知事からのメッセージ 平成31年2月21日

知事からのメッセージを紹介します。

平成31年2月21日のメッセージ

関空連絡橋修復と和歌山のファブ業界

 昨年9月の台風21号の際、強風にあおられてタンカーが関空連絡橋に衝突し、自動車の通っていた橋桁が無惨に壊れ、その下を通っていた鉄道橋も歪んでしまって、JRと南海が止まってしまった事件は我々の記憶に新しいところです。
 和歌山もそうですが、関西でも外国人観光客がうなぎ登りで、そのかなりの部分は関空に依存していたのですから、あの光景をテレビで見た時は、関西と和歌山の将来について暗澹とした気分になったものでした。この壊れようから見ると直るまでは当分かかるなあ。その間、関西の景気もいっぺんに悪くなるなあと。

 ところが、その後の復旧のスピードは、私の想像を絶するような速さでした。すぐに巨大クレーン船が動員されてタンカーが引っ張り出され、壊れた橋桁が取り外され、鉄道が修復されました。また、片側だけで、自動車通行ができるように、コース変更の工事があっという間に完成し、10月6日には、機能は実質的に回復し、関西の観光やビジネスへの打撃は当初の懸念からは信じられないくらいの僅少なものに留まることができました。関係する全ての方々に心から感謝を申し上げたいと思います。
 しかし、これほど多岐にわたる作業があれほどのスピードでできたというのは、どこかにものすごい力のリーダーシップが働いていないとできません。和歌山県は東日本大震災の半年後紀伊半島大水害をくらい、県南部を中心にズタズタにされたのですが一刻も早く復旧しないと、時間が経てば経つほど地域の復元力が無くなってしまうからと考えて、死に物狂いで復旧を急ぎました。私はその時は最高司令官ですから、随分乱暴なことも言ってそれぞれの関係者に作業を急いでもらいました。お陰で結構早く復旧が進み、世の人々からは奇跡的ですねえと言われたものですが、その私から見ても今回の関空の早期復旧は、信じられないくらいすごいと思います。これほど多くの関係者を一挙に動員して、あのように水際立って運用するためには、政府のトップによほどリーダーシップがあってかつ実務まで目を光らすことのできる人がいて、頑張ってくれたものと私は思っています。本当にありがとうございました。

 その復旧の最後の駒として、2月14日橋桁が二つ橋脚に設置されました。そのうち一つは堺市にあるIHIインフラシステムで作られましたが、もう一つは和歌山県海南市下津町にある高田機工の和歌山工場が仕上げました。高田機工は大変エクセレントカンパニーですが、このような歴史的事業に和歌山の会社が寄与したということを誇りに思います。本社は大阪市にある会社ですが1993年に工場を作って下さり、私も時々行かせてもらったことがありますが、社員さんの士気が高く、素晴らしい工場です。
 実は和歌山には、この高田機工の他、鉄骨橋梁メーカーいわゆるファブリケーティッド・スティール、通称ファブメーカーが結構たくさんあります。例えば駒井ハルテック、豊工業所、竹島鉄工建設、初島組、板橋製作所、三宅鐵工建設、興和製作所、納谷組、北村鉄工、菖蒲谷、神鋼鉄工、大畑鉄工所、コーイック、蒲田、横田工作所、小林工業、ソエジマというようなメーカーは皆立派に活躍していて、河川、高速道路、鉄道の橋桁などのインフラや鉄骨造りのビル建設などの、建築分野で大活躍をしています。

 産業や企業というと、テレビなどでよく出てくる消費者用最終製品を作っている産業、その中でも大きな企業が有名になりますが、その背後で素材を作ったり部品を作ったり加工機械を作ったりファブのような部材を作ったりする裾野産業が経済の発展のためにはとても大事です。有名なのは、東京の大田区とか東大阪市とかですが、和歌山県もこういう裾野産業に属する企業が、結構たくさん頑張っています。昨今では最終製品を作る巨大アッセンブリー企業で、韓国、中国などの企業が急成長してきて、日本企業も押され気味だし、頑張っている日本企業も巨大工場が外国に移っているという例がたくさんあるのですが、そういう企業も部品とか素材は日本企業の優秀な製品がないとどうしようもないというところが多く、むしろ、世界に覇を唱えている日本企業は、そういう裾野分野にこそあるという状況です。

 ファブの世界は微細電子部品とかファインケミカルとかいう世界とは対極にある領域ですが、これまた、今回の関空連絡橋のことで分かったように、世の発展のためには大変重要な産業であります。

 特にファブ産業の需要は、公共事業、住宅投資や、建設投資に左右されるので、景気動向を反映します。逆にファブ産業に調子はどうですかと聞くと、景気のことも分かるという面もあります。そう言えば、確か4年ほど前から和歌山県のこの業界の方々が年末年始の挨拶にお見えになる時、「ようやく本当に受注が戻ってきました。随分辛い時期が続きましたが、今回は本物です。」と言っておられたのを記憶しています。

 こういう日本経済にとって大事なファブ産業のような裾野産業群が和歌山で盛んなのは、和歌山県民としては誇りですが、最終製品を作っている企業と違い、知名度が今ひとつになるので、人が雇いにくいというきらいがあります。こういう点は、今県で一生懸命やっている「和歌山で働きましょう」の労働政策をもっと頑張らないと申し訳ないなあと思います。

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