知事からのメッセージ 平成30年8月10日

知事からのメッセージを紹介します。

平成30年8月10日のメッセージ

鎮魂と対策

 この猛暑の8月は、マスコミを中心に様々な鎮魂の催しが報じられました。

 西日本豪雨から一ヶ月経過、和歌山カレー事件から20年、8月6日広島原爆投下の日、8月9日長崎原爆投下の日等々であります。

 日本人の良い所は、心優しく、犠牲者を悼む心が世界のどの国よりも篤いところであると私は思います。そういう日本人にあっては鎮魂がとても大事で、それをおろそかにするような人は、冷たい人だと批難されるような気がします。

 しかし、よく考えると、このような鎮魂行事は、犠牲になった人をただ悼むことももちろん大きな意義があるけれど、そこから進んで、このような悲劇を繰り返さないような対策を考えたり、それが風化したりすることを防ぐという意味もあると思います。

 とりわけ、我々行政の責任を担うべき人にとっては、人として、悲劇を悲しみ、他人の不幸を心の痛みとして受け取る必要はもちろんあるけれども、職業的責務として、そのような悲劇を繰り返さぬような対策を考え、実行することも、ひょっとしたらより大きな仕事かもしれません。

 和歌山県では、このような考え方に従って、悲劇を繰り返さぬ対策と、大災害などに見舞われても犠牲を最小限にするような対策に全力を上げています。そのためには、まず事件そのものをよく把握して、その遠因や大事に至った経緯、防げなかった構造的な欠陥などをあぶり出し、これに対する効果的な対策を考えないといけません。

 私は、カレー事件の時は、和歌山を離れていたけれど、当時マスコミ報道などを克明にフォローして思ったのは、林一家が行っていたヒ素を使った保険金詐欺事件のようなことが起こる風土を直さないといけないなあということでした。それを許さず、額に汗する生活態度が林家にも及んでいれば、事件があのようにエスカレートすることも元々無かったのではないかと思いました。

 ずるいことをして儲けたり、自分だけ権力者と組んで特別の地位を得て儲けたり、理由もなく補償を求めてたかりのような行為をするなども皆同根と思います。

 そこで、私が目指す県政では、公共調達の方法を極限まで透明にして、誰かがずるいことをして儲ける余地を無くし、一生懸命努力した人々が得をするような制度を作ろうとしました。また、公共調達などの制度を最大限活用して、たかり、威迫のような行為は極力排除するような制度をどんどん作っています。

 防災については、もっと多くの労力をさきました。東日本大震災はいずれ和歌山を襲う厄災のモデルだと思って、そこから得られた改善点を、和歌山県の対策としてどんどん構想していきました。その一部は、自分達が圧倒的な自然の力でたたきのめされた紀伊半島大水害の時に、その早期復旧に大いに力を発揮しましたが、それでも十分でなかった点は、その後さらに対策を充実、強化しています。その結果、一例を挙げると次のように、日本のどこにもない、あるいは日本初の対策が一杯積み重ねられてきています。

  1. 星1つから3つまでリスク評価をした避難場所(避難所と同一とは限らない)を地震津波用と水害用に分けて発表(全国で唯一)
  2. 防災訓練をショー的なものから実戦型に転換(全国で唯一)
  3. Donetを利用した南海トラフにおける地震の実測に基づく津波の到達予測システムの構築(全国で唯一)
  4. メールを使った防災情報の伝達(全国に先駆け)
  5. FMラジオを使った防災情報の伝達とそのための設備整備(全国で稀)
  6. 和歌山県独自の気象予測システムの導入及び避難勧告等の判断伝達モデル基準の策定と市町村への伝達(全国に先駆け、国のモデルに)
  7. 避難場所とそのルートを簡単に検索でき、家族の避難情報等も分かる県独自の防災ナビアプリ配信(全国で唯一)
  8. 災害時緊急機動支援隊の常設化と電子化設備(10人×4班×18市町)(全国で唯一)
  9. 産業廃棄物企業を動員した災害廃棄物処理支援をあらかじめ準備(全国で唯一)
  10. 民間企業の力を借りた災害廃棄物としての流木の迅速処理(全国に先駆け)
  11. 住家被害認定支援要員部隊の常備化と要員の養成(全国に先駆け)
  12. 住宅の耐震助成(全国のトップクラス)
  13. 大ホテル、福祉施設など大規模構築物の耐震助成(県レベルではトップレベルで唯一)
  14. 速やかなブロック塀対策(全国に先駆けて実施中、県有施設では全国で1番目に完了予定)
  15. 当初から出入りをコントロールする救援物資の集積と配布(全国に先駆け)
  16. 義援金の早期配付(全国でトップクラス)
  17. 空き家、旅館ホテルなどを活用したバーチャル避難所とバーチャル仮設住宅(全国で初)
  18. 紀伊半島大水害の際の災害査定の早期完了(全国のトップクラス)
  19. 紀伊半島大水害の際の本格復旧の目標設定(全国で唯一)
  20. 関西電力と協力して、大雨前のダムの空容量の拡大のためのダムの管理運用の見直し(全国で初)
  21. 民間企業を活用した県管理河川における砂利の一般採取促進(全国で最速で着手)
  22. 避難困難地域完全解消のための対策(全国で唯一)
  23. 復興計画の事前策定への着手(全国で唯一)

 思えばこのような対策を次々と積み重ねてきました。その意味では、災害への備えという対策では、和歌山県は全国でもトップクラスに進んでいると言ってもよいと思います。

しかし、人間が作るものは人間が油断していると形骸化します。従って、いつも魂を入れ続けなければなりません。

今回和歌山県職員は、広島、岡山、愛媛などの被災地にどんどん応援に行っています。同じ最近における被災県として、他が不幸に見舞われたら助けに行くのが当たり前です。だから、全国知事会、関西広域連合などからの要請で人を出すだけでなく、もっと進んで助けに行こうと言って、割り当て以上に応援隊を繰り出していて、被災地の知事からは、わざわざお礼を言われたこともあります。

しかし、これらは必ず自らも役に立つ時があると信じます。紀伊半島大水害の時のあの県庁の勇者も多少引退し、または異動をしています。応援は自らにとっても実戦の訓練になります。またその活動によって和歌山県として直すべき対策はないか、欠けている対策はないかを考えるヒントにもなります。8月の様々な鎮魂行事の報道を見て、心の中で悼みながらそれを超えた対策について思いを致しました。

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