ようこそ知事室へ 知事からのメッセージ 平成27年7月 和歌山県まち・ひと・しごと創生総合戦略
知事からのメッセージを紹介します。
平成27年7月のメッセージ
平成27年7月
和歌山県まち・ひと・しごと創生総合戦略
昨今の日本創成会議のレポート以来、人口減少の問題が大変脚光を浴びております。私は、もとより、急激な人口減少は、個人消費の縮小に伴う地域経済の悪化、需要増が見込まれる医療・福祉分野の人材不足、社会保障費の負担増、自治会や消防団など地域の自主的な活動の弱体化、地域の伝統行事や祭りなどの担い手減少による地域文化の衰退など、あらゆる分野に影響を及ぼす大変深刻な問題であると認識しておりましたから、別に日本創成会議に言われるまでもなく知事に就任した時からずっとこの問題の解決を目指してきました。
特に、本県においては、少子高齢化が全国よりも一段と進み、若年層を中心とした人口流出が大きな問題となっていますから、問題は切実です。
そこで、この問題の本質である社会減、自然減の双方に取り組むため、長期総合計画を作り、産業振興や移住・定住促進、少子化対策など様々な政策に鋭意取り組んできました。まあ、そういえばずっと「地方創生」を追求してきたと言ってよいと思います。
こうした取組の結果、人口の社会減が年間5,000人台から約3,000人にまで減りましたし、また、平成19年に1.34であった合計特殊出生率が平成26年には1.55に上昇しました。
これらのことから、人口減少をある程度くい止めるという一定の成果はあがっていると思いますが、まだまだ安心できる段階ではありません。
国も、「まち・ひと・しごと創生法」を制定し、地方も総合戦略を策定しなければならないことになっており、この際、みんなで議論して、和歌山県としての総合戦略をきちっとまとめておくことが大事であると考えまして、「しごとを創る」、「ひとを増やす」、「まちを創る」を基本姿勢として総合戦略を6月初めに策定し、公表を行いました。
総合戦略は、「県長期人口ビジョン」(以下、「人口ビジョン」と呼ぶ)と「県まち・ひと・しごと創生総合戦略」(以下、「総合戦略」と呼ぶ)の2部構成になっております。
「人口ビジョン」は本県の人口の現状と将来の方向を示し、「総合戦略」は、人口ビジョンを実現するための目標と具体的な施策を提示しています。
【1】県長期人口ビジョン
人口ビジョンは、本県の人口の現状と、人口減少がもたらす影響に関する認識を県民と共有し、めざす将来の方向を提示したものです。国の方針では人口推計の時点を2060年ということになっていますので、2060年時点での人口がどうなっているのか。というよりも最低限どうなっていなければならないかを議論することにしました。
国立社会保障・人口問題研究所の推計人口を、そのまま2060年に伸ばしますと、2060年には約50万人にまで人口が激減するという厳しい状況が見込まれます。それでは、いろいろと困ることができます。
そこで、人口ビジョンでは、社会を何とか持続していくためには、2010年と同水準の「高齢者1人を現役世代2人で支える人口形態」が是非とも必要であるとの考えから、2060年の人口を概ね70万人確保することを目標といたしました。これは、一種の「べき論」です。あとは、これを達成する事が努力をすればできるどうかの検証です。どう考えても達成できそうにない目標を掲げても意味はないからです。
まず、社会減対策です。今後とも、和歌山で立派に育った若者が、全国あるいは世界で活躍をするため和歌山を出ていくことは大いに予想されます。
私は、それを止める必要はないと考えます。一方、本県にもすばらしい企業や様々な仕事があることや和歌山の魅力と和歌山の暮らしの有利さを知らない若者がそのまま転出してしまうことがこれまでは多かったと思いますが、こういう転出はやっぱり減らさないといけないと思います。そのために、若者に大いに情報提供をして、転出をちょっと減らし、かつ、インフラを整備する等の条件をよくし、適切な産業政策を講じて働く場を増やし、転入を増やすことで、社会減をかなり減らすことが可能と考えています。
