知事からのメッセージ 令和2年4月27日

知事からのメッセージを紹介します。

令和2年4月27日のメッセージ

新型コロナウィルス感染症対策(その19)  -うらみ節 -

 このところ、ずっと県を挙げて新型コロナウイルス感染症を防止するための対策を行ってきていますが、その間ほとんど休みなしで働いてくれている県庁の多くの職員や医療関係者の皆さんに心から感謝申し上げたいと思います。しかし、それにも関わらず、心配をしていた福祉施設、医療施設でクラスターが発生しかかっていて、また和歌山市でも新しい患者が発生して、大変です。正確に言うとクラスターは同一場所で5人以上という定義なので、福祉施設のさくら苑ではクラスター発生ということになります。県では、済生会有田病院、紀の川市打田中学校に次ぐ3件目のクラスターという事になります。せっかく後々厳重経過観察とはいえ陰性であった人から陽転が出るなど、さしもしぶとかった打田中学校の案件が落ち着いて、これから退院者が続々と出て来るぞと思っていた矢先の事で、またまた県を挙げて、感染した可能性のある関係者を割り出して、PCR検査などで隔離、観察のかなり大きなオペレーションをしていますが、こういうのが次々と起きて来ては、段々と県の能力を超えてくる恐れがあります。今までは和歌山県では、早期発見、早期隔離、徹底した行動履歴調査による観察網という「和歌山方式」で何とかしのいできましたので、県民の皆さんに、感染の現状はこの程度ですと不安感をことさらあおるようなことは言ってきませんでしたが、どうももう少し、感染リスクが高くなってきているような気がします。和歌山県は、上記の県当局の行政の努力とともに県民の皆さんへの行動自粛のお願いも手遅れにならないよう、4月12日、4月17日、4月23日と3次にわたり強めてきたものですから、それらを全部足した全体の自粛要請レベルは、おそらく実質全県で一番厳しくなっているのではないかと思います。しかし、県民の皆様に油断や楽観があると、とても危ない状況に来ていますので、あらためて遵守をお願いします。県当局も、まだまだ必死でがんばります。

 それにしても、うらみ節みたいになりますが、和歌山県で主として当局の努力で感染の爆発をかろうじて抑え込んでいるのに、全国の大都市の惨状は目を覆うばかりになってしまって、大阪との関係が切っても切れない和歌山県としては本当に困ってしまいます。したがって感染防止のために大事なことは、大阪を中心とする県外からの感染流入の防止ですので、大都市などで前から行っている感染源となりやすい業種、施設の営業自粛の法的措置だけでは足りませんから、県外から人が来そうな施設に対して県外の人は皆断って下さいという自粛要請も行っていますし、24日にはゴールデンウィークを控え、県外から今年ばかりは是非来ないで下さいという呼びかけも行いました。この部分は、法律的権限もありませんし、一部は、法律上は営業を継続すべき、すなわち自粛要請をするのはとんでもないという業種、施設になっているものもありますが、和歌山の位置付けと、今大阪など県外で感染が荒れ狂っている状況からあえてそういう措置をとっているわけです。
 しかし、考えてみますと、コロナさえなければ、それらはどうぞ来て下さいとプロモーションを熱心にしてきた産業が多く、私が就任以来心血を注いで振興に力を入れ、色々な手を打って育ててきた産業ばかりなのであります。そう言う意味で自分で自分を痛めつけているようにつらい時期であります。
 だからどうしても、なんで日本中こんなになってしまったんだとうらみ節を言いたくなるわけです。大都市をはじめ、感染が著しく進んだ地域のトップの人は、それぞれの都道府県民にもっと自粛をしてくれ、感染が進むのは、自粛をしてくれないからだと強調されますし、マスコミの報道もそればかりですし、政府の対策も、このところは特にそればかりになっているように見えますが、私は本当にそうかと思っています。感染が拡がるにまかせてしまったのは、半分は人々の油断した行動だとしても、半分は当局の努力が足りなかったからではないでしょうか。
 大都市のようにこんなに毎日何十人も、百人以上も新規感染者が出てきたら、完璧な抑え込みは到底出来ないけれど、それでも抑え込み努力は続けなければいけない、あきらめてしまっては、もう爆発しかないと思います。また、感染者への対応にしても、その人の安全を守るためと感染を更に増やさないために、出来ることならした方が良い対応ということがあるはずだと私は思います。
 そのいずれも、国には感染症対策の専門家が居るはずなのに、感染症対策の当局の対応についてアドバイスをしているかというとあまりなく、あっても後手に回り、言っていることは、別に専門知識が無くても政治家が考えつきそうな人々の行動の自粛ばかりを言っていて、それがメディアでとても大きく報じられる、それが現状のようで、私も思わずうらみ節を言いたくなるのです。そう言えば最近は疫学的調査というちょっと難しい専門用語も政府からも聞こえてきません。それこそ、和歌山県でまだ必死に展開している辛い作業なのですが。専門家は主として医学と医療の専門家ではないのでしょうか。その本当の専門分野で我々を導いてくれることがないのでしょうか。
 私は、感染症についての学はありませんが、県のトップとして必死で対策に取り組み、数少ないかも知れないが、実態をつぶさに見て、一つ一つ対応を考えて頑張ってきた経験から、この病気と当局の行うべき対応を段階別に次のように整理できると思います。

