知事からのメッセージ 平成30年2月

知事からのメッセージを紹介します。

平成30年2月のメッセージ

平成30年2月

ビハインド・ザ・コーヴ 祝ロンドン国際映画制作者祭
長編ドキュメンタリー部門最優秀監督賞

2月19日の産経新聞は、標記について次のように報じました。



〔捕鯨擁護作 八木氏が最優秀監督 ~英の映画祭で授賞式~〕

 英ロンドンで17日、ロンドン国際映画制作者祭の授賞式が行われ、捕鯨を日本文化の一部として肯定的に捉えたドキュメンタリー映画「ビハインド・ザ・コーヴ」(2015年公開)の八木景子監督が長編ドキュメンタリー部門の最優秀監督賞を受賞した。
 八木監督は、イルカの追い込み漁で知られる和歌山県太地町に滞在し、町に押し寄せた反捕鯨団体に、町長や漁業関係者ら住民が戸惑う様子や、捕鯨が日本の伝統文化として定着している実態を取材。作品を通じ、太地町のイルカ漁を批判して10年に米アカデミー賞を受賞した映画「ザ・コーヴ」に反論した。
 八木監督は「日本の捕鯨に対して一方的な批判が世界から報じられる中で、『おとなしい』といわれる日本人も反論を発信すべきだと思っていた。捕鯨を擁護する映画にも発表する機会を与えてくださったことに感謝したい」とコメント。また、「反捕鯨家が活動をする最重要拠点の英国で最高賞(最優秀監督賞)として評価してくださったことは大きな意味がある」と指摘した。


 八木景子監督まことにおめでとうございます。心からお祝い申し上げます。
 鯨類は、ここ2-3世紀の乱獲により、種の保存が危うくなったということで、その保全を図るため、捕鯨の禁止や規制を国際捕鯨条約で世界的に約束している動物であります。四方海に囲まれている日本では、古来鯨は貴重なたんぱく源として食用に供されてきました。和歌山県でも特に熊野灘は鯨の通り道ということもあり、古式捕鯨の伝統と文化を育んできました。それは、他に産物もそうない貧しい漁村で、人々の智恵と勇気と協力の精神をふり絞って行われてきましたが、時として大変な犠牲者を出すいたましい悲劇の歴史でもありました。しかし、我々の祖先は、ペリー来航の時の米国捕鯨業者などとは違って、捕った鯨は余す所なく利用し、常に漁の対象である鯨への敬意と鎮魂を忘れぬように、数々の伝統文化を守ってきました。こういう関係は世界中の民族の中で、羊や牛や豚など動物を育てながら、これを食用に供している人達に共通の感情かもしれません。これが2016年「鯨とともに生きる」として日本遺産に登録されるところとなったゆえんです。

 現在は、太地町において捕鯨条約の対象となっている大型鯨類ではなく、条約対象外の小型鯨類を国の厳重な資源管理下で小規模に行っています。しかし、それも小さな太地町の人々が生きていくためには、どうしても必要な生業なわけです。

 ところが、反捕鯨の嵐が南氷洋で荒れ狂うのと軌を一にして、捕鯨条約の対象外である鯨漁を行っている太地に、シャツにドクロマークを付けた外国人などが大挙押しかけ、「鯨を殺す太地の人々は残酷だ、やめろ」とキャンペーンを張り、時には、網を切ったり、物を壊したり、活動を実力行動で邪魔したりするようになりました。このような人々の活動に賛成して、今はもう採用されていない、血が流れて少々ショッキングなと殺現場を強調してその残酷ぶりを訴えたような“ドキュメンタリー映画”の「ザ・コーヴ」が作られ、何と2010年のアカデミー長編ドキュメンタリー映画賞をとってしまったのです。(こういういわゆる国際環境団体の生態については、産経新聞の記者として、ずっとこのような問題を追ってこられた佐々木正明さんの「恐怖の環境テロリスト」(新潮新書)に詳しく書かれています。)つけ加えますと、捕鯨条約は資源としての鯨類の適切な管理を目的として合意された条約であって、そもそも鯨類を殺すことは悪だという国際合意などないのですが。

 このような動きに義憤を感じて、別の見方もあるよという発信をしてくれたのが八木景子さんであり佐々木芽生さんであります。それぞれ「ビハインド・ザ・コーヴ」(2015年公開)と「おクジラさま~ふたつの正義の物語~」(2017年公開)というのがそのタイトルでありますが、そのうち八木景子さんが標記立派な賞を受賞されて、本当にうれしく思います。
 私は、こういう作品を大いに人々に見てもらいたいと思いまして、県内で少々そのために各所に働きかけをしたこともあります。

 また、和歌山県議会でも平成29年6月23日の本議会で議員の質問に答えて、次のように述べさせていただきました。私の思いをよく表していると思いますので、下記に引用させていただきます。また、答弁中の県ホームページでの主張については、県庁HP「注目情報」で「太地町でのイルカ漁業に対する和歌山県の公式見解」(http://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/071500/iruka/index.html)として記載しておりますのでご覧下さい。


〇菅原博之議員
―前略― 反捕鯨のキャンペーンに対して、我が国の政府や行政が反論を繰り返すより、こういう民間の方がつくられた「ビハインド・ザ・コーヴ」のドキュメンタリーの内容が広く普及するための取り組みが必要なのではないかと考えるわけであります。
「ビハインド・ザ・コーヴ」についての県のお考えはどういうものか、また、国内や国際社会への対応を国へ働きかけることも必要ではないかという点について、知事にお伺いいたします。

〇知事
 私は全く同感であります。私も、この映画を、できた直後、早速拝見いたしました。御指摘のあった箇所に加えて、私にとっては懐かしい方々が次々と出てきて、大変感激をいたしました。
 昭和50年代の初め、国連では海洋法条約を結ぼうという国連海洋法会議が開かれておりまして、私は、大陸棚石油開発とマンガンノジュールの開発という通産省の担当する国家利益を守る代表として代表団に、若いんですけれども加わっていましたが、その際、代表団におられたのが、日本の漁業を守ろうという立場で活躍しておられた元農林水産省幹部の米澤さんと、水産庁の現役の技官でおられた島さんでありました。特に島さんとは同じぐらいの役職でありましたので、夜っぴいて海洋法秩序のあり方などを議論したことを覚えております。
 この「ビハインド・ザ・コーヴ」という映画は、現在行っている理不尽な反捕鯨団体の悪行とうそ、デマゴーグを暴くのみならず、このような昔からの海洋をめぐる規律についての議論も丁寧に取材して紹介をする、本当に立派なドキュメンタリーであると思います。ただ、その結果、少々長くなっておるなあというふうには正直に感じました。こういう立派な映画を世の中の人々ももっと見てもらって、世界中の人に真実を知ってもらいたいと思います。
 しかしながら、一番腹立たしく嘆かわしいのは、こういう反捕鯨団体の扇動に乗って、太地町の漁民の方々の生活の苦労など何も考えずに、「鯨など食べなくても我々は生きていける」とか「世界の人に嫌われたら損だ」などと、和歌山県や和歌山県民を非難する日本人であります。こういう人々のために、県では、県ホームページでイルカ漁の正当性を国内外に主張するとともに、やってまいりました投書には丁寧に反論をしておりますけれども、もちろん商業捕鯨の再開や、安心してイルカ漁ができるように、毅然とした態度で対応するよう、国や町とともに努力していきたいと思いますし、もちろん、そのために国にも働きかけをしていきたいと思っております。

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