知事からのメッセージ 令和2年4月20日

知事からのメッセージを紹介します。

令和2年4月20日のメッセージ

新型コロナウィルス感染症対策(その15) -拡大防止のための奮闘-

 私は、公用携帯電話を持ち歩いていて、県庁の主として課長以上の人の携帯番号をすべて登録していて、いつでも仕事上の連絡が出来るようになっています。そのうち、このところ野尻孝子福祉保健部技監からの電話が毎日に近いほどかかってきます。どきっとします。野尻さんは、もちろん様々な連絡をしてきてくれますが、コロナの陽性判明があった時は必ず言ってきてくれます。携帯が鳴り、画面表示の発信人に野尻技監と出ると、うわーっと思いながら出てみると、やはり陽性患者判明という内容です。簡単に様子を聞いて、必要な指示をしますが、このところ毎日1件ぐらいの陽性患者が判明していますので、その後の記者会見のスケジュールの打合せもして、その前に詳しいことを聞くことにしています。和歌山県庁は2月以来、ずっと臨戦態勢で職員は皆必死で感染拡大防止に頑張ってくれています。従って、感染はものすごく速く発見できているのですが、それでも感染者が出ないようにと祈っているのですが、それがこの電話連絡でつらい結果を知らされるのであります。段々とボディブローのようにつらくなってきます。しかし、そんな私より、現場で働いてくれている県庁の職員、協力してくれる和歌山市の保健所を中心とする方々(和歌山市だけは中核市なので保健所が独立しています。)、そして多くの医療関係者の方々のご苦労を考えると、弱音などは吐いていられません。県庁の職員も、通常はこういう感染予防などの仕事は、野尻技監率いる福祉保健部健康局と各保健所の仕事なのですが、コロナとの長い戦いになると思われることから、この主力部隊が疲弊してしまうと継戦能力が失われるので、応援も出すし、医学的知識のいらない関連業務、例えば感染者のちょっとした立ち寄り先のヒアリング、経過措置期間の自宅待機者のお世話とかは、出来るだけ主力部隊の仕事から外して他部局の人にやってもらっています。また、医療関係者も、和歌山県では、ものすごい多くの風邪らしき患者さんの中から、一般のクリニックの先生方にコロナの疑いのある人のピックアップに協力していただいて、その分感染症指定病院などの患者さんを治療する方々の負担の軽減になっているのですが、大変低い確率だとは言え、恐らく少しはお持ちであろう感染の恐怖と戦いながら、人々を守るため頑張って下さっているクリニックの先生方には県民の皆さん是非感謝をしてあげてほしいと思います。もともと今のところ、和歌山県では風邪らしき病気の患者さんのうち、肺炎を認める比率は1~2%、このようなこれは怪しいとクリニックの先生方から申し出があった方にはPCR検査をしますが、そこでコロナ陽性が判明するのは2~3%という所で、クリニックの方々のコロナリスクはそれらの確率の積となっています。もちろん陽性が判明しますと、クリニックの先生方が濃厚接触者になりますが、PCR検査をすぐさせてもらって、感染者は出ていません。

 このところ頭を悩ましているのは、学校クラスターを起こした紀の川市打田中学校の関係者から連日1人ずつ陽転をする方が判明することです。これは、学校の教員室が感染媒体となって、そこに勤務していた教員の方々に感染が拡大したという事例で、和歌山県でいうと、済生会有田病院に次ぐ2例目のクラスターになり、現在までのところ、教員8名、その家族5名の感染が判明しています。和歌山県では、最初の1教員の感染が判明してから、その教員の家族はもちろん、職場の同僚が何日間か教員室にいたわけですから、濃厚接触者として全教員をPCR検査したところ、全く症状のない人も含め次々と陽性が判明しました。次にはその陽性者の家族など濃厚接触者の検査をすべてすぐに致しました。一部の人に陽性が出て、今度はまたこの人の濃厚接触者のPCR検査と迅速に進めて行きました。多くの人は陰性でしたが、和歌山県の検査時期があまりにも早いのでコロナが潜伏している可能性もありますから、これらすべての人に2週間の自宅待機をお願いしたわけです。徹底した囲い込みを行って、これで陽転が出なければ良しと少し安心をしていましたら、陰性だった教員1名と感染者の家族で陰性だった人2名が陽性に転じたのです。もちろん全員観察下にある人達ですから、他への感染拡大リスクは低いのですが、このような徹底した健康観察による囲い込みをしていなかったら、感染が次々と拡がったかもしれません。他県で感染が拡大していますが、果たして、感染の初期にここまで囲い込みをしてくれていたのだろうかと思うところもあります。

 打田中学校の学校感染は、上記観察網によって、一応コントロールされていますが、このウィルス株は、済生会有田病院の時より、しぶといという感じがしますので、関係者の自宅待機をもっと厳重にしてもらうようにお願いするとともに、それでは生活必需品も買いに行けないというご家族のために、最寄りの振興局から御用聞きをして買い物をして玄関先まで届けて差し上げるよう指令を出したところです。