 A 感染の初期の段階。各地でパラパラと一人、二人の感染者が見つかって、濃厚接触者にはPCR検査をし、濃厚とは言えないような接触可能性のある人にヒアリングをして経過観察下に置き、陽性者は感染症指定病院で手厚い医療加護を加える。

 B もう少し感染者が多く発見されるようになった段階。感染者とその接触者への対応は同じだが、数が増えるにつれ、当局の対応が忙しくなり、また陽性者が増えて、感染症指定病院の病床だけでは足りなくなって、一般病院の病床も感染症患者のために空けてもらうことが必要になってきた状況。

 C さらに感染者が増えてきた段階。感染者とその接触者への対応は同じだけれど、当局のマンパワーが不足して十分な対応が出来なくなった状況。感染者を入院させる病床のやりくりが大変になった状況。

 D さらに感染者が増えてきた段階。上記に加えて新たな感染の疑いのある者に対してもPCR検査をすぐには出来なくなって、順番待ちになっている状況。

 E さらに感染者が増えてきた結果、新規入院患者の病床を確保するため、感染症は治ったがまだ陽性が消えない患者をホテルなどの施設に移ってもらって陰性化を待つという状況。段々と一般のクリニックで発熱患者を診てくれる人が少なくなり、大病院の発熱外来に人が集まり始める。

 F さらに感染者が増えてきた結果、新規感染者の病床が更に不足して、自宅待機やまずホテルへ入居させるなどをせざるを得なくなった状況。また、病院もホテルから退出させるべき人を判別するためのPCR検査も出来なくなって、一定期間滞在した人は自動的に退院、退所をしてもらわざるを得なくなった状況。感染症の疑いがある人々の選別とPCR検査の実施のアレンジが出来なくなって、不安を感じる人々が感染症外来のある病院へ殺到していて、そこへ医師を回すために、重症患者に登用すべき医療人材が不足してきた状況。

 G さらに感染者が増え、重症者の数もどんどん増えて、重症者ですら十分に医療加護を加えられなくなり、軽症者の数も多すぎて検査も出来なくなるので軽症者には自宅で様子を見てもらって、特に重症化したときだけ、医療として命を救うことしか出来なくなった段階。

