それらをじっくりと聞いて、十分な支援をしよう。それが原則です。

 この原則のもとに、次のような対策を考えました。簡単に図式すると次のようになります


新型コロナウイルス感染症に係る支援策
支援策 内容
事業継続支援金(県独自) 新型コロナウイルスの影響により、売上減少が50%以上ある事業者の事業継続に向け、県独自の支援金を支給 (20万円~100万円)。
全産業(国の持続化給付金の給付を受けた事業者)を対象
県内事業者事業継続推進(県独自)

県内事業者が事業の継続に向けて、ネット販売システムの構築等の新たな取組や既存事業に加えて新規事業に乗り出す等の新型コロナウイルス感染症の影響を打破すべく実施する取組や感染症拡大防止対策等の安全・安心確保への取組に対して支援を実施 

(・補助限度額:100万円 ・補助率:補助対象経費の3分の2)

持続化給付金申請サポート(県独自) 持続化給付金を県内事業者が速やかに受給できるよう、Web入力補助等を円滑にするため、商工会議所等を支援
雇用調整助成金申請サポート(県独自) 1.相談窓口の設置・・・雇用調整助成金の申請について、社会保険労務士が無料で相談
2.アドバイザー派遣・・・訪問のアドバイスを希望する企業に社会保険労務士を派遣
教育訓練の推進(県独自) 雇用調整助成金を活用して従業員の教育訓練を実施する場合に加算される訓練費に上乗せをすることにより、職業に関する知識、技能、技術等の習得を促進するとともに雇用の維持を推進
(雇用調整助成金の教育訓練助成の加算額2,400円(中小)、1,800円(大企業)にそれぞれ3,000円上乗せ)
観光関連事業者緊急融資(県独自) 観光関連事業者に対して3,000万円上限の1年間無利子・保証料免除の融資を実施 〈6月末まで緊急対応〉
(成長サポート資金の観光振興対策事業者を対象  例:宿泊・交通・観光土産品販売などの施設)
生活福祉資金の特例貸付 1.緊急小口資金・・・緊急かつ一時的に生計の維持が困難となった場合の生活費用を貸付
2.総合支援資金・・・生活再建までの一定期間に必要な生活費用を貸付
住居確保給付金 離職・廃業後2年以内の方または、休職等に伴う収入減少により、離職等と同程度の状況にある方に対して、一定期間家賃相当額を給付
生活保護 生活に困窮している方に、最低生活の保障と自立の助長を図ることを目的に、資産・能力等を活用することを前提として、その困窮の程度に応じて生活費等を給付

 国の施策、これまでの県の施策に加え、この県の独自策を上乗せして、何とか県の経済の延命を図っていきたい。伸るか反るかの時です。
 参考として、発表時の記者会見録も付けておきます。なお、上記図のより詳しい中身は、近く印刷媒体の形にして、従前から利用可能であった国の施策など一体化し配布します。県庁、振興局、市町村庁舎、商工会議所、商工会に置いてもらいます。もちろん県庁のHPからもネットを使ってみることができます。

令和2年5月1日 記者会見録
 

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