ようこそ知事室へ 今月のメッセージ 平成20年5月 和歌山弁

知事からのメッセージ

知事からのメッセージを紹介します。

平成20年5月のメッセージ

平成20年5月1日

「和歌山弁」

私は音楽が苦手です。カラオケも下手です。音感が悪いと思います。例えば、和歌山から東京に行った友達も、音感のいい人はすぐに向こうのアクセントになり、帰省すると、また、ぱっと和歌山弁に戻れます。私は、じわじわとしか変えられません。東京に30年以上も住んでいたのに、まだ、アクセントは和歌山のまま。それでも時々、向こうのアクセントに変わったところがあるのを、自分で発見することもありました。じゃあ、和歌山に帰ってきて東京アクセントがすぐ消えるかというと、それも中々です。じわじわと戻っています。器用ではありません。

「和歌山弁は敬語がない。乱暴だ」と言われます。確かに、敬語は少ないかという気もします。しかし、「汚い言葉だ」と言われると反発を覚えるし、「この言葉のせいで和歌山へ来る観光客などは和歌山を嫌いになるのだ」という意見には、違うのではないかと思います。ご年配の女性が、にこにこしながら和歌山弁でゆっくりと話してくれる時があります。文法的には敬語など少ししか使っていないけど、心温まる情感は他所から来たお客さんに好意を持たれこそすれ嫌われることなどありません。

神坂次郎先生の「熊野まんだら街道」を読んでおりますと、こんな話が出てきました。引用させていただきます。

「堺市に住む主婦からの、「料金たずねたら怒鳴る乗務員」という投書である。「大阪府堺市の鳳南町から大森まで私鉄バスに乗り、乗務員に料金を尋ねたら「毎日乗っていて知らんのか」とどなられました。ひどい人もいるものです」そして、その欄の左脇にバス会社の業務課長氏の「お答え」として、「まことに失礼なことをいいました。その乗務員は言葉に和歌山なまりが残っており、悪意はないのですが、つい誤解されたようです。標準語の指導を徹底します」この「お答え」に目を吊りあげたのが和歌山市の十六歳の高校生だ。憤然として一週間後の紙上に、「許せぬ和歌山弁侮辱」「十九日付の苦情問答で、バスの乗務員が料金を尋ねた乗客に対して「毎日乗っていて知らんのか」と返答した話がでていた。このなかで本社の業務課長が「和歌山なまりが誤解されたようだ。標準語の指導を徹底します」と答えていたのは気になる。和歌山弁がきれいだとは決して思っていないが、よい言葉と悪い言葉の区別ぐらいはある。たとえ標準語の指導を徹底したところで乱暴な姿勢は変わるとは思えない。責任のがれのために、愛する和歌山弁が侮辱されることに腹が立つ」この、K君の痛快な投書に、おなじ紀州人のひとりとして、思わず拍手をおくったものだ。」
(注意 2000年6月 新潮社出版 神坂次郎著「熊野まんだら街道」P126からP127を引用)

私も拍手です。最近はマニュアルばやりです。大都市のファミリーレストランなどで、マニュアルどおり標準語で店員さんに応対されても、別に嬉しくありません。言葉は標準語のマニュアルどおりでも、心がこもっていなければ好感は持てません。私は、和歌山弁でいいと思うのです。しかし、和歌山弁なら全ていいかというと、そうではないと思います。要は、話す人の気持ちの持ちようではないでしょうか。親切な気持ちで、好意を持って他人に接していたら、言葉を通じて気持ちが相手に伝わると思います。

よく、タクシーの運転手さんが色々なことを楽しく和歌山弁で話してくれますが、こういうにこにこの態度だと、降りた時も嬉しくなります。旅行者だったら、また来ようという気になってくれるでしょう。しかし、運転手さんの中には、口べたなのか和歌山弁は和歌山弁でも、ぶっきらぼうな話し方の人もいます。大多数の人は、ただそういう性格であるからそうしているのでしょうが、他所から来た人も、あるいは地元の人も、「態度悪いなー。ひょっとしたら、あんまり近くの行き先を言ったので、この人怒っているんかなー。でも、それで怒るというのは嫌なところだなー。こっちは客だからなー」と思ってしまうかも知れません。現に、とある料理店で初めて来たお客さんが高価な料理を注文したら、応対した女性従業員さんが「高いでー」と言って、立ったままメニューをポンと投げてよこし、後でその人が地元の有力者のゆかりの人だとわかると、その女性従業員さんも経営者も急に態度を変えたという話を聞きました。同じような表裏のある話、料簡の狭い話、心を磨かんといかんなーと思うような話を時々聞きます。これでは、日本中で和歌山の悪評だけが広がります。誰に対しても同じように、真心を持って接するのが大事だと思います。観光の振興のためにも、最も最後のところで大事なことは 「おもてなしの心」です。観光和歌山が繁栄するように、皆で「おもてなしの心」を磨きましょう。心をこめて、和歌山弁でおもてなしをいたしましょう。

このページの先頭へ