 私の見るところ、和歌山県は、済生会有田病院クラスターの頃は、A段階、4月以降は、あちらこちらいっぱい出てきて、辛うじてB段階で頑張っているという状況。東京や大阪はおそらくF段階になっていると思います。最近タレントさんの闘病生活レポートを見ましたが、夫が(明らかに)濃厚接触者で発症しているのに検査待ちで、まもなく陽性と判定されたが、そのまま自宅療養となり、本人も発症して、しばらくPCR検査もされず、その後陽性となったが自宅療養していますというレポートがテレビでありました。これは大変な状況だ、G段階になってしまったニューヨークやイタリアのテレビ映像ばかり映されるが、F段階でも既に十分に医療崩壊が起こっていると思います。
 F段階になってしまったら、感染は中々止められないので、人々に厳重な行動自粛を呼びかけるとかが大事になってきますが、その上でここで盛り返すか、G段階に行ってしまうかは当局の踏ん張りも依然として重要だと思います。もっと大事なことはF段階に行かないようにA段階の県は必死で防戦をし、B段階の県は何とか踏みとどまって、出来ればA段階に戻れるように頑張るなど、それぞれの当局が必死で段階を上げないよう頑張らないといけませんが、この献身的な営みに、果たして情報発信力のある政府はエールを送り、マスコミはことの重要性を認識して、その重要性のメッセージを送り続け、そして、医学の専門家は各段階毎に必要なアドバイスを個別に、あるいは、全国的にメディアを通じて送り続けないといけないのではないでしょうか。
 しかし、現実になされていることは、逆です。先にも言いましたように疫学的調査の言葉すら消えてしまって、自粛自粛の大合唱しかありません。大活躍しておられるのは統計学の先生で、何十%の接触低下で発症者がこうなるというような話(それはおそらく真実だと感じますが)ばかりが舞っています。これでは防疫を必死で頑張っている多くの保健当局者や医療関係者に対するエールにもなりません。ひょっとしたら闘志を削いでいるのではありませんか。我々和歌山県当局はローカルな専門知識だけで必死にコロナと戦っています。それぞれの県もそうでしょう。段階が進んでしまった県の苦悩はいかばかりかです。しかし、それぞれの段階の中にあっても具体的な対策の中でベターなものとベターでないものがあるはずです。それをアドバイスするのが、医学の専門家なのではありませんか。

 例えば、他県の知事にアドバイスをしたこともありますが、病院の補完としてのホテルの使い方にも、工夫が必要です。マスコミではホテル、ホテルという報道がいっぱいあって、これでベッド数◯◯確保というような発表で、問題が解決したかのようなことを報じている向きもありますが、大事なことはベッド数ではなくて、そこで働く医療関係者をどこから連れてくるかなのです。各病院ともパンパンに忙しくて、ホテルに割く余裕はありません。従って、和歌山県ではさしあたってホテルは、病院入院者で病状が治っているが陽性が消えていない人だけを対象に使おうということに決めています。そうすると、病状がぶり返すことは、余り考えられないので、ホテルに投入する医療関係者は様子を観察してくれている看護師さんと、その監督とPCR検査を時々してくれる医師せいぜい1人で足ります。しかし、これを入口、即ちいきなり病院代わりに新規感染者用に使おうとすると、医師の投入ももっと必要で常時監視が必要となります。何故ならば、まずは軽症者でも、あっという間に重症化する例が結構あるからです。しかし、それにしてもいきなり新規感染者に自宅待機を命ずるよりもはるかにましでしょう。監視の目ももっと行き届きますから。埼玉県で自宅療養中の新規感染者が亡くなるという悼ましい事例がありましたが、こういう注意こそ国の専門家のお仕事ではありませんか。
 さらに、もう一つ、報道で大阪府が一定程度時間の経った人は、ホテルなどのキャパを空けるためにPCR検査で陰性を確認せずに自動的に退所を認めるということを知りました。和歌山県の例では、発症後45日も陽性が消えない人がいました。症状は10日もすると治っていましたが、ウィルスがしぶといのです。こういう人でも他の人と交じるとうつしますので、時間が経ったからといって退所を認めてしまうと、家族などにうつしかねないし、この人が不届き者だったら、自宅に留まらないで、どこかへ行きまくるおそれもあります。とても危険ではないか、大阪府でこういう流れで感染が拡がると、いずれ大挙してウィルスが和歌山にやってくると思いましたので、吉村知事に「さしでがましいのですが、それは大変危ないですよ。やはりPCRはされた方が。」と申し上げました。聞いてみると、色々な事情があるようです。この点については、厚生労働省も懸念を持っていて、アドバイスはしているようですが、発信力のある専門家がアドバイスをしているのは見たことがありません。