 さらにこの打田中学校クラスターについては、反省があります。全教員が出勤して、教員室に机を並べていたことです。ある日にはほとんど全員で人事異動に伴う席替えをしていたこともわかっています。私は、ずっと前から「夏休みなどに教員が生徒もいない学校にどうして居ないといけないのか、昔自分が子どもの頃は先生も休みだったぞ」と問題提起をしてきました。聞くと、「近年先生ばかり夏休みなどにサボっていてけしからんという声が高まり、文部科学省から厳しく全員出勤指導が来ているんです。」ということでありました。何とか教育委員会に工夫をしてもらって、少しはフレキシブルにしてもらっていますが、学校の臨時休業の時も何もお休みの期間でもないので、先生方は律儀に学校に出勤してくれたようです。そこで4月の新学期から改めて休業延長を決めた時、少なくとも1/5以上の先生が学校に来てはいけないという指令を徹底してもらったところです。
 休学期間中も、4月からは毎日担任の先生が生徒に1日1回電話をして健康は大丈夫か、家にちゃんと居るか、感染リスクの高いところへ行ってないか、勉強は進んでいるかなど確認をすることにしているのですが、これは先生がどこに居ても出来る話なので、学校の教員室の「密」は避けようとしています。

 以上のように、毎日毎日どきどきしながら和歌山県では感染防止に全力で取り組んでいます。大阪に隣接していて、関係も交流もものすごく密接ですから、大阪の感染がものすごいので、どうしてもポツポツと影響は受けます。でも、そのたびに全力で囲い込みをして、抑え込むという努力を地道にやっているのです。

 4月16日に政府が法に基づく緊急事態宣言の対象地域を全国に拡大しました。感染の進んでいる大都市から地方への感染拡大を防止するため、特にゴールデンウィークの人の移動を懸念して行ったということで時宜を得た決断だと私は評価します。

 しかし、その時の世の流れは、感染防止のための国民の行動の自粛ないしは、感染を招きやすい事業の営業自粛ばかりで、和歌山県が必死で取り組んでいる当局の努力の重要性を忘れているのではないかと私は思いました。現に少し前ですが、和歌山県で子供さんが感染しました。先方の県が発表しないので、ぼかして申し上げますが、感染者Aの仕事上の濃厚接触者B(この人は後で感染が発覚した人ですが、ずっと無症状だったそうです。)の友人である濃厚接触者Cの奥さんDが和歌山に来て、ある家庭を訪問して、その子供さんに感染したと思われる事例がありました。この時も仮にその県でBさんの検査を早くやってくれていたら、CさんにもDさんにも感染することはなく、子供さんも感染していなかったのにと些か思いました。もちろん和歌山県では、その後子供さんの家族はもちろんDさんの立ち回り先を徹底的に調査して封じ込めに成功しています。

 全国知事会でもこの緊急事態宣言の対象地域拡大を受けて、オンラインのテレビ会議が開かれました。そこで発言の機会を与えられましたので(ちゃんと3分以内というルールを守りました。)、「感染の防止のためには2つやらなければならないことがある。患者の早期発見と早期隔離とそのための徹底した陽性判明者の行動履歴把握に基づくヒアリングが1つ、これは主として当局の仕事だ。もう1つは、国民の行動の自粛で、これは国民の仕事だ。今日の議論を聞いているとあまりにも後者ばかりに片寄っているような気がする。我々は前者もまだまだ頑張らないといけない。」といった事を述べました。
 感染が大拡大する少し前、大都市で感染源が分からない患者が増えているという発表がなされ、報道がそれを重視するもので、ほとんどの県の発表がそれにフォーカスして行われるようになりました。これは危ないと私は思いました。感染源がよく分からないという事は当然起こります。中国由来で済んだ時期と違い、今は、それが起きやすくなっています。しかし、感染防止上大事なことは感染源の把握もそうですが、感染者の行動履歴も大事です。どこで誰と濃厚に会ったか、どこへ立ち寄ったか、云々ということを徹底的に聞き込んで、その先に検査またはヒアリングをして安全を確認していくことがとても大事なのに、あまりにも感染源不明ばかり言うものだから、そこで思考停止が起こって、この感染者の行動履歴把握が疎かになったのではないかという疑いを私は持っています。感染者がもっとずっと少なかった時に、自粛自粛という前にどうしてこの追っかけ回しをして下さらなかったのかと内心不満に思っています。国の立派な専門家も、あんまりこのことを言いません。このコロナの感染プロセスを1から100まで全部予測してみせて、一番最後の最悪の段階における医療崩壊の恐れと、その時に必要な措置ばかり言うものだから、実はかえって最悪のシナリオを招く方向へ行く結果になっているのではないかとすら思います。1例を挙げるなら、和歌山県が国の専門家の発言に逆らって、お願いしているクリニックによる患者の早期発見システムがなかったら、医者にもかからず自宅待機していた人が4日も治らない時に指定病院に行って、コロナ患者もそうでない人もたくさんの方が押しかけて、それこそ、ミニ医療崩壊が起こってしまうではありませんか。
 和歌山県がやっているような全庁的な「囲い込み」は、感染が比較的少ない各県は今も一生懸命やっておられると思いますが、そのやり方とか注意事項とか、そのようなアドバイスを国の専門家の方が口にされるのは、ほとんど聞いたことがありません。
 国民への呼びかけは、感染が拡大してもうこうなったら、圧倒的に大事なことですが、まだまだ踏み止まっている和歌山県や多くの地方県をはじめ、大都市に対してさえ、その当局が専門家がいいと思う方式を参考にもっと頑張れとどうして仰らないのでしょうか。そして、頑張るための資機材の動員、特効薬候補の使用奨励などをどうしてもっと力を入れて下さらないのでしょうか。

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