知事からのメッセージ 平成29年3月 アリとキリギリス

アリとキリギリス

 アリとキリギリスという有名な話があります。キリギリスは夏のよい季節の時は歌いまくって楽しく過ごし、その間アリはせっせと巣を作り食料を集める。そして冬になって食料が無くなって、尾羽打(おはう)ち枯らしたキリギリスは、アリのもとを訪れ、助けて下さいと哀れみを乞うという話です。
 我々は、今を楽しく過ごす事も大事ですが、将来に備える事も同様に大事だという事をよく知っています。将来に備えるということは、貯蓄と投資にもお金を回すということです。もちろん将来の入り用に備えて貯蓄をしておく事も大事ですが、様々な事に投資をしておくことも大事です。
 社会でも同じです。我々の生活を支える基盤がしっかりしていないと、日々の活動も上手くいきません。道路事情が悪いと、もっと良いところへ行くわいと企業が立地してくれないし、今いる企業も生産者も競争に負けてしまいます。学校や病院なども劣化していくので、時代に沿うように強化しつつ更新をしていかねば、そのつけは後世にどんどんたまっていきます。海岸や河川の堤防などもきちんと整備しておかないと、将来の災害で人々が苦しむことになります。一度作ったものも一定の補修をし続けなければえらいことになるでしょう。
 しかし、「コンクリートから人へ」の大合唱が起こり、子ども手当やコメ農家への所得補償が提示されると、日本中がキリギリスになってしまったように思います。農業においても、コメの所得補償の代わりに、園地整備とか選果機のバージョンアップのような投資に回す予算が思いっきりカットされた事を、マスコミなどはまったく報じてくれませんでした。その結果、和歌山県の農業は、投資資金を確保するのが困難になり、大いに損をしました。
 そしてキリギリスが躍動する夏が去っていくように、時があっという間に経ち、今やあの時の政府の政策が正しかったと言う人はほとんどいないと思います(それを推進した人で、あれは間違っていたと言う人もほとんどいません)が、国を挙げて本質的な事を深く反省しないと、また同じようなキリギリス狂騒曲が展開されるかもしれません。本質的な事は、今を楽しく生きるだけでなく、我々は将来のための投資をし続けなければならないという事です。

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