 もう一つ、和歌山県がずっと国の方針(おそらく)に反して和歌山県の医師会にお願いをして続けてもらっているコロナ患者の早期発見システムもあります。数はそう多くはありませんが、何人かの人の感染を早期に発見してくれてその後の感染防止にすごく役に立ちました。これが遅れたら感染させた可能性のある接触者がどんどん増えて、その後の拡大防止努力が大変になったり、防止が出来なくなったりするからです。即ち、大概の人は風邪になりますと、クリニックに行きます。その中でも変だと医師が思ったらレントゲンやCTで肺炎を調べてもらって、肺炎があったら保健所に通告してもらい、後は保健所が中心になってPCR検査をするというものです。最近では、味覚等の変化、激しい下痢なども要注意にしてもらっています。それでも、肺炎を疑う人の割合は風邪引きの人の1~2%、さらにクリニックから通告のあった人のうち陽性者は2~3%ですから。風邪の人の中で非常に少ない人がコロナというわけです。もちろんコロナの人の治療をクリニックにして下さいと言っているわけではなく、それは感染症対策病院の仕事にしています。そしてコロナ陽性の時はその人を発見したクリニックの人をPCR検査で安全確認をしてもらいますが、今まで1人もクリニックが患者さんからうつされたという例は出ていません。クリニックの方々は、それでも多少は不安と戦いながらも県民のために尽くしてくれているのです。しかし、国の専門家は、この方式を推奨はしません。風邪のような人は4日間は自宅で様子を見て、それでもというのなら感染者外来へ行きなさいと言うのです。風邪の人はすぐにクリニックへ行ってはいけませんというのです。どうしてそうおっしゃるかは医療崩壊を恐れてのことだそうです。先の段階のG段階にまで行けば、本当にそうせざるをえないと私も思います。でも、AやBやCの段階の県の人にもそう言いますかと和歌山県は問うているのです。それに、このような国の推奨方式では、色々危険が伴います。まずコロナ発症で4日も放っておくと、中には重症化に至ってしまう人もいます。病院もいきなり重症者がたくさん来られたら、あっという間に医療崩壊でしょう。また、4日も待って行き先は、感染者外来だとしたら、そこに猛烈に人が集中して、ここで別の医療崩壊がおこってしまうではありませんか。クリニックが機能してくれているから、感染症外来に回される人の数は50分の1か100分の1ですむのです。

 医療の専門家は、臨床をやっている人ならば、大事な事は、この患者は今どういう段階にあって、だからこの治療法だと判断をすることでしょう。今回のコロナ騒動に際しても、大事なことは、国なり、ある地方なりがどういう段階にあって、だからその段階にふさわしい医学専門的な方法論をアドバイスすることでしょう。第1段階から最終段階までのシーケンスを全部述べて、最終段階ではこうなのだから、いずれの人々もそうしなさいと言うことは、医学の世界のすべきことでしょうか。

 本日はうらみ節をつい申し上げました。私のような地方の首長もそれぞれの住民に自粛自粛と言うだけではなくて、自らの支配下にある全スタッフを挙げて行政当局が行うべき感染症対策の面でも成功して見せなければなりません。それでこそ、それを補完するものとして住民に自粛の不自由さを耐えしのんでもらえるのではないでしょうか。そしてこの当局の行う対策に医学的に最高のアドバイスをすることこそ政府の専門家に求められていることだと私は思います。不足ばかり、言いつのりましたが、私は依然として、日本を救うのは、専門家の高い専門知識だという期待は捨ててはいません。しっかりと日本を救って下さい。

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