一方、自然減を減らすことに政策的努力を傾注しないといけませんが、子育て環境を一層よくすることにより、本県で産まれ育つ子どもも増やしていくということが決め手です。これらの政策が功を奏せば、2060年に70万人程度の人口を維持することは可能であると思っています。その後は、これが可能となれば段々と安定的に推移していくということになります。人口ビジョンで掲げた目標は、そういう意味で非現実的なものではなく、また、ただの願望ではないのです。「総合戦略」の諸政策を実行することで達成できるものと確信しておりますが、よほど覚悟を持って努力をしないといけません。それで、県政も頑張りますが、県民の皆様の頑張りも期待しています。県全体が一丸となって人口減少対策に取り組んでいこうではないかと考えています。
【2】県まち・ひと・しごと創生総合戦略
総合戦略は、人口減少の抑制に向けた取り組みと人口減少時代に適応した地域づくりを戦略的に実行し、誰もが活き活きと暮らせ、”元気”を持続できる和歌山を創造をするものです。
「しごと」を創る、「ひと」を増やす、「まち」を創るという基本姿勢で取り組み、「しごと」が「ひと」を呼び、「ひと」が「しごと」を呼び込む好循環を確立し、その好循環を支える「まち」を元気にしていこうと考えています。
そこで、基本目標として、1「安定した雇用を創出する」、2「和歌山県への新しい人の流れを創造する」、3「少子化をくい止める」、4「安全・安心な暮らしを実現する」、5「時代に合った地域をつくる」の5つを掲げ、覚悟を決めて実現するため、進捗管理目標とそのために必要な政策の行動指標を明示し、戦略的に推進することとしました。
具体的な内容は、まず、1「安定した雇用を創出する」ことが重要です。
このため、県内で就職を希望する人をどんどん受け入れることができるよう製造業や観光業、農林水産業など本県が強みとする産業の競争力を高めるとともに、地域資源を最大限に活用した産業振興などにより、「しごと」を創っていきたいと思います。
次に、2「和歌山県への新しい人の流れを創造する」ため、安全・安心・快適な生活環境などの「暮らしやすさ抜群 和歌山県」の魅力をさらに磨くとともに、優良な県内企業の存在とを合わせて、本県出身の大学生とか県内の高校生をはじめ広くアピールすることで、和歌山の魅力や有利さを知らずに県外に出ざるを得ないと思って出てしまう人をくい止めるとともに、和歌山に関心のない人も、関心を高めて来てくださいという政策に取り組んでいきます。また、若者世代向け移住奨励金や空き家バンクなど手厚い移住促進策を取り、あらゆる世代の移住者を本県に積極的に呼び込みます。高齢者も大歓迎ですが、一方、現在の制度では、介護サービスなどの自治体負担が、高齢者が多くなると、過度となってきますので、そうならないような制度の構築を、国に求めて、シニア世代の移住促進をもっと進めるように条件整備を図ります。
総合戦略には、別紙(参考資料)のように和歌山の有利さ、あるいは魅力、暮らしやすさ、そういうものをアピールする資料(「和歌山の暮らしやすさ」)も参考として付けています。
また、3「少子化をくい止める」ため、本県で産まれ育つ子どもを増やすように、出会いから結婚、妊娠、出産、子育てまで切れ目のない少子化対策に取り組み、子どもを産み育てやすい環境整備をさらに推進していきます。
さらに、4「安全・安心な暮らしを実現する」ことも必要です。
すべての人にとって「和歌山は安全・安心だ」というふうに思ってもらえるよう、生活が快適な地域であると本当に実感してもらえるような努力をしていく必要があります。
このため、自然災害による犠牲者「ゼロ」をめざして、ハード・ソフト両面の対策による災害に強い地域づくりの推進や、また、県民一人ひとりが健康でいきいきと暮らせるような医療・福祉サービスの提供体制の構築、良好な生活環境の創出に取り組みます。
そして、5「時代に合った地域をつくる」ことも重要です。秩序ある都市の再生と生活拠点を中心として快適な生活圏を形成するため、高速道路ネットワークや、まちなか居住・都市機能の誘導推進のための都市再開発などの政策を思い切って進めなければなりません。
このたび、和歌山県はこのような総合戦略をうち立てたのですが、本県の人口減少抑制に向け、本総合戦略に盛り込んだ施策に全部局が一丸となって取り組む所存です。