知事からのメッセージ 平成26年3月
知事からのメッセージを紹介します。
平成26年3月のメッセージ
平成26年3月
空気
山本七平さんの著書に「空気の研究」というのがあります。日本人は「空気」にすぐ従うというのです。空気とは、その時々の圧倒的に主流となっている考えとか、ムードとか、大勢とかいう言葉とも置き換えられると思いますが、一旦空気が決まったら皆が従って、それに異を唱える者はあまり快く思われません。昔から「和を以て貴しとなす」、我が国の風土の面目躍如たるものがあります。今はさらにマスコミの機能がこれを強めます。
戦前で言えば時の空気であった「聖戦」に反対する者は迫害されましたし、戦後空気が「反戦平和主義」になると、ミリタリーバランスとか抑止力とかを語る人はあまり好かれません。空気はどんどんと生まれ、最近では、「公共事業はとにかく悪」、「政権交代」、そして「地球環境問題の解決のためには化石燃料を極力減らす」から今度は一転して「脱原発」などなど時々の空気に沿わないと人にあらずというような風潮があります。そして、それに敢えて反する論陣を張る人には「空気を読めない人=KY」というレッテルが貼られるのです。私も、かつて「KY知事」と言われ続けました。数年前、公共事業や高速道路建設は悪というのが世の空気であった時、和歌山の高速道路の建設は何故必要かについて論陣を張ったからです。また、政権交代の風の中で、新しい政権党の政策に迎合しないのはKYだ、と批判され続けました。
これらの空気には、私は、大いに真実が含まれていると思います。我々が耳を傾けなければならない現実と論理があります。しかし、一方でそれだけを重んじていたら我々が陥るかもしれない不都合な真実もあると私は思います。我々は空気の持っている意義は十分理解しながら、そのまま浸ってしまう危険もまた十分考え、どの辺に選択すべき解があるかをよく見極めなければなりません。特に皆から選ばれた政治の責任者はそうだと思います。そう思って、たとえKY知事と言われようとも、空気に迎合せず最善の解を県民の皆さんに説明できるように頑張っていきたいと思います。